説明

アルキルハロシランの直接合成方法

本発明は、アルキルハライド、好ましくはCH3Clと;ケイ素、および触媒系すなわち(α)銅触媒、(β)‐金属亜鉛、亜鉛を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β1、‐錫、錫を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β2、‐任意でセシウム、カリウム、ルビジウム、これら金属由来の化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β3を含む促進用添加剤の群を含む触媒系、から形成された固形物(接触体);との反応によるアルキルハロシランを調整する直接合成方法において、銅触媒(α)が金属銅、ハロゲン化銅またはこれらの混合物の形態であり、接触体がさらにリン酸誘導体およびこれらの混合物から選択される補助的な促進用添加剤β4を含む、組み合わせで行われることを特徴とする、アルキルハロシランの調製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルハロシランの直接合成に用いる工業的方法に係わる改善に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキルハロシラン、例えばジメチルジクロロシラン(以下、DMDCSという)の製造のための工業的方法は周知の方法であり、特に、米国特許第2380995号およびWalter Noll著、「Chemistry and Technology of Silicones」(1968年、ロンドン、Academic Press Inc.より出版、26−41頁)に開示されている。
【0003】
この“直接合成”または“Rochow合成”法によれば、アルキルハロシラン(例えばDMDCS)は、塩化メチルと、ケイ素および銅含有触媒から形成された固形体(接触体という)との反応によって、
2CH3Cl + Si− > (CH32SiCl2
の反応に従って直接製造される。
【0004】
実際には、以下に述べるような他の副産物:他のアルキルハロシラン、例えばメチルトリクロロシランCH3SiCl3(以下、MTCSという)およびトリメチルクロロシラン(CH33SiCl(以下、TMCSという);ハロゲン化アルキルヒドロシラン、例えばメチルヒドロジクロロシラン(CH3)HSiCl2(以下、MHDCSという);ポリシランである重質生成物、特にジシラン、例えばトリメチルトリクロロジシラン(CH33Si2Cl3およびジメチルテトラクロロジシラン(CH32Si2Cl4、がこの直接合成の間に形成される。
【0005】
接触体の組成に関して、直接合成反応の触媒として、金属銅の形態または銅を主体とした化合物の形態で、銅を使用することが知られている。直接合成の実施を経済的に実施可能な水準のものにするために、1種またはそれ以上の促進用添加剤を接触体に加えることも知られている。これら促進用添加剤は、亜鉛またはハロゲン化亜鉛(米国特許第2,464,033号);アルミニウム(米国特許第2,403,370号および同第2,427,605号);錫、マンガン、ニッケルおよび銀(英国特許第1,207,466号);コバルト(英国特許第907,161号);塩化カリウム(ソビエト特許第307,650号);ヒ素またはヒ素化合物(米国特許第4,762,940号);セシウムまたはセシウム化合物(欧州特許第1,138,678号);元素状リン、金属リン化物および直接合成反応体において金属リン化物を提供できる化合物から選択される添加剤(米国特許第4,601,101号);いくつかの上記の特定の混合物(仏国特許第2,848,124号および同第2,848,211号)、とすることができる。
【特許文献1】米国特許第2,464,033号)明細書
【特許文献2】米国特許第2,403,370号明細書
【特許文献3】米国特許第2,427,605号明細書
【特許文献4】英国特許第1,207,466号明細書
【特許文献5】英国特許第907,161号明細書
【特許文献6】ソビエト特許第307,650号明細書
【特許文献7】米国特許第4,762,940号明細書
【特許文献8】欧州特許第1,138,678号明細書
【特許文献9】米国特許第4,601,101号明細書
【特許文献10】仏国特許第2,848,124号明細書
【特許文献11】仏国特許第2,848,211号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
・接触体がケイ素および触媒系(該触媒系は、銅触媒と、亜鉛および錫を主体とした促進用添加剤の群とを含む)から形成された場合の直接合成の実施に関して、
・一方では、銅触媒が金属銅および/またはハロゲン化銅の形態で導入され、他方では、接触体が付加的にリン酸誘導体から慎重に選択される補助的な促進用添加剤を含む場合に、
・一方では、ジアルキルジハロシラン、例えば(MTCS/DMDCS平均比率により評価される)DMDCSへの選択率が実質的に向上し、他方では、接触体の非常に充分な平均活性(該活性は、導入されるケイ素の時間当たりおよびキログラム当たりの、得られるシランの重量により評価される)を維持しながら同時に、得られるシランに対する“重質”生成物の含有重量は実質的に低下することが観察されること、
が今まさに見出され、これは本発明の主題を構成するものである。
【0007】
本発明の実施に関する他の利益は、本明細書の以下の説明において明らかになるであろう。
【0008】
したがって、本発明は、アルキルハライド、好ましくはCH3Cl、及び
ケイ素と、触媒系すなわち
(α)銅触媒および
(β)‐金属亜鉛、亜鉛を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β1、
‐錫、錫を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β2、
‐任意でセシウム、カリウム、ルビジウム、これら金属由来の化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β3、
を含む促進用添加剤の群を含む触媒系、とから形成された固形物(接触体)、
の反応によるアルキルハロシランを調整する直接合成方法において、
・銅触媒(α)が金属銅、ハロゲン化銅またはこれらの混合物の形態であり、
・接触体がさらにリン酸誘導体およびこれらの混合物から選択される補助的な促進用添加剤β4を含む、
組み合わせで行われることを特徴とする。
【0009】
語句“リン酸誘導体”は、金属リン化物とは全く異なるリン化合物を意味することに注意すべきであり(金属リン化物と混同すべきではない)、単純な電子状態をとる少なくとも1種の他の金属元素を含むリンの化合物や合金を包含することが知られている。
【0010】
金属銅の代わりに、ハロゲン化銅(I)(例えば塩化銅(I))、ハロゲン化銅(II)(例えば塩化銅(II))およびこれらの混合物などのハロゲン化銅を使用できる。金属銅および/または塩化銅(I)の使用が好ましい。
【0011】
補助的な添加剤β4として、次亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;(オルト、パラ、メタ)亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;次リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;(オルト、パラ、メタ)リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;式Mn+2(Pn3n+1)(ここで、Mはアルカリ金属を表し、nは1〜10の範囲の数である)のポリリン酸のアルカリ金属塩;およびこれらの塩の混合物、が使用できる。
【0012】
好ましくは、次亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および/または銅塩(例えば、次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、次亜リン酸カリウムKH2PO2、次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22、次亜リン酸マグネシウムMg(H2PO22、次亜リン酸アルミニウムAl(H2PO23および/または次亜リン酸銅(II)Cu(H2PO22);(オルト、パラ、メタ)リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および/または銅塩(例えば、リン酸三ナトリウムNa3PO4、リン酸三カリウムK3PO4、リン酸一カルシウムCa(H2PO42、リン酸二カルシウムCaHPO4、リン酸三カルシウムCa3(PO42、塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OHおよび/またはリン酸銅(II)Cu(H2PO42;および上記の式(ここでn=3)を有するポリリン酸のアルカリ金属塩(例えば、ポリリン酸ナトリウムNa5310)、が使用できる。
【0013】
添加剤β4の量(導入されたケイ素の重量に対してのリン元素の重量として算出)は、50〜3000ppm、好ましくは80〜1500ppm、さらに好ましくは90〜1200ppmの範囲内であり、50ppm未満ではリンの作用は全く観察されず、3000ppm超過では、リンは生産量を低下する弊害作用を有する。
【0014】
本発明の第一の代替的具体例により、(ケイ素、銅触媒および促進用添加剤β1、β2および任意でβ3に加えて)補助的な促進用添加剤β4は、自然に存在する状態で接触体に加えられる。この第一の具体例の場合、より好ましくは、次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、次亜リン酸カリウムKH2PO2、次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22、次亜リン酸マグネシウムMg(H2PO22、次亜リン酸アルミニウムAl(H2PO23および/または次亜リン酸銅(II)Cu(H2PO22が使用される。特に、次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22は、非常に好適である。
【0015】
第一の具体例の場合、80〜1500ppmの該次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22使用が、非常に好適である。
【0016】
本発明の第2の代替的具体例により、(ケイ素および促進用添加剤β1、β2および任意でβ3に加えて)補助的な促進用添加剤β4は、触媒(α)を構成するハロゲン化銅と少なくとも1種のリン酸誘導体とを含む付加物の形態で接触体に加えられる。
【0017】
本発明による方法において使用される付加物は、一般に予備成形された状態で使用される粒子形の物質である。付加物の(あらかじめ行われる)調製のために、ハロゲン化銅と少なくとも1種のリン酸誘導体を主体とした添加剤とを機械的に混合し、続いて、このようにして得られた混合物を均質にする適当な方法を用いる。例えば、ハロゲン化銅および添加剤を製粉機にかけてともに粉体のような粒子の形態にすることが可能であり、この目的のために設計された混合装置において操作が行われる。
【0018】
この第2の具体例において、より好ましくはリン酸三ナトリウムNa3PO4、リン酸三カリウムK3PO4、リン酸一カルシウムCa(H2PO42、リン酸二カルシウムCaHPO4、リン酸三カルシウムCa3(PO42、塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OH、リン酸銅(II)Cu(H2PO42および/またはポリリン酸ナトリウムNa5310が使用される。特に、リン酸三カルシウムCa3(PO42および/または塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OHが、非常に好適である。
【0019】
実際にこの付加物の形態で銅触媒を使用すると、該触媒に(もちろん、その処理を容易にする)流動性が与えられるという結果を有するということも見出され、単独で(すなわち、付加物の形態でない状態で)使用されるハロゲン化銅が有する流動性に比して改善される。
【0020】
付加物中の添加剤β4の量は、あまり重要ではなく、広い範囲内で変化が可能である。本発明にしたがって、少なくとも1種のリン酸誘導体よりなる添加剤が0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%存在する付加物を、粒状の形態で使用することが好ましい。
【0021】
第2の具体例の範疇において、ハロゲン化銅は塩化銅(I)であり、またリン酸三カルシウムCa3(PO42および/または塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OHが1〜5重量%存在する粒状の形態での付加物の使用は、非常に好適である。
【0022】
触媒(α)は、一般に、第1の代替的具体例の場合も第2の代替的具体例も同様に、導入されたケイ素の重量に対して、1〜20重量%、好ましくは2〜12重量%の範囲の含有量で使用される。第2の代替的具体例の場合、触媒(α)の量は、上記の一般的で好ましい変化の範囲内であり、かつ付加物の組成にしたがってリン酸誘導体の含有量を50〜3000ppm、好ましくは80〜1500ppm、より好ましくは90〜1200ppm(導入されたケイ素の重量に対してのリン元素のppmとして算出)の範囲内で接触体へ導入するように、選択される。
【0023】
したがって、この第2の代替的具体例の範疇においては、80〜1500ppmのリン元素を導入するところの、塩化銅(I)ならびに1〜5重量%のリン酸三カルシウムCa3(PO42および/または塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OHを主体とした或る量の付加物の使用は、特に非常に好適である。
【0024】
上述の具体例により、触媒系は、付加的に金属亜鉛および/または亜鉛化合物を主体とした促進用添加剤β1を含み、好ましくは、金属亜鉛および/または塩化亜鉛が使用される。
【0025】
促進用添加剤β1は、0.01〜2%、好ましくは0.02〜0.5%(導入されたケイ素の重量に対する金属亜鉛として算出)の範囲内の含有重量で存在する。90重量%以下の亜鉛、好ましくは50重量%の亜鉛は、銅の塩素化を触媒する他の金属、および/または、銅塩および/またはアルカリ金属塩と共に低い融点で共融混合物もしくは相を形成する他の金属により置換できる。好ましい金属としては、カドミウム、アルミニウム、マンガンおよび銀が挙げられる。
【0026】
錫および/または錫化合物の含有重量(促進用添加剤β2、含有重量は金属錫の重量として算出)は、導入されたケイ素の重量に対して10〜500ppm、好ましくは30〜300ppmの範囲内である。
【0027】
少なくとも10ppmの金属錫を有することが必要である。加えて、含有重量が500ppmを超えると、反応、特に選択率に対して悪影響を与えることになる。錫を主体とした化合物としては、例えば塩化錫が使用される。好ましく用いられる促進用添加剤β2は金属錫であり、有利には、金属錫は青銅の形態で加えることができる。
【0028】
任意の促進用添加剤β3に関して、前記添加剤β3に挙げられた物質のうち1つが用いられる時、以下の点が条件となるであろう。:
・金属種の促進用添加剤β3の含有重量(導入されたケイ素の重量に対するアルカリ金属の重量として算出)は、0.01〜2重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%の範囲内であり;0.01重量%未満では、アルカリ金属の作用は、実際には認められず、2重量%を超えると、アルカリ金属は選択率について期待される効果を有しない。
・Cs、KおよびRbから選択されるアルカリ金属化合物としては、ハライド(例えば塩化物)、カルボン酸塩(例えばギ酸塩または酢酸塩)を使用することができ、塩化セシウム、塩化カリウム、塩化ルビジウムおよび/またはこれらの化合物の混合物が好ましく用いられる金属種の促進用添加剤β3である。
【0029】
その他は、ケイ素の粒径に関して、少なくとも50重量%の粒子の平均粒径は、10〜500μm、好ましくは60〜200μmであるのが望ましい。同様に、触媒(α)および促進剤群(β)も粒子の形態で存在し、少なくとも50重量%の粒子の平均粒径は有利には1〜100μmである。
【0030】
本発明による直接合成方法は、一般に、以下の3つのいずれかの装置内で実施が可能である。:米国特許第2,449,821号に開示されているような攪拌床型反応器、米国特許第2,389,931号に開示されているような流動床型反応器、またはロータリー窯。
【0031】
直接合成反応は、260〜400℃、好ましくは280〜380℃の範囲内の温度で行われる。この反応は、全部または一部において、アルキルハライドを大気圧(1bar)に等しいかまたは大気圧より高い絶対圧力下で行われ得る。後者の場合には、反応は一般に1.1〜8bar、好ましくは1.5〜5barの絶対圧力下において行われる。
【0032】
直接合成反応を行うために、周知のように、(ケイ素+触媒+促進剤を主体とした組み合わせによって形成された)接触体の活性化の初期段階は、事前に有利に行われる。非常に好適な活性化手段の1つは、該接触体を一定の温度にもたらすことで構成することができ、該温度は直接合成反応のために選択された上述の一般的あるいは好ましい範囲内にある温度よりも数℃〜数十℃だけ低くまたは高くすることができる。
【0033】
本発明により触媒系(α)+(β)を使用することにより、流動床内および攪拌床内でともに260℃〜400℃、好ましくは280〜380℃に及ぶ温度で反応が行われる場合、非常に満足のいく平均活性を有するのと同時に、ジアルキルジハロシランの選択率を高め、重質副生成物の含有重量を低くすることが可能である。
【0034】
例えば、MTCS/DMDCSの平均重量比により評価される選択率に関しては、得られた値は0.10程度あるいは0.10未満であり、0.050程度の低い値に達することが可能である。
【0035】
得られたシランに対しての形成された重質生成物の比率は、一般に3重量%未満、2重量%程度に低くすることが可能である。
【0036】
触媒系の平均活性は、例えば、シラン120g/h/kg Si程度あるいはそれより大きく、さらにシラン200g/h/kg Siに達することが可能である。
【0037】
本発明の他の利益および特徴は以下の具体例により明らかとなるが、これらは実施例として与えられるものであって暗に限定されるものではない。
【0038】
以下の実施例において、別段の記載のない限り、底部に焼結ガラスでできたガス分配器を備えた、内径60mm、高さ250mmの円筒状のパイロットスケールの反応器が使用される。ケイ素および触媒系は、粒子の少なくとも50重量%の平均粒径は60〜200μmである粉体の形態で導入された。
【0039】
反応は攪拌床で行われ、反応器は外部発熱体を備えている。
【実施例】
【0040】
比較試験A
触媒系:CuCl/ZnCl2/Sn
210gのケイ素、11.5gのCuCl、1.44gのZnCl2および10重量%の錫を含む0.38gの青銅で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0041】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0042】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0043】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.129(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、5.2重量%に達する、
という特性が示された。
【0044】
実施例1
触媒系:CuCl/ZnCl2/Sn/Ca(H2PO22
210gのケイ素、11.5gのCuCl、1.44gのZnCl2、10重量%の錫を含む0.38gの青銅および0.576gのCa(H2PO22(導入されたSiに対する1000ppmのP)で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0045】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0046】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0047】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.069(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、1.5重量%に達する、
という特性が示された。
【0048】
比較試験B:
触媒系:CuCl/ZnCl2/Sn/Cu3
210gのケイ素、11.5gのCuCl、1.44gのZnCl2、10重量%の錫を含む0.38gの青銅、および7.2%のリン(導入されたSiに対する1000ppmのP)を含む2.92gのリン化銅Cu3Pで構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0049】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0050】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0051】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.123(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、3.6重量%に達する、
という特性が示された。
【0052】
比較試験C:
触媒系:CuCl/ZnCl2/Sn
210gのケイ素、16.4gのCuCl、1.64gのZnCl2および10重量%の錫を含む0.38gの青銅で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0053】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0054】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0055】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.112(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、4.0重量%に達する、
という特性が示された。
【0056】
実施例2
触媒系:CuCl・Ca3(PO42/ZnCl2/Sn
210gのケイ素、2重量%のCa3(PO42を含む16.4gのCuCl・Ca3(PO42付加物、1.64gのZnCl2および10重量%の錫を含む0.38gの青銅で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0057】
付加物は、CuCl粉体(Prolabo社製)とCa3(PO42粉体(Prolabo社製)との機械的に混合することにより調製され、その作業はターブラーミキサー(Prolabo社製)内で行われる。
【0058】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が増加し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0059】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで維持する。
【0060】
試験は、大気圧で行った。試験は、8時間メチルクロロシラン(MCS)を生成した後、作業者により停止される。
【0061】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.089(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、2.8重量%に達する、
という特性が示された。
【0062】
比較試験D
触媒系:Cu/ZnCl2/Sn
210gのケイ素、21.0gの金属銅、1.64gのZnCl2および10重量%の錫を含む0.38gの青銅で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0063】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0064】
反応器の温度は、315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0065】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は0.168(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、8重量%に達する、
という特性が示された。
【0066】
実施例3
触媒系:Cu/ZnCl2/Sn/Ca(H2PO22
210gのケイ素、21.0gの金属銅、1.64gのZnCl2、10重量%の錫を含む0.38gの青銅、および0.576gのCa(H2PO22(導入されたSiに対する1000ppmのP)で構成された粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0067】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0068】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量は60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0069】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は、0.091(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は、1.7重量%に達する、
という特性が示された。
【0070】
比較試験E:
触媒系:Cu/ZnCl2/Sn/Cu3
210gのケイ素、21.0gの金属銅、1.64gのZnCl2、10重量%の錫を含む0.38gの青銅、および7.2%のリン(導入されたSiに対する1000ppmのP)を含む2.95gのリン化銅Cu3Pからなる粉体を、金属攪拌子および焼結ガラスでできたガス分配器を備えた垂直の円筒型ガラス反応器に加えた。
【0071】
反応器は、窒素流れ下で200℃に徐々に加熱した。ついで、反応器の温度が上昇し続けている間に、窒素の弁を閉め、60g/h(20℃で測定)の流量で塩化メチルの導入を開始した。
【0072】
反応器の温度は315℃に調整し、塩化メチルの流量を60g/hで8時間維持した。試験は、大気圧で行った。
【0073】
生成された混合物をガスクロマトグラフィーにより分析し、
‐ MTCS/DMDCS比は、0.116(重量%/重量%)に等しく、
‐ “重質生成物”(ポリシラン)の割合は4.3重量%に達する、
という特性が示された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルハライド、好ましくはCH3Cl、及び
ケイ素と、触媒系すなわち
(α)銅触媒および
(β)‐金属亜鉛、亜鉛を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β1、
‐錫、錫を主体とした化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β2、
‐任意で、セシウム、カリウム、ルビジウム、これら金属由来の化合物およびこれらの混合物から選択される添加剤β3、
を含む促進用添加剤の群を含む触媒系、とから形成される固形物(接触体)、
の反応によるアルキルハロシランを調製する直接合成方法において、
・銅触媒(α)が金属銅、ハロゲン化銅またはこれらの混合物の形態であり、
・接触体がさらにリン酸誘導体およびこれらの混合物から選択される補助的な促進用添加剤β4を含む、
組み合わせで行われることを特徴とする、アルキルハロシランの調製方法。
【請求項2】
前記触媒(α)は、導入されたケイ素の重量に対して、1〜20重量%による含有量で使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補助的な促進用添加剤β4は、次亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;(オルト、パラ、メタ)亜リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;次リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;(オルト、パラ、メタ)リン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩または金属塩;式Mn+2(Pn3n+1)(ここで、Mはアルカリ金属を表し、nは1〜10の範囲の数)のポリリン酸のアルカリ金属塩、およびこれらの塩の混合物、から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記添加剤β4の含有量は、50〜3000ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ケイ素、銅触媒ならびに促進用添加剤β1、β2および任意でβ3に加えて、前記補助的な促進用添加剤β4は、自然に存在する状態で接触体に加えられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
次亜リン酸ナトリウムNaH2PO2、次亜リン酸カリウムKH2PO2、次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22、次亜リン酸マグネシウムMg(H2PO22、次亜リン酸銅(II)Cu(H2PO22および/または次亜リン酸アルミニウムAl(H2PO23が使用されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
次亜リン酸カルシウムCa(H2PO22が用いられることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
ケイ素ならびに促進用添加剤β1、β2および任意でβ3に加えて、前記補助的な促進用添加剤β4は、触媒(α)を構成するハロゲン化銅と少なくとも1種のリン酸誘導体とを含む付加物の形態で接触体に加えられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
リン酸三ナトリウムNa3PO4、リン酸三カリウムK3PO4、リン酸一カルシウムCa(H2PO42、リン酸二カルシウムCaHPO4、リン酸三カルシウムCa3(PO42、塩基性のオルトリン酸カルシウムCa5(PO43OH、リン酸銅(II)Cu(H2PO42および/またはポリリン酸ナトリウムNa5310が用いられることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リン酸三カルシウムCa3(PO42および/または塩基性のオルトリン酸Ca5(PO43OHが用いられることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒(α)の量は、請求項2に記載の一般的な変化範囲内で、かつ付加物の組成にしたがってリン酸誘導体の含有量を50〜3000ppm(ケイ素の重量に対してのリン元素のppmとして算出)の範囲内で接触体へ提供するように、選択されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記添加剤β1の含有量は、0.01〜2.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記添加剤β1は、金属亜鉛および/または塩化亜鉛であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記添加剤β2の含有量は、10〜500ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記添加剤β2は、金属錫であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記金属錫は、青銅の形態で導入されたものであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤β3の含有量は、前記添加剤β3に挙げられた物質のうち1つを用いる時、0.01〜2.0%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記添加剤β3は、塩化セシウム、塩化カリウム、塩化ルビジウムおよび/またはこれら化合物の混合物であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
直接合成反応は、大気圧以上の圧力下で260℃〜400℃の範囲内の温度で行われることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−510698(P2007−510698A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538884(P2006−538884)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002759
【国際公開番号】WO2005/044827
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】