説明

アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体に選択的に作用する切断剤

本発明は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に認識して切断する合成切断剤及びこの合成切断剤を用いてアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に切断する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミロイド形成性(amyloidogenic)ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体(soluble assembly)に選択的に作用する切断剤及び切断方法に関する。本発明の切断剤は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を切断することによって、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の生物学的な活性度を抑制する。
【背景技術】
【0002】
アミロイド症(amyloidosis)とは、不溶性アミロイド(amyloids)タンパク質が臓器及び/又は組織で非正常的に蓄積された様々な状態をいい、疾患を引き起こしている(非特許文献1)。アミロイド症を引き起こすアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質は、様々な種類が知られている(非特許文献2)。固有の構造と機能を有する様々なアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質が形成したアミロイドは、繊維状と交差βシート構造を有する共通的な特徴を有している。
【0003】
アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質は、様々なオリゴマー及びプロトフィブリル(protofibrils)を含む可溶性会合体を形成した後、不溶性フィブリル(fibrils;原繊維)に転換される。今までに蓄積された実験的な証拠によると、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーが、アミロイド症の主な原因と考えられている(非特許文献1)。アミロイドベータ(Aβ)ペプチド、アミリン(amylin)、α−シヌクレイン(α-synuclein)、プリオン(prion)、ポリグルタミン(polyglutamine)のようなアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマー形態は、それぞれアルツハイマー病(Alzheimer's disease)、II型糖尿病、パーキンソン病(Parkinson's disease)、海綿状脳症(spongiform encepahlopathies)、ハンチントン病(Huntington's disease)を引き起こす可能性がある(非特許文献3)。
【0004】
本発明において、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーが有する化学的及び生物学的特性を、モデルとしてアルツハイマー病を用いて説明する。アルツハイマー病は老年性認知症の主な原因である。
【0005】
アルツハイマー病は、神経細胞が漸進的に喪失されることを特徴とする退行性脳疾患である。アルツハイマー病患者の脳内でAβペプチドからなる斑点(plaque)及び神経原繊維変化(NFT)が脳内から見つかった(非特許文献4)。
【0006】
Aβペプチドは、アミロイド先駆タンパク質の逐次切断後、形成される。Aβペプチドはβ−及びγ−セクレターゼ(secretase)の連続的作用によって生成され、これらセクレターゼは、主に、アミノ酸40個又は42個からなるオリゴペプチドを生成している(非特許文献5)。40又は42個のアミノ酸からなるAβをAβ40又はAβ42とよく略称している。図1にAβ42のアミノ酸配列が示されている。Aβ42のアミノ酸配列からC−末端アミノ酸2個を除去すれば、Aβ42のアミノ酸配列になる。アミロイド堆積物の最も主な成分はAβ42であり、Aβ42はAβ40より集積されやすい。
【0007】
アミロイドカスケード仮説(amyloid cascade hypothesis)は1992年に提案された(非特許文献6)。この仮説はAPPの代謝異常(mismetabolism)によりAD病因が誘発され、Aβ42の集積が順次的にこれを引き起こすと仮定した。Aβ42の生成量の増加による繊維状集積体の形成及び神経斑(neuritic plaque)の形成により、神経伝達物質の減少及びtangle−bearing neuronの死滅及び認知症を引き起こすシナプス連結の破壊を含む、更なる病理学的症状が触発され得る。
【0008】
Katzmanらは、アルツハイマー病患者らに対して認知症とアミロイド斑と間の相関関係がよくないことを報告した(非特許文献7、8)が、それにもかかわらず、最近までこの仮説が相当に支持されてきた。しかし、アルツハイマー病患者の脳内から可溶性Aβ42が見つけられた(非特許文献9)。また、Leuらは、アルツハイマー病がアミロイド斑の量よりむしろ可溶性Aβ42の量に関係があると報告した(非特許文献10、11)。従って、可溶性Aβ42に対する関心が増加し、アミロイドカスケード仮説は修正された。
【0009】
修正された仮説(非特許文献12)によると、アルツハイマー病患者の脳内でシナプス機能障害が起きる理由は、不溶性のアミロイドフィブリルやAβ単量体のためでなく、Aβの可溶性オリゴマーに起因する。Aβ42(たとえば、12量体)の可溶性オリゴマーがアルツハイマー病の神経毒性中間体として役割を果たすことを支持する様々な証拠が最近、追加的に報告されている(非特許文献13、14、15、16)。
【0010】
Aβ42が会合する過程で、いくつかのオリゴマー、プロトフィブリルなどの可溶性会合体が、可逆的又は部分非可逆的に形成された後、不溶性フィブリルが非可逆的に形成された(非特許文献16、17、18)。Aβ42の多様なオリゴマーは、それぞれ固有の構造を有している(非特許文献19)。
【0011】
Aβ42が引き起こす神経毒性を緩和する治療法を開発するために、脳内からAβ42のオリゴマーの除去を促進する方案を模索することができる。これを達成するために、Hardyらは、APP(先駆タンパク質)からAβの生成を抑制するため、β−及びγ−セクレターゼのいずれか一つの活性を阻害する方法を提案した(非特許文献12)。Aβ免疫剤を使用して、Aβのオリゴマー化を抑制する方案も可能である(非特許文献20、21)。Aβに対する親和度の高い小分子を用いてAβのオリゴマー化を抑制することもできる(非特許文献22)。
【0012】
Aβ分解酵素、例えば、エンドセリン転換酵素、インスリン分解酵素及びネプリライシン(neprilysin)を刺激することで、脳中Aβ42のオリゴマーの量を低減することができる(非特許文献23)。
【0013】
アルツハイマー病に関連したAβ42の可溶性オリゴマーについて説明したように、アミロイド症に対する治療方案として様々な戦略が採択されている(非特許文献24)。この戦略の中には、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質自体を安定化させる方案、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質を先駆物質から生成する酵素の活性を抑制する方案、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質やその先駆物質の合成過程を調整する方案、繊維状集積体の形成を阻害する方案、繊維状集積体の先駆物質の蓄積を防止する方案などが含まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Bittan, G.; Fradinger, E. A.; Spring, S. M.; Teplow, D. B. Amyloid 2005, 12, 88
【非特許文献2】Kelly, J. F. Curr. Opin. Struct. Biol. 1996, 6, 11
【非特許文献3】Demuro, A. G.; Mina, E.; Kayed, R.; Milton, S.; Parker, I.; Glabe, C. G. J. Biol. Chem. 2005, 280, 17294
【非特許文献4】Selkoe, D. J. Physiol. Rev. 2001, 81, 741
【非特許文献5】Sambamurti, K.; Greig, N. H.; Lahiri, D. K. Neuromol. Med. 2002, 1, 1
【非特許文献6】Hardy, J. A.; Higgins, G. A. Science 1992, 256, 184
【非特許文献7】Katzman, R.; Terry, R.; De Teresa, R.; Brown, T.; Davies, P.; Fuld, P.; Renbing, X.; Peck, A. Ann. Neurol. 1988, 23, 138
【非特許文献8】Naslund, J.; Haroutunian, V.; Mohs, R.; Davis, K L.; Davies, P.; Greengard, P.; Buxbaum J. D. J. Am. Med. Ass. 2000, 283, 1571
【非特許文献9】Kuo, Y. M.; Emmerling, M. R.; Vigo-Pelfrey, C.; Kasunic, T. C.; Kirkpatrick, J. B.; Murdoch G. H.; Ball, M. J.; Roher, A. E. J. Biol. Chem. 1996, 271, 4077
【非特許文献10】Lue, L. F.; Kuo, Y. M.; Roher, A. E.; Brachova, L.; Shen, Y.; Sue, L.; Beach, T.; Kurth, J. H.; Rydel, R. E.; Rogers, J. Am. J. Pathol. 1999, 155, 853
【非特許文献11】McLean, C. A.; Cherny, R. A.; Fraser, F. W.; Fuller, S. J.; Smith, M. J.; Beyreuther, K.; Bush, A. I.; Masters, C. L. Ann. Neurol. 1999, 46, 860
【非特許文献12】Hardy, J.; Selkoe, D. J. Science 2002, 297, 353
【非特許文献13】Tanzi, R. E. Nature Neurosci. 2005, 8, 977
【非特許文献14】Snyder, E. M.; Nong, Y.; Almeida, C. G.; Paul, P.; Moran, T.; Choi, E. Y.; Nairn, A. C.; Salter, M. W.; Lombroso, P. J.; Gouras, G. K.; Greengard, P. Nature Neurosci. 2005, 8, 1051
【非特許文献15】Barghorn, S.; Nimmrich, V.; Striebinger, A.; Krantz, C.; Keller, P.; Janson, B.; Bahr, M.; Schmidt, M.; Bitner, R. S.; Harlan, J.; Barlow, E.; Ebert, R.; Hillen. H. J. Neurochem. 2005, 95, 834
【非特許文献16】Lesne S.; Koh, M. T.; Kotilinek, L.; Kayed, R.; Glabe, C. G.; Yang, A.; Gallagher, M.; Ashe, K. H. Nature 2006, 440, 352
【非特許文献17】Bitan, G.; Kirkitadze, M. D.; Lomakin, A.; Vollers, S. S.; Benedek, G. B.; Teplow, D. B. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, 330
【非特許文献18】Moss, M. A.; Nichols, M. R.; Reed, D. K.; Hoh, J. H.; Rosenberry, T. L. Mol. Pharmacol. 2003, 64, 1160
【非特許文献19】Urbanic, B.; Cruz, L.; Yun, S.; Buldyrev, S. V.; Bitan, G.; Teplow, D. B.; Stanley. H. E. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2004, 101, 17345
【非特許文献20】Schenk, D.; Barbour, R.; Dunn, W.; Gordon, G.; Grajeda, H.; Guido, T.; Hu, K.; Huang, J.; Johnson-Wood, K.; Khan, K.; Kholodenko, D.; Lee, M.; Liao, Z.; Lieberburg, I.; Motter, R.; Mutter, L.; Soriano, F.; Shopp, G.; Vasquez, N.; Vandevert, C.; Walker, S.; Wogulis, M.; Yednock, T.; Games, D.; Seubert, P. Nature 1999, 400, 173
【非特許文献21】DeMattos, R. B.; Bales, K. R.; Cummins, D. J.; Dodart, J.-C.; Paul, S. M.; Holtzman. D. M. Proc Natl. Acad. U.S.A. 2001, 98, 8850
【非特許文献22】Cohen, T.; Frydman-Marom, A.; Rechter, M.; Gazit, E. Biocemistry 2006, 45, 4727
【非特許文献23】Choi, D. S.; Wang, D.; Yu, G. Q.; Zhu, G.; Kharazia, V. N.; Paredes, J. P.; Chang, W. S.; Deitchman, J. K.; Mucke, L.; Messing, R. O. Proc Natl. Acad. Sci. 2006, 103, 8215
【非特許文献24】Dobson, C. M. Science 2004, 304, 1259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を切断して可溶性オリゴマーの量を低減する方法を着眼した。アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体に対して選択的に作用する合成切断分子(以下、‘切断剤’称する)は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を除去するための人工酵素である。本発明者らは、このような特性を有する切断剤を見つけるために、鋭意研究を行った。本発明者らは、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に認識する認識部位とペプチド結合を切断する反応部位とを連結することによって、切断剤を見つけ出した。本発明者らは、この切断剤を用いることによって、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーの量を低減する本発明の目的を效果的に達成できることを確認し、本発明を完成した。
【0016】
従って、本発明は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を除去する切断剤の提供を目的とする。
【0017】
また、本発明は,上記切断剤及び薬剤学的に許容される担体を含むアミロイド症の予防又は治療用医薬組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に切断する一般式(1)の切断剤に関する:
(R)−(L)−Z (1)
(式中、Rは、A、A−(Y)−(CH−(Y)−A、A−(CH=CH)−A、A−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A、及びA−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−Aからなる群から独立的に選択された標的認識部位であり、
Aは独立して、C6−14アリール、又は酸素、硫黄及び窒素からなる群から選択された一つ以上のヘテロ原子を有する5員〜14員のヘテロアリールであり、
ここで、アリール又はヘテロアリールは、独立的にC1−15アルキル、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C1−15アルキルカルボニルオキシ、C1−15アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−15アルキルアミノ、C1−15アルキルカルボニルアミノ、C1−15アルキルスルホニルアミノ、C3−15シクロアルキルアミノ、ホルミル、C1−15アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−15アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイル、C1−15アルキルスルファニルカルボニル、C1−15アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−15アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイルオキシ、C1−15アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−15アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−15アルキルウレイド、C1−15アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−15アルキルスルファニル、C1−15アルキルジスルファニル、スルホ、C1−15アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよく;
YはO又はN−Zであり、ここで、Zは水素又はC1−9アルキルであり;
Lはリンカーであり;
Zは触媒部位として、金属イオン−リガンド複合体であり;
nは独立的に1〜6の整数であり;
m及びoは独立的に0又は1であり;
pは0〜5の整数である。)。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る切断剤はアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を認識する標的認識部位と特にペプチド結合を切断する切断活性を有する触媒部位とからなる。従って、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に認識する能力とペプチド結合を切断する能力とを有している。その結果、本発明の切断剤は、様々な種類のバイオ分子が存在する状況下でアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーの生物学的活性を選択的に阻害する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】Aβ42のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体と不溶性会合体との生成過程を概略的に示す図である。
【図3】切断剤の作用によってアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体と不溶性会合体の量が低減される過程を概略的に示す図である。
【図4】本発明の実施例1で切断剤Aの合成過程を概略的に示す図である。
【図5】Aβ40(○)及びAβ42(●)(初期濃度4.0μM)がpH7.50及び37℃で一定時間予備反応させた後、カットオフ分子量10000の膜を通過させ、ろ過される部分(fraction)の量を示すグラフである(各データ点は少なくとも5回実験した数値の平均値である)。
【図6】実施例1の切断剤A(3.0μM)をpH7.50及び37℃で36時間Aβ40(4.0μM)と反応させた後、生成された生成物のMALDI−TOF質量を示すスペクトルである。
【図7】実施例1の切断剤A(1.0μM)をpH7.50及び37℃でAβ42(4.0μM)と36時間反応させた後、生成された生成物のMALDI−TOF質量を示すスペクトルである。
【図8】実施例1の切断剤Aの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAβ40(○)及びAβ42(●)(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図9】Aβ40(灰色の棒)又はAβ42(黒色の棒)(4.0μM)をpH7.50及び37℃で反応させた後、実施例1の切断剤A(3.0μM)を加え、36時間切断される反応収率が反応時間に依存する傾向を示すグラフである。
【図10】pH7.50及び37℃で、Aβ40(○)及びAβ42(●)(4.0μM)が実施例1の切断剤Åによって切断される収率が切断反応時間に依存する傾向を示すグラフである。
【図11】Am(初期濃度4.0μM)がpH7.50溶液及び37℃で一定時間反応させた後、カットオフ分子量10000の膜を通過させ、ろ過される部分(fraction)の量を示すグラフである。
【図12】実施例1の切断剤A(3.2μM)をpH7.50及び37℃で36時間Am(4.0μM)と反応させた後、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図13】実施例1の切断剤Aの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存することを示す図である。
【図14】Syn(初期濃度70μM)がpH7.50溶液及び37℃で一定時間反応させた後、0.22μmミリポアフィルタ(Millipore Millex-GV4MM)を通過してろ過される部分(fraction)の量を示すグラフである。
【図15】実施例1の切断剤Aの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でSyn(70μM)と3日間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図16】本発明の実施例2で切断剤Bの合成過程を概略的に示す図である。
【図17】実施例2の切断剤B(3.0μM)をpH7.50及び37℃でAβ40(4.0μM)と36時間反応させた後、生成された生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図18】実施例2の切断剤B(0.50μM)をpH7.50及び37℃でAβ42(4.0μM)と36時間反応させた後、生成された生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図19】実施例2の切断剤Bの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAβ40(○)又はAβ42(●)(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図20】実施例2の切断剤B(1.0μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図21】実施例2の切断剤Bの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図22】pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)を予備反応させた後、実施例2の切断剤B(1.0μM)によって、36時間切断される反応の収率が反応時間に依存する傾向を示すグラフである。
【図23】pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)が実施例2の切断剤B(1.0μM)によって切断される収率が切断反応時間に依存する傾向を示すグラフである。
【図24】実施例2の切断剤Bの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でSyn(70μM)と3日間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図25】本発明の実施例3で切断剤Cの合成過程を概略的に示す図である。
【図26】実施例3の切断剤C(1.00μM)をpH7.50及び37℃でAβ42(4.0μM)と36時間反応させた後、生成された生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図27】実施例3の切断剤Cの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAβ40(○)又はAβ42(●)(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図28】実施例3の切断剤C(3.2μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図29】実施例3の切断剤Cの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図30】本発明の実施例4で切断剤Dの合成過程を概略的に示す図である。
【図31】実施例4の切断剤D(1.00μM)をpH7.50及び37℃でAβ42(4.0μM)と36時間反応させた後に、生成された生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図32】実施例4の切断剤Dの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAβ40(○)又はAβ42(●)(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図33】実施例4の切断剤D(0.38μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図34】実施例4の切断剤Dの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図35】本発明の実施例5で切断剤Eの合成過程を概略的に示す図面である。
【図36】実施例5の切断剤E(0.89μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図37】実施例5の切断剤Eの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図38】本発明の実施例6で切断剤Fの合成過程を概略的に示す図である。
【図39】実施例6の切断剤F(1.6μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図40】実施例6の切断剤Fの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示したグラフである。
【図41】本発明の実施例7で切断剤Gの合成過程を概略的に示す図である。
【図42】実施例7の切断剤G(0.89μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図43】実施例7の切断剤Gの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【図44】本発明の実施例8で切断剤Hの合成過程を概略的に示す図である。
【図45】実施例8の切断剤H(7.1μM)をpH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルである。
【図46】実施例8の切断剤Hの濃度(C)を変えながら、pH7.50及び37℃でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に、測定した切断収率がlogC/Mに依存する傾向を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る切断剤を具体的に説明する。
【0022】
Aβ42のオリゴマー化及びフィブリル形成過程で説明されたように、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の会合過程には、様々な可溶性オリゴマー及びプロトフィブリルが可逆的又は部分非可逆的に形成され、フィブリルが非可逆的に形成される(非特許文献17)。プロトフィブリルは、可溶性又は不溶性ポリマーと見なされ得る (非特許文献18: Hull, R.; Westermark, G. T.; Westermark, P.; Kahn, S. J. Clin. Endicrinol. Metab. 204, 89, 3629)。従って、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の一つ以上の可溶性会合体を様々な可溶性会合体から除去すれば、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体の全量が低減され、フィブリル形成が抑制される。
【0023】
効果的な切断剤は、酵素の触媒作用原理を摸倣することによって得ることができる。酵素反応において、基質は酵素と複合体を形成し、酵素は結合された基質を製品に変換する。酵素−基質複合体の形成を通して、基質に対する酵素の触媒官能基の有効モル濃度は大きく増加し、非常に速い反応速度をもたらす。
【0024】
本発明に係る一般式(1)の切断剤は人工酵素である。
【0025】
本発明の切断剤は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を認識する標的認識部位を有しているので、一つ以上の可溶性会合体と選択的に結合しうる。標的認識部位が可溶性会合体と結合された後、本発明に係る切断剤の触媒部位が可溶性会合体内のペプチド結合を切断する。
【0026】
Aβ42のために提案されるように、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の様々な種類の可溶性会合体と不溶性フィブリルの生成過程を図2に示した (非特許文献17)。図2において、長方形中に含まれたものは可溶性会合体を示す。可溶性会合体は可溶性オリゴマー及び可溶性プロトフィブリルを含む。可溶性プロトフィブリルは非常に大きな可溶性オリゴマーと見なされ得る。プロトフィブリルとフィブリルなどの大きな会合体がそれらより小さいものへの転換は遅く、大きな会合体の形成は非可逆又は部分的に非可逆と見なされ得る。一部のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の場合、フィブリル形成が可逆であり、フィブリとモノマーとが平衡関係にあることが提案されている(Wetzel, R. Acc. Chem. Res. 2006, 39, 671)。図2に示されるように、切断を通じて一種類の会合体の濃度を低減することは、切断された会合体に容易に転換され得る他の会合体の濃度を低減することができる。
【0027】
本発明に係る切断剤は、図2の長方形に示された一つ以上の種と結合した後、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質のペプチド結合を切断して、所期の機能を達成する。切断剤の標的認識部位と可溶性会合体との複合体形成を通じて、切断剤の触媒部位はアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質のペプチド結合に近接に位置する。触媒部位の攻撃によって、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質が效果的に切断される。
【0028】
切断剤と標的と間の反応は酵素反応に適用されるMichaelis−Menten式と同様の反応式1として要約される:
反応式1
【化1】

【0029】
CoIII複合体の様々な誘導体に対して知られたように、切断剤が触媒として作用し、ペプチド結合を加水分解する場合、切断剤は標的切断後に、再生される(Jeon, J. W.; Son, S. J.; Yoo, C. E.; Hong, I. S.; Song, J. B.; Suh, J. Org. Lett. 2002, 4, 4155: Chae, P. S.; Kim, M.; Jeung, C.; Lee, S. D.; Park, H.; Lee, S.; Suh, J. J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 2396)。
【0030】
図2と反応式1の内容を結合して作成した図3には、切断剤の作用によって、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体と不溶性会合体の量を低減する工程が示されている。図3において、(AP)ass−mは切断された会合体を表す。(AP)ass−mが本発明の切断剤によって切断され、(AP)ass−mの濃度が低減されたとき、(AP)ass−mに容易に転換され得る他の会合体の濃度も低減された。しかし、(AP)ass−mに容易に転換されないプロトフィブリル又はフィブリルを含む会合体の量は效果的に低減されない。その代わりに、(AP)ass−mの濃度の低減によって、(AP)ass−mからプロトフィブリル又はフィブリルの形成速度が低下される。
【0031】
標的認識部位
効果的な切断剤は、切断剤の非常に低い濃度で、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体と複合体を形成する必要がある。従って、本発明に係る切断剤は可溶性会合体と選択的で、且つ強く結合しうる標的認識部位からなっている。
【0032】
アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の芳香族側鎖間の相互作用は会合体形成に重要な役割を有している(Cohen, T.; Frydman-Marom, A.; Rechter, M.; Gazit, E. Biochemistry 2006, 45, 4727)。Kayedらは多様な種類のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーが共通の形態依存構造を有していることを報告した(Kayed, R.; Head, E.; Thompson, J. L.; McIntire, T. M.; Milton, S. C.; Cotman, C. W.; Glabe, C. G. Science 2003, 300, 486)。
【0033】
従って、芳香族鎖によって形成された微細領域に対して高い親和度を有する有機基は、制限がなく、本発明に係る標的認識部位として使用することができる。
【0034】
好ましくは、本発明に係る標的認識部位は、A、A−(Y)−(CH−(Y)−A、A−(CH=CH)−A、A−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A及びA−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A−(O)−(CH−(Y)−Aからなる群から選択される。
【0035】
ここで、Aはそれぞれ独立して、C6−14アリール、又は酸素、硫黄及び窒素からなる群から選択された一つ以上のヘテロ原子を含有する5員〜14員のヘテロアリールを表す。
【0036】
好ましくは、Aは下記式の化合物からなる群から選択され;
【化2】

式中、Xはそれぞれ独立して、C、N、NH、O及びSからなる群から選択される。
【0037】
より好ましくは、Aは下記式からなる群から選択され;
【化3】

式中、XはそれぞれNH、O、又はSである。
ここで、Aはそれぞれ、C1−15アルキル、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C1−15アルキルカルボニルオキシ、C1−15アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−15アルキルアミノ、C1−15アルキルカルボニルアミノ、C1−15アルキルスルホニルアミノ、C3−15シクロアルキルアミノ、ホルミル、C1−15アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−15アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイル、C1−15アルキルスルファニルカルボニル、C1−15アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−15アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイルオキシ、C1−15アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−15アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−15アルキルウレイド、C1−15アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−15アルキルスルファニル、C1−15アルキルジスルファニル、スルホ、C1−15アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0038】
好ましくは、AはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−12アルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C6−15シクロアルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−6アルキルウレイド、C1−6アルキルスルファニルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルジスルファニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルスルファモイル、トリ−C1−6アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0039】
より好ましくは、AはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−8アルキルアミノ、C6−12シクロアルキルアミノ、C1−4アルキルカルボニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
ここで、YはO又はN−Zであり、
ZはC1−9アルキル、好ましくはC1−4アルキルである。
ここで、pは独立的に0〜5の整数、好ましくは0〜2の整数である。
ここで、oは独立的に0又は1である。
【0040】
本発明に係る切断剤は、標的認識部位を1〜6個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1又は2個含む。
【0041】
触媒部位
金属イオン中の一部は、有機官能基又は別の金属イオンの助力なしにペプチド結合を加水分解する反応で触媒活性を示している(Suh, J. Acc. Chem. Res. 1992, 25, 273: Suh, J. Acc. Chem. Res. 2003, 36, 562)。
【0042】
金属イオンは、ペプチド加水分解反応において、触媒活性に基づいて本発明に係る触媒部位の核心要素として活用できる。
【0043】
本発明に係る触媒部位は金属イオン−リガンド複合体で構成されている。上記標的認識部位を介して、本発明に係る切断剤がアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体と結合することによって、切断剤の触媒部位と標的分子の切断部位と間の有効濃度が大いに増加される。従って、本発明の切断剤は標的分子のペプチド結合を效果的に切断することができる。
【0044】
ペプチド又はタンパク質を切断する能力を有する多数の金属イオンが公知されている。好ましくは、本発明に係る触媒部位に使用される金属イオンは、CoIII、Cu、CuII、CeIV、Ce、CrIII、FeII、FeIII、MoIV、NiII、PdII、PtII、V及びZrIVからなる群から選択される。より好ましくは、CoIII、CuII又はPdIIである。最も好ましくは、CoIIIである。
【0045】
また、本発明者らはアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性オリゴマーを選択的に切断することで、これらの生物学的活性を阻害するためには触媒部位のリガンドを特定構造に限定することが重要であることを見出した。
【0046】
本発明の触媒部位に使用されるリガンドは下記化合物からなる群から選択される:
【化4】

式中、リガンドに含まれるそれぞれの窒素原子は酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択された原子で代替でき;
リガンドはC6−14アリール又は5員〜14員のヘテロアリールと縮合されていてもよい。
【0047】
好ましくは、触媒部位に使用されるリガンドは下記式からなる群から選択される:
【化5】

【0048】
より好ましくは、リガンドは12個の原子からなる環であり、下記式からなる群から選択される:
【化6】

ここで、リガンドはC1−15アルキル、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C1−15アルキルカルボニルオキシ、C1−15アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−15アルキルアミノ、C1−15アルキルカルボニルアミノ、C1−15アルキルスルホニルアミノ、ホルミル、C1−15アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−15アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイル、C1−15アルキルスルファニルカルボニル、C1−15アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−15アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイルオキシ、C1−15アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−15アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−15アルキルウレイド、C1−15アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−15アルキルスルファニル、C1−15アルキルジスルファニル、スルホ、C1−15アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0049】
好ましくは、リガンドはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0050】
より好ましくは、リガンドはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0051】
リンカー
本発明の切断剤において、標的認識部位(R)はリンカーを通じて連結されているか、または触媒部位(Z)に直接連結される。
【0052】
リンカーによる標的認識部位及び触媒部位の結合態様は、リンカーを通じてそれぞれ1個の標的認識部位と触媒部位と間の連結する形式、2つ以上の標的認識部位が別途のリンカーを通じて触媒部位に連結される並列形式、2つ以上の標的認識部位が分岐構造を有する一個のリンカーを通じて触媒部位に連結される並列形式、2つ以上の標的認識部位が1個のリンカーを通じて互いに連結され、一つの認識部が別途のリンカーを通じて触媒部位に連結される直列形式を含む。又は、切断剤は複数の数の標的認識部位を触媒部位に連結するために、上記リストされた連結態様を結合することによって切断剤を構成することができる:
【化7】

式中、
【化8】

はリンカーを表し、
Rは標的認識部位を表し、
Zは触媒部位を表す。
【0053】
リンカーは標的認識部位と触媒部位と間を直接連結するか、又は二つの標的認識部位間を連結する主鎖、及び主鎖に任意に付着された置換基を含む。
【0054】
標的認識部位が標的タンパク質に結合した後、触媒部位は標的タンパク質内のペプチド結合中の一つ以上を切断する。タンパク質上の切断部位と触媒部位と間の有効濃度を増加させることによって、触媒部位の反応性を増進される。有効濃度を調節する効果的な方法は、切断剤中に含まれた標的認識部位と触媒部位と間の相対的な位置を調節することである。リンカーの長さと形状は相対的な位置を調節するために用いられていてもよい。
【0055】
本発明のリンカーは、標的認識部位及び触媒部位を連結するのに用いられる。本発明のリンカーは、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄及びリンからなる群から独立的に選択された一つ以上の原子を含む骨格からなる。骨格を構成する原子の数は1〜30であり、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜15である。リンカーの骨格に含まれた原子は、アルカン、アルケン、アルキン、カルボニル、チオカルボニル、アミン、エーテル、シリル、スルフィド、ジスルフィド、スルホニル、スルフィニル、ホスホリル、ホスフィニル、アミド、イミド、エステル及びチオエステルからなる群から独立的に選択された官能基の構成員として存在する。
【0056】
リンカーは、C1−9アルキル、ヒドロキシ、C1−9アルコキシ、C1−9アルキルカルボニルオキシ、C1−9アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−9アルキルアミノ、C1−9アルキルカルボニルアミノ、C1−9アルキルスルホニルアミノ、ホルミル、C1−9アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−9アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−9アルキルカルバモイル、C1−9アルキルスルファニルカルボニル、C1−9アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−9アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−9アルキルカルバモイルオキシ、C1−9アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−9アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−9アルキルウレイド、C1−9アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−9アルキルスルファニル、C1−9アルキルジスルファニル、スルホ、C1−9アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−9アルキルスルファモイル、トリ−C1−9アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0057】
好ましくは、リンカーは、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ−又はジ−C1−6アルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C1−6アルキルカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−6アルキルウレイド、C1−6アルキルスルファニルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルジスルファニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルスルファモイル、トリ−C1−6アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
より好ましくは、リンカーは、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、モノ−又はジ−C1−4アルキルアミノ、C1−4アルキルカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルホニルアミノ、C1−4アルキルカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−4アルキルカルバモイル、C1−4アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−4アルキルウレイド、C1−4アルキルスルファニルカルボニルアミノ、C1−4アルキルスルファニル、C1−4アルキルジスルファニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−4アルキルスルファモイル、トリ−C1−4アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0059】
本発明が属する技術分野で熟練した者であれば、上記定義の中で、様々な標的タンパク質及び合成触媒に対する切断部位及び触媒部位間の有効濃度を調節するのに適したリンカーの構造を選択するための組み合わせ化学的実験方法を考案することができるはずである。
【0060】
本発明の切断剤は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体に含まれた芳香性微細構造と切断剤の標的認識部位に含まれた芳香族構成成分と間の相互作用を活用して標的を認識する。従って、芳香性微細構造を含む可溶性会合体である限り、可溶性会合体を形成するために、種々の種類のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質が使用されるかは重要ではない。即ち、1種類のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質によって形成された可溶性会合体だけでなく、2種類以上のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質によって形成された可溶性会合体を、本発明の切断剤のための標的にすることができる。
【0061】
また、可溶性会合体の形成過程で、他の種類のバイオ分子が会合体内に組み込まれ得る。これらのバイオ分子が会合体内に共存するときでも、本発明の会合体はまだ切断剤の標的でありうる。
【0062】
本発明の切断剤は、一つのアミロイド症に関連したペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を選択的に切断することができるか、又は2つ以上のアミロイド症に関連したペプチド又はタンパク質の可溶性会合体を切断することができる。
【0063】
本発明の切断剤は、下記オリゴマーに制限されないが、特に下記オリゴマーの切断に効果的である。
【0064】
(1)アルツハイマー病に関連したAβ40及びAβ42のオリゴマー
Aβ40及びAβ42は、図2に示されるように、自体会合によって様々なオリゴマー、プロトフィブリル及びフィブリルを形成する。Aβ42の集積はAβ40のそれより速い。従って、Aβ42単量体の濃度が数μM以上高い場合、Aβ42は数分内にオリゴマー化される。その後、数時間内に、溶液中又は固体表面上で0.1μmより小さいプロトフィブリルに変換される(Kowalewski, T.; Holtzman, D. M. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 1999, 96, 3688: Bitan, G.; Kirkitadze, M. D.; Lomakin, A.; Vollers, S. S.; Benedek, G. B.; Teplow, D. B. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, 330)。Aβ40は二量体、三量体、四量体などを平衡工程で形成し、Aβ42は五量体と六量体を主に形成することと知られている(非特許文献17)。最近には、Aβ42は単量体が大きなオリゴマーと混合物として存在し、Aβ40は単量体が二量体と平衡関係にあると報告されている(Hepler, R. W.; Grimm, K. M.; Nahas, D. D.; Breese, R.; Dodson, E. C.; Acton, P.; Keller, P. M.; Yeager, M.; Wang, H.; Shughrue, P.; Kinney, G.; Joyce, J. G. Biochemistry 2006, 45, 15157-15167)。
【0065】
Aβ40及びAβ42の集積工程は、実験条件に敏感である(Hepler, R. W.; Grimm, K. M.; Nahas, D. D.; Breese, R.; Dodson, E. C.; Acton, P.; Keller, P. M.; Yeager, M.; Wang, H.; Shughrue, P.; Kinney, G.; Joyce, J. G. Biochemistry 2006, 45, 15157-15167)。
【0066】
現段階では、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質により形成された様々な種類のオリゴマー中、どんな種類のオリゴマーが本発明の切断剤により切断されるのかは明らかでない。しかし、標的オリゴマーの濃度が切断剤による切断することによって低くなるとき、この標的オリゴマーと平衡関係にある別のオリゴマーの濃度も低減される。従って、また、該当アミロイド症の原因になるオリゴマーの量も低減される。
【0067】
実施例で示されるように、切断剤中の幾つかは、様々な種類のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質のオリゴマーを切断する能力を有している。
【0068】
本発明の実施例1では、切断剤AがAβ42だけでなくAβ40のオリゴマーを切断している。Aβ40は、主にβ−アミロイド先駆タンパク質のタンパク分解の切断によって生成される。Aβ40は様々な生理的な機能を担当しているので、Aβ40を大幅に切断すれば、その正常機能を阻害される。しかし、アルツハイマー病患者の脳にはAβ40の量が、正常の高齢者の水準のそれよりも30〜40倍高い(非特許文献10)。従って、Aβ42の切断過程で、Aβ40が一部分切断されても、アルツハイマー病患者での副作用を引き起こさないこともあり得る。
【0069】
Aβ42のオリゴマーに対抗して作られた抗体が、Aβ42オリゴマーだけでなくAβ40オリゴマー、及びα−シヌクレイン、アミリン、ポリグルタミン、リゾチーム、インスリン、プリオンペプチド106−126などの、他のアミロイド形成性タンパク質又はペプチドのオリゴマーを認識することができる(Kayed, R.; Head, E.; Thompson, J. L.; McIntire, T. M.; Milton, S. C.; Cotman, C. W.; Glabe, C. G. Science 2003, 300, 486-489)。異なる種類の水溶性アミロイドオリゴマーは共通の形態−依存構造を有し、単一薬で異なる種類のアミロイド症を治療する可能性があるという考察が示唆された。
【0070】
実施例で提示される切断剤の一部は、2種類以上のアミロイド形成性ペプチド又はタンパク質のゴマーを切断する能力を示しているが、これは抗体研究の結果に一致している。
【0071】
(2)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマー
2型糖尿病を引き起こす原因の中の一つとして、アミリン(Am:ヒト膵島アミロイドポリペプチド)のオリゴマーが報告されている(Janson, J.; Ashley, R. H.; Harrison, D.; McIntyre, S.; Butler, P. C. Diabetes 1999, 48, 491-498: Kayed, R.; Head, E.; Thompson, J. L.; McIntire, T. M.; Milton, S. C; Cotman, C. W.; Glabe, C. G. Science 2003, 300, 486-489: Kayed, R.; Sokolov, Y.; Edmonds, B.; McIntire, T. M.; Milton, S. C.; Hall, J. E.; Glabe, C. G. J. Biol. Chem. 2004, 279, 46363-46366:Meier, J. J.; Kayed, R.; Lin, C.-Y.; Gurlo, T.; Haataja, L.; Jayasinghe, S.; Langen, R.; Glabe, C. G.; Butler, P. C. Am. J. Endicrinol. Metab. 2006, 291, E1317-E1324: Ritzel, R. A.; Meier, J. J.; Lin, C.-Y.; Veldhuis, J. D.; Butler, P. C. Diabetes 2007, 56, 65-71: Lin, C. Y.; Gurlo, T.; Kayed, R.; Butler, A. E.; Haataja, L.; Glabe, C. G.; Butler, P. C. Diabetes 2007, 56, 1324-1332)。Amは37個のアミノ酸残基からなる環状オリゴペプチドであり、自体会合によってアミロイドを形成することが可能である。
【0072】
実施例で示されるように、本発明の切断剤はAmのオリゴマーを切断する。Amの様々なオリゴマー中でどのオリゴマーが本発明の切断剤によって切断されるかは明らかではない。しかし、標的と平衡関係にある他のオリゴマーの濃度は、標的オリゴマーの濃度の低減に従って減少する。従って、2型糖尿病の原因になるオリゴマーの量が低減される。
【0073】
(3)パーキソン病気に関連したα−シヌクレインのオリゴマー
α−シヌクレインのオリゴマーがパーキソン病気を引き起こす原因の一つでとして報告されている(Giasson, B. I.; Murry, I. V. J.; Trojanowski, J. Q.; Lee, V. M. J. Biol. Chem. 2001, 276, 2380-2386: Vladimir N.; Nversky, N.; Li, J.; Fink, A. L. J. Biol. Chem. 2001, 276, 10737-10744)。α−シヌクレイン(Syn)は、140個のアミノ酸からなるタンパク質であり、自体会合によってアミロイドを形成することが可能である。
【0074】
医薬組成物
本発明の切断剤は、アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質によって形成された可溶性会合体を切断し、可溶性会合体の生物学的活性を阻害して、アミロイド症の予防又は治療する。本発明は、一般式(1)の切断剤及び薬剤学的に許容される塩を含む、アミロイド症を予防又は治療するための医薬組成物に関する。アミロイド症は、アルツハイマー病、2型糖尿病、パーキンソン病、海綿状脳症又はハンチントン病を含むが、これらに制限されない。
【0075】
本発明の切断剤を患者に投与する方法及び時期は、患者の体重、性、健康状態、食餌、疾患の重症度、患者が服用している他の薬により異なる。
【0076】
本発明の切断剤は切断剤の標的によって決定されたどんな経路でも投与することができる。従って、本発明の切断剤は静脈、経口、鼻腔、皮下、腹腔、後腹膜、直腸内などに投与することができる。しかし、静脈、経口及び鼻腔内投与が好ましい。
【0077】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、該分野の公知技術によって適した分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を使用して製造できる。
【0078】
上記製剤を製造するために、水、リンガー液及び等張性NaCl溶液が使用され、滅菌固定油が通例的に溶媒又は懸濁媒体として使用され得る。モノ−、ジ−グリセリドを含む無刺激性固定油も使用でき、オレイン酸のような脂肪酸も注射用製剤で使用することができる。
【0079】
また、本発明の切断剤は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤及び顆粒剤などを含む経口剤で製剤化できる。しかし、錠剤及びカプセル剤は腸溶性錠剤又は丸剤が好ましい。
【0080】
固体投与製剤は、本発明の一般式(1)の切断剤をスクロース、ラクトース、でんぷんなどの不活性希釈剤、及びステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、崩壊剤及び結合剤のような薬剤学的に許容される担体と混合することによって製造することができる。
【0081】
(実施例)
以下、本発明を実施例を通してより詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示することを意図しており、いかなる方法でも本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例1】
【0082】
切断剤Aを図4に示した経路に従って合成した。
【化9】

【0083】
式(1a)の化合物の合成
4−アミノメチル−安息香酸(1.0g、6.8mmol)及び2−アミノフェノール(0.69g、7.4mmol)をポリリン酸(10g)と混合し、窒素雰囲気下で1.5時間 170℃に加熱した。反応混合物を室温に冷却し、10%KCO水溶液に注いだ。沈澱物を減圧下でろ過した。沈澱物をアセトン−水で再結晶し、続いて、テトラヒドロフラン(THF)−水中の活性木炭で処理して4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ベンジルアミン(1a)を得た。
Rf 0.65 (EtOAc/ヘキサン 1:2); 1H NMR (CDCl3): δ 8.20 (d, 2 H), 7.76 (dd, 1 H), 7.66 (dd, 1 H), 7.55 (d, 2 H), 7.41 (m, 2 H), 3.90 (s, 2 H); MS (MALDI-TOF) m/z 225.33 (M+H)+, C14H13N2O1に対する計算値225.09。
【0084】
式(1c)の化合物の合成
塩化シアヌル(1b)(0.20g、1.1mmol)、式(1a)の化合物(0.20g、0.90mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(DIEA、0.38mL、2.7mmol)をTHF(50mL)中で一緒に混合し、混合物を氷浴中で4時間攪拌した。混合物を蒸発させて得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ベンジル)−(4,6−ジクロロ−[1,3,5]トリアジン−2−イル)−アミン(1c)を得た。
Rf 0.7 (EtOAc/ヘキサン 1:4); 1H NMR (CDCl3): δ 8.13 (d, 2 H), 7.70 (d, 1 H), 7.51 (d, 1 H), 7.40 (d, 2 H), 7.27 (d, 2 H), 4.58 (d, 2 H); 13C NMR (300 CDCl3): δ 171.26, 170.17, 166.04, 162.43, 150.72, 141.96, 139.84, 128.161, 128.09, 126.96, 125.34, 124.73, 120.06, 110.65, 76.60, 45.05; MS (MALDI-TOF) m/z 372.28 (M+H)+, C17H12Cl2N5Oに対する計算値372.03。
【0085】
式(1d)〜(1f)の樹脂の合成
式(1c)の化合物(55mg、0.15mmol)のTHF溶液(1.5mL)に、PS−チオフェノール樹脂(Argonaut Technologies社製、50mg、0.074mmol)及びDIEA(0.10mL、0.74mmol)を加えた。混合物を65℃に加熱し、一晩放置した。ろ過後、生成された樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン(MC)、MeOH及びMCで洗浄し、窒素ガス下で乾燥して式(1d)の樹脂を得た。
【0086】
N−メチル−2−ピロリジノン(NMP;1mL)中の式(1d)の樹脂の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びブチルアミン(49μL、0.58mmol)を加え、続いて、DIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、樹脂をDMF、MC、MeOH及びMCで洗浄し、窒素ガス下で乾燥して式(1e)の樹脂を得た。
【0087】
式(1e)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)及び水性1N NaOH(160μL)中のm−クロロペルオキシ安息香酸(m−CPBA;130mg、0.74mmol)を加えた。混合物を室温で4時間攪拌した。ろ過後、生成された樹脂を1,4−ジオキサン及びMCで洗浄し、窒素ガス下で乾燥して式(1f)の樹脂を得た。
【0088】
式(1h)の化合物の合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(1f)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(Argonaut Technologies社製、30mg、0.12mmol)と式(1g)の化合物(P. S. Chae, M. Kim, C. Jeung, S. D. Lee, H. Park, S. Lee, J. Suh, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 2396-2397)(39mg、0.074mmol)を加えた。反応混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して10−{3−[4−(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ベンジルアミノ)−6−ブチルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(1h)を得た。
Rf 0.5 (EAのみ); 1H NMR (CDCl3): δ 8.13 (d, 2H), 7.70 (d, 1H), 7.51 (d, 1H), 7.40 (d, 2H), 7.27 (d, 2H), 4.58 (d, 2H), 3.8-3.2(br, 14H), 2.5 (br, 6H), 2.1 (br, 2H), 1.63 (br, 2H), 1.5-1.3 (m, 31H), 0.9-0.8 (dd 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 164.89, 161.91, 154.33, 149.67, 142.56, 141.06, 126.72, 124.82, 124.01, 123.53, 118.89, 109.53, 78.51, 78.31, 75.58, 53.92, 52.91, 48.92, 48.08, 43.31, 39.35, 37.97, 30.86, 28.67, 27.65, 19.03, 13.10; MS (MALDI-TOF) m/z 902.99 (M+H)+, C47H72N11O7に対する計算値902.55。
【0089】
実施例で樹脂を用いるトリアジン誘導体の合成は、本明細書で特に引用されない限り、参考文献(Khersonsky, S. M.; Chang, Y. T. J. Comb. Chem. 2004, 6, 474)に従う。
【0090】
式(1i)の化合物及び切断剤Aの合成
式(1h)の化合物(5mg)をMC(50mL)中の50%トリフルオロ酢酸(TFA)で5時間処理し、混合物にジエチルエーテル(1mL)を加えた。沈澱物を遠心分離で分離し、ジエチルエーテルで数回洗浄し、窒素ガス下で乾燥してN−(4−ベンゾオキサゾール−2−イル−ベンジル)−N’−ブチル−N’’−[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデク−1−シル)−プロピル]−[1,3,5]トリアジン−2,4,6−トリアミン(1i)のTFA塩を得た。式(1i)の化合物のTFA塩を用いてNMR及びMSを評価した:
1H NMR (CDCl3): δ 8.17 (d, 2 H), 7.73 (d, 1 H), 7.55 (d, 1H), 7.43 (d, 2H), 7.33 (d, 2H), 4.42 (br, 2H), 3.4-3.0 (br, 14H), 2.85 (br, 6H), 2.62 (br, 2H), 1.68 (br, 2H), 1.36-1.23 (m, 4H), 0.9-0.8 (dd 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 164.89, 162.67, 150.62, 141.76, 127.80, 126.12, 125.30, 124.73, 119.83, 110.65, 76.60, 51, 48.90, 44.87, 42.80, 42.32, 38.07, 30.89, 29.70, 23.71, 19.83, 14.07; MS (MALDI-TOF) MS (MALDI-TOF) m/z 602.73. (M+H)+, C32H48N11Oに対する計算値602.40; HRMS m/z 602.4043。(M+H)+, C32H48N11Oに対する計算値602.4038。
【0091】
式(1i)の化合物のTFA塩を、約5mg/50μLの濃度でメタノールに溶かして得られた溶液に、5〜7当量のLiOHを加え、続いて、CoCl・HOの当量を参照文献(Kim, M. G.; Kim, M.-s.; Lee, S. D.; Suh, J. J. Inorg. Biol. Chem. 2006, 11. 867)に従って加えて、相応するCoII複合体を製造した。複合体を空気中で一日攪拌してCoII複合体をCoIII複合体に酸化させた。
【0092】
CoIIからCoIIIへの酸化は濃紫色の出現を伴っている。HPLCを使用して545nmで検出することによってCoIII複合体を分離し、蒸発させて個体を得た。固体を0.1M NaOH溶液に溶かし、37℃で1時間放置した。溶液をHClでpH6〜8に中和し、室温で数日放置して切断剤Aの原液を得た。ICPを使用してコバルト含量を測定し、該溶液中の切断剤の濃度を測定した。
【0093】
切断剤Aの活性試験
(1)アルツハイマー病に関連したAβ40及びAβ42のオリゴマーの切断
以下の各実施例で特に断らない限り、各々の切断剤の活性試験は37℃及びpH7.50(0.050Mリン酸)でエッペンドルフチューブ中で実施した。
【0094】
Aβ40及びAβ42のモノマーと小さなオリゴマーの量の低減に関する定量的な情報を収集するために、下記のろ過実験を実施した。
【0095】
初期反応段階でAβ40又はAβ42のモノマー形態を発生させるために、pH7.50の反応媒体に露出させる前に、Aβ40又はAβ42をNaOHで処理した(Fezoui, Y.; Hartley, D. M.; Harper, J. D.; Khurana, R.; Walsh, D. M.; Condron, M. M.; Selkoe, D. J.; Lansbury, P.T. Jr.; Fink, A. L.; Teplow, D. B. Amyloid 2000, 7, 166-178)。自体会合体をpH7.50及び37℃で多様な時間培養した後、カットオフMW10000の膜を通過するAβ40(○)又はAβ42(●)(初期濃度:4.0μM)のフラクションを測定した結果を図5に示した。この結果によれば、大部分(>80%)のAβ42(MW 4514)がpH7.50媒体に露出された直後に、膜を通過している。およそ10分かかる膜ろ過中、膜を通過できない大きなオリゴマーが生成されることもあり得る。従って、ほとんどのAβ42が膜を通過したものと思われる。
【0096】
Aβ42の二量体と三量体は単量体よりはるかに少なく形成されることが当業界でよく知られている(Bitan, G.; Kirkitadze, M. D.; Lomakin, A.; Vollers, S. S.; Benedek, G. B.; Teplow, D. B. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2003, 100, 330; Hepler, R. W.; Grimm, K. M.; Nahas, D. D.; Breese, R.; Dodson, E. C.; Acton, P.; Keller, P. M.; Yeager, M.; Wang, H.; Shughrue, P.; Kinney, G.; Joyce, J. G. Biochemistry 2006, 45, 15157-15167))。従って、Aβ42は反応初期には大部分単量体として存在する。3時間又は36時間後、Aβ42の約2/3又は90%が、それぞれ、膜を通過できない大きな会合体に変えられた。しかし、Aβ40の場合には、反応初期には90%以上が膜を通過し、24時間後には50%が膜を通過した。
【0097】
Aβ40又はAβ42(4.0μM)を切断剤Aと反応させて得られたMALDI−TOF質量スペクトルを図6と図7にそれぞれ示した。これらの図に示されたように、Aβ40及びAβ42は切断剤Aによって切断された。Aβ1−20及びAβ1−21は切断生成物に含まれている(本実施例において、Aβ切断はAβ42のアミノ酸配列によって命名され、m/z値が表示されたピークに該当する切断生成物の構造はMALDI LIFT−TOF/TOF MSで確認された)。
【0098】
MALDI−TOF MSのピークの強度が相対濃度とは関係がないので、強いMALDI−TOF MSピークを示すことなく、一部のオリゴペプチド断片が相当量で存在していてもよい。
【0099】
実施例で特に断らない限り、切断反応は切断剤を含有する溶液にAβ40又はAβ42を加えて開始し、切断収率は下記工程を通して評価した。
【0100】
切断反応によって形成された生成物溶液をカットオフ分子量10000の膜を通して通過させてAβ40又はAβ42の集積体を除去した。その後、HPLCを使用して切断生成物を分離し、切断生成物の総量を測定した。アルカリ加水分解によって切断生成物をアミノ酸に分解し、その後、アミノ酸の総量をフルオレスカミンで測定して切断生成物の総量を決定した。切断生成物の量を最初に加えられたAβ40又はAβ42の量と比較して切断収率を計算した。
【0101】
切断剤Aの濃度を多様に変化させながら、Aβ40又はAβ42(4.0μM)及び37℃、pH7.50で36時間反応させて測定した切断収率を図8に示した。本実施例において、Aβ40又はAβ42の切断収率は、4〜6個の異なる反応混合物を使用して測定した平均値である。各切断収率の相対標準偏差(%RSD)は5〜15%である。
【0102】
Aβ40又はAβ42は切断剤Aと反応する前に、自体会合のための一定期間緩衝液で反応させた。切断収率を再び測定し、その結果を図9に示した。
【0103】
切断反応の進行に対する情報を得るために、Aβ40又はAβ42を37℃、pH7.50で切断剤Aと一定時間反応させて切断収率を測定し、その結果を図10に要約した。
【0104】
図9の結果によると、Aβ42の24時間予備反応後、切断剤Aが反応混合物に加えられるとき、プロトフィブリル又はフィブリルの形成をもたらすAβ42の高分子化によって切断は殆ど観察されなかった。Aβ42を3〜6時間予備反応させた後に、切断剤Aが反応混合物に加えられるとき、切断収率は、予備反応無しで切断剤Aを最初に加えて得たものより、それほど少なくなかった。これは、最初の3〜6時間の間にAβ42単量体の量のかなりの低減を示す図5の結果と対照的である。これらの結果は、Aβ42単量体、プロトフィブリル、あるいはフィブリルではなく、オリゴマーが切断剤Aによって切断されたことを表している。
【0105】
Aβ40を24時間予備反応させた後、切断剤Aの追加は、かなりのペプチド切断をもたらし、長時間の予備反応は切断収率を減少させる。これは、Aβ42と比較してAβ40の場合、プロトフィブリル又はフィブリル形成速度の低下と一致している。さらに、それは、Aβ40のプロトフィブリル又はフィブリルは切断剤Aによって切断されていないことを明らかにしている。切断剤AによるAβ40の切断収率は、予備反応によって大幅に減少されないので、Aβ40単量体はろ過実験の結果を考慮して、断片の主要ソースではない。
【0106】
高い切断剤濃度で得られた切断剤Aの切断収率の上限線は約30%である。Aβ42オリゴマーが短命の中間体として存在して、切断剤によるAβ42オリゴマーの切断はオリゴマーの高分子化反応と競争関係にある。切断剤によるAβ42の切断はオリゴマーの濃度に対して1次反応であるので、切断剤濃度が固定される限り、切断による標的オリゴマーの半減期はペプチドの濃度によって影響されない。
【0107】
オリゴマーのポリマー化反応はペプチド濃度において少なくとも2次以上であるので、半減期はペプチドの濃度を減少させることによって増大される。Aβ42の総濃度はアルツハイマー病患者の脳で1nMよりはるかに低くなる(Lue, L. F.; Kuo, Y. M.; Roher, A. E.; Brachova, L.; Shen, Y.; Sue, L.; Beach, T.; Kurth, J. H.; Rydel, R. E.; Rogers, J. Am. J. Pathol. 1999, 155, 853-862)。
【0108】
本実施例において、Aβ42の濃度が4.0μMのとき、反応収率は100nMの切断剤濃度でも切断反応が発生した。Aβ42の濃度が生体内レベルまで低くなったとき、100nMより遥かに低い切断剤濃度でも重要な切断がかなり進むことになる。
【0109】
(2)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
pH7.50及び37℃で多様な時間反応させた後、カットオフ分子量10000の膜を通過するAmのフラクションを図11に示した。Amとその二量体又は三量体のような小さなオリゴマーは上記膜を通過することができる。フィルタを通過するAmの量は数時間内に半分以下に減少された。
【0110】
Am(4.0μM)を切断剤Aと反応させた後、HPLCで精製した生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図12に示した。本実施例と以下の実施例において、Amのための切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルは下記に記述された方法によってHPLCで精製後に測定した。
【0111】
図12に示したように、Amは切断剤Aによって切断される。上記切断生成物はAm20−37及びAm19−37(Am断片はAmのアミノ酸配列によって命名され、m/z値が表示されたピークに該当する切断生成物の構造は、MALDI LIFT−TOF/TOF MSによって確認された)を含有している。
【0112】
MALDI−TOF MSのピーク強度が相対濃度とは関係がないので、強いMALDI−TOF MSピークを示すことなく、一部のオリゴペプチド断片は相当な濃度で存在していてもよい。
【0113】
本実施例で特に断らない限り、Amの切断反応は、切断剤を含有する溶液にAmを加えることによって開始し、切断収率は下記工程を通して評価した。切断反応から生成された生成物溶液を膜(カットオフ分子量=10000)を通して通過させてAmの集積体を除去し、その後、HPLCを使用して切断生成物を分離した。切断生成物の総量を測定した。切断生成物をアルカリ加水分解によってアミノ酸に変換し、アミノ酸の総量を、フルオレスカミンを用いて測定して、切断生成物の量を決定した。切断収率は切断生成物の量をAmの最初量と比較することによって計算した。
【0114】
切断剤Aの濃度を多様に変化させながら、37℃、pH7.50でAm(4.0μM)と36時間反応させた後に測定した切断収率を図13に示した。本実施例において、Amの切断収率は4〜6個の異なる反応混合物を用いて測定した平均値である。各切断収率の相対標準偏差は5〜15%である。
【0115】
(3)パーキソン病気に関連したα−シヌクレインのオリゴマーの切断
本実施例において、若干変形させたα−シヌクレイン(Syn)類似体を基質として使用して遺伝子組換えによってα−シヌクレイン(Syn)を得た。ニッケルキレート法で精製を促進するために、C−末端に、ヒスチジン標識(LEHHHHHH)が付着された。転写過程で干渉を避けるために、5−位のアミノ酸残基としてメチオニンの代わりにロイシンを導入した。
【0116】
Synが自体会合によって大きな会合体を形成する速度に対する情報を得るために、pH7.50及び37℃で一定時間反応(培養)中の自体会合後の0.22mmミリポアフィルタを通過するSynの量を測定し、その結果を図14に要約した。相当量のSynが反応容器に吸着されるか、又は上記フィルタを通して通過することができないプロトフィブリル又はフィブリルが、数日内に形成されることが分かる。
【0117】
前後関係で別途明らかにしない限り、Synの切断反応は切断剤の溶液にSynを加えることによって開始される。切断収率は下記方法によって計算した。
【0118】
切断反応によって形成された生成物溶液をカットオフ分子量10000の膜を通過させ、Syn及びその会合体を除去した。その後、HPLCを使用して切断生成物を分離し、切断生成物の総量を評価した。アルカリ加水分解を通して切断生成物をアミノ酸に分解させた。続いて、アミノ酸の総量をフルオレスカミンで評価して切断生成物の総量を定量した。切断収率は切断生成物の量を最初に加えられたSynの量と比較して計算した。
【0119】
切断剤Aの濃度を多様に変えながら、Syn(70μM)を37℃、pH7.50で3日間反応させることによって測定された切断収率を図15に示した。本実施例において、切断収率は4〜6個の異なる反応溶液を使用して測定した平均値である。本実施例で使用されるSynの分子量が約15000であるので、Synの切断によって形成された一部のタンパク質断片は大きすぎて、カットオフ分子量10000の膜を通過できなくなる。過小評価のこの可能な理由を勘案すれば、図15にまとめられた切断収率はかなり大きくなる。
【0120】
(4)対照ペプチド又はタンパク質との反応
切断剤Aに対して、下記の対照実験を実施した。この対照実験に使用したペプチド又はタンパク質はアミロイドを形成しない。この対照実験は、切断剤Aが実施例の条件下でそのようなペプチド又はタンパク質を切断しなかったことを確認するために行われた。スクランブル配列(KVKGLIDGAHIGDLVYEFMDSNSAIFREGVGAGHVHVAQVEF、AIAEGDSHVLKEGAYMEIFDVQGHVFGGKIFRVVDLGSHNVA)(4.0μM)とAβ42と同じ42個のアミノ酸を有する2種スクランブルAβ42は、37℃、pH7.50で36時間、切断剤A(3.0μM)との反応によって切断されなかった。
【0121】
ウマ心臓ミオグロビン、ウシ血清γ−グロブリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、卵白リゾチーム、卵白オボアルブミン、ウシ膵臓インスリン(それぞれ2〜7μM)を37℃、pH7.50で36時間切断剤A(5.0μM)と反応させたとき、切断反応は観察されなかった。
【0122】
切断剤Aの認識部位が除去されたとき、Aβ40、Aβ42、Am及びSynのオリゴマーを切断する切断剤Aの能力が喪失されているか否かを確認するために、シクレンのCoIII複合体(20μM)を37℃、pH7.50で36時間、Aβ40(4.0μM)、Aβ42(4.0μM)、Am(4.0μM)又はSyn(70μM)と反応させた。切断反応は観察されなかった。
【実施例2】
【0123】
切断剤Bを図16の経路に従って合成した。
【化10】

【0124】
式(2a)の化合物の合成
ジメチルスルホキシドシード(10mL)中の2−アミノチオフェノール(1.3g、10mmol)とN−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−4−アミノベンズアルデヒド(1.8g、10mmol)との混合物を1.5時間170℃に加熱した。室温に冷却後、反応混合物を水に注いだ。生成された混合物を酢酸エチル(50mL×2回)で抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥した。溶媒の蒸発によって得られた残渣をアセトニトリルで再結晶して、2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エタノール(2a)を黄色固体として得た。
Rf 0.20 (EA/ヘキサン 1:1); 1H NMR (CDCl3): δ 7.97 (d, 1 H), 7.95 (d, 2 H), 7.85 (d, 1 H), 7.45 (t, 1 H), 7.32 (t, 1 H), 6.81 (d, 2 H), 3.88 (t, 2 H), 3.60 (t, 2 H), 1.80 (br s, 3 H); 13C NMR (CDCl3): δ 154.09, 151.61, 134.38, 129.03, 126.10, 124.34, 122.23, 121.67, 111.96, 77.02, 60.19, 54.66, 39.03; MS (MALDI-TOF) 285.35 m/z (M+H)+, C16H17NOSに対する計算値285.10。
【0125】
式(2b)と(2c)の化合物の合成
アセトニトリル(100mL)中の式(1g)の化合物(2.9g,5mmol)の攪拌された溶液に、N−α−Cbz−L−アラニン(1.2g、5mmol)とDIEA(2.9mL、17mmol)を加えた。反応混合物に、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU;2.1g、5.5mmol)を加え、混合物を1時間攪拌した。溶液を蒸発させて得られた残渣をEA(100mL)に溶かした。この酢酸エチル溶液を5%クエン酸水溶液(50mL)、5%NaCO水溶液(50mL)及び塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーで10−[(S)−3−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−プロピオニルアミノ)−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(2b)を無色油として得た。
Rf 0.2 (EA/ヘキサン 1:1). 1H NMR (CDCl3): δ 7.30 (s, 5H), 5.02 (s, 2), 3.50-3.10 (br, 15H) 2.60-2.30 (br, 6H), 1.57-1.49 (br, 2H), 1.39-1.36 (m, 27H), 1.18 (s, 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 171.58, 154.82, 154.79, 154.22, 135.42, 127.55, 78.49, 65.71, 53.42, 49.56, 48.92, 47.57, 47.18, 46.53, 45.25, 37.68, 29.92, 27.64, 18.32; MS (MALDI-TOF) m/z 735.88 (M+H)+, C37H63N6O9に対する計算値735.46。
【0126】
EtOH(80mL)中の式(2b)の化合物(2.0g、2.7mmol)と10%Pd/C(1.0g)の懸濁液を1気圧水素下で24時間攪拌した。触媒をセライトでろ過し、溶媒を蒸発させて、10−[(S)−3−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−プロピオニルアミノ)−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(2c)を固体として得た。
1H NMR (CDCl3): δ 7.49 (s, 1H), 3.63-3.18 (br, 15H), 2.72-2.52 (br, 6H), 1.88-1.75 (br, 2H), 1.73-1.60 (m, 2H), 1.50-1.40 (m, 27H), 1.40-1.30 (d, 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 171.98, 155.03, 154.69, 154.25, 78.57, 78.42, 78.28, 53.60, 52.95, 49.72, 49.01, 47.80, 47.07, 46.54, 46.18, 37.56, 29.92, 27.64, 22.99; MS (MALDI-TOF) 601.58 m/z (M+H)+, C29H57N6O7に対する計算値601.42。
【0127】
式(2d)の化合物の合成
式(1b)の化合物(0.20g、1.1mmol)、式(2a)の化合物(0.20g、0.70mmol)及びDIEA(0.38mL、2.7mmol)をTHF(50mL)中で一緒に混合し、混合物を室温で8時間攪拌した。溶媒を蒸発して得られた残渣をカラムクロマトグラフィーで分離して、(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−[2−(4,6−ジクロロ−[1,3,5]トリアジン−2−イルオキシ)−エチル]−メチル−アミン(2d)を得た。
Rf 0.7 (EA/ヘキサン 1:4); 1H NMR (CDCl3): δ 7.97 (t, 3H), 7.85 (d, 1H), 7.45 (t, 1H), 7.36 (t, 1H), 6.78 (d, 2H), 4.67 (t, 2H), 3.84 (t, 2H), 3.12 (br, 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 172.53, 171.84, 168.15, 155.13, 151.39, 135.02, 129.21, 126.27, 124.59, 122.66, 122.46, 121.74, 112.14, 67.78, 50.58, 38.89; MS (MALDI-TOF) m/z 432.29 (M+H)+, C19H16Cl2N5OSに対する計算値432.04。
【0128】
式(2e)〜(2g)の樹脂の合成
式(2d)の化合物(62mg、0.15mmol)のTHF溶液(1.5mL)に、PS−チオフェノール樹脂(Argonaut Technologies社製、50mg、0.074mmol)とDIEA(0.10mL、0.74mmol)を加えた。この混合物を65℃で一晩加熱した。ろ過後、生成された樹脂(2e)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0129】
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)、4−クロロベンジルアミン(71μL、0.58mmol)及びDIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。この混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(2f)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0130】
1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(130mg、0.74mmol)の溶液と1N NaOH水溶液(160μL)との混合物に、式(2f)の樹脂を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(2g)を1,4−ジオキサン及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0131】
式(2h)及び(2i)の化合物、並びに切断剤Bの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(2g)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(Argonaut Technologies社製、30mg、0.12mmol)と式(2c)の化合物(39mg、0.074mmol)を加えた。反応混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、生成された残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{3−[4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−(4−クロロ−ベンジルアミノ)−{1,3,5}トリアジン−2−イルアミノ]−(S)−プロピオニルアミノ}−プロピル)−1,4,7,10テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(2h)を得た。
Rf 0.2 (EAのみ); 1H NMR (CDCl3): δ 8.13 (d, 2 H), 7.70 (d, 1 H), 7.51 (d, 1 H), 7.40 (d, 2 H), 7.27 (d, 2 H), 4.58 (d, 2 H), 3.8-3.2 (br, 12H), 2.5 (br, 6H), 2.1 (br, 2H), 1.63 (br, 4H), 1.5-1.3 (m, 31H), 0.9-0.8 (dd 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 164.89, 161.91, 154.33, 149.67, 142.56, 141.06, 126.72, 124.82, 124.01, 123.53, 118.89, 109.53, 78.51, 78.31, 75.58, 53.92, 52.91, 48.92, 48.08, 43.31, 39.35, 37.97, 30.86, 28.67, 27.65, 19.03, 13.10; MS (MALDI-TOF) m/z 1102.59 (M+H)+,C55H78ClN12O8Sに対する計算値1102.54。
【0132】
実施例1の式(1h)で化合物に対して記述しように、式(2h)の化合物をTFAで処理して、2−[4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−(4−クロロ−ベンジルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ]−N−[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデク−1−シル)−プロピル]−(S)−プロピオンアミド(2i)のTFA塩を得た。式(2i)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (CDCl3): δ 7.95 (s, 1H), 7.92-7.85 (q, 3H), 7.45 (t, 1H), 7.37-7.28 (m, 5H), 6.79 (t, 2H), 4.70-4.40 (br, 2H), 3.78 (br, 2H), 3.13-2.70 (br, 15H), 2.74 (s, 3H), 2.58-2.44 (br, 6H), 1.93 (m, 1H), 1.66-1.55(br, 2H), 1.44-1.19 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3): δ 173.57, 169.69, 168.84, 163.26, 162.01, 155.42, 152.65, 138.23, 135.63, 132.63, 130.76, 130.52, 130.07, 127.63, 125.90, 123.26, 123.08, 122.51, 113.29, 69.08, 67.48, 52.18, 51.49, 50.44, 45.22, 43.73, 43.18, 39.98, 31.51, 24.91; MS (MALDI-TOF) m/z 801.57 (M+H)+, calcd for C40H54ClN12O2S 801.39; HRMS m/z 801.3907. (M+H)+, C40H54ClN12O2Sに対する計算値801.3896。
【0133】
切断剤Bの原液は、実施例1で切断剤Aに対して記述したように、式(2i)の化合物から得た。
【0134】
切断剤Bの活性試験
(1)アルツハイマー病に関連したAβ40及びAβ42のオリゴマーの切断
Aβ40又はAβ42(4.0μM)と切断剤Bとを反応させることによって得られたMALDI−TOF質量スペクトルをそれぞれ図17及び図18に示した。図17及び図18に示されたように、Aβ40及びAβ42は切断剤Bを用いて切断され、Aβ1−20及びAβ1−21が切断生成物に含まれている。
【0135】
MALDI−TOF MSのピーク強度が相対濃度とは関係がないので、強いMALDI−TOF MSピークを示すことなく、一部のオリゴペプチド断片は相当量で存在していてもよい。
【0136】
切断剤Bの濃度を多様に変えながら、Aβ40又はAβ42(4.0μM)を37℃、pH7.50で36時間反応させて測定した切断収率を図19に示した。高い切断剤濃度で得られた切断剤BによるAβ40及びAβ42の切断のための切断収率の上限線は、それぞれ約12%及び17%である。
【0137】
Aβ42の濃度が4.0μMのとき、切断剤B濃度30〜50nMでも切断反応を観察できた。もし、Aβ42の濃度が生体内のレベルに低くなれば、重要な切断反応は、実施例1で説明したように、切断剤Bの濃度でさえ、30〜50nMより遥かに低く起こることになる。
【0138】
(2)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)と切断剤Bとの反応後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図20に示した。上記スペクトルはAmが切断剤Bによって切断され、Am20−37、Am19−37及びAm17−37が切断生成物に含まれていることを示している。
【0139】
切断剤Bの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)との反応後に、測定した切断収率を図21に示した。切断剤B(1.0μM)との反応前に、多様な期間にわたってAm(4.0μM)の予備反応後に、測定した切断収率を22に示した。
【0140】
Amを36時間以上予備反応させた後、反応混合物に切断剤Bを加えたとき、プロトフィブリル又はフィブリルの形成の原因となるAmの高分子化によって、切断反応はほとんど起こらない。
【0141】
Amを6時間予備反応させた後、反応混合物に切断剤Bを加えたとき、Amの切断によって形成された生成物の量は、Amの予備反応無しに、最初に加えた切断剤Bとの反応で得られた量よりそれほど少なくない。これは、図11に示したAm単量体及び小さなオリゴマーが、6時間の間に、かなり減少していることと対照的である。これらの結果はAm単量体、プロトフィブリル及びフィブリルの代わりにAm単量体が切断剤Bによって切断されたことを示している。
【0142】
切断反応の進行を調べるために、37℃、pH7.50で一定時間Amと切断剤Bと反応させて測定した切断収率を図23に要約した。図23の結果は、たとえ反応時間を36時間以上延ばしても、反応収率が増加しないことを明らかにしている。
【0143】
(3)パーキソン病気に関連したα−シヌクレインのオリゴマーの切断
切断剤Bの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で3日間 Syn(70μM)と反応させて測定した切断収率を図24に示した。
【0144】
本実施例で使用されたSynの分子量は約15000であるので、Synの切断により形成される一部のタンパク質断片が多すぎてカットオフ分子量10000の膜を通して通過できなくなる。過小評価の可能な理由を勘案すれば、図24にまとめられた切断収率はかなり大きくなる。
【0145】
(4)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Bのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例3】
【0146】
切断剤Cを図25の経路に従って合成した。
【化11】

【0147】
式(3a)と(3b)の樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(50mg、0.046mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びシクロドデシルアミン(66μL、0.51mmol)を加え、続いて、DIEA(63μL、0.36mmol)を加えた。混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(3a)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0148】
式(3a)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(80mg、0.46mmol)の溶液と水性1N NaOH(93μL)との混合物を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(3b)を1,4−ジオキサンとMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0149】
式(3d)及び(3e)の化合物、並びに切断剤Cの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(3b)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(Argonaut Technologies社製、19mg、0.075mmol)と式(3c)の化合物(28mg、0.046mmol)を加えた(P. S. Chae, M. Kim, C. Jeung, S. D. Lee, H. Park, S. Lee, J. Suh, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 2396-2397)。反応混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{3−[3−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−シクロドデシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−プロピオニルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(3d)を得た。
Rf 0.3 (EAのみ); 1H NMR (CDCl3): δ 7.95 (t, 3H), 7.83 (d, 1H), 7.41 (t, 1H), 7.33 (br, 1H), 6.78 (m, 2H), 4.67 (br, 2H), 3.75 (br, 2H), 3.67 (br, 2H), 3.55-3.18 (br, 14H), 3.10 (s, 3H), 2.60 (br, 5H), 2.50 (br, 4H), 1.61-1.58 (br, 6H), 1.45-1.41 (m, 27H), 1.33 br, 18H); 13C NMR (CDCl3): δ 184.41, 173.21, 171.70, 169.97, 168.67, 156.28, 155.60, 155.24, 154.34, 150.84, 134.47, 129.75, 128.97, 125.99, 125.01, 124.21, 122.21, 121.35, 111.57, 111.46, 79.46, 62.94, 56.52, 55.11, 51.07, 49.97, 48.36, 47.41, 46.54, 40.92, 39.27, 36.76, 35.63, 29.69, 28.62, 23.50, 21.32; MS (MALDI-TOF) m/z 1144.02 (M+H)+, C60H95N12O8Sに対する計算値1143.70。
【0150】
実施例1の式(1h)の化合物に対して記述したように、式(3d)の化合物をTFAで処理して、3−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−シクロドデシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−N−[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデク−1−シル)−プロピル]−プロパンアミド(3e)のTFA塩を得た。式(3e)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (CDCl3): δ 7.94 (br, 3H), 7.83 (d, 1H), 7.45 (br, 1H), 7.35 (br, 1H), 6.75 (d, 2H), 4.57 (br, 2H), 3.81 (br, 2H), 3.63 (br, 2H), 3.3-2.9 (br, 17H), 2.76 (br, 5H), 2.44 (br, 4H), 1.65-1.61 (br, 6H), 1.31 (br, 18H); 13C NMR (CDCl3): δ 188.78, 188.78, 172.02, 169.91, 169.79, 169.44, 157.24, 151.78, 133.60, 129.56, 126.89, 125.41, 125.16, 121.81, 120.57, 112.28, 112.02, 66.26, 65.57, 60.62, 50.69, 49.67, 48.68, 44.63, 42.51, 39.33, 39.16, 37.01, 30.20, 29.94, 23.82, 23.51, 21.48; MS (MALDI-TOF) m/z 843.79 (M+H)+, C45H71N12O2Sに対する計算値843.55; HRMS m/z 843.5547. (M+H)+, C45H71N12O2Sに対する計算値843.5538。
【0151】
切断剤Cの原液は、実施例1で切断剤Aに対して記述したように、式(3e)の化合物から得た。
【0152】
切断剤Cの活性試験
(1)アルツハイマー病に関連したAβ40及びAβ42のオリゴマーの切断
切断剤C(0.1〜10μM)を、37℃、pH7.50で36時間、Aβ40(4.0mM)と反応させたとき、MALDI−TOF MSデータはAβ40の切断の少しの証拠も明らかにしていない。
【0153】
Aβ42(4.0μM)を切断剤Cと反応させて得られたMALDI−TOF MS質量スペクトルを図26に示した。図26に示されるように、Aβ42は切断剤Cにより切断され、Aβ1−20が切断生成物に含まれている。MALDI−TOF MSピークの強度が相対濃度とは関係がないので、強いMALDI−TOF MSピークを示すことなく、一部のオリゴペプチド断片は相当量で存在していてもよい。
【0154】
切断剤Cの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Aβ40又はAβ42(4.0μM)と反応させて測定した切断収率を図27に示した。高い切断剤濃度で得られた切断剤CによりAβ42の切断のための切断収率の上限線は約12%である。Aβ42の濃度が4.0μMのとき、切断剤C濃度100nMでも切断反応を観察できた。もし、Aβ42の濃度が生体内のレベルに低くなれば、重要な切断反応は、実施例1に説明されたように、切断剤Cの濃度でさえ、100nMより遥かに低く起こることになる。
【0155】
(2)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Cと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図28に示した。図28に示されるように、アミリンは切断剤Cにより切断され、Am17−37が切断生成物に含まれている。
【0156】
切断剤Cの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図29に示した。
【0157】
(3)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Cのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例4】
【0158】
切断剤Dを図30の経路に従って合成した。
【化12】

【0159】
式(4a)及び(4b)の樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(50mg、0.046mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びシクロドデシルアミン(66μL、0.51mmol)を加え、続いて、DIEA(63μL、0.36mmol)を加えた。この混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(4a)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0160】
式(4a)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(80mg、0.46mmol)の溶液と水性1N NaOH(93μL)との混合物を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(4b)を1,4−ジオキサンとMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0161】
式(4c)及び(4d)の化合物、並びに切断剤Dの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(4b)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(Argonaut Technologies社製、19mg、0.075mmol)と式(3c)の化合物(28mg、0.046mmol)を加えた。反応混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{3−[3−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−(2−メチル−ベンジルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−プロピオニルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(4c)を得た。
Rf 0.4 (EAのみ); 1H NMR (CDCl3): δ 7.96 (t, 3H), 7.83 (d, 1H), 7.43 (t, 1H), 7.32 (br, 1H), 7.15 (br, 4H), 6.77 (d, 2H), 4.53 (br, 4H), 3.75 (br, 2H), 3.66 (br, 2H), 3.5-3.1 (br, 14H), 3.09 (s, 3H), 2.58 (br, 4H), 2.49 (br, 4H), 2.32 (s, 3H), 1.60 (br, 2H), 1.46-1.41 (m, 27H); 13C NMR (CDCl3): δ 186.87, 179.99, 173.28, 171.18, 168.68, 155.26, 154.35, 150.86, 136.88, 136.10, 134.50, 130.27, 128.99, 127.27, 126.09, 126.01, 125.02, 124.24, 122.24, 121.45, 121.38, 111.55, 80.31, 79.51, 63.54, 56.56, 55.10, 54.95, 50.98, 49.95, 48.35, 47.65, 40.01, 39.03, 36.93, 29.71, 28.65, 19.10; MS (MALDI-TOF) m/z 1081.89 (M+H)+, C56H81N12O8Sに対する計算値1081.59。
【0162】
式(4c)の化合物を、実施例1で式(1h)の化合物に対して記述したように、TFAで処理して、3−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−(2−メチル−ベンジルアミノ)−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−N−[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデク−1−シル)−プロピル]−プロピオアミド(4d)のTFA塩を得た。式(4d)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (CDCl3): δ 7.96 (t, 3H), 7.85 (d, 1H), 7.49 (br, 1H), 7.37 (br, 1H), 7.15 (br, 4H), 6.80 (d, 2H), 4.56 (m, 4H), 3.58 (br, 2H), 3.3-2.8 (br, 17H), 2.33 (br, 8H), 2.31 (s, 3H), 1.48 (br, 2H); 13C NMR (CDCl3): δ 186.11, 180.06, 171.65, 169.85, 169.01, 151.51, 151.17, 136.08, 134.83, 132.77, 130.66, 129.65, 129.42, 127.99, 127.93, 127.82, 126.31, 126.13, 125.33, 121.76, 121.05, 112.09, 111.90, 66.12, 62.87, 53.89, 50.44, 49.72, 44.38, 44.22, 42.34, 42.09, 39.36, 36.63, 29.71, 19.07; MS (MALDI-TOF) m/z 781.73 (M+H)+, C41H57N12O2Sに対する計算値781.44; HRMS m/z 781.4457. (M+H)+, C41H57N12O2Sに対する計算値781.4443。
【0163】
切断剤Dの原液は、実施例1で切断剤Aに対して記述したように、式(4d)の化合物から得た。
【0164】
切断剤Dの活性試験
(1)アルツハイマー病に関連したAβ40及びAβ42のオリゴマーの切断
切断剤D(0.1〜10μM)を、37℃、pH7.50で36時間、Aβ40(4.0μM)と反応させたとき、MALDI−TOF MSデータはAβ40の切断の少しの証拠も明らかにしていない。
【0165】
Aβ42(4.0μM)を切断剤Dと反応させて得られたMALDI−TOF MS質量スペクトルを図31に示した。図31に示されるように、Aβ42は切断剤Dにより切断され、Aβ1−20が切断生成物に含まれている。MALDI−TOF MSピークの強度が相対濃度とは関係がないので、強いMALDI−TOF MSピークを示すことなく、一部のオリゴペプチド断片は相当量で存在していてもよい。
【0166】
切断剤Dの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Aβ40又はAβ42(4.0μM)と反応させて測定した切断収率を図32に示した。高い切断剤濃度で得られた切断剤DによりAβ42の切断のための切断収率の上限線は約12%である。Aβ42の濃度が4.0μMのとき、切断剤D濃度50〜100nMでも切断反応を観察できた。もし、Aβ42の濃度が生体内のレベルに低くなれば、重要な切断反応は、実施例1に説明されたように、切断剤Dの濃度でさえ、50〜100nMより遥かに低く起こることになる。
【0167】
(2)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Dと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図33に示した。図33に示されるように、Amは切断剤Dにより切断され、Am19−37が切断生成物に含まれている。
【0168】
切断剤Dの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図34に示した。
【0169】
(3)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Dのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例5】
【0170】
切断剤Eを図35の経路に従って合成した。
【化13】

【0171】
式(5a)と(5b)樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(55mg,0.15mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びブチルアミン(49μL、0.58mmol)を加え、続いて、DIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(5a)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0172】
式(5a)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(130mg、0.74mmol)の溶液と水性1N NaOH(160μL)との混合物に加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(5b)を1,4−ジオキサンとMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0173】
式(5c)及び(5d)の化合物、並びに切断剤Eの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(5b)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(30mg、0.12mmol)と式(1g)の化合物(39mg、0.074mmol)を加えた。混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空下で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−[3−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−ブチルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(5c)を得た。
Rf 0.2 (EA/ヘキサン 1:1); 1H NMR (CDCl3): δ 7.99 (t, 2H), 7.86 (d, 1H), 7.44 (t, 1H), 7.31 (t, 1H), 6.79 (d, 2H), 4.48 (t, 2H), 3.80 (t, 2H), 3.54-3.11 (br, 16H), 3.11 (s, 3H), 2.61 (br, 6H), 1.73 (m, 2H), 1.53 (m, 2H), 1.46-1.38 (br, 27H), 1.29 (m, 2H), 0.90 (t, 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 170.47, 168.58, 167.25, 156.09, 155.69, 155.35, 154.43, 154.40, 150.92, 134.53, 128.97, 125.97, 124.19, 122.29, 121.56, 121.33, 111.57, 79.55, 79.34, 76.61, 62.54, 55.04, 54.16, 51.13, 50.02, 47.97, 40.52, 39.09, 31.75, 29.68, 28.66, 28.50, 24.93, 20.01, 13.79; MS (MALDI-TOF) m/z 962.33 (M+H)+, C49H75N11O7Sに対する計算値962.28。
【0174】
式(5c)の化合物を実施例1の式(1h)の化合物に記述されたように、TFAで処理して、6−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−N−ブチル−N'−[3−(1,4,7,10−テトラアザ-シクロドデク−1−シル)−プロピル]−[1,3,5]トリアジン−2,4−ジアミン(5d)のTFA塩を得た。式(5d)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (MeOD): δ 7.90 (q, 4 H), 7.49 (t, 1 H), 7.37 (t, 1H), 6.85 (d, 2H), 4.73 (t, 2H), 3.89 (t, 2H), 3.2-3.0 (br, 12H), 2.98-2.86 (br, 4H), 2.84-2.75 (br, 4H), 2.68 (t, 3H), 1.76 (q, 2H), 1.52 (q, 2H), 1.31 (q, 2H), 0.89 (t, 3H); 13C NMR (CDCl3): δ 169.61, 161.13, 160.64, 160.32, 152.72, 151.72, 151.55, 133.49, 128.69, 128.64, 126.35, 124.67, 121.48, 120.93, 120.16, 118.24, 114.36, 111.84, 66.28, 49.98, 46.76, 44.31, 42.01, 41.86, 40.69, 38.95, 38.65, 37.84, 37.52, 30.51, 22.62, 19.55, 12.63; HRMS m/z 662.4073 (M+H)+, C34H52N11OSに対する計算値662.4077。
【0175】
式(5d)の化合物のTFA塩を約3mg/50μLの濃度でメタノールに溶かして得られた溶液に、5〜7当量のLiOHを加え、続いて、CoCl・HOの当量を加えて、式(5d)の化合物のCoII複合体を製造した。複合体を空気中で一日攪拌してCoII複合体をCoIII複合体に酸化させた。CoIIからCoIIIへの酸化は濃紫色の出現を伴っている。HPLCを使用して545nmで検出することによってCoIII複合体を分離し、蒸発させて個体を得た。固体を水に溶かし、室温で数日間放置して切断剤Eの原液を得た。ICPでコバルト含量を測定してこの溶液に入っている切断剤の濃度を決定した。
【0176】
切断剤Eの活性試験
(1)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Eと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図36に示した。図36に示されるように、Amは切断剤Eにより切断され、Am17−37とAm13−37が切断生成物に含まれている。
【0177】
切断剤Eの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図37に示した。
【0178】
(2)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Eのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例6】
【0179】
切断剤Fを図38の経路に従って合成した。
【化14】

【0180】
式(6a)と(6b)の化合物の合成
アセトニトリル(100mL)中の式1gの化合物(2.9g、5.5.5mmol)の攪拌された溶液に、N−α−Cbz−L−ロイシン(0.80g、5mmol)とDIEA(2.9mL、17mmol)を加えた。反応混合物に、HBTU(2.1g、5.5mmol)を加え、混合物を1時間攪拌した。溶液を蒸発させて得られた残渣をEA(100mL)に溶かした。EA溶液を5%クエン酸水溶液(50mL)、5% NaCO水溶液(50mL)及び塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発させ、カラムクロマトグラフィーによって、10−[(R)−3−(4−メチル−2−フェノキシカルボニルアミノ−ペンタノイルアミノ)−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(6a)を無色油として得た。
Rf 0.5 (EA/ヘキサン 2:1); 1H NMR (CDCl3): δ 7.31-7.26 (br, 5H), 4.75-4.33 (br, 2H), 3.63-3.38 (br, 15H), 2.67-2.29 (br, 6H), 1.71-1.58 (m, 5H), 1.50-1.29 (br, 27H), 0.96-0.92 (t, 6H) MS (MALDI-TOF) m/z MS (MALDI-TOF) m/z 776.63 (M+H)+, C40H68N6O9に対する計算値776.50。
【0181】
EA(80mL)中の式(6a)の化合物(1.8g、2.7mmol)と10%Pd/C(1.0g)との懸濁液を1気圧水素下で24時間攪拌した。触媒をセルライトでろ過し、溶媒を蒸発させて、10−[3−(2−アミノ−4−メチル−ペンタノイルアミノ)−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(6b)を固体として得た。
1H NMR (CDCl3): δ 7.72 (s, 1H), 4.60-4.20(br, 2H), 3.70-3.13 (br, 15H), 2.75-2.50 (br, 6H), 1.86-1.62 (m, 4H), 1.54-1.36 (m, 28H), 1.05-0.84 (t, 6H); 13C NMR (MeOD): δ 176.12, 156.31, 156.11, 155.91, 79.70, 54.16, 53.91, 53.18, 49.23, 46.84, 43.98, 37.53, 37.70, 27.70, 27.52, 24.51, 22.84, 22.02, 21.26; MS (MALDI-TOF) m/z 643.57 (M+H)+, C32H62N6O7に対する計算値643.47。
【0182】
式(6c)と(6d)樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(55mg、0.15mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びピペリジン(57μL、0.58mmol)を加え、続いて、DIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(6c)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0183】
式(6c)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(130mg、0.74mmol)の溶液と水性1N NaOH(160μL)との混合物を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(6d)を1,4−ジオキサン及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0184】
式(6e)及び(6f)の化合物、並びに切断剤Fの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(6d)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(30mg、0.12mmol)と式(6b)化合物(48mg、0.074mmol)を加えた。混合物を80℃で8時間過熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{(R)−3−[2−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−ピペリジン−1−イル−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−4−メチル−ペンタノイルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(6e)を得た。
Rf 0.2 (EA/ヘキサン 2:1); 1H NMR (CDCl3): δ 7.96 (q, 3H), 7.84 (d, 1H), 7.45 (t, 1H), 7.30 (t, 1H), 6.78 (d, 2H), 4.56-4.55 (br, 1H), 4.45 (t, 2H), 3.78 (t, 2H), 3.69-3.67 (br, 4H), 3.61-3.21(br, 14H), 3.11(s, 3H), 2.75-2.31(br, 6H), 1.72 (m, 1H), 1.72-1.50 (br, 10H), 1.49-1.29 (br, 27H), 0.93 (m, 6H); 13C NMR (CDCl3): δ 173.17, 170.46, 168.57, 166.78, 165.42, 156.13, 155.78, 155.30, 154.41, 150.89, 134.53, 129.00, 125.99, 124.23, 122.30, 121.60, 121.36, 111.56, 79.44, 76.61, 62.79, 54.88, 53.95, 51.10, 49.96, 49.15, 48.14, 44.46, 41.68, 39.10, 36.99, 29.69, 28.66, 28.51, 25.77, 24.87, 24.72, 24.46, 23.25, 21.80; MS (MALDI-TOF) m/z 1087.60 (M+H)+, C56H86N12O8Sに対する計算値1087.64。
【0185】
式(6e)の化合物を、実施例1で式(1h)の化合物に対して記述したように、TFAで処理して、2−((S)−4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−ピペリジン−1−イル−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−4-メチル−ペンタン酸[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデク−1−シル)−プロピル]−アミド(6f)のTFA塩を得た。式(6f)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (MeOD): δ 7.90 (q, 4H), 7.48 (t, 1H), 7.37 (t, 1H), 6.88 (d, 2H), 4.70-4.68 (br, 1H), 4.52 (t, 2H), 3.89 (t, 2H), 3.82-3.68 (br, 4H), 3.20-3.05 (br, 13H), 3.02-2.93 (br, 4H), 2.85-2.80 (br, 4H), 2.59 (t, 2H), 1.75-1.50 (br, 7H), 0.89 (t, 6H) ; 13C NMR (MeOD): δ 173.16, 169.35, 161.64, 161.45, 158.40, 157.85, 157.30, 153.47, 151.32, 133.84, 128.59, 126.14, 124.46, 121.35, 120.62, 116.53, 111.61, 65.65, 65.47, 53.59, 50.18, 50.01, 46.77, 45.25, 44.06, 42.06, 41.84, 41.09, 37.83, 36.60, 25.09, 24.54, 23.81, 21.90, 20.64, 14.04; HRMS m/z 787.4913 (M+H)+, C41H63N12O2Sに対する計算値787.4918。
【0186】
切断剤Fの原液は、実施例5で切断剤Eに対して記述したように、式(6f)の化合物から得た。
【0187】
切断剤Fの活性試験
(1)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Fと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図39に示した。図39に示されるように、Amは切断剤Eにより切断され、Am19−37とAm13−37が切断生成物に含まれている。
【0188】
切断剤Fの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図40に示した。
【0189】
(2)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Fのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例7】
【0190】
切断剤Gを図41の経路に従って合成した。
【化15】

【0191】
式(7a)と(7b)樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(55mg、0.15mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びシクロドデシルアミン(75μL、0.58mmol)を加え、続いて、DIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(7a)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0192】
式(7a)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(130mg、0.74mmol)の溶液と水性1N NaOH(160μL)の混合物を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過後、生成された樹脂(7b)を1,4−ジオキサン及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0193】
式(7c)及び(7d)の化合物、並びに切断剤Fの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(7b)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(30mg、0.12mmol)と式(6b)の化合物(48mg、0.074mmol)を加えた。混合物を80℃で8時間過熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{(R)−3−[2−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル−メチル−アミノ)−エトキシ]−6−シクロドデシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−4−メチル−ペンタノイルアミノ}−プロピル]−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(7c)を得た。
Rf 0.2 (EA/ヘキサン 2:1); 1H NMR (CDCl3): δ 7.96 (q, 3H), 7.84 (d, 1H), 7.43 (t, 1H), 7.30 (t, 1H), 6.77 (d, 2H), 4.47-4.41 (br, 3H), 4.14-4.04 (br, 1H), 3.77 (t, 2H), 3.68-21 (br, 14H), 3.12 (s, 3H), 2.75-2.34 (br, 6H), 1.72-1.55 (br, 5H), 1.52-1.40 (br, 27H), 1.38-1.28 (br, 22H), 0.87 (m, 6H); 13C NMR (CDCl3): δ 173.56, 170.42, 168.50, 166.90, 165.93, 156.07, 155.74, 155.26, 154.39, 150.91, 134.50, 128.97, 125.95, 124.20, 122.26, 121.62, 121.53, 121.32, 111.59, 111.49, 79.49, 79.34, 79.23, 76.73, 63.17, 63.06, 51.05, 49.87, 47.99, 47.55, 47.32, 39.21, 38.83, 30.58, 29.65, 28.64, 28.49, 25.00, 24.83, 24.10, 23.95, 23.73, 23.51, 23.32, 23.08, 22.15, 21.74, 21.17 ; MS (MALDI-TOF) m/z 1185.53 (M+H)+, C63H100N12O8Sに対する計算値1185.75。
【0194】
式(7c)の化合物を、実施例1で式(1h)の化合物に対して記述したように、TFAで処理して、2−((S)−4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−シクロドデシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−4−メチル−ペンタン酸[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクドデ−1−シル)−プロピル]−アミド(7d)のTFA塩を得た。式(7d)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (MeOD): δ 7.90 (q, 4H), 7.47 (t, 1H), 7.35 (t, 1H), 6.81 (d, 2H), 4.80-4.53 (br, 3H), 4.12-4.03 (br, 1H), 3.89 (t, 2H), 3.22-3.12 (br, 10H), 3.10-3.00 (br, 3H), 2.97-2.92 (br, 4H), 2.90-2.73 (br, 4H), 2.63 (t, 2H), 1.76-1.60 (br, 5H), 1.40-1.12 (br, 22H), 0.72 (t, 6H); 13C NMR (MeOD): δ 172.79, 169.50, 161.97, 161.41, 160.99, 159.38, 157.83, 157.28, 151.60, 133.48, 128.80, 126.32, 124.63, 121.45, 120.93, 116.52, 111.63, 66.45, 65.47, 53.76, 49.94, 46.79, 44.15, 41.96, 41.92, 37.52, 24.66, 23.61, 23.53, 23.37, 23.52, 23.10, 22.90, 22.10, 20.86, 20.46, 14.06; HRMS m/z 885.5991 (M+H)+, C48H77N12O2Sに対する計算値885.6013。
【0195】
切断剤Gの原液は、実施例5で切断剤Eに対して記述したように、式(7d)の化合物から得た。
【0196】
切断剤Gの活性試験
(1)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Gと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図42に示した。図42に示されるように、Amは切断剤Fにより切断され、Am20−37とAm17−37が切断生成物に含まれている。
【0197】
切断剤Gの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図43に示した。
【0198】
(2)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Gのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。
【実施例8】
【0199】
切断剤Hを図44の経路に従って合成した。
【化16】

【0200】
式(8a)と(8b)の化合物の合成
アセトニトリル(100mL)中の式(1g)の化合物(2.9g、5mmol)の攪拌された溶液に、N−α−Cbz−L−チロシン(1.1g、5mmol)とDIEA(2.9mL、17mmol)を加えた。反応混合物にHBTU(2.1g、5.5mmol)を加え、混合物を1時間攪拌した。溶液を蒸発させて得られた残渣をEA(100mL)に溶かした。EA溶液を5%クエン酸水溶液(50mL)、5% NaCO水溶液(50mL)及び塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を蒸発し、カラムクロマトグラフィーによって、10−{(S)−3−[3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−フェノキシカルボニルアミノ−プロピオニルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(8a)を無色油として得た。
Rf 0.5 (EA/ヘキサン 3:1). 1H NMR (CDCl3): δ 7.42-7.23 (br, 5H), 7.07-6.85 (d, 2H), 6.77-6.62 (d, 2H), 4.60-4.13 (br, 4H), 3.77-2.92 (br, 16H), 2.69-2.54 (br, 4H), 2.50-2.37 (br, 2H), 1.65-1.31 (br, 29H); MS (MALDI-TOF) m/z 827.75 (M+H)+, C43H66N6O10に対する計算値827.04。
【0201】
EA(80mL)中の式(8a)の化合物(2.0g、2.7mmol)と10%Pd/C(1.0g)との懸濁液を、1気圧水素下で24時間攪拌した。触媒をセルライトでろ過し、溶媒を蒸発させて、10−{3−[(R)−2−アミノ−3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(8b)を固体として得た。
1H NMR (CDCl3): δ 7.2 (s, 1H), 7.05-6.97 (d, 2H), 6.81-6.72 (d, 2H), 3.65-3.58 (m, 1H), 3.53-3.20 (br, 14H), 3.12-3.00 (m, 2H), 2.75-2.48 (br, 8H), 1.76-1.64 (m, 2H), 1.54-1.38 (m, 27H); 13C NMR (CDCl3): δ 173.51, 155.91, 155.51, 130.40, 127.44, 115.62, 79.91, 79.65, 76.58, 56.12, 54.55, 49.76, 47.73, 39.63, 38.56, 37.13, 29.62, 28.61, 28.45, 24.23; MS (MALDI-TOF) m/z 692.84 (M+H)+, C35H60N6O8に対する計算値692.90。
【0202】
式(8c)と(8d)樹脂の合成
NMP(1mL)中の式(2e)の樹脂(55mg、0.15mmol)の懸濁液に、n−ブタノール(1mL)及びジシクロヘキシルアミン(115μL、0.58mmol)を加え、続いて、DIEA(120μL、0.87mmol)を加えた。この混合物を120℃で8時間加熱した。ろ過後、生成された樹脂(8c)をDMF、MC、MeOH及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0203】
式(8c)の樹脂に、1,4−ジオキサン(1.8mL)中のm−CPBA(130mg、0.74mmol)の溶液と水性1N NaOH(160μL)との混合物を加えた。混合物を室温で4時間振盪した。ろ過し、生成された樹脂(8d)を1,4−ジオキサン及びMC(それぞれ3mL×3回)で洗浄し、窒素ガス下で乾燥した。
【0204】
式(8e)及び(8f)の化合物、並びに切断剤Hの合成
アセトニトリル(1.5mL)中の式(8d)の樹脂の懸濁液に、PS−DIEA樹脂(30mg、0.12mmol)と式(8b)の化合物(51mg、0.074mmol)を加えた。反応混合物を80℃で8時間加熱した。混合物をろ過し、樹脂をMC(1mL×3回)で洗浄した。合わせたろ液と洗浄液を真空内で蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、10−{(S)−3−[2−(4−{2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−ジシクロヘキシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオニルアミノ]−プロピル}−1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデカン−1,4,7−トリカルボン酸トリ−tert−ブチルエステル(8e)を得た。
Rf 0.2 (EA:ヘキサン 1:4); 1H NMR (CDCl3): δ 7.87 (t, 3H), 7.73 (d, 2H), 7.35 (t, 2H), 7.20 (m, 2H), 6.75-6.48 (br, 4H), 4.45-4.41(m, 3H), 3.73-3.68(m, 2H), 3.62-3.08 (br, 18H), 3.05-2.65 (br, 6H), 2.19-2.17 (m, 2H), 1.93-1.85(m, 2H), 1.75-1.62 (br, 4H), 1.60-1.42 (br, 31H), 1.58-1.20 (br, 12H); 13C NMR (CDCl3): δ 169.55, 168.64, 165.09, 154.35, 151.53, 150.73, 135.81, 134.52, 129.04, 128.26, 125.53, 124.28, 122.30, 121.75, 121.38, 111.68, 76.71, 64.43, 64.24, 56.28, 56.16, 50.96, 47.21, 39.29, 34.24, 30.35, 29.99, 29.80, 29.72, 28.58, 28.46, 26.12, 25.58, 25.37, 21.22, 20.25, 20.18, 20.09; HRMS m/z 1232.7149 (M+H)+, C66H96N12O9Sに対する計算値1232.7144。
【0205】
式(8e)の化合物を、実施例1で式(1h)の化合物に対して記述しように、TFAで処理して、2−(4−{(S)−2−[(4−ベンゾチアゾール−2−イル−フェニル)−メチル−アミノ]−エトキシ}−6−ジシクロヘキシルアミノ−[1,3,5]トリアジン−2−イルアミノ)−3−(4−ヒドロキシ−フェニル)−N−[3−(1,4,7,10−テトラアザ−シクロドデ−1−シル)−プロピル]−プロピオンアミド(8f)のTFA塩を得た。式(8f)の化合物のTFA塩を使用してNMR及びMS特性を測定した。
1H NMR (CDCl3): δ 8.04 (t, 3H), 7.75 (d, 2H), 7.53 (t, 2H), 7.42 (m, 2H), 6.78-6.64 (br, 4H), 4.48-4.45 (m, 3H), 3.81-3.74 (m, 2H), 3.63-2.75 (br, 24H), 2.25-2.15 (m, 3H), 1.85-1.63 (br, 12H), 1.60-1.42 (br, 10H); 13C NMR (CDCl3): δ 169.55, 168.64, 164.59, 160.23, 153.72, 142.86, 130.91, 128.97, 128.26, 125.52, 122.10, 118.18, 117.51, 113.69, 79.80, 74.60, 73.43, 56.70, 56.53, 39.59, 34.22, 30.88, 30.47, 30.31, 29.56, 27.98, 25.25, 24.93, 21.19, 19.92; HRMS m/z 932.5573 (M+H)+, C51H72N12O3Sに対する計算値932.5571。
【0206】
切断剤Hの原液は、実施例5で切断剤Eに対して記述したように、式(8f)の化合物から得た。
【0207】
切断剤Hの活性試験
(1)2型糖尿病に関連したアミリンのオリゴマーの切断
Am(4.0μM)を切断剤Hと反応させた後、HPLCで精製した切断生成物のMALDI−TOF質量スペクトルを図45に示した。図45に示されるように、Amは切断剤Hにより切断され、Am1−19が切断生成物に含まれている。
【0208】
切断剤Hの濃度を多様に変えながら、37℃、pH7.50で36時間、Am(4.0μM)と反応させた後に、測定した切断収率を図46に示した。
【0209】
(2)対照ペプチド又はタンパク質との反応
対照実験は実施例1と同様にして、切断剤Hのために実施した。対照実験の結果は、実施例1で得られたものと同様であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイド形成性ペプチド又はタンパク質の可溶性会合体に選択的に作用する一般式(1)の切断剤:
(R)−(L)−Z (1)
(式中、Rは、A、A−(Y)−(CH−(Y)−A、A−(CH=CH)−A、A−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A、及びA−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−A−(Y)−(CH−(Y)−Aからなる群から独立的に選択された標的認識部位であり、
Aは独立して、C6−14アリール、又は酸素、硫黄及び窒素からなる群から選択された一つ以上のヘテロ原子を有する5員〜14員のヘテロアリールであり、
ここで、アリール又はヘテロアリールは、独立的にC1−15アルキル、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C1−15アルキルカルボニルオキシ、C1−15アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−15アルキルアミノ、C1−15アルキルカルボニルアミノ、C1−15アルキルスルホニルアミノ、C3−15シクロアルキルアミノ、ホルミル、C1−15アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−15アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイル、C1−15アルキルスルファニルカルボニル、C1−15アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−15アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイルオキシ、C1−15アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−15アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−15アルキルウレイド、C1−15アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−15アルキルスルファニル、C1−15アルキルジスルファニル、スルホ、C1−15アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよく;
YはO又はN−Zであり、ここで、Zは水素又はC1−9アルキルであり;
Lはリンカーであり;
Zは触媒部位として、金属イオン−リガンド複合体であり;
nは独立的に1〜6の整数であり;
m及びoは独立的に0又は1であり;
pは0〜5の整数である。)。
【請求項2】
Aが下記式からなる群から選択され;
pが独立的に0、1又は2であることを特徴とする請求項1に記載の切断剤:
【化1】

(式中、Xは独立的にC、N、NH、O及びSからなる群から選択され、
AはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−12アルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C5−15シクロアルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−6アルキルウレイド、C1−6アルキルスルファニルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルジスルファニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。)。
【請求項3】
Aが下記式からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の切断剤:
【化2】

(式中、XはNH、O、又はSであり、
AはC1−4アルキル、C1−4アルコキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−8アルキルアミノ、C6−12シクロアルキルアミノ、C1−4アルキルカルボニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。)。
【請求項4】
リガンドが下記式からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の切断剤:
【化3】

(式中、リガンド中の窒素原子は酸素、硫黄及びリン原子からなる群から選択された原子に置き換えられ;
リガンドはC6−14アリール又は5員〜14員のヘテロアリールと縮合でき;
リガンドはC1−15アルキル、ヒドロキシ、C1−15アルコキシ、C1−15アルキルカルボニルオキシ、C1−15アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−15アルキルアミノ、C1−15アルキルカルボニルアミノ、C1−15アルキルスルホニルアミノ、ホルミル、C1−15アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−15アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイル、C1−15アルキルスルファニルカルボニル、C1−15アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−15アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−15アルキルカルバモイルオキシ、C1−15アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−15アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−15アルキルウレイド、C1−15アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−15アルキルスルファニル、C1−15アルキルジスルファニル、スルホ、C1−15アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−15アルキルスルファモイル、トリ−C1−15アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。)。
【請求項5】
リガンドが下記式からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の切断剤:
【化4】

(式中、リガンドはC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルカルボニルオキシ及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよい。)。
【請求項6】
金属イオンがCoIII、Cu、CuII、CeIV、Ce、CrIII、FeII、FeIII、MoIV、NiII、PdII、PtII、V及びZrIVからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項7】
金属イオンがCoIII、CuII又はPdIIであることを特徴とする請求項6に記載の切断剤。
【請求項8】
リンカー(L)は炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄及びリンからなる群から独立的に選択された1〜30個の元素を含む骨格で構成され、
骨格に含まれる原子はアルカン、アルケン、アルキン、カルボニル、チオカルボニル、アミン、エーテル、シリル、スルフィド、ジスルフィド、スルホニル、スルフィニル、ホスホリル、ホスフィニル、アミド、イミド、エステル及びチオエステルからなる群から独立的に選択された官能基の形態として存在し、
リンカーがC1−9アルキル、ヒドロキシ、C1−9アルコキシ、C1−9アルキルカルボニルオキシ、C1−9アルキルスルホニルオキシ、アミノ、モノ−又はジ−C1−9アルキルアミノ、C1−9アルキルカルボニルアミノ、C1−9アルキルスルホニルアミノ、ホルミル、C1−9アルキルカルボニル、カルボキシ、C1−9アルキルオキシカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−9アルキルカルバモイル、C1−9アルキルスルファニルカルボニル、C1−9アルキルスルファニルチオカルボニル、C1−9アルコキシカルボニルオキシ、カルバモイルオキシ、モノ−又はジ−C1−9アルキルカルバモイルオキシ、C1−9アルキルスルファニルカルボニルオキシ、C1−9アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−9アルキルウレイド、C1−9アルキルスルファニルカルボニルアミノ、メルカプト、C1−9アルキルスルファニル、C1−9アルキルジスルファニル、スルホ、C1−9アルコキシスルホニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−9アルキルスルファモイル、トリ−C1−9アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択された一つ以上の置換基で置換されていてもよいことを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項9】
骨格を構成する原子数が1〜20であり、
リンカーがC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、モノ−又はジ−C1−6アルキルアミノ、C1−6アルキルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルホニルアミノ、C1−6アルキルカルボニル、カルバモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルカルバモイル、C1−6アルコキシカルボニルアミノ、ウレイド、モノ又はジ又はトリ−C1−6アルキルウレイド、C1−6アルキルスルファニルカルボニルアミノ、C1−6アルキルスルファニル、C1−6アルキルジスルファニル、スルファモイル、モノ−又はジ−C1−6アルキルスルファモイル、トリ−C1−6アルキルシラニル及びハロゲンからなる群から独立的に選択される一つ以上の置換基で置換されていてもよいことを特徴とする請求項8に記載の切断剤。
【請求項10】
一般式(1)の化合物の1つ以上のR、L及びZが−(L)−(R)によりさらに置換(ここで、R、Z、L、m及びnは請求項1の定義と同義である)されることを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項11】
Aβ40又はAβ42のオリゴマーを切断することを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項12】
アミリンのオリゴマーを切断することを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項13】
α−シヌクレインのオリゴマーを切断することを特徴とする請求項1に記載の切断剤。
【請求項14】
請求項1に記載の切断剤及び薬剤学的に許容される塩を含むアミロイド症を予防又は治療するための医薬組成物。
【請求項15】
アミロイド症がアルツハイマー病、第II型糖尿病、パーキンソン病、海綿状脳症又はハンチントン病であることを特徴とする請求項14に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公表番号】特表2010−507652(P2010−507652A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534493(P2009−534493)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/KR2007/005247
【国際公開番号】WO2008/051017
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】