説明

アルキルヒドロキシカルボン酸ホウ酸エステルを含む燃料及び潤滑添加剤

酸性有機化合物とホウ素含有化合物との反応生成物を含む組成物が開示される。この組成物は、潤滑剤及び炭化水素燃料用清浄添加剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
「アルキルヒドロキシカルボン酸ホウ酸エステルを含む燃料及び潤滑添加剤」という名称の2004年7月21日に出願された米国仮出願60/589,571号の米国法典第35巻第120条の利益を請求する。
【0002】
本発明は、燃料、特に炭化水素燃料、及び潤滑剤、特に潤滑油、より詳しくは、例えばヒドロキシカルビルサリチル酸やそのエステルなどの酸性有機化合物とホウ素化合物との反応生成物である、良好な潤滑性、清浄性及び防錆性を有する抗酸化添加剤の部類に関するものである。
【背景技術】
【0003】
金属清浄剤は、処方されたエンジン油における灰分の主たる供給源に相当する。アルカリ土類金属スルホネート、フェネート及びサリチレートは、清浄性及びアルカリ性の保持を与えるために現代のエンジン油に一般的に使用される。清浄剤は、ガソリン及びディーゼルエンジンの両方のためのエンジン油の必要な成分である。燃料の不完全燃焼は、カーボン及びワニス様の付着物のみならずスラッジ付着物をもたらすことがあるススを発生させる。ディーゼル燃料の場合、燃料中の残存イオウが、燃焼室において燃焼して、イオウ誘導酸を生成する。これらの酸は、エンジン中に錆及び腐食磨耗を生ぜしめ、これらはまた、油の劣化を促進する。これらの酸性化合物を中和し、有害なエンジン付着物の形成を防ぎ、エンジン寿命を飛躍的に上昇させるために中性及び過塩基性の清浄剤が、エンジン油中に導入される。
【0004】
米国特許第5,330,666号は、潤滑油ベース原料油及び特定された式のヒドロキシカルビルサリチル酸のアルコキシル化アミン塩を含む、内燃エンジンにおける摩擦低減に有用な潤滑油組成物を開示している。
【0005】
米国特許第5,688,751号は、潤滑粘度を有する油と、ヒドロカルビル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸又はそのエステル、非置換アミド、ヒドロカルビル置換アミド、アンモニウム塩、ヒドロカルビルアミン塩又は1価金属塩との混合物をエンジン中のピストン付着物を減少させるために好適な量でエンジンに供給することによって、2行程サイクルエンジンが効果的に潤滑されることを開示している。
【0006】
米国特許第5,854,182号は、マグネシウムアルコキシド及びホウ酸を使用することによって非常に細かな粒子サイズで均一に分散されたホウ酸マグネシウムを有するホウ酸マグネシウムで過塩基化された金属清浄剤の製造を開示している。この方法は、希釈溶媒の存在下に無水条件下でアルカリ土類金属の中性スルホネートをマグネシウムアルコキシド及びホウ酸と反応させ、次いで蒸留して、これらからアルコール及び希釈溶媒の部分を除去することを含む。ホウ酸混合物は、次いで冷却され、濾過されてマグネシウムのホウ化金属の清浄剤が回収され、これは、優れた清浄及び分散の性能、非常に良好な加水分解及び酸化の安定性、及び良好な極圧及び耐磨耗の性能を示すと述べられている。
【0007】
米国特許第6,174,842号は、油溶性であって、反応性イオウを実質的に含まないモリブデン化合物からのモリブデン約50〜1000ppm、ジアリールアミン約1,000〜20,000ppm及びフェネート約2,000〜40,000ppmを含む潤滑油組成物を開示している。この成分の組合せは、潤滑油に対して改良された酸化コントロール及び改良された付着物コントロールを与えると述べられている。
【0008】
米国特許第6,339,052号は、主要部分の潤滑粘度の油;成分A(蒸留された水素添加カシューナッツ殻液から誘導された硫化、過塩基化カルシウムフェネート清浄剤)0.1〜20.0重量%;及び成分B(カシューナッツ殻液体から誘導された特定の式のホスホロジチオ酸アミン塩)0.1〜10.0重量%を含むガソリン及びディーゼル内燃エンジン用潤滑油組成物を開示している。
【0009】
2004年1月29日に出願された仮出願第60/539,590号は、酸性有機化合物、ホウ素化合物及び塩基性有機化合物の反応生成物を含む組成物を開示している。
【0010】
本発明によれば、酸性有機化合物とホウ素化合物との反応によって金属を含まない清浄剤及び抗酸化剤が製造される。
【0011】
さらに詳しくは、最初にサリチル酸を、好ましくは、少なくとも6個の炭素原子を有するオレフィンでアルキル化して、アルキルサリチル酸を生成することにより、良好な潤滑性、清浄性、防錆性及び抗酸化性を有する潤滑添加剤が製造される。アルキルサリチル酸を、ホウ酸と反応させると、前記の性質と共に良好な燃料及び潤滑油溶解性を有する反応生成物が生成する。
【0012】
好ましくは、酸性有機化合物は、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び米国特許第2,933,520号;第3,038,935号;第3,133,944号;第3,471,537号;第4,828,733号;第6,310,011号;第5,281,346号;第5,336,278号;第5,356,546号及び第5,458,793号に開示された酸性構造体からなる群から選択される。
【0013】
ホウ素化合物は、例えば、ホウ酸、トリアルキルボレート(アルキル基は、好ましくはそれぞれ1〜4個の炭素原子を含む)、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸又はアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物等であり得る。
【0014】
この反応生成物は、パネルコーカー試験を使用して評価した優れた清浄性及び清潔性及び加圧示差走査熱量分析法(PDSC)を使用して評価した優れた抗酸化性能を油に与える。
【0015】
さらに詳しくは、本発明は、酸性有機化合物とホウ素化合物との反応生成物を含む組成物を対象とする。
【0016】
別の態様において、本発明は、
(A)潤滑剤、及び
(B)酸性有機化合物とホウ素化合物との少なくとも1つの反応生成物
を含む組成物に関する。
【0017】
さらに別の態様において、本発明は、
(A)炭化水素燃料、及び
(B)酸性有機化合物とホウ素化合物との少なくとも1つの反応生成物
を含む組成物に関する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、酸性有機化合物とホウ素化合物との反応生成物の摩擦を減少させるに有効な量を含む潤滑油でエンジンを作動させることを含む内燃エンジンにおける摩擦を減少させる方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ホウ素を含む添加剤を含み、内燃エンジン油において改良された清浄性及び酸化安定性を与える潤滑組成物に関するものである。この潤滑組成物は、(a)主要量の潤滑剤、例えば潤滑油及び(b)少量の、酸性有機化合物とホウ素化合物との反応生成物である添加剤を含む。
【0020】
酸性有機化合物
本発明の実施に使用される酸性有機化合物は、以下のものに限定されないが、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び米国特許第2,933,520号;第3,038,935号;第3,133,944号;第3,471,537号;第4,828,733号;第6,310,011号;第5,281,346号;第5,336,278号;第5,356,546号及び第5,458,793号に開示された酸性構造体を含む。
【0021】
本発明の実施に使用される置換サリチル酸は、商業的に利用し得るものであるか、又は当該分野で知られている方法、例えば米国特許第5,023,366号によって製造することができる。これらのサリチル酸は、式:
【化1】


(式中、Rは、ヒドロカルビル基、好ましくは1〜30炭素原子のものであり、aは、1又は2の整数であり、aが2である場合、R基は独立して選択され、すなわち、これらは同じでも、異なっていてもよい)
を有するものである。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」という用語は、炭化水素のみならず実質的に炭化水素の基をも含む。「実質的に炭化水素」は、基の主たる炭化水素の性質を変えないヘテロ原子置換基を含む基をいう。
【0023】
ヒドロカルビル基の例は、次のものを含む。
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えばアルキル又はアルケニル)、脂環族(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)の置換基、芳香族置換基、芳香族−、脂肪族−及び脂環族−置換芳香族置換基等、並びに環が分子の別の部分を通して完結している環状置換基(すなわち、例えば、いずれかの2つの示された置換基が一緒に脂環族基を形成してもよい);
(2)置換炭化水素置換基、すなわち本発明の関係において、置換基の主たる炭化水素の性質を変えない非炭化水素基を含むそれらの置換基;当業者はそのような基(例えば、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、ニトロ、ニトロソ、スルホキシなど)を知っているだろう;
(3)ヘテロ原子置換基、すなわち、本発明の関係において主たる炭化水素の特性を有しているが、炭素原子から構成される環、さもなければ鎖の中に存在する炭素以外の原子を含む置換基(例えば、アルコキシ又はアルキルチオなど)。好適なヘテロ原子は、当業者にとって明らかであり、例えばイオウ、酸素、窒素を含み、例えばピリジル、フリル、チエニル、イミダゾリルなどの置換基。好ましくは約2個以下、さらに好ましくは1個以下のこの置換基が、ヒドロカルビル基中に炭素原子10個毎に存在するだろう。最も好ましくは、ヒドロカルビル基中にそのようなヘテロ原子置換基は存在しない(すなわちこのヒドロカルビル基は純粋な炭化水素である)。
【0024】
前記の式において、Rはヒドロカルビルである。Rの例は、次のものに限定されないが、非置換フェニル;
1つ又は複数のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、前記の異性体等で置換されたフェニル;
1つ又は複数のアルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ、前記の異性体等で置換されたフェニル;
1つ又は複数のアルキルアミノ又はアリールアミノ基で置換されたフェニル;
ナフチル及びアルキル置換ナフチル;
次のものに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、オレイル、ノナデシル、エイコシル、ヘネイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、トリアコンチル、前記の異性体等を含む1〜50個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖アルキル又はアルケニル基;並びに
シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル及びシクロドデシルを含む。
【0025】
これらのサリチル酸誘導体は、モノ置換又はジ置換(すなわち、前記式においてaがそれぞれ1又は2に等しい場合)のいずれかであり得ることが注記される。
【0026】
サリチル酸カリキサレン、例えば米国特許第6,200,936号(この特許の開示は、その全てが参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されているものを、本発明の酸性化合物として使用することができる。そのようなカリキサレンは、次のものに限定されないが、n単位の式(Ia):
【化2】


及びm単位の式(Ib):
【化3】


(前記の式中、それぞれのYは、2価の架橋基であり、各単位において同じでも異なっていてもよく;Rは、水素又は1〜6個の炭素原子のアルキル基であり;Rは、水素又は1〜60個の炭素原子のアルキル基であり;jは1又は2であり;Rは、水素、ヒドロカルビル又はヘテロ置換ヒドロカルビル基であり;Rがヒドロキシであって、R及びRが独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロ置換カルビルのいずれかであるか、或いはR及びRがヒドロキシであって、Rが、水素、ヒドロカルビル又はヘテロ置換カルビルのいずれかであり;mは1〜8であり;nは少なくとも3であり、m+nは4〜20である)
を含む環状化合物を含む。
【0027】
1より多いサリチル酸単位が存在する場合(すなわち、m>1)、サリチル酸単位(式(Ia))及びフェノール単位(式(Ib))は、ランダムに分布する。ただし、連続的に一緒に結合された、数個のサリチル酸単位が、いくつかの環において存在する可能性は除外しない。
【0028】
それぞれのYは、独立して式:(CHR(式中、Rは、水素又はヒドロカルビルのいずれかであり、dは、少なくとも1の整数である)によって表される。ある実施形態において、Rは1〜6個の炭素原子を含み、ある実施形態においては、Rはメチルである。ある実施形態において、dは1〜4である。Yは、場合により、前記単位の50%までで、(CHRよりむしろイオウであり、つまり、分子内に組み込まれるイオウの量が、50モル%までになる。ある実施形態において、イオウの量は、8〜20モル%であり、ある実施形態において、前記化合物はイオウを含まない。
【0029】
便宜上、これらの化合物は、時々「サリキサレン」と称され、これらの金属塩は、「サリキサレート」と称される。
【0030】
ある実施形態において、YはCHであり;Rはヒドロキシであり;R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル又はヘテロ置換ヒドロカルビルのいずれかであり;Rは、ヒドロカルビル又はヘテロ置換ヒドロカルビルであり;RはHであり;Rは、6〜50個、好ましくは4〜40個、さらに好ましくは6〜25個の炭素原子のアルキル基であり;m+nは、少なくとも5、好ましくは少なくとも6、さらに好ましくは少なくとも8の値を有し、mが1又は2、好ましくは1である。
【0031】
別の実施形態において、R及びRは水素であり;Rはヒドロカルビル、好ましくは4個より多い炭素原子、さらに好ましくは9個より多い炭素原子のアルキル基であり;Rは水素であり、m+nは6〜12であり;mは1又は2である。
【0032】
カリキサレンの概要に関しては、「超分子化学における論文(Monographs in Supermolecular chemistry)」、C.デビッドグッチェ(C.David Gutsche)著、シリーズ編集者−J.フラセルストッダルト(J.Fraser Stoddart)、ロイヤルソサイエティオブケミストリー(Royal Society of Chemistry)による出版(1989年)を参照されたし。置換ヒドロキシ基又は置換基を有するカリキサレンは、ホモカリキサレン、オキサカリキサレン、ホモオキシカリキサレン及びヘテロカリキサレンを含む。
【0033】
また、イオウ含有カリキサレン、例えば米国特許第6,268,320号(この特許の開示は、その全てが参照によって本明細書に組み込まれている)に記載されたものも本発明の酸性化合物として使用することができる。このようなカリキサレンは、次のものに限定されないが、式(II):
【化4】


(式(II)中、Yは2価の架橋基であり、前記架橋基の少なくとも1つはイオウ原子であり;Rは水素又はヒドロカルビル基であり;Rがヒドロキシであって、R及びRが独立して水素又はヒドロカルビルであるか、或いはR及びRがヒドロキシであって、Rが水素又はヒドロカルビルであるかのいずれかであり;nは、少なくとも4の値を有する数である)
によって表される化合物を含む。
【0034】
式(II)において、Yは2価の架橋基又はイオウ原子であるが、少なくとも1つのY基はイオウ原子である。2価の架橋基は、イオウ原子でない場合、2価の炭化水素基又は2価の1〜18個の炭素原子、好ましい実施形態において1〜6個の炭素原子のヘテロ−置換炭化水素基である。ヘテロ原子は、−O−、−NH−又は−S−である。nは、典型的には少なくとも4、好ましくは4〜12、さらに好ましくは4〜8の値を有する整数である。ある実施形態において、Y基のn−2からn−6は、イオウ原子であり、別の実施形態において、Y基のn−3からn−10は、イオウ原子であり、第3の実施形態において、Y基の1つはイオウ原子である。好ましくは、カリキサレン中に組み込まれるイオウの量は、式(II)中の基Yの5〜50%がイオウ原子となるように、5〜50モル%である。さらに好ましくは、イオウの量は、8〜20モル%である。
【0035】
ある実施形態において、Yがイオウ原子でない場合、それは式:(CHR(式中、Rは、水素又はヒドロカルビル基のいずれかであり、dは少なくとも1である整数である)によって表される2価の基である。Rは、好ましくは1〜18個の炭素原子、さらに好ましくは1〜6個の炭素原子のヒドロカルビル基である。例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、前記のものの異性体等を含む。好ましくは、dは、1〜3であり、さらに好ましくは、1〜2であり、最も好ましくは、dは1である。前に定義されたように、「ヒドロカルビル基」は、ヘテロ−置換ヒドロカルビル基を含み、好ましくはヘテロ原子、典型的には−O−、−NH−、−S−が、炭素原子の鎖を中断しているものであり、一例は2〜20炭素原子のアルコキシ−アルキル基である。
【0036】
は、水素又はポリオレフィン;例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、又はポリイソブチレン、又はポリオレフィンコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー;から誘導され得るヒドロカルビル基である。Rの例は、ドデシル及びオクタデシルを含む。ヘテロ原子が、もし存在する場合、再び−O−、−NH−、−S−であり得る。これらのヒドロカルビル基は、好ましくは1〜20炭素原子、さらに好ましくは1〜6個の炭素原子を有する。
【0037】
がヒドロキシであって、R及びRが独立して水素又はヒドロカルビルのいずれかであるか、或いはR及びRがヒドロキシであって、Rが水素又はヒドロカルビルのいずれかである。ある実施形態において、式(II)中、Rが水素であって、R及びRがヒドロキシであり、Rが水素又はヒドロカルビルであり、カリキサレンがレゾルシナレンである。ヒドロカルビル基は、好ましくは1〜24個の炭素原子、さらに好ましくは1〜12個の炭素原子を有する。ヘテロ原子は、存在する場合、−O−、−NH−、−S−であり得る。
【0038】
ある実施形態において、Yがイオウ又は(CR(式中、R及びRのいずれか1つは、水素であり、他のものは水素又はヒドロカルビルである);R及びRは、独立して水素又はヒドロカルビルのいずれかであり、Rはヒドロカルビルであり;nは6であり;eは少なくとも1、好ましくは1〜4、さらに好ましくは1である。好ましくはR及びRは水素であり、Rはヒドロカルビル、好ましくは4個より多い、さらに好ましくは9個より多い、最も好ましくは12個より多い炭素原子のアルキルであり、R及びRの1つは水素であり、他のものは水素又はアルキルのいずれか、好ましくは水素である。
【0039】
前記のイオウ含有カリキサレンは、典型的に1880未満の分子量を有する。好ましくは、イオウ含有カリキサレンの分子量は、460〜1870、さらに好ましくは、460〜1800、最も好ましくは、460〜1750である。
【0040】
また、米国特許第2,933,520号;第3,038,935号;第3,133,944号;第3,471,537号;第4,828,733号;第5,281,346号;第5,336,278号;第5,356,546号;第5,458,793号;及び第6,310,011号(これらの特許の開示は、その全てが参照によって本明細書に組み込まれている)に記載された酸も、本発明の酸性化合物として使用することができる。
【0041】
さらに詳しくは、そのような酸は、次のものに限定されないが、式:
【化5】


(式中、Rは炭化水素又はハロゲンであり、Rは、炭化水素であり、Arは置換又は非置換のアリールである)
の化合物を含む。これらに類似する有用な化合物は、3、5、3’、5’−テトラ置換4、4’−ジヒドロキシメチルカルボン酸、式:
【化6】


(式中、X及びX’は、独立して水素、ヒドロカルビル、ハロゲンからなる群から選択され、Rは、ポリメチレン或いは分岐又は非分岐のアルキレンであり、xは0又は1、すなわち、xがゼロの場合、Rは存在せず、xが1の場合、Rは存在し、Rは、水素又はヒドロカルビルである)
の酸を含む。
【0042】
また、米国特許第5,281,346号;第5,336,278号;第5,356,546号;第5,458,793号;及び第6,310,011号に記載された酸及び塩も、前記のものに類似しており、次の式:
【化7】


(式中、R及びRは、水素、1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基或いは4〜8個の炭素原子を含む第3級アルキル又はアリールアルキル基(ただし、R及びRの両方とも水素ではない)であり、R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル基、アリールアルキル基及びシクロアルキル基からなる群から選択され、x=0〜24である)
のものであるが、本発明の実施における使用のために意図される。
【0043】
また、油溶性のヒドロキシカルボン酸も、次のものに限定されないが、12−ヒドロキシステアリン酸、α−ヒドロキシカルボン酸等を、本発明の酸性化合物として使用することができる。
【0044】
ホウ素化合物
ホウ素化合物は、例えばホウ酸、トリアルキルボレート(ここにおいてアルキル基は、好ましくはそれぞれ1〜4個の炭素原子を含む)、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸、又はアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物等であり得る。ホウ酸が推奨される。
【0045】
本発明のホウ素化合物と酸性化合物との反応は、いかなる好適な方法でも遂行することができる。
【0046】
ある方法においては、酸性化合物及びホウ素化合物が、ナフサ及び極性溶媒、例えば水及びアルコールなどを含む好適な溶媒の存在下で還流される。十分な時間の後に、ホウ素化合物は溶解する。特に蒸留によって溶媒を除去する間に粘度をコントロールすることを必要とする場合、希釈する油を加えることができる。
【0047】
脂肪族及び芳香族アルコールを含むアルコール、脂肪族及び芳香族メルカプタンを含むメルカプタンは、反応装入物に含まれ得る。好ましい脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、これらの異性体等を含む。好ましくは、芳香族アルコールはフェノール、クレゾール、キシレノール等を含む。アルコール又は芳香族フェノール部分は、アルコキシ基又はチオアルコキシ基で置換され得る。好ましいメルカプタンは、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ウンデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等並びにチオフェノール、チオクレゾール、チオキシレノール等を含む。
【0048】
本発明の清浄剤/抗酸化添加剤の正確な構造は、完全にはわからない。しかしながら、C16アルキルサリチル酸をホウ酸と反応させる、ある好ましい実施形態において、質量分光分析は、この反応性生物の構造が
【化8】


であることを示した。
【0049】
当業者は、本発明のこの特定の態様に関して、前記のものが次の一般化される構造式:
【化9】


(式中、Rは、好ましくはヒドロカルビル基、好ましくはアルキル、好ましくは1〜50個の炭素原子のアルキル基であり、aは、1又は2の整数であり(ここで、aが2である場合、R基は、独立して選択され、すなわち、これらは同じか又は異なっていてもよい);Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基、好ましくはアルキル、好ましくは1〜50個の炭素原子のアルキル基であり;Rは、水素又はアルキル、好ましくは1〜6個の炭素原子のアルキル基である)
になることを理解するだろう。
【0050】
明らかに、前述のように、代替の出発物質は、異なるが、類似した、本発明の範囲内にある構造をもたらすだろう。
【0051】
本発明の添加剤は、多くの異なる潤滑油及び燃料組成物における成分として特に有用である。この添加剤は天然及び合成の潤滑油及びこれらの混合物を含む潤滑粘度を有するさまざまの油に入れることができる。この添加剤は、火花点火及び圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油中に入れることができる。また、この組成物は、ガスエンジン潤滑油、タービン潤滑油、自動トランスミッション流体、ギア潤滑油、コンプレッサー潤滑油、金属工作潤滑油、油圧/水圧流体及びその他の潤滑油及びグリース組成物に使用することができる。また、添加剤は、自動車燃料組成物にも使用することができる。
【0052】
本発明の組成物は、約0.01〜約15重量%の範囲内の濃度で油、燃料、又はグリース中に入れることが好ましい。
【0053】
他の添加剤との併用
本発明の添加剤は、現在使用されている清浄剤の部分的な置換として使用することができる。また、これらは、燃料及び自動車オイル中に典型的に見出されるその他の潤滑添加剤、例えば清浄剤、分散剤、耐磨耗剤、極圧添加剤、防錆剤、抗酸化剤、消泡剤、摩擦緩和剤、シール膨張剤、解乳化剤、粘度指数(VI)改良剤、金属不活性化剤及び流動点降下剤と組み合わせて使用することができる。例えば、有用な潤滑油組成物添加剤の説明に関しては、例えば米国特許第5,498,809号(この特許の開示は、参照によってその全てが本明細書に組み込まれている)を参照されたい。
【0054】
分散剤の例は、ポリイソブチレンサクシンイミド、ポリイソブチレンサクシネートエステル、マンニッヒ塩基無灰分散剤等を含む。清浄剤の例は、スルホン酸、カルボン酸、アルキルフェネート及びアルキルサリチル酸の中性及び過塩基性アルカリ金属及びアルカリ土類金属塩を含む。
【0055】
抗酸化剤の例は、アルキル化ジフェニルアミン、N−アルキル化フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−α−ナフチルアミン、ジメチルキノリン、トリメチルジヒドロキノリン及びこれらから誘導されるオリゴマー組成物、ヒンダードフェノール、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデンビスフェノール、チオプロピオネート、金属ジチオカーバメート、1、3、4−ジメルカプトチアゾール及び誘導体、油溶性銅化合物等を含む。次のものは、そのような添加剤の模範例であり、クロンプトン社(Crompton Corporation)から市販されている:Naugalube(登録商標)438、Naugalube 438L、Naugalube 640、Naugalube 635、Naugalube 680、Naugalube AMS、Naugalube APAN、Naugalube PANA、Naugalube TMQ、Naugalube 531、Naugalube 431、Naugard(登録商標)BHT、Naugalube 403、Naugalube 420他。
【0056】
本発明の添加剤との組合せで使用できる耐磨耗添加剤の例は、有機ボレート、有機ホスファイト、有機ホスフェート、有機イオウ含有化合物、硫化オレフィン、硫化脂肪酸誘導体(エステル)、塩素化パラフィン、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、亜鉛ジアリールジチオホスフェート、ホスホ硫化炭化水素等を含む。次のものは、そのような添加剤の模範例であり、ルブリゾール社(The Lubrizol Corporation)から市販されている:Lubrizol 677A、Lubrizol 1095、Lubrizol 1097、Lubrizol 1360、Lubrizol 1395、Lubrizol 5139及びLubrizol 5604他。
【0057】
摩擦緩和剤の例は、脂肪酸エステル及びアミド、有機モリブデン化合物、モリブデンジアルキルジチオカルバメイト、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジサルファイド、トリモリブデンクラスタージアルキルジチオカルバメイト、非イオウモリブデン化合物等を含む。次のものは、そのような添加剤の模範例であり、R.T.バンダービルド社(R.T.Vanderbilt Company,Inc)から市販されている:Molyvan A、Molyvan L、Molyvan 807、Molyvan 856B、Molyvan 822、Molyvan 855他。また、次のものもそのような添加剤の模範的例であり、旭電化工業社(Asahi Denka Kogyo K.K.)から市販されている:SAKURA−LUBE 100、SAKURA−LUBE 165、SAKURA−LUBE 300、SAKURA−LUBE 310G、SAKURA−LUBE 321、SAKURA−LUBE 474、SAKURA−LUBE 600、SAKURA−LUBE 700他。又、次のものもそのような添加剤の模範例であり、アクゾノーベルケミカル社(Akzo Nobel Chemicals GmbH)から市販されている:Ketjen−Ox 77M、Ketjen−Ox 77TS他。
【0058】
消泡剤の例は、ポリシロキサン等である。防錆剤の例は、ポリオキシアルキレンポリオール、ベンゾトリアゾール誘導体等である。VI改良剤の例は、オレフィンコポリマー及び分散剤オレフィンコポリマー等を含む。流動点降下剤の例は、ポリメタクリレート等である。
【0059】
潤滑剤組成物
組成物がこれらの添加剤を含む場合、組成物は、添加剤が、基油中においてこれらの通常の付帯の機能を提供するのに効果的な量で、典型的に基油中に配合される。そのような添加剤の代表的且つ効果的な量は、表1に例示される。
【表1】

【0060】
その他の添加剤が使用される場合、必須ではないけれども、1つ又は複数の前記のその他の添加剤と一緒に本発明の主題の添加剤の濃縮された溶液又は分散体(本明細書に前記された濃縮物の量で)を含む添加剤濃縮物(前記濃縮物が、添加剤混合物を構成する場合、本明細書において「添加剤パッケージ」と称される)を調製し、それによって数種の添加剤を基油に同時に加えて潤滑油組成物を形成することが望ましい。添加剤濃縮物の潤滑油中への溶解は、溶剤によって、及び穏やかな加熱を伴う混合によって促進することができるが、これは必須ではない。この濃縮物及び添加剤パッケージは、この添加剤パッケージが予め決められた量のベースの潤滑剤と一緒にされた時に、最終の処方中において所望の濃度を与える適当な量で添加剤を含むように典型的に処方されるだろう。したがって、本発明の主題の添加剤は、その他の所望の添加剤と一緒に少量の基油又はその他の相溶性の溶剤に加え、基油である残部と適切な比率において、約2.5〜約90重量%、好ましくは約15〜約75重量%、さらに好ましくは、約25〜約60重量%の添加剤の総量で活性成分を典型的に含む添加剤パッケージを形成することができる。最終の処方は、基油である残部と共に添加剤パッケージの約1〜20重量%を典型的に使用することができる。
【0061】
本明細書において表現される全ての重量%は、(他に指示されなければ)添加剤の活性成分(AI)含有量、及び/又は活性剤パッケージ又は処方の合計量に基づいており、それらは各添加剤のAI重量と全油又は希釈剤の重量の合計量であるだろう。
【0062】
一般に本発明の潤滑組成物は、添加剤を約0.05〜約30重量%の範囲内の濃度で含有する。油組成物の全量に基づき約0.1〜約10重量%の範囲の添加剤の濃度範囲が好ましい。さらに好ましい濃度範囲は、約0.2〜約5重量%である。添加剤の油濃縮物は、潤滑油粘度のキャリヤー又は希釈油中に添加剤反応生成物約1〜約75重量%を含むことができる。
【0063】
一般に、本発明の添加剤は、さまざまな潤滑油ベースストックに有用である。潤滑油ベースストックは、約2〜約200cSt、さらに好ましくは、約3〜約150cSt、最も好ましくは、約3〜約100cStの100℃における動粘性率を有するあらゆる天然又は合成の潤滑油ベースストック画分である。この潤滑油ベースストックは、天然の潤滑油、合成の潤滑油又はこれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油ベースストックは、合成ワックス及びワックスの異性化によって得られるベースストック、並びに原油の芳香族及び極性成分の(溶剤抽出よりむしろ)水素化分解によって製造される水素化分解ベースストックを含む。天然の潤滑油は、例えばラード油などの動物油、植物油(例えばカノーラ油、ヒマシ油、ヒマワリ油)、石油、鉱油、石炭又はシェール(shale)から誘導される油を含む。
【0064】
多くの合成潤滑油が、当該分野において知られており、これらは、主題の添加剤を含む潤滑組成物のためのベース潤滑油として有用である。合成潤滑油の概説は、刊行物「合成潤滑剤(SYNTHETIC LUBRICANTS)」、R.C.グンダーソン(R.C.Gunderson)及びA.W.ハート(A.W.Hart)著、レインホールド(Reinhold)出版(ニューヨーク、1962年)、「潤滑及び潤滑剤(LUBRICATION AND LUBRICANT)」、E.R.ブレイスウェイト(E.R.Braithwaite)編、エルシビアバブリケーション社(Elsevier Publishing Co)出版(ニューヨーク、1967年)、第4章「合成潤滑油」、第166〜196頁及び「合成潤滑剤(SYNTHETIC LUBRICANTS)」、M.W.レニイ(M.W.Ranney)著、ノイエスデータ社(Noyes Data Corp.)出版(パークリッジ、ニュージャージー州、1972年)に含まれている。これらの刊行物は、本発明の添加剤と関係して使用され得る一般及び特殊タイプの合成潤滑剤を特定することに関連して技術水準を確証するために参照によって本明細書に組み込まれる。
【0065】
したがって、有用な合成潤滑ベース油は、オレフィンの重合又は共重合によって誘導される炭化水素油、例えばポリプロピレン、ポリイソブチレン及びプロピレン−イソブチレンコポリマー;及びハロ炭化水素油、例えば塩素化ポリブチレンを含む。その他の有用な合成ベース油は、アルキルベンゼン、例えばドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンに基づくもの、及びポリフェニル、例えばビフェニル及びトリフェニルに基づくものを含む。
【0066】
主題の潤滑組成物のためのベース油として有用な別の知られた部類の合成油は、アルキレンオキサイドポリマー及びインターポリマーに基づくもの及びこれらのポリマーの末端ヒドロキシル基の変性(すなわち、ヒドロキシル基のエステル化又はエーテル化によって)によって得られる油である。したがって、有用なベース油は、重合された酸化エチレン又は酸化プロピレン、酸化エチレン及び酸化プロピレンのコポリマーから得られる。有用な油は、重合されたアルキレンオキサイドのアルキル及びアリールエーテル、例えばメチルポリイソプロピレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールのジフェニルエーテル及びプロピレングリコールのジエチルエーテルを含む。別の有用な一連の合成ベース油は、重合されたアルキレンオキサイドの末端ヒドロキシル基のモノ又はポリカルボン酸でのエステル化から誘導される。この一連のものの例は、テトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルの酢酸エステル又はC〜C脂肪酸の混合エステルである。
【0067】
合成潤滑油の別の好適な群は、ジカルボン酸のさまざまなアルコールとのエステルを含む。また、合成潤滑油として有用なエステルは、C〜C12モノカルボン酸及びポリオール及びポリオールエーテルから製造されるものを含む。合成潤滑油として有用な他のエステルは、α−オレフィン及び短鎖又は中鎖アルコールでエステル化されたジカルボン酸のコポリマーから製造されるものを含む。次のものは、そのような添加剤の模範例であり、アクゾノーベルケミカル社(Akzo Nobel Chemicals SpA)から市販されている:Ketjenlubes 115、135、165、1300、2300、2700、305、445、502、522及び6300他。
【0068】
合成潤滑油の別の有用な群は、シリコーンベース油、例えばポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−又はポリアリールオキシ−シロキサン油及びシリケート油を含む。他の合成潤滑油は、リン含有酸の液体エステル、重合性テトラヒドロフラン、ポリα−オレフィン等を含む。
【0069】
潤滑油は、未精製、精製、再精製油又はこれらの混合物から誘導することができる。未精製油は、さらなる精製又は処理なしに天然供給源又は合成供給源(例えば、石炭、シェール、又はタール及び瀝青物)から直接的に得られる。未精製油の例は、還流操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、エステル化プロセスから直接得られるエステル油を含み、これらのそれぞれは、次いでさらなる処理をせずに使用される。精製油は、精製油が1つ又は複数の性質を改良するために1つ又は複数の精製工程で処理されていることを除いて未精製油と類似する。好適な精製技法は、蒸留、水素化処理、脱蝋、溶剤抽出、酸又は塩基抽出、濾過、パーコレーション等を含み、これらの全ては、当業者によく知られている。再精製油は、精製油を得るために使用するものと類似するプロセスにおいて精製油を処理することによって得られる。また、これらの再精製油は、再生又は再処理油として知られ、しばしば消費された添加剤及び油の分解生成物を除去するための技法によって追加的に処理される。
【0070】
また、ワックスの水素化異性化(hydroisomerization)から誘導される潤滑油ベースストックは、単独か、又は前記の天然及び/又は合成のベースストックとの組合せで使用することができる。そのようなワックス異性化油は、天然又は合成のワックス又はこれらの混合物の水素化異性化触媒上での水素化異性化によって製造される。天然ワックスは、典型的には鉱油の溶剤脱蝋によって回収される粗ロウであり;合成ワックスは、典型的にはフィッシャー−トロッペ(Fishcher−Tropsch)プロセスによって製造されるワックスである。生成した異性化生成物は、典型的には溶剤脱ロウ及び溶剤分別にかけられ、特定の粘度範囲を有するさまざまの画分が回収される。また、ワックス異性化物は、非常に高い粘度指数を有し、一般に少なくとも130、好ましくは135以上を有し、脱ロウ後、約−20℃以下の流動点を有することを特徴とする。
【0071】
本発明の利点及び重要な特徴は、次の実施例からさらに明らかになるだろう。
【実施例】
【0072】
清浄性能−パネルコーカー試験
パネルコーカー試験において、長方形のAlスチールパネル上で、付着物形成傾向の点においてクランクケース油の清浄効果を評価することができる。この試験において、試験サンプル200mlを油だめに入れ、100℃に加熱する。6時間の間、この加熱された油をウイスカーによってAlスチールパネル上に跳ね上げさせ、パネルの温度を310℃に保持する。試験終了後、パネル上の付着物の重さを計る。清浄添加剤を欠いた類似の組成物との比較で、付着物の重量の減少は、改良された清浄性を示す。
【0073】
抗酸化剤性能−加圧示差走査熱量分析計(PDSC)
組成物の相対的な抗酸化剤性能評価のためにPDDC(デュポンモデル−910/1090B)を使用することができる。この方法において、サンプル容器に入れた試験サンプル(10mg)を、500psi酸素圧力の下で1分あたり10℃の速度で100〜300℃に加熱する。抗酸化剤性能の評価のための基準として酸化開始温度を採用した。一般に、酸化開始温度における増加が、抗酸化剤性能における改良を示す。「加圧示差走査熱量分析による潤滑油の特性把握(Characterization of Lubrication Oils By Differential Scanning Calorimetry)」、J.A.ウォーカー(J.A.Walker)及びW.ツアング(W.Tsang)著、SAE テクニカルペーパー・シリーズ(SAE Technical Paper Series)、801383(10月、20〜23日、1980年)を参照されたい。
【0074】
(実施例1)
温度計、攪拌機及び反応器を覆うための窒素源を装備した3つ首フラスコにサリチル酸207gを加えた。次いで、C16アルファオレフィン354g、次にメタンスルホン酸43.5gを加えた。その混合物を窒素で覆いながら120℃に24時間加熱し、その時に触媒を除去した。生成物は、143ミリ当量KOH/gの酸価及び約90%のアルキルサリチル酸の収率であった。
【0075】
(実施例2)
攪拌機及び温度計を装備された3つ首フラスコに実施例1からのアルキルサリチル酸41gを加えた。これに続いてメタノール30g、水15g、溶剤精製ベース油40g及びナフサ50gを加えた。この混合物を30℃に加熱し、ホウ酸15gを加えた。溶媒を除去するために、次の2時間をかけて、混合物を215℃に加熱した。得られた生成物は、透明且つ流動性であり、サンプルのKOH/gの82.8ミリ当量の酸価を有していた。
【0076】
試験
A)物質5重量%で処理した油の付着物形成傾向を評価するために実施例2の生成物を評価した。この試験の終わりに、付着物1.2mgが見出されたが、添加剤なしで評価したSAE50ベース油は、150mgより多い付着物を生成した。
B)実施例1のアルキルサリチル酸もパネルクロッカー試験において評価し、191.1mgの付着物を生成した。
C)イオウ約13ppmを含む低イオウディーゼル燃料における潤滑性能について実施例1の生成物を評価するために、ASTM D−6079を使用した。低イオウ燃料において150ppmの実施例1の酸で試験を行い、412μmの磨耗傷径を生じた。この生成物の性能は、415μmの磨耗傷を有するトール油脂肪酸と類似しており、610μmの磨耗傷を生ずる添加剤なしのディーゼル燃料に対し優れていた。
D)ASTM D665錆試験において実施例2を試験し、その性能を市販のカルシウムジノニルナフタレンスルフォネート(キングインダストリー(King Industry)からのNasul 729)と比較した。油中の0.75%の処理(treat)で、ホウ酸エステルは48時間合格したが、市販のスルホネートは多くの錆スポットで試験に不合格であった。
【0077】
本発明の基礎となる原理から離れずになされ得る多くの変化及び変更を考慮して、本発明に与えられる保護範囲の理解のために、付属の特許請求の範囲に対して参照はなされるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)潤滑剤、及び
(B)酸性有機化合物とホウ素化合物との少なくとも1つの反応生成物
を含む組成物。
【請求項2】
酸性有機化合物が、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び構造:
【化1】


(式中、X及びX’は、独立して水素、ヒドロカルビル、ハロゲンからなる群から選択され、Rは、ポリメチレン或いは分岐又は非分岐のアルキレンであり、xは0又は1であり、Rは、水素又はヒドロカルビルである)
又は
【化2】


(式中、R及びRは、水素、1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基或いは4〜8個の炭素原子を含む第3級アルキル又はアリールアルキル基(ただし、R及びRの両方とも水素ではない)であり、R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル基、アリールアルキル基及びシクロアルキル基からなる群から選択され、x=0〜24である)の酸からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ホウ素化合物が、ホウ酸、トリアルキルボレート、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸及びアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ホウ素化合物が、ホウ酸である請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
反応生成物が、構造:
【化3】


(式中、Rは、ヒドロカルビル基であり;aは、1又は2の整数であり(ここで、aが2である場合、R基は、独立して選択される);Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり;Rは、水素又はアルキルである)
の反応生成物である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
潤滑剤が、潤滑油である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
酸性有機化合物が、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び構造:
【化4】


(式中、X及びX’は、独立して水素、ヒドロカルビル、ハロゲンからなる群から選択され、Rは、ポリメチレン或いは分岐又は非分岐のアルキレンであり、xは0又は1であり、Rは、水素又はヒドロカルビルである)
又は
【化5】


(式中、R及びRは、水素、1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基或いは4〜8個の炭素原子を含む第3級アルキル又はアリールアルキル基(ただし、R及びRの両方とも水素ではない)であり、R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル基、アリールアルキル基及びシクロアルキル基からなる群から選択され、x=0〜24である)の酸からなる群から選択される請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
ホウ素化合物が、ホウ酸、トリアルキルボレート、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸及びアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物からなる群から選択される請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
ホウ素化合物が、ホウ酸である請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
反応生成物が、構造:
【化6】


(式中、Rは、ヒドロカルビル基であり;aは、1又は2の整数であり(ここで、aが2である場合、R基は、独立して選択される);Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり;Rは、水素又はアルキルである)
の反応生成物である請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
(A)炭化水素燃料、及び
(B)酸性有機化合物とホウ素化合物との少なくとも1つの反応生成物
を含む組成物。
【請求項12】
酸性有機化合物が、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び構造:
【化7】


(式中、X及びX’は、独立して水素、ヒドロカルビル、ハロゲンからなる群から選択され、Rは、ポリメチレン或いは分岐又は非分岐のアルキレンであり、xは0又は1であり、Rは、水素又はヒドロカルビルである)
又は
【化8】


(式中、R及びRは、水素、1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基或いは4〜8個の炭素原子を含む第3級アルキル又はアリールアルキル基(ただし、R及びRの両方とも水素であることはない)であり、R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル基、アリールアルキル基及びシクロアルキル基からなる群から選択され、x=0〜24である)
の酸からなる群から選択される請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ホウ素化合物が、ホウ酸、トリアルキルボレート、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸及びアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物からなる群から選択される請求項3に記載の組成物。
【請求項14】
ホウ素化合物が、ホウ酸である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
反応生成物が、構造:
【化9】


(式中、Rは、ヒドロカルビル基であり;aは、1又は2の整数であり(ここで、aが2である場合、R基は、独立して選択される);Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり;Rは、水素又はアルキルである)
の反応生成物である請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
酸性有機化合物とホウ素化合物との反応生成物を摩擦を減少させるのに有効な量を含む潤滑油でエンジンを作動させることを含む内燃エンジンにおける摩擦を減少させる方法。
【請求項17】
酸性有機化合物が、アルキル置換サリチル酸、ジ置換サリチル酸、油溶性ヒドロキシカルボン酸、サリチル酸カリキサレン、イオウ含有カリキサレン及び構造:
【化10】


(式中、X及びX’は、独立して水素、ヒドロカルビル、ハロゲンからなる群から選択され、Rは、ポリメチレン或いは分岐又は非分岐のアルキレンであり、xは0又は1であり、Rは、水素又はヒドロカルビルである)
又は
【化11】


(式中、R及びRは、水素、1〜18個の炭素原子を含むヒドロカルビル基或いは4〜8個の炭素原子を含む第3級アルキル又はアリールアルキル基(ただし、R及びRの両方とも水素であることはない)であり、R及びRは、独立して水素、ヒドロカルビル基、アリールアルキル基及びシクロアルキル基からなる群から選択され、x=0〜24である)
の酸からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ホウ素化合物が、ホウ酸、トリアルキルボレート、アルキルホウ酸、ジアルキルホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸錯体、シクロアルキルホウ酸、アリールホウ酸、ジシクロアルキルホウ酸、ジアリールホウ酸及びアルコキシ、アルキル及び/又はアルキル基を有するこれらの置換生成物からなる群から選択される請求項16に記載の方法。
【請求項19】
ホウ素化合物が、ホウ酸である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
反応生成物が、構造:
【化12】


(式中、Rは、ヒドロカルビル基であり;aは、1又は2の整数であり(ここで、aが2である場合、R基は、独立して選択される);Rは、独立して選択されるヒドロカルビル基であり;Rは、水素又はアルキルである)
の反応生成物である請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2008−507607(P2008−507607A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522495(P2007−522495)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/017684
【国際公開番号】WO2006/022934
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(505365356)ケムチュア コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】