アルカリ金属酸化物を含有する光ファイバおよびその製造方法と装置
【課題】光ファイバ損失を最低のレベルまで減少させた光ファイバを提供する。
【解決手段】ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントに加え、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第2のドーパントを、20から1000ppmのピーク濃度で有してなるシリカベースのコアとし、アルカリ金属酸化物の濃度を、光ファイバの半径により異ならせる。コアとクラッド内のアルカリ金属酸化物ドーパントの濃度を適切に選択することによって、前記コアが、前記クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを持たせる。
【解決手段】ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントに加え、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第2のドーパントを、20から1000ppmのピーク濃度で有してなるシリカベースのコアとし、アルカリ金属酸化物の濃度を、光ファイバの半径により異ならせる。コアとクラッド内のアルカリ金属酸化物ドーパントの濃度を適切に選択することによって、前記コアが、前記クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを持たせる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国特許法第112条(e)項の下で2003年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/498901号および2003年12月10日に出願された同第60/528639号の優先権を主張するものである。これらの出願をここに引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、アルカリ金属酸化物がドープされた光ファイバおよびその製造方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
減衰は、光ファイバの重要な制限特性である。例えば、光ファイバ損失は、光ファイバの増幅器間の制限距離を設定する上で重要な役割を果たす。このことは、例えば、そのような増幅器がかなりのシステム費用を占め、システムの信頼性の重要な要因である海底用途などの、長距離および超長距離のネットワークにおいて特に重要である。したがって、減衰をできるだけ最低のレベルまで減少させることに商業的に大きな関心が寄せられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある広い態様は、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびそのアルカリ金属酸化物を、コア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、アルカリ金属酸化物の濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバに関する。アルカリ金属酸化物ドーパントの濃度は、光ファイバの中心線からの半径が増加すると共に減少することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドーピング技法を用いて、減衰が、1310nmで約0.30dB/km未満、1550nmで約0.18dB/km未満、好ましくは、1550nmで約0.17dB/km未満、より好ましくは、1550nmで約0.16dB/km未満である光ファイバを製造することができる。
【0005】
光ファイバのコアとクラッドの両方がアルカリ金属酸化物ドーパントを含有することが好ましい。光ファイバのクラッドガラスはフッ素(F)を含んでよい。光ファイバは、少なくとも1つのコア・セグメントを有し、いくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバは多数のコア・セグメントを有してなる。光ファイバのモード・フィールド半径に等しい半径でのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも約0.001質量%であることが好ましい。
【0006】
本発明は、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含むコアを有する光ファイバであって、コアの含有するOHが20ppb未満である光ファイバを提案する。
【0007】
本発明の実施の形態の参考例によれば、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびそのアルカリ金属酸化物を、コア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、アルカリ金属酸化物の濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバが示される。
【0008】
本発明の実施の形態のさらに別の参考例によれば、Rb2Oを約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびRb2Oをコア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、Rb2Oの濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバが示される。
【0009】
本発明の別の広い態様によれば、GeO2と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを含むコアを有してなる光ファイバであって、光ファイバの屈折率が、約1550nmで約1ps/nm/kmより大きい全分散、および1550nmで約0.10ps/nm2/km未満の分散スロープを与えるように選択されている光ファイバが提供される。光ファイバが約1550nmで約6ps/nm/kmより大きい全分散を有することが好ましい。光ファイバの減衰は、好ましくは1550nmで約0.18dB/km未満、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満である。光ファイバが少なくとも10m/sの線引き速度で線引きされることが好ましい。
【0010】
本発明の別の態様によれば、ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを、20から1000ppmの間のピーク濃度で含むシリカベースのコア;およびコアを取り囲み、コアに直接隣接したシリカベースのクラッドを有してなる光ファイバであって、1550nmでの減衰が0.185dB/km未満、好ましくは0.18dB/km未満、より好ましくは0.17dB/km未満である光ファイバがここに開示される。いくつかの好ましい実施の形態において、1550nmでの減衰が0.167dB/km以下である。好ましい実施の形態において、コア中のアルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径により減少する。コア中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度は、約0.002質量%より大きく、約0.07質量%未満であることが好ましい。好ましい実施の形態において、光ファイバのモード・フィールド半径に等しい半径でのアルカリ金属酸化物の濃度は、少なくとも約0.0001質量%である。いくつかの実施の形態において、コアはGeO2を含み、他の実施の形態においては、コアはGeO2を含まない。いくつかの実施の形態において、コアは1つのセグメントを有してなる。他の実施の形態においては、コアは複数のセグメントを有してなる。いくつかの好ましい実施の形態において、特に、コアがゲルマニアを含まないある実施の形態において、クラッドはFを含む。好ましい実施の形態において、コア中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、約0.002質量%より多く、約0.05質量%未満である。様々な実施の形態において、光ファイバは外側の気密被覆を有し、特別な実施の形態において、第1のドーパントはゲルマニアであり、すなわち、そのファイバはゲルマニア・ドープされており、光ファイバはさらに、外側の気密被覆を有する。いくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバは単一モードファイバであり、例えば、1550nmで単一モードであり、他の好ましい実施の形態において、光ファイバは多モードファイバであり、このファイバは勾配屈折率プロファイルを有することが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態は、1550nmでの分散が1から6ps/nm−kmである非ゼロ分散シフト光ファイバであり、他の実施の形態は、1550nmでの分散が6から15ps/nm−kmである。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、GeO2と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを含むコア、およびコアを取り囲むクラッドを有してなる光ファイバであって、光ファイバの屈折率プロファイルが、1550nmで約1ps/nm/kmより大きい全分散、およびゼロ分散波長で約0.10ps/nm2/km未満の分散スロープを与えるように選択されている光ファイバがここに開示されている。好ましい実施の形態において、全分散は、1550nmで約6ps/nm/kmより大きい。1550nmでの減衰が、好ましくは約0.18dB/km未満、より好ましくは約0.17dB/km未満である。
【0012】
本発明の別の広い実施の形態の参考例において、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア、およびコアを取り囲みコアに直接隣接したクラッドを有してなる光ファイバがここに開示されている。
【0013】
本発明のさらに別の広い実施の形態の参考例において、Rb2Oを約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア、およびコアを取り囲みコアに直接隣接したクラッドを有してなる光ファイバがここに開示されている。
【0014】
本発明の別の広い実施の形態において、ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを、20から1000ppmの間のピーク濃度で含むシリカベースのコア;およびコアを取り囲み、コアに直接隣接したシリカベースのクラッドを有してなる光ファイバであって、コアが、クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを有するものである光ファイバがここに開示されている。光ファイバは、好ましくは0.185dB/km未満、より好ましくは0.18dB/km未満、さらにより好ましくは0.17dB/km以下の1550nmでの減衰を有する。いくつかの好ましい実施の形態において、1550nmでの減衰が0.167dB/km以下である。いくつかの好ましい実施の形態において、ファイバは多モードファイバであり、コアは少なくとも70質量%のSiO2を有してなる。他の好ましい実施の形態において、コアは少なくとも80質量%のSiO2を有してなる。さらに他の好ましい実施の形態において、コアは少なくとも90質量%のSiO2を有してなる。光ファイバが単一モードファイバであり、コアが少なくとも90質量%のSiO2を有してなることが好ましい。コアはさらに、3000ppm未満のピーク濃度で塩素を含むことが好ましい。アルカリ金属酸化物のピーク濃度が700ppm未満であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の平均濃度が350ppm未満であることが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は500ppm未満である、すなわち、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は20から500ppmである。好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物はK2Oである。第一組の好ましい実施の形態において、第1のドーパントはゲルマニアであり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は30から300ppm、好ましくは30から150ppmである。コアはさらに、3000ppm未満のピーク濃度で塩素を含むことが好ましい。コアは、0.2質量%未満のフッ素の最高濃度を有することが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態において、クラッドは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、100ppm未満のピーク濃度で含む。第2組の好ましい実施の形態において、第1のドーパントはフッ素であり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は200から500ppmであり、いくつかの好ましい実施の形態において、100から300ppmである。コアが0.02質量%より大きいフッ素濃度を有することが好ましく、コアが中心線で0.02質量%より大きいフッ素濃度を有することがさらにより好ましい。コアが0.15質量%より大きいフッ素濃度を有することが好ましい。コアが0.5から1.5質量%のフッ素の最高濃度を有することが好ましい。第2組の特に好ましい実施の形態において、コアは実質的にゲルマニアを含まず、ゲルマニアを全く含まないことが好ましい。クラッドは、少なくとも1.0質量%のフッ素の最低濃度を有することが好ましい。好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物はK2Oである。いくつかの実施の形態において、コアはさらに、500ppm未満のピーク濃度で塩素を含む。クラッドが、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、100ppm未満のピーク濃度で含むことが好ましい。
【0015】
中実ガラスから実質的になる中心部分が、ガラススートからなる外側部分により取り囲まれてなる光ファイバ・プリフォームであって、中心部分が、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含有するものであるプリフォームがここに開示されている。アルカリ金属酸化物がK2OおよびRb2Oからなる群より選択されることが好ましい。中心部分がGeO2も含有することが好ましい。外側部分がGeO2を含むことが好ましい。中心部分が20ppb未満のOHを含有することが好ましい。
【0016】
本発明のさらに別の広い実施の形態において、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第1のガラスロッドを形成し、この第1のガラスロッドを光ファイバ・プリフォームの中心孔中に挿入して、複合プリフォーム・アセンブリを形成する各工程を有してなる方法が開示される。ある好ましい実施の形態において、ガラスロッドはGeO2を含む。光ファイバ・プリフォームがGeO2を含むことが好ましい。製造の様々な時点で、光ファイバ・プリフォームがガラススートを含むことが好ましい。
【0017】
本発明のさらに別の広い態様は、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む光ファイバ・プリフォームを提供し、この光ファイバ・プリフォームを光ファイバに線引きする各工程を有してなり、線引き速度および線引き張力が、光ファイバ中のアルカリ金属酸化物の濃度を調節するように選択され、その濃度が半径により異なる方法を含む。
【0018】
本発明の別の広い態様は、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなる光ファイバ・プリフォームを提供し、この光ファイバ・プリフォームを、半径の関数として光ファイバ・プリフォーム中のアルカリ金属酸化物の所定の濃度を得るのに効果的な温度で効果的な時間に亘り熱処理する各工程を有してなる方法を提供する。この方法が、光ファイバ・プリフォームを少なくとも約6時間に亘り熱処理する工程を含むことが好ましい。光ファイバ・プリフォームを少なくとも1000℃の温度で熱処理することが好ましい。光ファイバ・プリフォームのクラッドガラスがFを含むことが好ましい。
【0019】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、外寸(d1)を有し、K2Oからなるアルカリ金属酸化物がドープされたガラス物品を提供し、このガラス物品に追加のガラスを加えて、最終的な外寸(d2)を有する最終的な固結線引きプリフォームを形成する各工程を有してなり、外寸(d1)が最終的な外寸(d2)の0.06倍以下であり、それによって、最終的な固結線引きプリフォームの中心近くでアルカリ金属酸化物を濃縮するものである方法を提供する。
【0020】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させて、シリカ含有スート管を形成し、最初にこのシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、次いでさらにシリカ含有スート管をフッ素含有ガスで乾燥させ、シリカ含有スート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品に、K2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間物品をコラプスしてアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッド上に追加のシリカ含有ガラスを加える各工程を有してなる方法を提供する。
【0021】
さらに広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させてシリカ含有スート管を形成し、このシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、このシリカ含有スート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、シリカスート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間ガラス物品に、K2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間ガラス物品をコラプスしてアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッドをシリカ含有スート管中に挿入し、アルカリドープ・ロッドおよびシリカ含有スート管からコアロッドを形成し、このコアロッドにフッ素ドープ・シリカを加え、フッ素ドープ・シリカを固結させて、最終的な線引きプリフォームを形成する各工程を有してなる方法を提供する。
【0022】
さらに、別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、ゲルマニウムドープ・シリカスートを回転しているマンドレル上に堆積させてゲルマニウムドープ・シリカスート管を形成し、ゲルマニウムドープ・シリカスート管を塩素含有ガスで乾燥させ、シリカスート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、ゲルマニウムドープ・シリカスート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品にK2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間物品からアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッドをシリカ含有スート管中に挿入する各工程を有してなり、シリカ含有スート管が、ゲルマニウムドープ・シリカスートの内側環状部分および実質的にドープされていないシリカスートの外側環状部分を含むものである方法を提供する。
【0023】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させてシリカ含有スート管を形成し、このシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、シリカ含有スート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、シリカ含有スート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品にK2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープして、アルカリ金属酸化物が約20〜1000ppmの量でドープされたアルカリドープ製品を形成する各工程を有してなる方法を提供する。
【0024】
別の広い態様によれば、本発明は、フレーム、このフレームに対して回転させるために取り付けられたガラス管、ガラス管に連結されたドーパントの供給源、およびガラス管に近接して取り付けられた誘電加熱器を有してなる拡散ドーピング装置を提供する。
【0025】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含むここに記載した本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0026】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、本発明の実施の形態を表し、請求項に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを意図したものであるのが理解されよう。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれたものであり、この明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施の形態を図示し、前記説明と共に、本発明の原理および動作を説明するように働く。適切な場合、同一の特徴は同じ番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】光ファイバの半径により異なるアルカリ金属酸化物の濃度を有するステップ型光ファイバの屈折率プロファイルの一部のグラフ
【図2】多数のコア・セグメントを有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較される光ファイバの屈折率プロファイルのグラフ
【図3】多数のコア・セグメントを有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較される別の光ファイバの屈折率プロファイルのグラフ
【図4】純粋なシリカの屈折率より小さい屈折率を持つクラッド領域を有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較されるステップ型光ファイバの屈折率プロファイルの一部のグラフ
【図5】ロッドを横切る距離の関数としてのFおよびK2Oの濃度を示す、FおよびK2Oの両方でドープされたシリカガラスロッドの散乱損失をプロットしたグラフ
【図6】図5の濃度のプロットと、関数[K]*[F]3を表す曲線を含むグラフ
【図7】異なるアルカリ金属酸化物ドーパント、Cs2OとRb2O、およびFを含有する2つのガラスコアロッド、K2Oのみを含有する1つのガラスコアロッドの散乱をプロットしたグラフ
【図8】図7からのCs2O、Rb2OおよびFの濃度をプロットしたグラフ
【図9】光ファイバ・プリフォームを横切る半径の関数としての、2つの異なる拡散方法から生じたK2Oの濃度を示すグラフ
【図10】光ファイバを所定の張力と線引き速度で線引きした後の3つの光ファイバの一部分に亘るK2Oの濃度を示すグラフ
【図11】本発明によるアルカリ金属酸化物ドープ光ファイバを製造する方法を示す流れ図
【図12】ガラス管をアルカリ金属酸化物でドープする方法を説明する概略図
【図13】ガラスロッドを線引きするためのプロセスを示す概略図
【図14】アルカリ金属酸化物ドープ・ガラスを多孔質スート光ファイバ・プリフォームの中心孔中に挿入することによって、光ファイバ・プリフォームをアルカリ金属酸化物でドープする方法を説明する概略図
【図15】ガラスコア・ロッドの直径に亘るK2OおよびGeO2の濃度を示すグラフ
【図16】ガラススートを堆積する方法を示す概略図
【図17】本発明によりK2Oをドープしたガラスロッドに関する半径の関数としてのK2Oの濃度をプロットしたグラフ
【図18】半径の関数としての、本発明によりシリカガラス・ロッドに亘り拡散したNa2O濃度をプロットしたグラフ
【図19】本発明により製造した光ファイバ・プリフォームに亘るK2O、FおよびClの濃度を示すグラフ
【図20】K2Oドープ・コアおよびFドープ・クラッドを有する単一モード光ファイバに関するK2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図21】GeO2がドープされたコアを有する単一モード光ファイバに関するK2O、FおよびGeO2の濃度を示すグラフ
【図22】光ファイバ・プリフォームのコアロッド中のRb2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図23】光ファイバ・プリフォームのコアロッド中のCs2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図24】ここに開示された方法により製造した光ファイバの半径の関数としての濃度分布および相対屈折率を示すグラフ
【図25】本発明のある態様により光ファイバを製造する好ましい方法の流れ図
【図26】本発明のある態様により光ファイバを製造する別の好ましい方法の流れ図
【図27】本発明によるアルカリドープファイバの相対屈折率プロファイルを示すグラフ
【図28】本発明によるアルカリドープファイバの相対屈折率プロファイルを示すグラフ
【図29】誘電加熱源を示す、本発明のある態様による旋盤装置の斜視図
【図30】図29の誘電加熱源の側面断面図
【図31】本発明のある態様によるゲルマニアドープ・光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
【図32】ファイバの半径に対する様々なドーパントの質量%をプロットしたグラフ
【図33】様々なファイバの実施の形態に関するファイバの半径に対するK2Oの質量%をプロットしたグラフ
【図34】本発明のある態様による別の光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
【図35】本発明による別の光ファイバに関するファイバの半径に対する様々なドーパントの質量%をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、低損失光ファイバおよびその製造方法に関する。本発明は、より詳しくは、アルカリ金属酸化物ドーパントがドープされた光ファイバおよびその光ファイバに関連するプリフォームを製造する方法に関する。ここに用いる以下の用語は、以下の意味を有する:
− モードフィールド径は、単一モード光ファイバの端面に亘る光出力の尺度であり、
【数1】
【0029】
と表される。ここで、2ω0はモードフィールド径であり(したがって、ω0はモードフィールド半径である)、λは光の平均波長であり、Φは放射パターンの中心に関する角度であり、積分は、0°から90°まで行われることが好ましい。モードフィールド径は、例えば、試験手法ANSI/TIA/EIA−455−191−A−2001にしたがって測定してもよい。
【0030】
− 実効断面積は、
【数2】
【0031】
である。ここで、積分範囲は0から∞までであり、Eは伝搬光に関連する電場である。
【0032】
− 相対屈折率Δは、式Δi=(ni2−nc2)/2ni2により定義される。ここで、niは屈折率プロファイル・セグメントiの最大屈折率であり、ncは、通常クラッド層の最小屈折率とみなされる参照領域の屈折率である。相対屈折率は一般に、パーセントで表され、ここでは%Δにより表示される。別記しない限り、%Δは、クラッドの最小屈折率に対するコアの最大相対屈折率を表す。
【0033】
− 屈折率プロファイルという用語は、光ファイバの選択された部分、典型的にコアに亘る%Δと半径との間の関係である。
【0034】
− アルファプロファイルは、式:
【数3】
【0035】
にしたがうコアの屈折率プロファイルを称する。ここで、rはコアの半径であり、aはプロファイルの最後の地点であり、rはプロファイルの最初の地点でゼロに選択され、n0は関心のあるコア領域の最大屈折率であり、αはコアプロファイルの形状を定義する指数である。他の一般のコア屈折率プロファイル形状としては、ステップ型、台形型、および丸まったステップ型が挙げられる。ここで、丸まりは、急激な屈折率変化の領域におけるドーパント拡散によるものである。
【0036】
− コアは、クラッドに対して一般に高くなった屈折率を有する光ファイバの部分を称し、よって、伝送される光パワーは主にコアを通って伝搬する。コアは、1つ以上のセグメントからなっていてもよい。個々のコア・セグメントは、純粋なシリカより大きい、純粋なシリカと等しい、または純粋なシリカよりも小さい屈折率を有していてよい。
【0037】
− クラッド、またはクラッド・セグメントは、コア領域を取り囲む光ファイバの部分を称し、相対屈折率の絶対的大きさが0.03%未満であり、光ファイバのシリカベースの部分の最も外側の半径まで、すなわち、クラッドの最も外側の半径まで、0.03%未満を維持するときに生じると定義される。半径Rコアで、コアが終わり、クラッドが始まり、半径Rクラッドでクラッドが終わる。ここで、Rクラッド>Rコアである。
【0038】
− 「ppm」は、特別に別記しない限り、質量の百万分の一、または「質量ppm」を意味し、質量パーセント(wt%)の測定値は、10,000倍することによって、ppmに変換できる。
【0039】
光ファイバのコアとクラッドの両方がアルカリ金属酸化物ドーパントを含有することが好ましい。アルカリ金属酸化物は、Kの酸化物であることが好ましい。アルカリ金属酸化物はK2Oであることがより好ましい。単一モード光ファイバ中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度が、伝搬する光のモードフィールドのピーク出力レベルと実質的に同時に生じることが有益であり、したがって、好ましい。アルカリ金属酸化物は、光ファイバのコア中でピーク濃度を有することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径に亘り半径方向に変動することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は一般に、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0040】
光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度は、好ましくは約0.001質量%より多く約1質量%未満であり、より好ましくは約0.001質量%より多く約0.4質量%未満であり、最も好ましくは約0.001質量%より多く約0.15質量%未満であり、さらにより好ましくは約0.005質量%より多く約0.15質量%未満である。光ファイバのクラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、コア中のアルカリ金属酸化物のピーク量よりも少ないことが好ましい。クラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、好ましくは約0.0005質量%より多いことが好ましい。クラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量が約0.001質量%より多いことがより好ましい。モードフィールド半径に等しい半径での単一モード光ファイバを構成するアルカリ金属酸化物の濃度は、いくつかの実施の形態において、少なくとも約0.0001質量%、より好ましくは、約0.0001質量%から約0.0005質量%である。多モード光ファイバについて、光ファイバのコアとクラッドとの界面でのアルカリ金属酸化物の量は、好ましくは少なくとも約0.001質量%、より好ましくは約0.001質量%から約0.005質量%である。コア、またはクラッド、もしくはコアとクラッドの両方が、アルカリ金属酸化物ドーパントおよび例えば、GeO2またはFなどの一種類以上のガラス改質ドーパントを有していてもよい。好ましい実施の形態において、多モードファイバは、勾配屈折率プロファイルを持つコアを有してなる。
【0041】
図1は、1つのコア・セグメントを単一モード光ファイバの典型的な屈折率プロファイル10、並びに本発明を実施することによって達成されるであろう典型的なアルカリ金属酸化物の濃度プロファイル12(半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度)を示している。この光ファイバは、中央のコア・セグメント14およびクラッド・セグメント16を含む。アルカリ金属酸化物の濃度が半径の関数として変動することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。光ファイバのコア・セグメント14は、図1に示すようなステップ型形状を有していても、またはコア・セグメント14は、丸まった、アルファまたは三角形の形状を有していてもよい。
【0042】
図2は、多数のコア・セグメント(セグメント化コア構造)を有する光ファイバに関する典型的な屈折率プロファイル18を示し、また本発明を実施することによって達成されるであろう半径の関数としてのマルチセグメント化コア光ファイバのアルカリ金属酸化物の濃度プロファイル20も示している。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。屈折率プロファイル18は、中央コア・セグメント22、第1の環状コア・セグメント24、および第2の環状コア・セグメント26を含むことが好ましい。クラッド・セグメント28も示されている。しかしながら、本発明は、ここに記載した屈折率プロファイルに制限されるものではないことが理解されよう。コア・セグメントは、純粋なシリカの屈折率と等しいか、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を有していても、もしくはそのセグメントは、純粋なシリカの屈折率よりも小さい屈折率を有していてもよい。実例として、図2は、純粋なシリカの屈折率(純粋なシリカはゼロの%Δにより表される)よりも低下している第1の環状コア・セグメント24を示している。第1の環状コア・セグメント24は、必要に応じて、点線30により示されるように、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を有していても、または第1の環状コア・セグメント24は、純粋なシリカの屈折率と等しい屈折率を有していてもよい。図2に表された第2の環状コア・セグメント26は、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を示している。第2の環状コア・セグメント26は、必要に応じて、点線32により示されるように、純粋なシリカの屈折率よりも小さい屈折率を有していてもよい。あるいは、第2の環状コア・セグメント26を完全に除いても差し支えない。図2に示した光ファイバのコアは3つのセグメントを有するものとして表されているが、本発明による光ファイバのコアは、いくつのセグメントを有していてもよい。コア・セグメントは、ステップ型屈折率プロファイル、アルファ屈折率プロファイル、三角形屈折率プロファイル、丸まった屈折率プロファイルまたはそれらの組合せを有していてもよい。ここに開示した濃度におけるアルカリ金属酸化物では、屈折率への影響が最小であり、既存の屈折率プロファイルに影響を認められるほどに与えずに、コアの屈折率プロファイル全体に亘って、アルカリ金属酸化物を分散させることができる。このことによって、製造プロセスに多大な融通性が与えられる。それは、必要であれば、屈折率変化による光ファイバの性能特性への変化に関して過剰な懸念を持たずに、光ファイバ全体にアルカリ金属酸化物を施してもよいからである。
【0043】
図3は、別のセグメント化コア単一モード光ファイバの屈折率プロファイル34を示している。図3の屈折率プロファイルは、アルファまたは丸まった屈折率プロファイルを有する中央コア・セグメント36を含み、第1の環状コア・セグメント38およびクラッド・セグメント40も含んでいる。第1の環状コア・セグメント38は純粋なシリカと等しい屈折率を有していてもよく、または第1の環状コア・セグメント38は必要に応じて、点線42によって示されるような、純粋なシリカよりも大きい屈折率を有していてもよい。屈折率プロファイル34は、必要に応じて、第2の環状コア・セグメント44を含む。第2の環状コア・セグメント44は、丸まったプロファイルを有するものとして図3に示されている。しかしながら、例えば、正方形、三角形またはアルファなどの他の形状も可能であることを理解すべきである。図3は、本発明を実施することによって達成されるであろう半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の典型的な分布45も示している。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度はほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0044】
図4は、クラッドガラスに適切な屈折率低下ドーパントをドープすることにより、クラッドガラスの屈折率を低下させることによって形成されたステップ型屈折率光ファイバの屈折率プロファイル46を示している。適切な屈折率低下ドーパントをドープは、例えば、Fである。図4の光ファイバは、コア・セグメント48およびクラッド・セグメント50を含む。コア・セグメント48は、純粋なシリカよりも大きい、純粋なシリカよりも小さい、または純粋なシリカと等しいピーク屈折率を有していてもよい。クラッド・セグメント50の屈折率は、純粋なシリカよりも小さく、もちろんコア・セグメント48よりも小さい。本発明を実施することによって達成されるであろうアルカリ金属酸化物の典型的な濃度分布52も図4に示されている。アルカリ金属酸化物の濃度が、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度はほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0045】
図1〜4は、実例の光ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の量に関するほぼガウスプロファイルを示しているが、他の半径方向に異なるアルカリ金属酸化物の濃度も可能である。例えば、アルカリ金属酸化物ドーパントの量は、半径と線形に、またはステップ型様式で変動しても差し支えない。
【0046】
ここに、アルカリ金属酸化物とFの濃度が重複している、アルカリ金属酸化物とFがドープされたシリカガラスにおける散乱損失が関係式[A]*[F]3に従うことが本出願の発明者等によって発見された。ここで、[A]はアルカリ金属酸化物の濃度(質量%)を表し、[F]はフッ素Fの濃度(質量%)を表す。すなわち、[A]*[F]3は、増加したまたは減少した散乱の領域を予測するために使用される。図5は、シリカガラス・ロッドの直径の一部分に亘る、それぞれ、K2OおよびFの濃度54,56を示している。ガラスロッドの直径の一部分に亘って測定された光散乱58も図5に示されている。大きな散乱損失を示す散乱ピーク60,62も明らかに見える。図6でも、図5に示したK2OおよびFの濃度54,56を示している。[K]が酸化カリウム(K2O)の濃度を表している、関係式[K]*[F]3も図6に示されている。[K]*[F]3は、曲線64により表されている。図5と6を比較することによって分かるように、図5の散乱ピーク60,62は、図6の関係式[K]*[F]3により表されたピーク66,68と一致する。アルカリ金属酸化物とFとが重複する領域に生じる散乱の増加は、例えば、光ファイバのモードフィールド半径内などの、伝搬光と重複が一致する光ファイバの領域にとっては特に煩わしいであろう。
【0047】
ここで、本出願の発明者等は、Cs2OまたはRb2Oと組み合わせたFの重複使用では、K2OとFの組合せにより示されたような、同じような散乱の増加とはならないようであることを発見した。図7は、3つの光ファイバのコアロッドの半径に亘る散乱を示している。コアロッドは、ガラスロッドを含む光ファイバ・プリフォームから後に線引きされるであろう光ファイバのコアガラスの部分を少なくとも含むガラスロッドを意味する。コアロッドは、必要に応じて、光ファイバのクラッドの一部分を含んでもよい。第1のコアロッドは、FとRb2Oがドープされていた。Rb2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線70により示されている。第2のコアロッドは、FとCs2Oがドープされていた。Cs2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線72により示されている。第3のコアロッドは、K2Oのみがドープされていた。K2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線74により示されている。Cs2OまたはRb2Oいずれかを含むコアロッドの散乱は、K2Oのみを含有するコアロッドにより示された散乱と等しいレベルであった。図8は、第1と第2のコアロッドに関するRb2O(75)、Cs2O(76)およびF(それぞれ、77,78)の濃度を示している。図7の散乱軸の値は、純粋なシリカにおける散乱に対して標準化されて示されている。
【0048】
本発明によるある実施の形態において、単一モード光ファイバは、約1280nmから約1340nmのゼロ分散波長λ0、約0.07ps/nm2/km未満のゼロ分散スロープS0、および1550nmで約15ps/nm/kmより大きい全分散を有することが好ましく、約15ps/nm/kmから20ps/nm/kmの全分散がより好ましい。本発明の光ファイバが約1300nm未満のカットオフ波長を有することが好ましい。本発明の光ファイバが1550nmで約80μm2より大きい実効断面積を有することが好ましい。本発明の光ファイバは、好ましくは、約3μmより大きい、より好ましくは約3μmから5μmのコア直径、および1550nmで、約9μm、より好ましくは10μmから11μmのモードフィールド径を有する。本発明にしたがってアルカリ金属酸化物を含ませることにより、減衰が、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、最も好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満である光ファイバを製造できるであろう。
【0049】
別の実施の形態において、単一モード光ファイバは、好ましくは約1330nmから1600nm、より好ましくは約1330nmから1450nmの範囲のゼロ分散波長λ0を有する。コア、またはクラッド、もしくはコアとクラッドの両方は、追加に、例えば、GeO2またはFなどの他のガラス改質ドーパントがドープされていてもよい。本発明による光ファイバは、好ましくは約0.07ps/nm2/km未満、より好ましくは約0.035ps/nm2/kmから0.07ps/nm2/kmの、ゼロ分散波長での分散スロープ、および1550nmで約6ps/nm/kmより大きい、好ましくは1550nmで約6ps/nm/kmから15ps/nm/kmの全分散を有する。本発明の光ファイバは、好ましくは約1400nm未満の、より好ましくは約1300nm未満のカットオフ波長を有する。本発明の光ファイバは、1550nmで約45μm2から75μm2の実効断面積を有することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドープ技法を用いると、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、最も好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満の減衰を示す本発明による光ファイバを製造できる。
【0050】
本発明によるさらに別の実施の形態において、単一モード光ファイバは、約1350nmから1450nmのゼロ分散波長、約0.10ps/nm2/km未満、より好ましくは約0.035ps/nm2/kmから0.10ps/nm2/kmのゼロ分散スロープ、および1550nmで約1ps/nm/kmから6ps/nm/kmの全分散を有する。この光ファイバは、約1400nm未満、好ましくは約1300nm未満のカットオフ波長を有する。本発明の光ファイバは、1550nmで約45μm2から75μm2の実効断面積を有することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドープ技法を用いると、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満の減衰を示す本発明による光ファイバを製造できる。
【0051】
さらに別の実施の形態において、光ファイバのコアはアルカリ金属酸化物を含み、この光ファイバのクラッドはアルカリ金属酸化物とFの両方を含む。アルカリ金属酸化物は、K2Oからなることが好ましい。光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、好ましくは約0.001質量%より多く約0.4質量%未満、より好ましくは約0.001質量%より多く約0.15質量%未満、最も好ましくは約0.005質量%から0.15質量%である。
【0052】
プリフォームの製造中、およびその後の光ファイバの形成中に、プリフォーム中のアルカリ金属酸化物の相対量を調節する能力は、光ファイバにおける最終的なアルカリ金属酸化物の分布、したがって、その伝搬特性にとって重要であることが、当業者により認識されるであろう。このことは、プリフォームを光ファイバに線引きする前に、時間と温度の所定のスケジュールにしたがって、プリフォームを熱処理することにより行ってもよい。ある場合において、光ファイバのコア中にアルカリ金属酸化物を維持し、アルカリ金属酸化物のクラッド中への拡散を制限することが望ましい。このことは、Fドープ・クラッドガラスにより取り囲まれた、実質的に塩素を含まない光ファイバのコア・プリフォームを形成し、光ファイバ・プリフォームを光ファイバに線引きする前に、光ファイバ・プリフォームを熱処理することによって行ってもよい。例えば、K2Oは、約1000℃から1600℃の温度範囲内で熱処理したときに、純粋なシリカガラス中よりも、固結されたFドープ・シリカガラス中において、約10倍から100倍速く拡散することが分かった。それゆえ、Fを含むクラッドを有する光ファイバのコア・プリフォームを熱処理すると、都合よく、クラッドガラス全体に亘るが、光ファイバ・プリフォームのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度と比較して非常に低い濃度で、K2Oが急速に拡散するであろう。したがって、このプリフォームから線引きされた光ファイバのコアにおいて、光ファイバの同じ領域内に共に配置された、大きさが同様のFおよびK2O両方の濃度を付随する高い散乱を避けながら、低散乱が達成されるであろう。プリフォームを、少なくとも約1000℃の温度で少なくとも6時間に亘り熱処理することが好ましい。プリフォームを少なくとも約1400℃の温度で熱処理することがより好ましい。プリフォームを少なくとも約1600℃の温度で熱処理することが最も好ましい。プリフォームを少なくとも30時間に亘り熱処理することがより好ましい。光ファイバのプリフォームのクラッドがFを含むことが好ましい。熱処理後、光ファイバのプリフォームを、従来の線引き技法によって、光ファイバに線引きしてよい。
【0053】
アルカリ金属酸化物の拡散は、線引きプロセス中に都合よく調節されるであろう。線引き条件を所定の様式で変更することによって、アルカリ金属酸化物ドーパントを、所望の濃度プロファイルでプリフォーム全体に亘って分布させてよいことが分かった。アルカリ金属酸化物ドーパントを、半径に関して比較的線形の関係で拡散させることが好ましい。前出の前線引き熱処理手法と線引き手法との比較が図9に示されている。図9は、曲線80により示された、1500℃で6時間後の光ファイバ・プリフォームの前線引き熱処理の結果としてのK2Oの半径方向の濃度、および2000℃で線引きした後の光ファイバ・プリフォームにおけるK2Oの濃度82を示している。曲線84により反映された推測された出発K2O濃度プロファイル、および曲線86により示された出発F濃度プロファイルも示されている。コアとクラッドの界面が点線88により示されている。前線引き熱処理のK2O濃度プロファイル80は、コアとクラッドの界面88で比較的大きな減少を示しているが、線引きプロセスから生じたK2O濃度プロファイル82はより線形に近いプロファイルを示しているのが明白に示されている。アルカリ金属酸化物の濃度が半径が増加すると共に減少することが好ましい。アルカリ金属酸化物ドーパントの拡散は、ガラスのドープされた温度、およびガラスがその温度に維持された時間にある程度依存するので、これらの同じ要因は、線引きプロセス中にアルカリ金属酸化物の拡散を調節する上で重要な役割を果たす。線引きプロセス中に光ファイバ・プリフォーム(およびこのプリフォームから線引きされた光ファイバ)が露出される時間と温度は、線引き速度、線引き(炉)温度および光ファイバの張力を変更することによって調節される。例えば、線引き速度を増加させると、線引き炉内に光ファイバ・プリフォームの特定の部分に関する滞留時間が減少し、それゆえ、アルカリ金属酸化物ドーパントが光ファイバ・プリフォーム、それゆえ線引きされた光ファイバに亘って拡散する距離が減少する。これにより、クラッド中に拡散するアルカリ金属酸化物が少なくなり、したがって、光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度が高くなる。これとは逆に、線引き速度を減少させると、滞留時間が増加し、したがって、アルカリ金属酸化物が光ファイバのクラッド中にさらに拡散するので、光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度が減少するであろう。同様にして、炉の温度を増加させると、アルカリ金属酸化物の拡散速度が増加し、アルカリ金属酸化物の濃度が減少するであろう。それゆえ、線引き速度および炉の温度は、拡散、それゆえ、それにより得られる光ファイバ内のアルカリ金属酸化物の分布を調節するのに効果的に用いられるであろう。光ファイバの直径に亘るアルカリ金属酸化物の濃度を変更するための線引き条件の使用が、図10に示されている。図10は、線引き後の、同じ光ファイバ・プリフォームから線引きされた3つの光ファイバの直径の一部分に亘る位置の関数としてのK2Oの濃度(90,92および94)を示している。参照番号90により示された光ファイバは、15m/sおよび200gの張力で線引きした。参照番号92により示された光ファイバは、15m/sおよび90gの張力で線引きし、参照番号94により示された光ファイバは、9m/sおよび90gの張力で線引きした。図10に示されたK2O濃度90,92,94の比較は、それぞれ、曲線92および94により示された、15m/sから9m/sへの線引き速度の減少によって、K2Oのピーク濃度が減少したことを示している。曲線92および94を曲線90と比較することにより示されるように、90gから200gへの線引き張力の増加は、曲線90により示された光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク量が約30%増加したことをより劇的に示している。K2Oは、光ファイバの中央領域から光ファイバのクラッド中へと半径方向外側に拡散したと考えられる。クラッド中のK2O濃度の増加は、図10からは直接的に明らかではないが、測定感度および光ファイバの直径全体に亘るその後の測定走査の改善により、そのような増加が示されると考えられる。
【0054】
本発明の実施の形態にしたがって、光ファイバの前駆体である適切なシリカガラス物品中にアルカリ金属酸化物を拡散させることによって、アルカリドープ光ファイバを製造する第1の方法102が図11に示されている。方法102の第1の工程104は、図11および12を参照して、図示され、説明される。光ファイバの製造に適したシリカガラス管106を、旋盤101(ガラス作業旋盤または従来の改良化学気相成長(MCVD)ガラス形成旋盤などの)内のチャック間に最初に取り付けることが好ましい。リザーバを管に火炎作業または他の様式で溶着することにより、管106の壁に2つの環状の頸状変形部112を形作ることによって、アルカリ金属供給源化合物110を収容するための好ましい環状リザーバ108を、管106の一端の近くに形成する。他のタイプのリザーバを用いてもよい。環状の頸状変形部112が、互いから約2cm離れていることが好ましい。管106は、単独でまたは組合せで、ドーパントを含んでいてもよい。そのようなドーパントの例としては、F、Al2O3、CaO、GeO2、Pまたは他の屈折率変更ドーパントが挙げられる。特に、この管は、例えば、ステップ型単一モードファイバのコアの一部分を形成するために、GeO2がドープされたSiO2を有してなっていてよい。管中にアルカリ金属酸化物を拡散させる前に、化学気相成長により追加のシリカガラスを、ガラス管106の内面に加えてもよい。そのような追加のガラスは、上述したようなドーパントを含有してもよい。しかしながら、アルカリ金属の結晶化を防ぐために、管106および管106の内部に堆積された任意の追加のガラスは、実質的に塩素を含まないことが望ましい。実質的に塩素を含まないとは、アルカリ塩化物による光学損失が避けられるほど十分に低い塩素濃度を示すことを意味する。この目的のためには、好ましくは約500質量ppm未満、より好ましくは約100質量ppm未満、最も好ましくは約50質量ppm未満の塩素含有量が望ましい。さらに、シリカガラス管106およびその内部に堆積した任意の追加のガラスは、実質的に「水」を含まないべきである。「水」とは、ヒドロキシル基OHを意味する。水は、約1383nm辺りでの吸収ピークの原因であり、その吸収ピークは、光ファイバの動作波長領域に伸びるかもしれない。このピークには、ファイバの減衰に悪影響があるかもしれない。したがって、ガラス中のOH含有量をできるだけ減少させることによって、水ピークとも称される、吸収ピークを減少させることが望ましい。ガラス管106に含まれるOHは、好ましくは約100質量ppb未満、より好ましくは約20質量ppb未満である。出発ガラス物品が、アルカリ金属酸化物ドーパントを拡散させる前に、実質的に水を含まないことを確実にするために、シリカガラス管の製造中に、従来の塩素乾燥技法を用いてもよい。しかしながら、ガラス中の塩素濃度を減少させるために、塩素の使用は最小にすべきである。多孔質スートガラス物品の場合、塩素乾燥の後、またはその代わりのいずれかで、例えば、CF4やSiF4、またはそれらの組合せなどのフッ素含有雰囲気にその物品を曝露すること(フッ素掃引)によって乾燥を行うことが好ましい。フッ素含有雰囲気への曝露(フッ素掃引)は、フッ素がガラスに高レベルでドープされるのを防ぐために、約1100℃未満の温度で行うことが好ましい。低レベルのフッ素・ドーピング、例えば、0.1から0.4質量%のフッ素が望ましい。光ファイバのコアとなるガラスの含水量は、好ましくは約100質量ppb未満、より好ましくは約20質量ppb未満である。
【0055】
図12を再度参照する。追加のガラスの堆積を含むシリカガラス管106を一度調製したら、アルカリ供給源化合物110をリザーバ108で管106中に導入し、熱源114により加熱して、管106を回転させながら蒸気を形成する。酸素またはキャリヤガスを、回転シール118を通して管106の入口116中に流入させ、アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120を加熱して、アルカリ金属酸化物を管106の内面122中への拡散を促進させる。管106には、別のガラスロッドなどの任意のプリフォーム部材がその中に挿入されないことが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120は、内面122中へのアルカリの急激な拡散を促進し、ガラスの失透を防ぐのに十分な温度まで加熱すべきである。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120は、熱源124によって、好ましくは1500℃より高く、より好ましくは約1500℃から2000℃に加熱される。熱源124は、管106の部分120の長手方向に沿って動かされることが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110は、K元素を含むことが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110が臭化物、ヨウ化物またはフッ化物であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110が、KBr、KIまたはKNO3であることが最も好ましい。管106をコラプスする前に、アルカリ金属酸化物(例えば、K2O)を、管106の内部拡散表面122から約100マイクロメートルと500マイクロメートルの間の深さ全体に亘り拡散させ、それによって、アルカリ酸化物ドープ・ガラス管を形成することが好ましい。特に、管中に拡散したアルカリ金属酸化物ドーパントの濃度(質量%)は半径方向に変動することが好ましい。図12の拡大図に示されているように、濃度が内側の半分107で最高であり、下側の半分109で低いように、ガラス物品(例えば、管106)をドープすることが好ましい。内側の半分と外側の半分との間の区分点は、管106の半径方向の厚さの半分(点線111により示される)により定義され、そこに位置している。例えば、拡散は、外側の半分109中のアルカリ・ドーパントのピーク濃度が、内側の半分107のピーク濃度の50%未満(質量%)であることが好ましい。
【0056】
拡散プロセスの後に、アルカリ金属酸化物がそこを通して失われたかもしれない内部の表面積を減少させ、かつアルカリ金属酸化物がその中に拡散したガラスの層を厚くするために、当該技術分野において公知の従来の方法により(またはここに記載した乾燥方法により)、管106をさらに加熱して、管106の部分的なコラプスを促進してもよい。拡散ドーピング工程、または管106の任意の部分的コラプスが一旦完了したら、管の拡散表面122を、シリカガラスを除去するのに適したエッチング剤で、管の拡散表面122を通して拡散したかもしれない望ましくない不純物を除去するのに十分な深さまで、必要に応じてエッチングしてもよい。例えば、HF水溶液をエッチング剤として用いてよい。例えば、CF4、SF6、NF3、C2F6またはそれらの混合物などのフッ化物ガスを使用することがより好ましい。内部の表面122から除去される材料の量は、拡散中に処理条件および任意の部分的な管のコラプスに依存するが、エッチング条件は、アルカリ金属酸化物の全拡散深さの少なくとも約5パーセントの深さまで表面122からガラスを除去することになるのに十分であることが好ましい。方法102の工程126に示されるように、エッチングが一旦完了したら、シリカガラス管106を熱源124でさらに加熱して、アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流で管106をコラプスし、アルカリ金属酸化物ドープ・中実ガラスロッド132を形成する。管106のコラプスは、適切な熱源(例えば、トーチ)による加熱などの、当該技術分野で公知の従来の方法にしたがって行われる。次いで、中実のアルカリドープ・ガラスロッド132を、アルカリ金属酸化物の供給源化合物のリザーバ108を含むガラス部分から切断する。中実のアルカリ金属酸化物ドープ・ガラス管132を、適切なエッチング剤でエッチングして、管106のコラプス中にトーチによって形成されたかもしれない水和ガラスのいくらかまたは全てを除去することが好ましい。コラプスに、乾燥熱源、例えば、誘電加熱器または抵抗加熱器、プラズマトーチ、もしくはCOなどの非水素含有燃料を使用する乾燥熱源を使用する場合、エッチング工程は必要ないであろう。ドーピングおよび/またはコラプス工程のために乾燥熱源を使用することは、管の外側の再湿潤、すなわち、外側からの管中へのOH(水)の拡散を最小にし、したがって、ファイバの減衰をさらに減少させるかもしれないと考えられる。乾燥熱源は、感知できるOH(水)を管中に誘導しないものである。
【0057】
例えば、図29は、アルカリドーピングのための拡散ドーピング旋盤装置501を示している。ここで、拡散およびコラプス中に管506を加熱するための熱源524が、管に隣接して(好ましくは取り囲んで)取り付けられた誘電加熱器である。具体的には、ガラス管506は、フレーム502に対して取り付けられ(好ましくはチャック517内で)、その中で回転させられる。キャリヤガス(O2などの)を供給源(図示せず)から供給し、入口116および回転シール118を通して管506中に流入させることが好ましい。キャリヤガスは、連結管により、またはそこへの溶着により、管506に結合された容器508内に収容されたアルカリ供給源化合物(例えば、KBr、KIまたはKNO3)の上に流される。容器とアルカリ供給源化合物は、例えば、抵抗加熱器、誘電加熱器またはトーチなどの熱源514により同時に加熱され(好ましくは800〜1000℃まで)、これにより、アルカリ蒸気がキャリヤガス中に含まれ、それによって、アルカリドーパントガスが形成される。ガラス管506は、ドーパントガスに露出されながら、誘電加熱器524により加熱されて、アルカリドーパントがガラス管506中に拡散される。拡散工程中、加熱器524は、適切なモータと駆動機構(図示せず)によって管506の長手方向に沿って動かされる。アルカリ拡散工程が一旦完了したら、ガラス管506は、熱源524により十分な熱(上述したような)の適用によってコラプスされて、アルカリドープ・ガラス管が形成される。
【0058】
誘電加熱器524(図30に一番よく示されている)は、ガラス管506(端部が断ち切られて示されている)を取り囲む環状グラファイト製サセプタ515およびサセプタを取り囲むコイル513を備えている。コイル513は、タンク回路518に電気接続されている。誘電加熱器524はタンク回路518に取り付けられ、この回路は、スライド上で移動して、加熱器524がガラス管506の表面を移動することができる。タンク回路に誘導電力が供給されたときに、加熱器524内のコイル513に電圧が印加され、渦電流がサセプタ515内に誘発され、それによって、コイル(したがって、ガラス管506)が加熱される。サセプタは、端部片520によって支持され、かつガラス管から間隔が置かれている。ガラススリーブ509もサセプタ515を取り囲み、アセンブリの物理的支持体および電気絶縁体として作用することが好ましく、よって、サセプタは、不活性ガスの流れ(矢印「I」により示されている)内に浸されるであろう。特に、サセプタ515はガラス管506を取り囲み、ガラス管とサセプタとの間の第1の空間511を形成する。同様に、ガラススリーブ509がサセプタ515を取り囲み、スリーブとサセプタとの間に第2の空間を形成する。アルゴンなどの不活性ガスが、空間511と516に通じ、そこに連結された通路519を通して供給源(図示せず)から流され、それによって、サセプタを取り囲み、それによって、その酸化を防ぐ不活性ガスが提供される。空間516に多孔質グラファイト・フェルトが充填されていることが好ましい。
【0059】
コラプスされたときに、アルカリドープ・ロッド132(管106と類似の)は、半径方向に変動し、内側半分107に相当する部分が最高のピーク濃度(質量%)のアルカリ・ドーパントを有し、外側半分109に相当する部分が最低のピーク濃度を有するような濃度のアルカリ金属酸化物を有することが好ましいことを認識すべきである。アルカリ・ドーパントのピーク濃度がロッドの中央(図17および18に示されているように)にあり、半径の半分での濃度がピーク濃度の50%未満、より好ましくは25%未満であることが最も好ましい。ロッドの最も外側の半径層171が、どのような有意のアルカリ金属酸化物ドーパントも存在せずに成形されることが最も好ましい。アルカリ・ドーパントを含まないこの最も外側の層171は、1.0mm以上の厚さであり、ロッドの外側半径の25%より大きい厚さを占めることが好ましい。アルカリ・ドーパントを含まない層をロッドに設けることによって、後の工程に塩素が存在する場合、ロッドの界面で結晶化が生じる傾向が減少することが分かった。
【0060】
さらなるプロセス工程における方法102の随意的な工程128によれば、ドープしたガラスロッド132を予備線引き炉136内で加熱し、アルカリドープ・ガラスロッドの元の直径よりも小さい直径を有する小さなガラスロッド144に線引きしてもよい。この予備線引き(redraw)プロセスが図13に示されている。ガラスハンドル130が、前出のコラプス段階から得られたアルカリドープ・ガラスロッド132に取り付けられており、このアルカリドープ・ガラスロッド132は、従来の予備線引き炉136の上にある移動式下方供給支持体134に取り付けられている。犠牲ガラスロッド138をアルカリドープ・ガラスロッド132の底部に取り付けてもよい。この犠牲ガラスロッドは、モータ駆動トラクタ140により引っぱられ、それによって、アルカリドープ・ガラスロッド132が適切な速度で線引きされる。15から23cm/分の速度が適切であることが分かった。この速度は大体は、センサ142により測定される直径に対応して制御される。線引きプロセスから得られた小さな直径のガラスロッド144の外寸(d1)は、好ましくは3mmから10mmの範囲、より好ましくは6mm未満である。コラプス工程126から得られたロッド132の直径がこの所望の範囲内にある場合、コラプス工程126から得られたロッド132をガラスロッド144として使用してもよい。小さな直径のガラスロッド144は、ファイバの線引き中にアルカリドーパントが大きく移行することを埋め合わせるために、光ファイバが線引きされたときの光ファイバのコアにおいて望ましいピークK2O濃度の約5倍から10倍のK2Oのピーク濃度を有するべきである。例えば、光ファイバのコア中のピークK2O濃度が0.4質量%であることが望ましい場合、小さな直径のガラスロッド144は、好ましくは約2質量%から4質量%のピークK2O濃度を有するべきである。特に、非常に小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッドを有することは、これによって、ロッドに存在する遷移金属不純物がファイバの中心線の極近くに濃縮され、その悪影響が最小になるので都合よい。ドープ・クラッドに加えられた多量の材料について、ファイバのピーク濃度は、小さな直径のガラスロッドにおけるピーク濃度の100分の1未満であり得ることを認識すべきである。方法102の工程146により示されるように、一旦形成されたら、この方法による小さな直径のガラスロッド144を、例えば、ガラスロッド144を光ファイバ・プリフォーム150の中心孔中に挿入してアセンブリを形成することによって、オーバークラッドする。光ファイバ・プリフォーム150は多孔質であり、図14に示したガラススートからなることが好ましい。図14において、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144は、矢印152により示されるように、多孔質のガラススート・コアプリフォーム150の中心孔148中に挿入されて、複合プリフォーム・アセンブリ155を形成する。多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、従来の方法により製造してよい。例えば、多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、標的ロッド上にスートを堆積させることによる外付け気相成長法によって製造してよい。この標的ロッドは、多孔質ガラススート・プリフォームから取り出されて、プリフォーム150の中心線を縦方向に通って延在する中心孔148が残る。多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、例えば、ゲルマニア(GeO2)などの屈折率変更ドーパントを一種類以上含んでもよい。多孔質スート光ファイバ・プリフォーム150は、コア・ガラススートのみを含んでいても、またはコア・ガラススート149およびクラッド・ガラススート143の両方を含んでもよい。このとき、コアとクラッドのガラススートの間の区分線、すなわち、クラッドに対して測定された組成の実質的な変化が、点線141として示されている。言い換えれば、プリフォームの外側から内側に移動すると、組成の第1の実質的な変化は、物理的コアの開始を表す。
【0061】
図15は、図12を参照して説明された方法102により製造された光ファイバ・プリフォームの例である。特に、ゲルマニアドープ・シリカスート管は、従来のOVD法、すなわち、ゲルマニアドープ・シリカ含有するスートを回転しているマンドレル上に堆積させて、ゲルマニアドープ・シリカスート管を形成することによって形成される。マンドレルを取り外し、次いで、ゲルマニアドープ・シリカスート管を塩素含有ガス雰囲気に露出することによって乾燥させる。次いで、乾燥したスート管をフッ素掃引(F含有ガス雰囲気への露出による)して、ほとんどの(好ましくは実質的に全ての)塩素を除去する(以下に図25を参照して詳しく説明される)。次いで、スートを固結させて、好ましくは4質量%より多くGeO2を有する、ゲルマニアドープされたガラス化シリカ含有ガラス管を形成する。必要に応じて、ガラス管を、より小さな直径の中間物品の管に予備線引きしてもよい。次いで、シリカおよびゲルマニア(GeO2)を有するガラス管(または中間物品の管)を、工程104においてアルカリ金属酸化物(例えば、K2O)でドープし。工程126でコラプスして、アルカリとゲルマニアがドープされた、大きな直径の中実のシリカガラス・コアロッドを形成する。大きな直径の中実ガラス・コアロッドを、随意的な工程128で、上述した好ましい直径(d1)を有する小さな直径のガラス・コアロッド144に予備線引きしてもよい。次いで、ゲルマニアとアルカリをドープしたシリカを有してなる小さな直径のガラス・コアロッド144を、図11の工程146に示すように、このロッドを多孔質ガラススート光ファイバ・プリフォーム150の中心孔中に挿入することによってさらにオーバークラッドして、複合光ファイバ・プリフォームを形成する。多孔質スート光ファイバ・プリフォーム150も、コアの外側部分を表すスート・プリフォーム150の内側の環状部分149のゲルマニア(GeO2)ドープ・シリカスートおよびクラッドの部分を表すスート・プリフォーム150の外側の環状部分143上の非ゲルマニアドープ・シリカスート(好ましくは実質的に未ドープのシリカスート)を有してなることが好ましい。複合光ファイバ・プリフォーム145を適切に塩素乾燥し、小さな直径のガラスロッド上で工程164において固結して、固結光ファイバ・プリフォーム(その詳細は、図25を参照して与えられる)を形成した。固結の前に、随意的なフッ素掃引を用いて、スートプリフォーム150中に存在する残留塩素を除去してもよい。フッ素掃引は、プリフォーム150を、好ましくは約90〜150分間に亘り、約1000〜1150℃の温度で塩素含有ガス(例えば、SiF4またはCF4ガスなどの)にさらすことによって行うことが好ましい。スート・プリフォーム中に存在する塩素を実質的に除去(掃引)することに加えて、フッ素掃引は、内側部分にフッ素を0.1から0.4質量%の少量ドープする。固結により、多孔質ガラススートを、ガラススートが融合する温度に加熱し、それによって、中実の透明なガラスを形成することを意味する。アルカリドープ・コアプリフォーム・ロッドをさらに予備線引きして、工程166に示すように、第2のガラスコア・ロッド物品144を形成することが好ましい。ドープガラス・ロッド物品144は、ファイバのコアに相当する直径dコアを有し、高濃度のアルカリドーパントを含む第1の部分145、およびクラッドの内側部分に相当する直径d1を有する周囲部分147を含む(図14の拡大図参照)ことが認識されるであろう。dコアは、クラッドの同じ部分がロッド物品に含まれるようにd1の0.5倍以下であることが好ましい。再度、この第2のロッド144は、シリカ含有ガラスによりオーバークラッドされ、固結されて、最終的な線引きプリフォームが形成される。オーバークラッドは、OVDまたはロッド・イン・スート・プロセス(ロッドが、シリカ含有ガラススート管中に挿入される)により提供され、固結されることが最も好ましいが、ロッドをガラススリーブ中に挿入することによって含まれ、最終的な固結された外寸(d2)を有する最終的な固結線引きプリフォームを形成してもよい。ガラス物品のロッド144の外寸(d1)は、最終的な固結線引きプリフォームの最終的な外寸(d2)の0.06倍以下(最終的な外寸(d2)の0.03倍以下がより好ましい)であり、プリフォームの中心近くにアルカリドーパント(アルカリ金属酸化物)を濃縮していることが好ましい。
【0062】
製造された固結光ファイバ・コアプリフォームは、電子マイクロプローブを使用することによって測定した。図15に示した曲線153,155は、固結プリフォームの直径に亘るGeO2およびK2Oの典型的な濃度を示している。線157および159は、小さな直径のガラスロッドと固結されたスートとの界面を示している。最終的な線引きプリフォームの固結の際に、アルカリおよびゲルマニアがドープされた光ファイバ(例えば、図1参照)を、従来の線引き装置と方法またはそうでなければここに記載されたように、工程170における固結アセンブリから線引きする。
【0063】
図16を参照して説明された代わりの方法によれば、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144を出発ロッドとして用いてもよい。その際に、追加の多孔質ガラススート162を、当該技術分野において公知のようにOVD法を用いてオーバークラッドとして堆積させて、アセンブリ160を形成する。典型的な外付け気相成長法が図16に示されている。図16に示したように、ガラスハンドル154が、これまで記載したように製造した、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144に取り付けられ、それによって得られたプリフォームの一体部分となる。ハンドル154は、後の加工工程中の堆積プロセスから得られるシリカガラス・プリフォームを支持する方法を与える。ハンドル154が取り付けられたガラスロッド144は旋盤に取り付けられる。ここで、このガラスロッドは、回転させられ、バーナ156に対して移動させられる。このバーナは、例えば、米国特許第4165223号明細書に開示されたタイプのものであってよい。燃料ガスおよび酸素、または空気が、供給源(図示せず)からバーナ156に供給される。この混合物を燃焼させて、バーナ156から発せられる火炎を生成する。シリカ前駆体のガス−蒸気混合物は、火炎中で酸化せしめられて、シリカ含有スート流158を形成する。このスート流は、ガラスロッド144に向けられる。ガス−蒸気混合物をバーナ156に送達するための適切な手段が当該技術分野においてよく知られており、そのような手段の例示のために、米国特許第3826560号、同第4148621号および同第4173305号の各明細書を参照する。バーナ156は一般に、バーナ面上にスートが蓄積するのを最小にしながら、許容できる高い敷設(laydown)速度および効率を与える条件下で動作させる。そのような条件下で、バーナ・オリフィスからのガスと反応体の流量、およびそのようなオリフィスのサイズと位置、並びにそれらの軸方向は、よく集束されたスート流がバーナ156からガラスロッド144に向かって流れるようなものである。複合スート・プリフォーム160は、ガラスロッド144を何回もバーナ156に対して行き来させて、シリカスートを含有する多くの層を積み重ねて、スート・被覆162を形成することによって形成される。平行移動動作は、回転しているガラスロッド144に沿ってバーナを往復して移動させることによって、またはバーナ156とガラスロッド144の両方の組み合わされた平行移動動作によって行うことができる。スート・被覆162は、複合プリフォーム160のコアガラスの少なくとも一部分を形成する。この部分は、実質的に純粋なシリカからなることが好ましい。スート・被覆162は、好ましくは0.35g/ccより大きい、より好ましくは約0.35g/ccから0.5g/ccの密度を有する。次いで、複合プリフォーム160は、塩素含有ガスに露出することによって乾燥させ、炉内で加熱して、複合プリフォーム160を固結させて、方法102の工程164に示した、透明な中実ガラスの固結光ファイバ・コアプリフォームを形成する。
【0064】
光ファイバ・コアプリフォームを形成するための複合プリフォームを乾燥させ固結する各工程は、米国特許第4165223号明細書の教示にしたがって行うか、またはそうでなければ、図25に関してここに記載したように行ってよい。固結工程中、複合プリフォームをフッ素掃引して、最初の乾燥プロセス中に与えられる望ましくない塩素を除去することが好ましい。この掃引は、フッ素含有ガスであるが、例えば、少量のフッ素(0.1から0.4質量%)を加える量のみに露出することを含む。次いで、透明なガラス・コアプリフォームを、前に説明し、方法102の工程166示したプロセスに類似のプロセスで予備線引きして、第2のコアロッド、すなわち、そこから線引きされる光ファイバのコアの少なくとも一部分を含むガラスロッドを形成する。第2のコアロッドは、クラッドガラスの少なくとも一部分も含んでもよい。方法102の工程168に示すように、第2のコアロッドは、ガラス管(ガラス管またはスート管のいずれか)によるスリーブ付けによって、例えば、スリーブ付けと化学的気相成長の両方による化学的気相成長法によるガラススートの堆積によって、または当該技術分野に公知の他の方法によって、追加のガラスを加えることによってさらに加工して、光ファイバに線引きすべく準備のできている完全な光ファイバ・プリフォームを形成してもよい。追加のガラスは、コアガラス、クラッドガラスまたはコアガラスとクラッドガラスの両方を含んでもよい。さらに、追加のガラスは、所望の厚さを達成するためにいくつかの追加の堆積工程を要してもよい。ここで、各工程後、スートを乾燥し、フッ素ドープし、固結し、小さな直径のロッドに予備線引きする。コアが、アルカリがドープされたシリカ(少量のフッ素を含んでもよい)から実質的になる場合、追加のガラスは、実質的に未ドープのシリカの内側半径部分、および好ましくはフラッド・ドーピングによりフッ素がダウン・ドープされたシリカ(米国特許第4629485号明細書参照)の外側半径部分(ファイバのクラッドに相当する)からなる。ドーピングは、コアとクラッドとの間の相対屈折率デルタ%が、例えば、0.2%より大きい、より好ましくは0.30%から0.40%を達成するのに十分であることが好ましい。特に、モート・シリカ(その追加のガラスはファイバのクラッドに相当する)が第2のロッドへの堆積により加えられる各追加の工程について、そのようなモート・シリカはフッ素がドープされる。モート・シリカは、最初に塩素含有ガスに露出することによって乾燥させ、次いで、60〜120分間に亘り1225℃でフッ素含有ガス(例えば、SiF4またはCF4)に露出し、次いで、好ましくはフッ素含有ガスの存在下で、7〜10mm/分で高温区域(1450へ1500℃)を通して下方に移動させることによって固結する。このプリフォームを予備線引きして、第3のロッドを形成し、適切な直径の最終プリフォームが形成されるまで、各工程、すなわち、堆積、乾燥、フッ素・ドープおよび固結を再度繰り返してもよい。クラッド中の追加のガラスの各連続層内のフッ素質量%は、応力の影響を最小にするために、最も外側のクラッドと、好ましくはほぼ同じであるか、またはより好ましくはわずかに小さい(約0.1から0.5質量%小さい)。工程168の完成した光ファイバ・プリフォームが製造された後、完成した光ファイバ線引きプリフォームを、方法102の工程170により示したように、アルカリ金属酸化物がドープされた光ファイバに線引きする。ここに記載した各予備線引き工程後、ロッドは、ロッドを重水素雰囲気に露出することによって、D2処理することが好ましい。重水素処理は、英国特許第2149392号、米国特許第4515612号および同第4504297号の各明細書に記載されている。
【0065】
図25の流れ図を参照して記載された別の方法の実施の形態302によれば、ゲルマニアおよびアルカリがドープされたステップ型屈折率単一モードファイバが形成される。方法302は、工程301においてゲルマニアがドープされたシリカ含有ガラススート管を最初に形成する各工程を含むことが好ましい。スート管は、所望の屈折率がファイバ中に達成されるように、回転しているマンドレル上にある量のゲルマニアドーパント(例えば、ステップ型屈折率ファイバについて、0.3%から0.4%)がドープされたシリカ含有スートを堆積させることによるOVDによって成形することが好ましい。それゆえ、環状のスート管は、そのマンドレルを後で取り外すことによって形成される。次いで、スート管を、プリフォームをヘリウム雰囲気中60分間に亘り1000℃で予熱することによって、乾燥工程303において乾燥させることが好ましい。次に、ゲルマニアドープ・シリカスート管を、約1000〜1150℃の温度で約60〜120分間に亘り炉内の塩素含有(例えば、Cl2)ガス雰囲気に露出することが好ましい。この雰囲気は、塩素含有ガスの体積流量がヘリウムの体積流量より小さい、ヘリウムと塩素含有ガスの組合せを有してなることが最も好ましい。塩素含有ガスの体積流量がヘリウムの体積流量の10%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましい(例えば、20SLPM(標準リットル毎分)のヘリウムおよび0.2SLPMの塩素含有ガス)。塩素乾燥工程303後、乾燥したスート管にフッ素掃引工程304を施すことが好ましい。ここで、乾燥した管は、約90〜150分間に亘り約1000〜1150℃の温度で炉内のフッ素含有雰囲気(CF4またはSiF4を有してなることが好ましい)に施されて、プリフォームはさらに乾燥される。フッ素含有雰囲気は、フッ素含有ガスおよびヘリウムなどの不活性ガスを含有することが最も好ましい。フッ素含有ガスの体積流量は、ヘリウムの体積流量より小さく、フッ素含有ガスの体積流量はヘリウムの体積流量の10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい(例えば、20SLPMのヘリウムおよび0.4SLPMのフッ素含有ガス)。工程304におけるフッ素掃引処理は、固結温度未満の温度で行われ、ここで、小さな質量パーセント(約0.1から0.4質量%)のフッ素のみが導入され、ゲルマニアドープ・シリカ管にドープされる。フッ素掃引は、スート・プリフォーム中に残存する塩素の量を最小にすることが意図されている。
【0066】
次いで、乾燥されフッ素掃引された管を、約1450から1500℃の高温区域温度および例えば、ヘリウムを有してなる不活性ガス雰囲気を有する炉内での露出(スート・プリフォームを約7mm/分の速度で下方に移動させることにより)によって工程307において固結する。これにより、ゲルマニアがドープされたシリカガラス管が製造され、この管は、次いで、工程304において図12を参照して先に説明したように、アルカリドープされる。そのようなドーピングの前に、この管を、必要に応じて、予備線引き炉内に配置し、線引きして、小さな直径のアルカリドープ管の形態にある中間物品を形成してもよい。
【0067】
アルカリドーピング後、ガラス管または中間物品を、熱源から十分な熱を供給することによって、旋盤上でコラプスして、アルカリ金属酸化物およびゲルマニアがドープされたシリカを含むガラス物品管を形成する。必要に応じて、このロッドを、工程326と329の間の工程において、予備線引き炉内で、上述したようにさらに小さな直径に予備線引きしてもよい。次に、追加のシリカ含有ガラスをアルカリドープ・ロッドに加える。例えば、アルカリおよびゲルマニアがドープされた小さな直径のロッドを、工程326において、ゲルマニアドープ・シリカスートの内側環状部分149(コアの最も外側の部分に相当する)、および好ましくは実質的に純粋な(未ドープの)シリカスートから製造された外側部分143(クラッドに相当する)を有することが好ましいスート・プリフォーム150(図14)中に挿入してもよい。このロッド・イン・スート管アセンブリを塩素乾燥し、必要に応じてフッ素掃引し、固結して、ゲルマニアドープ・スート管について上述したのと同じ様式で最終的な固結線引きプリフォーム・アセンブリを形成する。最後に、固結された線引きプリフォームから、アルカリとゲルマニアがドープされた単一モード光ファイバを線引きする。その代表的な屈折率プロファイルが図27に示されている。アルカリドープ光ファイバ310において、コア312のドーパントは、ゲルマニア、フッ素およびアルカリから実質的になり、一方で、クラッド316は未ドープのシリカまたはわずかにフッ素がドープされたシリカから実質的になる。製造されたファイバ310の最大相対屈折率デルタ(ΔMAX)は、約0.43%であり、コア312の外側の半径は約5.3μmであった。
【0068】
第1組の好ましい光ファイバの実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、コアおよびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、ここで、コアは、クラッドに対して、完全に負ではない、好ましくは正の、相対屈折率プロファイルを有している。コアがゲルマニアを有することが好ましい。
【0069】
第1組の好ましい実施の形態におけるいくつかの好ましい実施の形態において、コアは、図1および27並びに、これまで論じたような、ステップ型、丸まった形状、アルファまたは三角形を有するプロファイルなどの、様々なこれら例示のプロファイルに示したように、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントからなる。ここで、中央コア・セグメントは、純粋なシリカに対して正の屈折率Δ1(r)を有する。図27から分かるように、ファイバの相対屈折率は、クラッド中に延在する拡散尾部を含んでよく、ここで、この相対屈折率は、絶対値で0.03%未満の大きさを有する。第1組の好ましい実施の形態の他の好ましい実施の形態において、コアは、中央コア・セグメントおよび中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接した第1の環状コア・セグメントなどの多数のコア・セグメント、並びに第1の環状コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなる。ここで、中央コア・セグメントは、クラッドに対して、負ではない、好ましくは正の相対屈折率Δ1%(r)を有し、第1の環状コア・セグメントの純粋なシリカは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の相対屈折率Δ2%(r)を有する。
【0070】
第1組の好ましい実施の形態において、コアは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から300ppm、好ましくは20から200ppmである。クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満である。コアおよびクラッドの各々は、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。ここに開示された方法の1つ以上による光ファイバの製造によって、アルカリ金属酸化物を中に導入する前の、プリフォーム、またはプリフォームの一部のフッ素掃引の結果として、少量のフッ素がコア中に残留するであろう。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有してなり、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まれない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を有してなり、いくつかの好ましい実施の形態では、ここに開示した1つ以上の方法による製造の結果として、500ppmから2000ppmの塩素を有してなる。
【0071】
第1組の好ましい実施の形態において、コアは、酸化ゲルマニウムと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は、20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmである。様々な好ましい実施の形態において、コアはさらに、ピーク相対屈折率ΔMAX>0.2%を有し、他の好ましい実施の形態において、コアはさらに、0.2から0.5%のピーク相対屈折率ΔMAXを有し、さらに他の好ましい実施の形態において、コアはさらに、0.3から0.45%のピーク相対屈折率ΔMAXを有する。
【0072】
第1組の他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、ここで、コアは、純粋なシリカに対して正の屈折率Δ1(r)を有し、コアは、酸化ゲルマニウムと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.25から0.45%の、ピーク相対屈折率ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満である。光ファイバは、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有し、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を含み、いくつかの好ましい実施の形態において、500ppmから2000ppmの塩素を含む。
【0073】
第1組のさらに他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、コアは、酸化ゲルマニウムおよびK2Oを有してなり、K2Oのピーク濃度は20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.25から0.45%の、ピーク相対屈折率ΔMAXを有し、クラッド中のK2Oの最高濃度は、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満である。光ファイバは、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有し、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を含み、いくつかの好ましい実施の形態において、500ppmから2000ppmの塩素を含む。
【0074】
本発明の別の好ましい方法の実施の形態によれば、アルカリドープ・シリカコアおよびフッ素ドープ・クラッドを有する光ファイバが製造される。図26に示されるように、方法402は、工程401においてシリカスートから実質的になる管を形成する工程を含む。この管と図25の工程301からの先に説明した管との間の唯一の違いは、この管は実質的に純粋な(未ドープの)シリカスートであることが好ましいが、塩素を除去するためのフッ素掃引から少量のフッ素を含んでもよいことである。塩素乾燥、フッ素掃引、固結、アルカリ・ドーピングおよびコラプスの各工程403,405,407,404および426は、得られたコラプスされたロッドが、アルカリと、フッ素掃引から生じた少量のフッ素(約0.1から0.4質量%)のみがドープされたシリカであることを除いて、図25の方法について説明したものと同じである。ロッドは、必要に応じてエッチングしおよび/または、さらに小さな直径のアルカリドープ・ロッドに予備線引きしてもよい。
【0075】
工程429において、ロッドを、シリカ含有スート管(好ましくはこれもフッ素掃引されている)中に挿入して、ロッド・イン・スート・アセンブリを形成する。ここで、スート管は、ファイバのシリカコアの残りの部分に相当し、それを構成することが好ましい。特に、スート管は、前記ロッドと実質的に同じ加工および実質的に同じレベルのフッ素を含み、ロッドと管のそれぞれは、フッ素掃引のために少量のフッ素を含む。このロッド・イン・スート・アセンブリを、工程331について先に説明した様式で工程431において、乾燥し、好ましくは再度フッ素掃引し、固結して、固結アセンブリを形成する。次いで、この固結アセンブリを、工程466において、直径が約15mmの小さな直径のコアロッド(ケインと称されることもある)に好ましくは再度予備線引きする。次いで、オーバークラッド・シリカスートを、工程468におけるOVDにより、コア・ケイン上に堆積させることなどによって、コアケインに加える。次いで、このスートを、工程467において、乾燥し、フッ素でフラッド・ドープし(米国特許第4629485号明細書に教示されているように)、固結して、固結アセンブリに追加のフッ素ドープ・ガラスを加える。フッ素・ドーピングは、スートを、約60から120分間に亘り約1225℃の温度でフッ素含有ガス(SiF4またはCF4)に露出することによって固結炉内で行われ、その後、ドープされたスートを、炉の温度を約1450から1500℃まで上昇させ、スートのこの温度に約7から10分間に亘り下方駆動焼結炉内で露出することによって固結する。フッ素ガスは、固結の前に停止しても(ヘリウムのみを使用する)、プリフォームがヘリウムと組み合わされて固結を経ているときに流し続けてもよい。工程446,468および467をブロック472において繰り返して、追加の量のオーバークラッドを加えて、所望のコア/クラッド比を達成する。次いで、アルカリドープ・シリカコアおよびフッ素ドープ・クラッドを有する代表例のファイバを、従来の線引き装置および方法を使用して線引きする。この方法402にしたがって製造したファイバが図28に示されている。このファイバ446は、アルカリドープ・シリカを含むコア448およびフッ素ドープ・シリカのクラッド450を有する。コア448は、フッ素掃引からのわずかな質量%のフッ素を含む。
【0076】
第2組の好ましい光ファイバの実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、コアおよびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、ここで、コアは、クラッドに対して、全体が負ではない、好ましくは正の相対屈折率プロファイルを有する。コアが実質的にゲルマニアを含まないことが好ましく、コアがゲルマニアを全く含まないことがより好ましい。
【0077】
第2組の好ましい実施の形態におけるいくつかの好ましい実施の形態において、コアは、図1および、これまで論じたような、ステップ型、丸まった形状、アルファまたは三角形を有するプロファイルなどの、図1の例示のプロファイルの変更例に示したように、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントからなり、中央コア・セグメントはクラッドに対して正の屈折率Δ1(r)を有する。第2組の好ましい実施の形態の他の好ましい実施の形態において、コアは、中央コア・セグメントおよび中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接した第1の環状コア・セグメントなどの多数のコア・セグメント、並びに第1の環状コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、ここで、中央コア・セグメントは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の屈折率Δ1(r)を有し、第1の環状コア・セグメントは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の屈折率Δ2(r)を有する。
【0078】
第2組の好ましい実施の形態において、コアは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から700ppm、より好ましくは20から500ppmである。クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。光ファイバは、少なくとも0.02質量%、好ましくは0.15質量%より大きいフッ素濃度を有し、0.5から0.15質量%の最高フッ素濃度を有することが好ましい。コアは、0.1から0.4質量%のフッ素、より好ましくは0.15から0.4質量%のフッ素、ある好ましい実施の形態においては、0.2から0.3質量%のフッ素を含む。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、200ppm未満の塩素を含む。クラッドは、0.5質量%より多いフッ素、好ましくは1質量%より多いフッ素を含み、ある好ましい実施の形態においては、1から2質量%のフッ素を含む。
【0079】
第2組のある好ましい実施の形態において、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から700ppm、より好ましくは20から500ppm、さらにより好ましくは100から500ppmである。このとき、コアは、0.2%より大きいピーク相対屈折率Δ%(r)(クラッドに対して)を有し、他の好ましい実施の形態においては、コアはさらに、0.2から0.5%のピーク相対屈折率ΔMAXを有し、さらに他の好ましい実施の形態においては、コアは0.3から0.4%のピーク相対屈折率ΔMAXを有する。クラッドは、少なくとも0.02質量%のフッ素、好ましくは0.15質量%より多いフッ素を含み、0.5から1.5質量%の最大フッ素濃度を有する。
【0080】
第2組の他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率を有し、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から500ppm、より好ましくは100から400ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、200ppm未満の塩素を含む。
【0081】
第2組のさらに他の実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率Δクラッド(r)を有し、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が100から400ppm、好ましくは200から300ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.3から0.5%の、より好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素、さらにより好ましくは200ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、50ppm未満の塩素を含む。
【0082】
第2組のさらに他の実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、クラッドに対して正の屈折率プロファイルを、純粋なシリカに対して負の屈折率プロファイルを有する1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率プロファイルを有し、コアはフッ素と酸化カリウムを有してなり、酸化カリウムのピーク濃度が100から400ppm、好ましくは200から300ppmであり、コアはさらに、0.2から0.4%の、好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中の酸化カリウムの最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素、さらにより好ましくは200ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、50ppm未満の塩素を含む。
【0083】
第3組の好ましい実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、ファイバは、コアの中央領域に実質的に制限された不純物を含む。この光ファイバは、0.20dB/km未満、好ましくは0.19dB/km未満、より好ましくは0.185dB/km未満、さらにより好ましくは0.180dB/km未満の、1550nmでの減衰を有する。コアは、約100質量ppb未満の-OHを含むことが好ましい。不純物は、中央領域の外側に位置するファイバ中の任意の不純物濃度よりも少なくとも20%大きい、中央領域の内部のピーク不純物濃度を有することが好ましく、ある実施の形態においては、中央領域の外側に位置するファイバ中の不純物濃度はゼロである。不純物は、遷移金属、結晶化アルカリ化合物、および吸蔵物、並びにそれらの組合せからなる群より選択される不純物であって差し支えない。
【0084】
第3組のいくつかの実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、コアはさらに、ピーク遷移金属濃度で遷移金属を有してなる中央領域を含み、中央領域の外部のファイバは、中央領域の内部のピーク遷移金属濃度の20%未満の最高遷移金属濃度を有する。様々な実施の形態において、中央領域の外側の最高遷移金属濃度はゼロである。中央領域は、中心線から5μm未満の半径まで延在することが好ましい。遷移金属の濃度は、5μmより大きい半径の全てで、約0.01モル%未満であることが好ましい。ある実施の形態において、中央領域の内部の遷移金属のピーク濃度は約0.1モル%よりも大きい。
【0085】
第3組の他の実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、この光ファイバは、中心線と5μm未満の半径の間で約0.1モル%より大きいピーク濃度を有する遷移金属を含み、遷移金属の濃度は5μmより大きい半径の全てで、約0.01モル%未満である。
【0086】
ここに開示された実施の形態の全てにおいて、光ファイバは、クラッドの最も外側の直径を取り囲みかつ直接接触した一次被覆、および一次被覆を取り囲みかつ直接接触した二次被覆を有してなることが好ましい。
【0087】
ここに開示された光ファイバのいくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバはさらに、その外面に最も外側の気密被覆を有してなる。この外部の気密被覆は、二次被覆を取り囲みかつ直接接触していることが好ましい。ある好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、ゲルマニアとK2Oがドープされたコア、コアを取り囲みかつ直接接触したクラッド、クラッドを取り囲みかつ直接接触した一次被覆、一次被覆を取り囲みかつ直接接触した二次被覆、および二次被覆を取り囲みかつ直接接触した気密被覆を有してなる。米国特許第5152817号明細書には、気密被覆された光ファイバを製造するための方法および装置が記載されている。
【実施例】
【0088】
参考例1
図11を参照して先に説明した方法にしたがって、K2Oドープ・ガラスコア・ロッドを形成した。図17に示したように、ガラスコア・ロッドは、ガウス曲線に類似の半径の関数としてのK2O濃度164を有した。曲線166は、純粋なシリカに関するガラスロッドの相対屈折率を示している。K2O拡散のための出発管は純粋な(未ドープの)シリカであった。コア・ロッドは、ロッドの中心線168辺りで約1質量%の最大値を持つK2O濃度164を有した。ロッドの外側部分に相当する部分171は、アルカリが実質的にドープされていないことが好ましい。特に、ドーピングは、ロッドの外側半分がアルカリの最低濃度を有し、内側半分が最高濃度を有するようなものである。より詳しくは、外側半分のアルカリドーパントのピーク濃度は、内側半分のアルカリドーパントのピーク濃度の好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満である。
【0089】
参考例2
図11を参照して先に説明した方法にしたがって、Na2Oドープ・ガラスコア・ロッドを形成した。図18に示したように、ガラスコア・ロッドは、ガウス曲線に類似の半径の関数としてのNa2O濃度170を有した。曲線172は、純粋なシリカに関するガラスロッドの相対屈折率を示している。このロッドは、ロッドの中心線172辺りで約2質量%の最大値を持つNa2O濃度170を有した。
【0090】
実施例1
ここに開示し、図12に示した方法を用いて、シリカ管にK2Oをドープした。アルカリ金属供給源化合物110はKIであった。バーナ114を用いて、KIを約1100から1200℃の温度まで加熱した。アルカリ金属供給源化合物110が蒸発するまで、バーナ124を、順方向では約220mm/分の速度で、反対方向では約400mm/分の速度で、管106に沿って移動させた。リザーバ108を管106から切断し、管106をコラプスして第1のガラスロッドを形成した。第1のガラスロッドを、13時間に亘り49%のHF中でエッチングした。次いで、第1のガラスロッドを旋盤に配置し、シリカガラススートを従来の外付け気相成長法で第1のガラスロッド上に堆積させて、第1の複合ガラス物品を形成した。第1のガラス物品を、従来の固結ドーピングによって、固結させ、乾燥させ、Fドープし、次いで、線引きして第2のガラスロッドを形成した。第2のガラスロッドを、ロッドの直径に亘りマイクロプローブで測定した。図19は、第2のガラスロッドの直径に亘る、K2O(曲線176)、Cl(曲線178)およびF(曲線180)の濃度を示している。第2のガラスロッドを旋盤に配置し、追加のシリカスートを第2のガラスロッド上に堆積させて、第2の複合ガラス物品を形成した。第2のガラス物品を、従来の方法によって、固結し、乾燥させ、Fドープし、次いで、第3のガラスロッドを形成した。第3のガラスロッドを旋盤に配置し、従来の外付け気相成長法でシリカスートを第3のガラスロッド上に堆積させて、第4の複合ガラス物品を形成した。第4のガラス物品を、固結中に、固結し、Clガスで乾燥させ、Fドープして、光ファイバに線引きするための準備ができている光ファイバ・プリフォーム(線引きプリフォーム)を形成した。この光ファイバ線引きプリフォームを、70gのファイバ張力で7m/sで光ファイバに線引きした。この光ファイバは、1150nmのカットオフ波長(2メートル長のファイバで測定して)、および1550nmでの0.17dB/kmの減衰を有した。光ファイバのマイクロプローブ分析を行った。半径の関数としての光ファイバ中のドーパント濃度が図20に示されている。ここで、曲線182はK2Oの濃度を質量%で表し、曲線184はFの濃度を質量%で表している。
【0091】
比較例1
ガラス管にGeO2をドープすることによって、別の光ファイバを製造した。次いで、そのガラス管に、ここに記載した拡散方法によってK2Oをドープし、コラプスし、K2O−GeO2ドープ・ガラスロッドに線引きした。従来の外付け気相成長法でロッドにガラススートを堆積させることによってオーバークラッドし、次いで、従来のように固結して、光ファイバ線引きプリフォームを形成した。固結プロセス中に、オーバークラッドしたスートにFをドープした。線引きプリフォームを、コアに関するピーク相対屈折率%Δが約0.75%のステップ型屈折率のコアを有する単一モード光ファイバに線引きした。光ファイバのマイクロプローブ分析を行った。半径の関数としての光ファイバ中のドーパント濃度のプロットが図21に示されている。ここで、曲線186はK2Oの濃度を質量%で表し、曲線188はFの濃度を質量%で表し、曲線190はGeO2の濃度を質量%で表している。
【0092】
参考例3
本発明にしたがって、GeO2を含有するSiO2ガラス管にK2Oをドープした。この管を、往復運動しているH2/O2バーナの火炎により加熱することによってコラプスし、約15mmから17mmの直径を有する大きな直径の中実のガラスロッドを形成した。このバーナの火炎は、約1.5cm/分から2cm/分の速度で往復運動していた。火炎の温度は、約2150℃から2200℃の間であった。大きな直径のガラスロッドの外側を、49%のHF溶液中で約8時間に亘りエッチングして、ロッドの表面にあった不純物を除去した。大きな直径のガラスロッド中のK2Oのピーク量は、約1.5質量%から2質量%であった。大きな直径のガラスロッドは、純粋なシリカに対して、約0.35%から0.4%の相対屈折率を有した。次いで、大きな直径のガラスロッドを従来の線引き方法によって線引きして、約6mmの直径を有する小さな直径のガラスロッドを得た。この小さな直径のガラスロッドを多数のセクションに切断した。ガラススートを標的またはベイト・ロッド上に堆積させる外付け気相成長法によって、多孔質ガラススートコア・プリフォームを製造した。この多孔質ガラススートコア・プリフォームは、コアガラススートおよびクラッドガラススートの少なくとも一部分を含んでいた。多孔質スート・プリフォームが一旦形成されたら、標的ロッドを取り外し、プリフォームの中心線に沿って孔を残した。K2OおよびGeO2を有してなる小さな直径のガラスロッドをこの多孔質ガラススート・プリフォームの中心孔中に挿入して、第1の複合プリフォームを形成した。次いで、第1の複合プリフォームを従来の固結炉内で固結して、固結したコア・プリフォームを形成した。固結したコア・プリフォームを従来の予備線引き炉内で線引きして、第2のガラスコアロッドを形成した。第2のガラスコアロッドを多数のセクションに切断した。第1のコアロッド・セクションをガラス形成旋盤に配置し、追加のクラッド・ガラススートを第1のコアロッド上に堆積させて、第2の複合プリフォームを形成した。第2の複合プリフォームを従来の固結炉内で固結し、固結した線引きプリフォームを形成した。次いで、線引きプリフォームを従来の方法によって光ファイバに線引きして、K2OおよびGeO2がドープされたコアを有する光ファイバを形成した。残りのダイのガラスコア・ロッドの各セクションを同様の様式で加工して、線引きプリフォームを得て、これらの線引きプリフォームを光ファイバに線引きした。これらの光ファイバを、EIA/TIA FOTP−78によるスペクトル減衰測定および光パルス反射波時間領域測定(ODTR)EIA/TIA FOTP−60の両方を使用して、光学損失(減衰)について測定した。測定結果が以下の表1に与えられている。表1において、MFDは1310nmの波長で測定した光ファイバのモードフィールド径を表し、ファイバのカットオフ波長は、EIA/TIA FOTP−80にしたがって、2メートル長のファイバについて測定したカットオフ波長である。
【表1】
【0093】
参考例4
ここに開示した方法にしたがって、第1のシリカガラス管にRb2Oをドープした。管を加熱し、コラプスして、中実のガラスコアロッドを形成した。第2のシリカガラス管も、ここに開示した方法にしたがって、Cs2Oをドープした。第2のガラスロッドをさらに加熱し、コラプスして、Cs2Oがドープされた第2の中実ガラスコアロッドを形成した。Rb2Oドープ・ガラスコアロッドおよびCs2Oドープ・ガラスコアロッドの両方を、各ガラスロッドの中心線近くのガラスロッドの直径の一部分に亘って電子マイクロプローブで測定した。各ガラスロッドの直径に亘り測定したRb2OおよびCs2Oの濃度が、それぞれ、図22および図23に示されている。図22において、曲線192はガラスコアロッドの直径の一部分に亘るRb2Oの濃度を表し、曲線194はFの濃度を表している。図22において、曲線196はガラスコアロッドの直径の一部分に亘るCs2Oの濃度を表し、曲線198はFの濃度を表している。
【0094】
実施例2
前出の参考例3からのコアロッドを用いて、光ファイバを製造した。この光ファイバは、図24に示すような、屈折率プロファイルおよびK2O濃度を有していた。図24において、曲線200はコアの屈折率プロファイルを表し、曲線202は半径の関数としてのK2Oの濃度を表している。この光ファイバは、光パルス反射波領域測定(OTDR)により測定したときの1550nmで0.1827dB/kmの減衰、および1310nmでの9.52μmのモードフィールド径を有した。この光ファイバは、約1519nmのカットオフ波長、1308.2nmのゼロ分散波長、および0.088ps/nm2/kmのゼロ分散波長での分散スロープを有した。この光ファイバは、150gのファイバ張力および10m/sの線引き速度で線引きした。
【0095】
実施例3
図31は、図25により示された方法にしたがって製造された、ここに開示された第1組の好ましい光ファイバの実施の形態に属する光ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ΔMAX=0.41%、半値全幅(HHPW)が4.4μm、Rコア=7.1μm、およびクラッドは62.5μmの半径まで延在する。拡散尾部は、クラッド中に7.1μmから約22μmまで延在する。
【0096】
図32は、図31のファイバに測定した、K2O、GeO2、FおよびClの濃度プロファイルを示している。表2は図32を要約している。
【表2】
【0097】
表3は、図31および32の光ファイバの測定した性質を列記している。
【表3】
【0098】
実施例4,比較例2,3
図33は、実施例3(図31により表される)のファイバにおけるK2Oの濃度プロファイルおよびK2Oドーパントプロファイルを除いて実施例3に一般的に類似した実施例4、比較例2、3の光ファイバにおけるK2Oの濃度プロファイルを示している。表4は、実施例3、4、比較例2、3に関する、K2Oプロファイルのピーク濃度および半値全幅並びに1550nmでの対応して測定した減衰を列記している。比較例3は、最低のK2Oピーク、最低のK2Oプロファイル、および最高の減衰を有した。K2Oの存在による減衰の減少は、約20ppm未満のピークK2O濃度について、次第に減少したことが分かった。
【表4】
【0099】
参考例5
図34は、図26により示された方法にしたがって製造された、ここに開示された第2組の好ましい光ファイバの実施の形態に属する光ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ΔMAX=0.33%、半値全幅(HHPW)が4.4μm、Rコア=4.7μm、およびクラッドは62.5μmの半径まで延在する。コア中のK2Oの平均濃度は250ppmである。
【0100】
表5は、図34の光ファイバの測定した性質を列記している。
【表5】
【0101】
参考例6から10
ここに開示された第2組の好ましい実施の形態に属する追加の代表的な光ファイバを図26に示した方法にしたがって製造した。この光ファイバは、図34に類似の屈折率プロファイルを有する。コア中のK2O濃度が高い比較のための光ファイバの参考例11も製造し、測定した。
【0102】
表6は、参考例6から11に関する測定値を列記している。
【表6】
【0103】
参考例11は、1550nmで測定した高い減衰を有した。
【0104】
図35は、参考例8のK2O、F、およびClの濃度プロファイルを示している。コア中のK2Oのピーク濃度は400ppmであり、K2O濃度プロファイルの半値全幅(FWHM)は4.8μmである。
【0105】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な改変や変更を行ってもよいことが当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に入るという条件で、包含することが意図されている。
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、米国特許法第112条(e)項の下で2003年8月29日に出願された米国仮特許出願第60/498901号および2003年12月10日に出願された同第60/528639号の優先権を主張するものである。これらの出願をここに引用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、広く、アルカリ金属酸化物がドープされた光ファイバおよびその製造方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
減衰は、光ファイバの重要な制限特性である。例えば、光ファイバ損失は、光ファイバの増幅器間の制限距離を設定する上で重要な役割を果たす。このことは、例えば、そのような増幅器がかなりのシステム費用を占め、システムの信頼性の重要な要因である海底用途などの、長距離および超長距離のネットワークにおいて特に重要である。したがって、減衰をできるだけ最低のレベルまで減少させることに商業的に大きな関心が寄せられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のある広い態様は、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびそのアルカリ金属酸化物を、コア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、アルカリ金属酸化物の濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバに関する。アルカリ金属酸化物ドーパントの濃度は、光ファイバの中心線からの半径が増加すると共に減少することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドーピング技法を用いて、減衰が、1310nmで約0.30dB/km未満、1550nmで約0.18dB/km未満、好ましくは、1550nmで約0.17dB/km未満、より好ましくは、1550nmで約0.16dB/km未満である光ファイバを製造することができる。
【0005】
光ファイバのコアとクラッドの両方がアルカリ金属酸化物ドーパントを含有することが好ましい。光ファイバのクラッドガラスはフッ素(F)を含んでよい。光ファイバは、少なくとも1つのコア・セグメントを有し、いくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバは多数のコア・セグメントを有してなる。光ファイバのモード・フィールド半径に等しい半径でのアルカリ金属酸化物の濃度が少なくとも約0.001質量%であることが好ましい。
【0006】
本発明は、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含むコアを有する光ファイバであって、コアの含有するOHが20ppb未満である光ファイバを提案する。
【0007】
本発明の実施の形態の参考例によれば、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびそのアルカリ金属酸化物を、コア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、アルカリ金属酸化物の濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバが示される。
【0008】
本発明の実施の形態のさらに別の参考例によれば、Rb2Oを約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア;およびRb2Oをコア中のピーク濃度より少ないが約0.0005質量%より多いピーク濃度で含むクラッドを有してなる光ファイバであって、Rb2Oの濃度が光ファイバの半径により異なる光ファイバが示される。
【0009】
本発明の別の広い態様によれば、GeO2と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを含むコアを有してなる光ファイバであって、光ファイバの屈折率が、約1550nmで約1ps/nm/kmより大きい全分散、および1550nmで約0.10ps/nm2/km未満の分散スロープを与えるように選択されている光ファイバが提供される。光ファイバが約1550nmで約6ps/nm/kmより大きい全分散を有することが好ましい。光ファイバの減衰は、好ましくは1550nmで約0.18dB/km未満、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満である。光ファイバが少なくとも10m/sの線引き速度で線引きされることが好ましい。
【0010】
本発明の別の態様によれば、ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを、20から1000ppmの間のピーク濃度で含むシリカベースのコア;およびコアを取り囲み、コアに直接隣接したシリカベースのクラッドを有してなる光ファイバであって、1550nmでの減衰が0.185dB/km未満、好ましくは0.18dB/km未満、より好ましくは0.17dB/km未満である光ファイバがここに開示される。いくつかの好ましい実施の形態において、1550nmでの減衰が0.167dB/km以下である。好ましい実施の形態において、コア中のアルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径により減少する。コア中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度は、約0.002質量%より大きく、約0.07質量%未満であることが好ましい。好ましい実施の形態において、光ファイバのモード・フィールド半径に等しい半径でのアルカリ金属酸化物の濃度は、少なくとも約0.0001質量%である。いくつかの実施の形態において、コアはGeO2を含み、他の実施の形態においては、コアはGeO2を含まない。いくつかの実施の形態において、コアは1つのセグメントを有してなる。他の実施の形態においては、コアは複数のセグメントを有してなる。いくつかの好ましい実施の形態において、特に、コアがゲルマニアを含まないある実施の形態において、クラッドはFを含む。好ましい実施の形態において、コア中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、約0.002質量%より多く、約0.05質量%未満である。様々な実施の形態において、光ファイバは外側の気密被覆を有し、特別な実施の形態において、第1のドーパントはゲルマニアであり、すなわち、そのファイバはゲルマニア・ドープされており、光ファイバはさらに、外側の気密被覆を有する。いくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバは単一モードファイバであり、例えば、1550nmで単一モードであり、他の好ましい実施の形態において、光ファイバは多モードファイバであり、このファイバは勾配屈折率プロファイルを有することが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態は、1550nmでの分散が1から6ps/nm−kmである非ゼロ分散シフト光ファイバであり、他の実施の形態は、1550nmでの分散が6から15ps/nm−kmである。
【0011】
本発明のさらに別の態様によれば、GeO2と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを含むコア、およびコアを取り囲むクラッドを有してなる光ファイバであって、光ファイバの屈折率プロファイルが、1550nmで約1ps/nm/kmより大きい全分散、およびゼロ分散波長で約0.10ps/nm2/km未満の分散スロープを与えるように選択されている光ファイバがここに開示されている。好ましい実施の形態において、全分散は、1550nmで約6ps/nm/kmより大きい。1550nmでの減衰が、好ましくは約0.18dB/km未満、より好ましくは約0.17dB/km未満である。
【0012】
本発明の別の広い実施の形態の参考例において、Rb2O、Cs2Oおよびそれらの混合物からなる群より選択されるアルカリ金属酸化物を、約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア、およびコアを取り囲みコアに直接隣接したクラッドを有してなる光ファイバがここに開示されている。
【0013】
本発明のさらに別の広い実施の形態の参考例において、Rb2Oを約0.001質量%より多く約1質量%未満のピーク濃度で含むコア、およびコアを取り囲みコアに直接隣接したクラッドを有してなる光ファイバがここに開示されている。
【0014】
本発明の別の広い実施の形態において、ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを、20から1000ppmの間のピーク濃度で含むシリカベースのコア;およびコアを取り囲み、コアに直接隣接したシリカベースのクラッドを有してなる光ファイバであって、コアが、クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを有するものである光ファイバがここに開示されている。光ファイバは、好ましくは0.185dB/km未満、より好ましくは0.18dB/km未満、さらにより好ましくは0.17dB/km以下の1550nmでの減衰を有する。いくつかの好ましい実施の形態において、1550nmでの減衰が0.167dB/km以下である。いくつかの好ましい実施の形態において、ファイバは多モードファイバであり、コアは少なくとも70質量%のSiO2を有してなる。他の好ましい実施の形態において、コアは少なくとも80質量%のSiO2を有してなる。さらに他の好ましい実施の形態において、コアは少なくとも90質量%のSiO2を有してなる。光ファイバが単一モードファイバであり、コアが少なくとも90質量%のSiO2を有してなることが好ましい。コアはさらに、3000ppm未満のピーク濃度で塩素を含むことが好ましい。アルカリ金属酸化物のピーク濃度が700ppm未満であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の平均濃度が350ppm未満であることが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は500ppm未満である、すなわち、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は20から500ppmである。好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物はK2Oである。第一組の好ましい実施の形態において、第1のドーパントはゲルマニアであり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は30から300ppm、好ましくは30から150ppmである。コアはさらに、3000ppm未満のピーク濃度で塩素を含むことが好ましい。コアは、0.2質量%未満のフッ素の最高濃度を有することが好ましい。いくつかの好ましい実施の形態において、クラッドは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、100ppm未満のピーク濃度で含む。第2組の好ましい実施の形態において、第1のドーパントはフッ素であり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は200から500ppmであり、いくつかの好ましい実施の形態において、100から300ppmである。コアが0.02質量%より大きいフッ素濃度を有することが好ましく、コアが中心線で0.02質量%より大きいフッ素濃度を有することがさらにより好ましい。コアが0.15質量%より大きいフッ素濃度を有することが好ましい。コアが0.5から1.5質量%のフッ素の最高濃度を有することが好ましい。第2組の特に好ましい実施の形態において、コアは実質的にゲルマニアを含まず、ゲルマニアを全く含まないことが好ましい。クラッドは、少なくとも1.0質量%のフッ素の最低濃度を有することが好ましい。好ましい実施の形態において、アルカリ金属酸化物はK2Oである。いくつかの実施の形態において、コアはさらに、500ppm未満のピーク濃度で塩素を含む。クラッドが、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を、100ppm未満のピーク濃度で含むことが好ましい。
【0015】
中実ガラスから実質的になる中心部分が、ガラススートからなる外側部分により取り囲まれてなる光ファイバ・プリフォームであって、中心部分が、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含有するものであるプリフォームがここに開示されている。アルカリ金属酸化物がK2OおよびRb2Oからなる群より選択されることが好ましい。中心部分がGeO2も含有することが好ましい。外側部分がGeO2を含むことが好ましい。中心部分が20ppb未満のOHを含有することが好ましい。
【0016】
本発明のさらに別の広い実施の形態において、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第1のガラスロッドを形成し、この第1のガラスロッドを光ファイバ・プリフォームの中心孔中に挿入して、複合プリフォーム・アセンブリを形成する各工程を有してなる方法が開示される。ある好ましい実施の形態において、ガラスロッドはGeO2を含む。光ファイバ・プリフォームがGeO2を含むことが好ましい。製造の様々な時点で、光ファイバ・プリフォームがガラススートを含むことが好ましい。
【0017】
本発明のさらに別の広い態様は、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む光ファイバ・プリフォームを提供し、この光ファイバ・プリフォームを光ファイバに線引きする各工程を有してなり、線引き速度および線引き張力が、光ファイバ中のアルカリ金属酸化物の濃度を調節するように選択され、その濃度が半径により異なる方法を含む。
【0018】
本発明の別の広い態様は、光ファイバを製造する方法であって、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなる光ファイバ・プリフォームを提供し、この光ファイバ・プリフォームを、半径の関数として光ファイバ・プリフォーム中のアルカリ金属酸化物の所定の濃度を得るのに効果的な温度で効果的な時間に亘り熱処理する各工程を有してなる方法を提供する。この方法が、光ファイバ・プリフォームを少なくとも約6時間に亘り熱処理する工程を含むことが好ましい。光ファイバ・プリフォームを少なくとも1000℃の温度で熱処理することが好ましい。光ファイバ・プリフォームのクラッドガラスがFを含むことが好ましい。
【0019】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、外寸(d1)を有し、K2Oからなるアルカリ金属酸化物がドープされたガラス物品を提供し、このガラス物品に追加のガラスを加えて、最終的な外寸(d2)を有する最終的な固結線引きプリフォームを形成する各工程を有してなり、外寸(d1)が最終的な外寸(d2)の0.06倍以下であり、それによって、最終的な固結線引きプリフォームの中心近くでアルカリ金属酸化物を濃縮するものである方法を提供する。
【0020】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させて、シリカ含有スート管を形成し、最初にこのシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、次いでさらにシリカ含有スート管をフッ素含有ガスで乾燥させ、シリカ含有スート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品に、K2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間物品をコラプスしてアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッド上に追加のシリカ含有ガラスを加える各工程を有してなる方法を提供する。
【0021】
さらに広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させてシリカ含有スート管を形成し、このシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、このシリカ含有スート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、シリカスート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間ガラス物品に、K2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間ガラス物品をコラプスしてアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッドをシリカ含有スート管中に挿入し、アルカリドープ・ロッドおよびシリカ含有スート管からコアロッドを形成し、このコアロッドにフッ素ドープ・シリカを加え、フッ素ドープ・シリカを固結させて、最終的な線引きプリフォームを形成する各工程を有してなる方法を提供する。
【0022】
さらに、別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、ゲルマニウムドープ・シリカスートを回転しているマンドレル上に堆積させてゲルマニウムドープ・シリカスート管を形成し、ゲルマニウムドープ・シリカスート管を塩素含有ガスで乾燥させ、シリカスート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、ゲルマニウムドープ・シリカスート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品にK2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープし、ガラス管または中間物品からアルカリドープ・ロッドを形成し、アルカリドープ・ロッドをシリカ含有スート管中に挿入する各工程を有してなり、シリカ含有スート管が、ゲルマニウムドープ・シリカスートの内側環状部分および実質的にドープされていないシリカスートの外側環状部分を含むものである方法を提供する。
【0023】
別の広い態様によれば、本発明は、光ファイバを製造する方法であって、シリカ含有スートを回転しているマンドレル上に堆積させてシリカ含有スート管を形成し、このシリカ含有スート管を塩素含有ガスで乾燥させ、シリカ含有スート管をフッ素含有ガスでさらに乾燥させ、シリカ含有スート管を固結させてガラス管を形成し、ガラス管またはガラス管から形成された中間物品にK2Oからなるアルカリ金属酸化物をドープして、アルカリ金属酸化物が約20〜1000ppmの量でドープされたアルカリドープ製品を形成する各工程を有してなる方法を提供する。
【0024】
別の広い態様によれば、本発明は、フレーム、このフレームに対して回転させるために取り付けられたガラス管、ガラス管に連結されたドーパントの供給源、およびガラス管に近接して取り付けられた誘電加熱器を有してなる拡散ドーピング装置を提供する。
【0025】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者には容易に明らかであるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付の図面を含むここに記載した本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0026】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、本発明の実施の形態を表し、請求項に記載された本発明の性質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを意図したものであるのが理解されよう。添付の図面は、本発明をさらに理解するために含まれたものであり、この明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、本発明の様々な実施の形態を図示し、前記説明と共に、本発明の原理および動作を説明するように働く。適切な場合、同一の特徴は同じ番号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】光ファイバの半径により異なるアルカリ金属酸化物の濃度を有するステップ型光ファイバの屈折率プロファイルの一部のグラフ
【図2】多数のコア・セグメントを有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較される光ファイバの屈折率プロファイルのグラフ
【図3】多数のコア・セグメントを有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較される別の光ファイバの屈折率プロファイルのグラフ
【図4】純粋なシリカの屈折率より小さい屈折率を持つクラッド領域を有し、ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の半径により異なる濃度と比較されるステップ型光ファイバの屈折率プロファイルの一部のグラフ
【図5】ロッドを横切る距離の関数としてのFおよびK2Oの濃度を示す、FおよびK2Oの両方でドープされたシリカガラスロッドの散乱損失をプロットしたグラフ
【図6】図5の濃度のプロットと、関数[K]*[F]3を表す曲線を含むグラフ
【図7】異なるアルカリ金属酸化物ドーパント、Cs2OとRb2O、およびFを含有する2つのガラスコアロッド、K2Oのみを含有する1つのガラスコアロッドの散乱をプロットしたグラフ
【図8】図7からのCs2O、Rb2OおよびFの濃度をプロットしたグラフ
【図9】光ファイバ・プリフォームを横切る半径の関数としての、2つの異なる拡散方法から生じたK2Oの濃度を示すグラフ
【図10】光ファイバを所定の張力と線引き速度で線引きした後の3つの光ファイバの一部分に亘るK2Oの濃度を示すグラフ
【図11】本発明によるアルカリ金属酸化物ドープ光ファイバを製造する方法を示す流れ図
【図12】ガラス管をアルカリ金属酸化物でドープする方法を説明する概略図
【図13】ガラスロッドを線引きするためのプロセスを示す概略図
【図14】アルカリ金属酸化物ドープ・ガラスを多孔質スート光ファイバ・プリフォームの中心孔中に挿入することによって、光ファイバ・プリフォームをアルカリ金属酸化物でドープする方法を説明する概略図
【図15】ガラスコア・ロッドの直径に亘るK2OおよびGeO2の濃度を示すグラフ
【図16】ガラススートを堆積する方法を示す概略図
【図17】本発明によりK2Oをドープしたガラスロッドに関する半径の関数としてのK2Oの濃度をプロットしたグラフ
【図18】半径の関数としての、本発明によりシリカガラス・ロッドに亘り拡散したNa2O濃度をプロットしたグラフ
【図19】本発明により製造した光ファイバ・プリフォームに亘るK2O、FおよびClの濃度を示すグラフ
【図20】K2Oドープ・コアおよびFドープ・クラッドを有する単一モード光ファイバに関するK2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図21】GeO2がドープされたコアを有する単一モード光ファイバに関するK2O、FおよびGeO2の濃度を示すグラフ
【図22】光ファイバ・プリフォームのコアロッド中のRb2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図23】光ファイバ・プリフォームのコアロッド中のCs2OおよびFの濃度を示すグラフ
【図24】ここに開示された方法により製造した光ファイバの半径の関数としての濃度分布および相対屈折率を示すグラフ
【図25】本発明のある態様により光ファイバを製造する好ましい方法の流れ図
【図26】本発明のある態様により光ファイバを製造する別の好ましい方法の流れ図
【図27】本発明によるアルカリドープファイバの相対屈折率プロファイルを示すグラフ
【図28】本発明によるアルカリドープファイバの相対屈折率プロファイルを示すグラフ
【図29】誘電加熱源を示す、本発明のある態様による旋盤装置の斜視図
【図30】図29の誘電加熱源の側面断面図
【図31】本発明のある態様によるゲルマニアドープ・光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
【図32】ファイバの半径に対する様々なドーパントの質量%をプロットしたグラフ
【図33】様々なファイバの実施の形態に関するファイバの半径に対するK2Oの質量%をプロットしたグラフ
【図34】本発明のある態様による別の光ファイバの屈折率プロファイルを示すグラフ
【図35】本発明による別の光ファイバに関するファイバの半径に対する様々なドーパントの質量%をプロットしたグラフ
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、低損失光ファイバおよびその製造方法に関する。本発明は、より詳しくは、アルカリ金属酸化物ドーパントがドープされた光ファイバおよびその光ファイバに関連するプリフォームを製造する方法に関する。ここに用いる以下の用語は、以下の意味を有する:
− モードフィールド径は、単一モード光ファイバの端面に亘る光出力の尺度であり、
【数1】
【0029】
と表される。ここで、2ω0はモードフィールド径であり(したがって、ω0はモードフィールド半径である)、λは光の平均波長であり、Φは放射パターンの中心に関する角度であり、積分は、0°から90°まで行われることが好ましい。モードフィールド径は、例えば、試験手法ANSI/TIA/EIA−455−191−A−2001にしたがって測定してもよい。
【0030】
− 実効断面積は、
【数2】
【0031】
である。ここで、積分範囲は0から∞までであり、Eは伝搬光に関連する電場である。
【0032】
− 相対屈折率Δは、式Δi=(ni2−nc2)/2ni2により定義される。ここで、niは屈折率プロファイル・セグメントiの最大屈折率であり、ncは、通常クラッド層の最小屈折率とみなされる参照領域の屈折率である。相対屈折率は一般に、パーセントで表され、ここでは%Δにより表示される。別記しない限り、%Δは、クラッドの最小屈折率に対するコアの最大相対屈折率を表す。
【0033】
− 屈折率プロファイルという用語は、光ファイバの選択された部分、典型的にコアに亘る%Δと半径との間の関係である。
【0034】
− アルファプロファイルは、式:
【数3】
【0035】
にしたがうコアの屈折率プロファイルを称する。ここで、rはコアの半径であり、aはプロファイルの最後の地点であり、rはプロファイルの最初の地点でゼロに選択され、n0は関心のあるコア領域の最大屈折率であり、αはコアプロファイルの形状を定義する指数である。他の一般のコア屈折率プロファイル形状としては、ステップ型、台形型、および丸まったステップ型が挙げられる。ここで、丸まりは、急激な屈折率変化の領域におけるドーパント拡散によるものである。
【0036】
− コアは、クラッドに対して一般に高くなった屈折率を有する光ファイバの部分を称し、よって、伝送される光パワーは主にコアを通って伝搬する。コアは、1つ以上のセグメントからなっていてもよい。個々のコア・セグメントは、純粋なシリカより大きい、純粋なシリカと等しい、または純粋なシリカよりも小さい屈折率を有していてよい。
【0037】
− クラッド、またはクラッド・セグメントは、コア領域を取り囲む光ファイバの部分を称し、相対屈折率の絶対的大きさが0.03%未満であり、光ファイバのシリカベースの部分の最も外側の半径まで、すなわち、クラッドの最も外側の半径まで、0.03%未満を維持するときに生じると定義される。半径Rコアで、コアが終わり、クラッドが始まり、半径Rクラッドでクラッドが終わる。ここで、Rクラッド>Rコアである。
【0038】
− 「ppm」は、特別に別記しない限り、質量の百万分の一、または「質量ppm」を意味し、質量パーセント(wt%)の測定値は、10,000倍することによって、ppmに変換できる。
【0039】
光ファイバのコアとクラッドの両方がアルカリ金属酸化物ドーパントを含有することが好ましい。アルカリ金属酸化物は、Kの酸化物であることが好ましい。アルカリ金属酸化物はK2Oであることがより好ましい。単一モード光ファイバ中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度が、伝搬する光のモードフィールドのピーク出力レベルと実質的に同時に生じることが有益であり、したがって、好ましい。アルカリ金属酸化物は、光ファイバのコア中でピーク濃度を有することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径に亘り半径方向に変動することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は一般に、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0040】
光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク濃度は、好ましくは約0.001質量%より多く約1質量%未満であり、より好ましくは約0.001質量%より多く約0.4質量%未満であり、最も好ましくは約0.001質量%より多く約0.15質量%未満であり、さらにより好ましくは約0.005質量%より多く約0.15質量%未満である。光ファイバのクラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、コア中のアルカリ金属酸化物のピーク量よりも少ないことが好ましい。クラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、好ましくは約0.0005質量%より多いことが好ましい。クラッド中のアルカリ金属酸化物のピーク量が約0.001質量%より多いことがより好ましい。モードフィールド半径に等しい半径での単一モード光ファイバを構成するアルカリ金属酸化物の濃度は、いくつかの実施の形態において、少なくとも約0.0001質量%、より好ましくは、約0.0001質量%から約0.0005質量%である。多モード光ファイバについて、光ファイバのコアとクラッドとの界面でのアルカリ金属酸化物の量は、好ましくは少なくとも約0.001質量%、より好ましくは約0.001質量%から約0.005質量%である。コア、またはクラッド、もしくはコアとクラッドの両方が、アルカリ金属酸化物ドーパントおよび例えば、GeO2またはFなどの一種類以上のガラス改質ドーパントを有していてもよい。好ましい実施の形態において、多モードファイバは、勾配屈折率プロファイルを持つコアを有してなる。
【0041】
図1は、1つのコア・セグメントを単一モード光ファイバの典型的な屈折率プロファイル10、並びに本発明を実施することによって達成されるであろう典型的なアルカリ金属酸化物の濃度プロファイル12(半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度)を示している。この光ファイバは、中央のコア・セグメント14およびクラッド・セグメント16を含む。アルカリ金属酸化物の濃度が半径の関数として変動することが好ましい。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。光ファイバのコア・セグメント14は、図1に示すようなステップ型形状を有していても、またはコア・セグメント14は、丸まった、アルファまたは三角形の形状を有していてもよい。
【0042】
図2は、多数のコア・セグメント(セグメント化コア構造)を有する光ファイバに関する典型的な屈折率プロファイル18を示し、また本発明を実施することによって達成されるであろう半径の関数としてのマルチセグメント化コア光ファイバのアルカリ金属酸化物の濃度プロファイル20も示している。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度は、ほぼガウス形状を有することが好ましい。屈折率プロファイル18は、中央コア・セグメント22、第1の環状コア・セグメント24、および第2の環状コア・セグメント26を含むことが好ましい。クラッド・セグメント28も示されている。しかしながら、本発明は、ここに記載した屈折率プロファイルに制限されるものではないことが理解されよう。コア・セグメントは、純粋なシリカの屈折率と等しいか、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を有していても、もしくはそのセグメントは、純粋なシリカの屈折率よりも小さい屈折率を有していてもよい。実例として、図2は、純粋なシリカの屈折率(純粋なシリカはゼロの%Δにより表される)よりも低下している第1の環状コア・セグメント24を示している。第1の環状コア・セグメント24は、必要に応じて、点線30により示されるように、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を有していても、または第1の環状コア・セグメント24は、純粋なシリカの屈折率と等しい屈折率を有していてもよい。図2に表された第2の環状コア・セグメント26は、純粋なシリカの屈折率よりも大きい屈折率を示している。第2の環状コア・セグメント26は、必要に応じて、点線32により示されるように、純粋なシリカの屈折率よりも小さい屈折率を有していてもよい。あるいは、第2の環状コア・セグメント26を完全に除いても差し支えない。図2に示した光ファイバのコアは3つのセグメントを有するものとして表されているが、本発明による光ファイバのコアは、いくつのセグメントを有していてもよい。コア・セグメントは、ステップ型屈折率プロファイル、アルファ屈折率プロファイル、三角形屈折率プロファイル、丸まった屈折率プロファイルまたはそれらの組合せを有していてもよい。ここに開示した濃度におけるアルカリ金属酸化物では、屈折率への影響が最小であり、既存の屈折率プロファイルに影響を認められるほどに与えずに、コアの屈折率プロファイル全体に亘って、アルカリ金属酸化物を分散させることができる。このことによって、製造プロセスに多大な融通性が与えられる。それは、必要であれば、屈折率変化による光ファイバの性能特性への変化に関して過剰な懸念を持たずに、光ファイバ全体にアルカリ金属酸化物を施してもよいからである。
【0043】
図3は、別のセグメント化コア単一モード光ファイバの屈折率プロファイル34を示している。図3の屈折率プロファイルは、アルファまたは丸まった屈折率プロファイルを有する中央コア・セグメント36を含み、第1の環状コア・セグメント38およびクラッド・セグメント40も含んでいる。第1の環状コア・セグメント38は純粋なシリカと等しい屈折率を有していてもよく、または第1の環状コア・セグメント38は必要に応じて、点線42によって示されるような、純粋なシリカよりも大きい屈折率を有していてもよい。屈折率プロファイル34は、必要に応じて、第2の環状コア・セグメント44を含む。第2の環状コア・セグメント44は、丸まったプロファイルを有するものとして図3に示されている。しかしながら、例えば、正方形、三角形またはアルファなどの他の形状も可能であることを理解すべきである。図3は、本発明を実施することによって達成されるであろう半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の典型的な分布45も示している。アルカリ金属酸化物の濃度は、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度はほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0044】
図4は、クラッドガラスに適切な屈折率低下ドーパントをドープすることにより、クラッドガラスの屈折率を低下させることによって形成されたステップ型屈折率光ファイバの屈折率プロファイル46を示している。適切な屈折率低下ドーパントをドープは、例えば、Fである。図4の光ファイバは、コア・セグメント48およびクラッド・セグメント50を含む。コア・セグメント48は、純粋なシリカよりも大きい、純粋なシリカよりも小さい、または純粋なシリカと等しいピーク屈折率を有していてもよい。クラッド・セグメント50の屈折率は、純粋なシリカよりも小さく、もちろんコア・セグメント48よりも小さい。本発明を実施することによって達成されるであろうアルカリ金属酸化物の典型的な濃度分布52も図4に示されている。アルカリ金属酸化物の濃度が、光ファイバの半径の少なくとも一部分に沿って、光ファイバの中心線から増加する半径の関数として概ね減少することが好ましい。半径の関数としてのアルカリ金属酸化物の濃度はほぼガウス形状を有することが好ましい。
【0045】
図1〜4は、実例の光ファイバにおけるアルカリ金属酸化物の量に関するほぼガウスプロファイルを示しているが、他の半径方向に異なるアルカリ金属酸化物の濃度も可能である。例えば、アルカリ金属酸化物ドーパントの量は、半径と線形に、またはステップ型様式で変動しても差し支えない。
【0046】
ここに、アルカリ金属酸化物とFの濃度が重複している、アルカリ金属酸化物とFがドープされたシリカガラスにおける散乱損失が関係式[A]*[F]3に従うことが本出願の発明者等によって発見された。ここで、[A]はアルカリ金属酸化物の濃度(質量%)を表し、[F]はフッ素Fの濃度(質量%)を表す。すなわち、[A]*[F]3は、増加したまたは減少した散乱の領域を予測するために使用される。図5は、シリカガラス・ロッドの直径の一部分に亘る、それぞれ、K2OおよびFの濃度54,56を示している。ガラスロッドの直径の一部分に亘って測定された光散乱58も図5に示されている。大きな散乱損失を示す散乱ピーク60,62も明らかに見える。図6でも、図5に示したK2OおよびFの濃度54,56を示している。[K]が酸化カリウム(K2O)の濃度を表している、関係式[K]*[F]3も図6に示されている。[K]*[F]3は、曲線64により表されている。図5と6を比較することによって分かるように、図5の散乱ピーク60,62は、図6の関係式[K]*[F]3により表されたピーク66,68と一致する。アルカリ金属酸化物とFとが重複する領域に生じる散乱の増加は、例えば、光ファイバのモードフィールド半径内などの、伝搬光と重複が一致する光ファイバの領域にとっては特に煩わしいであろう。
【0047】
ここで、本出願の発明者等は、Cs2OまたはRb2Oと組み合わせたFの重複使用では、K2OとFの組合せにより示されたような、同じような散乱の増加とはならないようであることを発見した。図7は、3つの光ファイバのコアロッドの半径に亘る散乱を示している。コアロッドは、ガラスロッドを含む光ファイバ・プリフォームから後に線引きされるであろう光ファイバのコアガラスの部分を少なくとも含むガラスロッドを意味する。コアロッドは、必要に応じて、光ファイバのクラッドの一部分を含んでもよい。第1のコアロッドは、FとRb2Oがドープされていた。Rb2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線70により示されている。第2のコアロッドは、FとCs2Oがドープされていた。Cs2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線72により示されている。第3のコアロッドは、K2Oのみがドープされていた。K2Oを含有するコアロッドの散乱は、曲線74により示されている。Cs2OまたはRb2Oいずれかを含むコアロッドの散乱は、K2Oのみを含有するコアロッドにより示された散乱と等しいレベルであった。図8は、第1と第2のコアロッドに関するRb2O(75)、Cs2O(76)およびF(それぞれ、77,78)の濃度を示している。図7の散乱軸の値は、純粋なシリカにおける散乱に対して標準化されて示されている。
【0048】
本発明によるある実施の形態において、単一モード光ファイバは、約1280nmから約1340nmのゼロ分散波長λ0、約0.07ps/nm2/km未満のゼロ分散スロープS0、および1550nmで約15ps/nm/kmより大きい全分散を有することが好ましく、約15ps/nm/kmから20ps/nm/kmの全分散がより好ましい。本発明の光ファイバが約1300nm未満のカットオフ波長を有することが好ましい。本発明の光ファイバが1550nmで約80μm2より大きい実効断面積を有することが好ましい。本発明の光ファイバは、好ましくは、約3μmより大きい、より好ましくは約3μmから5μmのコア直径、および1550nmで、約9μm、より好ましくは10μmから11μmのモードフィールド径を有する。本発明にしたがってアルカリ金属酸化物を含ませることにより、減衰が、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、最も好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満である光ファイバを製造できるであろう。
【0049】
別の実施の形態において、単一モード光ファイバは、好ましくは約1330nmから1600nm、より好ましくは約1330nmから1450nmの範囲のゼロ分散波長λ0を有する。コア、またはクラッド、もしくはコアとクラッドの両方は、追加に、例えば、GeO2またはFなどの他のガラス改質ドーパントがドープされていてもよい。本発明による光ファイバは、好ましくは約0.07ps/nm2/km未満、より好ましくは約0.035ps/nm2/kmから0.07ps/nm2/kmの、ゼロ分散波長での分散スロープ、および1550nmで約6ps/nm/kmより大きい、好ましくは1550nmで約6ps/nm/kmから15ps/nm/kmの全分散を有する。本発明の光ファイバは、好ましくは約1400nm未満の、より好ましくは約1300nm未満のカットオフ波長を有する。本発明の光ファイバは、1550nmで約45μm2から75μm2の実効断面積を有することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドープ技法を用いると、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、最も好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満の減衰を示す本発明による光ファイバを製造できる。
【0050】
本発明によるさらに別の実施の形態において、単一モード光ファイバは、約1350nmから1450nmのゼロ分散波長、約0.10ps/nm2/km未満、より好ましくは約0.035ps/nm2/kmから0.10ps/nm2/kmのゼロ分散スロープ、および1550nmで約1ps/nm/kmから6ps/nm/kmの全分散を有する。この光ファイバは、約1400nm未満、好ましくは約1300nm未満のカットオフ波長を有する。本発明の光ファイバは、1550nmで約45μm2から75μm2の実効断面積を有することが好ましい。ここに開示したアルカリ金属酸化物のドープ技法を用いると、1310nmで約0.30dB/km未満の、1550nmで約0.18dB/km未満の、好ましくは1550nmで約0.17dB/km未満の、より好ましくは1550nmで約0.16dB/km未満の減衰を示す本発明による光ファイバを製造できる。
【0051】
さらに別の実施の形態において、光ファイバのコアはアルカリ金属酸化物を含み、この光ファイバのクラッドはアルカリ金属酸化物とFの両方を含む。アルカリ金属酸化物は、K2Oからなることが好ましい。光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク量は、好ましくは約0.001質量%より多く約0.4質量%未満、より好ましくは約0.001質量%より多く約0.15質量%未満、最も好ましくは約0.005質量%から0.15質量%である。
【0052】
プリフォームの製造中、およびその後の光ファイバの形成中に、プリフォーム中のアルカリ金属酸化物の相対量を調節する能力は、光ファイバにおける最終的なアルカリ金属酸化物の分布、したがって、その伝搬特性にとって重要であることが、当業者により認識されるであろう。このことは、プリフォームを光ファイバに線引きする前に、時間と温度の所定のスケジュールにしたがって、プリフォームを熱処理することにより行ってもよい。ある場合において、光ファイバのコア中にアルカリ金属酸化物を維持し、アルカリ金属酸化物のクラッド中への拡散を制限することが望ましい。このことは、Fドープ・クラッドガラスにより取り囲まれた、実質的に塩素を含まない光ファイバのコア・プリフォームを形成し、光ファイバ・プリフォームを光ファイバに線引きする前に、光ファイバ・プリフォームを熱処理することによって行ってもよい。例えば、K2Oは、約1000℃から1600℃の温度範囲内で熱処理したときに、純粋なシリカガラス中よりも、固結されたFドープ・シリカガラス中において、約10倍から100倍速く拡散することが分かった。それゆえ、Fを含むクラッドを有する光ファイバのコア・プリフォームを熱処理すると、都合よく、クラッドガラス全体に亘るが、光ファイバ・プリフォームのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度と比較して非常に低い濃度で、K2Oが急速に拡散するであろう。したがって、このプリフォームから線引きされた光ファイバのコアにおいて、光ファイバの同じ領域内に共に配置された、大きさが同様のFおよびK2O両方の濃度を付随する高い散乱を避けながら、低散乱が達成されるであろう。プリフォームを、少なくとも約1000℃の温度で少なくとも6時間に亘り熱処理することが好ましい。プリフォームを少なくとも約1400℃の温度で熱処理することがより好ましい。プリフォームを少なくとも約1600℃の温度で熱処理することが最も好ましい。プリフォームを少なくとも30時間に亘り熱処理することがより好ましい。光ファイバのプリフォームのクラッドがFを含むことが好ましい。熱処理後、光ファイバのプリフォームを、従来の線引き技法によって、光ファイバに線引きしてよい。
【0053】
アルカリ金属酸化物の拡散は、線引きプロセス中に都合よく調節されるであろう。線引き条件を所定の様式で変更することによって、アルカリ金属酸化物ドーパントを、所望の濃度プロファイルでプリフォーム全体に亘って分布させてよいことが分かった。アルカリ金属酸化物ドーパントを、半径に関して比較的線形の関係で拡散させることが好ましい。前出の前線引き熱処理手法と線引き手法との比較が図9に示されている。図9は、曲線80により示された、1500℃で6時間後の光ファイバ・プリフォームの前線引き熱処理の結果としてのK2Oの半径方向の濃度、および2000℃で線引きした後の光ファイバ・プリフォームにおけるK2Oの濃度82を示している。曲線84により反映された推測された出発K2O濃度プロファイル、および曲線86により示された出発F濃度プロファイルも示されている。コアとクラッドの界面が点線88により示されている。前線引き熱処理のK2O濃度プロファイル80は、コアとクラッドの界面88で比較的大きな減少を示しているが、線引きプロセスから生じたK2O濃度プロファイル82はより線形に近いプロファイルを示しているのが明白に示されている。アルカリ金属酸化物の濃度が半径が増加すると共に減少することが好ましい。アルカリ金属酸化物ドーパントの拡散は、ガラスのドープされた温度、およびガラスがその温度に維持された時間にある程度依存するので、これらの同じ要因は、線引きプロセス中にアルカリ金属酸化物の拡散を調節する上で重要な役割を果たす。線引きプロセス中に光ファイバ・プリフォーム(およびこのプリフォームから線引きされた光ファイバ)が露出される時間と温度は、線引き速度、線引き(炉)温度および光ファイバの張力を変更することによって調節される。例えば、線引き速度を増加させると、線引き炉内に光ファイバ・プリフォームの特定の部分に関する滞留時間が減少し、それゆえ、アルカリ金属酸化物ドーパントが光ファイバ・プリフォーム、それゆえ線引きされた光ファイバに亘って拡散する距離が減少する。これにより、クラッド中に拡散するアルカリ金属酸化物が少なくなり、したがって、光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度が高くなる。これとは逆に、線引き速度を減少させると、滞留時間が増加し、したがって、アルカリ金属酸化物が光ファイバのクラッド中にさらに拡散するので、光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物の濃度が減少するであろう。同様にして、炉の温度を増加させると、アルカリ金属酸化物の拡散速度が増加し、アルカリ金属酸化物の濃度が減少するであろう。それゆえ、線引き速度および炉の温度は、拡散、それゆえ、それにより得られる光ファイバ内のアルカリ金属酸化物の分布を調節するのに効果的に用いられるであろう。光ファイバの直径に亘るアルカリ金属酸化物の濃度を変更するための線引き条件の使用が、図10に示されている。図10は、線引き後の、同じ光ファイバ・プリフォームから線引きされた3つの光ファイバの直径の一部分に亘る位置の関数としてのK2Oの濃度(90,92および94)を示している。参照番号90により示された光ファイバは、15m/sおよび200gの張力で線引きした。参照番号92により示された光ファイバは、15m/sおよび90gの張力で線引きし、参照番号94により示された光ファイバは、9m/sおよび90gの張力で線引きした。図10に示されたK2O濃度90,92,94の比較は、それぞれ、曲線92および94により示された、15m/sから9m/sへの線引き速度の減少によって、K2Oのピーク濃度が減少したことを示している。曲線92および94を曲線90と比較することにより示されるように、90gから200gへの線引き張力の増加は、曲線90により示された光ファイバのコア中のアルカリ金属酸化物のピーク量が約30%増加したことをより劇的に示している。K2Oは、光ファイバの中央領域から光ファイバのクラッド中へと半径方向外側に拡散したと考えられる。クラッド中のK2O濃度の増加は、図10からは直接的に明らかではないが、測定感度および光ファイバの直径全体に亘るその後の測定走査の改善により、そのような増加が示されると考えられる。
【0054】
本発明の実施の形態にしたがって、光ファイバの前駆体である適切なシリカガラス物品中にアルカリ金属酸化物を拡散させることによって、アルカリドープ光ファイバを製造する第1の方法102が図11に示されている。方法102の第1の工程104は、図11および12を参照して、図示され、説明される。光ファイバの製造に適したシリカガラス管106を、旋盤101(ガラス作業旋盤または従来の改良化学気相成長(MCVD)ガラス形成旋盤などの)内のチャック間に最初に取り付けることが好ましい。リザーバを管に火炎作業または他の様式で溶着することにより、管106の壁に2つの環状の頸状変形部112を形作ることによって、アルカリ金属供給源化合物110を収容するための好ましい環状リザーバ108を、管106の一端の近くに形成する。他のタイプのリザーバを用いてもよい。環状の頸状変形部112が、互いから約2cm離れていることが好ましい。管106は、単独でまたは組合せで、ドーパントを含んでいてもよい。そのようなドーパントの例としては、F、Al2O3、CaO、GeO2、Pまたは他の屈折率変更ドーパントが挙げられる。特に、この管は、例えば、ステップ型単一モードファイバのコアの一部分を形成するために、GeO2がドープされたSiO2を有してなっていてよい。管中にアルカリ金属酸化物を拡散させる前に、化学気相成長により追加のシリカガラスを、ガラス管106の内面に加えてもよい。そのような追加のガラスは、上述したようなドーパントを含有してもよい。しかしながら、アルカリ金属の結晶化を防ぐために、管106および管106の内部に堆積された任意の追加のガラスは、実質的に塩素を含まないことが望ましい。実質的に塩素を含まないとは、アルカリ塩化物による光学損失が避けられるほど十分に低い塩素濃度を示すことを意味する。この目的のためには、好ましくは約500質量ppm未満、より好ましくは約100質量ppm未満、最も好ましくは約50質量ppm未満の塩素含有量が望ましい。さらに、シリカガラス管106およびその内部に堆積した任意の追加のガラスは、実質的に「水」を含まないべきである。「水」とは、ヒドロキシル基OHを意味する。水は、約1383nm辺りでの吸収ピークの原因であり、その吸収ピークは、光ファイバの動作波長領域に伸びるかもしれない。このピークには、ファイバの減衰に悪影響があるかもしれない。したがって、ガラス中のOH含有量をできるだけ減少させることによって、水ピークとも称される、吸収ピークを減少させることが望ましい。ガラス管106に含まれるOHは、好ましくは約100質量ppb未満、より好ましくは約20質量ppb未満である。出発ガラス物品が、アルカリ金属酸化物ドーパントを拡散させる前に、実質的に水を含まないことを確実にするために、シリカガラス管の製造中に、従来の塩素乾燥技法を用いてもよい。しかしながら、ガラス中の塩素濃度を減少させるために、塩素の使用は最小にすべきである。多孔質スートガラス物品の場合、塩素乾燥の後、またはその代わりのいずれかで、例えば、CF4やSiF4、またはそれらの組合せなどのフッ素含有雰囲気にその物品を曝露すること(フッ素掃引)によって乾燥を行うことが好ましい。フッ素含有雰囲気への曝露(フッ素掃引)は、フッ素がガラスに高レベルでドープされるのを防ぐために、約1100℃未満の温度で行うことが好ましい。低レベルのフッ素・ドーピング、例えば、0.1から0.4質量%のフッ素が望ましい。光ファイバのコアとなるガラスの含水量は、好ましくは約100質量ppb未満、より好ましくは約20質量ppb未満である。
【0055】
図12を再度参照する。追加のガラスの堆積を含むシリカガラス管106を一度調製したら、アルカリ供給源化合物110をリザーバ108で管106中に導入し、熱源114により加熱して、管106を回転させながら蒸気を形成する。酸素またはキャリヤガスを、回転シール118を通して管106の入口116中に流入させ、アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120を加熱して、アルカリ金属酸化物を管106の内面122中への拡散を促進させる。管106には、別のガラスロッドなどの任意のプリフォーム部材がその中に挿入されないことが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120は、内面122中へのアルカリの急激な拡散を促進し、ガラスの失透を防ぐのに十分な温度まで加熱すべきである。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流の管106の部分120は、熱源124によって、好ましくは1500℃より高く、より好ましくは約1500℃から2000℃に加熱される。熱源124は、管106の部分120の長手方向に沿って動かされることが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110は、K元素を含むことが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110が臭化物、ヨウ化物またはフッ化物であることが好ましい。アルカリ金属酸化物の供給源化合物110が、KBr、KIまたはKNO3であることが最も好ましい。管106をコラプスする前に、アルカリ金属酸化物(例えば、K2O)を、管106の内部拡散表面122から約100マイクロメートルと500マイクロメートルの間の深さ全体に亘り拡散させ、それによって、アルカリ酸化物ドープ・ガラス管を形成することが好ましい。特に、管中に拡散したアルカリ金属酸化物ドーパントの濃度(質量%)は半径方向に変動することが好ましい。図12の拡大図に示されているように、濃度が内側の半分107で最高であり、下側の半分109で低いように、ガラス物品(例えば、管106)をドープすることが好ましい。内側の半分と外側の半分との間の区分点は、管106の半径方向の厚さの半分(点線111により示される)により定義され、そこに位置している。例えば、拡散は、外側の半分109中のアルカリ・ドーパントのピーク濃度が、内側の半分107のピーク濃度の50%未満(質量%)であることが好ましい。
【0056】
拡散プロセスの後に、アルカリ金属酸化物がそこを通して失われたかもしれない内部の表面積を減少させ、かつアルカリ金属酸化物がその中に拡散したガラスの層を厚くするために、当該技術分野において公知の従来の方法により(またはここに記載した乾燥方法により)、管106をさらに加熱して、管106の部分的なコラプスを促進してもよい。拡散ドーピング工程、または管106の任意の部分的コラプスが一旦完了したら、管の拡散表面122を、シリカガラスを除去するのに適したエッチング剤で、管の拡散表面122を通して拡散したかもしれない望ましくない不純物を除去するのに十分な深さまで、必要に応じてエッチングしてもよい。例えば、HF水溶液をエッチング剤として用いてよい。例えば、CF4、SF6、NF3、C2F6またはそれらの混合物などのフッ化物ガスを使用することがより好ましい。内部の表面122から除去される材料の量は、拡散中に処理条件および任意の部分的な管のコラプスに依存するが、エッチング条件は、アルカリ金属酸化物の全拡散深さの少なくとも約5パーセントの深さまで表面122からガラスを除去することになるのに十分であることが好ましい。方法102の工程126に示されるように、エッチングが一旦完了したら、シリカガラス管106を熱源124でさらに加熱して、アルカリ金属酸化物の供給源化合物110の下流で管106をコラプスし、アルカリ金属酸化物ドープ・中実ガラスロッド132を形成する。管106のコラプスは、適切な熱源(例えば、トーチ)による加熱などの、当該技術分野で公知の従来の方法にしたがって行われる。次いで、中実のアルカリドープ・ガラスロッド132を、アルカリ金属酸化物の供給源化合物のリザーバ108を含むガラス部分から切断する。中実のアルカリ金属酸化物ドープ・ガラス管132を、適切なエッチング剤でエッチングして、管106のコラプス中にトーチによって形成されたかもしれない水和ガラスのいくらかまたは全てを除去することが好ましい。コラプスに、乾燥熱源、例えば、誘電加熱器または抵抗加熱器、プラズマトーチ、もしくはCOなどの非水素含有燃料を使用する乾燥熱源を使用する場合、エッチング工程は必要ないであろう。ドーピングおよび/またはコラプス工程のために乾燥熱源を使用することは、管の外側の再湿潤、すなわち、外側からの管中へのOH(水)の拡散を最小にし、したがって、ファイバの減衰をさらに減少させるかもしれないと考えられる。乾燥熱源は、感知できるOH(水)を管中に誘導しないものである。
【0057】
例えば、図29は、アルカリドーピングのための拡散ドーピング旋盤装置501を示している。ここで、拡散およびコラプス中に管506を加熱するための熱源524が、管に隣接して(好ましくは取り囲んで)取り付けられた誘電加熱器である。具体的には、ガラス管506は、フレーム502に対して取り付けられ(好ましくはチャック517内で)、その中で回転させられる。キャリヤガス(O2などの)を供給源(図示せず)から供給し、入口116および回転シール118を通して管506中に流入させることが好ましい。キャリヤガスは、連結管により、またはそこへの溶着により、管506に結合された容器508内に収容されたアルカリ供給源化合物(例えば、KBr、KIまたはKNO3)の上に流される。容器とアルカリ供給源化合物は、例えば、抵抗加熱器、誘電加熱器またはトーチなどの熱源514により同時に加熱され(好ましくは800〜1000℃まで)、これにより、アルカリ蒸気がキャリヤガス中に含まれ、それによって、アルカリドーパントガスが形成される。ガラス管506は、ドーパントガスに露出されながら、誘電加熱器524により加熱されて、アルカリドーパントがガラス管506中に拡散される。拡散工程中、加熱器524は、適切なモータと駆動機構(図示せず)によって管506の長手方向に沿って動かされる。アルカリ拡散工程が一旦完了したら、ガラス管506は、熱源524により十分な熱(上述したような)の適用によってコラプスされて、アルカリドープ・ガラス管が形成される。
【0058】
誘電加熱器524(図30に一番よく示されている)は、ガラス管506(端部が断ち切られて示されている)を取り囲む環状グラファイト製サセプタ515およびサセプタを取り囲むコイル513を備えている。コイル513は、タンク回路518に電気接続されている。誘電加熱器524はタンク回路518に取り付けられ、この回路は、スライド上で移動して、加熱器524がガラス管506の表面を移動することができる。タンク回路に誘導電力が供給されたときに、加熱器524内のコイル513に電圧が印加され、渦電流がサセプタ515内に誘発され、それによって、コイル(したがって、ガラス管506)が加熱される。サセプタは、端部片520によって支持され、かつガラス管から間隔が置かれている。ガラススリーブ509もサセプタ515を取り囲み、アセンブリの物理的支持体および電気絶縁体として作用することが好ましく、よって、サセプタは、不活性ガスの流れ(矢印「I」により示されている)内に浸されるであろう。特に、サセプタ515はガラス管506を取り囲み、ガラス管とサセプタとの間の第1の空間511を形成する。同様に、ガラススリーブ509がサセプタ515を取り囲み、スリーブとサセプタとの間に第2の空間を形成する。アルゴンなどの不活性ガスが、空間511と516に通じ、そこに連結された通路519を通して供給源(図示せず)から流され、それによって、サセプタを取り囲み、それによって、その酸化を防ぐ不活性ガスが提供される。空間516に多孔質グラファイト・フェルトが充填されていることが好ましい。
【0059】
コラプスされたときに、アルカリドープ・ロッド132(管106と類似の)は、半径方向に変動し、内側半分107に相当する部分が最高のピーク濃度(質量%)のアルカリ・ドーパントを有し、外側半分109に相当する部分が最低のピーク濃度を有するような濃度のアルカリ金属酸化物を有することが好ましいことを認識すべきである。アルカリ・ドーパントのピーク濃度がロッドの中央(図17および18に示されているように)にあり、半径の半分での濃度がピーク濃度の50%未満、より好ましくは25%未満であることが最も好ましい。ロッドの最も外側の半径層171が、どのような有意のアルカリ金属酸化物ドーパントも存在せずに成形されることが最も好ましい。アルカリ・ドーパントを含まないこの最も外側の層171は、1.0mm以上の厚さであり、ロッドの外側半径の25%より大きい厚さを占めることが好ましい。アルカリ・ドーパントを含まない層をロッドに設けることによって、後の工程に塩素が存在する場合、ロッドの界面で結晶化が生じる傾向が減少することが分かった。
【0060】
さらなるプロセス工程における方法102の随意的な工程128によれば、ドープしたガラスロッド132を予備線引き炉136内で加熱し、アルカリドープ・ガラスロッドの元の直径よりも小さい直径を有する小さなガラスロッド144に線引きしてもよい。この予備線引き(redraw)プロセスが図13に示されている。ガラスハンドル130が、前出のコラプス段階から得られたアルカリドープ・ガラスロッド132に取り付けられており、このアルカリドープ・ガラスロッド132は、従来の予備線引き炉136の上にある移動式下方供給支持体134に取り付けられている。犠牲ガラスロッド138をアルカリドープ・ガラスロッド132の底部に取り付けてもよい。この犠牲ガラスロッドは、モータ駆動トラクタ140により引っぱられ、それによって、アルカリドープ・ガラスロッド132が適切な速度で線引きされる。15から23cm/分の速度が適切であることが分かった。この速度は大体は、センサ142により測定される直径に対応して制御される。線引きプロセスから得られた小さな直径のガラスロッド144の外寸(d1)は、好ましくは3mmから10mmの範囲、より好ましくは6mm未満である。コラプス工程126から得られたロッド132の直径がこの所望の範囲内にある場合、コラプス工程126から得られたロッド132をガラスロッド144として使用してもよい。小さな直径のガラスロッド144は、ファイバの線引き中にアルカリドーパントが大きく移行することを埋め合わせるために、光ファイバが線引きされたときの光ファイバのコアにおいて望ましいピークK2O濃度の約5倍から10倍のK2Oのピーク濃度を有するべきである。例えば、光ファイバのコア中のピークK2O濃度が0.4質量%であることが望ましい場合、小さな直径のガラスロッド144は、好ましくは約2質量%から4質量%のピークK2O濃度を有するべきである。特に、非常に小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッドを有することは、これによって、ロッドに存在する遷移金属不純物がファイバの中心線の極近くに濃縮され、その悪影響が最小になるので都合よい。ドープ・クラッドに加えられた多量の材料について、ファイバのピーク濃度は、小さな直径のガラスロッドにおけるピーク濃度の100分の1未満であり得ることを認識すべきである。方法102の工程146により示されるように、一旦形成されたら、この方法による小さな直径のガラスロッド144を、例えば、ガラスロッド144を光ファイバ・プリフォーム150の中心孔中に挿入してアセンブリを形成することによって、オーバークラッドする。光ファイバ・プリフォーム150は多孔質であり、図14に示したガラススートからなることが好ましい。図14において、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144は、矢印152により示されるように、多孔質のガラススート・コアプリフォーム150の中心孔148中に挿入されて、複合プリフォーム・アセンブリ155を形成する。多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、従来の方法により製造してよい。例えば、多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、標的ロッド上にスートを堆積させることによる外付け気相成長法によって製造してよい。この標的ロッドは、多孔質ガラススート・プリフォームから取り出されて、プリフォーム150の中心線を縦方向に通って延在する中心孔148が残る。多孔質ガラススート・コアプリフォーム150は、例えば、ゲルマニア(GeO2)などの屈折率変更ドーパントを一種類以上含んでもよい。多孔質スート光ファイバ・プリフォーム150は、コア・ガラススートのみを含んでいても、またはコア・ガラススート149およびクラッド・ガラススート143の両方を含んでもよい。このとき、コアとクラッドのガラススートの間の区分線、すなわち、クラッドに対して測定された組成の実質的な変化が、点線141として示されている。言い換えれば、プリフォームの外側から内側に移動すると、組成の第1の実質的な変化は、物理的コアの開始を表す。
【0061】
図15は、図12を参照して説明された方法102により製造された光ファイバ・プリフォームの例である。特に、ゲルマニアドープ・シリカスート管は、従来のOVD法、すなわち、ゲルマニアドープ・シリカ含有するスートを回転しているマンドレル上に堆積させて、ゲルマニアドープ・シリカスート管を形成することによって形成される。マンドレルを取り外し、次いで、ゲルマニアドープ・シリカスート管を塩素含有ガス雰囲気に露出することによって乾燥させる。次いで、乾燥したスート管をフッ素掃引(F含有ガス雰囲気への露出による)して、ほとんどの(好ましくは実質的に全ての)塩素を除去する(以下に図25を参照して詳しく説明される)。次いで、スートを固結させて、好ましくは4質量%より多くGeO2を有する、ゲルマニアドープされたガラス化シリカ含有ガラス管を形成する。必要に応じて、ガラス管を、より小さな直径の中間物品の管に予備線引きしてもよい。次いで、シリカおよびゲルマニア(GeO2)を有するガラス管(または中間物品の管)を、工程104においてアルカリ金属酸化物(例えば、K2O)でドープし。工程126でコラプスして、アルカリとゲルマニアがドープされた、大きな直径の中実のシリカガラス・コアロッドを形成する。大きな直径の中実ガラス・コアロッドを、随意的な工程128で、上述した好ましい直径(d1)を有する小さな直径のガラス・コアロッド144に予備線引きしてもよい。次いで、ゲルマニアとアルカリをドープしたシリカを有してなる小さな直径のガラス・コアロッド144を、図11の工程146に示すように、このロッドを多孔質ガラススート光ファイバ・プリフォーム150の中心孔中に挿入することによってさらにオーバークラッドして、複合光ファイバ・プリフォームを形成する。多孔質スート光ファイバ・プリフォーム150も、コアの外側部分を表すスート・プリフォーム150の内側の環状部分149のゲルマニア(GeO2)ドープ・シリカスートおよびクラッドの部分を表すスート・プリフォーム150の外側の環状部分143上の非ゲルマニアドープ・シリカスート(好ましくは実質的に未ドープのシリカスート)を有してなることが好ましい。複合光ファイバ・プリフォーム145を適切に塩素乾燥し、小さな直径のガラスロッド上で工程164において固結して、固結光ファイバ・プリフォーム(その詳細は、図25を参照して与えられる)を形成した。固結の前に、随意的なフッ素掃引を用いて、スートプリフォーム150中に存在する残留塩素を除去してもよい。フッ素掃引は、プリフォーム150を、好ましくは約90〜150分間に亘り、約1000〜1150℃の温度で塩素含有ガス(例えば、SiF4またはCF4ガスなどの)にさらすことによって行うことが好ましい。スート・プリフォーム中に存在する塩素を実質的に除去(掃引)することに加えて、フッ素掃引は、内側部分にフッ素を0.1から0.4質量%の少量ドープする。固結により、多孔質ガラススートを、ガラススートが融合する温度に加熱し、それによって、中実の透明なガラスを形成することを意味する。アルカリドープ・コアプリフォーム・ロッドをさらに予備線引きして、工程166に示すように、第2のガラスコア・ロッド物品144を形成することが好ましい。ドープガラス・ロッド物品144は、ファイバのコアに相当する直径dコアを有し、高濃度のアルカリドーパントを含む第1の部分145、およびクラッドの内側部分に相当する直径d1を有する周囲部分147を含む(図14の拡大図参照)ことが認識されるであろう。dコアは、クラッドの同じ部分がロッド物品に含まれるようにd1の0.5倍以下であることが好ましい。再度、この第2のロッド144は、シリカ含有ガラスによりオーバークラッドされ、固結されて、最終的な線引きプリフォームが形成される。オーバークラッドは、OVDまたはロッド・イン・スート・プロセス(ロッドが、シリカ含有ガラススート管中に挿入される)により提供され、固結されることが最も好ましいが、ロッドをガラススリーブ中に挿入することによって含まれ、最終的な固結された外寸(d2)を有する最終的な固結線引きプリフォームを形成してもよい。ガラス物品のロッド144の外寸(d1)は、最終的な固結線引きプリフォームの最終的な外寸(d2)の0.06倍以下(最終的な外寸(d2)の0.03倍以下がより好ましい)であり、プリフォームの中心近くにアルカリドーパント(アルカリ金属酸化物)を濃縮していることが好ましい。
【0062】
製造された固結光ファイバ・コアプリフォームは、電子マイクロプローブを使用することによって測定した。図15に示した曲線153,155は、固結プリフォームの直径に亘るGeO2およびK2Oの典型的な濃度を示している。線157および159は、小さな直径のガラスロッドと固結されたスートとの界面を示している。最終的な線引きプリフォームの固結の際に、アルカリおよびゲルマニアがドープされた光ファイバ(例えば、図1参照)を、従来の線引き装置と方法またはそうでなければここに記載されたように、工程170における固結アセンブリから線引きする。
【0063】
図16を参照して説明された代わりの方法によれば、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144を出発ロッドとして用いてもよい。その際に、追加の多孔質ガラススート162を、当該技術分野において公知のようにOVD法を用いてオーバークラッドとして堆積させて、アセンブリ160を形成する。典型的な外付け気相成長法が図16に示されている。図16に示したように、ガラスハンドル154が、これまで記載したように製造した、小さな直径のアルカリドープ・ガラスロッド144に取り付けられ、それによって得られたプリフォームの一体部分となる。ハンドル154は、後の加工工程中の堆積プロセスから得られるシリカガラス・プリフォームを支持する方法を与える。ハンドル154が取り付けられたガラスロッド144は旋盤に取り付けられる。ここで、このガラスロッドは、回転させられ、バーナ156に対して移動させられる。このバーナは、例えば、米国特許第4165223号明細書に開示されたタイプのものであってよい。燃料ガスおよび酸素、または空気が、供給源(図示せず)からバーナ156に供給される。この混合物を燃焼させて、バーナ156から発せられる火炎を生成する。シリカ前駆体のガス−蒸気混合物は、火炎中で酸化せしめられて、シリカ含有スート流158を形成する。このスート流は、ガラスロッド144に向けられる。ガス−蒸気混合物をバーナ156に送達するための適切な手段が当該技術分野においてよく知られており、そのような手段の例示のために、米国特許第3826560号、同第4148621号および同第4173305号の各明細書を参照する。バーナ156は一般に、バーナ面上にスートが蓄積するのを最小にしながら、許容できる高い敷設(laydown)速度および効率を与える条件下で動作させる。そのような条件下で、バーナ・オリフィスからのガスと反応体の流量、およびそのようなオリフィスのサイズと位置、並びにそれらの軸方向は、よく集束されたスート流がバーナ156からガラスロッド144に向かって流れるようなものである。複合スート・プリフォーム160は、ガラスロッド144を何回もバーナ156に対して行き来させて、シリカスートを含有する多くの層を積み重ねて、スート・被覆162を形成することによって形成される。平行移動動作は、回転しているガラスロッド144に沿ってバーナを往復して移動させることによって、またはバーナ156とガラスロッド144の両方の組み合わされた平行移動動作によって行うことができる。スート・被覆162は、複合プリフォーム160のコアガラスの少なくとも一部分を形成する。この部分は、実質的に純粋なシリカからなることが好ましい。スート・被覆162は、好ましくは0.35g/ccより大きい、より好ましくは約0.35g/ccから0.5g/ccの密度を有する。次いで、複合プリフォーム160は、塩素含有ガスに露出することによって乾燥させ、炉内で加熱して、複合プリフォーム160を固結させて、方法102の工程164に示した、透明な中実ガラスの固結光ファイバ・コアプリフォームを形成する。
【0064】
光ファイバ・コアプリフォームを形成するための複合プリフォームを乾燥させ固結する各工程は、米国特許第4165223号明細書の教示にしたがって行うか、またはそうでなければ、図25に関してここに記載したように行ってよい。固結工程中、複合プリフォームをフッ素掃引して、最初の乾燥プロセス中に与えられる望ましくない塩素を除去することが好ましい。この掃引は、フッ素含有ガスであるが、例えば、少量のフッ素(0.1から0.4質量%)を加える量のみに露出することを含む。次いで、透明なガラス・コアプリフォームを、前に説明し、方法102の工程166示したプロセスに類似のプロセスで予備線引きして、第2のコアロッド、すなわち、そこから線引きされる光ファイバのコアの少なくとも一部分を含むガラスロッドを形成する。第2のコアロッドは、クラッドガラスの少なくとも一部分も含んでもよい。方法102の工程168に示すように、第2のコアロッドは、ガラス管(ガラス管またはスート管のいずれか)によるスリーブ付けによって、例えば、スリーブ付けと化学的気相成長の両方による化学的気相成長法によるガラススートの堆積によって、または当該技術分野に公知の他の方法によって、追加のガラスを加えることによってさらに加工して、光ファイバに線引きすべく準備のできている完全な光ファイバ・プリフォームを形成してもよい。追加のガラスは、コアガラス、クラッドガラスまたはコアガラスとクラッドガラスの両方を含んでもよい。さらに、追加のガラスは、所望の厚さを達成するためにいくつかの追加の堆積工程を要してもよい。ここで、各工程後、スートを乾燥し、フッ素ドープし、固結し、小さな直径のロッドに予備線引きする。コアが、アルカリがドープされたシリカ(少量のフッ素を含んでもよい)から実質的になる場合、追加のガラスは、実質的に未ドープのシリカの内側半径部分、および好ましくはフラッド・ドーピングによりフッ素がダウン・ドープされたシリカ(米国特許第4629485号明細書参照)の外側半径部分(ファイバのクラッドに相当する)からなる。ドーピングは、コアとクラッドとの間の相対屈折率デルタ%が、例えば、0.2%より大きい、より好ましくは0.30%から0.40%を達成するのに十分であることが好ましい。特に、モート・シリカ(その追加のガラスはファイバのクラッドに相当する)が第2のロッドへの堆積により加えられる各追加の工程について、そのようなモート・シリカはフッ素がドープされる。モート・シリカは、最初に塩素含有ガスに露出することによって乾燥させ、次いで、60〜120分間に亘り1225℃でフッ素含有ガス(例えば、SiF4またはCF4)に露出し、次いで、好ましくはフッ素含有ガスの存在下で、7〜10mm/分で高温区域(1450へ1500℃)を通して下方に移動させることによって固結する。このプリフォームを予備線引きして、第3のロッドを形成し、適切な直径の最終プリフォームが形成されるまで、各工程、すなわち、堆積、乾燥、フッ素・ドープおよび固結を再度繰り返してもよい。クラッド中の追加のガラスの各連続層内のフッ素質量%は、応力の影響を最小にするために、最も外側のクラッドと、好ましくはほぼ同じであるか、またはより好ましくはわずかに小さい(約0.1から0.5質量%小さい)。工程168の完成した光ファイバ・プリフォームが製造された後、完成した光ファイバ線引きプリフォームを、方法102の工程170により示したように、アルカリ金属酸化物がドープされた光ファイバに線引きする。ここに記載した各予備線引き工程後、ロッドは、ロッドを重水素雰囲気に露出することによって、D2処理することが好ましい。重水素処理は、英国特許第2149392号、米国特許第4515612号および同第4504297号の各明細書に記載されている。
【0065】
図25の流れ図を参照して記載された別の方法の実施の形態302によれば、ゲルマニアおよびアルカリがドープされたステップ型屈折率単一モードファイバが形成される。方法302は、工程301においてゲルマニアがドープされたシリカ含有ガラススート管を最初に形成する各工程を含むことが好ましい。スート管は、所望の屈折率がファイバ中に達成されるように、回転しているマンドレル上にある量のゲルマニアドーパント(例えば、ステップ型屈折率ファイバについて、0.3%から0.4%)がドープされたシリカ含有スートを堆積させることによるOVDによって成形することが好ましい。それゆえ、環状のスート管は、そのマンドレルを後で取り外すことによって形成される。次いで、スート管を、プリフォームをヘリウム雰囲気中60分間に亘り1000℃で予熱することによって、乾燥工程303において乾燥させることが好ましい。次に、ゲルマニアドープ・シリカスート管を、約1000〜1150℃の温度で約60〜120分間に亘り炉内の塩素含有(例えば、Cl2)ガス雰囲気に露出することが好ましい。この雰囲気は、塩素含有ガスの体積流量がヘリウムの体積流量より小さい、ヘリウムと塩素含有ガスの組合せを有してなることが最も好ましい。塩素含有ガスの体積流量がヘリウムの体積流量の10%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましい(例えば、20SLPM(標準リットル毎分)のヘリウムおよび0.2SLPMの塩素含有ガス)。塩素乾燥工程303後、乾燥したスート管にフッ素掃引工程304を施すことが好ましい。ここで、乾燥した管は、約90〜150分間に亘り約1000〜1150℃の温度で炉内のフッ素含有雰囲気(CF4またはSiF4を有してなることが好ましい)に施されて、プリフォームはさらに乾燥される。フッ素含有雰囲気は、フッ素含有ガスおよびヘリウムなどの不活性ガスを含有することが最も好ましい。フッ素含有ガスの体積流量は、ヘリウムの体積流量より小さく、フッ素含有ガスの体積流量はヘリウムの体積流量の10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましい(例えば、20SLPMのヘリウムおよび0.4SLPMのフッ素含有ガス)。工程304におけるフッ素掃引処理は、固結温度未満の温度で行われ、ここで、小さな質量パーセント(約0.1から0.4質量%)のフッ素のみが導入され、ゲルマニアドープ・シリカ管にドープされる。フッ素掃引は、スート・プリフォーム中に残存する塩素の量を最小にすることが意図されている。
【0066】
次いで、乾燥されフッ素掃引された管を、約1450から1500℃の高温区域温度および例えば、ヘリウムを有してなる不活性ガス雰囲気を有する炉内での露出(スート・プリフォームを約7mm/分の速度で下方に移動させることにより)によって工程307において固結する。これにより、ゲルマニアがドープされたシリカガラス管が製造され、この管は、次いで、工程304において図12を参照して先に説明したように、アルカリドープされる。そのようなドーピングの前に、この管を、必要に応じて、予備線引き炉内に配置し、線引きして、小さな直径のアルカリドープ管の形態にある中間物品を形成してもよい。
【0067】
アルカリドーピング後、ガラス管または中間物品を、熱源から十分な熱を供給することによって、旋盤上でコラプスして、アルカリ金属酸化物およびゲルマニアがドープされたシリカを含むガラス物品管を形成する。必要に応じて、このロッドを、工程326と329の間の工程において、予備線引き炉内で、上述したようにさらに小さな直径に予備線引きしてもよい。次に、追加のシリカ含有ガラスをアルカリドープ・ロッドに加える。例えば、アルカリおよびゲルマニアがドープされた小さな直径のロッドを、工程326において、ゲルマニアドープ・シリカスートの内側環状部分149(コアの最も外側の部分に相当する)、および好ましくは実質的に純粋な(未ドープの)シリカスートから製造された外側部分143(クラッドに相当する)を有することが好ましいスート・プリフォーム150(図14)中に挿入してもよい。このロッド・イン・スート管アセンブリを塩素乾燥し、必要に応じてフッ素掃引し、固結して、ゲルマニアドープ・スート管について上述したのと同じ様式で最終的な固結線引きプリフォーム・アセンブリを形成する。最後に、固結された線引きプリフォームから、アルカリとゲルマニアがドープされた単一モード光ファイバを線引きする。その代表的な屈折率プロファイルが図27に示されている。アルカリドープ光ファイバ310において、コア312のドーパントは、ゲルマニア、フッ素およびアルカリから実質的になり、一方で、クラッド316は未ドープのシリカまたはわずかにフッ素がドープされたシリカから実質的になる。製造されたファイバ310の最大相対屈折率デルタ(ΔMAX)は、約0.43%であり、コア312の外側の半径は約5.3μmであった。
【0068】
第1組の好ましい光ファイバの実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、コアおよびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、ここで、コアは、クラッドに対して、完全に負ではない、好ましくは正の、相対屈折率プロファイルを有している。コアがゲルマニアを有することが好ましい。
【0069】
第1組の好ましい実施の形態におけるいくつかの好ましい実施の形態において、コアは、図1および27並びに、これまで論じたような、ステップ型、丸まった形状、アルファまたは三角形を有するプロファイルなどの、様々なこれら例示のプロファイルに示したように、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントからなる。ここで、中央コア・セグメントは、純粋なシリカに対して正の屈折率Δ1(r)を有する。図27から分かるように、ファイバの相対屈折率は、クラッド中に延在する拡散尾部を含んでよく、ここで、この相対屈折率は、絶対値で0.03%未満の大きさを有する。第1組の好ましい実施の形態の他の好ましい実施の形態において、コアは、中央コア・セグメントおよび中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接した第1の環状コア・セグメントなどの多数のコア・セグメント、並びに第1の環状コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなる。ここで、中央コア・セグメントは、クラッドに対して、負ではない、好ましくは正の相対屈折率Δ1%(r)を有し、第1の環状コア・セグメントの純粋なシリカは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の相対屈折率Δ2%(r)を有する。
【0070】
第1組の好ましい実施の形態において、コアは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から300ppm、好ましくは20から200ppmである。クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満である。コアおよびクラッドの各々は、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。ここに開示された方法の1つ以上による光ファイバの製造によって、アルカリ金属酸化物を中に導入する前の、プリフォーム、またはプリフォームの一部のフッ素掃引の結果として、少量のフッ素がコア中に残留するであろう。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有してなり、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まれない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を有してなり、いくつかの好ましい実施の形態では、ここに開示した1つ以上の方法による製造の結果として、500ppmから2000ppmの塩素を有してなる。
【0071】
第1組の好ましい実施の形態において、コアは、酸化ゲルマニウムと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は、20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmである。様々な好ましい実施の形態において、コアはさらに、ピーク相対屈折率ΔMAX>0.2%を有し、他の好ましい実施の形態において、コアはさらに、0.2から0.5%のピーク相対屈折率ΔMAXを有し、さらに他の好ましい実施の形態において、コアはさらに、0.3から0.45%のピーク相対屈折率ΔMAXを有する。
【0072】
第1組の他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、ここで、コアは、純粋なシリカに対して正の屈折率Δ1(r)を有し、コアは、酸化ゲルマニウムと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度は20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.25から0.45%の、ピーク相対屈折率ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満、さらにより好ましくは5ppm未満である。光ファイバは、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有し、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を含み、いくつかの好ましい実施の形態において、500ppmから2000ppmの塩素を含む。
【0073】
第1組のさらに他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、コアは、酸化ゲルマニウムおよびK2Oを有してなり、K2Oのピーク濃度は20から300ppm、好ましくは20から200ppm、より好ましくは30から150ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.25から0.45%の、ピーク相対屈折率ΔMAXを有し、クラッド中のK2Oの最高濃度は、好ましくは10ppm未満、より好ましくは5ppm未満である。光ファイバは、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは0.2質量%未満のフッ素、より好ましくは0.1質量%未満のフッ素を有し、いくつかの好ましい実施の形態においては、フッ素は含まない。コアは、好ましくは3000ppm未満の塩素、より好ましくは2000ppm未満の塩素を含み、いくつかの好ましい実施の形態において、500ppmから2000ppmの塩素を含む。
【0074】
本発明の別の好ましい方法の実施の形態によれば、アルカリドープ・シリカコアおよびフッ素ドープ・クラッドを有する光ファイバが製造される。図26に示されるように、方法402は、工程401においてシリカスートから実質的になる管を形成する工程を含む。この管と図25の工程301からの先に説明した管との間の唯一の違いは、この管は実質的に純粋な(未ドープの)シリカスートであることが好ましいが、塩素を除去するためのフッ素掃引から少量のフッ素を含んでもよいことである。塩素乾燥、フッ素掃引、固結、アルカリ・ドーピングおよびコラプスの各工程403,405,407,404および426は、得られたコラプスされたロッドが、アルカリと、フッ素掃引から生じた少量のフッ素(約0.1から0.4質量%)のみがドープされたシリカであることを除いて、図25の方法について説明したものと同じである。ロッドは、必要に応じてエッチングしおよび/または、さらに小さな直径のアルカリドープ・ロッドに予備線引きしてもよい。
【0075】
工程429において、ロッドを、シリカ含有スート管(好ましくはこれもフッ素掃引されている)中に挿入して、ロッド・イン・スート・アセンブリを形成する。ここで、スート管は、ファイバのシリカコアの残りの部分に相当し、それを構成することが好ましい。特に、スート管は、前記ロッドと実質的に同じ加工および実質的に同じレベルのフッ素を含み、ロッドと管のそれぞれは、フッ素掃引のために少量のフッ素を含む。このロッド・イン・スート・アセンブリを、工程331について先に説明した様式で工程431において、乾燥し、好ましくは再度フッ素掃引し、固結して、固結アセンブリを形成する。次いで、この固結アセンブリを、工程466において、直径が約15mmの小さな直径のコアロッド(ケインと称されることもある)に好ましくは再度予備線引きする。次いで、オーバークラッド・シリカスートを、工程468におけるOVDにより、コア・ケイン上に堆積させることなどによって、コアケインに加える。次いで、このスートを、工程467において、乾燥し、フッ素でフラッド・ドープし(米国特許第4629485号明細書に教示されているように)、固結して、固結アセンブリに追加のフッ素ドープ・ガラスを加える。フッ素・ドーピングは、スートを、約60から120分間に亘り約1225℃の温度でフッ素含有ガス(SiF4またはCF4)に露出することによって固結炉内で行われ、その後、ドープされたスートを、炉の温度を約1450から1500℃まで上昇させ、スートのこの温度に約7から10分間に亘り下方駆動焼結炉内で露出することによって固結する。フッ素ガスは、固結の前に停止しても(ヘリウムのみを使用する)、プリフォームがヘリウムと組み合わされて固結を経ているときに流し続けてもよい。工程446,468および467をブロック472において繰り返して、追加の量のオーバークラッドを加えて、所望のコア/クラッド比を達成する。次いで、アルカリドープ・シリカコアおよびフッ素ドープ・クラッドを有する代表例のファイバを、従来の線引き装置および方法を使用して線引きする。この方法402にしたがって製造したファイバが図28に示されている。このファイバ446は、アルカリドープ・シリカを含むコア448およびフッ素ドープ・シリカのクラッド450を有する。コア448は、フッ素掃引からのわずかな質量%のフッ素を含む。
【0076】
第2組の好ましい光ファイバの実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、コアおよびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、ここで、コアは、クラッドに対して、全体が負ではない、好ましくは正の相対屈折率プロファイルを有する。コアが実質的にゲルマニアを含まないことが好ましく、コアがゲルマニアを全く含まないことがより好ましい。
【0077】
第2組の好ましい実施の形態におけるいくつかの好ましい実施の形態において、コアは、図1および、これまで論じたような、ステップ型、丸まった形状、アルファまたは三角形を有するプロファイルなどの、図1の例示のプロファイルの変更例に示したように、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントからなり、中央コア・セグメントはクラッドに対して正の屈折率Δ1(r)を有する。第2組の好ましい実施の形態の他の好ましい実施の形態において、コアは、中央コア・セグメントおよび中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接した第1の環状コア・セグメントなどの多数のコア・セグメント、並びに第1の環状コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドセグメントを有してなり、ここで、中央コア・セグメントは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の屈折率Δ1(r)を有し、第1の環状コア・セグメントは、クラッドに対して負ではない、好ましくは正の屈折率Δ2(r)を有する。
【0078】
第2組の好ましい実施の形態において、コアは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から700ppm、より好ましくは20から500ppmである。クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。光ファイバは、少なくとも0.02質量%、好ましくは0.15質量%より大きいフッ素濃度を有し、0.5から0.15質量%の最高フッ素濃度を有することが好ましい。コアは、0.1から0.4質量%のフッ素、より好ましくは0.15から0.4質量%のフッ素、ある好ましい実施の形態においては、0.2から0.3質量%のフッ素を含む。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、200ppm未満の塩素を含む。クラッドは、0.5質量%より多いフッ素、好ましくは1質量%より多いフッ素を含み、ある好ましい実施の形態においては、1から2質量%のフッ素を含む。
【0079】
第2組のある好ましい実施の形態において、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から700ppm、より好ましくは20から500ppm、さらにより好ましくは100から500ppmである。このとき、コアは、0.2%より大きいピーク相対屈折率Δ%(r)(クラッドに対して)を有し、他の好ましい実施の形態においては、コアはさらに、0.2から0.5%のピーク相対屈折率ΔMAXを有し、さらに他の好ましい実施の形態においては、コアは0.3から0.4%のピーク相対屈折率ΔMAXを有する。クラッドは、少なくとも0.02質量%のフッ素、好ましくは0.15質量%より多いフッ素を含み、0.5から1.5質量%の最大フッ素濃度を有する。
【0080】
第2組の他の好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率を有し、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が20から1000ppm、好ましくは20から500ppm、より好ましくは100から400ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、200ppm未満の塩素を含む。
【0081】
第2組のさらに他の実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率Δクラッド(r)を有し、コアは、フッ素と、K2Oからなるアルカリ金属酸化物とを有してなり、アルカリ金属酸化物のピーク濃度が100から400ppm、好ましくは200から300ppmであり、コアはさらに、0.2から0.5%の、好ましくは0.3から0.5%の、より好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中のアルカリ金属酸化物の最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素、さらにより好ましくは200ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、50ppm未満の塩素を含む。
【0082】
第2組のさらに他の実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、クラッドに対して正の屈折率プロファイルを、純粋なシリカに対して負の屈折率プロファイルを有する1つのコア・セグメント、すなわち、中央コア・セグメント、および中央コア・セグメントを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを有してなり、クラッドは純粋なシリカに対して負の屈折率プロファイルを有し、コアはフッ素と酸化カリウムを有してなり、酸化カリウムのピーク濃度が100から400ppm、好ましくは200から300ppmであり、コアはさらに、0.2から0.4%の、好ましくは0.3から0.4%のピーク相対屈折率(クラッドに対して)ΔMAXを有し、クラッド中の酸化カリウムの最高濃度は、好ましくは200ppm未満、より好ましくは50ppm未満である。この光ファイバはさらに、90質量%より多いSiO2、好ましくは95質量%以上のSiO2を有してなる。コアは、好ましくは500ppm未満の塩素、より好ましくは300ppm未満の塩素、さらにより好ましくは200ppm未満の塩素を含み、ある好ましい実施の形態においては、50ppm未満の塩素を含む。
【0083】
第3組の好ましい実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、ファイバは、コアの中央領域に実質的に制限された不純物を含む。この光ファイバは、0.20dB/km未満、好ましくは0.19dB/km未満、より好ましくは0.185dB/km未満、さらにより好ましくは0.180dB/km未満の、1550nmでの減衰を有する。コアは、約100質量ppb未満の-OHを含むことが好ましい。不純物は、中央領域の外側に位置するファイバ中の任意の不純物濃度よりも少なくとも20%大きい、中央領域の内部のピーク不純物濃度を有することが好ましく、ある実施の形態においては、中央領域の外側に位置するファイバ中の不純物濃度はゼロである。不純物は、遷移金属、結晶化アルカリ化合物、および吸蔵物、並びにそれらの組合せからなる群より選択される不純物であって差し支えない。
【0084】
第3組のいくつかの実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、コアはさらに、ピーク遷移金属濃度で遷移金属を有してなる中央領域を含み、中央領域の外部のファイバは、中央領域の内部のピーク遷移金属濃度の20%未満の最高遷移金属濃度を有する。様々な実施の形態において、中央領域の外側の最高遷移金属濃度はゼロである。中央領域は、中心線から5μm未満の半径まで延在することが好ましい。遷移金属の濃度は、5μmより大きい半径の全てで、約0.01モル%未満であることが好ましい。ある実施の形態において、中央領域の内部の遷移金属のピーク濃度は約0.1モル%よりも大きい。
【0085】
第3組の他の実施の形態において、光ファイバは、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を有してなるコア、およびコアを取り囲みかつ直接隣接したクラッドを含み、コアは、長手方向の中心線に沿って配置され、この光ファイバは、中心線と5μm未満の半径の間で約0.1モル%より大きいピーク濃度を有する遷移金属を含み、遷移金属の濃度は5μmより大きい半径の全てで、約0.01モル%未満である。
【0086】
ここに開示された実施の形態の全てにおいて、光ファイバは、クラッドの最も外側の直径を取り囲みかつ直接接触した一次被覆、および一次被覆を取り囲みかつ直接接触した二次被覆を有してなることが好ましい。
【0087】
ここに開示された光ファイバのいくつかの好ましい実施の形態において、光ファイバはさらに、その外面に最も外側の気密被覆を有してなる。この外部の気密被覆は、二次被覆を取り囲みかつ直接接触していることが好ましい。ある好ましい実施の形態において、ここに開示された光ファイバは、ゲルマニアとK2Oがドープされたコア、コアを取り囲みかつ直接接触したクラッド、クラッドを取り囲みかつ直接接触した一次被覆、一次被覆を取り囲みかつ直接接触した二次被覆、および二次被覆を取り囲みかつ直接接触した気密被覆を有してなる。米国特許第5152817号明細書には、気密被覆された光ファイバを製造するための方法および装置が記載されている。
【実施例】
【0088】
参考例1
図11を参照して先に説明した方法にしたがって、K2Oドープ・ガラスコア・ロッドを形成した。図17に示したように、ガラスコア・ロッドは、ガウス曲線に類似の半径の関数としてのK2O濃度164を有した。曲線166は、純粋なシリカに関するガラスロッドの相対屈折率を示している。K2O拡散のための出発管は純粋な(未ドープの)シリカであった。コア・ロッドは、ロッドの中心線168辺りで約1質量%の最大値を持つK2O濃度164を有した。ロッドの外側部分に相当する部分171は、アルカリが実質的にドープされていないことが好ましい。特に、ドーピングは、ロッドの外側半分がアルカリの最低濃度を有し、内側半分が最高濃度を有するようなものである。より詳しくは、外側半分のアルカリドーパントのピーク濃度は、内側半分のアルカリドーパントのピーク濃度の好ましくは50%未満、より好ましくは25%未満である。
【0089】
参考例2
図11を参照して先に説明した方法にしたがって、Na2Oドープ・ガラスコア・ロッドを形成した。図18に示したように、ガラスコア・ロッドは、ガウス曲線に類似の半径の関数としてのNa2O濃度170を有した。曲線172は、純粋なシリカに関するガラスロッドの相対屈折率を示している。このロッドは、ロッドの中心線172辺りで約2質量%の最大値を持つNa2O濃度170を有した。
【0090】
実施例1
ここに開示し、図12に示した方法を用いて、シリカ管にK2Oをドープした。アルカリ金属供給源化合物110はKIであった。バーナ114を用いて、KIを約1100から1200℃の温度まで加熱した。アルカリ金属供給源化合物110が蒸発するまで、バーナ124を、順方向では約220mm/分の速度で、反対方向では約400mm/分の速度で、管106に沿って移動させた。リザーバ108を管106から切断し、管106をコラプスして第1のガラスロッドを形成した。第1のガラスロッドを、13時間に亘り49%のHF中でエッチングした。次いで、第1のガラスロッドを旋盤に配置し、シリカガラススートを従来の外付け気相成長法で第1のガラスロッド上に堆積させて、第1の複合ガラス物品を形成した。第1のガラス物品を、従来の固結ドーピングによって、固結させ、乾燥させ、Fドープし、次いで、線引きして第2のガラスロッドを形成した。第2のガラスロッドを、ロッドの直径に亘りマイクロプローブで測定した。図19は、第2のガラスロッドの直径に亘る、K2O(曲線176)、Cl(曲線178)およびF(曲線180)の濃度を示している。第2のガラスロッドを旋盤に配置し、追加のシリカスートを第2のガラスロッド上に堆積させて、第2の複合ガラス物品を形成した。第2のガラス物品を、従来の方法によって、固結し、乾燥させ、Fドープし、次いで、第3のガラスロッドを形成した。第3のガラスロッドを旋盤に配置し、従来の外付け気相成長法でシリカスートを第3のガラスロッド上に堆積させて、第4の複合ガラス物品を形成した。第4のガラス物品を、固結中に、固結し、Clガスで乾燥させ、Fドープして、光ファイバに線引きするための準備ができている光ファイバ・プリフォーム(線引きプリフォーム)を形成した。この光ファイバ線引きプリフォームを、70gのファイバ張力で7m/sで光ファイバに線引きした。この光ファイバは、1150nmのカットオフ波長(2メートル長のファイバで測定して)、および1550nmでの0.17dB/kmの減衰を有した。光ファイバのマイクロプローブ分析を行った。半径の関数としての光ファイバ中のドーパント濃度が図20に示されている。ここで、曲線182はK2Oの濃度を質量%で表し、曲線184はFの濃度を質量%で表している。
【0091】
比較例1
ガラス管にGeO2をドープすることによって、別の光ファイバを製造した。次いで、そのガラス管に、ここに記載した拡散方法によってK2Oをドープし、コラプスし、K2O−GeO2ドープ・ガラスロッドに線引きした。従来の外付け気相成長法でロッドにガラススートを堆積させることによってオーバークラッドし、次いで、従来のように固結して、光ファイバ線引きプリフォームを形成した。固結プロセス中に、オーバークラッドしたスートにFをドープした。線引きプリフォームを、コアに関するピーク相対屈折率%Δが約0.75%のステップ型屈折率のコアを有する単一モード光ファイバに線引きした。光ファイバのマイクロプローブ分析を行った。半径の関数としての光ファイバ中のドーパント濃度のプロットが図21に示されている。ここで、曲線186はK2Oの濃度を質量%で表し、曲線188はFの濃度を質量%で表し、曲線190はGeO2の濃度を質量%で表している。
【0092】
参考例3
本発明にしたがって、GeO2を含有するSiO2ガラス管にK2Oをドープした。この管を、往復運動しているH2/O2バーナの火炎により加熱することによってコラプスし、約15mmから17mmの直径を有する大きな直径の中実のガラスロッドを形成した。このバーナの火炎は、約1.5cm/分から2cm/分の速度で往復運動していた。火炎の温度は、約2150℃から2200℃の間であった。大きな直径のガラスロッドの外側を、49%のHF溶液中で約8時間に亘りエッチングして、ロッドの表面にあった不純物を除去した。大きな直径のガラスロッド中のK2Oのピーク量は、約1.5質量%から2質量%であった。大きな直径のガラスロッドは、純粋なシリカに対して、約0.35%から0.4%の相対屈折率を有した。次いで、大きな直径のガラスロッドを従来の線引き方法によって線引きして、約6mmの直径を有する小さな直径のガラスロッドを得た。この小さな直径のガラスロッドを多数のセクションに切断した。ガラススートを標的またはベイト・ロッド上に堆積させる外付け気相成長法によって、多孔質ガラススートコア・プリフォームを製造した。この多孔質ガラススートコア・プリフォームは、コアガラススートおよびクラッドガラススートの少なくとも一部分を含んでいた。多孔質スート・プリフォームが一旦形成されたら、標的ロッドを取り外し、プリフォームの中心線に沿って孔を残した。K2OおよびGeO2を有してなる小さな直径のガラスロッドをこの多孔質ガラススート・プリフォームの中心孔中に挿入して、第1の複合プリフォームを形成した。次いで、第1の複合プリフォームを従来の固結炉内で固結して、固結したコア・プリフォームを形成した。固結したコア・プリフォームを従来の予備線引き炉内で線引きして、第2のガラスコアロッドを形成した。第2のガラスコアロッドを多数のセクションに切断した。第1のコアロッド・セクションをガラス形成旋盤に配置し、追加のクラッド・ガラススートを第1のコアロッド上に堆積させて、第2の複合プリフォームを形成した。第2の複合プリフォームを従来の固結炉内で固結し、固結した線引きプリフォームを形成した。次いで、線引きプリフォームを従来の方法によって光ファイバに線引きして、K2OおよびGeO2がドープされたコアを有する光ファイバを形成した。残りのダイのガラスコア・ロッドの各セクションを同様の様式で加工して、線引きプリフォームを得て、これらの線引きプリフォームを光ファイバに線引きした。これらの光ファイバを、EIA/TIA FOTP−78によるスペクトル減衰測定および光パルス反射波時間領域測定(ODTR)EIA/TIA FOTP−60の両方を使用して、光学損失(減衰)について測定した。測定結果が以下の表1に与えられている。表1において、MFDは1310nmの波長で測定した光ファイバのモードフィールド径を表し、ファイバのカットオフ波長は、EIA/TIA FOTP−80にしたがって、2メートル長のファイバについて測定したカットオフ波長である。
【表1】
【0093】
参考例4
ここに開示した方法にしたがって、第1のシリカガラス管にRb2Oをドープした。管を加熱し、コラプスして、中実のガラスコアロッドを形成した。第2のシリカガラス管も、ここに開示した方法にしたがって、Cs2Oをドープした。第2のガラスロッドをさらに加熱し、コラプスして、Cs2Oがドープされた第2の中実ガラスコアロッドを形成した。Rb2Oドープ・ガラスコアロッドおよびCs2Oドープ・ガラスコアロッドの両方を、各ガラスロッドの中心線近くのガラスロッドの直径の一部分に亘って電子マイクロプローブで測定した。各ガラスロッドの直径に亘り測定したRb2OおよびCs2Oの濃度が、それぞれ、図22および図23に示されている。図22において、曲線192はガラスコアロッドの直径の一部分に亘るRb2Oの濃度を表し、曲線194はFの濃度を表している。図22において、曲線196はガラスコアロッドの直径の一部分に亘るCs2Oの濃度を表し、曲線198はFの濃度を表している。
【0094】
実施例2
前出の参考例3からのコアロッドを用いて、光ファイバを製造した。この光ファイバは、図24に示すような、屈折率プロファイルおよびK2O濃度を有していた。図24において、曲線200はコアの屈折率プロファイルを表し、曲線202は半径の関数としてのK2Oの濃度を表している。この光ファイバは、光パルス反射波領域測定(OTDR)により測定したときの1550nmで0.1827dB/kmの減衰、および1310nmでの9.52μmのモードフィールド径を有した。この光ファイバは、約1519nmのカットオフ波長、1308.2nmのゼロ分散波長、および0.088ps/nm2/kmのゼロ分散波長での分散スロープを有した。この光ファイバは、150gのファイバ張力および10m/sの線引き速度で線引きした。
【0095】
実施例3
図31は、図25により示された方法にしたがって製造された、ここに開示された第1組の好ましい光ファイバの実施の形態に属する光ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ΔMAX=0.41%、半値全幅(HHPW)が4.4μm、Rコア=7.1μm、およびクラッドは62.5μmの半径まで延在する。拡散尾部は、クラッド中に7.1μmから約22μmまで延在する。
【0096】
図32は、図31のファイバに測定した、K2O、GeO2、FおよびClの濃度プロファイルを示している。表2は図32を要約している。
【表2】
【0097】
表3は、図31および32の光ファイバの測定した性質を列記している。
【表3】
【0098】
実施例4,比較例2,3
図33は、実施例3(図31により表される)のファイバにおけるK2Oの濃度プロファイルおよびK2Oドーパントプロファイルを除いて実施例3に一般的に類似した実施例4、比較例2、3の光ファイバにおけるK2Oの濃度プロファイルを示している。表4は、実施例3、4、比較例2、3に関する、K2Oプロファイルのピーク濃度および半値全幅並びに1550nmでの対応して測定した減衰を列記している。比較例3は、最低のK2Oピーク、最低のK2Oプロファイル、および最高の減衰を有した。K2Oの存在による減衰の減少は、約20ppm未満のピークK2O濃度について、次第に減少したことが分かった。
【表4】
【0099】
参考例5
図34は、図26により示された方法にしたがって製造された、ここに開示された第2組の好ましい光ファイバの実施の形態に属する光ファイバの相対屈折率プロファイルを示している。ΔMAX=0.33%、半値全幅(HHPW)が4.4μm、Rコア=4.7μm、およびクラッドは62.5μmの半径まで延在する。コア中のK2Oの平均濃度は250ppmである。
【0100】
表5は、図34の光ファイバの測定した性質を列記している。
【表5】
【0101】
参考例6から10
ここに開示された第2組の好ましい実施の形態に属する追加の代表的な光ファイバを図26に示した方法にしたがって製造した。この光ファイバは、図34に類似の屈折率プロファイルを有する。コア中のK2O濃度が高い比較のための光ファイバの参考例11も製造し、測定した。
【0102】
表6は、参考例6から11に関する測定値を列記している。
【表6】
【0103】
参考例11は、1550nmで測定した高い減衰を有した。
【0104】
図35は、参考例8のK2O、F、およびClの濃度プロファイルを示している。コア中のK2Oのピーク濃度は400ppmであり、K2O濃度プロファイルの半値全幅(FWHM)は4.8μmである。
【0105】
本発明の精神および範囲から逸脱せずに、本発明の様々な改変や変更を行ってもよいことが当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明は、本発明の改変および変更を、それらが添付の特許請求の範囲およびその同等物に入るという条件で、包含することが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第2のドーパントを、20から1000ppmのピーク濃度で有してなるシリカベースのコア、および
前記コアを取り囲みかつ直接隣接したシリカベースのクラッド、
を有してなる光ファイバであって、
前記コアが、前記クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを有する光ファイバ。
【請求項1】
ゲルマニア、フッ素およびそれらの混合物からなる群より選択される第1のドーパントと、K2Oからなるアルカリ金属酸化物を含む第2のドーパントを、20から1000ppmのピーク濃度で有してなるシリカベースのコア、および
前記コアを取り囲みかつ直接隣接したシリカベースのクラッド、
を有してなる光ファイバであって、
前記コアが、前記クラッドに対して、0.2%より大きいピーク相対屈折率ΔMAXを持つ屈折率プロファイルを有する光ファイバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2013−14505(P2013−14505A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162715(P2012−162715)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2006−524928(P2006−524928)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2006−524928(P2006−524928)の分割
【原出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]