説明

アルカンを脱水するための触媒の再生

本発明は、アルカンを脱水するための方法に関し、この場合アルカンは、反応器中でアルカンの脱水のために触媒上に導かれ、処理を断熱的または非断熱的に実施することができ、触媒は、脱水のために反応段階後にガスの導入によって再生され、この場合このガスは、水蒸気での短い洗浄段階後に触媒上に導かれ、この再生ガスは、酸素含有ガスおよび蒸気からなり、触媒は、再生後に蒸気の導入によって酸素含有ガスが取り除かれ、この場合酸素含有ガスの導入時間は、従来法と比較して明らかに短縮されており、再生の全時間と比較して70%またはそれ未満であり、触媒は、再生の実施後に不変の活性でアルケンの形成のために高められた選択性を有し、触媒は、元素の周期律表の白金族または第VIB族からの金属からなり、この金属は、化合物の形または元素の形で担体上に塗布され、この担体は、本質的に元素の錫、亜鉛またはアルミニウムの酸化物からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通常、気相中で450℃〜820℃の温度で実施される、式
【化1】

で示される炭化水素の触媒脱水は、強い吸熱平衡反応であり、この吸熱平衡反応の変換率は、熱力学的に制限されており、それぞれの分圧および温度に依存する。脱水反応は、炭化水素の僅かな分圧および高い温度によって促進される。
【0002】
脱水反応は、断熱的ならびに非断熱的に実施されてよいか、または近似的に等温で実施されてよい。脱水を断熱的に運転される触媒床中で実施する場合には、温度は、触媒床の長さに亘り吸熱反応によって減少する。それによって、触媒床中での変換は、制限されており、したがって望ましい高い変換率には、多数の触媒床が必要とされ、全ての触媒床の後方では改めて加熱が行われなければならない。合理的な反応変換率を達成するために、一般的には、多数の触媒床が順次に接続され、反応系は、全ての触媒床の後方で新たに加熱される。
【0003】
脱水を非断熱的に運転される触媒床中で実施する場合には、触媒床は、高い温度に維持するために加熱されることができる。更に、反応は、反応系により一定に維持される温度のために高い変換率で進行する。しかし、この高い変換率が熱力学的な平衡状態に左右されて高い温度でのみ達成されうることは、欠点であり、それによってオレフィン系性の選択性は、減少される。更に、強化された連続反応が発生し、したがって例えばCH4、CO、CO2、C24、C26およびコークスのような望ましくない生成物を形成する。
【0004】
こうして形成された副生成物、殊に微粒状のコークスは、反応の経過中に触媒上に堆積され、したがってこの触媒の状態は、連続的に変化する。触媒は、望ましくない被覆で被覆され、それによってこの触媒は、反応成分にとって劣悪になる。それ故に、触媒は、非活性化を蒙る。アルカン脱水に対する触媒の活性およびアルケン形成に対する選択性は、劣化しうる。その結果、全処理の収率の減少をまねく。この非活性化は、企業にとって必要であるために、一定の限界になるまで許容されることができる。それというのも、その後は装置の経済的な運転は、もはや保証されないからである。従って、処理の不利な影響に抵抗するために、触媒は、その活性の再獲得のために一定の反応時間後に再生されなければならない。
【0005】
触媒の再生のために、触媒の性状に応じて、酸素含有ガスが再生処理のために定義された条件で触媒と接触するような措置が取られる。この再生のための条件は、脱水の条件と異なっていてよい。また、しばしば蒸気で希釈された酸素含有ガスは、触媒上に導かれる。この方法によって、副生成物は、触媒上で分解され、したがってそれによってこの触媒は、活性を再獲得することができる。触媒の再生のために蒸気で希釈された酸素含有ガスを利用する場合、炭素含有薄層は、反応し、主要生成物としての二酸化炭素に変わる。炭素含有薄層は、前記反応によってガス状生成物に変換され、システムから搬出される。
【0006】
アルカン脱水の反応実施するための条件は、触媒の再生のための条件反応とは異なるので、アルカン脱水の処理は、或る程度の運転時間後に中断され、触媒再生の処理によって代替される。その後に、反応床は、再び脱水に使用される。即ち、アルカン脱水ならびに触媒再生の2つの処理は、周期的に実施される。方法全体を経済的視点から有効になるように形成させるために、前記方法は、2つ以上の触媒床で運転させることができ、この場合には、反応と再生との処理は、周期的に交互に実施される。この場合、最適な触媒再生を保証するために、最適な一連の生産および再生を確定することができる。
【0007】
プラントの最適化のために、多数の触媒区間が使用され、この場合脱水および再生の処理は、周期的に交互に運転される。若干数の触媒区間は、アルカン脱水の実施のために利用されることができ、一方、同時に別の触媒区間は、酸素含有ガスの導入によって再生されうるかまたは蒸気で希釈された酸素含有ガスで再生されうる。また、酸化処理が一般に迅速で効果的であるにも拘わらず、触媒薄層を還元処理によって除去することが可能である。触媒区間が既に再生処理を経過し、その後に再生のために他の触媒区間が接続されている場合には、前記の触媒区間は、常に反応区間を自由に使用するために、酸素不含ガスを触媒床にさらに導入させることによってそのまま使用されることができる。
【0008】
このような処理の例は、特許文献に見出される。ドイツ連邦共和国特許出願公開第19858747号明細書A1には、アルカンを非断熱的に実施される処理によって触媒脱水するための方法が記載されている。脱水期間の時間の延長させるために、処理ガスには、水蒸気および水素が添加される。反応混合物を前記随伴ガスで希釈することは、触媒の延長された可使時間を導き、それというのも、分離された炭素含有薄層は、随伴ガスと部分的に反応し、一酸化炭素および水に変わり、搬出されるからである。一定の反応時間後、触媒は、酸素含有ガスの脱水および導入を停止させることによって完全に再生される。後続する洗浄工程において、再生後に水素または水素とアルカンとの混合物は、触媒表面の還元清浄化のために触媒床に導通される。この処理は、周期的に多数の反応区間により実施されることができる。
【0009】
米国特許第5235121号明細書Aには、アルカンを非断熱的に実施される処理によって触媒脱水するための方法が記載されている。触媒の再生のために、蒸気で希釈された酸素含有ガスが使用される。脱水の際の熱損失を減少させるために、ガスの一部分は、再生のために再び脱水処理に返送され、その際このガスの一部分は、加熱を行なう。後続する洗浄工程において、再生後に水素富有のリフォーミング生成物は、触媒床に導通される。この処理は、周期的に交互に多数の反応区間により実施されることができる。出発物質として、有利には、C12までのC原子数を有するアルカンが使用される。
【0010】
米国特許第4229609号明細書Aには、アルカンを非断熱的に実施される処理によって触媒脱水するための方法が記載されている。触媒の再生のために、連続した順序のガス洗浄は、触媒床に導かれる。最初に、触媒は、水蒸気含有ガスの導入によってアルカンを取り除き、次に酸素含有ガスの導入によって再生され、次に水蒸気の導入によって酸素含有再生ガスを取り除く。個々の再生段階の時間のための規準値は、実際には提案されていない。しかし、実験例(段落3)は、30分間の脱水反応の実施を示し、その後、蒸気での1分間の洗浄工程、酸素含有ガスの導入を伴なう28分間の段階および蒸気での再度の1分間の洗浄工程による再生段階を示す。脱水および触媒再生の処理は、周期的に交互に多数の反応区間により実施されることができる。出発物質として、有利には、C6〜C9のC原子数を有するアルカンが使用される。
【0011】
処理の選択された運転形式とは無関係に、触媒は、僅かな時間後の再生にも拘わらず触媒脱水反応に関連して損失を蒙ることが見出されている。再生は、しばしば、触媒の性状が不利に変化する条件下で行なわれる。即ち、例えば酸素含有ガスは、強く高められた温度下で触媒上に導かれ、それによって触媒は、化学的に変化しうる。更に、焼付け物の吸熱処理により、触媒床の温度制御は、必ずしも簡単ではない。従って、触媒は、焼き付き、若干の周期後の再生にも拘わらず望ましい活性を失う。更に、オレフィン形成の望ましい処理のための選択性は、減少しうる。
【0012】
従って、本発明の課題は、触媒活性および脱水の望ましい処理のための選択性が多数の再生サイクル後でもそのままであるような再生条件を見出すことである。見出すべき方法は、前記パラメーターが処理に最適に適合しうるように触媒活性および触媒選択性にできるだけ影響を及ぼすはずである。再生処理は、触媒活性を多数のサイクルに亘ってできるだけ一定のままにし、炭素含有薄層の形成を再び導くはずである。
【0013】
ところで、本発明による課題は、再生のために酸素不含ガスおよび酸素含有ガスが一定の時間的割合で触媒上に導かれる場合に、解決されうることが見出された。本発明による運転形式により、触媒の活性は、アルカンの変換のために処理に適合するように調節される。脱水の望ましい処理のための選択性は、本発明による運転形式によって得られるだけでなく、全体的に絶えず望ましいアルケンの高い収量が得られかつ副生成物の形成が抑制されるように最適化される。触媒系の本発明による再生の場合、脱水の平衡の調節は、反応床を通じての導入後に多数の再生サイクルによっても十分に可能になる。従って、全体的に経済的な視点で改善された、プラントの運転形式が達成されうる。
【0014】
本発明は、
水蒸気を含有することができかつ本質的に酸素を有しない、炭化水素、殊にアルカンを含有する混合物を、連続的な運転形式で、通常脱水条件を有する触媒床に導通させる方法であって、
脱水反応に引き続いて脱水の数時間での生産段階直後に洗浄のためおよび反応床からの反応ガスの除去のために酸素不含のガス流を反応床に導入させる短い段階が継続し、および
それに引き続いて触媒薄層を除去するために酸素含有反応ガスの導入を有する段階が継続し、および
それに引き続いて洗浄のため、および反応器からの再生ガスの除去のために酸素不含のガス流の導入を有する段階が継続し、この場合
触媒の再生の際の酸素含有ガスの導入時間は、再生の全時間の70%またはそれ未満であることを特徴とする、上記方法で課題を解決する。
【0015】
本発明の1つの実施態様において、酸素含有ガスの導入による触媒の再生時間は、再生の全時間と比較して有利に20〜70%である。本発明による効果を達成するための前提条件は、再生による触媒上での炭素含有薄層の除去ができるだけ完全であることである。
【0016】
本発明による方法は、種々の脱水触媒の再生に良好に適している。触媒は、アルカン脱水の望ましい処理のために、十分な活性および選択性を達成するはずである。更に、前記触媒は、コークスの酸化燃焼に関わりなく前記処理を克服し、良好に再生することができ、長時間に可使時間を達成するはずである。適用される脱水処理に応じて、触媒が適用される処理にとって最適に好適であるように触媒を選択することは、有利である。種々の脱水法およびその際に使用される触媒の選択は、刊行物F. Buonomo, D. Sonfillipo, F. Trifiro, Handbook of Heterogeneous Catalysis, 第1版, VCH, Weinheim, 1997 p, 2140以降およびその中に引用された刊行物中に見出される。
【0017】
米国特許第5151401号明細書Aには、脱水反応に対して高い触媒活性および良好な選択性を有する触媒系が記載されている。触媒は、担体上に施こされ、前記系の良好な取扱いが保証される。担体材料は、酸化錫、酸化亜鉛および酸化アルミニウムの混合物をか焼することによって製造される。次の工程において、塩素化された白金化合物は、触媒活性材料として施こされる。更に、触媒は、洗浄処理および乾燥処理によって、塩素が取り除かれ、この塩素は、適用処理において腐蝕作用を有しうる。最適な取扱いのために、担体材料は、ペレット、タブレットまたは押出品の形で使用されることができる。更に、担持された触媒は、安定性を改善するために添加剤を含有することができる。このような物質は、長鎖状カルボン酸塩またはアルミン酸カルシウムであることができる。
【0018】
米国特許第4973779号明細書Aには、脱水反応に対して高い触媒活性および良好な選択性を有する触媒系が記載されている。担体材料は、か焼されたγ−酸化アルミニウムからなり、このγ−酸化アルミニウム中には、錫化合物が酸化物、ハロゲン化物、硫化物または類似の組成物の形で分布されている。更に、次の工程において、塩素化白金化合物および塩素化イリジウム化合物は、触媒活性材料として施こされる。触媒活性を改善するために、担体材料は、か焼前になおアルカリ金属塩または有利にリチウム塩が備えられる。
【0019】
米国特許第3526533号明細書Aには、C3〜C5−アルカンの脱水反応に対して高い触媒活性および良好な選択性を有する、もう1つの触媒系が記載されている。担体材料は、η−酸化アルミニウムからなり、酸化クロム(VI)の水溶液で噴霧され、かつ乾燥される。乾燥の際に、クロム塩溶液から、担体材料中に微細に分布されかつ固有の触媒活性を形成する酸化クロムが生じる。
【0020】
前記の全ての触媒または記載された特許刊行物中に引用された触媒は、本発明による方法によって旅行に再生させることができ、本発明による結果を導く。
【0021】
本発明による処理の実際の実施のための、触媒に応じて多数の実施態様が選択されうる。本発明の1つの実施態様において、処理ガスは、断熱的に触媒床に導通され、この場合この処理ガスは、触媒床への導通前に加熱処理に掛けられる。
【0022】
本発明のもう1つの実施態様において、処理は、非断熱的に実施される。脱水反応は、吸熱的に進行するので、このために熱が加えられなければならず、触媒床が加熱されなければならない。
【0023】
脱水工程の熱力学的制限は、脱水で生じる水素の一部分が次式:
2H2 + O2 → 2H2O (2)
により選択的に燃焼されることによって克服することも可能である。
【0024】
選択的に燃焼。このための表記法として、"選択的水素燃焼(Selective Hydrogen Combustion)"のための略記SHCも使用される。この反応の場合、水素が消費されるので、脱水の平衡は、よりいっそう高い変換率の方向、即ちオレフィン形成の方向へシフトする。更に、水素の選択的な燃焼の場合には、熱が遊離され、それによってなお未反応のアルカンを含有する反応混合物が加熱される。こうして、アルカンを吸熱脱水する処理と吸熱的に選択的に水素燃焼する処理とは、組み合わせることができ、したがって前記処理は、全体的に殆んど自熱的に進行する。
【0025】
処理の実施を簡易化するために、脱水および生成された水素の酸化的燃焼の処理工程は、しばしば逐次的に順次に実施される。反応ガスは、最初に触媒床上に脱水のために導かれる。脱水後、生成物ガスには、酸素含有ガスが備えられる。選択的な水素燃焼の引続く処理工程(SHC)(2)によって、反応ガスは、加熱される。それによって、生成物ガスは、SHCの処理後に脱水の繰り返される処理工程に供給されることができ、この場合この処理工程のためには、相応して僅かな熱供給量が必要とされる。
【0026】
WO 2004/039920 A2には、例示的に、炭化水素を触媒脱水し、次に脱水の処理工程で形成された水素を酸化する方法が記載されている。第1の処理工程において、アルカン含有ガス混合物は、触媒床上に導かれ、この場合この触媒床は、アルカン脱水(1)のために設けられておりかつアルミン酸塩からなる担体上に施こされている白金含有および錫含有の触媒を含有する。脱水の処理工程後、水素含有およびアルカン含有の生成物ガスには、酸素含有ガスおよび水蒸気含有のガスが備えられ、水素燃焼部(2)のために設けられている第2の触媒床上に導かれる。本方法にとって特徴的なことは、脱水の処理工程(1)および酸化的な水素燃焼の処理工程(2)にとって同じ触媒が使用されることである。水素の燃焼によって、反応混合物は、加熱され、同時に水素は、生成物ガス流から除去される。それによって、アルカンの脱水に対する反応平衡は、オレフィンの側にシフトする。生成物混合物は、水素酸化後に脱水の再度の処理工程に掛けられ、この場合この生成物混合物は、再び第1の処理段階の反応器中に返送されることができるか、または脱水のためにもう1つの別の反応器中に到達することができる。
【0027】
アルカン脱水と選択的な水素燃焼の処理段階(SHC)(2)との組合せは、本発明による方法の実施のために良好に好適であり、処理は、エネルギー的に有利に高い変換率で導かれる。
【0028】
酸化的な水素燃焼(2)の実施のためには、アルカンの脱水の実施ならびに酸化的な水素燃焼に適している触媒を使用することができる。選択的に水素を酸化する触媒も酸化的な水素燃焼に適しており、例えばこの触媒は、WO 96/33150A1において使用される。
【0029】
本発明による方法にとって重要なことは、再生段階および次の洗浄段階の時間を、触媒の活性が脱水のために多数の再生サイクル後にも保持されたままであり、かつ脱水の処理のための選択性が、最適に調節されることができるように調節されることである。前記処理の本発明による運転形式によって、再生の全ての段階後にアルカン脱水に対する平衡の殆んど完全な調節を達成させることができ、副生成物の形成を最小化することができる。
【0030】
本発明の1つの実施態様において、脱水すべきアルカンは、脱水前に蒸気と混合され、それによって希釈される。蒸気とアルカンとの百分率でのモル比は、本方法の本発明による実施において1〜99であることができる。反応の十分な最適化のために、蒸気とアルカンとのモル比は、1〜10、理想的には2〜6であることができる。
【0031】
本発明のもう1つの実施態様において、再生段階の酸素含有ガスは、蒸気で希釈される。酸素含有ガスのための随伴ガスとして蒸気が選択された場合には、ガスと蒸気との百分率でのモル比は、特に酸素0.01〜50モル%対蒸気99.99〜50モル%である。反応を十分に最適化するために、酸素と蒸気とのモル比は、酸素0.05〜35モル%対蒸気99.95〜65モル%、理想的には酸素0.5〜25モル%対蒸気99.5〜75モル%であることができる。
【0032】
本発明のもう1つの実施態様において、再生段階の酸素含有ガスは、窒素または希ガス、または別の不活性ガスで希釈される。酸素含有ガスのための随伴ガスとして窒素または不活性ガスを選択した場合には、酸素と窒素または不活性ガスとの百分率でのモル比は、特に酸素0.01〜50モル%対窒素または不活性ガス99.99〜50モル%である。前記反応のさらに十分な最適化のために、酸素と窒素または不活性ガスとのモル比は、酸素0.05〜35モル%対窒素または不活性ガス99.95〜65モル%、理想的には酸素0.5〜25モル%対窒素または不活性ガス99.5〜75モル%であることができる。
【0033】
本発明によるアルカン脱水のための出発材料としては、C2〜C20のC原子数範囲を有するアルカンを使用することができる。本発明の実施態様において、出発材料としてエタンまたはプロパンまたはブタンまたは前記ガスの混合物が使用される。本発明による方法は、殊にエテンまたはプロペンまたはブテンまたは前記ガスの混合物の製造に適している。
【0034】
本方法には、本発明による方法においてアルカンの脱水に適していることを示す触媒が使用される。一般に、この触媒は、元素の周期律表の第VIIIB族からの金属を含有する。触媒活性の材料は、よりいっそう良好な取扱いのために、元素のアルミニウム、珪素、マグネシウム、ジルコニウム、亜鉛または錫の酸化物からなる担体上に施されていてよい。本発明による方法のための触媒としては、特に好ましくは、例示的に上記の米国特許第5151401号明細書Aに記載されたような触媒を使用することができる。しかし、アルカン脱水に適している別の任意の触媒が使用されてもよい。本明細書中では、例として、周期律表の第VIB族からの金属を含有する触媒が挙げられる。触媒活性の材料は、よりいっそう良好な取扱いのために、元素のアルミニウム、珪素またはマグネシウムの酸化物からなる担体上に施されていてよい。
【0035】
本発明による方法を実施するために、アルカンを脱水するための一般的な条件に相当する圧力が使用される。本明細書中では、典型的に0.1〜15バールの圧力が使用される。この圧力は、触媒再生の実施のために維持されることができる。
【0036】
本発明による方法のための脱水反応を実施するために、アルカンの脱水のための一般的な条件に相当するような温度範囲が選択される。本明細書中で典型的には、450〜820℃の温度が選択される。再生の実施のために、通常、450〜750℃の温度が選択される。非断熱的な運転形式の場合、再生中に触媒床の加熱によって、再生ガスの温度上昇を生じることができる。
【0037】
本発明の1つの実施態様において、脱水(1)は、第1の反応段階で非断熱的に実施され、次に第1の反応段階から得られた生成物混合物には、冷却のためにガスが添加される。このガスは、有利に酸素および水蒸気からなる。反応ガスを十分に冷却することが必要である場合には、液状の水が反応ガス中に添加されてもよい。更に、冷却された反応ガスは、酸化的な水素燃焼(2)の実施のために第2の処理段階に導入されてよい。
【0038】
本発明のもう1つの実施態様において、酸化的な水素燃焼の処理工程には、再度のアルカン脱水の第3の処理工程が引き続いている。このために、処理ガスは、直接的または間接的に炉を通じて加熱することができる。
【0039】
本発明による方法は、簡単な実施可能性および高い有効性を示す。記載された種類の触媒再生によって、活性の維持下にアルケンへのアルカンの変換の選択性は、多数の再生サイクルにより得られるだけでなく、むしろ改善することができる。全体的に、こうして望ましいアルケンのよりいっそう高い収量が得られる。従って、全体的に経済的な視点で改善された、プラントの明らかに改善された運転形式が達成される。
【0040】
次に、本発明による方法は、若干の実施例によって記載され、この場合本発明は、この実施例に制限されるものではない。単に典型的な実施例が重要である。
【0041】
実験例のためには、典型的には脱水反応の検査のために使用される、モデルの反応器が使用される。このモデルの反応器は、内部で触媒が反応作用する、加熱可能な金属管からなる。金属管は、垂直方向に置かれ、上側に供給装置が備えられ、脱水すべき混合物は、触媒床に導通される。供給装置は、加熱のための装置を備えており、室温の場合でも固体の炭化水素を反応器に導通させることができる。入口側および出口側には、導通されるガスの圧力および温度を測定しかつ調節することを可能にする装置が存在する。四方コックにより、炭化水素の供給は、停止され、酸素含有再生ガスまたは洗浄ガスの導入によって代替されうる。もう1つの独立した供給装置により、希釈ガスは、ガス流中に導入されることができる。反応生成物は、反応器の出口端部で捕集される。この出口端部には、ガスクロマトグラフィー測定を実施するための装置が存在し、この装置は、反応生成物を分析する。結果として、モル濃度が示されており、このモル濃度は、百分率での反応変換率および反応選択性に換算することができる。
【0042】
本発明は、多数の実験につき提示される。プロパンは、水蒸気と混合され、供給装置により反応器に導通される。記載された反応条件は、第1表から確認することができる。
【表1】

【0043】
3つの実施例を有する第1の実験において、プロパンは、7時間脱水された。それに引続き、水蒸気での5分間の洗浄段階、酸素含有ガスおよび水蒸気含有ガスでの再生段階、および水蒸気でのもう1つの洗浄段階がそれぞれ異なる時間で継続される。更に、再度の脱水期間において、プロパンの変換率およびプロペンに対する選択性が測定された(第2表)。
【0044】
例1:比較例
例2:本発明による例、
例3:対比例
【表2】

1) 水蒸気での先行する5分間の洗浄段階、再生ガスは、酸素全部で2体積%を有する空気/水蒸気からなる。
2) 洗浄ガスは、水蒸気からなる。
【0045】
オレフィン形成に対する選択性は、殆んど同じ変換率で本発明による実施例および本発明による対比例で最大である。延長された洗浄段階を有する対比例は、触媒活性が減少することを証明する。
【0046】
もう1つの実験(第3表)において、アルカン脱水を触媒再生なしにほぼ熱力学的平衡で実施した。280分後、510分後および740分後、生成物ガスを検査した。変換率は、ほぼ同一のままであり、一方、選択性は、明らかに増加する。
【表3】

【0047】
もう1つの実験(第4表)において、プロパンを脱水し、触媒を酸素供給なしに再生し、再び1つのサイクルでプロパンを脱水した。触媒の活性は、よりいっそう少ないコークスの撤去によって明らかに減少する。
【表4】

1) 280分後の測定、2) 酸素不含ガスでの再生。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を含有することができかつ本質的に酸素を有しない、炭化水素、殊にアルカンを含有する混合物を、連続的な運転形式で、通常脱水条件を有する触媒床に導通させることにより、アルカンを脱水する方法において、
脱水の数時間での生産段階直後に洗浄のためおよび反応床からの反応ガスの除去のために酸素不含のガス流を反応床に導入させる段階が継続し、および
それに引き続いて脱水反応によって形成された触媒薄層を除去するために酸素含有再生ガスの導入を有する段階が継続し、および
それに引き続いて洗浄のため、および反応器からの再生ガスの除去のために酸素不含のガス流の導入を有する段階が継続し、この場合
触媒の再生の際の酸素含有ガスの導入時間は、再生の全時間の70%またはそれ未満であることを特徴とする、アルカンを脱水する方法。
【請求項2】
酸素含有ガスの導入による触媒の再生時間は、再生の全時間と比較して20〜70%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸素含有再生ガスを蒸気で希釈する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
酸素含有再生ガスを窒素または不活性ガスで希釈する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酸素含有ガスおよび蒸気での再生のために、酸素0.05〜50モル%対蒸気99.95〜50モル%の百分率でのモル比を選択する、請求項3記載の方法。
【請求項6】
酸素含有ガスおよび窒素または不活性ガスでの再生のために、酸素0.05〜50モル%対窒素または不活性ガス99.95〜50モル%の百分率でのモル比を選択する、請求項3記載の方法。
【請求項7】
純粋な酸素の代わりに酸素の同じモル含量を空気によって供給する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
アルカン脱水のための出発材料としてC2〜C20のC炭素数範囲を有するアルカンを使用する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
本発明による方法を実施するための触媒は、元素の周期律表の第VIIIB族からの金属を含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
本発明による方法を実施するための触媒は、元素の周期律表の第VIB族からの金属を含有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
触媒は、元素のアルミニウム、珪素、マグネシウム、ジルコニウム、亜鉛または錫の酸化物、またはこの元素酸化物の混合物からなる担体上に塗布されている、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
脱水の際の蒸気対アルカンの百分率でのモル比は、1〜99である、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
脱水の処理工程を非断熱的に実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
脱水の処理工程を、処理ガスが450℃〜820℃の温度範囲に加熱されうる炉内で実施する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
脱水の処理工程を断熱的に実施する、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
触媒再生の処理工程を450〜750℃の温度で実施する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
脱水および再生の実施のために、0.1バール〜15バールの圧力を選択する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
脱水を第1の反応段階で非断熱的に実施し、次にアルカン、アルケン、水蒸気、水素および副生成物からなる、第1段階から得られた前記生成物混合物に液状の水または水蒸気および酸素を含有するガスを混合し、次にこうして得られた反応混合物を連続的な運転形式で第2段階で水素の酸化および炭化水素のさらなる脱水のためにさらなる触媒床に導通させる、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
次に第1段階から得られた反応混合物に酸素を含有するガスを混合し、得られた反応混合物を連続的な運転形式で第2段階で水素の酸化のためにさらなる触媒床に導通し、次に少なくとも1つの第3段階でアルカンの脱水のためにさらなる触媒床に導通する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
次に第1段階から得られた反応混合物に酸素を含有するガスを混合し、得られた反応混合物を連続的な運転形式で第2段階で水素の酸化のためにさらなる触媒床に導通し、次にアルカンの脱水のために第1の触媒床に返送する、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
第1段階の触媒床のための触媒として任意の通常の脱水触媒を使用し、第2の場合によってはさらなる触媒床のために、脱水に対して活性を示すだけでなく、選択的な水素の酸化に対しても活性を有するかまたは選択的な水素の酸化に対してだけ活性を有するような脱水触媒を使用する、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の方法のための材料において、この材料がアルカンの脱水のための触媒として適していることを特徴とする、請求項1記載の方法のための材料。

【公表番号】特表2010−535208(P2010−535208A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519356(P2010−519356)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006059
【国際公開番号】WO2009/018924
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(502099418)ウーデ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (75)
【氏名又は名称原語表記】Uhde GmbH
【住所又は居所原語表記】Friedrich−Uhde−Strasse 15, D−44141 Dortmund, Germany
【Fターム(参考)】