説明

アミノ酸残基又はペプチド残基を有する化合物、及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、様々な化合物や保持担体に結合可能であり、アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合した構造の新規化合物を提供することである。
【解決手段】以下の一般式(1)で示される化合物を提供する。


[式(1)中、n1は0〜10の整数、n2は1〜50の整数、及びn3は1〜10の整数を示し;m1は0〜100の整数、m2は0〜100の整数、m3は0〜100の整数、m4は0又は1の整数、m5は0〜100の整数、及びm6は0〜100の整数を示し;Y1は、水酸基又はアミノ基を示し;Eは、N又はCHを示し;Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示し;Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸残基又はペプチド残基を有し、該残基の機能性を有効に発現可能な化合物に関する。更に、本発明は、前記化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ酸又はオリゴペプチドには、その種類に応じた様々な有用作用が知られている。例えば、アルギニンやそのオリゴペプチドには、細胞膜を透過する作用があることが知られており、細胞内に目的物質を導入させるための試薬として有用であることが知られている。そして、アミノ酸又はオリゴペプチドを単独で使用するよりも、これらの複数個を結合させた化合物を使用する方が、所望の作用の増強、安全性の向上等の点で有利である場合があることも分かっている。
【0003】
これまでに、本発明者等は、アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合した化合物及びその製造方法を見出し、これらについて特許出願を行っている(国際出願番号PCT/JP2006/308476)。
【0004】
しかしながら、アミノ酸やオリゴペプチドの機能を有効利用する技術分野において、更なる改良技術の開発には枚挙にいとまがなく、アミノ酸やオリゴペプチドを有する化合物において、新たな構造、新たな機能、新たな用途等を開発することが切望されている。特に、様々な化合物や保持担体に容易に結合でき、しかもアミノ酸やオリゴペプチドの機能を有効に発現し得る化合物の開発が望まれている。
【特許文献1】特表平10−502337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、様々な化合物や保持担体に結合可能であり、アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合した構造の新規化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、様々な化合物や保持担体に結合可能であり、アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合しており、官能基が保護基により保護されている新規化合物を提供することを目的とする。更に、本発明は、前記化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の一般式(1)及び(1a)に示す化合物、及びこれらの製造方法を提供する:
項1. 下記一般式(1)で示される化合物:
【0007】
【化1】

【0008】
[式(1)中、n1は0〜10の整数、n2は1〜50の整数、及びn3は1〜10の整数を示し;
m1は0〜100の整数、m2は0〜100の整数、m3は0〜100の整数、m4は0又は1の整数、m5は0〜100の整数、及びm6は0〜100の整数を示し;
Y1は、水酸基又はアミノ基を示し;
Eは、N又はCHを示し;
Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示し;
Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
項2. Lが、チオール基又はカルボキシル基がリンカーを介して結合しているアミノ基である、項1に記載の化合物。
項3. 式(1)中、Rが、アルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基よりなる群から選択されるアミノ酸残基、或いはこれらのアミノ酸残基の少なくとも1種を含むペプチド残基である、項1又は2に記載の化合物。
項4. 式(1)中、Rが、2〜5個のアルギニン残基から構成されるペプチド残基である、項1又は2に記載の化合物。
項5. 式(1)中、n1は0〜2の整数、n2は1〜10の整数、n3は0〜2の整数である、項1乃至4のいずれかに記載の化合物。
項6. 式(1)中、EがNであり、m2が2であり、m3及びm4が1であり、m5が5である、項1乃至5のいずれかに記載の化合物。
項7. 下記一般式(1a)で示される化合物:
【0009】
【化2】

【0010】
[n1〜n3、m1〜m6、E及びRは前記と同じであり、
Y2は固相樹脂を示し;
Xは、保護基X1、水素原子、基−CO-L(Lは前記と同じ)、基−CO-LX1(Lは前記と同じ。LX1はL中の官能基に保護基X1が結合していることを示す。)を示し;
Zは、保護基X1とは異なる保護基Za、又は保護基X1と同一の保護基Zbを示し;
RZとは、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基の官能基に保護基Zが結合していることを示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRZは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
項8. 式(1a)中、Rが、アルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基よりなる群から選択されるアミノ酸残基、或いはこれらのアミノ酸残基の少なくとも1種を含み、アミノ酸残基の総数が2〜20個のペプチド残基である、項7に記載の化合物。
項9. 式(1a)中、2〜5個のアルギニン残基から構成されるペプチド残基である、項7又は8に記載の化合物。
項10. 式(1a)中、n1は0〜2の整数、n2は1〜10の整数、n3は0〜2の整数である、項7乃至9のいずれかに記載の化合物。
項11. 式(1a)中、EがNであり、m2が2であり、m3及びm4が1であり、m5が5である、項7乃至10のいずれかに記載の化合物。
項12. 以下の第1-1工程〜第1-6工程を含む、下記一般式(1)で示される化合物の製造方法:
【0011】
【化3】

【0012】
[式(1)中、n1は0〜10の整数、n2は1〜50の整数、及びn3は1〜10の整数を示し;
m1は0〜100の整数、m2は0〜100の整数、m3は0〜100の整数、m4は0又は1の整数、m5は0〜100の整数、及びm6は0〜100の整数を示し;
Y1は、水酸基又はアミノ基を示し;
Eは、N又はCHを示し;
Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示し;
Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
第1-1工程:下記一般式(I)で示される化合物
【0013】
【化4】

【0014】
[式(I)中、X1は保護基を示し、m6は前記と同じ。]
を、固相樹脂又は固相化合物に縮合させた後、固相樹脂に縮合した化合物の保護基X1の脱離、及び一般式(I)で示される化合物の縮合重合を、n3 −1回実施することにより、下記一般式(i)で示される化合物
【0015】
【化5】

【0016】
[式(i)中、n3、m6及びX1は前記と同じ。Y2は、固相樹脂を示す。]
を得る工程、
第1-2工程:一般式(i)で示される化合物に対して、下記一般式(II)で示される化合物
【0017】
【化6】

【0018】
[式(II)中、m2〜m5、及びX1は前記と同じであり、ZaはX1とは異なる保護基を示す。]
の縮合反応をn2回実施することにより、下記一般式(ii)で示される化合物
【0019】
【化7】

【0020】
[式(ii)中、n2、n3、m2〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第1-3工程: 一般式(ii)で示される化合物に対して、下記一般式(III)で示される化合物
【0021】
【化8】

【0022】
[式(III)中、m1及びX1は前記と同じ。]
の縮合反応をn1回実施することにより、下記一般式(iii)で示される化合物
【0023】
【化9】

【0024】
[式(iii)中、n1〜n3、m1〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第1-4工程: 一般式(iii)で示される化合物の保護基X1を脱離させた後に、当該保護基Xが脱離されたアミノ基と、化合物X1L-COOH[X1及びLは前記と同じであり、X1Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)であって、保護基X1で保護された官能基がリンカーを介して結合しているアミノ基を示す]とを縮合反応させることにより、下記一般式(iv)で示される化合物を得る工程、
【0025】
【化10】

【0026】
[式(iv)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、Za及びY2は前記と同じ。]
第1-5工程: 一般式(iv)で示される化合物に対して、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸の縮合反応を1〜100回実施することにより、下記一般式(v)で示される化合物
【0027】
【化11】

【0028】
[式(iv)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、RZa及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、及び
第1-6工程: 一般式(v)で示される化合物から、固相樹脂を切り離して末端に−COOH又は−CONHを形成させると共に、保護基X1及びZaを脱離させて、一般式(1)で示される化合物を得る工程。
項13. 以下の第3-1工程〜第3-5工程を含む、下記一般式(1a)で示される化合物の製造方法:
【0029】
【化12】

【0030】
[n1〜n3、m1〜m6、E及びRは前記と同じであり、
Y2は固相樹脂を示し;
Xは、保護基X1、水素原子、基−CO-L(Lは前記と同じ)、基−CO-LX1(Lは前記と同じ。LX1はL中の官能基に保護基X1が結合していることを示す。)を示し;
Zは、保護基X1とは異なる保護基Za、又は保護基X1と同一の保護基Zbを示し;
RZとは、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基の官能基に保護基Zが結合していることを示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRZは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
第3-1工程:下記一般式(I)で示される化合物
【0031】
【化13】

【0032】
[式(I)中、X1及びm6は前記と同じ。]
を、アミノ基を有する固相樹脂に縮合重合させた後、固相樹脂に縮合重合した化合物の保護基X1の脱離、及び一般式(I)で示される化合物の縮合重合をn3 −1回実施することにより、下記一般式(i)で示される化合物
【0033】
【化14】

【0034】
[式(i)中、n3、m6、X1及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-2工程:一般式(i)で示される化合物に対して、下記一般式(II)で示される化合物
【0035】
【化15】

【0036】
[式(II)中、m2〜m5、X1及びZaは前記と同じである。]
の縮合反応をn2回実施することにより、下記一般式(ii)で示される化合物
【0037】
【化16】

【0038】
[式(ii)中、n2、n3、m2〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-3工程:一般式(ii)で示される化合物に対して、下記一般式(III)で示される化合物
【0039】
【化17】

【0040】
[式(III)中、m1及びX1は前記と同じ。]
の縮合反応をn1回実施することにより、下記一般式(iii)で示される化合物
【0041】
【化18】

【0042】
[式(iii)中、n1〜n3、m1〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-4工程: 一般式(iii)で示される化合物の保護基X1を脱離させ、化合物X-OH[Xは前記と同じ。]を縮合させることにより、下記一般式(iv-a)で示される化合物を得る工程、
【0043】
【化19】

【0044】
[式(iv-a)中、n1〜n3、m1〜m6、X、Za及びY2は前記と同じ。]
第3-5工程: 一般式(iv-a)で示される化合物に対して、アミノ基に保護基Zを結合させたアミノ酸の縮合反応を1〜100回実施することにより、一般式(1a)で示される化合物を得る工程。
【0045】
以下、本明細書において、「膜透過性」とは、細胞膜を透過する特性のことをさす。
【発明の効果】
【0046】
本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物は、側鎖にアミノ酸又はオリゴペプチドを有しており、これらのアミノ酸又はオリゴペプチドに基づく有用活性を一層効果的に発揮できる。特に、一般式(1)で示される化合物において、アルギニン、リジン、及びセリンよりなる群から選択されるアミノ酸又はこれらのアミノ酸を含むオリゴペプチドを備えることによって、膜透過機能を効果的に発揮することができる。
【0047】
更に、本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物は、アミノ酸、PNA(ペプチド核酸)オリゴマー、PNAモノマー、人工核酸、ペプチド、脂質、脂肪酸、糖質、たんぱく質、糖鎖、核酸、酵素、抗体、蛍光標識化合物、生理活性物質、薬理活性物質等の標的化合物、或いはマイクロビーズ、磁気ビーズ、ナノビーズ等の保持担体と簡便に結合することができる。従って、本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物は、上記標的化合物や保持担体と結合することにより、上記標的化合物や保持担体に対して、膜透過性等のアミノ酸又はオリゴペプチドに基づく有用活性を付与することができる。
【0048】
更に、本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物は、側鎖部分が分岐型構造を有しており、そのため生体内分子認識を受けにくい。このような利点から、(i)代謝を受けにくい基材として長時間持続的効果を期待できる、(ii)側鎖部分を単に連結して使用すると高い毒性を示す場合であっても、本発明の一般式(1)及び(1a)で示される化合物の構造を採用することによって、その機能は保持したままで毒性を低く押さえる効果が期待できる、等の有用性を享受できるので、本発明の生物学的応用範囲は広いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
1.一般式(1)で示される化合物
アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合した構造の化合物として、以下の一般式(1)で示される化合物を提供する。
【0050】
【化20】

【0051】
式(1)中、n1は、繰返単位Aの数を示し、0〜10の整数、好ましくは0〜5の整数、更に好ましくは0〜2の整数を示す。
【0052】
繰返単位A中、m1は0〜100の整数、好ましくは0〜30の整数、更に好ましくは0〜11の整数を示す。n1が2以上の整数、即ち繰返単位Aが2個以上ある場合、それぞれの繰返単位A同士で、m1は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
また、式(1)中、n2は、繰返単位Bの数を示し、1〜50の整数、好ましくは1〜20の整数、更に好ましくは1〜10の整数を示す。
【0054】
繰返単位B中、m2は0〜100の整数、好ましくは0〜20の整数、更に好ましくは0〜2の整数を示す。m3は0〜100の整数、好ましくは0〜20の整数、更に好ましくは0〜2の整数を示す。m4は0又は1の整数を示す。m5は0〜100の整数、好ましくは0〜30の整数、更に好ましくは0〜11の整数を示す。
【0055】
また、繰返単位B中、Eは、N又はCHを示す。繰返単位Bにおいて、EがNの場合、m2が0〜2、好ましくは2であり;m3が0〜1、好ましくは1であり;m4が1であり;m5が0〜11、好ましくは5である化合物が好適に例示される。また、繰返単位Bにおいて、EがCHの場合、m2が0〜2、好ましくは0であり;m3が0〜1、好ましくは0であり;m4が0であり;m5が0〜11、好ましくは5である化合物が好適に例示される。
【0056】
繰返単位B中、Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示す。Rの内、アミノ酸残基としては、天然アミノ酸残基又は非天然アミノ酸残基のいずれであってもよく、特に制限されるものではないが、αアミノ酸が好適である。一般式(1)で示される化合物に膜透過性を備えさせるという観点から、好ましくはアルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基であり、更に好ましくはアルギニン残基である。
【0057】
また、Rの内、ペプチド残基についても、2〜100個のアミノ酸残基からなるものであれば、その構成アミノ酸残基の種類については特に制限されない。該ペプチド残基の一例として、一般式(1)で示される化合物に膜透過性を備えさせるという観点から、アルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基よりなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸残基を含むペプチド残基;好ましくはアルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基のみを構成アミノ酸残基とするペプチド残基;特に好ましくはアルギニン残基及び/又はリジン残基のみを構成アミノ酸残基とするペプチド残基が例示される。
【0058】
また、該ペプチド残基において、リジン残基を構成アミノ酸残基として含む場合、リジンのα位又はε位のアミノ基の何れか一方、又はその双方のアミノ基が、隣接するアミノ酸のカルボキシル基とペプチド結合を構成することができる。
【0059】
ペプチド残基を構成するアミノ酸残基の数としては、好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜20、より好ましくは2〜5、特に好ましくは2〜3が挙げられる。
【0060】
Rの好ましい形態の一例として、2〜5つのアルギニン残基からなるペプチド残基、特に好ましい例として、3つのアルギニン残基からなるトリアルギニン残基が例示される。このようなペプチド残基を有することによって、一般式(1)で示される化合物が一層優れた膜透過性を備えることが可能になる。
【0061】
繰返単位Bにおいて、アミノ酸残基又はペプチド残基は、C末端側の構成アミノ酸のカルボキシル基が、繰返単位の側鎖のアミノ基と脱水縮合した形態で結合している。即ち、Rのアミノ酸残基又はペプチド残基は、アミノ酸又はペプチドのC末端側の構成アミノ酸のカルボキシル基のOHが除かれている基に相当する。
【0062】
繰返単位B中、m2が2以上の整数、即ち繰返単位Bが2個以上ある場合、それぞれの繰返単位B同士で、m2〜m5及びRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
式(1)中、n3は、繰返単位Cの数を示し、0〜10の整数、好ましくは0〜5の整数、更に好ましくは0〜2の整数を示す。
【0064】
繰返単位C中、m6は0〜100の整数、好ましくは0〜30の整数、更に好ましくは0〜11の整数を示す。n3が2以上の整数、即ち繰返単位Cが2個以上ある場合、それぞれの繰返単位C同士で、m6は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
式(1)におけるn1〜n3の具体例として、n1が0〜2の整数、n2が1〜10の整数、且つn3が0〜2の整数、特に好ましくは、n1が1又は2の整数、n2が4〜6の整数、且つn3が1又は2の整数が例示される。
【0066】
式(1)において、Y1は、水酸基又はアミノ基を示す。
【0067】
式(1)において、Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示す。
【0068】
ここで、L中の官能基の内、ペプチド結合を形成可能な官能基としては、具体的には、カルボキシル基、マレイミド基、アルデヒド基、スクシンイミド基、ペンタフルオロフェニル基等が例示される。また、ジスルフィド結合を形成可能な官能基としては、チオール基が例示される。また、ビオチンアビジン結合を形成可能な官能基としては、ビオチン残基、及びアビジン残基が例示される。L中の官能基として、好ましくはカルボキシル基及びチオール基、更に好ましくはチオール基が例示される。
【0069】
また、Lの中で、上記官能基とアミノ基を結合させているリンカーとしては、特に限定されるものではないが、一例として、以下の(a)及び(b)に示す構造のものが例示される。
【0070】
【化21】

【0071】
iは1〜20、好ましくは1〜8の整数、jは1〜1000、好ましくは1〜21の整数を示す。
【0072】
また、L中の官能基がカルボキシル基の場合には、当該Lとしてアミノ酸残基、即ち、アミノ酸のアミノ基から1つの水素原子が除去されている基であってもよい。また、L中の官能基がチオール基の場合には、リンカーとして−CH2CHNH2CO−を介してアミノ基に結合しているもの、即ち、Lが基HS-CH2CHNH2CO−NH−であってもよい。
【0073】
式(1)において、Lの好適な一例として、基HS−(CH2)i−NH−、基HOOC−(CH2)i−NH−(j及びiは前記と同じ)が挙げられる。
【0074】
一般式(1)で示される化合物は、上記Lを有することによって、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基を有する他の化合物や保持担体等と結合して、複合体を形成することができる。例えば、L中の官能基がペプチド結合を形成可能なものである場合には、一般式(1)の化合物は、ペプチド結合を形成可能な官能基を有する他の化合物又は保持担体と縮合反応により、結合することが可能になる。また、L中の官能基がチオール基である場合には、一般式(1)の化合物は、チオール基を有する他の化合物又は保持担体とジスルフィド結合により、結合することが可能になる。また、L中の官能基がビオチン残基である場合には、一般式(1)の化合物は、アビジン残基を有する他の化合物又は保持担体とビオチンアビジン結合により、結合することができる。更に、L中の官能基がアビジン残基である場合には、一般式(1)の化合物は、ビオチン残基を有する他の化合物又は保持担体とビオチンアビジン結合により、結合することができる。
【0075】
一般式(1)で示される化合物の結合対象となる標的化合物及び保持担体としては、一般式(1)で示される化合物中のLの種類によっても異なり一律に規定することはできないが、具体例として、アミノ酸、PNA(ペプチド核酸)オリゴマー、PNAモノマー、人工核酸、ペプチド、脂質、脂肪酸、糖質、糖鎖、たんぱく質、核酸、酵素、抗体、蛍光標識化合物、生理活性物質、薬理活性物質等の標的化合物、或いはマイクロビーズ、磁気ビーズ、ナノビーズ等の保持担体を挙げることができる。
【0076】
2.一般式(1a)で示される化合物
アミノ酸又はオリゴペプチドを有する側鎖が主鎖に結合した構造の化合物として、更に、以下の一般式(1a)で示される化合物を提供する。
【0077】
【化22】

【0078】
式(1a)中、n1〜n3、m1〜m6、E及びRは前記と同様である。
【0079】
式(1a)中、Y2は固相樹脂を示す。ここで、固相樹脂としては、ペプチド固相合成において一般的に使用されている固相合成用樹脂を広く使用することができる。具体的には、アミノ基を有する固相樹脂が挙げられ、より具体的には、MBHA(メチルベンジドリルアミン樹脂)、PAL(ペプチドアミドリンカー)、Oxime(P−ニトロベンゾフェノンオキシム)、PAM(4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂)、Wang(オキシメチルフェノキシメチル樹脂)、Merrifield樹脂等が例示される。これらの中でも、好ましくはMBHA及びPALが挙げられる。
【0080】
一般式(1a)で示される化合物では、Y2である固相樹脂のアミノ基が、構成単位Cと結合している。
【0081】
式(1a)中、Xは、保護基X1、水素原子、基−CO-L(Lは前記と同じ)、基−CO-LX1((Lは前記と同じ。LX1はL中の官能基に保護基X1が結合していることを示す。)を示す。ここで、保護基とは、一般式(1a)で示される化合物を構成している特定の領域における官能基を、当該化合物の他の構成領域における酸化、還元、加水分解、縮合などによる反応による影響を受けないように保護している基であって、所定の条件下において脱離して水素原子や水酸基に置換可能な基のことを指す。
【0082】
式(1a)において、Xとして、好ましくは保護基X1が挙げられる。
【0083】
また、式(1a)中、保護基Zは、保護基X1とは異なる保護基(保護基Zaと表記する)、又は保護基X1と同一の保護基(保護基Zbと表記する)を示す。
【0084】
式(1a)において、保護基としては、具体的には、ターシャリーブトキシカルボニル基(Boc基)又は9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)が代表的に例示されるが、これら以外にも以下に示す保護基が例示される。Xが保護基X1である場合、当該保護基X1として、好ましくはBoc基又はFmoc基である。保護基Zとして、好ましくは、保護基Xとは異なる保護基(保護基Za)である。
【0085】
【化23】

【0086】
特に、保護基X1が、Boc基又はFmoc基の場合であれば、保護基Zは以下に示すAloc基であることが望ましい。
【0087】
【化24】

【0088】
式(1a)中、RZとは、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基の官能基に保護基Zが結合していることを示す。なお、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基において、官能基が2以上存在する場合には、それぞれの官能基に結合している保護基Zは、それぞれ同一の保護基であってもよく、異なる種類の保護基であってもよい。アミノ酸残基又はペプチド残基の官能基としては、アミノ基、カルボキシル基、グアニジル基、イミダゾール基、チオール基等が例示される。
【0089】
また、n2が2以上の整数、即ち繰返単位Bが2個以上ある場合、それぞれの繰返単位B同士で、RZは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0090】
一般式(1a)で示される化合物の固相樹脂Y2を除去することにより、カルボキシル基を遊離させた後、これをアミノ基又は水酸基を有する標的化合物や保持担体等と縮合反応をさせることにより、固相樹脂Y2が除去された一般式(1a)で示される化合物を標的化合物や保持担体等に容易に結合させることが可能になる。ここで、一般式(1a)で示される化合物において、固相樹脂Y2を除去する方法については、当該固相樹脂の種類に応じて、当業界で一般的に採用されている条件を採用できる。固相樹脂Y2が除去された一般式(1a)で示される化合物と、アミノ基又は水酸基を有する標的化合物又は保持担体との縮合反応は、一般的にペプチド合成やDNAやRNAの合成に使用されている固相合成法を使用する必要が無く、液相中で簡便に行うことができるという点で利点がある。
【0091】
一般式(1a)で示される化合物の結合対象となる標的化合物及び保持担体としては、アミノ基又は水酸基を有している限り特に限定されないが、具体例として、アミノ酸、PNA(ペプチド核酸)オリゴマー、PNAモノマー、人工核酸、ペプチド、脂質、脂肪酸、糖質、糖鎖、たんぱく質、核酸、酵素、酵素、蛍光標識化合物、生理活性物質、薬理活性物質等の標的化合物、或いはマイクロビーズ、磁気ビーズ、ナノビーズ等の保持担体等を挙げることができる。
【0092】
3.一般式(1)で示される化合物の製造方法
一般式(1)で示される化合物の第1の製造方法として、以下に示す第1-1工程〜第1-6工程を順次実施する方法が挙げられる。第1-1工程〜第1-6工程について、工程毎に詳述する。
【0093】
第1-1工程
第1-1工程では、下記一般式(I)で示される化合物と、固相樹脂Y2を用いて、一般式(i)で示される化合物を合成する。
【0094】
【化25】

【0095】
[式(I)中、X1は保護基を示し、m6は前記と同じ。]
【0096】
【化26】

【0097】
[式(i)中、n3、m6、X1及びY2は前記と同じ。]
一般式(I)で示される化合物は、公知化合物又は公知の製造方法に準じて製造される化合物である。
【0098】
まず、上記一般式(I)で示される化合物を、固相樹脂Y2と縮合反応させる。
【0099】
一般式(I)で示される化合物と、固相樹脂Y2との縮合反応は、一般式(I)で示される化合物1モルに対して、固相樹脂Y2を通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜10モル混合して行なわれる。
【0100】
一般式(I)で示される化合物と、固相樹脂Y2との縮合反応は、通常、適当な溶媒中で行われる。溶媒としては、反応を阻害しない溶媒であれば公知のものを広く使用できる。このような溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
【0101】
一般式(I)で示される化合物と固相樹脂Y2との縮合反応は、縮合剤及び反応促進剤を用いて実施することが望ましい。縮合剤としては、例えば、O-(アザベンゾトリアゾル-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)、O-(ベンゾトリアゾル-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HBTU)、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などが挙げられる。縮合剤として、好ましくはHATUが好適に使用される。また、反応促進剤としては、例えば、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン(TEA)等が挙げられる。反応促進剤として、好ましくはDIEAである。
【0102】
縮合剤の使用量は、固相樹脂Y21モルに対して、縮合剤が総量で通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜10モルとするのがよい。
【0103】
また、上記反応促進剤の使用量は、固相樹脂Y21モルに対して、縮合剤が総量で通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜10モルとするのがよい。
【0104】
一般式(I)で示される化合物と、固相樹脂Y2との縮合反応は、通常5〜80℃、好ましくは10〜30℃で、0.1〜48時間、好ましくは0.1〜1時間、必要に応じて撹拌することにより行われる。
【0105】
斯くして、固相樹脂Y2に1個の一般式(I)で示される化合物を縮合させた下記構造の化合物を得ることができる。以下、固相樹脂に結合した状態の化合物を固相結合化合物と表記する。
【0106】
【化27】

【0107】
斯くして得られた固相結合化合物の保護基X1の脱離を行う。固相結合化合物の保護基X1の脱離は、保護基X1の種類に応じた方法を適宜採用して実施される。例えば、保護基X1がBoc基である場合、TFA(トリフルオロ酢酸)溶液(95容量% TFA/5容量% m−cresol)中で10〜30℃で0.1〜1時間処理する方法が例示される。また、保護基X1がFmoc基である場合、ピペリジン溶液(20容量% ピペリジン/80容量%DMF)中で10〜30℃で0.01〜0.5時間処理する方法が例示される。更に、保護基X1がAllocである場合、Pd(PPh3)4(テトラキスートリフェニルフォスフィン パラジウム錯体、312 mg)溶液(55容量%クロロホルム/30容量%酢酸/15容量%N-methylmorphorine)中で10〜30℃で0.1〜1時間処理する方法が例示される。
【0108】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(I)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応の条件等は、固相樹脂と固相結合化合物とを置き換える以外は、上記の縮合反応と同様である。
【0109】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離反応、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(I)で示される化合物の縮合反応を、n3 −1回繰り返し実施することにより、一般式(i)で示される化合物が得られる。
【0110】
第1-2工程
第1-2工程では、第1-1工程で得られた一般式(i)で示される化合物と、下記の一般式(II)で示される化合物を用いて、下記の一般式(ii)で示される化合物を合成する。
【0111】
【化28】

【0112】
式(II)中、m2〜m5、X1及びZaは前記と同じである。また、一般式(II)で示される化合物は、公知化合物又は公知の製造方法に準じて製造される化合物である。
【0113】
【化29】

【0114】
式(ii)中、n2、n3、m2〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じである。
【0115】
第2工程では、まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-1工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0116】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II)で示される化合物の縮合反応を実施する。
【0117】
保護基X1を脱離した固相結合化合物と下記一般式(II)で示される化合物の縮合反応は、上記第1-1工程の縮合反応と同様の条件が採用できる。具体的には、上記第1-1工程の縮合反応条件において、固相樹脂を固相結合化合物に置き換え、更に一般式(I)で示される化合物を一般式(II)で示される化合物に置き換えることにより、第1-2工程の縮合反応が実施される。
【0118】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離反応、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II)で示される化合物の縮合反応を、合計n2回実施することにより、一般式(ii)で示される化合物が得られる。
【0119】
第1-3工程
第1-3工程では、第1-2工程で得られた一般式(ii)で示される化合物と、下記の一般式(III)で示される化合物を用いて、下記の一般式(iii)で示される化合物を合成する。
【0120】
【化30】

【0121】
式(III)中、m1及びX1は前記と同じである。一般式(III)で示される化合物は、公知化合物又は公知の製造方法に準じて製造される化合物である。
【0122】
【化31】

【0123】
式(iii)中、n1〜n3、m1〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じである。
【0124】
第1-3工程では、まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0125】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を実施する。
【0126】
保護基X1を脱離した固相結合化合物と下記一般式(III)で示される化合物の縮合反応は、上記第1-1工程の縮合反応と同様の条件が採用できる。具体的には、上記第1-1工程の縮合反応条件において、固相樹脂を固相結合化合物に置き換え、更に一般式(I)で示される化合物を一般式(III)で示される化合物に置き換えることにより、第1-3工程の縮合反応が実施される。
【0127】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離反応、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を、合計n3回実施することにより、一般式(iii)で示される化合物が得られる。
【0128】
第1-4工程
第1-4工程では、第1-3工程で得られた一般式(iii)で示される化合物と、化合物X1L-COOH[X1及びLは前記と同じであり、X1Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)であって、保護基X1で保護された官能基がリンカーを介して結合しているアミノ基を示す]とを用いて、下記の一般式(iv)で示される化合物を合成する。
【0129】
【化32】

【0130】
式(iv)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、Za及びY2は前記と同じである。
【0131】
なお、化合物X1L-COOHは、公知化合物又は公知の製造方法に準じて製造される化合物である。
【0132】
第1-4工程では、まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0133】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と化合物X1L-COOHの縮合反応を実施する。
【0134】
保護基X1を脱離した固相結合化合物と化合物X1L-COOHの縮合反応は、上記第1-1工程の縮合反応と同様の条件が採用できる。具体的には、上記第1-1工程の縮合反応条件において、固相樹脂を固相結合化合物に置き換え、更に一般式(I)で示される化合物を化合物X1L-COOHに置き換えることにより、第1-4工程の縮合反応が実施される。
【0135】
第1-5工程
第1-5工程では、第1-4工程で得られた一般式(iv)で示される化合物と、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸を用いて、下記の一般式(v)で示される化合物を合成する。
【0136】
【化33】

【0137】
式(v)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、RZa及びY2は前記と同じである。
【0138】
また、本工程に使用される上記のアミノ酸は、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaが結合していればよい。
【0139】
例えば、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基及びアミノ基以外に官能基がないアミノ酸の場合、α位の炭素原子に結合したアミノ基に保護基Zaが結合していればよい。
【0140】
また、例えば、リジン、アルギニン、セリン等のように、α位の炭素原子以外に官能基が結合しているアミノ酸の場合、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の全ての官能基に保護基Zaが結合していればよい。この場合、α位の炭素原子に結合したアミノ基の保護基Zaと、α位の炭素原子以外の部位に結合した官能基の保護基Zaは、それぞれ異なる種類の保護基であることが望ましい。このように、上記アミノ酸に2以上の保護基Zbがある場合に、それぞれ異なる種類のものを採用することにより、縮合反応に使用するアミノ基に結合した保護基Zaのみを選択的に脱離させ、他の官能基に結合した保護基Zaは残存させた状態にすることが可能になる。
【0141】
第1-5工程では、まず、固相結合化合物において縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaの脱離反応を行う。保護基Zaの脱離を行う方法は、前記第1-1工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0142】
次いで、上記のようにして保護基Zaを脱離した固相結合化合物と、上記アミノ酸の縮合反応を実施する。
【0143】
保護基Zaを脱離した固相結合化合物と上記アミノ酸の縮合反応は、上記第1-1工程の縮合反応と同様の条件が採用できる。具体的には、上記第1-1工程の縮合反応条件において、固相樹脂を固相結合化合物に置き換え、更に一般式(I)で示される化合物を上記アミノ酸に置き換えることにより、第1-5工程の縮合反応が実施される。
【0144】
上記した固相結合化合物の保護基Zaの脱離反応、及び保護基Zaを脱離した固相結合化合物と上記アミノ酸の縮合反応を、1〜100回繰り返し実施することにより、一般式(v)で示される化合物が得られる。例えば、上記保護基Zaの脱離及び縮合反応を1回実施すると、Rがアミノ酸残基の化合物が合成され、また、例えば、上記保護基Zaの脱離及び縮合反応を3回実施すると、Rが3個のアミノ酸残基からなるペプチド残基の化合物が合成される。
【0145】
第1-6工程
次いで、第1-5工程で得られた一般式(v)で示される化合物から、固相樹脂を切り離して末端に−COOH又は−CONH2を形成させると共に、保護基X1及びZaを脱離させて水素原子と置換する。また、必要に応じて、一般式(1)で示される化合物の繰返単位Aの末端アミノ基に、脂質基を有する基、脂肪酸残基を有する基、又は蛍光性基を有する基を結合させる。斯くして、一般式(1)で示される化合物が合成される。
【0146】
例えば、固相樹脂又は固相化合物として、Merrifield樹脂を用いている場合には、超強酸性条件下に晒すことにより、Y1が水酸基である一般式(1)で示される化合物を得ることができる。また、例えば、固相樹脂として、MBHA樹脂レジンを用いている場合には、超強酸性条件下に晒すことにより、Y1がアミノ基である一般式(1)で示される化合物を得ることができる。
【0147】
更に、一般式(1)で示される化合物の第2の製造方法として、以下に示す第2-1工程〜第2-6工程を順次実施する方法が挙げられる。第2-1工程〜第2-6工程について、工程毎に詳述する。
【0148】
第2-1工程
第2-1工程では、前記一般式(I)で示される化合物固相樹脂又は固相化合物を用いて、一般式(i)で示される化合物を合成する。
【0149】
まず、前記一般式(I)で示される化合物を、固相樹脂又は固相化合物に縮合させて固相結合化合物を得た後、当該固相結合化合物の保護基Xの脱離反応を行う。保護基Xの脱離は、上記第1-1工程の場合と同様の条件で実施される。
【0150】
次いで、保護基Xを脱離した固相結合化合物と一般式(I)で示される化合物の縮合反応をn3−1回繰り返し実施する実施する。当該縮合反応は、上記第1-1工程の場合と同様の条件で実施される。斯くして、一般式(i)で示される化合物を得ることができる。
【0151】
第2-2工程
第2-2工程では、前記一般式(II)で示される化合物、及びα位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸を用いて、下記一般式(II')で示される化合物を合成する。
【0152】
【化34】

【0153】
式(II')中、m2〜m5、E、X1及びRZaは前記と同じである。
【0154】
本第2-2工程において、一般式(II)で示される化合物のカルボキシル基は、X1及びZbとは異なる保護基で保護しておくことが望ましい。
【0155】
まず、一般式(II)で示される化合物の保護基Zaの脱離を行う。保護基Zaの脱離は、上記第1-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0156】
次いで、保護基Zaを脱離した一般式(II)で示される化合物と、上記アミノ酸の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0157】
上記のように、縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaの脱離反応、及び縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaを脱離した化合物と上記アミノ酸との縮合反応を、合計1〜100回実施することにより、一般式(II')で示される化合物が得られる。
【0158】
第2-3工程
第2-3工程では、第2-1工程で得られた一般式(i)で示される化合物及び第2-2工程で得られた一般式(II')で示される化合物を用いて、下記一般式(ii')で示される化合物を合成する。
【0159】
【化35】

【0160】
式(ii')中、n2、n3、m2〜m6、E、RZa、X1及びY2は前記と同じである。
【0161】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-2工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0162】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II')で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-2工程の場合と同様の条件で実施される。
【0163】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離反応、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II')で示される化合物の縮合反応を、合計n2回実施することにより、一般式(ii')で示される化合物が得られる。
【0164】
第2-4工程
第2-4工程では、第2-3工程で得られた一般式(ii')で示される化合物及び一般式(III)で示される化合物を用いて、下記一般式(iii’)で示される化合物を合成する。
【0165】
【化36】

【0166】
式(iii')中、n1〜n3、m1〜m6、E、RZa、X1及びY2は前記と同じである。
【0167】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-3工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0168】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-3工程の場合と同様の条件で実施される。
【0169】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離反応、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を、合計n1回実施することにより、一般式(iii’)で示される化合物が得られる。
【0170】
第2-5工程
第2-5工程では、第2-4工程で得られた一般式(iii’)で示される化合物及び化合物X1L-COOH[X1Lは前記と同じ]を用いて、下記一般式(iv’)で示される化合物を合成する。
【0171】
【化37】

【0172】
式(iv')中、n1〜n3、m1〜m6、E、RZa、LX1及びY2は前記と同じである。
【0173】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-4工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0174】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と化合物X1L-COOHの縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-4工程の場合と同様の条件で実施される。
【0175】
第2-6工程
次いで、第2-5工程で得られた一般式(iv’)で示される化合物から、固相樹脂を切り離して末端に−COOH又は−CONH2を形成させると共に、保護基X1及びZaを脱離させる。斯くして、一般式(1)で示される化合物が合成される。なお、本第2-6工程は、上記第1-6工程と同様の方法で実施される。
【0176】
4.一般式(1a)で示される化合物の製造方法
一般式(1a)で示される化合物の第1の製造方法として、以下に示す第3-1工程〜第3-5工程を順次実施する方法が挙げられる。以下、第3-1工程〜第3-5工程について、工程毎に詳述する。
【0177】
第3-1工程
第3-1工程では、前記一般式(I)で示される化合物と固相樹脂を用いて、一般式(i)で示される化合物を合成する。
【0178】
一般式(1a)で示される化合物の合成に使用される固相樹脂については、一般式(1a)で示される化合物に含まれる保護基X1及びZの種類に応じて適宜選択される。例えば、一般式(1a)で示される化合物に含まれる保護基X1及びZの一方又は双方がBoc基である場合、固相樹脂としてOxime樹脂又はオキシルベンジルを採用することが望ましい。また、一般式(1a)で示される化合物に含まれる保護基X1及びZの一方又は双方がFmoc基である場合、固相樹脂としてPAM樹脂を採用することが望ましい。
【0179】
まず、一般式(I)で示される化合物を、固相樹脂に縮合させて固相結合化合物を得た後、当該固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離は、上記第1-1工程の場合と同様の条件で実施される。
【0180】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(I)で示される化合物の縮合反応をn3 −1回繰り返し実施する実施する。当該縮合反応は、上記第1-1工程の場合と同様の条件で実施される。斯くして、一般式(i)で示される化合物を得ることができる。
【0181】
第3-2工程
第3-2工程では、第3-1工程で得られた一般式(i)で示される化合物と、一般式(II)で示される化合物を用いて、一般式(ii)で示される化合物を合成する。
【0182】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-2工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0183】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-2工程の場合と同様の条件で実施される。
【0184】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II)で示される化合物の縮合反応を、合計n2回実施することにより、一般式(ii)で示される化合物が得られる。
【0185】
第3-3工程
第3-3工程では、第3-2工程で得られた一般式(ii)で示される化合物と、一般式(III)で示される化合物を用いて、一般式(iii)で示される化合物を合成する。
【0186】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-3工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0187】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-3工程の場合と同様の条件で実施される。
【0188】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を、合計n1回実施することにより、一般式(iii)で示される化合物が得られる。
【0189】
第3-4工程
第3-4工程では、第3-3工程で得られた一般式(iii)で示される化合物と、化合物X-OH[Xは前記と同じ]を用いて、下記一般式(iv-a)で示される化合物を合成する。なお、式(1a)において、Xが保護基X1である場合には、本工程は不要である。
【0190】
【化38】

【0191】
式(iv-a)中、n1〜n3、m1〜m6、E、Za、X及びY2は前記と同じである。
【0192】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-4工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0193】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と、化合物X-OHの縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-4工程の場合と同様の条件で実施される。
【0194】
第3-5工程
第3-5工程では、第3-4工程で得られた一般式(iv-a)で示される化合物と、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸を用いて、一般式(1a)で示される化合物を合成する。
【0195】
第3-5工程で使用されるアミノ酸は、上記第1-5工程で使用されるアミノ酸と同様である。
【0196】
まず、一般式(iv-a)で示される化合物の保護基Zaの脱離を行う。保護基Zaの脱離は、上記第1-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0197】
次いで、保護基Zaを脱離した一般式(iv-a)で示される化合物と上記アミノ酸の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第1-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0198】
上記のように、縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaの脱離反応、及び縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaを脱離した化合物と上記アミノ酸との縮合反応を、合計1〜100回実施することにより、一般式(1a)で示される化合物が得られる。
【0199】
本工程で得られた一般式(1a)で示される化合物には、保護基としてZaが結合している。従って、必要に応じて、保護基Zaを公知の方法に従って、保護基X1と同じ保護基(保護基Zb)に置き換える。
【0200】
更に、一般式(1a)で示される化合物の第2の製造方法として、以下に示す第4-1工程〜第4-5工程を実施する方法が挙げられる。以下、第4-1工程〜第4-5工程について、工程毎に詳述する。
【0201】
第4-1工程
第4-1工程では、前記一般式(I)で示される化合物と固相樹脂又は固相化合物を用いて、一般式(i)で示される化合物を合成する。本第4-1工程は、上記第3-1工程と同様の条件で実施される。
【0202】
第4-2工程
第4-2工程では、前記一般式(II)で示される化合物、及びα位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸を用いて、一般式(II')で示される化合物を合成する。
【0203】
本第1-2工程において使用されるアミノ酸は、上記第3-4工程で使用されるアミノ酸と同様である。
【0204】
まず、一般式(II)で示される化合物の保護基Zaの脱離を行う。保護基Zaの脱離は、上記第3-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0205】
次いで、保護基Zaを脱離した一般式(II)で示される化合物と上記アミノ酸の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第3-5工程の場合と同様の条件で実施される。
【0206】
上記のように、縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaの脱離反応、及び縮合反応に使用されるアミノ基に結合した保護基Zaを脱離させた化合物と上記アミノ酸との縮合反応を、合計1〜100回実施することにより、一般式(II')で示される化合物が得られる。
【0207】
第4-3工程
第4-3工程では、第4-1工程で得られた一般式(i)で示される化合物及び第4-2工程で得られた一般式(II')で示される化合物を用いて、一般式(ii')で示される化合物を合成する。
【0208】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第3-2工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0209】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第3-2工程の場合と同様の条件で実施される。
【0210】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(II')で示される化合物の縮合反応を、合計n2回実施することにより、一般式(ii')で示される化合物が得られる。
【0211】
第4-4工程
第4-4工程では、第4-3工程で得られた一般式(ii')で示される化合物及び一般式(III)で示される化合物を用いて、一般式(iii’)で示される化合物を合成する。
【0212】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第3-3工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0213】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第3-3工程の場合と同様の条件で実施される。
【0214】
上記した固相結合化合物の保護基X1の脱離、及び保護基X1を脱離した固相結合化合物と一般式(III)で示される化合物の縮合反応を、合計n1回実施することにより、一般式(iii’)で示される化合物が得られる。
【0215】
第4-5工程
上記第4-4工程で得られた一般式(iii’)で示される化合物には、保護基としてZaが結合している。従って、必要に応じて、保護基Zaを公知の方法に従って、保護基X1と同じ保護基(保護基Zb)に置き換える。
【0216】
次いで、第4-5工程では、第4-4工程で得られた一般式(iii’)で示される化合物と、化合物X-OH[Xは前記と同じ]を用いて、一般式(1a)で示される化合物を合成する。但し、式(1a)において、Xが保護基X1である場合には、本工程は不要である。
【0217】
まず、固相結合化合物の保護基X1の脱離反応を行う。保護基X1の脱離を行う方法は、前記第1-4工程の場合と同様の条件を採用できる。
【0218】
次いで、保護基X1を脱離した固相結合化合物と、化合物X-OHの縮合反応を実施する。当該縮合反応は、上記第3-4工程の場合と同様の条件で実施される。
【実施例】
【0219】
以下、実施例及び試験例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例及び試験例によって限定されることはない。以下の実施例において、「アミノ酸名(保護基名)」という表記は、アミノ酸の側鎖部分の官能基が保護基で保護されている構造を示す。例えば、「Lys(Fmoc)」という表記は、リジンの側鎖部分のアミノ基がFmoc基で保護されている構造を示す。また、例えば、Arg(Boc)2という表記は、アルギン酸の側鎖部分が2つのBoc基で保護されている構造を示す。
【0220】
実施例1 化合物(1a-1)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-1)を合成した。
【0221】
【化39】

【0222】
以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-1)を合成した。
【0223】
【化40】

【0224】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
1.主鎖部分の合成
主鎖を構成するFmoc-AEG(Alloc-C5)-AEG(Alloc-C5)-AEG(Alloc-C5)-AEG(Alloc-C5)-AEG(Alloc-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH-PAL[化合物(1a-1-vi)]の合成は、標準的固相Fmoc法を用いて実施した。即ち、Fmoc−HN-C5H10−COOH、及び下式(11)で表される化合物(以下、化合物(11)と表記する)を、縮合剤HATUとDIEAに加えたDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、保護基の脱保護(反応工程1)、各種アミノ酸の縮合(反応工程2)、及びキャッピング反応(反応工程3)の3つの工程の繰り返しである。
【0225】
【化41】

【0226】
反応工程1 H2N-PAL [化合物(1a-1-i)]の合成(主鎖方向への伸長反応1:保護基の脱保護)
Fmoc-HN-PAL(5-(4'-Aminomethyl-3',5'-dimethoxyphenoxy)-valeric acid)樹脂(180 mg, 72 μmol)を20%piperidineのDMF溶液2 mLで5分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)及びDCM(ジクロロメタン)で洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることから、化合物(1a-1-i)の生成を確認した。
【0227】
反応工程2 Fmoc-HN-C5H10-CONH-PAL [化合物(1a-1-ii)]の合成(主鎖方向への伸長反応2:各種アミノ酸の縮合)
化合物(1a-1-i)(72 μmol scale)に、Fmoc-HN-C5H10-COOH(305 mg、720 μmol)に、縮合剤HATU(274 mg、720 μmol)とDIEA(126 μL)を加えたDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-1-ii)の生成を確認した。
【0228】
反応工程3 化合物(1a-1-ii)の合成(主鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残レジンをキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLを用いて5分間室温で反応させた後、DMFで残存する樹脂を洗浄した。
【0229】
次いで、Fmoc−HN-C5H10−COOHと化合物(11)を用いて、上記反応工程1〜3を繰り返し実施し、順次固相合成を行うことにより、化合物(1a-1-vi)を合成した。
【0230】
2.側鎖部分の合成
化合物(1a-1)の合成は、Alloc法を用いて実施した。即ち、アミノ酸誘導体Alloc-Arg(Boc)2-OHとBoc-Arg(Boc)2-OHを、それぞれ縮合剤HATUとDIEAに加えたDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、(1)保護基の脱保護、(2)アミノ酸の一括縮合、そして(3)キャッピング反応の3つの工程の繰り返しである。
【0231】
反応工程4 Fmoc-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH-PAL [化合物(1a-1-v)]の合成(側鎖方向への伸長反応1:Alloc基の脱保護)
化合物(1a-1-vi)を、Pd(PPh3)4(tetrakis (triphenylphosphine)palladium(0)) 312 mgのCHCl3/AcOH/N-methylmorphorine溶液(順に2.8 mL, 1.5 mL, 0.75 mL)中で、室温下にて30分間振とう攪拌した。反応液をろ過により除去し、残存する樹脂を洗浄した。これを2回実施し、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることから、化合物(1a-1-v)の生成を確認した。した。
【0232】
反応工程5 Fmoc-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-HN-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-HN-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-NH-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-HN-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-HN-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH -PAL [化合物(1a-1-vi)]の合成(側鎖方向への伸長反応2:アミノ酸の一括縮合)
化合物(1a-1-v)(72 μmol scale)に、Alloc-Arg(Boc)2-OH (495mg、1080 μmol)と縮合剤HATU(410 mg、1080 μmol)とDIEA(188 μL)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、化合物(1a-1-vi)の生成を確認した。
【0233】
反応工程6 化合物(1a-1-vi)の合成(側鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0234】
次いで、Alloc-Arg(Boc)2-OHとBoc-Arg(Boc)2-OHを用いて、上記反応工程4〜6を繰り返し実施して順次固相合成を行うことにより、目的とする化合物(1a-1)を合成した。合成の確認は、ピペリジン処理後によりFmoc基を脱保護した後、TFA処理(95% TFA/5% m−cresol)により、固相担体PALからの切り出しと、Argの保護基Boc基の脱保護を行い、H2N-AEG(Arg-Arg-Arg-HN-C5)-AEG(Arg-Arg-Arg-HN-C5)-AEG(Arg-Arg-Arg-HN-C5)-AEG(Arg-Arg-Arg-HN-C5)-AEG(Arg-Arg-Arg-HN-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH2の存在を確認した。MALDI-TOF MS:calcd.3653.53(M+H+), found 3654.57.
実施例2 化合物(1a-2)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-2)を合成した。
【0235】
【化42】

【0236】
具体的には、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-2)を合成した。
【0237】
【化43】

【0238】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
1.レジンの低力価化
反応工程7 Boc-HN-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-2-ii)]の合成
MBHA(4-Methyl-benzhydrylamine)樹脂(200 mg、120 μmol)を5% DIEA(N,N’-ジイソプロピルアミン)塩化メチレン(DCM)溶液2 mLで15分間振とう攪拌した。DCMで洗浄後、再度5% DIEAのDCM溶液 2 mLで15分間振とう攪拌して、前記溶液をろ過により取り除き、残存する樹脂をDMF及びDCMで洗浄した。
【0239】
斯くして得られた樹脂を、Boc-HN-C10H20-COOH (25.6 mg、85 μmol)、PyBOP(Benzotriazole-1-yl-oxy-trispyrrolidinophosphonium hexafluorophosphate)(41.6 mg、80 μmol)、DIEA (27.2 μL、160 μmol)を溶解したDMF/DCM(1:1)溶液1 mL中、室温窒素気流下にて3時間攪拌させた。ついで、前記DMF/DCM溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄後、キャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLを用いて30分間室温で反応させた後、DMFで残存する樹脂を洗浄し、再度キャッピング試薬2 mLで30分間反応させた。残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄して、化合物(1a-2-ii)を得た。残存する樹脂の一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることを確認し、化合物(1a-2-ii)が生成していることを確認した。
【0240】
2.主鎖部分の合成
主鎖を構成するBoc-HN-C10H20-Lys(Fmoc)-C5-Lys(Fmoc)-C5-Lys(Fmoc)-C5-Lys(Fmoc)-C5-Lys(Fmoc)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-2-v)]の合成は、標準的固相Boc法を用いて実施した。即ち、化合物(1a-2-ii)(80μmol scale)に対し、アミノ酸Boc-Lys(Fmoc)-OH(69.2 mg、125 μmol)、Boc-HN-C5H10-COOH (28.9 mg、125 μmol)、Boc-HN-C10H20-COOH (37.7 mg、125 μmol)に、それぞれ、縮合剤HCTU (49.6 mg、120 μmol)、DIEA (40.8 μL、240 μmol)を加えたDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、保護基の脱保護(反応工程8)、各種アミノ酸の縮合(反応工程9)、及びキャッピング反応(反応工程10)の3つの工程の繰り返しである。
【0241】
反応工程8 H2N-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-2-iii)]の合成(主鎖方向への伸長反応1:保護基の脱保護)
化合物(1a-2-ii)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることから、化合物(1a-2-iii)の生成を確認した。
【0242】
反応工程9 Boc-Lys(Fmoc)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-2-iv)]の合成(主鎖方向への伸長反応2:アミノ酸の縮合)
化合物(1a-2-iii)(80μmol scale)に、Boc-Lys(Fmoc)-OH(69.2 mg、125 μmol)、HCTU (62.4 mg、120 μmol)、DIEA (40.8 μL、240 μmol) を溶解したDMF溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-2-iv)の生成を確認した。
【0243】
反応工程10 化合物(1a-2-iv)の合成(主鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0244】
次いで、Boc-HN-C5H10-COOH、Boc-Lys(Fmoc)-OH、及びBoc-HN-C10H20-COOHを用いて、上記反応工程8〜10を繰り返し実施して順次固相合成を行うことにより、化合物(1a-2-v)を合成した。
【0245】
3.側鎖部分の合成
化合物(1a-2)の合成は、標準的固相Fmoc法を用いて実施した。即ち、アミノ酸Fmoc-Arg(Mts)-OH(340.4 mg、500 μmol)と縮合剤HCTU (198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、保護基の脱保護(反応工程11)、アミノ酸の一括縮合(反応工程12)、及びキャッピング反応(反応工程13)の3つの工程の繰り返しである。
【0246】
反応工程11 Boc-HN-C10H20-Lys(NH2)-C5H10-Lys(NH2)-C5H10-Lys(NH2)-C5H10-Lys(NH2)-C5H10-Lys(NH2)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-2-vi)]の合成(側鎖方向への伸長反応1:保護基の脱保護)
化合物(1a-2-v)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。ついで、反応液をろ過により除去し、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることから、化合物(1a-2-vi)の生成を確認した。
【0247】
反応工程12 Boc-HN-C10H20-Lys(Fmoc-Arg(Mts))-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Mts))-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Mts))-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Mts))-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Mts))- C10H20- CONH-MBHA [化合物(1a-2-vii)]の合成(側鎖方向への伸長反応2:アミノ酸の一括縮合)
化合物(1a-2-vi)(80μmol scale)に、Fmoc-Arg(Mts)-OH (340.4 mg、500 μmol)、HCTU(198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-2-vii)の生成を確認した。
【0248】
反応工程13 化合物(1a-2-vii)の合成(側鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0249】
次いで、Fmoc-Arg(Mts)-OHを用いて、上記反応工程11〜13を繰り返し実施し、順次固相合成を行うことにより、目的とする化合物(1a-2)を合成した。化合物(1a-2)の合成の確認は、ピペリジン処理によりFmoc基を脱保護した後、TFMSA処理(TFA/TFMSA/p-cresol/thioanisol=60/25/10/10)により、固相担体MBHAからの切り出しと、Argの保護基Mts基の脱保護を行い、H2N-C10H20-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C10H20-NH2の存在を確認することにより行った。MALDI-TOF MS:calcd.3820.96(M+H+), found 3820.38.
【0250】
実施例3 化合物(1a-3)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-3)を合成した。
【0251】
【化44】

【0252】
具体的には、上記実施例2中に示す化合物(1a-2-v)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-3)を合成した。
【0253】
【化45】

【0254】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
反応工程14 Boc-HN-C10H20-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-3-i)]の合成(側鎖方向への伸長反応)
化合物(1a-2-v)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。ついで、反応液をろ過により除去し、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることを確認した。残存する樹脂に、Fmoc-Arg(Cbz)2-OH (340.4 mg、500 μmol)、HCTU (198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-3-i)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0255】
反応工程15 Boc-HN-C10H20-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Fmoc-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-3-ii)]の合成(側鎖方向への伸長反応)
化合物(1a-3-i)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。ついで、反応液をろ過により除去し、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることを確認した。残存する樹脂に、Fmoc-Arg(Cbz)2-OH (340.4 mg、500 μmol)、HCTU (198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mLを加えて、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-3-ii)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0256】
反応工程16 Boc-HN-C10H20-Lys(Cbz-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Cbz-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Cbz-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Cbz-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C5H10-Lys(Cbz-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2-Arg(Cbz)2)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-3-iii)]の合成(側鎖方向への伸長反応)
化合物(1a-3-ii)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。ついで、反応液をろ過により除去し、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることを確認した。残存する樹脂に、Cbz-Arg(Cbz)2-OH (340.4 mg、500 μmol)、HCTU (198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-3-iii)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0257】
反応工程17 化合物(1a-3)の合成
化合物(1a-3-iii)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることを確認した。
【0258】
Fmoc-Osu (69.2 mg、125 μmol)とTEA (40.8 μL、240 μmol) を溶解したDMF溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、16の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0259】
化合物(1a-3)の合成の確認は、ピペリジン処理によりFmoc基を脱保護した後、TFMSA処理(TFA/TFMSA/p-cresol/thioanisole=60/25/10/10)により、固相樹脂MBHAからの切り出しと、Argの保護基Cbz基の脱保護を行い、H2N- C10H20-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C5H10-Lys(Arg-Arg-Arg)-C10H20-NH2の存在を確認することにより行った。MALDI-TOF MS:calcd.3820.96(M+H+), found 3820.38.
【0260】
実施例4 化合物(1a-4)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-4)を合成した。
【0261】
【化46】

【0262】
具体的には、上記実施例3中に示す化合物(1a-3-iii)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-4)を合成した。
【0263】
【化47】

【0264】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
反応工程18 化合物(1a-4)の合成
化合物(1a-3-iii)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることを確認した。
【0265】
無水グルタル酸 (69.2 mg、125 μmol)を溶解したピリジン溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記ピリジン溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、化合物(1a-4)の生成を確認した。
【0266】
実施例5 化合物(1a-5)及び化合物(1-1)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-5)及び化合物(1-1)を合成した。
【0267】
【化48】

【0268】
【化49】

【0269】
具体的には、上記実施例3中に示す化合物(1a-2)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-5)及び化合物(1-1)を合成した。
【0270】
【化50】

【0271】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
反応工程19 化合物(1a-5)の合成
化合物(1a-2)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることを確認した。残存する樹脂に、AcS-C5H10-COOH (25.8 mg、61 μmol)に、縮合剤HCTU (31.2 mg、60 μmol)、DIEA (20.4 μL、120 μmol)を溶解したDMF溶液を用いて、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-5)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0272】
反応工程20 化合物(1-1)の合成
化合物(1a-5)の合成が完了した後、まず、側鎖Fmoc基の最終脱保護を実施した。即ち、化合物(1a-5)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。前記反応液をろ過により除去後、残固相樹脂をDMFおよび塩化メチレンで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで、側鎖Fmoc基の最終脱保護を確認した。次いで、残存する樹脂にTFMSA溶液(TFA/TFMSA/p-cresol/thioanisol=60/25/10/10)1 mlを加え、室温遮光下で2 時間処理し、ろ過により前記TFMSA溶液を回収した。残存する樹脂はTFA 1 mlで洗浄し、先の濾液と混ぜた。ろ液を冷ジエチルエーテル(40 ml)に滴下し沈殿物を遠心分離で回収した。残エーテルを取り除き、乾燥後、化合物(1-1)のcrudeサンプルを得た。このcrudeサンプルは、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製した。MALDI-TOF MS:calcd. 3924.07 (M+H+), found 3925.14.
【0273】
実施例6 化合物(1a-6)及び化合物(1-2)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-6)及び化合物(1-2)を合成した。
【0274】
【化51】

【0275】
【化52】

【0276】
具体的には、上記実施例2中に示す化合物(1a-2-ii)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-6)及び化合物(1-2)を合成した。
【0277】
【化53】

【0278】
1.主鎖部分の合成
AcS-C5H10-CONH-C10H20-Lys(Fmoc)-C5H10-Lys(Fmoc)-C5H10-Lys(Fmoc)-C5H10-Lys(Fmoc)- C5H10-Lys(Fmoc)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1-2-iii)]の合成は、標準的固相Boc法を用いて実施した。即ち、アミノ酸Boc-Lys(Fmoc)-OH(25.8 mg、61 μmol)、Boc-HN-C5H10-COOH (25.8 mg、61 μmol)、Boc-HN-C10H20-COOH (25.8 mg、61 μmol) 、AcS-C5H10-OH (25.8 mg、61 μmol)に、それぞれ、縮合剤HCTU (31.2 mg、60 μmol)、DIEA (20.4 μL、120 μmol)を加えたDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、保護基の脱保護(反応工程21)、各種アミノ酸の縮合(反応工程22)、及びキャッピング反応(反応工程23)の3つの工程の繰り返しである。
【0279】
反応工程21 H2N-C10H20-CONH-MBHA[化合物(1-2-i)]の合成(主鎖方向への伸長反応1:保護基の脱保護)
化合物(1a-2-ii)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることから、化合物(1a-6-i)が生成していることを確認した。
【0280】
反応工程22 Boc-Lys(Fmoc)-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-6-ii)]の合成(主鎖方向への伸長反応2:アミノ酸の縮合)
化合物(1-2-i)(80μmol scale)に、Boc-Lys(Fmoc)-OH (69.2 mg、125 μmol)、HCTU (62.4 mg、120 μmol)、DIEA (40.8 μL、240 μmol) を溶解したDMF溶液2 mL中、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで、化合物(1a-6-ii)の生成を確認した。
【0281】
反応工程23 化合物(1a-6-ii)の合成(主鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0282】
次いで、Boc-HN-C5H10-COOH、Boc-Lys(Fmoc)-OH、Boc-HN-C10H20-COOH、及びAcS-C5H10-COOHを用いて、上記反応工程21〜23を繰り返し実施し、順次固相合成を行うことにより、化合物(1a-6-iii)を合成した。
【0283】
2.側鎖部分の合成
反応工程24 AcS-C5H10-CONH-C10H20-Lys(Boc-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Boc-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Boc-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Boc-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Boc-Lys(Fmoc))-C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-6-iv)]の合成(側鎖方向への伸長反応)
化合物(1a-6-iii)(80μmol scale)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。前記反応液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで側鎖Fmoc基の脱保護を確認した。残存する樹脂に、Boc-Lys(Fmoc)-OH (234.3 mg、500 μmol)、HCTU(198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mLを加えて、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-6-iv)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0284】
反応工程25 AcS-C5H10-CONH-C10H20-Lys(Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys(Fmoc))-C5H10-Lys(Fmoc-Lys(Fmoc)-Lys(Fmoc))- C10H20-CONH-MBHA [化合物(1a-6-v)]の合成(側鎖方向への伸長反応)
化合物(1a-6-iv)(80μmol scale)を5% m-クレゾール/TFA 2 mLで30分間攪拌した。前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で担体と溶液が陽性であることから、Boc基の脱保護を確認した。残存する樹脂に、Fmoc-Lys(Fmoc)-OH (295.3 mg、500 μmol)、HCTU(198.6 mg、480 μmol)、DIEA (163.3 μL、960 μmol)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-6-v)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0285】
反応工程26 化合物(1a-6)の合成
化合物(1a-6-v)を20 % ピペリジンDMF溶液 2 ml中で室温下にて、5分間振とう攪拌した。前記反応液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで側鎖Fmoc基の脱保護を確認した。残存する樹脂に、Me2N-C3H6-COOH (223.0 mg、1330 μmol)、HCTU (529.5 mg、1280 μmol)、DIEA (435.5 μL、2560 μmol) を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌した。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることで化合物(1a-6)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0286】
反応工程27 化合物(1-2)の合成
乾燥した化合物(1a-6)にTFMSA溶液(TFMSA/TFA/thioanisol=10/90/1) 1.0 mlを加え、室温遮光下で2 時間処理し、ろ過により前記TFMSA溶液を回収した。残存する樹脂はTFA 1.0 mlで洗浄し、先の濾液と混ぜた。ろ液を冷ジエチルエーテル(40 ml)に滴下し沈殿物を遠心分離で回収した。残エーテルを取り除き、乾燥後化合物(1-2)のcrudeサンプルを得た。このcrudeサンプルは、ODSカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにより精製した。MALDI-TOF MS:calcd. 4587.47 (M+H+), found 4587.37.
【0287】
実施例7 化合物(1a-7)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-7)を合成した。
【0288】
【化54】

【0289】
具体的には、上記実施例1中に示す化合物(1a-1-iii)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-7)を合成した。
【0290】
【化55】

【0291】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
【0292】
化合物(1a-7)の合成は、実施例1中に示す化合物(1a-1-iii)から、Alloc法を用いて実施した。即ち、アミノ酸誘導体Alloc-Lys(Boc)-OHとBoc-Lys(Boc)-OHを、それぞれ縮合剤HATUとDIEAに加えたDMF溶液を用いて逐次伸長反応を行った。この伸長反応は、保護基の脱保護(反応工程28)、アミノ酸の一括縮合(反応工程29)、及びキャッピング反応(反応工程30)の3つの工程の繰り返しである。
【0293】
反応工程28 Fmoc-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-AEG(H2N-C5)-C5H10-CONH-C5H10- CONH -PAL[化合物(1a-7-i)](側鎖方向への伸長反応1:Alloc基の脱保護)
化合物(1a-1-iii)を、Pd(PPh3)4(tetrakis (triphenylphosphine)palladium(0))312 mgのCHCl3/AcOH/N-methylmorphorine溶液(順に2.8 mL, 1.5 mL, 0.75 mL)中で、室温下にて30分間振とう攪拌した。反応液をろ過により除去し、残存する樹脂を洗浄した。これを2回実施し、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることから、化合物(1a-1-iii)の生成を確認した。
【0294】
反応工程29 Fmoc-AEG(Alloc-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Lys(Boc)-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH-PAL [化合物(1a-7-ii)]の合成(側鎖方向への伸長反応2:アミノ酸の一括縮合)
化合物(1a-7-i)(72 μmol scale)に、Alloc-Lys(Boc)-OH (733 mg、1080 μmol)と縮合剤HATU(410 mg、1080 μmol)とDIEA(188 μL)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、化合物(1a-7-ii)の生成を確認した。
【0295】
反応工程30 化合物(1a-7-ii)の合成(側鎖方向への伸長反応3:キャッピング反応)
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0296】
次いで、Alloc-Lys(Boc)-OHとBoc-Lys(Boc)-OHを用いて、上記反応工程28〜30を繰り返し実施し、順次固相合成を行うことにより、目的とする化合物(1a-7)を合成した。化合物(1a-7)の合成の確認は、ピペリジン処理によりFmoc基を脱保護した後、TFA処理(95% TFA/5% m−cresol)により、固相担体PALからの切り出しと、Lysの保護基Boc基の脱保護を行い、H2N-AEG(Lys-Lys-Lys-C5)-AEG(Lys-Lys-Lys-C5)-AEG(Lys-Lys-Lys-C5)-AEG(Lys-Lys-Lys-C5)-AEG(Lys-Lys-Lys-C5)-C5H10-CONH-C5H10-NH2の存在を確認することにより行った。MALDI-TOF MS:calcd.3233.32(M+H), found 3233.60.
実施例8 化合物(1a-8)の合成
以下の一般式で表される化合物(1a-8)を合成した。
【0297】
【化56】

【0298】
具体的には、上記実施例7中に示す化合物(1a-7-ii)を用いて、以下に示す反応工程に従って、化合物(1a-8)を合成した。
【0299】
【化57】

【0300】
合成方法の詳細な条件については、以下の通りである。
反応工程31 Fmoc-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-Lys(Boc)-C5)-AEG(Alloc-Arg(Boc)2-Lys(Boc)-C5)-C5H10-CONH-C5H10-CONH-PAL [化合物(1a-8-i)]の合成
化合物(1a-7-ii)を、Pd(PPh3)4(tetrakis (triphenylphosphine)palladium(0))312 mgのCHCl3/AcOH/N-methylmorphorine溶液(順に2.8 mL, 1.5 mL, 0.75 mL)中で、室温下にて30分間振とう攪拌した。反応液をろ過により除去し、残存する樹脂を洗浄した。これを2回実施し、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることから、Alloc基の脱保護を確認した。残存する樹脂に、Alloc-Arg(Boc)2-OH (495 mg、1080 μmol)と縮合剤HATU(410 mg、1080 μmol)とDIEA(188 μL)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、化合物(1a-8-i)の生成を確認した。
【0301】
残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0302】
反応工程32 化合物(1a-8)の合成
化合物(1a-8-i)(72 μmol scale)に、Pd(PPh3)4(tetrakis (triphenylphosphine)palladium(0)) 312 mgのCHCl3/AcOH/N-methylmorphorine溶液(順に2.8 mL, 1.5 mL, 0.75 mL)中で、室温下にて30分間振とう攪拌した。反応液をろ過により除去し、残存する樹脂を洗浄した。これを2回実施し、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陽性であることから、Alloc基の脱保護を確認した。
【0303】
Boc-Ser(tBu)-OH (733 mg、1080 μmol)と縮合剤HATU(410 mg、1080 μmol)とDIEA(188 μL)を溶解したDMF溶液2 mLを加え、室温窒素気流下にて30分攪拌させた。ついで、前記DMF溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。さらに、乾燥窒素を送り込むことで余分な溶媒を取り除き、その一部を試験管に分取し、ニンヒドリン検査で陰性であることから、化合物(1a-8)の生成を確認した。残存する樹脂をキャッピング試薬(無水酢酸/ピリジン/DMF=1/25/25)2 mLにて5分間室温で反応させた。ついで、前記溶液をろ過により除去後、残存する樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。
【0304】
化合物(1a-8)の合成の確認は、ピペリジン処理によりFmoc基を脱保護した後、TFA処理(95% TFA/5% m−cresol)により、固相樹脂PALからの切り出しと、Lysの保護基Boc基の脱保護を行い、H2N-AEG(Ser-Arg-Lys-C5)-AEG(Ser-Arg-Lys-C5)-AEG(Ser-Arg-Lys-C5)-AEG(Ser-Arg-Lys-C5)-AEG(Ser-Arg-Lys-C5)-C5H10-CONH-C5H10-NH2の存在を確認することにより行った。MALDI-TOF MS:calcd.3167.92(M+H), found 3166.89.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物:
【化1】

[式(1)中、n1は0〜10の整数、n2は1〜50の整数、及びn3は1〜10の整数を示し;
m1は0〜100の整数、m2は0〜100の整数、m3は0〜100の整数、m4は0又は1の整数、m5は0〜100の整数、及びm6は0〜100の整数を示し;
Y1は、水酸基又はアミノ基を示し;
Eは、N又はCHを示し;
Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示し;
Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
【請求項2】
Lが、チオール基又はカルボキシル基がリンカーを介して結合しているアミノ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)中、Rが、アルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基よりなる群から選択されるアミノ酸残基、或いはこれらのアミノ酸残基の少なくとも1種を含むペプチド残基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)中、Rが、2〜5個のアルギニン残基から構成されるペプチド残基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項5】
式(1)中、n1は0〜2の整数、n2は1〜10の整数、n3は0〜2の整数である、請求項1乃至4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
式(1)中、EがNであり、m2が2であり、m3及びm4が1であり、m5が5である、請求項1乃至5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
下記一般式(1a)で示される化合物:
【化2】

[n1〜n3、m1〜m6、E及びRは前記と同じであり、
Y2は固相樹脂を示し;
Xは、保護基X1、水素原子、基−CO-L(Lは前記と同じ)、基−CO-LX1(Lは前記と同じ。LX1はL中の官能基に保護基X1が結合していることを示す。)を示し;
Zは、保護基X1とは異なる保護基Za、又は保護基X1と同一の保護基Zbを示し;
RZとは、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基の官能基に保護基Zが結合していることを示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRZは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
【請求項8】
式(1a)中、Rが、アルギニン残基、リジン残基、及びセリン残基よりなる群から選択されるアミノ酸残基、或いはこれらのアミノ酸残基の少なくとも1種を含み、アミノ酸残基の総数が2〜20個のペプチド残基である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(1a)中、2〜5個のアルギニン残基から構成されるペプチド残基である、請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
式(1a)中、n1は0〜2の整数、n2は1〜10の整数、n3は0〜2の整数である、請求項7乃至9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
式(1a)中、EがNであり、m2が2であり、m3及びm4が1であり、m5が5である、請求項7乃至10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
以下の第1-1工程〜第1-6工程を含む、下記一般式(1)で示される化合物の製造方法:
【化3】

[式(1)中、n1は0〜10の整数、n2は1〜50の整数、及びn3は1〜10の整数を示し;
m1は0〜100の整数、m2は0〜100の整数、m3は0〜100の整数、m4は0又は1の整数、m5は0〜100の整数、及びm6は0〜100の整数を示し;
Y1は、水酸基又はアミノ基を示し;
Eは、N又はCHを示し;
Rは、アミノ酸残基、又は2〜100個のアミノ酸残基からなるペプチド残基を示し;
Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)がリンカーを介して結合しているアミノ基を示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
第1-1工程:下記一般式(I)で示される化合物
【化4】

[式(I)中、X1は保護基を示し、m6は前記と同じ。]
を、固相樹脂又は固相化合物に縮合させた後、固相樹脂に縮合した化合物の保護基X1の脱離、及び一般式(I)で示される化合物の縮合重合を、n3 −1回実施することにより、下記一般式(i)で示される化合物
【化5】

[式(i)中、n3、m6及びX1は前記と同じ。Y2は、固相樹脂を示す。]
を得る工程、
第1-2工程:一般式(i)で示される化合物に対して、下記一般式(II)で示される化合物
【化6】

[式(II)中、m2〜m5、及びX1は前記と同じであり、ZaはX1とは異なる保護基を示す。]
の縮合反応をn2回実施することにより、下記一般式(ii)で示される化合物
【化7】

[式(ii)中、n2、n3、m2〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第1-3工程: 一般式(ii)で示される化合物に対して、下記一般式(III)で示される化合物
【化8】

[式(III)中、m1及びX1は前記と同じ。]
の縮合反応をn1回実施することにより、下記一般式(iii)で示される化合物
【化9】

[式(iii)中、n1〜n3、m1〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第1-4工程: 一般式(iii)で示される化合物の保護基X1を脱離させた後に、当該保護基Xが脱離されたアミノ基と、化合物X1L-COOH[X1及びLは前記と同じであり、X1Lは、ペプチド結合、ジスルフィド結合又はビオチンアビジン結合を形成可能な官能基(但し、アミノ基を除く)であって、保護基X1で保護された官能基がリンカーを介して結合しているアミノ基を示す]とを縮合反応させることにより、下記一般式(iv)で示される化合物を得る工程、
【化10】

[式(iv)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、Za及びY2は前記と同じ。]
第1-5工程: 一般式(iv)で示される化合物に対して、α位の炭素原子に結合したカルボキシル基以外の官能基に保護基Zaを結合させたアミノ酸の縮合反応を1〜100回実施することにより、下記一般式(v)で示される化合物
【化11】

[式(iv)中、n1〜n3、m1〜m6、X1L、RZa及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、及び
第1-6工程: 一般式(v)で示される化合物から、固相樹脂を切り離して末端に−COOH又は−CONHを形成させると共に、保護基X1及びZaを脱離させて、一般式(1)で示される化合物を得る工程。
【請求項13】
以下の第3-1工程〜第3-5工程を含む、下記一般式(1a)で示される化合物の製造方法:
【化12】

[n1〜n3、m1〜m6、E及びRは前記と同じであり、
Y2は固相樹脂を示し;
Xは、保護基X1、水素原子、基−CO-L(Lは前記と同じ)、基−CO-LX1(Lは前記と同じ。LX1はL中の官能基に保護基X1が結合していることを示す。)を示し;
Zは、保護基X1とは異なる保護基Za、又は保護基X1と同一の保護基Zbを示し;
RZとは、前記Rのアミノ酸残基又はペプチド残基の官能基に保護基Zが結合していることを示し;
n1が2以上である場合、繰返単位Aにおけるm1は、それぞれの繰返単位A同士で、同一又は異なっていてもよく;
n2が2以上である場合、繰返単位B中におけるm2〜m5及びRZは、それぞれの繰返単位B同士で、同一又は異なっていてもよく;
n3が2以上である場合、繰返単位Cにおけるm6は、それぞれの繰返単位C同士で、同一又は異なっていてもよい。]
第3-1工程:下記一般式(I)で示される化合物
【化13】

[式(I)中、X1及びm6は前記と同じ。]
を、アミノ基を有する固相樹脂に縮合重合させた後、固相樹脂に縮合重合した化合物の保護基X1の脱離、及び一般式(I)で示される化合物の縮合重合をn3 −1回実施することにより、下記一般式(i)で示される化合物
【化14】

[式(i)中、n3、m6、X1及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-2工程:一般式(i)で示される化合物に対して、下記一般式(II)で示される化合物
【化15】

[式(II)中、m2〜m5、X1及びZaは前記と同じである。]
の縮合反応をn2回実施することにより、下記一般式(ii)で示される化合物
【化16】

[式(ii)中、n2、n3、m2〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-3工程:一般式(ii)で示される化合物に対して、下記一般式(III)で示される化合物
【化17】

[式(III)中、m1及びX1は前記と同じ。]
の縮合反応をn1回実施することにより、下記一般式(iii)で示される化合物
【化18】

[式(iii)中、n1〜n3、m1〜m6、X1、Za及びY2は前記と同じ。]
を得る工程、
第3-4工程: 一般式(iii)で示される化合物の保護基X1を脱離させ、化合物X-OH[Xは前記と同じ。]を縮合させることにより、下記一般式(iv-a)で示される化合物を得る工程、
【化19】

[式(iv-a)中、n1〜n3、m1〜m6、X、Za及びY2は前記と同じ。]
第3-5工程: 一般式(iv-a)で示される化合物に対して、アミノ基に保護基Zを結合させたアミノ酸の縮合反応を1〜100回実施することにより、一般式(1a)で示される化合物を得る工程。

【公開番号】特開2008−106005(P2008−106005A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290569(P2006−290569)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(503280961)株式会社クレディアジャパン (10)
【Fターム(参考)】