アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有するタンパク質、該タンパク質をエンコードする遺伝子、該タンパク質を発現する細胞、及びそれらの製造方法。
【課題】アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有するタンパク質、該タンパク質をエンコードする遺伝子、該タンパク質を発現する細胞、及びそれらの製造方法の提供。
【解決手段】アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素、該酵素をエンコードする遺伝子、及び該遺伝子を発現する形質転換細胞を開示する。また、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを分解することができる酵素の製造方法であって、細胞を培養すること、該細胞において前記酵素を発現させること、及び、酵素を精製することを含む方法も開示する。該酵素を含む組成物は、糖製造中におけるデキストラン又は多糖類汚染物質の除去を提供する。
【解決手段】アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を有する酵素、該酵素をエンコードする遺伝子、及び該遺伝子を発現する形質転換細胞を開示する。また、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを分解することができる酵素の製造方法であって、細胞を培養すること、該細胞において前記酵素を発現させること、及び、酵素を精製することを含む方法も開示する。該酵素を含む組成物は、糖製造中におけるデキストラン又は多糖類汚染物質の除去を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを分解するタンパク質、その遺伝子、その発現細胞、及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、歯垢の形成を抑制し、かつこれまでに形成された歯垢を分解する能力のため抗歯垢組成物又はマウスウォッシュにおいて有用であるだけではなく、デキストランを加水分解する優れた能力のため、糖製造中におけるデキストランの除去にもまた有用な酵素、該酵素をコードする遺伝子、該酵素を発現する細胞、及び該酵素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
歯垢は、歯に蓄積されたバイオフィルムであり、歯の表面に細菌が定着することにより生じる。歯垢の塊は、グルカン(不溶性グルカン)として既知の、またムタンとも呼ばれる細菌由来の細胞外多糖類からなり、そしてそれは定着を強化する。歯垢の乾燥重量の約20%に達する該多糖類は、虫歯を引き起こす重要な要因として作用する。ストレプトコッカス ミュータンスによって製造されるグルカンの構造研究により、不溶性グルカンのグルコース部分は、主に、α−1,3−、α−1,4−及びα−1,6−D−グルコシド結合によって互いに結合していることが明らかになっている。それ故、効果的な歯垢の除去には、ムタン分解活性、澱粉分解活性及びデキストラン分解活性が必要となる。
【0003】
従来、歯垢及び虫歯の形成の予防は、主に口内のストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans)の成長の抑制に依存してきた。これに関連して、防腐剤又はフッ素等のS.mutansの成長に対して活性を有する化合物が、歯磨き粉又はマウスウォッシュ等の口腔用製品中に含まれる。一般的な抗虫歯化合物であるフッ素は、S.mutansの成長を抑制するが、歯のフッ素症(斑状歯[エナメル]の形成)並びに強い毒性及び大気汚染等の副作用を引き起こす。他の試みとしては、デキストラナーゼ等の酵素を用いた虫歯の予防が行われている。しかしながら、その効果はまだ立証されていない。
【0004】
米国特許第5,741,773号明細書は、抗歯垢活性及び抗虫歯活性を有するグリコマクロペプチドを含む歯磨剤組成物を提供している。この慣用技術は、虫歯を引き起こす細菌の成長を抑制することに関する。しかしながら、歯垢形成の防止又はこれまでに形成された歯垢の加水分解については、提案されていない。
【0005】
本発明者らによる米国特許第6,485,953号明細書(韓国特許第10−0358376号明細書に対応)は、歯垢形成の抑制及びこれまでに形成された歯垢の分解において、様々な構造の多糖類を加水分解することができるDXAMaseの使用を提案している。様々な多糖類を分解することができる酵素に加えて、該酵素を産生する微生物(リポマイセス スターケイ KFCC−11077)及び該酵素を含む組成物もまた開示されている。
【0006】
しかしながら、まだ、歯垢形成の抑制並びにこれまでに形成された歯垢の加水分解においてより良好な活性を有する酵素が必要とされている。
【0007】
韓国特許出願第10−2001−48442号明細書において、本発明者らはまた、韓国特許第10−0358376号明細書の微生物(リポマイセス スターケイ KFCC
−11077)によって製造される酵素、DXAMaseが高いデキストラン分解活性のためにデキストランの除去において有用であり得ることも示唆している。
【0008】
それ故、デキストラン除去のために十分なデキストラン分解活性を有する新規酵素を開発することが当該技術において明らかに必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,741,773号明細書。
【特許文献2】米国特許第6,485,953号明細書(韓国特許第10−0358376号明細書に対応)。
【特許文献3】韓国特許出願第10−2001−48442号明細書。
【特許文献4】韓国特許第10−0358376号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
従って、本発明は、従来技術において起こる上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを含む様々な多糖類を加水分解することができる新規酵素、及び該酵素をエンコードする遺伝子を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、該遺伝子を有する株を提供することにある。
【0011】
本発明の更なる目的は、該酵素及び該遺伝子の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の更なる目的は、該酵素を含む産業的に有用な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの観点に従って、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質、その誘導体又は該活性を有するその酵素フラグメント、及び該タンパク質をコードする遺伝子が提供される。
【0014】
本発明の他の観点に従って、前記遺伝子を発現する形質転換細胞が提供される。
【0015】
本発明の更なる観点に従って、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する酵素の製造方法であって、
前記細胞を培養すること;
培養した細胞において前記酵素を発現させること;及び、
発現した酵素を精製すること
を含む方法が提供される。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付した図面と併せて、以下の詳細な説明からより明確に理解され得る。
図1(図1a及び図1b)は、本発明に従ったリポマイセス スターケイ(Lipomyces starkeyi)(LSA)から得られたカルボヒドラーゼのアミノ酸配列及び該アミノ酸配列をエンコードする1946bpのヌクレオチド配列を示す(ここで、通常の下線部は、熟成タンパク質のN−末端アミノ酸配列決定を通じて分析されたベクターに熟成タンパク質をクローニングするためのPCRプライマー部分を表わし、矢印で示され部分はシグナルペプチドのためのスプライシング部位を表わし、太い下線部分は、α
−アミラーゼの保存領域を表わす。)。
図2は、煮沸された酵素(レーン1)及び煮沸していない酵素がゲル上で電気泳動されるところのSDS−PAGEの結果及び抗カルボヒドラーゼ抗体が煮沸された酵素と複合されるところ(レーン3)のウエスタンブロットの結果を示す写真である。
図3は、SDS−PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真であり、ここで、矢印で示される本発明のLSAは、ゲル上で分子量マーカー(M)とともに電気泳動され、クーマシーブルー染色(レーン1)によって及び活性染色(レーン2)によって視覚化を行われ、そして、母細胞の抗LSA抗体と反応させられる(レーン3)。
図4は、本発明のLSAの活性及び安定性が温度に対してプロットされるところのグラフである。
図5は、本発明のLSAの活性及び安定性がpH値に対してプロットされるところのグラフである。
図6は、本発明のLSAの活性に対するアセトンの影響を示すグラフである。
図7は、本発明のLSAの活性に対するエタノールの影響を示すグラフである。
図8は、本発明のLSAの酵素活性を示すTLCの結果の写真であり、ここで、酵素によって加水分解される前及び後に、マルトデキストリン(Mn)とともに、澱粉試料(1%w/v)が分析され(それぞれ、パネルAのレーン1及びレーン2)、精製LSAをG1(グルコース)ないしG7(マルトヘプタオース)を含む一連のマルトオリゴ糖と反応させた後、マルトオリゴ糖試料(1%w/v)が分析された(それぞれ、パネルBのレーン1ないしレーン7。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好ましい態様の説明
本発明のカルボヒドラーゼ(LSA)をコードする遺伝子の獲得は、澱粉を含む培地中でリポマイセス スターケイを培養することによって開始される。次ぎに、リポマイセス
スターケイから精製された炭水化物加水分解酵素のN−末端アミノ酸配列に基づき、予期された保存領域を含むプライマーが構成され、その後、該プライマーを用いて、PCRが行われる。約2kbの長さのPCR生成物が、完全なカルボヒドラーゼ遺伝子(LSA)とするために、5’RACE及び3’RACEにおいて使用される。PCRによって増幅させた後、株該遺伝子はpRSETBベクター(米国、インビトロゲン社製)においてクローン化され、その後、大腸菌BL21(DE)pLysSによって形質転換される。
【0018】
リポマイセス スターケイは、デキストランを分解するエンドデキストラナーゼ(EC3.2.1.11)及び澱粉を分解するα−アミラーゼを製造することが知られている。この微生物は、食品に適用されており、抗生物質又は他の有毒な代謝産物を産生することは今まで報告されていない。
【0019】
細菌から得られるいくつかを除いて、微生物によって産生されるデキストラナーゼの大半は、誘導性酵素として知られる。リポマイセス スターケイ ATCC74054は、米国特許第5,229,277号明細書で最初に報告され、その特徴もまた開示されているところのデキストラナーゼ及びアミラーゼの両方を製造する。該明細書はまた、その菌株がスクロース及び澱粉から低分子量デキストランを産生することも報告している。該知見に基づいて、本発明者らは、デキストラン及び澱粉の両方を加水分解することができるDXAMase酵素、該酵素を産生する微生物(リポマイセス スターケイ KFCC−11077と同定。)、及び該酵素を含む組成物に関する韓国特許第10−0358376号明細書(2002年10月11日)(米国特許第6,485,953号明細書(2002年11月26日)に対応。)を得た。
【0020】
本発明の遺伝子(LSA)から発現される酵素は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解することができるカルボヒドラーゼである。また、本発明に
従った酵素は、デキストラン、α−シクロデキストリン及びプルランを分解することが発見された。該酵素は非常に安定である。
最大90%の酵素活性が比較的に広いpH範囲(pH5−8)にわたるだけでなく、EGTA含有溶液等の変性溶液によってさえも抑制されない。Ca2+又はMg2+は、酵素のための共因子として機能する。
【0021】
また、本発明は、カルボヒドラーゼをコードする遺伝子を有する新規微生物に関する。本発明に従った大腸菌BL21(DE3)pLysS株は、2003年12月24日に、KCTC10573BPの受託番号で、韓国、デジョン市、ユサン グに所在の韓国生命工学研究所遺伝子銀行(Korean Collection for Type Cultures:KCTC)に寄託された。
【0022】
また、本発明はカルボヒドラーゼの製造方法に関する。まず、大腸菌BL21(DE3)pLysS株が培養される。該大腸菌を培養により得た後、その細胞を、ガラスビーズを使用して崩壊させ、そこからカルボヒドラーゼを単離した。
【0023】
本発明の酵素を含む組成物は、様々な口腔ケア用製品において使用され得る。デキストラン及びアミロース等の多糖類を分解する能力によって、本発明の酵素はまた、糖製造中にデキストランを除去するために効果的に使用される。更に、本発明に従った酵素を含む組成物は、ガム、飲料、牛乳等の食品に適用され得、そしてそれらの成分は当業者によって容易に決定され得る。
【0024】
本発明のより良い理解は、説明のために示されたものであり、本発明を制限するように解釈されるべきでない以下の実施例を通して得られ得る。
【実施例】
【0025】
実施例1:リポマイセス スターケイにおけるLSA遺伝子のクローニング
1)株及びプラスミド
デキストラナーゼ及びアミラーゼ活性を有するDXAMaseを製造するリポマイセス
スターケイ KFCC 11077をcDNA単離及びアミラーゼ遺伝子選択のためのDNAドナーとして使用した。一般的なDNA操作及びDNA配列決定は、大腸菌DH5α及びpGEM−T easy(米国、プロメガ社製)を用いて行った。cDNAライブラリーの構築のために、大腸菌XL1−ブルー及びSOLR(米国、ストラタジーン社製)を、ラムダフェーズ(lambda phase)を有する宿主細胞として使用し、ベクターとしてUni−ZAP XRを使用した。
【0026】
2)培養条件
リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地中で培養した。酵母エキス 0.3%(w/v)及びKH2PO4 0.3%(w/v)を含むLW培地を、HClを用いてpH4.5に調整した。細菌培養のため、LB(トリプトン 1%、酵母エキス 0.5%、NaCl 1%、pH7.3)及びLBA(アンピシリン50g/mLを含むLB)を使用した。
【0027】
3)カルボヒドラーゼの精製
前培養物を得るために、リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地中で攪拌しながら成長させた。その後、前培養物を、炭素源として澱粉1%(w/g)を補ったLW培地8.3Lを含む10L発酵槽(韓国、ハニル R&D社製)中で培養し、興味深いカルボヒドラーゼを製造した。培養上清を、100Kのカットオフ中空糸(韓国、サエハン社製)を通して濾過し、その後、30Kのカットオフ中空糸(米国、ミリポア社製)を通して830mLまで濃縮した。濃縮物の70%までの量の硫酸アンモニ
ウム(米国、シグマ ケミカル社製)を添加することによって、タンパク質を沈殿させた。遠心分離した後、沈殿物を20mMのリン酸カリウム緩衝溶液(pH 6.4)60mL中で懸濁させた。タンパク質の濃度及び滴定量は、精製工程毎に測定した。タンパク質濃縮物(30mg/1.5mL)を、20mMのリン酸カリウム緩衝溶液で平衡にされたDEAE−セファロース カラム中に置き、NaCl濃度0ないし1.0Mの濃度勾配で溶出させた。活性溶出画分を収集し、濃縮し、GPCカラム(バイオ−ラド社製、A−0.5m、70cm×2.6cm)中に置き、興味深いタンパク質を単離した。該カラムを50mMのリン酸クエン酸塩緩衝溶液(pH5.5)を用いて平衡にした。該濃縮物は4mg/mLの量でタンパク質を含む。
【0028】
4)ポリA+RNAの単離
リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地に接種した。28℃で36時間(中指数的成長相(mid−exponential growth phase)まで)培養した後、培養物を6,500xgで遠心分離し、細胞ペレットを回収した。全RNAをガラスビーズ及び酸性の熱フェノールを使用して単離した。細胞をグアニジンチオシアネート、0.5%ラウリルサルコシネートナトリウム、0.1M β−メルカプトエタノール、及び25mMクエン酸ナトリウムを含む溶液(pH7.0)と混合し、その後、等量の酸洗いしたガラスビーズ及びフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25/24/1、v/v/v)の混合物と併せて、最高速で5分間攪拌した。遠心分離後、混合溶液を3倍容量のイソプロパノール及び0.3倍容量の3M 酢酸ナトリウムと混合し、RNAペレットを製造し、その後、それを、次ぎの使用まで貯蔵するために、RNA分解酵素が存在しない蒸留水中に溶解させた。
【0029】
5)NH2−末端アミノ酸配列決定及びオリゴヌクレオチド合成
精製したアミラーゼタンパク質のNH2−末端アミノ酸配列を、エドマン分解法に基づき、自動タンパク質シーケンサー(米国、アプライド バイオシステムス社製、モデル 471A)を使用して分析した。
精製後、リポマイセス スターケイから得られたカルボヒドラーゼ(LSA、デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性を有する)のN末端アミノ酸配列をDXSTVTVLSSPETVT(式中、Xは明らかにされないままである。)と分析した。該アミノ酸配列TVTVLSSPEに基づき、オリゴヌクレオチド、即ちセンスプライマー1(5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’)(配列番号3)を設計した。アンチセンスプライマー2(5’−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)(配列番号4)を構築した。電気泳動法によって測定したところ、センスプライマー及びアンチセンスプライマーを用いて得られたPCT生成物は約2kbのサイズであることが判った。
【0030】
6)リポマイセス スターケイcDNAライブラリーの構築
澱粉を添加した培地中で36時間培養することによって得られたポリ(A)+RNA5gから、ZAP−cDNA合成キットを使用して、cDNAを製造した。500kb以上のサイズの、製造したcDNAを、スピンカラム画分法によって分離し、EcoRI−XhoIで消化されたUni−ZAP XRベクターとライゲートさせた。ライゲートしたファージcDNAの試験管内パッケージングをギガパック ゴールド キット(米国、ストラタジーン社製)を使用して行った。
【0031】
7)LSAのクローニング
LSA遺伝子のオープンリーディングフレームを有するDNAフラグメントを、一対のプライマー(デキストラナーゼ及びアミラーゼ特性を示すタンパク質のN−末端アミノ酸配列及びC−末端アミノ酸配列にそれぞれ対応するセンスプライマー 5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’とアンチセンスプライマー 5’
−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)を使用したPCRによって得た。アガロースゲル上で分離した後、PCR生成物をアククプレップ(登録商標:AccPrep)ゲル抽出キット(韓国、バイオネール社製)を用いて精製し、pGEM−T easyベクター(米国、プロメガ社製)とライゲートさせた。塩基配列決定を、ジーンAMP 9600 サーマル サイクラー DNA シークエンシング システム(GeneAmp 9600 thermal cycler DNA Sequencing system)(米国、アプライド バイオシステムス社製、モデル 373−18)中でABI プリズム サイクル シークエンシング キット(ABI PRISM Cycle Sequencing kit)(米国、パーキンエルマー社製)を使用して行った。
【0032】
8)大腸菌におけるLSAタンパク質の異種発現及び精製
LSA遺伝子をpRSETBベクター(米国、インビトロゲン社製)のSacI−EcoRI部位中に挿入し、組換えベクター、pRSET−LSAを製造した。pRSET−LSAで形質転換した大腸菌BL21(DE3)pLysSを、アンピシリン50mg/Lを含むLB培地中で37℃において中央定常期まで培養した。該培養物にIPTGを添加して、1mMの最終濃度とした後、28℃において6時間、インキュベーションを行った。細胞を遠心分離(5000g×10分)によって収集し、0.1Mのリン酸カリウム(pH7.4)で洗浄し、超音波処理を行った。発現タンパク質の精製をNi2+−ニトリロトリ酢酸−アガロース(NTA)(独国、クイアジーン社製)を使用して行った。細胞溶解物をNi2+−NTAと合わせ、4℃で1時間放置し、該混合物をカラムに入れ、その後、洗浄緩衝液で4度洗浄した。それぞれ0.5mLのタンパク質画分を緩衝液で乳化させた。
【0033】
9)電気泳動及び活性染色
ナトリウム ドデシル スルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のために、タンパク質試料を、トリスグリシン緩衝液(pH8.8)中10%ポリアクリルアミドゲル上に置いた。ポリアクリルアミドゲルは、タンパク質試料が澱粉多糖類を分解し得たかどうかを検出するために、澱粉1%を含む。電気泳動が完了した後、50mMのトリス−HCl緩衝液(pH8.0)及び20% 2−プロパノール溶液を用いて、1時間、ゲルを洗浄することにより、SDSを除去した。37℃において2日間、ゲルを反応緩衝液(50mM 酢酸ナトリウム、5mM CaCl2、pH5)中に浸し、その後、10分間、ヨウ素溶液(ヨウ素0.3%、ヨウ化カリウム3%)中に浸し、蒸留水で洗浄した。澱粉加水分解活性を、褐色のバックグラウンドに対する透明なゾーンの出現によって確認した。
興味深いタンパク質の分子量を決定するために、ミオシン(200kDa)、β−ガラクトシダーゼ(116kDa)、ホスホリラーゼb(97.4kDa)、血清アルブミン(66.2kDa)、カルボニックアンヒドラーゼ(31kDa)及びアプロチニン(6.5kDa)を含むマーカーもまた、ゲル上で電気泳動させた。
【0034】
10)ウェスタンブロット
電気泳動後、ゲル中のタンパク質を電場の存在下でPVDF膜へ移した。カルボヒドラーゼ(デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性の両方を有する)に対して特異的なラビットポリクローナル抗体を使用して、LSAを検出した。抗カルボヒドラーゼ抗体を含む血清を、使用するために、1:200の割合に希釈した。該抗体で処理した膜を、ツィーン20(T)を0.1%含むトリス−緩衝生理食塩水(TBS)(20mM トリス−HCl、137mM NaCl)で3度洗浄した。抗原抗体複合体を、二次抗体とECLウェスタンブロット分析システム(米国、アメルシャム ファーマシア社製)を使用して調べた。二次抗体として機能するペルオキシダーゼ−複合 抗−ラビット−IgG(米国、アメルシャム ファーマシア社製)を1:1500の割合に希釈した。バイオマックスフ
ィルム(米国、コダック社製)を、スクリーン露出のために1分間使用した。
【0035】
実施例2:カルボヒドラーゼ活性の分析
カルボヒドラーゼの還元値を、銅−ビシンコニネート(copper−bicinchoninate)法と組み合わせたDNS(3,5−ジニトロサリチル酸)法によって決定した。即ち、銅−ビシンコニネート100μLを酵素溶液100μLに添加し、80℃において35分間反応させ、その後、約15分間冷却した。吸光度を560nmにおいて測定した。
【0036】
実施例3:酵素の最適pH及び温度及び安定性の分析
LSA酵素の最適pHを、pH1.0の間隔でpH3−9の範囲内において反応速度を測定することによって分析した。このために、20mMのリン酸クエン酸塩緩衝溶液(pH4.0)、クエン酸塩/リン酸塩緩衝液(pH5−6)及びリン酸ナトリウム緩衝液(pH7−9)を使用した。37℃において48時間反応させた後、酵素のカルボヒドラーゼ活性を、DNS法によって決定した。また、酵素を各緩衝液に添加し、22℃において3時間放置した後、酵素のpH安定性を測定した。
酵素の最適温度は、様々な温度(20−80℃、10℃間隔)において30分間放置した酵素の反応速度を測定することによって決定した。温度安定性の決定のために、様々な温度(20−90℃、10℃間隔)において30分間放置した後、酵素の残留活性を測定した。澱粉1%(w/v)を、酵素の活性及び安定性の決定において基質として使用した。
【0037】
実施例4:酵素活性に対する金属イオン、キレート溶液及び変性溶液の影響
酵素活性に対するEDTA、EGTA及び金属イオンの影響を測定した。EDTA及びEGTAは、それぞれ1mMの最終濃度で使用した。金属イオンは、ZnCl2、CuSO4、CaCl2及びMgCl2を含み、5mMの最終濃度で使用した。酵素活性はまた、ドデシルスルフェート(SDS、0.1%、0.5%、1%、2%)、ウレア(2M)、アセトン(0−80%)及びエタノール(0−70%)の存在下において測定した。測定のために、酵素を基質としての澱粉2%と37℃において30分間反応させた。
【0038】
結果
リポマイセス スターケイ由来のLSA遺伝子のクローニング
精製後、リポマイセス スターケイから得たカルボヒドラーゼ(LSA)(デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性の両方を有する)が、DXSTVTVLSSPETVT(X:まだ明らかにされないアミノ酸残基)のN−末端アミノ酸配列を有することを分析した。該アミノ酸配列TVTVLSSPEに基づき、センスプライマー1(5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’)を設計し、合成した。それとは別に、アンチセンスプライマー2(5’−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)を構築した。電気泳動により、PCT生成物は2kbのバンドを示した。アミノ酸配列決定及び塩基配列決定の結果を図1(図1a及び図1b)及び配列番号1及び配列番号2に示す。
【0039】
LSA遺伝子の特性
デキストラナーゼ及びアミラーゼを産生するリポマイセス スターケイ KFCC 11077から、LSAをコードする遺伝子が、1946bpのcDNAフラグメントとしてクローン化された。cDNAフラグメントにおいて、オープンリーディングフレームは1944bp(647個のアミノ酸)からなり、71,889Daの分子量を有し、そしてそれは非変性のLSA前駆体に相当した。その熟成タンパク質が619個のアミノ酸(1,857bp)を有し、68,709Daの分子量を有することが判った。熟成タンパク質をつくるために、前駆体タンパク質が、Arg28とAsp29の間の位置にプロセシン
グされることが推論される(図1(図1a及び図1b))。
LSA ORF(LSA オープンリーディングフレーム)は、ヌクレオチド位置1番目において開始コドンATGを用いて開始され、ヌクレオチド位置1944番目において停止コドンTAGを用いて停止される。推定上のLSAアミノ酸配列は、様々な酵母及び植物由来のα−アミラーゼ、細菌由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、プルラナーゼ及びα−グリコシダーゼ、及びB.ポリミキシン由来のβ−アミラーゼと相同性を持つ。LSAは、L.コノネンコアーエ(kononenkoae)、Sw.オシデンタリス(occidentalis)(AMY1)及びSh.フィブリゲラ(fibuligera)(ALP1)のアミラーゼと52−78%の相同性を示すことが判った(パーク,J.C.,バイ,S.,タイ,C.Y.及びチュン,S.B.(1922),Nucleotide sequence of the extracellular−amylase gene in the yeast Schwanniomyces occidentailis ATCC 26077。FEMS Microbiol Lett.93,17−24;ステイン,A.J.C.,マルマー,J.及びプレトリウス,I.S.(1955) Cloning,sequence analysis and expression in yeasts of a cDNA containing a Lipomyces kononenkoae α−amylase−encoding gene。GENE.166,65−7:イトウ,T.,ヤマシタ,I.及びフクイ,S.(1987) Nucleotide sequence of the α−amylase gene(ALP1) in the yeast Saccharomycopsis fibuligera.FEBS Lett.219,339−342。)。比較のために、本発明に従って得られたLSA遺伝子を含む、様々なアミラーゼの4つの保存領域を以下の表1に示す。6ボックスのアミノ酸残基は保存領域で同一である。
表1
【表1】
酵素略語:LSA=リポマイセス スターケイ α−アミラーゼ;AMYA=アスペルギルス ニズランス α−アミラーゼ;ALP1=サッカロマイコプシス フィブリゲラ α−アミラーゼ;SWA2=デバロマイセス(debaromyces) オシデンタリス α−アミラーゼ;AMY2=スキゾサッカーロマイセス ポブメ α−アミラーゼ(schizosaccahromyces pobme α−amylase);LKA1=L.コノネンコアーエ α−アミラーゼ;NPL=バシラス ステアロサーモフィラス ネオプルラナーゼ;IAM=シュードモナス アミロデラモサ イソアミラーゼ;P
UL1=クレブシェラ アエロゲネス プルラナーゼ;PUL2=B.ステアロサーモフィラス プルラナーゼ;CGT1=K.ニューモニエ シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT2=ペニバシラス マセランス シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT3=好アルカリ性のバシラス属シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT4=B.ステアロサーモフィラス シクロデキストリン
グルカノトランスフェラーゼ;BE1=大腸菌分枝酵素;BE2=シネコッカス属分枝酵素;BE3=トウモロコシ分枝酵素(maize branching enzyme);MAL=サッカロマイセス カールスバーゲンシス マルターゼ;1,6G=B.セレウス オリゴ−1,6−グルコシダーゼ。
【0040】
cDNAの966番目の塩基と967番目の塩基の間に見られる、60個の塩基からなる1つのイントロン(5’−GTGGTATGTATCTAAGCATATTTGTAGCATTCTATCTTGGAACTGACCGGCCCTCAGTGC−3’)がLSAのゲノムDNA中に存在する。本発明に従って製造された組換えLSAは、SDS−PAGEによって測定された母細胞(リポマイセス スターケイ)のLSA(約100kDa)と分子量が異なることが判った。この差は、母細胞の酵素が酵母中で製造された糖タンパク質で糖化されたためであると思われる。母細胞のカルボヒドラーゼにおいて、抗カルボヒドラーゼ抗体は約100kDaで検出された(図2)。それは他のものと凝集する傾向にあるため、煮沸されない場合、活性LSA酵素は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定すると、200kDaであることが判った。
【0041】
LSA遺伝子の発現
大腸菌中にIPTG誘導を行い、細胞を回収し、超音波処理によって破壊した。タンパク質を、ヒスチジン標識アフィニティーカラムを使用して精製し、SDS−PAGE(10%)によって分析した(図3、レーン1)。主に、発現タンパク質のためのバンドは、73kDaに相当する(LSA+ヒスチジン標識)。澱粉等の多糖類を分解する精製タンパク質の能力を試験するために、澱粉含有PAGEゲルを使用して、電気泳動を行った。電気泳動が完了した後、ゲルを37℃において30分間放置し、ヨウ素溶液で染色した。LSA活性バンドの透明ゾーンが褐色のバックグラウンドに対して示された(図3、レーン2)。ウエスタンブロット分析に示されるように、抗カルボヒドラーゼ抗体が約73kDa(LSA+ヒスチジン標識)においてタンパク質を検出した(図3、レーン3)。
【0042】
LSAの生化学的特性
LSA酵素が、40℃において最適な活性を示すこと及び20−50℃の温度範囲において安定性を維持することが判った。60℃において3時間、インキュベーションした後、LSA酵素は、安定な温度におけるの活性の70%の活性であった(図4)。LSA酵素のアミラーゼ活性は、5−8のpH範囲において、最適にはpH6において、安定に維持された(図5)。
酵素の澱粉分解活性は、5mMのCu2+によって抑制されたが、5mMのCa2+及び5mMのMg2+の存在下において、それぞれ約315%及び220%に増加した(表2)。該酵素の活性は、1mMのEDTAによって抑制されたが、1mMのEGTAは影響しなかった。SDSは酵素の澱粉分解活性を完全に抑制し、ウレア又はアセトンは該活性を増加させた。10ないし40%のアセトン溶液及び10ないし20%のエタノール溶液が使用される場合、LSA酵素の活性は、それぞれ1.03ないし1.22倍及び1.25ないし1.33倍増加する。60%のアセトン又はエタノールの存在下において、LSA酵素は、最適活性の50%より低い活性を示した(図6及び図7)。本発明のLSA酵素の高い安定性は、既知の澱粉加水分解酵素の安定性とは全く異なる。
表2
LSA酵素活性に対する金属イオン、キレート剤及び変性剤の影響
【表2】
【0043】
LSAと澱粉2%の反応の早期段階において、マルトペンタオースより大きいオリゴ糖が製造された。その後、マルトオリゴ糖がマルトペンタオース及びより小さなオリゴ糖に分解された。最終的に、マルトトリオース及びマルトテトラオースが他のオリゴ糖より優勢であった(図8)。マルトオリゴ糖系(マルトースないしマルトヘプタオース)の混合物と反応する場合、LSAはG2及びG3は加水分解しないが、G4をG2に、G5をG2+G3に、G6をG2+G4又はG3+G3に、G7をG3+G4に分解する(図8B)。また、LSAが、アミロペクチン、澱粉(溶性)及びグリコーゲンを強く分解し、アミロース、アミロデキストリン、デキストラン、α−シクロデキストリン及びプルランをあまり分解しないことが判った(表3)。
表3
LSA酵素の相対的基質特異性
【表3】
【0044】
上記したように、本発明によって提供される酵素は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロース等の様々な多糖類を効果的に加水分解することができる。このような分解活性を有するため、本発明の酵素は、抗歯垢組成物又はマウスウォッシュを含む、デンタルケア産業における様々な用途において有用なだけではなく、糖製造中におけるデキストラン又は多糖類汚染物質の除去においても有用である。
【0045】
本発明の好ましい態様は、説明目的のために開示されたものであるとはいえ、当業者ならば、添付した請求の範囲に開示される本発明の範囲及び精神から外れることなく、様々な変形、付加及び代替が可能であることを予期し得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】本発明に従ったリポマイセス スターケイ(LSA)から得られたカルボヒドラーゼのアミノ酸配列及び該アミノ酸配列をエンコードする1946bpのヌクレオチド配列を示す(ここで、通常の下線部は、熟成タンパク質のN−末端アミノ酸配列決定を通じて分析されたベクターに熟成タンパク質をクローニングするためのPCRプライマー部分を表わし、矢印で示され部分はシグナルペプチドのためのスプライシング部位を表わし、太い下線部分は、α−アミラーゼの保存領域を表わす。)。
【図1b】図1bは、図1aのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の続きである。
【図2】煮沸された酵素(レーン1)及び煮沸していない酵素がゲル上で電気泳動されるところのSDS−PAGEの結果及び抗カルボヒドラーゼ抗体が煮沸された酵素と複合されるところ(レーン3)のウエスタンブロットの結果を示す写真である。
【図3】SDS−PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真であり、ここで、矢印で示される本発明のLSAは、ゲル上で分子量マーカー(M)とともに電気泳動され、クーマシーブルー染色(レーン1)によって及び活性染色(レーン2)によって視覚化を行われ、そして、母細胞の抗LSA抗体と反応させられる(レーン3)。
【図4】本発明のLSAの活性及び安定性が温度に対してプロットされるところのグラフである。
【図5】本発明のLSAの活性及び安定性がpH値に対してプロットされるところのグラフである。
【図6】本発明のLSAの活性に対するアセトンの影響を示すグラフである。
【図7】本発明のLSAの活性に対するエタノールの影響を示すグラフである。
【図8】本発明のLSAの酵素活性を示すTLCの結果の写真であり、ここで、酵素によって加水分解される前及び後に、マルトデキストリン(Mn)とともに、澱粉試料(1%w/v)が分析され(それぞれ、パネルAのレーン1及びレーン2)、精製LSAをG1(グルコース)ないしG7(マルトヘプタオース)を含む一連のマルトオリゴ糖と反応させた後、マルトオリゴ糖試料(1%w/v)が分析された(それぞれ、パネルBのレーン1ないしレーン7。)。
【技術分野】
【0001】
発明分野
本発明は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを分解するタンパク質、その遺伝子、その発現細胞、及びその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、歯垢の形成を抑制し、かつこれまでに形成された歯垢を分解する能力のため抗歯垢組成物又はマウスウォッシュにおいて有用であるだけではなく、デキストランを加水分解する優れた能力のため、糖製造中におけるデキストランの除去にもまた有用な酵素、該酵素をコードする遺伝子、該酵素を発現する細胞、及び該酵素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
歯垢は、歯に蓄積されたバイオフィルムであり、歯の表面に細菌が定着することにより生じる。歯垢の塊は、グルカン(不溶性グルカン)として既知の、またムタンとも呼ばれる細菌由来の細胞外多糖類からなり、そしてそれは定着を強化する。歯垢の乾燥重量の約20%に達する該多糖類は、虫歯を引き起こす重要な要因として作用する。ストレプトコッカス ミュータンスによって製造されるグルカンの構造研究により、不溶性グルカンのグルコース部分は、主に、α−1,3−、α−1,4−及びα−1,6−D−グルコシド結合によって互いに結合していることが明らかになっている。それ故、効果的な歯垢の除去には、ムタン分解活性、澱粉分解活性及びデキストラン分解活性が必要となる。
【0003】
従来、歯垢及び虫歯の形成の予防は、主に口内のストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans)の成長の抑制に依存してきた。これに関連して、防腐剤又はフッ素等のS.mutansの成長に対して活性を有する化合物が、歯磨き粉又はマウスウォッシュ等の口腔用製品中に含まれる。一般的な抗虫歯化合物であるフッ素は、S.mutansの成長を抑制するが、歯のフッ素症(斑状歯[エナメル]の形成)並びに強い毒性及び大気汚染等の副作用を引き起こす。他の試みとしては、デキストラナーゼ等の酵素を用いた虫歯の予防が行われている。しかしながら、その効果はまだ立証されていない。
【0004】
米国特許第5,741,773号明細書は、抗歯垢活性及び抗虫歯活性を有するグリコマクロペプチドを含む歯磨剤組成物を提供している。この慣用技術は、虫歯を引き起こす細菌の成長を抑制することに関する。しかしながら、歯垢形成の防止又はこれまでに形成された歯垢の加水分解については、提案されていない。
【0005】
本発明者らによる米国特許第6,485,953号明細書(韓国特許第10−0358376号明細書に対応)は、歯垢形成の抑制及びこれまでに形成された歯垢の分解において、様々な構造の多糖類を加水分解することができるDXAMaseの使用を提案している。様々な多糖類を分解することができる酵素に加えて、該酵素を産生する微生物(リポマイセス スターケイ KFCC−11077)及び該酵素を含む組成物もまた開示されている。
【0006】
しかしながら、まだ、歯垢形成の抑制並びにこれまでに形成された歯垢の加水分解においてより良好な活性を有する酵素が必要とされている。
【0007】
韓国特許出願第10−2001−48442号明細書において、本発明者らはまた、韓国特許第10−0358376号明細書の微生物(リポマイセス スターケイ KFCC
−11077)によって製造される酵素、DXAMaseが高いデキストラン分解活性のためにデキストランの除去において有用であり得ることも示唆している。
【0008】
それ故、デキストラン除去のために十分なデキストラン分解活性を有する新規酵素を開発することが当該技術において明らかに必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,741,773号明細書。
【特許文献2】米国特許第6,485,953号明細書(韓国特許第10−0358376号明細書に対応)。
【特許文献3】韓国特許出願第10−2001−48442号明細書。
【特許文献4】韓国特許第10−0358376号明細書。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明の概要
従って、本発明は、従来技術において起こる上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを含む様々な多糖類を加水分解することができる新規酵素、及び該酵素をエンコードする遺伝子を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、該遺伝子を有する株を提供することにある。
【0011】
本発明の更なる目的は、該酵素及び該遺伝子の製造方法を提供することにある。
【0012】
また、本発明の更なる目的は、該酵素を含む産業的に有用な組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の1つの観点に従って、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質、その誘導体又は該活性を有するその酵素フラグメント、及び該タンパク質をコードする遺伝子が提供される。
【0014】
本発明の他の観点に従って、前記遺伝子を発現する形質転換細胞が提供される。
【0015】
本発明の更なる観点に従って、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する酵素の製造方法であって、
前記細胞を培養すること;
培養した細胞において前記酵素を発現させること;及び、
発現した酵素を精製すること
を含む方法が提供される。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は、添付した図面と併せて、以下の詳細な説明からより明確に理解され得る。
図1(図1a及び図1b)は、本発明に従ったリポマイセス スターケイ(Lipomyces starkeyi)(LSA)から得られたカルボヒドラーゼのアミノ酸配列及び該アミノ酸配列をエンコードする1946bpのヌクレオチド配列を示す(ここで、通常の下線部は、熟成タンパク質のN−末端アミノ酸配列決定を通じて分析されたベクターに熟成タンパク質をクローニングするためのPCRプライマー部分を表わし、矢印で示され部分はシグナルペプチドのためのスプライシング部位を表わし、太い下線部分は、α
−アミラーゼの保存領域を表わす。)。
図2は、煮沸された酵素(レーン1)及び煮沸していない酵素がゲル上で電気泳動されるところのSDS−PAGEの結果及び抗カルボヒドラーゼ抗体が煮沸された酵素と複合されるところ(レーン3)のウエスタンブロットの結果を示す写真である。
図3は、SDS−PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真であり、ここで、矢印で示される本発明のLSAは、ゲル上で分子量マーカー(M)とともに電気泳動され、クーマシーブルー染色(レーン1)によって及び活性染色(レーン2)によって視覚化を行われ、そして、母細胞の抗LSA抗体と反応させられる(レーン3)。
図4は、本発明のLSAの活性及び安定性が温度に対してプロットされるところのグラフである。
図5は、本発明のLSAの活性及び安定性がpH値に対してプロットされるところのグラフである。
図6は、本発明のLSAの活性に対するアセトンの影響を示すグラフである。
図7は、本発明のLSAの活性に対するエタノールの影響を示すグラフである。
図8は、本発明のLSAの酵素活性を示すTLCの結果の写真であり、ここで、酵素によって加水分解される前及び後に、マルトデキストリン(Mn)とともに、澱粉試料(1%w/v)が分析され(それぞれ、パネルAのレーン1及びレーン2)、精製LSAをG1(グルコース)ないしG7(マルトヘプタオース)を含む一連のマルトオリゴ糖と反応させた後、マルトオリゴ糖試料(1%w/v)が分析された(それぞれ、パネルBのレーン1ないしレーン7。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好ましい態様の説明
本発明のカルボヒドラーゼ(LSA)をコードする遺伝子の獲得は、澱粉を含む培地中でリポマイセス スターケイを培養することによって開始される。次ぎに、リポマイセス
スターケイから精製された炭水化物加水分解酵素のN−末端アミノ酸配列に基づき、予期された保存領域を含むプライマーが構成され、その後、該プライマーを用いて、PCRが行われる。約2kbの長さのPCR生成物が、完全なカルボヒドラーゼ遺伝子(LSA)とするために、5’RACE及び3’RACEにおいて使用される。PCRによって増幅させた後、株該遺伝子はpRSETBベクター(米国、インビトロゲン社製)においてクローン化され、その後、大腸菌BL21(DE)pLysSによって形質転換される。
【0018】
リポマイセス スターケイは、デキストランを分解するエンドデキストラナーゼ(EC3.2.1.11)及び澱粉を分解するα−アミラーゼを製造することが知られている。この微生物は、食品に適用されており、抗生物質又は他の有毒な代謝産物を産生することは今まで報告されていない。
【0019】
細菌から得られるいくつかを除いて、微生物によって産生されるデキストラナーゼの大半は、誘導性酵素として知られる。リポマイセス スターケイ ATCC74054は、米国特許第5,229,277号明細書で最初に報告され、その特徴もまた開示されているところのデキストラナーゼ及びアミラーゼの両方を製造する。該明細書はまた、その菌株がスクロース及び澱粉から低分子量デキストランを産生することも報告している。該知見に基づいて、本発明者らは、デキストラン及び澱粉の両方を加水分解することができるDXAMase酵素、該酵素を産生する微生物(リポマイセス スターケイ KFCC−11077と同定。)、及び該酵素を含む組成物に関する韓国特許第10−0358376号明細書(2002年10月11日)(米国特許第6,485,953号明細書(2002年11月26日)に対応。)を得た。
【0020】
本発明の遺伝子(LSA)から発現される酵素は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解することができるカルボヒドラーゼである。また、本発明に
従った酵素は、デキストラン、α−シクロデキストリン及びプルランを分解することが発見された。該酵素は非常に安定である。
最大90%の酵素活性が比較的に広いpH範囲(pH5−8)にわたるだけでなく、EGTA含有溶液等の変性溶液によってさえも抑制されない。Ca2+又はMg2+は、酵素のための共因子として機能する。
【0021】
また、本発明は、カルボヒドラーゼをコードする遺伝子を有する新規微生物に関する。本発明に従った大腸菌BL21(DE3)pLysS株は、2003年12月24日に、KCTC10573BPの受託番号で、韓国、デジョン市、ユサン グに所在の韓国生命工学研究所遺伝子銀行(Korean Collection for Type Cultures:KCTC)に寄託された。
【0022】
また、本発明はカルボヒドラーゼの製造方法に関する。まず、大腸菌BL21(DE3)pLysS株が培養される。該大腸菌を培養により得た後、その細胞を、ガラスビーズを使用して崩壊させ、そこからカルボヒドラーゼを単離した。
【0023】
本発明の酵素を含む組成物は、様々な口腔ケア用製品において使用され得る。デキストラン及びアミロース等の多糖類を分解する能力によって、本発明の酵素はまた、糖製造中にデキストランを除去するために効果的に使用される。更に、本発明に従った酵素を含む組成物は、ガム、飲料、牛乳等の食品に適用され得、そしてそれらの成分は当業者によって容易に決定され得る。
【0024】
本発明のより良い理解は、説明のために示されたものであり、本発明を制限するように解釈されるべきでない以下の実施例を通して得られ得る。
【実施例】
【0025】
実施例1:リポマイセス スターケイにおけるLSA遺伝子のクローニング
1)株及びプラスミド
デキストラナーゼ及びアミラーゼ活性を有するDXAMaseを製造するリポマイセス
スターケイ KFCC 11077をcDNA単離及びアミラーゼ遺伝子選択のためのDNAドナーとして使用した。一般的なDNA操作及びDNA配列決定は、大腸菌DH5α及びpGEM−T easy(米国、プロメガ社製)を用いて行った。cDNAライブラリーの構築のために、大腸菌XL1−ブルー及びSOLR(米国、ストラタジーン社製)を、ラムダフェーズ(lambda phase)を有する宿主細胞として使用し、ベクターとしてUni−ZAP XRを使用した。
【0026】
2)培養条件
リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地中で培養した。酵母エキス 0.3%(w/v)及びKH2PO4 0.3%(w/v)を含むLW培地を、HClを用いてpH4.5に調整した。細菌培養のため、LB(トリプトン 1%、酵母エキス 0.5%、NaCl 1%、pH7.3)及びLBA(アンピシリン50g/mLを含むLB)を使用した。
【0027】
3)カルボヒドラーゼの精製
前培養物を得るために、リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地中で攪拌しながら成長させた。その後、前培養物を、炭素源として澱粉1%(w/g)を補ったLW培地8.3Lを含む10L発酵槽(韓国、ハニル R&D社製)中で培養し、興味深いカルボヒドラーゼを製造した。培養上清を、100Kのカットオフ中空糸(韓国、サエハン社製)を通して濾過し、その後、30Kのカットオフ中空糸(米国、ミリポア社製)を通して830mLまで濃縮した。濃縮物の70%までの量の硫酸アンモニ
ウム(米国、シグマ ケミカル社製)を添加することによって、タンパク質を沈殿させた。遠心分離した後、沈殿物を20mMのリン酸カリウム緩衝溶液(pH 6.4)60mL中で懸濁させた。タンパク質の濃度及び滴定量は、精製工程毎に測定した。タンパク質濃縮物(30mg/1.5mL)を、20mMのリン酸カリウム緩衝溶液で平衡にされたDEAE−セファロース カラム中に置き、NaCl濃度0ないし1.0Mの濃度勾配で溶出させた。活性溶出画分を収集し、濃縮し、GPCカラム(バイオ−ラド社製、A−0.5m、70cm×2.6cm)中に置き、興味深いタンパク質を単離した。該カラムを50mMのリン酸クエン酸塩緩衝溶液(pH5.5)を用いて平衡にした。該濃縮物は4mg/mLの量でタンパク質を含む。
【0028】
4)ポリA+RNAの単離
リポマイセス スターケイを、澱粉1%(w/v)を補ったLW培地に接種した。28℃で36時間(中指数的成長相(mid−exponential growth phase)まで)培養した後、培養物を6,500xgで遠心分離し、細胞ペレットを回収した。全RNAをガラスビーズ及び酸性の熱フェノールを使用して単離した。細胞をグアニジンチオシアネート、0.5%ラウリルサルコシネートナトリウム、0.1M β−メルカプトエタノール、及び25mMクエン酸ナトリウムを含む溶液(pH7.0)と混合し、その後、等量の酸洗いしたガラスビーズ及びフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25/24/1、v/v/v)の混合物と併せて、最高速で5分間攪拌した。遠心分離後、混合溶液を3倍容量のイソプロパノール及び0.3倍容量の3M 酢酸ナトリウムと混合し、RNAペレットを製造し、その後、それを、次ぎの使用まで貯蔵するために、RNA分解酵素が存在しない蒸留水中に溶解させた。
【0029】
5)NH2−末端アミノ酸配列決定及びオリゴヌクレオチド合成
精製したアミラーゼタンパク質のNH2−末端アミノ酸配列を、エドマン分解法に基づき、自動タンパク質シーケンサー(米国、アプライド バイオシステムス社製、モデル 471A)を使用して分析した。
精製後、リポマイセス スターケイから得られたカルボヒドラーゼ(LSA、デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性を有する)のN末端アミノ酸配列をDXSTVTVLSSPETVT(式中、Xは明らかにされないままである。)と分析した。該アミノ酸配列TVTVLSSPEに基づき、オリゴヌクレオチド、即ちセンスプライマー1(5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’)(配列番号3)を設計した。アンチセンスプライマー2(5’−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)(配列番号4)を構築した。電気泳動法によって測定したところ、センスプライマー及びアンチセンスプライマーを用いて得られたPCT生成物は約2kbのサイズであることが判った。
【0030】
6)リポマイセス スターケイcDNAライブラリーの構築
澱粉を添加した培地中で36時間培養することによって得られたポリ(A)+RNA5gから、ZAP−cDNA合成キットを使用して、cDNAを製造した。500kb以上のサイズの、製造したcDNAを、スピンカラム画分法によって分離し、EcoRI−XhoIで消化されたUni−ZAP XRベクターとライゲートさせた。ライゲートしたファージcDNAの試験管内パッケージングをギガパック ゴールド キット(米国、ストラタジーン社製)を使用して行った。
【0031】
7)LSAのクローニング
LSA遺伝子のオープンリーディングフレームを有するDNAフラグメントを、一対のプライマー(デキストラナーゼ及びアミラーゼ特性を示すタンパク質のN−末端アミノ酸配列及びC−末端アミノ酸配列にそれぞれ対応するセンスプライマー 5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’とアンチセンスプライマー 5’
−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)を使用したPCRによって得た。アガロースゲル上で分離した後、PCR生成物をアククプレップ(登録商標:AccPrep)ゲル抽出キット(韓国、バイオネール社製)を用いて精製し、pGEM−T easyベクター(米国、プロメガ社製)とライゲートさせた。塩基配列決定を、ジーンAMP 9600 サーマル サイクラー DNA シークエンシング システム(GeneAmp 9600 thermal cycler DNA Sequencing system)(米国、アプライド バイオシステムス社製、モデル 373−18)中でABI プリズム サイクル シークエンシング キット(ABI PRISM Cycle Sequencing kit)(米国、パーキンエルマー社製)を使用して行った。
【0032】
8)大腸菌におけるLSAタンパク質の異種発現及び精製
LSA遺伝子をpRSETBベクター(米国、インビトロゲン社製)のSacI−EcoRI部位中に挿入し、組換えベクター、pRSET−LSAを製造した。pRSET−LSAで形質転換した大腸菌BL21(DE3)pLysSを、アンピシリン50mg/Lを含むLB培地中で37℃において中央定常期まで培養した。該培養物にIPTGを添加して、1mMの最終濃度とした後、28℃において6時間、インキュベーションを行った。細胞を遠心分離(5000g×10分)によって収集し、0.1Mのリン酸カリウム(pH7.4)で洗浄し、超音波処理を行った。発現タンパク質の精製をNi2+−ニトリロトリ酢酸−アガロース(NTA)(独国、クイアジーン社製)を使用して行った。細胞溶解物をNi2+−NTAと合わせ、4℃で1時間放置し、該混合物をカラムに入れ、その後、洗浄緩衝液で4度洗浄した。それぞれ0.5mLのタンパク質画分を緩衝液で乳化させた。
【0033】
9)電気泳動及び活性染色
ナトリウム ドデシル スルフェート−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)のために、タンパク質試料を、トリスグリシン緩衝液(pH8.8)中10%ポリアクリルアミドゲル上に置いた。ポリアクリルアミドゲルは、タンパク質試料が澱粉多糖類を分解し得たかどうかを検出するために、澱粉1%を含む。電気泳動が完了した後、50mMのトリス−HCl緩衝液(pH8.0)及び20% 2−プロパノール溶液を用いて、1時間、ゲルを洗浄することにより、SDSを除去した。37℃において2日間、ゲルを反応緩衝液(50mM 酢酸ナトリウム、5mM CaCl2、pH5)中に浸し、その後、10分間、ヨウ素溶液(ヨウ素0.3%、ヨウ化カリウム3%)中に浸し、蒸留水で洗浄した。澱粉加水分解活性を、褐色のバックグラウンドに対する透明なゾーンの出現によって確認した。
興味深いタンパク質の分子量を決定するために、ミオシン(200kDa)、β−ガラクトシダーゼ(116kDa)、ホスホリラーゼb(97.4kDa)、血清アルブミン(66.2kDa)、カルボニックアンヒドラーゼ(31kDa)及びアプロチニン(6.5kDa)を含むマーカーもまた、ゲル上で電気泳動させた。
【0034】
10)ウェスタンブロット
電気泳動後、ゲル中のタンパク質を電場の存在下でPVDF膜へ移した。カルボヒドラーゼ(デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性の両方を有する)に対して特異的なラビットポリクローナル抗体を使用して、LSAを検出した。抗カルボヒドラーゼ抗体を含む血清を、使用するために、1:200の割合に希釈した。該抗体で処理した膜を、ツィーン20(T)を0.1%含むトリス−緩衝生理食塩水(TBS)(20mM トリス−HCl、137mM NaCl)で3度洗浄した。抗原抗体複合体を、二次抗体とECLウェスタンブロット分析システム(米国、アメルシャム ファーマシア社製)を使用して調べた。二次抗体として機能するペルオキシダーゼ−複合 抗−ラビット−IgG(米国、アメルシャム ファーマシア社製)を1:1500の割合に希釈した。バイオマックスフ
ィルム(米国、コダック社製)を、スクリーン露出のために1分間使用した。
【0035】
実施例2:カルボヒドラーゼ活性の分析
カルボヒドラーゼの還元値を、銅−ビシンコニネート(copper−bicinchoninate)法と組み合わせたDNS(3,5−ジニトロサリチル酸)法によって決定した。即ち、銅−ビシンコニネート100μLを酵素溶液100μLに添加し、80℃において35分間反応させ、その後、約15分間冷却した。吸光度を560nmにおいて測定した。
【0036】
実施例3:酵素の最適pH及び温度及び安定性の分析
LSA酵素の最適pHを、pH1.0の間隔でpH3−9の範囲内において反応速度を測定することによって分析した。このために、20mMのリン酸クエン酸塩緩衝溶液(pH4.0)、クエン酸塩/リン酸塩緩衝液(pH5−6)及びリン酸ナトリウム緩衝液(pH7−9)を使用した。37℃において48時間反応させた後、酵素のカルボヒドラーゼ活性を、DNS法によって決定した。また、酵素を各緩衝液に添加し、22℃において3時間放置した後、酵素のpH安定性を測定した。
酵素の最適温度は、様々な温度(20−80℃、10℃間隔)において30分間放置した酵素の反応速度を測定することによって決定した。温度安定性の決定のために、様々な温度(20−90℃、10℃間隔)において30分間放置した後、酵素の残留活性を測定した。澱粉1%(w/v)を、酵素の活性及び安定性の決定において基質として使用した。
【0037】
実施例4:酵素活性に対する金属イオン、キレート溶液及び変性溶液の影響
酵素活性に対するEDTA、EGTA及び金属イオンの影響を測定した。EDTA及びEGTAは、それぞれ1mMの最終濃度で使用した。金属イオンは、ZnCl2、CuSO4、CaCl2及びMgCl2を含み、5mMの最終濃度で使用した。酵素活性はまた、ドデシルスルフェート(SDS、0.1%、0.5%、1%、2%)、ウレア(2M)、アセトン(0−80%)及びエタノール(0−70%)の存在下において測定した。測定のために、酵素を基質としての澱粉2%と37℃において30分間反応させた。
【0038】
結果
リポマイセス スターケイ由来のLSA遺伝子のクローニング
精製後、リポマイセス スターケイから得たカルボヒドラーゼ(LSA)(デキストラナーゼ活性及びアミラーゼ活性の両方を有する)が、DXSTVTVLSSPETVT(X:まだ明らかにされないアミノ酸残基)のN−末端アミノ酸配列を有することを分析した。該アミノ酸配列TVTVLSSPEに基づき、センスプライマー1(5’−TACAGTTACGGTCTTGTCCTCCCCTGA−3’)を設計し、合成した。それとは別に、アンチセンスプライマー2(5’−CTCTACATGGAGCAGATTCCA−3’)を構築した。電気泳動により、PCT生成物は2kbのバンドを示した。アミノ酸配列決定及び塩基配列決定の結果を図1(図1a及び図1b)及び配列番号1及び配列番号2に示す。
【0039】
LSA遺伝子の特性
デキストラナーゼ及びアミラーゼを産生するリポマイセス スターケイ KFCC 11077から、LSAをコードする遺伝子が、1946bpのcDNAフラグメントとしてクローン化された。cDNAフラグメントにおいて、オープンリーディングフレームは1944bp(647個のアミノ酸)からなり、71,889Daの分子量を有し、そしてそれは非変性のLSA前駆体に相当した。その熟成タンパク質が619個のアミノ酸(1,857bp)を有し、68,709Daの分子量を有することが判った。熟成タンパク質をつくるために、前駆体タンパク質が、Arg28とAsp29の間の位置にプロセシン
グされることが推論される(図1(図1a及び図1b))。
LSA ORF(LSA オープンリーディングフレーム)は、ヌクレオチド位置1番目において開始コドンATGを用いて開始され、ヌクレオチド位置1944番目において停止コドンTAGを用いて停止される。推定上のLSAアミノ酸配列は、様々な酵母及び植物由来のα−アミラーゼ、細菌由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、プルラナーゼ及びα−グリコシダーゼ、及びB.ポリミキシン由来のβ−アミラーゼと相同性を持つ。LSAは、L.コノネンコアーエ(kononenkoae)、Sw.オシデンタリス(occidentalis)(AMY1)及びSh.フィブリゲラ(fibuligera)(ALP1)のアミラーゼと52−78%の相同性を示すことが判った(パーク,J.C.,バイ,S.,タイ,C.Y.及びチュン,S.B.(1922),Nucleotide sequence of the extracellular−amylase gene in the yeast Schwanniomyces occidentailis ATCC 26077。FEMS Microbiol Lett.93,17−24;ステイン,A.J.C.,マルマー,J.及びプレトリウス,I.S.(1955) Cloning,sequence analysis and expression in yeasts of a cDNA containing a Lipomyces kononenkoae α−amylase−encoding gene。GENE.166,65−7:イトウ,T.,ヤマシタ,I.及びフクイ,S.(1987) Nucleotide sequence of the α−amylase gene(ALP1) in the yeast Saccharomycopsis fibuligera.FEBS Lett.219,339−342。)。比較のために、本発明に従って得られたLSA遺伝子を含む、様々なアミラーゼの4つの保存領域を以下の表1に示す。6ボックスのアミノ酸残基は保存領域で同一である。
表1
【表1】
酵素略語:LSA=リポマイセス スターケイ α−アミラーゼ;AMYA=アスペルギルス ニズランス α−アミラーゼ;ALP1=サッカロマイコプシス フィブリゲラ α−アミラーゼ;SWA2=デバロマイセス(debaromyces) オシデンタリス α−アミラーゼ;AMY2=スキゾサッカーロマイセス ポブメ α−アミラーゼ(schizosaccahromyces pobme α−amylase);LKA1=L.コノネンコアーエ α−アミラーゼ;NPL=バシラス ステアロサーモフィラス ネオプルラナーゼ;IAM=シュードモナス アミロデラモサ イソアミラーゼ;P
UL1=クレブシェラ アエロゲネス プルラナーゼ;PUL2=B.ステアロサーモフィラス プルラナーゼ;CGT1=K.ニューモニエ シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT2=ペニバシラス マセランス シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT3=好アルカリ性のバシラス属シクロデキストリン グルカノトランスフェラーゼ;CGT4=B.ステアロサーモフィラス シクロデキストリン
グルカノトランスフェラーゼ;BE1=大腸菌分枝酵素;BE2=シネコッカス属分枝酵素;BE3=トウモロコシ分枝酵素(maize branching enzyme);MAL=サッカロマイセス カールスバーゲンシス マルターゼ;1,6G=B.セレウス オリゴ−1,6−グルコシダーゼ。
【0040】
cDNAの966番目の塩基と967番目の塩基の間に見られる、60個の塩基からなる1つのイントロン(5’−GTGGTATGTATCTAAGCATATTTGTAGCATTCTATCTTGGAACTGACCGGCCCTCAGTGC−3’)がLSAのゲノムDNA中に存在する。本発明に従って製造された組換えLSAは、SDS−PAGEによって測定された母細胞(リポマイセス スターケイ)のLSA(約100kDa)と分子量が異なることが判った。この差は、母細胞の酵素が酵母中で製造された糖タンパク質で糖化されたためであると思われる。母細胞のカルボヒドラーゼにおいて、抗カルボヒドラーゼ抗体は約100kDaで検出された(図2)。それは他のものと凝集する傾向にあるため、煮沸されない場合、活性LSA酵素は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定すると、200kDaであることが判った。
【0041】
LSA遺伝子の発現
大腸菌中にIPTG誘導を行い、細胞を回収し、超音波処理によって破壊した。タンパク質を、ヒスチジン標識アフィニティーカラムを使用して精製し、SDS−PAGE(10%)によって分析した(図3、レーン1)。主に、発現タンパク質のためのバンドは、73kDaに相当する(LSA+ヒスチジン標識)。澱粉等の多糖類を分解する精製タンパク質の能力を試験するために、澱粉含有PAGEゲルを使用して、電気泳動を行った。電気泳動が完了した後、ゲルを37℃において30分間放置し、ヨウ素溶液で染色した。LSA活性バンドの透明ゾーンが褐色のバックグラウンドに対して示された(図3、レーン2)。ウエスタンブロット分析に示されるように、抗カルボヒドラーゼ抗体が約73kDa(LSA+ヒスチジン標識)においてタンパク質を検出した(図3、レーン3)。
【0042】
LSAの生化学的特性
LSA酵素が、40℃において最適な活性を示すこと及び20−50℃の温度範囲において安定性を維持することが判った。60℃において3時間、インキュベーションした後、LSA酵素は、安定な温度におけるの活性の70%の活性であった(図4)。LSA酵素のアミラーゼ活性は、5−8のpH範囲において、最適にはpH6において、安定に維持された(図5)。
酵素の澱粉分解活性は、5mMのCu2+によって抑制されたが、5mMのCa2+及び5mMのMg2+の存在下において、それぞれ約315%及び220%に増加した(表2)。該酵素の活性は、1mMのEDTAによって抑制されたが、1mMのEGTAは影響しなかった。SDSは酵素の澱粉分解活性を完全に抑制し、ウレア又はアセトンは該活性を増加させた。10ないし40%のアセトン溶液及び10ないし20%のエタノール溶液が使用される場合、LSA酵素の活性は、それぞれ1.03ないし1.22倍及び1.25ないし1.33倍増加する。60%のアセトン又はエタノールの存在下において、LSA酵素は、最適活性の50%より低い活性を示した(図6及び図7)。本発明のLSA酵素の高い安定性は、既知の澱粉加水分解酵素の安定性とは全く異なる。
表2
LSA酵素活性に対する金属イオン、キレート剤及び変性剤の影響
【表2】
【0043】
LSAと澱粉2%の反応の早期段階において、マルトペンタオースより大きいオリゴ糖が製造された。その後、マルトオリゴ糖がマルトペンタオース及びより小さなオリゴ糖に分解された。最終的に、マルトトリオース及びマルトテトラオースが他のオリゴ糖より優勢であった(図8)。マルトオリゴ糖系(マルトースないしマルトヘプタオース)の混合物と反応する場合、LSAはG2及びG3は加水分解しないが、G4をG2に、G5をG2+G3に、G6をG2+G4又はG3+G3に、G7をG3+G4に分解する(図8B)。また、LSAが、アミロペクチン、澱粉(溶性)及びグリコーゲンを強く分解し、アミロース、アミロデキストリン、デキストラン、α−シクロデキストリン及びプルランをあまり分解しないことが判った(表3)。
表3
LSA酵素の相対的基質特異性
【表3】
【0044】
上記したように、本発明によって提供される酵素は、アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロース等の様々な多糖類を効果的に加水分解することができる。このような分解活性を有するため、本発明の酵素は、抗歯垢組成物又はマウスウォッシュを含む、デンタルケア産業における様々な用途において有用なだけではなく、糖製造中におけるデキストラン又は多糖類汚染物質の除去においても有用である。
【0045】
本発明の好ましい態様は、説明目的のために開示されたものであるとはいえ、当業者ならば、添付した請求の範囲に開示される本発明の範囲及び精神から外れることなく、様々な変形、付加及び代替が可能であることを予期し得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1a】本発明に従ったリポマイセス スターケイ(LSA)から得られたカルボヒドラーゼのアミノ酸配列及び該アミノ酸配列をエンコードする1946bpのヌクレオチド配列を示す(ここで、通常の下線部は、熟成タンパク質のN−末端アミノ酸配列決定を通じて分析されたベクターに熟成タンパク質をクローニングするためのPCRプライマー部分を表わし、矢印で示され部分はシグナルペプチドのためのスプライシング部位を表わし、太い下線部分は、α−アミラーゼの保存領域を表わす。)。
【図1b】図1bは、図1aのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列の続きである。
【図2】煮沸された酵素(レーン1)及び煮沸していない酵素がゲル上で電気泳動されるところのSDS−PAGEの結果及び抗カルボヒドラーゼ抗体が煮沸された酵素と複合されるところ(レーン3)のウエスタンブロットの結果を示す写真である。
【図3】SDS−PAGE及びウエスタンブロットの結果を示す写真であり、ここで、矢印で示される本発明のLSAは、ゲル上で分子量マーカー(M)とともに電気泳動され、クーマシーブルー染色(レーン1)によって及び活性染色(レーン2)によって視覚化を行われ、そして、母細胞の抗LSA抗体と反応させられる(レーン3)。
【図4】本発明のLSAの活性及び安定性が温度に対してプロットされるところのグラフである。
【図5】本発明のLSAの活性及び安定性がpH値に対してプロットされるところのグラフである。
【図6】本発明のLSAの活性に対するアセトンの影響を示すグラフである。
【図7】本発明のLSAの活性に対するエタノールの影響を示すグラフである。
【図8】本発明のLSAの酵素活性を示すTLCの結果の写真であり、ここで、酵素によって加水分解される前及び後に、マルトデキストリン(Mn)とともに、澱粉試料(1%w/v)が分析され(それぞれ、パネルAのレーン1及びレーン2)、精製LSAをG1(グルコース)ないしG7(マルトヘプタオース)を含む一連のマルトオリゴ糖と反応させた後、マルトオリゴ糖試料(1%w/v)が分析された(それぞれ、パネルBのレーン1ないしレーン7。)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質、その誘導体又はそのフラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質、誘導体又はフラグメントをエンコードする配列番号2の遺伝子、その誘導体又はそのフラグメント。
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子、誘導体又はフラグメントを発現する形質転換細胞。
【請求項4】
前記細胞が原核細胞又は真核細胞である請求項2に記載の形質転換細胞。
【請求項5】
前記細胞が、KCTC10573HPの受託番号で寄託された大腸菌BL21(DE3)pLysS株である請求項3又は4に記載の形質転換細胞。
【請求項6】
アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する酵素の製造方法であって、
請求項3に記載の細胞を培養すること;
培養した細胞において前記酵素を発現させること;及び、
発現した酵素を精製すること
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって製造された酵素。
【請求項8】
請求項7に記載の酵素を含む組成物。
【請求項9】
糖製造中、デキストランを除去するために使用される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
歯垢除去のために、又はマウスウォッシュとして使用される請求項8に記載の組成物。
【請求項1】
アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質、その誘導体又はそのフラグメント。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質、誘導体又はフラグメントをエンコードする配列番号2の遺伝子、その誘導体又はそのフラグメント。
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子、誘導体又はフラグメントを発現する形質転換細胞。
【請求項4】
前記細胞が原核細胞又は真核細胞である請求項2に記載の形質転換細胞。
【請求項5】
前記細胞が、KCTC10573HPの受託番号で寄託された大腸菌BL21(DE3)pLysS株である請求項3又は4に記載の形質転換細胞。
【請求項6】
アミロペクチン、澱粉、グリコーゲン及びアミロースを加水分解する活性を有する酵素の製造方法であって、
請求項3に記載の細胞を培養すること;
培養した細胞において前記酵素を発現させること;及び、
発現した酵素を精製すること
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって製造された酵素。
【請求項8】
請求項7に記載の酵素を含む組成物。
【請求項9】
糖製造中、デキストランを除去するために使用される請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
歯垢除去のために、又はマウスウォッシュとして使用される請求項8に記載の組成物。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2007−534315(P2007−534315A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550948(P2006−550948)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000235
【国際公開番号】WO2005/073369
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506259346)リフェンザ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000235
【国際公開番号】WO2005/073369
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506259346)リフェンザ カンパニー リミテッド (2)
【Fターム(参考)】
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