説明

アミン類の調製方法

本発明は、一般式(I)(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)の化合物の新規の調製方法であって、一般式(II)〔式中、R1及びR2は式(I)の化合物について示した意味を有し、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである〕の化合物、又は一般式(III)〔式中、R1、R2、R3及びPhは式(II)の化合物について示した意味を有する〕の化合物を還元剤で処理することを含み、前記還元剤が式(II)の化合物又は式(III)の化合物のベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効であり、さらに、式(III)の化合物の場合には、ベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である前記一般式(I)の化合物の新規の調製方法に関する。本発明はまた、式(II)及び(III)の化合物並びにこれらの前駆物質の調製方法、新規化合物である化合物(II)及び(III)それ自体並びにこれらのある種の前駆物質に関する。化合物(I)は、種々の殺菌性複素環カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミドの調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある種の5−アミノ−ベンゾノルボルネン類の新規な調製方法、及び殺生物剤、特に殺菌剤として有用なカルボン酸ベンゾノルボレニル−アミドを調製するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の複素環カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミド類、これらの調製方法及びこれらの殺生物剤としての使用は、国際公開第WO04/035589号明細書に記載されている。国際公開第WO04/035589号明細書によれば、これらのアミド類は以下のスキーム1に概説するようにして調製し得る。
【0003】
【化1】

【0004】
スキーム1に示される合成において、6−ニトロ−アントラニル酸(A)から生成する3−ニトロベンジンは、環状1,4−ジエン(B)、例えば5−イソプロピル−シクロペンタジエンと反応し、ディールス−アルダー反応で5−ニトロ−ベンゾノルボルナジエン(C)を形成する。標準的な接触還元条件(例えば、ラネーニッケル又はパラジウム担持炭素をメタノールなどの溶媒中で使用する)下で、5−ニトロ−ベンゾノルボルナジエン(C)の5−ニトロ基と2,3−二重結合が還元されて5−アミノ−ベンゾノルボルネン(D)を生成する。5−アミノ−ベンゾノルボルネン(D)と、複素環式カルボン酸又は複素環カルボン酸誘導体(E)(式中、Qはヒドロキシル、弗素、塩素又は臭素であり得る)との、溶媒、例えばジクロロメタン中での反応は、殺菌性複素環カルボン酸ベンゾノルボルネン−5−イル−アミド(F)を形成する。(D)の例は、5−アミノ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンであり、これは、例えば、3−ジフルオロメチル−1−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボン酸のアミドの前駆物質である。
【0005】
スキーム1に概説される合成に関する問題は、多数の望まれていない異性体不純物が形成されることである。例えば、ディールス−アルダー反応による5−ニトロ−ベンゾノルボルナジエン(C)(式中、R4、R5、R6及びR7は全てHであり、且つYはCH−イソプロピルである)の調製においては、以下の位置異性体が形成される:
【化2】

【0006】
あいにく、所望の異性体C1は、比較的低い収率で形成される。望まれていない異性体は、ディールス−アルダー反応の終わりか又はその後の工程かいずれかで、慣用の方法、例えば分別結晶法又は分別蒸留法で、あるいはクロマトグラフ法で除去し得るが、この合成経路は大規模調製に十分に適合していない。
【0007】
この問題の解決策は、5−アミノ−ベンゾノルボルネン(D)を経済的に好ましい方法で良好な収率及び品質で調製することを可能にする本方法によって提供される。
【0008】
従って、本発明によれば、一般式(I):
【化3】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、一般式(II):
【化4】

〔式中、R1及びR2は式(I)の化合物について示した意味を有し、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである〕
の化合物、又は一般式(III):
【化5】

〔式中、R1、R2、R3及びPhは式(II)の化合物について示した意味を有する〕
の化合物を還元剤で処理することを含み、前記還元剤が式(II)の化合物又は式(III)の化合物のベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効であり、さらに、式(III)の化合物の場合には、ベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である、前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0009】
それぞれのアルキル部分は、直鎖又は分岐鎖であり、それが1〜4個又は1〜6個の炭素原子を含有するか否かに応じて、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソ−プロピル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、ネオ−ペンチル、n−ヘキシル又は1,3−ジメチルブチルである。
【0010】
1及びR2は、独立してH又はC1-6アルキルである。R1及びR2は、両方がHであってもよいし、又は一方がHであり、他方がC1-6アルキル基であってもよいし、あるいは両方が同じアルキル基であるか又は異なるアルキル基であってもよい。特に重要なものは、R1及びR2がH、メチル及びエチルから選択される化合物、特にR1及びR2が共にメチルである化合物である。
【0011】
3はH又はC1-4アルキルである。最も好都合なのは、R3がHである。
【0012】
一般式(II)の化合物は、2つの立体異性体(IIa)又は(IIb)のいずれかであってもよいし、あるいは両者の任意の割合の混合物であってもよく、(IIa)はシン形エピマーであり、(IIb)はアンチ形エピマーである:
【化6】

【0013】
シン形エピマー(IIa)は、2つの立体異性体:すなわちシン(+)体及びシン(−)体で存在することができる。本発明は、両方の立体異性体の使用及び両方の立体異性体の任意の割合の混合物の使用を保護する。アンチ形エピマー(IIb)は、2つの立体異性体:すなわちアンチ(+)体及びアンチ(−)体で存在することができる。本発明は、両方の立体異性体の使用及び両方の立体異性体の任意の割合の混合物の使用を保護する。
【0014】
一般式(III)の化合物は、2つの立体異性体:すなわち(+)体及び(−)体で存在することができる。本発明は、両方の立体異性体の使用及び両方の立体異性体の任意の割合の混合物の使用を保護する。
【0015】
一般式(I)の化合物は、2つの立体異性体(Ia)又は(Ib)のいずれかであってもよいし、あるいは両者の任意の割合の混合物であってもよく、(Ia)はシン形エピマーであり、(Ib)はアンチ形エピマーである:
【化7】

【0016】
シン形エピマー(Ia)は、2つの立体異性体:すなわちシン(+)体及びシン(−)体で存在することができる。本発明は、両方の立体異性体の調製及び両方の立体異性体の任意の割合の混合物の調製を保護する。アンチ形エピマー(Ib)は、2つの立体異性体:すなわちアンチ(+)体及びアンチ(−)体で存在することができる。本発明は、両方の立体異性体の調製及び両方の立体異性体の任意の割合の混合物の調製を保護する。
【0017】
式(II)の化合物のベンジル部分の還元開裂は、有効な還元剤を使用して実施し得る。特に有効なのは、金属水素添加触媒、例えばロジウム触媒、好ましくはパラジウム触媒、例えばパラジウム担持炭素の存在下での水素である。
【0018】
使用する還元剤の量は、標準的には化合物(II)の1〜5モル当量、典型的には1〜1.3モル当量である。還元剤が水素である場合には、使用する還元剤の量は、標準的には化合物(II)の0.001〜0.5モル当量、典型的には0.01〜0.1モル当量である。金属触媒水素添加は、標準的にはシン形エピマー(IIa)とアンチ形エピマー(IIb)の混合物を生成する。
【0019】
還元は、不活性溶媒、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールもしくは2−プロパノール、又はプロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、酢酸エチルもしくはジメトキシエタン、あるいはこのような溶媒の混合物の中で実施するのが都合がよい。典型的には、溶媒はテトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0020】
還元を実施する温度は重要ではない。還元は、0℃〜80℃、典型的には0℃〜25℃、都合よくは周囲温度で実施するのが適している。同様に、圧力は重要ではなく、還元は、加圧又は減圧で行ってもよいが、周囲圧力で行うのが都合がよい。
【0021】
還元を完結するのに要する時間は、特に、反応条件及び規模に左右されるが、標準的には1〜48時間、典型的には1〜6時間を要する。
【0022】
式(III)の化合物のベンジル部分の還元開裂もまた、有効な還元剤を使用して実施し得る。式(II)の化合物の還元に関して上記に記載の還元剤、触媒、溶媒の種類及び反応条件は、2つの二重結合のさらなる還元及びベンジル部分の開裂のために使用する還元剤の量が標準的には化合物(III)の3〜6モル当量、典型的には3〜3.3モル当量であることを除いて、同様に式(III)の化合物の還元について有効である。使用する触媒の量、反応の温度及び圧力並びに反応に要する時間は、式(II)の化合物の還元とほとんど同じである。
【0023】
一般式(II)の化合物は、本発明の別の態様を形成する方法によって調製してもよい。この方法は、一般式(IV):
【化8】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化9】

(式中、R3及びPhは前記の意味を有する)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させることを含む。
【0024】
上記の方法を実施するのに適した塩基としては、アルコキシド類、例えばナトリウムtert−ブトキシド及びカリウムtert−ブトキシド並びにナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシド、並びに無機塩基、例えば炭酸塩、例えば炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸セシウム、水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、並びにリン酸塩、例えばリン酸カリウムが挙げられる。特に有用なものは、アルコキシド、特にナトリウムtert−ブトキシドである。
【0025】
水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを塩基として使用する場合には、相間移動触媒、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミドを加えてもよい。
【0026】
使用する塩基の量は、典型的には化合物(IV)の1〜3モル当量、例えば1〜2モル当量である。
【0027】
この方法で使用されるパラジウム錯体は、一般にパラジウム前駆物質と少なくとも1種の適当なリガンド配位子から形成される。上記方法が溶媒中で実施される場合には、錯体は標準的には溶媒に溶解する。この方法との関連で、パラジウム錯体としては、特に環状有機パラジウム化合物(「パラダサイクル(palladacycles)」)と第二級ホスフィン配位子とから構成されるパラジウム錯体が挙げられる。
【0028】
パラジウム錯体は、堅固な(robust)予備形成種として使用してもよいし又はその場で形成してもよい。典型的には、パラジウム錯体は、パラジウム前駆物質を少なくとも1種の適当な配位子と反応させることによって製造される。不完全な転換の場合には、パラジウム前駆物質又は配位子の残った量が反応混合物に溶解されないで存在し得る。
【0029】
有用なパラジウム前駆物質は、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、塩化パラジウム溶液、(パラジウム)2−(ジベンジリデンアセトン)3又はパラジウム−(ジベンジリデンアセトン)2、パラジウム−テトラキス(トリフェニルホスフィン)、パラジウム/炭素、パラジウムジクロロ−ビス(ベンゾニトリル)、パラジウム−(トリス−tert−ブチルホスフィン)2、又は(パラジウム)2−(ジベンジリデンアセトン)3とパラジウム−(トリス−t−ブチルホスフィン)2との混合物から選択し得る。
【0030】
有用な配位子は、例えば、第三級ホスフィン配位子、N−複素環カルベン配位子及びホスフィン酸配位子である。第三級ホスフィン配位子は、一般に2つの種類:単座配位子及び二座配位子を有する。単座配位子は1つのパラジウム配位部位を占有し得、これに対して二座配位子は2つの配位部位を占有し得るのでパラジウム種をキレート化することができる。
【0031】
以下は、第三級ホスフィン配位子、N−複素環カルベン配位子及びホスフィン酸配位子の例並びに第二級ホスフィン配位子を有するパラダサイクルの例である。
【0032】
(A)単座ホスフィン配位子:
トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(「P(tBu)3HBF4」)、トリス−オルト−トリルホスフィン(「P(oTol)3」)、トリス−シクロヘキシルホスフィン(「P(Cy)3」)、2−ジ−tert−ブチル−ホスフィノ−1,1’−ビスフェニル(「P(tBu)2BiPh」)、2−ジ−シクロヘキシル−ホスフィノ−1,1’−ビスフェニル(「P(Cy)2BiPh」)、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビスフェニル(「x−Phos」)、及びtert−ブチル−ジ−1−アダマンチル−ホスフィン(「P(tBu)(Adam)2」)。
単座ホスフィン配位子に関するさらなる情報は、米国特許出願公開第2004−0171833号明細書に見出すことができる。
【0033】
(B)二座第三級ホスフィン配位子:
(B1)ビホスフィン配位子:
(B1.1)フェロセニル−ビホスフィン配位子(「Josiphos」配位子):
1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(dppf)、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−フェロセン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチル−ジ−tert−ブチルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチル−ジ−tert−ブチルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジ−フリルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−3,5−キシリルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(S)−(+)−1−[(R)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジフェニルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)フェロセニル]エチル−ジ−o−トリルホスフィン
【化10】

(R)−(−)−1−[(S)−2−(ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィノ)フェロセニル]−エチル−ジ−tert−ブチルホスフィン
【化11】

(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジエチルホスフィノ)フェロセニル]−エチル−ジ−tert−ブチルホスフィン
【化12】

(R)−(−)−1−[(S)−2−(P−メチル−P−イソプロピル−ホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン
【化13】

(R)−(−)−1−[(S)−2−P−メチル−P−フェニル−ホスフィノ)フェロセニル]エチル−ジ−tert−ブチルホスフィン
【化14】

並びにこれらのラセミ混合物、特に1−[2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−フェロセニル]エチル−ジ−o−トリルホスフィン、1−[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン及び1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィンのラセミ混合物。
【0034】
(B1.2)ビナフチル−ビスホスフィン配位子:
2,2’ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(「BINAP」)、R−(+)−2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(「Tol−BINAP」)、ラセミ2,2’−ビス(ジ−p−トリルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(「ラセミTol−BINAP」)。
【0035】
(B1.3)9,9−ジメチル−4,5−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)−キサンテン(「Xantphos」)。
【0036】
(B2)アミノホスフィン2配位子:
(B2.1)ビフェニル配位子:
2−ジシクロヘキシルホスフィノ−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1’−ビフェニル(「PCy2NMe2BiPh」)
2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−(N,N−ジメチルアミノ)−1,1’−ビフェニル(「P(tBu)2NMe2BiPh」)。
【0037】
(C)N−複素環カルベン配位子:
1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(「I−Pr」)、1,2−ビス(1−アダマンチル)−イミダゾリウムクロリド(「I−Ad」)及び1,3−ビス−(2,6−メチルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(「I−Me」)。
【0038】
(D)ホスフィン酸配位子:
ジ−tert−ブチル−ホスフィンオキシド。
(E)第二級ホスフィン配位子を含有するパラダサイクル:
式(A−1)の錯体
【化15】

(式中、「norb」はノルボルニルである)及び式(A−2)の錯体
【化16】

【0039】
パラジウム錯体(A−1)は、Synlett,2549−2552(2004)にコード名「SK−CC01−A」として記載されている。パラジウム錯体(A−2)は、Synlett(同上)にコード名「SK−CC02−A」として記載されている。
【0040】
ホスフィン酸配位子を含有するパラジウム錯体の別の例は、J.Org.Chem.66,8677−8681にコード名「POPd」、「POPd2」及び「POPd1」として記載されている。
【0041】
N−複素環カルベン配位子を含有するパラジウム錯体の別の例は、ナフトキノン−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウム(「Pd−NQ−[Pr]2」)、ジビニル−テトラメチルシロキサン−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウム(「Pd−VTS−IPr」)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムジクロリド(「Pd−Cl−IPr」)、1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムジアセテート(「Pd−OAc−IPr」)、アリル−1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾール−2−イリデン−パラジウムクロリド(「Pd−Al−Cl−IPr」)及び式(A−3):
【化17】

(式中、R5は2,6−ジイソプロピルフェニル又は2,4,6−トリメチルフェニルである)
の化合物。[Pd−NQ−IPr]2、Pd−VTS−IPr、Pd−Cl−IPr、Pd−OAc−IPr及びPd−Al−Cl−IPrに関するさらなる情報は、Organic Letters,4,2229−2231(2002)及びSynlett.,275−278(2005)に記載されている。式(A−3)の化合物に関するさらなる情報は、Organic Letters,5,1479−1482(2003)に見出すことができる。
【0042】
単一のパラジウム錯体又は種々のパラジウム錯体の混合物は、一般式(II)の化合物の調製方法で使用し得る。
【0043】
パラジウム錯体の形成に特に有用なパラジウム前駆物質は、酢酸パラジウム、パラジウム2−(ジベンジリデンアセトン)3、パラジウム−(ジベンジリデンアセトン)2、塩化パラジウム溶液から又はパラジウム2−(ジベンジリデンアセトン)3とパラジウム−(ジベンジリデンアセトン)2との混合物から選択されるパラジウム前駆物質である。酢酸パラジウムが、塩化パラジウムのように特に有用である。
【0044】
少なくとも1個の配位子がパラジウム錯体の形成に使用される。標準的には、パラジウム錯体は、単座第三級ホスフィン配位子、二座第三級ホスフィン配位子及びN−複素環カルベン配位子から選択される少なくとも1個の配位子を有し、典型的にはフェロセニル−ビホスフィン配位子、ビナフチル−ビスホスフィン配位子及びアミノホスフィン配位子から選択される少なくとも1個の配位子を有する。
【0045】
特に適しているのは、トリ−tert−ブチルホスフィン、P(tBu)3HBF4、P(oTol)3、P(Cy)3、P(tBu)2BiPh、P(Cy)2BiPh、x−Phos、P(tBu)(Adam)2、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチル−ホスフィン、ラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスフィン、ラセミ1−[2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスフィン、dppf、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−フェロセン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、ラセミ1−[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジシクロヘキシルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、BINAP、Tol−BINAP、ラセミTol−BINAP、Xantphos、PCy2NMe2BiPh、P(tBu)2NMe2BiPh、I−Pr、I−Ad及びI−Meから選択される少なくとも1個の配位子を含有するパラジウム錯体、及び式(A−3)(式中、R5は2,6−ジイソプロピルフェニル又は2,4,6−トリメチルフェニルである)の錯体である。
【0046】
好ましいのは、トリ−tert−ブチルホスフィン、P(tBu)3HBF4、P(tBu)2BiPh、P(Cy)2BiPh、x−Phos、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、ラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスフィン、ラセミ1−[2−(ジ−tert−ブチル−ホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−o−トリルホスフィン、dppf、PCy2NMe2BiPh及びI−Prから選択される少なくとも1個の配位子を有するパラジウム錯体である。
【0047】
特に重要なのは、次の群:
(i)トリ−tert−ブチルホスフィン、P(tBu)3HBF4、P(tBu)2BiPh、P(Cy)2BiPh、x−Phos、PCy2NMe2BiPh及びI−Pr;
(ii)トリ−tert−ブチルホスフィン、P(tBu)3HBF4、PCy2NMe2BiPh及びI−Pr;
(iii)トリ−tert−ブチルホスフィン及びP(tBu)3HBF4;並びに
(iv)(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン及びラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン;
から選択される少なくとも1個の配位子を含有するパラジウム錯体である。
【0048】
最も好ましいのは、配位子としてPCy2NMe2BiPh、I−Pr、(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィン又はラセミ1−[2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィンを含有するパラジウム錯体である。
【0049】
特に好ましい錯体は、前駆物質が塩化パラジウムであり、且つ配位子が(R)−(−)−1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)フェロセニル]エチルジ−tert−ブチルホスフィンである錯体である。
【0050】
パラジウム錯体は、式(II)の化合物の調製において触媒量で、標準的には式(IV)の化合物に対して1:10〜1:10000の比で、典型的には1:100〜1:1000、例えば1:500〜1:700又は約1:600の比で使用される。錯体は、予備形成されていてもよいし又はその場で前駆物質と配位子とを一緒に混合することによって形成されていてもよく、前駆物質と配位子は一般に当モル量で又はその近辺で使用される。
【0051】
式(IV)の化合物を用いる反応に使用される式(V)の化合物は、式中のR3がHであるベンジルアミンそれ自体であることが都合がよい。
【0052】
化合物(IV)及び(V)を当モル量で用いるか又は化合物(V)を過剰に用いるのが都合がよい。例えば、使用する式(V)の化合物の量は、適切には化合物(IV)の1〜3モル当量、典型的には1〜2当量、例えば、ほぼ1.5モル当量である。
【0053】
式(II)の化合物の調製は、不活性有機溶媒中で実施されるのが都合よく、不活性有機溶媒は乾燥していることが好ましい。適当な溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、ジ(エチレングリコール)ジメチルエーテル(ジグライム)、tert−ブチルメチルエーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン又はキシレン、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい溶媒は、一般式:
【化18】

(式中、RはC1-4アルキルである)
を有するジエチレングリコールジアルキルエーテルである。最も都合のよい溶媒は1,2−ジメトキシエタン又はジグライムである。
【0054】
しかし、前記方法は、溶媒なしで行ってもよい。この場合には、式(V)の化合物は、標準的には式(IV)の化合物の過剰で使用される。
【0055】
溶媒を用いようと又は用いなかろうと、前記方法は、周囲温度又は高められた温度で、好ましくは50℃〜200℃、典型的には80℃〜150℃の範囲内で行い得る。また前記方法は、周囲圧力、加圧又は減圧で、都合よくは周囲圧力で行い得る。
【0056】
反応に要する時間は、特に、実施する規模、使用される反応剤及び反応条件に左右される。しかし、標準的には、反応に要する時間は、1〜48時間、典型的には4〜30時間、例えば4〜18時間である。
【0057】
前記方法は、不活性雰囲気、例えば窒素又はアルゴンの雰囲気で、最も都合よくは窒素の雰囲気で実施することが有利であり得る。
【0058】
式(II)の化合物の調製方法を実施するための一般的な条件に関する別の情報は、当業者にはアルキルアミンとのパラジウム触媒クロスカップリング反応によるハロベンゼンからのアニリン類の調製に関する文献において入手できる。このようなカップリングに関する総説は、例えば、Handbook of Organopalladium Chemistry for Organic Synthesis,Vol.1,1051−1096(2002)、Journal of Organometallic Chemistry,576,125−146(1999)及びJournal of Organometallic Chemistry,653,69−82(2002)に出ている。
【0059】
一般式(III)の化合物は、本発明のさらに別の態様をなす方法で調製し得る。この方法は、一般式(IV):
【化19】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化20】

(式中、R3及びPhは前記の意味を有する)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させることを含む。
【0060】
上記の塩基、パラジウム錯体、化合物(V)及びプロセス条件は、5−クロロ−又は5−ブロモ−ベンゾボルネン(IV)から化合物(II)を調製する方法について上記に記載のものと同じである。しかし、この場合には、特に好ましいパラジウム錯体は、前駆物質が塩化パラジウムであり、且つ配位子がカルベン配位子I−Prである錯体である。また、化合物(II)の方法について記載した全ての詳細が、化合物(III)の方法に同様に適用できる。
【0061】
1とR2が異なる場合には、一般式(III)及び(IV)の化合物は、E−異性体又はZ−異性体として、あるいは両者の任意の割合の混合物として存在し得る。
【0062】
式(I)の化合物の調製に有用であるのと同様に、式(III)の化合物は、式(II)の化合物を調製するのに使用し得る。
【0063】
従って、本発明のさらに別の態様において、一般式(II):
【化21】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物の調製方法であって、一般式(III):
【化22】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を還元剤で処理することを含み、前記還元剤がベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残すのに有効である前記一般式(II)の化合物の調製方法が提供される。
【0064】
この方法に適した還元剤は、金属水素添加触媒、例えばロジウム触媒、例えばロジウム担持炭素の存在下の水素である。
【0065】
使用する還元剤の量は、標準的には化合物(III)の2〜6モル当量、典型的には2〜2.3モル当量である。
【0066】
使用する触媒の量は、標準的には化合物(III)の0.001〜0.5モル当量、典型的には0.01〜0.1モル当量である。
【0067】
還元は、不活性溶媒、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールもしくは2−プロパノール、又はプロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、酢酸エチルもしくはジメトキシエタン、あるいはこのような溶媒の混合物の中で実施するのが都合がよい。典型的には、溶媒はテトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0068】
還元を実施する温度は重要ではない。還元は、0℃〜80℃、典型的には0℃〜25℃、都合よくは周囲温度で実施するのが適している。同様に、圧力は重要ではなく、還元は、加圧又は減圧で行ってもよいが、周囲圧力〜4バールの圧力で行うのが都合がよい。
【0069】
還元を完結するのに要する時間は、特に、反応条件及び規模に左右されるが、標準的には1〜48時間、典型的には1〜6時間を要する。
【0070】
一般式(IV)の5−クロロ−又は5−ブロモ−ベンゾノルボルネンは、一般式(VI):
【化23】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を還元剤で処理することを含む方法で調製し得、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である。
【0071】
この方法に適した還元剤は、金属水素添加触媒、例えばラネーニッケル、白金担持炭素、酸化白金(IV)、パラジウム担持炭素、ロジウム担持炭素、酸化ロジウム(III)又はロジウム担持アルミナ触媒の存在下の水素である。ロジウム担持炭素、パラジウム担持炭素又は白金担持炭素が理想的である。本発明の一つの実施形態においては、ロジウム担持炭素又はパラジウム担持炭素が使用される。
【0072】
使用する還元剤の量は、標準的には化合物(VI)の2〜6モル当量、典型的には2〜2.3モル当量である。
【0073】
使用する触媒の量は、標準的には化合物(VI)の0.01〜50モル%、典型的には0.1〜20モル%である。
【0074】
還元は、不活性溶媒、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノールもしくは2−プロパノール、又は溶媒、例えばテトラヒドロフラン、酢酸エチル、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタンもしくはジクロロメタン、あるいはこのような溶媒の混合物の中で実施するのが都合がよい。典型的には、溶媒はテトラヒドロフラン、エタノール又はメタノール、好ましくはテトラヒドロフラン又はメタノールである。
【0075】
還元を実施する温度は重要ではない。還元は、0℃〜100℃、典型的には0℃〜30℃、都合よくは20℃〜25℃で実施するのが適している。
【0076】
同様に、圧力は重要ではなく、還元は、1〜150バール、標準的には1〜50バール、典型的には1〜25バール、例えば1〜10バールで行い得る。
【0077】
式(IV)の化合物は、シン形エピマー又はアンチ形エピマーとしてあるいは両者の混合物として取得し得る。標準的には、式(IV)の化合物は、上記2種類のエピマーの混合物として、特に選択される個々の水素添加触媒に応じた比率で得られる。
【0078】
一般式(VI)の5−クロロ−又は5−ブロモベンゾノルボルナジエンは、一般式(VII):
【化24】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化25】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させることを含む方法で調製し得る。
【0079】
どのようにハロベンジン(VII)が生成するかに応じて、前記方法は、有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、メチル−エチル−ケトン、酢酸エチル、酢酸メチルあるいは芳香族又は脂肪族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン又は石油エーテル中で且つ−20℃〜+10℃の温度で実施され、温度は反応を完結させるために周囲温度まで又はそれよりも高い温度まで高めてもよい。
【0080】
式(VI)の5−クロロ−又は5−ブロモベンゾノルボルナジエンは、反応混合物を水性媒体中で、例えば飽和塩化アンモニウム溶液中で反応停止させ、生成物を酢酸エチルのような溶媒に抽出し、溶媒抽出液を、例えば食塩水や水で洗浄し、それを乾燥し、溶媒を蒸発させてハロベンゾボルナジエン(VI)を得ることによって単離し得る。これはヘキサンのような溶媒から結晶化によってさらに精製し得る。
【0081】
ハロベンジン(VII)は、式(IX)又は(X):
【化26】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと不活性雰囲気中で反応させることを含む方法で得てもよい。
【0082】
Xは塩素であることが好ましい。
【0083】
1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドは、好ましくはクロリド又はブロミド、さらに好ましくはイソプロピルマグネシウムクロリド又はブロミドである。
【0084】
1-6アルキル−もしくはフェニルリチウムを使用する場合には、反応は、5−クロロ−又は5−ブロモベンゾボルナジエンを直接得るためにフルベン(VIII)の存在下で実施される。この場合には、反応は、溶媒、例えばトルエン、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン又は石油エーテル中で、−20℃〜0℃の温度、典型的には−10℃〜0℃の温度で実施される。反応混合物は、前記のように水性媒体中で反応停止させることによって単離するのに先立って周囲温度まで温めてもよい。
【0085】
1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドを使用する場合には、5−クロロ−又は5−ブロモベンゾボルナジエンは、段階的な手順で形成してもよく、ハロベンジン(VII)は最初の工程で形成され、5−クロロ−又は5−ブロモベンゾボルナジエンは、第二工程でその後のフルベン(VIII)の添加によるか又はその後のフルベン(VIII)に対する添加によるかいずれかで形成される。ハロベンゼン(IX)又は(X)とC1-6アルキル−又はフェニルマグネシウムハライドとの間の最初の工程の反応は、−78℃〜0℃の温度で、典型的には−20℃〜−10℃の温度で実施される。最初の場合には、その後のフルベン添加は−20℃〜+10℃、典型的には−10℃〜0℃で行われる。反応は、混合物を周囲温度まで加熱するか又は好ましくは使用する溶媒の還流温度まで加熱することによって行われる。第二の場合には、その後のフルベンに対する添加は、20℃〜100℃で実施され、典型的には70℃〜95℃で実施される。反応は、転化を完結させるためにさらに1時間攪拌される。
【0086】
適当な溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、ペンタン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられ、好ましくはトルエン、テトラヒドロフラン又はヘキサンが挙げられる。5−クロロ−又は5−ブロモベンゾボルナジエンは、次いで、前記のように水性媒体中で反応停止させることによって単離し得る。
【0087】
反応を実施する不活性雰囲気は、例えば、窒素雰囲気である。
【0088】
この種の転換は、J.CoeによるOrganic Letters,6,1589(2004)又はP.KnochelによるAngew.Chem.116,4464(2004)に記載されている。
【0089】
式(IX)又は(X)の1,2,3−トリハロベンゼンは、公知である及び/又は公知の方法で調製することができる。例えば、1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼンは、いわゆるサンドマイヤー反応で2,3−ジクロロ−アニリンから調製し得る。このようなサンドマイヤー反応は、有機亜硝酸エステル、例えば亜硝酸tert−ブチル又は亜硝酸イソ−ペンチルを、有機溶媒、例えばアセトニトリル中で、臭素化剤として臭化第二銅の存在下で使用することによるか(Journal of Organic Chemistry,1977,42,2426−31に記載のようにして)又は酸性水性反応媒体中で0℃〜15℃の温度で無機亜硝酸塩を使用するジアゾ化、次いで反応混合物を臭化第一銅溶液に加えることを伴う2工程反応によるか(Recueil des Travaux Chimiques des Pays−Bas et de Ia Belgique,1932,51,98−113及びJP−6−2114−921に記載のようにして)いずれかで行うことができる。
【0090】
6−アルキルフルベン又は6,6−ジアルキルフルベンは、M.Neuenschwanderら、HeIv.Chim.Acta.,54,1037(1971)、同上48,955(1965)、R.D.Littleら、J.Org.Chem.,49,1849(1984)、I.Erdenら、J.Org.Chem.,60,813(1995)及びS.Collinsら、J.Org.Chem.,55,3395(1990)に記載のようにして調製し得る。
【0091】
一般式(VIII):
【化27】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンは、シクロペンタ−1,3−ジエンと、化合物(VIIIa):
【化28】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
との、塩基の存在下での反応によって調製することができる。塩基として、ピロリジン、モルホリン又はチオモルホリンを使用するのが好ましく、さらに好ましいのはピロリジンである。この反応では、0.01〜1当量の塩基を使用できる。好ましくは0.25〜0.8当量の塩基を使用できる。
【0092】
6,6−ジメチルフルベンの調製:
メタノール950g(30mol)、アセトン543g(7.8mol)及びシクロペンタジエン397g(6mol)を混合し、−5℃に冷却する。ピロリジン107g(1.5mol)を注意深く加える。反応混合物を−5℃で2時間攪拌する。反応を酢酸と水を加えることによって停止させる。相分離の後に、有機相を食塩水で抽出し、溶媒を蒸発させる。535gの6,6−ジメチルフルベンが得られる(純度:93%; 収率:理論値の78%)。
【0093】
便宜上、前述の反応を以下のスキーム2に要約する。
【化29】

【0094】
既に上記で論じたように、本発明は、別々の態様に、下記を包含する:
(1)(II)又は(III)から(I)の形成、
(2)(IV)から(II)の形成、
(3)(VI)から(III)の形成、
(4)(III)から(II)の形成、
(5)(VI)から(IV)の形成、
(6)(VII)から(VI)の形成、及び
(7)(IX)又は(X)から(VII)の形成。
【0095】
本発明は、さらに、下記を伴う次の多工程法を包含する:
(8)(IV)から(II)を経由する(I)の形成、
(9)(VI)から(III)を経由する(I)の形成、
(10)(VI)から(IV)及び(II)を経由する(I)の形成、
(11)(VI)から(III)及び(II)を経由する(I)の形成、
(12)(IX)又は(X)から(VII)を経由する(VI)の形成、
(13)(IX)又は(X)から(VI)及び(III)を経由する(I)の形成、
(14)(IX)又は(X)から(VI)、(IV)及び(II)を経由する(I)の形成、並びに、
(15)(IX)又は(X)から(VI)、(III)及び(II)を経由する(I)の形成。
【0096】
従って、本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化30】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)一般式(IV):
【化31】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化32】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化33】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0097】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化34】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)一般式(VI):
【化35】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化36】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化37】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残し、且つベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0098】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化38】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)一般式(VI):
【化39】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元して一般式(IV):
【化40】

(式中、R1、R2及びXは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(b)このようにして形成された一般式(IV)の化合物を、一般式(V):
【化41】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化42】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0099】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化43】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)一般式(VI):
【化44】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化45】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化46】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残して一般式(II):
【化47】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(c)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0100】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(VI):
【化48】

(式中、R1及びR2は 独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物の調製方法であって、式(IX)又は(X):
【化49】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンと、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドとを、一般式(VIII):
【化50】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンの存在下に不活性有機溶媒中で及び不活性雰囲気中で反応させることを含む前記一般式(VI)の化合物の調製方法が提供される。
【0101】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化51】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)式(IX)又は(X):
【化52】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと不活性雰囲気中で反応させて、一般式(VII):
【化53】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化54】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化55】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を、一般式(V):
【化56】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化57】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(d)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残し、且つベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0102】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化58】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)式(IX)又は(X):
【化59】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと、不活性雰囲気中で反応させて一般式(VII):
【化60】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化61】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化62】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元して一般式(IV):
【化63】

(式中、R1、R2及びXは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(d)このようにして形成された一般式(IV)の化合物を、一般式(V):
【化64】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化65】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(e)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む前記一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0103】
本発明のさらに別の態様によれば、一般式(I):
【化66】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、
(a)式(IX)又は(X):
【化67】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと不活性雰囲気中で反応させて一般式(VII):
【化68】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化69】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化70】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を、一般式(V):
【化71】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化72】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(d)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残して一般式(II):
【化73】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(e)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む前記の一般式(I)の化合物の調製方法が提供される。
【0104】
本発明の方法で調製し得る一般式(I)の化合物の具体例は、以下の表1に挙げる化合物である。
【化74】

【0105】
表1に、R1及びR2の値を特性データと共に示す。
【表1】

【0106】
一般式(II)、(III)、(IV)及び(VI)の中間体化合物は新規化合物であり、本発明のさらに別の態様を形成する。
【0107】
従って、本発明はまた、一般式(II):
【化75】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
の化合物を提供する。
【0108】
特に重要なのは、R1及びR2がH、メチル及びエチルから選択される化合物(II)であり、特にR1及びR2が共にメチルである化合物(II)である。R3はHであるのが好ましい。
【0109】
一般式(II)の化合物の具体例は、以下の表2に挙げる化合物である。表2において、R3はHであり、Phはフェニルであり、且つR1及びR2の値を特性データと共に示す。
【表2】

【0110】
本発明は、さらに一般式(III):
【化76】

(式中、R1及びR2は、独立してH又はC1-6アルキルであり、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
の化合物を提供する。特に重要なのは、R1及びR2がH、メチル及びエチルから選択される化合物(III)であり、特にR1及びR2が共にメチルである化合物(III)である。R3はHであるのが好ましい。R1とR2が異なる場合には、化合物(III)はE−鏡像異性体又はZ−鏡像異性体としてあるいは両者の任意の割合の混合物として存在し得る。本発明は、個々の鏡像異性体及びこれらの任意の混合物を包含する。
【0111】
一般式(III)の化合物の具体例は、以下の表3に挙げる化合物である。表3において、R3はHであり、Phはフェニルであり、且つR1及びR2の値は特性データと共に示される。
【表3】

【0112】
本発明は、さらに一般式(IV):
【化77】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を提供する。特に重要なのは、R1及びR2がH、メチル及びエチルから選択される化合物(II)であり、特にR1及びR2が共にメチルである化合物(II)である。Xは塩素であることが好ましい。
【0113】
一般式(IV)の化合物の具体例は、以下の表4に挙げる化合物である。表4に、R1、R2及びXの値を特性データと共に示す。
表4
【表4】

【0114】
本発明は、さらに一般式(VI):
【化78】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を提供する。特に重要なのは、R1及びR2がH、メチル及びエチルから選択される化合物(VI)であり、特にR1及びR2が共にメチルである化合物(VI)である。Xは塩素であるのが好ましい。R1とR2が異なる場合には、化合物(VI)は、E−異性体又はZ−異性体としてあるいは両者の任意の割合の混合物として存在し得る。本発明は、個々の鏡像異性体及びこれらの任意の混合物を包含する。
【0115】
一般式(VI)の化合物の具体例は、以下の表5に挙げる化合物である。表5に、R1、R2及びXの値を特性データと共に示す。
表5
【表5】

【0116】
以下の非限定的実施例により、本発明をさらに詳細に例証する。
【実施例】
【0117】
実施例1
5−ブロモ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物No.5.12)の調製
【化79】

a)n−ブチルリチウム変種、1,3−ジブロモ−2−ヨード−ベンゼンから
1,3−ジブロモ−2−ヨード−ベンゼン(5.00g、13.8mmol)及び6,6−ジメチルフルベン(7.57g、純度97%、69mmol)を乾燥トルエン(60ml)に窒素雰囲気下で溶解し攪拌した溶液に、n−ブチルリチウムの2.5Mトルエン溶液5.5ml(14.5mmol)を0℃で10分以内に滴加した。さらに0℃で10分間及び周囲温度で1時間攪拌した後に、得られた反応混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。粗製物のシリカゲルを用いたヘキサンでの精製により、2.55gの所望の生成物を黄色油状物として得た(g.l.cによる純度99%、収率70%)。m.p.90〜91℃の黄色結晶が冷たいヘキサンから得られた。
【0118】
b)n−ブチルリチウム変種、1,2,3−トリブロモ−ベンゼンから
1,2,3−トリブロモ−ベンゼン(4.34g、13.8mmol)及び6,6−ジメチルフルベン(2.38g、純度92.6%、20.7mmol)を乾燥トルエン(60ml)に窒素雰囲気下で溶解し攪拌した溶液に、n−ブチルリチウムの2.5Mトルエン溶液5.5ml(14.5mmol)を−5〜0℃で10分以内に滴加した。さらに0℃で10分間及び周囲温度で2時間攪拌した後に、得られた反応混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。粗製物のシリカゲルを用いたヘキサンでの精製により、2.38gの所望の生成物を黄色油状物として得た(g.l.cによる純度84%、収率55%)。
【0119】
c)イソプロピルマグネシウムクロリド変種、1,3−ジブロモ−2−ヨード−ベンゼンから
1,3−ジブロモ−2−ヨード−ベンゼン(45.95g、0.124mol)を乾燥トルエン(200ml)に窒素雰囲気下で溶解した溶液を、2Mイソプロピルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液(63.5ml、0.124mol)と−8〜−15℃で1時間反応させた。その後に6,6−ジメチルフルベン(16.54g、純度97.8%、0.15mol)を0℃で加え、次いで還流温度まで19時間加熱した。得られた反応混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。粗製物のシリカゲルを用いたヘキサンでのクロマトグラフィーにより、所望の生成物を得た(27.84g、g.l.cによる純度79%、収率66%)。
【0120】
実施例2
5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物No.5.26)の調製
【化80】

a)n−ブチルリチウム変種、1,3−ジクロロ−2−ヨード−ベンゼンから
1,3−ジクロロ−2−ヨード−ベンゼン(38.21g、140mmol)及び6,6−ジメチルフルベン(46.35g、純度96.2%、420mmol)を乾燥トルエン(600ml)に窒素雰囲気下で溶解し攪拌した溶液に、n−ブチルリチウムの2.5Mトルエン溶液58.8ml(147mmol)を0℃で16分以内に滴加した。さらに0℃で10分間攪拌した後に、得られた反応混合物を周囲温度で一夜放置した。飽和水性塩化アンモニウムで水性処理し、酢酸エチルで抽出し、次いで食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して粗製物を得、これを、シリカゲルを用いたヘキサンでのクロマトグラフィーで精製して、19.79gの所望の生成物を黄色油状物として得た(g.l.cによる純度94.7%、収率62%)。m.p.83〜85℃の黄色結晶が冷たいヘキサンから得られた。
【0121】
b)イソプロピルマグネシウムクロリド変種、2−ブロモ−1,3−ジクロロ−ベンゼンから
2−ブロモ−1,3−ジクロロベンゼン(22.59g、0.1mol)を乾燥トルエン(100ml)に窒素雰囲気下で溶解した溶液を、−8〜−15℃で2Mイソプロピルマグネシウムクロリド・テトラヒドロフラン溶液(50ml、0.1mol)と1時間反応させた。その後に6,6−ジメチルフルベン(13.03g、純度97.8%、0.12mol)を0℃で加え、次いで還流温度まで10時間加熱した。飽和水性塩化アンモニウムで水性処理し、酢酸エチルで抽出し、次いで食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して粗製物を得、これを、シリカゲルを用いたヘキサンでのクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物(19.03g、g.l.cによる純度95.2%、収率83.6%)を黄色固体として得た。
【0122】
c)イソプロピルマグネシウムクロリド変種、1,3−ジクロロ−2−ヨード−ベンゼンから
1,3−ジクロロ−2−ヨード−ベンゼン(2.39g、8.76mmol)を乾燥トルエン(10ml)に窒素雰囲気下で溶解した溶液を、−8〜−15℃で2Mイソプロピルマグネシウムクロリド・テトラヒドロフラン溶液(4.4ml、8.76mmol)と1時間反応させた。その後に6,6−ジメチルフルベン(1.45g、純度96.2%、13.15mmol)を0℃で加え、次いで還流温度まで22時間加熱した。飽和水性塩化アンモニウムで水性処理し、酢酸エチルで抽出し、次いで食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して粗製物を得、これを、シリカゲルを用いたヘキサンでのクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物(1.75g、g.l.cによる純度86.4%、収率79.5%)を黄色固体として得た。
【0123】
d)イソプロピルマグネシウムクロリド変種、1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼンから
1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼン(22.59g、0.1mol)を乾燥トルエン(100ml)に窒素雰囲気下で溶解した溶液を、−8〜−15℃で2Mイソプロピルマグネシウムクロリド・テトラヒドロフラン溶液(50ml、0.1mol)と1時間反応させた。その後に6,6−ジメチルフルベン(16.56g、純度96.2%、0.15mmol)を0℃で加え、次いで還流温度まで10時間加熱した。飽和水性塩化アンモニウムで水性処理し、酢酸エチルで抽出し、次いで食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して粗製物を得、これを、シリカゲルを用いたヘキサンでのクロマトグラフィーで精製して、所望の生成物(19.57g、g.l.cによる純度84.4%、収率76.2%)を黄色固体として得た。
【0124】
e)イソプロピルマグネシウムクロリド変種、1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼンから
1−ブロモ−2,3−ジクロロ−ベンゼン(37.6g、0.165mol)をTHF(170ml)に溶解した溶液を、2Mイソプロピルマグネシウムクロリド・テトラヒドロフラン溶液(100g、0.206mol)に窒素雰囲気下に−10℃で加え、得られた反応混合物を1時間にわたって攪拌した。このグリニャール中間体を、6,6−ジメチルフルベン(19.9g、0.173mol)のトルエン溶液に、85℃で4時間にわたって加えた。反応混合物を1時間にわたって攪拌して反応の転化を完結させた。反応を、飽和水性塩化アンモニウムを用いて停止させ、相を分離した。THF/トルエンを蒸発させて所望の化合物No.5.26(39.2g、収率80.5%)を黄色固体として得た。
【0125】
実施例3
5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルナジエン(シン体/アンチ体−混合物、シン体に富む)(化合物No.4.26)の調製
【化81】

5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(30.0g、0.1384mol、実施例2に記載のようにして調製した)を、メタノール(300ml)中で、5%Rh/C(6g)の存在下で20〜25℃及び周囲圧力で水素添加した。2時間後の水素取り込みは97%であった。濾過及び蒸発、次いでシリカゲルを用いたヘキサンでの精製により、所望の生成物(29.05g、収率95%)をm.p.61〜62℃の無色固体として得た。シン形/アンチ形の比は、g.l.c.で91:9と決定された。
【0126】
実施例4
N−ベンジル−5−アミノ−5−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体/アンチ体−混合物、シン体に富む;化合物No.2.12)の調製
【化82】

a)5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体に富む91:9;化合物No.4.26)から
aa)R(−)−ジ−tert−ブチル−[1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファニル)−フェロセニル]エチル]ホスフィンを配位子として使用して
【0127】
i)(S/C 100、1モル%)
アルゴン下のシュレンク管の5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネン[シン体に富む91:9;化合物No.4.26、実施例3に記載のようにして調製した](1.0g、4.53mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(719mg、純度97%、7.25mmol)、酢酸パラジウム(10.2mg、0.045mmol)及びR(−)−ジ−tert−ブチル−[1−[(S)−2−(ジシクロヘキシルホスファニル)−フェロセニル]エチル]ホスフィン(25.1mg、0.045mmol)の混合物に、ジメトキシエタン(30ml)及びベンジルアミン(0.728g、6.8mmol)を加えた。得られた混合物を効率的な攪拌下に105℃まで21時間加熱した。反応混合物を、Hyflo(登録商標)で濾過した後に、水(30ml)に注ぎ、エーテルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗製物を得た。シリカゲルを用いて酢酸エチル/ヘキサン(1:9)で精製して、所望の生成物(1.33g、純度92%、収率92%)を橙色油状物として得た。シン体/アンチ体比は、91:9(g.l.cによる)であった。無色結晶がヘキサンから得られた。m.p.87〜90℃。
【0128】
ii)(S/C 200;0.5モル%)
前記(i)に記載の反応を、0.005当量の酢酸パラジウム及び0.005当量の同じホスフィン配位子を用いて反復して、所望の生成物を79%の収率で得た。
【0129】
ab)1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリドを配位子として使用して
i)S/C 200、0.5モル%触媒
アルゴン下のシュレンク管の5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネン[シン体に富む91:9;化合物No.4.26、実施例3に記載のようにして調製した](5.0g、22.65mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.591g、純度97%、36.2mmol)、酢酸パラジウム(25.4mg、0.113mmol)及び1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(48.1mg、0.113mmol)の混合物に、ジメトキシエタン(150ml)及びベンジルアミン(3.641g、34mmol)を加えた。得られた混合物を効率的な攪拌下で105℃まで19時間加熱した。反応混合物を、Hyflo(登録商標)で濾過した後に、水に注ぎ、エーテルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗製物(8.53g)を得た。シリカゲルを用いて酢酸エチル/ヘキサン(1:9)で精製して、所望の生成物(6.28g、純度91%、収率86%)を橙色油状物として得た。シン体/アンチ体比は、89:11(g.l.cによる)であった。ヘキサンから結晶化を進めてさらにシン体に富むm.p.98〜100℃の無色結晶3.04gを得た(シン体/アンチ体比98.5:1.5)。
【0130】
b)N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物No.3.12)から
N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物No3.12、実施例5に記載のようにして調製した)(1.00g、3.479mmol)をテトラヒドロフラン(15ml)及びメタノール(15ml)の混合物に溶解し、5%Rh/C(400mg)の存在下で、周囲温度及び4バールで24.5時間水素添加し、シリカゲルを用いて酢酸エチル−ヘキサン(1:9)で精製した後に所望の化合物〔0.39g(38%);シン体/アンチ体比98:2(g.l.c.による)〕を結晶性固体(m.p.89〜92℃)として得、さらに5−アミノ−5−イソプロピル−ベンゾノルボルネン〔11%、シン体/アンチ体比87:13(gl.c.による)〕(化合物No.5.12)を得た。
【0131】
実施例5
N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物 No.3.12)の調製
【化83】

a)S/C 100(1モル%触媒)
アルゴン下のシュレンク管の5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[実施例2に記載のようにして調製した化合物No.5.26](1.0g、4.61mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.731g、純度97%、7.38mmol)、酢酸パラジウム(10.3mg、0.046mmol)及び1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(19.6mg、0.046mmol)の混合物に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)(30ml)及びベンジルアミン(0.741g、6.91mmol)を加えた。得られた混合物を効率的な攪拌下で140〜145℃まで21時間加熱した。反応混合物を、Hyflo(登録商標)で濾過した後に、水に注ぎ、エーテルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、粗製物(9.54g)を得た。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーで酢酸エチル/ヘキサン(1:9)で精製して、所望の生成物(1.54g、純度84%、収率98%)を黄色粘稠油状物として得た。
b)S/C 400(0.25モル%触媒)
アルゴン下のシュレンク管の5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[実施例2に記載のようにして調製した化合物No.5.26](5.0g、23.07mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(3.548g、純度97%、36.9mmol)、酢酸パラジウム(12.9mg、0.0576mmol)及び1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(24.5mg、0.0576mmol)の混合物に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)(150ml)及びベンジルアミン(3.71g、34.6mmol)を加えた。得られた混合物を効率的な攪拌下で140〜145℃まで24時間加熱した。反応混合物を、Hyflo(登録商標)で濾過した後に、水に注ぎ、エーテルで抽出し、食塩水及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。2ミリバール及び75℃で2時間蒸発させて、粗製物(6.75g)を得た。シリカゲルを用いたクロマトグラフィーで酢酸エチル/ヘキサン(1:9)で精製して、所望の生成物(6.27g、純度94%、収率89%)を黄色粘稠油状物として得た。
【0132】
c)N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン塩酸塩の調製
【化84】

不活性反応器中で、5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[実施例2に記載のようにして調製した化合物No.5.26](27g、0.125mol)をキシレン(125g)に溶解し、ナトリウムtert−ブトキシド(15g、0.156mol)、塩化パラジウム(0.22g、0.0012mol)、1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−イミダゾリウムクロリド(0.53g、0.0012mol)及びベンジルアミン(20.1g、0.187mol)を加えた。得られた混合物を、反応の完結まで125℃で3時間加熱した。水を反応混合物に加え、pHをHClで6に調節した。活性炭を加え、懸濁物を澄ませ、相を分離した。キシレンを留去し、ヘキサンに代え、漂白土処理を行った。生成物をHCl塩として単離した(18.5g、HPLCによる純度94%、収率43%)。
【0133】
実施例6
5−アミノ−5−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体/アンチ体−混合物、シン体に富む)(化合物No.1.12)の調製
【化85】

a)N−ベンジル−5−アミノ−5−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体/アンチ体比97:3;化合物No.2.12)から
N−ベンジル−5−アミノ−5−イソプロピル−ベンゾノルボルネン[シン体/アンチ体比97:3;実施例4に記載のようにして調製した化合物No.2.12](3.00g、純度97%、9.98mmol)を、メタノール(30ml)及びテトラヒドロフラン20ml)の混合物に溶解し、周囲圧力及び温度で5%Pd/C(300mg)の存在下で20時間にわたって水素添加した。溶媒の濾過及び蒸発により、所望のアニリンを、98:2(g.l.c.による)のシン体/アンチ体比を有する固体として得た(2.03g、g.l.cによる純度98%、m.p.54〜56℃、収率98%)。
【0134】
b)N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン(化合物No.3.12)から
N−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[化合物No.3.12、実施例5に記載のようにして調製した](1.00g、3.479mmol)を、テトラヒドロフラン(15ml)及びメタノール(15ml)の混合物に溶解し、5%Pd/C(400mg)の存在下に周囲温度及び4バールで24時間完全に水素添加し、シリカゲルを用いて酢酸エチル−ヘキサン(1:9)で精製した後に、所望のアニリン(0.61g、85%)を得た;粘稠油状物としてシン体/アンチ体比74:24(g.l.c.による)。
【0135】
周囲温度及び40バールで、その他は同じ条件での水素添加により、所望のアニリン(0.67g、96%)を75:25のシン体/アンチ体比で得た。
【0136】
周囲圧力で、その他は同一条件下での水素添加により、化合物No.3.12を収率65%で及び61:39(g.l.cによる)のシン体/アンチ体比で得た。
【0137】
本発明の好ましい実施形態において、一般式(III)の化合物から一般式 (I)の化合物を調製する方法で使用される還元剤は、パラジウム触媒の存在下の水素である。
【0138】
この好ましい実施形態は、簡単な方法で式(Ia)のシン形エピマーと式(Ib)のアンチ形エピマーの比が著しく高められている式(I)の化合物を調製することを可能にする;通常、55:45を越えるシン体/アンチ体比を得ることができ;典型的には60:40〜99:1のシン体/アンチ体比を得ることができる。従って、シン形エピマーに有利なシン体/アンチ体比を有する式Iの化合物の混合物を簡単な方法で調製することができることは、この好ましい実施形態の具体的な利点である。
【0139】
本発明の方法のこの好ましい実施形態において、一般式(III):
【化86】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
の化合物は、パラジウム触媒の存在下で水素と反応して、一般式(I)
【化87】

(式中、R1及びR2は、独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物を形成し、この場合に式(Ia)
【化88】

〔式中、R1及びR2は、式(I)について定義した通りである〕
のシン形エピマーと、式(Ib)
【化89】

〔式中、R1及びR2は、式(I)について定義した通りである〕
のアンチ形エピマーとの比は55:45よりも大きい。
【0140】
具体的な実施形態において、式(Ia)のシン形エピマーと式(Ib)のアンチ形エピマーとの比が75:25〜95:5であり;好ましくは80:20〜95:5であり;さらに好ましくは80:20〜90:10である式(I)の化合物が調製される。
【0141】
適当なパラジウム触媒は、例えば、不均一パラジウム触媒、例えばパラジウム担持炭素、パラジウム担持酸化アルミニウム、パラジウム担持シリカ、パラジウム担持炭酸バリウム、パラジウム担持硫酸バリウム、パラジウム担持炭酸カルシウム又は均一パラジウム触媒、例えば酢酸パラジウム、塩化パラジウム、水酸化パラジウム又は酸化パラジウム、あるいはこれらの混合物である。特に好ましいのは、パラジウム担持炭素である。適当な不均一パラジウム触媒は種々の含水率を有し、適当なパラジウム触媒は最大80%(w/w)の含水率を有する。
【0142】
パラジウム触媒の適量は、式(III)の化合物を基準として算出される0.01〜10モル%であり;0.1〜1モル%が好ましい。
【0143】
反応は、不活性溶媒の存在下で実施されるのが好ましい。適当な溶媒は、例えば、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール、あるいは非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジオキサン又はトルエン、及びこれらの混合物であり;特に好ましいのはエタノール又はメタノールである。
【0144】
温度は、一般に0℃〜80℃であり、好ましいのは0℃〜45℃の範囲であり、さらに好ましいのは20℃〜45℃の範囲であり、さらにいっそう好ましいのは20℃〜30℃の範囲である。
【0145】
反応時間は、一般に1〜100時間、好ましくは1〜24時間である。
【0146】
好ましくは、反応は少なくとも2バールの圧力で実施され、さらに好ましいのは2〜50バールの圧力であり、よりいっそう好ましいのは5〜50バールである。本発明の一つの実施形態において、7〜20バール、好ましくは7〜15バール、さらに好ましくは8〜12バールの圧力が使用される。
【0147】
本発明のこの好ましい実施形態の特別な実施形態においては、反応は、0.01〜10当量の添加剤の存在下で実施され、好ましいのは0.2〜3当量である。当量は、式(III)の化合物を基準として算出される。適当な添加剤は、酸又は塩基である。適当な酸は、強無機酸、例えば塩酸又は硫酸、あるいは強有機酸、例えば酢酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸、あるいはこれらの混合物であり;メタンスルホン酸が好ましい。適当な塩基は、有機塩基、例えば有機窒素塩基である。適当な有機窒素塩基は、トリアルキルアミン塩基、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、ヒューニッヒ塩基、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン又はN−メチルピペリジンである。
【0148】
この好ましい実施形態の一つの実施形態においては、酸が添加剤として使用される。この好ましい実施形態の別の実施形態においては、塩基が添加剤として使用される。
【0149】
本発明の方法の上記の好ましい実施形態を、以下の実施例としてさらに詳しく説明する。
【0150】
実施例7
5−アミノ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体/アンチ体−混合物、シン体に富む)(化合物No.1.12)の調製
【化90】

a)10バールでの種々の添加剤の試験
500mg(1.7mmol)のN−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[化合物No.3.12、実施例5に記載のようにして調製した]を5mlのメタノールに溶解し、5%Pd/C(50mg)の存在下に周囲温度及び10バールで19時間完全に水素添加した。このようにして、シス/アンチ−5−アミノ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンの混合物を得た。反応生成物の同定、エピマー純度(シン体%)及び収率(%)をガスクロマトグラフィーで評価した。
【表6】

【0151】
b)種々の圧力での添加剤としてのメタンスルホン酸の試験
58.8g(200mmol)のN−ベンジル−5−アミノ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン[化合物No.3.12、実施例5に記載のようにして調製した]をメタノールに溶解し、5%Pd/C(1モル%)の存在下に周囲温度で3〜18時間完全に水素添加した。このようにして、シス/アンチ−5−アミノ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンの混合物を得た。生成物を単離し、同定、エピマー純度(シン体%)、収率(%)及び純度をガスクロマトグラフィーで評価した。
【表7】

【0152】
本発明のさらに別の好ましい実施形態において、一般式(VI)で表す化合物から一般式(IV)の化合物を調製する方法で使用される還元剤は、ロジウム、パラジウム及び白金から選択される金属触媒の存在下の水素である。
【0153】
この好ましい実施形態は、式(IVa)
【化91】

のシン形エピマーと、式(IVb)
【化92】

のアンチ形エピマーとの比が著しく高められた式(IV)の化合物を簡単な方法で調製することを可能にし;通常、55:45を越えるシン体/アンチ体比を得ることができ;典型的には60:40〜99:1のシン体/アンチ体比を得ることができる。従って、シン形エピマーに有利なシン体/アンチ体比を有する式IVの化合物の混合物を簡単な方法で調製することができることは、この好ましい実施形態の具体的な利点である。
【0154】
本発明の方法のこの好ましい実施形態においては、一般式(VI):
【化93】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、ロジウム、パラジウム及び白金から選択される触媒の存在下で水素と反応させて、一般式(IV)
【化94】

(式中、R1及びR2は、独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成し、この場合に式(IVa)
【化95】

〔式中、R1、R2及びXは式(VI)について定義した通りである〕
のシン形エピマーと、式(Ib)
【化96】

〔式中、R1、R2及びXは、式(VI)について定義した通りである〕
のアンチ形エピマーとの比は55:45よりも大きい。
【0155】
具体的な実施形態において、式(Ia)のシン形エピマーと式(Ib)のアンチ形エピマーとの比が75:25〜98:2であり;好ましくは80:20〜95:5であり;さらに好ましくは90:10〜95:5である式(I)の化合物が調製される。
【0156】
好ましい実施形態において、Xは塩素である。
【0157】
適当なロジウム触媒は、例えば、ロジウム担持炭素、ロジウム担持アルミナ又は酸化ロジウム(III)である。ロジウム担持炭素が好ましい。適当なパラジウム触媒は、不均一パラジウム触媒、例えばパラジウム担持炭素、パラジウム担持酸化アルミニウム、パラジウム担持シリカ、パラジウム担持炭酸バリウム、パラジウム担持硫酸バリウム、パラジウム担持炭酸カルシウム又は均一パラジウム触媒、例えば酢酸パラジウム、塩化パラジウム、水酸化パラジウムもしくは酸化パラジウム、あるいはこれらの混合物である。パラジウム担持炭素が特に好ましい。適当な白金触媒は、例えば白金担持炭素又は酸化白金(IV)である。特に好ましいは、白金担持炭素である。
【0158】
本発明のこの好ましい実施形態の一つの実施形態において、触媒はロジウム担持炭素である。
【0159】
この好ましい実施形態の別の実施形態において、触媒はパラジウム担持炭素である。
【0160】
この好ましい実施形態の一つの実施形態において、触媒は白金担持炭素である。
【0161】
触媒の適量は、式(III)の化合物を基準として算出される0.01〜10モル%であり;0.1〜1モル%が好ましい。
【0162】
反応は、不活性溶媒の存在下で実施されるのが好ましい。適当な溶媒は、例えば、アルコール類、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール、あるいは非プロトン性溶媒、例えばテトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジオキサン又はトルエン、及びこれらの混合物であり;特に好ましいのはエタノール又はメタノールである。
【0163】
温度は、一般に0℃〜80℃の範囲であり、好ましいのは0℃〜45℃の範囲であり、さらに好ましいのは20℃〜45℃の範囲であり、さらにいっそう好ましいのは20℃〜30℃の範囲である。
【0164】
反応時間は、一般に1〜100時間、好ましくは1〜24時間である。
【0165】
好ましくは、反応は少なくとも2バールの圧力で実施され、さらに好ましいのは2〜50バールの圧力であり、よりいっそう好ましいのは5〜50バールである。本発明の一つの実施形態において、7〜20バール、好ましくは7〜15バール、さらに好ましくは8〜12バールの圧力が使用される。
【0166】
本発明のこの好ましい実施形態の特別な実施形態においては、反応は、0.01〜10当量の添加剤の存在下で実施され、好ましいのは0.2〜3当量である。当量は、式(III)の化合物を基準として算出される。適当な添加剤は、酸又は塩基である。適当な酸は、強無機酸、例えば塩酸又は硫酸、あるいは強有機酸、例えば酢酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸、あるいはこれらの混合物であり;好ましい酸は塩酸、酢酸、メタンスルホン酸又はトリフルオロ酢酸である。適当な塩基は、有機塩基、例えば有機窒素塩基である。適当な有機窒素塩基は、トリアルキルアミン塩基、例えばトリエチルアミン、トリメチルアミン、ヒューニッヒ塩基、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン又はN−メチルピペリジンである。
【0167】
この好ましい実施形態の一つの実施形態においては、酸が添加剤として使用される。この好ましい実施形態の別の実施形態においては、塩基が添加剤として使用される。
【0168】
本発明の方法の上記の好ましい実施形態を、以下の実施例としてさらに詳しく説明する。
【0169】
実施例8
5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネン(シン体/アンチ体−混合物、シン体に富む)(化合物No.4.26)の調製
【化97】

a)添加剤なしで触媒としてPd/Cを使用して
実施例2)に記載のようにして調製した5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン300mg(1.4mmol)をメタノール3mlに溶解し、5%Pd/C(9mg)の存在下に周囲温度及び10バールで16時間完全に水素添加した。このようにして、シン形/アンチ形−5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンの混合物を得た(エピマー純度:シン体93%;収率:85%)。反応生成物の同定、エピマー純度(シン体%で)及び収率(%で)をガスクロマトグラフィーで評価した。
【0170】
b)種々の添加剤を使用して触媒としてのPd/Cの試験
実施例2)に記載のようにして調製した5−クロロ−9−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン300mg(1.4mmol)をメタノール3mlに溶解し、5%Pd/C(9mg)の存在下に周囲温度及び10バールで16時間完全に水素添加した。このようにして、シン/アンチ−5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンの混合物を得た。反応生成物の同定、エピマー純度(シン体%)及び収率(%)をガスクロマトグラフィーで評価した。
【表8】

【0171】
c)種々の添加剤を使用して触媒としてのPt/Cの試験
実施例2)に記載のようにして調製した5−クロロ−イソプロピリデン−ベンゾノルボルナジエン300mg(1.4mmol)をメタノール3mlに溶解し、5%Pt/C(15mg)の存在下に周囲温度及び10バールで16時間完全に水素添加した。このようにして、シン/アンチ−5−クロロ−9−イソプロピル−ベンゾノルボルネンを得た。反応生成物の同定、エピマー純度(シン体で)及び収率(%)をガスクロマトグラフィーで評価した。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物の調製方法であって、一般式(II):
【化2】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有し、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
の化合物、又は一般式(III):
【化3】

(式中、R1、R2、R3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物のいずれかを還元剤で処理することを含み、前記還元剤が式(II)の化合物又は式(III)の化合物のベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効であり、さらに、式(III)の化合物の場合には、ベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である、前記調製方法。
【請求項2】
一般式(IV):
【化4】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化5】

(式中、R3及びPhは請求項1に記載の意味を有する)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させることを含む、請求項1に記載の一般式(II)の化合物の調製方法。
【請求項3】
一般式(VI):
【化6】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し及びXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化7】

(式中、R3及びPhは請求項1に記載の意味を有する)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させることを含む、請求項1に記載の一般式(III)の化合物の調製方法。
【請求項4】
一般式(III):
【化8】

(式中、R1、R2、R3及びPhは請求項1に記載の意味を有する)
の化合物を還元剤で処理することを含み、前記還元剤がベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残すのに有効である、請求項1に記載の一般式(II)の化合物の調製方法。
【請求項5】
一般式(VI):
【化9】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を還元剤で処理することを含み、前記還元剤がベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である、請求項2に記載の一般式(IV)の化合物の調製方法。
【請求項6】
式(VII):
【化10】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化11】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させることを含む、請求項3に記載の一般式(VI)の化合物の調製方法。
【請求項7】
式(IX)又は(X):
【化12】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと不活性雰囲気中で反応させることを含む、請求項6に記載の一般式(VII)のハロベンゼンの調製方法。
【請求項8】
(a)一般式(IV):
【化13】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化14】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化15】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項9】
(a)一般式(VI):
【化16】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化17】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化18】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残し、且つベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項10】
(a)一般式(VI):
【化19】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元して一般式(IV):
【化20】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(b)このようにして形成された一般式(IV)の化合物を、一般式(V):
【化21】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化22】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項11】
(a)一般式(VI):
【化23】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、一般式(V):
【化24】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化25】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残して一般式(II):
【化26】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(c)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項12】
式(IX)又は(X):
【化27】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと、一般式(VIII):
【化28】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有する)
のフルベンの存在下に不活性有機溶媒中で及び不活性雰囲気中で反応させることを含む、請求項3に記載の一般式(VI)の化合物の調製方法。
【請求項13】
(a)式(IX)又は(X):
【化29】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと、不活性雰囲気中で反応させて一般式(VII):
【化30】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化31】

(式中、R1及びR2は前記の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化32】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を、一般式(V):
【化33】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化34】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(d)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残し、且つベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項14】
(a)式(IX)又は(X):
【化35】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと、不活性雰囲気中で反応させて一般式(VII):
【化36】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化37】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有する)
のフルベンと、不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化38】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元して一般式(IV):
【化39】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(d)このようにして形成された一般式(IV)の化合物を、一般式(V):
【化40】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(II):
【化41】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(e)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項15】
(a)式(IX)又は(X):
【化42】

(式中、Xは塩素又は臭素であり、及びYは臭素又はヨウ素である)
の1,2,3−トリハロベンゼンを、有機金属種、例えばC1-6アルキル−もしくはフェニルリチウム又はC1-6アルキル−もしくはフェニルマグネシウムハライドと不活性雰囲気中で反応させて一般式(VII):
【化43】

(式中、Xは塩素又は臭素である)
のハロベンジンを形成する工程と;
(b)このようにして形成された一般式(VII)のハロベンジンを、一般式(VIII):
【化44】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有する)
のフルベンと不活性有機溶媒中で反応させて一般式(VI):
【化45】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成する工程と;
(c)このようにして形成された一般式(VI)の化合物を、一般式(V):
【化46】

(式中、R3はH又はC1-4アルキルであり、及びPhはフェニルである)
のベンジルアミンと、塩基及び触媒量の少なくとも1種のパラジウム錯体の存在下で反応させて一般式(III):
【化47】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成する工程と;
(d)このようにして形成された一般式(III)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンゾノルボルネン環の2,3−二重結合と、R12C−部分を9−位に結合している二重結合の両方を単結合に還元するのに有効であるが、Ph−CH(R3)NH−部分をそのままで残して一般式(II):
【化48】

(式中、R1及びR2は請求項1に記載の意味を有し、且つR3及びPhは前記の意味を有する)
の化合物を形成するのに有効である工程と;
(e)このようにして形成された一般式(II)の化合物を還元剤で処理する工程であって、前記還元剤はベンジルアミノ部分Ph−CH(R3)NH−からベンジル部分Ph−CH(R3)−を切断してアミノ基を残すのに有効である工程と;
を含む、請求項1に記載の一般式(I)の化合物の調製方法。
【請求項16】
一般式(II)、(III)、(IV)又は(VI):
【化49】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、R3はH又はC1-4アルキルであり、Phはフェニルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物。
【請求項17】
式(III):
【化50】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、R3はH又はC1-4アルキルであり、且つPhはフェニルである)
の化合物を、パラジウム触媒の存在下で水素と反応させて一般式(I)
【化51】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルである)
の化合物を形成し、且つ式(Ia)
【化52】

〔式中、R1及びR2は式(I)について定義した通りである〕
のシン形エピマーと、式(Ib)
【化53】

〔式中、R1及びR2は式(I)について定義した通りである〕
のアンチ形エピマーとの比が55:45よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が添加剤の存在下で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が0℃〜80℃の温度で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が少なくとも2バールの圧力で実施される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
式(VI)
【化54】

(式中、R1及びR2は、独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を、ロジウム、パラジウム及び白金から選択される触媒の存在下で水素と反応させて一般式(IV)
【化55】

(式中、R1及びR2は独立してH又はC1-6アルキルであり、且つXは塩素又は臭素である)
の化合物を形成し、式(IVa)
【化56】

〔式中、R1、R2及びXは式(IV)について定義した通りである〕
のシン形エピマーと、式(IVb)
【化57】

〔式中、R1、R2及びXは式(IV)について定義した通りである〕
のアンチ形エピマーとの比が55:45よりも大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項22】
Xが塩素である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
触媒がパラジウム触媒である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
触媒が白金触媒である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が添加剤の存在下で実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が0℃〜80℃の温度で実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が少なくとも2バールの圧力で実施される、請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2009−518346(P2009−518346A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543746(P2008−543746)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011885
【国際公開番号】WO2007/068417
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】