説明

アラミド繊維の改質方法及び前記繊維の染色方法

【課題】アラミド繊維を改質して、その染色能力を高める方法を提供する。
【解決手段】本発明は、アラミド繊維を改質して、その染色される能力を高める方法に関するものであり、その方法は以下のステップ:
a)上記繊維を処理して、そのガラス転移温度TgをTg(ここで、TgはTgよりも低い)に低下させるステップ;
b)処理された前記繊維を、Tg以上の温度で、ナノ粒子を含む溶液と接触させて処理するステップ、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[技術分野]
この発明は、アラミド繊維の着色を容易にし又は着色を生じさせるための、アラミド繊維の改質方法に関する。
本発明の一般的分野はしたがってアラミド繊維の分野である。
【背景技術】
【0002】
アラミド繊維は合成繊維の群に属し、それらの良く知られている名称は、Nomex(登録商標)、Kevlar(登録商標)、及びKermel(登録商標)である。
【0003】
構造的な視点からは、アラミド繊維は合成ポリアミド鎖を含み、鎖中ではアミド基の少なくとも85%が芳香族基に直接結合しており、芳香族基の主要繰り返しパターンは以下の式:
【化1】

を有する。
【0004】
このパターンの誘導体形態は、芳香族環上での置換、及び-NH-基の水素の置換を伴って存在しうる。
【0005】
これらの繊維は高い機械強度と耐熱性、並びに難燃特性を有する。したがって、それらは、特に、消防士、宇宙飛行士、及びパイロットのための服のデザインにおいて、火炎又は高温と接触することを意図した織物繊維として広く使用される。
【0006】
アラミド繊維はそれら本来の状態では黄色である。したがって、アラミド繊維はそれらの本来の状態の色とは異なる色を付与するために染色方法を施すことができる。
現在の染色方法は以下の2つの種類に分類できる。
a)ポリマー合成時に、繊維の形態のバルクポリマーを染色することからなる染色方法であって、それらが合成されているときにバルクで繊維を着色することを可能にする。
b)一旦合成された繊維、あるいは一旦織られた繊維を染色することからなる染色方法。
【0007】
しかし、タイプa)が布帛を染色する柔軟性と反応性を可能にしない範囲では、タイプb)が好ましく、工業的にはa)のタイプは用いられなくなっている。
【0008】
多くの刊行物がタイプb)の染色方法を記載している。
すなわち、EP0557734 [1]は、アラミド繊維を、400以下の分子量を有し且つ20%以下の分光透過係数を有する染料と接触させるとともに、酢酸を添加することによってpHを4〜5の値に調節することからなるアラミド繊維の染色方法を記載している。
【0009】
文献CA 2 428 758 [2]は、アラミド繊維を、カチオン染料とシクロヘキサン系着色剤を含む組成物と接触させることからなる染色方法を記載している。この組成物は、アラミド繊維を膨潤させて、体積の増加によって作り出されたフリースペースに染料を組み込むことを可能にする特別な性質をもっている。それにもかかわらず、これらのスペースに結合可能な唯一の染料は、アラミド繊維との化学的親和性をもつ繊維であり、それは一般的にカチオン染料である。
【0010】
その他の著者は、アラミド繊維の合成においてアラミド繊維の化学構造を変性し、それによってこれらの繊維を、染料、特に塩基性染料とより相容性にすることを提案している。
【0011】
すなわち、GB 1 221 493 [3]は、フリー末端の-NH2を含む直鎖状ポリアミド、例えばアラミドの変性方法であって、加熱によってこれらのポリアミドをトリアジン化合物と反応させ、これらの化合物が一旦ポリアミドにグラフトされて、塩基性染料との相容性を付与する方法を記載している。
【0012】
US 4 391 968 [4]は、反応媒体中で、アラミドパターンに対する前駆体として働くモノマーに加えて、特定のジカルボキシルモノマーと特定のジカルボキシルスルホン酸塩を組み込むことによって、塩基性染料との親和性を有するポリアミドを調製する方法を記載している。
【特許文献1】欧州特許第0557734号明細書
【特許文献2】カナダ国特許第2428758号明細書
【特許文献3】英国特許第1221493号明細書
【特許文献4】米国特許第4391968号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらの方法はポリアミドの化学構造を変性する欠点を有しており、これは特にこれらのポリアミドを用いて開発された繊維の機械強度にマイナスの影響をもたらしうる。
【0014】
何人かの著者は、染料の結合を促進するために、適切な処理によってアラミド繊維の表面を改質することを提案している。すなわち、Advances in Textiles Technology, 第6〜7頁[5]は、アラミド繊維をプラズマ処理にかけて活性部位を生じさせることからなる方法を記載しており、この方法では次に染料が結合することができる。しかし、この種の処理は繊維の機械特性を劣化させ、このことは、これらの繊維が、火炎及び化学製品に対する耐性に関して優れた特性が必要とされる分野で使用することが意図されている場合には、とても利点とはならない。
【0015】
したがって、従来技術の欠点をもたないアラミド繊維の改質方法、特に:
− 繊維の化学構造、したがって、それらの物理化学的性質を変えず:
− 全ての種類の染料、すなわち、例えば、カチオン染料及びアニオン染料、によって染色されうる繊維をもたらす方法、
に対する真のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
[本発明の説明]
したがって、本発明は第一に、アラミド繊維を改質してそれらの染色能力を高める方法に関し、本方法は以下のステップを含む:
a)上記繊維を処理して、そのガラス転移温度TgをTg(ここで、TgはTgよりも低い)に低下させるステップ;
b)処理された上記の繊維を、Tg以上の温度で、ナノ粒子を含む溶液と接触させるステップ。
【0017】
本発明によれば、用語「アラミド繊維」は一般に、合成アラミド鎖を含む繊維をいうのに用いられ、アミド基の少なくとも85%は芳香族基に直接結合しており、その主な繰り返しパターンは下記式:
【化2】

を有する、と特定されるべきである。
【0018】
このパターンの誘導体形態は、芳香環上の置換と-NH-基の水素の置換にともなって存在する。
【0019】
本発明によれば、用語「ナノ粒子」は一般に、1〜500nm、好ましくは8〜30nm、なおさらに好ましくは10〜20nmの範囲の直径を有する粒子をいうのに用いられる、と特定されるべきである。
【0020】
アラミド繊維は、未処理状態では、半分以上の結晶性領域と、半分未満のアモルファス領域とを含む。この非常に強い結晶性によって、アラミド繊維は、化合物の拡散及び結合を可能にする傾向を実際にはもっていない。
【0021】
ガラス転移温度は、繊維の生来の特性であって、鎖の可動性が顕著に増大し、これにより自由体積の増加が生じる温度に特に相当することが明示されるべきであろう。
【0022】
ステップa)において、アラミド繊維のガラス転移温度をTgからTgに低下させることによって、繊維をTg以上の温度にした場合に、鎖の可動性を増大させて、結果としてステップb)において、より低い温度(例えば、ガラス転移温度は約200℃から約120℃に低下されうる)でアモルファス領域を開くことができる。この、より低い温度は、染料に関してより攻撃性が低く、より低い温度で本方法を実施することを可能にする。
【0023】
ステップa)は、ガラス転移温度Tgが100〜150℃の範囲内となるようにガラス転移温度を低減させることからなることができる。
【0024】
ガラス転移温度の低下は、密閉カプセル中でのDSC(示差熱分析)法又はDMA(動的機械分析)法を用いて当業者によって容易に測定されうることが明記されるべきであろう。
【0025】
繊維のガラス転移温度を低下させることを目的とする処理(ステップa)は、繊維を、ベンジルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、及びそれらの混合物から選択される溶媒と接触させておくことからなることができる。
【0026】
ひとたびガラス転移温度の低下がステップa)の処理によって得られたら、アラミド繊維を、ガラス転移温度Tg以上の温度で、ナノ粒子を含む溶液と接触させておく。Tg、すなわちステップa)の最後で得られたガラス転移温度以上の温度で作業することによって、ポリマー鎖の増大した可動性と、それによるアモルファス領域の隙間とを有する繊維が得られ、アモルファス領域が開くことによって形成された自由空間(フリースペース)に、溶液中に含まれるナノ粒子が組み込まれうる。
【0027】
組み込まれるナノ粒子は様々な種類でありえる。
【0028】
第一の態様は、染料は含まないが、例えば、イオン結合又は弱い結合、例えば水素結合によって、アラミド繊維の表面に結合しうる基を任意に有してもよいナノ粒子が関係しうる。
【0029】
これらのナノ粒子は多孔性であってよく、この場合、ナノ粒子はその細孔中に1種以上の染料を受容しうる。そのようなナノ粒子の例としては、SiO、TiO2、ZnO、Al2O3、及びFe3O4のナノ粒子が挙げられる。
【0030】
これらのナノ粒子は、例えばイオン結合により又は水素結合などの弱い結合により、染料又はそれらの染料を含む粒子に結合することができる基を含むことができる。例として、例えば、水素結合の形成によって、この種の結合を作りうる官能基を含む染料、例えばローダミン、フルオレセイン、Diamix染料に結合しうる-OH基を、その表面に含むSiO2のナノ粒子を挙げることができる。カチオン染料との結合を形成可能な酸官能基、例えば-CO2Hをその表面に含む、及び/又はアニオン染料と結合可能な塩基性官能基、例えばアミン官能基をその表面に含むナノ粒子を挙げることもできる。そのようなナノ粒子の例としては、当業者によって周知の方法を用いた、酸又は塩基性官能基のグラフト化を可能にする官能化を行ったSiO、TiO2、ZnO、Al2O3、及びFe3O4のナノ粒子を挙げることができる。この場合は、ナノ粒子は、接着促進剤と定義することができる。
【0031】
第二の態様は、染料を含むナノ粒子と関連していることができ、一般的に、この染料はナノ粒子中に予め組み込まれている。例として、SiO2外殻(シェル)と染料からなる核(コア)をと含む粒子、又はナノ粒子中に分散された染料、又はナノ粒子上の外冠の形態で備わった染料、例えば蛍光染料、を挙げることができる。この種のナノ粒子の利点は、任意の種類の染料、特にそれらの官能基によってアラミド繊維と結合する本来の能力をもたない染料、特にアニオン染料、又は良好な耐熱性をもたない染料を組み込むことが可能であることである。
【0032】
このナノ粒子は、ゾル-ゲル法によって調製しうる。
【0033】
本発明との関連では、ゾル-ゲル法は一般に、第一段階において、分子状態にあるナノ粒子前駆体を含み、かつ、ナノ粒子が染料を含む場合には任意に染料を含む溶液を調製することからなる。
【0034】
第二の段階においては、上述した溶液を加水分解して、小さな酸化物粒子の分散液を形成する。次いで、遠心を行って、形成されたナノ粒子を回収する。
【0035】
分子状前駆体は、無機塩の形態、例えばハロゲン化物及び硝酸塩であってよい。それらは、有機金属化合物、例えばアルコキシドの形態であってもよい。
【0036】
特に、ナノ粒子が部分的に又は完全にSiO2によって構成されている場合は、この分子状前駆体はシリコンアルコキシド、例えば、テトラエトキシシリケートSi(OC2H5)4、又はテトラメトキシシリケートSi(OCH3)4であることができる。
【0037】
有機溶媒は脂肪族アルコール、例えばエタノールであることができる。
【0038】
本発明の方法のステップa)及びb)は、特に、ガラス転移温度を低下させうる試薬とナノ粒子の両方を含む溶液と接触させておかれる場合には、同時に行うこともできる。
【0039】
ステップb)が行われたら、本発明の方法は、Tg未満の値に繊維の温度を低下させるステップc)を含むことが有利である。実際的な観点からは、温度を低下させるこのステップは、ステップb)の溶液から繊維を分離することからなることができ、それによって繊維を室温にする。温度を低下させるこのステップは、アモルファス領域を閉じ且つアラミド繊維内にナノ粒子を機械的に含ませることによって行われる。用いたナノ粒子がアラミド繊維と相容性の表面化学基を有し、その化学結合が弱い又は強い相互作用に関与しうる場合には、この「機械的」含有は、可能な化学結合に追加される。
【0040】
温度を低下させるステップの後で、本方法はステップc)と同時に又はその後で、繊維を濯ぐステップd)を含むこともでき、ステップd)は、反応しなかった全ての反応剤、例えば繊維に結合しなかったナノ粒子又はステップb)で用いた溶液のその他の成分を除去することを特に可能にする。
【0041】
上述した方法は、アラミド繊維の染色される能力を高めることを目的とする方法である。したがって、それは、染色方法との関連で実施されうる。
【0042】
したがって、本発明は第二に、以下のステップを含む、アラミド繊維の染色方法に関連する:
− 上で定義したアラミド繊維改質方法を実施するステップ;
− 特に、上記ナノ粒子が染料を含まない場合に、上記繊維を染料と接触させておく、任意選択によるステップ。
【0043】
アラミド繊維が、ガラス転移温度を低下させうる薬剤、ナノ粒子、及び染料を同時に含む溶液と接触させられた場合には、上記の2つのステップは同時に行われうることが明記されるべきである。
【0044】
この場合には、本染色方法は、反応媒体をTg未満の値に低下させて、アモルファス領域を閉じさせ、繊維の内部にナノ粒子と染料を含ませ、それによって色が固定されることを可能にすることを目的とするステップを最後に含むであろう。
【0045】
染料を含むナノ粒子がアラミド繊維に結合される場合には、上記ナノ粒子を結合させるステップの後に、染料と接触させるステップは必要ない。染料を含むナノ粒子を用いる利点は、任意の種類の染料、例えば蛍光染料を組み込み、特にそれを保護することが可能なことである。
【0046】
ナノ粒子が染料を含まない場合、アラミド繊維は染料と接触させられなければならず、ナノ粒子は接着促進剤として作用する。
【0047】
染料は、直接に、又は染料を含む粒子を用いて、ゾル-ゲル法によってナノ粒子に結合させることができる。アラミド繊維に結合したナノ粒子は、染料を含むゾル-ゲル材料の成長のための結合点及び/又はシード(seed)として作用する。後者の成長によって、繊維の大きな表面を覆うことができる。この方法で、多数の染料をこれらのナノ粒子上にグラフトすることも可能である。
【0048】
染料を含む粒子又は染料を構成する粒子自体を用いることにより、結合をイオン相互作用、弱い相互作用、又は共有結合による相互作用によって達成して、染料をナノ粒子に結合させることができる。そのような粒子は、微小サイズの、顔料又は染料を取り込んだ樹脂粒子であることができる。
【0049】
染料は、ナノ粒子の細孔を占めることによってナノ粒子に結合でき、次に、染料は繊維の上を拡散しうる。
【0050】
したがって、本技術的革新は、ナノ粒子をアラミド繊維に首尾良く結合させ、次いでこれらのナノ粒子を、染料として(この染料はナノ粒子中に含有されている)、結合点としてもしくは分子形態の染料として、又はゾル-ゲル法によって形成され、染料を含む材料として、用いることである。
【0051】
上述した面とは別に、用いるナノ粒子の性質は、その他の有利な機能を得ることを可能にする。特に、特定の繊維に結合された染料は、UVにかなり非耐性でありうることが実証されてきている。したがって、良好なUV吸収をもつナノ粒子(例えばTiO2ナノ粒子)の使用は、染色された繊維の染料の分解を長期にわたって抑えることを可能にする。
【実施例】
【0052】
〔具体的態様の詳細な説明〕
[実施例1]
この例は、SiO2ナノ粒子を有するアラミド繊維の調製法を示し、SiO2ナノ粒子上には続いて染料を結合することが可能である。
第一のステップでは、3.4mLの0.1質量%のSiO2ナノ粒子(12.5nmの粒径を有する)の溶液と15mLのベンジルアルコールを混合することによって浴(bath)を調製し、ここへ150mLの脱イオン水を添加する。この染料浴のpHは3.5〜4の値に調節する。
得られた浴を次に5gのアラミド布帛と接触させ、全体を120℃に60分間加熱する。
アラミド布帛を次に浴から回収し、冷水で濯ぐ。
こうして得られた繊維を走査電子顕微鏡で写真撮影し、それらの結合されたナノ粒子を示す。
【0053】
[実施例2]
この例は、アラミド繊維に組み込まれたナノ粒子を用いてアラミド繊維を染色する方法を示し、そのナノ粒子は染料、特にこの具体的な場合にはローダミン-B-イソシアネート(RBITC)、を含むSiO2ナノ粒子である。
第一のステップで、30mLのエタノール、4.46mLのテトラエトキシシラン、及び0.2mgのローダミン-B-イソシアネートを混合し、この混合物を1時間撹拌することによって第一の溶液(溶液A)を調製する。
第二のステップで、30mLのエタノール、0.65mLの30%水酸化アンモニウム溶液、及び9.8mLの脱イオン水を混合することによって第二の溶液を調製する(溶液B)。
溶液Bを室温で溶液Aに添加し、得られる混合物を15時間撹拌し、次に中和する。
この混合物を次に遠心分離し、上清が透明になるまでエタノールで洗浄する。形成された粒子は、Zetasizer Nano ZS装置で測定して20nmの粒径を有する。
繊維中にこれらの染色されたナノ粒子を組み込むためには、実施例1と同様の方法を用いる。
【0054】
[実施例3]
この実施例は、アラミド繊維に組み込まれたナノ粒子を用いてアラミド繊維を染色する方法を示し、ナノ粒子は市販の染料を含むSiO2ナノ粒子である。
第一のステップで、3mLのエタノール、1mLのテトラエトキシシラン、及び197.4mgの市販染料を混合し、この混合物を10分間撹拌し、次に0.8mLの1モル/Lの水酸化アンモニウムをこの溶液に添加することによって、第一の溶液(溶液A)を調製する。
第二のステップで、30mLのエタノールと0.6mLのテトラエトキシシランを混合することによって第二の溶液を調製する(溶液B)。
溶液Aを溶液Bに添加し、それらを3時間撹拌する。得られた溶液に、7.2mLのテトラエトキシシランと4.7mLの1モル/L水酸化アンモニウム溶液を添加する。それを15分間撹拌する。
この混合物を次に遠心分離し、エタノールで3回洗浄する。
形成した粒子は、Zetasizer Nano ZS装置で測定して300nmの粒径を有する。
蛍光スペクトルはコーティング前後で染料の蛍光ピークのシフトを示したが、このことはこの染料がSiO2粒子に組み込まれたことを証明している。
これらの染色されたナノ粒子を繊維に組み込むためには、実施例1で記載した方法と同様の方法を行う。
【0055】
[実施例4]
この実施例は、アラミド繊維に組み込まれたナノ粒子を用いてアラミド繊維を染色する方法を示し、ナノ粒子は市販染料を含むSiO2ナノ粒子である。
1.77gのTriton-X-100、7.7mLのシクロヘキサン、1.6mLのn-ヘキサノール、及び3.34mLの脱イオン水を混合することによってエマルションを調製し、このエマルションを15分間撹拌する。染料を含む1モル/Lの溶液0.04mLを前記のエマルションに添加し、続いて5分間撹拌し、0.05mLのテトラエトキシシランを添加しさらに30分間撹拌する。最後に0.1mLの水酸化アンモニウムを添加し、それを室温で24時間撹拌する。このエマルションを次にエタノールの添加によって不安定化させ、次に遠心をかけ、続いてエタノール、次に脱イオン水で洗浄する。
得られた粒子は、Zetasizer Nano ZS装置で測定して100nmの直径を有する。これらは水に良好に再分散される。
これらの染色されたナノ粒子を繊維に組み込むためには、実施例1に記載した方法と同様の方法を行う。
【0056】
[実施例5]
この実施例は、第一のステップにおいて、実施例2におけるようなナノ粒子の調製からなる。ナノ粒子は、次に31mLのエタノール中に再分散する。得られた混合物に、26.8mLのテトラエトキシシランを添加する。
SiO2ナノ粒子(12.5nmの直径をもつ)を用いて調製した布帛を、実施例1に記載した条件にしたがってベンジルアルコールの存在下で、上で得られた混合物に浸漬する。
それを1時間室温で撹拌する。
同時に、32mLの脱イオン水と、pH2をもつ塩酸溶液12mLとを混合することによって溶液Bをつくる。溶液Bを次に上記混合物に添加し、全体を70℃で4時間還流させる。それを室温に戻したら、冷水で濯ぐ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラミド繊維を改質してその染色能力を高める方法であって、以下のステップ:
a)前記繊維を処理して、そのガラス転移温度TgをTg(ここで、TgはTgよりも低い)に低下させるステップ;
b)処理された前記繊維を、Tg以上の温度で、ナノ粒子を含む溶液と接触させるステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップa)とb)を同時に行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理ステップa)が、前記繊維を、ベンジルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトフェノン、ベンズアルデヒド、及びそれらの混合物から選択される溶媒と接触させておくことからなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ナノ粒子が染料を含まず、前記アラミド繊維の表面に結合しうる基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノ粒子が多孔性であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、イオン結合又は弱い結合によって染料又は前記染料を含む粒子と結合しうる基を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、その表面に-OH基を含むSiO2のナノ粒子であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子が染料を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記の染料を含むナノ粒子が、SiO2外殻と染料からなる核とを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子がゾル-ゲル法によって調製されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)の後で、前記繊維の温度をTg未満の値に低下させるステップc)を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップc)と同時に又はその後で、前記繊維を濯ぐステップd)を含むことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
− 請求項1〜12のいずれか一項で定義した前記アラミド繊維改質方法を実施するステップ;
− 特に、上記ナノ粒子が染料を含まない場合に、前記繊維を染料と接触させておく、任意選択によるステップ、
を含むことを特徴とする、アラミド繊維の染色方法。
【請求項14】
前記染料が、直接、又は前記染料を含む粒子を用いて、ゾル-ゲル法によって前記ナノ粒子に結合されることを特徴とする、請求項13に記載の染色方法。

【公開番号】特開2008−255559(P2008−255559A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−96486(P2008−96486)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(503161615)ウニベルシテ クロード ベルナール リヨン 1 (2)
【出願人】(500531141)セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク (84)
【Fターム(参考)】