説明

アルカンジオール及びジアルキルカーボネートの製造方法

本発明は、(a)アルキレンカーボネート及びアルカノールをエステル交換触媒の存在下で反応させて、ジアルキルカーボネート、未変換アルカノール、アルカンジオール及び未変換アルキレンカーボネートを含む反応混合物を得;(b)反応混合物を第1蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネート、アルカノール、アルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;(c)第1蒸留塔からの塔底流を第2蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びアルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;(d)第2蒸留塔からの塔底流からアルカンジオールを回収し;(e)第1及び第2蒸留塔からの塔頂流を第3蒸留塔において蒸留して、アルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネートを含む塔底流を得ることを含むアルカンジオール及びジアルキルカーボネートの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキレンカーボネート及びアルカノールからのアルカンジオール及びジアルキルカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなエステル交換方法は、例えばWO2003089400及びWO2008090108に開示されている。WO2008090108は、アルキレンカーボネート及びアルカノールを反応させることにより得られる反応混合物からジアルキルカーボネートを回収するための方法を開示している。この方法は図1に示されている。WO2003089400も、アルキレンカーボネート及びアルカノールを反応させることにより得られる反応混合物からジアルキルカーボネートを回収するための方法を開示している。後者の方法は図1に示したものに類似している。
【0003】
図1の従来方法では、アルカノールをライン1を介して反応器2に流す。アルキレンカーボネートもライン3を介して反応器2に供給する。ジアルキルカーボネート、未変換アルカノール、アルキレングリコール及び未変換アルキレンカーボネートの混合物からなる生成物を反応器2からライン4を介して抜き取る。混合物をライン4を介して蒸留塔5に流し、ここで生成物をライン6を介して抜き取られるジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂フラクション及びライン7を介して抜き取られるアルキレングリコール及びアルキレンカーボネートを含む塔底フラクションに分離する。ライン6中のジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む混合物を蒸留塔8に流す。アルカノールをライン10を介して排出し、ライン1を介して反応器2に再循環させる。ジアルキルカーボネートをライン9を介して排出し、生成物として回収する。
【0004】
蒸留塔5からの塔底流を蒸留塔11において蒸留する。蒸留塔11では、アルキレングリコールを含む塔頂生成物をライン12を介して回収する。ライン13を介して抜き取られる蒸留塔11の塔底生成物はアルキレンカーボネートを含み、この生成物をライン3を介して反応器2に(部分的に)再循環させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2003/089400号
【特許文献2】国際公開第2008/090108号
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】アルキレンカーボネート及びアルカノールを反応させることにより得られる反応混合物からジアルキルカーボネートを回収するための従来の方法を示す図である。
【図2】本発明に従ってジアルキルカーボネートを回収するための構成を示す図である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、アルキレンカーボネート及びアルカノールを反応させた後、ジアルキルカーボネートを最もエネルギー効率のよい方法で回収し得るアルカンジオール及びジアルキルカーボネートを製造するための方法を見つけることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くことに、図1に示す構成に比べて、エステル交換反応器のすぐ下流に追加の蒸留塔を加えることによりジアルキルカーボネートをエネルギー効率よく回収できることが知見された。本発明に従ってジアルキルカーボネートを回収するための構成を図2に示す。
【0009】
従って、本発明は、
(a)アルキレンカーボネート及びアルカノールをエステル交換触媒の存在下で反応させて、ジアルキルカーボネート、未変換アルカノール、アルカンジオール及び未変換アルキレンカーボネートを含む反応混合物を得;
(b)反応混合物を第1蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネート、アルカノール、アルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;
(c)第1蒸留塔からの塔底流を第2蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びアルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;
(d)第2蒸留塔からの塔底流からアルカンジオールを回収し;
(e)第1及び第2蒸留塔からの塔頂流を第3蒸留塔において蒸留して、アルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネートを含む塔底流を得る;
ことを含むアルカンジオール及びジアルキルカーボネートを製造するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、有利には、以下の実施例に示すようにジアルキルカーボネートを反応混合物から分離するためのエネルギー必要量が少なくなるという結果をもたらす。
【0011】
本発明の方法のステップ(a)はUS5359118に記載されている反応蒸留塔において実施し得る。これは反応を向流式に実施することを伴う。蒸留塔はバブルキャップを有するトレー、シーブトレーまたはラシヒリングを含み得る。当業者は、エステル交換触媒の充填の幾つかのタイプ及び幾つかのトレー構成が可能であることを理解し得る。適当な塔は、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,Vol.B4,p.321以降,1992に記載されている。
【0012】
アルキレンカーボネートは通常アルカノールより高い沸点を有している。エチレン及びプロピレンカーボネートの場合、大気圧における沸点は240℃を超える。従って、通常アルキレンカーボネートを反応蒸留塔の上部に供給し、アルカノールをその塔の下部に供給する。アルキレンカーボネートを下向きに流し、アルカノールを上向きに流す。
【0013】
好ましくは、本発明の方法のステップ(a)を並流で実施する。操作に適した方法は、一部が蒸気相、一部が液相の反応物質を不均一触媒上に滴下させるトリックル流で反応を実施することである。本発明の方法のステップ(a)を操作するためのより好ましい方法は、反応器中で液体のみで実施することである。このタイプの適当な反応ゾーンは、反応をプラグ流で実施するパイプ型反応ゾーンである。例えば、本発明の方法のステップ(a)を1つのプラグ流反応器において、または一連の2つ以上のプラグ流反応器において実施し得る。こうすると、反応を平衡に近づけることができる。
【0014】
更なる可能性は、本発明の方法のステップ(a)を連続攪拌型タンク反応器(CSTR)において実施することである。後者の場合、反応を平衡に近づけることができるようにCSTRからの排出液をプラグ流反応器において後反応にかけることが好ましい。
【0015】
本発明の方法のステップ(b)では、ステップ(a)からのジアルキルカーボネート、未変換アルカノール、アルカンジオール及び未変換アルキレンカーボネートを含む反応混合物を第1蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネート、アルカノール、アルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得る。
【0016】
本明細書の記載によれば、蒸留塔からの塔頂流または生成物は蒸留塔の塔頂または上部からもたらされる。同様に、塔底流または生成物は蒸留塔の塔底または下部からもたらされる。これは、塔頂流は最上段のトレーまたは最上段の下に位置するトレーから排出され得、塔底流は最下段のトレーまたは最下段の上に位置するトレーから排出され得ることを含む。
【0017】
第1蒸留塔の塔頂での圧力は、好ましくは0.5から10bar、より好ましくは1から5barである。蒸留塔の塔頂での圧力は該塔内の最低圧力である。更に、第1蒸留塔の塔底での温度は、好ましくは100から200℃、より好ましくは125から175℃である。蒸留塔の塔底での温度は該塔内の最高温度である。
【0018】
第1蒸留塔からの塔頂流及び塔底流の両方が大量のジアルキルカーボネート及びアルカノールを含み得る。
【0019】
塔頂流を介して第1蒸留塔を離れるジアルキルカーボネートの量は、第1蒸留塔中に存在するジアルキルカーボネートの全量に基づいて好ましくは40から80重量%、より好ましくは50から70重量%である。塔底流を介して第1蒸留を離れるジアルキルカーボネートの量は、第1蒸留塔中に存在するジアルキルカーボネートの全量に基づいて好ましくは20から60重量%、より好ましくは30から50重量%である。
【0020】
塔頂流を介して第1蒸留塔を離れるアルカノールの量は、第1蒸留塔中に存在するアルカノールの全量に基づいて好ましくは60から99重量%、より好ましくは80から95重量%である。塔底流を介して第1蒸留塔を離れるアルカノールの量は、第1蒸留塔中に存在するアルカノールの全量に基づいて好ましくは1から40重量%、より好ましくは5から20重量%である。
【0021】
本発明の方法のステップ(c)では、第1蒸留塔からのジアルキルカーボネート、アルカノール、アルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を第2蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びアルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得る。
【0022】
第2蒸留塔の塔頂での圧力は、好ましく10mbarから3bar、より好ましくは50mbarから1barである。特に、第2蒸留塔の塔頂での圧力は第1蒸留塔の塔頂での圧力より低く、50から500mbar、より好ましくは70から300mbarである。更に、第2蒸留塔の塔底での温度は、好ましくは100から200℃、より好ましくは125から175℃である。
【0023】
本発明の方法のステップ(e)では、第1及び第2蒸留塔からのジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流を第3蒸留塔において蒸留して、アルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネートを含む塔底流を得る。
【0024】
好ましくは、第3蒸留塔の塔頂での圧力は第1蒸留塔の塔頂での圧力より低く、0.1から5bar、より好ましくは0.5から4barである。更に、好ましくは、第1蒸留塔からの塔頂流を蒸気流として第3蒸留塔に送る。更に、第3蒸留塔の塔底での温度は好ましくは100から200℃、より好ましくは125から175℃である。
【0025】
ジアルキルカーボネート及びアルカノールが共沸混合物を形成するかまたは近い沸点を有しているときには、第3蒸留塔においてジアルキルカーボネートとアルカノールの分離を促進するために抽出剤を用いて抽出蒸留を行うことが有益であり得る。抽出剤は多くの化合物、特にアルコール(例えば、フェノール)またはエーテル(例えば、アニソール)から選択され得る。しかしながら、抽出剤としてアルキレンカーボネートを使用することが好ましい。出発物質として使用されるアルキレンカーボネートの存在下で分離することが最も有利である。
【0026】
第3蒸留塔から未変換アルカノールを含む塔頂流をエステル交換反応ステップ(a)に再循環させてもよい。
【0027】
第3蒸留塔からのジアルキルカーボネートを含む塔底流を更に精製してもよい。この更なる精製はUS5455368に記載されているイオン交換ステップを含み得る。或いは、第3蒸留塔からの塔底流を別の蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネートを含む塔頂流及びジアルキルカーボネートより高い沸点を有する化合物を含む塔底流を得てもよい。
【0028】
本発明の方法のステップ(d)では、第2蒸留塔からのアルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流からアルカンジオールを回収する。アルカンジオール及び未変換アルキレンカーボネートを含む流れからアルカンジオールを回収するための方法は参照により本明細書に組み入れる上に挙げたWO2008090108に開示されている。アルカンジオールから分離した未変換アルキレンカーボネートをエステル交換反応ステップ(a)に再循環させてもよい。
【0029】
本発明の方法は好ましくは連続的に実施される。
【0030】
本発明の方法は、ステップ(a)においてアルキレンカーボネートのアルカノールとのエステル交換反応を含む。エステル交換反応の出発物質は、好ましくはC−Cアルキレンカーボネート及びC−Cアルカノールから選択される。より好ましくは、出発物質はエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート、及びメタノール、エタノールまたはイソプロパノール、最も好ましくはエタノールである。
【0031】
本発明の方法のステップ(a)では、エステル交換触媒の存在が必要である。適当な均一エステル交換触媒がUS5359118に記載されており、この中にはアルカリ金属(すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウム)の水素化物、酸化物、水酸化物、アルコラート、アミドまたは塩が含まれる。好ましい触媒はカリウムまたはナトリウムの水酸化物またはアルコラートである。供給原料として使用するアルカノールのアルコラートを使用することが有利である。
【0032】
他の適当な触媒はアルカリ金属塩、例えば酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩または炭酸塩である。更に適当な触媒はUS5359118及びそこに挙げられている文献、例えばEP274953、US3803201、EP1082及びEP180387に記載されている。
【0033】
US5359118に記載されているように、不均一触媒を使用することも可能である。この方法では、ステップ(a)において不均一エステル交換触媒を使用することが好ましい。適当な不均一触媒には官能基を含有するイオン交換樹脂が含まれる。適当な官能基には、第3級アミン基及び第4級アンモニウム基、並びにスルホン酸基及びカルボン酸基が含まれる。更に適当な触媒にはアルカリ金属及びアルカリ土類金属ケイ酸塩が含まれる。適当な触媒はUS4062884及びUS4691041に開示されている。好ましくは、不均一触媒はポリスチレンマトリックス及び第3級アミン官能基を含むイオン交換樹脂から選択される。その例は、N,N−ジメチルアミン基が結合しているポリスチレンマトリックスからなるAmberlyst A−21(Rohm & Haas製)である。第3級アミン基及び第4級アンモニウム基を有するイオン交換樹脂を含めた8クラスのエステル交換触媒がJ.F.Kniftonら,J.Mol.Catal.,67(1991)389以降に開示されている。更に適当なエステル交換触媒はWO2004024658に開示されているような亜鉛担持触媒である。好ましくは、亜鉛担持触媒はSiO、Al、MgO、TiO、ZrO、Cr、C及びその混合物からなる群から選択される担体材料を含む。
【0034】
本発明の方法のステップ(a)におけるエステル交換反応条件は、10から200℃の温度及び0.5から50bar(5×10から5×10N/m)の圧力を含む。好ましくは、特に並流操作では、圧力は1から20bar、より好ましくは1.5から20bar、最も好ましくは2から15barの範囲であり、温度は30から200℃、より好ましくは40から170℃、最も好ましくは50から150℃の範囲である。
【0035】
更に、本発明の方法のステップ(a)においてアルキレンカーボネートよりも過剰のアルカノールを使用することが好ましい。ステップ(a)におけるアルカノール対アルキレンカーボネートのモル比は、適当には1.01:1から25:1、好ましくは2:1から20:1、より好ましくは4:1から17:1、最も好ましくは5:1から15:1である。本発明の方法のステップ(a)における触媒の量は、アルキレンカーボネート(すなわち、本発明の方法のステップ(a)に供給される全アルキレンカーボネート)に基づいて0.1から5.0重量%、好ましくは0.2から2重量%である。本発明の方法のステップ(a)における毎時重量空間速度は適当には0.1から100kg/kg・hrの範囲であり得る。
【0036】
本発明の方法は各種供給原料に対して使用され得る。この方法はモノエチレングリコール(1,2−エタンジオール)、モノプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ジメチルカーボネート及び/またはジエチルカーボネート及び/またはジイソプロピルカーボネートを製造するために非常に適している。最も有利には、本方法はエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート及びエタノールからモノエチレングリコールまたはプロピレングリコール及びジエチルカーボネートを製造するために使用される。
【0037】
図2には、本発明に従う方法のフロースキームが示されている。方法は適当なアルコールとしてエタノール、アルキレンカーボネートとしてエチレンカーボネートについて記載されているが、当業者は他のアルカノール及びアルキレンカーボネートが同様に使用され得ることを理解し得る。
【0038】
エタノールをライン1を介して反応器2に流す。反応器2は適当には連続攪拌型タンク反応器であり得る。エチレンカーボネートもライン3を介して反応器2に供給する。反応器2にはエステル交換触媒が存在しており、この触媒を反応器に連続的に供給してもよい。触媒をライン1またはライン3中の反応物質と混合しても、または別のライン(図示せず)を介して反応器2に供給してもよい。
【0039】
反応器2からのジエチルカーボネート、未変換エタノール、モノエチレングリコール及び未変換エチレンカーボネートを含む反応混合物をライン4を介して第1蒸留塔5に供給する。蒸留塔5では、混合物をライン6を介して抜き取られるジエチルカーボネート及びエタノールを含む塔頂フラクション及びライン7を介して抜き取られるジエチルカーボネート、エタノール、モノエチレングリコール及びエチレンカーボネートを含む塔底フラクションに分離する。
【0040】
ライン7中の塔底流を第2蒸留塔8において蒸留する。蒸留塔8では、ジエチルカーボネート及びエタノールを含む塔頂生成物をライン9を介して抜き取る。
【0041】
蒸留塔5及び8からの塔頂流を合わせ、第3蒸留塔10に送る。第3蒸留塔10では、エタノール及びジエチルカーボネートの分離を行う。ジエチルカーボネートをライン11を介して排出し、場合により更に精製した後生成物として回収する。エタノールをライン12を介して回収し、ライン1を介して反応器2に再循環させる。
【0042】
更に、蒸留塔8では、モノエチレングリコール及びエチレンカーボネートを含む塔底流をライン13を介して抜き取り、蒸留塔14に送る。ライン15を介して抜き取られる蒸留塔14の塔底生成物はエチレンカーボネートを含む。ライン15中のエチレンカーボネートは場合により更に精製した後、ライン3を介して反応器2に再循環させる。モノエチレングリコールを蒸留塔14の塔頂生成物から回収し、ライン16を介して抜き取る。塔頂生成物は若干のエチレンカーボネートで僅かに汚染されている恐れがあるので、更なる精製が考えられ得る。
【0043】
以下の実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0044】
実施例及び比較例
本発明を例示する実施例では、図2に示す構成を使用して、以下に更に記載されているように、反応器2においてエチレンカーボネート(eC)及びエタノールからジエチルカーボネート(DEC)及びモノエチレングリコール(MEG)を製造し、蒸留塔5、8、10及び14において反応混合物からDEC及びMEGを分離する。
【0045】
例えば上に挙げたWO2003089400及びWO2008090108に記載されている従来方法を例示する比較例では、図1に示す構成を使用して、以下に更に記載されているように、反応器2においてeC及びEtOHからDEC及びMEGを製造し、蒸留塔5、8及び11において反応混合物からDEC及びMEGを分離する。
【0046】
実施例及び比較例では、EtOHをライン1を介して触媒を含んでいる反応器2に連続的に流す。eCもライン3を介して反応器2に連続的に供給する。反応器2内の温度は130から140℃であり、圧力は12barである。
【0047】
DEC(13重量%)、未変換EtOH(56重量%)、MEG(7重量%)、未変換eC(13重量%)及びMEGより高い分子量を有する化合物(11重量%)からなる混合物をライン4を介して反応器2から抜き取る。混合物をライン4を介して蒸留塔5に流し、そこでライン6を介して抜き取られる塔頂フラクション及びライン7を介して抜き取られる塔底フラクションに分離する。
【0048】
比較例では、ライン6中の流れを蒸留塔8(図1に示す)に流す。EtOHをライン10を介して排出し、ライン1を介して反応器2に再循環させる。DECをライン9を介して排出し、生成物として回収する。更に、比較例では、ライン7中の流れを蒸留塔11(図1に示す)に流す。eCをライン13を介して排出し、ライン3を介して反応器2に再循環させる。MEGをライン12を介して排出し、生成物として回収する。
【0049】
下表1には、比較例で使用した塔5、8及び11についての幾つかの緒元が挙げられている。
【0050】
【表1】

【0051】
下表2には、図1に示すライン1、3、4、6、7、9、10、12及び13中に存在する比較例からの流れについての以下のパラメーター、すなわち温度、圧力、全質量流量及び流れの成分あたりの質量流量(MF)を記載する。比較例での流れはすべて液体である。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例では、ライン7中の流れを蒸留塔8(図2に示す)に流す。それぞれライン6及び9中の蒸留塔5及び8からの塔頂流を合わせ、蒸留塔10に送る。EtOHをライン12を介して排出し、ライン1を介して反応器2に再循環させる。DECをライン11を介して排出し、生成物として回収する。更に、実施例では、ライン13中の蒸留塔8からの塔底流を蒸留塔14(図2に示す)に流す。eCをライン15を介して排出し、ライン3を介して反応器2に再循環させる。MEGをライン16を介して排出し、生成物として回収する。
【0054】
下表3には、実施例で使用した塔5、8、10及び14についての幾つかの緒元を記載する。
【0055】
【表3】

【0056】
下表4には、図2に示すライン1、3、4、6、7、9、11、12、13、15及び16中に存在する実施例からの流れについての以下のパラメーター、すなわち温度、圧力、全質量流量及び流れの成分あたりの流量(MF)を示す。表4の説明については、表2の下に記載した説明を参照されたい。ライン6中の流れを除いて実施例での流れはすべて液体であり、ライン6中の流れは蒸気状である。
【0057】
【表4】

【0058】
表2及び4から、実施例では、蒸留塔10の塔頂での圧力(2bar)は蒸留塔5の塔頂での圧力(3bar)より低いことは明らかである。一方、比較例では、蒸留塔8の塔頂での圧力(1bar)は蒸留塔5の塔頂での圧力(0.12bar)より高い。
【0059】
比較例では、反応器2並びに蒸留塔5、8及び11における加熱のために製造されるDEC1gあたり20.9kJが必要である。本発明を例示する実施例では、有利なことに、反応器2並びに蒸留塔5、8、10及び14における加熱のために製造されるDEC1gあたりたった10.3kJしか必要としない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカンジオール及びジアルキルカーボネートの製造方法であって、
(a)アルキレンカーボネート及びアルカノールをエステル交換触媒の存在下で反応させて、ジアルキルカーボネート、未変換アルカノール、アルカンジオール及び未変換アルキレンカーボネートを含む反応混合物を得;
(b)反応混合物を第1蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネート、アルカノール、アルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;
(c)第1蒸留塔からの塔底流を第2蒸留塔において蒸留して、ジアルキルカーボネート及びアルカノールを含む塔頂流及びアルカンジオール及びアルキレンカーボネートを含む塔底流を得;
(d)第2蒸留塔からの塔底流からアルカンジオールを回収し;並びに
(e)第1及び第2蒸留塔からの塔頂流を第3蒸留塔において蒸留して、アルカノールを含む塔頂流及びジアルキルカーボネートを含む塔底流を得る
ことを含む方法。
【請求項2】
第1蒸留塔の塔頂での圧力は0.5から10bar、より好ましくは1から5barである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2蒸留塔の塔頂での圧力は10mbarから3bar、より好ましくは50mbarから1barである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第2蒸留塔の塔頂での圧力は第1蒸留塔の塔頂での圧力よりも低く、並びに50から500mbar、より好ましくは70から300mbarである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第3蒸留塔の塔頂での圧力は第1蒸留塔の塔頂での圧力よりも低い請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
第3蒸留塔の塔頂での圧力は0.1から5bar、より好ましくは0.5から4barである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1、第2及び第3蒸留塔の塔底での温度は100から200℃、より好ましくは125から175℃である請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
連続的に実施する請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
エステル交換触媒は不均一触媒である請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
アルキレンカーボネートはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートであり、アルカノールはエタノールである請求項1から9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−505976(P2013−505976A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531335(P2012−531335)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064153
【国際公開番号】WO2011/039113
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】