説明

アルカリ燃料電池用電極及び前記電極を作成する少なくとも1つの工程を含む燃料電池の製造方法

本願発明は、活性層を有するアルカリ燃料電池用電極(1)に関するものであって、前記活性層は、二重層(2)又は二重層(2)のスタックから成る。各二重層は、触媒ナノ粒子を有する触媒層(3)と、多孔質層(4)と、から成る。前記多孔質層は、2つの対向する表面(4a、4b)を有し、そのうちの一方が、前記触媒層(3)と接している。前記多孔質層(4)は多孔質複合材料から成り、前記多孔質複合材料は、水酸化イオン伝導高分子マトリックスを有し、その中において、前記多孔質層の前記2つの対向する表面をつなぐ複数の電子的伝導経路を構成する金属アレイが形成される。有利には、担体(5)の自由表面上に、真空下で、触媒粒子を連続して蒸着することと、前記水酸化イオン伝導高分子と前記金属とを真空下で複合蒸着することにより、前記電極を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ燃料電池用電極に関するものであり、少なくとも活性層を有し、前記活性層は、電気伝導体であり、水酸化イオンを伝導し、且つ、触媒である。
【0002】
本発明は、また、アルカリ燃料電池の製造方法に関するものであって、前記製造方法は、前記電極を作成する少なくとも1つの工程を含む。
【背景技術】
【0003】
公知のアルカリ燃料電池は、AFCと呼ばれ、通常、2つの電極と、水酸化イオンOHを交換し又は伝導する、液体又は固体の電解質と、により形成される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたアルカリ燃料電池は、固体スタックを有し、前記固体スタックは、第1電極と、水酸化イオン伝導固体膜と、第2電極と、で形成される。前記スタックの各電極は、前記固体膜と接する活性層を少なくとも有する。各活性層は、前記アルカリ燃料電池内部で起こる電気化学反応、もしくは、複数の反応に対して、電気伝導の性質と、水酸化イオン伝導の性質と、触媒の性質と、を示す。従って、前記活性層を構成する材料は、少なくとも、触媒成分と、電気伝導成分と、水酸化イオン伝導成分と、を有する。前記水酸化イオン伝導成分は、スチレン構造を有する高分子で形成され、前記高分子は、水酸化イオンと会合する4級アンモニウム官能基を有する。しかしながら、前記活性層を有する電極の能力は、最適ではなく、且つ、前記活性層を簡単に使用することができない。前記活性層生成技術は、実際には、工業生産には適していない。
【0005】
真空蒸着(堆積)技術(vacuum deposition techniques)のような、マイクロエレクトロニクスに由来する技術による、燃料電池、及び/又は、燃料電池で使われる電極、の作成を提案する。
【0006】
特許文献2に記載された構造は、電極触媒構造の真空蒸着により形成され、電極−膜−電極のスタック燃料電池のような燃料電池の中で用いることができるものであり、ペルフルオロスルホン酸塩基の電解膜を持つ。前記電極触媒の構造は、シロキサン(SiO)高分子マトリックスで形成され、その中では、分離、遊離されている触媒材料の粒子、例えば白金、が分散されている。前記電極触媒の構造は、3回の蒸着工程のサイクルを何回か繰り返すことによって、得ることができる。前記サイクルは、プラズマ化学気相成長法(PECVD)による第1高分子膜を形成することと、次いで、分離した粒子の状態に触媒材料を蒸着することと、前記粒子を覆うための第2樹脂膜のPECVD工程と、を連続的に有する。前記触媒材料の粒子は、最初の工程で蒸着することもできる。このような場合、前記電極触媒構造は、2回の連続する工程のサイクルを繰り返すことで、形成され、各工程は、触媒材料粒子を蒸着する工程と、次いで、前記粒子を覆うように形成される高分子膜のPECVDに、対応する。前記触媒材料の粒子の蒸着は、例えば、スパッタリング法や蒸着法で行われる。2つ又は3つの工程のサイクルを繰り返すことによって、常に単一層が形成されることとなり、その単一層は、前記高分子マトリックスで形成され、その中には、分離、単離された触媒材料の粒子が、分散している。しかしながら、得られた前記複合材料と、前記高分子マトリックスと、の内部での前記粒子の特徴的な分散は、活性電極層がアルカリ燃料電池の最適な動作を保証することを確保することができない。前記活性電極層は、充分な触媒の性質を有しているにもかかわらず、前記活性電極層は、実際には、水酸化イオン伝導成分を含まず、前記電気伝導性に限界がある。
【0007】
同様に、特許文献3は、プロトン交換高分子塩基を有する固体膜燃料電池のような燃料電池を得るために、マイクロエレクトロニクス分野に由来する蒸着技術を用いることを提案する。前記燃料電池は、複数の薄膜を真空蒸着することによって作られ、前記薄膜は、第1電極と、例えば、ナフィオン(登録商標)で作られる、プロトン交換高分子膜と、第2電極と、で連続的に形成される。前記各電極は、触媒活性層で形成され、前記触媒活性層は、2つの積層(superposed layer)を交互に重ねものを有し、各積層は、1nmから10nmの大きさを有する金属粒子の層と、多孔質伝導層と、で構成される。前記金属粒子の層は、プラズマスパッタリング法により得られる。前記多孔質伝導層は炭化水素型の前駆体から、化学気相成長法を用いることで得られ、ガス分散と、電気伝導と、を確保する多孔質の炭素層を得る。しかしながら、このように形成された前記活性層は、アルカリ燃料電池の最適な動作を保障することができない。前記活性層は、実際、イオン伝導性ではなく、水酸化イオン伝導性でもない。
【特許文献1】国際公開第2005/069413Aパンフレット
【特許文献2】米国特許第5518831号明細書
【特許文献3】米国特許第5750013号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、最適な効率を有し、簡単に使用することができるアルカリ燃料電池用電極を提供することにある。さらに詳細には、本願発明の目的は、アルカリ燃料電池用電極を提供することにあり、前記アルカリ燃料電池は、少なくとも、活性層を有し、前記活性層は、向上した電気伝導性、向上したイオン伝導性と、向上した触媒特性と、両方を示し、同時に、簡単に使用することができる。
【0009】
本発明によれば、上記目的は、添付された請求項によって達成される。より詳しくは、上記目的は、前記活性層は、二重層(bilayer)もしくは複数の二重層のスタックにより形成され、各二重層は、
−ナノメートルサイズの触媒粒子を備えた触媒層と、
−2つの対向する表面を備えた多孔質層であって、前記2つの対向する表面のいずれか一方の表面は前記触媒層と接触しており、前記多孔質層は多孔質複合材料で形成されており、前記多孔質複合材料は、水酸化イオン伝導高分子マトリックスを備え、前記水酸化イオン伝導高分子マトリックス中に、前記多孔質層の前記2つの対向する表面をつなぐ複数の電子的伝導経路を構成する金属格子が、形成されている前記多孔質層と、
から構成されることによって達成される。
【0010】
さらに本願発明のさらに別の目的は、アルカリ燃料電池の製造方法を提供することにあり、前記アルカリ燃料電池の製造方法は、前記電極を製造する少なくとも1つの工程を有し、簡単に使用することができ、且つ、さらに詳細には、工業生産に適したものである。
【0011】
本願発明によれば、上記の目的は、電極の前記製造工程が、少なくとも前記活性層を担体(support)の自由表面上に真空蒸着することを有し、各二重層の前記触媒層は、ナノメートルのサイズの触媒粒子の真空蒸着により形成され、且つ、前記多孔質層は水酸化イオン伝導高分子及び金属の複合真空蒸着(vacuum co-deposition)により形成される、ことによって達成される。
【0012】
他の利点及び特徴は、本発明の特有な実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特有な実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特有な実施形態は、添付の図面により示される。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1から3に示される、アルカリ燃料電池用電極1は、活性層を有し、前記活性層は、前記アルカリ燃料電池内で起こる電気化学反応、又は、複数の反応に対して、電子及び水酸化イオンを伝導し、且つ、触媒となる。
【0014】
前記活性層は、二重層2により、すなわち、2つの異なる積層で作られた薄膜により、もしくは、複数の二重層2a、...、2n、のスタックにより、すなわち、2つの異なる積層薄膜を交互に重ねたものにより形成されたスタックにより、形成される。従って、各2、2a、...、2n、の二重層は、活性層3及び多孔質膜4から成り、前記多孔質膜4は、2つの対向する表面4a及び4bを有し、そのうちの一方の表面は、前記触媒層3と接触する。
【0015】
さらに、前記活性層は、付加層(additional layer)5の上に配置することもできる。前記付加層は、好ましくは、多孔質であり電気伝導性である。このような場合、前記付加層5の上に配置された第1層は、多孔質層4もしくは触媒層3のいずれか一方になることができる。従って、図1及び図2においては、二重層2の多孔質層4は、表面4aにおいて前記付加層5と接する。図3は、2a、...、2n、のn個の二重層のスタックを示し、付加層5は前記スタックの第1二重層2aの触媒層3と接する。
【0016】
触媒層3は、ナノメートルのサイズの触媒粒子を有する。さらに詳細には、図2に示されるように、触媒層3は、触媒粒子6で形成される。触媒層3は、好ましくは、2nmから50nmの厚さを有し、特に詳細には、5nmから10nmである。前記触媒は、好ましくは、白金、白金ルテニウム合金、銀、及び銅から選ばれる。
【0017】
図2に示されるように、多孔質層4は、多孔質複合材料で形成され、前記多孔質複合材料は、水酸化イオン伝導高分子マトリックス7及び金属粒子8を有する。製造中に導入され次いで除去される多孔質形成剤(pore forming agent)を使用することにより、多孔質層4の孔(porosity)を、最適にすることができる。前記形成剤は、例えばシロキサンとすることができる。従って、層4の前記孔は、気体状又は液体状の化学種(species)が多孔質層4を通り抜けることを可能にする。しかし、前記活性層全体を通過すると、これらの化学種は、前記アルカリ燃料電池の動作時に、酸化されもしくは還元される。多孔質層4は、好ましくは50nmから1000nmの厚さを有し、有利なのは、100nmから200nmである。
【0018】
多孔質層4中の水酸化イオン伝導高分子の存在は、輸送と、触媒粒子6で形成した前記触媒部位から、もしくは、前記触媒部位へ、の水酸化イオンの伝導と、を確保する。さらに詳細には、前記高分子の水酸化イオンの伝導能力は、水酸化イオン交換官能基で保障される。前記水酸化イオン交換官能基は、例えば、第4級アンモニウム官能基、第4級ホスホニウム官能基、及び、第3級スルホニウム官能基から選ばれる。例えば、前記高分子は、不飽和アミンのような、アニオン交換官能基の前駆体から、プラズマ蒸着によって得られる。前記不飽和アミンとしては、例えば、トリアリルアミン、アリルアミンがあげられ、その中で、アミノ基は、4級アンモニウム基と交換する。
【0019】
金属粒子8は、マトリックス7の中での、金属格子浸出(percolating metallic lattice)を形成し、例えば、金属格子(metallic lattice)は、多孔質層4の前記2つの対向する表面4a及び4bをつないでいる、複数の電子的伝導経路を構成する。前記金属格子を構成する前記金属は、好ましくは、金及び銀から選ばれる。
【0020】
さらに、図2に示されるように、触媒粒子6は、好ましくは、高分子マトリックス7と、金属粒子8と、の両方に接触するのが好ましく、これにより、三重点(triple points)が形成される。前記三重点は、電気化学反応、もしくは、複数の反応が起こる場所である。三重点の存在は、前記活性層の触媒の効率を増加させ、これにより、特に、アルカリ燃料電池内で使用するための、特に効率の良い電極を得ることができる。前記活性層が、1つ、もしくは、それ以上の二重層の形状の特有な構造をとることは、前記アルカリ燃料電池の最適な動作のために必要な触媒量に還元することができることを意味する。これにより、前記活性層の前記活性表面は増加し、且つ、前記活性層の電気伝導性及び水酸化イオン伝導性は向上される。最終的には、特に、真空蒸着技術のようなマイクロエレクトニクスに由来する蒸着技術により、容易に得ることができる。
【0021】
本発明による燃料電池電極は、担体の自由表面の上に前記活性層を真空蒸着する少なくとも1つの工程によって、実際に形成することができる。従って、各二重層2、2a、...、2n、の触媒層3は、触媒粒子6の真空蒸着により形成される。各二重層2、2a、...、2n、の多孔質層4は、水酸化イオン伝導高分子と、金属粒子8を形成する前記金属と、の両方を複合真空蒸着させることにより形成される。
【0022】
さらに詳細には、各二重層2、2a、...、2n、の触媒層3の蒸着は、例えば、有機金属前駆体からの化学気相成長(MOCVD)により、もしくは、例えば、白金触媒層を形成するためのHPtClの電解還元のような、前記触媒を含む塩のめっき又は化学還元により、得られる。有利なのは、触媒粒子6の蒸着は、真空スパッタリング法により、好ましくは、高周波マグネトロンスパッタ法により行われる。この蒸着条件は、より詳しくは、他の粒子と分離されたナノメートルのサイズの触媒粒子8が蒸着できるように制御される。
【0023】
多孔質層4の複合蒸着は、水酸化イオン伝導高分子マトリックス7を得るためのプラズマ化学気相成長法(PECVD)と、金属粒子8の真空蒸着法による蒸着と、を同時に行うことにより得られる。この蒸着条件は、さらに詳細には、多孔質複合材料を得られるように決められ、前記多孔質複合材料は、水酸化イオン伝導高分子マトリックス7を有し、その中では、金属格子浸出が形成される。加えて、前記高分子のPECVDは、より詳しくは、4級アンモニウム基、4級ホスホニウム基、又は3級スルホニウム基のような、水酸化イオン交換官能基を生成する前駆体により行われる。
【0024】
第1の実施形態によれば、図3に示されているもののような燃料電池用電極は、例えば、二重層2aから2nのn個の二重層を、蒸着チャンバー内に配置された付加層5の前記自由表面の上に、連続して蒸着することによって得られる。前記付加層は、例えば、カーボンペーパー担体(carbon paper support)であり、且つ、好ましくは、前もってイソプロピルアルコール(Isopropylic alcohol)で拭き、次いで、アルゴン中で乾燥させる。前記蒸着チャンバーは、触媒層3の蒸着を行うための電界発生装置に備え付けられた電極の上に固定されたスパッタリング・ターゲットと、前記多孔質複合材料の金属粒子8を形成するための蒸発源と、を有する。
【0025】
さらに、最初の工程では、アルゴンガスは前記チャンバーに導かれ、且つ、その圧力は10−2Torrに維持される。プラズマは、高電圧又は高周波を、スパッタリング・ターゲットを構成する前記電極に印加することによって発生する。これにより、付加層5の上に、触媒粒子6を蒸着し、第1の触媒層3を形成する。
【0026】
第2工程において、前記蒸着チャンバーは真空状態にあり、且つ、水酸化イオン伝導高分子の前駆体及び前記金属蒸気は前記チャンバー内に導入される。前記前駆体高分子は、例えば不飽和アミンであり、例としては、トリアリルアミン、アリルアミンであり、その中で、前記アミノ基は4級アンモニウム基に置き換えられる。プラズマは、高電圧、又は、高周波を前記電極に印加することにより発生し、前記多孔質複合材料を複合蒸着し、それにより、第1の触媒層3の上に、第1の多孔質層4を形成する。従って、前記第1の触媒層3及び前記第1の多孔質層4は、付加層5の上に配置される第1の二重層2aを形成する。
【0027】
第1の二重層2aを形成することができる前記2つの連続する工程は、次いで、何回か繰り返され、n個の二重層のスタックを形成する。
【0028】
さらに、このように形成された前記活性層に、化学処理を施し、水酸化イオン伝導を確保する官能基の数を最適にする。4級アンモニウム官能基に対しては、CHIを用いて前記活性層を処理する。
【0029】
第2の実施形態によれば、10個の二重層2のスタックは、2つの連続する工程のサイクルを繰り返すことにより得られ、各々、高周波マグネトロンスパッタリング法及び真空複合蒸着を、各10回繰り返す。高周波マグネトロンスパッタリング法の最初の工程は、白金ターゲットを用いた手段により行われ、ナノメートルのサイズの白金粒子を有する触媒層を形成する。蒸着中に印加される電流強度及び電圧は、それぞれ、20mA及び1.5kVであり、前記チャンバー内のアルゴンの圧力は、5×10−3mbarであり、蒸着時間は20秒である。複合蒸着の第2工程は、金フィラメント中に電流を流すことによる、金フィラメントの蒸着と、水酸化イオン交換高分子の前駆体の気体を前記チャンバー内に導入することと、を同時に行う。プラズマは、連続する高周波を印加することにより、発生し、複合蒸着を行う。前記チャンバー内の圧力は、0.8mbarであり、電力は50Wであり、複合蒸着時間は5分である。他の蒸着サイクルのための準備として、前記チャンバーを清掃する。前記10回のサイクルを実施し、得られた前記活性層は化学的に処理され、水酸化イオン官能基の数が最適化される。
【0030】
本発明による電極製造は、簡単に使用できることと、ひとつの同じ蒸着チャンバーで形成されることを可能にすることと、の利点を示し、特に、前記電極製造方法は、工業生産に適していることとなる。
【0031】
さらに、本発明による電極製造は、広範囲のアルカリ燃料電池の製造プロセスと組み合わせることができる。これにより、アルカリ燃料電池は、簡単に、且つ、迅速に、工業的方法によって製造されることとなる。図4に示されるアルカリ燃料電池は、第1電極1と、孔のない薄膜の形状の電解膜9と、第2電極10と、を付加層5の前記自由表面上に、連続して蒸着することにより形成される。図4に示される前記第1及び第2の電極1及び10は、それぞれ第1及び第2の二重層2及び11を有し、前記各二重層は、多孔質層4と触媒層3とを有する。
【0032】
このように、上述のような製造工程手段によって、付加層5の前記自由表面上に第1電極1を蒸着し、電解膜9を、第1電極1の前記自由表面の上に、真空蒸着工程により、蒸着する。図4において、第1電極1の前記自由表面は、触媒層3の前記自由表面と一致し、第1の二重層2は、多孔質層4と、触媒層3と、を付加層5の上に連続的に蒸着することより、形成される。第2電極10は、前記第1電極1と同じ条件の下で、電解膜9の前記自由表面上に蒸着することができる。図4において、第2電極10は、第1電極1と同一であり、第2電極10の二重層11は、第1電極1のものと同一である。
【0033】
しかしながら、第2の二重層11中の前記触媒及び多孔質層の順番と、第2の電極10中の二重層の数とは、第1電極1のものとは異なる。
【0034】
さらに、第1及び第2の二重層2及び11の前記触媒層の各前記触媒と、第1及び第2の二重層2及び11の前記多孔質層の前記各高分子とは、同一もしくは異なる。同様に、孔のない薄膜層の形状である前記電解膜は、水酸化イオン伝導高分子を有することができ、前記水酸化イオン伝導高分子は、第1及び第2電極の前記多孔質層の前記高分子とは、同一もしくは異なる。前記電解膜は、例えば、前記第1及び第2の電極の前記多孔質層の場合と同じ高分子前駆体から作ることができ、しかしながら、異なる制御モードを用いれば、孔のない電解膜を得ることができる。これは、燃料電池は、1つの同じチャンバーの中で簡単に、且つ、迅速に、形成することができることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による電極の第1の実施態様の断面を概略的に示したものである。
【図2】図1にかかる前記電極の前記活性層の断面の拡大部分を概略的に示したものである。
【図3】本発明による電極の第2の実施態様の断面を概略的に示したものである。
【図4】本発明による2つの電極を有する燃料電池の断面を概略的に示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも活性層を有するアルカリ燃料電池用電極(1、10)であって、前記電極は、電子と水酸化イオンとを伝導し、且つ、触媒であり、
前記活性層は、二重層(2、11)もしくは複数の二重層(2a、...、2n)のスタック、により形成されており、各二重層(2、11、2a、...、2n)は、
−ナノメートルサイズの触媒粒子(6)を備えた触媒層(3)と、
−2つの対向する表面(4a、4b)を備えた多孔質層(4)であって、前記2つの対向する表面(4a、4b)のいずれか一方の表面は前記触媒層(3)と接触しており、前記多孔質層(4)は多孔質複合材料で形成されており、前記多孔質複合材料は、水酸化イオン伝導高分子マトリックス(7)を備え、前記水酸化イオン伝導高分子マトリックス(7)中に、前記多孔質層の前記2つの対向する表面をつなぐ複数の電子的伝導経路を構成する金属格子が形成されている、前記多孔質層(4)と、
から構成されることを特徴とする電極。
【請求項2】
請求項1に記載された電極(1、10)であって、前記触媒層(3)は、2nmから50nmの厚さを有することを特徴とする電極。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載された電極(1、10)であって、前記多孔質層(4)は、50nmから1000nmの厚さを有することを特徴とする電極。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載された電極(1、10)であって、前記水酸化イオン伝導高分子は、少なくとも、水酸化イオン交換官能基を有し、前記水酸化イオン交換官能基は、4級アンモニウム官能基、4級ホスホニウム官能基及び3級スルホニウム官能基から選択されることを特徴とする電極。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載された電極(1、10)であって、前記触媒が、白金、白金ルテニウム合金、銀及び銅から選択されることを特徴とする電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載された電極(1、10)であって、前記金属(8)は、前記多孔質複合材料の前記金属格子を構成し、銀及び金から選択されることを特徴とする電極。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載された電極(1、10)であって、前記電極は、付加層(5)を有し、前記付加層(5)の上に前記活性層が配置されることを特徴とする電極。
【請求項8】
アルカリ燃料電池の製造方法であって、請求項1から7の1つに記載された電極(1、10)の製造工程を少なくとも1つ有し、前記電極(1、10)の前記製造工程は、少なくとも前記活性層を担体の自由表面上に真空蒸着することを有し、各二重層(2、11、2a、...、2n)の前記触媒層(3)は、ナノメートルのサイズの触媒粒子(6)の真空蒸着により形成され、且つ、前記多孔質層(4)は水酸化イオン伝導高分子及び金属(8)の複合真空蒸着により形成される、ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載された方法において、複数の二重層(2、11、2a、...、2n)を、前記担体の前記自由表面に連続的に蒸着し、前記活性層を構成する前記スタックを形成することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8もしくは9に記載された方法において、前記触媒層(3)の蒸着は、真空スパッタリング法により行うことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項8から10のいずれか1つに記載された方法において、前記多孔質層(4)の複合蒸着は、前記水酸化イオン伝導高分子のプラズマ化学気相成長と、前記金属(8)の蒸着と、を同時に行うことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1つに記載された方法において、前記活性層を担体の自由表面の上に真空蒸着し、次いで、前記活性層の化学処理工程を行うことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1つに記載された方法において、連続的に、
−第1電極(1)の製造工程であって、前記担体の前記自由表面を、前記第1電極(1)の前記活性層を受け止めるように設計し、前記活性層を、前記付加層(5)の自由表面によって形成する、工程と、
−電解膜(9)の真空蒸着工程であって、前記電解膜(9)を、前記第1電極(1)の前記活性層の前記自由表面の上に蒸着する、工程と、
−第2電極(10)の製造工程であって、前記担体の前記表面を、前記第2電極(10)の前記活性層を受けとめるように設計し、前記活性層を、前記電解膜(9)の前記自由表面によって形成する、工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載された方法において、前記第1及び第2の電極(1、10)の前記触媒層(3)の前記各触媒は、同一であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13もしくは14に記載された方法において、前記第1及び第2の電極(1、10)の前記多孔質層(4)の前記各高分子は、同一であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載された方法において、前記電解膜(9)は、孔のない薄膜によって形成され、前記孔のない薄膜は、前記第1及び第2の電極(1、10)の前記多孔質層(4)の前記高分子と同一である水酸化イオン伝導高分子を有することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−512976(P2009−512976A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536084(P2008−536084)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002340
【国際公開番号】WO2007/045763
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(502142323)コミサリア、ア、レネルジ、アトミク (195)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(506075252)ユニベルシテ モンペリエ ドゥー (7)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE MONTPELLIER II
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】