説明

アルキルケテンダイマーの水性分散液

アルキルケテンダイマー少なくとも15質量%ならびに少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉、硫酸アルミニウムおよびナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物またはリグニンスルホン酸またはそのつどその塩を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液であって、その際、該分散液が、そのつどアルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム2〜50質量%を含有し、かつその際、該分散液が、2〜15質量%の硫酸アルミニウム含量の際に、付加的にC原子1〜10個を有する飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0.1〜5質量%を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液ならびに紙および紙製品用のエンジンサイズ剤および表面サイズ剤としての分散液の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、アルキルケテンダイマー少なくとも15質量%ならびに少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉、硫酸アルミニウムおよびナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物またはリグニンスルホン酸またはそのつどその塩を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液に関する。
【0002】
アルキルケテンダイマー(AKD)の水性分散液は市販製品である。それらは、紙および厚紙に疎水性をもたせるために使用される。アルキルケテンの水性分散液は、通常、カチオン化澱粉およびリグニスルホン酸ナトリウムを安定剤として含有する。分散液という概念は、固体粒子を連続媒体としての液相中で含有する2相系に適用される。エマルションという概念は、液体の液滴を他の液相中で乳化された状態で含有する2相系と理解される。
【0003】
疎水化剤として使用されるアルキルケテンダイマーは、およそ45〜70℃の融点を有している。それゆえ、アルキルケテンダイマーと水からの混合物は、40℃より低い温度では分散液であり、かつ45℃より高い温度ではエマルションである。アルキルケテンダイマーの分散液をサイズ剤として紙および厚紙の製造に際して使用するのに不可欠とされていることは、分散液が希釈可能であり、かつポンプ安定性であり、ならびに32℃までの温度で数週間の貯蔵安定性を有することである。US−A4,240,935から、安定剤としてエピクロロヒドリン樹脂、リグニンスルホン酸ナトリウムおよび/またはナフタリンスルホン酸のナトリウム塩とホルムアルデヒドからの縮合生成物を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液が公知である。水性分散液の固体含有率は5〜25質量%であり、その際、アルキルケテンダイマー対エピクロロヒドリン樹脂の比は4:1〜1:3の範囲内にある。
【0004】
EP−A369328から、30質量%までの固体含有率を有するアルキルケテンダイマーの分散液が公知である。それらは、安定剤として、そのつどアルキルケテンダイマーに対して、硫酸アルミニウム0.15〜1.5質量%、C原子1〜10個を有するカルボン酸0.1〜5質量%、カチオン化澱粉10〜30質量%およびリグニンスルホン酸の塩1〜5質量%またはホルムアルデヒドとナフタリンスルホン酸の塩からの縮合生成物を含有し、その際、これらの分散液の粘度は、32℃の温度で4週間貯蔵した後に100センチストーク未満の単位分が高まる。
【0005】
近年、消費液、殊に乳液およびクリーム用の合板紙をベースとする容器が用いられる傾向にある。そのような容器の壁は、通常、両面がポリエチレンで被覆されているか、時にはまた片面のみがポリエチレンで被覆されている。
【0006】
消費液用の合板紙をベースとする容器が要求に一致するように、乳酸が容器の臨界部で、例えば互いに接着された断面部で厚紙にしみ通らないようにするために、該容器は、乳酸の作用に対して耐性でなければならない。それに加えて、該容器は消費液で充填する前に高温の過酸化水素で殺菌されなければならない。これは、該容器が高温の過酸化水素の作用に耐えなければならないことを意味する。従って、乳酸および高温の過酸化水素溶液のエッジ浸透は、消費液が包装される容器の決定的に重要な特性である。
【0007】
WO2004/022851から、液体の包装の製造に厚紙を使用することが公知であり、それは少なくとも1つの歩留向上剤およびカチオン性ポリマー、例えばポリビニルアミンの存在での、少なくとも1つのエンジンサイズ剤(Masseleimungsmittel)を用いたセルロース繊維の水性スラリーからの紙料のエンジンサイズによって得られる。エンジンサイズ剤として、例えばアルキルケテンダイマーおよび/または樹脂サイズの水性分散液が用いられ、該分散液は、そのつどカチオン化澱粉によって乳化される。アルミニウム化合物は、実際に樹脂サイズと一緒でしか使用されない。
【0008】
DE−A102004002370から、液体の包装用の容器を製造するための、サイズ紙またはサイズ厚紙からの少なくとも1つの2層の複合体と少なくとも1つの水不透過性フィルムからの包装材料が公知である。紙もしくは厚紙は、1μm〜1000μmの平均粒度を有する微細な水不溶性または水膨潤性の合成ポリマーを含有する。
【0009】
本発明の基礎をなしている課題は、貯蔵安定性およびせん断安定性である、さらなるアルキルケテンダイマーの分散液を提供することである。それに加えて、該分散液は、液体の包装用の厚紙を製造するために使用される場合、公知の分散液でサイズされた製品と比べて、エッジ浸透、殊に過酸化水素のエッジ浸透に関して改善された容器をもたらす。
【0010】
該課題は、本発明により、アルキルケテンダイマー少なくとも15質量%ならびに少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉、硫酸アルミニウムおよびナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物またはリグニンスルホン酸またはそのつどその塩を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液を用いて、該分散液が、そのつどアルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム2〜50質量%を含有する場合に解決され、その際、該分散液は、2〜15質量%の硫酸アルミニウム含量の際に、付加的にC原子1〜10個を有する飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0.1〜5質量%を含有する。
【0011】
有利には、アルキルケテンダイマーの水性分散液は、アルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム5〜30質量%を含有する。とりわけ有利には、アルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム10〜20質量%を含有するアルキルケテンダイマーの分散液が含まれる。
【0012】
有利には、アルキルケテンダイマーの水性分散液は、そのつどアルキルケテンダイマーに対して、
(a)硫酸アルミニウム5〜30質量%
(b)少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉10〜30質量%、
(c)ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドまたはナフタリンスルホン酸の塩とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物および/またはリグニンスルホン酸またはリグニンスルホン酸の塩1〜5質量%および
(d)C原子1〜10個を有する少なくとも1つの飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0〜5質量%
を含有する。
【0013】
アルキルケテンダイマーに対して2〜15質量%の硫酸アルミニウムの含量の際に、該分散液は、付加的にC原子1〜10個を有する飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0.1〜5質量%を含有する。
【0014】
とりわけ有利には、アルキルケテンダイマーの水性分散液は、少なくとも1つのアルキルケテンダイマー15〜30質量%と、アルキルケテンダイマーに対して、
(a)硫酸アルミニウム10〜20質量%、
(b)少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉15〜25質量%、
(c)ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドまたはナフタリンスルホン酸の塩とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物および/またはリグニンスルホン酸またはリグニンスルホン酸の塩1.8〜4.0質量%
(d)C原子1〜10個を有する少なくとも1つの飽和カルボン酸0〜5質量%
を含有する。
【0015】
アルキルケテンダイマーは、例えば一般式
【化1】

によって特徴づけられ、その際、置換基RおよびRは、飽和または不飽和、線状または分岐状であってもよいC〜C30−炭化水素基を意味する。置換基RおよびRは、例えば以下の基を包含する:オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、テトラコシル、フェニル、ベンジル、β−ナフチルおよびシクロヘキシル。
【0016】
有利なアルキルケテンダイマーは、RおよびRとして、炭素原子12〜20個、有利には14〜18個を有する飽和およびモノ不飽和もしくはポリ不飽和ならびに分岐状の炭化水素化合物を含有する。
【0017】
式Iの化合物は、例えばカルボン酸塩化物と第三級アミンとの反応によって製造される。技術的に重要なのは、殊に、天然に存在する脂肪酸またはそれらの混合物の塩素化によって得られるカルボン酸塩化物、例えば、ココヤシ油、トール油、ヒマシ油、オリーブ油、牛脂またはパーム核油から獲得される脂肪酸をベースとする酸塩化物である。カルボン酸塩化物に関する典型的な例は、ミリスチン酸塩化物、パルミチン酸塩化物、ステアリン酸塩化物、オレイン酸塩化物、ベヘン酸塩化物およびイソステアリン酸塩化物である。該カルボン酸塩化物と第三級アミンとの反応は、特に有利には、溶剤の存在において65〜150℃の温度での強力な混合下でEP−A1453821から公知の方法に従って実施される。
【0018】
水性分散液は、アルキルケテンダイマー少なくとも15質量%〜30質量%、有利にはアルキルケテンダイマー15〜25質量%を含有する。
【0019】
本発明によるアルキルケテンダイマーの水性分散液は、カチオン化澱粉によって安定化される。カチオン化澱粉として、カチオン性基としてアミノ基を有する全ての水溶性澱粉が考慮に入れられる。そのような澱粉は市販製品である。それらは、例えば、天然澱粉と、第三級または第四級窒素原子を有する化合物、例えば過酸化ジアルキルアミノアルキルまたは塩化ジアルキルアミノアルキルとの反応によって得られる。そのような化合物に関する例は、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチル塩化アンモニウムおよびグリシジルトリメチル塩化アンモニウムである。澱粉のカチオン化度は、例えば置換度(D.S.)によって示される。この値は、カチオン化澱粉におけるモノサッカリド単位1個当たりのカチオン性基の数を表す。カチオン化澱粉の置換度D.S.は、有利には0.01〜0.5であり、かつたいていの場合、0.02〜0.4の範囲内にある。カチオン化澱粉は、天然澱粉をまず酵素分解し、引き続きこの分解された澱粉をカチオン化することによっても得られる。示された置換度D.S.を有する澱粉は、それが水溶液中で正に帯電するのに十分な数のカチオン性基を有している。
【0020】
カチオン化澱粉のベースとして、例えば、ジャガイモ、タピオカ、イネ、コムギ、トウモロコシ、モロコシおよびエンドウからの澱粉が考慮に入れられる。澱粉のアミロペクチン含有率は、例えば0.1〜100%であってよい。水溶性カチオン化澱粉の一例は、0.17の置換度D.S.を有するPercole(R)134EPである。有利には使用されるカチオン化澱粉は、少なくとも0.08の置換度D.S.を有する。とりわけ有利なのは、第三級アミンまたは第四級アミンで変性されており、かつ50〜200mPasの粘度を有するカチオン化ジャガイモ澱粉である(20℃の温度、2スピンドル、3.0%の固体含有率でブルックフィールド粘度計において測定)。
【0021】
アルキルケテンダイマーの水性分散液は、少なくとも1つのカチオン化澱粉を通常10〜30質量%、有利には15〜25質量%含有する。それらは正に帯電しており、かつその他の分散安定剤の存在でも正の全帯電を有している。
【0022】
アルキルケテンダイマーの水性分散液は、本発明により、アルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム2〜50質量%を含有する。たいていの場合、水性分散液中での硫酸アルミニウムの含有率は、そのつどアルキルケテンダイマーに対して5〜30質量%、殊に10〜20質量%である。
【0023】
アルキルケテンダイマーの水性分散液は、他の安定剤として、ナフタリン酸とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物またはナフタリンスルホン酸の塩とホルムアルデヒドからの縮合生成物および/またはリグニンスルホン酸またはリグニンスルホン酸の塩を含有する。例えば、ナフタリンスルホン酸およびリグニンスルホン酸の塩として、アルカリ金属塩、アンモニウム塩およびアルカリ土類金属塩、殊にアンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩およびナトリウム塩が考慮に入れられる。とりわけ有利には、リグニンスルホネートのナトリウム塩またはナフタリンスルホン酸のナトリウム塩とホルムアルデヒドからの縮合生成物のナトリウム塩が分散安定剤として使用される。
【0024】
例えば、スルホン酸基もしくはスルホネート基を含有する分散安定剤は、アルキルケテンダイマーに対して1〜5質量%の量、有利には1.8〜4質量%の量で使用される。
【0025】
本発明によるアルキルケテンダイマーの水性分散液は、アルキルケテンダイマーに対して2〜15質量%の硫酸アルミニウム含量の際に、アルキルケテンダイマーに対して付加的になおC原子1〜10個を有する飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0.1〜5質量%を含有する。硫酸アルミニウムの量がより高い場合、アルキルケテンダイマーの水性分散液は、場合によってはなお付加的に他の酸を含有してもよい。他の酸として、有利には、C原子1〜10個を有するカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、サリチル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、クエン酸、アジピン酸およびフタル酸が考慮に入れられる。
【0026】
アルキルケテンダイマーの水性分散液のpH値は、例えば2.0〜4.0である。
【0027】
上述のアルキルケテンダイマーの水性分散液は、エンジンサイズ剤および表面サイズ剤として紙および紙製品用に使用される。紙製品は、合板紙とも厚紙とも理解されるべきである。紙および紙製品の製造に際して、全ての種類のセルロース繊維、天然繊維だけでなく再回収された繊維、殊にくず紙からの繊維から出発してもよい。パルプを製造するための繊維材料として、それに関して慣例の全ての品種、例えば木材パルプ、漂白パルプおよび未漂白パルプならびに全ての一年生植物からの紙料が考慮に入れられる。木材パルプには、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧式砕木パルプ、セミケミカルパルプ、高収率パルプおよびリファイナー・メカニカル・パルプ(RMP)が含まれる。パルプとして、例えば硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプおよびソーダパルプが考慮に入れられる。有利には、未漂白クラフトパルプとも呼ばれる、未漂白パルプが用いられる。紙料の製造に適した一年生植物は、例えばイネ、コムギ、サトウキビおよびケナフである。パルプの製造のために、有利にはくず紙を用いてもよく、それは単独でかまたはその他の繊維物質と混合して使用されるか、あるいは一次物質および再回収されたコートブロークからの繊維混合物、例えば、再回収されたコートブロークとの混合物の漂白されたマツ硫酸塩から出発する。
【0028】
本発明によるアルキルケテンダイマーの水性分散液は、紙および紙製品の製造に際して、通常のプロセスケミカル、例えば歩留向上剤、凝集剤および脱水剤、定着剤、湿式凝固剤および乾燥凝固剤、殺虫剤、着色剤、アルケニル無水コハク酸および樹脂サイズと一緒に適用されうる。本発明により乳化されたアルキルケテンダイマーは、せん断安定性および貯蔵安定性である。このアルキルケテンダイマーは、例えば3ヶ月より長く貯蔵されうる。
【0029】
本発明によるアルキルケテンダイマーの水性分散液は、有利にはエンジンサイズ剤として紙および紙製品の製造に際して使用される。
【0030】
該水性分散液は、例えば筆記用紙および印刷用紙の製造のために使用され、かつ特に有利には、液体の包装用の容器の製造に際して用いられる。例えば、パルプは、該パルプの乾燥含分に対してアルキルケテンダイマー0.01〜0.6質量%を含有してよい。紙料の脱水および紙または紙製品の乾燥後に、例えば40〜400g/mの坪量を有する内添された製品が得られる。消費液用の容器の製造において用いられる厚紙は、例えば100〜300g/mの坪量を有する。例えば、紙または紙製品のサイズにおいて使用されるアルキルケテンダイマーの量は、乾燥紙料に対して0.05〜4.0質量%、有利には0.15〜0.8質量%である。
【0031】
例えば液体の包装用の容器の製造において、内添された紙製品は、片面または両面がプラスチックまたは金属、例えばアルミニウムからのフィルムで被覆される。適したプラスチックフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエステルから製造されうる。該フィルムは、例えば接着物質によって、サイズされた紙製品と結合されうる。たいていの場合、それに関して、接着剤で被覆されているフィルムが用いられ、該フィルムは紙製品の片面または両面に施与され、引き続きプレスされ複合体が得られる。しかしながら、サイズされた紙製品の表面も接着剤で被覆し、次いでフィルムを施与し、その後に複合体を得るためにプレスしてもよい。熱可塑性フィルムは、しかしながら、熱および圧力の作用によって直接に、内添された紙製品と加工されえ、そうして複合体が得られ、そこから次いで、液体の包装用の容器の製造において適した型が作り上げられる。そのような包装は、有利には食品分野において使用され、例えばミネラルウォーター、ジュースまたは牛乳といった飲料を包装するためにか、またはグラスといった飲料用容器の製造のためにも使用される。これらの包装において重要なのは、それがエッジ浸透に関しての良好な値を有すること、すなわちサイズされた紙製品が、可能な限り液体をほとんど吸収しないかまたは実際に液体を吸収しないことである。そのような容器の切断エッジは、高温の過酸化水素および乳酸の浸透に対しての安定性が高まっていなければならない。
【0032】
本発明によるアルキルケテンダイマーの分散液で製造された液体包装用の容器は、公知のアルキルケテンダイマーの分散液でサイズされた容器と比べて、過酸化水素のエッジ浸透に関する改善された値を有するのと同時に、乳酸のエッジ浸透に関する非常に良好な値を有する。
【0033】
実施例でのパーセント記載は、文脈からその他に明らかではない限り、質量パーセントを意味する。
【0034】
実施例
実施例1
計1000gのバッチは、以下の成分を含有していた:
16/C18−アルキルジケテン200g
カチオン化澱粉(Perlcole(R)134EP)30g
リグニンスルホン酸ナトリウム(Tamol(R)2901)7.5g
水700g
硫酸アルミニウム49g
残留水13.5g
アルキルケテンダイマーの水性分散液の製造
水700gに、カチオン化澱粉(Perlcole(R)134EP,Lyckebyで商業的に入手可能)30gとリグニンスルホン酸ナトリウム(Tamol(R)2901,BASF AGで商業的に入手可能)7.5gを添加した。この混合物を95℃に加熱し、かつ水(13.5g)を後から付け加えた。該混合物を80℃に冷却した後、C16/C18−アルキルジケテン(Basoplast(R)BP90Conc)の混合物200gを添加した。アルキルジケテンが溶融した後、該混合物の温度はおよそ70℃であった。該混合物を、高圧ホモジナイザー(型式APV−Lab60)によって170barの圧力にて2工程でホモジナイズした。この温かいエマルションに、次いで硫酸アルミニウム49gを添加した。アルキルジケテンの分散液のpH値は、HCl0.1Mの添加によって3.6に調節した。分散液の固体含分は28%であった。
【0035】
アルキルジケテンの分散液は、32℃の温度で5週間貯蔵した後に100mPasの粘度を有していた(ブルックフィールド粘度計において測定、2スピンドル、20℃)。
【0036】
比較例1(EP−A0369328の実施例2の後処理)
計500gのバッチは、以下の成分を含有していた:
16/C18−アルキルジケテン100g
カチオン化澱粉(Amaizo(R)2187)22.5g
リグニンスルホン酸ナトリウム(Lignasol(R)XD)2g
酢酸0.01M 368.4g
硫酸アルミニウム(水の中で5%)0.33g
水を加えて500gとなる
アルキルケテンダイマーの水性分散液の製造
酢酸0.01M 368.4gに、カチオン化澱粉(Amaizo(R)2187で商業的に入手可能)22.5gとリグニンスルホン酸ナトリウム(Lignasol(R)XDで商業的に入手可能)2gを添加した。pH値を、塩酸0.1MによってpH5.5に調節した。この混合物を95℃に加熱し、かつ水(15g)を後から付け加えた。該混合物を80℃に冷却した後、C16/C18−アルキルジケテン(Basoplast(R)BP90Conc)の混合物100gを添加した。AKDが溶融した後、該混合物の温度は65℃であった。引き続き、該混合物を、高圧ホモジナイザー(型式APV−Lab60)によって170barの圧力にて2工程でホモジナイズした。この温かいエマルションに、次いで5%の硫酸アルミニウム溶液0.33gを添加した。分散液のpH値は、塩酸0.1Mの添加によって3.6に調節した。固体含有率は25%であった。
【0037】
該分散液は、32℃で5週間貯蔵した後、120mPasの粘度を有していた(ブルックフィールド粘度計において測定、2スピンドル、20℃)。
【0038】
消費飲料液体包装紙に関するエッジ浸透の測定
厚紙の各層に関して、それぞれシート紙120g/mを、実験室用シート紙形成装置により、表1の中で示されるサイズ剤と0.15%の歩留向上剤としてのPolymin(R)215の使用下で製造し、引き続き、接触シリンダー乾燥機を用いて120℃にて5工程で乾燥した。表2の中では、過酸化水素のエッジ浸透に関する算出値が示されている。
【0039】
厚紙の最上層は、漂白された短繊維70%と漂白された長繊維30%を有するパルプから成っていた。
【0040】
厚紙の中間層は、(CTMP)60%とコートブローク40%を有するパルプから成っていた。
【0041】
厚紙の下層は、未漂白のパルプ100%から成っていた。
【0042】
【表1】

【0043】
厚紙を製造した後、過酸化水素および乳酸に関するエッジ浸透を以下の方法に従って測定した:
(a)シート紙重量の測定
(b)シート紙の二分化
(c)シート紙の接着
(d)25×75mmのストリップへのシート紙の切断
(e)ストリップの厚さの測定
a)について:シート紙重量の測定
温度調節したシート紙を量り(精度1mg)、その後、重さをg/mに換算する。
【0044】
b)について:温度調節したシート紙を、シート紙切断装置によって二分する。
【0045】
c)について:(c)シート紙の接着
接着テープロールを固定するために備え付けられた部材を有する実験室用サイズプレスを転換し、その際、接着テープが正確に重なり合って接着すること、すなわち接着面がロールと接触しないことに注意が置かれる。サイズプレスの速度は2.2m/分で、接触圧力は4barであった。しわになるのを防止するために、二分したシート紙をラウンド面でなお約1〜1.5cm短くしてもよい。引き続き、接着したシート紙をハサミで切断した。
【0046】
d)について:接着したシート紙を試験ストリップに切断する
接着したシート紙から、25×75mmのストリップを切断した。この場合、ストリップが両面とも完全に接着フィルムで覆われ、切断面にしわを有さず、かつエッジが正確かつ汚れていないことに注意が置かれるべきである。引き続き、該ストリップのマーキングおよびバンドリングを行う。それ以外に、シート紙エッジの目詰りを防止するために、時々、シート紙切断装置のブレードおよび切断エッジから接着テープ残留物をアセトンで洗浄しなければならない。
【0047】
e)について:厚さ測定
接着しかつ切断したシート紙の厚さを測定した(0.001mmの精度)。引き続き、正味厚さを測定するために、接着テープの厚さを差し引いた。シート紙をそのつど接着後に測定した。なぜなら、その時にシート紙はより良好な均質性を有するからである。
【0048】
過酸化物試験
過酸化物を、金属シャーレ中で湯浴によって70℃に調温した。試料を乾燥した状態で量り、過酸化物浴中に10分間置き、グリッドを載せて試料が確実に浮かばないようにし、引き続き取り出し、付着する過酸化物を濾紙で吸収し、かつ即座に湿潤状態で量りなおした。
【0049】
乳酸試験
過酸化物試験と違うのは、1%の乳酸を試験液体として使用したことのみである。測定を室温で実施し、作用時間は1時間だった。
【0050】
計算は以下の式に従って行った:
【数1】

【0051】
過酸化水素に関するエッジ浸透の結果は、表2の中でまとめられている。
【0052】
【表2】

【0053】
本発明によるAKD分散液は、比較例と比べて過酸化物浸透に関する値が明らかに改善されている。その一方で、乳酸浸透のケースにおいては、比較例の分散液に対する本発明によるAKD分散液の改善はほんのわずかしか認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルケテンダイマー少なくとも15質量%ならびに少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉、硫酸アルミニウムおよびナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物またはリグニンスルホン酸またはそのつどその塩を含有するアルキルケテンダイマーの水性分散液において、該分散液が、そのつどアルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム2〜50質量%を含有し、その際、該分散液は、2〜15質量%の硫酸アルミニウム含量の際に、付加的にC原子1〜10個を有する飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0.1〜5質量%を含有することを特徴とする、アルキルケテンダイマーの水性分散液。
【請求項2】
前記分散液が、アルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム5〜30質量%を含有することを特徴とする、請求項1記載のアルキルケテンダイマーの水性分散液。
【請求項3】
前記分散液が、アルキルケテンダイマーに対して硫酸アルミニウム10〜20質量%を含有することを特徴とする、請求項1または2記載のアルキルケテンダイマーの水性分散液。
【請求項4】
前記分散液が、そのつどアルキルケテンダイマーに対して、
(a)硫酸アルミニウム5〜30質量%
(b)少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉10〜30質量%、
(c)ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドまたはナフタリンスルホン酸の塩とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物および/またはリグニンスルホン酸またはリグニンスルホン酸の塩1〜5質量%および
(d)C原子1〜10個を有する少なくとも1つの飽和カルボン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸および/または鉱酸0〜5質量%
を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のアルキルケテンダイマーの水性分散液。
【請求項5】
前記分散液が、少なくとも1つのアルキルケテンダイマー15〜30質量%および、そのつどアルキルケテンダイマーに対して、
(a)硫酸アルミニウム10〜20質量%、
(b)少なくとも1つの水溶性カチオン化澱粉15〜25質量%、
(c)ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドまたはナフタリンスルホン酸の塩とホルムアルデヒドからの少なくとも1つの縮合生成物および/またはリグニンスルホン酸またはリグニンスルホン酸の塩1.8〜4.0質量%
(d)C原子1〜10個を有する少なくとも1つの飽和カルボン酸0〜5質量%
を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のアルキルケテンダイマーの水性分散液。
【請求項6】
紙および紙製品用のエンジンサイズ剤および表面サイズ剤としての、請求項1から5までのいずれか1項記載のアルキルケテンダイマーの水性分散液の使用。
【請求項7】
アルキルケテンダイマーの水性分散液がエンジンサイズ剤として紙および紙製品の製造に際して使用されることを特徴とする、請求項6記載の使用。
【請求項8】
水性分散液がサイズ剤として筆記用紙および印刷用紙の製造のために使用されることを特徴とする、請求項6または7記載の使用。
【請求項9】
水性分散液がサイズ剤として液体の包装用の容器の製造に際して使用されることを特徴とする、請求項6または7記載の使用。

【公表番号】特表2009−540033(P2009−540033A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513654(P2009−513654)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055372
【国際公開番号】WO2007/141197
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】