アミン含有化合物分析法
本教示は、同重体モデルおよび親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法を提供する。種々の実施形態において本発明の方法は、(a)1種類以上のアミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識し;(b)同重体で標識した各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)上記組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかけ;(d)1つ以上の送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(e)少なくとも、対応するリポータイオンの測定イオンシグナルを標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルに比較することによって、同重体で標識化した1種類以上のアミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2005年2月9日に出願された、「Amine−containing Compound Analysis Methods」という名称の、米国仮特許出願第60/651,734号の利益および優先権を主張する。米国仮特許出願第60/651,734号は、全開示が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
序文
アミン含有化合物は重要な生物学的並びに薬学的に重要な化学物質である。アミン含有化合物の例としては蛋白、ペプチド、ポリアミン、アミノ酸、カテコールアミンおよびニトロフラン代謝物などがある。アミン含有化合物を定量するための現在の方法には、紫外線蛍光を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、または電気化学的検出、液体クロマトグラフィーと質量分析との組合わせ(LC/MS)およびタンデム質量分析(MS/MS)などがある。
【0003】
上記方法によるアミン含有化合物の絶対的定量には問題が生じることがある。例えば多くのアミン含有化合物をHPLCで分析するためには分析を行う前に、困難で時間のかかる誘導体化工程を行わなければならない。さらに、HPLCは分析時間が長く、実行毎のばらつきが大きく、多重化への対応に欠け、非特異的であるという欠点を有する。
【0004】
アミン含有化合物の検出及び定量のためにLC/MS及びMS/MSが最近より多く使用されるようになり、感度および特異性が高まり、1試料中の多数のアミン含有化合物が速やかに測定できるようになったが、これらの方法も多重化への対応に欠ける。絶対的定量を行うために、同位元素に富む高価な化合物が内部標準として用いられているが、それらは幾つかのタンデム質量分析法には適していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本教示は1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して分析する方法を提供する。種々の局面において、本教示は1試料中の1種類以上のアミン含有化合物の相対濃度、絶対濃度、またはその両方を測定する方法を提供する。種々の実施形態において、本教示はある試料中の相対濃度、絶対濃度またはその両方を、または複数の試料中の1種類以上のアミン含有化合物、またはそれらの組合わせを多重方式で測定できる方法を提供する。
【0006】
本発明の教示の種々の実施形態に使用できるアミン含有化合物は、非常に多様なソース、例えば生理液試料、細胞または組織溶解物の試料、蛋白試料、細胞培養培地の試料、発酵ブロス培地の試料、農産物試料、動物製品の試料、動物飼料の試料、ヒト消費用の食物または飲料の試料、およびこれらの組合わせなどから生ずる。種々の実施形態において本発明の教示は多種多様の第一級アミン含有化合物、例えば非制限的にアミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝物、ポリアミン、ペプチド、蛋白、ポリペプチドおよびこれらの組合わせなどに適用できる。
【0007】
用語“同重体標識セット”、“同重体タグセット”は同意に用いられ、試薬または化学的部分のセットなど(その際上記セットのメンバー(すなわち個々の“同重体標識”または“同重体タグ”))は実質的に同じ質量を有するが、各メンバーは、イオンフラグメンテーション(例えば衝突による解離(CID)、光による解離(PID)など)を受けて異なる娘イオンシグナルを生ずる。上記セットのメンバー間を区別するために使用できる同重体タグまたは標識の娘イオンは、同重体タグまたは標識のリポータイオンであると言うことができる。種々の実施形態において、ある同重体タグセットは、フラグメンテーションがなければクロマトグラフィーでも質量分析によっても実質的には見分けられないが、CID後には強い低質量MS/MSサインイオンを生ずるアミン誘導体化アミン含有化合物を含む。
【0008】
用語“親−娘イオン遷移モニタリング”または“PDITM”は質量分析を用いる測定法であって、上記方法により、第一の質量セパレータの送達質量−対−電荷(m/z)領域(質量分析の第一次元と言われることがよくある)が、ある分子イオン(“親イオン”または“前駆体イオン”と言われることが多い)をイオンフラグメンタ(例えば衝突セル、光解離領域など)に送ってフラグメントイオン(“娘イオン”と言われることが多い)を生成するように選択され、第二質量セパレータの送達m/z領域(質量分析の第二次元と言われることがよくある)は、1つ以上の娘イオンを上記娘イオンのシグナルを測定するディテクタに送るように選択される。モニターされる親イオンおよび娘イオンの質量の組合わせを、モニターされる“親−娘イオン遷移”と言うことができる。モニターされる所与の親イオン−娘イオンの組合わせに対するディテクタにおける娘イオンシグナルを、“親−娘イオン遷移シグナル”と言うことができる。本発明の教示の種々の実施形態において、親イオンはある同重体タグで標識したアミン含有化合物であり、娘イオンは上記同重体タグのリポータイオンである。よって所与の同重体標識アミン含有化合物の親イオンについてディテクタで測定されるリポータイオンのイオンシグナルは“アミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナル”と言うことができる。同様に、所与の同重体標識標準化合物についてディテクタで測定されるリポータイオンのイオンシグナルは“標準化合物−リポータイオン遷移シグナル”と言うことができる。
【0009】
例えば、親−娘イオン遷移モニタリングの一実施形態は多重反応モニタリング(MRM)である(選択的反応モニタリングとも言われる)。MRMの種々の実施形態において、所与の親−娘イオン遷移のモニタリングは、第一質量セパレータ(対象となる親イオンm/z上にある第一四極子)を用いて対象の親イオンを送り、第二質量セパレータ(例えば娘イオンm/z領域上の第二四極子)を用いて対象とする1つ以上の娘イオンを送ることを含む。種々の実施形態において、PDITMは、第一質量セパレータ(例えば対象の親イオンm/z上にある四極子)を用いて親イオンを送り、対象とする1つ以上の娘イオンのm/z値を含むm/z領域にわたって第二質量セパレータを走査するという仕方で行われる。
【0010】
例えば、タンデム質量分析計(MS/MS)機器またはより一般的には、多次元質量分析計(MSn)機器を用いてPDITM、例えばMRMを実施することができる。適切な質量分析計の例は、非制限的に、トリプル四重極、四重極リニア型イオントラップ、四重極TOF、およびTOF−TOFの1つ以上を含んでなるものを含む。
【0011】
種々の局面において、本教示は、同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を利用して1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析するための方法を提供する。種々の実施形態において、ある方法は(a)1種類以上のアミン含有化合物を各々異なる同重体タグで標識し、同重体タグセット由来の各同重体タグはリポータイオン部分を含み;(b)上記同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(d)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;および(e)少なくとも対応するリポータイオンの測定イオンシグナルを標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルに比較することによって、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む。よって、種々の実施形態において、複数のアミン含有化合物の濃度の決定は、多重方式により、例えば2種類以上の同重体標識アミン含有化合物を組合わせて組合わせ試料を作り、上記組合わせ試料をPDITMにかけ、その際2種類以上の同重体標識アミン含有化合物のリポータイオンをモニターするというやり方で実現できる。
【0012】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)標準化合物を用意し;(b)同重体タグセット由来の同重体タグで上記標準化合物を標識し;(c)1種類以上のアミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる各同重体タグで標識し;(d)同重体標識した標準化合物の少なくとも一部を同重体標識した各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて組合わせ試料を作り;(e)上記組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(f)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(g)上記送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(h)少なくとも、上記対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと上記同重体標識標準化合物に対応するリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較に基づいて、1種類以上の対象アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0013】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)1種類以上のアミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる各同重体タグで標識し;(b)同重体標識アミンを含有する各化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)上記組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(e)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;および(f)少なくとも、上記対応リポータイオンの測定されたイオンシグナルを標準化合物の濃度曲線に比較することに基づいて、上記1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0014】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)1種類以上の各アミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識し;(b)各同重体標識アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて上記組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(d)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(e)少なくとも、上記対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと標準化合物の測定イオンシグナルとの比較に基づいて、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0015】
種々の実施形態において、標準化合物の濃度曲線は、(a)第一の濃度を有する標準化合物を用意し;(b)上記標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識し;(c)上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(e)送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について工程(a)−(e)を繰り返し;および(g)標準化合物の2つ以上の濃度における上記送られたリポータイオンの測定イオンシグナルに少なくとも基づいて上記標準化合物の濃度曲線を作成するという方法で作成される。
【0016】
種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を測定する工程は、1種類以上の上記同重体標識アミン含有化合物の絶対濃度を測定することを含む。
【0017】
例えば、同位体を添加した(enriched)アミノ酸を、アミノ酸濃度の絶対的定量のための内部標準として使用できるとはいえ、アミノ酸の安定な同位体類似体をMALDI質量分析に使用する際の欠点の一つは、マトリックス関連シグナルが上記アミノ酸の、対象となるm/z領域に干渉する場合があるということである。例えばm/z=約147のシアノ−4−ヒドロキシ−桂皮酸(CHCA)関連シグナルがリシンおよびその安定同位体類似体と干渉し、同様にm/z=約175のジヒドロキシ安息香酸(DHB)関連シグナルがアルギニンおよびその安定同位体類似体と干渉することがある。種々の実施形態において、本教示は、マトリックス関連シグナルと、内部標準または対象のアミン含有化合物由来のシグナルとの干渉を容易に減少させる同重体タグおよびPDITMを使用する方法を提供する。
【0018】
種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物は、リシン、リシン異性体および翻訳後修飾されたリシンの1つ以上を含み、上記マトリックスはシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む。種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物はアルギニン、アルギニンの異性体、翻訳後修飾されたアルギニンおよびこれらの組合わせのうちの1つ以上を含み、上記マトリックスはヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む。
【0019】
種々の局面において、1つ以上の試料中に対象のアミン含有化合物が存在することを確認するために設計されたアッセイが提供される。上記アッセイは薬剤発見のための種々の生化学的経路の発見に役立つ例えばバイオマーカー確認アッセイまたは診断用アッセイである。上記アッセイによって例えば疾患または症状の診断、または疾患または症状の予知、またはその両方を行うことができる。
【0020】
種々の局面において本教示は、本教示の方法の機能がコンピュータ−リーダブル媒体、例えば非制限的にフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光学的ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROMまたはDVD−ROMなどにコンピュータ−リーダブル・インストラクションとして組み込まれた製品を提供する。
【0021】
上記教示の上記局面、並びにその他の局面、実施形態、および特徴は、添付の図面と組合わせた以下の説明によってより完全に理解できる。図面において同じ参照文字は種々の図を通して一般的に同じ特徴および構造要素を指す。図面は必ずしも一定尺度で書かれてはおらず、教示の原理を説明するために強調されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
種々の実施形態の説明
種々の局面において、本教示は同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法を提供する。種々の実施形態において、本教示は1種類以上のアミン含有化合物の濃度を測定する方法を提供する。例えば図1により、種々の実施形態において、一方法は、1種類以上の各アミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識し、その際同重体タグセット由来の各同重体タグはリポータイオン部分を含み(工程110);同重体標識した各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り(工程120);上記組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ(その際送られる親イオンm/z範囲は同重体標識されたアミン含有化合物のm/z値を包含し、送られる娘イオンm/z範囲は上記同重体標識アミン含有化合物の同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を包含する);1つ以上の送られるリポータイオンのイオンシグナルを測定し(工程130);その後、対応するリポータイオンの測定イオンシグナルを標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルに比較することに基づいて1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する(工程140)諸工程を含んでなる。上記イオンシグナルは、例えばイオンピークの強度(平均、中間値、最大値など)、イオンピークの面積、またはそれらの組合わせに基づくことができる。
【0023】
種々の実施形態において、PDITMは第一質量セパレータ、およびイオンフラグメンタおよび第二質量セパレータを含む質量分析装置で行うことができる。PDITM走査における送られた親イオンのm/z範囲(第一質量セパレータによって選択される)は1種類以上の同重体標識アミン含有化合物のm/z値を含むように選択され、PDITM走査における送られた娘イオンのm/z範囲(第二質量セパレータによって選択される)は送られるアミン含有化合物に対応する1つ以上のリポータイオンのm/z値を含むように選択される。
【0024】
種々の実施形態において、1つ以上のアミン含有試料を、同重体タグセットから選択される1種類以上の同重体タグで標識する。その結果例えば実験的測定中に、例えば(i)異なる試料(例えば対照、処理試料)からの複数のアミン含有化合物を比較でき;(ii)同じ試料からの同一アミン含有化合物の複数濃度の測定値を確認でき;(iii)癌組織の種々の分離物を正常組織に比較して評価することができ;(iv)抗生物質で汚染された食物または飲料を非汚染食物または飲料に対して評価することができ;(v)食物または飲料の異なる試料間の味の傾向を比較することができ;(vi)発酵の進行をモニターできる。
【0025】
再び図1を参照し、種々の実施形態において、組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、上記組合わせ試料を直接質量アナライザー装置に導入することを含む(作業経路121および工程130);例えば適切な溶液中の上記組合わせ試料をエレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を用いて導く;上記組合わせ試料を適切なマトリックスと混合し、適切なマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源を用いて上記試料を導くなどの方法による。
【0026】
再び図1を参照し、種々の実施形態において、上記組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、上記組合わせ試料の上記部分をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはそれらの組合わせ)に供給し(作業経路122および工程125)、上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定することを含む(作業経路123および工程130)。
【0027】
種々の実施形態において上記組合わせ試料を、リポータイオンシグナルの測定に使用する前に清浄にする(例えば妨害試料、緩衝人工物などを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって除去する)。
【0028】
種々の実施形態において、アミン含有化合物の濃度は、対応するアミン含有化合物−リポータイオン遷移の測定イオンシグナル(アミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナル)を下記の1つ以上に比較することによって測定される。
【0029】
(i)標準化合物−リポータイオン遷移の濃度曲線;および
(ii)上記アミン含有化合物を含む組合わせ試料中の標準化合物の、標準化合物−リポータイオン遷移シグナル。
【0030】
再び図1により、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を測定する工程に使用される標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルは(工程140)、多くの方法で提供できる。種々の実施形態において、1種類以上の標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識し、1種類以上の同重体標識標準化合物の少なくとも一部を、同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて組合わせ試料を作る(工程150)。その後この組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定する(工程130)。
【0031】
上記組合わせ試料中の1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルをその後使用して、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定することができる。よって種々の実施形態において、同重体標識アミン含有化合物の濃度の測定は、対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、上記組合わせ試料中の1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づく(工程140)。この組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、例えば質量アナライザー装置への直接導入(作業経路152および工程130);最初にこの組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し(作業経路153および工程125)その後上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定すること(作業経路123および工程130);またはこれらの組合わせを含む。
【0032】
種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度の決定は(工程140)、対応するリポータイオンの測定シグナルと1種類以上の標準化合物の1本以上の濃度曲線に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較に少なくとも基づく。種々の実施形態において、第一の濃度を有し(工程160)、同重体タグセット由来の同重体タグで標識された標準化合物(工程170)が提供される。上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ(その際送られた親イオンのm/z範囲は上記同重体標識標準化合物のm/z値を含み、送られた娘イオンのm/z範囲は上記同重体標識標準化合物の上記同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含む)、上記リポータイオンの上記イオンシグナルが測定される(工程180)。標識化工程(工程170)並びにPDITMおよび送られたリポータイオンのイオンシグナル測定の工程(工程180)が、第一の濃度とは異なる少なくとも1つ以上の標準化合物濃度で繰り返され、上記標準化合物の濃度曲線が作成される(工程190)。
【0033】
上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、例えば質量アナライザー装置への直接導入(作業経路171および工程180)(例えばESIイオン源を使用して適切な溶液中の上記組合わせ試料を導き、上記組合わせ試料を適切なマトリックスと混合し、適切なMALDIイオン源を用いて上記試料を導く);または最初にこの組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し(作業経路172および工程175)、その後このクロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定すること(作業経路173および工程180);またはこれらの組合わせを含む。
【0034】
種々の実施形態において、標準化合物のPDITMは、第一質量セパレータ、およびイオンフラグメンタおよび第二質量セパレータを含んでなる質量アナライザー装置で行うことができる。PDITM走査における送られた親イオンのm/z範囲(第一質量セパレータによって選択される)は、1種類以上の同重体標識標準化合物のm/z値を含むように選択され、PDITM走査における送られた娘イオンのm/z範囲(第二質量セパレータによって選択される)は、送られた標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンのm/z値を含むように選択される。
【0035】
種々の実施形態において、濃度曲線の作成には標準化合物の少なくとも一部に含まれる1種類以上の内部標準を使用し、例えば注入溶量の差などを考慮した濃度測定を容易にすることができる。
【0036】
種々の実施形態において、濃度曲線は、PDITMを使用して対応する標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定し、ゼロ濃度がゼロリポータイオンシグナルに対応するように、測定濃度の直線外挿法によって濃度曲線を作成するという方法で作ることができる。種々の実施形態において、濃度曲線はPDITMを使用して、2つ以上の既知濃度で対応する標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定し、測定したリポータイオンシグナルに或る関数をフィットさせることによって濃度曲線を作成するという方法で作られる。フィットする適切な関数は例えばディテクタの反応などに左右されることがある(例えばディテクタサチュレーション、非直線性など)。種々の実施形態において、フィッティング関数は直線関数である。
【0037】
種々の実施形態において、同重体で標識した1種類以上のアミン含有化合物の濃度の測定は(工程140)、(i)対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、1種類以上の標準化合物の1本以上の濃度曲線に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較、および(ii)上記対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、同重体標識アミン含有化合物と組合わせた1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較の両方に少なくとも基づく。種々の実施形態において、第一の濃度を有する標準化合物を作り(工程160)、1種類以上のアミン含有化合物(例えば工程120の)を標識するために使用される同重体タグセット由来の同重体タグで標識する(工程170)。同重体標識標準化合物の一部を同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と一緒にし、組合わせ試料を作る(作業経路176および工程150)。この組合わせ試料をその後本明細書に記載のようにさらに分析する。種々の実施形態において、組合わせ試料を作るために使用される同じ同重体標識標準化合物の一部は本明細書に記載のように濃度曲線の作成にも用いられる。
【0038】
リポータイオンシグナルを測定するために使用した上記同じ標準化合物部分、または別の部分を用いて質量アナライザーの親−娘イオン遷移モニタリング条件を決めることができる。例えば質量アナライザー装置が液体クロマトグラフィー(LC)コンポーネントを含む場合、その標準化合物を用いてクロマトグラフィー保持時間を決めることができる。種々の実施形態において、上記標準化合物を用いて、あるアミン含有化合物のイオン源におけるイオン化効率およびイオンフラグメンタにおけるフラグメンテーション効率を種々の条件下で決定できる。
【0039】
アミン含有化合物
本教示の方法は、非制限的に、アミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝産物、ポリアミン、ペプチド、蛋白、ポリペプチドおよびこれらの組合わせを含む広範囲の第一級および第二級アミン含有化合物に適用できる。
【0040】
種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はアミノ酸を含む。アミノ酸の例としては非制限的に、ロイシン、プロリン、アラニン、バリン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、スレオニン、システイン、チロシン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、およびこれらの異性体、およびこれらの翻訳後修飾アミノ酸などがある。
【0041】
種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は1種類以上のカテコールアミンを含む。カテコールアミンの例には、非制限的に、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物にはポリアミンが含まれる。ポリアミンの例には非制限的にスペルミン、N−アセチルスペルミン、スペルミジン、N−アセチルスペルミジン、プトレッシン(1,4−ジアミノブタン)、2−ヒドロキシプトレッシン、カダベリン(1,5−ジアミノペンタン)、1,6−ジアミネオヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,10−ジアミノドデカン、およびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は蛋白またはポリペプチドを含む。蛋白およびポリペプチドの例には、非制限的に、チトクロームP450アイソフォーム、アンジオテンシン、およびベータラクトグロブリンのような、ホエーおよびミルクの蛋白がある。チトクロームP450アイソフォームの例は非制限的にCyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29、Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d9、Cyp2d22、Cyp2d26、Cyp2j5、Cyp2e1、Cyp3a11、Cyp4a10、Cyp4a14、およびこれらの組合わせを含む。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はニトロフラン代謝産物を含む。ニトロフラン代謝産物の例としては非制限的に、3−アミノ−2−オキサゾリジノン(AOZ)、5−モルホリノメチル−3−アミノ−オキサゾリジノン(AMOZ)、セミカルバジド(SEM)、1−アミノヒダントイン(AHD)、およびこれらの組合わせがある。
【0042】
【化1】
本教示の種々の実施形態に使用できるアミン含有化合物は非常に種々様々のソースに由来し、例えば生理液試料、細胞または組織溶解物試料、合成ペプチド試料、ポリペプチド試料、蛋白試料、細胞培養試料、発酵ブロス培地試料、農業産物試料、動物産物試料、動物飼料試料、ヒトが消費するための食物または飲料試料、およびこれらの組合わせなどがある。これらの試料は異なるソース、条件またはその両方から生ずる。例えば対照対実験、異なる時点(例えば連続する)由来の試料、疾患対正常、実験対疾患、汚染対非汚染などである。生理液の例は非制限的に、血液、血清、血漿、汗、涙、尿、腹膜液、リンパ、膣分泌液、精子、髄液、腹水、唾液、痰、乳房滲出液およびこれらの組合わせなどである。ヒトが消費するための食物または飲料の例としては、非制限的に、ワイン、蜂蜜、醤油、鶏肉、ポーク、ビーフ、魚、貝およびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はアミノ酸であり、上記アミノ酸のソースは、例えば加水分解され、消化されて上記アミノ酸を生ずる蛋白などである。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は合成ペプチドである。
【0043】
標準化合物
種々の化合物が標準化合物として使用できる。種々の実施形態において、標準化合物は対象のアミン含有化合物の1つを含む。種々の実施形態において、上記標準化合物は1つ以上の対照試料、濃度既知の試料またはこれらの組合わせである。種々の実施形態において、分析において対象となる各アミン含有化合物に対して1つの標準化合物が用意される。
【0044】
種々の実施形態において、標準化合物の濃度曲線をPDITMを用いて作成し、2つ以上の既知濃度において、上記標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定できる。
【0045】
同重体タグ
種々の実施形態において、同重体タグは一般式(I)によってあらわされる:
R−L−ARG (I)
上記式中、Rは、切断可能のリンカー基(L)によってアミン反応基(ARG)に共有結合しているリポータ基(R)であり、上記リンカー基は、R+Lの質量が同重体タグセットの各同重体タグで実質的に同じになるような質量を有するバランス基を含む。例えば種々の実施形態において、リンカー基Lは一般式(II)によってあらわされる:
X−B−Y (II)
上記式中Xはバランス基とリポータ基との間の結合をあらわし、ここで結合Xは標識被験体が中性ガスと衝突すると破壊され(例えば衝突によって誘起される解離)、Yは、バランス基と被験体との結合をあらわす。その際被験体の反応基は被験体と反応して被験体を標識している。Bは上記バランス基をあらわす。被験体は、被験体と式(I)の試薬、その塩および/またはその水加物との反応によって標識される。
【0046】
アミン反応基
アミン反応基の例には、非制限的に、アミン官能基と選択的に反応してアミン含有化合物の特異的部位と共有または非共有結合を形成する基が含まれる。アミン反応基は先在していてもよいし、現場で作ることもできる。アミン反応基の現場での生成は上記被験体が存在しない条件下で進めることができるし、または被験体の存在下でも進められる。例えばカルボン酸基は現場で水溶性カルボジイミド(例えば1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸;EDC)で修飾され、それによってアルキルまたはアリールアミン基のような求核基と反応できる求電子基を形成することができる。種々の実施形態において、EDCによる標識試薬のカルボン酸基の活性化はアミン(求核性)含有被験体の存在下で行うことができる。種々の実施形態において、アミン(求核性)含有被験体はEDCと最初に反応した後でも加えることができる。種々の実施形態において、上記反応基は、保護基の現場除去によって現場で生成できる。したがって求核および/または求電子試薬の反応によって被験体を誘導体化できるあらゆる既存のまたは新たに作られる試薬または試薬が考慮される。
【0047】
種々の実施形態において、適切なアミン反応基は活性エステルを含む。活性エステルはペプチド合成では公知であり、ペプチド合成に普通に用いられる条件下でアミノ酸のN−αアミンと容易に反応する幾つかのエステルが参照される。アミン反応性活性エステルは、例えばN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル(Pfp)、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステルまたは2,4−ジハロフェニルエステルである。種々の実施形態において、アミン反応基は混合無水物でよい。なぜならば混合無水物はアミン基と効率的に反応し、それによってアミド結合を生ずるからである。
【0048】
リポータ基
本教示の種々の実施形態に用いられる同重体タグのリポータ基は測定できる特異的質量(または質量対電荷比)を有する基である。例えばあるセットの各リポータは特異的な総質量を有することができる。種々のリポータは1つ以上の重原子同位体を含み、それらの特徴的質量を獲得できる。例えば炭素の同位体(12C、13Cおよび14C)、窒素の同位体(14Nおよび15N)、酸素の同位体(16Oおよび18O)または水素の同位体(水素、重水素および三重水素)が存在し、これらを使用してリポータ部分の大グループを作ることができる。安定な重原子同位体の例としては非制限的に13C、15N、18Oおよび重水素がある。
【0049】
特異的リポータは対象の試料と結合することができ、それによってその試料中の1つまたは複数の被験体がそのリポータで標識され得る。この方法で、例えばそのリポータに関する情報を上記試料中の被験体の1つまたはすべてに関する情報と関連づけることができる。ただし上記リポータを確認する際に上記リポータが被験体に物理的に結合している必要はない。むしろ、上記標識化被験体のイオンが破壊され、それによって娘フラグメントイオンと検出可能のリポータが生成した後に、上記リポータの特異的総質量が例えばタンデム質量アナライザーの第二質量分析において測定できる。測定されたリポータを利用して、確認された被験体のソースである試料を同定できる。さらに、上記特異的リポータの、その他のリポータの量に比較した量、または較正標準(例えば特異的リポータで標識された被験体)に比較した量を用いて、上記試料中または複数の試料中の被験体の相対的または絶対的量(濃度または量としてあらわされることが多い)を確認することができる。そこで、例えば特定試料中の1種類以上の被験体の量などの情報を、各特定試料の標識化に用いられるリポータ部分と関連づけることができる。被験体または被験体のアイデンティティも決定する場合には、その情報を異なるリポータにかかわる情報と関連づけ、それによって1つまたは複数の試料中の各標識化被験体のアイデンティティおよび量の決定を容易にすることができる。
【0050】
上記リポータは固定電荷を含むことができ、またはイオン化されることもある。リポータは固定電荷を含むことができ、またはイオン化し得るから、上記標識試薬は単離され、または塩(または塩混合物)または両性イオンの形で用いられ、上記反応性被験体を標識化できる。上記リポータのイオン化は質量分析計におけるその決定を容易にする。よって、上記リポータは1つのイオンとして測定することができ、サインイオンと呼ばれることもある。イオン化されると上記リポータは1つ以上の正味正電荷または負電荷を含む。よって上記リポータは1つ以上の酸性基または塩基性基を含むことができる。なぜならばこのような基は質量分析計中で容易にイオン化されるからである。例えば上記リポータは1つ以上の塩基性窒素原子(正電荷)または1つ以上のイオン化可能酸性基、例えばカルボン酸基、スルホン酸基またはリン酸基(負電荷)を含むことができる。塩基性窒素を含むリポータの非制限的例には、置換または未置換のモルホリン、ピペリジンまたはピペラジンが含まれる。
【0051】
上記リポータは、置換または未置換酢酸部分によってN−アルキル化されている環窒素原子を含む5、6、または7員複素環でよく、被験体はN−アルキル酢酸のカルボニル炭素を介して(上記複素環に)結合する。その際異なる各標識は1つ以上の重炭素同位体を含む。上記複素環は置換されていても未置換でもよい。上記複素環は脂肪族でも芳香族でもよい。複素環部分の可能な置換基としてはアルキル、アルコキシおよびアリール基がある。これらの置換基は被験体を支持体に適切に結合させる保護された基または保護されていない基、例えばアミン、ヒドロキシルまたはチオール基などを含むことができる。上記複素環は1つ以上の窒素、酸素または硫黄原子のような追加的ヘテロ原子を含むことができる。
【0052】
上記リポータは、被験体の分析に際して一般的な条件下で実質的にサブフラグメントにならないように選択される。リポータは、質量分析計において標識被験体の選択されたイオンの少なくとも一部の結合XおよびY両方のフラグメンテーションを生起するために適用される解離的エネルギーの条件下で実質的にサブフラグメントにならないように選ぶことができる。“実質的にサブフラグメントにならない”とは、対象の被験体を上首尾に分析する際には、リポータのフラグメントがバックグラウンドノイズより上に検出されにくいか、または検出不可能であることを意味する。リポータの総質量は、測定すべき被験体の質量または被験体の予想されるあらゆるフラグメントの質量とは異なるように意図的に選択できる。例えば蛋白またはペプチドが被験体である場合、リポータの総質量は天然に発生するアミノ酸またはペプチド、またはそれらの予想されるフラグメントと比較して異なるように選択できる。これは被験体の確認を容易にする。なぜならばその被験体によって、試料中に同じ一致した質量を有する成分がなければ、任意の被験体の結果の信頼性が高まるからである。
【0053】
リンカー基
本教示の種々の実施形態で使用する標識試薬または試薬のリンカーは、被験体との反応が起きているかいないかに応じて、上記リポータを被験体に連結するかまたはリポータを被験体反応基(ARG)に連結する。上記リンカーは、XおよびYの両結合が分解するときに(例えばXおよびY両結合の分解でニュートラルロスを受けるとき)中性種を生ずるように選択できる。上記リンカーはカルボニルまたはチオカルボニル基のような非常に小さい部分でよい。上記リンカーはより大きい部分でもよい。リンカーはポリマーまたはビオポリマーでもよい。リンカーは解離性エネルギーレベルにさらされるとサブフラグメントとなる(そのリンカーの中性フラグメントだけを生ずるようなサブフラグメンテーションを含む)ように設計することができる。
【0054】
上記リンカー基は、その質量が、混合物の各標識被験体のための、またはセットの同重体試薬のためのリポータ間の総質量の差を補正できるように、1つ以上の重原子同位体を含むことができる。さらに、リポータ/リンカー組合わせの集合総質量(すなわち全体として把握される総質量)は混合物の各標識被験体、またはセットおよび/またはキットの試薬で実質的に同じである。リンカーは、リポータ/リンカー組合わせの集合総質量がセットまたはキットの全ての試薬で同じになるように、標識試薬のリポータのための質量バランスとして作用することができるから、リンカー基はバランス基(B)を含むと考えられる。リンカーのバランス基(B)中の原子数が大きいほど、セットおよび/またはキット中の可能性のある種々の異性体/同重体標識試薬の数は大きくなる。
【0055】
結合XおよびY
Xはリポータの原子とリンカーの原子との間の結合である。Yはリンカーの原子と、アミン反応基の原子、或いは標識試薬が被験体と反応している場合はその被験体の原子との間の結合である。結合Xは、上記標識被験体(例えばR−X−B−Y−被験体)の選択されるイオンの少なくとも一部において、十分な解離エネルギーレベルにさらされた際に結合Xが分解するように選択される。種々の実施形態において、結合Yも、標識被験体(例えばR−X−B−Y−被験体)の選択されたイオンの少なくとも一部において、十分な解離エネルギーレベルにさらされた際には結合Yが切れるように選択される。質量分析系において解離エネルギーレベルは、標識被験体の選択されたイオンの少なくとも一部において結合X、結合Y、または結合XおよびYの両方が分解するように調節できる。結合Xの分解は被験体からリポータを放出し、そのリポータは上記被験体とは無関係に測定できる。結合Yの分解は、結合Xがすでに分解しているか否かによって、被験体からリポータ/リンカー組合わせを放出するか、または被験体からリンカーを放出する。種々の実施形態において、結合Yは結合Xより不安定であることがあり、結合Xは結合Yより不安的であることがあり、或いは結合XとYとは実質的に同じ相対的不安定さを有することがある。
【0056】
例えば対象の被験体が蛋白またはペプチドである場合、結合Xおよび結合Yの相対的不安定さをアミド(ペプチド)結合に関して調節することができる。結合X、結合Y、または結合XおよびYの両方は典型的アミド(ペプチド)結合と比較してより不安定であるか、同じように不安定であるか、またはより安定である。例えば解離エネルギーの諸条件下では、結合Xおよび/または結合YはZ−proダイマーまたはZ−aspダイマーのペプチド結合と比較して破壊(フラグメンテーション)を受けにくい。ここでZは任意の天然アミノ酸であり、proはプロリン、aspはアスパラギン酸である。種々の実施形態において、結合XおよびYは典型的アミド結合の場合とほぼ同じ解離エネルギーレベルで分解する。
【0057】
結合XおよびYは、結合Yの分解が結合Xの分解を起こすように存在することもでき、その逆も可能である。種々の実施形態において、XおよびYの両結合が実質的に同時に分解し、第二の質量分析において被験体またはその娘フラグメントイオンの実質的量が部分的標識を含まないこともあり得る。“被験体の実質的量”とは、約25%未満、より好ましくは約10%未満の部分的標識被験体がMS/MSスペクトルで検出できることを意味する。
【0058】
図2Aにより、同重体タグ200の模式図を説明する。各タグは、各タグの名目質量が実質的に等しくなるように、リポータ基212、アミン反応基214およびバランス基218(リポータ基間の質量の差をバランスさせる)からなる。
【0059】
種々の実施形態において同重体タグのセットは、フラグメンテーションが起きない場合はクロマトグラフィーによっても、質量分析によっても実質的に識別できないが、CID後には強い低質量MS/MSサインイオンを生ずるアミン誘導体化アミン含有化合物を含む。
【0060】
種々の実施形態において、同重体タグのセットは一般式(IIIa)−(IIId)によってそれぞれあらわされるタグQ114、Q115、Q116およびQ117を含む。
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
本教示の種々の実施形態に適切に使用できるリポータ基、リンカー基、バランス基、アミン反応基、同重体タグおよび同重体タグセットのその他の例はU.S.Publications Nos.2004/0219686;2004/0220412;20050147982;2005/0147985;2005/0148087;2005/0148771;2005/0148773;2005/0148774;および2005/0208550に見いだされる。これらの全ての内容はそのまま参考として本明細書に組み込まれる。
【0063】
組合わせ試料
1種類以上の同重体標識標準化合物、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物、またはそれらの組合わせの、任意の適切な組合わせが本教示の方法に使用できる。例えば、一般に、組合わせ試料中の異なる同重体標識化合物の数、N、は、同重体タグセットの同重体タグの数、T、より小さいか等しい。任意のある組合わせ試料において、同重体標識標準化合物と1種類以上の同重体標識アミン含有化合物との組合わせの可能性は次のようにあらわされる。
【0064】
(S+C)≦T (1)
上記式中、Tは同重体タグセット中の同重体タグの数であり;Sは異なる同重体タグをつけた同重体標識標準化合物の数で、0からTまでの範囲であり;Cは異なる同重体標識ををつけた同重体標識アミン含有化合物の数で、0からTまでの範囲である。
【0065】
例えば、種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識標準化合物(例えば対照試料、濃度既知の試料など)を、対象とする1種類以上の同重体標識アミン含有試験化合物と組合わせ、その際1種類以上の同重体標識標準化合物は例えば内部濃度標準として役立つ1つ以上のリポータイオンシグナルを提供する。種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の添加は上記組合わせ試料中の対象とする1種類以上のアミン含有化合物のための内部標準として役立つ。種々の実施形態において、異なる同重体標識標準化合物が組合わせ試料中の対象となる各異なるアミン含有化合物に対して加えられ(例えばS=C)、各異なる同重体標識標準化合物は例えば対象となる異なるアミン含有化合物の内部標準として役立つ。
【0066】
種々の実施形態においては、上記組合わせ試料中の分析すべき2種類以上のアミン含有化合物が、対象の同一アミン含有化合物を含む。例えばアミン含有化合物#1ないし#X(ここでX>1)は例えば異なる試料由来の対象とする同一アミン含有化合物を含むことがあるが、異なる試料由来の上記アミン含有化合物に対しては異なる同重体標識が使用される。例えば同一系(例えば患者、部位など)の異なる時点から異なる試料が得られ、これらの試料を用いて例えば同じプロセス、例えば疾患、発酵のような幾つかのプロセスの進行などをモニターすることができる。
【0067】
種々の実施形態において、ある試料は、同一アミン含有化合物に対して使用される異なる同重体タグで処理される。例えば試料は三重に処理され、3部分の各々に対して異なる同重体タグが使用される。これら3部分はその後一緒にされ、少なくとも一部は組合わせ試料を提供し(これは1種類以上の標準化合物を含むこともある)、例えば上記組合わせ試料の1回の実験分析において上記アミン含有化合物の3つの濃度測定値を提供する。統計的に有意なおよび/または正確な結果を得るためには、三重、またはより一般的には多重測定値が必要であることが多い。例えば、伝統的方法を用いるアミノ酸分析結果は同じ試料の3回の分析に基づくのが一般的である。これは伝統的方法ではrun−to−run(行程間)変動およびバックグラウンドの干渉を受けるのが普通だからである。本教示の種々の実施形態において、単一実験行程でアミン含有化合物濃度の複数の測定値が提供できるため、このようなrun−to−run変動による不正確さを減らすことができる。
【0068】
種々の実施形態において、同重体で標識した標準化合物は上記組合わせ試料には加えられない、そして種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物の濃度は、アミン含有化合物の対応するリポータイオンシグナルを標準化合物の濃度曲線に比較することに少なくとも基づいて決定される。
【0069】
種々の実施形態において、組合わせ試料を、リポータイオンシグナルの測定に使用する前に清浄にする(例えば妨害試料、緩衝人工物などを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって除去する)。
【0070】
質量アナライザー
本教示においてはPDITMを行うために種々様々の質量アナライザー装置が用いられる。適切な質量アナライザー装置は2つの質量セパレータと、2つのセパレータ間の飛行経路に配置されたイオンフラグメンタとを含む。適切な質量セパレータの例としては非制限的に、四極子、RF多重極子、イオントラップ、飛行時間型(TOF)、およびタイムド・イオン・セレクタとTOFとの組合わせなどがある。適切なイオンフラグメンタとして非制限的に、衝突誘起性(collosion insuced)解離(CID、衝突による(collosionally assisted)解離(CAD)とも言う)、光誘起性解離(PID)、表面誘起性解離(SID)、ポストソース分解、またはこれらの組合わせがある。
【0071】
質量アナライザーのための適切な質量分析装置の例には、非制限的にトリプル四極子、四重極リニア型イオントラップ(例えば4000QTRAP(商標)LC/MS/MS装置、QTRAP(商標)LC/MS/MS装置)、四重極TOF(例えばQSTAR(商標)LC/MS/MS装置)およびTOF−TOFの1つ以上を含むものがある。
【0072】
質量分析装置の適切なイオン源としては、非制限的に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、空気圧化学的イオン化(APCI)、および空気圧光イオン化(APPI)源などがある。例えばESIイオン源は、LCカラムから出るイオン化された試料を質量セパレータ装置に導くための手段として役立つ。ESIの幾つかの好ましい特徴の一つは、クロマトグラフィーカラムからのフラクションがカラムからESIイオン源に直接進むことである。
【0073】
種々の実施形態において、質量アナライザー装置はMALDIイオン源を含む。種々の実施形態において、組合わせ試料の少なくとも一部はMALDIマトリックス材料と混じり合い、MALDIイオン化源を有する質量アナライザーを用いて親−娘イオン遷移モニタリングにかけられる。種々の実施形態において、クロマトグラフィーカラムに供給された組合わせ試料の少なくとも一部およびMALDIマトリックス材料と混合した溶出液の少なくとも一部はMALDIイオン化源を有する質量アナライザーを用いる親−娘イオン遷移モニタリングにかけられる。MALDIマトリックス材料の例としては、非制限的に、表1に列挙されるものがある。
【0074】
【表1】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するトリプル四重極質量分析計を含む。種々の実施形態において、第一の四極子が親イオンを選択する。第二の四極子は十分高い圧力および電圧に維持され、多数の低エネルギー衝突が起き、親イオンの若干をフラグメントにする。第三の四極子は選択された娘イオンをディテクタに伝達するように選択される。種々の実施形態において、トリプル四重極質量分析計はイオン源と上記トリプル四極子との間に位置するイオントラップを含むことができる。上記イオントラップを調節し、イオン(例えば全てのイオン、特異的m/z範囲を有するイオンなど)を集め、フィルタイム後に末端電極にパルスをかけることによって、選択されたイオンが第一の四極子に移され、上記選択されたイオンがイオントラップを出られるようにする。所望のフィルタイムは、例えばイオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間の時間、デューティ−サイクル、励起状態種または多重電荷イオンの崩壊速度に基づいて決められる。
【0075】
種々の実施形態において、トリプル四重極質量分析計の1つ以上の四極子はリニア型イオントラップの形をとることができる(例えば末端電極を加え、四極子内に実質的に長い円筒状トラッピング容積を作り出すことによって)。種々の実施形態において、第一四極子は親イオンを選択する。第二四極子は十分高い衝突ガス圧および電圧に維持され、多数の低エネルギー衝突がおき、若干の親イオンをフラグメントにする。第三の四極子はフラグメントイオンを捕捉し、フィルタイム後、末端イオンにパルスをかけることによって選択された娘イオンをディテクタに移し、選択された上記娘イオンがイオントラップを出られるようにする。所望のフィルタイムは例えばフラグメントイオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間の時間、デューティサイクル、励起状態種または多重電荷イオンの崩壊速度、またはこれらの組合わせに基づいて決めることができる。
【0076】
種々の実施形態において上記質量分析計は、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するための2つの四重極質量セパレータおよびTOF質量分析計を含む。種々の実施形態において、第一四極子は親イオンを選択する。第二四極子は十分高い圧および電圧に維持され、その結果多数の低エネルギー衝突が起こり、上記イオンの幾つかをフラグメントにする。上記TOF質量分析計は、例えば対象の娘イオンを包含する質量領域を送られたイオンおよび作成された抽出イオン・クロマトグラムをモニターすることによって;選択された娘イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記ディテクタを逸れるように偏向させることによって;上記ディテクタを選択された娘イオンの到着時窓にタイム・ゲーティングすることによって;またはこれらの組合わせによって、検出する娘イオンを選択する。
【0077】
種々の実施形態において、上記質量分析計装置は2つのTOF質量アナライザーおよび1つのイオンフラグメンタ(例えばCIDまたはSID)を含む。種々の実施形態において、第一のTOFはフラグメンタに導入するための親イオンを選択し(例えば選択された親イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記フラグメンタから偏向させることによって)、第二のTOF質量分析計は、例えば対象の娘イオンを包含する質量範囲を通過するイオンおよび作成された抽出イオン・クロマトグラムをモニターすることによって;選択された娘イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記検出器から偏向させることによって;選択された娘イオンの到着時間窓に上記検出器をタイム・ゲーティングすることによって;またはこれらの組合わせによって、検出する娘イオンを選択する。上記TOFアナライザーはリニア−または反射アナライザーでよい。
【0078】
種々の実施形態において、質量分析計装置は飛行時間型質量分析計およびイオンリフレクタを含む。イオンリフレクタはTOFのフィールド−フリー・ドリフト領域の末端に置かれ、イオンの飛行経路を変更することによって初期運動エネルギー分布の効果を補償するために用いられる。種々の実施形態において、イオンリフレクタは加速電圧よりわずかに大きいレベルに高まった電位でバイアスをかけられた一連のリングからなる。作動時には、上記イオンはリフレクタを通過するにつれて減速し、それらイオンの上記フィールド方向の速度はゼロになる。ゼロ速度時点でイオンは方向を逆にし、リフレクタを通って再び加速する。上記イオンはそれらが入ってきたときと同じエネルギーで、だが反対方向の速度でリフレクタを出る。より大きいエネルギーを有するイオンは上記リフレクタにより深く侵入し、その結果、上記リフレクタ内により長時間とどまる。上記リフレクタにおいて使用される電位を選択し、例えば同じ質量および電荷を有するイオンがほぼ同時にディテクタに到着するようにイオンの飛行経路が変更されるようにする。
【0079】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、対象の親イオンを選択するためのタイムド・イオン・セレクタを有する第一のフィールド−フリー・ドリフト領域と、娘イオンを生成するためのフラグメンテーション室(またはイオンフラグメンタ)と、選択された娘イオンを検出のために送る質量セパレータとを含んでなるタンデムMS−MS機器を含む。種々の実施形態において、タイムド・イオン・セレクタはパルスド・イオンデフレクタを含む。種々の実施形態において、イオンデフレクタをパルスド・イオンデフレクタとして使用できる。質量セパレータはイオンリフレクタを含むことができる。種々の実施形態において、フラグメンテーション室はイオンのフラグメンテーションを起こし、そして抽出を遅らせるように設計された衝突セルである。種々の実施形態において、フラグメンテーション室は飛行時間型質量分析計によるフラグメントイオンの分析のための遅延抽出イオン源としても役立つ。
【0080】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、パルスド・イオン源によって発生する複数イオンの経路に沿って置かれた第一、第二および第三TOF質量セパレータを有するタンデムTOF−MSを含む。第一質量セパレータはパルスド・イオン源によって生ずる複数イオンを受け取るように配置される。第一質量セパレータはパルスド・イオン源によって生ずる複数イオンを加速し、上記複数イオンをそれらの質量対電荷比によって分離し、それらの質量対電荷比によって上記複数イオンから第一群のイオンを選択する。第一の質量セパレータは上記第一群のイオンの少なくとも一部の破壊も行う。第二の質量セパレータは第一群のイオンおよび第一質量セパレータによって生じたそれらのフラグメントを受け取るように配置される。第二質量セパレータは第一群のイオンとそれらのフラグメントとを加速し、第一群のイオンおよびそれらのフラグメントからそれらの質量対電荷比によって第二群イオンを選択する。第二の質量セパレータは第二群イオンの少なくとも一部の破壊も行う。第一および/または第二の質量セパレータはイオンガイド、イオンフォーカシング要素、および/またはイオンステアリング要素も含むことができる。種々の実施形態において、第二のTOF質量セパレータは第一群イオンおよびそれらのフラグメントを減速する。種々の実施形態において、第二のTOF質量セパレータはフィールド−フリー領域と、実質的に第二の予定範囲内にある質量対電荷比を有するイオンを選択するイオンセパレータとを含む。種々の実施形態において、第一および第二のTOF質量セパレータの少なくとも1つは、破壊されたイオンを選択するタイムド・イオン・セレクタを含む。種々の実施形態において、上記第一および第二質量セパレータの少なくとも1つはイオンフラグメンタを含む。第三質量セパレータは第二質量セパレータによって生ずる第二群イオンおよびそのフラグメントを受け取るように配置される。第三質量セパレータは第二群のイオンおよびそのフラグメントを加速し、第二群のイオンおよびそのフラグメントをそれらの質量対電荷比によって分離する。種々の実施形態において、第三質量セパレータは第二群のイオンおよびそれらのフラグメントをパルスド加速を利用して加速する。種々の実施形態において、イオンディテクタが第二群のイオンおよびそれらのフラグメントを受け取るように配置されている。種々の実施形態において、イオンリフレクタがフィールド−フリー領域に置かれ、第一または第二群のイオンおよびそれらのフラグメントのうちの少なくとも1つのエネルギーを、それらがイオンディテクタに達する前に修正する。
【0081】
種々の実施形態において、質量分析計装置は複数の飛行経路、同時に実施できる複数の作動モード、またはこれら両方を有するTOF質量分析計を含む。このTOF質量アナライザーは最初のイオン経路、第二のイオン経路、または第三のイオン経路のいずれかに沿って質量アナライザーに入る試料イオンのパケットから選択されるイオンを方向づける、経路選択性イオンデフレクタを含む。幾つかの実施形態において、より多くのイオン経路も用いられる。種々の実施形態において、第二イオンデフレクタが経路選択性イオンデフレクタとして使用できる。時間依存電圧を上記経路選択性イオンデフレクタにかけ、使用できるイオン経路のなかから選択し、予定の質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するイオンを、選択されたイオン経路に沿って伝搬させることができる。
【0082】
例えば複数の飛行経路を有するTOF質量アナライザーを作動させる種々の実施形態において、第一の予定電圧を、第一の予定質量対電荷比範囲に対応するあらかじめ決めた第一の時間間隔で、経路選択性イオンデフレクタにかけ、それによって第一の質量対電荷比範囲内のイオンを第一イオン経路に沿って伝搬させる。種々の実施形態において、この第一の予定電圧はゼロで、最初の経路に沿ってイオンを伝搬し続ける。第二の予定電圧を、第二の予定質量対電荷比領域に対応するあらかじめ決めた第二の時間範囲で、経路選択性イオンデフレクタにかけ、それによって上記第二の質量対電荷比範囲内のイオンを第二のイオン経路に沿って伝搬させる。第三、第四などを含むその他の時間範囲および電圧を使用して特定の測定のために要求されるような多くのイオン経路を提供することができる。第一予定電圧の振幅および極性を選択してイオンを第一イオン経路に偏向させ、第二予定電圧の振幅および極性を選択してイオンを第二イオン経路に偏向させる。第一の時間間隔は第一の予定質量対電荷比範囲内のイオンが経路選択性イオンデフレクタを通って伝搬する時間に対応するように選択され、第二の時間間隔は、第二の予定質量対電荷比範囲内のイオンが上記経路選択性イオンデフレクタを通って伝搬する時間に対応するように選択される。第一のTOF質量セパレータは、第一イオン経路に沿って伝搬する第一質量対電荷比範囲内のイオンのパケットを受け取るように配置される。上記第一TOF質量セパレータは第一質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第一のTOF質量セパレータは第一の質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第一ディテクタは第一イオン経路に沿って伝搬する第一群イオンを受け取るように配置される。第二のTOF質量セパレータは第二イオン経路に沿って伝搬するイオンのパケットの部分を受け取るように配置される。上記第二TOF質量セパレータは第二質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第二のディテクタは上記第二イオン経路に沿って伝搬する第二群のイオンを受け取るように配置される。幾つかの実施形態において、第三、第四などを含む付加的質量セパレータおよびディテクタを、上記対応する経路に沿う方向のイオンを受け取るように配置してもよい。一実施形態において、第三の予定質量範囲内のイオンを排除する第三イオン経路が用いられる。上記第一および第二質量セパレータは任意の型の質量セパレータでよい。例えば第一および第二質量セパレータの少なくとも1つがフィールド−フリー・ドリフト領域、イオン加速器、イオンフラグメンタ、またはタイムド・イオン・セレクタを含むことができる。第一および第二質量セパレータは複数の質量分離デバイスを含むこともできる。種々の実施形態において、イオンリフレクタが含まれ、第一群のイオンを受け取るように配置され、それによって上記イオンリフレクタはTOF質量アナライザーの第一群イオンに対する分解能を高める。種々の実施形態において、イオンリフレクタが含まれ、第二群イオンを受け取るように配置され、それによって上記イオンリフレクタはTOF質量アナライザーの第二イオン群に対する分解能を高める。
【0083】
本教示のまた別の局面において、本明細書に記載される方法の機能を一般目的のコンピュータのコンピュータ−リーダブル−インストラクションにしたがって実装することができる。上記コンピュータは質量分析装置から分離していてもよいし、取り外し可能でもよく、または上記質量分析装置と一体化していてもよい。コンピュータ−リーダブル−インストラクションは多数の高水準言語のいずれによって書かれていてもよい。例えばFORTRAN、PASCAL、C、C++、またはBASICなど。さらにコンピュータ−リーダブル・インストラクションは市販のEXCELまたはVISUAL BASICのようなソフトウエアに埋め込まれたスクリプト、マクロ、または機能で書かれてもよい。さらに、コンピュータ−リーダブル−インストラクションは、コンピュータに装着されたマイクロプロセッサーに向けられたアセンブリ言語で実装することができる。例えばコンピュータ−リーダブル・インストラクションは、それがIBM PCまたはPCクローンで作動するような構造である場合には、Intel 80×86 アセンブリ言語で実装され得る。一実施形態において、コンピュータ−リーダブル−インストラクションは、非制限的に例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、オプティカルディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROM、DVD−ROMのようなコンピュータ−リーダブル・プログラム媒体を含む製品に埋め込まれる。
【実施例】
【0084】
本教示の諸局面は下記の実施例を考慮することによってよりよく理解できる。これらの実施例は網羅的ではなく、本教示の範囲を決して制限するものではない。
【0085】
実施例1:異なる試料形由来の化合物
次の実施例は種々の試料形の使用を説明する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない
本発明の方法を使用して種々の試料形由来の1種類以上のアミン含有化合物を分析する種々の実施形態が説明される。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物の1種類以上が、この実施例の1つ以上の試料形、例えば血漿、ワイン、蛋白、ペプチドおよびアミノ酸を起源とすることができる。一般的に、ある試料中の対象の化合物が、同重体タグで適切に標識化できる1つ以上のアミン基、例えば第一級、および第二級アミンなどを含むように、上記試料を処理することができる。
【0086】
図3を参照し、種々の実施形態において、血漿試料(ブロック305)に含まれる1種類以上の化合物の標識化は、対象のアミン含有化合物の1種類以上を沈殿させ(工程325)、その後遠心分離して上澄液の少なくとも一部を採取する(工程340)ことを含む。対象のアミン含有化合物を沈殿させるには、例えば非制限的に7−10%スルホサリチル酸(SSA)溶液、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの組み合わせなどを含む種々のアプローチを使用できる。上記上澄液の少なくとも一部をその後同重体タグセット由来の1種類以上の同重体タグ(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)と結合させ(工程350)、上記血漿試料中の対象の同重体標識化アミン含有化合物を作ることができる。
【0087】
種々の実施形態において、ワイン試料(ブランド310)に含まれる1種類以上のアミン含有化合物の標識化は、7−10%SSA溶液で対象のアミン含有化合物の1種類以上を沈殿させ(工程330)、遠心分離し、上澄液の少なくとも一部を採取することを含む(工程345)。上記上澄液の少なくとも一部をその後同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上の同重体タグと結合させ(工程350)ワイン試料由来の対象の同重体標識アミン含有化合物を作る。
【0088】
種々の実施形態において、蛋白、ペプチドまたはポリペプチドの試料(ブロック315)に含まれる1種類以上のアミン含有化合物の標識化は、試料の少なくとも一部を加水分解し(例えば6モル(M)塩酸(HCl)で)、または消化し(例えばトリプシンで)またはこれらの両方を行い(工程325)(例えばペプチドおよび/またはアミノ酸フラグメントを生成するため)、処理した試料を同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上の同重体タグと結合させ(工程350)、上記蛋白、ペプチドまたはポリペプチド試料由来の対象の同重体標識アミン含有化合物を作ることを含む。
【0089】
種々の実施形態において、上記試料は、1種類以上のアミノ酸が対象のアミン含有化合物を含んでいる上記アミノ酸またはアミノ酸混合物を含む(ブロック320)。種々の実施形態において、アミノ酸試料は同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1種類以上の同重体タグと結合し(工程350)、上記アミノ酸試料から対象の同重体標識アミン含有化合物を作ることができる。iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる種々の実施形態において、対象の同重体標識アミン含有化合物を、1つ以上の翻訳後修飾を実質的に変えることなく作ることができる。
【0090】
実施例2:試料の調製およびiTRAQ(商標)ブランド試薬による標識化
次の実施例は1種類以上の蛋白またはペプチドを含む1つ以上の試料を調製し、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用し、1種類以上の同重体タグによって標識化する種々の実施形態の実施例を記載する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0091】
蛋白またはペプチド試料の還元およびシステインブロッキング
図4Aを参照し、種々の実施形態において、各々5ないし100μgの蛋白を含む少なくとも1本から4本までの各試料管に、20μLの溶解緩衝液および1μLの変性剤を加え、ボラックスして撹拌し、混合する(工程405)。各試料管に2μLの還元試薬を加え、ボラックスして撹拌、混合し、60℃で1時間インキュベートする(工程410)。各試料管をスピニングし、各試料管に1μLシステインブロッキング試薬を加え、その後ボラックスによって撹拌し、スピニングし、室温で10分間インキュベートする(工程415)。
【0092】
蛋白またはペプチド試料のトリプシン消化
図4Aを参照し、少なくとも1および2本までの各試料管に、還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgが含まれる種々の実施形態において、トリプシン1バイアルを25μLのMillQ(商標)水またはその同等物で希釈する。その他の実施形態、例えば少なくとも1本、そして4本までの各試料管に、還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgが含まれる実施形態において、トリプシン2バイアルを25μLのMillQ(商標)水またはその同等物で希釈する。希釈されたトリプシンバイアルの各々をボルテックスして混合し、スピニングする(工程420)。
【0093】
還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgを含む少なくとも1本そして4本までの各試料管に、10μLのトリプシン溶液を加える。各試料管をボルテックスして混合し、スピンし、37℃で最低12時間、そして16時間までインキュベートする。各試料管の試料消化物をその後スピンする(工程425)。
【0094】
蛋白またはペプチド試料の加水分解
種々の実施形態において、蛋白またはペプチド試料を加水分解によって調製し、分析する。よって種々の実施形態においては、還元工程(例えば工程410)および消化工程(例えば工程420)は用いられない。図4Bにより、種々の実施形態において、蛋白および/またはペプチドを含む試料は酸などで加水分解する(工程427)。本教示で適切に使用できる蛋白およびペプチドを加水分解するために非常に種々様々の方法を当業者は利用できる。強酸加水分解(例えば真空中、100℃で6N塩酸で処理)により加水分解すると遊離アミノ酸が生ずる。幾つかの加水分解条件によって、あるアミド(Asn、Gluなど)はそれらの酸に変換し、あるアミノ酸は分解することは知られている。よって、種々の実施形態において、強酸加水分解以外の加水分解法が使用できる。
【0095】
iTRAQ(商標)ブランド試薬によるアミノ酸の標識化
図4Aおよび4Bを参照し、種々の実施形態において、少なくとも1バイアルのiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬および4バイアルまでの種々のiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬を室温に温め、iTRAQ(商標)ブランド同重体試薬の各バイアルに70μLのエタノールを加え、その後ボルテックスして混合し、スピニングする(工程430)。例えば消化した蛋白や加水分解した蛋白などからのアミノ酸の各試料管に対して、iTRAQ(商標)ブランド同重体試薬のバイアル1本を使用する。
【0096】
アミノ酸の1本の試料管に、1種類のiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬1バイアルの内容物のエタノール溶液を加え、その後ボルテックスして混合し、室温で1時間インキュベートする(工程435)。種々の実施形態において、リポータイオンシグナルを測定する前に、標識した各アミノ酸の少なくとも一部を清浄にする(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって例えば妨害試料、緩衝人工物などを除去する)(工程440)。清浄にした標識アミノ酸の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムまたはこれらの組合わせ)に供給する(工程445)。上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を質量分析装置に導き(工程450)、1種類以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルを測定する。種々の実施形態においてアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルは認められない(工程455)。標識されたアミンの試料でアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルが認められない種々の実施形態において、上記アミノ酸の標識化工程を繰り返す(工程460)。
【0097】
分析のためのiTRAQ(商標)ブランド試薬−標識アミノ酸の組合わせ
図4Aおよび4Bを参照し、種々の実施形態において、各標識アミノ酸の試料管の全内容物を新しい1本の試料管に移し、組合わせ試料を作り、それをボルテックスして混合し、その後スピンする(工程465)。リポータイオンシグナルの測定前に、消化し標識した各蛋白の少なくとも一部を清浄にする(工程470)(例えば妨害試料、緩衝人工物などを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換などおよびこれらの組合わせによって除去する)(工程475)。上記清浄にした標識化アミノ酸試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはこれらの組合わせ)に供給する。上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をその後質量分析装置に導き(工程480)、1種類以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルをPDITM(MRMなど)を用いて測定する。組合わせ試料中の1種類以上の対象アミン含有化合物の濃度(例えば相対的濃度、絶対的濃度またはそれら両方)をその後測定する(工程485)。
【0098】
実施例3:標準化合物との組合わせ
図5を参照し、種々の実施形態において1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物の濃度測定が行われる。その際、非制限的に、ペプチド、ポリペプチド、蛋白、アミノ酸、ニトロフラン代謝産物、ポリアミンおよびカテコールアミンなどを含む1種類以上のアミン含有化合物が提供される。種々の実施形態において、同重体標識標準化合物(工程505)(例えば対照試料由来の対象アミン含有化合物、既知濃度の試料由来の対象アミン含有化合物など)を、2種類以上の分析すべき同重体標識アミン含有試験化合物、例えば試験化合物#1(工程510)、試験化合物#2(工程520)および試験化合物#3(工程525)の(と組合わせた)内部標準として使用する。
【0099】
種々の実施形態において、分析すべきアミン含有化合物の2種類以上が対象の同一アミン含有化合物を含む。例えば試験化合物#1、試験化合物#2、および試験化合物#3は対象の同一アミン含有化合物(例えばリシン)を含むことができ、これらは3つの異なる試料(例えば時点1、時点2、時点3など;例えば病気、発酵などの同一過程の進行をモニターする)でもよく、同一試料(例えばその試料の1実験行程において3重に分析するため)でもよく、またはこれらの組合わせでもよい。
【0100】
1種類以上のアミン含有化合物の濃度の決定は、標準化合物と各アミン含有試験化合物とを同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の異なる同重体タグで標識化することによって行われる。例えば、上記標準化合物を同重体タグセット由来の第一同重体タグで標識化し(工程530)、試験化合物#1を同重体タグセット由来の第二同重体タグで標識化し(工程535)、試験化合物#2を同重体タグセット由来の第三同重体タグで標識化し(工程540)、試験化合物#3を同重体タグセット由来の第四同重体タグで標識化(工程545)することができる。
【0101】
種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の少なくとも一部と同重体標識試験化合物の複数部分とを一緒にし(工程550)、組合わせ試料を作り、上記組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける。
【0102】
種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の添加は、組合わせ試料中の1種類以上の対象アミン含有化合物のための内部標準として役立つ。種々の実施形態において、異なる同重体標識標準化合物が組合わせ試料中の異なる各対象アミン含有化合物に対して加えられ、異なる各同重体標識標準化合物は対象となる異なる各アミン含有化合物のための内部標準として役立つ。
【0103】
実施例4:アミン含有化合物濃度の多重測定
下記の実施例はiTRAQ(商標)ブランド試薬セット由来の同重体タグを用いて4種類のポリアミンの濃度を多重測定することについて記載する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0104】
材料および方法:
この実施例のスペクトルは、図6Bから10DまでのスペクトルではAPI2000トリプル四重極LC/MC/MC装置を用い、図11から図13までのスペクトルではHILCカラム.を備えたHILC装置に連結したAPI2000トリプル四重極機器を使用して得たものである。クロマトグラフィーの構造はオートサンプラー、150×2.1mmC18逆相カラムおよびカラム加熱器を備えたバイナリー勾配HILC装置を含む。アミン含有化合物は、それらをメタノールに溶解し、その後標準を標識化するプロトコルを用いてそれらをiTRAQ試薬と反応させるという方法で調製した。標準アミンはフルカ(Fluka)から入手した。
【0105】
スペクトル:
実施例4は組合わせ試料を使用する複数アミン含有化合物の濃度測定を記載する。図6A−10Dは個々のアミン含有化合物(同重体タグセット由来の同重体タグで標識されたもの、未標識のもの両方)の質量スペクトルを示す。この実施例において、同重体タグはiTRAQ(商標)ブランド試薬であった。図11および13は組合わせ試料のクロマトグラムを示す。この実施例の組合わせ試料中の対象アミン含有化合物は1,4ジアミノブタン(プトレッセン)、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)、N1−(3−アミノプロピル)−ブタン−1,4−ジアミン(スペルミジン)および1,7ジアミノヘプタンであった。図12A−12Cはそれぞれ1,4−ジアミノブタン(プトレッセン)、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)、および1,7ジアミノヘプタンのクロマトグラムを示す。
【0106】
図6A−6Cを参照し、未標識の602、および第一級アミンを同重体タグで標識した604プトレッセンの質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を用いてプトレッセンの第一級アミンを標識した。図6BはiTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したプトレッセンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク635は標識プトレッセンに対応する(m/z約377)。ただし標識プトレッセン−ナトリウム付加物に対応する弱いピーク640(m/z約399)、並びに溶媒中に存在する低質量不純物に対応する弱いピーク630(m/z約375)、610(m/z約245)およびピーク615、620、625の集団(約319と321との間のm/z)も認められた。
【0107】
図6CはCIDにかけた標識プトレッセンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク650は114同重体タグのリポータイオンに対応した;ただし標識プトレッセンに対応するピーク(m/z約377)670、およびプトレッセン構造に特異的なフラグメントに対応するピーク660(m/z約233)も認められた。
【0108】
図7A−7Cを参照し、未標識のカダベリン702および第一級アミンを同重体タグで標識したカダベリン704両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図7BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ115で標識したカダベリンのESI−TOF質量スペクトルを示す。730に認められるピークは標識カダベリンに対応した(m/z約391)が、溶媒のバックグラウンドに対応するピーク710(m/z約102)および725(m/z約248)、およびiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク715(m/z約163)および720(m/z約191)も認められた。
【0109】
図7CはCIDにかけた標識カダベリンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。認められた主ピーク740は115同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識カダベリンに対応するピーク760(m/z約391)およびカダベリン構造に特異的なフラグメントに対応するピーク750(m/z約247)も認められた。
【0110】
図8A−8Cを参照し、未標識の1,7−ジアミノヘプタン802、および第一級アミンを同重体タグで標識した1,7−ジアミノヘプタン、804、両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116を使用して1,7−ジアミノヘプタンの第一級アミンを標識した。図8BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ116で標識した1,2−ジアミノヘプタンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク825は標識1,7−ジアミノヘプタンに対応した(m/z約419);ただし溶媒のバックグラウンドに対応するピーク810(m/z約102)およびiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク815(m/z約163)および820(m/z約191)も観察された。
【0111】
図8CはCIDにかけた標識1,7−ジアミノヘプタンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク830は116同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識1,7ジアミノヘプタンに対応するピーク850(m/z約419)および構造特異的フラグメントに対応するピーク840(m/z約275)も観察された。
【0112】
図9A−9Dを参照し、未標識のスペルミジン902および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミジン904両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を用いてスペルミジンの第一級アミンを標識した。図9BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク925は標識したスペルミジンに対応した(m/z約434)。ただしiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク908(m/z約163)、916(m/z約217)、918(m/z約245)、930(m/z約458)、および部分的に標識化された第二級アミンに対応するピーク935(m/z約578)も認められた。
【0113】
図9CはCIDにかけた標識化スペルミジンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク945は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミジンに対応するピーク980(m/z約434)、構造特異的フラグメントに対応するピーク940(m/z約97)、955(m/z約202)および970(m/z約290)、iTRAQ(商標)標識に対応するピーク950(m/z約145)および溶媒の構造フラグメントに対応するピーク960(m/z約216)も観察された。
【0114】
図9DはCIDにかけた標識スペルミジンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク985は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミジンに対応するピーク995(m/z約434)および第二級標識アミンに対応するピーク990(m/z約578)も観察された。
【0115】
図10A−10Dを参照し、未標識スペルミン1002および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミン1004両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図10BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1035は標識スペルミンに対応していた(m/z約491)。ただし溶媒バックグラウンドに対応するピーク1008(m/z約177)、1020(m/z約248)および1022(m/z約248)、iTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク1010(m/z約185)および1012(m/z約191)、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンに対応するピーク1030(m/z約434)、標準スペルミジン中の不純物に対応するピーク1040(m/z約535)、1045(m/z約738)、および1050(m/z約754)も観察された。
【0116】
図10CはCIDにかけた標識スペルミンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1060は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク1075(m/z約491)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1055(m/z約100)、1058(m/z約202)、および1070(m/z約273)も認められた。
【0117】
図10Dは、CIDにかけた標識スペルミンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1080は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク1090(m/z約491)、第一級アミン上に標識を有する構造特異的フラグメントに対応するピーク1082(m/z約202)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1085(m/z約273)、および全てのアミンが標識化された完全アミンに対応するピーク1095(m/z約635)も観察された。
【0118】
図11は組合わせ試料のクロマトグラムを示し、HILCカラムを備えたHPLC装置に連結したAPI2000トリプル四重極機器を用いて、MRMモードで分析した1,4ジアミノブタン(プトレッセン)1120、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)1110、および1,7ジアミノヘプタン1105のクロマトグラムを描いている。
【0119】
図12A−Cを参照し、第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン、カダベリンおよび1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムが得られた。図12Aは、図11に示されるLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114で標識したプトレッセンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1205は標識プトレッセンに対応した(保持時間約8.9分)。図12Bは図11に示されたLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115で標識したカダベリンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1215は標識カダベリンに対応していた(保持時間約8.8分)。図12Cは図11に示すLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116で標識した1,7−ジアミノヘプタンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1225は標識1,7−ジアミノヘプタンに対応した(保持時間約8.4分)。
【0120】
図13は1,7−ジアミノヘプタン1305、カダベリン1310、およびプトレッセン1320のクロマトグラムを描いた組合わせ試料のクロマトグラムである
図14A−Cを参照し、マトリックスであるシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を含む95%アセトニトリルのバックグラウンドO−MALDI質量スペクトルが得られた。同じスペクトルの3質量範囲に見られるイオンの大部分は溶媒からの化学的バックグラウンドおよび4−ヒドロキシ桂皮酸由来のマトリックスイオンから生ずるものである。
【0121】
図15は、95%アセトニトリル(ACN)およびシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)中の、第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン、カダベリンおよび1,7−ジアミノヘプタンの混合物のO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピークは、標識プトレッセン1512(m/z約379)、標識カダベリン1520(m/z約391)、標識1,7−ジアミノヘプタン1525(m/z約419)および標識スペルミジン1530(m/z約434)に対応した。ただし標準中の化学的不純物に対応するピーク1502(m/z約359)、1504(m/z約361)、1508(m/z約377)および1515(m/z約380)も観察された。
【0122】
図16Aおよび16Bを参照し、未標識のプトレッセン1602および第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン1604両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を使用してプトレッセンの第一級アミンを標識した。図16Bは、CIDにかけた、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中の標識プトレッセンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描く。観察された主ピーク1608は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識プトレッセンに対応するピーク1640(m/z約377)、完全無傷の標識に対応するピーク1610(m/z約145)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1615(m/z約172)、1620(m/z約233)、1630(m/z約331)、および1635(m/z約359)も観察された。
【0123】
図17Aおよび17Bにより、未標識のカダベリン1702および第一級アミンが同重体タグで標識されたカダベリン1704両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においてはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図17Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ115で標識したカダベリンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク1708は115同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識カダベリンに対応するピーク1730(m/z約391)、完全無傷の標識に対応するピーク1712(m/z約145)、および構造特異的フラグメントに対応するピーク1720(m/z約247)も認められた。
【0124】
図18Aおよび18Bを参照し、未標識の1,7−ジアミノヘプタン1802および第一級アミンが同重体タグで標識された1,7−ジアミノヘプタン1804両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図18Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ116で標識した1,7−ジアミノヘプタンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク1815は116同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識1,7−ジアミノヘプタンに対応するピーク1845(m/z約419)、iTRAQ(商標)標識フラグメントに対応するピーク1810(m/z約101)、および構造特異的フラグメントに対応するピーク1825(m/z約275)および1835(m/z約381)も観察された。
【0125】
図19Aおよび19Bを参照し、未標識のスペルミジン1902および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミジン1904両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を使用してスペルミジンの第一級アミンを標識した。図19Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められた主ピーク1908は114同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミジンに対応するピーク1965(m/z約434)、完全無傷iTRAQ(商標)標識に対応するピーク1912(m/z約145)および構造特異的フラグメントに対応するピーク1915(m/z約156)、1918(m/z約175)、1925(m/z約184)、1930(m/z約202)、1935(m/z約220)、1940(m/z約273)、1945(m/z約290)、および1960(m/z約414)も得られた。
【0126】
図20Aおよび20Bを参照し、未標識のスペルミン2002および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2004両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミジンの第一級アミンを標識した。図20Bは95%アセトニトリルおよびCHCA中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められた主ピーク2015は標識スペルミンに対応していた(m/z約491)。ただし構造特異的フラグメントに対応するピーク2008(m/z約379)および2030(m/z約535)も認められた。
【0127】
図21A−Cを参照し、未標識のスペルミン2102および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2104両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図21Bは4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察されたピーク2110は117同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミンに対応するピーク2140(m/z約491)および構造特異的フラグメントに対応するピーク2120(m/z約202)、2130(m/z約275)、および2135(m/z約473)も認められた。
【0128】
図21Cは4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められたピーク2150は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク2180(m/z約491)および構造特異的フラグメントに対応するピーク2160(m/z約202)および2170(m/z約275)も認められた。
【0129】
図22Aおよび22Bを参照し、未標識スペルミン2202および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2204両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図22Bは、4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク2210は117同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミンに対応するピーク2250(m/z約491)、構造特異的フラグメントに対応するピーク2220(m/z約202)、2230(m/z約271)および2235(m/z約273)、およびフラグメンテーションのために選択された前駆体イオンに対応するピーク2260(m/z約635)も認められた。
【0130】
図23は、種々のアミノ酸を得るための蛋白加水分解物中に見られるアミノ酸を含む、iTRAQ(商標)115−標識アミノ酸標準のMRM分析のクロマトグラムを示す。2310、2320、2330、2340、2350および2360。
【0131】
実施例5:ウシ血清アルブミン(BSA)試料
下記の実施例は加水分解して遊離アミノ酸を生成した1蛋白試料のアミノ酸の濃度の測定を説明するものである。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0132】
材料および方法
蛋白またはペプチド加水分解物を標準的加水分解法によって調製する。より詳細に述べれば、1μgからなるウシ血清試料を6NのHClで、110℃で17時間加水分解した。加水分解した試料をその後緩衝液、イソプロパノールおよびiTRAQブランド試薬と混合し、室温で反応させる。その後所望濃度に再溶解または直接希釈し、分析する(一般的に各分析にはペプチドまたは蛋白0.2μgが必要である)。加水分解の前および/または実験操作中の試料の回収を追跡するために、標識する前に標準(すなわちノルロイシン、ノルバリン)を上記試料に加える。試料の標識化の詳細はプロトコルフォーマット中の表2にも示される。
【0133】
複数試料(4までまたは内部標準を含む場合は3まで)の場合は各試料を上記のように作り、異なるiTRAQ試薬(114、115、116、または117)で標識する。標識反応後、異なる試薬で標識した試料を一緒に混ぜる。別々のバイアル中のアミンまたはアミノ酸標準ミックスに対し、異なるタギング試薬を使用して同じプロセスを行い、上記標識標準を用いて外部検量曲線を作成できる。標識標準を上記試料と混合し、各アミンまたはアミノ酸のための内部標準を作ることもできる(図1参照)。HPLC分離は50℃に加熱したC18カラム(15%炭素積載により完全にエンドキャップする)を使用し、200μL/minスリットで1ml/minの流速で分離してディテクタに導くように実施される。勾配、洗浄、および平衡化に合計20分間かかる。
【0134】
アミノ酸濃度の定量はHPLC分離を用い、その後MRMモードで作動するトリプル四重極またはQ TRAP MS/MS装置によるESI MRM分析によって行われる。MRM分析では、MRM遷移は、上記アミノ酸の標識化質量およびMS/MSに用いられる特定試薬、例えば117試薬、で生ずる上記リポータイオンフラグメントから成りたっており、グリシンは220.1>117.1の遷移を用いてモニターされる。モニターが必要な全アミノ酸のMRM遷移がこの方法に含まれる。これら遷移の1つを、試料に添加する内部標準のために確保しておくのが一般的である。あらゆるアミノ酸の内部標準は検出反応並びにクロマトグラフィー分離におけるあらゆる変動を補正する。定量はアナリスト(Analyst)(商標)ソフトウエア、およびアミノ酸分析に役立つように特別に設計されたツールを使用して行われる。
【0135】
【表2】
この実施例のデータを作成するための試料処理、およびLC/MS/MSの設定に関するさらなる詳細は次のようである。LCカラムに載せる前に、各試料に、iTRAQ試薬114で標識したアミノ酸標準6pmol/μLを含む3%蟻酸、25μL、を加えて再構成した。その後、製造者が推薦する方法を用いて5μL量をアプライド・ビオシステムズ(Applied Biosystems)/MDS Sciex API2000LC/MS/MS機器に注入した。機器の作動条件に関する詳細は表3−11に示される。表3および4は上記機器のLC部分に関連する条件を示し、表5−11は上記機器のMS/MS部分に関する条件を示す。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
この実施例において、MS/MSデータを得るために複数の期間(期間1−3)を使用し、その行程中、全ての遷移は連続的には走査されない。ある期間中の遷移だけがその期間中に走査される。その結果ピークあたりのデータ点をより多くすることができ、それはより良い定量につながる。
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
スペクトルおよび結果
本実施例において、20種類のアミノ酸の濃度を測定した。表12は各アミノ酸(2列目に列挙)について得られたデータをまとめたものである。3列目はアミノ酸のLCカラム上の保持時間を列挙し、4列目は濃度未知の試料中のアミノ酸に関連するピーク面積を列挙する。5列目はアミノ酸標準試料に関連するピーク面積である。6列目は標準試料中のアミノ酸濃度である。7列目には本教示を利用して測定した、この実施例のアミノ酸の濃度が記載される。未知試料のアミノ酸の濃度は、未知試料のアミノ酸に関連するピーク面積を、標準試料に関連するピーク面積で割り、この数値に上記既知試料の濃度を掛けることによって得た。
【0141】
例としてのスペクトルを図24および25A−25Uに示す。
【0142】
図24はiTRAQ(商標)114−標識アミノ酸標準および117−標準試料のMRM分析のクロマトグラムを描いている。図24に描かれている種々の保持時間に一致するアミノ酸が表12に列挙されている。図25A−25Uは測定した種々のアミノ酸のMRMデータを模式的に描く。図25A−25Uの各々の右パネルは内部標準(IS)114−標識アミノ酸のイオンシグナルを描き、左パネルは117−標識試料のイオンシグナルを描く。面積を誘導したピークは暗く描かれている。注目すべきことに、Cyaでは試料シグナルは検出されなかった。そのため図25Aの左パネルには暗いピークは現れない。
【0143】
図26A−Bは上記アミノ酸の測定濃度を、ベックマン(Beckman)装置のカラム誘導体化の前および後に標準アミノ酸分析法/機器装置に関して比較したものである。結果はこれらの方法でよく一致する。
【0144】
図26Aおよび26Bは典型的蛋白加水分解物試料の結果を理論値およびベックマンゴールド装置に対して比較したものである。図26Aは各アミノ酸の理論的モルパーセント(所与のアミノ酸の最も左側の棒)を、ベックマンゴールド装置で測定したモルパーセント(上記アミノ酸の真中の棒)およびこの実施例でLC/MS/MSを使用して測定したもの(上記アミノ酸の右側の棒)と比較している。図26Bはベックマンゴールド装置で測定した蛋白加水分解物試料の、理論値(与えられたアミノ酸の左側の棒)からの変動、およびLC/MS/MSを使用してこの実施例で測定したもの(与えられたアミノ酸の右側の棒)からの変動を比較する。本実施例(LC/MS/MS装置)のチロシン値が低いのは、この試料がヒドロキシルアミン処理を受けなかったからである(ヒドロキシルアミンは不都合な第二iTRAQ試薬標識をチロシンから除去できる)。
【0145】
【表8】
実施例6:生物学的液試料
下記の実施例は生物学的試料中の遊離アミノ酸の濃度測定を説明する。この実施例のデータは血漿試料のデータであるが、本実施例の教示はその他の生物学的液、例えば非制限的に尿などに適用できる。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。この実施例において、上記血漿試料中の48の遊離アミノ酸をモニターした。モニターしたアミノ酸を表13に列挙する。
【0146】
【表9】
血漿中の1種類以上の遊離アミノ酸のモニタリングは、新生児の疾患の発見および/またはモニタリング、バイオマーカーの検出などを含む幾つかの実際的用途を有する。例えば新生児のある遊離アミノ酸は、例えばメチルマロン酸血症、およびプロピオン酸血症のような新生児代謝性疾患を示唆することがある。ある一般的アミノ酸障害と関係する高アミノ酸の例は表14にも列挙される。
【0147】
【表10】
このような代謝性疾患は遺伝性疾患の稀な群であるが、罹患している乳児に対して深刻な結果をもたらすことがある。治療せずにおくならば、これらの疾患は回復し得ない精神的遅れ(軽度から重度までの範囲)、身体的無能力、神経損傷および死亡までも起こすことがある。速やかかつ適切な処置を受けるためには早期発見(出生後間もなく)および正確な診断が非常に重要である。
【0148】
材料および方法
生物学的液(例えば血漿、血清、尿)では、試料の一部をイソプロパノールまたはエタノール4部と混合し、その試料中の蛋白の大部分を沈殿させる。上澄液に緩衝液を加えて、標識反応のために塩基性pHを維持する。その後iTRAQブランド試薬を加え、室温で反応させる。試料をその後乾燥し、分析のために好ましい濃度に再溶解するかまたは直接希釈する(普通は各分析に100nLの生物学的液が必要である)。試料の標識化に関する詳細はプロトコルフォーマットの表15にも記載されている。
【0149】
【表11】
この実施例のデータを作成するための試料処理およびLC/MS/MS設定に関するさらなる詳細は次のようである。上記LCカラムに載せる前に、各試料を、iTRAQ試薬117で標識したアミノ酸標準10pmole/μLを含む3%蟻酸、40μL、で再構成する。その後、製造者の推薦する方法を用いて、容量2μLをアプライド・バイオシステムズ/MDS Sciex API3200 LC/MS/MS機器に注入した。機器の作動条件に関する詳細は表16−26に示される。表16および表17は機器のLC部分に関する諸条件を提供し、表18−26は機器のMS/MS部分に関する諸条件を提供する。
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
本実施例においてはMS/MSデータを集めるために複数期間(期間1−4)を用い、行程中、全ての遷移を連続的に走査しないようにする。ある期間中の遷移だけがその期間中に走査される。これはピークあたりのデータ点をより多くすることができ、その結果より良い定量が可能になる。
【0152】
【表14】
【0153】
【表15】
【0154】
【表16】
【0155】
【表17】
スペクトルおよび結果:
本実施例において48種類のアミノ酸をモニターした。表27は、検出された各アミノ酸で得られたデータをまとめたものである。第2列は内部標準のアミノ酸の量を列挙し、第3列は外部標準添加量を示し、第4列は試料中の測定されたアミノ酸濃度を示し、第5列は血漿の対照範囲を示す。
【0156】
【表18】
実施例7:カテコールアミン
本実施例はiTRAQ標識カテコールアミン(CAT)のクロマトグラム分離について論ずる。CATsは尿、血漿およびCSF(脳脊髄液)試料の臨床的分析において重要であることが多い。腫瘍(神経芽細胞腫、フェアシトクローマなど)およびそれらの病期および部位などを診断するために、血漿および尿の日常的臨床分析が行われる。CATsはしばしば神経伝達物質でもあり、製薬会社などにおいて高血圧薬の開発のためにCSF中でモニターされる。
【0157】
カテコールアミンおよび関連化合物は重要な心臓血管および代謝エフェクターである。種々の生物学的液中のこれら化合物の濃度の測定は臨床研究室および医薬開発研究所において重要である。現在、標準的分析法には種々の化学的並びにクロマトグラフィー的妨害があることが多い。我々はここに、iTRAQ化学、4種のアミン反応性同重体多重標識試薬のセットを使用して、カテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸を、1回の分析によって高感度で定量する新規の方法を提供する。非常に高い感度および特異性を有するMRM(多重反応モニタリング)モードのLC/MS/MSを使用してこれらの誘導体を分析し、定量する。
【0158】
本実施例において、CATs ヒスタミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、メタネフリン、ドーパミン、およびセロトニンをモニターする。その他に、アミノ酸glu(グルタミン)およびtyr(チロシン)をモニターする。
【0159】
材料および方法
カテコールアミン、関連化合物および幾つかのアミノ酸の標準混合物を作り、標準的プロトコルを用いてiTRAQ試薬で標識した。C18逆相カラム上で揮発性イオン対試薬を含む水−アセトニトリル勾配を用いて、1mL/minの流速で誘導体を分離した。誘導体化した標準の希釈列を注入し、種々の成分のLOD(検出限界)および検量曲線を決定した。標準を加えた、および加えない生物学的液試料(尿、CSF、血漿)を一般的プロトコルによって調製し、標識し、分析して、上記方法の感度および正確さに与えるマトリックスの効果を確認した。試料はアプライド・ビオシステムズ(Applied Biosystems)/MDS SCIEX API−4000トリプル四重極質量分析計、ESI+、MRMモードで分析した。
【0160】
結果
結果はカテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸、すなわちドーパ(3,4−ジヒドロキシ−DL−フェニルアミン)、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、メタネフリン、ノルメタネフリン、メチルドーパ、3−メトキシチラミン、セラトニン、ヒスタミン、ABA(アミノ酪酸)、チロシン、およびグルタミン酸の標識化および定量が可能であることを証明している。抽出時のLODは0.004picomol/uLである。種々の試料の直線性は0.9000から0.999までの範囲である。正確さおよび精度が示される。カテコールアミン異性体ドーパ(342/117)およびメタネフリン(342/117)並びにエピネフリン(328/117)およびノルエピネフリン(328/117)のベースライン分離が行われた。
【0161】
実施例8:動力学的範囲
図27Aおよび27Bはアミノ酸濃度を測定する本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータを示す。図27Aは約10ないし約990picomol(pmole)のノルバリン濃度に対する反応に関するデータを示す。各実験(データ点)は30pmoleの内部標準を使用し、三重に注入する。増加する量のアミノ酸をLC/MS/MS装置に注入し、それらの反応に対してプロットした。図27Aは、上記反応が約3桁の大きさの濃度にわたって直線性であることを示している。
【0162】
図27Bは約10から約990picomol(pmole)までのロイシンの濃度に対する反応に関するデータを示す。各実験(データ点)は30pmole内部標準および3重の注入を使用する。増加する量のアミノ酸をLC/MS/MS装置に注入し、それらの反応に対してプロットした。図29Bは上記反応が約3桁の大きさの濃度にわたって直線性であることを示す。
【0163】
本出願に記載される全ての文献および類似の資料、例えば非制限的に特許、特許出願、記事、本、論文およびウェブページなどは、そのような文献および類似の資料のフォーマットに無関係に、参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。組み込まれる文献および同様な資料の1つ以上が非制限的に、定義された用語、用語の使用法、記述された技術などを含む本出願とは異なるかまたは矛盾する場合には本出願が優先する。
【0164】
本明細書に使用される小見出しは組織化する目的のためのものであり、記載の内容を決して制限するものではない。
【0165】
本教示を種々の実施形態および実施例と関連づけて記載したが、本教示はこのような実施形態および実施例に制限されるものではない。反対に、本教示は種々の代替物、変更および同等物を含むことは当業者には当然である。
【0166】
本教示は特異的例証的実施形態を参照して詳細に示され、記載されているが、本教示の精神および範囲から逸脱することなく形式および細部に種々の変更がなされ得ることは当然である。例として、開示された任意の工程をその他の開示された工程と組み合わせて、本発明の種々の実施形態によるアミン含有化合物の分析法を提供することができる。したがって、本教示の範囲および精神内に入る全ての実施形態が請求される。本教示の方法、装置およびアッセイの記述および図面は、記載された諸要素の順序(その効果について述べられていない限り)に制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、1つ以上の試料中に存在する1種類以上のアミン含有化合物の分析法の種々の実施形態の模式図である。
【図2】図2は、同重体タグの種々の実施形態を模式的に説明するものである。
【図3】図3は、複数の試料形を使用する種々の実施形態の模式図である。
【図4A】図4Aは、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用して同重体で標識する工程の種々の実施形態である。
【図4B】図4Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用して同重体で標識する工程の種々の実施形態である。
【図5】図5は、組合わせ試料中の標準化合物を使用する種々の実施形態の模式図である。
【図6A】図6Aは、未標識プトレッシンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッシンの構造を模式的に描いたものである。
【図6B】図6Bは、PDITMの前および後の同重体標識プトレッシンの質量スペクトルを描いたものである。
【図6C】図6Cは、PDITMの前および後の同重体標識プトレッシンの質量スペクトルを描いたものである。
【図7A】図7Aは、未標識カダベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンの構造を模式的に描いたものである。
【図7B】図7Bは、PDITM前および後の同重体標識カダベリンの質量スペクトルを描いたものである。
【図7C】図7Cは、PDITM前および後の同重体標識カダベリンの質量スペクトルを描いたものである。
【図8A】図8Aは、未標識1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンの構造を模式的に描いたものである。
【図8B】図8Bは、PDITMの前および後の同重体標識1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを描いたものである。
【図8C】図8Cは、PDITMの前および後の同重体標識1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9A】図9Aは、未標識スペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミジンの構造を模式的に描いたものである。
【図9B】図9Bは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9C】図9Cは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9D】図9Dは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10A】図10Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造を模式的に描いたものである。
【図10B】図10Bは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10C】図10Cは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10D】図10Dは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図11】図11は、同重体タグセット由来の異なる同重体タグでそれぞれ標識したポリアミンの混合物の液体クロマトグラフを模式的に描いたものである。
【図12】図12Aは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッセンのクロマトグラムの模式図である。図12Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンのクロマトグラムの模式図である。図12Cは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムの模式図である。
【図13】図13は、同重体タグセット由来の異なる同重体タグでそれぞれ標識したポリアミンの混合物のクロマトグラムの模式図である。
【図14】図14A、14B、14Cは、ACNおよびHCCAを含むマトリックスの1試料の、直交−MALDI(O−MALDI)バックグラウンド質量スペクトルを描いたものである。
【図15】図15は、ACNおよびHCCAマトリックス中の実施例4の4種のポリアミンのO−MALDI質量スペクトルである。
【図16A】図16Aは、未標識プトレッセンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッセンの構造を模式的に描いたものである。
【図16B】図16Bは、PDITM後の同重体標識プトレッセンのO−MALDI質量スペクトルを描いたものである。
【図17A】図17Aは、未標識カダベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンの構造の模式図である。
【図17B】図17Bは、PDITM後の同重体標識カダベリンのO−MALDI質量スペクトルである。
【図18A】図18Aは、未標識1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンの構造の模式図である。
【図18B】図18Bは同重体標識1,7−ジアミノヘプタンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いたものである。
【図19A】図19Aは、未標識スペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミジンの構造の模式図である。
【図19B】図19Bは同重体標識スペミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図20A】図20Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図20B】図20Bは、同重体標識スペルミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図21A】図21Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図21B】図21Bおよび21CはPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図21C】図21Bおよび21CはPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図22A】図22Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図22B】図22Bは、同重体標識スペミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図23】図23は、標識アミノ酸混合物のクロマトグラムを模式的に描いたものである。
【図24】図24は、実施例5の標識アミノ酸混合物の1試料の総イオン流(TIC)クロマトグラムを模式的に描いたものである。
【図25A】図25Aは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25B】図25Bは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25C】図25Cは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25D】図25Dは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25E】図25Eは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25F】図25Fは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25G】図25Gは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25H】図25Hは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25I】図25Iは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25J】図25Jは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25K】図25Kは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25L】図25Lは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25M】図25Mは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25N】図25Nは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25O】図25Oは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25P】図25Pは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25Q】図25Qは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25R】図25Rは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25S】図25Sは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25T】図25Tは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25U】図25Uは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図26】図26A−26Bは、実施例5の測定アミノ酸濃度を理論値および種々のその他の測定系と比較したデータである。
【図27A】図27Aは、アミノ酸濃度を測定するための本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータである。
【図27B】図27Bは、アミノ酸濃度を測定するための本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータである。
【背景技術】
【0001】
本願は、2005年2月9日に出願された、「Amine−containing Compound Analysis Methods」という名称の、米国仮特許出願第60/651,734号の利益および優先権を主張する。米国仮特許出願第60/651,734号は、全開示が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
序文
アミン含有化合物は重要な生物学的並びに薬学的に重要な化学物質である。アミン含有化合物の例としては蛋白、ペプチド、ポリアミン、アミノ酸、カテコールアミンおよびニトロフラン代謝物などがある。アミン含有化合物を定量するための現在の方法には、紫外線蛍光を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、または電気化学的検出、液体クロマトグラフィーと質量分析との組合わせ(LC/MS)およびタンデム質量分析(MS/MS)などがある。
【0003】
上記方法によるアミン含有化合物の絶対的定量には問題が生じることがある。例えば多くのアミン含有化合物をHPLCで分析するためには分析を行う前に、困難で時間のかかる誘導体化工程を行わなければならない。さらに、HPLCは分析時間が長く、実行毎のばらつきが大きく、多重化への対応に欠け、非特異的であるという欠点を有する。
【0004】
アミン含有化合物の検出及び定量のためにLC/MS及びMS/MSが最近より多く使用されるようになり、感度および特異性が高まり、1試料中の多数のアミン含有化合物が速やかに測定できるようになったが、これらの方法も多重化への対応に欠ける。絶対的定量を行うために、同位元素に富む高価な化合物が内部標準として用いられているが、それらは幾つかのタンデム質量分析法には適していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本教示は1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して分析する方法を提供する。種々の局面において、本教示は1試料中の1種類以上のアミン含有化合物の相対濃度、絶対濃度、またはその両方を測定する方法を提供する。種々の実施形態において、本教示はある試料中の相対濃度、絶対濃度またはその両方を、または複数の試料中の1種類以上のアミン含有化合物、またはそれらの組合わせを多重方式で測定できる方法を提供する。
【0006】
本発明の教示の種々の実施形態に使用できるアミン含有化合物は、非常に多様なソース、例えば生理液試料、細胞または組織溶解物の試料、蛋白試料、細胞培養培地の試料、発酵ブロス培地の試料、農産物試料、動物製品の試料、動物飼料の試料、ヒト消費用の食物または飲料の試料、およびこれらの組合わせなどから生ずる。種々の実施形態において本発明の教示は多種多様の第一級アミン含有化合物、例えば非制限的にアミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝物、ポリアミン、ペプチド、蛋白、ポリペプチドおよびこれらの組合わせなどに適用できる。
【0007】
用語“同重体標識セット”、“同重体タグセット”は同意に用いられ、試薬または化学的部分のセットなど(その際上記セットのメンバー(すなわち個々の“同重体標識”または“同重体タグ”))は実質的に同じ質量を有するが、各メンバーは、イオンフラグメンテーション(例えば衝突による解離(CID)、光による解離(PID)など)を受けて異なる娘イオンシグナルを生ずる。上記セットのメンバー間を区別するために使用できる同重体タグまたは標識の娘イオンは、同重体タグまたは標識のリポータイオンであると言うことができる。種々の実施形態において、ある同重体タグセットは、フラグメンテーションがなければクロマトグラフィーでも質量分析によっても実質的には見分けられないが、CID後には強い低質量MS/MSサインイオンを生ずるアミン誘導体化アミン含有化合物を含む。
【0008】
用語“親−娘イオン遷移モニタリング”または“PDITM”は質量分析を用いる測定法であって、上記方法により、第一の質量セパレータの送達質量−対−電荷(m/z)領域(質量分析の第一次元と言われることがよくある)が、ある分子イオン(“親イオン”または“前駆体イオン”と言われることが多い)をイオンフラグメンタ(例えば衝突セル、光解離領域など)に送ってフラグメントイオン(“娘イオン”と言われることが多い)を生成するように選択され、第二質量セパレータの送達m/z領域(質量分析の第二次元と言われることがよくある)は、1つ以上の娘イオンを上記娘イオンのシグナルを測定するディテクタに送るように選択される。モニターされる親イオンおよび娘イオンの質量の組合わせを、モニターされる“親−娘イオン遷移”と言うことができる。モニターされる所与の親イオン−娘イオンの組合わせに対するディテクタにおける娘イオンシグナルを、“親−娘イオン遷移シグナル”と言うことができる。本発明の教示の種々の実施形態において、親イオンはある同重体タグで標識したアミン含有化合物であり、娘イオンは上記同重体タグのリポータイオンである。よって所与の同重体標識アミン含有化合物の親イオンについてディテクタで測定されるリポータイオンのイオンシグナルは“アミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナル”と言うことができる。同様に、所与の同重体標識標準化合物についてディテクタで測定されるリポータイオンのイオンシグナルは“標準化合物−リポータイオン遷移シグナル”と言うことができる。
【0009】
例えば、親−娘イオン遷移モニタリングの一実施形態は多重反応モニタリング(MRM)である(選択的反応モニタリングとも言われる)。MRMの種々の実施形態において、所与の親−娘イオン遷移のモニタリングは、第一質量セパレータ(対象となる親イオンm/z上にある第一四極子)を用いて対象の親イオンを送り、第二質量セパレータ(例えば娘イオンm/z領域上の第二四極子)を用いて対象とする1つ以上の娘イオンを送ることを含む。種々の実施形態において、PDITMは、第一質量セパレータ(例えば対象の親イオンm/z上にある四極子)を用いて親イオンを送り、対象とする1つ以上の娘イオンのm/z値を含むm/z領域にわたって第二質量セパレータを走査するという仕方で行われる。
【0010】
例えば、タンデム質量分析計(MS/MS)機器またはより一般的には、多次元質量分析計(MSn)機器を用いてPDITM、例えばMRMを実施することができる。適切な質量分析計の例は、非制限的に、トリプル四重極、四重極リニア型イオントラップ、四重極TOF、およびTOF−TOFの1つ以上を含んでなるものを含む。
【0011】
種々の局面において、本教示は、同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を利用して1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析するための方法を提供する。種々の実施形態において、ある方法は(a)1種類以上のアミン含有化合物を各々異なる同重体タグで標識し、同重体タグセット由来の各同重体タグはリポータイオン部分を含み;(b)上記同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(d)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;および(e)少なくとも対応するリポータイオンの測定イオンシグナルを標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルに比較することによって、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む。よって、種々の実施形態において、複数のアミン含有化合物の濃度の決定は、多重方式により、例えば2種類以上の同重体標識アミン含有化合物を組合わせて組合わせ試料を作り、上記組合わせ試料をPDITMにかけ、その際2種類以上の同重体標識アミン含有化合物のリポータイオンをモニターするというやり方で実現できる。
【0012】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)標準化合物を用意し;(b)同重体タグセット由来の同重体タグで上記標準化合物を標識し;(c)1種類以上のアミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる各同重体タグで標識し;(d)同重体標識した標準化合物の少なくとも一部を同重体標識した各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて組合わせ試料を作り;(e)上記組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(f)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(g)上記送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(h)少なくとも、上記対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと上記同重体標識標準化合物に対応するリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較に基づいて、1種類以上の対象アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0013】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)1種類以上のアミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる各同重体タグで標識し;(b)同重体標識アミンを含有する各化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)上記組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(e)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;および(f)少なくとも、上記対応リポータイオンの測定されたイオンシグナルを標準化合物の濃度曲線に比較することに基づいて、上記1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0014】
種々の局面において、1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、(a)1種類以上の各アミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識し;(b)各同重体標識アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り;(c)マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて上記組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(d)送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(e)少なくとも、上記対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと標準化合物の測定イオンシグナルとの比較に基づいて、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する諸工程を含む方法が提供される。
【0015】
種々の実施形態において、標準化合物の濃度曲線は、(a)第一の濃度を有する標準化合物を用意し;(b)上記標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識し;(c)上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し;(d)上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ;(e)送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定し;(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について工程(a)−(e)を繰り返し;および(g)標準化合物の2つ以上の濃度における上記送られたリポータイオンの測定イオンシグナルに少なくとも基づいて上記標準化合物の濃度曲線を作成するという方法で作成される。
【0016】
種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を測定する工程は、1種類以上の上記同重体標識アミン含有化合物の絶対濃度を測定することを含む。
【0017】
例えば、同位体を添加した(enriched)アミノ酸を、アミノ酸濃度の絶対的定量のための内部標準として使用できるとはいえ、アミノ酸の安定な同位体類似体をMALDI質量分析に使用する際の欠点の一つは、マトリックス関連シグナルが上記アミノ酸の、対象となるm/z領域に干渉する場合があるということである。例えばm/z=約147のシアノ−4−ヒドロキシ−桂皮酸(CHCA)関連シグナルがリシンおよびその安定同位体類似体と干渉し、同様にm/z=約175のジヒドロキシ安息香酸(DHB)関連シグナルがアルギニンおよびその安定同位体類似体と干渉することがある。種々の実施形態において、本教示は、マトリックス関連シグナルと、内部標準または対象のアミン含有化合物由来のシグナルとの干渉を容易に減少させる同重体タグおよびPDITMを使用する方法を提供する。
【0018】
種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物は、リシン、リシン異性体および翻訳後修飾されたリシンの1つ以上を含み、上記マトリックスはシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む。種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物はアルギニン、アルギニンの異性体、翻訳後修飾されたアルギニンおよびこれらの組合わせのうちの1つ以上を含み、上記マトリックスはヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む。
【0019】
種々の局面において、1つ以上の試料中に対象のアミン含有化合物が存在することを確認するために設計されたアッセイが提供される。上記アッセイは薬剤発見のための種々の生化学的経路の発見に役立つ例えばバイオマーカー確認アッセイまたは診断用アッセイである。上記アッセイによって例えば疾患または症状の診断、または疾患または症状の予知、またはその両方を行うことができる。
【0020】
種々の局面において本教示は、本教示の方法の機能がコンピュータ−リーダブル媒体、例えば非制限的にフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光学的ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROMまたはDVD−ROMなどにコンピュータ−リーダブル・インストラクションとして組み込まれた製品を提供する。
【0021】
上記教示の上記局面、並びにその他の局面、実施形態、および特徴は、添付の図面と組合わせた以下の説明によってより完全に理解できる。図面において同じ参照文字は種々の図を通して一般的に同じ特徴および構造要素を指す。図面は必ずしも一定尺度で書かれてはおらず、教示の原理を説明するために強調されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
種々の実施形態の説明
種々の局面において、本教示は同重体標識および親−娘イオン遷移モニタリング(PDITM)を使用して1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法を提供する。種々の実施形態において、本教示は1種類以上のアミン含有化合物の濃度を測定する方法を提供する。例えば図1により、種々の実施形態において、一方法は、1種類以上の各アミン含有化合物を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識し、その際同重体タグセット由来の各同重体タグはリポータイオン部分を含み(工程110);同重体標識した各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて組合わせ試料を作り(工程120);上記組合わせ試料の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ(その際送られる親イオンm/z範囲は同重体標識されたアミン含有化合物のm/z値を包含し、送られる娘イオンm/z範囲は上記同重体標識アミン含有化合物の同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を包含する);1つ以上の送られるリポータイオンのイオンシグナルを測定し(工程130);その後、対応するリポータイオンの測定イオンシグナルを標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルに比較することに基づいて1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定する(工程140)諸工程を含んでなる。上記イオンシグナルは、例えばイオンピークの強度(平均、中間値、最大値など)、イオンピークの面積、またはそれらの組合わせに基づくことができる。
【0023】
種々の実施形態において、PDITMは第一質量セパレータ、およびイオンフラグメンタおよび第二質量セパレータを含む質量分析装置で行うことができる。PDITM走査における送られた親イオンのm/z範囲(第一質量セパレータによって選択される)は1種類以上の同重体標識アミン含有化合物のm/z値を含むように選択され、PDITM走査における送られた娘イオンのm/z範囲(第二質量セパレータによって選択される)は送られるアミン含有化合物に対応する1つ以上のリポータイオンのm/z値を含むように選択される。
【0024】
種々の実施形態において、1つ以上のアミン含有試料を、同重体タグセットから選択される1種類以上の同重体タグで標識する。その結果例えば実験的測定中に、例えば(i)異なる試料(例えば対照、処理試料)からの複数のアミン含有化合物を比較でき;(ii)同じ試料からの同一アミン含有化合物の複数濃度の測定値を確認でき;(iii)癌組織の種々の分離物を正常組織に比較して評価することができ;(iv)抗生物質で汚染された食物または飲料を非汚染食物または飲料に対して評価することができ;(v)食物または飲料の異なる試料間の味の傾向を比較することができ;(vi)発酵の進行をモニターできる。
【0025】
再び図1を参照し、種々の実施形態において、組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、上記組合わせ試料を直接質量アナライザー装置に導入することを含む(作業経路121および工程130);例えば適切な溶液中の上記組合わせ試料をエレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源を用いて導く;上記組合わせ試料を適切なマトリックスと混合し、適切なマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源を用いて上記試料を導くなどの方法による。
【0026】
再び図1を参照し、種々の実施形態において、上記組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、上記組合わせ試料の上記部分をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはそれらの組合わせ)に供給し(作業経路122および工程125)、上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定することを含む(作業経路123および工程130)。
【0027】
種々の実施形態において上記組合わせ試料を、リポータイオンシグナルの測定に使用する前に清浄にする(例えば妨害試料、緩衝人工物などを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって除去する)。
【0028】
種々の実施形態において、アミン含有化合物の濃度は、対応するアミン含有化合物−リポータイオン遷移の測定イオンシグナル(アミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナル)を下記の1つ以上に比較することによって測定される。
【0029】
(i)標準化合物−リポータイオン遷移の濃度曲線;および
(ii)上記アミン含有化合物を含む組合わせ試料中の標準化合物の、標準化合物−リポータイオン遷移シグナル。
【0030】
再び図1により、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を測定する工程に使用される標準化合物の1つ以上の測定イオンシグナルは(工程140)、多くの方法で提供できる。種々の実施形態において、1種類以上の標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識し、1種類以上の同重体標識標準化合物の少なくとも一部を、同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて組合わせ試料を作る(工程150)。その後この組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定する(工程130)。
【0031】
上記組合わせ試料中の1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルをその後使用して、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度を決定することができる。よって種々の実施形態において、同重体標識アミン含有化合物の濃度の測定は、対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、上記組合わせ試料中の1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づく(工程140)。この組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、例えば質量アナライザー装置への直接導入(作業経路152および工程130);最初にこの組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し(作業経路153および工程125)その後上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定すること(作業経路123および工程130);またはこれらの組合わせを含む。
【0032】
種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物の濃度の決定は(工程140)、対応するリポータイオンの測定シグナルと1種類以上の標準化合物の1本以上の濃度曲線に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較に少なくとも基づく。種々の実施形態において、第一の濃度を有し(工程160)、同重体タグセット由来の同重体タグで標識された標準化合物(工程170)が提供される。上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ(その際送られた親イオンのm/z範囲は上記同重体標識標準化合物のm/z値を含み、送られた娘イオンのm/z範囲は上記同重体標識標準化合物の上記同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含む)、上記リポータイオンの上記イオンシグナルが測定される(工程180)。標識化工程(工程170)並びにPDITMおよび送られたリポータイオンのイオンシグナル測定の工程(工程180)が、第一の濃度とは異なる少なくとも1つ以上の標準化合物濃度で繰り返され、上記標準化合物の濃度曲線が作成される(工程190)。
【0033】
上記同重体標識標準化合物の少なくとも一部をPDITMにかける工程は、例えば質量アナライザー装置への直接導入(作業経路171および工程180)(例えばESIイオン源を使用して適切な溶液中の上記組合わせ試料を導き、上記組合わせ試料を適切なマトリックスと混合し、適切なMALDIイオン源を用いて上記試料を導く);または最初にこの組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給し(作業経路172および工程175)、その後このクロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をPDITMにかけ、送られた1つ以上のリポータイオンのイオンシグナルを測定すること(作業経路173および工程180);またはこれらの組合わせを含む。
【0034】
種々の実施形態において、標準化合物のPDITMは、第一質量セパレータ、およびイオンフラグメンタおよび第二質量セパレータを含んでなる質量アナライザー装置で行うことができる。PDITM走査における送られた親イオンのm/z範囲(第一質量セパレータによって選択される)は、1種類以上の同重体標識標準化合物のm/z値を含むように選択され、PDITM走査における送られた娘イオンのm/z範囲(第二質量セパレータによって選択される)は、送られた標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンのm/z値を含むように選択される。
【0035】
種々の実施形態において、濃度曲線の作成には標準化合物の少なくとも一部に含まれる1種類以上の内部標準を使用し、例えば注入溶量の差などを考慮した濃度測定を容易にすることができる。
【0036】
種々の実施形態において、濃度曲線は、PDITMを使用して対応する標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定し、ゼロ濃度がゼロリポータイオンシグナルに対応するように、測定濃度の直線外挿法によって濃度曲線を作成するという方法で作ることができる。種々の実施形態において、濃度曲線はPDITMを使用して、2つ以上の既知濃度で対応する標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定し、測定したリポータイオンシグナルに或る関数をフィットさせることによって濃度曲線を作成するという方法で作られる。フィットする適切な関数は例えばディテクタの反応などに左右されることがある(例えばディテクタサチュレーション、非直線性など)。種々の実施形態において、フィッティング関数は直線関数である。
【0037】
種々の実施形態において、同重体で標識した1種類以上のアミン含有化合物の濃度の測定は(工程140)、(i)対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、1種類以上の標準化合物の1本以上の濃度曲線に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較、および(ii)上記対応するリポータイオンの測定イオンシグナルと、同重体標識アミン含有化合物と組合わせた1種類以上の同重体標識標準化合物に対応する1つ以上のリポータイオンの測定イオンシグナルとの比較の両方に少なくとも基づく。種々の実施形態において、第一の濃度を有する標準化合物を作り(工程160)、1種類以上のアミン含有化合物(例えば工程120の)を標識するために使用される同重体タグセット由来の同重体タグで標識する(工程170)。同重体標識標準化合物の一部を同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と一緒にし、組合わせ試料を作る(作業経路176および工程150)。この組合わせ試料をその後本明細書に記載のようにさらに分析する。種々の実施形態において、組合わせ試料を作るために使用される同じ同重体標識標準化合物の一部は本明細書に記載のように濃度曲線の作成にも用いられる。
【0038】
リポータイオンシグナルを測定するために使用した上記同じ標準化合物部分、または別の部分を用いて質量アナライザーの親−娘イオン遷移モニタリング条件を決めることができる。例えば質量アナライザー装置が液体クロマトグラフィー(LC)コンポーネントを含む場合、その標準化合物を用いてクロマトグラフィー保持時間を決めることができる。種々の実施形態において、上記標準化合物を用いて、あるアミン含有化合物のイオン源におけるイオン化効率およびイオンフラグメンタにおけるフラグメンテーション効率を種々の条件下で決定できる。
【0039】
アミン含有化合物
本教示の方法は、非制限的に、アミノ酸、カテコールアミン、ニトロフラン代謝産物、ポリアミン、ペプチド、蛋白、ポリペプチドおよびこれらの組合わせを含む広範囲の第一級および第二級アミン含有化合物に適用できる。
【0040】
種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はアミノ酸を含む。アミノ酸の例としては非制限的に、ロイシン、プロリン、アラニン、バリン、グリシン、セリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、イソロイシン、スレオニン、システイン、チロシン、ヒスチジン、リシン、アルギニン、およびこれらの異性体、およびこれらの翻訳後修飾アミノ酸などがある。
【0041】
種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は1種類以上のカテコールアミンを含む。カテコールアミンの例には、非制限的に、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミンおよびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物にはポリアミンが含まれる。ポリアミンの例には非制限的にスペルミン、N−アセチルスペルミン、スペルミジン、N−アセチルスペルミジン、プトレッシン(1,4−ジアミノブタン)、2−ヒドロキシプトレッシン、カダベリン(1,5−ジアミノペンタン)、1,6−ジアミネオヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,10−ジアミノドデカン、およびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は蛋白またはポリペプチドを含む。蛋白およびポリペプチドの例には、非制限的に、チトクロームP450アイソフォーム、アンジオテンシン、およびベータラクトグロブリンのような、ホエーおよびミルクの蛋白がある。チトクロームP450アイソフォームの例は非制限的にCyp1a2、Cyp1b1、Cyp2a4、Cyp2a12、Cyp2b10、Cyp2c29、Cyp2c37、Cyp2c39、Cyp2c40、Cyp2d9、Cyp2d22、Cyp2d26、Cyp2j5、Cyp2e1、Cyp3a11、Cyp4a10、Cyp4a14、およびこれらの組合わせを含む。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はニトロフラン代謝産物を含む。ニトロフラン代謝産物の例としては非制限的に、3−アミノ−2−オキサゾリジノン(AOZ)、5−モルホリノメチル−3−アミノ−オキサゾリジノン(AMOZ)、セミカルバジド(SEM)、1−アミノヒダントイン(AHD)、およびこれらの組合わせがある。
【0042】
【化1】
本教示の種々の実施形態に使用できるアミン含有化合物は非常に種々様々のソースに由来し、例えば生理液試料、細胞または組織溶解物試料、合成ペプチド試料、ポリペプチド試料、蛋白試料、細胞培養試料、発酵ブロス培地試料、農業産物試料、動物産物試料、動物飼料試料、ヒトが消費するための食物または飲料試料、およびこれらの組合わせなどがある。これらの試料は異なるソース、条件またはその両方から生ずる。例えば対照対実験、異なる時点(例えば連続する)由来の試料、疾患対正常、実験対疾患、汚染対非汚染などである。生理液の例は非制限的に、血液、血清、血漿、汗、涙、尿、腹膜液、リンパ、膣分泌液、精子、髄液、腹水、唾液、痰、乳房滲出液およびこれらの組合わせなどである。ヒトが消費するための食物または飲料の例としては、非制限的に、ワイン、蜂蜜、醤油、鶏肉、ポーク、ビーフ、魚、貝およびこれらの組合わせがある。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物はアミノ酸であり、上記アミノ酸のソースは、例えば加水分解され、消化されて上記アミノ酸を生ずる蛋白などである。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物は合成ペプチドである。
【0043】
標準化合物
種々の化合物が標準化合物として使用できる。種々の実施形態において、標準化合物は対象のアミン含有化合物の1つを含む。種々の実施形態において、上記標準化合物は1つ以上の対照試料、濃度既知の試料またはこれらの組合わせである。種々の実施形態において、分析において対象となる各アミン含有化合物に対して1つの標準化合物が用意される。
【0044】
種々の実施形態において、標準化合物の濃度曲線をPDITMを用いて作成し、2つ以上の既知濃度において、上記標準化合物と関連するリポータイオンのイオンシグナルを測定できる。
【0045】
同重体タグ
種々の実施形態において、同重体タグは一般式(I)によってあらわされる:
R−L−ARG (I)
上記式中、Rは、切断可能のリンカー基(L)によってアミン反応基(ARG)に共有結合しているリポータ基(R)であり、上記リンカー基は、R+Lの質量が同重体タグセットの各同重体タグで実質的に同じになるような質量を有するバランス基を含む。例えば種々の実施形態において、リンカー基Lは一般式(II)によってあらわされる:
X−B−Y (II)
上記式中Xはバランス基とリポータ基との間の結合をあらわし、ここで結合Xは標識被験体が中性ガスと衝突すると破壊され(例えば衝突によって誘起される解離)、Yは、バランス基と被験体との結合をあらわす。その際被験体の反応基は被験体と反応して被験体を標識している。Bは上記バランス基をあらわす。被験体は、被験体と式(I)の試薬、その塩および/またはその水加物との反応によって標識される。
【0046】
アミン反応基
アミン反応基の例には、非制限的に、アミン官能基と選択的に反応してアミン含有化合物の特異的部位と共有または非共有結合を形成する基が含まれる。アミン反応基は先在していてもよいし、現場で作ることもできる。アミン反応基の現場での生成は上記被験体が存在しない条件下で進めることができるし、または被験体の存在下でも進められる。例えばカルボン酸基は現場で水溶性カルボジイミド(例えば1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸;EDC)で修飾され、それによってアルキルまたはアリールアミン基のような求核基と反応できる求電子基を形成することができる。種々の実施形態において、EDCによる標識試薬のカルボン酸基の活性化はアミン(求核性)含有被験体の存在下で行うことができる。種々の実施形態において、アミン(求核性)含有被験体はEDCと最初に反応した後でも加えることができる。種々の実施形態において、上記反応基は、保護基の現場除去によって現場で生成できる。したがって求核および/または求電子試薬の反応によって被験体を誘導体化できるあらゆる既存のまたは新たに作られる試薬または試薬が考慮される。
【0047】
種々の実施形態において、適切なアミン反応基は活性エステルを含む。活性エステルはペプチド合成では公知であり、ペプチド合成に普通に用いられる条件下でアミノ酸のN−αアミンと容易に反応する幾つかのエステルが参照される。アミン反応性活性エステルは、例えばN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロフェニルエステル(Pfp)、2−ニトロフェニルエステル、4−ニトロフェニルエステル、2,4−ジニトロフェニルエステルまたは2,4−ジハロフェニルエステルである。種々の実施形態において、アミン反応基は混合無水物でよい。なぜならば混合無水物はアミン基と効率的に反応し、それによってアミド結合を生ずるからである。
【0048】
リポータ基
本教示の種々の実施形態に用いられる同重体タグのリポータ基は測定できる特異的質量(または質量対電荷比)を有する基である。例えばあるセットの各リポータは特異的な総質量を有することができる。種々のリポータは1つ以上の重原子同位体を含み、それらの特徴的質量を獲得できる。例えば炭素の同位体(12C、13Cおよび14C)、窒素の同位体(14Nおよび15N)、酸素の同位体(16Oおよび18O)または水素の同位体(水素、重水素および三重水素)が存在し、これらを使用してリポータ部分の大グループを作ることができる。安定な重原子同位体の例としては非制限的に13C、15N、18Oおよび重水素がある。
【0049】
特異的リポータは対象の試料と結合することができ、それによってその試料中の1つまたは複数の被験体がそのリポータで標識され得る。この方法で、例えばそのリポータに関する情報を上記試料中の被験体の1つまたはすべてに関する情報と関連づけることができる。ただし上記リポータを確認する際に上記リポータが被験体に物理的に結合している必要はない。むしろ、上記標識化被験体のイオンが破壊され、それによって娘フラグメントイオンと検出可能のリポータが生成した後に、上記リポータの特異的総質量が例えばタンデム質量アナライザーの第二質量分析において測定できる。測定されたリポータを利用して、確認された被験体のソースである試料を同定できる。さらに、上記特異的リポータの、その他のリポータの量に比較した量、または較正標準(例えば特異的リポータで標識された被験体)に比較した量を用いて、上記試料中または複数の試料中の被験体の相対的または絶対的量(濃度または量としてあらわされることが多い)を確認することができる。そこで、例えば特定試料中の1種類以上の被験体の量などの情報を、各特定試料の標識化に用いられるリポータ部分と関連づけることができる。被験体または被験体のアイデンティティも決定する場合には、その情報を異なるリポータにかかわる情報と関連づけ、それによって1つまたは複数の試料中の各標識化被験体のアイデンティティおよび量の決定を容易にすることができる。
【0050】
上記リポータは固定電荷を含むことができ、またはイオン化されることもある。リポータは固定電荷を含むことができ、またはイオン化し得るから、上記標識試薬は単離され、または塩(または塩混合物)または両性イオンの形で用いられ、上記反応性被験体を標識化できる。上記リポータのイオン化は質量分析計におけるその決定を容易にする。よって、上記リポータは1つのイオンとして測定することができ、サインイオンと呼ばれることもある。イオン化されると上記リポータは1つ以上の正味正電荷または負電荷を含む。よって上記リポータは1つ以上の酸性基または塩基性基を含むことができる。なぜならばこのような基は質量分析計中で容易にイオン化されるからである。例えば上記リポータは1つ以上の塩基性窒素原子(正電荷)または1つ以上のイオン化可能酸性基、例えばカルボン酸基、スルホン酸基またはリン酸基(負電荷)を含むことができる。塩基性窒素を含むリポータの非制限的例には、置換または未置換のモルホリン、ピペリジンまたはピペラジンが含まれる。
【0051】
上記リポータは、置換または未置換酢酸部分によってN−アルキル化されている環窒素原子を含む5、6、または7員複素環でよく、被験体はN−アルキル酢酸のカルボニル炭素を介して(上記複素環に)結合する。その際異なる各標識は1つ以上の重炭素同位体を含む。上記複素環は置換されていても未置換でもよい。上記複素環は脂肪族でも芳香族でもよい。複素環部分の可能な置換基としてはアルキル、アルコキシおよびアリール基がある。これらの置換基は被験体を支持体に適切に結合させる保護された基または保護されていない基、例えばアミン、ヒドロキシルまたはチオール基などを含むことができる。上記複素環は1つ以上の窒素、酸素または硫黄原子のような追加的ヘテロ原子を含むことができる。
【0052】
上記リポータは、被験体の分析に際して一般的な条件下で実質的にサブフラグメントにならないように選択される。リポータは、質量分析計において標識被験体の選択されたイオンの少なくとも一部の結合XおよびY両方のフラグメンテーションを生起するために適用される解離的エネルギーの条件下で実質的にサブフラグメントにならないように選ぶことができる。“実質的にサブフラグメントにならない”とは、対象の被験体を上首尾に分析する際には、リポータのフラグメントがバックグラウンドノイズより上に検出されにくいか、または検出不可能であることを意味する。リポータの総質量は、測定すべき被験体の質量または被験体の予想されるあらゆるフラグメントの質量とは異なるように意図的に選択できる。例えば蛋白またはペプチドが被験体である場合、リポータの総質量は天然に発生するアミノ酸またはペプチド、またはそれらの予想されるフラグメントと比較して異なるように選択できる。これは被験体の確認を容易にする。なぜならばその被験体によって、試料中に同じ一致した質量を有する成分がなければ、任意の被験体の結果の信頼性が高まるからである。
【0053】
リンカー基
本教示の種々の実施形態で使用する標識試薬または試薬のリンカーは、被験体との反応が起きているかいないかに応じて、上記リポータを被験体に連結するかまたはリポータを被験体反応基(ARG)に連結する。上記リンカーは、XおよびYの両結合が分解するときに(例えばXおよびY両結合の分解でニュートラルロスを受けるとき)中性種を生ずるように選択できる。上記リンカーはカルボニルまたはチオカルボニル基のような非常に小さい部分でよい。上記リンカーはより大きい部分でもよい。リンカーはポリマーまたはビオポリマーでもよい。リンカーは解離性エネルギーレベルにさらされるとサブフラグメントとなる(そのリンカーの中性フラグメントだけを生ずるようなサブフラグメンテーションを含む)ように設計することができる。
【0054】
上記リンカー基は、その質量が、混合物の各標識被験体のための、またはセットの同重体試薬のためのリポータ間の総質量の差を補正できるように、1つ以上の重原子同位体を含むことができる。さらに、リポータ/リンカー組合わせの集合総質量(すなわち全体として把握される総質量)は混合物の各標識被験体、またはセットおよび/またはキットの試薬で実質的に同じである。リンカーは、リポータ/リンカー組合わせの集合総質量がセットまたはキットの全ての試薬で同じになるように、標識試薬のリポータのための質量バランスとして作用することができるから、リンカー基はバランス基(B)を含むと考えられる。リンカーのバランス基(B)中の原子数が大きいほど、セットおよび/またはキット中の可能性のある種々の異性体/同重体標識試薬の数は大きくなる。
【0055】
結合XおよびY
Xはリポータの原子とリンカーの原子との間の結合である。Yはリンカーの原子と、アミン反応基の原子、或いは標識試薬が被験体と反応している場合はその被験体の原子との間の結合である。結合Xは、上記標識被験体(例えばR−X−B−Y−被験体)の選択されるイオンの少なくとも一部において、十分な解離エネルギーレベルにさらされた際に結合Xが分解するように選択される。種々の実施形態において、結合Yも、標識被験体(例えばR−X−B−Y−被験体)の選択されたイオンの少なくとも一部において、十分な解離エネルギーレベルにさらされた際には結合Yが切れるように選択される。質量分析系において解離エネルギーレベルは、標識被験体の選択されたイオンの少なくとも一部において結合X、結合Y、または結合XおよびYの両方が分解するように調節できる。結合Xの分解は被験体からリポータを放出し、そのリポータは上記被験体とは無関係に測定できる。結合Yの分解は、結合Xがすでに分解しているか否かによって、被験体からリポータ/リンカー組合わせを放出するか、または被験体からリンカーを放出する。種々の実施形態において、結合Yは結合Xより不安定であることがあり、結合Xは結合Yより不安的であることがあり、或いは結合XとYとは実質的に同じ相対的不安定さを有することがある。
【0056】
例えば対象の被験体が蛋白またはペプチドである場合、結合Xおよび結合Yの相対的不安定さをアミド(ペプチド)結合に関して調節することができる。結合X、結合Y、または結合XおよびYの両方は典型的アミド(ペプチド)結合と比較してより不安定であるか、同じように不安定であるか、またはより安定である。例えば解離エネルギーの諸条件下では、結合Xおよび/または結合YはZ−proダイマーまたはZ−aspダイマーのペプチド結合と比較して破壊(フラグメンテーション)を受けにくい。ここでZは任意の天然アミノ酸であり、proはプロリン、aspはアスパラギン酸である。種々の実施形態において、結合XおよびYは典型的アミド結合の場合とほぼ同じ解離エネルギーレベルで分解する。
【0057】
結合XおよびYは、結合Yの分解が結合Xの分解を起こすように存在することもでき、その逆も可能である。種々の実施形態において、XおよびYの両結合が実質的に同時に分解し、第二の質量分析において被験体またはその娘フラグメントイオンの実質的量が部分的標識を含まないこともあり得る。“被験体の実質的量”とは、約25%未満、より好ましくは約10%未満の部分的標識被験体がMS/MSスペクトルで検出できることを意味する。
【0058】
図2Aにより、同重体タグ200の模式図を説明する。各タグは、各タグの名目質量が実質的に等しくなるように、リポータ基212、アミン反応基214およびバランス基218(リポータ基間の質量の差をバランスさせる)からなる。
【0059】
種々の実施形態において同重体タグのセットは、フラグメンテーションが起きない場合はクロマトグラフィーによっても、質量分析によっても実質的に識別できないが、CID後には強い低質量MS/MSサインイオンを生ずるアミン誘導体化アミン含有化合物を含む。
【0060】
種々の実施形態において、同重体タグのセットは一般式(IIIa)−(IIId)によってそれぞれあらわされるタグQ114、Q115、Q116およびQ117を含む。
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
本教示の種々の実施形態に適切に使用できるリポータ基、リンカー基、バランス基、アミン反応基、同重体タグおよび同重体タグセットのその他の例はU.S.Publications Nos.2004/0219686;2004/0220412;20050147982;2005/0147985;2005/0148087;2005/0148771;2005/0148773;2005/0148774;および2005/0208550に見いだされる。これらの全ての内容はそのまま参考として本明細書に組み込まれる。
【0063】
組合わせ試料
1種類以上の同重体標識標準化合物、1種類以上の同重体標識アミン含有化合物、またはそれらの組合わせの、任意の適切な組合わせが本教示の方法に使用できる。例えば、一般に、組合わせ試料中の異なる同重体標識化合物の数、N、は、同重体タグセットの同重体タグの数、T、より小さいか等しい。任意のある組合わせ試料において、同重体標識標準化合物と1種類以上の同重体標識アミン含有化合物との組合わせの可能性は次のようにあらわされる。
【0064】
(S+C)≦T (1)
上記式中、Tは同重体タグセット中の同重体タグの数であり;Sは異なる同重体タグをつけた同重体標識標準化合物の数で、0からTまでの範囲であり;Cは異なる同重体標識ををつけた同重体標識アミン含有化合物の数で、0からTまでの範囲である。
【0065】
例えば、種々の実施形態において、1種類以上の同重体標識標準化合物(例えば対照試料、濃度既知の試料など)を、対象とする1種類以上の同重体標識アミン含有試験化合物と組合わせ、その際1種類以上の同重体標識標準化合物は例えば内部濃度標準として役立つ1つ以上のリポータイオンシグナルを提供する。種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の添加は上記組合わせ試料中の対象とする1種類以上のアミン含有化合物のための内部標準として役立つ。種々の実施形態において、異なる同重体標識標準化合物が組合わせ試料中の対象となる各異なるアミン含有化合物に対して加えられ(例えばS=C)、各異なる同重体標識標準化合物は例えば対象となる異なるアミン含有化合物の内部標準として役立つ。
【0066】
種々の実施形態においては、上記組合わせ試料中の分析すべき2種類以上のアミン含有化合物が、対象の同一アミン含有化合物を含む。例えばアミン含有化合物#1ないし#X(ここでX>1)は例えば異なる試料由来の対象とする同一アミン含有化合物を含むことがあるが、異なる試料由来の上記アミン含有化合物に対しては異なる同重体標識が使用される。例えば同一系(例えば患者、部位など)の異なる時点から異なる試料が得られ、これらの試料を用いて例えば同じプロセス、例えば疾患、発酵のような幾つかのプロセスの進行などをモニターすることができる。
【0067】
種々の実施形態において、ある試料は、同一アミン含有化合物に対して使用される異なる同重体タグで処理される。例えば試料は三重に処理され、3部分の各々に対して異なる同重体タグが使用される。これら3部分はその後一緒にされ、少なくとも一部は組合わせ試料を提供し(これは1種類以上の標準化合物を含むこともある)、例えば上記組合わせ試料の1回の実験分析において上記アミン含有化合物の3つの濃度測定値を提供する。統計的に有意なおよび/または正確な結果を得るためには、三重、またはより一般的には多重測定値が必要であることが多い。例えば、伝統的方法を用いるアミノ酸分析結果は同じ試料の3回の分析に基づくのが一般的である。これは伝統的方法ではrun−to−run(行程間)変動およびバックグラウンドの干渉を受けるのが普通だからである。本教示の種々の実施形態において、単一実験行程でアミン含有化合物濃度の複数の測定値が提供できるため、このようなrun−to−run変動による不正確さを減らすことができる。
【0068】
種々の実施形態において、同重体で標識した標準化合物は上記組合わせ試料には加えられない、そして種々の実施形態において、対象の1種類以上のアミン含有化合物の濃度は、アミン含有化合物の対応するリポータイオンシグナルを標準化合物の濃度曲線に比較することに少なくとも基づいて決定される。
【0069】
種々の実施形態において、組合わせ試料を、リポータイオンシグナルの測定に使用する前に清浄にする(例えば妨害試料、緩衝人工物などを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって除去する)。
【0070】
質量アナライザー
本教示においてはPDITMを行うために種々様々の質量アナライザー装置が用いられる。適切な質量アナライザー装置は2つの質量セパレータと、2つのセパレータ間の飛行経路に配置されたイオンフラグメンタとを含む。適切な質量セパレータの例としては非制限的に、四極子、RF多重極子、イオントラップ、飛行時間型(TOF)、およびタイムド・イオン・セレクタとTOFとの組合わせなどがある。適切なイオンフラグメンタとして非制限的に、衝突誘起性(collosion insuced)解離(CID、衝突による(collosionally assisted)解離(CAD)とも言う)、光誘起性解離(PID)、表面誘起性解離(SID)、ポストソース分解、またはこれらの組合わせがある。
【0071】
質量アナライザーのための適切な質量分析装置の例には、非制限的にトリプル四極子、四重極リニア型イオントラップ(例えば4000QTRAP(商標)LC/MS/MS装置、QTRAP(商標)LC/MS/MS装置)、四重極TOF(例えばQSTAR(商標)LC/MS/MS装置)およびTOF−TOFの1つ以上を含むものがある。
【0072】
質量分析装置の適切なイオン源としては、非制限的に、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、空気圧化学的イオン化(APCI)、および空気圧光イオン化(APPI)源などがある。例えばESIイオン源は、LCカラムから出るイオン化された試料を質量セパレータ装置に導くための手段として役立つ。ESIの幾つかの好ましい特徴の一つは、クロマトグラフィーカラムからのフラクションがカラムからESIイオン源に直接進むことである。
【0073】
種々の実施形態において、質量アナライザー装置はMALDIイオン源を含む。種々の実施形態において、組合わせ試料の少なくとも一部はMALDIマトリックス材料と混じり合い、MALDIイオン化源を有する質量アナライザーを用いて親−娘イオン遷移モニタリングにかけられる。種々の実施形態において、クロマトグラフィーカラムに供給された組合わせ試料の少なくとも一部およびMALDIマトリックス材料と混合した溶出液の少なくとも一部はMALDIイオン化源を有する質量アナライザーを用いる親−娘イオン遷移モニタリングにかけられる。MALDIマトリックス材料の例としては、非制限的に、表1に列挙されるものがある。
【0074】
【表1】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するトリプル四重極質量分析計を含む。種々の実施形態において、第一の四極子が親イオンを選択する。第二の四極子は十分高い圧力および電圧に維持され、多数の低エネルギー衝突が起き、親イオンの若干をフラグメントにする。第三の四極子は選択された娘イオンをディテクタに伝達するように選択される。種々の実施形態において、トリプル四重極質量分析計はイオン源と上記トリプル四極子との間に位置するイオントラップを含むことができる。上記イオントラップを調節し、イオン(例えば全てのイオン、特異的m/z範囲を有するイオンなど)を集め、フィルタイム後に末端電極にパルスをかけることによって、選択されたイオンが第一の四極子に移され、上記選択されたイオンがイオントラップを出られるようにする。所望のフィルタイムは、例えばイオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間の時間、デューティ−サイクル、励起状態種または多重電荷イオンの崩壊速度に基づいて決められる。
【0075】
種々の実施形態において、トリプル四重極質量分析計の1つ以上の四極子はリニア型イオントラップの形をとることができる(例えば末端電極を加え、四極子内に実質的に長い円筒状トラッピング容積を作り出すことによって)。種々の実施形態において、第一四極子は親イオンを選択する。第二四極子は十分高い衝突ガス圧および電圧に維持され、多数の低エネルギー衝突がおき、若干の親イオンをフラグメントにする。第三の四極子はフラグメントイオンを捕捉し、フィルタイム後、末端イオンにパルスをかけることによって選択された娘イオンをディテクタに移し、選択された上記娘イオンがイオントラップを出られるようにする。所望のフィルタイムは例えばフラグメントイオン数、イオントラップ内の電荷密度、異なる特徴的ペプチドの溶出間の時間、デューティサイクル、励起状態種または多重電荷イオンの崩壊速度、またはこれらの組合わせに基づいて決めることができる。
【0076】
種々の実施形態において上記質量分析計は、親イオンを選択し、そのフラグメント娘イオンを検出するための2つの四重極質量セパレータおよびTOF質量分析計を含む。種々の実施形態において、第一四極子は親イオンを選択する。第二四極子は十分高い圧および電圧に維持され、その結果多数の低エネルギー衝突が起こり、上記イオンの幾つかをフラグメントにする。上記TOF質量分析計は、例えば対象の娘イオンを包含する質量領域を送られたイオンおよび作成された抽出イオン・クロマトグラムをモニターすることによって;選択された娘イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記ディテクタを逸れるように偏向させることによって;上記ディテクタを選択された娘イオンの到着時窓にタイム・ゲーティングすることによって;またはこれらの組合わせによって、検出する娘イオンを選択する。
【0077】
種々の実施形態において、上記質量分析計装置は2つのTOF質量アナライザーおよび1つのイオンフラグメンタ(例えばCIDまたはSID)を含む。種々の実施形態において、第一のTOFはフラグメンタに導入するための親イオンを選択し(例えば選択された親イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記フラグメンタから偏向させることによって)、第二のTOF質量分析計は、例えば対象の娘イオンを包含する質量範囲を通過するイオンおよび作成された抽出イオン・クロマトグラムをモニターすることによって;選択された娘イオンの時間窓の外側にあらわれるイオンを上記検出器から偏向させることによって;選択された娘イオンの到着時間窓に上記検出器をタイム・ゲーティングすることによって;またはこれらの組合わせによって、検出する娘イオンを選択する。上記TOFアナライザーはリニア−または反射アナライザーでよい。
【0078】
種々の実施形態において、質量分析計装置は飛行時間型質量分析計およびイオンリフレクタを含む。イオンリフレクタはTOFのフィールド−フリー・ドリフト領域の末端に置かれ、イオンの飛行経路を変更することによって初期運動エネルギー分布の効果を補償するために用いられる。種々の実施形態において、イオンリフレクタは加速電圧よりわずかに大きいレベルに高まった電位でバイアスをかけられた一連のリングからなる。作動時には、上記イオンはリフレクタを通過するにつれて減速し、それらイオンの上記フィールド方向の速度はゼロになる。ゼロ速度時点でイオンは方向を逆にし、リフレクタを通って再び加速する。上記イオンはそれらが入ってきたときと同じエネルギーで、だが反対方向の速度でリフレクタを出る。より大きいエネルギーを有するイオンは上記リフレクタにより深く侵入し、その結果、上記リフレクタ内により長時間とどまる。上記リフレクタにおいて使用される電位を選択し、例えば同じ質量および電荷を有するイオンがほぼ同時にディテクタに到着するようにイオンの飛行経路が変更されるようにする。
【0079】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、対象の親イオンを選択するためのタイムド・イオン・セレクタを有する第一のフィールド−フリー・ドリフト領域と、娘イオンを生成するためのフラグメンテーション室(またはイオンフラグメンタ)と、選択された娘イオンを検出のために送る質量セパレータとを含んでなるタンデムMS−MS機器を含む。種々の実施形態において、タイムド・イオン・セレクタはパルスド・イオンデフレクタを含む。種々の実施形態において、イオンデフレクタをパルスド・イオンデフレクタとして使用できる。質量セパレータはイオンリフレクタを含むことができる。種々の実施形態において、フラグメンテーション室はイオンのフラグメンテーションを起こし、そして抽出を遅らせるように設計された衝突セルである。種々の実施形態において、フラグメンテーション室は飛行時間型質量分析計によるフラグメントイオンの分析のための遅延抽出イオン源としても役立つ。
【0080】
種々の実施形態において、質量分析計装置は、パルスド・イオン源によって発生する複数イオンの経路に沿って置かれた第一、第二および第三TOF質量セパレータを有するタンデムTOF−MSを含む。第一質量セパレータはパルスド・イオン源によって生ずる複数イオンを受け取るように配置される。第一質量セパレータはパルスド・イオン源によって生ずる複数イオンを加速し、上記複数イオンをそれらの質量対電荷比によって分離し、それらの質量対電荷比によって上記複数イオンから第一群のイオンを選択する。第一の質量セパレータは上記第一群のイオンの少なくとも一部の破壊も行う。第二の質量セパレータは第一群のイオンおよび第一質量セパレータによって生じたそれらのフラグメントを受け取るように配置される。第二質量セパレータは第一群のイオンとそれらのフラグメントとを加速し、第一群のイオンおよびそれらのフラグメントからそれらの質量対電荷比によって第二群イオンを選択する。第二の質量セパレータは第二群イオンの少なくとも一部の破壊も行う。第一および/または第二の質量セパレータはイオンガイド、イオンフォーカシング要素、および/またはイオンステアリング要素も含むことができる。種々の実施形態において、第二のTOF質量セパレータは第一群イオンおよびそれらのフラグメントを減速する。種々の実施形態において、第二のTOF質量セパレータはフィールド−フリー領域と、実質的に第二の予定範囲内にある質量対電荷比を有するイオンを選択するイオンセパレータとを含む。種々の実施形態において、第一および第二のTOF質量セパレータの少なくとも1つは、破壊されたイオンを選択するタイムド・イオン・セレクタを含む。種々の実施形態において、上記第一および第二質量セパレータの少なくとも1つはイオンフラグメンタを含む。第三質量セパレータは第二質量セパレータによって生ずる第二群イオンおよびそのフラグメントを受け取るように配置される。第三質量セパレータは第二群のイオンおよびそのフラグメントを加速し、第二群のイオンおよびそのフラグメントをそれらの質量対電荷比によって分離する。種々の実施形態において、第三質量セパレータは第二群のイオンおよびそれらのフラグメントをパルスド加速を利用して加速する。種々の実施形態において、イオンディテクタが第二群のイオンおよびそれらのフラグメントを受け取るように配置されている。種々の実施形態において、イオンリフレクタがフィールド−フリー領域に置かれ、第一または第二群のイオンおよびそれらのフラグメントのうちの少なくとも1つのエネルギーを、それらがイオンディテクタに達する前に修正する。
【0081】
種々の実施形態において、質量分析計装置は複数の飛行経路、同時に実施できる複数の作動モード、またはこれら両方を有するTOF質量分析計を含む。このTOF質量アナライザーは最初のイオン経路、第二のイオン経路、または第三のイオン経路のいずれかに沿って質量アナライザーに入る試料イオンのパケットから選択されるイオンを方向づける、経路選択性イオンデフレクタを含む。幾つかの実施形態において、より多くのイオン経路も用いられる。種々の実施形態において、第二イオンデフレクタが経路選択性イオンデフレクタとして使用できる。時間依存電圧を上記経路選択性イオンデフレクタにかけ、使用できるイオン経路のなかから選択し、予定の質量対電荷比範囲内の質量対電荷比を有するイオンを、選択されたイオン経路に沿って伝搬させることができる。
【0082】
例えば複数の飛行経路を有するTOF質量アナライザーを作動させる種々の実施形態において、第一の予定電圧を、第一の予定質量対電荷比範囲に対応するあらかじめ決めた第一の時間間隔で、経路選択性イオンデフレクタにかけ、それによって第一の質量対電荷比範囲内のイオンを第一イオン経路に沿って伝搬させる。種々の実施形態において、この第一の予定電圧はゼロで、最初の経路に沿ってイオンを伝搬し続ける。第二の予定電圧を、第二の予定質量対電荷比領域に対応するあらかじめ決めた第二の時間範囲で、経路選択性イオンデフレクタにかけ、それによって上記第二の質量対電荷比範囲内のイオンを第二のイオン経路に沿って伝搬させる。第三、第四などを含むその他の時間範囲および電圧を使用して特定の測定のために要求されるような多くのイオン経路を提供することができる。第一予定電圧の振幅および極性を選択してイオンを第一イオン経路に偏向させ、第二予定電圧の振幅および極性を選択してイオンを第二イオン経路に偏向させる。第一の時間間隔は第一の予定質量対電荷比範囲内のイオンが経路選択性イオンデフレクタを通って伝搬する時間に対応するように選択され、第二の時間間隔は、第二の予定質量対電荷比範囲内のイオンが上記経路選択性イオンデフレクタを通って伝搬する時間に対応するように選択される。第一のTOF質量セパレータは、第一イオン経路に沿って伝搬する第一質量対電荷比範囲内のイオンのパケットを受け取るように配置される。上記第一TOF質量セパレータは第一質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第一のTOF質量セパレータは第一の質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第一ディテクタは第一イオン経路に沿って伝搬する第一群イオンを受け取るように配置される。第二のTOF質量セパレータは第二イオン経路に沿って伝搬するイオンのパケットの部分を受け取るように配置される。上記第二TOF質量セパレータは第二質量対電荷比範囲内のイオンをそれらの質量によって分離する。第二のディテクタは上記第二イオン経路に沿って伝搬する第二群のイオンを受け取るように配置される。幾つかの実施形態において、第三、第四などを含む付加的質量セパレータおよびディテクタを、上記対応する経路に沿う方向のイオンを受け取るように配置してもよい。一実施形態において、第三の予定質量範囲内のイオンを排除する第三イオン経路が用いられる。上記第一および第二質量セパレータは任意の型の質量セパレータでよい。例えば第一および第二質量セパレータの少なくとも1つがフィールド−フリー・ドリフト領域、イオン加速器、イオンフラグメンタ、またはタイムド・イオン・セレクタを含むことができる。第一および第二質量セパレータは複数の質量分離デバイスを含むこともできる。種々の実施形態において、イオンリフレクタが含まれ、第一群のイオンを受け取るように配置され、それによって上記イオンリフレクタはTOF質量アナライザーの第一群イオンに対する分解能を高める。種々の実施形態において、イオンリフレクタが含まれ、第二群イオンを受け取るように配置され、それによって上記イオンリフレクタはTOF質量アナライザーの第二イオン群に対する分解能を高める。
【0083】
本教示のまた別の局面において、本明細書に記載される方法の機能を一般目的のコンピュータのコンピュータ−リーダブル−インストラクションにしたがって実装することができる。上記コンピュータは質量分析装置から分離していてもよいし、取り外し可能でもよく、または上記質量分析装置と一体化していてもよい。コンピュータ−リーダブル−インストラクションは多数の高水準言語のいずれによって書かれていてもよい。例えばFORTRAN、PASCAL、C、C++、またはBASICなど。さらにコンピュータ−リーダブル・インストラクションは市販のEXCELまたはVISUAL BASICのようなソフトウエアに埋め込まれたスクリプト、マクロ、または機能で書かれてもよい。さらに、コンピュータ−リーダブル−インストラクションは、コンピュータに装着されたマイクロプロセッサーに向けられたアセンブリ言語で実装することができる。例えばコンピュータ−リーダブル・インストラクションは、それがIBM PCまたはPCクローンで作動するような構造である場合には、Intel 80×86 アセンブリ言語で実装され得る。一実施形態において、コンピュータ−リーダブル−インストラクションは、非制限的に例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、オプティカルディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、CD−ROM、DVD−ROMのようなコンピュータ−リーダブル・プログラム媒体を含む製品に埋め込まれる。
【実施例】
【0084】
本教示の諸局面は下記の実施例を考慮することによってよりよく理解できる。これらの実施例は網羅的ではなく、本教示の範囲を決して制限するものではない。
【0085】
実施例1:異なる試料形由来の化合物
次の実施例は種々の試料形の使用を説明する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない
本発明の方法を使用して種々の試料形由来の1種類以上のアミン含有化合物を分析する種々の実施形態が説明される。種々の実施形態において、対象のアミン含有化合物の1種類以上が、この実施例の1つ以上の試料形、例えば血漿、ワイン、蛋白、ペプチドおよびアミノ酸を起源とすることができる。一般的に、ある試料中の対象の化合物が、同重体タグで適切に標識化できる1つ以上のアミン基、例えば第一級、および第二級アミンなどを含むように、上記試料を処理することができる。
【0086】
図3を参照し、種々の実施形態において、血漿試料(ブロック305)に含まれる1種類以上の化合物の標識化は、対象のアミン含有化合物の1種類以上を沈殿させ(工程325)、その後遠心分離して上澄液の少なくとも一部を採取する(工程340)ことを含む。対象のアミン含有化合物を沈殿させるには、例えば非制限的に7−10%スルホサリチル酸(SSA)溶液、エタノール、イソプロパノールおよびこれらの組み合わせなどを含む種々のアプローチを使用できる。上記上澄液の少なくとも一部をその後同重体タグセット由来の1種類以上の同重体タグ(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)と結合させ(工程350)、上記血漿試料中の対象の同重体標識化アミン含有化合物を作ることができる。
【0087】
種々の実施形態において、ワイン試料(ブランド310)に含まれる1種類以上のアミン含有化合物の標識化は、7−10%SSA溶液で対象のアミン含有化合物の1種類以上を沈殿させ(工程330)、遠心分離し、上澄液の少なくとも一部を採取することを含む(工程345)。上記上澄液の少なくとも一部をその後同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上の同重体タグと結合させ(工程350)ワイン試料由来の対象の同重体標識アミン含有化合物を作る。
【0088】
種々の実施形態において、蛋白、ペプチドまたはポリペプチドの試料(ブロック315)に含まれる1種類以上のアミン含有化合物の標識化は、試料の少なくとも一部を加水分解し(例えば6モル(M)塩酸(HCl)で)、または消化し(例えばトリプシンで)またはこれらの両方を行い(工程325)(例えばペプチドおよび/またはアミノ酸フラグメントを生成するため)、処理した試料を同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1つ以上の同重体タグと結合させ(工程350)、上記蛋白、ペプチドまたはポリペプチド試料由来の対象の同重体標識アミン含有化合物を作ることを含む。
【0089】
種々の実施形態において、上記試料は、1種類以上のアミノ酸が対象のアミン含有化合物を含んでいる上記アミノ酸またはアミノ酸混合物を含む(ブロック320)。種々の実施形態において、アミノ酸試料は同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の1種類以上の同重体タグと結合し(工程350)、上記アミノ酸試料から対象の同重体標識アミン含有化合物を作ることができる。iTRAQ(商標)ブランド試薬を用いる種々の実施形態において、対象の同重体標識アミン含有化合物を、1つ以上の翻訳後修飾を実質的に変えることなく作ることができる。
【0090】
実施例2:試料の調製およびiTRAQ(商標)ブランド試薬による標識化
次の実施例は1種類以上の蛋白またはペプチドを含む1つ以上の試料を調製し、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用し、1種類以上の同重体タグによって標識化する種々の実施形態の実施例を記載する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0091】
蛋白またはペプチド試料の還元およびシステインブロッキング
図4Aを参照し、種々の実施形態において、各々5ないし100μgの蛋白を含む少なくとも1本から4本までの各試料管に、20μLの溶解緩衝液および1μLの変性剤を加え、ボラックスして撹拌し、混合する(工程405)。各試料管に2μLの還元試薬を加え、ボラックスして撹拌、混合し、60℃で1時間インキュベートする(工程410)。各試料管をスピニングし、各試料管に1μLシステインブロッキング試薬を加え、その後ボラックスによって撹拌し、スピニングし、室温で10分間インキュベートする(工程415)。
【0092】
蛋白またはペプチド試料のトリプシン消化
図4Aを参照し、少なくとも1および2本までの各試料管に、還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgが含まれる種々の実施形態において、トリプシン1バイアルを25μLのMillQ(商標)水またはその同等物で希釈する。その他の実施形態、例えば少なくとも1本、そして4本までの各試料管に、還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgが含まれる実施形態において、トリプシン2バイアルを25μLのMillQ(商標)水またはその同等物で希釈する。希釈されたトリプシンバイアルの各々をボルテックスして混合し、スピニングする(工程420)。
【0093】
還元され、システインブロックされた標識すべき蛋白5ないし100μgを含む少なくとも1本そして4本までの各試料管に、10μLのトリプシン溶液を加える。各試料管をボルテックスして混合し、スピンし、37℃で最低12時間、そして16時間までインキュベートする。各試料管の試料消化物をその後スピンする(工程425)。
【0094】
蛋白またはペプチド試料の加水分解
種々の実施形態において、蛋白またはペプチド試料を加水分解によって調製し、分析する。よって種々の実施形態においては、還元工程(例えば工程410)および消化工程(例えば工程420)は用いられない。図4Bにより、種々の実施形態において、蛋白および/またはペプチドを含む試料は酸などで加水分解する(工程427)。本教示で適切に使用できる蛋白およびペプチドを加水分解するために非常に種々様々の方法を当業者は利用できる。強酸加水分解(例えば真空中、100℃で6N塩酸で処理)により加水分解すると遊離アミノ酸が生ずる。幾つかの加水分解条件によって、あるアミド(Asn、Gluなど)はそれらの酸に変換し、あるアミノ酸は分解することは知られている。よって、種々の実施形態において、強酸加水分解以外の加水分解法が使用できる。
【0095】
iTRAQ(商標)ブランド試薬によるアミノ酸の標識化
図4Aおよび4Bを参照し、種々の実施形態において、少なくとも1バイアルのiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬および4バイアルまでの種々のiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬を室温に温め、iTRAQ(商標)ブランド同重体試薬の各バイアルに70μLのエタノールを加え、その後ボルテックスして混合し、スピニングする(工程430)。例えば消化した蛋白や加水分解した蛋白などからのアミノ酸の各試料管に対して、iTRAQ(商標)ブランド同重体試薬のバイアル1本を使用する。
【0096】
アミノ酸の1本の試料管に、1種類のiTRAQ(商標)ブランド同重体試薬1バイアルの内容物のエタノール溶液を加え、その後ボルテックスして混合し、室温で1時間インキュベートする(工程435)。種々の実施形態において、リポータイオンシグナルを測定する前に、標識した各アミノ酸の少なくとも一部を清浄にする(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換など、およびこれらの組合わせによって例えば妨害試料、緩衝人工物などを除去する)(工程440)。清浄にした標識アミノ酸の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラムまたはこれらの組合わせ)に供給する(工程445)。上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を質量分析装置に導き(工程450)、1種類以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルを測定する。種々の実施形態においてアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルは認められない(工程455)。標識されたアミンの試料でアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルが認められない種々の実施形態において、上記アミノ酸の標識化工程を繰り返す(工程460)。
【0097】
分析のためのiTRAQ(商標)ブランド試薬−標識アミノ酸の組合わせ
図4Aおよび4Bを参照し、種々の実施形態において、各標識アミノ酸の試料管の全内容物を新しい1本の試料管に移し、組合わせ試料を作り、それをボルテックスして混合し、その後スピンする(工程465)。リポータイオンシグナルの測定前に、消化し標識した各蛋白の少なくとも一部を清浄にする(工程470)(例えば妨害試料、緩衝人工物などを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相(RP)−HPLC、交換分別、カチオン交換、高解析カチオン交換などおよびこれらの組合わせによって除去する)(工程475)。上記清浄にした標識化アミノ酸試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラム(例えばLCカラム、ガスクロマトグラフィー(GC)カラム、またはこれらの組合わせ)に供給する。上記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部をその後質量分析装置に導き(工程480)、1種類以上のアミン含有化合物のアミン含有化合物−リポータイオン遷移シグナルをPDITM(MRMなど)を用いて測定する。組合わせ試料中の1種類以上の対象アミン含有化合物の濃度(例えば相対的濃度、絶対的濃度またはそれら両方)をその後測定する(工程485)。
【0098】
実施例3:標準化合物との組合わせ
図5を参照し、種々の実施形態において1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物の濃度測定が行われる。その際、非制限的に、ペプチド、ポリペプチド、蛋白、アミノ酸、ニトロフラン代謝産物、ポリアミンおよびカテコールアミンなどを含む1種類以上のアミン含有化合物が提供される。種々の実施形態において、同重体標識標準化合物(工程505)(例えば対照試料由来の対象アミン含有化合物、既知濃度の試料由来の対象アミン含有化合物など)を、2種類以上の分析すべき同重体標識アミン含有試験化合物、例えば試験化合物#1(工程510)、試験化合物#2(工程520)および試験化合物#3(工程525)の(と組合わせた)内部標準として使用する。
【0099】
種々の実施形態において、分析すべきアミン含有化合物の2種類以上が対象の同一アミン含有化合物を含む。例えば試験化合物#1、試験化合物#2、および試験化合物#3は対象の同一アミン含有化合物(例えばリシン)を含むことができ、これらは3つの異なる試料(例えば時点1、時点2、時点3など;例えば病気、発酵などの同一過程の進行をモニターする)でもよく、同一試料(例えばその試料の1実験行程において3重に分析するため)でもよく、またはこれらの組合わせでもよい。
【0100】
1種類以上のアミン含有化合物の濃度の決定は、標準化合物と各アミン含有試験化合物とを同重体タグセット(例えばiTRAQ(商標)ブランド試薬)由来の異なる同重体タグで標識化することによって行われる。例えば、上記標準化合物を同重体タグセット由来の第一同重体タグで標識化し(工程530)、試験化合物#1を同重体タグセット由来の第二同重体タグで標識化し(工程535)、試験化合物#2を同重体タグセット由来の第三同重体タグで標識化し(工程540)、試験化合物#3を同重体タグセット由来の第四同重体タグで標識化(工程545)することができる。
【0101】
種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の少なくとも一部と同重体標識試験化合物の複数部分とを一緒にし(工程550)、組合わせ試料を作り、上記組合わせ試料の少なくとも一部をPDITMにかける。
【0102】
種々の実施形態において、同重体標識標準化合物の添加は、組合わせ試料中の1種類以上の対象アミン含有化合物のための内部標準として役立つ。種々の実施形態において、異なる同重体標識標準化合物が組合わせ試料中の異なる各対象アミン含有化合物に対して加えられ、異なる各同重体標識標準化合物は対象となる異なる各アミン含有化合物のための内部標準として役立つ。
【0103】
実施例4:アミン含有化合物濃度の多重測定
下記の実施例はiTRAQ(商標)ブランド試薬セット由来の同重体タグを用いて4種類のポリアミンの濃度を多重測定することについて記載する。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0104】
材料および方法:
この実施例のスペクトルは、図6Bから10DまでのスペクトルではAPI2000トリプル四重極LC/MC/MC装置を用い、図11から図13までのスペクトルではHILCカラム.を備えたHILC装置に連結したAPI2000トリプル四重極機器を使用して得たものである。クロマトグラフィーの構造はオートサンプラー、150×2.1mmC18逆相カラムおよびカラム加熱器を備えたバイナリー勾配HILC装置を含む。アミン含有化合物は、それらをメタノールに溶解し、その後標準を標識化するプロトコルを用いてそれらをiTRAQ試薬と反応させるという方法で調製した。標準アミンはフルカ(Fluka)から入手した。
【0105】
スペクトル:
実施例4は組合わせ試料を使用する複数アミン含有化合物の濃度測定を記載する。図6A−10Dは個々のアミン含有化合物(同重体タグセット由来の同重体タグで標識されたもの、未標識のもの両方)の質量スペクトルを示す。この実施例において、同重体タグはiTRAQ(商標)ブランド試薬であった。図11および13は組合わせ試料のクロマトグラムを示す。この実施例の組合わせ試料中の対象アミン含有化合物は1,4ジアミノブタン(プトレッセン)、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)、N1−(3−アミノプロピル)−ブタン−1,4−ジアミン(スペルミジン)および1,7ジアミノヘプタンであった。図12A−12Cはそれぞれ1,4−ジアミノブタン(プトレッセン)、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)、および1,7ジアミノヘプタンのクロマトグラムを示す。
【0106】
図6A−6Cを参照し、未標識の602、および第一級アミンを同重体タグで標識した604プトレッセンの質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を用いてプトレッセンの第一級アミンを標識した。図6BはiTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したプトレッセンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク635は標識プトレッセンに対応する(m/z約377)。ただし標識プトレッセン−ナトリウム付加物に対応する弱いピーク640(m/z約399)、並びに溶媒中に存在する低質量不純物に対応する弱いピーク630(m/z約375)、610(m/z約245)およびピーク615、620、625の集団(約319と321との間のm/z)も認められた。
【0107】
図6CはCIDにかけた標識プトレッセンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク650は114同重体タグのリポータイオンに対応した;ただし標識プトレッセンに対応するピーク(m/z約377)670、およびプトレッセン構造に特異的なフラグメントに対応するピーク660(m/z約233)も認められた。
【0108】
図7A−7Cを参照し、未標識のカダベリン702および第一級アミンを同重体タグで標識したカダベリン704両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図7BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ115で標識したカダベリンのESI−TOF質量スペクトルを示す。730に認められるピークは標識カダベリンに対応した(m/z約391)が、溶媒のバックグラウンドに対応するピーク710(m/z約102)および725(m/z約248)、およびiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク715(m/z約163)および720(m/z約191)も認められた。
【0109】
図7CはCIDにかけた標識カダベリンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。認められた主ピーク740は115同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識カダベリンに対応するピーク760(m/z約391)およびカダベリン構造に特異的なフラグメントに対応するピーク750(m/z約247)も認められた。
【0110】
図8A−8Cを参照し、未標識の1,7−ジアミノヘプタン802、および第一級アミンを同重体タグで標識した1,7−ジアミノヘプタン、804、両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116を使用して1,7−ジアミノヘプタンの第一級アミンを標識した。図8BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ116で標識した1,2−ジアミノヘプタンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク825は標識1,7−ジアミノヘプタンに対応した(m/z約419);ただし溶媒のバックグラウンドに対応するピーク810(m/z約102)およびiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク815(m/z約163)および820(m/z約191)も観察された。
【0111】
図8CはCIDにかけた標識1,7−ジアミノヘプタンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察された主ピーク830は116同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識1,7ジアミノヘプタンに対応するピーク850(m/z約419)および構造特異的フラグメントに対応するピーク840(m/z約275)も観察された。
【0112】
図9A−9Dを参照し、未標識のスペルミジン902および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミジン904両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を用いてスペルミジンの第一級アミンを標識した。図9BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク925は標識したスペルミジンに対応した(m/z約434)。ただしiTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク908(m/z約163)、916(m/z約217)、918(m/z約245)、930(m/z約458)、および部分的に標識化された第二級アミンに対応するピーク935(m/z約578)も認められた。
【0113】
図9CはCIDにかけた標識化スペルミジンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク945は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミジンに対応するピーク980(m/z約434)、構造特異的フラグメントに対応するピーク940(m/z約97)、955(m/z約202)および970(m/z約290)、iTRAQ(商標)標識に対応するピーク950(m/z約145)および溶媒の構造フラグメントに対応するピーク960(m/z約216)も観察された。
【0114】
図9DはCIDにかけた標識スペルミジンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク985は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミジンに対応するピーク995(m/z約434)および第二級標識アミンに対応するピーク990(m/z約578)も観察された。
【0115】
図10A−10Dを参照し、未標識スペルミン1002および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミン1004両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図10BはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのESI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1035は標識スペルミンに対応していた(m/z約491)。ただし溶媒バックグラウンドに対応するピーク1008(m/z約177)、1020(m/z約248)および1022(m/z約248)、iTRAQ(商標)反応副産物に対応するピーク1010(m/z約185)および1012(m/z約191)、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンに対応するピーク1030(m/z約434)、標準スペルミジン中の不純物に対応するピーク1040(m/z約535)、1045(m/z約738)、および1050(m/z約754)も観察された。
【0116】
図10CはCIDにかけた標識スペルミンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1060は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク1075(m/z約491)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1055(m/z約100)、1058(m/z約202)、および1070(m/z約273)も認められた。
【0117】
図10Dは、CIDにかけた標識スペルミンのESI−TOF−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピーク1080は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク1090(m/z約491)、第一級アミン上に標識を有する構造特異的フラグメントに対応するピーク1082(m/z約202)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1085(m/z約273)、および全てのアミンが標識化された完全アミンに対応するピーク1095(m/z約635)も観察された。
【0118】
図11は組合わせ試料のクロマトグラムを示し、HILCカラムを備えたHPLC装置に連結したAPI2000トリプル四重極機器を用いて、MRMモードで分析した1,4ジアミノブタン(プトレッセン)1120、1,5ジアミノペンタン(カダベリン)1110、および1,7ジアミノヘプタン1105のクロマトグラムを描いている。
【0119】
図12A−Cを参照し、第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン、カダベリンおよび1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムが得られた。図12Aは、図11に示されるLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114で標識したプトレッセンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1205は標識プトレッセンに対応した(保持時間約8.9分)。図12Bは図11に示されたLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115で標識したカダベリンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1215は標識カダベリンに対応していた(保持時間約8.8分)。図12Cは図11に示すLC/MS/MS行程から得られた、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116で標識した1,7−ジアミノヘプタンの抽出イオン・クロマトグラムを示す。観察されたピーク1225は標識1,7−ジアミノヘプタンに対応した(保持時間約8.4分)。
【0120】
図13は1,7−ジアミノヘプタン1305、カダベリン1310、およびプトレッセン1320のクロマトグラムを描いた組合わせ試料のクロマトグラムである
図14A−Cを参照し、マトリックスであるシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を含む95%アセトニトリルのバックグラウンドO−MALDI質量スペクトルが得られた。同じスペクトルの3質量範囲に見られるイオンの大部分は溶媒からの化学的バックグラウンドおよび4−ヒドロキシ桂皮酸由来のマトリックスイオンから生ずるものである。
【0121】
図15は、95%アセトニトリル(ACN)およびシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)中の、第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン、カダベリンおよび1,7−ジアミノヘプタンの混合物のO−MALDI−TOF質量スペクトルを示す。観察されたピークは、標識プトレッセン1512(m/z約379)、標識カダベリン1520(m/z約391)、標識1,7−ジアミノヘプタン1525(m/z約419)および標識スペルミジン1530(m/z約434)に対応した。ただし標準中の化学的不純物に対応するピーク1502(m/z約359)、1504(m/z約361)、1508(m/z約377)および1515(m/z約380)も観察された。
【0122】
図16Aおよび16Bを参照し、未標識のプトレッセン1602および第一級アミンが同重体タグで標識されたプトレッセン1604両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においては、iTRAQブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を使用してプトレッセンの第一級アミンを標識した。図16Bは、CIDにかけた、マトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中の標識プトレッセンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描く。観察された主ピーク1608は114同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識プトレッセンに対応するピーク1640(m/z約377)、完全無傷の標識に対応するピーク1610(m/z約145)、構造特異的フラグメントに対応するピーク1615(m/z約172)、1620(m/z約233)、1630(m/z約331)、および1635(m/z約359)も観察された。
【0123】
図17Aおよび17Bにより、未標識のカダベリン1702および第一級アミンが同重体タグで標識されたカダベリン1704両方の質量スペクトルが得られた。この実施例においてはiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の115同重体タグQ115を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図17Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ115で標識したカダベリンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク1708は115同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識カダベリンに対応するピーク1730(m/z約391)、完全無傷の標識に対応するピーク1712(m/z約145)、および構造特異的フラグメントに対応するピーク1720(m/z約247)も認められた。
【0124】
図18Aおよび18Bを参照し、未標識の1,7−ジアミノヘプタン1802および第一級アミンが同重体タグで標識された1,7−ジアミノヘプタン1804両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の116同重体タグQ116を使用してカダベリンの第一級アミンを標識した。図18Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ116で標識した1,7−ジアミノヘプタンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク1815は116同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識1,7−ジアミノヘプタンに対応するピーク1845(m/z約419)、iTRAQ(商標)標識フラグメントに対応するピーク1810(m/z約101)、および構造特異的フラグメントに対応するピーク1825(m/z約275)および1835(m/z約381)も観察された。
【0125】
図19Aおよび19Bを参照し、未標識のスペルミジン1902および第一級アミンを同重体タグで標識したスペルミジン1904両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の114同重体タグQ114を使用してスペルミジンの第一級アミンを標識した。図19Bはマトリックス4−ヒドロキシ桂皮酸中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ114で標識したスペルミジンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められた主ピーク1908は114同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミジンに対応するピーク1965(m/z約434)、完全無傷iTRAQ(商標)標識に対応するピーク1912(m/z約145)および構造特異的フラグメントに対応するピーク1915(m/z約156)、1918(m/z約175)、1925(m/z約184)、1930(m/z約202)、1935(m/z約220)、1940(m/z約273)、1945(m/z約290)、および1960(m/z約414)も得られた。
【0126】
図20Aおよび20Bを参照し、未標識のスペルミン2002および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2004両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミジンの第一級アミンを標識した。図20Bは95%アセトニトリルおよびCHCA中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められた主ピーク2015は標識スペルミンに対応していた(m/z約491)。ただし構造特異的フラグメントに対応するピーク2008(m/z約379)および2030(m/z約535)も認められた。
【0127】
図21A−Cを参照し、未標識のスペルミン2102および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2104両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図21Bは4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察されたピーク2110は117同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミンに対応するピーク2140(m/z約491)および構造特異的フラグメントに対応するピーク2120(m/z約202)、2130(m/z約275)、および2135(m/z約473)も認められた。
【0128】
図21Cは4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。認められたピーク2150は117同重体タグのリポータイオンに対応していた。ただし標識スペルミンに対応するピーク2180(m/z約491)および構造特異的フラグメントに対応するピーク2160(m/z約202)および2170(m/z約275)も認められた。
【0129】
図22Aおよび22Bを参照し、未標識スペルミン2202および第一級アミンが同重体タグで標識されたスペルミン2204両方の質量スペクトルが得られた。この実施例において、iTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の117同重体タグQ117を使用してスペルミンの第一級アミンを標識した。図22Bは、4−ヒドロキシ桂皮酸マトリックス中においてiTRAQ(商標)ブランド試薬同重体タグセット由来の同重体タグQ117で標識したスペルミンのO−MALDI−TOF質量スペクトルを描いている。観察された主ピーク2210は117同重体タグのリポータイオンに対応した。ただし標識スペルミンに対応するピーク2250(m/z約491)、構造特異的フラグメントに対応するピーク2220(m/z約202)、2230(m/z約271)および2235(m/z約273)、およびフラグメンテーションのために選択された前駆体イオンに対応するピーク2260(m/z約635)も認められた。
【0130】
図23は、種々のアミノ酸を得るための蛋白加水分解物中に見られるアミノ酸を含む、iTRAQ(商標)115−標識アミノ酸標準のMRM分析のクロマトグラムを示す。2310、2320、2330、2340、2350および2360。
【0131】
実施例5:ウシ血清アルブミン(BSA)試料
下記の実施例は加水分解して遊離アミノ酸を生成した1蛋白試料のアミノ酸の濃度の測定を説明するものである。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。
【0132】
材料および方法
蛋白またはペプチド加水分解物を標準的加水分解法によって調製する。より詳細に述べれば、1μgからなるウシ血清試料を6NのHClで、110℃で17時間加水分解した。加水分解した試料をその後緩衝液、イソプロパノールおよびiTRAQブランド試薬と混合し、室温で反応させる。その後所望濃度に再溶解または直接希釈し、分析する(一般的に各分析にはペプチドまたは蛋白0.2μgが必要である)。加水分解の前および/または実験操作中の試料の回収を追跡するために、標識する前に標準(すなわちノルロイシン、ノルバリン)を上記試料に加える。試料の標識化の詳細はプロトコルフォーマット中の表2にも示される。
【0133】
複数試料(4までまたは内部標準を含む場合は3まで)の場合は各試料を上記のように作り、異なるiTRAQ試薬(114、115、116、または117)で標識する。標識反応後、異なる試薬で標識した試料を一緒に混ぜる。別々のバイアル中のアミンまたはアミノ酸標準ミックスに対し、異なるタギング試薬を使用して同じプロセスを行い、上記標識標準を用いて外部検量曲線を作成できる。標識標準を上記試料と混合し、各アミンまたはアミノ酸のための内部標準を作ることもできる(図1参照)。HPLC分離は50℃に加熱したC18カラム(15%炭素積載により完全にエンドキャップする)を使用し、200μL/minスリットで1ml/minの流速で分離してディテクタに導くように実施される。勾配、洗浄、および平衡化に合計20分間かかる。
【0134】
アミノ酸濃度の定量はHPLC分離を用い、その後MRMモードで作動するトリプル四重極またはQ TRAP MS/MS装置によるESI MRM分析によって行われる。MRM分析では、MRM遷移は、上記アミノ酸の標識化質量およびMS/MSに用いられる特定試薬、例えば117試薬、で生ずる上記リポータイオンフラグメントから成りたっており、グリシンは220.1>117.1の遷移を用いてモニターされる。モニターが必要な全アミノ酸のMRM遷移がこの方法に含まれる。これら遷移の1つを、試料に添加する内部標準のために確保しておくのが一般的である。あらゆるアミノ酸の内部標準は検出反応並びにクロマトグラフィー分離におけるあらゆる変動を補正する。定量はアナリスト(Analyst)(商標)ソフトウエア、およびアミノ酸分析に役立つように特別に設計されたツールを使用して行われる。
【0135】
【表2】
この実施例のデータを作成するための試料処理、およびLC/MS/MSの設定に関するさらなる詳細は次のようである。LCカラムに載せる前に、各試料に、iTRAQ試薬114で標識したアミノ酸標準6pmol/μLを含む3%蟻酸、25μL、を加えて再構成した。その後、製造者が推薦する方法を用いて5μL量をアプライド・ビオシステムズ(Applied Biosystems)/MDS Sciex API2000LC/MS/MS機器に注入した。機器の作動条件に関する詳細は表3−11に示される。表3および4は上記機器のLC部分に関連する条件を示し、表5−11は上記機器のMS/MS部分に関する条件を示す。
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
この実施例において、MS/MSデータを得るために複数の期間(期間1−3)を使用し、その行程中、全ての遷移は連続的には走査されない。ある期間中の遷移だけがその期間中に走査される。その結果ピークあたりのデータ点をより多くすることができ、それはより良い定量につながる。
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
【表7】
スペクトルおよび結果
本実施例において、20種類のアミノ酸の濃度を測定した。表12は各アミノ酸(2列目に列挙)について得られたデータをまとめたものである。3列目はアミノ酸のLCカラム上の保持時間を列挙し、4列目は濃度未知の試料中のアミノ酸に関連するピーク面積を列挙する。5列目はアミノ酸標準試料に関連するピーク面積である。6列目は標準試料中のアミノ酸濃度である。7列目には本教示を利用して測定した、この実施例のアミノ酸の濃度が記載される。未知試料のアミノ酸の濃度は、未知試料のアミノ酸に関連するピーク面積を、標準試料に関連するピーク面積で割り、この数値に上記既知試料の濃度を掛けることによって得た。
【0141】
例としてのスペクトルを図24および25A−25Uに示す。
【0142】
図24はiTRAQ(商標)114−標識アミノ酸標準および117−標準試料のMRM分析のクロマトグラムを描いている。図24に描かれている種々の保持時間に一致するアミノ酸が表12に列挙されている。図25A−25Uは測定した種々のアミノ酸のMRMデータを模式的に描く。図25A−25Uの各々の右パネルは内部標準(IS)114−標識アミノ酸のイオンシグナルを描き、左パネルは117−標識試料のイオンシグナルを描く。面積を誘導したピークは暗く描かれている。注目すべきことに、Cyaでは試料シグナルは検出されなかった。そのため図25Aの左パネルには暗いピークは現れない。
【0143】
図26A−Bは上記アミノ酸の測定濃度を、ベックマン(Beckman)装置のカラム誘導体化の前および後に標準アミノ酸分析法/機器装置に関して比較したものである。結果はこれらの方法でよく一致する。
【0144】
図26Aおよび26Bは典型的蛋白加水分解物試料の結果を理論値およびベックマンゴールド装置に対して比較したものである。図26Aは各アミノ酸の理論的モルパーセント(所与のアミノ酸の最も左側の棒)を、ベックマンゴールド装置で測定したモルパーセント(上記アミノ酸の真中の棒)およびこの実施例でLC/MS/MSを使用して測定したもの(上記アミノ酸の右側の棒)と比較している。図26Bはベックマンゴールド装置で測定した蛋白加水分解物試料の、理論値(与えられたアミノ酸の左側の棒)からの変動、およびLC/MS/MSを使用してこの実施例で測定したもの(与えられたアミノ酸の右側の棒)からの変動を比較する。本実施例(LC/MS/MS装置)のチロシン値が低いのは、この試料がヒドロキシルアミン処理を受けなかったからである(ヒドロキシルアミンは不都合な第二iTRAQ試薬標識をチロシンから除去できる)。
【0145】
【表8】
実施例6:生物学的液試料
下記の実施例は生物学的試料中の遊離アミノ酸の濃度測定を説明する。この実施例のデータは血漿試料のデータであるが、本実施例の教示はその他の生物学的液、例えば非制限的に尿などに適用できる。この実施例の教示は網羅的ではなく、これらの実験または本教示の範囲を制限するものではない。この実施例において、上記血漿試料中の48の遊離アミノ酸をモニターした。モニターしたアミノ酸を表13に列挙する。
【0146】
【表9】
血漿中の1種類以上の遊離アミノ酸のモニタリングは、新生児の疾患の発見および/またはモニタリング、バイオマーカーの検出などを含む幾つかの実際的用途を有する。例えば新生児のある遊離アミノ酸は、例えばメチルマロン酸血症、およびプロピオン酸血症のような新生児代謝性疾患を示唆することがある。ある一般的アミノ酸障害と関係する高アミノ酸の例は表14にも列挙される。
【0147】
【表10】
このような代謝性疾患は遺伝性疾患の稀な群であるが、罹患している乳児に対して深刻な結果をもたらすことがある。治療せずにおくならば、これらの疾患は回復し得ない精神的遅れ(軽度から重度までの範囲)、身体的無能力、神経損傷および死亡までも起こすことがある。速やかかつ適切な処置を受けるためには早期発見(出生後間もなく)および正確な診断が非常に重要である。
【0148】
材料および方法
生物学的液(例えば血漿、血清、尿)では、試料の一部をイソプロパノールまたはエタノール4部と混合し、その試料中の蛋白の大部分を沈殿させる。上澄液に緩衝液を加えて、標識反応のために塩基性pHを維持する。その後iTRAQブランド試薬を加え、室温で反応させる。試料をその後乾燥し、分析のために好ましい濃度に再溶解するかまたは直接希釈する(普通は各分析に100nLの生物学的液が必要である)。試料の標識化に関する詳細はプロトコルフォーマットの表15にも記載されている。
【0149】
【表11】
この実施例のデータを作成するための試料処理およびLC/MS/MS設定に関するさらなる詳細は次のようである。上記LCカラムに載せる前に、各試料を、iTRAQ試薬117で標識したアミノ酸標準10pmole/μLを含む3%蟻酸、40μL、で再構成する。その後、製造者の推薦する方法を用いて、容量2μLをアプライド・バイオシステムズ/MDS Sciex API3200 LC/MS/MS機器に注入した。機器の作動条件に関する詳細は表16−26に示される。表16および表17は機器のLC部分に関する諸条件を提供し、表18−26は機器のMS/MS部分に関する諸条件を提供する。
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
本実施例においてはMS/MSデータを集めるために複数期間(期間1−4)を用い、行程中、全ての遷移を連続的に走査しないようにする。ある期間中の遷移だけがその期間中に走査される。これはピークあたりのデータ点をより多くすることができ、その結果より良い定量が可能になる。
【0152】
【表14】
【0153】
【表15】
【0154】
【表16】
【0155】
【表17】
スペクトルおよび結果:
本実施例において48種類のアミノ酸をモニターした。表27は、検出された各アミノ酸で得られたデータをまとめたものである。第2列は内部標準のアミノ酸の量を列挙し、第3列は外部標準添加量を示し、第4列は試料中の測定されたアミノ酸濃度を示し、第5列は血漿の対照範囲を示す。
【0156】
【表18】
実施例7:カテコールアミン
本実施例はiTRAQ標識カテコールアミン(CAT)のクロマトグラム分離について論ずる。CATsは尿、血漿およびCSF(脳脊髄液)試料の臨床的分析において重要であることが多い。腫瘍(神経芽細胞腫、フェアシトクローマなど)およびそれらの病期および部位などを診断するために、血漿および尿の日常的臨床分析が行われる。CATsはしばしば神経伝達物質でもあり、製薬会社などにおいて高血圧薬の開発のためにCSF中でモニターされる。
【0157】
カテコールアミンおよび関連化合物は重要な心臓血管および代謝エフェクターである。種々の生物学的液中のこれら化合物の濃度の測定は臨床研究室および医薬開発研究所において重要である。現在、標準的分析法には種々の化学的並びにクロマトグラフィー的妨害があることが多い。我々はここに、iTRAQ化学、4種のアミン反応性同重体多重標識試薬のセットを使用して、カテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸を、1回の分析によって高感度で定量する新規の方法を提供する。非常に高い感度および特異性を有するMRM(多重反応モニタリング)モードのLC/MS/MSを使用してこれらの誘導体を分析し、定量する。
【0158】
本実施例において、CATs ヒスタミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、メタネフリン、ドーパミン、およびセロトニンをモニターする。その他に、アミノ酸glu(グルタミン)およびtyr(チロシン)をモニターする。
【0159】
材料および方法
カテコールアミン、関連化合物および幾つかのアミノ酸の標準混合物を作り、標準的プロトコルを用いてiTRAQ試薬で標識した。C18逆相カラム上で揮発性イオン対試薬を含む水−アセトニトリル勾配を用いて、1mL/minの流速で誘導体を分離した。誘導体化した標準の希釈列を注入し、種々の成分のLOD(検出限界)および検量曲線を決定した。標準を加えた、および加えない生物学的液試料(尿、CSF、血漿)を一般的プロトコルによって調製し、標識し、分析して、上記方法の感度および正確さに与えるマトリックスの効果を確認した。試料はアプライド・ビオシステムズ(Applied Biosystems)/MDS SCIEX API−4000トリプル四重極質量分析計、ESI+、MRMモードで分析した。
【0160】
結果
結果はカテコールアミン、関連化合物およびアミノ酸、すなわちドーパ(3,4−ジヒドロキシ−DL−フェニルアミン)、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、メタネフリン、ノルメタネフリン、メチルドーパ、3−メトキシチラミン、セラトニン、ヒスタミン、ABA(アミノ酪酸)、チロシン、およびグルタミン酸の標識化および定量が可能であることを証明している。抽出時のLODは0.004picomol/uLである。種々の試料の直線性は0.9000から0.999までの範囲である。正確さおよび精度が示される。カテコールアミン異性体ドーパ(342/117)およびメタネフリン(342/117)並びにエピネフリン(328/117)およびノルエピネフリン(328/117)のベースライン分離が行われた。
【0161】
実施例8:動力学的範囲
図27Aおよび27Bはアミノ酸濃度を測定する本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータを示す。図27Aは約10ないし約990picomol(pmole)のノルバリン濃度に対する反応に関するデータを示す。各実験(データ点)は30pmoleの内部標準を使用し、三重に注入する。増加する量のアミノ酸をLC/MS/MS装置に注入し、それらの反応に対してプロットした。図27Aは、上記反応が約3桁の大きさの濃度にわたって直線性であることを示している。
【0162】
図27Bは約10から約990picomol(pmole)までのロイシンの濃度に対する反応に関するデータを示す。各実験(データ点)は30pmole内部標準および3重の注入を使用する。増加する量のアミノ酸をLC/MS/MS装置に注入し、それらの反応に対してプロットした。図29Bは上記反応が約3桁の大きさの濃度にわたって直線性であることを示す。
【0163】
本出願に記載される全ての文献および類似の資料、例えば非制限的に特許、特許出願、記事、本、論文およびウェブページなどは、そのような文献および類似の資料のフォーマットに無関係に、参考としてそのまま本明細書に組み込まれる。組み込まれる文献および同様な資料の1つ以上が非制限的に、定義された用語、用語の使用法、記述された技術などを含む本出願とは異なるかまたは矛盾する場合には本出願が優先する。
【0164】
本明細書に使用される小見出しは組織化する目的のためのものであり、記載の内容を決して制限するものではない。
【0165】
本教示を種々の実施形態および実施例と関連づけて記載したが、本教示はこのような実施形態および実施例に制限されるものではない。反対に、本教示は種々の代替物、変更および同等物を含むことは当業者には当然である。
【0166】
本教示は特異的例証的実施形態を参照して詳細に示され、記載されているが、本教示の精神および範囲から逸脱することなく形式および細部に種々の変更がなされ得ることは当然である。例として、開示された任意の工程をその他の開示された工程と組み合わせて、本発明の種々の実施形態によるアミン含有化合物の分析法を提供することができる。したがって、本教示の範囲および精神内に入る全ての実施形態が請求される。本教示の方法、装置およびアッセイの記述および図面は、記載された諸要素の順序(その効果について述べられていない限り)に制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、1つ以上の試料中に存在する1種類以上のアミン含有化合物の分析法の種々の実施形態の模式図である。
【図2】図2は、同重体タグの種々の実施形態を模式的に説明するものである。
【図3】図3は、複数の試料形を使用する種々の実施形態の模式図である。
【図4A】図4Aは、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用して同重体で標識する工程の種々の実施形態である。
【図4B】図4Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬を使用して同重体で標識する工程の種々の実施形態である。
【図5】図5は、組合わせ試料中の標準化合物を使用する種々の実施形態の模式図である。
【図6A】図6Aは、未標識プトレッシンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッシンの構造を模式的に描いたものである。
【図6B】図6Bは、PDITMの前および後の同重体標識プトレッシンの質量スペクトルを描いたものである。
【図6C】図6Cは、PDITMの前および後の同重体標識プトレッシンの質量スペクトルを描いたものである。
【図7A】図7Aは、未標識カダベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンの構造を模式的に描いたものである。
【図7B】図7Bは、PDITM前および後の同重体標識カダベリンの質量スペクトルを描いたものである。
【図7C】図7Cは、PDITM前および後の同重体標識カダベリンの質量スペクトルを描いたものである。
【図8A】図8Aは、未標識1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンの構造を模式的に描いたものである。
【図8B】図8Bは、PDITMの前および後の同重体標識1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを描いたものである。
【図8C】図8Cは、PDITMの前および後の同重体標識1,7−ジアミノヘプタンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9A】図9Aは、未標識スペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミジンの構造を模式的に描いたものである。
【図9B】図9Bは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9C】図9Cは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図9D】図9Dは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミジンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10A】図10Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造を模式的に描いたものである。
【図10B】図10Bは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10C】図10Cは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図10D】図10Dは、PDITMの前および後の同重体標識スペルミンの質量スペクトルを描いたものである。
【図11】図11は、同重体タグセット由来の異なる同重体タグでそれぞれ標識したポリアミンの混合物の液体クロマトグラフを模式的に描いたものである。
【図12】図12Aは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッセンのクロマトグラムの模式図である。図12Bは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンのクロマトグラムの模式図である。図12Cは、iTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンのクロマトグラムの模式図である。
【図13】図13は、同重体タグセット由来の異なる同重体タグでそれぞれ標識したポリアミンの混合物のクロマトグラムの模式図である。
【図14】図14A、14B、14Cは、ACNおよびHCCAを含むマトリックスの1試料の、直交−MALDI(O−MALDI)バックグラウンド質量スペクトルを描いたものである。
【図15】図15は、ACNおよびHCCAマトリックス中の実施例4の4種のポリアミンのO−MALDI質量スペクトルである。
【図16A】図16Aは、未標識プトレッセンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したプトレッセンの構造を模式的に描いたものである。
【図16B】図16Bは、PDITM後の同重体標識プトレッセンのO−MALDI質量スペクトルを描いたものである。
【図17A】図17Aは、未標識カダベリンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したカダベリンの構造の模式図である。
【図17B】図17Bは、PDITM後の同重体標識カダベリンのO−MALDI質量スペクトルである。
【図18A】図18Aは、未標識1,7−ジアミノヘプタンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識した1,7−ジアミノヘプタンの構造の模式図である。
【図18B】図18Bは同重体標識1,7−ジアミノヘプタンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いたものである。
【図19A】図19Aは、未標識スペルミジンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミジンの構造の模式図である。
【図19B】図19Bは同重体標識スペミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図20A】図20Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図20B】図20Bは、同重体標識スペルミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図21A】図21Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図21B】図21Bおよび21CはPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図21C】図21Bおよび21CはPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図22A】図22Aは、未標識スペルミンおよびiTRAQ(商標)ブランド試薬で標識したスペルミンの構造の模式図である。
【図22B】図22Bは、同重体標識スペミジンのPDITM後のO−MALDI質量スペクトルを描いている。
【図23】図23は、標識アミノ酸混合物のクロマトグラムを模式的に描いたものである。
【図24】図24は、実施例5の標識アミノ酸混合物の1試料の総イオン流(TIC)クロマトグラムを模式的に描いたものである。
【図25A】図25Aは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25B】図25Bは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25C】図25Cは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25D】図25Dは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25E】図25Eは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25F】図25Fは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25G】図25Gは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25H】図25Hは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25I】図25Iは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25J】図25Jは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25K】図25Kは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25L】図25Lは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25M】図25Mは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25N】図25Nは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25O】図25Oは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25P】図25Pは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25Q】図25Qは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25R】図25Rは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25S】図25Sは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25T】図25Tは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図25U】図25Uは、実施例5において測定した種々のアミノ酸のPDITMスペクトルの模式図である。
【図26】図26A−26Bは、実施例5の測定アミノ酸濃度を理論値および種々のその他の測定系と比較したデータである。
【図27A】図27Aは、アミノ酸濃度を測定するための本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータである。
【図27B】図27Bは、アミノ酸濃度を測定するための本教示の種々の実施形態の動力学的範囲および反応に関するデータである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、
標準化合物を用意する工程と;
該標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識する工程と;
1種類以上のアミン含有化合物の各々を、該同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された標準化合物の少なくとも一部を、該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて、組合わせ試料を作る工程と;
該組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給する工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を、親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、
第一に送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物1種類以上のm/z値を含み、第一に送られる娘イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の該同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含み;
第二に送られる親イオンのm/z範囲が1種類または同重体標識された標準化合物のm/z値を含み、第二に送られる娘イオンのm/z範囲が該同重体標識された標準化合物の該同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと該同重体標識された標準化合物に対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料の1つ以上が生理液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試料の1つ以上が、農産物、動物製品、動物飼料、ヒト消費用の食物およびヒト消費用の飲料の1種類以上を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、2つ以上の試料由来の実質的に同一であるアミン含有化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記1種類以上のアミン含有化合物が1種類以上のアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1種類以上のアミン含有化合物が同じアミノ酸の1種類以上の異性体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記1種類以上のアミン含有化合物が前記同じアミノ酸の翻訳後修飾を1つ以上含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記1種類以上のアミン含有化合物が蛋白またはポリペプチドに含まれる1種類以上のアミン含有化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記蛋白またはポリペプチドが1種類以上のチトクロームP450アイソフォームを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記1種類以上のアミン含有化合物が1種類以上のカテコールアミンまたはニトロフラン代謝産物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記カテコールアミンがエピネフリン、ノルエピネフリン、およびL−ドーパの1つ以上を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ニトロフラン代謝産物が3−アミノ−2−オキサゾリジノン、5−モルホリノメチル−3−アミノ−オキサゾリジノン、セミカルバジド、および1−アミノヒダントインの1つ以上を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける前記工程が、トリプル四極子、四重極/飛行時間型質量分析計、リニアイオントラップ質量分析計、またはタンデム飛行時間型質量分析計の1つ以上を使用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける前記工程が、前記組み合わせ試料をマトリックス中で混合し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて該親−娘イオン遷移モニタリングのためのイオンを生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記1種類以上のアミン含有化合物がリシン、リシン異性体、および翻訳後修飾リシンの1つ以上を含み、前記マトリックスがシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記1種類以上のアミン含有化合物がアルギニン、アルギニン異性体、および翻訳後修飾アルギニンの1つ以上を含み、前記マトリックスがジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する前記工程が、1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって:
1種類以上のアミン含有化合物の各々を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて、組合わせ試料を作る工程と;
該組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給する工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上のm/z値を含み、送られる娘イオンのm/z範囲が、該同重体標識されたアミン含有化合物の前記同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと標準化合物の濃度曲線との比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項19】
前記標準化合物の前記濃度曲線が
(a)第一濃度を有する標準化合物を用意すること;
(b)同重体タグセット由来の同重体タグで該標準化合物を標識すること;
(c)該同重体標識された標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給すること;
(d)該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ、送られる親イオンのm/z範囲は該同重体標識された標準化合物のm/z値を含み、送られる娘イオンのm/z範囲は該同重体標識された標準化合物の前記同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含むものとすること;
(e)該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定すること;
(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について(a)−(e)を繰り返すこと;
(g)2つ以上の標準化合物濃度における該送られたリポータイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて、該標準化合物の濃度曲線を作成すること
によって作成される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上の濃度を決定する工程が、1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって:
1種類以上のアミン含有化合物の各々を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて、組合わせ試料を作る工程と、
該組合わせ試料の少なくとも一部をマトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、第一に送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上のm/z値を含み、第一に送られる娘イオンのm/z値が該同重体標識されたアミン含有化合物の前記同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと標準化合物の測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、リシン、リシン異性体、および翻訳後修飾リシンの1つ以上を含み、前記マトリックスがシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、アルギニン、アルギニン異性体、および翻訳後修飾アルギニンの1つ以上を含み、前記マトリックスがジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程が、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項1】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって、
標準化合物を用意する工程と;
該標準化合物を同重体タグセット由来の同重体タグで標識する工程と;
1種類以上のアミン含有化合物の各々を、該同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された標準化合物の少なくとも一部を、該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部と組合わせて、組合わせ試料を作る工程と;
該組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給する工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を、親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、
第一に送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物1種類以上のm/z値を含み、第一に送られる娘イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の該同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含み;
第二に送られる親イオンのm/z範囲が1種類または同重体標識された標準化合物のm/z値を含み、第二に送られる娘イオンのm/z範囲が該同重体標識された標準化合物の該同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと該同重体標識された標準化合物に対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記試料の1つ以上が生理液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記試料の1つ以上が、農産物、動物製品、動物飼料、ヒト消費用の食物およびヒト消費用の飲料の1種類以上を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、2つ以上の試料由来の実質的に同一であるアミン含有化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記1種類以上のアミン含有化合物が1種類以上のアミノ酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記1種類以上のアミン含有化合物が同じアミノ酸の1種類以上の異性体を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記1種類以上のアミン含有化合物が前記同じアミノ酸の翻訳後修飾を1つ以上含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記1種類以上のアミン含有化合物が蛋白またはポリペプチドに含まれる1種類以上のアミン含有化合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記蛋白またはポリペプチドが1種類以上のチトクロームP450アイソフォームを含む、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記1種類以上のアミン含有化合物が1種類以上のカテコールアミンまたはニトロフラン代謝産物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記カテコールアミンがエピネフリン、ノルエピネフリン、およびL−ドーパの1つ以上を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記ニトロフラン代謝産物が3−アミノ−2−オキサゾリジノン、5−モルホリノメチル−3−アミノ−オキサゾリジノン、セミカルバジド、および1−アミノヒダントインの1つ以上を含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける前記工程が、トリプル四極子、四重極/飛行時間型質量分析計、リニアイオントラップ質量分析計、またはタンデム飛行時間型質量分析計の1つ以上を使用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける前記工程が、前記組み合わせ試料をマトリックス中で混合し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて該親−娘イオン遷移モニタリングのためのイオンを生成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記1種類以上のアミン含有化合物がリシン、リシン異性体、および翻訳後修飾リシンの1つ以上を含み、前記マトリックスがシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記1種類以上のアミン含有化合物がアルギニン、アルギニン異性体、および翻訳後修飾アルギニンの1つ以上を含み、前記マトリックスがジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する前記工程が、1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって:
1種類以上のアミン含有化合物の各々を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて、組合わせ試料を作る工程と;
該組合わせ試料の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給する工程と;
該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上のm/z値を含み、送られる娘イオンのm/z範囲が、該同重体標識されたアミン含有化合物の前記同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと標準化合物の濃度曲線との比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項19】
前記標準化合物の前記濃度曲線が
(a)第一濃度を有する標準化合物を用意すること;
(b)同重体タグセット由来の同重体タグで該標準化合物を標識すること;
(c)該同重体標識された標準化合物の少なくとも一部をクロマトグラフィーカラムに供給すること;
(d)該クロマトグラフィーカラムからの溶出液の少なくとも一部を親−娘イオン遷移モニタリングにかけ、送られる親イオンのm/z範囲は該同重体標識された標準化合物のm/z値を含み、送られる娘イオンのm/z範囲は該同重体標識された標準化合物の前記同重体タグに対応するリポータイオンのm/z値を含むものとすること;
(e)該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定すること;
(f)1つ以上の異なる標準化合物濃度について(a)−(e)を繰り返すこと;
(g)2つ以上の標準化合物濃度における該送られたリポータイオンの測定されたイオンシグナルに少なくとも基づいて、該標準化合物の濃度曲線を作成すること
によって作成される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上の濃度を決定する工程が、1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項18記載の方法。
【請求項21】
1つ以上の試料中の1種類以上のアミン含有化合物を分析する方法であって:
1種類以上のアミン含有化合物の各々を同重体タグセット由来の異なる同重体タグで標識する工程と;
該同重体標識された各アミン含有化合物の少なくとも一部を組合わせて、組合わせ試料を作る工程と、
該組合わせ試料の少なくとも一部をマトリックス支援レーザー脱離イオン化を用いて親−娘イオン遷移モニタリングにかける工程であって、第一に送られる親イオンのm/z範囲が該同重体標識されたアミン含有化合物の1種類以上のm/z値を含み、第一に送られる娘イオンのm/z値が該同重体標識されたアミン含有化合物の前記同重体タグの少なくとも1つに対応する少なくとも1つのリポータイオンのm/z値を含むものとする工程と;
1つ以上の該送られたリポータイオンのイオンシグナルを測定する工程と;
該対応するリポータイオンの測定されたイオンシグナルと標準化合物の測定されたイオンシグナルとの比較に少なくとも基づいて、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項22】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、リシン、リシン異性体、および翻訳後修飾リシンの1つ以上を含み、前記マトリックスがシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)を含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記1種類以上のアミン含有化合物が、アルギニン、アルギニン異性体、および翻訳後修飾アルギニンの1つ以上を含み、前記マトリックスがジヒドロキシ安息香酸(DHB)を含む、請求項21記載の方法。
【請求項24】
1種類以上の前記同重体標識されたアミン含有化合物の濃度を決定する工程が、1種類以上の該同重体標識されたアミン含有化合物の絶対濃度を決定することを含む、請求項21記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図25G】
【図25H】
【図25I】
【図25J】
【図25K】
【図25L】
【図25M】
【図25N】
【図25O】
【図25P】
【図25Q】
【図25R】
【図25S】
【図25T】
【図25U】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図25D】
【図25E】
【図25F】
【図25G】
【図25H】
【図25I】
【図25J】
【図25K】
【図25L】
【図25M】
【図25N】
【図25O】
【図25P】
【図25Q】
【図25R】
【図25S】
【図25T】
【図25U】
【図26】
【図27A】
【図27B】
【公表番号】特表2008−530556(P2008−530556A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555212(P2007−555212)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/004548
【国際公開番号】WO2006/086540
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/004548
【国際公開番号】WO2006/086540
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505123697)アプレラ コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】
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