説明

アミノ酸誘導体の製法

本発明は、(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒドから特定のアミノ酸誘導体(1)を製造する新規な多工程方法であって、次の不可欠な工程を含む。
(i)不斉水素化(これによって分割手法に付随する収率損失を回避する。)、および(ii)N−アルキル化によるcis−2,6−ジメチルピペリジンサブユニットの導入(これによって副反応を起こす傾向のある問題の還元的アミノ化工程を回避する。)。1つの態様においては、本発明は、工程(i)が工程(ii)に先行する合成経路からなる。本発明の別の態様においては、工程(ii)は工程(i)に先行する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の合成において中間体として有用な錯体アミノ酸誘導体を調製する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−(アリールスルホニル)β−アミノ酸誘導体は、特にブラジキニン依存性病変の治療のための医薬品として有用である。たとえば、米国特許出願公開第2004/0116353号明細書参照。アミノ酸誘導体(化合物1)、(R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(cis−2,6−ジメチルピペリジン−1−イル)メチルフェニル)プロピオン酸は、N−(アリールスルホニル)β−アミノ酸誘導体の合成における重要な中間体である。
【0003】
【化1】

【0004】
ここで、BOCはtert−ブトキシカルボニルを意味する。文献(米国特許出願公開第2004/0116353号明細書。テトラヘドロン・レター(Tetrahedron Lett.),2000年,第41巻,p.6555およびジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー(J. Med. Chem.),1998年,第41巻,p.4240も参照)に報告された(1)の既存の合成経路は、スキーム1で示される。
【0005】
【化2】

【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0116353号明細書
【非特許文献1】テトラヘドロン・レター(Tetrahedron Lett.),2000年,第41巻,p.6555
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー(J. Med. Chem.),1998年,第41巻,p.4240
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この経路には多くの不利な点があり、特に次の不利がある。高価な出発原料が必要であること、鏡像異性的に濃縮された(enantiomerically enriched)物質を入手するために、合成の途中で酵素を触媒とする分割プロセスを使用するが、それが50%を超える物質損失を生じること、およびcis−2,6−ジメチルピペリジン環を導入するために還元的アミノ化プロセスを使用するが、それが金属水素化物還元剤を必要とすること。ヒンダードアミンを用いるそのようなプロセスは、特に工業規模で実施したときに、副反応を起こす傾向がある。したがって、大規模商業運転のために好都合なプロセス経済を提供する化合物(1)の改良された合成経路についてのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は化合物1の改良された合成経路である。本発明は、(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)からアミノ酸誘導体(1)への新規な多工程方法であって、次の不可欠な工程を含む。
(i)不斉水素化(これによって分割手法に付随する収率損失を回避する。)、および
(ii)非還元的N−アルキル化によるcis−2,6−ジメチルピペリジンサブユニットの導入(これによって、副反応を起こす傾向のある問題の還元的アミノ化工程を回避する。)。1つの態様においては、本発明は、工程(i)が工程(ii)に先行する合成経路を含む。本発明の別の態様においては、工程(ii)が工程(i)に先行する。別の方法を記述すると、本発明は、(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)をエナミド中間体に転化する工程、エナミド中間体の不斉水素化の工程、および不斉水素化工程の前または後のいずれかに非還元的N−アルキル化によるcis−2,6−ジメチルピペリジンサブユニットの導入の工程を含むアミノ酸誘導体(2)を調製する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の1つの態様において、スキーム2に示されるように、アルデヒド(2)のアミノ酸誘導体(1)への転化は、次の一連の工程で進む。
【0010】
【化3】

【0011】
(a)式(3)のアズラクトンを形成するエルレンマイアー縮合。無水酢酸はこの方法における標準的な試薬であるが、ジシクロヘキシルカルボジイミド、五塩化リンまたは塩化チオニルのような代替の脱水剤で置き換えることができる。この方法は、適度に極性の有機溶媒を必要とし、酢酸エチルがよく使用されるが、たとえば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、アセトニトリルおよびそれらの混合物などの、多くの代替の溶媒もまた適切である。この方法は、また、穏やかな塩基をも必要とし、酢酸ナトリウムがよく使用されるが、たとえば、無機塩基である炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、および有機塩基であるトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンまたはピリジンなどの、多くの代替の塩基もまた適切である。無水酢酸を用いるときは、通常、還流下で反応混合物を加熱する必要があるが、より強い脱水剤を使用するときは、この方法はより低温で行なってもよい。
【0012】
(b)アズラクトン(3)の式(4)のエナミドへの転化。ここで、R1はメチルまたはC2-4線状もしくは分岐アルキルである。ベンジルのO−アセチル基を切断するために、塩基が存在する。炭酸カリウムは、それがメタノールに良く溶解するので、好都合に、使用される。代替の塩基をこの方法に使用してもよく、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ナトリウムメトキシド、および非求核性有機塩基である1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)および1,5−ジアザビシクロ[3.4.0]ノネン−5(DBN)を使用してもよい。
【0013】
(c)触媒としてキラルなリン含有配位子のロジウム錯体の存在下にエナミド(4)を不斉水素化し、アミノ酸誘導体(5)を形成する。高いエナンチオ選択性で基質の効率的な転化を可能にする適切な配位子は、配位子の十分に多様な集合をスクリーニングすることによって特定可能である。溶媒の選択は特定の触媒に依存するが、溶媒は、典型的には、低級アルコール(好ましくはメタノールまたはエタノール)、トリフルオロエタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエンまたはそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
(d)(5)をO−スルホニル誘導体(6)へ転化し、引き続いてcis−2,6−ジメチルピペリジンと反応させ、アミノ酸誘導体(7)を生成する。ただし、R2はアルキル、ハロアルキルまたはアリールである。好都合に、これはワンポットプロセスで遂行される。(5)の(6)への効率的な転化のために、スルホン酸無水物試薬が、エチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミンまたはトリメチルアミンのような第三級アミン塩基とともに、必要とされる。予想外に、求核性対イオンを発生する代替の試薬は不適当である。たとえば、塩化メタンスルホニルは反応副生成物として塩化アルキルを発生し、それはcis−2,6−ジメチルピペリジンによる置換に反応しない。いかなる適度に極性の非プロトン性有機溶媒も、この方法に適した溶媒であり、たとえば、ジクロロメタン、tert−ブチルメチルエーテル、トルエン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、酢酸エチルまたはそれらの混合物が挙げられる。スルホン酸無水物試薬の高い反応性のために、温度制御が重要である。典型的には、これは、40℃未満の反応温度を必要とし、そして好都合なことに0〜25℃の範囲の反応温度を必要とする。
【0015】
(e)(7)をN−二重保護(diprotected)誘導体(8)へ転化し、引き続いて選択的な脱保護によりN−アセチル基を除去しそしてエステルを加水分解する。ジ炭酸ジ−tert−ブチルすなわちBoc2Oは、N−Boc基の導入のための標準的な試薬である。とはいえ、Boc−ON=C(CN)Ph、Boc−ONH2またはBoc−OCH(Cl)CCl3のような代替の試薬を使用することもできる。N−Ac基の選択的な除去は、水またはアルコールの存在下で、水酸化物塩基により行なうことができる。水酸化物塩基は、エステルの穏やかな加水分解を行うために、エステラーゼまたは他の加水分解酵素に代えることができる。
【0016】
本発明のこの態様の好ましい実施態様は以下のように特徴づけることができる。
・工程(b)において、R1はメチルまたはエチルである。より好ましくは、R1はメチルである。
・工程(c)において、キラルなリン含有配位子はジホスフィンであり、より好ましくはビス(2,5−ジアルキルホスホラン)(bis(2,5-dialkylphospholane))であり、そして最も好ましくは(R,R)−エチル−DuPhosである。(4)のO−TBDMS、N−CBzアナログの不斉水素化に関する、チェン(Chen)ら,生物有機医化学レター(Bioorg. Med. Chem. Lett.),2000年,第10巻,p.729に報告された類似の方法とは対照的に、工程(c)は、ヒドロキシル基の保護を必要としない。
・工程(d)において、R2はメチルである。
・工程(e)において、エステルの加水分解のために、水酸化物塩基は水酸化リチウムであり、反応温度は25℃未満、より好ましくは0〜20℃の範囲である。
【0017】
本発明の別の態様において、アルデヒド(2)のアミノ酸誘導体(1)への転化は、スキーム3に示されるように、次の一連の工程によって進行する。
【0018】
【化4】

【0019】
(a)前述したように、式(3)のアズラクトンを生成するエルレンマイアー縮合。
(b)アズラクトン(3)の式(4)のエナミドへの転化。ここで、前述したように、R1はメチルまたはC2-4線状もしくは分岐アルキルである。
c)エナミド(4)をO−スルホニル誘導体(9)へ転化し、引き続いてcis−2,6−ジメチルピペリジンと反応させ、エナミド(10)を生成する。ここで、R2はアルキル、ハロアルキルまたはアリールである。パラ置換基の共役効果は、前述した工程中の(5)から(7)への転化よりも広範囲の脱離基の使用を許し、もし望むならば、O−スルホニル脱離基はハロゲン化物による置き換えることができる。
(d)(10)をN−二重保護誘導体(11)へ転化し、引き続いて選択的な脱保護によって、N−アセチル基を除去し、エステルを加水分解する。N−Ac基の選択的な除去は、アルコールまたは他の有機溶媒の存在下に、所望により共溶媒としての水と共に、水酸化物塩基により行うことができる。便宜上、水酸化物塩基は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのいずれかである。
(e)触媒としてのキラルなリン含有配位子のロジウム錯体の存在下に、N−Bocエナミド(12)を不斉水素化し、アミノ酸誘導体(1)を生成する。
【0020】
本発明のこの態様の好ましい実施態様は、以下のように特徴づけることができる。
・工程(b)において、R1はメチルまたはエチルである。より好ましくは、R1はメチルである。
・工程(c)において、R2はメチルであり、図示されるように、(4)中のOH基はメタンスルホン酸無水物で処理することによって誘導体化される。
・工程(e)において、キラルなリン含有配位子はジホスフィンであり、より好ましくはビス(ホスホラン)であり、そして最も好ましくは(R,R)−メチル−BPEである。
【0021】
本発明によって具体化されたアミノ酸誘導体(1)への両方の経路には、先行技術を超える利点がある。触媒的不斉工程(ラセミ中間体の分割の代わり)およびピペリジン基の導入のためのより高収率の反応(還元的アミノ化の代わりのN−アルキル化)を使用すると、この合成手法は既存の経路よりも効率的である。両方の経路の出発原料である(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)は、一工程でテレフタルアルデヒドから容易に調製され、(1)の既存の合成においておよびエナミド(4)のO−TBDMS,N−CBzアナログの合成において使用される化合物よりもはるかに安い物質である。
【0022】
アミノ酸誘導体(1)への両方の経路は、新規な中間体によって進行する。記述した第1の経路(スキーム2)において、エナミド(4)および鏡像異性的に濃縮された中間体(5)、(6)、(7)および(8)は新規な化合物である。記述した第2の経路(スキーム3)において、エナミド(9)、(10)、(11)および(12)は新規な化合物である。
【0023】
本発明の変形は、当業者に認識できるであろう。特にCH2−(複素環)基、特に窒素含有複素環を含む基で置換された他の鏡像異性的に濃縮されたアリールアラニン誘導体に同一の合成手法を適用する能力を有する当業者に認識できるであろう。
【実施例】
【0024】
本発明を、次の実施例によって、さらに説明する。
【0025】
実施例1
(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)の調製
【0026】
【化5】

【0027】
オーバーヘッド撹拌器、温度計および凝縮器を取り付けた2Lの三つ口フラスコに、テレフタルアルデヒド(85.8g)およびTHF(500ml)を仕込み、淡黄色溶液を得た。水素化ホウ素ナトリウム(8.75g)を水(35ml)に溶かし、得られた溶液を、内部温度を30℃未満に維持しながら、20分間かけて三つ口フラスコに仕込んだ。反応混合物をさらに2時間撹拌したところ、反応は完了し、GCによれば、ジアルデヒド0.5%、モノアルデヒド58.9%、ジオール36.0%であった。水(500ml)およびトルエン(500ml)を撹拌しながら仕込み、その後、それらの層を分離した。水層をさらにトルエンで抽出し、その後、合体した有機層を水で逆洗した。有機層を、内部温度が105℃に達するまで、周囲圧力で蒸留したところ、約600mlの留出物が回収された。混合物を30℃未満に冷却し、その後、ヘキサン(500ml)を仕込み、0〜5℃に冷却して、溶液から生成物を沈殿させた。固体の生成物を真空濾過によって単離し、固体のケーキをトルエンとヘキサンの50/50混合物(合計200ml)で洗浄し、その後、減圧下で40〜45℃で乾燥し、69.02gの(2)を得た。その固体を減圧乾燥器中で溶融した。GCによる生成物の純度は66.2%であり、ジオール不純物が27.9%存在した。1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 10.00(1H,s)、7.88(2H,d,J=8.0Hz)、7.53(2H,d,J=8.0Hz)、4.80(2H,s)および2.1(1H,br s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δppm 192.7、148.4、135.9、130.4、127.0および64.8。
【0028】
実施例2
酢酸4−[(Z)−(2−メチル−5−オキソ−1,3−オキサゾール−4(5H)−イリデン)メチル]ベンジル(3)の調製
【0029】
【化6】

【0030】
オーバーヘッド撹拌器、温度計および凝縮器を取り付けた2Lの三つ口フラスコに、酢酸ナトリウム(59.2g)、(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)(69.0g)、酢酸エチル(100ml)および無水酢酸(120ml)を仕込んだ。スラリーを加熱還流(104〜106℃)し、15分間還流を維持し、その後40℃未満に冷却した。N−アセチルグリシン(42.2g)および酢酸エチル(100ml)を仕込み、得られた混合物を加熱還流(93〜95℃)し、18時間維持した。そのバッチを60℃未満に冷却して凝固させ、水(400ml)を加え、得られた固体を真空濾過によって単離し、スラリーを水(300ml)で洗浄し、その後MTBE(300ml)で洗浄し、そしてその後MTBE(100ml)で置換洗浄した。黄色固体を45℃で減圧乾燥し、56.2gの(3)を得た。GCによる純度は96.1%であった。1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 8.08(2H,d,J=7.8Hz)、7.42(2H,d,J=7.8Hz)、7.13(1H,s)、5.14(2H,s)、2.41(3H,s)、および2.13(3H,s);13C NMR(100MHz,CDCl3)δppm 171.2、168.1、166.7、139.4、133.4、133.2、132.7、131.1、128.7、66.1、21.4、および16.1。
【0031】
実施例3
(Z)−2−(アセチルアミノ)−3−[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]プロペン酸メチル(4)の調製
【0032】
【化7】

【0033】
炭酸カリウム(89mg、0.64mmol)をメタノール(12ml)に懸濁させた。アズラクトン(3)(3.40g、13.1mmol)を45分間かけていくつかに分けて(in portions)加え、その後、褐色の溶液をさらに1時間撹拌した。その溶液を、Dowex 50WX−8−200イオン交換樹脂で、pH12.3からpH6〜7に中和し、その後、樹脂は濾過によって取り除いた。溶媒を蒸発させ、化合物を酢酸エチル(約20ml)からの再結晶によって精製し、黄色顆粒状固体(3.03g、91.8%)のエナミド(4)を得た。1H NMR(400MHz,アセトン−d6)δppm 8.7(1H,brs)、7.60(2H,d,J=8.0Hz)、7.39(2H,d,J=8.0Hz)、7.24(1H,s)、4.65(2H,s)、4.4(1H,brs)、3.75(3H,s)、および2.09(3H,s);13C NMR(100MHz,アセトン−d6)δppm 170.2、170.1、166.9、145.1、133.7、132.6、131.0、127.8、127.6、127.4、64.6、52.8および23.2。
【0034】
実施例4
(2R)−2−(アセチルアミノ)−3−[4−(ヒドロキシメチル)フェニル]プロパン酸メチル(5)の調製
【0035】
【化8】

【0036】
50mlのパー(Parr)水素化容器に、(4)(1.25g)およびメタノール(20ml)を仕込み、容器を密封し、パージした。触媒[(R,R)−エチル−DuPhosRh(COD)]BF4(0.05g)を仕込み、容器を再び密封しパージした後、混合物を水素ガスの吸収がやむまで100PSIで水素化した。透明な黄色の溶液を40℃、減圧下で濃縮して、メタノール中に淡黄色固体を得、トルエン(50ml)を仕込み、そしてメタノールの残りを40℃で除去した。固体を真空濾過によって単離し、トルエン(20ml)で洗浄し、45℃に乾燥し、1.1gの(5)を得た。生成物の鏡像体過剰率を測定したところ、98%より高いことが分かった。1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.30(2H,d,J=8.0Hz)、7.08(2H,d,J=8.0Hz)、5.88(1H,d,J=6.8Hz)、4.92−4.86(1H,m)、4.68(2H,s)、3.75(3H,s)、3.17(1H,dd,J=13.6,5.6Hz)、3.10(1H,dd,J=13.6,5.4Hz)および2.00(3H,s);1H NMR(400MHz,アセトン−d6)δppm 7.40(1H,d,J=6.4Hz)、7.28(2H,d,J=7.6Hz)、7.19(2H,d,J=7.6Hz)、4.71−4.65(1H,m)、4.60(2H,s)、3.10(1H,dd,J=13.2,5.2Hz)、2.95(1H,J=13.2,8.2Hz)、2.9(1H,brs)および1.88(3H,s);13C NMR(100MHz,アセトン−d6)δppm 173.3、170.5、142.2、136.9、130.2、127.8、64.7、54.9、52.6、38.4および23.0。
【0037】
実施例5
(2R)−2−アセチルアミノ−3−(4−{[(2R,6S)−2,6−ジメチルピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)プロパン酸メチル(7)の調製
【0038】
【化9】

【0039】
オーバーヘッド撹拌器、温度計および添加漏斗を取り付けた250mlの三つ口フラスコに、(6)(20.0g)、ジイソプロピルエチルアミン(16.3g)およびジクロロメタン(80ml)を仕込んだ。メタンスルホン酸無水物(18.6g)をジクロロメタン(70ml)に溶解し、添加漏斗に仕込み、その後、25℃未満の温度を維持しながら20分間かけてそのバッチに仕込んだ。得られたO−メシラート(6)を含むオレンジ色の溶液を3時間撹拌し、その後、cis−2,6−ジメチルピペリジン(18.6g)を仕込み、混合物を周囲温度で5時間撹拌し、その後さらにメタンスルホン酸無水物(4.5g)およびcis−2,6−ジメチルピペリジン(9.0g)を仕込んだ。暗オレンジ色の溶液を、周囲温度で一晩撹拌した。生成物を20質量%クエン酸水溶液(120g)の中に抽出し、ジクロロメタン(70ml)で洗浄し、その後、50%の炭酸カリウム水溶液(100g)で塩基化した。油状生成物をジクロロメタン(2×100ml)の中に抽出し、その後、40℃で蒸留し、薄いオレンジ色の粘性のある油である(7)を18.5g得た。HPLCによる純度は93%であった。1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.30(2H,d,J=7.8Hz)、7.00(2H,d,J=7.8Hz)、5.97(1H,d,J=8.0Hz)、4.89−4.84(1H,m)、3.77(2H,s)、3.71(3H,s)、3.14−3.04(2H,m)、2.46−2.44(2H,m)、1.67−1.62(1H,m)、1.57−1.55(2H,m)、1.32−1.28(3H,m)および1.05(6H,d,J=5.6Hz);13C NMR(100MHz,CDCl3)δppm 172.6、170.0、141.3、133.8、129.2、128.7、57.7、53.7、53.5、52.7、37.9、35.0、24.7、23.6および22.6。
【0040】
実施例6
2(R)−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−(cis−2,6−ジメチルピペリジン−1−イル)メチルフェニル)プロピオン酸(1)の調製
【0041】
【化10】

【0042】
N−アセチル基質(7)(605mg、1.75mmol)およびジ炭酸ジ−tert−ブチル(573mg、2.63mmol)を、THF(3ml)に溶解した。4−ジメチルアミノピリジン(21mg、0.175mmol)を加えた。その溶液を22時間撹拌した。さらにジ炭酸ジ−tert−ブチル(115mg、0.53mmol)を加え、撹拌を16時間継続した。溶媒を蒸発させ、中間体N−Boc N−アセチルメチルエステル(8)を含む残渣をMeOH(8ml)に溶解した。この時点で、溶液を2つに分け、半分は次の手順を用いて化合物(1)に転化した。メタノール溶液を氷浴で冷却し、1Mの水酸化リチウム水溶液(0.9ml)を加えた。3時間後、さらに1MのLiOH(0.9ml)を加え、混合物を1時間撹拌した。MeOHを減圧下で蒸発させた。残留水溶液を水(3ml)で薄め、DCM(2×5ml)で抽出した。水相を1Mのクエン酸(pH 5.8に)で酸性化し、その後、MTBE(5ml)で抽出した。水相を減圧下で蒸発させ、熱い酢酸エチル(2×10ml)で抽出した。溶媒を蒸発させたところ、242mg(71%)の(R)−N−Bocアミノ酸(1)が得られ、それは淡黄色の泡であり、eeは98%より高かった。1H NMR(400MHz,CDCl3)δppm 7.26(2H,d,J=7.8Hz)、7.04(2H,d,J=7.8Hz)、5.47(dd,J=10.2,6.0Hz)、3.76(2H,s)、3.73(3H,s)、3.40(1H,dd,J=14.0,6.0Hz)、3.14(1H,dd,J=14.0,10.2Hz)、2.45−2.42(2H,m)、2.28(3H,s)、1.64−1.62(1H,m)、1.57−1.54(2H,m)、1.43(9H,s)、1.31−1.26(3H,m)および1.05(6H,d,J=5.6Hz);13C NMR(100MHz,CDCl3)δppm 173.0、171.3、152.4、140.6、135.4、129.4、128.4、84.2、57.6、57.5、57.4、53.7、52.7、35.7、35.1、35.1、28.3、26.7、24.7および22.6。
【0043】
実施例7
(Z)−2−N−BOC−アミノ−3−(4−{[(2R,6S)−2,6−ジメチルピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)プロペン酸(12)の調製
【0044】
【化11】

【0045】
オーバーヘッド撹拌器および温度計を取り付けた250mlの三つ口フラスコに、エナミド(4)(5.0g)、DCM(40ml)およびジイソプロピルエチルアミン(4.2g)を仕込んだ。DCM(20ml)にメタンスルホン酸無水物(4.5g)を溶かした溶液を、25℃未満の温度を維持しながらそのバッチに加えた。混合物を周囲温度で3時間撹拌した。メシラート(8)への転化はHPLCによれば80%であった。cis−2,6−ジメチルピペリジン(6.8g)を仕込み、その溶液を21時間撹拌した。さらに3時間後にHPLCによる転化率84%を得るために、さらなるメタンスルホン酸無水物(0.5g)およびcis−2,6−ジメチルピペリジン(0.7g)が必要であった。有機溶液を水(40ml)に炭酸ナトリウム(4g)を溶かした溶液で洗浄し、その後、溶媒の大部分を除去するために減圧下で濃縮した。ヘキサン(60ml)を仕込み、そして混合物をふるいにかけ、その後、周囲温度で撹拌し、沈殿させた。生成物を真空濾過によって単離し、ヘキサン(20ml)で洗浄し、その後45℃で減圧下で乾燥し、4.27gの(10)を得た。HPLCによる純度は96.5%であった。
【0046】
温度計および磁気撹拌機を取り付けた100mlの二口フラスコに、(10)(3.0g)、DMAP(30mg)およびTHF(15ml)を仕込んだ。THF(5ml)にジ炭酸ジ−tert−ブチル(2.8g)を溶かした溶液を作り、その後、20〜25℃でそのバッチに仕込んだ。溶液をさらに3時間撹拌したところ、N−Boc N−アセチルエステル(11)へ転化はHPLCによれば完了していた。メタノール(15ml)に水酸化ナトリウム(1.4g)を溶かした溶液を仕込み、混合物を一晩撹拌した。転化率は70%であった。メタノールおよびTHF溶媒を減圧蒸留によって除去し、そして蒸留の間も反応を進行させ完了させた。pHを36%塩酸で5.8に調節し、得られた液体を蒸留し、油状物質を得た。IPA(40ml)を仕込み、溶媒を減圧下で除去し、濃縮スラリーにし、IPA(40ml)を仕込み、溶媒を減圧下で除去し、濃縮スラリーにした。IPA(25ml)を仕込み、混合物をふるいにかけて無機固体を除去し、その後、濾液を週末の間に撹拌し、沈殿させた。生成物を真空濾過によって単離し、IPA(10ml)で洗浄し、その後、45℃で減圧下で乾燥し、1.9gの(12)を得た。HPLCによる純度は98%より高かった。1H NMR(400MHz,DMSO−d6)δppm 7.62(1H,br s)、7.21(4H,s)、6.81(1H,s)、3.67(2H,s)、2.45−2.38(2H,m)、1.61−1.52(3H,m)、1.32−1.16(12H,m)および0.97(6H,d,J=2.4Hz)。
【0047】
実施例8
(2R)−2−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−3−(4−{[(2R,6S)−2,6−ジメチルピペリジン−1−イル]メチル}フェニル)プロパン酸(R)−(1);(12)からの代替の調製
【0048】
【化12】

【0049】
エナミド(15)(100mg、0.26mmol)および[(R,R)−Me−BPE Rh COD]BF4(1.4mg、0.0026mmol)は、ガラス内張容器に仕込み、バスカヴィル(Baskerville)10連(10-well)オートクレーブに密封した。容器に10バールの窒素を充填し、その後、ガス抜きした。この充填/ガス抜きのサイクルを2回繰り返した。その後、脱酸素メタノール(4ml)(窒素で1時間パージしたもの)を加え、容器に圧力10バールの水素を充填し、その後、ガス抜きした。この充填/ガス抜きのサイクルを2回繰り返した。その後、容器に10バールの水素を充填し、自動調節器によって40℃に加熱した。17時間後、容器を室温に冷却し、ガス抜きした。反応混合物の分析は、転化率(1H NMR)が95%より高く、eeが92%であることを示した。分光特性(1Hおよび13C NMR、HPLC)は、実施例6に記述したように調製された(1)と同一であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(4−ヒドロキシメチル)ベンズアルデヒド(2)からアミノ酸誘導体(1)を製造する方法であって、エナミド中間体を不斉水素化する工程、および非還元性N−アルキル化によってピペリジンサブユニットを導入する工程を含むことを特徴とする方法。
【化1】

【請求項2】
(a)アルデヒド(2)をN−アセチルグリシンとエルレンマイアー縮合し、式(3)のアズラクトンを生成する工程、
(b)アズラクトン(3)を、塩基の存在下にアルコールR1OHと反応させることによって、式(4)(式中、R1はメチルまたはC2〜C4線状または分岐アルキルである。)のエナミドに転化する工程、
(c)触媒としてのキラルなリン含有配位子のロジウム錯体の存在下に、エナミド(4)を不斉水素化し、アミノ酸誘導体(5)を生成する工程、
(d)(5)を第三級アミンの存在下でスルホン酸無水物試薬と反応させることによって(O−スルホニル誘導体(6)(式中、R2はアルキル、ハロアルキルまたはアリールである。)に転化し、引き続いてcis−2,6−ジメチルピペリジンと反応させ、アミノ酸誘導体(7)を生成する工程、
(e)(7)をN−二重保護誘導体(8)に転化し、引き続いてアルコールの存在下に、所望により共溶媒としての水と共に、金属水酸化物塩基によって処理し、N−アセチル基を選択的に除去しそしてエステルを加水分解する工程
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【化2】

【請求項3】
工程(b)において、R1がメチルまたはエチルであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
1がメチルであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、キラルなリン含有配位子がビス(2,5−ジアルキルホスホラン)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
ビス(2,5−ジアルキルホスホラン)が(R,R)−エチル−DuPhosであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)において、R2はメチルであり、そして(5)中のOH基がメタンスルホン酸無水物による処理によって誘導体化されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
工程(e)において、水酸化物塩基が水酸化リチウムであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項9】
請求項2に記載の方法において利用される化合物であって、エナミド(4)および鏡像異性的に濃縮された中間体(5)、(6)、(7)および(8)からなる群から選択される化合物。
【請求項10】
(a)アルデヒド(2)をN−アセチルグリシンとエルレンマイアー縮合させて式(3)のアズラクトンを生成する工程、
(b)アズラクトン(3)を塩基の存在下でアルコールR1OHと反応させることによって式(4)(式中、R1はメチルまたはC2〜C4線状または分岐アルキルである。)のエナミドに転化する工程、
(c)エナミド(4)をO−スルホニル誘導体(9)(式中、R2はアルキル、ハロアルキルまたはアリールである。)に転化し、引き続いてcis−2,6−ジメチルピペリジンと反応させてエナミド(10)を生成する工程、
(d)(10)をN−二重保護誘導体(11)に転化し、引き続いてアルコールの存在下に、所望により共溶媒としての水と共に、金属水酸化物塩基で処理し、選択的にN−アセチル基を除去しそしてエステルを加水分解する工程、
(e)触媒としてキラルなリン含有配位子のロジウム錯体の存在下にN−Bocエナミド(12)を不斉水素化する工程
を含む請求項1に記載の方法。
【化3】

【請求項11】
工程(b)において、R1がメチルまたはエチルであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1がメチルであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において、R2がメチルであり、(4)中のOH基がメタンスルホン酸無水物で処理することによって誘導体化されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)において、キラルなリン含有配位子がビス(ホスホラン)であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ビス(2,5−ジアルキルホスホラン)が(R,R)−メチルBPEであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法において利用される化合物であって、エナミド(9)、(10)、(11)および(12)からなる群から選択される化合物。

【公表番号】特表2009−508961(P2009−508961A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532343(P2008−532343)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/036607
【国際公開番号】WO2007/038116
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】