説明

アルカリ金属発生剤、アルカリ金属発生器、光電面、二次電子放出面、電子管、光電面の製造方法、二次電子放出面の製造方法及び電子管の製造方法

この発明は、アルカリ金属を安定的に発生させることのできる光電面又は二次電子放出面を形成するためのアルカリ金属発生剤等に関する。当該アルカリ金属発生剤(1)は、入射光に対応して光電子を放出する光電面、又は入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の形成に使用される。特に、当該アルカリ金属発生剤(1)は、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする少なくとも一種のバナジウム酸塩からなる酸化剤と、前記イオンを還元するための還元剤とを少なくとも含む。バナジウム酸塩はクロム酸塩よりも酸化力が弱いので、還元剤との酸化還元反応がクロム酸塩の場合に比べて緩やかに進行し、反応速度の制御が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アルカリ金属発生剤、アルカリ金属発生器、光電面、二次電子放出面、電子管、該光電面の製造方法、該二次電子放出面の製造方法、及び該電子管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
入射光に対応して電子(光電子、一次電子)を放出する光電面としては、透明基板上に形成される、いわゆる透過型光電面や、Ni等の金属基板上に形成される、いわゆる反射型光電面が知られており、このような光電面は、例えば、光電子増倍管、光電管、イメージインテンシファイア及びストリーク管等の電子管の重要な部品として採用されている。
【0003】
現在実用化されている光電面の多くは、基板上に形成されたアルカリ金属を含む光電子放出材料(主に金属間化合物、化合物半導体)、例えば、SbとCsとからなる金属間化合物からなる。
【0004】
従来、上記アルカリ金属を構成元素として含む光電子放出材料は、所定の真空度(残留気体の分圧で表現した場合、好ましくは、10−7〜10−2Pa)と温度に保持した雰囲気中で、アルカリ金属蒸気を発生させ、アルカリ金属と反応する光電子放出材料の構成材料に反応させることにより形成されている。例えば、SbとCsとからなる金属間化合物の光電子放出材料の形成では、例えば、基板上にアルカリ金属と反応する光電子放出材料の構成材料であるSbからなる蒸着膜がまず形成され、次いで、Csの蒸気を発生させ、Sbからなる蒸着膜にCsを反応させ、そして、金属間化合物の層が形成される。
【0005】
この場合、アルカリ金属が大気中で非常に不安定でありこれ自体をアルカリ金属の蒸気の発生源とすることができないため、所定の温度で酸化還元反応によりアルカリ金属を生成可能な酸化剤と還元剤との組み合せを構成成分として含む供給源(いわゆるアルカリ源あるいはアルカリ金属源)が用いられている。この供給源としては、例えば粉体状のアルカリ金属源やペレット状に加圧成形されたアルカリ金属源が従来から使用されている。なお、この明細書において、上記酸化剤と還元剤とを含むアルカリ金属の蒸気のアルカリ金属源(供給源)をアルカリ金属発生剤という。
【0006】
また、これら粉体状のアルカリ金属発生剤あるいはペレット状に加圧成形したアルカリ金属発生剤は、アルカリ金属の蒸気を外部に放出可能な開口が設けられた金属製ケース内に収容された状態で使用される。さらに、この金属製ケースをガラス製アンプル内に封入した状態で使用される場合もある。そして、光電面の形成の際、この金属製ケースを加熱し、アルカリ金属の蒸気を発生させている。
【0007】
さらに、上記アルカリ金属発生剤は、例えば、光電子増倍管におけるダイノードの二次電子放出面の形成にも使用されている。
【0008】
このようなアルカリ金属発生剤としては、Si、Ti又はAl等を還元剤として含み、かつ、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするクロム酸塩(例えば、CsCrO等)を酸化剤として含む粉体状あるいはペレット状に加圧成形されたアルカリ金属発生剤が従来から使用されており、この酸化剤を含むアルカリ金属発生剤は、例えば、特開昭55−78438号公報や特開昭53−124059号公報に開示されている。
【発明の開示】
【0009】
発明者らは、上述の従来技術について検討した結果、以下のような課題を発見した。アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするクロム酸塩を酸化剤として含むアルカリ金属発生剤を用いて上述の電子管に適用される光電面を製造する場合、上記クロム酸塩からなる酸化剤と還元剤との酸化還元反応は反応速度が極めて大きく、反応場の温度が徐々に上昇し反応の進行が可能な所定温度に到達すると急激に進行するため、一旦反応が進行し始めると反応温度の調節による反応速度の制御が極めて困難となるという製造上の課題があった。
【0010】
より具体的には、酸化還元反応の急激な進行に伴って反応場の温度が急激に上昇するため、アルカリ金属発生剤自体若しくはアルカリ金属発生剤を収容している金属製ケース又はガラス製アンプルが破裂する場合があった。電子管内の光電面を製造する際にこのような状況が発生すると、アルカリ金属量の制御が困難になり、所望の性能が得られない。また、この場合、製造効率上の制約等から使用済みの金属製ケースはガラス製容器等の電子管の筐体内に残されたままとなるが、このとき金属製ケースが破裂していると、外観上の不良製品ともなる。
【0011】
さらに、酸化還元反応の急激な進行によりアルカリ金属の発生速度及び収率に大きな変動があるため、光電面が形成されるべき領域やダイノードの二次電子放出面が形成されるべき領域におけるアルカリ金属の蒸着状態が不均一となるという課題があった。例えば、高周波加熱方式によりアルカリ金属発生剤を加熱する場合、従来のクロム酸塩を使用すると酸化還元反応が急激に進行するため、加熱を停止するタイミングを常に一定にすることができず、同様の条件で製造された複数の光電面間で分光感度特性(放射感度及び量子効率)にばらつきが生じたり、同様の条件で製造された複数のダイノードについても、その増倍効率にばらつきが生じて、不良品となる場合があり、生産効率が低下する。
【0012】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、アルカリ金属を安定的に発生させることのできる光電面又は二次電子放出面形成用のアルカリ金属発生剤、該アルカリ金属発生剤を含み、アルカリ金属の発生速度を容易にコントロールできるアルカリ金属発生器、十分な分光感度特性を有する光電面、十分な増倍効率を有する二次電子放出面、及び十分な光電変換特性を有する電子管を提供することを目的とする。また、この発明は、形成が容易でありかつ性能の再現性に優れた光電面の製造方法、二次電子放出面の製造方法、及び電子管の製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
発明者らは、上述の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上記従来の酸化剤と還元剤との酸化還元反応の反応速度が大きいのは、還元剤よりもむしろ酸化剤であるアルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするクロム酸塩が非常に強い酸化力を有していることが大きな原因の一つとなっていることを発見した。
【0014】
そして、発明者らは、上記クロム酸塩よりも酸化力の弱い酸化剤について検討し、このような酸化剤としてバナジウム酸塩を使用すると、上記従来のクロム酸塩を用いて製造された光電面及び二次電子放出面に匹敵する性能を有する光電面及び二次電子放出面を容易にかつ再現性よく製造できることを発見した。
【0015】
すなわち、この発明は、入射光に対応して光電子を放出する光電面、又は、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生剤であり、酸化剤及び還元剤を少なくとも含む。特に、当該アルカリ金属発生剤において、上記酸化剤は、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする少なくとも一種のバナジウム酸塩からなる。上記還元剤は、所定温度において酸化剤との酸化還元反応を開始し、アルカリ金属イオンを還元する。
【0016】
アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするバナジウム酸塩は、上述のクロム酸塩よりも酸化力が弱いので、還元剤との酸化還元反応がクロム酸塩の場合に比べて緩やかに進行する。そのため、一旦反応が進行し始めても反応温度の調節による反応速度の制御が容易である。換言すれば、この発明に係るアルカリ金属発生剤自体若しくはこれを収容しているケースを破裂させることなくアルカリ金属(アルカリ金属の蒸気)を安定的に発生させることができる。
【0017】
したがって、このバナジウム酸塩を含むアルカリ金属発生剤を用いることにより、十分な分光感度特性を有する光電面や、十分な増倍効率を有する二次電子放出面を容易かつ再現性よく製造することができる。
【0018】
また、この発明に係るアルカリ金属発生器は、入射光に対応して光電子を放出する光電面、又は、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させる。当該アルカリ金属発生器は、ケース、供給源、放出口を備える。特に、当該アルカリ金属発生器において、上記ケースは供給源を収納する金属製ケースであるのが好ましい。上記供給源は、アルカリ金属を発生する原料を含む、上述の構造を有するアルカリ金属発生剤(この発明に係るアルカリ金属発生剤)である。また、上記放出口は、上記ケースに設けられ、供給源が収納された該ケースの内部空間から該ケースの外部に向かって、供給源において発生するアルカリ金属の蒸気を放出する。
【0019】
上述のような構造を有するアルカリ金属発生剤が内部に収容された、この発明に係るアルカリ金属発生器によれば、アルカリ金属発生剤中の酸化剤と還元剤との酸化還元反応により発生するアルカリ金属(アルカリ金属の蒸気)をケースの放出口から安定的に外部に放出することができる。
【0020】
したがって、この発明に係るアルカリ金属発生器を用いることにより、十分な分光感度特性を有する光電面や、十分な増倍効率を有する二次電子放出面を容易かつ再現性よく製造することができる。
【0021】
この発明に係る光電面は、入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む。このアルカリ金属は、この発明に係るアルカリ金属発生剤から発生するアルカリ金属である。また、このアルカリ金属は、この発明に係るアルカリ金属発生器から発生したアルカリ金属であってもよい。いずれの場合も、当該アルカリ金属発生剤又は当該アルカリ金属発生器を用いることにより、十分な分光感度特性を有する光電面が得られる。
【0022】
この発明に係る二次電子放出面は、入射電子に対応して二次電子を放出するアルカリ金属を含む。このアルカリ金属は、この発明に係るアルカリ金属発生剤から発生するアルカリ金属であってもよく、また、この発明に係るアルカリ金属発生器から発生したアルカリ金属であってもよい。このように、当該アルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いることにより、十分な増倍効率を有する二次電子放出面を構成することができる。なお、上記二次電子放出面に入射する電子には、光電面から放出される光電子も含まれる。
【0023】
さらに、この発明に係る電子管は、入射光に対応して光電子を放出する光電面を有する電子管であり、この光電面には、この発明に係る光電面が適用可能である。
【0024】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造された光電面を備えることにより、十分な光電変換特性を有する電子管が得られる。なお、電子管に1又はそれ以上の二次電子放出面(例えば、ダイノード等の二次電子放出面)が設けられている場合には、上述の観点から上記二次電子放出面もこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造されるのが好ましい。
【0025】
この発明に係る電子管は、それぞれが、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部を少なくとも備える。この場合も、各ダイノードにおける二次電子放出面としては、この発明に係る二次電子放出面が適用可能である。
【0026】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造された二次電子放出面を備えることにより、十分な光電変換特性を有する電子管が得られる。なお、この場合、上述の電子管に設けられた光電面もこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造されるのが好ましい。
【0027】
さらに、この発明に係る光電面の製造方法は、アルカリ金属の発生源として、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用意し、該アルカリ金属発生剤(アルカリ金属発生器の場合、ケース内に収納されたアルカリ金属発生剤)を加熱し、そして、該アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を光電面の形成領域に導く。以上の工程を経て、入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面が得られる。
【0028】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤を用いることにより、形成が容易で性能の再現性に優れた光電面が得られる。
【0029】
この発明に係る二次電子放出面の製造方法は、アルカリ金属の発生源として、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用意し、該アルカリ金属発生剤(アルカリ金属発生器の場合、ケース内に収納されたアルカリ金属発生剤)を加熱し、該アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を二次電子放出面の形成領域に導く。これにより、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面が得られる。
【0030】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いることにより、形成が容易で性能の再現性に優れた二次電子放出面が得られる。
【0031】
さらに、この発明に係る電子管の製造方法は、入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面を少なくとも有する電子管の製造を可能にする。すなわち、当該電子管の製造方法は、この発明に係るアルカリ発生剤又はアルカリ金属発生器を用意し、該アルカリ金属発生剤(アルカリ金属発生器の場合、ケース内に収納されたアルカリ金属発生剤)を加熱し、該アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を光電面の形成領域に導く工程を含む。
【0032】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて光電面を製造することにより、性能の再現性に優れた電子管が得られる。なお、光電面の他に少なくとも1つの二次電子放出面(例えば、ダイノード等の二次電子放出面)が設けられた電子管を製造する場合には、上述の観点から該二次電子放出面もこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造するのが好ましい。
【0033】
この発明に係る電子管の製造方法は、それぞれが、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部を有する電子管を製造可能である。この場合も、各ダイノードにおける二次電子放出面は、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用意し、該アルカリ金属発生剤(アルカリ金属発生器の場合、ケース内に収納されたアルカリ金属発生剤)を加熱し、そして、該アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を二次電子放出面の形成領域に導くことにより得られる。
【0034】
このように、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いてダイノードの二次電子放出面を製造することにより、性能の再現性に優れた電子管が得られる。なお、この場合、上述の観点から電子管における光電面も、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いて製造されるのが好ましい。
【0035】
なお、この発明に係る各実施例は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施例は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
【0036】
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施例を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の思想及び範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1は、この発明に係るアルカリ金属発生剤の一実施例の構成を示す斜視図である。
【0038】
図2は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第1実施例の構成を示す斜視図である。
【0039】
図3は、第1実施例に係るアルカリ金属発生器(図2)のI−I線に沿った断面図である。
【0040】
図4は、この発朋に係るアルカリ金属発生器の第2実施例の構成を示す断面図である。
【0041】
図5は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第3実施例の構成を示す断面図である。
【0042】
図6は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第4実施例の構成を示す断面図である。
【0043】
図7は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第5実施例の構成を示す断面図である。
【0044】
図8は、この発明に係る電子管の第1実施例としての光電子増倍管の構成を示す図である。
【0045】
図9は、図6に示されたアルカリ金属発生器を用いて光電子増倍管の光電面及びダイノードの製造工程を説明するための図である。
【0046】
図10は、この発明に係る電子管の第2実施例としての光電子増倍管の構成を示す図である。
【0047】
図11は、この発明に係る電子管の第3実施例としての光電管の構成を示す図である。
【0048】
図12は、この発明に係る電子管の第4実施例としてのイメージ管(イメージインテンシファイア)の構成を示す図である。
【0049】
図13は、この発明に係る電子管の第5実施例としてのストリーク管の構成を示す図である。
【0050】
図14は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例における諸特性(平均値)を示す表である。
【0051】
図15は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例におけるLife特性(%)を示す表である。
【0052】
図16は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例における放射感度特性及び量子効率を示すグラフである。
【0053】
図17は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルのLife特性を基準とした、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例のLife特性の相対出力示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下、この発明に係るアルカリ金属発生剤等の各実施例を、図1〜図17を参照しながら詳細に説明する。なお、図面の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(アルカリ金属発生剤)
【0055】
図1は、この発明に係るアルカリ金属発生剤における好適な一実施例の構成を示す斜視図である。
【0056】
上述のように、図1に示されたアルカリ金属発生剤1は、光電面又は二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となる。そして、図1のアルカリ金属発生剤1は、全ての構成成分が圧縮成形により円柱状のペレットに成形されている。このようにペレットとすることにより、アルカリ金属発生剤1の取り扱い性が向上し、後述のアルカリ金属発生器に搭載する場合や、光電面、二次電子放出面、電子管を製造する際の作業が容易になる。
【0057】
上記アルカリ金属発生剤1に含有される酸化剤は、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする少なくとも一種のバナジウム酸塩からなる。このようなバナジウム酸塩としては、化学式RVOで表現されるものが好ましい。なお、この化学式中のRは、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択された少なくとも一種の金属元素を示す。
【0058】
上記化学式中のRで表されるアルカリ金属元素の陽イオンをカウンターカチオンとするバナジウム酸塩(以下、バナジウム酸塩という)を酸化剤として用いることにより、実用化されている光電面の材料に使用されているアルカリ金属をより安定的に発生させることができる。また、バナジウム酸塩からなる酸化剤の種類と各々の含有量は、製造するべき光電面又は製造するべき二次電子放出面の成分組成に合わせて適宜選択される。例えば、異なる種類の材料を組み合せ、それぞれ所定の割合で含有させてもよく、単一種類のもののみを含有させていてもよい。
【0059】
上記アルカリ金属発生剤1に含有される還元剤は、所定温度において上述の酸化剤との酸化還元反応を開始し、アルカリ金属イオンを還元するものである。このような還元剤としては、アルカリ金属を安定的に発生させることが可能であれば特に限定されないが、Si、Zr、Ti及びAlからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。上述のバナジウム酸塩からなる酸化剤に対して、これらのSi、Zr、Ti及びAlをそれぞれ単独又は任意に組み合せて還元剤として使用すること(例えば、SiとTiとの混合物を還元剤として使用すること)により、アルカリ金属をより安定的に発生させることができる。
【0060】
なお、この還元剤と酸化剤との酸化還元反応を開始させる方法としては、アルカリ金属発生剤を所定の真空度に調節された雰囲気中で、酸化還元反応が進行し始める所定の温度にまで加熱する方法が挙げられる。ここで、「所定の真空度に調節された雰囲気」とは、雰囲気中の残留気体の分圧で表現した場合には10−6〜10−1Pa、好ましくは10−6〜10−3Paである雰囲気を意味する。
【0061】
また、上記アルカリ金属発生剤1中には上述の酸化剤及び還元剤の他の成分として、例えば、W、Al等が含有されていてもよい。
【0062】
次に、上記アルカリ金属発生剤1の製造方法の一例について説明する。上記アルカリ金属発生剤1は、酸化剤に上述のバナジウム酸塩を使用すること以外は、酸化剤としてクロム酸塩を使用した従来のアルカリ金属発生剤と同様の技術により製造され得る。
【0063】
すなわち、最初に、製造される光電面あるいはダイノードの二次電子放出面の成分組成に合わせて酸化剤となるバナジウム酸塩が選択される。
【0064】
続いて、計量工程、粉砕・混合工程、成形工程を順に行う。この計量工程では、酸化剤と還元剤(例えば、Si、Zr、Al等)が適量計量される。粉砕・混合工程では、これらを粉砕器(例えば、めのう鉢やボールミル等)に入れ、粉砕と混合を同時に行う。なお、酸化剤及び還元剤以外の成分を含有させる場合には、この粉砕・混合工程において、その成分を酸化剤及び還元剤とともに粉砕器に入れて混合及び粉砕を行うことでアルカリ金属発生剤の粉末が得られる。成形工程では、得られたアルカリ金属発生剤の粉末を粉体プレス機にてプレスすることで、円柱状に成形されたペレットとしてアルカリ金属発生剤1が得られる。
【0065】
なお、上述の成形工程では、アルカリ金属発生剤1が圧縮成形により円柱状のペレットに成形されている。しかしながら、この発明に係るアルカリ金属発生剤を圧縮成形する場合、その形状は特に限定されない。また、この発明に係るアルカリ金属発生剤は上述の実施例のように圧縮成形されていてもよいが、全ての構成成分が粉体状であってもよい。例えば、上述のように成形する前の粉末をそのまま使用してもよく、一旦ペレット状に成形してから粉砕し粉末として使用してもよい。
(アルカリ金属発生器)
【0066】
次に、この発明に係るアルカリ金属発生器の好適な実施例について説明する。図2は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第1実施例の構成を示す斜視図である。また、図3は、図2に示されたアルカリ金属発生器のI−I線に沿った断面図であり、この図には加熱装置も合わせて示されている。
【0067】
図2及び図3に示されたアルカリ金属発生器2は、光電面又は二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させる。そして、このアルカリ金属発生器2は、図1に示されたアルカリ金属発生剤1と、アルカリ金属発生剤1を収容する金属製ケース20とを備える。
【0068】
上記ケース20は、上記アルカリ金属発生剤1からなるペレットを収容する凹部が設けられた金属製の有底容器22と、該有底容器22の凹部全体を覆った状態で有底容器22に溶接された金属製の蓋部材24とを備える。有底容器22の凹部は、アルカリ金属発生剤1からなるペレットよりも大きな容積を有し、好ましくは該ペレットに対して相似となる形状に形成されている。また、有底容器22の凹部を取り囲むように環状のフランジが設けられており、このフランジと蓋部材24の縁部とが溶接される。
【0069】
ここで、有底容器22のフランジと蓋部材24の縁部の間には、有底容器22の凹部(アルカリ金属発生剤1の収納スペース)と有底容器22の外部とを連通させる未溶接部分が設けられており、この未溶接部分が、アルカリ金属発生剤1から発生するアルカリ金属の蒸気を光電面の形成部位又はダイノードの二次電子放出面の形成部位に向けて放出するための放出口23となる。
【0070】
なお、このアルカリ金属発生器2内に収容されたアルカリ金属発生剤1の酸化還元反応を開始させる方法としては、アルカリ金属発生剤1を先に述べた所定の真空度に調節された雰囲気中で、酸化還元反応が進行し始める所定の温度にまで加熱する方法が挙げられる。
【0071】
より具体的には、アルカリ金属の蒸気を発生させるための加熱装置をさらに備えることが好ましい。このような加熱装置としては、上記雰囲気中においてアルカリ金属発生剤1を加熱できる構成を有していれば特に限定されない。例えば、高周波加熱方式又は抵抗加熱方式に基づく構成を有していてもよい。しかしながら、アルカリ金属発生剤1を容易にかつ均一に加熱する観点から、加熱装置は、高周波加熱によりアルカリ金属発生剤1を加熱する構成を有していることが好ましい。
【0072】
高周波加熱方式の加熱装置は、図3中に示されたように、アルカリ金属発生剤1を収納したケース20を取り囲むように巻かれた高周波コイル25と、該コイル25に高周波電流を供給する高周波電源を備える。例えば、従来のクロム酸塩を酸化剤として含むアルカリ金属発生剤を高周波加熱方式により加熱する場合と同様の構成でもよい。例えば、アルカリ金属発生剤1を光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成するべき電子管内に予めマウントしておき、これを高周波加熱により加熱して電子管内にアルカリ金属の蒸気を発生させ、これを光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成するべき所定の部位に反応させてもよい。
【0073】
上記アルカリ金属発生器2の製造方法では、まず、上述のようにアルカリ金属発生剤1が製造される。続いて、このアルカリ金属発生剤1の形状及び体積に合わせて有底容器22と蓋部材24が作製される。有底容器22は、凹部にアルカリ金属発生剤1を収納した状態で、蓋部材24と溶接される。有底容器22と蓋部材24の作製方法及び有底容器22と蓋部材24の溶接方法は特に限定されず、例えば、公知の技術により行うことができる。
【0074】
なお、このアルカリ金属発生器2においては、ペレットに成形したアルカリ金属発生剤1を搭載する場合について説明したが、アルカリ金属発生器2と同様のケース20内にアルカリ金属発生剤1を形成する前の粉体状のアルカリ金属発生剤、あるいはアルカリ金属発生剤1を粉砕して得られる粉体状のアルカリ金属発生剤が充填されたアルカリ金属発生器であってもよい。
【0075】
次に、この発明に係るアルカリ金属発生器の第2実施例について説明する。図4は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第2実施例の構成を示す断面図であり、この図には加熱装置も合わせて示されている。図4に示されたアルカリ金属発生器3は、図2及び図3に示されたアルカリ金属発生器2と同様の構成を有する本体部2Aと、この本体部2Aを封入するガラス製アンプル32と、本体部2Aのケース20(放出口23を有する)に接続された棒状の支持部材34とから構成されている。
【0076】
ガラス製アンプル32は筒状の形状を有し、支持部材34が貫通したステム底面に対向する上面部分(以下、先端部分という)の内径が他の部分よりも小さくなっている。このアルカリ金属発生器3は、光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成する際に、光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成すべき電子管に接続される。その際、電子管内の光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成すべき部位の空間と、ガラス製アンプル32内の空間が連通するように接続される。すなわち、ガラス製アンプル32は光電面及び/又は二次電子放出面の形成時に開封される。
【0077】
ガラス製アンプル32内に位置する上記支持部材34の一端は、ケース20の蓋部材24の外面に接続されており、該支持部材34の他端は、ガラス製アンプル32に設けられた貫通孔h32を介してアンプル外部に突出している。この支持部材34は、アンプル32内が気密状態となるように貫通孔h32の内面に密着されている。
【0078】
例えば、高周波電流を発生させることが可能な高周波電源26と、これに接続された高周波電流を通ずることのできるコイル25(誘導炉)とから高周波加熱方式の加熱装置が構成される。該コイル25をガラス製アンプル32の外部から本体部2Aを囲むようにして配置し、加熱することによりアルカリ金属発生器3からアルカリ金属の蒸気を発生させはじめることができる。
【0079】
上記アルカリ金属発生器3の製造方法では、まず、上述のようにアルカリ金属発生剤1が製造され、アルカリ金属発生器2と同様の方法で本体部2Aが製造される。続いて、本体部2Aに支持部材34が溶接された後、支持部材34に一体化させた本体部2Aが、ガラス製アンプル32内に封入される。本体部2Aと支持部材34の溶接方法及びこれらのガラス製アンプル32内への封入方法は特に限定されず、例えば、公知の技術により行うことができる。
【0080】
次に、この発明に係るアルカリ金属発生器の第3実施例について説明する。図5は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第3実施例の構成を示す断面図であり、この図にも加熱装置が合わせて示されている。図5に示されたアルカリ金属発生器4は、粉体状あるいはペレットに成形されたアルカリ金属発生剤1Aと、アルカリ金属発生剤1Aを収容する金属製(例えば、Ni製)ケース20Aとから構成されている。このアルカリ金属発生剤1Aは、図1に示されたアルカリ金属発生剤1と同様の組成を有している。
【0081】
また、このケース20Aは、アルカリ金属発生剤1を収容する内部スペースが設けられた金属製パイプからなる。そして、ケース20Aの両端開口の縁部分は、内部スペースからアルカリ金属発生剤1Aが漏れ出ないように、例えば、たがね等によりたたかれる等してかしめられている。ただし、ケース20Aのかしめられた縁部分には、内部スペースとケース20Aの外部とを連通させる未接触部分が設けられており、この未接触部分が、アルカリ金属発生剤1Aから発生するアルカリ金属の蒸気を光電面又は二次電子放出面の形成部位に向けて放出するための放出口23となる。なお、この放出口23の大きさは、内部スペースからアルカリ金属発生剤1Aが漏れでない程度に調節されている。
【0082】
このアルカリ金属発生器4の場合も、上述のアルカリ金属発生器2及び3と同様にして加熱することにより、アルカリ金属の蒸気を発生させることができる。なお、このアルカリ金属発生器4を加熱する加熱装置は、図5中に示されたように、ケース20を取り囲むように巻かれた高周波コイル25と、該コイル25に高周波電流を供給する高周波電源26とを備える。
【0083】
上記アルカリ金属発生器4の製造方法では、まず、上述のようにアルカリ金属発生剤1Aが製造され、これが金属製ケース(金属パイプ)20A内に充填される。続いて、金属製ケース20Aの両端の開口部がかしめられることにより当該アルカリ金属発生器4が得られる。金属製ケース20Aの両端開口をかしめる方法は特に限定されず、例えば、公知の技術により行うことができる。
【0084】
次に、この発明も係るアルカリ金属発生器の第4実施例について説明する。図6は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第4実施例の構成を示す断面図であり、この図にも加熱装置が合わせて示されている。図6に示されたアルカリ金属発生器5は、図5に示されたアルカリ金属発生器4と同様の構成を有する本体部4Aと、この本体部4Aを封入するガラス製アンプル52とを備える。このガラス製アンプル52は、図4に示したガラス製アンプル32と同様の形状を有している。また、ガラス製アンプル52の底面に対向する先端部分の内径は、本体部4Aを内部に閉じ込めることが可能な大きさに調節されている。
【0085】
このアルカリ金属発生器5も、光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成する際に、図4に示されたアルカリ金属発生器3と同様にして光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成すべき電子管に接続される。その際、電子管内の光電面及び/又はダイノードの二次電子放出面を形成すべき部位の空間と、ガラス製アンプル52内の空間が連通するように接続される。
【0086】
このアルカリ金属発生器5の場合も、上述のアルカリ金属発生器2〜4と同様にして加熱することにより、アルカリ金属の蒸気を発生させることができる。なお、このアルカリ金属発生器4を加熱する加熱装置は、図6中に示されたように、ケース20を取り囲むように巻かれた高周波コイル25と、該コイル25に高周波電流を供給する高周波電源26とを備える。
【0087】
上記アルカリ金属発生器5の製造方法では、まず、上述のようにアルカリ金属発生剤1Aが製造され、アルカリ金属発生器4と同様にして本体部4Aが製造される。続いて、本体部4Aが、ガラス製アンプル52内に封入される。本体部4Aのガラス製アンプル52内への封入方法は特に限定されず、例えば、公知の技術により行うことができる。
【0088】
次に、この発明に係るアルカリ金属発生器の第5実施例について説明する。図7は、この発明に係るアルカリ金属発生器の第5実施例の構成を示す断面図である(加熱装置含む)。図7に示されたアルカリ金属発生器6は、主として、粉体状あるいはペレットに成形されたアルカリ金属発生剤1Bと、アルカリ金属発生剤1Aを収容する金属製ケース20Bと、この金属製ケース20Bの所定の位置に配置された2つの電極64と、2つの電極64にそれぞれ電気的に接続されており一方の電極64から他方の電極64にかけて電流を流すための電源を有する通電装置68とを備える。
【0089】
このアルカリ金属発生剤1Bは、図1に示されたアルカリ金属発生剤1と同様の組成を有している。また、このケース20Bは、アルカリ金属発生剤1を収容する内部スペースが設けられた金属製パイプ62と、金属製パイプ62の両端開口を塞ぐ2つの金属製の蓋部材63とを備える。そして、2つの電極64は2つの金属製の蓋部材63にそれぞれ1つずつ接続されている。また、通電装置68は、2つの電極64のそれぞれと導線66を介して電気的に接続されている。
【0090】
さらに、金属製パイプ62の側面には、内部スペースとケース20Bの外部とを連通させる放出口23が設けられている。この放出口23により、アルカリ金属発生剤1Aから発生するアルカリ金属の蒸気を光電面又は二次電子放出面の形成部位に向けて放出することができる。なお、この放出口23の大きさは、内部スペースからアルカリ金属発生剤1Bが漏れでない程度に調節されている。また、この放出口23は上述された程度の大きさを有していれば形状は特に限定されず、例えば、スリット状であってもよい。
【0091】
このアルカリ金属発生器6の場合、通電装置68により抵抗加熱方式に基づいてアルカリ金属発生剤1Bを加熱することができる。例えば数アンペアの電流を金属製ケース20Bに流すと、金属製ケース20B中に発生するジュール熱によりアルカリ金属発生剤1Bが加熱されて、アルカリ金属の蒸気を発生させることができる。
【0092】
上記アルカリ金属発生器6の製造方法では、まず、上述のアルカリ金属発生剤1と同様の方法でアルカリ金属発生剤1Bが製造され、アルカリ金属発生剤1Bが金属製パイプ62内に充填される。続いて、金属製パイプ62の両端は、開口全体を覆うように蓋部材63が溶接されることによりそれぞれ塞がれる。さらに、2つの蓋部材63に電極64をそれぞれ接続し、各電極64を通電装置68に接続し、アルカリ金属発生器6を得る。
(光電面、二次電子放出面、及び電子管)
【0093】
次に、この発明に係る光電面、二次電子放出面及び電子管の好適な実施例について説明する。
【0094】
まず、この発明に係る電子管の第1実施例について説明する。図8は、この発明に係る電子管の第1実施例としての光電子増倍管の構成を示す図である。図8に示された光電子増倍管7は、透過型光電面を有するヘッドオン型光電子増倍管(より詳しくは図8に示された光電子増倍管7の場合、電子増倍部はラインフォーカス型)の構成を有する。この光電子増倍管7は、主として、光電面C7と、この光電面C7から放出される光電子e1を入射させるとともに、該光電子e1の衝突を利用して二次電子e2を放出する二次電子放出面FD7を有するダイノードD71〜D79を有する電子増倍部D7と、光電面C7と電子増倍部D72との間に配置されており光電面C7から放出される光電子e1を集束して電子増倍部D7に導くための集束電極E7と、増倍された二次電子e2を収集し外部に電流として取り出すための陽極A7と、これらの各電極を収容するための筒状(例えば、円筒状)のガラス側管72(例えば、コバールガラス、UVガラスなど、また、コバール金属、ステンレス等の金属製材料を用いても良い)とを備え、各電極には電位調節用の電圧印加部(ブリーダ回路)が接続されている。
【0095】
光電面C7は、主として、基板C71(面板)と、基板C71上に隣接して形成されており、入射光L1に対応して光電子e1を放出する膜状の光電子放出材料(例えば金属間化合物、化合物半導体)からなる層C72(以下、光電子放出材料層C72という)とから構成されている。
【0096】
この光電面C7は、側管72の一方の開口部72aに固定されている。すなわち、側管72の一方の開口部72aに利用すべき光を透過することのできる基板C71(例えば、ガラス製基板)がその受光面FC71を外側に向けて融着固定される。また、この基板C71の受光面FC71と反対側の内表面(裏面)には、光電子放出材料層C72が形成されている。
【0097】
そして、光電子放出材料層C72には、上述のアルカリ金属発生剤及びこれを搭載したアルカリ金属発生器のうちのいずれかから発生するアルカリ金属が含まれている。ここで、光電子放出材料層C72としてはアルカリ金属を構成材料とする金属間化合物(化合物半導体)、あるいは、アルカリ金属で活性化処理された化合物半導体がある。例えば、Sb−Cs、Sb−Rb−Cs、Sb−K−Cs、Sb−Na−K、Sb−Na−K−Cs、GaAs(Cs)、InGaAs(Cs)、InP/InGaAsP(Cs)、InP/InGaAs(Cs)等が挙げられる。なお、上記例示において、例えば、GaAs(Cs)中における(Cs)とは、GaAsをCsにより活性化処理することにより得られたことを意味する。以下、InP/InGaAsP(Cs)及びInP/InGaAs(Cs)中の(Cs)も同義である。また、Cs−TeやAg−O−Csのような光電子放出材料でもよい。
【0098】
この光電子放出材料層C72は、アンチモンや化合物半導体などのアルカリ金属と反応する光電子放出材料の構成材料を基板C71の裏面上に形成され、続いて、アルカリ金属の蒸気を反応させることで得られる。
【0099】
また、側管72の他方の開口部72bには、ガラス製(例えばコバールガラスやUVガラスなど、また、コバール金属、ステンレス等の金属製材料を用いてもよい)のステム板78が溶接固定されている。このように、側管72と光電面C7とステム板78とによって密封容器が構成される。
【0100】
さらに、ステム板4の中央には排気管73が固定されている。この排気管73は、光電子増倍管7の組立て作業終了後、密封容器の内部を真空ポンプによって排気して真空状態にするのに利用されるとともに、光電子放出材料層C72の形成時にアルカリ金属の蒸気を密封容器内に導入させるための導入管としても利用される。
【0101】
電子増倍部D7は、それぞれ複数の板状のダイノードを有する第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を備える。第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、基板と、該基板上に配置されており入射された光電子e1を利用して二次電子e2を放出する二次電子放出面FD7を有する膜状の二次電子放出材料からなる層とから構成されている。なお、以下、二次電子放出材料からなる層を二次電子放出材料層という。
【0102】
そして、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のそれぞれは、例えば、密封容器を貫通するように設けられたステムピン75(例えば、コバール金属製)によって密封容器内で支持され、各ステムピン75の先端は第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と電気的に接続されている。また、密封容器には、各ステムピン75を貫通させるためのピン孔が設けられ、例えば、各ピン孔には、ハーメチックシールとして利用されるタブレット(例えば、コバールガラス製)が充填され、各ステムピン75は、タブレットを介して密封容器に固定される。さらに、なお、各ステムピン75には、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79用のピンとアノードA7用のピンとがある。
【0103】
この電子増倍部D7において、各ダイノードの二次電子放出材料層の二次電子放出材料には、上述のアルカリ金属発生剤及びこれを搭載したアルカリ金属発生器のうちのいずれかから発生するアルカリ金属が含まれている。ここで、二次電子放出材料層中の二次電子放出材料はアルカリ金属を構成材料とする材料、あるいは、アルカリ金属で活性化処理された材料であれば特に限定されない。例えば、アルカリ金属のいずれかとSbとの金属間化合物(化合物半導体)等が挙げられる。
【0104】
さらに、電子増倍部D7とステム板78との間には、ステムピン75に固定された陽極A7が配置されている。また、電子増倍部D7と光電面C7との間には集束電極E7が配置されている。この集束電極E7には、集束された光電子e1流を電子増倍部D7に向けて放出するための開口部が形成されている。
【0105】
そして、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7にそれぞれ接続されている各ステムピン75の他端は電圧印加部と電気的に接続されており、これにより、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79及び陽極A7には所定の電圧が供給され、光電面C7と集束電極E7とは同じ電位に設定され、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79と陽極A7は、上段から順に高電位となるように電位設定がなされている。
【0106】
したがって、光電面C7の受光面FC71に入射した光L1は、光電子e1に変換され、内面FC72から放出される。そして、光電子e1は電子増倍部D7に入射し、第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79で多段増倍されて、陽極A7に入射し、陽極A7から電流が送出されることになる。
【0107】
次に、光電子増倍管7の製造方法(この発明に係る光電面の製造方法、この発明に係る二次電子放出面の製造方法、及びこの発明に係る電子管の製造方法の好適な一実施例)について説明する。光電子増倍管7を製造する方法は、この発明に係るアルカリ金属発生剤あるいはアルカリ金属発生器を用いて光電面C7及び第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を形成すること以外の条件及び手順は特に限定されるものではなく、公知の技術により製造することができる。
【0108】
すなわち、まず、加熱により、側管72と基板C71とを一体化させる(もしくは、側管と基板が一体に形成されたガラスバルブを用いてもよい)。なお、この段階では、光電面C7の基板C71上には光電子放出材料層C72は未形成のままの状態(アルカリ活性化が行われていない状態)となっている。
【0109】
続いて、ステム板78を貫通するリードピン75上に陽極A7、集束電極E7及び電子増倍部D7を組み付け、側管72の開口部72b側から挿入する。なお、この段階では、電子増倍部D7内のダイノードとなる基板上には二次電子面は未形成のままの状態(アルカリ活性化が行われていない状態)となっている。その後、基板C71と同様にしてステム板78と側管72とを一体化することで、密封容器が得られる。
【0110】
次に、図6に示されたアルカリ金属発生器5を用いて光電子増倍管7の光電面C7及び第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を形成する場合の一例について説明する。図9は、図6に示されたアルカリ金属発生器5を用いて光電子増倍管7の光電面C7及び第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を形成する製造工程を説明するための図である。なお、図9において、光電子増倍管7の詳細な内部構成は省略されている。
【0111】
まず、アルカリ金属と反応する光電子放出材料層C72の構成材料からなる層が基板C71上に予め形成されるとともに、アルカリ金属と反応する二次電子放出材料層の構成材料からなる層がダイノードD7それぞれの基板上に予め形成される。例えば、蒸着源(Sb等のアルカリ金属以外からなる光電子放出材料層C72の構成材料、あるいは、アルカリ金属以外の二次電子放出材料層の構成材料からなる蒸着源)が予め密封容器内に搭載される。
【0112】
続いて、真空ポンプにより、密封容器の内部が所定の真空状態(密封容器内部の残留ガスの全圧が、例えば、10−6〜10−3Pa)に保持される。このような真空状態において、蒸着源に通電するか又は高周波加熱を行うことで蒸着源を構成する蒸着物質を蒸発させる。その後、密封容器を電気炉等に入れて所定の温度に保持し、蒸着物質を基板C71又はダイノードD7それぞれの基板上に蒸着させる。なお、予め別の蒸着装置を用いて、蒸着物質を基板C71又はダイノードD7それぞれの基板上に蒸着させておいてもよい。
【0113】
蒸着後は、排気管73に開口部が形成されることで、該排気管73内部の蒸着物質が外部に開放される。次に、図9に示されたように、底部付近にアンプル52の先端を開放した状態のアルカリ金属発生器5が配置された有底のガラス管76が準備され、該ガラス管76の開口部と、排気管73の開口部とが気密状態で接続されする。なお、ガラス管76の側面には別の開口部が設けられており、この側面開口は真空ポンプに接続されたガラス管77の開口部と気密に接続される。その後、真空ポンプにより、排気管73を介して密封容器内部を所定の真空状態(密封容器の残留ガスの全圧が、例えば、10−6〜10−3Pa)に保持される。
【0114】
そして、上述の高周波加熱方式の加熱装置によりアルカリ金属発生器5を加熱してアルカリ金属発生器5内のアルカリ金属発生剤1Aの酸化剤(バナジウム酸塩)と還元剤との酸化還元反応を進行させ、アルカリ金属の蒸気を発生させる。
【0115】
このとき、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする酸化剤(バナジウム酸塩)は、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとするクロム酸塩よりも酸化力が弱く、還元剤との酸化還元反応がクロム酸塩の場合に比べて緩やかに進行する。そのため、アルカリ金属発生剤1A自体若しくはこれを収容しているケース20Aを破裂させることなくアルカリ金属の蒸気を安定的に発生させることができる。
【0116】
換言すれば、高周波加熱方式の加熱装置により酸化反応の進行を一度開始させた後は、排気管73を加熱することにより反応温度の調節を行うことが容易にできる。そして、ガラス製アンプル52の先端部分にCs蒸気が誘導され、該先端部分にCsの蒸気あるいはCsの液体が集められる。そして、密封容器の部分が電気炉内に入れられ、該電気炉内は所定の温度(例えば200℃)に保たれる。その際、アルカリ金属発生器5を密封容器の側に移動させ、アルカリ金属発生器5のアンプル52の先端部分を密封容器内に挿入する。
【0117】
これにより、アンプル52の先端部分を電気炉内で所定の温度に保持させ、該先端部分からCs等のアルカリ金属の蒸気を安定的に放出させることができる。すなわち、従来のクロム酸塩を用いて製造した光電面及びダイノードに匹敵する性能を有する光電面C7及び第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79を容易にかつ再現性よく製造できる。
【0118】
このようにしてガラス製アンプル52の先端部分から密封容器内に安定的に放出されたCs等のアルカリ金属の蒸気は、光電面C7のアルカリ金属と反応して光電子放出材料層C72を形成するための原型となる層あるいは第1ダイノードD71〜第9ダイノードD79のアルカリ金属と反応して二次電子放出材料層を形成するための原型となる層と反応し、光電子放出材料或いは二次電子放出材料が生成される。そして、十分な分光感度特性を有する光電子放出材料層C72あるいは十分な増倍効率を有する二次電子放出面FD7が形成される。
【0119】
次に、アルカリ金属発生器5の先端が密封容器から取り出され、ガラス管76の底部の側に移された後、ガラス管76が排気管73から切り離される。
【0120】
以上の作業が使用するアルカリ金属発生剤ごとに繰り返されることにより、基板C71上に所定の化学組成を有する光電子放出材料層C72が形成され、ダイノードの基板上に所定の化学組成を有する二次電子放出材料層が形成される。最後のアルカリ金属発生器5を使用した後には、光電子増倍管7内を所定の温度に保持した状態で真空ポンプを作動させることにより、光電子増倍管7内の残留ガスが十分に除去されることにより、光電子増倍管7内の光電子放出材料又は二次電子放出材料以外の部位に物理吸着した、アルカリ金属あるいはその他の蒸着源から発生したガスが除去される。その後、密封容器における排気管73の開口部が封止されることにより、十分な光電変換特性を有する光電子増倍管7が得られる。
【0121】
次に、この発明に係る電子管の第2実施例について説明する。図10は、この発明に係る電子管の第2実施例としての光電子増倍管の構成を示す図である。なお、この図10には、図8に示された光電子増倍管7の別の構成が示されている。
【0122】
図10に示された光電子増倍管7Aは、主として、電極部71と、電極部71に固定されたアルカリ金属発生器2と、電極部71とアルカリ金属発生器2を収容する外形が略円柱状のガラス製容器と、電極部71の各電極にそれぞれ電気的に接続されたステムピン75Aとを備える。なお、ガラス製容器は、ガラス製側間72Aとガラス製ステム板78Aから構成されている。上記電極部71は、図8の光電子増倍管7と同様に、光電面、集束電極、複数のダイノードから構成された電子増倍部、及び陽極からなる構成されている。また、各ステムピン75Aは、図8の光電子増倍管7と同様に、電圧印加部に接続されている。
【0123】
アルカリ金属発生器2は、図2及び図3に示されたアルカリ金属発生器と同様の構成を有する。また、アルカリ金属発生器2は、電極部71の光電面及び電子増倍部におけるダイノードの形成に使用される。このアルカリ金属発生器2は、金属製ワイヤにより電極部71に固定されている。なお、図10中のアルカリ金属発生器2は1つであるが、形成すべき光電面の化学組成、あるいは、ダイノードの二次電子放出面の化学組成に応じて、異なる化学組成を有するアルカリ金属発生剤1が搭載された複数個のアルカリ金属発生器2が電極部71に固定されてもよい。
【0124】
この光電子増倍管7Aは、光電面が金属製基板上に形成された反射型光電面を有するサイドオン型の光電子増倍管である。そのため、ガラス容器を構成する円柱状の側管72Aが利用すべき光に対する光透過性を有しており、電極部71内に配置された光電面の基板は例えばNiなどの金属製の基板からなる。そして、この光電子増倍管7Aは上記電極部71及び該電極部71に固定されたアルカリ金属発生器2以外の構成は、例えば、公知のサイドオン型の光電子増倍管と同様の構成を有する。
【0125】
上記光電子増倍管7Aの製造方法では、まず、一方の底面が塞がった筒状のガラス製側管72Aの開口部に、リードピン75Aと当該リードピン75Aに固定された電極部71を有するガラス製ステム板78Aが固定される。その際、アルカリ金属発生器2も電極部71に取り付けられる。また、ステム板78Aに接続された排気管73Aが一旦開放され、その開口部が真空ポンプの吸入口に接続される。
【0126】
このとき、光電面形成基板やダイノードの二次電子放出面にアルカリ金属と反応して金属間化合物を形成するための層(例えば、アンチモン層)が予め形成されている。
【0127】
そして、上記いずれの場合においても、真空ポンプにより、ガラス容器内が所定の真空状態に保持される。この真空状態で、ガラス容器の外部から上述の高周波加熱方式による加熱装置がアルカリ金属発生器2あるいは蒸着源を加熱する。これにより、光電面の光電子放出材料層及びダイノードの二次電子放出材料層が形成される。
【0128】
この光電子増倍管7A場合も、高周波加熱方式の加熱装置によりアルカリ金属発生器2を加熱しても、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする酸化剤(バナジウム酸塩)は、還元剤との酸化還元反応がクロム酸塩の場合に比べて緩やかに進行する。そのため、アルカリ金属発生剤1自体若しくはこれを収容しているケース20を破裂させることなくアルカリ金属の蒸気を安定的に発生させることができる。また、ケース20をガラス容器内に残しても美観が損なわれない。
【0129】
高周波加熱方式の加熱装置により酸化反応の進行を一度開始させた後、ガラス容器は所定の温度に保った電気炉内に入れられ、温度管理されることにより、アルカリ金属の蒸気を安定的に光電面の形成部位あるいは二次電子放出面の形成部位に反応させることができる。アルカリ金属の蒸気は、光電面のアルカリ金属と反応して光電子放出材料層を形成するための原型となる層あるいはダイノードのアルカリ金属と反応して二次電子放出材料層を形成するための原型となる層と反応し、光電子放出材料あるいは二次電子放出材料が生成される。そして、十分な分光感度特性を有する光電面あるいは十分な増倍効率を有する二次電子放出面が形成される。
【0130】
光電面あるいは二次電子放出面の形成後には、光電子増倍管7A内を所定の温度に保持した状態で真空ポンプが作動することで、十分に光電子増倍管7A内の残留ガスが除去される。これにより、光電子増倍管7内の光電子放出材料又は二次電子放出面以外の部位に物理吸着した、アルカリ金属あるいはその他の蒸着源から発生したガスが除去される。その後、ガラス容器の排気管73Aの開口部が封止されることにより、十分な光電変換特性を有する光電子増倍管7Aが得られる。
【0131】
この光電子増倍管7Aを形成する際に、アルカリ金属発生器2のかわりに図4に示されたアルカリ金属発生器3や図6に示されたアルカリ金属発生器5が使用されてもよい。この場合も、上述の光電子増倍管7と同様の手順により当該光電子増倍管7Aが製造される。
【0132】
以上、この発明に係る電子管として、光電子増倍管を有する種々の電子管について説明したが、この発明係る電子管は、光電子増倍管の構成を有する場合、光電面の光電子放出材料層及びダイノードの二次電子放出材料層の少なくとも一方にこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はこれを搭載したアルカリ金属発生器から発生するアルカリ金属の蒸気を用いて形成されていればよい。例えば、上記実施例(光電子増倍管7及び光電子増倍管7A)のように、光電面及びダイノードがともにこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はこれを搭載したアルカリ金属発生器から発生するアルカリ金属の蒸気を用いて形成されていてもよい。また、光電面の光電子放出材料層及びダイノードの二次電子放出材料層のうちのいずれか一方のみがこの発明に係るアルカリ金属発生剤又はこれを搭載したアルカリ金属発生器から発生するアルカリ金属の蒸気を用いて形成されていてもよい。ただし、製造効率の観点からは前者の方が好ましい。
【0133】
また、この発明に係る電子管において、上記実施例(光電子増倍管7及び光電子増倍管7A)のように、ダイノードを備える構成を有する場合、そのダイノードの形状は特に限定されるものではない。例えば、上述の実施例では、ダイノードD7としてラインフォーカス型ダイノードが搭載された場合について説明されているが、ボックス型、ベネシアンブラインド型、メッシュ型、メタルチャンネルダイノード型等のダイノードを備えていてもよい。
【0134】
次に、この発明に係る電子管の第3実施例について説明する。図11は、この発明に係る電子管の第3実施例としての光電管の構成を示す図である。
【0135】
図11に示された光電管8は、図8に示された光電子増倍管7を構成する集束電極E7、電子増倍部D7を有していない点以外は、該光電子増倍管7と同様の構成を有する。この光電管8の光電面C7も、上述の光電子増倍管7及び7Aの光電面C7と同様に、容易に製造することができる。そして、得られた光電管8に関して十分な光電変換特性が得られる。なお、この電子管8におけるガラス容器は、ガラス製側管72、光電面C7、及びガラス製ステム板78により構成されている。
【0136】
次に、この発明に係る電子管の第4実施例について説明する。図12は、この発明に係る電子管の第4実施例としてのイメージ管(イメージインテンシファイア)の構成を示す図である。
【0137】
図12に示されたインテンシファイア9は、光電面C7と、この光電面C7から放出される光電子e1を増倍するマイクロチャンネルプレートMCP、マイクロチャンネルプレートMCPから放出される電子e2を光に変換する蛍光面90を備える。また、排気管は側管72に設けられている。なお、MCPに対しては、アルカリ金属発生剤によるアルカリ活性は行われない。また、MCPを有しない構成であってもよい。また、上記イメージ管は、X線像を可視像に変換するX線イメージ管を含む。
【0138】
図12に示されたインテンシファイア9の場合、光電面C7は、光電子放出材料層C72(例えば、GaAs−CsO等の組成を有する光電面)において光学的な二次元情報を含む入射光L1が光電変換され、該入射光L1に対応する光電子e1が内面FC72から放出される。そして、マイクロチャンネルプレートMCPは、電圧印加部74により光電面C7に対して高電位に保持されており、光電子e1が入射されると、該光電子e1の衝突を利用して二次電子e2を放出する。マイクロチャンネルプレートMCPの光電子e1の入射面F91と二次電子出射面F92との間には、所定の電圧印加部により例えば約1000Vの電圧がかかっており、数千〜数万倍の電子倍増率が得られる。
【0139】
蛍光面90は、透明基板94と、該透明基板94上に形成された蛍光体層92と、該蛍光体層92の表面上に形成された電極75とから構成されている。この電極75は、増倍された二次電子e2を加速するための電極であり、電圧を印加するために所定の電位に調節されている。すなわち、この電極75もマイクロチャンネルプレートMCPの二次電子出射面F92電圧印加部74に対して高電位に保持されている。
【0140】
さらに、蛍光体層92を構成する構成材料及び基板94を構成する構成材料は特に限定されず、公知の材料が使用可能である。例えば、基板94として複数の光ファイバを束ねて形成された光ファイバプレートを使用し、光ファイバプレートと蛍光体層との間に金属薄膜を配置した構成であってもよい。
【0141】
このイメージインテンシファイア9の光電面C7も、上述の光電子増倍管7及び7Aの光電面C7と同様に、容易に製造可能である。そして、得られたイメージインテンシファイア9に関して十分な光電変換特性が得られる。
【0142】
次に、この発明に係る電子管の第5実施例について説明する。図13は、この発明に係る電子管の第5実施例としてのストリーク管の構成を示す図である。
【0143】
図13に示されたストリーク管10は、図8に示された光電子増倍管7と同様に、側管72の一方の開口部72aの側に光電面C7が配置されている。外部から入射される被測定光L1は、この光電面C7の光電子放出材料層C72において光電子に変換される。
【0144】
また、側管72内において光電面C7の隣には、内面FC72から放出される光電子を加速させる平板状の加速電極11が配置されている。この加速電極11は、その電極面の法線と内面FC72の法線とが互いに略平行となるように配置されている。加速電極11の隣には、加速電極11により加速された一次電子を集束するため集束電極12が配置されている。集束電極12は、一対の平板状の電極から構成され、それぞれの電極面は互いに平行でありかつ内面FC72対して略垂直となるように配置されている。また、集束電極12の隣には、集束電極12により集束された一次電子が通過可能な連通孔H10が形成されており、電子を電気的に引き寄せて連通孔H10内を通過させる円板状の陽極A10が配置されている。
【0145】
さらに、陽極A10の隣には、陽極A10の開口H10を通過する電子を高速で掃引するための偏向電極14が配置されている。この偏向電極14は、互いに対向配置された1対の平板状の電極から構成されている。この1対の電極における電極面の各法線は互いに平行であり、かつ、各法線は内面FC72の法線に対して垂直である。そして、1対の平板状の電極間には所定の偏向電圧が印加されており、これにより、開口H10内を通過して陽極A10から放出される一次電子は、所定の方向に掃引される。
【0146】
また、偏向電極14の隣には、偏向電極14により掃引された電子を増倍するマイクロチャンネルプレートMCPが配置されている。なお、当該ストリーク管10は、このマイクロチャンネルプレートMCPを備えていない構成であってよい。
【0147】
マイクロチャンネルプレートMCPの隣には、マイクロチャンネルプレートMCPから放出される電子を光に変換する蛍光面90が配置されている。この蛍光面90は、図12示された蛍光面90と同様の構成を有している。そして、面板C71と、透明基板94と、側管72とにより密封容器が構成されている。
【0148】
上述のストリーク管10において、被測定光L1をスリット板を介して光電面C7に入射させると、この被測定光は電子像に変換され、加速電極11で加速されるとともに、陽極A10に引き寄せられる。そして、この電子像は、陽極A10を通過して2枚の偏向電極14の間に入り込み、この偏向電極14の電極面の法線方向に平行な方向に高速で掃引される。電子を高速で掃引するのは、偏向電極14を通過する電子の数が、時間に対して高速で変化する被測定光の光強度の時間変化に対応して変化するからである。
【0149】
このように高速で掃引された電子は、マイクロチャンネルプレートMCPで増倍され、該マイクロチャンネルプレートMCPで増倍された電子は蛍光面90で光学像(ストリーク像とも呼ばれている)に変換される。このようにして、被測定光の強度の時間的変化が蛍光面90において強度の空間的変化に変換される。ストリーク管の動作時において、電子はその通過時刻と同期して掃引されているため、蛍光体電極90上に投影された光強度の空間的変化、すなわちストリーク像を解析することにより、その時間的変化を知ることができる。
【0150】
このストリーク管10の光電面も、上述の光電子増倍管7及び7Aと同様に容易に製造され得る。そして、得られたストリーク管10に関して十分な光電変換特性が得られる。
(実験)
【0151】
以下、この発明に係るアルカリ金属発生剤のサンプル及びその比較例を挙げてさらに詳しく説明する。なお、この発明は、以下の実施例サンプルに何ら限定されるものではない。
(サンプル)
【0152】
発明者らは、サンプルとして、以下に示されたアルカリ金属発生剤を用いて形成された光電面(アンチモンアルカリ光電面:Sb−Cs、基板材料はNi)と、以下に示されたアルカリ金属発生剤を用いて形成された二次電子放出面(Cs−Sb)をそれぞれ搭載した以外は、市販のサイドオン型の光電子増倍管と同様の構成を有する光電子増倍管(図10と同様の構成を有する)を、複数個作製した。
【0153】
光電面を形成するためのアルカリ金属発生剤は、酸化剤としてバナジウム酸塩(CsVO)と、還元剤としてSiとを含み、総重量94mgである。また、当該アルカリ金属発生剤のサンプルの形状は、図1と同様にペレット状であり、物質量比は、CsVO:Si=1:1.1である。
【0154】
また、このサンプルでは、二次電子放出面も光電面を形成するためのアルカリ金属発生剤が利用されている。
【0155】
アルカリ金属発生剤は、上記バナジウム酸塩の混合物に対し、上述の計量工程、粉砕・混合工程、及び、成形工程を順次行うことにより得られた。
【0156】
そして、これらアルカリ金属発生剤のサンプルは、それぞれ図2及び図3に示された金属製ケース20に収容され、さらに、この金属製ケース20が、図4に示されたようにガラス製アンプル32内に収容されることで、アルカリ金属発生器3と同様の構成を有するアルカリ金属発生器が作製される。
【0157】
アルカリ金属発生器を用いた以外は、図9を用いて説明された光電子増倍管7の製造方法と同様の方法により、光電面及び二次電子放出面が作製され、光電子増倍管が得られた。
(比較例)
【0158】
一方、発明者らは、比較例として、市販のサイドオン型の光電子増倍管と同様の構成を有する光電子増倍管を、上記サンプルと同様の方法により、複数個作製した。なお、この比較例に係る光電子増倍管に搭載された光電面は、酸化剤としてクロム酸塩(CsCrO)と、還元剤としてSiとを含む従来のアルカリ金属発生剤を用いて形成された光電面(アンチモンアルカリ光電面:Sb−Cs)である。この比較例に係るアルカリ金属発生剤の総重最は82mgであり、物質量比は、CsCrO:Si=1:1.3である。
(特性評価試験)
【0163】
上述のように製造されたサンプル及び比較例に係る光電子増倍管について、陰極出力(Sk:μA/lm)、陽極出力(Sp:μA/lm)、暗電流(Idb:nA)、及びAfter Pulse(%)の諸特性の他、放射感度(mA/W)、Life(%)(Spの経時変化)についても測定した。図14〜図17は、その測定結果を示す表及びグラフである。なお、上記の諸特性の測定は、“光電子増倍管−その基礎と応用−”,(浜松ホトニクス株式会社 編集委員会 著)に記載の方法(例えば、p.34〜39:“光電面の基本特性”、p.60〜73:“光電子増倍管の諸特性”等)に基づき行われた。
【0164】
なお、図14は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例における諸特性(平均値)を示す表である。図15は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例におけるLife特性(%)を示す表である。図16は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルと、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例における放射感度特性及び量子効率を示すグラフである。この図16において、グラフG1610は、当該サンプルに係る光電子増倍管の放射感度を示し、グラフG1620は、比較例に係る光電子増倍管の放射感度を示し、グラフG1630は、当該サンプルに係る光電子増倍管の量子効率を示し、グラフG1640は、比較例に係る光電子増倍管の量子効率を示す。図17は、この発明に係るアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管のサンプルのLife特性を基準とした、従来のアルカリ金属発生剤を使用して製造された光電子増倍管の比較例のLife特性の相対出力示すグラフである。この図17において、グラフP1は、当該サンプルに係る光電子増倍管のLife特性を示し、グラフP2〜P4は、グラフP1を基準とした、比較例に係る光電子増倍管のLife特性の相対出力を示す。
【0159】
特に、図17に示された比較例に係る光電子増倍管(市販の光電子増倍管)のLife特性の相対出力P2〜P4については、複数(35個)のサンプルについてデータを測定することにより得られた。すなわち、グラフP2は、全データの平均値を示し、グラフP3は、全データの平均値+σ(σは標準偏差)を示し、そして、グラフP4は、全データの平均値−σ(σは標準偏差)を示す。
【0160】
図16に示された測定結果から明らかなように、この発明に係る光電子増倍管として製造されたサンプルは、比較例に係る従来の光電子増倍管と同等の放射感度及び量子効率を有していることが確認された。
【0161】
また、図15に示された表からも分かるように、当該サンプルに係る光電子増倍管は、比較例に係る従来の光電子増倍管と同等のLife特性を有していることが確認された。なお、このLife特性評価試験は、各光電子増倍管の動作電流(出力電流)を100μAとし、光電面と陽極との間の印加電圧を1000Vとして行われた。また、図15に示された表のLife特性(相対出力)値は、測定開始から1時間経過後の陽極出力(Sp)の値を100%とした相対値を示す。
【0162】
さらに、図17に示されたように、この発明に係る光電子増倍管のサンプル(図17中の当該サンプルのLife特性を示すグラフP1は、5個のサンプルの平均値)は、比較例に係る光電子増倍管と略同等のLife特性を示す相対出力を得ることができ、優れた特性の再現性を有していることが確認された。
【0163】
また、図14の表に示されたように、当該サンプルに係る光電子増倍管(この発明に係る光電子増倍管)は、比較例に係る従来の光電子増倍管と同等の陰極出力、陽極出力、暗電流及びAfter Pulse特性を有していることが確認された。なお、After Pulse特性の測定は、LED(半導体レーザ)を使用して当該サンプル及び比較例それぞれの光電子増倍管からパルス信号を出力させ、信号の出力後0.5〜10μsecの間に発生するAfter Pulseに基づき算出される。
【0164】
以上の本発明の説明から、本発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0165】
以上説明したように、この発明によれば、アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする酸化剤(バナジウム酸塩)と還元剤との酸化還元反応は、反応温度のみのコントロールにより容易に反応速度を制御できる。そのため、所定の温度においてアルカリ金属を安定的に発生させることのできる光電面又は二次電子放出面形成用のアルカリ金属発生剤が提供可能になる。また、このアルカリ金属発生剤を備えることによりアルカリ金属の発生速度を容易にコントロールできるアルカリ金属発生器も提供可能になる。
【0166】
また、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いることにより、十分な分光感度特性を有する光電面、十分な増倍効率を有する二次電子放出面、及び、十分な光学的特性と電気的特性とを併有する電子管が得られる。
【0167】
さらに、この発明に係るアルカリ金属発生剤又はアルカリ金属発生器を用いることにより、形成が容易でありかつ得られる性能の再現性に優れた光電面の製造方法、二次電子放出面の製造方法、及び、電子管の製造方法が提供可能になる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光に対応して光電子を放出する光電面、又は、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属の供給源となるアルカリ金属発生剤であって、
アルカリ金属イオンをカウンターカチオンとする少なくとも一種のバナジウム酸塩からなる酸化剤と、
所定温度において前記酸化剤との酸化還元反応を開始し、前記アルカリ金属イオンを還元する還元剤とを少なくとも含むアルカリ金属発生剤。
【請求項2】
請求項1記載のアルカリ金属発生剤において、
前記バナジウム酸塩は、Na、K、Rb及びCsからなる群より選択された少なくとも一種の金属元素をRとするとき、化学式RVOで表現される。
【請求項3】
請求項1又は2記載のアルカリ金属発生剤において、
前記還元剤は、Si、Zr、Ti及びAlからなる群より選択される少なくとも一種である。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤において、
当該アルカリ金属発生剤は、粉体状である。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤において、
当該アルカリ金属発生剤は、圧縮成形により所定の形状を有するペレットに成形されている。
【請求項6】
入射光に対応して光電子を放出する光電面、又は、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の形成に使用されるアルカリ金属を発生させるアルカリ金属発生器であって、
ケースと、
前記ケース内に収納され、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤を含む供給源と、そして、
前記ケースに設けられ、前記供給源が収納された前記ケースの内部空間から該ケースの外部に向かって、該供給源において発生する前記アルカリ金属の蒸気を放出するための放出口を備えたアルカリ金属発生器。
【請求項7】
請求項6記載のアルカリ金属発生器において、
前記ケースは、金属製である。
【請求項8】
請求項6又は7記載のアルカリ金属発生器において、
前記ケースは、両端に開口部を有するとともにその側面に前記放出口が設けられた金属製の中空容器と、
前記中空容器の両端開口をそれぞれ覆う金属製の蓋部材とを備える。
【請求項9】
請求項6又は7記載のアルカリ金属発生器において、
前記ケースは、両端に開口部を有する金属製の中空容器であり、
前記中空容器は、前記アルカリ金属発生剤を収容するための内部空間を確保した状態で、その両端開口部が密閉されており、そして、
密閉された前記中空容器の両端の少なくとも一方に、前記放出口が設けられている。
【請求項10】
請求項6又は7記載のアルカリ金属発生器において、
前記アルカリ金属発生剤は、所定の形状を有するペレットに成形されており、
前記ケースは、前記アルカリ金属発生剤を収納するための凹部を有する金属製の有底容器と、該凹部の開口を覆った状態で該有底容器に溶接された金属製の蓋部材とにより構成され、そして、
前記ケースの前記放出口は、前記有底容器と前記蓋部材との間の未溶接部分に形成されている。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器は、さらに、
前記ケース全体を収納するガラス製アンプルを備える。
【請求項12】
請求項6〜11のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器は、さらに、
前記アルカリ金属発生剤の酸化還元反応を開始させ、前記アルカリ金属の蒸気を発生させるための加熱装置を備える。
【請求項13】
請求項12記載のアルカリ金属発生器において、
前記加熱装置は、高周波加熱により前記アルカリ金属発生剤を加熱するための高周波電源を含む。
【請求項14】
入射光に対応して光電子を放出する光電面であって、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤から発生したアルカリ金属を含む光電面。
【請求項15】
入射光に対応して光電子を放出する光電面であって、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器から発生したアルカリ金属を含む光電面。
【請求項16】
入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面であって、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤から発生したアルカリ金属を含む二次電子放出面。
【請求項17】
入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面であって、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器から発生したアルカリ金属を含む二次電子放出面。
【請求項18】
請求項14又は15に記載の光電面を備えた電子管。
【請求項19】
請求項18記載の電子管は、さらに、
それぞれが、前記光電面から放出された光電子の入射に応じて二次電子を放出する二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部と、そして、
前記電子増倍部から出力された前記二次電子を収集し、該収集された二次電子を外部に電流として取り出すための陽極を備える。
【請求項20】
請求項18記載の電子管は、さらに、
前記光電面から放出された前記光電子を収集し、該収集された光電子を外部に電流として取り出すための陽極を備える。
【請求項21】
請求項18記載の電子管において、
当該電子管は、前記光電面から放出された光電子を光に変換する蛍光面を少なくとも備えたイメージ管を含む。
【請求項22】
請求項18記載の電子管は、さらに、
前記光電面から放出された光電子を加速させる加速電極と、
前記加速電極により加速された前記光電子を集束するため集束電極と、
前記集束電極により集束された前記光電子が通過可能な開口を有する陽極と、
互いに対向配置された1対の電極板を有し、前記陽極に設けられた開口を通過した前記光電子を前記1対の電極板の間に印加される所定の偏向電圧により所定の方向に掃引可能な偏向電極と、そして、
前記偏向電極において偏向された前記光電子を光に変換する蛍光面とを備えたストリーク管を含む。
【請求項23】
それぞれが、請求項16又は17記載の二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部を備えた電子管。
【請求項24】
請求項23記載の電子管は、さらに、
入射光に対応して光電子を前記電子増倍部に向かって放出する光電面と、そして、
前記電子増倍部から放出された二次電子を収集し、該収集された二次電子を外部に電流として取り出すための陽極を備える。
【請求項25】
入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤を用意し、
前記アルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記光電面の形成領域に導く光電面の製造方法。
【請求項26】
入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器を用意し、
前記アルカリ金属発生器のケース内に収納されたアルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記光電面の形成領域に導く光電面の製造方法。
【請求項27】
入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤を用意し、
前記アルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記二次電子放出面の形成領域に導く二次電子放出面の製造方法。
【請求項28】
入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器を用意し、
前記アルカリ金属発生器のケース内に収納されたアルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記二次電子放出面の形成領域に導く二次電子放出面の製造方法。
【請求項29】
入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面を少なくとも備えた電子管の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤を用意し、
前記アルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記光電面の形成領域に導く工程を含む電子管の製造方法。
【請求項30】
入射光に対応して光電子を放出するアルカリ金属を含む光電面を少なくとも備えた電子管の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器を用意し、
前記アルカリ金属発生器のケース内に収納されたアルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記光電面の形成領域に導く工程を含む電子管の製造方法。
【請求項31】
請求項29又は30記載の電子管の製造方法において、
前記電子管は、光電子増倍管、光電管、イメージ管及びストリーク管のいずれかを含む。
【請求項32】
それぞれが、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部を備えた電子管の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項1〜5のいずれか一項記載のアルカリ金属発生剤を用意し、
前記アルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記二次電子放出面の形成領域に導く工程を含む電子管の製造方法。
【請求項33】
それぞれが、入射電子に対応して二次電子を放出する二次電子放出面を有する1又はそれ以上のダイノードで構成された電子増倍部を備えた電子管の製造方法であって、
前記アルカリ金属の発生源として、請求項6〜13のいずれか一項記載のアルカリ金属発生器を用意し、
前記アルカリ金属発生器のケース内に収納されたアルカリ金属発生剤を加熱し、そして、
前記アルカリ金属発生剤の加熱により発生したアルカリ金属を前記二次電子放出面の形成領域に導く工程を含む電子管の製造方法。
【請求項34】
請求項32又は33記載の電子管の製造方法において、
当該電子管は、光電子増倍管、イメージ管、及びストリーク管のうちいずれかを含む。

【国際公開番号】WO2004/066339
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508054(P2005−508054)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000304
【国際出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】