説明

アルカリ電池用の添加物

アルカリ電池は、金塩を含むカソード、亜鉛を含むアノード、カソードおよびアノード間のセパレーター、およびアルカリ電解質を含有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池に関する。
【発明の背景】
【0002】
電池、例えばアルカリ電池は、エネルギー源として常用されている。通常、アルカリ電池は、カソード、アノード、セパレーターおよびアルカリ電解液を有している。カソードは、カソード物質(例えば、オキシ水酸化ニッケル)、カソードの導電性を高めるカーボン粒子、および結合剤を含有しうる。アノードは、亜鉛粒子を含むゲルから形成しうる。セパレーターは、カソードとアノードとの間に置かれる。電池の全体に分散されるアルカリ電解液には、水酸化カリウムのような水酸化物溶液がある。
【0003】
電池で望ましくない容量損失は、電池缶の腐蝕および/またはアノードまたはカソードの自己放電により生じうる。例えば、ゲル化亜鉛アノードおよびオキシ水酸化ニッケルカソードを含有するアルカリ電池において、自己放電はアノードの場合で水の還元(それは水素ガス発生を招く)を伴うことがあり、カソードの場合では水の酸化(それは酸素ガス発生を招く)を伴うことがある。これらの自己放電反応は、特に貯蔵に際して、セル放電容量をかなり減少させうる。貯蔵に際して優れた容量残率を有することは、再充電用に設計されていない、特に一次電池の場合において、電池の重要な特性となりうる。
【発明の要旨】
【0004】
アルカリ電池は、金塩を含有したカソードを有する。このようなアルカリ電池は、特に貯蔵時、例えば高温時の、優れた容量残率のみならず、優れたハイパワー性能も示す。
【0005】
一面において、アルカリ電池は、オキシ水酸化ニッケルおよび金塩を含むカソード、アノード、アノードおよびカソード間のセパレーター、およびアルカリ電解質を含有している。アノードは亜鉛を含有している。
【0006】
オキシ水酸化ニッケルには、γ‐オキシ水酸化ニッケル(例えば、非破砕球状γ‐オキシ水酸化ニッケル)がある。オキシ水酸化ニッケルにはβ‐オキシ水酸化ニッケルもあり、これは非破砕球状粒子でもよい。オキシ水酸化ニッケルは、オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケル(例えば、オキシ水酸化コバルト被覆γ‐オキシ水酸化ニッケル)でもよい。オキシ水酸化ニッケルはα‐水酸化ニッケルまたはβ‐水酸化ニッケルから誘導しうるが、これは非破砕球状粒子を含有しうる。β‐オキシ水酸化ニッケルはβ‐水酸化ニッケル前駆体から誘導しうるが、これは非破砕の実質的に球状の粒子を含有しうる。水酸化ニッケルは、水酸化コバルト改質水酸化ニッケル(例えば、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケル)でもよい。
【0007】
金塩には、酸化金(+3)、硫化金(+3)、水酸化金(+3)または酢酸金(+3)がある。カソードは、1000ppm以下、例えば5〜1000ppm、10〜200ppm、または15〜100ppmの金塩を含有しうる。
【0008】
カソードは、オキシ水酸化ニッケルよりも強く酸化する酸化添加物を含有しうる。このような酸化添加物の例には、NaOCl、Na、K、KMnO、BaMnO、BaFeO、AgMnOまたはAgOがある。
【0009】
カソードは、グラファイト、窒化チタン、オキシ窒化チタンまたは金で内部表面が被覆された缶に収納しうる。コーティングは薄層でもよい。層厚は5〜25ミクロンの範囲である。
【0010】
アノードは、ゲル化剤、亜鉛粒子、および場合により、少量の他の添加物、例えばガス化抑制剤を含有しうる。
【0011】
アルカリ電池は一次電池でもよい。
【0012】
金塩を含有したカソードを有するアルカリ電池の容量損失は、60℃で4週間にわたり電池を貯蔵した後で、30%以下、20%以下または10%以下である。
【0013】
別な面において、オキシ水酸化ニッケルおよび金塩を含むカソード、アノード、アノードおよびカソード間のセパレーター、およびアルカリ電解質を含有したアルカリ電池の製造方法では、カソードを入手し、カソード、アノード、およびカソードとアノードとの間のセパレーターを組み立てて、アルカリ電池を形成する。カソード混合物は、オキシ水酸化ニッケル、金塩、導電性カーボンおよびアルカリ電解質を含有している。アノードは亜鉛を含有している。カソード混合物は、アルカリ電解質および金塩を含有するアルカリ水溶液をオキシ水酸化ニッケルおよび導電性カーボンの混合物へ加えることにより、調製しうる。その混合物は、オキシ水酸化ニッケルおよび導電性カーボンの乾燥混合粉により調製しうる。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、説明および図面、更には請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明の具体的説明】
【0015】
図1によると、電池10はカソード12、アノード14、セパレーター16および円筒型ハウジング18を有している。電池10は集電体20、シール22、および電池の陰端子として働く陰極金属上蓋24も有している。カソードはハウジングと接触して、電池の陽端子は陰端子とは反対側の電池に位置する。電解液は電池10の全体に分散している。電池10は、例えばAA、AAA、AAAA、CまたはD円筒型電池である。一方、電池10はプリズム、ラミナまたは薄型電池、コインまたはボタンセルでもよい。
【0016】
カソード12は、カソード物質、導電性カーボン粒子、金塩、電解液、および場合により結合剤を含有している。場合により、カソード12は酸化添加物も含有しうる。
【0017】
カソード物質には、オキシ水酸化ニッケル、例えばγ‐オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト改質γ‐オキシ水酸化ニッケル、β‐オキシ水酸化ニッケルまたはオキシ水酸化コバルト改質β‐オキシ水酸化ニッケルがある。オキシ水酸化ニッケルは、非破砕の実質的に球状のオキシ水酸化ニッケル粒子でもよい。オキシ水酸化ニッケルは、化学的酸化により、例えばペルオキシ二硫酸ナトリウムまたはカリウム、または次亜塩素酸ナトリウムの水溶液で、またはオゾンガスで水酸化ニッケルを処理することにより得られる。オキシ水酸化ニッケルは、非破砕の実質的に球状の粒子でもよい。オキシ水酸化ニッケルには、β‐オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト改質β‐オキシ水酸化ニッケル、γ‐オキシ水酸化ニッケル、オキシ水酸化コバルト改質γ‐オキシ水酸化ニッケルがある。
【0018】
γ‐オキシ水酸化ニッケルは、α‐水酸化ニッケルの酸化(例えば、オゾン化)により製造しうる。例えば、参考のためその全体で組み込まれるUS出願09/633,067参照。β‐水酸化ニッケルの酸化により製造されるγ‐オキシ水酸化ニッケルは比較的大きな結晶膨張を生じて、得られるγ‐オキシ水酸化ニッケル粒子の破砕をもたらすことがある。粒子の破砕は電解質と接触するγ‐オキシ水酸化ニッケル電極の界面部分を増して、電解質中における水の酸化増加と、貯蔵時における有意な容量損失とを招く。α‐水酸化ニッケルが前駆体として用いられる場合には、結晶格子膨張は最少で、破砕の程度は有意に減少し、ひいては電解質と接触するカソード界面部分の減少のおかげで自己放電の度合を下げられる。例えば、US出願09/633,067参照。
【0019】
オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルでは、オキシ水酸化ニッケル粒子上にオキシ水酸化コバルトのコーティングを含有しうる。そのコーティングは実質的に均一でもよい。コーティングは2〜10重量%の水酸化コバルトを含有しうる。オキシ水酸化コバルトはカソードで粒子間の電気的接触を改善し、電解質による還元からオキシ水酸化ニッケルの表面を保護しうる。オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルは、水酸化コバルト被覆水酸化ニッケルの化学的または電気化学的酸化により(例えば、γ‐オキシ水酸化ニッケルへの酸化前に、水酸化ニッケル粒子の表面上に水酸化コバルトの層を被覆することにより)製造しうる。ある態様では、カソード物質は、水酸化コバルト被覆α‐水酸化ニッケル前駆体粒子から製造された非破砕γ‐オキシ水酸化ニッケル粒子を含有している。
【0020】
カソード物質は酸化添加物を含有しうる。このような酸化添加物は、カソード活物質(例えば、オキシ水酸化ニッケル)よりも容易に還元される。酸化添加物は、アルカリ電解質の存在下で犠牲添加物として作用しうる。酸化添加物の例として、カソード物質がオキシ水酸化ニッケルを含有している場合には、NaOCl、Na、K、KMnO、BaMnO、BaFeO、AgMnOおよびAgOがある。酸化添加物は他のカソード成分と物理的に混合されても、またはカソード成分の1種以上は酸化添加物含有溶液で処理されてもよい。酸化添加物は、化学的酸化プロセスに際して、その場で前駆体から生成させうる。好ましくは、カソードは0.2〜15wt%、0.5〜12wt%または1〜10wt%の酸化添加物を含有する。
【0021】
カソード物質またはカソード物質を製造するための出発物質は、H.C.Starck Gmbh & Co.(例えば、実質的に球状のα‐水酸化ニッケルまたは水酸化コバルト被覆球状α‐水酸化ニッケル)およびJMC Tanaka Chemical Corp.,Fukui,Japan(球状水酸化ニッケルTanaka Type Z;水酸化コバルト被覆球状水酸化ニッケルTanaka Type CoZD)から得られる。通常、カソードは、例えば60〜95wt%、80〜90wt%または86〜88wt%のカソード物質を含有しうる。
【0022】
導電性カーボン粒子としてはグラファイト粒子がある。グラファイトには、合成グラファイト、例えば膨張グラファイト、非合成グラファイト、天然グラファイトまたはそれらのブレンドがある。適切な天然グラファイト粒子は、例えばBrazilian Nacional de Grafite(Itapecerica,MG Brazil,NdG MP-0702x grade)またはSuperior Graphite Co.(Chicago,IL,ABG grade)から得られる。適切な膨張グラファイト粒子は、例えば日本のChuetsu Graphite Works,Ltd.(Chuetsu grade WH-20AおよびWH-20AF)またはTimcal America(Westlake,OH,KS-Grade)から得られる。カソードは、例えば2〜10wt%、3〜8wt%または4〜6wt%の導電性カーボン粒子を含有しうる。
【0023】
金塩としては金塩(+3)がある。カソード物質に含有させうる金塩の例には、酸化金(+3)、水酸化金(+3)、硫化金(+3)または酢酸金(+3)がある。カソード中における金塩の量は、2〜1000ppm、5〜250ppmまたは10〜100ppmの範囲である。
【0024】
金塩は、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または不活性雰囲気下で機械的に高速ブレードミルを用いて、適量の乾燥金塩粉を適量のカソード物質(例えば、γ‐オキシ水酸化ニッケル)および導電性カーボン粒子(例えば、天然または膨張グラファイト粉、またはそれらの混合物)と完全に混ぜることにより、カソード中へ配合しうる。カソード中への高濃度(例えば、約1000ppmまたはそれ以上)の金塩の配合は、電解質への金イオンの溶解およびアノード中へのセパレーターを介した金イオンの透過を招くことがあり、ひいては亜鉛アノード上へ金属の金を付着させて、望ましくない水素ガスの発生を促すことがある。
【0025】
一方、金塩は、セパレーターのカソード側でアルカリ電解質にその塩を溶解することにより、カソード中へ配合しうる。例えば、アルカリ電解質に溶解される金塩の希釈溶液が、セル組立て前にカソードを前湿潤させるために用いうる。金塩(例えば、水酸化金(+3)、酸化金(+3)、硫化金(+3)、酢酸金(+3)またはそれらの混合物)の希釈水溶液は、水性水酸化カリウム(例えば、水中45wt%水酸化カリウム)中で金塩を煮沸して、約0.5mg/ml(即ち、約500ppm)の濃度を得ることにより調製しうる。一例として、5wt%(全カソード重量ベースで)の希釈金塩溶液を用いて、γ‐オキシ水酸化ニッケルおよびグラファイト粒子の混合物を湿潤させ、約13〜15ppm金塩の全カソード分をを用意する。金溶液は光還元で金属金粒子を生成しやすいため、金塩含有溶液を調製するときには注意が払われるべきである。希釈金塩含有溶液を光から保護する(例えば、暗所または不透明ボトルで溶液を貯蔵する)ことにより、光還元は最少に抑制または回避しうる。
【0026】
一方、金塩は、オキシ水酸化ニッケルへの酸化前に、最初にその塩を水酸化ニッケル粉へ加えることにより、カソード中へ配合しうる。金塩は乾燥粉末としてα‐水酸化ニッケルへ加えても、またはセパレーターシートのカソード側でアルカリ電解質に溶解してもよい。
【0027】
他の添加物もカソードへ加えうる。例えば、TeO、CaS、Biまたはツリウム塩(例えば、酸化ツリウム(+3)Tmまたは硫酸ツリウム(+3)Tm(SO)のような他の添加物が、オキシ水酸化ニッケルカソードを安定化させるために加えうる。他のカソード添加物としては、酸化亜鉛、フッ化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化イットリウム、コバルト金属粉、または他の金属塩、例えばNiO、MnO、Zn(OH)、CaO、Ca(OH)、CaSO、MgO、Mg(OH)、MgSO、Ba(OH)、BaSO、Sr(OH)、Yb、Y(OH)、Er、In、Sb、TiO(アナターゼまたはルチル)、BaTiO、CaTiO、Gd、Sm、CeO、CdO、AgO、BaO、CaWO、CaSiまたはSrTiOがある。
【0028】
結合剤の例には、ポリエチレン、ポリアクリル酸またはフルオロカーボン樹脂、例えばPVDFまたはPTFEがある。ポリエチレン結合剤の例は、商品名COATHYLENE HA-1681(Hoescht市販)で販売されている。カソードは、例えば0.1〜4wt%または0.5〜2wt%の結合剤を含有しうる。
【0029】
電解液はカソード12中に分散しうるため、上記および下記の重量%は電解液の添加後に定められる。
【0030】
アノード14は、電池アノードで用いられる、いかなる標準亜鉛物質から形成してもよい。例えば、アノード14は亜鉛スラリーであり、これは亜鉛金属粒子、ゲル化剤、および少量の添加物、例えばガス化抑制剤を含有しうる。加えて、電解液の一部はアノード全体に分散させうる。
【0031】
亜鉛粒子は、スラリーアノードで常用される、いかなる亜鉛粒子であってもよい。亜鉛粒子の例には、US出願08/905,254、US出願09/115,867またはUS出願09/156,915で記載されているものがあり、それら各々が参考のためその全体でここに組み込まれる。アノードは、例えば60〜80wt%、65〜75wt%または67〜71wt%の亜鉛粒子を含有しうる。
【0032】
電解質は、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムのような水酸化アルカリの水溶液でよい。電解質は、水に溶解された15〜60wt%、20〜55wt%または30〜50wt%の水酸化アルカリを含有しうる。電解質は酸化亜鉛のようなアルカリ酸化物0〜4wt%を含有しうる。
【0033】
ゲル化剤の例には、ポリアクリル酸、グラフト化デンプン物質、ポリアクリル酸の塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩(例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース)またはそれらの組合せがある。ポリアクリル酸の例としてCARBOPOL 940および934(B.F.Goodrich市販)およびPOLYGEL 4P(3V市販)があり、グラフト化デンプン物質の例としてWATERLOCK A221またはA220(Grain Processing Corporation,Muscatine,IA市販)がある。ポリアクリル酸の塩の例としてALCOSORB G1(Ciba Specialties市販)がある。アノードは、例えば0.05〜2wt%または0.1〜1wt%のゲル化剤を含有しうる。
【0034】
ガス化抑制剤には、無機物質、例えばビスマス、スズまたはインジウムがある。一方、ガス化抑制剤は、有機化合物、例えばリン酸エステル、イオン系界面活性剤または非イオン系界面活性剤でもよい。イオン系界面活性剤の例は、例えばUS特許4,777,100で開示されており、これは参考のためその全体でここに組み込まれる。
【0035】
セパレーター16は、従来のアルカリ電池セパレーターでよい。一部の態様では、セパレーター16は二層の不織非膜物質から形成して、一層は他方の表面に沿い配置される。例えば、セパレーター16の容量を最少にしながら、効率的な電池を提供するために、不織非膜物質の各層は、約54グラム/平方メートルの基本重量、乾燥時に約5.4ミルの厚さおよび湿潤時に約10ミルの厚さを有することができる。各層は無機粒子のようなフィラーを実質的に欠いてもよい。
【0036】
他の態様では、セパレーター16は不織物質の層と組み合わされたセロファンの層からなる。セパレーターは、不織物質の別な層も含んでよい。セロファン層は隣接するカソード12でも、またはアノードでもよい。不織物質、例えば商品名PA25でPDMから市販されている不織物質は、78〜82wt%のポリビニルアルコールおよび18〜22wt%のレーヨンを痕跡量の界面活性剤と共に含有しうる。
【0037】
ハウジング18は、一次アルカリ電池で常用される従来のハウジング、例えばニッケルめっき冷間圧延鋼でよい。ハウジングは、内部金属壁および外部非導電性物質、例えば熱収縮性プラスチックを含有しうる。場合により、導電性物質の層は内壁とカソード12との間に置かれる。その層は内壁の内表面に沿い、カソード12の外周に沿い、または双方で配置しうる。導電層は、例えば炭素質物質(例えば、コロイド性グラファイト)、例えばLB1000(Timcal)、Eccocoat 257(W.R.Grace & Co.)、Electrodag 109(Acheson Colloids Company)、Electrodag EB-009(Acheson)、Electrodag 112(Acheson)およびEB0005(Acheson)から形成しうる。導電層を適用する方法は、例えばカナダ特許1,263,697で開示され、それは参考のためその全体でここに組み込まれる。場合により、金、窒化チタンまたはオキシ窒化チタンのような耐蝕性コーティングも、ハウジングの内金属壁へ適用しうる。
【0038】
集電体28は真鍮のような適切な金属から作製しうる。シール30は、例えばナイロン製である。
【0039】
カソードに金塩を含む電池(ボタンセル)が、下記例に従い製造された。高温(例えば60℃)で貯蔵後における電池の重量または比容量損失が、下記のように室温で試験された。
【0040】
例1
635タイプボタンセルで含有に適したプレスカソードディスクを下記操作に従い製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05gの混合物を、乳鉢および乳棒を用いるか、または空気から保護された高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で機械的に、0.5mg/mlの濃度で45%(w/w)水性水酸化カリウムに溶解された水酸化金(+3)を含有するアルカリ溶液0.15gと完全に混ぜた。その混合物は、場合により、室温で真空デシケーターで乾燥させてもよい。乾燥カソード混合物中の名目的な金(+3)濃度は約13ppmであった。
【0041】
45%(w/w)水酸化カリウム溶液100mlを含有したガラスErlenmeyerフラスコへ攪拌しながらAu(OH)(Alfa/Aesar市販)0.050gを加え、溶液が透明になるまで約15分間煮沸することにより、水酸化金(+3)水溶液を調製した。溶液を室温まで冷却した後、蒸発で失われた容量分を補う上で十分な水を加えた。水酸化金(+3)溶液を光から保護して、光還元を最少に抑えた。
【0042】
水酸化金(+3)添加物を含有する湿潤カソード混合物約0.3gを、カソード缶の底に溶接されたニッケルグリッド中へ、10,000ポンドの加圧で直接押し込むことにより、カソードディスクを作製した。セロファンの層を不織ポリマー物質(例えば、“Duralam”またはPDM“PA25”)の層と組み合わせた孔質セパレーターをカソードの上に置き、約60wt%亜鉛合金粉、38wt%水酸化カリウムおよび約2wt%酸化亜鉛含有の電解質、および約0.5wt%ポリマーゲル化剤を含有するゲル化亜鉛スラリー2.6gを加えることにより、ボタンセルを組み立てた。組立てボタンセルの性能を、名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で評価した。セルを製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に試験したが、それらは各々例1a、1b、1cおよび1dに該当する。開回路電圧(OCV)値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。その値は同一ボタンセル4〜5個の平均であった。製造時(“初期容量”)および貯蔵(“貯蔵容量”)セルの双方について、0.6Vの遮断電圧まで放電後に、比容量を調べた。容量損失率をこれら2つの値の差として計算した。平均比容量および累積容量損失率は表2に掲載されている。容量損失率は、各試験について下記式により計算した:(1−(貯蔵容量)/(初期容量))100%
【0043】
例2
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および0.5mg/mlの濃度で45%(w/w)水性水酸化カリウムに溶解された酸化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび酸化金(+3)含有溶液を、乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。酸化金(+3)溶液は、例1で記載された水酸化金(+3)溶液と同様の手法で調製した。乾燥カソード混合物中の名目的な金(+3)濃度は約15ppmであった。酸化金(+3)添加物を含有する湿潤カソード混合物約0.3gを各缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例2a、2b、2cおよび2dに該当する。平均比容量および累積容量損失率は表2に掲載されている。
【0044】
例3
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および0.5mg/mlの濃度で45%(w/w)水性水酸化カリウムに溶解された硫化金(+3)(Alfa/Aesar)を含む塩基性溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび硫化金(+3)含有溶液を、乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。硫化金(+3)溶液は、例1で記載された水酸化金(+3)溶液と同様の手法で調製した。乾燥カソード混合物中の名目的な金(+3)濃度は約13ppmであった。硫化金(+3)添加物を含有する湿潤カソード混合物約0.3gを各缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例3a、3b、3cおよび3dに該当する。平均比容量および累積容量損失率は表2に掲載されている。
【0045】
比較例1
γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05gと、38wt%水酸化カリウムおよび約2wt%酸化亜鉛を含む電解液0.15gとを含有した混合物から、カソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび酸化亜鉛含有電解液を、乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。例1で記載されているように、湿潤カソード混合物約0.3gを各缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。カソードは金塩を含有していなかった。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、ボタンセルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々比較例1a、1b、1cおよび1dに該当する。平均比容量および累積容量損失率は表2に掲載されている。
【0046】
比較例2
γ‐オキシ水酸化ニッケル2.70g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)1.575gと、38wt%水酸化カリウムおよび約2wt%酸化亜鉛を含む電解水溶液0.225gと完全に混合された水酸化金(+3)(Alfa/Aesar)粉0.0135gとの混合物から、乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、カソードディスクを製造した。例1で記載されているように、水酸化金(+3)添加物を含有した湿潤カソード混合物約0.3gを各缶中へ直接圧入することにより、カソードディスクを作製した。カソードは金(+3)塩約5000ppmを含有していた。放電の直前に測定された製造時セルのOCVは、1.793Vの平均値を示した。室温で放電の直前に測定された、オーブン中60℃で1週間の貯蔵後におけるセルのOCVは、1.68Vの平均値を示した。製造時またはオーブン中60℃で1週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々比較例2aおよび2bに該当する。累積容量損失率は低率の場合に約25%であった。残りほぼすべてのセルは、60℃で2週間貯蔵の終了前に破裂した。
【0047】
比較例3
γ‐オキシ水酸化ニッケル2.646g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)1.575gと、38wt%水酸化カリウムおよび約2wt%酸化亜鉛を含む電解質水溶液0.225gと完全に混合された水酸化金(+3)(Alfa/Aesar)粉0.054gとの混合物から、カソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび電解液を、乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。例1で記載されているように、水酸化金(+3)添加物を含有した湿潤カソード混合物約0.3gを各缶中へ直接圧入することにより、カソードディスクを作製した。放電の直前に測定された製造時セルのOCVは、1.797Vの平均値を示した。製造時セルのみが名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験できたが、これは比較例3aに該当する。オーブンに60℃で置かれたセルのすべては、1時間以内にガス漏れした。
【0048】
例4
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および1mg/mlの名目濃度で45wt%水性水酸化カリウムに溶解された水酸化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび水酸化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。水酸化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約26ppmであった。例1のように、水酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例4a、4b、4cおよび4dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0049】
例5
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および名目濃度1mg/mlで45wt%水性水酸化カリウムに溶解された酸化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび酸化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。酸化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約25ppmであった。例1のように、酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例5a、5b、5cおよび5dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0050】
例6
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および名目濃度1mg/mlで45wt%水性水酸化カリウムに溶解された硫化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび硫化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。硫化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約30ppmであった。例1のように、水酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例6a、6b、6cおよび6dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0051】
比較例4
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および名目濃度0.25mg/mlで45wt%水性水酸化カリウムに溶解された水酸化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび水酸化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。水酸化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約6ppmであった。例1のように、水酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々比較例4a、4b、4cおよび4dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0052】
比較例5
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および名目濃度0.25mg/mlで45wt%水性水酸化カリウムに溶解された酸化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび酸化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。酸化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約6ppmであった。例1のように、酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々比較例5a、5b、5cおよび5dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0053】
比較例6
例1で記載された場合と同様の手法で、γ‐オキシ水酸化ニッケル1.80g、天然グラファイト(Nacional de Grafite MP-0702x)粉1.05g、および名目濃度0.25mg/mlで45wt%水性水酸化カリウムに溶解された硫化金(+3)(Alfa/Aesar)を含むアルカリ溶液0.15gを含有したカソード混合物から、プレスカソードディスクを製造した。γ‐オキシ水酸化ニッケル、グラファイトおよび硫化金(+3)溶液を、手で乳鉢および乳棒を用いるか、または機械的に高速実験室用ブレードミル(例えば、Waringミキサー/ミル)で、完全に混ぜた。硫化金(+3)溶液は例1のように調製した。乾燥カソード中の名目的な金(+3)濃度は約8ppmであった。例1のように、水酸化金(+3)を含有する湿潤カソード混合物約0.3gをカソード缶中へ直接圧入することにより、カソードを作製した。OCV値を放電の直前に測定したが、平均値は表1に掲載されている。製造時またはオーブン中60℃で1、2または4週間の貯蔵後に、セルを名目上高い(例えば、43mA)および低い(例えば、3mA)放電率で試験したが、それらは各々例4a、4b、4cおよび4dに該当する。比容量および累積容量損失率の平均値は表2に掲載されている。
【0054】
表1および2
例1〜6および比較例1および4〜6で記載されたボタンセルのOCV値は、製造時または60℃で1、2および4週間の貯蔵後に、放電の直前に測定したが、平均値は下記表1に掲載されている。製造時(“初期容量”)および貯蔵(“貯蔵容量”)セルの双方について、約0.6Vの遮断電圧まで放電後に、比容量を調べた。60℃で1、2および4週間にわたり貯蔵された、様々な金(+3)塩で前湿潤されたγ‐オキシ水酸化ニッケルカソードを含むボタンセルの比容量および累積容量損失率が、表2でまとめられている。報告された結果は、各特定試験条件下における試験セル4〜5個の平均値に基づいている。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
カソードが様々な金(+3)塩を含有したセル、および金(+3)塩添加物なしのコントロールセルに関する平均OCV値が、表1で示されている。製造時セルのOCV値は、60℃で1、2または4週間貯蔵されたものよりも、典型的には実質的に(約100mV)高かった。製造時セルを除き、金(+3)塩タイプまたは60℃での貯蔵期間の関数としては、OCVにほとんど変動はなかった(即ち、<10mV)。60℃で2および4週間の貯蔵後に得られた結果は、金(+3)塩を全く含有しない同一セルと比較して、カソードが高濃度の金(+3)塩を含有したセル(即ち、例4c‐d、5c‐dおよび6c‐d)の場合に、OCV値が実質的に低いことを示している。
【0058】
図2は、作製時と1、2および4週間の貯蔵後に低率(即ち、3mA)で放電された、カソードが非破砕の実質的に球状のγ‐オキシ水酸化ニッケル、天然グラファイトおよび酸化金(+3)を含有したボタンセルに関する、放電曲線のグラフ比較を示している。
【0059】
図3は、作製時と1、2および4週間の貯蔵後に高率(即ち、43mA)で放電された、カソードが非破砕の実質的に球状のγ‐オキシ水酸化ニッケル、天然グラファイトおよび酸化金(+3)を含有したボタンセルに関する、放電曲線のグラフ比較を示している。
【0060】
表2で示された結果をまとめると、60℃で1週間の貯蔵後における、例1〜6で記載された電池の相対的容量損失率は、金(+3)塩なしで38%水酸化カリウム電解質5wt%で前湿潤された同じγ‐オキシ水酸化ニッケルからカソードを作製した同一ボタンセル(即ち、“コントロール”セル、比較例1参照)と比較して、低率(即ち、3mA)のとき約5〜30%および高率(即ち、43mA)のとき約15〜85%低下した。同様に、60℃で2週間の貯蔵後における、例1〜6で記載された電池の累積容量損失率は、低率のとき約5〜25%および高率放電のとき約35〜70%低下した。最後に、60℃で4週間の貯蔵後における、例1〜6で記載された電池の累積容量損失率は、低率のとき約10%および高率放電のとき20〜40%低下した。γ‐オキシ水酸化ニッケルを含有したカソードへの約15ppm酸化金(+3)の添加は、60℃で4週間後に高率の累積容量損失率を示したが、これは、金(+3)塩なしで同じ水酸化コバルト被覆α‐水酸化ニッケルから製造されたγ‐オキシ水酸化ニッケルをカソードが含有するセルに関して、US出願09/633,067で開示された結果よりも、ほぼ40%少ない。更に、60℃で4週間貯蔵された、カソードがオキシ水酸化ニッケルと約15ppm以上で約100ppm以下の金(+3)とを含有するセルに関する、高放電率時の累積容量損失値は、放電前に60℃で約3週間貯蔵された、水酸化アルカリ溶液で処理されたβ‐オキシ水酸化ニッケルをカソードが含有するセルの累積容量損失値よりも低い。
【0061】
他の態様も請求の範囲内に属する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】電池の断面図である。
【図2】製造時と1、2および4週間の貯蔵後に低率(即ち、3mA)で放電された、カソードがγ‐オキシ水酸化ニッケル、天然グラファイトおよび酸化金(+3)を含有しているボタンセルの放電曲線を表わしたグラフである。
【図3】製造時と1、2および4週間の貯蔵後に高度(即ち、43mA)で放電された、カソードが非破砕の実質的に球状のγ‐オキシ水酸化ニッケル、天然グラファイトおよび酸化金(+3)を含有しているボタンセルの放電曲線を表わしたグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシ水酸化ニッケルおよび金塩を含むカソードと、
亜鉛を含むアノードと、
アノードおよびカソード間のセパレーターと、
アルカリ電解質と
を含んでなるアルカリ電池。
【請求項2】
オキシ水酸化ニッケルが、β‐オキシ水酸化ニッケルを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
オキシ水酸化ニッケルが、γ‐オキシ水酸化ニッケルを含む、請求項1に記載の電池。
【請求項4】
オキシ水酸化ニッケルが、β‐オキシ水酸化ニッケルおよびγ‐オキシ水酸化ニッケルの混合物を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項5】
オキシ水酸化ニッケルが、非破砕の実質的に球状の粒子を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項6】
金塩が、酸化金(+3)、硫化金(+3)、水酸化金(+3)および酢酸金(+3)からなる群より選択される、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
カソードが5〜1000ppmの金塩を含有している、請求項6に記載の電池。
【請求項8】
カソードが10〜200ppmの金塩を含有している、請求項6に記載の電池。
【請求項9】
カソードが15〜100ppmの金塩を含有している、請求項6に記載の電池。
【請求項10】
アノードがゲル化剤を含有している、請求項6に記載の電池。
【請求項11】
オキシ水酸化ニッケルがオキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルである、請求項1に記載の電池。
【請求項12】
オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルが、オキシ水酸化ニッケルの表面上にオキシ水酸化コバルトのコーティングを有している、請求項11に記載の電池。
【請求項13】
コーティングが実質的に均一である、請求項12に記載の電池。
【請求項14】
オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルが、2〜10重量%の水酸化コバルトで被覆された水酸化ニッケルから誘導されている、請求項11に記載の電池。
【請求項15】
オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルがα‐水酸化ニッケルから誘導されている、請求項11に記載の電池。
【請求項16】
オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルがβ‐水酸化ニッケルから誘導されている、請求項11に記載の電池。
【請求項17】
金(+3)塩が、酸化金(+3)、硫化金(+3)、水酸化金(+3)および酢酸金(+3)からなる群より選択される、請求項11に記載の電池。
【請求項18】
アノードがゲル化剤を含有している、請求項17に記載の電池。
【請求項19】
オキシ水酸化ニッケルがα‐水酸化ニッケルから誘導されている、請求項1に記載の電池。
【請求項20】
オキシ水酸化ニッケルが、アルミニウム、コバルト、マンガンまたは銀を含めたドーパントを含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項21】
カソードが、約1000ppm以下の金(+3)塩を含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項22】
カソードが5〜500ppmの金塩を含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項23】
カソードが10〜200ppmの金塩を含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項24】
カソードが、NaOCl、Na、K、KMnO、BaMnO、BaFeO、AgMnOまたはAgOを含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項25】
TeO、CaSまたはBiを更に含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項26】
酸化亜鉛、フッ化カルシウム、NiO、MnO、Zn(OH)、CaO、Ca(OH)、CaSO、MgO、Mg(OH)、MgSO、Ba(OH)、BaSO、Sr(OH)、Yb、Y(OH)、Er、In、Sb、TiO、BaTiO、CaTiO、Gd、Sm、CeO、CdO、AgO、BaO、CaWO、CaSiまたはSrTiOを更に含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項27】
電池が一次電池である、請求項1に記載の電池。
【請求項28】
ツリウム塩を更に含有している、請求項27に記載の電池。
【請求項29】
ツリウム塩として、酸化ツリウム(3+)または硫酸ツリウム(3+)を含む、請求項28に記載の電池。
【請求項30】
容量損失が、電池を60℃で4週間貯蔵させた後に、40%以下である、請求項27に記載の電池。
【請求項31】
容量損失が、電池を60℃で4週間貯蔵させた後に、30%以下である、請求項27に記載の電池。
【請求項32】
容量損失が、電池を60℃で4週間貯蔵させた後に、10%以下である、請求項27に記載の電池。
【請求項33】
カソードが導電性カーボンを含有している、請求項1に記載の電池。
【請求項34】
オキシ水酸化ニッケルと、酸化金(+3)、硫化金(+3)、水酸化金(+3)および酢酸金(+3)からなる群より選択される金塩とを含むカソードと、
亜鉛を含むアノードと、
アノードおよびカソード間のセパレーターと、
アルカリ電解質と
を含んでなる一次アルカリ電池。
【請求項35】
オキシ水酸化ニッケルが、β‐オキシ水酸化ニッケルを含む、請求項34に記載の電池。
【請求項36】
オキシ水酸化ニッケルが、γ‐オキシ水酸化ニッケルを含む、請求項34に記載の電池。
【請求項37】
オキシ水酸化ニッケルが、β‐オキシ水酸化ニッケルおよびγ‐オキシ水酸化ニッケルの混合物を含む、請求項34に記載の電池。
【請求項38】
オキシ水酸化ニッケルが、非破砕の実質的に球状の粒子を含む、請求項34に記載の電池。
【請求項39】
カソードが5〜500ppmの金塩を含有している、請求項34に記載の電池。
【請求項40】
オキシ水酸化ニッケル、金塩、およびアルカリ電解質を含むカソード混合物を入手し、そして
カソード混合物を含むカソード、亜鉛を含むアノード、およびカソードとアノードとの間のセパレーターを組み立てて、アルカリ電池を形成させる
ことからなる、アルカリ電池の製造方法。
【請求項41】
アルカリ電解質および金塩を含有したアルカリ水溶液をオキシ水酸化ニッケルと混合して、カソード混合物を形成させることをさらに含んでなる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
オキシ水酸化ニッケルが、γ‐オキシ水酸化ニッケル、β‐オキシ水酸化ニッケルまたはそれらの混合物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
オキシ水酸化ニッケルが、オキシ水酸化コバルト改質オキシ水酸化ニッケルを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
オキシ水酸化ニッケルが、非破砕の実質的に球状の粒子を含む、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−502528(P2006−502528A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−555606(P2003−555606)
【出願日】平成14年12月11日(2002.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2002/039649
【国際公開番号】WO2003/054988
【国際公開日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】