説明

アミン含有ホスフィン化合物

【課題】ホールの注入性及び/又は輸送性に優れており、かつ、ホールの注入性及び/又は輸送性に優れた金属錯体を形成可能な配位子である化合物を提供する。
【解決手段】下記式(A)で表される化合物。


(式中、各々のQは、


である。2つのQは同じでも異なっていてもよい。Rは、置換基を有していてもよい2価の有機基である。各々のR11は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。同じQに結合している2つのR11は、それらが結合しているQと一緒になって環を形成していてもよい。4つのR11は、同じでも異なっていてもよい。R及び4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基は、ジアリールアミノ基を置換基として有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン含有ホスフィン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ホールの注入性及び/又は輸送性に優れた材料として、浅いHOMO(最高被占軌道)準位の材料が有望視されている。浅いHOMO準位を実現するために、電子供与性の強いアミン部位を有する化合物が種々検討されている。ここで、浅いHOMO準位とは、エネルギーの絶対値が小さいHOMO準位のことである。
【0003】
一方、金属錯体を形成するための配位子として、ホスフィン系の配位子がよく知られている。とりわけ、配位子中に2つのホスフィン部位を有し、ホスフィン部位がキレート型で配位可能な配位子は、安定な錯体を形成することが可能である(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Organomet.Chem.694,538−545(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のことから、ホールの注入性及び/又は輸送性に優れており、かつ、ホールの注入性及び/又は輸送性に優れた金属錯体を形成可能な配位子として、2座配位可能なホスフィン部位を有する骨格に、アミン部位を有する化合物の有用性が高いと考えられる。
【0006】
しかし、公知の化合物は、アミン部位がアルキルアミン構造であるため配位結合の結合力が強く、[1]ホスフィン部位で選択的に配位した金属錯体を形成し難いため、あるいは、[2]2つのホスフィン部位が立体的に近づき難いか別々の方向を向いているため、キレート型で配位し難い構造であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等は様々な化合物について鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、下記〔1〕〜〔6〕の化合物、〔7〕の金属錯体、及び、〔8〕の発光素子を提供する。
〔1〕下記式(A)で表される化合物。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、
各々のQは、
【化2】

である。2つのQは、同じでも異なっていてもよい。
は、置換基を有していてもよい2価の有機基である。
各々のR11は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。同じQに結合している2つのR11は、それらが結合しているQと一緒になって環を形成していてもよい。4つのR11は、同じでも異なっていてもよい。
及び4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基は、ジアリールアミノ基を置換基として有する。)
〔2〕Q
【化3】

である、〔1〕に記載の化合物。
〔3〕Rが、置換基を有していてもよい、下記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である、〔1〕又は〔2〕に記載の化合物。
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、
は、−(C(R53−、−O−、−S−、−N(R52)−又は−Si(R53−で表される2価の基である。
nは、1又は2である。
52は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基である。
各々のR53は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基である。複数あるR53は、同じでも異なっていてもよい。)
〔4〕R11が、置換基を有していてもよいアリール基である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の化合物。
〔5〕R及び4つのR11から選ばれる少なくとも3つの基が、ジアリールアミノ基を置換基として有する、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の化合物。
〔6〕ジアリールアミノ基がジフェニルアミノ基である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の化合物。
〔7〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の化合物を含む金属錯体。
〔8〕〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の化合物、及び/又は、〔7〕に記載の金属錯体を含有する発光素子。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、HOMO準位が浅く、かつ、金属に対して2つのホスフィン部位でキレート型配位可能であり、HOMO準位が浅い金属錯体を形成可能である。すなわち、本発明の化合物はホールの注入性及び/又は輸送性に優れており、かつ、本発明の化合物を用いることで、ホールの注入性及び/又は輸送性に優れた金属錯体を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を説明する。
【0015】
本明細書において、Meはメチル基、t−Buはターシャリーブチル基、Phはフェニル基、t−Octは1,1,3,3−テトラメチルブチル基を表す。
【0016】
本発明は、下記式(A)で表される化合物を提供する。
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、
各々のQは、
【化6】

である。2つのQは、同じでも異なっていてもよい。
は、置換基を有していてもよい2価の有機基である。
各々のR11は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。同じQに結合している2つのR11は、それらが結合しているQと一緒になって環を形成していてもよい。4つのR11は、同じでも異なっていてもよい。
及び4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基は、ジアリールアミノ基を置換基として有する。)
【0019】
ここで、「置換基を有してもよい」とは、換言すると「置換されていてもよい」との意味である。例えば、「置換基を有していてもよい2価の有機基」は、「置換されていてもよい2価の有機基」と同義であり、2価の有機基中の水素原子の一部又は全部が、置換基で置換されていてもよい2価の有機基のことをいう。また、「置換基を有していてもよいヒドロカルビル基」は、「置換されていてもよいヒドロカルビル基」と同義であり、ヒドロカルビル基中の水素原子の一部又は全部が、置換基で置換されていてもよいヒドロカルビル基のことをいう。置換基については、後述する。
【0020】
式(A)で表される化合物の炭素原子数は、通常、20〜350であり、好ましくは25〜300、より好ましくは30〜250であり、更に好ましくは35〜200であり、特に好ましくは40〜150である。
【0021】

【化7】

であり、好ましくは
【化8】

であり、より好ましくは
【化9】

である。
2つあるQはそれぞれ同じでも異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0022】
で表される2価の有機基としては、例えば、2価の炭化水素基、2価の炭化水素基と−O−及び/又は−S−とを組み合わせてできる2価の基、下記式r1〜r12のいずれかで表される基が挙げられる。
2価の炭化水素基、2価の炭化水素基と−O−及び/又は−S−とを組み合わせてできる2価の基、下記式r1〜r12のいずれかで表される基における水素原子は置換されていてもよい。
【0023】
2価の炭化水素基は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、その炭素原子数が、通常、1〜30である。2価の炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基などの炭素原子数1〜30のアルカンジイル基;エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基、ペンテンジイル基、ヘキセンジイル基、ヘプテンジイル基、オクテンジイル基などの炭素原子数2〜30のアルケンジイル基;エチンジイル基、プロピンジイル基、ブチンジイル基、ペンチンジイル基、ヘキシンジイル基、ヘプチンジイル基、オクチンジイル基などの炭素原子数2〜30のアルキンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基、シクロオクタンジイル基などの炭素原子数4〜30のシクロアルカンジイル基;ベンゼンジイル基、インデンジイル基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基、アントラセンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基などの炭素原子数6〜30のアレーンジイル基が挙げられる。2価の炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは2〜30であり、より好ましくは4〜30であり、更に好ましくは6〜25であり、特に好ましくは6〜20である。
【0024】
2価の炭化水素基と−O−及び/又は−S−とを組み合わせてできる2価の基は、上記2価の炭化水素基と−O−及び/又は−S−とが結合した基である。このような2価の基としては、例えば、2価の炭化水素オキシ基、2価の炭化水素チオ基、オキシ炭化水素チオ基、チオ炭化水素オキシ基が挙げられる。このような2価の基における炭化水素の定義、例及び好ましい例は、上記2価の炭化水素基における説明と同様である。
【0025】
式r1〜r12のいずれかで表される基は、下記のとおりである。
【0026】
【化10】

【0027】
(式中、
は、−(C(R51−、−O−、−S−、−N(R50)−、−Si(R51−、−O(C(R51−又は−O(C(R51O−で表される2価の基である。
は、−(C(R51−、−O−、−S−又は−Si(R51−で表される2価の基である。
mは、1〜3の整数である。
50は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基である。
51は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基である。複数あるR51は、同じでも異なっていてもよい。)
【0028】
50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基において「炭素原子数6〜30のアリール基」における炭素原子数は、好ましくは6〜18であり、より好ましくは6〜12であり、更に好ましくは6である。
【0029】
50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基における「炭素原子数6〜30のアリール基」としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フルオレニル基、9−アントラセニル基、2−アントラセニル基が挙げられる。
【0030】
50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基における「置換基を有する炭素原子数6〜30のアリール基」としては、例えば、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−トリフルオロメチルメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基が挙げられる。
【0031】
51で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基における「炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基」は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数4〜30の環状飽和ヒドロカルビル基;上述した炭素原子数6〜30のアリール基が挙げられる。R51で表される炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基における「炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基」としては、上述した炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の中でも、好ましくは、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基であり、更に好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基、フェニル基であり、特に好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基である。
【0032】
51で表される基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基で置換されていてもよいヒドロキシ基(即ち、ヒドロカルビルオキシ基)、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基でモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノ基(例えば、後述するジアリールアミノ基)、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基で置換されていてもよいメルカプト基、式:−C(=O)R55(式中、R55は、水素原子、又は、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基を表す。)で表される基が挙げられる。ここで、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基の定義、例及び好ましい例は、R51における炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の説明のうち、炭素原子数を12以下に限定した基と同様である。
【0033】
上記式r1〜r12のいずれかで表される基としては、例えば、下記式r1’〜r12’のいずれかで表される基が挙げられる。下記式r1’〜r12’のいずれかで表される基における水素原子は置換されていてもよい。
【化11】

【0034】
(式中、
は、−(C(R53−、−O−、−S−、−N(R52)−又は−Si(R53−で表される2価の基である。
nは、1又は2である。
52は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基である。
53は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基である。複数あるR53は、同じでも異なっていてもよい。)
【0035】
52で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基の例は、R50で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜30のアリール基において、炭素原子数を6〜18に限定した基と同じである。R52で表される置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基における「炭素原子数6〜18のアリール基」の炭素原子数は、好ましくは6〜12であり、より好ましくは6である。R52で表される基が有していてもよい置換基としては、上述のR51で表される基が有していてもよい置換基と同じ基が挙げられる。
【0036】
53で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基における「炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基」の定義及び例は、R51で表される炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基において、炭素原子数を1〜18に限定した基と同じである。R53で表される置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基における「炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基」は、好ましくは、炭素原子数1〜18のアルキル基、炭素原子数6〜18のアリール基であり、より好ましくは、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基であり、更に好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基、フェニル基であり、特に好ましくは、炭素原子数1〜8のアルキル基である。R53で表される基が有していてもよい置換基としては、上述のR51で表される基が有していてもよい置換基と同じ基が挙げられる。
【0037】
好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい上記式r1〜r12のいずれかで表される基である。
より好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい上記式r1、r2、r5、r6、r8、r9のいずれかで表される基;置換基を有していてもよい上記式r10で表される基であって、式中のYが−O−である基;置換基を有していてもよい上記式r11で表される基であって、式中のYが−O−又は−S−である基;置換基を有していてもよい上記式r12で表される基であって、式中のYが−O−であり、Yが−CH−である基;又は置換基を有していてもよい上記式r12で表される基であって、式中のYが−O−であり、Yが−Si(R51−である基である。
更に好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい上記式r1’、r5’、r10’のいずれかで表される基;置換基を有していてもよい上記式r12’で表される基であって、式中のYが−CH−である基;置換基を有していてもよい上記式r12’で表される基であって、式中のYが−Si(CH−である基である。
特に好ましくは、Rは、置換基を有していてもよい上記式r12’で表される基であって、式中のYが−CH−である基;置換基を有していてもよい上記式r12’で表される基であって、式中のYが−Si(CH−である。
【0038】
で表される基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基で置換されていてもよいヒドロキシ基(即ち、ヒドロカルビルオキシ基)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基でモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノ基(例えば、後述するジアリールアミノ基)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基で置換されていてもよいメルカプト基、式:−C(=O)R56(式中、R56は、水素原子、又は、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基を表す。)で表される基が挙げられる。ここで、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の定義、例及び好ましい例は、R51における説明と同様である。
好ましくは、このような置換基は、後述するジアリールアミノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロへキシル基、エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2−フェニルフェニル基、2−フェニルエチル基、メトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、フェニルチオ基、ジフェニルアミノ基である。
より好ましくは、このような置換基は、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、シクロへキシル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、メトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ジフェニルアミノ基である。
更に好ましくは、このような置換基は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、メトキシ基である。
特に好ましくは、このような置換基は、フッ素原子、メチル基、tert−ブチル基である。
【0039】
で表される基が有していてもよい置換基の数は、0〜4個が好ましく、0〜3個がより好ましく、0〜2個が更に好ましい。Rが上記式r1’〜r12’のいずれかで表される2価の基である場合、上記置換基は以下に示す位置が好ましい。また、以下に示す位置にジアリールアミノ基が置換してもよい。
【0040】
式r1’:好ましくは、2’位及び3’位から選ばれる少なくとも1箇所;
式r2’:好ましくは、2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び5’位の2箇所、又は、3’位及び4’位の2箇所;
式r3’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、6’位及び8’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、4’位のみの1箇所、2’位及び6’位の2箇所、3’位及び5’位の2箇所、2’位、4’位及び6’位の3箇、又は、3’位、4’位及び5’の3箇所;
式r4’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、6’位及び7’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び7’位の2箇所、3’位及び6’位の2箇所、又は、4’位及び5’位の2箇所;
式r5’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、6’位及び7’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び7’位の2箇所、又は、3’位及び6’位の2箇所、更に好ましくは2’位及び7’位の2箇所;
式r6’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、8’位、9’位、10’位及び11’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び11’位の2箇所、3’位及び10’位の2箇所、又は、4’位及び9’位の2箇所;
式r7’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、6’位及び7’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び7’位の2箇所;
式r8’:好ましくは、2’位、3’位、5’位、6’位、7’位、8’位、9’位及び10’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び6’位の2箇所、又は、3’位及び5’位の2箇所;
式r9’:好ましくは、2’位及び5’位から選ばれる少なくとも1箇所;
式r10’:好ましくは、2’位、3’位、4’位、5’位、6’位及び7’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び7’位の2箇所、又は、3’位及び6’位の2箇所、更に好ましくは、2’位及び7’位の2箇所;
式r11’:好ましくは、2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位及び5’位の2箇所;
式r12’でYが−CH−である場合:2’位、3’位、4’位、5’位及び7’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、7’位における2箇所と、2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも1箇所の合計少なくとも3箇所、より好ましくは、7’位における2箇所と、2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも2箇所の合計少なくとも4箇所、更に好ましくは、7’位における2箇所と、2’位及び5’位の2箇所との合計4箇所;
式r12’でYが−CH−以外の場合:2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも1箇所、より好ましくは、2’位、3’位、4’位及び5’位から選ばれる少なくとも2箇所、より好ましくは、2’位及び5’位の2箇所。
【0041】
11で表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基における「ヒドロカルビル基」は、直鎖、分岐鎖又は環状のいずれでもよく、その炭素原子数が、通常、1〜30である。R11で表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素原子数1〜30のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素原子数4〜30の環状飽和ヒドロカルビル基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素原子数2〜30のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、2−イソブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、2−ヘキシルフェニル基、2−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、9−フルオレニル基等の炭素原子数6〜30のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、3−フェニル−1−プロピル基、4−フェニル−1−n−ブチル基、5−フェニル−1−ペンチル基、6−フェニル−1−ヘキシル基等の炭素原子数7〜30のアラルキル基が挙げられる。R11で表される置換基を有していてもよいヒドロカルビル基における「ヒドロカルビル基」は、上述した置換基を有していてもよいヒドロカルビル基における「ヒドロカルビル基」の中でも、好ましくは、炭素原子数6〜30のアリール基であり、より好ましくは、炭素原子数6〜18のアリール基であり、更に好ましくは、炭素原子数6〜12のアリール基であり、特に好ましくは、フェニル基である。
【0042】
11で表される基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基で置換されていてもよいヒドロキシ基(即ち、ヒドロカルビルオキシ基)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基でモノ置換又はジ置換されていてもよいアミノ基(例えば、後述するジアリールアミノ基)、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基で置換されていてもよいメルカプト基、式:−C(=O)R56(式中、R56は、前記と同じである。)で表される基が挙げられる。ここで、炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の定義、例及び好ましい例は、R51における説明と同様である。R11で表されるヒドロカルビル基が有していてもよい置換基の好ましい例は、Rで表される2価の有機基が有していてもよい置換基と同様である。
【0043】
11で表される基が有していてもよい置換基の数は、0〜4個が好ましく、0〜3個がより好ましく、0〜2個が更に好ましい。
【0044】
好ましくは、R11で表される、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基における「ヒドロカルビル基」は、アリール基である。アリール基の例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2、6−ジイソプロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−ヘキシルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−トリフルオロメチルメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルメチルフェニル基、4−トリフルオロメチルメチルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−フェノキシフェニル基、9−フルオレニル基、9−アントラセニル基、2−アントラセニル基が挙げられる。
好ましくは、アリール基は、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2、6−ジイソプロピルフェニル基、2−n−ブチルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4,6−トリメトキシフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基である。
より好ましくは、アリール基は、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基である。
更に好ましくは、アリール基は、フェニル基である。
11で表される、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基における「ヒドロカルビル基」が、アリール基である場合、該アリール基における水素原子の一部又は全部は、ジアリールアミノ基で更に置換されていてもよい。
【0045】
及び4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基は、ジアリールアミノ基を置換基として有する。例えば、Rで表される基が、1以上のジアリールアミノ基を置換基として有していてもよいし、4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基が、1以上のジアリールアミノ基を置換基として有していてもよい。好ましくは、4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基が、1以上のジアリールアミノ基を置換基として有し、より好ましくは、少なくとも2つの基が、1以上のジアリールアミノ基を有し、更に好ましくは、少なくとも3つの基が、1以上のジアリールアミノ基を有し、特に好ましくは、4つの基のそれぞれが、1以上のジアリールアミノ基を有する。Rで表される基及び/又は4つのR11で表される4つの基のそれぞれが置換基として有していてもよいジアリールアミノ基の数は、例えば、1個、2個又は3個である。4つのR11から選ばれる少なくとも2つ、3つ又は4つの基は、それぞれ、同じ数のジアリールアミノ基を置換基として有していてもよいし、異なる数のジアリールアミノ基を置換基として有していてもよい。
上記式(A)で表される化合物としては、4つのR11で表される4つの基における水素原子が、それぞれ、1つ又は2つの同じ数のジアリールアミノ基で置換されている化合物もまた好ましい。
【0046】
ジアリールアミノ基は、アミノ基における2つの水素原子が2つのアリール基で置換されたアミノ基である。ジアリールアミノ基における2つのアリール基は、同じでも異なっていてもよく、その例及び好ましい例は、R11で説明した炭素原子数6〜30のアリール基と同様である。具体的には、ジアリールアミノ基としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ビス(1−ナフチル)アミノ基、ビス(2−メチル−1−ナフチル)アミノ基、ビス(2−ナフチル)アミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4−ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,6−ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)アミノ基、ビス(2−エチルフェニル)アミノ基、ビス(4−エチルフェニル)アミノ基、ビス(2,6−ジエチルフェニル)アミノ基、ビス(4−プロピルフェニル)アミノ基、ビス(2−イソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(4−イソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)アミノ基、ビス(2−n−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−n−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(2−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(2−ヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(4−ヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(4−(2−エチルヘキシル)フェニル)アミノ基、ビス(4−シクロヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(2−メトキシフェニル)アミノ基、ビス(3−メトキシフェニル)アミノ基、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ基、ビス(2,4,6−トリメトキシフェニル)アミノ基、ビス(2−フルオロフェニル)アミノ基、ビス(4−フルオロフェニル)アミノ基、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)アミノ基、ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)アミノ基、ビス(2−クロロフェニル)アミノ基、ビス(4−クロロフェニル)アミノ基、ビス(2−トリフルオロメチルメチルフェニル)アミノ基、ビス(3−トリフルオロメチルメチルフェニル)アミノ基、ビス(4−トリフルオロメチルメチルフェニル)アミノ基、ビス(4−アダマンチルフェニル)アミノ基、ビス(4−フェニルフェニル)アミノ基、ビス(4−フェノキシフェニル)アミノ基、ビス(9−フルオレニル)アミノ基、ビス(9−アントラセニル)アミノ基、ビス(2−アントラセニル)アミノ基、N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ基、N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ基、N−(2−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−エチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−n−ブチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−tert−ブチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−シクロヘキシルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(2,4,6−トリメトキシフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−フルオロフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−トリフルオロメチルメチルフェニル)−N−フェニルアミノ基、N−(4−フェノキシフェニル)−N−フェニルアミノ基が挙げられる。
好ましくは、ジアリールアミノ基は、ジフェニルアミノ基、ビス(1−ナフチル)アミノ基、ビス(2−ナフチル)アミノ基、ビス(2−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5−ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(4−プロピルフェニル)アミノ基、ビス(4−n−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−ヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(4−シクロヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ基、ビス(4−フルオロフェニル)アミノ基、又はビス(4−トリフルオロメチルメチルフェニル)アミノ基である。
より好ましくは、ジアリールアミノ基は、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−n−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−ヘキシルフェニル)アミノ基、ビス(4−メトキシフェニル)アミノ基、又はビス(4−フルオロフェニル)アミノ基である。
更に好ましくは、ジアリールアミノ基は、ジフェニルアミノ基、ビス(4−メチルフェニル)アミノ基、ビス(4−n−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(4−tert−ブチルフェニル)アミノ基、又はビス(4−ヘキシルフェニル)アミノ基である。
特に好ましくは、ジアリールアミノ基は、ジフェニルアミノ基である。
【0047】
上記式(A)で表される化合物の例としては、下記式a1〜a26で表される化合物が挙げられる。
【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
式a1〜a26中、好ましくは式a1〜a22であり、より好ましくは式a1、a6、a7、a9、a11〜a22であり、更に好ましくは式a1、a6、a7、a9、a11〜a19であり、特に好ましくは式a1、a6、a7、a9である。
【0051】
本発明の化合物は、置換基を有するホスフィン化合物を合成する定法に従って製造できる。
【0052】
上記式a12で表される化合物を例に挙げて説明すると、アルゴンガス雰囲気下、1mmolの1,2−ビス(ジクロロホスフィノ)ベンゼンと、5mmolの(4−ジフェニルアミノフェニル)マグネシウムブロマイドとを、−78℃にて、テトラヒドロフラン(10mL)中で混合し、徐々に室温まで昇温しながら12時間撹拌する。反応液を水とクロロホルムで抽出し、有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより製造することができる。
【0053】
本発明はまた、上記式(A)で表される化合物を含む金属錯体を提供する。
【0054】
本発明の金属錯体は、単核錯体でも2核錯体でも、3核以上の錯体でもよいが、単核錯体、2核錯体が好ましく、単核錯体がより好ましい。
【0055】
本発明の金属錯体は、下記組成式(1)で表される金属錯体であることが好ましい。
(M)(L(L(X (1)
(組成式(1)中、Mは電荷を帯びていてもよい金属である。Lは上記式(A)で表される化合物である。LはLとは相違する配位子である。Xはアニオンである。aは正の数であり、b及びcはそれぞれ独立に0以上の数である。複数存在するL、L及びXは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。)
【0056】
組成式(1)において、Mとしては、好ましくはMg、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Eu、Tbであり、より好ましくはFe、Ni、Cu、Zn、Ge、Ru、Rh、Pd、Ag、W、Pt、Auであり、更に好ましくはCu、Pd、Ag、Pt、Auであり、特に好ましくはCu、Ag、Auである。
【0057】
組成式(1)において、Lは、Mに単座配位していても二座配位していてもよいが、二座配位していることが好ましい。
【0058】
は、Mと配位結合している原子が、C、N、O、P又はSであることが好ましく、N、O、P又はSであることがより好ましく、N、O又はPであることが更に好ましく、N又はPであることが特に好ましい。Lにおいて、Mと配位結合している原子(元素)は、中性であっても電荷を帯びていてもよいが、中性であることが好ましい。
【0059】
組成式(1)において、Lは、単座配位子でも二座配位子でも、三座以上の配位子でもよいが、単座配位子と二座配位子が好ましく、二座配位子がより好ましい。
【0060】
の例としては、上記式(A)で表される化合物におけるジアリールアミノ基が水素原子に置換された構造の配位子、置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィン、置換基を有していてもよいピリジン、置換基を有していてもよいイミダゾール、置換基を有していてもよいピリミジン、置換基を有していてもよいキノリン、置換基を有していてもよいビキノリン、置換基を有していてもよいビナフチリジン、置換基を有していてもよいビピリジン、置換基を有していてもよいフェナントロリン、置換基を有していてもよいピリジニルイミダゾール、置換基を有していてもよいピリジニルベンズイミダゾール、置換基を有していてもよいチアゾリルベンズイミダゾール、置換基を有していてもよいビピリミジン、置換基を有していてもよいキノリノール、置換基を有していてもよいベンゾキノリノール、置換基を有していてもよいキノリンチオールが挙げられ、
好ましくは、上記式(A)で表される化合物におけるジアリールアミノ基が水素原子に置換された構造の配位子、置換基を有していてもよいビキノリン、置換基を有していてもよいビピリジン、置換基を有していてもよいフェナントロリン、置換基を有していてもよいピリジニルイミダゾール、置換基を有していてもよいピリジニルベンズイミダゾールであり、
より好ましくは、置換基を有していてもよいビキノリン、置換基を有していてもよいビピリジン、置換基を有していてもよいフェナントロリン、置換基を有していてもよいピリジニルイミダゾール、置換基を有していてもよいピリジニルベンズイミダゾールであり、
更に好ましくは置換基を有していてもよいビピリジン、置換基を有していてもよいフェナントロリンである。
【0061】
上記Lの例として挙げた基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメチル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基で置換されていてもよいヒドロキシ基(即ち、ヒドロカルビルオキシ基)、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基で置換されていてもよいメルカプト基、式:−C(=O)R57(式中、R57は、水素原子、又は、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基を表す。)で表される基が挙げられる。ここで、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基の定義、例及び好ましい例は、R51における炭素原子数1〜30のヒドロカルビル基の説明のうち、炭素原子数を18以下に限定した基と同様である。
【0062】
組成式(1)において、X1で表されるアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、酢酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモンイオン、ヘキサフルオロヒ素イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラトルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートイオン、及び、これらのイオンの構造を有する繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。X1としてはまた、例えば、フェノール及びパラフルオロフェノール等の、水酸基を有する有機基から、該水酸基の水素原子を除いてなるアニオン;チオフェノール及びトリフェニルメタンチオール等の、メルカプト基を有する有機基から、該メルカプト基の水素原子を除いてなるアニオン;パラ−tert−ブチル安息香酸及びトリフェニル酢酸等の、カルボン酸を有する有機基から、該カルボン酸の水素原子を除いてなるアニオン;ベンゼンスルホン酸及びパラ−n−ブチルベンゼンスルホン酸等の、スルホン酸を有する有機基から、該スルホン酸の水素原子を除いてなるアニオン;ジフェニルホスフィン酸及びビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等の、ホスフィン酸を有する有機基から、該ホスフィン酸の水素原子を除いてなるアニオンも挙げられる。
【0063】
1は、好ましくはフッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートイオンであり、より好ましくは、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオンである。
【0064】
1は1価のアニオンでも2価以上のアニオンでもよいが、1価のアニオンであることが好ましい。
【0065】
組成式(1)において、a、b及びcは、金属錯体の電荷が全体で中性になるように決定される。a、b及びcは、Mの係数を1とした相対値である。組成式(1)で表される錯体においては、1個のMに対して、a個のL1、b個のL、及び、c個のXを有する。
【0066】
aは、好ましくは0.5〜3.0の数であり、より好ましくは0.7〜2.0の数であり、更に好ましくは0.9〜1.1の数である。
【0067】
b及びcは、それぞれ独立に、好ましくは0.0〜4.0の数であり、より好ましくは0.0〜3.0の数であり、更に好ましくは0.5〜2.0の数であり、特に好ましくは0.9〜1.1の数である。
【0068】
本発明の金属錯体の例としては、下記式b1〜b20で表される金属錯体が挙げられる。
【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
式b1〜b20中、好ましくは式b3〜b5、b11〜b13、b17〜b20であり、より好ましくは式b3〜b5、b11〜b13であり、更に好ましくは式b11〜b13である。
【0072】
本発明の化合物及び/又は金属錯体は、例えば、反応の触媒又は助触媒として使用したり、発光材料として使用したりすることができるが、発光材料として使用することが好ましい。
【0073】
本発明はまた、上記式(A)で表される化合物、及び/又は、上記式(A)で表される化合物を含む金属錯体(以下、「本発明の材料」と表記する)を含有する発光素子を提供する。
【0074】
本発明の発光素子は、通常、陽極と陰極からなる一対の電極と、該電極間に設けられた発光層を有する一層又は複数層からなる薄膜層とが挟持されている発光素子において、該薄膜層の少なくとも1層が、本発明の材料を含む。
【0075】
本発明の発光素子において、本発明の材料を含む層中における、本発明の材料の含有量は、該薄膜層全体の重量に対し、通常0.01〜100重量%であり、好ましくは0.1〜99重量%であり、より好ましくは1〜90重量%であり、更に好ましくは5〜85重量%であり、特に好ましくは10〜80重量%である。
【0076】
本発明の発光素子としては、例えば、単層型の発光素子(陽極/発光層/陰極)が挙げられる。また、多層型の発光素子の層構成としては、例えば、
(a)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/陰極
(b)陽極/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極
(c)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/電子注入層/(電子輸送層)/陰極(d)陽極/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/(正孔輸送層)/発光層/(電子輸送層)/電子注入層/陰極が挙げられる。本発明の発光素子は単層型や、(a)〜(e)の層構成に限定されるものではない。
【0077】
上記(a)〜(e)において、(正孔輸送層)、(電子輸送層)は、その位置にこれらの層がそれぞれ存在していてもしなくてもよい任意の層であることを表す。
【0078】
本発明の材料は、どの層に含有してもよいが、少なくとも正孔注入層、正孔輸送層、発光層のいずれかに含有することが好ましく、少なくとも正孔輸送層、発光層のいずれかに含有することがより好ましく、少なくとも発光層に含有することが更に好ましい。
【0079】
陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給するものであり、4.5eV以上の仕事関数を有することが好ましい。陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの組み合わせを用いることができるが、具体的には、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)等の導電性金属酸化物や、金、銀、クロム、ニッケル等の金属や、これらの導電性金属酸化物と金属との混合物及び積層物、ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質、ポリアニリン類、ポリチオフェン類〔ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン等〕、ポリピロール等の有機導電性材料及びこれらとITOとの組み合わせを用いることができる。
【0080】
陰極は、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。陰極の材料には、金属、合金、金属ハロゲン化物、金属酸化物、電気伝導性化合物及びこれらの組み合わせを用いることができるが、具体的には、アルカリ金属(Li、Na、K、Cs等)及びそのフッ化物並びに酸化物、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba等)及びそのフッ化物並びに酸化物、金、銀、鉛、アルミニウム、合金及び混合金属類〔ナトリウム−カリウム合金、ナトリウム−カリウム混合金属、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム混合金属、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−銀混合金属等〕、希土類金属〔イッテルビウム等〕を用いることができる。
【0081】
正孔注入層及び正孔輸送層は、陽極から正孔を注入する機能、正孔を輸送する機能、又は陰極から注入された電子を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリジン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、及びこれらの残基を含む重合体;アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマーが挙げられる。上記正孔注入層及び上記正孔輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0082】
電子注入層及び電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、又は陽極から注入された正孔を障壁する機能を有する。これらの層に用いられる材料としては、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンやペリレン等の芳香環のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、アンモニウム塩誘導体、カルボン酸塩誘導体、金属錯体(例えば、8−キノリノール誘導体の金属錯体、メタルフタロシアニンを配位子とする金属錯体、ベンゾオキサゾールを配位子とする金属錯体、ベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体)、有機シラン誘導体が挙げられる。電子注入層及び上記電子輸送層は、これらの1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。また、電子注入層及び上記電子輸送層は、フラーレンもしくはその誘導体、カーボンナノチューブもしくはその誘導体を含有していてもよい。
【0083】
電子注入層及び電子輸送層の材料として、絶縁体又は半導体の無機化合物も使用できる。電子注入層及び電子輸送層が絶縁体又は半導体で構成されていれば、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲニド、アルカリ土類金属カルコゲニド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属化合物が挙げられ、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS及びCaSeが好ましい。また、電子注入層及び電子輸送層を構成する半導体としては、例えば、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物、窒化物、酸化窒化物が挙げられる。
【0084】
また、本発明の発光素子において、陰極と陰極に接する薄膜との界面領域に還元性ドーパントが添加されていてもよい。上記還元性ドーパントとしては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物、希土類金属の酸化物又は希土類金属のハロゲン化物、アルカリ金属錯体、アルカリ土類金属錯体及び希土類金属錯体が挙げられる。
【0085】
発光層は、電界印加時に陽極、正孔注入層又は正孔輸送層より正孔を注入することができ、陰極、電子注入層又は電子輸送層より電子を注入することができる機能、注入した電荷(電子と正孔)を電界の力で移動させる機能、電子と正孔の再結合の場を提供し、これを発光につなげる機能のいずれかを有する。発光層に含有される本発明の材料をゲスト材料とするホスト材料を、発光層に含有させてもよい。ホスト材料としては、例えば、フルオレン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物、ジアリールアミン骨格を有する化合物、ピリジン骨格を有する化合物、ピラジン骨格を有する化合物、トリアジン骨格を有する化合物及びアリールシラン骨格を有する化合物が挙げられる。ホスト材料の最低励起3重項状態のエネルギー(T1)は、ゲスト材料のそれより大きいことが好ましい。ホスト材料は低分子化合物であっても、高分子化合物であってもよい。ホスト材料は更に電解質を含有してもよく、該電解質は、例えば、支持塩(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、テトラフルオロホウ酸テトラ−n−ブチルアンモニウム等)を含有してもよい溶媒(プロピレンカーボネート、アセトニトリル、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソフラン、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、グリセリン、プロピルアルコール、水等)、又は該溶媒で膨潤したゲル状の高分子(ポリエチレンオキシド、ポリアクリルニトリル、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体等)である。また、ホスト材料と本発明の材料とを混合して塗布する、又は共蒸着することにより、発光材料が上記ホスト材料にドープされた発光層を形成することができる。また、発光層に含有される本発明の材料をホスト材料とするゲスト材料を、発光層に含有させてもよい。ゲスト材料としては、例えば、白金族元素を用いた金属錯体(例えば、フェニルピリジン誘導体が配位したイリジウム錯体)、希土類元素を用いた金属錯体(例えば、フェナントロリン誘導体が配位したユーロピウム錯体)、8−キノリノール誘導体が配位したアルミニウム錯体、ナフタセン骨格を有する化合物、ジシアノエチレン骨格を有する化合物、クマリン骨格を有する化合物、キナクリドン骨格を有する化合物、アントラセン骨格を有する化合物、ペリレン骨格を有する化合物、フェニレンビニレン骨格を有する化合物、フルオレン骨格を有する化合物、ナフタレン骨格を有する化合物が挙げられる。
【0086】
本発明の発光素子において、各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法〔抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等〕、スパッタリング法、LB法、分子積層法、塗布法〔キャスティング法、スピンコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等〕が挙げられるが、製造プロセスを簡略化できるので、塗布法が好ましい。塗布法では、本発明の材料を溶媒と混合して塗布液を調製し、該塗布液を所望の層(又は電極)上に、塗布及び/又は乾燥させることによって形成することができる。塗布液中にはホスト材料及び/又はバインダーとして樹脂を含有させてもよい。この樹脂は溶媒に溶解させて溶液とすることも、分散させて分散液とすることもできる。
【0087】
樹脂としては、ポリビニルカルバゾール等の非共役系高分子、ポリ(フェニレンビニレン)等の共役系高分子を使用することができるが、その例としては、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂が挙げられる。樹脂を含む溶液及び分散液は、更に、酸化防止剤、粘度調整剤等を含有してもよい。上記溶媒としては、薄膜の成分を均一に溶解するもの又は安定な分散液を与える溶媒が好ましく、例えば、アルコール〔メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等〕、ケトン〔アセトン、メチルエチルケトン等〕、塩素化炭化水素〔クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等〕、芳香族炭化水素〔ベンゼン、トルエン、キシレン等〕、脂肪族炭化水素〔ノルマルヘキサン、シクロヘキサン等〕、アミド〔ジメチルホルムアミド等〕、スルホキシド〔ジメチルスルホキシド等〕、それらの混合物が挙げられる。
【0088】
インクジェット法においては、例えば、ノズルからの蒸発を押さえるために高沸点の溶媒〔アニソール、ビシクロヘキシルベンゼン等〕を用いることができる。また、溶液の粘度は、25℃において、1〜100mPa・sが好ましい。
【0089】
本発明の発光素子の各層の厚さは、通常、1nm〜100μmであり、好ましくは、2nm〜1μmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。
【0090】
本発明の発光素子は、例えば、照明用光源、サイン用光源、バックライト用光源、ディスプレイ装置、プリンターヘッドに用いることができる。ディスプレイ装置としては、公知の駆動技術、駆動回路等を用い、セグメント型、ドットマトリクス型等の構成とすることができる。
【実施例】
【0091】
次に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
NMR測定には、Varian社製の300MHzNMRスペクトロメータ−を用いた。
DART−MS測定には、日本電子製のThe AccuTOF TLC(JMS−T100TD)を用いた。
HOMO準位の測定には、光電子分光装置(理研計器株式会社製:AC−2)を用いた。
【0093】
実施例1(2,7−ジ−tert−ブチル−4,5−ビス[ジ[m−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニル]ホスフィノ]−9,9−ジメチルキサンテン(a1)の合成)
窒素雰囲気下、室温にて4,5−ジブロモ−2,7−ジ−tert−ブチル−9,9−ジメチルキサンテン(250mg、0.520mmol)を脱水THF(4mL)に溶かし、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.60mol/L、651μL、n−ブチルリチウムとして1.04mmol)を添加し、−78℃で2時間撹拌した後、クロロ亜りん酸ジエチル(165mg、1.04mmol)の脱水THF溶液(2mL)を添加し、室温まで徐々に昇温し、12時間撹拌し、反応液1を得た。別の反応容器にて、窒素雰囲気下、室温にて3−ブロモ−N,N−ジフェニルアニリン(1.69g、5.20mmol)を脱水THF(15mL)に溶かし、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.60mol/L、3.25mL、n−ブチルリチウムとして5.20mmol)を添加し、−78℃で2時間撹拌した後、上記反応液1と脱水THF(6mL)を加え、室温まで徐々に昇温した。次いで、反応液を12時間撹拌した後、1時間加熱して還流した。
【0094】
反応液に飽和食塩水とクロロホルムを加え、抽出し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮した後、展開溶媒としてヘキサンとクロロホルムとの混合液をヘキサン:クロロホルム=2:1(v/v)の割合で用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行い、化合物(a1)を減圧乾燥して白色固体として得た(172mg、収率24.2%)。
【0095】
【化16】

【0096】
得られた化合物(a1)のH−NMR、31P−NMR、DART−MS、元素分析の測定結果を下記に示す。
【0097】
H−NMR(300MHz、CDCl):δ7.25−7.23ppm(m、2H)、7.11−6.82ppm(m、56H)、6.50−6.48ppm(m、2H)、1.44(s、6H)、1.14(s、18H).
31P−NMR(122MHz、CDCl):δ−13.7ppm(s).
DART−MS(M/Z):found.1359.6、calcd.1359.6[M+H]
Anal.Calcd for C9584OP:C,83.92;H,6.23,N,4.12.Found:C,83.71;H,6.74,N,3.74.
【0098】
得られた化合物(a1)のHOMO準位のエネルギーレベルを測定したところ、−5.40eVであった。
【0099】
実施例2(化合物(b11)の合成)
2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリンを、Bull.Chem.Soc.Jpn.65,2007−2009(1992)に記載の方法で合成した。
【0100】
テトラフルオロホウ酸銀(I)(9.55mg、0.0491mmol)とジクロロメタン1.5mLとの混合液に、実施例1で合成した化合物(a1)(66.7mg、0.0491mmol)を加え、室温で5秒後、2,9−ジクロロ−1,10−フェナントロリン(14.1mg、0.0564mmol)を加え、40℃で5分撹拌した。
【0101】
反応液をろ過し、ろ液をにジエチルエーテルを加え、ろ過し、ろ液にヘキサンを加え、ろ過し、ろ過物を減圧乾燥して、淡黄色錯体(b11)を得た(74.1mg、収率83.8%)。
【0102】
【化17】

【0103】
得られた錯体(b11)のH−NMR、31P−NMR、元素分析測定結果を下記に示す。
【0104】
H−NMR(300MHz、CDCl):δ8.50ppm(d、J=8.2Hz、2H)、8.47ppm(s、2H)、7.52ppm(d、J=8.2Hz、2H)、7.48−7.47ppm(m、2H)、7.02−6.97ppm(m、20H)、6.88−6.76ppm(m、20H)、6.68−6.66ppm(m、16H)、6.58−6.54ppm(m、2H)、1.44(s、6H)、1.11(s、18H).
31P−NMR(122MHz、CDCl):δ−4.7ppm(d、J(31P−107Ag、109Ag)=391、451Hz).
Anal.Calcd for C10790ClBOFAg・1/4CHCl:C,70.60;H,5.00;N,4.61;B,0.59.Found:C,70.38;H,5.14,N,4.33;B,0.65.
【0105】
得られた錯体(b11)のHOMO準位のエネルギーレベルを測定したところ、−5.50eVであった。
【0106】
比較例1
Aldrich社から購入した(S)−(6,6’−ジメトキシビフェニル−2,2’−ジイル)ビス{ビス[3,5−ジイソプロピル−4−(ジメチルアミノ)フェニル]ホスフィン}のHOMO準位のエネルギーレベルを測定したところ、−5.55eVであった。
【0107】
実施例3(発光素子1の作製)
60nmのITO膜が付着したガラス基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(Bayer製、商品名Bytron P AI4083)の懸濁液を1000rpmで15秒間、1500rpmで60秒間のスピンコートにより70nmの厚さとなるように成膜し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥させた。その後、基板を室温まで自然冷却させ、正孔注入層が形成された基板を得た。
【0108】
次に、正孔輸送性高分子材料の0.6重量%キシレン溶液を調製した。ここで、正孔輸送高分子材料は、以下の方法で合成した。
【0109】
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラを装備した1Lの三つ口丸底フラスコに、2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレン(3.86g、7.28mmol)、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミン(3.18g、6.92mmol)及びジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(156mg、0.364mmol)を添加した。次いで、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquat336(登録商標))(2.29g)、続いてトルエン50mLを添加した。PdCl2(PPh32(4.90mg)を添加した後、混合物を、105℃の油浴中で15分間撹拌した。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)を添加し、得られた混合物を105℃の油浴中、16.5時間撹拌した。次いで、フェニルボロン酸(500mg)を添加し、得られた混合物を7時間撹拌した。反応液から水層を除去し、有機層を水50mLで洗浄した。こうして得られた有機層を反応フラスコに戻し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.750g及び水50mLを添加した。得られた混合物を85℃の油浴中、16時間撹拌した。反応液から水層を除去し、有機層を100mLの水で3回洗浄し、次いでシリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通した。溶離剤としてトルエンを用い、溶出してきたポリマーを含むトルエン溶液を回収した。次いで、回収した前記トルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーを再度トルエンに溶解させ、得られたトルエン溶液をメタノールに注いでポリマーを再び沈殿させた。沈殿したポリマーを60℃で真空乾燥し、正孔輸送性高分子材料4.20gを得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによれば、得られた正孔輸送性高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は1.24×105であり、分子量分布指数[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は2.8であった。
【0110】
上記で得た正孔注入層が形成された基板の上に、正孔輸送性高分子材料の0.6重量%キシレン溶液を1000rpmで15秒間、1500rpmで60秒間のスピンコート法により塗布し、厚さ25nmの塗膜を得た。この塗膜を設けた基板を200℃で15分間加熱し、室温まで自然冷却させ、正孔輸送層が形成された基板を得た。
【0111】
この上に、実施例2で合成した錯体(b11)と、2,4,6−トリス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン(住商ファーマインターナショナル社製)の4:1(重量比)の混合物が、0.8重量%の濃度になるように、クロロホルムと1,2−ジクロロエタンとをクロロホルム:1,2−ジクロロエタン=2:1(重量比)の割合となるように調製した溶液に溶かして調製した溶液を、スピンコートにより1000rpmで15秒間、1500rpmで60秒間かけて70nmの厚さとなるように成膜し、50℃で20分間乾燥させることにより、発光層が形成された基板を作製した。
【0112】
この発光層が形成された基板の上に、陰極として、フッ化リチウムを1nm、続いてアルミニウムを約100nm蒸着により成膜して、発光素子1を作製した。
【0113】
発光素子1に10Vの電圧をかけることにより、発光効率4.4cd/Aの発光を示した。
【0114】
実施例4(発光素子2)
発光層を作製するための溶液として、実施例1で合成した化合物(a1)と、ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル−(2−カルボキシピリジル)イリジウム(III)の3:1(重量比)の混合物が、0.8重量%の濃度になるように、クロロホルムと1,2−ジクロロエタンとをクロロホルム:1,2−ジクロロエタン=2:1(重量比)の割合となるように調製した溶液を用いた以外は、発光素子1と同様にして、発光素子2を作製した。発光素子2に10Vの電圧をかけることにより、発光効率1.6cd/Aの発光を示した。
【0115】
以上の結果から、本発明の化合物はHOMO準位が浅く、ホスフィン部位でキレート型に配位可能であり、HOMO準位が浅い金属錯体を形成可能である。このことから、本発明の化合物はホールの注入性及び/又は輸送性に優れており、かつ、本発明の化合物を用いた本発明の金属錯体は、ホールの注入性及び/又は輸送性に優れていると認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される化合物。
【化1】

(式中、
各々のQは、
【化2】

である。2つのQは、同じでも異なっていてもよい。
は、置換基を有していてもよい2価の有機基である。
各々のR11は、置換基を有していてもよいヒドロカルビル基である。同じQに結合している2つのR11は、それらが結合しているQと一緒になって環を形成していてもよい。4つのR11は、同じでも異なっていてもよい。
及び4つのR11から選ばれる少なくとも1つの基は、ジアリールアミノ基を置換基として有する。)
【請求項2】
が、
【化3】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、置換基を有していてもよい、下記式r1’〜r12’のいずれかで表される基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【化4】

(式中、
は、−(C(R53−、−O−、−S−、−N(R52)−又は−Si(R53−で表される2価の基である。
nは、1又は2である。
52は、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜18のアリール基である。
各々のR53は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基である。複数あるR53は、同じでも異なっていてもよい。)
【請求項4】
11が、置換基を有していてもよいアリール基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
及び4つのR11から選ばれる少なくとも3つの基が、ジアリールアミノ基を置換基として有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
ジアリールアミノ基がジフェニルアミノ基である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物を含む金属錯体。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物、及び/又は、請求項7に記載の金属錯体を含有する発光素子。

【公開番号】特開2012−106995(P2012−106995A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229961(P2011−229961)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】