説明

アミノ樹脂架橋粒子の製造方法

【課題】アミノ樹脂架橋粒子の耐湿性をより一層向上させうる手段を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係るアミノ樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を得る工程と、アミノ樹脂前駆体を硬化させてアミノ樹脂架橋粒子を得る工程とを含む。そして、当該製造方法は、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、得られた縮合単位をアミノ樹脂架橋粒子に含ませることを含む点に特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ樹脂架橋粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂の1種として、熱硬化性樹脂であるアミノ樹脂が知られている。アミノ樹脂は、アミノ化合物(例えば、メラミン、ベンゾグアナミンなど)とホルムアルデヒドとの縮合単位を含み、架橋(網目状)構造を有する。そして、このアミノ樹脂からなる架橋粒子(アミノ樹脂架橋粒子)は、その機能性(例えば、機械的強度、耐溶剤性、耐熱性、耐薬品性など)を利用することにより、種々の用途に用いられている。かような用途としては、例えば、液晶表示素子用スペーサ、電子写真トナー用外添剤などが挙げられる。
【0003】
アミノ樹脂架橋粒子を製造する手法としては、例えば、アミノ化合物(例えば、メラミン、ベンゾグアナミンなど)をホルムアルデヒドによりメチロール化して初期縮合物を得た後、この初期縮合物を縮合硬化させるという手法が一般的に採用されている。この手法を用いたアミノ樹脂架橋粒子の製造は通常、水系媒体中において行なわれるが、得られるアミノ樹脂架橋粒子の所望の粒子径などに応じて、以下の2つの手法が使い分けられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
第1の手法では、まず、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを縮合反応させて、初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を得る。次いで、得られた初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を水系媒体中で界面活性剤と混合し、得られた混合液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。このようにして、アミノ樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的親水性である場合に適した手法である。また、この手法により得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒子径は比較的小さく、通常はサブミクロンサイズである。
【0005】
この手法(第1の手法)によれば、得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒度分布がシャープなものとなるという利点がある。しかしながら、当該アミノ樹脂架橋粒子は吸湿性が高い(耐湿性に劣る)という問題を抱えている。
【0006】
第2の手法においても、まず、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを縮合反応させて、初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を得るが、その後の工程が第1の手法とは異なる。すなわち、第2の手法では、得られた初期縮合物(アミノ樹脂前駆体)を水系媒体中で乳化し、得られた乳濁液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させる。このようにして、アミノ樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的疎水性である場合に適した手法である。また、この手法により得られるアミノ樹脂架橋粒子の粒子径は比較的大きく、通常はミクロンサイズである。
【0007】
この手法(第2の手法)によれば、上述した第1の手法と比較すれば、耐湿性の向上したアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0008】
ところで、特許文献2には、熱硬化性樹脂を架橋して熱硬化物質を製造する方法が開示されている。特許文献2では、当該熱硬化性樹脂(アルデヒドとアミノ基含有化合物との反応物)として、メラミン樹脂やメラミン−フェノール−ホルムアルデヒド樹脂が開示されている。しかしながら、特許文献2には、フェノール化合物をホルムアルデヒドとモノマーレベルで反応させてアミノ樹脂架橋粒子を得ることは開示されておらず、それにより得られる作用効果も何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−99878号公報
【特許文献2】特表2009−511727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、上記第2の手法によれば、耐湿性が比較的改善されたアミノ樹脂架橋粒子を製造することができる。しかしながら、上記第2の手法によってもなお、依然として耐湿性が十分ではない場合があり、特に用途によっては耐湿性のさらなる改善が必要とされるという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、アミノ樹脂架橋粒子の耐湿性をより一層向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来の技術における上記課題に鑑み、鋭意研究を行なった。その結果、アミノ樹脂架橋粒子にフェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合単位を含ませることで、得られる粒子の耐湿性が改善されうることを見出し、当該知見に基づいて本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明の一形態に係るアミノ樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を得る工程と、アミノ樹脂前駆体を硬化させてアミノ樹脂架橋粒子を得る工程とを含む。そして、当該製造方法は、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、得られた縮合単位をアミノ樹脂架橋粒子に含ませることを含む点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来の技術と比較して、より一層吸湿性が低い(すなわち、耐湿性に優れた)アミノ樹脂架橋粒子が製造されうる。本発明の製造方法により製造されるアミノ樹脂架橋粒子は、優れた耐湿性が要求される用途に特に好適に適用されうる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るアミノ樹脂架橋粒子の製造方法について詳しく説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの具体的な説明のみに拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施しうるものである。
【0016】
<アミノ樹脂架橋粒子の製造方法>
本発明の一形態に係るアミノ樹脂架橋粒子の製造方法は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を得る工程(以下、「第1工程」ともいう。)と、前記アミノ樹脂前駆体を硬化させてアミノ樹脂架橋粒子を得る工程(以下、「第2工程」ともいう。)とを含む。これら2つの工程を含む点については従来技術と同様であるが、本発明に係る製造方法の最大の特徴は、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、得られた縮合単位(以下、単に「フェノール縮合単位」ともいう。)をアミノ樹脂架橋粒子に含ませることをさらに含む点にある。ここで、アミノ樹脂架橋粒子にフェノール縮合単位を含ませる形態としては、いくつかの形態が存在する(詳細については後述する)。まず、上述した第1工程(アミノ樹脂前駆体を得る工程)において、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合単位を形成する形態がある。この形態では、得られた縮合単位がアミノ樹脂前駆体に含まれることとなる。また、上述した第1工程および第2工程とは別の工程として、フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、フェノール化合物とホルムアルデヒドとの縮合単位を形成する工程が行なわれる形態も、本発明の技術的範囲に包含されうる。さらに、これらの形態に応じて、得られるアミノ樹脂架橋粒子の具体的な形態としては、以下のようなものが例示される。ただし、これらの形態のみには限定されない。
【0017】
(1)アミノ樹脂架橋粒子がアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる均一組成を有する形態(後述する実施例1〜3を参照);
(2)アミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造(コアの外周に当該コアと異なる組成のシェル層が配置されてなる構造)を有し、
(2−1)コアがアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなり、シェル層がアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態(後述する実施例4および5を参照);
(2−2)コアがアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなり、シェル層がアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなる形態;
(2−3)コアおよびシェル層のそれぞれが、組成の異なるアミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態;
(2−4)コアがアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなり、シェル層がフェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物からなる形態;
(3)上述した(1)および(2−1)〜(2−3)のそれぞれの形態において、最表層にフェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール樹脂)からなる層(フェノール樹脂層)が配置されてなる形態;
(4)コアおよびシェル層のそれぞれが組成の異なるアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物からなるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子の最表層に、フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール樹脂)からなる層が配置されてなる形態(後述する実施例6および7を参照)。
【0018】
なお、本発明者らの検討によれば、アミノ樹脂架橋粒子を構成するフェノール化合物の好ましい量が判明している。すなわち、本発明に係る製造方法において、得られるアミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物とフェノール化合物との合計100質量%に対するフェノール化合物の量の下限値は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上である。フェノール化合物の量がこれらの下限値以上の値であると、フェノール縮合単位を含ませることによる耐湿性の向上という本発明の作用効果が十分に発揮されうるという利点がある。一方、同様の基準でフェノール化合物の量の上限値は、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。フェノール化合物の量がこれらの上限値以下の値であると、アミノ樹脂架橋粒子(またはコアとしてのアミノ樹脂粒子)を製造する際の粒子間での凝集の発生が防止され、粒度分布や耐湿性等の物性に優れるアミノ樹脂架橋粒子が製造されうるという利点がある。ただし、上記の数値範囲は本発明における必須要件ではなく、これらの範囲を外れる量のフェノール化合物が用いられる場合であっても、本発明の技術的範囲に包含されうる。
【0019】
以下、本発明に係る製造方法について工程順に詳細に説明し、その中で、上述した本発明の特徴についても(必要に応じて上記の各形態別に)詳しく説明することとする。
【0020】
[第1工程]
第1工程では、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を得る。このアミノ樹脂前駆体は、上記(1)の形態(および(1)+(3)の形態)では、第2工程を経て均一組成のアミノ樹脂架橋粒子を構成することになる。また、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態では、第2工程を経てコアシェル構造のコアを構成することになる。
【0021】
そして、これらの形態に応じて、アミノ樹脂前駆体の組成は、アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物である場合と、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物である場合とに分けられる。つまり、アミノ樹脂前駆体が前者の組成(アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物)を有するのは、上記(2−1)の形態および(2−4)の形態(並びにこれらを受けた(3)の形態)並びに(4)の形態である。一方、アミノ樹脂前駆体が後者の組成(アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)を有する(言い換えれば、アミノ樹脂前駆体がフェノール縮合単位を含む)のは、上記(1)、(2−2)および(2−3)の形態(並びにこれらのいずれかを受けた(3)の形態)である。
【0022】
したがって、最終的に製造を希望するアミノ樹脂架橋粒子の構造に応じて、第1工程で調製するアミノ樹脂前駆体の組成を選択すればよい。
【0023】
アミノ樹脂前駆体が「アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合、第1工程では、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させる。
【0024】
原料として用いられるアミノ化合物としては、特に限定はされないが、例えば、メラミンまたは下記一般式(1):
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、Rは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基を表すが、それらの少なくとも1つが置換基を有してもよいアルキル基である。Rはそれぞれ、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるメラミン化合物;ベンゾグアナミン(2,4−ジアミノ−6−フェニル−sym.−トリアジン)、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミンなどのグアナミン化合物;下記一般式(2):
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、Rは、直鎖構造または側鎖を有する構造である炭素数1〜2の炭化水素基を表す。)
で表されるジアミノトリアジン化合物や、下記一般式(3):
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、Rは、直鎖構造、側鎖を有する構造、芳香環を有する構造および脂環を有する構造の何れかである炭素数1〜8の炭化水素基を表す。なお、芳香環を有する構造および脂環を有する構造は、側鎖を有する構造および/または置換基を有する構造であってもよい。)
で表されるジアミノトリアジン化合物などが挙げられる。これらアミノ化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0031】
ここで、一般式(1)で表されるメラミン化合物において、非置換のR(つまり、アルキル基)の炭素数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜12であり、さらに好ましくは1〜8であり、特に好ましくは1〜4であり、最も好ましくは1〜2である。また、Rが置換基を有するアルキル基である場合、アルキル基を置換する置換基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、チオール基、エポキシ基が挙げられる。
【0032】
上述したアミノ化合物のなかでも、トリアジン環を有するアミノ化合物がより好ましい。なお、原料として用いられるアミノ化合物の全量に占めるトリアジン環を有するアミノ化合物の量(複数の場合には合計量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、いっそう好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。かような形態によれば、耐熱性、耐溶剤性の優れたアミノ樹脂架橋粒子が得られるといった効果がある。
【0033】
第1工程において反応させるアミノ化合物とホルムアルデヒドとのモル比(アミノ化合物(モル)/ホルムアルデヒド(モル))は、1/3.5〜1/1.5であることが好ましく、1/3.5〜1/1.8であることがより好ましく、1/3.2〜1/2であ
ることがさらにより好ましい。上記モル比が1/3.5以上であれば、ホルムアルデヒドの未反応物が低減されうる。一方、上記モル比が1/1.5以下であれば、アミノ化合物の未反応物が低減されうる。
【0034】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させるにあたっては、通常、溶媒として水またはアルコールが用いられ、好ましくは水が用いられる。よって、反応形態としては、アミノ化合物とホルムアルデヒドとを水系媒体中で反応させることにより、初期縮合反応物としてアミノ樹脂前駆体を含む水溶液(反応液)を得るという形態となる。この反応形態を実施する具体的方法としては、ホルムアルデヒドを水溶液(ホルマリン)の状態にしたものにアミノ化合物を添加して反応させる方法や、トリオキサンやパラホルムアルデヒドを水に添加して水中でホルムアルデヒドが発生しうるようにした水溶液にアミノ化合物を添加して反応させる方法等が好ましく挙げられ、なかでも、前者の方法が、ホルムアルデヒド水溶液の調整槽が必要ないこと、入手が容易であることなど、経済性の点でより好ましい。
【0035】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとの反応は、塩基触媒の存在下で行なわれることが好ましい。かような形態によれば、当該反応がより一層効率的に進行しうる。なお、用いられうる塩基触媒の具体的な形態について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。塩基触媒の一例としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0036】
この際、アミノ化合物−ホルムアルデヒド−塩基触媒混合液の加熱前のpHを中性から弱塩基性に調整することが好ましく、この範囲にするために使用する塩基触媒量は特に限定されるものではない。
【0037】
なお、一般的に、上記反応を行う第1工程は、公知の撹拌装置等による撹拌下で行うことが好ましい。
【0038】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させる際の反応温度は、反応が進行しうる限りにおいて特に制限されないが、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは55〜95℃であり、さらに好ましくは60〜90℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。また、反応時間についても特に制限はなく、通常は10〜360分間程度であり、好ましくは30〜240分間である。
【0039】
なお、上記アミノ化合物(および後述するフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、並びに必要に応じて塩基触媒は、いずれの添加混合形態であっても、そのまま添加してもよいが、好ましくは予めアミノ化合物(およびフェノール化合物)やホルムアルデヒド、塩基触媒を含む添加液を作製しておき、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、および/または、ホルムアルデヒド、および塩基触媒の少なくとも1種、好ましくは全部を含む添加液を用いることが好ましい。より好ましくは、添加後に均一に拡散されやすいことから、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液として、該アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を水系媒体に分散または溶解した液状添加液を用いるのが好ましい。この場合、1種のみの添加液を用いる場合は当該添加液を、複数の添加液を用いる場合はそれぞれの添加液を独立で、反応系に逐次添加してもよいし、一括添加してもよいし、分割添加してもよい。
【0040】
以上、アミノ樹脂前駆体が「アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合における第1工程の好ましい実施形態について説明したが、アミノ樹脂前駆体がフェノール縮合単位を含む(つまり、「アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する)場合における好ましい実施形態も、上述したものとほぼ同様である。したがって、以下、アミノ樹脂前駆体がフェノール縮合単位を含む場合における好ましい実施形態について、上述した実施形態とは異なる点を中心に、説明する。以下で具体的に説明しない条件等については、上述した実施形態が参照されうるということである。
【0041】
アミノ樹脂前駆体が「アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合、第1工程では、上述したアミノ化合物およびホルムアルデヒドに加えて、フェノール化合物を反応させる。
【0042】
ここで、「フェノール化合物」とは、フェノール性水酸基を有する化合物を意味する。フェノール化合物の具体的な形態について特に制限はないが、例えば、フェノール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、混合クレゾール、p−n−プロピルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、混合イソプロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、m−tert−ブチルフェノ−ル、p−tert−ブチルフェノール、ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、2,4−ジ−s−ブチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,6−ジ−s−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、3−メチル−5−イソプロピルフェノール、3−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、3−メチル−6−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−4−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、m−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール等のフェノール性水酸基を有する化合物;カテコール、レゾルシン、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF等の分子内にフェノール性水酸基を2個以上有する化合物が挙げられる。特に好ましくはフェノールまたはo−フェニルフェノールである。これらのフェノール化合物は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0043】
なお、第1工程においてフェノール化合物を用いる場合には、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子におけるフェノール化合物の含有量が上述した好ましい形態(数値範囲)を満たすこととなるように、後の工程において形成される層(コアシェル構造のシェル層や、表層に設けられるフェノール樹脂層)の組成も考慮しつつ、フェノール化合物の添加量を設計するとよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、第1工程において反応させるアミノ化合物とホルムアルデヒドとのモル比の好ましい形態(数値範囲)や、当該アミノ化合物と塩基触媒とのモル比の好ましい形態(数値範囲)について説明したが、アミノ樹脂前駆体が「アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合においても、「アミノ化合物とホルムアルデヒドとのモル比」を「アミノ化合物およびフェノール化合物の合計量とホルムアルデヒドとのモル比」と置き換えた上で、上記と同様の好ましい形態(数値範囲)が採用されうる。
【0045】
[第2工程]
第2工程では、上記第1工程において得られたアミノ樹脂前駆体を硬化させる。
【0046】
上記(1)の形態(および(1)+(3)の形態)では、アミノ樹脂前駆体はこの第2工程を経て、均一組成のアミノ樹脂架橋粒子となる。また、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態では、アミノ樹脂前駆体はこの第2工程を経て、コアシェル構造のコアを構成することになる。
【0047】
第2工程を実施するための形態としては、大きく2つの実施形態が例示される(背景技術の欄において説明した「第1の手法」および「第2の手法」)。以下、それぞれの手法について、説明する。
【0048】
(第1の手法)
第1の手法では、第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体を、水系媒体中で界面活性剤と混合し、得られた混合液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。このようにして、アミノ樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的親水性である場合に適した手法である。このため、第2工程で第1の手法を採用する場合には、上述した第1工程においてホルマリンと反応して水溶性のアミノ樹脂前駆体を生成しうるものを必須とすることがより好ましい。また、第1工程で得られるアミノ樹脂前駆体は水溶性であることが好ましい。
【0049】
第1の手法では、まず、第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体を、水系媒体中で界面活性剤と混合して、混合液を得る(以下、この工程を「混合工程」ともいう。)。
【0050】
アミノ樹脂前駆体と混合される界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤など全ての界面活性剤が使用できるが、特にアニオン性界面活性剤または非イオン性界面活性剤またはこれらの混合物が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェートなどのアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェートなどのアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩、スルホン化パラフィンのアンモニウム塩などのアルキルスルホン酸塩;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテートなどの脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェートなどのアルキルアリールスルホン酸塩;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩; ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが使用でき、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレートなどの脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物などが使用できる。界面活性剤の使用量は、上記第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲が好ましい。界面活性剤の使用量が0.01質量部以上であれば、アミノ樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られる。また、界面活性剤の使用量が10質量部以下であれば、懸濁液に不必要な泡立ちが生じたり最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子の物性に悪影響が及ぶ心配が低減される。なお、第2工程の第1の手法において用いられる界面活性剤は、アミノ樹脂前駆体に対して水系媒体への水親和性を得させることを目的としたものであり、後述する第2の手法で用いられる乳化剤とは異なる。
【0051】
混合工程では、例えば、界面活性剤の水溶液に、アミノ樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が3〜25質量%の範囲内となるように第1工程で得られた反応液を添加した後、混合することが好ましい。この場合、界面活性剤の水溶液の濃度は、特に限定されるものではなく、アミノ樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節することができる濃度であればよい。上記アミノ樹脂前駆体の濃度が3質量%以上であれば、アミノ樹脂架橋粒子の生産性の低下が防止され、25質量%以下であれば、得られるアミノ樹脂架橋粒子の肥大化や凝集が抑制されうる。
【0052】
混合工程における撹拌方法としては、一般的な撹拌方法で行なえばよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が好ましい。
【0053】
第1の手法では、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止する目的で、必要に応じて、混合工程後に得られた混合液に無機粒子を添加しておいてもよい。
【0054】
無機粒子としては、具体的には、例えば、シリカ微粒子、ジルコニア微粒子、アルミニウム粉、アルミナゾル、セリアゾル等が好ましく挙げられ、なかでも、入手が容易であるといった点で、シリカ微粒子がより好ましい。無機粒子の比表面積は10〜400m/gであることが好ましく、より好ましくは20〜350m/g、さらにより好ましくは30〜300m/gである。無機粒子の粒子径は0.2μm以下であることがより好ましく、より好ましくは0.1μm以下、さらにより好ましくは0.05μm以下である。比表面積や粒子径が上記範囲内であれば、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを防止するのに、より一層優れた効果を発揮することができる。
【0055】
混合液に無機粒子を添加する方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、無機粒子をそのままの状態(粒子状)で添加する方法や、無機粒子を水に分散させた分散液の状態で添加する方法などが挙げられる。混合液に対する無機粒子の添加量は、混合液に含まれるアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは2〜28質量部、さらにより好ましくは3〜25質量部である。1質量部以上であれば、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することを十分防止することができる。一方、30質量部以下であれば、無機粒子のみの凝集物の発生が防止されうる。また、無機粒子を添加した際の撹拌方法としては、前述の強力に撹拌することができる装置(高せん断力を有する装置)を用いる方法が、無機粒子をアミノ樹脂粒子に強固に固着させるという点で好ましい。
【0056】
第2工程における第1の手法では、続いて、上記で得られた混合液に触媒(硬化触媒)を添加する。これにより、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる(以下、この工程を「硬化工程」ともいう。)。
【0057】
触媒としては、酸触媒が好適である。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸;これら鉱酸のアンモニウム塩;スルファミン酸;ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類;フタル酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸等の有機酸;のいずれも使用できる。これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記で例示した酸触媒のうち、硬化速度向上の観点からは鉱酸が好ましく、さらに、装置への腐食性、鉱酸使用時の安全性等に優れる点からは硫酸がより好ましい。酸触媒として硫酸を用いる場合には、さらにドデシルベンゼンスルホン酸を用いる場合に比べて、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が変色しないまたは耐溶剤性が高いといった点からも優れている。一方、上記で例示した酸触媒のうち、本工程において粒子に対する特異な界面活性能を発揮し、アミノ樹脂架橋粒子の安定な懸濁液を生成する効果に優れる点で、炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。例えばデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などが挙げられる。
【0059】
触媒の使用量は、上記混合工程により得られた混合液中のアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部、さらにより好ましくは1〜10質量部である。特に、上記炭素数10〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸を用いる場合は、混合液中のアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。上記触媒の使用量が、上記範囲を下回る少量では縮合硬化に長時間を要し、また、アミノ樹脂架橋粒子の安定な懸濁液が得られず、最終的に凝集粗大化した粒子を多量に含む状態でしか得られない虞がある。また、上記範囲を上回る多量では、生成した懸濁液中のアミノ樹脂架橋粒子中に、上記アルキルベンゼンスルホン酸等の触媒が必要以上に分配されることになり、その結果、アミノ樹脂架橋粒子が可塑化されて縮合硬化中に粒子間の凝集や融着が生じやすくなり、最終的に均一な粒子径を有するアミノ樹脂架橋粒子が得られない虞がある。
【0060】
硬化工程における硬化反応および粒子化は、アミノ樹脂前駆体の混合液に上記触媒を加えて、0℃の低温から加圧下100℃以上の高温のいずれかの温度で撹拌下に保持すればよい。触媒の添加方法には特に制限はなく、適宜選択できる。硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。また、硬化反応の反応時間は、特に限定されない。硬化反応は、一般には、90℃またはそれ以上の温度に昇温して一定時間保持することにより完結されるが、必ずしも高温での硬化は必要でなく、低温短時間であっても、得られる懸濁液中のアミノ樹脂架橋粒子がメタノールやアセトンで膨潤しなくなる程度まで硬化されていれば充分である。一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0061】
硬化工程における撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などによる撹拌下で行なうことが好ましい。
【0062】
第1の手法においては、上記硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行なう中和工程を含むことができる。中和工程は、上記硬化工程において、硬化触媒として硫酸等の酸触媒を用いた場合に行なうことが好ましい。中和工程を行なうことにより、上記酸触媒を取り除くこと(具体的には酸触媒を中和すること)ができ、例えば、後述する加熱工程などにおいてアミノ樹脂架橋粒子を加熱した場合に、アミノ樹脂架橋粒子の変色(例えば、黄色に変色)を抑制することができる。
【0063】
中和工程の「中和」では、アミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液のpHを5以上とすることが好ましく、より好ましくはpHを5〜9にする。懸濁液のpHが5以上であれば、酸触媒がほぼ残存していないことになり、後述する加熱工程などにおけるアミノ樹脂架橋粒子の変色が防止されうる。中和工程の中和によって懸濁液のpHを上記範囲内に調節することにより、硬度が高く、耐溶剤性や耐熱性に優れ、かつ、変色しにくいアミノ樹脂架橋粒子を得ることができる。
【0064】
中和工程において用いられうる中和剤としては、例えば、アルカリ性物質が好適である。該アルカリ性物質としては、例えば、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアが挙げられるが、なかでも取り扱いが容易である点で、水酸化ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウム水溶液が好適に用いられる。これらの中和剤は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0065】
第1の手法においては、上記硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子の架橋度を高めるための熱処理工程を含むことができる。当該熱処理工程では、架橋度をさらに高めるために、上記硬化工程よりも高温で処理することが好ましく、アミノ樹脂架橋粒子の反応液等の分散液の状態でオートクレーブ処理を行うことが好ましい。
【0066】
オートクレーブ処理を行う場合は、処理温度は100〜300℃で処理を行うことが好ましく、より好ましくは130〜190℃であり、処理時間は30分〜10時間程度で行うことが好ましい。
【0067】
第1の手法においては、硬化工程を経て(さらには中和工程および/または熱処理工程を経て)得られるアミノ樹脂架橋子の懸濁液から、当該アミノ樹脂架橋粒子を取り出す分離工程を含んでもよい。かような形態は、この段階で得られたアミノ樹脂架橋粒子が、本発明の製造方法の最終生成物である場合(すなわち、上述した(1)の形態のとき)に、特に好適である。
【0068】
この分離工程では、硬化(またはその後の中和)によって得られたアミノ樹脂架橋粒子を、硬化工程で(またはさらに中和工程でも)用いた水系媒体から分離して取り出す。アミノ樹脂架橋粒子を懸濁液から取り出す方法(分離方法)としては、濾別する方法や遠心分離機等の分離機を用いる方法が簡便な方法として挙げられるが、特に限定されるわけではなく、通常公知の分離方法を用いることができる。なお、懸濁液から取り出した後のアミノ樹脂架橋粒子は、必要に応じて、水等で洗浄してもよい。
【0069】
第1の手法において、上記分離工程を行なう場合には、取り出したアミノ樹脂架橋粒子に対して、100〜250℃程度の温度、好ましくは120〜220℃で加熱する加熱工程を行なうことが好ましい。加熱工程を行なうことによって、アミノ樹脂架橋粒子に付着している水分および残存している遊離ホルムアルデヒドを除去することができ、かつ、アミノ樹脂架橋粒子内の縮合(架橋)をさらに促進させることができる。上記加熱温度が100℃以上であれば、アミノ樹脂架橋粒子内の縮合(架橋)を十分に促進させることができ、アミノ樹脂架橋粒子の硬度、耐溶剤性および耐熱性を向上させることができる。一方、上記加熱温度が250℃以下であれば、得られるアミノ樹脂架橋粒子の変色の虞が低減されうる。上述した中和工程を行なった場合であっても、加熱温度が上記温度範囲内である場合の利点は同様である。中和工程を行なった上で、アミノ樹脂架橋粒子の加熱温度を上記範囲内とすることにより、硬度が高く、耐溶剤性および耐熱性に優れ、かつ、変色のないアミノ樹脂架橋粒子を得ることができる。
【0070】
加熱工程における加熱の方法については、特に限定されるものではなく、通常公知の加熱方法を用いればよい。加熱工程は、例えば、アミノ樹脂架橋粒子の含水率が3質量%以下となった段階で終了すればよい。また、加熱時間は、特に限定はされない。
【0071】
さらに、上記加熱工程後に得られたアミノ樹脂架橋粒子(乾燥物)を粉砕し、得られた粉砕物を分級する工程をさらに行なってもよい。
【0072】
粉砕を行なう粉砕工程とは、硬化、分離、乾燥(加熱)工程において凝集したアミノ樹脂架橋粒子を解砕する工程をいう。また、分級を行なう分級工程とは、それまでの工程で生成した微小粒子、特定粒径以上の粗大粒子または粒子、および粉砕工程において解砕できなかった凝集粗大粒子や凝集粒子を低減する工程をいい、分級のみを行なう工程でもよいし、粉砕と分級をともに行なう工程でもよい。また、粉砕と分級とをともに行なう場合、粉砕を行なってから分級を行なってもよいし、粉砕と分級とを同時に行なってもよい。
【0073】
第1の手法における粉砕工程および分級工程では、粉砕機と分級機は別々の装置を用いてもよいが、粉砕と分級の両機能を兼ね備えた装置(粉砕分級機)を用いることもできる。粉砕機としては、例えば、バンタムミル、パルベライザー(ホソカワミクロン(株)製)、サンプルミル(不二パウダル(株)製)、ジェットミルなどが挙げられる。分級機としては、例えば、ミクロンセパレータ(ホソカワミクロン(株)製)、マイクロンクラッシファイアー((株)セイシン企業製)、TURBO CLASSIFIER(日清エンジニアリング(株)製)などが挙げられる。粉砕分級機としては、例えば、LABO JET(日本ニューマチック工業(株)製)、ジェット粉砕分級機STJ−200((株)セイシン企業製)などが挙げられる。粉砕分級機は、装置がコンパクトになり、経済的であるといった理由からより好ましい形態である。なお、粉砕および/または分級の条件は特に限定されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0074】
上述した第1の手法によれば、水溶液状態においてアミノ樹脂前駆体の硬化が開始する。このため、粒子径が小さく、サイズの揃ったアミノ樹脂架橋粒子の調製が容易となる。得られるアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の具体的な値について特に制限はないが、好ましくは0.05〜5μmであり、より好ましくは0.1〜4μmであり、最も好ましくは0.2〜3μmである。なお、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0075】
(第2の手法)
第2の手法では、第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体を水系媒体中で乳化し、得られた乳濁液に触媒を添加して、前記アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる。このようにして、アミノ樹脂架橋粒子が得られる。なお、この手法は、アミノ樹脂前駆体の組成が比較的疎水性である場合に適した手法である。
【0076】
第2の手法では、まず、第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体を水系媒体中で乳化する(以下、この工程を「乳化工程」ともいう。)。
【0077】
乳化工程においては、第1工程により得られたアミノ樹脂前駆体を乳化してアミノ樹脂前駆体の乳濁液を得るようにする。乳化するにあたっては、例えば、保護コロイドを構成しうる乳化剤を用いることが好ましく、より好ましくは保護コロイドを構成しうる水溶性重合体からなる乳化剤が用いられる。かような乳化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、水溶性ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。これら乳化剤は、全量を水に溶解させた水溶液の状態で用いてもよいし、その一部を水溶液の状態で用い、残りをそのままの状態(例えば粉体状、顆粒状、液状など)で用いるようにしてもよい。上に例示した乳化剤のなかでも、乳濁液の安定性、触媒との相互作用等を考慮すると、ポリビニルアルコールがより好ましい。ポリビニルアルコールは、完全ケン化物であってもよく、部分ケン化物であってもよい。また、ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではない。第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体に対する乳化剤の使用量が多いほど、生成する粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。乳化剤の使用量は、第1工程で得られたアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、1〜30質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。乳化剤の使用量が上記範囲内の値であれば、乳濁液の安定性が確保されうる。
【0078】
乳化工程では、例えば、乳化剤の水溶液に、アミノ樹脂前駆体の濃度(つまり、固形分濃度)が30〜60質量%の範囲内となるように上記第1工程で得られた反応液を添加した後、50〜100℃の温度範囲内で乳濁させることが好ましく、より好ましくは60〜100℃、さらにより好ましくは70〜95℃である。乳化剤の水溶液の濃度は特に限定されず、アミノ樹脂前駆体の濃度を上記範囲内に調節することができる濃度であればよい。上記アミノ樹脂前駆体の濃度が30質量%以上であれば、アミノ樹脂架橋粒子の生産性の低下が防止されうる。一方、当該濃度が60質量%以下であれば、得られるアミノ樹脂架橋粒子の肥大化や粒子同士の凝集の虞が低減されうる。
【0079】
乳化工程における撹拌方法としては、より強力に撹拌することができる装置(高せん断力を有する装置)を用いる方法、具体的には、例えば、いわゆる高速撹拌機やホモミキサーや、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製)、高速ディスパー、エバラマイルザー((株)荏原製作所製)、高圧ホモジナイザー((株)イズミフードマシナリ製)、スタティックミキサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド製)などを用いる方法が好ましい。
【0080】
第2の手法においても、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子が強固に凝集することをより確実に防止するために、必要に応じて、上記乳化工程後に得られた乳濁液に無機粒子を添加しておくことができる。無機粒子およびその添加方法等については、前述した第1の手法での説明が同様に適用されうる。
【0081】
第2の手法では、続いて、乳化工程で得られた乳濁液に触媒を添加して、アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させて析出させる(硬化工程)。
【0082】
硬化工程においては、乳化工程により得られた乳濁液に触媒(硬化触媒)を加え、乳化させたアミノ樹脂前駆体の硬化反応を行う(アミノ樹脂前駆体を乳濁状態で硬化させる)ことによりアミノ樹脂架橋粒子(詳しくは、アミノ樹脂架橋粒子の懸濁液)を得るようにする。触媒(硬化触媒)の具体的な形態については、上述した第1の手法における説明が同様に適用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0083】
第2の手法の硬化工程における触媒(硬化触媒)の使用量としては、乳化工程により得られる乳濁液中のアミノ樹脂前駆体100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4.5質量部、さらにより好ましくは0.5〜4.0質量部である。触媒の使用量が5質量部以下であれば、乳濁状態の破壊やこれによる粒子同士の凝集の虞が低減されうる。一方、触媒の使用量が0.1質量部以上であれば、比較的短時間の反応でも十分に硬化を行なうことができる。また、同様に、触媒(硬化触媒)の使用量としては、原料化合物として用いたアミノ化合物(アミノ樹脂前駆体がフェノール縮合単位を含む場合には、アミノ化合物とフェノール化合物との合計量)1モルに対して0.002モル以上であることが好ましく、より好ましくは0.005モル以上、さらに好ましくは0.01〜0.1モルである。触媒の使用量が上記下限値以上であれば、比較的短時間の反応でも十分に硬化を行なうことができる。
【0084】
硬化工程における硬化反応の条件について特に制限はないが、一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0085】
硬化工程における撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などによる撹拌下で行なうことが好ましい。
【0086】
硬化工程における触媒の添加は、上述した乳化の開始から5時間以内に行なうようにすることが好ましい。このように、乳化開始(アミノ樹脂前駆体と乳化剤(乳化剤水溶液)との混合開始)から硬化開始(触媒添加時)までの時間(以下、「乳化時間」ともいう。)を5時間以内に制御することによって、粗大粒子の生成を防止することができるため、好ましい。当該乳化時間は、好ましくは4時間以内、より好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内、さらにより好ましくは1時間以内である。
【0087】
乳化時間の始まりから終わりまでの間に行なう操作については、上述したように乳化開始で始まり硬化開始で終了することとする以外は、特に限定はされない。したがって、例えば、アミノ樹脂前駆体を含む反応液と乳化剤とを撹拌混合しアミノ樹脂前駆体を乳濁状態にした後、撹拌を止めて静置し所定の温度まで冷却するようにしてもよいし、上記冷却後に所定の無機粒子を添加するなどの他の工程を行なってもよいし、所望の乳濁状態になるまで上記撹拌混合を行い、その後も触媒を添加するまで撹拌(始めに比べて緩やかな撹拌が好ましい)を続けながら冷却も同時にするようにしてもよく、特に限定はされない。
【0088】
第2の手法においても、硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液の中和を行なう中和工程を含むことができる。中和工程におけるpHの範囲や中和剤の種類等の詳細については、上述した第1の手法での説明が同様に適用されうる。
【0089】
第2の手法においても、硬化工程により得られたアミノ樹脂架橋粒子を含む懸濁液の熱処理を行なう熱処理工程を含むことができる。熱処理工程における処理条件等の詳細については、上述した第1の手法での説明が同様に適用されうる。
【0090】
また、第2の手法においても、アミノ樹脂架橋粒子を懸濁液から取り出すための分離工程やその後の加熱工程、さらには粉砕および/または分級工程を行なってもよい。これらの種々の工程の具体的な形態については、上述した第1の手法における説明が同様に適用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0091】
上述した第2の手法によれば、第1の手法と比較して、相対的に粒子径の大きいアミノ樹脂架橋粒子が調製される。得られるアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の具体的な値について特に制限はない。ただし、第2の手法により得られるアミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は通常ミクロンサイズであり、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1.5〜10μmである。なお、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径の値は、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0092】
上述したように、上記(1)の形態(および(1)+(3)の形態)では、第2工程を経て均一組成のアミノ樹脂架橋粒子が得られる。そして、(1)の形態では、この段階で得られるアミノ樹脂架橋粒子が、本発明の製造方法による最終生成物となる。また、(1)+(3)の形態では、後述するように表層へのフェノール樹脂層の形成を経て、最終生成物としてのアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0093】
[コアシェル構造(シェル層の形成)]
一方、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態では、第2工程を経て得られるアミノ樹脂架橋粒子が、コアシェル構造のコアを構成することになる。以下、最終生成物としてのアミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有する場合(つまり、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態)において、上記第2工程を経て得られたコアの外周にシェル層を形成する工程(以下、この工程を「シェル層形成工程」ともいう。)について、説明する。
【0094】
シェル層形成工程は、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)とホルムアルデヒドとを縮合・硬化させ、アミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(または、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)をコア(アミノ樹脂架橋粒子)の表面に成長させて、当該(共)縮合物からなるシェル層を形成させる工程である。
【0095】
本工程の好ましい実施形態では、上記で得られたコア(アミノ樹脂架橋粒子)を分散させた水系媒体中に、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)、ホルムアルデヒド(ホルマリン)、硬化触媒、界面活性剤等を適時、適量添加する。ただし、かような形態のみには限定されず、所望のシェル層を形成しうるものであれば、そうした製造方法も十分に適用可能である。
【0096】
本工程で用いられる水系媒体としては、特に制限されるものではなく、水、アルコール類等が挙げられ、好ましくは水である。
【0097】
水系媒体中に分散させるコアの濃度(つまり、固形分濃度)は、特に制限されないが、3〜25質量%の範囲内となるように調整するのが好ましい。コアの濃度を3質量%以上とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の生産性を向上することができる点で優れている。一方、コアの濃度を25質量%以下とすることで、得られるアミノ樹脂架橋粒子の肥大化、粒子同士の凝集を効果的に防止でき、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子とすることができる。
【0098】
なお、コアを製造する段階で水系媒体を用い、当該コアが水系媒体中に分散した形態で得られる場合には、水系媒体中のアミノ樹脂粒子の濃度(固形分濃度)を上記範囲内になるように、必要があれば、水系媒体をさらに追加すればよい。コアを水系媒体中に混合、分散させるには、一般的な撹拌手段を用いて混合、分散させればよく、例えば、ディスクタービン、ファンタービン、ファウドラー型、プロペラ型および多段翼などの撹拌翼を使用して撹拌する方法等が挙げられる。これらの撹拌方法は、後述する硬化(架橋)反応の際の反応液の撹拌にそのまま適用することもできる。
【0099】
本工程において、シェル層を形成するのに添加混合されるアミノ化合物としては、上述したアミノ化合物が同様に用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、得られるアミノ樹脂架橋粒子がコアシェル構造を有する上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態のうち、(2−1)、(2−3)および(2−4)の形態(並びに、これらを受けた(3)の形態)では、シェル層がフェノール縮合単位を含む。かような形態においてシェル層を形成するのに添加混合されるフェノール化合物の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0100】
アミノ化合物の使用量(シェル層がフェノール縮合単位を含む場合には、アミノ化合物とフェノール化合物との合計使用量)は、コア100質量部に対して、10〜1000質量部の範囲が好ましく、より好ましくは25〜700質量部、さらに好ましくは50〜500質量部の範囲である。10質量部以上では、吸湿性を抑制する効果に優れるシェル層を形成しやすく、1000質量部以下であれば、粒度分布の特にシャープな粒子が得られやすい。
【0101】
なお、シェル層形成工程においてアミノ化合物と併せてフェノール化合物を用いる場合には、最終的に得られるアミノ樹脂架橋粒子におけるフェノール化合物の含有量が上述した好ましい形態(数値範囲)を満たすこととなるように、フェノール化合物の添加量を設計するとよい。
【0102】
本工程にて必要なホルムアルデヒドの含有量は、ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比で、1.5〜6、より好ましくは2〜4の範囲である。かかる範囲内とすることで、モノマー架橋反応の促進ができるほか、粒度分布の狭いアミノ樹脂架橋粒子を得ることができる。なお、シェル層が「アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド縮合物」の組成を有する場合には、「ホルムアルデヒド/アミノ化合物のモル比」を「ホルムアルデヒド/(アミノ化合物およびフェノール化合物の合計量)のモル比」と置き換えた上で、上記と同様の好ましい形態(数値範囲)が採用されうる。
【0103】
なお、場合によっては、コアを製造する段階で水系媒体中にホルムアルデヒドを過剰に添加しておくことで、得られるコアを分散させた水系媒体中に、予めホルムアルデヒドを含有させることができる。
【0104】
シェル層形成工程において用いられる界面活性剤、触媒(硬化触媒)等の具体的な形態についても、上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0105】
シェル層形成工程において、水系媒体に添加されるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、硬化触媒、ホルムアルデヒド、界面活性剤の好適な添加混合形態につき、以下に例示する。ただし、本発明では、縮合・硬化反応により所望のシェル層を形成しうるものであればよく、以下に例示する添加混合形態に何ら制限されるものではない。
【0106】
具体的には、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、(i)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液を添加するに先立ち、予め、コアが分散した水系媒体に共存させておいてもよいし、(ii)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を添加する際に添加してもよい。添加する場合は、(ii−1)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液に共存させた混合状態で添加してもよいし、(ii−2)アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加してもよい。
【0107】
好ましい形態は、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤いずれも、上記(ii)の形態が好ましく、上記(ii−1)の形態が特に好ましい。これは、所定濃度のアミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、硬化触媒、界面活性剤を水系媒体中に素早く溶解または分散させることができ、縮合反応、硬化反応のコントロールが容易であるためである。
【0108】
上記(i)(ii)いずれの形態であっても、コアが分散した水系媒体へのアミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液の添加は、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、連続的に滴下する方が好ましい。連続的の方が系内で均一になり、分布がシャープになりやすいためである。なお、分割して添加する場合には、添加液を2等分〜10等分し、それぞれの画分を10〜60分毎にそれぞれ一括添加することが好ましい。
【0109】
上記(ii−2)の場合、アミノ化合物(およびフェノール化合物)を含む添加液とは異なる経路で添加されるホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒の添加も、連続して行なってもよく、断続的に所定量を分割して添加してもよい。好ましくは、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を連続的に滴下する方が好ましい。この際、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、それぞれ別々の添加液を作製して添加してもよいし、これらの2以上を含む添加液を作製して添加してもよい。特に好ましくは2以上含む添加液の形態である。
【0110】
上記「同様に添加する」場合の硬化触媒と前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加は、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)の速度と同じ範囲内で添加するのが好適である。
【0111】
なお、上記アミノ化合物(およびフェノール化合物)、ホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒は、いずれの添加混合形態であっても、そのまま添加してもよいが、好ましくは上記したように予めアミノ化合物(およびフェノール化合物)やホルムアルデヒド、界面活性剤、硬化触媒を含む添加液を作製しておき、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)、および/または、ホルムアルデヒド、界面活性剤および硬化触媒の少なくとも1種、好ましくは全部を含む添加液を用いることが好ましい。より好ましくは、添加後に均一に拡散されやすいことから、かかるアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液として、該アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を水系媒体に分散または溶解した液状添加液を用いるのが好ましい。また、該添加液において、アミノ化合物(およびフェノール化合物)は、界面活性剤で微分散させてなるのが好ましい。
【0112】
なお、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間(添加工程の時間、断続の場合は添加開始から添加が全て終了するまでの時間)t(hr)は、以下の関係を満足することが好ましい。
【0113】
【数1】

【0114】
式中、Wxは、添加するアミノ化合物(およびフェノール化合物)の質量(kg)であり、Wyは、コアの質量(kg)である。
【0115】
アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、水系媒体(反応液)中に分散されてなるアミノ樹脂架橋粒子(コア)表面に所望のシェル層を選択的(優先的)に成長させることができ、個々の粒子間で成長厚みにバラツキが少なく、所望の厚さ(平均値)を有するシェル層を形成させることができる。さらに、アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内とすることで、アミノ樹脂架橋粒子(コア)の持つ粒度分布のシャープな特性を損なうことなく、粒子径の変動係数CV値を小さい値とすることができる。アミノ化合物(およびフェノール化合物)の添加によって、コア表面だけでなく、水系媒体(反応液)中でも、アミノ化合物(またはフェノール化合物)とホルムアルデヒドとの縮合反応が進行して新たにアミノ樹脂前駆体からアミノ樹脂架橋粒子が形成される可能性がある。その一方で多くのアミノ化合物(およびフェノール化合物)はその近傍に存在するコアの表面で成長するシェル層に吸着・結合して取り込まれていくものであるが、とりわけアミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tを上記範囲内にコントロールすることで、新たなアミノ樹脂粒子の生成を抑えることができるのである。また、tを上記範囲内とすることで、残留未反応モノマーを抑制し得る点でも有利である。一方、前記アミノ化合物(およびフェノール化合物)等を含む添加液の総添加時間tが(Wx/Wy)×0.5(hr)未満の場合には、前述した新たなアミノ樹脂粒子の生成や粒子の2次凝集を起こす虞がある。(Wx/Wy)×5.0t(hr)を超える場合には生産効率が悪くなる虞がある。なお、Wx/Wyの具体的な値について特に制限はなく、得られるシェル層の厚みや、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層比が所望の値となるように適宜調節すればよい。一例として、Wx/Wyの値は、好ましくは0.1〜10であり、より好ましくは0.25〜7であり、さらに好ましくは0.5〜5である。また、本工程では、上記反応液を常に適当な温度域に保持し、適当な撹拌力にて撹拌・混合しながら縮合・硬化反応を進めていくのがよい。
【0116】
本工程では、シェル層形成工程は、上記で得られたアミノ樹脂架橋粒子を分散させた水系媒体を、加熱・保持しながら、アミノ化合物(場合によっては、さらにフェノール化合物)をホルムアルデヒドとともに添加混合する。これにより、アミノ化合物(およびフェノール化合物)とホルムアルデヒドを縮合反応、硬化反応させて、コアの表面にアミノ化合物−ホルムアルデヒド縮合物(フェノール化合物が用いられる場合には、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物)を成長させて、当該縮合物からなるシェル層を形成せしめ、コアシェル構造を形成する。
【0117】
縮合・硬化反応の際の反応条件について特に制限はないが、一例として、反応(硬化)温度は、好ましくは50〜98℃であり、より好ましくは60〜95℃であり、さらに好ましくは70〜90℃である。また、反応(硬化)時間は、好ましくは1〜12時間であり、好ましくは1〜10時間であり、さらに好ましくは2〜5時間である。硬化反応の反応温度が50℃以上であれば、硬化が十分に進行しうる。一方、硬化反応の反応温度が98℃以下であれば、強固な加圧反応器などを必要とせず、経済的である。なお、硬化反応の終点は、サンプリングまたは目視によって判断すればよい。
【0118】
上述したように、縮合・硬化反応の際の反応系の圧力は、特に制限されるものではなく、大気圧下でも、減圧下でも、加圧下でもよい。安全性や経済性(生産コスト)の観点からは大気圧下で行うのが好ましい。
【0119】
また、縮合・硬化反応の際の反応液は、撹拌下に保持するのが好ましい。かかる撹拌方法としては、通常公知の撹拌装置などを用いて行なうことが好ましい。
【0120】
縮合・硬化反応を行なう際には、上述したのと同様の目的で、無機粒子を添加してもよい。添加されうる無機粒子の具体的な形態については上述したとおりである。
【0121】
シェル層形成工程においては、上述した縮合・硬化反応の終了後に、上述したのと同様の中和工程や熱処理工程、粉砕工程、分級工程などを実施してもよい。これらの具体的な形態についても、上述したとおりである。
【0122】
上述した手法により得られるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子におけるシェル層の厚み(平均値)tは、0.01μm以上であることが好ましい。上記厚み(平均値)tが0.01μm以上であると、吸湿性の抑制された粒子となりやすい。アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tとしては、吸湿性が特に低くなる観点から、好ましくは0.02μm以上、より好ましくは0.03μm以上、特に好ましくは0.04μm以上である。一方、吸湿性抑制の観点からは厚みは大きいほど好ましいが、分散性に優れる観点からは本形態に係るアミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、好ましくは5μm以下である。なお、アミノ樹脂架橋粒子のシェル層の厚み(平均値)tは、シェル形成後の成長粒子の平均粒子径D(μm)、コアの平均粒子径d(μm)より、式:t=(D−d)/2により算出されうる。
【0123】
上述した手法により得られるコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子における、コアの平均粒子径に対するシェル層の厚み(平均値)の比(t(μm)/d(μm);「シェル層比」ともいう。)は、好ましくは0.1〜1.5の範囲である。シェル層比が0.1〜1.5の範囲内であると、吸湿性が低くかつ分散性に優れる。シェル層比の値としては、吸湿性が低いという観点から、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.3以上である。
【0124】
上述したように、上記(2)の形態(および(2)+(3)の形態)並びに(4)の形態では、シェル層形成工程を経てコアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子が得られる。これらのうち、(2)の形態では、この段階で得られるアミノ樹脂架橋粒子が、本発明の製造方法による最終生成物となる。
【0125】
[フェノール樹脂層の形成]
一方、(2)+(3)の形態、および(4)の形態では、上述したシェル層形成工程後の表層へのフェノール樹脂層の形成を経て、最終生成物としてのアミノ樹脂架橋粒子が得られる。また、上述した(1)+(3)の形態においても、アミノ化合物−フェノール化合物−ホルムアルデヒド共縮合物の均一組成を有するアミノ樹脂架橋粒子の表層へのフェノール樹脂層の形成を経て、最終生成物としてのアミノ樹脂架橋粒子が得られる。
【0126】
これらの形態におけるフェノール樹脂層の形成は、上述したシェル層形成工程と同様にして行なうことができ、この際、層形成のためにホルムアルデヒドと縮合させるための化合物として、アミノ化合物(およびフェノール化合物)に代えてフェノール化合物を用いるように変更すればよい。
【0127】
[アミノ樹脂架橋粒子の好ましい物性]
以下、上述した製造方法により得られるアミノ樹脂架橋粒子の好ましい形態をより詳細に説明する。
【0128】
得られるアミノ樹脂架橋粒子において、粒子径の変動係数(CV値)は、30%以下であることが好ましい。アミノ樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数(CV値)としては、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。なお、本発明において、アミノ樹脂架橋粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、後述する平均粒子径Dの測定方法に従って求めた平均粒子径D並びに同様の方法で測定される粒子径の標準偏差を用いて、下記式により求められる。
【0129】
【数2】

【0130】
得られるアミノ樹脂架橋粒子の好ましい平均粒子径Dは、0.05〜100μmの範囲である。アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径Dとしては、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.15μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上である。一方、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下、なかでも3μm以下が好ましい。なお、本発明においては、アミノ樹脂架橋粒子の平均粒子径Dは、粒子総個数が200個前後になるようにSEM写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径をノギスにて計測し、個数平均値を平均粒子径とする。なお、粒子は略球状であるため、撮影された写真の粒子(断面)の最大長を計測し、直径とする。
【0131】
得られるアミノ樹脂架橋粒子の水分含有量は、好ましくは0.1〜3質量%である。さらに好ましくは2.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。粒子の水分含有量がこれらの範囲内の値であると、特定用途におけるバインダー樹脂への分散性に優れる。
【0132】
アミノ樹脂架橋粒子の水分含有量は、解砕後の粉体(アミノ樹脂架橋粒子)1gをカールフィッシャー法にて定量し、得られた水分量の百分率を水分含有量(質量%)とする。
【0133】
得られるアミノ樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、好ましくは10%未満であり、より好ましくは7%以下である。さらに好ましくは6%以下、特に好ましくは5%以下である。また下限値は1%以上であることが好ましい。粒子の飽和吸湿量がこれらの範囲内の値であると、特定用途におけるバインダー樹脂へ分散させた後の耐吸湿性に優れる。
【0134】
アミノ樹脂架橋粒子の飽和吸湿量は、解砕後の粉体(アミノ樹脂架橋粒子)を温度30℃、湿度90%RHの雰囲気下で1日放置した後、上述した水分含有量と同様にして水分測定を行い、得られた水分量の百分率を飽和吸湿量(%)とする。
【0135】
得られるアミノ樹脂架橋粒子は、各種用途に好適に使用されうる。本発明の製造方法により得られるアミノ樹脂架橋粒子は、例えば、下記の用途に用いられうるが、これらに限定されるわけではない。
【0136】
液晶ディスプレイ(LCD)などの表示素子用の光拡散板、光拡散フィルム用の光拡散剤、防眩フィルム用の光拡散剤等の光学樹脂用の光拡散剤、あるいはLED照明用カバー等に用いられる光拡散剤;
PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PEN(ポリエチレンナフタレート)フィルム、PP(ポリプロピレン)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルムなど各種高分子フィルムのアンチブロッキング剤、滑剤;
液晶ディスプレイ(LCD)用スペーサ;
各種電子部品間の接合、接着における隙間距離保持剤;
つや消し剤、
電子写真トナー用外添剤、など。
【0137】
なお、本発明の製造方法により得られるアミノ樹脂架橋粒子が各種用途に用いられる場合には、粒子がそのまま用いられてもよいし、それぞれの用途に適した添加剤や溶媒などと混合されてなる組成物の形態で使用されてもよい。各種用途に応じた添加剤や溶媒等の具体的な種類、それらが添加されてなる組成物における具体的な組成等については特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【実施例】
【0138】
[評価方法]
(1)平均粒子径(コア、成長粒子)
粒子総個数が200個前後になるように走査型電子顕微鏡像(SEM写真)を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径をノギスにて計測し、5回繰り返した個数平均値を平均粒子径とした。なお、粒子は略球状であるため、撮影された写真の粒子(断面)の最大長を計測し、直径とした。
【0139】
(2)変動係数(CV値)(%)
上記(1)の粒子径の測定方法の標準偏差値より下記式によって求めた値を変動係数(CV値)(%)とした。
【0140】
変動係数(CV値)(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
(3)飽和吸湿量(%)
解砕後の粉体1gを温度30℃、湿度90%RHの雰囲気下で1日放置した後、カールフィッシャー法にて水分量を定量し、飽和吸湿量(%)とした。
【0141】
(4)疎水化度(%)
200ccガラスビーカーに水50ccを入れ、その上に解砕後の粉体0.2gを浮かせ、スターラーにて緩やかに撹拌した。その水中にメチルアルコールを仕込んだビュレットを液中に入れて徐々にメチルアルコールを混合し、完全に浮いている粉体が沈んだときのメチルアルコールの投入量から、下記式を用いて疎水化度(%)を求めた。
【0142】
【数3】

【0143】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、フェノール40質量部(以下、「PhOH」ともいう。)、ベンゾグアナミン(以下、「BG」ともいう。)20質量部、メラミン(以下、「Me」ともいう。)40質量部、37質量%ホルマリン194質量部、10質量%炭酸ナトリウム0.4質量部を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温し、40分間保持した。かかる操作によりフェノール/アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(1)294.4質量部を得た。
【0144】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、固形分濃度65質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ水溶液(花王株式会社製:ネオペレックスG65:以下、「65質量%DBSNa」ともいう。)10質量部、および純水1350質量部を撹拌しながら、70℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0145】
上記の70℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、フェノール/アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(1)294.4質量部を投入して、次いでドデシルベンゼンスルホン酸(以下、「DBS」ともいう。)の2.3質量%水溶液131質量部を加えた。この状態で70℃にて2時間保持した後、さらに1質量%DBS水溶液250質量部を加えた後、90℃に昇温して、5時間保持してフェノール/アミノ共縮合樹脂粒子分散液(1)を得た。
【0146】
上記フェノール/アミノ共縮合樹脂粒子分散液(1)を遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、その上澄みを廃棄し、沈降ケーキのみをパットに取り出した。そのろ過ケーキを190℃の循環型熱風乾燥機に投入し、5時間保持し取り出した後、乾燥粉体を解砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級にて解砕分級を行ない、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P1)を得た。得られた粉体をSEMにて観測したところ、粉体を構成する粒子の平均粒子径1.91μm(CV値:16%)であった。得られた粉体(P1)の評価結果を表1に示す。
【0147】
[実施例2]
上述した実施例1の製造方法において、PhOHを60質量部、BGを20質量部、Meを20質量部、37質量%ホルマリンを219.7質量部に変更してフェノール/アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(2)を調製し、界面活性剤水溶液を調製するための純水を1420質量部に変更したこと以外は同じ手法にて、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P2)を得た。得られた粉体(P2)の評価結果を表1に示す。
【0148】
[実施例3]
上述した実施例1の製造方法において、PhOHを70質量部、BGを10質量部、Meを20質量部、37質量%ホルマリンを226.3質量部に変更してフェノール/アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(3)を調製し、界面活性剤水溶液を調製するための純水を1440質量部に変更したこと以外は同じ手法にて、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P3)を得た。得られた粉体(P3)の評価結果を表1に示す。
【0149】
[実施例4]
(コア(アミノ樹脂粒子)作製)
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、Me100質量部、37質量%ホルマリン193質量部、25質量%アンモニア水3.5質量部を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温し、70℃で30分間保持した。かかる操作によりアミノ樹脂前駆体含有液(4)296.5質量部を得た。
【0150】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた10Lセパラブルフラスコに、固形分濃度65質量%のDBSNa水溶液6.3質量部、および純水1990質量部を撹拌しながら、90℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0151】
上記の90℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、アミノ樹脂前駆体含有液(4)296.5質量部を投入して、次いで10質量%DBS水溶液50質量部を加えた。この状態で90℃にて5時間保持して、メラミン樹脂シード粒子分散液を得た。得られたメラミン樹脂シード粒子分散液中に含まれるメラミン樹脂シード粒子をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.15μm(CV値:12%)であった。
【0152】
(シェル(フェノール/アミノ樹脂)層形成)
PhOH120質量部、Me280質量部、37質量%ホルマリン852質量部、65質量%DBSNa25質量部、DBS20質量部、純水5434質量部を均一に分散混合し、フェノール化合物・メラミン分散液(4)を得た。上記の90℃で攪拌、保持されたメラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部中に、上記のフェノール化合物・メラミン分散液(4)の全量をローラーポンプにて3時間かけて滴下した。滴下後、さらに90℃にて3時間保持した後、室温まで冷却した。
【0153】
以上の手法により、上記コアの表面がPhOHとMeとホルムアルデヒドとの縮合物により被覆されたフェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子を含む、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子分散液(4)(以下、単に「PhOH/Me被覆スラリー」ともいう。)9073.8質量部を得た。
【0154】
(ろ過、乾燥、粉砕工程)
上記PhOH/Me被覆スラリーを遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、その上澄みを廃棄し、沈降ケーキのみをパットに取り出した。そのろ過ケーキを190℃の循環型熱風乾燥機に投入し、5時間保持し取り出した後、乾燥粉体を解砕圧0.7MPa・sのジェットミル分級にて解砕分級を行ない、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P4)を得た。得られた粉体をSEMにて観測したところ、粉体を構成する粒子の平均粒子径0.26μm(CV値:10%)であった。得られた粉体(P4)の評価結果を表1に示す。
【0155】
[実施例5]
上述した実施例4の製造方法において、シェル層形成の際に、フェノール化合物・メラミン分散液(5)に代えて、o−フェニルフェノール(以下、「PhPhOH」ともいう。)120質量部、Me280質量部、37質量%ホルマリン713質量部、65質量%DBSNa25質量部、DBS20質量部、純水5058質量部を均一に混合してなるフェノール化合物・メラミン分散液(5)を用いたこと以外は実施例4と同じ手法にて、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P5)を得た。得られた粉体(P5)の評価結果を表1に示す。
【0156】
[実施例6]
(コア(アミノ樹脂粒子)作製)
上述した実施例4と同じ手法にて、メラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を得た。
【0157】
(シェル層(表層:フェノール樹脂/中層:ベンゾグアナミン樹脂)形成)
BG360質量部、37質量%ホルマリン468質量部、65質量%DBSNa22質量部、DBS18質量部、純水4024質量部を均一に分散混合し、BG分散液(6)を得た。上記のメラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を90℃で攪拌、保持したものに、BG分散液(6)をローラーポンプにて3時間かけて滴下し、その後90℃にて3時間保持して、BG被覆メラミン樹脂粒子分散液(6)を得た。
【0158】
さらに、PhOH40質量部、37質量%ホルマリン104質量部、65質量%DBSNa2.5質量部、DBS2質量部、純水652質量部を均一に分散混合し、PhOH分散液(6)を得た。上記のBG被覆メラミン樹脂粒子分散液(6)7234.8質量部を90℃で攪拌、保持したものに、上記のPhOH分散液(6)をローラーポンプにて1時間かけて滴下し、その後90℃にて3時間保持した。
【0159】
以上の手法により、上記コアの表面が、中層:BG・ホルムアルデヒド縮合物、表層:PhOH・ホルムアルデヒド縮合物で被覆されたフェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子を含む、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子分散液(6)(以下、単に「PhOH/BG被覆スラリー」ともいう。)8035.3質量部を得た。
【0160】
(加圧、ろ過洗浄、乾燥、粉砕工程)
フェノール/アミノ共縮合樹脂粒子分散液(6)の全量を、10Lのオートクレーブに仕込み、撹拌しながら170℃に昇温して5時間保持した後、室温まで冷却した。そのフェノール/アミノ共縮合樹脂粒子分散液(6)を遠心分離機(遠心力:1万G)にて固液分離し、上澄みを廃棄し、沈降ケーキを取り出し、メタノールで固形分濃度10質量%になるように希釈し、均一に分散した後、さらに遠心分離機にて固液分離した。この操作を3回繰り返した後、実施例1と同じ手法の乾燥、粉砕分級を行うことにより、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P6)を得た。得られた粉体をSEMにて観測したところ、粉体を構成する粒子の平均粒子径0.26μm(CV値:8%)であった。得られた粉体(P6)の評価結果を表1に示す。
【0161】
[実施例7]
(コア(アミノ樹脂粒子)作製)
上述した製造例4と同じ手法にて、メラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を得た。
【0162】
(シェル層(表層:フェノール樹脂/中層:ベンゾグアナミン樹脂)形成)
BG280質量部、37質量%ホルマリン364質量部、65質量%DBSNa18質量部、DBS14質量部、純水3001質量部を均一に分散混合し、BG分散液(7)を得た。上記のメラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を90℃で攪拌、保持したものに、BG分散液(7)をローラーポンプにて3時間かけて滴下し、その後90℃にて3時間保持して、BG被覆メラミン樹脂粒子分散液(7)を得た。
【0163】
さらに、PhOH120質量部、37質量%ホルマリン311質量部、65質量%DBSNa7.6質量部、DBS6質量部、純水1956質量部を均一に分散混合し、PhOH分散液(7)を得た。上記のBG被覆メラミン樹脂粒子分散液(7)6019.8質量部を90℃で攪拌、保持したものに、上記のPhOH分散液(7)をローラーポンプにて1時間かけて滴下し、その後90℃にて3時間保持した。
【0164】
以上の手法により、上記コアの表面が、中層:BG・ホルムアルデヒド縮合物、表層:PhOH・ホルムアルデヒド縮合物で被覆されたフェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子分散液(7)(以下、単に「PhOH/BG被覆スラリー」ともいう。)8420.4質量部を得た。
【0165】
(加圧、ろ過洗浄、乾燥、粉砕工程)
上記フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子分散液(7)について、上述した実施例6と同じ手法の加圧、ろ過洗浄、乾燥、粉砕操作を行なうことにより、フェノール/アミノ共縮合樹脂架橋粒子粉体(P7)を得た。得られた粉体をSEMにて観測したところ、粉体を構成する粒子の平均粒子径0.26μm(CV値:8%)であった。得られた粉体(P7)の評価結果を表1に示す。
【0166】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた4つ口の500ccセパラブルフラスコに、BG60質量部、Me40質量部、37質量%ホルマリン165.8質量部、10質量%炭酸ナトリウム0.4質量部を仕込み、撹拌しながら70℃に昇温し、40分間保持した。かかる操作により、アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(A)266.2質量部を得た。
【0167】
別に、撹拌機、還流冷却管および温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、65質量%DBSNa10質量部、および純水1292質量部を撹拌しながら70℃に昇温した均一な界面活性剤水溶液を調製しておいた。
【0168】
上記の70℃の撹拌状態下にある界面活性剤水溶液に、アミノ共縮合樹脂前駆体含有液(A)266.2質量部を投入して、次いで2.3質量%DBS水溶液131質量部を加えた。この状態で70℃にて2時間保持した後、90℃に昇温してさらに5時間保持して、アミノ縮合樹脂粒子分散液(C1)を得た。
【0169】
上記アミノ縮合樹脂粒子分散液(C1)について、実施例1と同じ手法のろ過、乾燥、粉砕操作を行なうことにより、アミノ縮合樹脂架橋粒子粉体(CP1)を得た。得られた粉体をSEMにて観測したところ、粉体を構成する粒子の平均粒子径5.01μm(CV値:15%)であった。得られた粉体(CP1)の評価結果を表1に示す。
【0170】
[比較例2]
実施例4において、コア粒子として得られたメラミン樹脂シード粒子を被覆することなく、同じ手法のろ過・乾燥・粉砕操作を経て、アミノ縮合樹脂架橋粒子粉体(CP2)を得た。得られた粉体(CP2)の評価結果を表1に示す。
【0171】
[比較例3]
(コア(アミノ樹脂粒子)作製)
上述した製造例4と同じ手法にて、メラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を得た。
【0172】
(シェル層(表層:フェノール樹脂/中層:ベンゾグアナミン樹脂)形成)
BG400質量部、37質量%ホルマリン520質量部、65質量%DBSNa25質量部、DBS20質量部、純水4538質量部を均一に分散混合し、BG分散液(C3)を得た。上記のメラミン樹脂シード粒子分散液2342.8質量部を90℃で攪拌、保持したものに、上記のBG分散液(C3)をローラーポンプにて3時間かけて滴下し、その後90℃にて3時間保持して、BG被覆メラミン樹脂粒子分散液(C3)7845.8質量部を得た。得られたBG被覆メラミン樹脂粒子分散液(C3)中に含まれるBG被覆メラミン樹脂粒子をSEMにて観測したところ、平均粒子径0.26μm(CV値:8.1%)であった。
【0173】
(加圧、ろ過洗浄、乾燥、粉砕工程)
上記BG被覆メラミン樹脂粒子分散液(C3)について、上述した実施例6と同じ手法の加圧、ろ過洗浄、乾燥、粉砕操作を行なうことにより、アミノ縮合樹脂架橋粒子粉体(CP3)を得た。得られた粉体(CP3)の評価結果を表1に示す。
【0174】
【表1】

【0175】
[考察]
表1に示す結果から、アミノ樹脂架橋粒子を製造する際にフェノール縮合単位を含ませることで、その含有形態がどのようなものであっても、フェノール縮合単位を含むことのみが異なる条件下で実施例と比較例とを比較すると、フェノール縮合単位を含む場合に粒子の飽和吸湿量が低減されうる(つまり、粒子の耐湿性が向上されうる)ことがわかる。例えば、実施例1〜3と比較例1との比較や、実施例4および5と比較例2との比較、実施例6および7と比較例3との比較により、従来の技術に対する本発明の優位性は明らかである。
【0176】
また、実施例のなかでも、実施例1および2と実施例3との比較から、アミノ樹脂架橋粒子に含ませるフェノール化合物の量を所定値(60質量%)以下とすることにより、粒子径のCV値がより一層低減されるという利点が得られることが示される。これは、上記のような構成とすることによって、粒子の製造時における粒子同士の凝集が効果的に抑制されたことによるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミノ樹脂前駆体を得る工程と、
前記アミノ樹脂前駆体を硬化させてアミノ樹脂架橋粒子を得る工程と、
を含む、アミノ樹脂架橋粒子の製造方法であって、
フェノール化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより、得られた縮合単位を前記アミノ樹脂架橋粒子に含ませることを含む、アミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項2】
アミノ樹脂架橋粒子を構成するアミノ化合物とフェノール化合物との合計100質量%に対する前記フェノール化合物の量が、1〜60質量%である、請求項1に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項3】
前記フェノール化合物が、フェノールまたはo−フェニルフェノールである、請求項1または2に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項4】
コアの外周に、前記コアと異なる組成のシェル層を形成することにより、コアシェル構造を有するアミノ樹脂架橋粒子を得る工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アミノ樹脂前駆体を水系媒体中で界面活性剤と混合し、得られた混合液に触媒を添加して、前記アミノ樹脂前駆体を前記水系媒体中で硬化および粒子化させて析出させることにより、前記アミノ樹脂架橋粒子を得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項6】
前記アミノ樹脂前駆体を水系媒体中で乳化し、得られた乳濁液に触媒を添加して、前記アミノ樹脂前駆体を硬化および粒子化させることにより、前記アミノ樹脂架橋粒子を得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。
【請求項7】
前記アミノ樹脂架橋粒子を前記水系媒体から分離して乾燥し、得られた乾燥物を粉砕し、得られた粉砕物を分級する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアミノ樹脂架橋粒子の製造方法。

【公開番号】特開2012−67182(P2012−67182A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212786(P2010−212786)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】