説明

アルキル芳香族炭化水素の非常に選択的な水素化脱アルキル化のための触媒組成物

反応条件下で、芳香族化及びそれに続く水素化脱アルキル化を受けるC4-C10脂肪族及び脂環式生成物と混合したC8-C13アルキル芳香族化合物を含む、炭化水素組成物の触媒水素化脱アルキル化のみのための方法であり、ZSM-5ゼオライトからなり、そのまま又は結合した形で、ZSM-5のSi/Alモル比が5〜100の範囲で、400〜650℃の範囲の温度と2〜4MPaの範囲の圧力での白金-モリブデン結合により修飾され、及び3〜6の範囲のH2/供給原料モル比の触媒を用いた、水素の存在下での継続した処理を含む。供給原料中にヘテロ原子、例えば硫黄、窒素、又は酸素を含有する有機化合物の存在は、本発明の方法目的に従って、触媒の実施を何ら変更しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族炭化水素の触媒水素化脱アルキル化の方法に関する。
より詳細には、本発明は、C4-C10脂肪族及び脂環式生成物と混合したC8-C13アルキル芳香族化合物を含む、炭化水素組成物の触媒水素化脱アルキル化の方法に関する。
さらに、より詳細には、本発明は、最初の供給原料中にそのものが存在し、混ぜ合わせた脂肪族及び脂環式化合物の芳香族化により、同じ反応条件下で生成するアルキル芳香族化合物に作用する、触媒水素化脱アルキル化に従った方法に関する。こうして達成した全体の水素化脱アルキル化においては、本発明の条件目的下で、反応により付随して起こるトランスアルキル化、異性化、不均化及び縮合が、定量的に抑えられる。それ故に、メタンの形成の減少、プロパンの極めて低い生成、及び実質的にはナフタレン及びビフェニル型の、縮合された生成物の形成がほぼゼロになり、ベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)の高品質の生成物が非常に高く生成される。
文献では、アルキル芳香族炭化水素の触媒水素化脱アルキル化のための方法として知られる。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第138,617号(kutz)においては、例えば、モリブデンで変更されたゼオライト触媒を用いて、通常の反応条件下で、実質的にエチルベンゼン及びキシレンからなる、炭化水素の流れの処理を含む、水素化脱アルキル化によるアルキル芳香族炭化水素の転化方法について記載している。記載された方法は、アルキル芳香族炭化水素の水素化脱アルキル化及び/又は異性化について言及している。しかしながら、当該方法の唯一の目的は、キシレンの混合物のパラ異性体への選択的な異性化であることは明らかであり、その結果、エチルベンゼンの水素化脱アルキル化が、キシレンの異性化に関し単なる二次反応となる。さらに、当該方法は、示した反応条件及び結果に基づき、一般的種類のものではないが、脱アルキル化された唯一のアルキル芳香族生成物がエチルベンゼンであるため、独占的な脱エチル化に特有の、アルキル芳香族化合物の水素化脱アルキル化について記載している。また、触媒水素化脱アルキル化反応が起こると、芳香環からの触媒脱アルキル化にかけられた水素化アルキル基(メタン、エタン、プロパン等)が、必ず気相に見られることも知られている。その結果、当の触媒水素化脱エチル化反応から、芳香族環へ最初に結合した、エチル基の脱アルキル化の完了の直接の証拠として、対応するエタンが得られるべきであるが、その根拠はない。その上、装填されたエチルベンゼンの転化は常に低く、予期に反して、水素化物エチル化活性化金属(metal activating hydride-ethylation)として表されるモリブデンが存在する場合に減少する。最終的に、記載された方法においては、一般的な反応条件及び形成された副生成物から、好ましくない異性化、トランスアルキル化及び二次反応の不均化の介在が明らかである。
選択的な触媒水素化脱アルキル化に対する制限は、既知の技術に記載された、他の様々な方法から発生する。これらのうち、言及されているとしても、この反応は実際に異性化、トランスアルキル化、不均化反応及びアルキル芳香族化合物の縮合に関し、二次反応を示す。
【0003】
米国特許第4,482,773号では、例えば、キシレン及びエチルベンゼンの混合物からp-キシレンの異性化を達成することを明白な目的とした方法が記載されており、混合物における含有量は平衡の場合よりも低い。混合物は、異性化反応を達成するために通常使用される実験条件下で加工する。これらの反応条件下、及び白金及びマグネシウムで変更されたゼオライト触媒を用い、結果として、p-キシレンの最終含有量の向上を唯一の目的とした、エチルベンゼンのキシレンへの転化及びこれらの異性化ということになる。
【0004】
米国特許第4,899,011号は、再び、p-キシレンの含有量は平衡の場合よりも低く、パラフィン、及びエチルベンゼン及びキシレンのC8芳香族混合物を含む炭化水素供給原料の異性化が明白な目的である。当該方法は、連続して二つの固定床を有する触媒システム上に、通常の反応条件下での前記供給原料の処理を含み、各々の固定床はZSM-5型ゼオライト触媒からなり、第一床は最小結晶寸法が1μmであるのに対し、第二床の寸法は1μmより小さい。ゼオライトは白金、パラジウム又はロジウムから選択される貴金属、又は白金レニウム、白金パラジウム又は白金イリジウムのような貴金属の結合、白金イリジウムレニウム型の三元(terns)により変更でき、あるいは上述の貴金属又は非貴金属、例えばコバルト、ニッケル、バナジウム、タングステン、チタン及びモリブデンにより変更でき、ZSM-5の含浸に好ましい金属が白金であるにもかかわらず、白金ニッケル又は白金タングステン型の結合、又は白金ニッケルタングステンのような三元を形成する。
一般的な反応条件は、熱平衡組成物(p-キシレンがより豊富である)へのキシレンの異性化、及びエチルベンゼンの部分的な脱エチル化を招き、残りの部分はキシレンへ異性化されやすい。
【0005】
米国特許第5,877,374号は、「低圧」として定義される、エチルベンゼンの水素化脱アルキル化、及びp-キシレン含有量が平衡の場合より低い、芳香族C8炭化水素供給原料に含まれるキシレンの異性化方法について記載する。本特許は、水素化脱アルキル化方法において一般に必要とされる場合より相当に低圧(14バールより低い)で、水素及びエチルベンゼン間のモル比が、例えば、米国特許第4,482,773号(2-2.2)及び第4,899,011号(2.9-3)において言及される場合より低く、白金及びマグネシウムで変更されたZSM-5型のゼオライト触媒の存在下で、もはや有効な水素化脱アルキル化を達成するために使用するべきモル比よりはるかに低い、前記供給原料の加工を含む。実際に、結果は、ベンゼンの水素化脱アルキル化が再度部分的にのみ起こるのに対し、当該方法がキシレンの異性化に決定的に有利であることを示している。
【0006】
米国特許第6,051,744号は、先の第5,877,374号と非常に類似しており、主にキシレン及びエチルベンゼンからなり、供給原料のキシレン中のp-キシレン含有量が、平衡の量より低く、白金で変更されたZSM-5型ゼオライト触媒の存在下で、さらに低い圧力(8.5バールより低い)及び還元水素/エチルベンゼンのモル比(2.9〜3)で作用する、芳香族C8炭化水素供給原料の加工が想定されている。また、この場合、反応条件、特に有効な脱アルキル化作用を達成するために使用されるべき反応条件に関する極度に低い圧力については、キシレン及びエチルベンゼンのp-キシレンへの異性化が主反応となることと同様、エチルベンゼンの限られた水素化脱アルキル化が可能となるにすぎない。
【0007】
米国特許第4,351,979号は、エチルベンゼン、及び一定量の直鎖状及び枝分れしたパラフィンの存在下で、平衡でない三つの異性体を含む改質したガソリンからp-キシレンの形成を得る、触媒異性化及び水素化脱アルキル化方法について記載している。エチルベンゼンの触媒水素化脱アルキル化は、反応条件下で、ZSM-5型のゼオライトからなり、酸性型(acidic form)又はアルカリ金属で交換及び第VIII族の金属、特に白金で処理されて使用する触媒系を用い、有効性及び選択性の低さを有することを証明している。選択性の乏しさが、より高いC9+アルキル芳香族生成物の形成を招くトランスアルキル化又は副反応の不均化の介在によるものであるのに対し、有効性の低さはベンゼン及びトルエンの生成の低さ、及び著しい量の非転化エチルベンゼンにより実証される。
【0008】
米国特許第5,689,027号は二工程法を請求しており、第一工程では、操作条件が、供給(the feeding)中に存在するエチルベンゼンの水素化脱アルキル化に好適なはずであるのに対し、第二工程においては、他の操作条件が、平衡でない供給原料に存在する異性体の混合物のp-キシレンへの異性化を促進するはずである。両工程で使用される触媒系は、アルカリ又はアルカリ土類金属の陽イオンで交換され、又はシラン剤(silanizing agents)で処理され、その後第VIII族、第IB族、第IIIA族及び第VA族の所属から選択される金属、特に白金で活性化し、スズと結合する可能性があるZSM-5ゼオライトである。しかしながら、当該方法は、第一工程の水素化脱アルキル化における、エチルベンゼンの転化の低さという大幅な制約がある。これにより、以下の二つの大きな影響がある。非転化エチルベンゼンが相当な量になることにより、続く異性化の工程において、p-キシレンへの望ましい増加に対する平衡の移動が危うくなり、同時に、第一の触媒脱アルキル化工程に再利用された場合、さらに、実施を危うくする、高沸点芳香族生成物への副反応の不均化又はトランスアルキル化を促進することになる。
【0009】
米国特許第5,865,986号では、触媒水素化脱アルキル化部分が、ベンゼン及びトルエンの量を増加させ、オクタン価を高めることを目的とし、触媒改質したガソリンで供給されている。この目的のため、ZSM-5型ゼオライト触媒が、コバルト、ニッケル、タングステン、白金及びパラジウムから選択される単一の金属で変更され、反応で使用される。しかしながら、請求された結果は、有効性の乏しい改質油の水素化脱アルキル化が示されている。最良の場合においてでさえ、白金及びパラジウムで変更されたZSM-5の存在下で、供給原料に対したベンゼン及びトルエンの単一の通過(single passage)を介した濃度の上昇は、それぞれ質量5%を超えないのに対し、キシレンが同量分、不必要に増加する。同様に、初期のC9の留分の減少は、質量4〜5%を超えない。従って、請求された触媒水素化脱アルキル化方法は、脱アルキル化の有効性の低さにより特徴づけられ、また、キシレンの量が、減少せず増加するという事実により実証され、また、C9の留分を相当に再利用するという不利益を有する。
【0010】
国際公開第2005/071045号は、C8-C13芳香族化合物を含み、C4-C10脂肪族又は脂環式生成物と混合してもよく、モリブデン、亜鉛、ニッケル、コバルト及びパラジウム又はモリブデン-亜鉛及びモリブデン-コバルトの結合の中から選択される金属で変更されるZSM-5型の触媒を用いた、炭化水素組成物の触媒水素化脱アルキル化の方法について記載している。請求された結果は、ベンゼン及びトルエンに対し、優れた収率で有効な脱アルキル化を示している。キシレン及びC9-C9+の初期の芳香族化合物の脱アルキル化は、いずれにせよ限定される。
【発明の概要】
【0011】
出願人は、驚いたことに、C8-C13アルキル芳香族炭化水素の水素化脱アルキル化、及び、思いがけず、同様のプロセス条件下において、ベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)に対するC4-C10の脂肪族及び脂環式炭化水素の混合物中に最初に存在する、同様のプロセス条件下における、芳香族化から得たアルキル芳香族化合物の同時触媒水素化脱アルキル化の双方を可能にする方法を見出した。さらに、本発明の目的である、全体的な水素化脱アルキル化反応は、ゼオライト触媒の好適な操作条件及び形成を選択することにより、既知の技術に関する方法を常に特徴付けるトランスアルキル化、不均化、異性化及び濃縮反応が付随せず起こる。
【0012】
特に、本発明の操作条件下及び触媒組成物を用いた場合は、驚くべきことに、水素化脱アルキル化反応は、ベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)の形成に対し量的に選択できるだけでなく、ベンゼン/トルエンの比が、常に、ベンゼンに明らかに好適であることが見出されている。従って、当該方法の経済的性質は、ベンゼン及びトルエン、特にベンゼンの有益な値に対する液体相が、常にトルエンより多い量で生成し、また、例えば相当なエネルギー回収を伴うオーブンのクラッキングへの再利用など、エタンを再利用する可能性のためのガス相が、熱分解工程において生成されるといった、双方の反応の流れの固有値にある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】供給原料の転化及びBTEに対する選択性等を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
従って、本発明の目的は、プロセス条件下で同時に芳香族化するC8-C13アルキル芳香族留分及びC4-C10脂肪族留分の双方を含む、炭化水素組成物の選択的な触媒水素化脱アルキル化を操作できる方法に関する。従って、本発明の方法目的は、触媒水素化脱アルキル化が、続く瞬間水素化脱アルキル化と共に、存在するC4-C10脂肪族及び脂環式留分の芳香族化と同様、芳香族C8-C10留分から達成することを可能にする。本発明の方法によると、前記芳香族及び脂肪族及び脂環式炭化水素組成物は、ZSM-5ゼオライト担体からなり、5〜100の範囲のSi/Alモル比を有し、金属モリブデン及び白金の結合(Pt-Mo)により変更され、400〜650℃、好ましくは450〜580℃の範囲の温度で、1〜5MPa(10〜50バールの間)好ましくは2.8〜3.6MPa(28〜36バールの間)の範囲の圧力で、1〜10、好ましくは2〜7、より好ましくは3.8〜5.2の間の範囲のH2/供給原料モル比の触媒を用い、継続的に、及び水素の存在下で処理される。
【0015】
本発明において、水素化脱アルキル化にかける炭化水素供給原料は、C8-C13アルキル芳香族化合物、例えばエチルベンゼン、キシレン、ジエチルベンゼン、エチルキシレン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンプロピルベンゼン、エチルトルエン、プロピルトルエン、ブチルベンゼン、エチルキシレン等を含む。この供給原料は、例えば改質装置の流出液、又は、水蒸気クラッキングのような熱分解方法を遂行する装置から生じ、プロセス条件下において、芳香族化され、その後水素化脱アルキル化される脂肪族及び脂環式C4-C10生成物の混合物を含むことができる。後者はブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等、及び対応する脂肪族及び脂環式誘導体(ナフテン)でよい。供給される供給原料は、また、有機ヘテロ原子化合物(heteroatomic organic compounds)を含んでよく、ヘテロ原子は、改質装置又は熱分解方法から生じる供給原料に一般に存在する典型的な量の窒素、酸素及び硫黄であり得る。
本方法で使用される炭化水素供給原料は、必要な場合、分離処理、例えば蒸留又は抽出にかけることができ、生成物を濃縮し、続く水素化脱アルキル化にかけることができる。さらに、必要な場合、供給原料は先の水素添加にかけることができ、脂肪族化合物中及び芳香族環の同様のアルキル置換基上に存在する不飽和を除去する。他方、本発明の水素化脱アルキル化反応条件の目的下では、特に使用される水素の量及び触媒により示される作用の結果として、水素化脱アルキル化する芳香族供給原料中に存在する不飽和化合物、例えばブテン、ペンテン、アルキルペンテン、シクロペンテン、アルキルシクロペンテン、ヘキセン、アルキルヘキセン、シクロヘキセン、アルキルシクロヘキセン等、及び他の不飽和ナフテン化合物の直接水素添加を、同時に達成することが可能である。同様の反応条件下で、水素自体は、通常炭化水素供給原料に存在する化合物から硫黄、窒素又は酸素の分離を可能にする。これらのヘテロ原子が量的に分離されるためである(例えば、硫黄はH2Sとして)。
【0016】
本発明によれば、金属白金及びモリブデン(Ptx-Moy)の結合Pt-Moで変更されるZSM-5ゼオライトからなる(consisting on)水素化脱アルキル化触媒は、驚いたことに、キシレン、とりわけ、芳香族C9-C9+化合物(C9+生成物の中で、ナフタレンやメチルナフタレンのような特に重いもの)の量的還元により、ベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)への高い選択性を示した。その上、前記触媒は、メタン、とりわけエタン以外の、反応により生産される他の有用な価ガスからの蒸留/分離方法を必然的に簡素化することにより、プロパンの低生産を最小限にすることを可能にした。
【0017】
バイメタル結合Pt-Moで得られる予期せぬ高い転化及び選択性のため、水素流出機構が、同時に存在する二つの金属のレドックス特性の高さにより、又はより低い酸化状態に対する相互還元へのそれらの反応性の高さによって大いに向上し、促進すると考えられる。
ゼオライト担体の組成物は、また、そのような優れた結果を得る上で相当な助けとなったに違いない。特に、5〜100、好ましくは5〜70、より好ましくは5及び35の間の範囲のSi/Alモル比による、特にアルミニウムが豊富であるZSM-5ゼオライトの使用は、望ましい結果を得る一因となった。副反応、例えば本発明の方法目的における異性化、トランスアルキル化、縮合及び付近化の欠如は、認められるアルミニウムの量で得られたゼオライト(ZSM-5)の望ましくない酸度の還元によるものであり、珪素について特に有利である。
ZSM-5ゼオライトは市場にて入手可能であり、あるいは文献に記載された方法に従って調製することができる(例えば米国特許第3,702,886号及び第4,139,600号)。ZSM-5ゼオライトの構造は、Kokotailo他(“Nature、Vol.272”、437ページ、1978年)及びKoningsveld他(“Acta Cryst.Vol.B43”、127ページ、1987年;“Zeolites、Vol.10”、235ページ、1990年)によって記載されている。
【0018】
ゼオライト触媒(zeolitic catalyst)は、本発明の方法において、ゼオライト/結合剤触媒が使用でき、工業用反応器へ適宜移動できるよう、形状、堅さ及び機械抵抗を与える結合剤を採用し、結合した形で使用することが好ましい。目的に好適な結合剤の例はアルミナ、例えば疑似ボヘマイト(pseudobohemite)及びγ-アルミナ、クレー、例えばカオリナイト、バーミキュライト、アタパルジャイト、スメクタイト、モンモリロナイト、珪酸、アルミノ珪酸塩、酸化チタン及び酸化ジルコニウム、上記の二以上の組み合わせを含み、ゼオライト/結合剤に100/1〜1/10の範囲の質量比を与える前述の量で使用する。
ゼオライト又はゼオライト/結合剤触媒中での金属の分散は、通常の技術、例えば含浸、イオン交換、蒸着又は表面吸着に従って遂行できる。初期含浸技法(incipient impregnation technique)は、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜4質量%の範囲の触媒中の、金属の総最終含有量を確実にするため、少なくとも金属の1の水及び/又は有機溶媒化合物を含む、水又は水−有機溶液(有機溶媒は好ましくはアルコール、ケトン及びニトリル又はその混合物から選択される)を用いて使用されることが好ましい。
【0019】
次に、結合剤を有する又は有さないゼオライトを、金属で含浸させ、Ptx-Moyの結合を形成し、x及びyはそれぞれPt及びMoの質量パーセントを表す。この金属結合のおかげで、初期の供給原料の総転化、即座に水素化脱アルキル化される、存在する脂肪族留分を同時に芳香族化する能力、及びベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)への総選択性について、反応の実施が例外的に高いと証明されたことが、予期せず判明した。
特に、含浸は結合した形で又はそうではなく、連続又は同時に金属の溶液を用いたゼオライトの処理を含む(共含浸)。このように含浸されたゼオライトは乾燥し、その後400〜650℃の範囲の温度で焼成する。この操作は、必要に応じて繰り返すことが出来る。
【0020】
この目的のために使用できるモリブデン化合物の例は、酢酸モリブデン(II)、モリブデン酸アンモニウム(VI)、ニモリブデン酸(dimolybdate)ニアンモニウム(III)、ヘプタモリブデン酸アンモニウム(VI)、燐モリブデン酸アンモニウム(VI)及びナトリウム及びカリウムの類似する塩、臭化モリブデン(III)、塩化モリブデン(III)−(V)、フッ化モリブデン(VI)、オキシ塩化モリブデン(VI)、硫化モリブデン(IV)−(VI)、モリブデン酸及びアンモニウム、ナトリウム及びカリウムの対応する酸性塩、及び酸化モリブデン(II-VI)他である。
【0021】
白金に関する限り、使用できる化合物の例は、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、臭化白金(II)、ヨウ化白金(II)、硫化白金(IV)(platinum sulphide)、塩化白金酸、ヘキサクロロ白金(IV)アンモニウム、テトラクロロ白金(II)アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)カリウム、テトラクロロ白金(II)カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)ナトリウム六水和物、アセチルアセトナート白金(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナート(acetilacetonate)白金(II)、ジクロロエチレンジアミン白金(II)テトラミノニトレート(tetraminonitrate)及び、概して、白金(II)及び(IV)のアミン錯体であり、陰イオンはハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、燐酸塩、チオシアン酸塩及び他でよい。
含浸の結果、得られた触媒はPtx-Mom/ZSM-5であり、総金属含有量は0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜4質量%である。
【0022】
前記触媒を、連続して炭化水素供給原料及び水素を供給した固定床反応器へ充填する。この点で、ここまでに記載した実験パラメータの制限に加え、混合物に存在し、同時に芳香族化するC8-C13芳香族炭化水素及びC4-C10脂肪族/脂環式炭化水素の選択的水素化脱アルキル化を得る上で、同様に試薬の流量の選択も絶対に重要である。炭化水素混合物(mix)及び水素の流量の供給は、LHSV(液空間速度)を保証するため、3〜5h-1、より好ましくは3.5〜4.5h-1の範囲の炭化水素の流れに関して計算するべきである。この目的のため、水素及び供給された供給原料間のモル比は1〜10mol/mol、より好ましくは2〜7mol/molの間、さらにより好ましくは3.8〜5.2mol/molの間の範囲内に留まるべきである。
使用される実験設備は、内径20mm及び全高84.5cmで、反応器の被覆を形成する電気加熱オーブン備えた、ステンレススチール製の管状固定床反応器を含む。液体供給原料は高圧ポンプによって反応器へ供給される。ガス反応流出液は、ガス液体分離器が採用する急冷デバイスによって冷却される。
自動制御により恒温で維持される反応器の等温部分は、触媒で充填される。触媒床より上又は下の反応器の残留容量は、不活性固体、例えばコランダムの顆粒で満たされ、パッキングが最適な分配及び触媒床前の試薬のガス流量及び交換熱の混合を保証する。
【0023】
反応器前に位置するプレヒーターは、200〜400℃、より好ましくは250〜320℃の範囲の温度で操作し、触媒を用いてガス相の試薬(供給原料及び水素)の最適な触媒をもたらす。このシステムは、固定床のみに限らず、触媒の操作温度をより容易に、より正確に制御することを可能にする全ての反応器で確立した、非常に短時間での等温状態の達成に有利である。反応により生成された液体及びガス流出液は、反応器の下流へ分離され、間隔をあけてガスクロマトグラフィーにより分析する。
以下の実施例は、本発明に従った方法をさらに例証するが、添付された請求項に示されている本発明の保護範囲を制限するものとみなされるべきではない。
【実施例】
【0024】
触媒の調製のための参考実施例
触媒A(比較的)
触媒Aの調製は、Si/Alモル比30を有するZSM-5ゼオライト及び結合剤としてアルミナを混合し、二相が60/40質量比であり、混合物を押し出し成形することにより得る。
押し出し成形された生成物は、550℃にて5時間空気中で焼成し、BET表面積は290m2/gである。一旦室温に達した後、触媒粉末12.4gが20mlの当量(equivalent volume)を占めるよう、粉砕し、ふるいにかけ、20〜40メッシュ(0.84〜0.42mmの間)の範囲の寸法を有する粉末を生成する。
触媒B(比較的)
触媒Bは、触媒A(30g)を硝酸テトラミノ白金(tetramino platinum nitrate)(NH34Pt(NO3)20.6gを含有する水溶液(35ml)で約25℃にて16時間含浸し、続いて、窒素フロー下に12時間置き、オーブンで120℃にて4時間、真空状態で乾燥し、550℃にて5時間空気中で焼成することにより得る。
モリブデンの計算含有量は、ICP-MSによると、実験値質量1.02%に対し、質量1.0%である。
【0025】
触媒C(比較的)
触媒Cは、触媒A(50g)をモリブデン酸アンモニウム[NH46Mo7O24.4H2O]0.92gを含有する水溶液(60ml)で含浸し、触媒Bの調製に使用した手順に従うことにより得る。
触媒中のモリブデンの含有量はICP-MS分析により測定された質量1.05%の値に対し、質量1.0%として計算した。
触媒D
触媒Dは触媒A(50g)を二工程において含浸することにより得る。モリブデン酸アンモニウム0.69gを含有する水溶液(60ml)を用いた第一の含浸、続いて硝酸白金テトラミノ(platinum tetramino nitrate)0.25を含有する水溶液(50ml)を用いた第二の含浸である。第一金属での含浸手順は、触媒Bで記載したとおり遂行されるが、焼成せず、同様の操作手順で第二金属での含浸が続き、その後550℃にて5時間空気中で最終的に焼成する。
触媒中のモリブデン及び白金の含有量は、ICP-MSにより、得られた質量0.76%及び質量0.23%の値と比較し、質量0.75%及び質量0.25%としてそれぞれ計算された。触媒の調製において、金属での含浸の順序は入れ替えることができる。
【0026】
触媒E
触媒Eは触媒A(20g)を二工程において含浸することにより得る。モリブデン酸アンモニウム0.19gを含有する水溶液(24mL)を用いた第一の含浸、続いて硝酸白金テトラミノ0.2gを含有する水溶液(23ml)を用いた第二の含浸である。二つの金属での含浸手順は触媒Dに記載されたとおり遂行される。含浸の順序は入れ替えることができる。
触媒中のモリブデン及び白金の含有量は、ICP-MSにより測定された質量0.52%及び質量0.49%の値とそれぞれ比較し、質量0.5%及び質量0.5%としてそれぞれ計算される。
触媒F
触媒Fは触媒A(20g)を二工程において含浸することにより得る。モリブデン酸アンモニウム0.10gを含有する水溶液(24mL)を用いた第一の含浸、続いて硝酸白金テトラミノ0.13gを含有する水溶液(23ml)を用いた第二の含浸である。二つの金属での含浸手順は触媒Dに記載されたとおり遂行される。含浸の順序は入れ替えることができる。
触媒中のモリブデン及び白金の含有量は、ICP-MSにより得られた質量0.26%及び質量0.73%の値と比較し、質量0.25%及び質量0.75%としてそれぞれ計算される。
【0027】
実施例1〜6(1〜3は比較)
試薬のガス流量と反応へ供給する熱の最適な分配及び混合を保証するため、容量の残りを顆粒状のコランダムで満たすのに対し、反応器を触媒A20cm3(12.4g)で充填する。
組成を以下の表1に示した供給原料を反応器へ供給し、水素と適宜混合し、280℃まで予熱する。
反応を、3MPaの圧力、3,9〜4.1h-1のLHSVを得るための試薬供給原料の流量及び4.5のH2/供給原料モル比で実行する。
表1 供給原料の供給の組成

結果を以下の表2に示し、触媒A〜C(比較的実施例1〜3)及びD〜F(実施例4〜6)を用いて得る実施について言及する。
表2に示したトルエンの濃度は、反応により生成された正味濃度である。
表2

)反応の正味濃度(供給原料と共に入るトルエンを引く)
【0028】
550℃の温度で実行された水素化脱アルキル化反応(表2を参照)は、二つの金属、モリブデン又は白金のうちの一つの存在が、触媒そのもの(ZSM-5、実施例1)を用いて実行した反応に関して、メタンの副生成をエタンの副生成を優先して抑制し、ZSM-5(実施例2及び3)において芳香族化合物の選択的な脱アルキル化をどれほど有利にするか示している。ベンゼン及びトルエンの生成は同様に増加し、それらの比(ベンゼン/トルエン)がベンゼンに有利になる。
他方、水素化脱アルキル化反応がZSM-5を用いて実行される場合、本発明によれば、二つの金属モリブデン及び白金が同時に存在し(Ptx-Moy/ZSM-5)、驚いたことに、個々に存在する二つの金属を用いて得た結果(実施例2及び3)に比べてより良い結果が得られ(実施例4〜6)、ZSM-5のみで得た結果より決定的に高度である。
ベンゼン、トルエン及びエタン(BTE)の純粋生成物を有する供給原料の、より高い転化に加え、図1に示すプロパン中の予期せぬ徹底的な減少が、このガスの、そのような限定された量の分別に由来するすべてのエネルギー利益とともに、生成する他の有用なガス、メタン及びとりわけエタンについて得られた。
反応ガスの組成物に関して観察された高い脱アルキル化能力はまた、反応液体組成物中で平行確認(parallel confirmation)を有する。特に、キシレン(C8)及び最初に存在する重質芳香族生成物(C9-C9+)において、明確に減少している(図1)。
【0029】
この結果は、発明の方法目的により単一通過によって転化したキシレン及びより高い芳香族化合物(C9-C9+)の量が、流出液の残留物を再利用を維持するためのものであり、最小限及び随時のフラッシングを可能にすることを証明するものであるため、特に重要である。当該作用は脂肪族留分に対して影響を及ぼし、定量転化が、それに続く脱アルキル化を可能にする触媒の芳香族化能力のために得られ、同様に非常に関連性がある。
当該方法に関する限り、非転化脂肪族化合物からの芳香族化合物の分離のための典型的な抽出部分に必要な量が、削除又は激減しうるため、さらなる優位な下流(downstream)に至る。他の優位な点は当該方法の上流(upstream)であり、上述の方法が提供するすべての柔軟性とともに、芳香族及び脂肪族構成要素間の、反応前の分離の必要性がなくなり、種々の芳香族/脂肪族組成物の供給原料が加工できるためである。
窒素、酸素及び硫黄等、通常処理すべき供給原料において有機化合物として存在する、ヘテロ原子の存在に関する限り、プロセス条件下において量的に取り除かれていると観察された。
【0030】
表3に、先述の実施例において実行された水素化脱アルキル化反応に関する実施例を示す。実質的な相違は、ジメチルジスルフィド(DMDS)の形で、供給原料に硫黄が加えられたことである。本発明の目的である触媒系Ptx-Moy/ZSM-5の対応する水素添加脱硫法の有効性は、対応するH2Sが、全体として、反応流出液中に0.1ppm/pより低いまま残留するという事実により立証される。
表3

*=硫黄当量として136ppm/pと同等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C4-C10脂肪族及び脂環式生成物と混合したC8-C13アルキル芳香族化合物を含む、炭化水素組成物の、触媒水素化脱アルキル化のみのための方法であり、前記炭化水素組成物を、ZSM-5ゼオライトからなり、5〜100の範囲内のSi/Alモル比を有し、400〜650℃の範囲の温度と1〜5MPaの範囲の圧力での金属白金-モリブデンの結合により修飾され、及び1〜10の範囲のH2/供給原料モル比の触媒を用いた、水素の存在下での継続した処理を含む方法。
【請求項2】
水素化脱アルキル化反応が、450〜580℃の範囲の温度にて、2.8〜3.6MPaの範囲の圧力、3.8〜5.2の範囲のH2/供給原料モル比、及び3〜5h-1、好ましくは3.5〜4.5h-1の炭化水素の流れによって計算される、LHSV(液空間速度)を保証するための試薬の流量により起こる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
C8-C13アルキル芳香族化合物供給原料が、改質装置又は熱分解方法を遂行する装置、又は水蒸気クラッキングから発生する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
炭化水素供給原料が、プロセス条件下で芳香族化され、その後水素化脱アルキル化されたC4-C10脂肪族及び脂環式生成物と混合したC8-C13アルキル芳香族化合物、及びヘテロ原子を含有する有機化合物を含む水素化脱アルキル化にかけられた、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
炭化水素供給原料が、エチルベンゼン、キシレン、プロピルベンゼン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルキシレン、テトラメチルベンゼン、プロピルトルエン、エチルトリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジプロピルトルエン等から選択されるC8-C13アルキル芳香族化合物、及び、プロセス条件下において、芳香族化され、その後水素化脱アルキル化されるC4-C10脂肪族及び脂環式化合物、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及び対応する環式及びシクロアルキル化合物を含む、水素化脱アルキル化にかけられる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
触媒が、アルミナ、例えば疑似ボヘマイト及びγ-アルミナ、クレー、例えばカオリナイト、スメクタイト、モンモリロナイト、シリカ、アルミノ珪酸、チタン及び酸化ジルコニウム、及びその混合物から選択される結合剤と、結合した形のZSM-5ゼオライトからなり、ゼオライト/結合剤の質量比が100/1〜1/10の範囲である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ZSM-5ゼオライトが5〜70、好ましくは5〜35の範囲のSi/Alモル比によって特徴づけられる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
触媒における金属分散が含浸、イオン交換、蒸着又は表面吸着から選択される技法により実行される、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ZSM-5ゼオライトを、そのまま又は結合した形で、前記金属白金及びモリブデンの塩の溶液で含浸し、続いて乾燥し、その後400〜650℃の範囲の温度で焼成し、Ptx-Moy/ZSM-5触媒を得る、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
そのまま又は結合された形のZSM-5ゼオライトの含浸が、アルコール、ケトン及びニトリル又はその混合物から選択される有機溶媒で、金属の水溶性又は有機可溶性化合物を含有し、触媒中の総金属含有量が0.1〜10質量%の範囲の濃度である水又は水−有機溶液を用いて遂行される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
白金及びモリブデン金属の総含有量が0.5〜4質量%の範囲である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−545548(P2009−545548A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522186(P2009−522186)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006984
【国際公開番号】WO2008/015027
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(508128303)ポリメーリ エウローパ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】