説明

アルカリ電池正極用結合剤及びアルカリ電池

【課題】長期に亘る放電特性(放電量及び放電時間)の維持に優れたアルカリ電池正極用結合剤及びそれを用いたアルカリ電池を提供する。
【解決手段】水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又はビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含んでなり、架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)を含んでなり、(b)の重量が0.05〜2重量%であり、(b1)の重量が0.01〜2重量%であり、且つ下記の要件(1)及び(2)を具備してなるアルカリ電池正極用結合剤。要件(1):結合剤の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率が5〜80g/gである。要件(2):40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤2重量部を撹拌混合して調製し、25℃で24時間放置した後の配合物(D)の粘度(25℃)が1〜500Pa・sである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池正極用増粘剤及びアルカリ電池に関する。更に詳しくは、正極活物質と導電剤を主とするアルカリ電池の正極用の結合剤に使用するアルカリ電池正極用結合剤及びこの結合剤を使用したアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルカリ電池の正極には、正極活物質(二酸化マンガンを主とするもの)と導電剤(黒鉛)と結合剤とを含む正極が使用されており、酸化亜鉛の析出と、それに伴う内部短絡を防止する目的で、ポリアクリル酸及びその塩を結合剤として使用したものが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルカリ電池は近年さらなる高性能化が要求されるようになり、この結合剤を使用するアルカリ電池は、アルカリ電池の最も重要な特性である、長期に亘る放電特性(放電量及び放電時間)の維持の点で必ずしも満足し得ない。さらに正極の生産効率アップの点でも満足し得ない。
そこで、本発明は長期に亘る放電特性(放電量及び放電時間)の維持に優れたアルカリ電池正極用結合剤及びそれを用いたアルカリ電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤(C)は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含んでなる結合剤であって、
架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)を含んでなり、
架橋剤(b)の重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.05〜2重量%であり、
加水分解性架橋剤(b1)の重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.01〜2重量%であり、
且つ下記の要件(1)及び(2)の要件を具備してなることを要旨とする。
要件(1):(C)の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率が5〜80g/gであること。
要件(2):40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤2重量部を撹拌混合して調製し、25℃で24時間放置した後の配合物(D)の粘度(25℃)が1〜500Pa・sであること。
本発明のアルカリ電池正極は、上記のアルカリ電池正極用結合剤、二酸化マンガン及び黒鉛を含有してなることを要旨とする。
本発明のアルカリ電池は、上記の正極と、亜鉛又は亜鉛粉末を含んでなる負極と、水酸化カリウム水溶液を含んでなる電解液とを有してなることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤及びこの結合剤を使用したアルカリ電池正極及びアルカリ電池は次の効果を奏する。
(1)本発明の結合剤を使用した場合、結合剤量が少量でかつ長期間に亘って、放電の持続時間に極めて優れたアルカリ電池を作成することができる。
(2)電解液の吸液量にバラツキが少ないため、大量生産時も均一な品質を有するアルカリ電池を生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明において、水溶性ビニルモノマーとは、25℃の水100gに少なくとも100g溶解する性質を持つビニルモノマーを意味する。
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により水溶性ビニルモノマー(a1)となるビニルモノマー(a2)としては特に限定がないが、例えば、特開2005−075982号公報に記載の水溶性ラジカル重合単量体が挙げられる。これらのうち、放電特性の観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)が好ましく、さらに好ましくはアニオン性ビニルモノマー、特に好ましくは炭素数3〜30のビニル基含有カルボン酸(塩){不飽和モノカルボン酸(塩)((メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸及びこれらの塩等);不飽和ジカルボン酸(塩)(マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸及びこれらの塩等);及び前記不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル(マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、マレイン酸のエチルカルビトールモノエステル、フマル酸のエチルカルビトールモノエステル、シトラコン酸モノブチルエステル及びイタコン酸グリコールモノエステル等}、次に好ましくは不飽和モノカルボン酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。
【0008】
なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味し、「・・・酸(塩)」とは「・・・酸」及び/又は「・・・酸塩」を意味する。塩としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム等のアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0009】
架橋重合体(A)に含まれる水溶性ビニルモノマー(a1)単位がアニオン性ビニルモノマーの場合、これは未中和体であっても、中和体(水溶性ビニルモノマー塩単位)であっても構わないが、架橋重合体(A)の粘着性低減や分散性改良、架橋重合体(A)を製造する上での作業性の改良等の目的で水溶性ビニルモノマー(a1)単位の一部あるいは全てを中和して水溶性ビニルモノマー塩単位とするのが好ましい。
【0010】
(a1)としてアニオン性ビニルモノマーを使用した場合に、(A)に含まれるアニオン性ビニルモノマー由来のアニオン部分を中和物としたい場合は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属、水酸化カルシウム等の水酸化アルカリ土類金属又はこれらの水溶液を、重合前のモノマー段階、あるいは重合後の含水ゲルに添加すれば良い。一方、後述するアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)は水溶性が乏しいため、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度が高い状態で重合すると、所定量の架橋剤(b2)を添加しても架橋剤(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えず規定の物性の架橋重合体(A)が得られない場合がある。この架橋剤(b2)の分離を抑制する観点から、水溶性ビニルモノマー(a1)の中和度を0〜30モル%としておいて、架橋剤(b2)を含有させて重合を行った後、必要により含水ゲルに水酸化アルカリ金属を添加して中和度を調整する方がより好ましい。
【0011】
架橋重合体(A)の水溶性ビニルモノマー(a1)として、アニオン性ビニルモノマー{最も好ましくはアクリル酸(塩)}を使用する場合、アニオン性ビニルモノマーの最終的な中和度{アニオン性ビニルモノマーのアニオン基及びアニオン塩基の合計モル数に基づく、アニオン塩基の含有量(モル%)}は、30〜100が好ましく、さらに好ましくは40〜90、特に好ましくは50〜90がより好ましい。この範囲であると、アルカリ電池の放電特性がさらによくなる。なお、アニオン塩基とは中和されたアニオン基を意味する。
【0012】
水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の含有量は、結合剤の吸収能の観点から、(a1)、(a2)、アルカリ性で加水分解する架橋剤(b1)並びにアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)の合計重量に対して、98.0〜99.90重量%が好ましく、さらに好ましくは99.0〜99.85重量%、特に好ましくは99.2〜99.83重量%である。
【0013】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又はビニルモノマー(a2)は、それぞれ、単独で構成単位としてもよく、2種以上を構成単位としてもよい。
【0014】
水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)のうち、結合剤の吸収能の観点から、(a1)が好ましく、さらに好ましくは(a1)を単独で構成単位とすることである。
水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)の両方を構成単位とする場合、これらのビニルモノマー単位のモル比{(a1)/(a2)}は、アルカリ電池の放電特性の観点から、75/25〜99/1が好ましく、さらに好ましくは85/15〜98/2、最も好ましくは90/10〜95/5である。
【0015】
架橋重合体(A)は、架橋剤(b)を用いて架橋する。架橋剤(b)には、アルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)及びアルカリ性で加水分解しない架橋剤(b2)が含まれる。本発明において、架橋剤(b)としては、アルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)を必須の架橋剤として使用する。
この加水分解性架橋剤(b1)を使用することにより、結合剤の密着性がさらに向上し、アルカリ電池正極の強度を維持することできるため、長期間に亘る放電を維持することができる。さらに電解液の吸液量が小さく、バラツキが少ないため、アルカリ電池の電解液量の偏りも小さくなるので好ましい。
【0016】
アルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)において「アルカリ性で加水分解する」とは、架橋重合体(A)において(b1)に由来する単位が加水分解性結合を有することを意味し、加水分解性結合は、架橋剤(b1)がもともと分子内に有する結合であってもよいし{この場合の架橋剤を分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b1−1)とする}、架橋重合体(A)を構成する他の単量体{(a1)又は(a2)}と架橋反応して生成する結合が加水分解するものであってもよい{この場合の架橋剤を架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b1−2)とする}。結合剤の粘度安定性の観点から、加水分解性架橋剤(b1)に由来する加水分解性結合が、25℃で40重量%水酸化カリウム水溶液中に結合剤を1重量%添加し、1時間攪拌したときに50重量%以上が分解することが好ましい。
加水分解性結合としてはエステル結合及びアミド結合等が含まれる。
【0017】
分子内に加水分解性結合を有する架橋剤(b1−1)としては、分子内に2〜10のエチレン性不飽和結合を有する共重合性架橋剤が含まれ、例えば、N,N'−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアクリレート等が挙げられる。
【0018】
架橋反応して生成する結合が加水分解性の架橋剤(b1−2)としては、(a1)としてカルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ビニルモノマーを使用した場合に、このモノマー由来のカルボキシル基又はカルボキシレート基と反応する反応型架橋剤が含まれ、多価グリシジル化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル等)、多価イソシアネート化合物(4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等)、多価アミン化合物(エチレンジアミン等)及び多価アルコール化合物(グリセリン等)等が挙げられる。反応型架橋剤は、カルボキシル基又はカルボキシレート基を有するアニオン性ビニルモノマー{(メタ)アクリル酸(塩)等}と反応してエステル結合又はアミド結合を形成することができる。
【0019】
アルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)のうち、結合剤の粘度安定性の観点から、架橋剤(b1−1)及び多価グリシジル化合物が好ましく、さらに好ましくはN,N'−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び多価グリシジル化合物、次にさらに好ましくはN,N'−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテル、特に好ましくはN,N'−メチレンビスアクリルアミド、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びエチレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0020】
架橋剤(b1−2)を使用した場合は、架橋剤添加後、任意の段階で、100〜230℃に加熱し架橋反応を進行させるのが好ましく、より好ましくは120〜160℃に加熱し架橋反応を進行させる。また、架橋剤(b1−2)は、所定量の範囲で2種以上、更には架橋剤(b1−1)と併用しても良い。
【0021】
アルカリ性で加水分解しない非加水分解性架橋剤(b2)は、加水分解性結合を分子内に有さず、かつ、架橋反応により加水分解性結合を生成しない架橋剤である。このような架橋剤(b2)としては、2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b2−1)及び2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b2−2)等が挙げられる。反応性等の観点から、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤が好ましい。
【0022】
2個以上のビニルエーテル結合を有する架橋剤(b2−1)としては、エチレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル(重合度2〜5)、ビスフェノールAジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ソルビトールトリビニルエーテル及びポリグリセリン(重合度3〜13)ポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0023】
2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b2−2)としては、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b2−2−1)、分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b2−2−2)、分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b2−2−3)、分子内にアリル基が3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b2−2−4)等が挙げられる。分子内に水酸基を含むと、ビニルモノマー(a1)及び/又は(a2){特に(メタ)アクリル酸(塩)}との相溶性が良く、架橋の均一性がアップして結合剤の密着性が向上し、アルカリ電池正極の強度がさらに優れる。
【0024】
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を含まない架橋剤(b2−2−1)としては、ジアリルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル、アルキレン(炭素数2〜5)グリコールジアリルエーテル、及びポリエチレングリコール(重量平均分子量:100〜4000)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b2−2−2)としては、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル及びペンタエリスリトールジアリルエーテル、ポリグリセリン(重合度2〜5)ジアリルエーテル等が挙げられる。
分子内にアリル基を3〜10個有しかつ水酸基を有さない架橋剤(b2−2−3)としては、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル及びテトラアリルオキシエタン等が挙げられる。
分子内にアリル基が3〜10個有しかつ水酸基を1〜3個有する架橋剤(b2−2−4)としては、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル及びジグリセリントリアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ポリグリセリン(重合度3〜13)ポリアリルエーテル等が挙げられる。
【0025】
アルカリ性で加水分解しない非加水分解性架橋剤(b2)は2種以上を併用してもよい。
架橋剤(b2)のうち、2個以上のアリルエーテル結合を有する架橋剤(b2−2)が好ましく、さらに好ましくは水酸基1〜5個及びアリル基を2〜10個有する架橋剤{(b2−2−2)及び(b2−2−4)}、特に好ましくは分子内にアリル基を2個有しかつ水酸基を1〜5個有する架橋剤(b2−2−2)、最も好ましくはトリメチロールプロパントリアリルエーテル及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルである。これらの架橋剤を用いると、水溶性ビニルモノマー(a1)及びビニルモノマー(a2)との相溶性が良く効率的な架橋が行えるので好ましい。
【0026】
本発明において、架橋剤(b)の含有量は、(a1)及び(a2)の合計重量に対して、0.05〜2重量%であり、架橋剤(b)の種類、平均重合度にもよるが、吸収性樹脂の吸収能の観点から、0.05〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%、特に好ましくは0.2〜0.6重量%である。(b)の含有量が、0.05重量%未満では、荷重下吸収量、2重量%を超えるとアルカリ電池正極の強度が悪くなる。
【0027】
本発明において、アルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)の含有量は、(a1)及び(a2)の合計重量に対して、0.01〜2重量%であり、架橋剤(b1)の種類、平均重合度にもよるが、吸収性樹脂の吸収能の観点から、0.05〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.08〜0.78重量%、特に好ましくは0.17〜0.57重量%である。(b)の含有量が、0.01重量%未満では、荷重下吸収量が悪くなり、2重量%を超えるとアルカリ電池正極の強度が悪くなる。
【0028】
架橋重合体(A)中のアルカリ性で加水分解しない非加水分解性架橋剤(b2)の含有量は、架橋剤(b2)の種類にもよるが、吸収性樹脂の吸収能の観点から、0〜1.99重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜0.95重量%、特に好ましくは0.02〜0.72重量%、最も好ましくは0.03〜0.54重量%である。この範囲であると、アルカリ電池正極の強度を維持することできるため、長期に亘る放電特性がさらに優れる。
【0029】
本発明のアルカリ電池正極用結合剤は、下記(1)及び(2)の要件を具備する。
要件(1)は、アルカリ電池の電解液量の偏りを小さくするために必要な要件である。
また、要件(2)は放電特性の向上に必要な要件である。
【0030】
要件(1):結合剤の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率が5〜80g/gであること。
要件(2):40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤2重量部を撹拌混合して調製し、25℃で24時間放置した後の配合物(D)の粘度(25℃)が1〜500Pa・sであること。
【0031】
要件(1)において、結合剤の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率が5〜80g/gであり、アルカリ電池の生産性の観点から、好ましくは8〜70g/g、さらに好ましくは10〜60g/gである。吸収倍率が、5g/g未満では正極の強度が弱くなり、80g/gを超えるとアルカリ電池の電解液量の偏りが大きくなる。
【0032】
なお、上記の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率は以下の方法で測定する。
<40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率の測定方法>
塩化ナトリウム水溶液の代わりに40重量%水酸化カリウム水溶液を使用し、静置時間を24時間、水切り時間を30分とする以外はJIS K7223−1996に準拠して40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率を測定する。
【0033】
40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率を、上記要件(1)の範囲に調整する方法としては、架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)の合計重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.05〜2重量%を満たすとよい。もし、吸収倍率が高かった場合は、前記範囲内で(b2)の量を増やし、吸収倍率が低かった場合は、前記範囲内で(b2)の量を減らすことで吸収倍率を上記数値範囲とすることができる。
【0034】
要件(2)において、配合物(D)の粘度(25℃)が1〜500Pa・sであり、アルカリ電池の放電特性の向上観点から、好ましくは2〜450Pa・s、特に好ましくは3〜400Pa・sである。500Pa・sを超えると正極活物質及び導電剤との分散性が悪くなり、1Pa・s未満であるとアルカリ電池正極の強度が悪くなる。
【0035】
配合物(D)は、40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤2重量部を撹拌混合して調製し、25℃で24時間放置した後の配合物である。
【0036】
この配合物(D)の粘度は以下の方法で測定する。
<配合物(D)の粘度の測定方法>
デジタル粘度計DV−II+Pro(ブルックフィールド社製)を用いて、測定温度25℃での配合物(D)の粘度を、JIS7117−1:1999に準拠して測定し、配合物(D)の粘度とする。なお、ローターNo.64を使用し、回転数3rpmで測定する。
【0037】
配合物(D)の粘度を上記要件(2)の範囲に調整する方法としては、架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)の合計重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.05〜2重量%を満たすとよい。もし、粘度が高かった場合は、前期範囲内で(b2)の量を増やし、粘度が低かった場合は、前期範囲内で(b2)の量を減らすことで満たすことができる。
【0038】
本発明の結合剤の20g/cm2荷重下40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量は2〜10g/gあることが好ましく、さらに好ましくは2〜8g/g、特に好ましくは3〜7g/g、最も好ましくは3〜6g/gである。この範囲であると長期に渡る放電特性がさらに優れる。
【0039】
なお、20g/cm2荷重下40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量とは、20g/cm2の荷重下における、40重量%水酸化カリウム水溶液に1時間浸漬後の結合剤の吸収量(荷重下吸収量)であり、以下のようにして測定される。
【0040】
<荷重下吸収量の測定方法>
目開き63μm(JIS Z8801−1:2006)のナイロン網を底面に貼った円筒型プラスチックチューブ(内径:25mm、高さ:34mm)内に、250〜500μmの粒子径にふるい分けした測定試料0.16gを秤量し、円筒型プラスチックチューブを垂直にしてナイロン網上に測定試料がほぼ均一厚さになるように整えた後、この測定試料の上に分銅(重量:310.6g、外径:24.5mm、)を乗せる。この円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M1)を計量した後、40重量%水酸化カリウム水溶液60mlの入ったシャーレ(直径:12cm)の中に測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブを垂直に立ててナイロン網側を下面にして浸し、60分静置する。60分後に、円筒型プラスチックチューブをシャーレから引き上げ、これを斜めに傾け、垂れた水滴を除去した後、測定試料及び分銅の入った円筒型プラスチックチューブ全体の重量(M2)を計量し、次式から荷重下吸収量を求める。なお、使用する40重量%水酸化カリウム水溶液及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃である。
荷重下吸収量(g/g)={(M2)−(M1)}/0.16
【0041】
荷重下吸収量を上記範囲に調整する方法としては、架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)の合計重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.05〜2重量%を満たすとよい。もし、荷重下吸収量が高かった場合は、前期範囲内で(b1)又は(b2)の量を減らし、荷重下吸収量が低かった場合は、前期範囲内で(b1)又は(b2)の量を増やすことで満たすことができる。
【0042】
本発明の結合剤における、重合していない水溶性ビニルモノマー(a1)、ビニルモノマー(a2)及び架橋剤(b)の合計含有量は(C)の重量を基準として10〜500ppmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜400ppm、特に好ましくは30〜300ppm、最も好ましくは40〜200ppmである。この範囲であると長期に渡る放電特性がさらに優れる。
【0043】
なお、重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量とは、架橋重合体の構成単位として含有する(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量を意味するのでは無い。重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量は、特開2006−219661号公報に記載されている以下の方法で測定、算出する。
【0044】
<重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量測定方法>
300mlのビーカーに、測定試料1.0g及び0.9重量%食塩水249.0gを加えて、20〜30℃で3時間攪拌した後、不溶分をろ別してろ液を得る。このろ液を高速液体クロマトグラフィー法(以下の条件)により既知濃度のビニルモノマー又は架橋剤を用いて作成した検量線を使用して、(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量を求める。
測定条件
カラム:SCR−101H(長さ0.3m×内径7.9mm、株式会社島津製作所製)
展開溶液:0.015重量%リン酸水溶液
流速:0.5ml/min
サンプル注入量:100μl
検出器:UV検出器、波長195nm
カラム温度:40℃
【0045】
後述の水溶液重合の場合、重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量を、(C)の重量を基準として10〜500ppmの範囲にする方法としては、特開平1−62317号公報に記載の還元性物質や特開平8−157737号公報に記載の水溶性チオール化合物等を水溶液又は水分散体として、架橋重合体(A)に添加、混合する方法が挙げられる。これらは一種類の方法のみでもよいし、二種類以上の方法を併用してもよい。
【0046】
還元性物質又は水溶性チオール化合物の添加量は、水溶性ビニルモノマー(a1)及び加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)の合計量に対して0.01〜5.0重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜4.0重量%、特に好ましくは0.03〜3.0重量%、最も好ましくは0.05〜2.0重量%の範囲を満たすと良い。
もし、重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量が上述の範囲を満たさない場合は、特開平1−62317号公報及び特開平8−157737号公報記載の添加方法において、必要により還元性物質又は水溶性チオール化合物水溶液又は水分散体として、後述の(A)の含水ゲルをアルカリで中和する工程の際に混合することで満たすことができる。
【0047】
逆相懸濁重合の場合、重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量を、(C)の重量を基準として10〜500ppmの範囲にする方法としては、特開2006−131767号公報に記載の(a1)、(a2)及び(b)の重合時の供給を調整する方法が挙げられる。
【0048】
(a1)、(a2)及び(b)の供給は、一定速度で連続的に行うことが好ましいが、供給速度を変化させてもよく、また途中で(a1)、(a2)及び(b)の供給を一時中断することもできる。(a1)、(a2)及び(b)の供給速度は、その全量を30〜180分で供給することが好ましく、さらに好ましくは45〜120分、特に好ましくは60〜80分の範囲を満たすと良い。
もし、重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量が上述の範囲を満たさない場合は、特開2006−131767号公報記載の重合方法において、必要により熟成工程を行うことで満たすことができる。
【0049】
次に、本発明の結合剤の製造方法について説明する。
架橋重合体(A)を得るための重合方法としては公知の重合方法が適用でき、たとえば、溶液重合、懸濁重合、塊状重合、逆相懸濁重合又は乳化重合のいずれでもよい。
【0050】
これらの重合方法のうち、吸収性樹脂の吸収能の観点から、溶液重合、懸濁重合、逆相懸濁重合及び乳化重合が好ましく、さらに好ましくは溶液重合、逆相懸濁重合及び乳化重合、特に好ましくは溶液重合及び逆相懸濁重合である。これらの重合には、公知の重合開始剤、連鎖移動剤及び/又は溶媒等が使用できる。
最も好ましくは、(メタ)アクリル酸(塩)を主体とするモノマー水溶液に架橋剤(b1)及び架橋剤(b2)を添加溶解し重合する水溶液重合法、及び分散剤の存在下、疎水性有機溶媒(例えばヘキサン、トルエン、キシレン等)中に同様なモノマー水溶液を分散・懸濁して重合する逆相懸濁重合法である。これらの重合方法であると、放電特性に優れた結合剤を得ることができる。
【0051】
(メタ)アクリル酸(塩)を水溶液重合法又は逆相懸濁重合法で重合する方法は、公知の方法で良く、例えばラジカル重合開始剤を用いて重合する方法、放射線、紫外線、電子線等を照射する方法があげられる。
【0052】
ラジカル重合開始剤を用いる場合、この開始剤としては、アゾ化合物[アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物[過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等]、有機過酸化物[ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等]、レドックス開始剤[アルカリ金属塩の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム、L−アスコルビン酸等の還元剤と、アルカリ金属塩の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の過酸化物の組み合わせ]等が挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
【0053】
重合温度は使用する開始剤の種類等によっても異なるが、ポリマーの重合度をアップする観点から、好ましくは−10℃〜100℃、より好ましくは−10℃〜80℃である。
開始剤の量に関しても、特に限定はないが、ビニルモノマー(a1)及び(a2)の合計重量に対して、ポリマーの重合度をアップする観点から、0.000001〜3.0重量%が好ましく、更に好ましくは0.000001〜0.5重量%である。
【0054】
水溶液重合の場合、単量体の重合濃度(重量%)は、他の重合条件によっても種々異なるが、(メタ)アクリル酸(塩)は、重合濃度を高くすると重合反応と並行してモノマー自体の架橋(自己架橋)が起こり易く、吸収量の低下やポリマーの平均重合度の低下を招くこと、また重合時の温度コントロールも行いづらくポリマーの平均重合度の低下やオリゴマー成分の増加を招きやすいので、重合濃度は、10〜40重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。また、重合温度に関しては、ポリマーの平均重合度の観点から、−10〜100℃が好ましく、より好ましくは−10〜80℃である。重合時の溶存酸素量に関しては、ラジカル開始剤の添加量等にもよるが、ポリマーの平均重合度の観点から、0〜2ppm(2×10-4重量%以下)が好ましく、より好ましくは0〜0.5ppm(0.5×10-4重量%以下)である。これらの範囲であると、吸収倍率に優れた架橋重合体(A)を製造することができる。
【0055】
(メタ)アクリル酸を使用する場合、重合時の(メタ)アクリル酸の中和度は、所定量の加水分解性架橋剤(b1)及び非加水分解性架橋剤(b2)がモノマー水溶液に完全に溶解できる中和度が好ましく、(b1)に比べて、(b2)は水溶性が乏しく、また特に(メタ)アクリル酸(塩)水溶液に対する溶解度は極めて低く所定量の(b2)を添加しても(b2)がモノマー水溶液から分離し所定の架橋が行えない場合がある。(b2)の溶解度の観点から、重合時の(メタ)アクリル酸の中和度は、0〜30モル%で重合を行ない必要により重合後に更に中和するのが好ましく、未中和の状態で重合した後必要により重合後に中和するのがより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸は、同一条件で重合を行った場合、中和度が低い方が重合度(吸収倍率)が上がりやすいため、ポリマーの重合度を大きくするためにも、中和度が低い状態で重合を行った方が好ましい。
【0056】
逆相懸濁重合法に関しては、ヘキサン、トルエン、キシレン等に代表される疎水性有機溶媒中で(メタ)アクリル酸(塩)の水溶液を、分散剤の存在下、懸濁・分散して重合する重合法であるが、この重合法においても、上記同様モノマー水溶液中のモノマー濃度は10〜40重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。この範囲であると、高重合度の架橋重合体(A)を製造することができる。
【0057】
尚、この逆相懸濁重合法に関しては、重合時に分散剤を使用してもよい。分散剤としては、公知の分散剤が使用でき、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance)が3〜8のソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖ジステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤;エチレン/アクリル酸共重合体のマレイン化物、エチレン/酢酸ビニル共重合体のマレイン化物、スチレンスルホン酸(塩)/スチレン共重合体等の分子内に親水性基を有し、かつ、モノマー水溶液を分散させる溶媒に可溶な高分子分散剤(親水性基;0.1〜20重量%、重量平均分子量;1,000〜1,000,000)等を例示できる。分散剤としては高分子分散剤を使用した方が、溶媒中でのモノマー水溶液の懸濁粒子の大きさを調整しやすく、必要とする粒子径の架橋重合体(A)の含水ゲルを作成できるので好ましい。
【0058】
分散剤の添加量は、アルカリ電池の放電特性の観点から、疎水性有機溶媒の重量に対して、0.1〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%である。
逆相懸濁重合におけるモノマー水溶液と疎水性有機溶媒との重量比(W/O比)は、0.1〜2.0が好ましく、0.3〜1.0がより好ましい。これらの範囲であると、架橋重合体(A)の粒子径がさらに調整しやすい。
【0059】
架橋重合体(A)の製造において、架橋剤を使用しない以外は全く同じ条件で重合体を製造した場合のポリマーの重量平均分子量が、5,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜1,000,000である。
重量平均分子量が、5,000以上となる条件で重合を行うと、適量の架橋剤を使用することにより結合剤を添加した高濃度アルカリ水溶液の粘度低下及び/又は曳糸性の増大を防止することが出来る。上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)にて測定される。
【0060】
水溶液重合又は逆相懸濁重合等により得た架橋重合体(A)は、水を含むゲル(含水ゲル)として得られる。含水ゲルは、通常乾燥した後に結合剤として使用する。
含水ゲルの乾燥方法に関しては、水溶液重合の場合、含水ゲルをミートチョッパーやカッター式の粗砕機でゲルをある程度細分化(細分化のレベルは0.5〜20mm角程度)あるいはヌードル化し、必要により水酸化アルカリ金属等を添加して含水ゲルの中和を行った後、透気乾燥(パンチングメタルやスクリーン上に含水ゲルを積層し、強制的に50〜150℃の熱風を通気させて乾燥する等)や通気乾燥(含水ゲルを容器中に入れ、熱風を通気・循環させ乾燥、ロータリーキルンの様な機械で更にゲルを細分化しながら乾燥する)等の方法を例示できる。これらの中で、透気乾燥が短時間で効率的な乾燥が行えるため好ましい。
一方、逆相懸濁重合の場合の含水ゲルの乾燥方法は、重合した含水ゲルと有機溶媒をデカンテーション等の方法で固液分離した後、減圧乾燥(減圧度;100〜50,000Pa程度)又は通気乾燥を行うのが一般的である。
【0061】
水溶液重合における含水ゲルの他の乾燥方法としては、例えば、ドラムドライヤー上に含水ゲルを圧縮延伸して乾燥する接触乾燥法等があるが、含水ゲルは熱伝導が悪いため、乾燥を行うためにドラム上等に含水ゲルの薄膜を作成する必要がある。しかし、通常市販のドラムドライヤーの材質は、鉄、クロム、ニッケル等の亜鉛よりイオン化傾向の低い金属で形成されているのが一般的であるため、含水ゲルあたりのドラム金属面と接触する頻度が極めて高くなり、また含水ゲルはポリ(メタ)アクリル酸(塩)の含水ゲルであるため、結合剤中の亜鉛よりイオン化傾向の低い金属元素の含有量が多くなる。さらに、該含水ゲルとドラムとの接触頻度が極めて高く、該含水ゲルは粘着性が高いため、ナイフの様なものをドラムドライヤーに接触させて乾燥物をドラムドライヤーから剥離させる必要があり、ドラムとナイフの機械的摩耗のためドラムあるいはナイフの金属面が摩耗し、金属が乾燥物中に混入する。以上の様に、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用すると、結合剤中に金属イオンや金属粉末が混入しやすく、これら亜鉛よりイオン化傾向の低い金属(標準電極電位が亜鉛よりも低い金属のことで、Cr、Fe、Ni、Sn、Pb、Cu、Hg、Ag等の原子記号で表せる金属)イオンや金属粉末をかなり多量に含有することになる。これらの結合剤をアルカリ電池用の結合剤として使用すると、電池中の亜鉛粉末が亜鉛よりイオン化傾向の低い金属イオン又は金属粉末との間で電池を形成するため、電気分解により水素ガスが発生し、それにより電池内部の圧力が上昇し、さらにはアルカリ電解液の流出やひどい場合は電池の破損を引き起こす場合がある。更に、含水ゲルをドラムドライヤー上等で圧縮延伸して乾燥した薄膜フィルム状乾燥物は、その後粉砕を行い乾燥物の粒径を所望の粒径に調整しても粒子が鱗片状となっているため、透気乾燥法や通気乾燥法でブロック状の乾燥物の粉砕物と比較すると遙かに強度が弱く、高濃度のアルカリ水溶液中で膨潤させ亜鉛粉末と機械的に攪拌混合すると、膨潤したゲルが破壊されてしまいゲルが小さくなる。従って、ドラムドライヤー等の接触乾燥法を利用しないのが好ましい。
【0062】
含水ゲル乾燥時の乾燥温度は、使用する乾燥機や乾燥時間等により種々異なるが、好ましくは、50〜150℃、より好ましくは80〜130℃である。乾燥温度が、150℃以下であると乾燥時の熱によりポリマーが架橋しにくく、熱架橋により架橋度が上がりすぎることがなく、吸収量が低下しないし、アルカリ電池正極の強度が低下しない。50℃以上であると乾燥に長時間を要さず効率的である。乾燥時間に関しても、使用する乾燥機の機種及び乾燥温度等により異なるが、好ましくは5〜300分、より好ましくは、5〜120分である。
【0063】
このようにして得られた架橋重合体(A)の乾燥物は、必要により粉砕して粉末化する。粉砕方法は、通常の方法でよく、例えば衝撃粉砕機(ピンミル、カッターミル、スキレルミル、ACMパルペライザー等)や空気粉砕機(ジェット粉砕機等)で行うことができる。
【0064】
粉末化した架橋重合体(A)は、必要により所望のスクリーンを備えたフルイ機(振動フルイ機、遠心フルイ機等)を用いて、所望の粒子径の乾燥粉末を採取することができる。
なお、乾燥後の任意の段階で、磁気を利用した除鉄機を用いて混入した鉄等の金属粉末を除去するのが好ましい。しかし、除鉄機を用いてかなり精密に除鉄を行っても、除鉄機では磁性のない金属を除去するのは困難であり、また磁性のある金属に関しても、乾燥したポリマー粒子内部に含まれているものや乾燥粒子に付着しているものは除去できないので、初めからこれら金属が混入しないように、生産設備に関しても、十分に配慮することが望ましい。
【0065】
本発明の結合剤を使用したアルカリ電池正極を適用できるアルカリ電池としては特に限定されず、通常のアルカリ電池、例えばLR−20(単1型アルカリ電池)、LR−6型(単3型アルカリ電池)はもとより、その他各種のアルカリ電池に適用できる。アルカリ電池は、通常、外装缶の中に正極、集電棒及びゲル負極が封入された構造を有し、正極とゲル負極とはセパレーター等により分離されている。
【0066】
本発明の結合剤を使用したアルカリ電池正極のアルカリ電池への充填方法は、本発明の結合剤、正極活物質(例えば二酸化マンガン)、導電剤(例えば黒鉛)及び必要により他の添加剤を事前混合した後、アルカリ電解液(例えば水酸化カリウム水溶液)を混合して正極合剤を作成し、続いて圧延、成型して得られた正極を容器内に充填する方法等を例示できる。
結合剤の添加量は、正極活物質及び導電剤の種類によっても異なるが、正極に対して0.03〜1.0重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。添加量がこの範囲であると、アルカリ電池正極の強度が高くなり、長期間に亘って、放電特性が優れる。
【0067】
本発明の結合剤は架橋重合体(A)以外に正極の作製時の流動性改善等を目的として、作業性や電池特性に問題が起こらない範囲で、必要により他の添加剤を含んでも良い。
他の添加剤としては、放電特性向上剤等が挙げられる。
【0068】
放電特性向上剤としては、二酸化珪素、珪酸カリウムなどの公知の化合物が挙げられる。
放電特性向上剤を含有する場合の含有量は、架橋重合体(A)に対して、0〜5.0重量%が好ましく、0〜3.0重量%が更に好ましい。
【0069】
他の添加剤を含有する場合の含有量は、架橋重合体(A)に対して、0〜5.0重量%が好ましく、0〜3.0重量%が更に好ましい。
【0070】
放電特性向上剤の添加方法は、本発明の結合剤と放電特性向上剤とを予めドライブレンドした後他の正極物質とブレンドする方法、正極の作製時に本発明の結合剤とは別に添加し混合する方法;を例示することができるが、必要により所定量の結合剤を添加できる方法であればいずれでも良い。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、超純水は電気伝導率0.06μS/cm以下の水、イオン交換水は電気伝導率1.0μS/cm以下の水を示す。
【0072】
実施例1
2リットルのビーカーに、アクリル酸300g、トリメチロールプロパントリアクリレート1.35g(対アクリル酸0.45%)及びイオン交換水700gを入れて撹拌混合してアクリル酸水溶液を調整し、4℃に冷却した。
アクリル酸水溶液を1.5リットルの断熱重合槽に入れ、水溶液に窒素を通じてアクリル酸水溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下とした。この断熱重合層に、0.1%過酸化水素水4.0g、0.1%L−アスコルビン酸水溶液4.0g及び10%2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−50)水溶液1.0gを添加し、重合が開始するまで水溶液中への窒素通気を継続した。重合が開始し、アクリル酸水溶液の粘度が上昇し始めたのを確認後、窒素通気を停止して6時間重合した。打点温度計でアクリル酸水溶液の温度を測定したところ、最高到達温度は、97℃であった。
尚、上記重合を上記の架橋剤を除いた以外は同じ条件で重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約27,000であった。
ブロック状の架橋された含水ゲルを断熱重合槽から取り出し、小型ミートチョッパー(ローヤル社製)を用いてゲルを3〜10mmの太さのヌードル状になるように細分化した後、40%水酸化ナトリウム(試薬特級)水溶液260g(アクリル酸の中和度75モル%相当)を加え含水ゲルを中和した。
中和した含水ゲルを、目開き850μmのSUS製のスクリ−ンの上に、厚さ5cmで積層し、小型透気乾燥機(井上金属株式会社製)を用いて120℃の熱風を1時間含水ゲルに透気させて、含水ゲルを乾燥した。
乾燥物をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて32〜500μm(400メッシュ〜40メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(1)を得た。
【0073】
実施例2
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート1.35g(対アクリル酸0.45%)に替えてN,N'−メチレンビスアクリルアミドの添加量を0.6g(対アクリル酸0.2%)とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(2)を得た。
【0074】
実施例3
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート1.35g(対アクリル酸0.45%)に替えてトリメチロールプロパントリアクリレートの添加量を1.05g(対アクリル酸0.35%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.36g(対アクリル酸0.12%)、とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(3)を得た。
【0075】
実施例4
実施例3において、トリメチロールプロパントリアクリレートに替えてトリエチレングリコールジメタクリレートの添加量を1.71g(対アクリル酸0.57%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.09g(対アクリル酸0.03%)、とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(4)を得た。
【0076】
実施例5
実施例3において、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.24g(対アクリル酸0.08%)、とした以外は、実施例3と同様にして、本発明の結合剤(5)を得た。
【0077】
実施例6
実施例3において、トリメチロールプロパントリアクリレートの添加量を0.6g(対アクリル酸0.20%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.75g(対アクリル酸0.25%)、とした以外は、実施例3と同様にして、本発明の結合剤(6)を得た。
【0078】
実施例7
実施例1で得られた結合剤(1)をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて45μm以下(350メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(7)を得た。
【0079】
実施例8
実施例1において、0.1%過酸化水素水の添加量を8.0gとした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(8)を得た。
なお、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレートを除いて重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約18,000であった。
【0080】
実施例9
実施例1において、0.1%過酸化水素水の添加量を2.0gとした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(9)を得た。
なお、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレートを除いて重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約38,000であった。
【0081】
実施例10
実施例1において、中和した含水ゲルに、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液45.2g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して1.5重量%}を加え、前記小型ミートチョッパーで含水ゲルに均一混錬した以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(10)を得た。
【0082】
実施例11
実施例10において、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液の添加量を15.1g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して0.5重量%}とした以外は、実施例10と同様にして、本発明の結合剤(11)を得た。
【0083】
実施例12
実施例10において、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液の添加量を90.4g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して3.0重量%}とした以外は、実施例10と同様にして、本発明の結合剤(12)を得た。
【0084】
実施例13
実施例10で得られた結合剤(10)をクッキングミキサーを用いて粉砕し、フルイを用いて45μm以下(350メッシュ)の粒径のものを採取し、本発明の結合剤(13)を得た。
【0085】
実施例14
実施例10において、トリメチロールプロパントリアクリレート1.35g(対アクリル酸0.45%)に替えて、トリメチロールプロパントリアクリレートを1.05g(対アクリル酸0.35%)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルを15.0g(対アクリル酸0.5%)とし、0.1%過酸化水素水の添加量を16.0g、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液の添加量を1.5g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して0.05重量%}とした以外は、実施例1と同様にして、本発明の結合剤(14)を得た。
なお、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルを除いて重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約12,000であった。
【0086】
実施例15
実施例14において、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を0.36g(対アクリル酸0.12%)、0.1%過酸化水素水の添加量を0.4g、10.0重量%亜硫酸ナトリウム水溶液の添加量を60.3g{アクリル酸(塩)と架橋剤との合計重量に対して2.0重量%}とした以外は、実施例14と同様にして、本発明の結合剤(15)を得た。
なお、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレート及びペンタエリスリトールトリアリルエーテルを除いて重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約75,000であった。
【0087】
比較例1
市販のカルボキシメチルセルロース(CMC2450、ダイセル化学工業株式会社製)を比較用の結合剤(H1)とした。
【0088】
比較例2
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレートに替えてペンタエリスリトールトリアリルエーテルの添加量を9.0g(対アクリル酸3.0%)とした以外は、実施例1と同様にして、比較用の結合剤(H2)を得た。
【0089】
比較例3
実施例1において、添加した重合開始剤(過酸化水素、アスコルビン酸、V−50)の添加量をそれぞれ10倍とし、イオン交換水のかわりに20%のエタノール水溶液{エタノール/水=20/80(重量比)}とした以外は、実施例1と同様にして、比較の結合剤(H3)を得た。
なお、架橋剤であるトリメチロールプロパントリアクリレートを除いて重合したポリマーの重量平均分子量をGPCを用いて測定したところ、ポリマーの重量平均分子量は約1,700であった。
【0090】
比較例4
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレートを使用しない以外は、実施例1と同様にして、比較の結合剤(H4)を得た。
【0091】
実施例1〜15で作成した結合剤(1)〜(15)及び比較例1〜4で作成した比較の結合剤(H1)〜(H4)の(1)吸収倍率、(2)配合物の粘度、(3)荷重下吸収量並びに(4)重合していない(a1)、(a2)及び(b)の合計含有量を前述した方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
さらに、本発明の結合剤(1)〜(15)及び比較の結合剤(H1)〜(H4)を用いて、(1)正極の破断強度及び(2)電池の持続時間を下記の方法で測定した。その結果を表2に示す。
【0094】
(1)正極の破断強度の測定方法
容量1リットルの2軸のニーダー(入江商会社製、品名:PNV−1)に、二酸化マンガン200g、黒鉛10g、結合剤0.6gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合した。続いてその混合物に40%水酸化カリウム水溶液5.3gを添加し、再び50rpmの回転速度で60分間混合した。次にこの混合物をプレス機にて圧延した後、粉砕機にて粒径100〜1000μm程度に粉砕、篩い分けした。さらにプレス機にて環状に成形し、正極を得た。
この作成した正極の加圧試験を行い、破損したときの圧力を測定し、これを破断強度とした。
【0095】
(2)電池の持続時間の測定方法
容量1リットルの2軸のニーダー(入江商会社製、品名:PNV−1)に、二酸化マンガン200g、黒鉛10g、結合剤0.6gを添加し、50rpmの回転速度で60分間混合した。続いてその混合物に40%水酸化カリウム水溶液5.3gを添加し、再び50rpmの回転速度で60分間混合した。次にこの混合物をプレス機にて圧延した後、粉砕機にて粒径100〜1000μm程度に粉砕、篩い分けした。さらにプレス機にて環状に成形し、正極を得た。
この正極10gを、LR−6型のモデル電池の正極容器内に注入し、モデル電池を作成した。
なお、ここで、モデル電池の正極以外の各部位の構成材料としては、収縮チューブの材質としてはポリエチレン、ゲル負極の材質としては亜鉛粉末4.0g、40%水酸化カリウム水溶液2.0g、ゲル化剤0.04g及び増粘剤0.04gからなる配合物、外装缶の材質としては、ニッケルメッキ鋼板、セパレーターの材質としては、ポリオレフィン、集電棒の材質としては、スズめっきした黄銅製の棒、ガスケットの材質としては、ポリオレフィン系樹脂、負極端子板の材質としては、ニッケルメッキ鋼板を用いた。
作成したモデル電池に、室温(20〜25℃)で2Ωの外部抵抗を接続して、連続放電し、電圧が0.9Vに低下するまでの時間を電池の持続時間(hour)とした。
モデル電池作成後、60℃の恒温槽で60日間放置したモデル電池に関しても同様な操作を行い、電池の持続時間を測定した。
【0096】
【表2】

【0097】
表1の結果から分かるように、本発明の実施例1〜15の結合剤は、本発明の要件(1)及び(2)を満たす。一方、比較例1〜4は、本発明の要件(1)及び要件(2)の少なくとも1つを満たさない。
これらの結合剤を使用した表2の結果から、正極の強度並びに作成直後及び60℃×60日後の電池の持続時間の全ての項目において、本発明の結合剤を使用した物が優れることが分かる。
すなわち、本発明の結合剤を用いたアルカリ電池は、放電特性の維持に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の結合剤は、円筒状のアルカリ電池のみならず、アルカリボタン電池、酸化銀電池、ニッケルカドミウム蓄電池、ニッケル水素蓄電池等の一次及び二次アルカリ電池正極用の結合剤としても有用である。また、本発明の結合剤を用いたアルカリ電池は、放電特性の維持に優れ、生産効率が向上したアルカリ電池として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性ビニルモノマー(a1)及び/又は加水分解により(a1)となるビニルモノマー(a2)並びに架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含んでなる結合剤であって、
架橋剤(b)がアルカリ性で加水分解する加水分解性架橋剤(b1)を含んでなり、
架橋剤(b)の重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.05〜2重量%であり、
加水分解性架橋剤(b1)の重量が(a1)及び(a2)の合計重量に対して0.01〜2重量%であり、
且つ下記の要件(1)及び(2)の要件を具備してなるアルカリ電池正極用結合剤(C)。
要件(1):(C)の40重量%水酸化カリウム水溶液吸収倍率が5〜80g/gであること。
要件(2):40重量%水酸化カリウム水溶液98重量部及び結合剤2重量部を撹拌混合して調製し、25℃で24時間放置した後の配合物(D)の粘度(25℃)が1〜500Pa・sであること。
【請求項2】
加水分解性架橋剤(b)が、エステル結合を有する化合物、アミド結合を有する化合物、エステル結合及びアミド結合を有する化合物、エステル結合を形成し得る化合物、アミド結合を形成し得る化合物並びにエステル結合及びアミド結合を形成し得る化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載のアルカリ電池正極用結合剤。
【請求項3】
結合剤(C)の20g/cm2荷重下40重量%水酸化カリウム水溶液吸収量が2〜10g/gである請求項1又は2に記載のアルカリ電池正極用結合剤。
【請求項4】
結合剤(C)における、重合していない水溶性ビニルモノマー(a1)、ビニルモノマー(a2)及び架橋剤(b)の合計含有量が、(C)の重量を基準として10〜500ppmである請求項1〜3のいずれかに記載のアルカリ電池正極用結合剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアルカリ電池正極用結合剤、二酸化マンガン及び黒鉛を含有してなるアルカリ電池正極。
【請求項6】
請求項5に記載の正極と、亜鉛又は亜鉛粉末を含んでなる負極と、水酸化カリウム水溶液を含んでなる電解液とを有してなるアルカリ電池。

【公開番号】特開2011−228296(P2011−228296A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79017(P2011−79017)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】