説明

アルカリ蓄電池の充放電制御方法および充放電システム

【課題】アルカリ蓄電池の使用可能容量を効率的に利用でき、メモリー効果も抑制することができる充放電制御方法および充放電システムを提供する。
【解決手段】アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態(SOC)に基づいて、アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する工程(a)と、アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから、少なくとも一定期間は、前記設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充電または放電を停止する工程(b)と、を含む、アルカリ蓄電池の充放電制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ蓄電池の充放電制御方法および充放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケル水素蓄電池をはじめとするアルカリ蓄電池は、ハイブリッド車(以下、HEV)や非常用電源などの産業用途を中心に需要が拡大しつつある。なかでもHEVにおいては、メイン電源であるアルカリ蓄電池は、モーター駆動(放電)と、発電機からの回生電力の貯蓄(充電)との双方を行う必要がある。よって、アルカリ蓄電池の充電状態(State of charge:SOC)を常に監視し、SOCに応じて充放電を制御する必要がある。
【0003】
正極活物質に水酸化ニッケルを用いるアルカリ蓄電池は、完全放電(SOCがほぼ0%)や完全充電(SOCがほぼ100%)を行わないサイクルを繰り返すとメモリー効果が生じる。すなわち、蓄電池の残容量に対する起電力値が低下し、容量が見かけ上減少する。メモリー効果の発生を抑制するために、アルカリ蓄電池においては幅広いSOC領域での充放電を行うことが望ましい。
【0004】
ただし、HEVのような用途では、瞬時に大電流での充放電が絶え間なく行われる。よって、個々に容量差を有する複数のアルカリ蓄電池を接続した際に、最も容量の小さい蓄電池が過充電や過放電になることを回避する必要がある。そこで、完全放電や完全充電が行われないように、充電を禁止する上限SOC(充電上限電圧)と、放電を禁止する下限SOC(放電下限電圧)とを設け、上限電圧と下限電圧との間で充放電を制御する方法が採用されている。
【0005】
メモリー効果を低減させるために、従来から種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1は、電池の放電電流の積算値から推定電池電圧を求め、これに基づいて放電下限電圧を補正することにより、メモリー効果が生じた場合でも、充放電領域の幅を広くする方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−186682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、充電または放電を終了したアルカリ蓄電池を放置すると、正極活物質である水酸化ニッケルの自己分解反応が促進され、その自己分解反応の量に応じて残存容量が減少する。また、自己分解反応に伴い、水酸化ニッケルの反応性が低下するため、次の充電または放電を開始する際の分極が大きくなる。そのため、推定された電池電圧のみに基づいて充電上限電圧または放電下限電圧を設定すると、充分な電気量が充放電されず、電池の使用可能容量が減少する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
アルカリ蓄電池の正極活物質である水酸化ニッケルの自己分解反応の量は、前回の充電および放電が終了してからの放置時間、放置時の環境温度および放置開始時の充電状態により変化すると考えられる。
【0009】
そこで、本発明の一局面は、アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態に基づいて、前記アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する工程と、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから、少なくとも一定期間は、前記設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充電または放電を停止する工程と、を含む、アルカリ蓄電池の充放電制御方法に関する。
【0010】
本発明の他の一局面は、アルカリ蓄電池と、前記アルカリ蓄電池の電圧を検知する電圧検知部と、前記アルカリ蓄電池の温度を検知する温度検知部と、充電または放電が終了してからの放置時間をカウントする時間検知部と、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態に基づいて、前記アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する演算部と、前記演算部により設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を記憶する記憶部と、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから一定期間は、前記記憶された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に基づいて、前記アルカリ蓄電池の充放電または放電を制御する充放電制御部と、を具備する、充放電システムに関する。
【0011】
上記充放電制御方法および充放電システムによれば、電池の分極の程度に応じて、アルカリ蓄電池の充電上限電圧または放電下限電圧を設定することができるため、電池の使用可能容量を効率的に利用できる。また、分極による充放電不足が抑制されるため、メモリー効果の発生を抑制できる。
【0012】
上記充放電制御方法および充放電システムにおいて、前記一定期間(暫定期間)を経過後は、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧とは異なる、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧で、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を停止してもよい。
【0013】
暫定期間が経過して、分極の影響が小さくなると、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧で充放電を制御することで、例えばHEV用途においては、個々に容量差を有する複数のアルカリ蓄電池を接続した際にも、最も容量の小さい蓄電池が過充電や過放電になることを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリ蓄電池の使用可能容量を効率的に利用でき、メモリー効果も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の充放電システム1の一例の構造を示すブロック図である。
【図2】充放電電流と暫定の充電上限電圧および放電下限電圧との関係を示すグラフである。
【図3】暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を決定する工程の一例のフローチャートである。
【図4】暫定モードによる電池の充放電制御の工程の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する際の分極の程度は、前回の充電および放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態により変化する。したがって、アルカリ蓄電池の充電上限電圧または放電下限電圧を変動させずに固定すると、分極が大きい場合には、充電上限電圧まで充電し、放電下限電圧まで放電しても、実際の充電量または放電量は、本来の使用可能容量よりも少なくなる。さらに、このような充放電を繰り返すと、予定されていた充電状態に達する前に充電または放電が停止されることが繰り返され、メモリー効果が発生しやすくなる。
【0017】
そこで、本発明の充放電制御方法および充放電制御システムにおいては、アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態(SOC)に基づいて、アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧が設定される。これにより、電池の使用可能容量を有効に活用できるようになり、メモリー効果の発生も抑制される。
【0018】
ただし、アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから一定期間が経過すると、電池の分極はある程度解消されるため、長期間継続して電池の充放電を繰り返す場合には、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧は、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧に切り替えられる。
【0019】
ここで、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧とは、例えば、電池の放置や電池の劣化が分極に与える影響を考慮する必要がない場合に推奨される充電上限電圧または放電下限電圧である。このような標準の上限または下限電圧は、例えばHEV用途においては、個々に容量差を有する複数のアルカリ蓄電池を接続した際に、最も容量の小さい蓄電池が過充電や過放電になることを回避できるように設定される。標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧は、固定値でもよく、長期間の使用等においては電池の劣化状態に応じて変更してもよい。暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧は、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧よりも、高くなったり、低くなったりする。
【0020】
ここで、前回の充電または放電が終了してからの放置時間は、正確に測定することが望ましいが、厳密である必要はない。考慮される時間は、実際の放置時間を反映していればよい。放置時間が長いほど、水酸化ニッケルの自己分解反応が進行しており、水酸化ニッケルの反応性が低下しているため、次の充電または放電を開始する際の分極は大きくなる傾向がある。よって、放置時間が長いほど、充電を行う際には、暫定の充電上限電圧を標準の充電上限電圧より高く、放電を行う際には、暫定の放電下限電圧を標準の放電下限電圧より低く、設定することができる。これにより、電池の使用可能容量を有効に活用できるようになる。
【0021】
放置時の電池温度の測定は、電池の放置期間中に少なくとも1回行えばよい。例えば、前回の使用終了後、周期的に温度測定し、複数の測定値の平均温度を考慮してもよい。放置時の温度が高いほど、水酸化ニッケルの自己分解反応が進行しており、水酸化ニッケルの反応性が低下しているため、次の充電または放電を開始する際の分極は大きくなる傾向がある。よって、電池温度が高い場合には、充電を行う際には、暫定の充電上限電圧を標準の充電上限電圧より高く、放電を行う際には、暫定の放電下限電圧を標準の放電下限電圧より低く、設定することができる。
【0022】
なお、放置時間が比較的長い場合には、電池温度の代わりに電池周囲の環境温度を測定してもよい。ただし、放置時間が比較的短い場合には、電池温度が環境温度よりも高い場合があるため、直接、電池温度を測定することが望ましい。一方、放置時間が比較的長い場合には、電池温度は環境温度と同視できる。また、放置時間が比較的短い場合には、電池温度は放置時間の関数になるため、電池温度や環境温度を重視する必要はなく、放置時間を重視して、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定すればよい。
【0023】
放置開始時の充電状態(SOC)は、様々な方法で求めることができる。例えば、充電状態と電池電圧は対応関係を有するため、電池電圧の測定値から電池の充電状態を推定することが可能である。また、予め、SOCと電圧電流特性(I−V値)との関係を示す検量線を作成する場合、適宜I−V値を測定し、検量線と照合すれば、SOCをモニタリングすることができる。
【0024】
ただし、アルカリ蓄電池に既にメモリー効果が生じている場合には、電池電圧の測定値は、実際の充電状態を反映していない可能性がある。メモリー効果が発生している電池は、十分な残存容量を有している場合であっても、放電中に電圧が急激に低下することがあるからである。したがって、放置開始時の充電状態(SOC)は、前回の充電または放電の電流積算値から求めることが好ましい。充電または放電の電流積算値は、充電容量または放電容量を正確に反映しているため、前回の充電または放電の開始時における充電状態が正確であれば、放置開始時の充電状態を正確に把握することができるからである。また、電流積算値から算出されるSOCにより、検量線との照合により得られるSOCを補正してもよい。以上により、より適切な暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定することが可能となる。
【0025】
放置開始時の充電状態(SOC)が高いほど、水酸化ニッケルの自己分解反応は進行しやすく、充電状態が低いほど、自己分解反応は進行しにくいと考えられる。
なお、SOCが同じであっても、放置開始時が充電終わりに対応する場合には、水酸化ニッケルの自己分解反応は、より進行しやすく、放置開始時が放電終わりに対応する場合には、水酸化ニッケルの自己分解反応は、より遅くなる傾向がある。よって、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態に加え、放置開始時が充電終わりおよび放電終わりのいずれであるかも考慮して、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定してもよい。
【0026】
本発明の好ましい態様においては、さらに、充電電流または放電電流を考慮して、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧が設定される。電池の分極の程度は、充電電流または放電電流の大きさによって変化し、閉回路電圧も変動する傾向があるからである。一般に、電流値が大きくなるほど、分極の程度は大きくなる。よって、充電電流または放電電流の大きさを考慮することにより、より適切な暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定することが可能となる。
【0027】
本発明の好ましい態様においては、さらに、アルカリ蓄電池の総充放電容量を考慮して、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧が設定される。ここで、総充放電容量とは、電池の使用の初期から現在(すなわち充電または放電を開始する時点)までに行われた全ての充電および放電の電流積算値の合計である。総充放電容量は、その電池の充放電の繰り返し回数(サイクル数)に対応しており、電池の劣化の程度の指標となる。電池の劣化の程度により、電池の分極の程度は変化する場合がある。よって、総充放電容量を考慮することにより、より正確に電池の分極の程度を把握でき、より適切な暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定することが可能となる。なお、総充放電容量は、できるだけ正確に測定することが望ましいが、厳密である必要はなく、既に行われた電池の充放電の回数を、ある程度、反映していればよい。
【0028】
なお、電池の劣化の程度の指標としては、総充放電容量に限られず、長期間における電池の放置期間の合計や、当該放置時の温度の平均値を用いてもよい。放置時間や放置時の温度は、短期的には自己放電やメモリー効果に対する影響が大きくなるが、長期的には電池の劣化にも影響すると考えられるためである。
【0029】
次に、上記の充放電制御を行う充放電システムについて説明する。
図1は、本発明の充放電システム1の一例の構造を示すブロック図である。
充放電システム1は、アルカリ蓄電池群10と、アルカリ蓄電池群10の充電上限電圧または放電下限電圧を設定する終止電圧設定回路20と、設定された上限または下限電圧に基づいてアルカリ蓄電池群10の充放電を制御する充放電制御部30とを具備する。充放電システム1は、バックアップ用電源装置、電子機器、電気自動車、HEV等、種々の電源システムに用いられる。
【0030】
終止電圧設定回路20は、例えばECU(Electric Control Unit)として構成されている。終止電圧設定回路20は、電池群10の充放電電流を検知する電流検知部201と、電池群10の電圧を検知する電圧検知部202と、電池群10の温度を検知する温度検知部203と、充電または放電が終了してから次の充電または放電が開始されるまでの放置時間をカウント(測定)するタイマー204と、電流検知部201で検知された電流を積算する電流積算部205と、中央制御部240とを具備する。
【0031】
中央制御部240は、上記の各種検知部、タイマー204および電流積算部205から出力される情報を基礎にして、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定し、充放電制御部30に対して設定された上限または下限電圧を出力する。
【0032】
充放電制御部30には、発電装置100と、負荷装置200とが接続されている。電池群10の充電は主に発電装置100によって行われる。発電装置100は、例えばHEVのエンジン等の動力により駆動される発電機等であり、内燃機関の運動エネルギーや停止時の摩擦エネルギーを電気エネルギーに変換できるインバータを用いるのが一般的である。負荷装置200は、例えばHEVのモーター等である。放電時に電気エネルギーを運動エネルギーに変換する際にも同様のインバータが用いられる。
【0033】
充放電制御部30は、発電装置100の代わりに、商用電源に接続されていてもよい。充放電制御部30は、発電装置100からの余剰電力や負荷装置200で発生する回生電力を電池群10に充電するように制御する。また、充放電制御部30は、負荷装置200の消費電流が急激に増大したり、負荷装置200の要求電力が発電装置100の出力を超えたりすると、電池群10から不足する電力を負荷装置200へ供給する。
【0034】
電池群10は、直列接続された複数のアルカリ蓄電池からなる。アルカリ蓄電池は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム蓄電池などを用いることができる。なお、アルカリ蓄電池の数は、特に限定されず、1つでもよく、複数でもよい。複数の場合、電池の接続の仕方は、図1のような直列に限定されず、並列接続されていてもよく、直列と並列とが組み合わされていてもよい。
【0035】
ニッケル水素蓄電池やニッケルカドミウム電池は、ニッケル化合物を含む正極、負極、セパレータおよびアルカリ電解液(水酸化カリウム水溶液等)を含む二次電池である。正極は、必須成分として正極活物質(ニッケル化合物)を含み、任意成分として導電材や、他の添加剤を含む。ニッケル化合物としては、水酸化ニッケルが用いられる。アルカリ蓄電池のメモリー効果や分極の発生は、水酸化ニッケルの自己分解反応と関連していると考えられる。負極は、必須成分として負極活物質を含み、任意成分として添加剤を含む。ニッケル水素蓄電池の負極活物質には水素吸蔵合金が用いられ、ニッケルカドミウム蓄電池の負極活物質にはカドミウム化合物が用いられる。なお、アルカリ蓄電池の形状は特に限定されないが、例えば円筒型、角型等の電池がある。
【0036】
電池群10の近傍には、電池群10の温度、または電池群10の周囲の環境温度を測定する温度センサ101と、電池群10の充放電電流を検出する電流センサ102とが設置されている。
【0037】
温度センサ101には、例えば熱電対やサーミスタ等が用いられ、電池温度または環境温度(T)に応じた情報を温度検知部203へ出力する。温度検知部203に出力された温度は、所定の周期で中央制御部240に送られる。
【0038】
電流センサ102は、例えば、電池群10と直列接続された抵抗素子や電流変成器等で構成されており、電池群10を流れる電流(I)に応じた情報を電流検知部201へ出力する。電流検知部201に出力された電流値は、所定の周期で中央制御部240および電流積算部205に送られる。
【0039】
電圧検知部202は、例えばアナログデジタル変換器を用いて構成されており、電池群10の端子間電圧(V)を測定する。電圧検知部202は、例えば、測定された端子間電圧を予め設定された周期でデジタル値に変換して、中央制御部240へ出力する。電圧検知部202は、図1に示すように、電池群10の端子間電圧をまとめて測定してもよいが、電池1個毎または並列接続された複数電池毎に端子間電圧を測定して、これらを合計してもよい。
【0040】
タイマー204は、例えば電流センサ102と接続されており、電池群10の充放電が行われている場合には、電流センサ102から送られるアナログ情報を受信できるようになっている。電池群10の充電または放電が終了し、電池群10が放置された状態になると、一定期間以上にわたり、電流センサ102からのアナログ情報を受信しなくなるため、放置が開始されたものと判定して、放置時間(t)の積算を開始する。なお、放置の開始のタイミングは、どのような方法で検知してもよく、電流センサからの情報に基づいて行う必要はない。例えば、HEVの運転者がHEVのエンジンを停止したときから、タイマー204による放置時間の積算を開始してもよい。
【0041】
中央制御部240は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、所定の制御プログラム、標準の充電上限電圧、標準の放電下限電圧、その他、予め取得された情報が記憶された不揮発性のROM(Read Only Memory)、放置時間、電池温度、電池の充電状態、設定された充電上限電圧または放電下限電圧などを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、その他の周辺回路を備えて構成されている。中央制御部240は、ROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、SOC検出部241および暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧の設定に必要な演算処理を実行する演算部242として機能する。ROMおよびRAMは、記憶部243として機能する。
【0042】
電流積算部205では、検知された電流値に微小時間Δtを乗じて、これを積算することにより、電池群10により充放電された電気量(Q)が求められる。充電電流をプラスの電流、放電電流をマイナスの電流として、電流の積算を行うと、積算された電気量(Q1)は電池群の充電状態(SOC)を反映している。電気量(Q1)は、SOCを算出するための情報として、中央制御部240に出力される。また、充電電流および放電電流の符号を考慮せず、電流の絶対値に基づいた積算を行うと、総充放電容量に対応する電気量(Q2)が得られる。電気量(Q2)は、電池群10の劣化状態を判定するための情報として、中央制御部240に出力される。
【0043】
SOC検出部241は、満充電状態の電気量に対する積算された電気量(Q1)の比率を算出することで、電池群10のSOCを求めることができる。あるいは、予め、ROMにSOCと電圧電流特性(I−V値)との関係を示す検量線が記憶されている場合には、SOC検出部241が、適宜I−V値を計算し、検量線と照合することにより、SOCが求められる。その際、温度に応じた補正係数をROMに記憶しておき、電池温度に応じて、SOCを補正してもよい。また、電池温度域毎に、SOCと電圧電流特性(I−V値)との関係を示す検量線を求めておき、電池温度に応じて、適宜、適正な検量線を参照するようにしてもよい。求められたSOCはRAMに記憶される。なお、複数の電池のSOCは、一部の電池毎に分割して求めてもよい。
【0044】
演算部242は、電池群10の充電または放電を開始する前に、電流検知部201、電圧検知部202、温度検知部203、タイマー204および電流積算部205から出力された、記憶部243のRAMに一時的に記憶されているパラメータを用いて、前回の充電または放電が終了してからの放置時間(t、x1)、放置時の電池温度(T、x2)および放置開始時の充電状態(SOC、x3)を決定し、これらに基づいて、電池群10の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する演算処理を行う。
【0045】
例えば、記憶部243のROMには、複数の候補充電上限電圧または候補放電下限電圧を記憶されている。具体的には、候補充電上限電圧または候補放電下限電圧(Y)は、それぞれ変数Xに応じて設定されており、例えばY=f(X)の関係を有する関数がROMに記憶されている。変数Xは、少なくとも放置時間x1、放置時の電池温度x2および放置開始時の充電状態x3を含み、Y=f(x1、x2、x3)の関係がある。このような関係は、様々な実験やシミュレーションによって予め取得されたデータであり、1つのx1、x2およびx3の組み合わせに対して、1つの候補充電上限電圧または候補放電下限電圧が対応するようになっている。演算部242は、変数Xの組み合わせを決定すると、候補充電上限電圧または候補放電下限電圧と変数Xとの関係を示す関数を参照し、適切な上下限電圧を選択して、充放電制御部30に出力する。
【0046】
上記のようなパラメータと候補充電上限電圧または候補放電下限電圧との関係は、これから開始する充電または放電の電流値(x4)により補正することが望ましい。この場合、Y=f(X)の関係は、Y=f(x1、x2、x3、x4)で表すことができる。また、電池の劣化を考慮する場合には、さらに、電流積算部205により得られる電池群10の総充放電容量(x5)により上記関係を補正することが望ましい。この場合、Y=f(X)の関係は、Y=f(x1、x2、x3、x4、x5)で表すことができる。
【0047】
充電または放電が開始されると、検電圧検知部202は、電池群10の端子間電圧を所定の周期でモニタし、中央制御部240に出力する。電池群10の閉路電圧が、設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に達したことを検知すると、その情報が充放電制御部30に出力され、充電または放電が停止される。
【0048】
ここで、充電または放電を2段階で行ってもよい。すなわち、電圧検知手段202が、電池群10の閉路電圧が設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に達したことを検知するまでは、第1充電電流または第1放電電流で電池群10を第1充電または第1放電させる。そして、電圧検知手段202が、電池群10の閉路電圧が設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に達したことを検知すると、第1充電または第1放電を停止して、第1充電電流または第1放電電流より小さい第2充電電流または第2放電電流で、電池群10を第2充電または第2放電させる。上記のような、2段階の充電または放電を行うことにより、メモリー効果を抑制する効果が顕著に高められるとともに、使用可能容量のより有効な利用が可能となる。
【0049】
図2は、充放電電流と、設定された暫定の充電上限電圧および放電下限電圧との関係を示すグラフである。図2において、充電上限電圧はSOC80%相当の電圧であり、放電下限電圧はSOC20%相当の電圧である。
【0050】
まず、比較的大きい第1充電電流I3(例えば、0.1〜0.3時間率(C)の電流値)で、アルカリ蓄電池の電圧が充電上限電圧に達するまで充電を行う(第1充電)。なお、X時間率の電流値とは、X時間でSOCが0%から100%(または100%から0%)になる電流値である。アルカリ蓄電池の電圧が充電上限電圧に達したら、第1充電を停止する。このとき、分極により、電池のSOCが実際には80%に達していない場合、電圧は低下する。その後、第1充電電流I3より小さい第2充電電流I4で充電を行う(第2充電)。第2充電を行うことにより、分極が小さくなり、SOC80%までの充電が可能となる。
【0051】
次に、比較的大きい第1放電電流I1(例えば、0.03〜0.3時間率(C)の電流値)で、アルカリ蓄電池の電圧が放電下限電圧に達するまで放電を行う(第1放電)。アルカリ蓄電池の電圧が放電下限電圧に達したら、第1放電を停止する。このとき、分極により、電池のSOCが実際には20%に達していない場合、電圧は上昇する。その後、第1放電電流I1より小さい第2放電電流I2で放電を行う(第2放電)。第2放電を行うことにより、分極が小さくなり、SOC20%までの放電が可能となる。
【0052】
第2充電は、アルカリ蓄電池の電圧が再び充電上限電圧に達するか、または充電上限電圧に達する前に停止させることが好ましい。充電上限電圧V1に達する前に第2充電を停止させる場合、使用可能容量を効率的に利用する観点から、第2充電を停止させる電圧v1は、例えば、充電上限電圧V1の95%以上(0.95×V1≦v1)に設定すればよい。
【0053】
同様に、第2放電は、アルカリ蓄電池の電圧が再び放電下限電圧に達するか、または放電下限電圧に達する前に停止させることが好ましい。放電下限電圧V2に達する前に第2放電を停止させる場合、使用可能容量を効率的に利用する観点から、第2放電を停止させる電圧v2は、例えば、放電下限電圧V2の105%以下(v2≦1.05×V2)に設定すればよい。
【0054】
第2充電を行う時間は、アルカリ蓄電池の電圧が所定の電圧に到達する時間であれば、特に限定されず、第2充電を行う時間は数秒であってもよい。第2充電を行う時間は、例えば1〜20秒である。同様に、第2放電を行う時間は、アルカリ蓄電池の電圧が所定の電圧に到達する時間であれば、特に限定されず、第2放電を行う時間が数秒であってもよい。第2放電を行う時間は、例えば1〜20秒である。
【0055】
第2充電または第2放電は、充放電1サイクル毎に行わなくてもよい。例えば、アルカリ蓄電池の充放電サイクルにおいて、数十サイクル毎に第2充電または第2放電を行った場合でも、メモリー効果の低減に有効である。例えば、5〜50サイクル毎に第2充電または第2放電を行ってもよい。
【0056】
第2充電電流は、第1充電電流よりも小さければ任意の値でよく、サイクルの進行に伴う終止電圧の変化によって任意に値を変更することができる。なかでも、第2充電電流は、第1充電電流の10分の1〜5分の1の値であることが好ましい。同様に、第2放電電流も、第1放電電流よりも小さければ任意の値でよく、サイクルの進行に伴う終止電圧の変化によって任意に値を変更することができる。なかでも、第2放電電流は、第1放電電流の10分の1〜5分の1の値であることが好ましい。
【0057】
なお、上記のような2段階の充電または放電は、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧に基づいて、電池の充放電を制御する場合にも、同様に適用することができる。
【0058】
アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから一定期間(暫定期間tx)は、設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充電または放電が停止される。そして、暫定期間txを経過後は、標準の充電終止電圧または標準の放電終止電圧で充電または放電が停止される。ここで、暫定期間は、電池の分極がある程度解消されるまでの期間であればよい。この期間は、例えば、暫定の充電上限電圧と標準の充電上限電圧との差(ΔV1)または暫定の放電下限電圧と標準の放電下限電圧との差(ΔV2)から推定することが可能である。ΔV1またはΔV2が大きいほど、電池の放置の影響が大きいと考えられるため、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充放電を制御する期間は長くなる。
【0059】
ΔV1またはΔV2と、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充放電を制御する期間との関係は、予め、実験やシミュレーションにより求めて、記憶部243のROMに格納しておけばよい。暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧が決定されると、同時に、その終止電圧で充放電を制御する期間も決定するため、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧とともに上記暫定期間も充放電制御部30に出力することができる。暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に基づく充電または放電(暫定モードの充放電)が開始されてからの時間は、例えばタイマー204で測定することができ、中央制御部240に出力され、充放電制御部30に出力される。
【0060】
HEVのような用途では、標準の放電下限電圧は、充電状態(SOC)15〜30%に相当する電圧であることが好ましい。放電下限電圧をSOC15〜30%に相当する電圧とすることで、メモリー効果を有効に抑制することができる。一方、標準の充電上限電圧は、SOC70〜85%に相当する電圧であることが好ましい。充電上限電圧をSOC70〜85%に相当する電圧とすることで、メモリー効果を有効に抑制することができる。また、充電上限電圧をSOC85%以下に相当する電圧とすることで、正極からの酸素発生等も十分に抑制することができる。
【0061】
次に、図3を参照しながら、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を決定する工程の一例について説明する。
まず、電池の使用が終了し、電池の放置が開始されたことを中央制御部240が検知する。このような検知は、上記のように、電流センサ102からの情報に基づいて行ってもよく、発電装置100、負荷機器200、終止電圧設定回路20などに設けられているメインスイッチのオフにより検知してもよく、充放電システムの使用者がマニュアルで中央制御部240への入力操作を行ってもよい。
【0062】
中央制御部240が電池の放置が開始されたことを検知すると、SOC検出部241は電池の放置開始時の充電状態(SOC)を所定の方法で取得し、記憶部243のRAMに記憶させる(S1)。SOCの取得方法は、特に限定されないが、例えば、上記のように、前回の充電または放電の積算値(Q1)から算出することができる。
【0063】
また、中央制御部240は、電池の放置開始時からタイマー204による時間のカウントを開始し(S2)、次回の充電または放電が開始されるまで、時間の積算を継続的し、周期的に積算時間をRAMに記憶させる。その際、常に最新の積算時間で以前の情報の書き換えを行ってもよい。
【0064】
さらに、中央制御部240は、温度検知部203から周期的に電池温度を取得し(S3)、それまでに取得された全ての温度に基づく平均値を算出して、周期的にRAMに記憶させる。その際、常に最新の平均温度で以前の情報の書き換えを行ってもよい。電池温度の取得、平均値の算出およびRAMへの記憶は、電池の放置の終了(S4)が検知されるまで繰り返される。
【0065】
電池の放置の終了は、どのような方法で検知してもよいが、例えば、発電装置100、負荷機器200、終止電圧設定回路20などに設けられているメインスイッチのオンにより検知することができる。
【0066】
電池の放置の終了が検知されると、中央制御部240は、RAMに記憶されている最新の積算時間を、電池の放置時間taとして決定し、最新の平均温度を、電池の放置中の温度Tとして決定する(S5)。
【0067】
次に、演算部242により、記憶部243に記憶されている電池のSOC、放置時の電池温度Tおよび放置時間taに基づいて、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧が決定される(S6)。例えば、記憶部243のROMには、予め取得された、放置時間(x1)、放置時の電池温度(x2)および電池のSOC(x3)、と、暫定の充電上限電圧(y1)または暫定の放電下限電圧(y2)との関係を示す関数データが格納されている。この関数データが呼び出され、x1=ta、x2=Tおよびx3=SOCとして、RAMに記憶されている情報を代入することにより、暫定の充電上限電圧(y1)または暫定の放電下限電圧(y2)が決定される。同時に、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧と標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧との差ΔVから、暫定期間txが決定される。
【0068】
なお、電流積算部205により、総充放電容量(Q2)を取得することが可能である場合には、Q2を周期的に中央制御部240に出力し、記憶部243のRAMにQ2を記憶させておくことができる。このような場合には、Q2は電池の劣化の指標となるため、Q2を考慮して、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を補正してもよい。このような補正に必要な関数データも、予め取得して、記憶部243のROMに格納しておけばよい。
【0069】
次に、図4を参照しながら、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧による電池の充放電制御(暫定モード)の工程の一例について説明する。
まず、暫定期間txを検知するために、電池の充放電の開始と同時に、タイマー204による時間のカウントを開始する(S7)。中央制御部240には、例えば、タイマー204でカウントされている時間が暫定期間txに達したかどうかを判定する判定回路が内蔵されており、電池電圧が暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に達した時点で、判定結果を出力するようになっている(S14)。
【0070】
電池の充放電においては、図2を参照しながら説明したように、始めは比較的大きな第1電流で、第1充電または第1放電が行われる(S8)。第1充電または第1放電の開始後に、電流検知部201により検知された電流値に基づいて、暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を補正してもよい(S9)。このような補正に必要な関数データも、予め取得して、記憶部243のROMに格納しておけばよい。
【0071】
第1充電または第1放電が開始されると、電圧検知部202は、周期的に電池電圧を取得し、記憶部243のRAMに記憶させる。中央制御部240には、例えば、電池電圧が暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に達したかどうかを判定する判定回路が内蔵されており、判定結果を出力する(S10)。出力された情報は、逐次、充放電制御部30に送られる。電池電圧が暫定の充電上限電圧(Vc)または暫定の放電下限電圧(Vd)に達したと判定されたときには、第1電流よりも小さい第2電流で、第2充電または第2放電が行われる(S11)。
【0072】
その後、再び、判定回路により、電池電圧が暫定の充電上限電圧(Vc)または暫定の放電下限電圧(Vd)に達したと判定されたときには(S12)、充電または放電が停止される(S13)。あるいは、第2充電または第2放電の停止は、例えば一律に1〜20秒間程度の短時間に設定してもよい。
【0073】
その後、電池電圧が充電上限電圧である場合には、電池の第1電流による放電に移行し、電池電圧が放電下限電圧である場合には、電池の第1電流による充電に移行する。ただし、タイマー204でカウントされている時間が暫定期間txに達ししている場合には(S14でYES)、暫定モードを終了し、その後は、標準の充電上限電圧と標準の放電下限電圧により充放電が制御される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の充放電制御方法および充放電システムは、アルカリ蓄電池の使用可能容量の有効利用やメモリー効果の抑制に有利であり、例えばバックアップ用電源装置、電子機器、電気自動車、HEVなど、様々な用途に適している。
【符号の説明】
【0075】
1・・・充放電システム、10・・・アルカリ蓄電池群、20・・・終止電圧設定回路、30・・・充放電制御部、100・・・発電装置、101・・・温度センサ、102・・・電流センサ、200・・・負荷装置、201・・・電流検知部、202・・・電圧検知部、203・・・温度検知部、204・・・タイマー、205・・・電流積算部、240・・・中央制御部、241・・・SOC検出部、242・・・演算部、243・・・記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態(SOC)に基づいて、前記アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する工程(a)と、
前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから、少なくとも一定期間は、前記設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧で充電または放電を停止する工程(b)と、を含む、アルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項2】
前記一定期間を経過後は、前記暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧とは異なる、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧で、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を停止する工程(c)、を含む、請求項1記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項3】
前記放置開始時の充電状態を、前記前回の充電または放電の電流積算値から求める、請求項1または2記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項4】
さらに、充電または放電の電流値を考慮して、前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧を設定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項5】
さらに、前記アルカリ蓄電池の総充放電容量を考慮して、前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧を設定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項6】
前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧まで、第1充電電流または第1放電電流で第1充電または第1放電を行い、その後、前記第1充電電流または前記第1放電電流よりも小さい第2充電電流または第2放電電流で第2充電または第2放電を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項7】
前記第2充電または前記第2放電を、前記アルカリ蓄電池の電圧が再び前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧に達するか、または前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧に達する前に停止させる、請求項6記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項8】
前記標準の充電上限電圧が、充電状態(SOC)70〜85%に相当する電圧である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項9】
前記標準の放電下限電圧が、充電状態(SOC)15〜30%に相当する電圧である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項10】
前記第2充電電流または前記第2放電電流が、前記第1充電電流または前記第1放電電流の10分の1〜5分の1の値である、請求項6〜9のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項11】
前記第1充電電流が、0.1〜0.3Cの電流値であり、
前記第1放電電流が、0.03〜0.3Cの電流値である、請求項6〜10のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項12】
前記第2充電または前記第2放電を行う時間が、1〜20秒である、請求項6〜11のいずれか1項に記載のアルカリ蓄電池の充放電制御方法。
【請求項13】
アルカリ蓄電池と、
前記アルカリ蓄電池の電圧を検知する電圧検知部と、
前記アルカリ蓄電池の温度を検知する温度検知部と、
充電または放電が終了してからの放置時間をカウントする時間検知部と、
前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始する前に、前回の充電または放電が終了してからの放置時間、放置時の電池温度および放置開始時の充電状態に基づいて、前記アルカリ蓄電池の暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を設定する演算部と、
前記演算部により設定された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧を記憶する記憶部と、
前記アルカリ蓄電池の充電または放電を開始してから、少なくとも一定期間は、前記記憶された暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧に基づいて、前記アルカリ蓄電池の充電または放電を制御する充放電制御部と、を具備する、充放電システム。
【請求項14】
前記一定期間を経過後は、前記暫定の充電上限電圧または暫定の放電下限電圧とは異なる、標準の充電上限電圧または標準の放電下限電圧に基づいて、前記アルカリ蓄電池の充放電または放電を制御する、請求項13記載の充放電システム。
【請求項15】
さらに、前記アルカリ蓄電池の充電および放電の電流を積算する電流積算部を有し、
前記演算部は、前記電流積算部により得られる前記アルカリ蓄電池の前記前回の充電または放電の電流積算値から前記放置開始時の充電状態を求める、請求項13または14記載の充放電システム。
【請求項16】
さらに、充電電流または放電電流を検知する電流検知部を有し、
前記演算部は、前記電流検知部により得られる電流値も考慮して、前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧を設定する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の充放電システム。
【請求項17】
前記演算部は、前記電流積算部により得られる前記アルカリ蓄電池の総充放電容量も考慮して、前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧を設定する、請求項13〜16のいずれか1項に記載の充放電システム。
【請求項18】
前記記憶部が、複数の候補充電上限電圧または複数の候補放電下限電圧を記憶しており、前記複数の候補充電上限電圧または候補放電下限電圧は、それぞれ変数Xに応じて設定されており、前記変数Xは、前記放置時間、放置時の環境温度および放置開始時の充電状態を含み、
前記演算部は、変数Xに応じて、前記複数の候補充電上限電圧または候補放電下限電圧から前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧を選択する、請求項13〜17のいずれか1項に記載の充放電システム。
【請求項19】
前記充放電制御部は、
前記電圧検知部が、前記アルカリ蓄電池の閉路電圧が前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧に達したことを検知するまで、第1充電電流または第1放電電流で、前記アルカリ蓄電池を第1充電または第1放電させ、
前記電圧検知部が、前記アルカリ蓄電池の閉路電圧が前記暫定の充電上限電圧または前記暫定の放電下限電圧に達したことを検知すると、前記第1充電または前記第1放電を停止して、前記第1充電電流または前記第1放電電流より小さい第2充電電流または第2放電電流で、第2充電または第2放電させる、請求項13〜18のいずれか1項に記載の充放電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253975(P2012−253975A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126512(P2011−126512)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】