説明

アミンおよびアミノ酸をそれらの対掌エナンチオマーから分離するための組成物および方法

安定な固体支持体上に共有結合的に結合されるか、塗布されたクラウンの2つの異なるキラル炭素原子に取り付けられた少なくとも2つの嵩高い基を有するジケト含有およびピリジン含有のキラルなクラウンリガンドであって、疎水性有機溶剤でさらに塗布されているものが開示されている。これらの組成物およびそれに関連する方法は、数個のアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーの対掌エナンチオマーおよび誘導体に対する優先した選択性によって特徴づけられる。組成物は、好ましくは、4と同じかそれ以上のα価を有する。これによって、クロマトグラフィーによらない分離樹脂相を用いたエナンチオマーの分離処理を、3つ以下の分離工程の分離処理で可能となる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、高いキラル純度を達成するために、所定のアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーをその対掌エナンチオマー(counter-enantiomer)から分離するための組成物および方法に関する。
【0002】
発明の背景
アミンおよびアミノ酸などの生化学物質や他のタイプの生化学物質の個々のエナンチオマーを分離回収するための有効な方法は、現代の技術において極めて重要である。ヒトおよびその他に使用するための光学的に純粋な医薬品およびその他の生化学物質を製造し、使用することへの必要性や要望が高まることによって、この重要性が実証される。例えば、化合物の一方のエナンチオマーのみが、生物学的に活性であったり、好ましい効果をもたらすことが多い。従って、医薬品を投与される者が生物学的に活性なエナンチオマーを十分に得るためには、(エナンチオマーが約50:50モル比であると仮定して)通常、2倍量の医薬品を必要とする。また、望まれていないエナンチオマーが毒性を有していたり、副作用を生ずるかもしれない。例えば、所望するエナンチオマーの処方箋による薬剤を服用した妊婦から産まれた子供に重度の奇形を生ずる、サリドマイドの好ましくないエナンチオマーが知られている。そのため、ここで考察したこれらの不利益を解決するため、生物学的に活性であるかまたは所望のエナンチオマーを本質的に純粋な形で使用できるように、光学的またはエナンチオマー的に純粋な医薬品を製造するための多大な研究がなされている。
【0003】
医薬品や他の応用品のための光学的に純粋な化合物を得るために使用できる最も重要な3つの方法が、理論上は存在する。第一には、所望のエナンチオマーを、所望のエナンチオマー形または光学的に純粋な形で合成することができる。残念ながら、多くの場合、こういったタイプの合成法が発見されていないため、この方法は現実的でない。
【0004】
第二の方法は、両方のエナンチオマーを含有する混合物から所望のエナンチオマーを分離することを含んでなる。しかしながら、エナンチオマーは、対掌性(chirality)のみが異なるため、このような分離方法を実施することは非常に困難であることが立証されている。いくつかの事例において、これらの分離処理が結晶化により達成されている。例えば、結晶化プラットフォ−ム(crystallization platform)として酒石酸がこのような分離のために使用されている。この方法は、費用対効果がある程度ある方法ではあるが、ごく少数の事例においてのみ利用されているにすぎない。ほとんどの事例では、このような分離処理を実施するには、クロマトグラフィー固定相やクロマトグラフィー的分離方法を用いる必要があるが、このタイプのクロマトグラフィー分離処理は処理量が少なく、高い運転コストがかかる。
【0005】
キラル分離処理の第三の方法は、上記の2つの方法の組み合わせを含んでなる。この組み合わせ法においては、最初のキラル中間体を比較的高い純度で分離し、次いで、キラル不純物をさらに導入することなく、キラル中間体を最終生成物までさらに精製する追加的な合成工程を実施する。
【0006】
通常、キラル分離処理を実施するための高いコストを克服するためには、標的エナンチオマーに対してその対掌エナンチオマーを上回る高い選択性を達成する方法が必要である。このように、固体樹脂相を使用したクロマトグラフィーによらない分離方法または平衡結合/放出分離方法が考案され、従来の樹脂で作製されたクロマトグラフィー形態では、容易に分離処理できなかった幾つかの付加的なアミンまたはアミノ酸について、この成果が達成された。2001年3月8日出願の米国特許出願公開第2002/0,019,491号には、幾つかの異なるアミンまたはアミノ酸を分離処理するための、十分な選択性および/または安定性を有する従来の固体樹脂相が記載されている(これを参照により本明細書に援用する)。それ以前には、ある程度の純度を達成でき、現実に有用で、コストに見合う、このようなエナンチオマー分離機能を達成する組成物は、知られていなかった。このことは、分離処理それ自体の経費が、純粋なエナンチオマー製品を製造するための総コストの大部分を占めるため、重要である。従って、分離処理のコストを低下させることにより、純粋なエナンチオマーの最終販売価格を引き下げることができる。
【0007】
上述したように、同一化合物のキラルエナンチオマー間に若干の選択性を有することができるキラルリガンドの製造法に関し、幾つかの研究がなされている。さらには、このようなキラル分離処理のために電気泳動法も使用されている。しかし、これらの方法(すなわち、クロマトグラフィー法および電気泳動法の双方とも)は処理量が小さく、したがって、本発明によって記載される方法ほど強く望まれない。分離処理法として電気泳動法を記載した論文も幾つかあり、クロマトグラフィー樹脂相においてこのようなリガンドを使用することを考察した論文も他に幾つかある。このような特許および論文としては、Cram,D.J.;Dotsevi,G.et al.に対して発行された米国特許第4,001,279号公報および第4,043,979号公報;Chromatographic OpticalResolution through ChiralComplexation of Aminoester Salts by a Host Covalently Boundto Silica Gel,J.Amer.Chem.Soc.97:5,pp.1259−61(1974);Bradshaw,J.S.et al.,Enantiomeric Recognition of OrganicAmmonium Salts by Chiral Dialkyl−,Dialkenyl−,and Tetramethyl−Substituted Pyridino−18−crown−6 and Tetramethyl−Substituted Bis−pyridino−18−crown−6 Ligands:comparison of Temperature−Dependent H NMR and Empirical Forcefield technique,J.Org.Chem.,Volume 55,pp.3129−37(1990);Zhang,et al.,Enantiomeric Recognition of AminoCompounds by ChiralMacrocyclic Receptors,Chem.Rev.,Volume 97,pp.3313−61(1997);Pirkle,W.H.et al.,Chiral Stationary Phases for the DirectLC Separation of Enantiomers,Adv.Chromatography,Volume 27,pp.73−127(1987);Armstrong,D.W.,et al.,Macrocyclic Antibiotics as a New Classof Chiral Selectors for Liquid Chromatography,Anal.Chem.,Volume 66,pp.1473−1484(1994);Armstrong,D.W.,et al.,Optical Isomer Separation by Liquid Chromatography,Anal.Chem.,Volume59,pp.84A−91A(1987);Huszthy,P.,et al.,Enantiomeric Separation of Chiral[α−(1−Naphth)Ethyl]Ammonium Perchlorate by Silica Gel−Bound Chiral Pyridino−18−Crown−6−Ligands,Acta Chim Hung,Volume 131,pp.445−54(1994);Pirkle,W.H.et al.,Chem.Rev.,Volume 89,pp.347−362(1989)が挙げられ、これらは、全て、参照により本明細書に援用する。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0,019,491号に開示された研究を除いて、3段階以下の分離処理で、高度に安定な共有結合的に結合されたリガンド、又は、塗布されたリガンドによる、アミンおよびアミノ酸の高い選択性を有する、クロマトグラフィーによらない分離処理は、これまで示されていない。この分野における大部分の研究では、キラル分離用のクロマトグラフィー樹脂材料を合成するか、または、単一相でキラル選択性を有する未結合のリガンドを合成するための方法しか開示されてない。従って、分離処理のコストを低く維持しつつ、はるかに大量かつはるかに迅速な分離処理を可能とする、クロマトグラフィーによらない分離処理技術を使用して、エナンチオマーを分離する組成物および方法が提供されることが待望されている。
【0009】
米国特許出願公開第2002/0,019,491号には、幾つかのキラルアミンおよびアミノ酸の効果的なクロマトグラフィーによらない分離処理法が開示されてはいるが、従来開示されてはいなかった、個々の溶剤が塗布された、リガンドと結合した固体支持体を使用して、所定のβ−アミノ酸および/または大きなα−アミン含有芳香族原子団を、さらに効率よく分離処理することができることが見い出されている。
【0010】
発明の概要
本発明は、キラルアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを、それらの対掌エナンチオマーより優先して分離処理するための組成物および方法に関する。一実施態様においては、キラルアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを、その対掌エナンチオマーに優先して選択的に結合するための組成物は、固体支持体;固体支持体につなぎ留められるか(tethered)、固体支持体上に塗布される光学的に活性なリガンド;および固体支持体上に塗布されている疎水性有機溶剤コーティング;を含まなければならない。固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンドは、以下の式1:
【0011】
【化1】

【0012】
[BおよびB’が、独立に嵩高い基であり;Mは、Mが固体支持体につなぎ留められている場合、飽和−C−または飽和−COC−であり、Mが固体支持体上に塗布されている場合、飽和−C−または飽和−COC−である]の構造を有していなければならない。
【0013】
他の実施態様において、エナンチオマー混合物を含有する原溶液中の対掌エナンチオマーからキラルアミンまたはアミノ酸エナンチオマーを濃縮し、取り出し、そして分離するための、クロマトグラフィーによらない方法は、数工程を含まなければならない。そのような工程は、原溶液を式1の組成物[この組成物は、それらの対掌エナンチオマーよりも、キラルアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーに対して親和力を有し、接触後、標的エナンチオマーはこの組成物と錯体を形成する]と接触させることを含む。後続の工程は、標的エナンチオマーが錯形成している組成物との接触から原溶液を取り出し、標的エナンチオマーがその組成物から分離されるように、標的エナンチオマーが錯形成した組成物を第二量の水性受容溶液と接触させ、受容溶液中に濃縮された形で標的エナンチオマーを回収することを含む。
【0014】
もう一つ実施態様において、エナンチオマー分子をその対掌エナンチオマーから分離するクロマトグラフィーによらない方法は、数工程を含まなければならない。そのような工程は、分離装置[ここで、分離装置は式1に示される第1の組成物を収納しており、その第1の組成物は、標的エナンチオマーに対する親和性と少なくとも4の選択性とを有する]に標的エナンチオマーとその対掌エナンチオマーとを含有するラセミ化合物供給溶液を流すことを含む。付加的な工程は、標的エナンチオマーと第1の組成物との間に錯体を選択的に形成させ、それにより、対掌エナンチオマーの純度を増加させた第一ラフィネートを形成し、第2の水性受容溶液により、標的エナンチオマーと第1の組成物との間の錯体を壊し、標的エナンチオマーを増加させた受容液体が形成され、そして第2の分離装置[ここで、第2の分離装置は、式1の構造を持つが、第1の組成物に対し逆の光学的に活性な第2の組成物を含む]に、標的エナンチオマーの高い受容液体を流すことを含む。もう一つの付加的な工程は、対掌エナンチオマーと第2の分離装置中の第2の組成物との間に錯体を選択的に形成させ、それにより、標的エナンチオマーの純度を増加させた第2のラフィネートを形成することを含む。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、本発明の特徴を示す以下の詳細な説明により、実施例に沿って明らかにされる。
発明の詳細な説明
本発明を開示し、説明する前に、本明細書に開示される個々のプロセス工程および材料はある程度変更することができ、本発明が本明細書に開示される処理工程や材料に限定されることを意図しないことを理解すべきである。また、本明細書で使用される語が個々の実施態様を説明するためのみに使用されることを意図していることも理解するべきである。用語によって制限されてしまうことを意図するものではない。
【0016】
本明細書で使用されるように、単数形“a”、“an”および“the”は、その意味を明確に示さない限り、複数形の指示対象を含む。
供給溶液を引用する時、“ラセミ化合物(racemate)”または“ラセミ化合物の(racemic)”は、分子のエナンチオマー種の両方、すなわち、エナンチオマーと対掌エナンチオマーとを、ほぼ等量で含有する溶液を包含することを意図する。その溶液は、また、分離除去されることが望まれる他の汚染物または不純物を含有する他の物質を含有してもよい。
【0017】
“ラフィネート”は、固体支持体に結び付け、または、固体支持体上に塗布したリガンドと結合する分子またはエナンチオマーが除外された、分離装置を通る溶液を包むことを意図する。リガンドが標的エナンチオマーまたは対掌エナンチオマーと結合するように光学的に設計されているか否かに応じて、ある事例では、ラフィネートは標的エナンチオマーを高濃度で含有し、またある事例では、ラフィネートは標的エナンチオマーを低濃度で含有する。
【0018】
“対掌エナンチオマー”は、概して、キラル標的エナンチオマー分子から分離除去されることが意図されるキラル分子を包含する。ある実施態様では、標的エナンチオマーが、収集が望まれる唯一の組成物であり得、他の実施態様では標的エナンチオマーおよび対掌エナンチオマーの両者を、別々に収集することが望まれ得る。
【0019】
“標的エナンチオマー”または“所望されるエナンチオマー”は、概して、本発明の組成物および方法によって精製するか、収集するように設計されたキラル分子を包含するものとする。分離処理の目的に応じて、ある分離処理においては、対掌エナンチオマーであっても、他の分離処理においては、標的エナンチオマーとなり得る。
【0020】
”リガンド結合固体支持体(ligand-bound solid support)”は、従来の固体支持体につなぎ留められるか、その固体支持体上に塗布されている本発明の光学的に活性なリガンドを含まなければならない。つなぎ留められている場合は、その結合機構は、典型的には、共有結合である。塗布されている場合は、コーティングは、典型的には、固体支持体の表面上の固体コーティングである。いずれの実施態様においても、明細書中に記載された選択性を達成するために、加工処理後のリガンド結合固体支持体を、さらに有機溶媒で塗布することができる。
【0021】
光学的に活性なリガンドおよび/または疎水性有機溶剤のコーティングを引用していても、「〜上に塗布された(coated on)」とは、引用した物質上に必ずしも直接塗布する必要がある訳ではない。例えば、始めに、光学的に活性なリガンドおよび疎水性有機溶剤を、固体支持体上に塗布し、光学的に活性なリガンドを直接固体支持体上に塗布し、次いで、その光学的に活性なリガンドのコーティング上に直接疎水性有機溶剤コーティングを塗布してもよい。双方とも、固体支持体上に塗布したと見なされる。あるいは、光学的に活性なリガンドおよび疎水性有機溶剤コーティングの双方を含む単一のコーティング組成物を、固体支持体上に塗布できる。例えば、リガンドを疎水性コーティング溶剤中に溶解する場合、後者の実施態様となる。
【0022】
用語”塗布された(coated)”または”コーティング(coating)”は、表面に少なくとも一つの固定層が形成されるように施用された物質を引用する。表面を覆うの物質の連続した流れであって、例えば、クロマトグラフの移動相(mobile phase)のような場合はコーティングとは考えない。
【0023】
用語「嵩高い基(bulky group)」は、芳香族基と同様に、3〜10個の炭素原子の分岐または不飽和のアルキル基も含む。役に立つ分岐アルキルの嵩高い基(branched arkylbulky group)は、t-ブチル基(t-butyl)である。使用できる芳香族基は、ナフチル基(naphthyl)、ピリジル基(pyridyl)、アントラシル基(anthracyl)、フェナントリル基(phenanthyl)、ベンゾナフチル基(benzonaphthyl)、フェニル基(phenyl)を含む。嵩高い基の機能は、キラルアミンおよびアミノ酸の一方の鏡像異性体は、組成物に実質的に結合させ、同様に、そのアミンおよびアミノ酸の対掌エナンチオマーが、組成物に結合することを実質的に立体的に妨害することにある。キラル分子は、ピリジンクラウンの上からまたは下からも組成物に近づくことができるので、アミンおよびアミノ酸がどのような角度で組成物に接近しても、キラル分離が起こりうるように、立体障害に関してのシンメトリーを提供するのに役立つ。例えば、アミンおよびアミノ酸は、ピリジンクラウンの一側に接近し、それ自体で、結合しようとするので、嵩高い基の一つが、ラセミまたは他の混合物の対掌エナンチオマーに立体障害を提供し、同時に、標的エナンチオマーが取り付くことは妨害しない。もしアミンおよびアミノ酸が、ピリジンクラウンの他の側に接近し結合しようと試みる場合には、他の嵩高い基が、同様に混合物の対掌エナンチオマーに立体障害を提供し、このようにして、標的エナンチオマーは選択的に結合できる。
【0024】
以上の定義に留意しつつ、本願明細書中に記載される発明は、十分に安定かつ選択性のある固体樹脂相組成物、および標的キラルアミンおよびアミノ酸をそれらの対掌エナンチオマーから分離することに関する方法を提供する。これらの組成物は、例えば、β−アミノ酸や芳香族α−アミンのようなキラルアミンおよびアミノ酸に対して極めて有用である。この分野における従来技術と大きく異なり、本発明の分離方法は、高度に望ましくかつ費用対効果のある、クロマトグラフィーによらない分離方法を使用して実施される。
【0025】
本組成物は、本質的に、固体支持体につなぎ留められるか、固体支持体上に塗布される光学的に活性なジケト−およびピリジン−コーティングされたクラウンリガンド[固体支持体に結合されたリガンドは、疎水性溶剤で塗布されており、それにより、高度に選択的(選択性の係数が4以上)な、クロマトグラフィーによらない分離樹脂化合物を形成する]である。この化合物によって、標的キラルアミン、キラルアミノ酸およびそれらの誘導体をそれらの対掌エナンチオマーから分離することができる。本発明の樹脂化合物は、このように極めて安定であるから、多数回、再使用できる。さらに、本組成物は、所定の標的キラルアミンまたはアミノ酸を、それらの対掌エナンチオマーから取り出し、分離し、および/または、濃縮するために使用できるのみならず、同様に存在し得る他の不純物も同様に分離除去することができる。
【0026】
アミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを、その対掌エナンチオマーに優先して選択的に結合するための組成物は、固体支持体;固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンド;固体支持体上に塗布されている疎水性有機溶剤コーティング;を含まなければならない。固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンドは、以下の式1:
【0027】
【化2】

【0028】
[BおよびB’は、独立に嵩高い基であり;Mは、Mが固体支持体につなぎ留められている場合、飽和−C−または飽和−COC−であり、Mが固体支持体上に塗布されている場合、飽和−C−または飽和−COC−である]の構造を持たなければならない。つなぎ留める実施態様(tethering embodiment)に関して、1個以下の水素が式中に存在する理由は、固体支持体が化学的にリガンドに結び付いている場合、水素原子が、典型的には、置換されていることに関連している。言い換えれば、あるべき所にない水素は、結合位置を示す。1つの実施態様において、嵩高い基(Bおよび/またはB’)は、芳香族、3〜10個の炭素原子を有する分岐の低級アルキル基、および3〜10個の炭素原子を有する直鎖の低級アルキル基からなる群より独立に選択しなければならない。例えば、嵩高い基(Bおよび/またはB’)が芳香族基である一実施態様においては、1〜6個の環構造が存在しなければならない。好ましい芳香族環の例は、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、アントラシル基、フェナントリル基および/またはベンゾナフチル基を含む。嵩高い基(Bおよび/またはB’)が分岐の低級アルキル基である場合、t-ブチル基によって、良い立体障害を提供できる。
【0029】
上述したように、組成物は、固体支持体上に塗布されたリカンドを含まなければならず、または固体支持体につなぎ留められるリガンドを含まなければならない。もし、リカンドが固体支持体上に塗布されている場合、組成物は次の式2a:
【0030】
【化3】

【0031】
[SSとLとの間の結合は、化学結合というより、むしろ物理的結合またはコーティングをあらわす]によって表されなければならない。この式に関して、SSは、多孔質または非多孔質の粒状無機または有機ポリマー固体支持体でなければならず、Lは、式1に示されるような、クラウンリガンド分子中のキラル炭素に結び付いた2つの嵩高い基を有するジケト−およびピリジン−コーティングクラウンリガンド分子でなければならない。
【0032】
もし、リガンドが固体支持体につながっている場合には、組成物は以下の式2b:
【0033】
【化4】

【0034】
に示される親水性スペーサーを介さなければならない。式2b中、SSは、多孔質または非多孔質粒状無機または有機ポリマーであらねばならず、Aは、共有結合構造であらねばならず、Xは、親水性のスペーサー原子団であらねばならず、Lは、式1に示されるような、Lのキラル炭素に結び付いた2つの嵩高い基を有するジケト−およびピリジン−コーティングクラウンリガンド分子であらねばならない。さらに、SSが粒状有機ポリマーである場合、A−Xは共有単結合として結合してもよい。
【0035】
リガンド結合固体支持体(SS−LまたはSS−A−X−L)は、好ましくは、疎水性有機溶媒で塗布される。使用できる疎水性溶剤の例としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンおよび/またはオクタンを含むが、その他の疎水性溶剤も使用されることがある。リガンド結合固体支持体を調製した後、このコーティングを施すか、または、リガンド結合固体支持体の調製と同時に、このコーティングを施さなければならない。例えば、光学的に活性なリガンドおよび疎水性有機溶液の双方を含むコーティング組成物は、ただ一つのコーティングとして塗布しなければならない。式2aおよび2bにおいては、ただ一つのリガンドが、一つの固体支持体につなぎ留められるか、その上を塗布しているように示されているが、多数のリガンドが、それぞれの固体支持体上に同様に存在してもよいと理解される。
【0036】
式2aのSS−部分および式2bのSS−A−X−部分におけるそれぞれの構成要素は、結合リガンド(binding ligand)において使用されることが周知である。好ましくは、固体支持体(SS)は、シリカ、シリカゲル、珪酸塩、ジルコニア、チタニア、アルミナ、酸化ニッケル、ガラスビーズ、フェノール性樹脂、ポリスチレンおよびポリアクリレートからなる群より選択される無機および/または有機粒状支持体材料でなければならない。しかしながら、上記判定基準に合致するものであれば、他の有機樹脂またはどのような親水性有機および/または無機支持体材料も使用できる。本発明は、有機溶液によってリガンド結合固体支持体のコーティングを提供するので、有機固体支持体、例えば、フェノール性樹脂、ポリスチレンおよびポリアクリレートのコーティングは、さらによく機能する傾向がある。しかしながら、無機支持体および有機支持体は、双方とも共に間違いなく機能的である。
【0037】
共有結合スペーサー原子団によりSS−A−X−固体支持体に結合された有機イオン結合リガンドの利用方法は、米国特許第4,943,375号;第4,952,321号;第4,959,153号;第4,960,882号;第5,039,419号;第5,071,819号;第5,078,978号;第5,084,430号;第5,173,470号;第5,179,213号;第5,182,251号;第5,190,661号;第5,244,856号;第5,273,660号;および、第5,393,892号に開示されている。これらの特許は、固体支持体と結び付く有機リガンドの形成に使用できる種々のスペーサーを開示しており、これらを参照することにより本明細書に援用する。
【0038】
無機固体支持体が使用され、共有的な取り付けまたはつなぎ留めが実施されている場合、親水性スペーサーは、ケイ素、炭素、窒素、酸素または硫黄原子に分類され、さらに、粒状多孔質および/または非多孔質固体支持体に共有結合されなければならない。固体支持体SSが無機材料、例えば、シリカ、シリカゲル、珪酸塩、ジルコニア、チタニア、アルミナ、酸化ニッケルおよび/またはガラスビーズである場合、共有結合Aは、A−Xが以下の式4:
【0039】
【化5】

【0040】
[ZおよびZ’は、Cl、Br、I、低級アルキル基、低級アルコキシ基、置換低級アルキル基または置換低級アルコキシ基およびO−SS(SSは、式2bの固体支持体を表す。)からなる群より選択される員を独立に表さなければならない。]によって表されるようなシランでなければならない。本願明細書で使用されているように、低級アルキル基または低級アルコキシ基は、1〜16個の炭素原子を有する基を意味する。代わりに、機能的なシロキサンを、同様に使用することができる。
【0041】
さらに、Xは、以下の式5:
【0042】
【化6】

【0043】
[Rは、H、SH、OH、低級アルキルおよびアリールからなる群より選択される員であり;aは、3〜約10の整数であり;bは、0または1の整数である]
に基づくスペーサー原子団でなければならない。
【0044】
有機ポリマーまたは樹脂固体支持体を、つなぎ留める実施態様、すなわち、SSが、粒状ポリマー有機固体支持体マトリクッス、例えば、ポリアクリレート、ポリスチレンおよび/またはポリフェノールである実施態様に使用する場合、リガンドは、概して、ポリマー上の活性化された極性基と反応性の官能的原子団を含有しなければならない。AとXとが結合する場合、それらは、以下の式6:
【0045】
【化7】

【0046】
[yは、0または1でなければならず;xおよびzは、独立に0〜10の全数でなければならず;そしてYは、O、S、C=N、CO、CONH、CSNH、COO、CSO、NH、NR、SO、SO、SONH、CおよびCH(ここで、Rは、低級アルキルでなければならない。)からなる群より選択される員でなければならないが、ただし、x、yおよびzの少なくとも1つは、少なくとも1である必要がある]
によって表されることがある。
【0047】
本発明は、上の式2aおよび2bのSS−A−X−またはSS−部分の発見に帰するものではないことを強調する。むしろ、固体支持体に共有結合し、かつ、疎水性溶剤で塗布された光学的に活性なジケト−およびピリジン−含有クラウンエーテルリガンドが、個々のキラルアミンおよび/またはキラルアミノ酸のエナンチオマーを、クロマトグラフィーによらないで分離処理する能力を示すことを発見したことである。さらに、本発明は、本願明細書中には特に記載されていない、他のつなぎ留めるか塗布するスキームが使用できるように、SS−LまたはSS−A−X−Lの式を特別に使用する組成物および方法に限定されない。例えば、リガンド(L)コーティング実施態様に関しては、リガンド(L)を、第三の組成物で固体支持体(SS)上にまたは第三の組成物のトップ上に塗布することができる。
【0048】
本発明の方法は、クロマトグラフィーによらない運転モードにおいて、3段階以下の分離段階を利用することを含み、このように、そのサイズにかかわらず、いずれの既知のシステムにおいても生成物処理量および経済的効率が非常に増大する。ある実施態様では、さらに少ない段階を使用するだけでよい。さらに詳しくは、共通溶液中のキラルアミンおよび/またはキラルアミノ酸の対掌エナンチオマー(および他の非所望化学物質または粒状体)を含有する混合物からこのようなアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを分離するための方法は、アミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーと上記の本発明の組成物との間に錯体を選択的に形成することによって実施できる。1つまたは2つの分離処理段階であっても機能的であり、本発明の範囲内に入るが、これらの組成物は、3段階までの各分離処理段階において少なくとも4の選択性係数を有する。
【0049】
分離処理は、式1に示されるもののような、ジケト−およびピリジン−含有キラルクラウンエーテルリガンド固体支持体クラウンを取り付け(塗布し)、そしてリガンドと結合する固体支持体に疎水性溶剤を塗布することにより実施される。キラルアミンおよび/またはキラルアミノ酸の2つのエナンチオマー混合物を含有する原溶液を、その組成物の支持集団に流すことによって分離処理を達成できる分離装置、例えば、カラム内で、そのような塗布された組成物を使用することがでる。具体的には、ある方法の工程は、(1)疎水性溶剤で塗布された(式1に示されるような)光学的に活性なジケト−およびピリジン−含有キラルクラウンエーテルリガンド結合固体に支持された材料を充填したカラムに、(溶剤、例えば、水またはアルコールをキャリヤーとして)標的エナンチオマーと対掌エナンチオマーとを含有する混合物を流し、(2)その組成物と標的エナンチオマーとを選択的に錯形成させ、(3)本来カラムを流れる溶液の量よりはるかに少ない量の錯体を壊す受容液体を流すことによって標的エナンチオマーが結び付けられた化合物から標的エナンチオマーの錯体を壊して、受容液体内の標的エナンチオマーを取り出し、濃縮する工程を含まなければならない。この時点で、第1の分離処理が達成される。
【0050】
次に、アミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーが、固体に支持されたリガンドに再度結合可能な状態まで、標的エナンチオマーをさらに濃縮した量で含有する受容液体に、溶剤を添加および/または塩を添加して、それから、調整しなければならない。ついで、固体支持体に結合され、かつ、疎水性溶剤で塗布された対掌の光学的またはキラル活性を有する(式1に示されるような)ジケト−およびピリジン−含有キラルクラウンエーテルリガンドを収納している分離装置に、調整された溶液を通す。かくして、対掌エナンチオマーは、クロマトグラフィーによらない方法で対掌の光学的活性を有する組成物に選択的に結合し、残留する対掌エナンチオマーの大部分がラフィネートから選択的に取り出される。言い換えれば、第二段階の錯形成プロセスは、対掌のキラリティを有する結合したリガンドを使用する以外は、初期分離段階におけるプロセスと類似している。対掌のキラリティーを有するリガンドを再度使用して、第二段階を繰返すと、それにより、より高純度にすることができる。
【0051】
第二段階またはそれに続く第二段階分離処理が必要か否かは、α価と所望の純度とに大きく依存するであろう。分離装置内で標的エナンチオマーをその組成物に結合させることにより分離処理の第一段階を行うことが望ましい理由は、その分離処理で、第分離処理の一段階において所望されない他の化学物質または粒状体とともに対掌エナンチオマーが取り出されることに幾分起因するからである。標的エナンチオマーが、第一段階の後のラフィネート中に得られるように分離処理を設計すると、その後、標的エナンチオマーと一緒になって他の不純物が、残存するに違いない。ラフィネート中の標的エナンチオマーを収集することにより開始される分離処理を行うことは、設計の観点からはあまり望ましくないものの、それでもなお本発明の範囲内に入る。
【0052】
4.0のα価は、あるエナンチオマーがその対掌体よりも4倍のパフォーマンスを有することを示す。従って、α価が4.0の場合、ラセミ出発溶液を想定すると、一方のエナンチオマーが、他方のエナンチオマーよりも優る98.5%純度を達成するためには、3回の分離処理が必要である。α価が大きくなるほど、高純度が可能になりおよび/または分離段階を少なくできる。活性な材料を、その全能力もしくはそれに近いもので使用することができ、3段階以下で実質的に分離処理を達成できる技術によって、経済的にも設計上の観点からも、有意なプロセスの有益性が提供される。以下の表1は、ラセミ組成物が段階で使用されると想定し、本発明のクロマトグラフィーによらないシステムによる分離段階のいろいろな回数と、いろいろなα価とを関数として、達成されるエナンチオマー純度の実例を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
この表から、α価が高いほど、99%エナンチオマー純度に到達するために必要な分離処理の段数が少なくてすむことが明らかである。α価が5の場合(表示せず)には、たった3段階だけを使用して、>99%の純度を得ることができる。
【0055】
所望される場合には、このプロセスにおいて、また、分離処理の第一段階において収集されなかった目標のアミンまたはアミノ酸のいずれかの回収、すなわち、キラルアミンおよび/またはキラルアミノ酸の標的エナンチオマーのブリードスルー(bleed through)が可能である。すでに述べたように、大部分の目標のアミンまたはアミノ酸がその段階において収集されてしまった後に残る溶液は、ラフィネートと称される。初期分離処理段階からの小量の目標のアミノ酸を含有するラフィネートは、1つまたは複数の追加のカラムにそのラフィネートを通することによって処理することができ、そうすることによって、標的エナンチオマーの一部をラフィネートから取り出すことができる。初期分離処理段階在中に収集されなかった目標のアミンまたはアミノ酸を収集するためには、必要性は感じないが、目標のアミンおよび/またはキラルアミノ酸に選択性のある塗布された光学的に活性なリガンド結合固体支持体を含有する樹脂を、より少量使用する必要がある。この処理が完了してしまえば、このプロセスの残りは、初期分離処理段階と類似している。
【0056】
この組成物および方法は、分離処理の好ましいシステム、すなわち、第一段階と第二/第三段階における交互のキラリティーを有するリガンドを使用する3つの分離処理段階を説明してはいるが、これらの主要部を利用して他のシステムを開発することができる。例えば、第1のカラム分離処理において、対掌エナンチオマーがリガンドに結合されるように、組成物を設計することができる。そうすると、そのラフィネートが、大量の標的分子エナンチオマーを含有してしまい、このような方法を使用しても、標的エナンチオマーとともにラフィネート中に不純物を残しかねない。これを軽減するためには、標的エナンチオマーを樹脂に結合させる段階を、その後に続けて実施しなければならない。この分離処理のこれらの組合せおよび他の組合せも本発明の範囲内に含まれる。さらに、効率の最大化を目指して分離装置を高機能化または調整するためには、光学的に活性なリガンドのサイズを、記載されたパラメータ内で調整しなければならない。例えば、より大きな大環状体は、より大きな分子を分離するために使用しなければならない。式1に示されるもののようなクラウン−5およびクラウン−6の光学的に活性なリガンドは最も使用に適したリガンドである。
【0057】
個々の樹脂に結合した分離プロセス(resin-bound separation process)の適合性を検討する場合、以下の因子((1)樹脂消費量;(2)溶剤使用量;(3)生産性(例えば、化学的、光学的および量的収率);(4)分離処理工程の合計数;および、(5)投入コスト)を考慮しなければならない。本発明のクロマトグラフィーによらない分離方法は、現在工業的に実施されている方法と比較して優るとも劣らない。例えば、本発明の組成物および方法は、プロセス工程数を少なくし;化学的、光学的および量的収率を高め;供給処理量を増大させ;溶剤選択にさらに大きな自由度を与え;溶剤の使用量を最小にし;そして、樹脂の消費量を低減させる。
【0058】
本発明のリガンドは、高い化学的選択性およびエナンチオ選択性の双方を示し、キラル分割および化学的分離を同時に行えるため、プロセスの工程数を若干減らすことができる。おのおのの装着サイクルにおいて単一のエナンチオマーに対して、本発明のリガンドが大きな処理能力を有するため、高い化学的、光学的および量的収率が達成される。また、選択性が高いことによって、処理量の収率は高くなり、供給導入用システムの稼働時間も100%近くまで上昇する。さらに、本発明のリガンドは、すでに説明したように、固体支持体に結合しているので、この共有結合によって、寿命が長くなり、リサイクルの回数を増やすことが可能になった。この特徴のため、ユーザーは、また、所望の結果に対して最良の溶剤を選択することができるので、従って、溶剤選択は、自由にできるものと考えられる。高い供給濃度で使用することができ、供給物をほぼ連続的に流すことができるために、使用される溶剤の量を、劇的に少なくできる。また、それらが高度に安定であることと相俟って、リガンド結合固体支持体の処理能力を効率よく使用することにより、樹脂消費量を低減できる。逆に、クロマトグラフィー法では、収率が低く、溶剤消費量も大きいことが多い。
【0059】
本発明に記述されるキラル分離処理法には、多くの実施可能な応用例がある。例えば、医薬品業界において、これら分離処理は、分析、薬剤開発および商業生産のために使用できる。薬剤発見プロセスの間には、可能性のある化合物の広範囲のスクリーニングが、動物試験とともに実施される。従って、候補をスクリーニングするためには、小量の光学的に純粋な薬剤が、しばしば迅速に必要とされる。マトリックスの汎用性および迅速な処理もまた不可欠であることが多い。さらに、臨床前および臨床開発段階のおいては、光学的に純粋な薬剤の量に対する要求が、劇的に、例えば、数グラム〜100キログラムまで増大しうる。また、光学的に純粋な薬剤が、動物試験、例えば、薬物動態学、代謝、組織分布および安全性ならびにフェイズI、IIおよびIIIにおけるヒト臨床研究で必要とされることがある。重ねて、これらの研究においては、時間が決定的な要素であることが多く、従って、本明細書に記載する迅速な分離システムが好都合である。さらに、製品を世に出し、製造する間には、目標のキログラム薬剤製造価格にみあう有利な総加工費の大量のラセミ化合物、すなわち、年間25トンを超える量はこれらの工業にとって重要である。
【0060】
アミノ酸分離処理は、本発明のもう1つの特別な応用例である。アミノ酸は、例えば、半合成ペニシリンの製造における、D−フェニルグリシンまたはD−パラヒドロキシフェニルグリシンのように、(とりわけ、医薬品のためには)重要な合成前駆体である。これらの分離処理は、また、その他のキラルファインケミカル物質のために使用され、修飾された生物学的に活性なペプチドに組込むためにも使用される。非天然のアミノ酸は、醗酵によっても、天然資源からも得ることができないため、キラルまたはプロキラル前駆体のラセミ化合物の分割を伴う慣用的な合成、不斉合成、または、生物の生体内変換により、これらを製造する必要がある。合成に応用するための特殊化されたタイプのアミノ酸は、バイオテクノロジー業界において成長分野となっている。応用例としては、ペプチドホルモン、成長因子、非免疫性抗原、酵素基質、受容体およびリガンド、化学的な薬剤、研究用生物活性ペプチド、コンビナトリアルケミストリー、創薬、農薬および人工甘味料が列挙される。従って、アミノ酸は、さらに有効な分離技術により利益を得ることができる重要な化合物といえる。アミンおよびアミノエステルもまた、キラルの最終物質としても中間物質としてもどちらも重要である。
【0061】
実施例
以下の実施例は、現在最も好ましいと認められている本発明の好ましい実施態様を示す。しかし、その他の実施態様も実施でき、本発明の範囲内に入る。
【0062】
[リガンド結合固体支持体の調製]
実施例1 −ポリスチレンにつなぎ留められたシ゛-第3フ゛チル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6(di-tert-butyl-diketo-pyridine-18-crown-6 tetheredto polystyrene)の調製
側枝を介してポリスチレンに取り付けた4S,14S-(+)-4,14-シ゛-第3フ゛チル-3,6,9,12,15-ヘ゜ンタオキサ-21-アサ゛ヒ゛シクロ[15.3.1]ヘネイコサ-1(21),17,19-トリエン-2,16-シ゛オン(4S,14S-(+)-4,14-Di-tert-butyl-3,6,9,12,15-pentaoxa-21-azabicyclo[15.3.1]heneicosa-1(21),17,19-triene-2,16-dione attachedthrough a side arm to polystyrene)(以下の組成物5)は、以下のようにして調製できる:
【0063】
【化8】

【0064】
上記反応式において、市販されている組成物1と組成物2とを、モレキュラーシーブおよびメチルアルコールの存在下、縮合反応プロセスによって反応させる。この縮合反応によって、組成物3中に示されるピリジン−18−クラウン−6が形成される。その後、封鎖基を従来法で取り除くことができ、組成物4中に示される第二ピリジン−18−クラウン−6が形成される。組成物4は、その後、THF中で炭酸セシウムおよびクロロメチルポリスチレンと反応させることができ、組成物5中に示されるポリスチレンに結合したシ゛-第3フ゛チル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6を形成する。
【0065】
なお、側枝は、上に示したものと異なるものでもよい。例えば、−(CHO−,−(CHN−または−(CHS−[nは、1〜18の整数である]が使用できる。代わりに、1〜18個の炭素原子を持った、分岐アルキルO、分岐アルキルNまたは分岐アルキルSもまた使用できる。付言すると、点線は、2つの可能な側枝のリンカーがクラウンをポリスチレンに結び付けることを示すために使われる。両者は、2つの可能な等価の異性体を表示すために、組成物5について示されるように、提供される。どんなにそのプロポーション、分離処理をもたらすための効果が、実質的に影響されなくとも、両異性体は、大まかに等しいプロポーションで存在できる。また、より好ましいとは言えないが、両リンカーア−ムが単一のクラウン分子上に存在してもよい。
【0066】
以上に示す反応工程を実施するために、組成物2が以下の反応工程で形成される:
【0067】
【化9】

【0068】
上記反応式において、組成物6を、次に、炭酸カリウムの存在の下、アセトニトリル中でベンジルブロミドと反応させることができ、組成物7が形成される。トリチルクロリドを、その後、メチルクロリド中で、トリトリエチルアミンの存在の下、組成物7と反応させる。形成された組成物8のモノ−保護ジオール(mono-protected diol)を、その後、DMF中で室温にて、トリチル基で保護されている2−ブロモエタノールおよび水素化ナトリウムと反応させることができ、組成物9が形成される。トリチル基は、水素イオンと反応することによって、組成物9から取り出すことができ、(そうすることによって、それらが提供する保護が取り除かれ)組成物10が形成される。
【0069】
THP封鎖基が取り出された後に、組成物11を、次に、組成物10と反応させることができ、組成物12が形成される。上記反応図式において、組成物11の調製法は、J.Org.Chem.1991(56)3330,に開示されている。その文献は参照することにより本願明細書中に援用される。
【0070】
実施例2 −ポリスチレンにつなぎ留められたシ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6(diphenyl-diketo-pyridine-18-crown-6 tetheredto polystyrene)の調製−
側枝を介してポリスチレンに取り付けた4S,14S-(-)-4,14-シ゛フェニル-3,6,9,12,15-ヘ゜ンタオキサ-21-アサ゛ヒ゛シクロ[15.3.1]ヘネイコサ-1(21),17,19-トリエン-2,16-シ゛オン(4S,14S-(-)-4,14-Diphenyl-3,6,9,12,15-pentaoxa-21-azabicyclo[15.3.1]heneicosa-1(21),17,19-trine-2,16-dione attachedthrough a side arm to polystyrene)(以下の組成物16)は、以下のようにして調製できる:
【0071】
【化10】

【0072】
上記反応図式において、組成物16は、先ず、メチルアルコール中で、モレキュラーシーブの存在下、組成物1と組成物18間の縮合反応を実施することにより調製され、組成物11のピリジン−18−クラウン−6をもたらす。組成物14は、その後、従来法により脱保護でき、組成物15が形成される。組成物15は、その後、アセトニトリルとテトラハイドロフランの混合物中で炭酸セシウムおよびクロロメチルポリスチレンと反応させることができ、組成物16を形成する。
【0073】
なお、側枝は、上に示したものと異なるものでもよい。例えば、−(CHO−,−(CHN−または−(CHS−[nは、1〜18の整数である]が使用できる。代わりに、1〜18個の炭素原子を持った、分岐アルキルO、分岐アルキルNまたは分岐アルキルSもまた使用できる。さらに、点線は、2つの可能な側枝のリンカーがクラウンをポリスチレンに結び付けることを示すために使われる。両者は、2つの可能な等価の異性体を表示すために、組成物16について示されるように提供される。両異性体はほぼ同じ比率で存在し、どのような比率であっても分離処理をもたらすための効果に実質的に影響はない。
【0074】
以上に示す反応工程を実施するために、組成物18が以下の反応工程で形成される:
【0075】
【化11】

【0076】
先ず、(実施例1で調製されたような)組成物10を、塩化メチレン中で、トリエチルアミン存在の下、塩化トシルと反応させ、組成物12を形成することによって、この調製法を起こすことができる。組成物13は、J. Het. Chem.,1984,(21),897、および J. Org. Chem., 1991,(56), 333に従って製造でき、両文献は参照することにより本願明細書中に援用される。組成物12は、示されるような組成物13と反応させることができ、酢酸を使用して保護を取り除いた後、組成物18が形成される。
【0077】
実施例3 −ポリスチレンにつなぎ留められたシ゛-第3フ゛チル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-15-クラウン-5(di-tert-butyl-diketo-pyridine-15-crown-5 tetheredto polystyrene)の調製−
側枝を介してポリスチレンに取り付けた4S,11S-4,11-シ゛-第3フ゛チル-3,6,9,12-テトラオキサ-18-アサ゛ヒ゛シクロ[12.3.1]オクタテ゛カン-(18),14,16-トリエン-2,13-シ゛オン(4S,11S-4,11-Di-tert-butyl-3,6,9,12-tetraoxa-18-azabicyclo[12.3.1]octadecane-(18),14,16-triene-2,13-dione attachedthrough a side arm to polystyrene)(以下の組成物21)は、以下のようにして調製できる:
【0078】
【化12】

【0079】
以上の組成物21の調製は、モレキュラーシーブの存在の下、メチルアルコール中で、組成物1と組成物17の間の縮合反応工程によって実施される。調製された組成物は、保護されたピリジン−15−クラウン−5である。その保護されたピリジン−15−クラウン−5は、保護を取り除くことができ、組成物20を、従来法法で形成する。THF/CHCN中で炭酸セシウムおよびクロロメチルポリスチレン中の組成物を反応させることにより、組成物20を、ポリスチレンに結合させることができ、組成物21を形成する。
【0080】
なお、側枝は、上に示したものと異なるものでもよい。例えば、−(CHO−,−(CHN−または−(CHS−[nは、1〜18の整数である]が使用できる。代わりに、1〜18個の炭素原子を持った、分岐アルキルO、分岐アルキルNまたは分岐アルキルSもまた使用できる。付言すると、点線は、2つの可能な側枝のリンカーがクラウンをポリスチレンに結び付けることを示すために使われる。両者は、2つの可能な等価の異性体を表示すために、組成物21に示されるように提供される。両異性体はほぼ同じ比率で存在しうるが、その比率がいくらであっても分離処理をもたらすための効果には実質的に影響しない。以上に示す反応工程を実施するために、組成物17が以下の反応工程で形成される:
【0081】
【化13】

【0082】
上記反応図式において、組成物17は、組成物7と組成物11とを反応させ、その後、酢酸を使用して保護を取り除くことによって調製できる。組成物11の調製法は、J. Het. Chem.,1984,(21),897、および J. Org. Chem., 1991,(56), 333に記載されており、この文献は、参照することにより本願明細書中に援用される。
【0083】
実施例4 −ポリスチレン上を塗布したシ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ノ-18-クラウン-6(diphenyl-diketo-pyridino-18-crown-6 coatedon polystyrene)の調製−
7.58グラム量のCMP−11ポリスチレンを、100ミリリットルのCHCl中に30分間浮遊させた。この樹脂は、ついで、濾紙上で濾過され、50ミリリットルのCHClで4回、濾紙上で洗浄され、その後、一夜、室温で空気乾燥された。約2.5グラムのシ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6は、その後、30ミリリットルのCHCl中に溶解された。CHCl中のキラルクラウンは、それから、洗浄されたポリスチレンと一時間の間、穏やかに混合される。過剰の溶剤(ビーズ上にない)は、そこで、蒸発放置された。過剰の水を、次に、塗布された樹脂に加え、塗布されたビーズを覆い、コーティングプロセスで使用したCHClのそれ以上の蒸発を防いだ。その結果の生成物は、シ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ノ-18-クラウン-6を塗布されたポリスチレン固体支持体である。
【0084】
以上の実施例1〜4において、リガンド結合固体支持体成形体を、そこで、カラム中に充填された樹脂に通過させて、有機溶剤を侵漬、蒸発、流すことを含む多くの方法の一つによって、疎水性有機溶剤で塗布することができる。
【0085】
[エナンチオマー分離処理方法(enantiomeric separations)]
続く実施例で、固体支持体につなぎ留められるか、固体支持体上に塗布されており、その上に疎水性の有機溶剤コーティングを有する(立体障害または嵩高い基を有する)ジケト−およびピリジン−含有キラルエーテルリガンド(diketo-and pyridine-containing chiralcrown ether ligands)によってどのようにして、標的エナンチオマーを対掌エナンチオマーから取り出し、濃縮し、および/または、分離するために使用できるかを具体的に説明する。分離処理は、標的エナンチオマーに対して親和性を有する本発明の組成物(または少なくとも4の選択性を有する他の組成物)を、カラム中に設置しながら、実施しなければならない。標的エナンチオマーおよび対掌エナンチオマーの混合物(通常は、ラセミ化合物の混合物)を含有する水性原溶液を、そこで、カラムに通す。その溶液の流速は、カラムの頂部または底部にポンプで圧力を加えるか、または、受器側を減圧とすることにより増大させることができる。その原溶液をカラムに通し、ラフィネート中に存在する大部分の割合の対掌エナンチオマーを除去した後、はるかに少ない量の回収溶液(受容液)を使用して、さらに精製された形で標的エナンチオマーを収集する。本発明で機能する限り、当業者に公知の受容溶液ならどれでも使用することができる。これは、第1段階の分離処理を説明する。第2段階または第3段階の分離処理においては、リガンド結合固体支持体の選択性を、標的エナンチオマーをラフィネート中に収集できるように、逆転させなければならない。これは、好ましい方法ではあるが、本開示を考察した後は、当業者にとって明らかなように、変更した分離処理が実施できる。
【0086】
以下の分離処理実施例は、単なる例示であって、本発明の組成物を使用して可能となる、対掌エナンチオマーに優先したエナンチオマーの分離の多くを包含するものではない。
実施例5 −β−フェニルアラニンエチルエステルのエナンチオマーの分離処理−
本実施例において、0.32ミリリットルのシ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6リカ゛ント゛をポリスチレン上に塗布し、実施例4に記載されたように、CHClをさらに塗布した。出来上がった塗布されたリガンド結合固体支持体は、次に、カラム中に設置された。50ミリモルのβ−フェニルアラニンのエチルエステルのRおよびSエナンチオマー、0.01モルのHClOおよび0.5モルのLiClOを含有する25℃の3ミリリットルのラセミ化合物原溶液を、毎分0.012ミリリットルの流速でカラムを通して抜き出した。次に、2ミリリットルの0.5モルのHClOおよび0.5モルのLiClOの水性溶液をカラムに流し、カラム中に残存する装荷溶液(loading solution)を洗い出した。カラムに装填したβ−フェニルアラニンエステルを、ついで、25℃、毎分0.01〜0.02ミリリットルの流速で2つの15ミリリットルの部分に等分して3ミリリットルの脱イオン水(deionized water)中に溶離した。
【0087】
水性溶出液またはストリッピング部分(stripping aliquots)中のRおよびSエナンチオマーの量は、次に、HPLCによって分析した。分析によって、カラムを通過した3ミリリットルの水溶出液中に、44.3ミリモルのS−β−フェニルアラニンエチルエステルおよび11.1ミリモルのR−β−フェニルアラニンエチルエステルが存在することが示された。よって、たった1段階の分離処理を実施しただけの後で、カラムによって結合されたβ−フェニルアラニンエチルエステルは、約83.3%の純度(約5のα価を提供する)だった。
【0088】
本実施例は、3つまでの(またはそれ以上の)分離処理段階の第一段階のみを記載する。S−β−フェニルアラニンエチルエステルおよびR−β−フェニルアラニンエチルエステルをさらに精製したい場合には、追加の段階を実施してよい。例えば、分離処理の第二段階または第三段階を、それぞれ、実施する場合には、エナンチオマーを、さらに、96%、さらには>99%まで精製できる。これを達成するためには、分離装置内の組成物に結合されたS−β−フェニルアラニンエチルエステルを、水性受容容液といったん接触させて、追加の分離段階を実施しなければならない。具体的には、R−エナンチオマーよりもはるかに多いS−β−フェニルアラニンエチルエステル(約83.3%)を含有する受容溶液を、樹脂が少数派のR−エナンチオマーと選択的に結合することができるように構成されたカラムまたはその他の分離装置に好ましくは通す。逆転したキラリティーのリガンドを提供することによって、このことは実施できる。かくして、この第二段階のみの後で、樹脂、すなわち、塗布されたリガンド結合固体支持体は、(>5のα価に基く)約96%の純粋なS−β−フェニルアラニンエチルエステルを含有するラフィネートを生ずるR−エナンチオマーを結び付けることができる。第三段階の分離が所望される場合には、段階二のラフィネートを段階二において記載したと同様の分離処理装置に通し、第三段階のラフィネートを、>99%のβ−フェニルアラニンエチルエステルにまで精製する。
【0089】
実施例6 −ナフチルエチルアミンの分離処理−
本実施例において、4.2ミリモルのポリスチレン上の固体上を覆うシ゛フェニル-シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6リカ゛ント゛を調製し、実施例4に記載されたように、CHCl有機溶剤でさらに塗布した。10ミリモルのナフチルエチルアミンのRおよびSエナンチオマーを含有する25℃のラセミ化合物0.7ミリリットル原溶液を(実施例5における、β−フェニルアラニンのエチルエステルの代わりに、および、装填したアミンの量を、溶出した量の代わりに計測した)を除いて、分離処理を、実施例5に記載されたものと、同様に実施した。第一段階の分離処理を実施した後、供給溶液と比較したラフィネートのHPLC分析によって、45.3%のR−ナフチルエチルアミンがリガンドに結合され、最後に分離されたことが示された。選択性またはα価は4.3と算出された。
【0090】
幾つかの好ましい実施態様に関して本発明を記載してきたが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、種々の変更、変形、省略および代替が可能なことを敏感に察知するであろう。例えば、標的エナンチオマーは、第1段階では受容溶液に、それに続く段階ではラフィネート中に収集されることが好ましいに違いはないが、いずれかの所定の段階で、分離装置を、ラフィネートまたは受容溶液が標的エナンチオマーを含有するように設計することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを、その対掌エナンチオマー上に選択的に結合させるための組成物であって、
固体支持体;
固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンド、ここで、該リガンドは式:
【化1】

[BおよびB’はそれぞれ独立して嵩高い基であり;Mは、Mが固体支持体につなぎ留められている場合、飽和−C−または飽和−COC−であり、Mが固体支持体上に塗布されている場合、飽和−C−または飽和−COC−である]
の構造を有する;および
固体支持体上に塗布されている疎水性有機溶剤コーティング;
を含む上記組成物。
【請求項2】
BおよびB’が、標的エナンチオマーが組成物に結合することが実質的にできるように形成されており、さらに、対掌エナンチオマーが組成物と結合することを実質的に立体的に妨げるように形成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
BおよびB’が、芳香族、3〜10個の炭素原子を有する分岐の低級アルキル、および3〜10個の炭素原子を有する直鎖の低級アルキルからなる群より独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
BおよびB’が、ナフチル基、ピリジル基、アントラシル基、フェナントリル基、ベンゾナフチル基、フェニル基およびそれらの組合せからなる群より独立して選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
BおよびB’がフェニル基である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
BおよびB’が、それぞれ独立して、4〜10個の炭素原子を有する分岐の低級アルキルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
BおよびB’がt−ブチル基である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
疎水性有機溶剤が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタン、およびそれらの組合せからなる群より独立して選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
固体支持体が、多孔質または非多孔質の有機ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
固体支持体が、多孔質または非多孔質の無機粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
光学的に活性なリガンドが固体支持体上に塗布されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
光学的に活性なリガンドが固体支持体上に塗布された後、疎水性有機溶剤が該光学的に活性なリガンド上に塗布される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
疎水性有機溶剤および光学的に活性なリガンドが、単一のコーティングとして固体支持体上に塗布される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
光学的に活性なリガンドが、シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-15-クラウン-5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
光学的に活性なリガンドが、シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
光学的に活性なリガンドが固体支持体につなぎ留められており、組成物が式:
【化2】

[SSは固体支持体であり、ここで、該固体支持体は、多孔質または非多孔質の無機粒子または有機ポリマーあり、Aは共有結合構造であり、Xは親水性のスペーサー原子団であり、そして、Lは光学的に活性なリガンド分子である、ただし、SSが有機ポリマーである場合、A−Xは共有単結合として結合されてよい]
で定義される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
SSが、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリフェノールおよびそれらの組合せからなる群より選択される有機ポリマー固体支持体である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
AとXとが結合しており、式:
【化3】

[yは0または1であり;xおよびzは独立に0または1〜10の整数であり;Yは、O、S、C=N、CO、CONH、CSNH、COO、CSO、NH、N−低級アルキル、SO、SO、SONH、CおよびCHからなる群より選択される員である、ただし、x、yおよびzの少なくとも1つは、少なくとも1である必要がある]
によって表される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
SSが、砂(sand)、シリカゲル、ガラス、ガラス繊維、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ニッケルおよびそれらの組合せからなる群より選択される無機固体支持体である、請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
Aが、−Si(Z,Z’)−O−[ZおよびZ’が、Cl、Br、I、低級アルキル、低級アルコキシ、置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、およびSSに結合したO−からなる群より独立して選択される]である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
Xが、式:
【化4】

[Rは、H、SH、OH、低級アルキルおよびアリールからなる群より選択される員であり;aは3〜10の整数であり;そしてbは0または1である]
によって表される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
エナンチオマー混合物を含有する原溶液に存在する対掌エナンチオマーからアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーを濃縮し、取り出し、分離するための方法であって、
(a)原溶液を、以下の構造を有する組成物と接触させる工程:
(i)固体支持体;
(ii)以下の構造を有する固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンド
【化5】

[BおよびB’は、独立して、嵩高い基であり;Mは、Mが固体支持体につなぎ留められている場合、飽和−C−または飽和−COC−であり、Mが固体支持体上に塗布されている場合、飽和−C−または飽和−COC−である];および
(iii)疎水性有機溶剤コーティング;
ここで該組成物は、その対掌エナンチオマーよりもアミンまたはアミノ酸標的エナンチオマーに対して親和性を有し、接触させると、標的エナンチオマーが優先的に組成物と錯形成する;
(b)標的エナンチオマーが錯形成させられていた組成物との接触から原溶液を取り出す工程;
(c)標的エナンチオマーがそこに錯形成させられていた組成物を、標的エナンチオマーが組成物から分離されるように、第二量の水性受容溶液と接触させる工程;そして
(d)受容溶液中に濃縮された形で標的エナンチオマーを回収する工程
を含む方法。
【請求項23】
標的エナンチオマーが、受容溶液中に実質的に溶解性であり、
(i)受容溶液が、標的エナンチオマーに対して、組成物よりも大きな親和性を有するか、
(ii)受容溶液が、組成物に対して、標的エナンチオマーよりも大きな親和性を有するか、または、
(iii)受容溶液が、組成物への標的エナンチオマーの結合強度または結合メカニズムを減じることにより、リガンドから標的エナンチオマーを定量的に解離(stripping)させる、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
BおよびB’は、標的エナンチオマーを組成物に結合させておくように形成されており、さらに、該BおよびB’は、対掌エナンチオマーを組成物に結合することを立体的に妨げるように形成されている、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
BおよびB’が、芳香族、3〜10個の炭素原子を有する分岐の低級アルキル、および3〜10個の炭素原子を有する直鎖の低級アルキルからなる群より独立して選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
疎水性有機溶剤が、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、オクタンおよびそれらの組合せからなる群より独立して選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
固体支持体が、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリフェノールおよびそれらの組合せからなる群より選択される有機ポリマーである、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
固体支持体が、砂(sand)、シリカゲル、ガラス、ガラス繊維、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ニッケルおよびそれらの組合せからなる群より選択される無機固体支持体である、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
リガンドが固体支持体上に塗布されている、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
リガンドが固体支持体上に塗布された後、疎水性有機溶剤がそのリガンド上に塗布される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
疎水性有機溶剤およびリガンドが、固体支持体上に単一のコーティングとして塗布される、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
光学的に活性なリガンドが、シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-15-クラウン-5である、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
光学的に活性なリガンドが、シ゛ケト-ヒ゜リシ゛ン-18-クラウン-6である、請求項22に記載の方法。
【請求項34】
標的エナンチオマーおよびその対掌エナンチオマーが、β−アミノ酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
標的エナンチオマーおよびその対掌エナンチオマーが、芳香族α−アミンである、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
エナンチオマー分子をその対掌エナンチオマーから分離するクロマトグラフィーによらない方法であって、
(a)標的エナンチオマーとその対掌エナンチオマーとを含有するラセミ化合物供給溶液を分離装置に流す工程、ここで、該分離装置は、以下を含む第1の組成物を含んでおり:
(i)固体支持体;
(ii)固体支持体につなぎ留められた光学的に活性なリガンド、または、固体支持体上に塗布された光学的に活性なリガンド、ここで、該リガンドは以下の式1の構造を有する:
【化6】

[BおよびB’は、独立に嵩高い基であり;Mは、Mが固体支持体につなぎ留められている場合、飽和−C−または飽和−COC−であり、Mが固体支持体上に塗布されている場合、飽和−C−または飽和−COC−である];および
(iii)疎水性有機溶剤コーティング
ここで、第1の組成物は、標的エナンチオマーに対する親和性があり、少なくとも4の選択性を有している;
(b)標的エナンチオマーと第1の組成物との間に選択的に錯体を形成させ、それにより、対掌エナンチオマーの高い純度を有する第1のラフィネートを形成する工程;
(c)標的エナンチオマーと第1の組成物との間の錯体を第二量の水性受容溶液で壊し、標的エナンチオマーを濃縮された受容液体を形成する工程;
(d)標的エナンチオマーが濃縮された受容液体を、第2の分離装置に流す工程、ここで、該第2の分離装置は、式1の構造を持つ第2の組成物を含み、第1の組成物に関して逆の光学活性を有する;および
(e)対掌エナンチオマーと第2の組成物との間に錯体を選択的に形成させ、それにより、高純度の標的エナンチオマーを有する第2のラフィネートを形成する工程
を含む方法。

【公表番号】特表2006−516928(P2006−516928A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−538231(P2004−538231)
【出願日】平成15年9月17日(2003.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/029491
【国際公開番号】WO2004/026247
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【出願人】(501364678)アイビーシー アドバンスト テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】