説明

アルカリ金属不含のアルミノホウケイ酸塩ガラスおよびその使用

【課題】ディスプレイ技術および薄膜光電池の双方における基板ガラスとしての使用に高度に適したガラス。
【解決手段】次の組成(質量%、酸化物基準):SiO >58〜65、B >6〜10.5、Al >14〜25、MgO 0〜<3、CaO 0〜9およびBaO >3〜8、但し、MgO+CaO+BaO 8〜18、ZnO 0〜<2を有する、アルカリ金属不含のアルミノホウケイ酸塩ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属不含のアルミノホウケイ酸塩ガラスに関する。また、本発明はこのガラスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル液晶ディスプレイ技術、例えばTN(ねじれネマティック)/STN(超ねじれネマティック)ディスプレイ、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCDs)、薄膜トランジスタ(TFTs)またはプラズマアドレスド液晶(plasma addressed liquid crystals)(PALCs)における基板として適用するためのガラスには、高度な要求がなされている。高い熱衝撃抵抗性およびフラットパネルスクリーンの製造のためのプロセスに使用される攻撃的な化学薬品に対する良好な耐性の他にも、ガラスは、幅広いスペクトル域(VIS、UV)に亘り高い透明度を有するべきであり、かつ重量を減らすために低い密度を有するべきである。例えばTFTディスプレイ("チップ・オン・ガラス")における、集積半導体回路のための基板材料としての使用は、付加的に、300℃までの低温でアモルファスシリコン(a−Si)の形でガラス基板上に通常堆積する薄膜材料シリコンとの熱整合を必要とする。アモルファスシリコンを、約600℃の温度での引き続く熱処理により部分的に再結晶させる。a−Si分率のために、生じる部分的に結晶質のポリ−Si層は、熱膨張率α20/300≒3.7×10-6/Kにより特徴付けられる。a−Si/ポリ−Si比に応じて、熱膨張率α20/300は、2.9×10-6/K〜4.2×10-6/Kの間で変化しうる。実質的に結晶質のSi層が、薄膜光電池において同様に望ましい、約700℃を上回る高温処理によりまたはCVD法による直接的な堆積により生じる場合には、基板は、3.2×10-6/Kまたはそれ以下の顕著に低下した熱膨張を有することを必要とする。その上、ディスプレイおよび光電池技術における適用は、アルカリ金属イオンの不在を必要とする。製造の結果としての1000ppm未満の酸化ナトリウム水準は、半導体層へのNaの拡散のために一般的な"被毒"作用を考慮して許容されうる。
【0003】
適切な品質で(気泡なし、ノットなし、混在物なし)、例えばフロートプラント中でまたは延伸法により、経済的に、大工業規模に関して適したガラスを製造可能にすべきである。殊に、延伸法による、低い表面うねりを有し、薄く(<1mm)縞のない基板の製造には、ガラスの高い失透安定性が要求される。殊にTFTディスプレイの場合の、半導体のミクロ構造に不利な影響を及ぼす、製造中の基板のコンパクションに対抗するために、ガラスは、適した温度依存性の粘度特性線を有している必要がある:熱プロセスおよび形状安定性に関連して、十分に高いガラス転移温度、即ちT>700℃を有しているべきであるのに対して、他方では過剰に高くない融解および加工温度(V)、即ちV≦1350℃を有しているべきである。
【0004】
また、LCDディスプレイ技術または薄膜光電池技術のためのガラス基板の必要条件は、J. C. Lappによる"Glass substrates for AMLCD applications: properties and implications" SPIE Proceedings, Vol. 3014, invited paper (1997)、およびJ. Schmidによる"Photovoltaik - Strom aus der Sonne"Verlag C. F. Mueller, Heidelberg 1994にそれぞれ記載されている。
【0005】
上記の必要条件プロフィールは、アルカリ土類金属−アルミノホウケイ酸塩ガラスにより最も満たされる。しかしながら、次の刊行物に記載されている公知のディスプレイまたは太陽電池の基板ガラスはなお欠点を有しており、かつ必要条件の完全なリストを満たしていない。
【0006】
一部の文献には、相対的にBaOをあまり含有しないかまたは全く含有しないガラスが記載されている、例えば欧州特許第714862号、国際特許出願公表第98/27019号明細書、特開平10−72237号公報および欧州特許第510544号明細書。この種類のガラス、殊に低い熱膨張率、即ち低いRO含量および高い網目形成成分含量を有するものは、結晶化に極めて感受性である。更に、多くのガラスは、殊に欧州特許第714862号明細書および特開平10−72237号公報において、粘度が10dPasで極めて高い温度を有する。
【0007】
しかしながら、高い水準の重アルカリ土類金属酸化物BaOおよび/またはSrOを有するディスプレイガラスの製造は、同様に、ガラスの乏しい溶融性のために極めて困難を伴う。その上、この種類のガラスは、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3730410号、米国特許第5116789号、米国特許第5116787号、欧州特許第341313号明細書、欧州特許第510543号明細書および特開平9−100135号公報に記載されているように、望ましくない高い密度を有する。
【0008】
高いBaO水準に対する緩和と組み合わせた相対的に低いSrO含量を有するガラスでさえ、その溶融性に関連して望ましくない粘度特性線を有している、例えば特開平9−169538号公報、国際特許出願公表第97/11920号明細書および特開平4−160030号公報に記載されているガラス。
【0009】
相対的に高い水準の軽アルカリ土類金属酸化物、殊にMgOを有するガラスは、例えば特開平9−156953号、特開平8−295530号、特開平9−48632号公報およびドイツ連邦共和国特許第19739912号明細書に記載されているように、良好な溶融性を示し、かつ低密度を有する。しかしながら、耐薬品性、殊に緩衝されたフッ化水素酸に対する耐薬品性、結晶化安定性および耐熱性に関連して、これらは、ディスプレイおよび太陽電池基板に要求されることを全て満たしていない。
【0010】
低いホウ酸含量を有するガラスは、過剰に高い融解温度を示すか、またはこの結果として、これらのガラスを含むプロセスに要求される融解および加工温度で過剰に高い粘度を示す。このことは、特開平10−45422号および特開平9−263421号公報のガラスに当てはまる。
【0011】
更に、この種類のガラスは、低いBaO含量と組み合わせた場合に、高い失透傾向を有する。
【0012】
それに対して、例えば米国特許第4824808号明細書に記載されているように、高いホウ酸含量を有するガラスは、不十分な耐熱性および耐薬品性、殊に塩酸溶液に対する不十分な耐薬品性を有する。
【0013】
相対的に低いSiO含量を有するガラスは、殊にこれらが相対的に多量のBおよび/またはMgOを含有し、かつアルカリ土類金属が少ない場合には、十分に高い耐薬品性を有していない。このことは、国際特許出願公表第97/11919号および欧州特許出願公開第672629号明細書のガラスにもあてはまる。後者の文献の相対的にSiOに富む変法は、低いAl水準を有しているにすぎず、これは結晶化挙動には不利である。
【0014】
ハードディスク用の特開平9−12333号公報に記載されたガラスは、AlまたはBが比較的少なく、その際、後者は単に任意であるにすぎない。ガラスは、高いアルカリ土類金属酸化物含量を有し、かつ高い熱膨張を有し、このことはガラスをLCDまたはPV技術における使用にとって不適当なものにする。
【0015】
本出願人によるドイツ連邦共和国特許第19617344号および同第19603698号明細書には、約3.7・10-6/Kの熱膨張率α20/300および極めて良好な耐薬品性を有し、アルカリ金属不含で、酸化スズ含有のガラスが開示されている。これらは、ディスプレイ技術における使用に適している。しかしながら、ZnOを含有していなければならないので、これらは、特にフロートプラント法における加工のために理想的ではない。殊により高いZnO含量(>1.5質量%)で、熱成形域における蒸発および引き続く凝縮によりガラス表面上にZnOコーティングを形成する危険がある。
【0016】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19601022号明細書には、極めて幅広い組成範囲から選択され、かつZrOおよびSnOを含有していなければならないガラスが記載されている。実施例によればSrOを含有するガラスは、そのZrO水準のために、ガラス欠陥を示す傾向にある。
【0017】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4213579号明細書には、5.5×10-6/Kを下回り、実施例によれば4.0×10-6/K以上の熱膨張率α20/300を有するTFT適用のためのガラスが記載されている。相対的に高いB水準および相対的に低いSiO含量を有するこれらのガラスは、高い耐薬品性、殊に希塩酸に対する耐薬品性を有していない。
【0018】
米国特許第5374595号明細書には、3.2・10-6/K〜4.6・10-6/Kの熱膨張率を有するガラスが記載されている。実施例が説明しているように高いBaO含量を有するガラスは、相対的に重く、かつ乏しい溶融性および実質的に結晶質のSiに理想的に整合しない熱膨張を示す。
【0019】
未審査の日本の刊行物である特開平10−25132号、特開平10−114538号、特開平10−130034号、特開平10−59741号、特開平10−324526号、特開平11−43350号、特開平11−49520号、特開平10−231139号および特開平10−139467号公報には、多くの任意の成分を用いて変化させることができ、かつそのつど1つまたはそれ以上の特別な清澄剤(refining agent)と混合されるディスプレイガラスのための極めて幅広い組成範囲が挙げられている。しかしながら、これらの文献には、どのようにして上記の完全な必要条件プロフィールを有するガラスを特別な方法で得ることができるのかということが示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第714862号明細書
【特許文献2】国際特許出願公表第98/27019号明細書
【特許文献3】特開平10−72237号公報
【特許文献4】欧州特許第510544号明細書
【特許文献5】ドイツ連邦共和国特許出願公開第3730410号明細書
【特許文献6】米国特許第5116789号明細書
【特許文献7】米国特許第5116787号明細書
【特許文献8】欧州特許第341313号明細書
【特許文献9】欧州特許第510543号明細書
【特許文献10】特開平9−100135号公報
【特許文献11】特開平9−169538号公報
【特許文献12】国際特許出願公表第97/11920号明細書
【特許文献13】特開平4−160030号公報
【特許文献14】特開平9−156953号公報
【特許文献15】特開平8−295530号公報
【特許文献16】特開平9−48632号公報
【特許文献17】ドイツ連邦共和国特許第19739912号明細書
【特許文献18】特開平10−45422号公報
【特許文献19】特開平9−263421号公報
【特許文献20】米国特許第4824808号明細書
【特許文献21】国際特許出願公表第97/11919号明細書
【特許文献22】欧州特許出願公開第672629号明細書
【特許文献23】特開平9−12333号公報
【特許文献24】ドイツ連邦共和国特許第19617344号明細書
【特許文献25】ドイツ連邦共和国特許第19603698号明細書
【特許文献26】ドイツ連邦共和国特許出願公開第19601022号明細書
【特許文献27】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4213579号明細書
【特許文献28】米国特許第5374595号明細書
【特許文献29】特開平10−25132号公報
【特許文献30】特開平10−114538号公報
【特許文献31】特開平10−130034号公報
【特許文献32】特開平10−59741号公報
【特許文献33】特開平10−324526号公報
【特許文献34】特開平11−43350号公報
【特許文献35】特開平11−49520号公報
【特許文献36】特開平10−231139号公報
【特許文献37】特開平10−139467号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】J. C. Lappによる"Glass substrates for AMLCD applications: properties and implications" SPIE Proceedings, Vol. 3014, invited paper (1997)
【非特許文献2】J. Schmidによる"Photovoltaik - Strom aus der Sonne"Verlag C. F. Mueller, Heidelberg 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、液晶ディスプレイおよび薄膜太陽電池、殊にμc−Siをベースとする薄膜太陽電池のためのガラス基板、高い耐熱性、好ましい加工範囲および十分な失透安定性を有するガラスに課される物理的性質および化学的性質に関連して前記の複雑な必要条件プロフィールを満たすガラスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この課題は、請求項1で定義されたような相対的に狭い組成範囲からなるアルミノホウケイ酸塩ガラスにより達成される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
このガラスは、>58〜65質量%のSiOを含有する。より低い含量で、耐薬品性は損なわれるのに対して、より高い水準で、熱膨張が低すぎ、かつガラスの結晶化傾向が増大する。
【0025】
このガラスは、相対的に高い水準のAl、即ち>14〜25質量%、有利に18〜25質量%のAlを含有する。このような高いAl水準は、ガラスの結晶化安定性に有利であり、加工温度が過剰に増大することなくその耐熱性に肯定的な影響を及ぼす。18質量%を上回り、特に有利に少なくとも20.5質量%、最も好ましくは少なくとも21.5質量%のAl含量が好ましい。
【0026】
含量は、>6〜10.5質量%、有利に>8〜10.5質量%である。B含量は、高いガラス転移温度Tを達成するために、挙げられた最大含量に制限される。また、より高い含量は、塩酸溶液に対する耐薬品性を損なうであろう。挙げられた最小のB含量は、ガラスが良好な溶融性および良好な結晶化安定性を有することを確実にするのに役立つ。
【0027】
網目形成成分AlおよびBは、有利に相互に依存した最小水準で存在し、その際、好ましい含量の網目形成成分SiO、AlおよびBを確実にする。例えば、>6〜10.5質量%のB含量の場合に、最小Al含量は有利に>18質量%であり、かつ>14〜25質量%のAl含量の場合に、最小B含量は有利に>8質量%である。有利に、殊に3.6×10-6/Kまでの極めて低い熱膨張率を達成するために、SiO、BおよびAlの総和は84質量%を上回る。
【0028】
本質的なガラス成分は、網目修飾アルカリ土類金属酸化物である。殊にその水準を変化させることにより、全体で8〜18質量%のアルカリ土類金属酸化物の総含量内で、2.8×10-6/K〜3.8×10-6/Kの熱膨張率α20/300が達成される。アルカリ土類金属酸化物の最大総和は、有利に15質量%、殊に有利に12質量%である。後者の好ましい上限は、極めて低い(α20/300<3.2×10-6/K)熱膨張率を有するガラスを得るのに殊に有利である。BaOが常に存在するのに対して、MgOおよびcaOは任意の成分である。有利に少なくとも2つのアルカリ土類金属が存在し、殊に有利に挙げられた3つ全てのアルカリ土類金属が存在する。
【0029】
BaO含量は、>3〜8質量%である。これらの相対的に高いBaO水準は、多様な板ガラス製造プロセス、例えばフロート法および多様な延伸法のため、殊にかなり高い水準の網目形成成分を有する低膨張ガラス変法の場合に、十分な結晶化安定性、ひいては原則としてむしろ高い結晶化傾向を確実にすることが見出された。最大BaO含量は、有利に5質量%、殊に有利に4質量%、最も有利に<4質量%に制限され、これは望ましいガラスの低い密度に肯定的な影響を及ぼす。
【0030】
SrOは除外されるので、従ってガラスの低い融解および熱成形温度および低い密度を維持することができる。しかしながら、バッチ原材料の不純物としてガラス融液中に導入される少量、即ち0.1質量%未満の量は許容されうる。
【0031】
更に、このガラスは、9質量%までのCaOを含有していてよい。より高い水準は、熱膨張の過剰増大および結晶化傾向の増大をまねく。ガラスは、有利に少なくとも2質量%のCaOを含有する。
【0032】
また、このガラスは、<3質量%までのMgOを含有していてもよい。その相対的に高い水準は、低密度および低い加工温度に有益であるのに対して、相対的に低い水準は、ガラスの耐薬品性、殊に緩衝したフッ化水素酸に対する耐薬品性、およびその失透安定性に関して好ましい。
【0033】
更に、このガラスは、<2質量%までのZnOを含有していてもよい。ZnOは、ホウ酸のそれと同じく粘度特性線に影響を及ぼし、構造をゆるめる機能を有し、かつアルカリ土類金属酸化物よりも熱膨張に及ぼす影響が少ない。最大ZnO水準は、殊にガラスがフロート法により加工される場合には、有利に1.5質量%、有利に1.0質量%、最も有利に1質量%未満に制限される。より高い水準は、熱成形域における蒸発および引き続く凝縮により形成されうるガラス表面上の望ましくないZnOコーティングの危険が増大するであろう。ZnOの添加は、少量であっても失透安定性の増大をもたらすので、少なくとも0.1質量%の存在が好ましい。
【0034】
このガラスは、アルカリ金属不含である。本明細書中で使用されるような用語"アルカリ金属不含"は、本質的にはアルカリ金属酸化物不含であるけれども、1000ppm未満の不純物を含有していてもよいことを意味する。
【0035】
このガラスは、2質量%までのZrO+TiOを含有していてよく、その際、TiO含量およびZrO含量の双方は、それぞれ2質量%までであってよい。ZrOは有利に、ガラスの耐熱性を増大させる。しかしながら、その低溶解性のために、ZrOはガラス中の、ZrO含有の融液残存構造、いわゆるジルコニウム巣の危険を増大させる。従って、ZrOは有利に除外される。ジルコニウム含有のトラフ材料の侵食から生じる低ZrO含量は問題ない。TiOは有利に、ソラリゼーション傾向、即ちUV−VIS放射のために可視波長域における透過率の低下を減少させる。2質量%を上回る含量で、カラーキャスト(colour cast)は、使用される原材料の不純物の結果として低い水準でガラス中に存在するFe3+イオンとの錯体形成のために起こりうる。
【0036】
このガラスは、通常の量で、常用の清澄剤を含有していてもよい:従って、1.5質量%までのAs、Sb、SnO、CeO、Cl-(例えばBaClの形で)、F-(例えばCaFの形で)および/またはSO2-(例えばBaSOの形で)を含有していてもよい。しかしながら、清澄剤の総和は、1.5質量%を超えるべきではない。清澄剤AsおよびSbが除外される場合には、このガラスは、多数の延伸法を用いるだけではなく、フロート法によっても加工することができる。
【0037】
例えば単純なバッチ製造に関連して、ZrOおよびSnOの双方を除外できることおよび上記の性質プロフィール、殊に高い耐熱性および耐薬品性および低い結晶化傾向を有するガラスをなお得ることができることは有利である。
【実施例】
【0038】
作業例:
ガラスをPt/Irるつぼ中で1620℃で不可避の不純物を除いて本質的にアルカリ金属不含の常用の原材料から生産した。融液を、この温度で1.5時間清澄し、ついで誘導加熱した白金るつぼに移し、均質化のために1550℃で30分間撹拌した。
【0039】
表は、本発明によるガラスの15の例をその組成(質量%、酸化物基準)およびその最も重要な性質と共に示している。0.3質量%の水準での清澄剤SnO(実施例1〜8、11、12、14、15)またはAs(例9、10、13)は挙げられていない。次の性質が与えられている:
・熱膨張率α20/300[10-6/K]
・密度ρ[g/cm
・DIN52324による膨張計による(dilatometric)ガラス転移温度T[℃]
・粘度が10dPasでの温度(T4[℃]と呼ぶ)
・Vogel-Fulcher-Tammann式から計算した、粘度が10dPasでの温度(T2[℃]と呼ぶ)
・5%濃度の塩酸で95℃で24時間処理後の、両面磨いた寸法50mm×50mm×2mmのガラスプレートからの質量損失(材料除去値)としての"HCl"耐酸性[mg/cm
・10%濃度のNHF・HF溶液で23℃で20分間処理後の、両面磨いた寸法50mm×50mm×2mmのガラスプレートからの質量損失(材料除去値)としての緩衝したフッ化水素酸に対する"BHF"耐性[mg/cm
・屈折率n
【0040】

例:本発明によるガラスの組成(質量%、酸化物基準)および本質的な性質
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
作業例の説明として、本発明によるガラスは、次の有利な性質を有する:
・2.8×10-6/K〜3.8×10-6/Kの熱膨張α20/300、好ましい実施態様において≦3.6×10-6/K、殊に好ましい実施態様において<3.2×10-6/K、従ってアモルファスシリコンおよびますます多結晶質のシリコンの双方の膨張挙動に適合した。
・T>700℃、極めて高いガラス転移温度、即ち高い耐熱性。これは、製造の結果として最も低く可能なコンパクションにとって、かつアモルファスSi層でコーティングし、引き続き徐冷するための基板としてのガラスの使用にとって必須である。
・ρ<2.600g/cm、低密度
・粘度が10dPasでの温度(加工温度V)は多くとも1350℃および粘度が10dPasでの温度は多くとも1720℃、これは熱成形および溶融性に関連して適した粘度特性線を意味する。
・n≦1.526、低い屈折率。この性質はガラスの高透過性のための物理的必要条件である。
・高い耐薬品性、とりわけ緩衝したフッ化水素酸溶液に対する良好な耐性から明らかであり、このことはフラットパネルスクリーンの製造において使用される薬品に対して十分に不活性にする。
【0044】
このガラスは、高い熱衝撃抵抗性および良好な失透安定性を有する。このガラスは板ガラスとして、多様な延伸法、例えばマイクロシートダウンフロー、アップフローまたはオーバーフロー融解法により、および好ましい実施態様において、ガラスがAsおよびSbを含有しない場合には、フロート法によっても製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
これらの性質で、このガラスは、ディスプレイ技術、殊にTFTディスプレイのため、および薄膜光電池、殊にアモルファスおよびμc−Siベースとするものにおける基板ガラスとしての使用に高度に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2.8×10-6/K〜3.8×10-6/Kの熱膨張率α20/300を有するアルカリ金属不含のアルミノホウケイ酸塩ガラスにおいて、
次の組成(質量%、酸化物基準):
SiO >58〜65
>6〜10.5
Al >14〜25
MgO 0〜<3
CaO 0〜9
BaO >3〜8
但し、MgO+CaO+BaO 8〜18
ZnO 0〜<2
を有していることを特徴とする、アルカリ金属不含のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項2】
8質量%を上回るBを含んでいる、請求項1記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項3】
18質量%を上回るAl、有利に少なくとも20.5質量%のAlを含んでいる、請求項1または2記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項4】
多くとも4質量%のBaOを含んでいる、請求項1から3までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項5】
少なくとも0.1質量%のZnOを含んでいる、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項6】
付加的に次のもの:
ZrO 0〜2
TiO 0〜2
但し、ZrO+TiO 0〜2
As 0〜1.5
Sb 0〜1.5
SnO 0〜1.5
CeO 0〜1.5
Cl- 0〜1.5
- 0〜1.5
SO2- 0〜1.5
但し、As+Sb+SnO
+CeO+Cl-+F-+SO2- ≦1.5
を含んでいる、請求項1から5までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項7】
不可避の不純物を除いて、酸化ヒ素および酸化アンチモンを含有しておらず、かつフロートプラントにおいて製造されることができる、請求項1から6までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項8】
2.8×10-6/K〜3.6×10-6/K、有利に3.2×10-6/Kまでの熱膨張率α20/300、700℃を上回るガラス転移温度Tおよび2.600g/cmを下回る密度ρを有している、請求項1から7までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラス。
【請求項9】
ディスプレイ技術における基板ガラスとしての請求項1から8までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラスの使用。
【請求項10】
薄膜光電池における基板ガラスとしての請求項1から8までのいずれか1項記載のアルミノホウケイ酸塩ガラスの使用。

【公開番号】特開2011−132125(P2011−132125A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41301(P2011−41301)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2007−94207(P2007−94207)の分割
【原出願日】平成13年1月10日(2001.1.10)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】