説明

アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法

【課題】アルキルベンゼンを出発原料として含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを製造する方法であって、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを工業的に高効率で得られるという優れた効果を有するアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法。
【解決手段】下記工程を含み、脱圧工程で得られた気相を冷却することにより得られたアルキルベンゼンを含む液相を酸化工程にリサイクルする。
酸化工程:加圧下でアルキルベンゼンを含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る
脱圧工程:酸化工程で得られたアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を酸化工程の反応圧力よりも低く保たれた容器に供給し、気相と液相を得る工程
冷却工程:脱圧工程で得られた気相を冷却することにより気液分離し、アルキルベンゼンを含む液相を得る

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、アルキルベンゼンを出発原料として含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを製造する方法であって、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを工業的に高効率で得られるという優れた効果を有するアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法としては、特許文献1にアルキルベンゼンを酸化するに際し、酸化反応により得られたアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を濃縮して、分離されたアルキルベンゼンを含む溶液を酸化反応器へ供給する方法が開示されている。しかしながら、従来の方法においては、濃縮操作以外で分離されたアルキルベンゼンの酸化反応器への供給に関しては詳細な記載が無い。
【0003】
【特許文献1】特開2001−151710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる現状において、本発明が解決しようとする課題は、アルキルベンゼンを出発原料として含酸素ガスで酸化することによるアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを製造する方法であって、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを工業的に高効率で得られるという優れた効果を有するアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、下記工程を含むアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法であって、脱圧工程で得られた気相を冷却することにより得られたアルキルベンゼンを含む液相を酸化工程にリサイクルすることを特徴とするアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法に係るものである。
酸化工程:加圧下でアルキルベンゼンを含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程
脱圧工程:酸化工程で得られたアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を酸化工程の反応圧力よりも低く保たれた容器に供給し、気相と液相を得る工程
冷却工程:脱圧工程で得られた気相を冷却することにより気液分離し、アルキルベンゼンを含む液相を得る工程
【発明の効果】
【0006】
本発明により、アルキルベンゼンを出発原料として含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを製造する方法であって、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを工業的に高効率で得られるという優れた効果を有するアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のアルキルベンゼンとしては、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、イソプロピルメチルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。また、出発原料として用いるアルキルベンゼンは、酸化反応に供されていないフレッシュなものでも、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含有する溶液から回収された未反応のアルキルベンゼンでも、また、これらの混合物でも良い。アルキルベンゼンの酸化は、空気や酸素濃縮空気等の含酸素ガスによる自動酸化で行われる。酸化反応はアルカリ水溶液の存在下で行っても良い。アルカリ水溶液は、アルカリ水溶液ならばいかなるものでも良いが、フレッシュアルカリ水溶液や酸化工程から回収されるアルカリ水溶液等が挙げられる。フレッシュアルカリ水溶液としては、NaOH、KOHのようなアルカリ金属化合物や、アルカリ土類金属化合物又はNa2CO3、NaHCO3のようなアルカリ金属炭酸塩又はアンモニア及び(NH42CO3、アルカリ金属炭酸アンモニウム塩等を水に溶解させたものが用いられ、酸化反応に供していないものである。反応器へ供給される酸化工程から回収されるアルカリ水溶液としては、酸化工程から回収されるアルカリ水溶液であればいかなるものでも良いが、酸化反応器からのアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を油層と水層に分離して得られた該水層等が例示できる。通常の反応温度は50〜200℃、好ましくは70〜150℃である。液滞留時間は0.1〜50時間、好ましくは1〜20時間である。反応器は、1段反応器でも多段反応器でも良い。ここで述べる多段反応器とは、2器以上のことであり、通常2〜20器、好ましくは2〜8器である。該器数が多すぎると、反応器及び該反応器に伴う配管等の費用が高くなり、経済性の観点から好ましくないことがある。また、多段反応器の場合においては、各反応器の連結方法は、直列でも並列でも、または、それらの組み合わせでも良い。
【0008】
本発明において、下記工程を含むアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法であって、脱圧工程で得られた気相を冷却することにより得られたアルキルベンゼンを含む液相を酸化工程にリサイクルする必要がある。
【0009】
酸化工程:加圧下でアルキルベンゼンを含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程
脱圧工程:酸化工程で得られたアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を酸化工程の反応圧力よりも低く保たれた容器に供給し、気相と液相を得る工程
冷却工程:脱圧工程で得られた気相を冷却することにより気液分離し、アルキルベンゼンを含む液相を得る工程
【0010】
脱圧工程で得られた気相を冷却することにより得られたアルキルベンゼンを含む液相を酸化工程にリサイクルしない場合は、工業的に生産効率が悪化する場合がある。酸化工程の反応圧力は0.11〜5MPa、好ましくは0.3〜1MPaで、脱圧工程の容器内圧力は酸化工程の反応圧力よりも低く保たれていれば良いが、通常、大気圧〜0.2MPaである。また、冷却工程の温度は0〜60℃である。
【0011】
また、本発明においては、フレッシュなアルキルベンゼン中のフェノール化合物の濃度は0.01重量%以下であることが好ましい。このことにより、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを高収率で得ることができる。ここで述べるフェノール化合物とは、フェノール化合物であればいかなるもので良く、フェノール、メチルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール等が例示できる。
【0012】
更に、本発明においては、フレッシュなアルキルベンゼン中のα−メチルスチレンの濃度は0.1重量%以下であることが好ましい。このことにより、アルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを高収率で得ることができる。
【0013】
本発明において得られるアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドは、フェノール類とアセトンの製造用原料として用いることができる。一例として、得られるクメンハイドロパーオキサイドを酸触媒に接触させ、フェノールとアセトンを得、このものを分離・精製することにより、フェノールとアセトンを製造する方法等が挙げられる。酸触媒としては、硫酸、過塩素酸、塩酸、弗化水素酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、イオン交換樹脂やシリカアルミナ等が挙げられる。
【0014】
また、本発明において得られるアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドは、アルキレンオキサイドの製造用原料として用いることができる。一例として、得られるクメンハイドロパーオキサイドをチタンまたはモリブデン含有触媒の存在下、プロピレンと反応させ、プロピレンオキサイドとクミルアルコールを得、このものを分離した後、該クミルアルコールを脱水触媒の存在下にα−メチルスチレンとし、更には、該α−メチルスチレンを水添触媒の存在下に水素と反応させてクメンを得、該クメンを酸化工程の原料として再利用する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下に実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例より限定されるものではない。
実施例1
金属製連続流通酸化反応器を用い、アルキルベンゼンとして酸化工程で得られたイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む87℃の溶液を6kPa−Gに脱圧し、得られた気相を12℃に冷却して得られたイソプロピルベンゼンを含む液相とイソプロピルベンゼンを含有する原料液(イソプロピルベンゼン:95重量%以上)の混合物、炭酸ナトリウム水溶液及び空気を、排ガス中の酸素濃度が2体積%になるように供給し、圧力0.6MPa−Gの条件下、連続流通反応させた。その結果、イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイドを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を含むアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法であって、脱圧工程で得られた気相を冷却することにより得られたアルキルベンゼンを含む液相を酸化工程にリサイクルすることを特徴とするアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドの製造方法。
酸化工程:加圧下でアルキルベンゼンを含酸素ガスで酸化することによりアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを得る工程
脱圧工程:酸化工程で得られたアルキルベンゼンハイドロパーオキサイドを含む溶液を酸化工程の反応圧力よりも低く保たれた容器に供給し、気相と液相を得る工程
冷却工程:脱圧工程で得られた気相を冷却することにより気液分離し、アルキルベンゼンを含む液相を得る工程

【公開番号】特開2007−119446(P2007−119446A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242478(P2006−242478)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】