説明

アルキレンオキシドを生産するための方法

(i)アルキルベンゼンを酸化して、アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを含むストリームを得ること;(ii)工程(i)で得たアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をオレフィンと接触させて、アルキレンオキシドを含む生成物流を得ること;(iii)工程(ii)の生成物流からアルキレンオキシド化合物を分離して、(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流及び(b)アルキレンオキシドを得ること;(iv)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流の少なくとも一部を、反応蒸留域を有する反応器に供給し、同時に反応器において:(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流を反応蒸留域内で水素と接触させ、残留生成物流中のアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換して、反応混合物を形成すること;及び(b)分別蒸留によって前記反応混合物からアルキルベンゼンを分離すること;(v)前記触媒反応域より上の位置で、アルキルベンゼンを含み、反応器からのフィード流よりも低いアルキルフェニルアルコール濃度を有するストリームを取り出すこと;反応蒸留域より低い位置で、アルキルベンゼンの二量体を含む底流を反応器から取り出すこと;アルキルベンゼン;及び(viii)(iv)(b)及び/又は(vi)から生成されたアルキルベンゼンの少なくとも一部を工程(i)に再循環すること、を含む、アルキレンオキシドを製造するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ヒドロペルオキシドを使用してオレフィンをエポキシ化することによってアルキレンオキシドを生産するための改善された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシドの製造のための多くの異なる方法が開発されてきた。このような方法の1つは、有機ヒドロペルオキシドを酸化剤として使用する液相反応におけるオレフィンのエポキシ化を含む。オランダ特許第NL−C−1010472号は、プロペンをエチルベンゼンヒドロペルオキシドと反応させてプロピレンオキシドと1−フェニルエタノールを得ることを含む方法を述べている。続いて、1−フェニルエタノールを脱水して、他の化学反応のための有用な出発物質であるスチレンが得られる。
【0003】
住友に発行された国際公開公報第WO01/70714号は、イソプロピルベンゼン(「クメン」としても知られる)を酸化して、プロピレンのエポキシ化のための酸素担体としてイソプロピルベンゼンを入手し、プロピレンオキシドとイソプロピルベンゼンアルコール(クミルアルコール)を得ることに関する方法を述べている。イソプロピルフェニルアルコールを、水素化分解工程によってイソプロピルベンゼン(クメン)に脱水/水素化し、スチレンの同時生成を伴わずに反復使用のために再循環する。水素化分解工程の間に、生成された後の水素化床に残存するクメン及びα−メチルスチレンのさらなる水素化又は二量体化の故に、望ましくない副産物としてかなりな量のi−プロピルシクロヘキサンとクメン二量体が生成され、このさらなる水素化又は二量体化を生じさせる。
【0004】
Shellに発行された米国特許第6,455,712号は、アルキルベンゼンを酸素で酸化することによって得たアルキルベンゼンヒドロペルオキシドでオレフィンを酸化することにより、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド(オキシランとしても知られる)を生産するための方法を述べている。アルキルベンゼンヒドロペルオキシドをアルキルフェニルアルコールに変換して、これを脱水し、水素化した後、分別して、アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを生産するための再使用のためにアルキルベンゼンを他の副産物から分離する。かなりな量のアルキルフェニルアルコールが、副産物としてアルキルシクロヘキサン及び/又はアルキルベンゼンの二量体及び/又はオリゴマーに変換され得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換するための多数の処理工程と分別をより少ない工程へと結合して、二量体/オリゴマー及びアルキルシクロヘキサンのようなアルキルベンゼンの望ましくない副産物の蓄積をより少なくし、アルキルベンゼンのロスを少なくする、より効率的な方法を開発することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
(i)アルキルベンゼンを酸化して、アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを含むストリームを得ること、
(ii)工程(i)で得たアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をオレフィンと接触させて、アルキレンオキシドを含む生成物流を得ること、
(iii)工程(ii)の生成物流からアルキレンオキシド化合物を分離して、(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流及び(b)アルキレンオキシドを得ること、
(iv)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流の少なくとも一部を、反応蒸留域を有する反応器に供給し、反応器において並行して、
(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流を反応蒸留域内で水素と接触させ、残留生成物流中のアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換して、反応混合物を形成すること、及び
(b)分別蒸留によって前記反応混合物からアルキルベンゼンを分離すること
を含む、アルキレンオキシドを製造するための方法を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
今や、本発明の方法は、酸素担体として再利用するためにアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換するための多数の処理工程を結合することにより、オレフィンの効率的なエポキシ化を可能にし、また二量体/オリゴマー及びアルキルシクロヘキサンのようなアルキルベンゼンの望ましくない副産物の蓄積をより少なくすることが見出された。さらに、本発明の特定実施態様として、前記方法の間に生成されるアルキルベンゼンの二量体/オリゴマーをアルキルベンゼンに分解して、再使用のために再循環し、これによってアルキルベンゼンの損失を最小限に抑える。
【0008】
以下の経路Iに示すように、本発明の方法は、オレフィンからアルキレンオキシドを生産するためにアルキルベンゼンヒドロペルオキシドをエポキシ化剤として利用する。このアルキルベンゼンヒドロペルオキシドをエポキシ化工程の間にアルキルフェニルアルコールに変換し、反応生成物からアルキレンオキシドを分離して、アルキルフェニルアルコール(アルキルベンジルアルコールとしても知られる)、アルキルベンゼンおよび場合によりアルケニルベンゼンを含む残留生成物流を得る。この残留生成物流を脱水し、水素化して、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換する。好ましくは、同時に1工程脱水−水素化反応を実施し、蒸留によって反応蒸留域内で生成されるより低沸点のアルキルベンゼンを、アルキルシクロヘキサン又はアルキルフェニルアルコールの二量体に変換される前に分別し、除去するために、残留生成物流を接触分別蒸留(catalytic fractional distillation)反応器に供給して、反応蒸留域内で固定床接触パッキングと接触させることによって脱水/水素化反応を実施する。非変換アルキルフェニルアルコール又はアルケニルベンゼンは、アルキルベンゼンに変換されるまで反応蒸留域に還流し続ける。蒸留反応のために必要な熱を提供するために、加熱手段を備えた加熱装置を利用することができる。
【0009】
本発明の特定実施態様として、アルキルベンゼン及びアルキルフェニルアルコールより高い沸点を有する、反応蒸留方式で作られるクメン二量体などのアルキルベンゼン重二量体又は多量体は、反応蒸留反応器の底部に落下する。反応器の底部の二量体又は多量体は、反応器の底部で水素化分解するか又は反応蒸留反応器の底流の一部として取り出して、クメンなどのより多くのアルキルベンゼンを生産するために、例えば固定床方式の、水素化分解反応器に送って水素化することができる。
【0010】
本発明の特定実施態様として、反応蒸留反応器の底流を、アルキルベンゼン、アルキルフェニルアルコール及びアルケニルベンゼン(α−メチルスチレンなど)がアルキルベンゼン二量体/オリゴマーから分離されて、反応蒸留反応器へと再循環される、フラッシャー又は蒸留カラムに送ることができる。より重いアルキルベンゼン二量体/オリゴマーを、次に、アルキルベンゼンを回収するために水素化分解反応器に送る。クメンの二量体化から生成される副産物二量体の非制限的な例は、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン及び2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンを含む(経路II参照)。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
エチルベンゼンは、現在アルキレンオキシド化合物の製造において最も広く使用されるアルキルベンゼン化合物であるが、アルキルベンゼンを酸化するための処理工程は、使用するアルキルフェニル化合物が、アルキル置換基が3から10個の炭素原子を含む分枝アルキル置換基であるアルキルベンゼンである場合に、より高い変換率とより高い選択性で実施できることが認められた。より好ましいアルキルフェニル化合物は、1又は2個のアルキル置換基を含む。いくつかの置換基、特に2又は3個のアルキル置換基を含むアルキルフェニル化合物は、いくつかのヒドロペルオキシド基を含み得るという利点を有する。本発明の特定実施態様は、アルキルフェニル化合物が経路IIに例示するようなクメン、パラ、メタ又はオルト−ジ(イソプロピル)ベンゼン又はこれらの混合物である反応を対象とする。
【0014】
アルキルフェニルの酸化は、当技術分野で公知の何らかの適切な方法によって実施することができる。例えば酸化は、希釈剤の存在下で液相において実施できる。この希釈剤は、好ましくは、反応条件下で液体であり、出発物質及び得られる生成物と反応しない化合物である。しかし、希釈剤はまた、反応中に必然的に存在する化合物であってもよい。例えばアルキルフェニルがクメンである場合は、希釈剤もクメンであり得る。
【0015】
アルキルベンゼンを酸化するための工程で得た生成物は、これ自体オレフィンのエポキシ化のための工程において使用することができ、一部の化合物を分離するか又は得られた生成物の一部だけを次の工程で使用することができ、一部を異なる工程の一部において使用することができる。
【0016】
オレフィンのエポキシ化工程では、アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを生産するための工程で得たアルキルフェニルヒドロペルオキシドを、触媒の存在下でオレフィンと接触させて、アルキレンオキシドとヒドロキシアルキルベンゼンを得る。このような工程で適切に使用できる触媒は、IVB、VB又はVIB族金属、特にチタン担持シリカ及び/又はシリケート不均一系チタン触媒又は不均一系モリブデン触媒などのチタン含有又はモリブデン含有触媒を含む。特に適切な触媒は、欧州特許第EP−B−345856号に述べられている。このような触媒は、固体シリカ及び/又は無機シリケートとの化合物形態中のチタンを含み、このような触媒は、a)ケイ素化合物を気体四塩化チタンの蒸気で含浸すること、b)工程a)で得た反応生成物をか焼すること、及びc)工程b)の生成物を加水分解すること、によって入手し得る。前記反応は、一般に穏やかな温度及び圧で、特に0℃から200℃の範囲内、好ましくは25℃から200℃の範囲内の温度で実施する。厳密な圧は、反応混合物が液体に維持される限り、決定的に重要ではない。大気圧が十分であると考えられる。一般に、圧は1から100×10N/mの範囲内であり得る。
【0017】
適切なチタン含有触媒の他の非制限的な例は、米国特許第6,323,147号、スペイン特許第2,165,771号及び国際公開公報第WO01/56693号に開示されているチタン含有酸化ケイ素触媒を含み、これは、溶媒中でシリカソース、チタンソース及び鋳型として第四アンモニウムイオンを混合して触媒成分と鋳型を含む固体を得ること、及び得られた固体を溶媒中で抽出し、鋳型を除去して触媒を得、場合により続いてシリル化することによって製造し得る。適切なエポキシ化触媒のもう1つの非制限的な例は、欧州特許第EP100,119号、同第EP230,949号、イギリス特許第GB2,071,071号、米国特許第4,410,501号、同第4,666,692号及び同第4,701,428号に述べられている合成ゼオライト含有触媒である。有機モリブデン含有触媒の説明的な例は、米国特許第4,772,731号、同第5,017,712号、同第4,593,012号、同第4,590,172号、同第4,661,463号、同第4,687,868号、同第4,607,113号、欧州特許第EP58,473号、米国特許第3,480,563号、同第3,453,218号、同第3,434,975号、再発行特許第Re30,642号及び米国特許第3,351,635号に述べられている。適切なバナジウム触媒の一例は、米国特許第3,350,422号に述べられている触媒を含み、タングステン含有触媒についての例は、米国特許第3,3511,635号に認められる。
【0018】
本発明の方法において使用するオレフィンは、製造するアルキレンオキシドに依存する。好ましくは、前記オレフィンは2から10個の炭素原子、より好ましくは2から8個の炭素原子を含む。本発明の特定実施態様として、オレフィンはプロペン(プロピレンとしても知られる)である。
【0019】
エポキシ化反応の完了時に、所望生成物を含む液体混合物を触媒から分離する。アルキレンオキシド化合物を、次に、適切であることが当業者に知られている何らかの方法で反応混合物から分離することができる。液体反応生成物は、分別蒸留、選択抽出及び/又はろ過によって生成し得る。触媒、存在し得る何らかの溶媒及び非反応オレフィン又はアルキルフェニルヒドロペルオキシドは、さらなる利用のために再循環させ得る。
【0020】
エポキシ化処理工程は、スラリーの形態の触媒、移動床又は流動床を用いて実施することができる。しかし、大規模工業適用のためには固定床が好ましい。前記方法は、バッチ方式で、半連続的に又は連続的に実施し得る。反応域からの流出液が実質的に触媒を含まないように、反応物を含む液体を、続いて、触媒床に通してもよい。
【0021】
本発明の特定実施態様として、工程(i)の生成物の一部を、フェノール化合物及びアルキルベンゼンがクメンである場合メチルメチルケトン(「アセトン」としても知られる)であるケトン含有化合物などを得るためのアルキルフェニルヒドロペルオキシドの反応において使用する。得られるフェノール化合物は置換基を含み得る。アルキルフェニルヒドロペルオキシドの反応は、アルキルフェニルヒドロペルオキシドを、硫黄を含有するものなどの酸性触媒と接触させることによって触媒できる。使用する酸性触媒は、硫酸、塩酸、過塩素酸、二酸化硫黄及び三酸化硫黄;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クレゾールスルホン酸及びクロロ酢酸などの有機酸;シリカ−アルミナ、アルミナ及び酸性イオン交換樹脂などの固体酸;タングストケイ酸、タングストリン酸及びモリブドリン酸などのヘテロポリ酸であり得る。好ましくは、硫酸及び/又はクレゾールスルホン酸を使用する。使用する触媒の量は、通常、処理する反応混合物に基づいて0.0001重量%から1重量%の範囲内である。反応温度は、通常30℃から150℃の範囲内である。
【0022】
アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを製造するための工程の反応生成物から他の化合物を分離した後、アルキルフェニルヒドロペルオキシドを前述した反応に供して、フェノール化合物を生産することができる。しかし、アルキルベンゼンヒドロペルオキシド形成工程の反応生成物の一部を、フェノール化合物を製造するための分解反応に直接供することが好ましい。
【0023】
フェノール化合物を生産するアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの反応は、通常、副産物を生じる。しばしば認められる副産物は、副反応からの様々な置換アルキルベンゼン、例えばエチルベンゼン及び1−メチルスチレンである。本発明の方法の収率をさらに高めるために、フェノール化合物とケトン含有化合物の所望生成物を、フェノール化合物生成工程における反応生成物から分離することができ、この後残りの反応生成物の全部又は一部を、アルキルフェニルアルコールをもとのアルキルベンゼンに変換するための工程で水素化に供する。従って、本発明に従った方法は、好ましくは、この工程の反応生成物からフェノール化合物とケトン含有化合物の少なくとも一部を分離すること、及びアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換するための工程において残りの反応生成物の全部又は一部を水素と接触させることを含む。フェノールアルキルフェニルアルコールからアルキルベンゼンへの工程で得られ、好ましくはアルキルフェニルアルコールを水素化するための工程に送られる化合物は、エチルベンゼン、1−メチルスチレン等である。従って、アルキルフェニルアルコールを水素化するための工程に送られる、フェノール化合物生成工程の反応生成物の分画は、この方法で使用されるアルキルベンゼンの副産物、例えばエチルベンゼン及び/又は1−メチルスチレンを含有する。フェノール化合物生成工程の反応生成物は、このままアルキルフェニルアルコールを水素化するための工程に送るか、又はフェノール化合物生成工程の反応生成物を、アルキルフェニルアルコールを水素化するための工程に送る前に、アルキレンオキシドを分離した、フェノール化合物を生産するための工程の反応生成物と組み合わせることができる。
【0024】
フェノール化合物とケトン含有化合物の所望生成物は、当業者に公知の何らかの方法でフェノール化合物生成工程の反応生成物から分離することができる。好ましくは、フェノール及びケトンをフェノール化合物生成工程の反応生成物から実質的に取り出すが、フェノール化合物とケトン含有化合物以外の反応生成物の少なくとも一部を一貫製造工程に戻す。
【0025】
本発明の特定実施態様として、アルキルフェニルヒドロペルオキシドの一部をフェノール化合物とケトン含有化合物に変換する場合、クメンはフェノール化合物生成工程でフェノールとアセトンを与えるので、前記アルキルフェニルはクメンであり得る。
【0026】
続いて、アルキレンオキシドを分離した、ヒドロキシアルキルフェニルを含む反応生成物の少なくとも一部を水素化に供する。水素化処理は、水素化触媒の存在下で実施する。
【0027】
好ましい非制限的な実施態様として、残留生成物流中のアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換する工程は、反応蒸留反応を通して実施する。この工程は、アルキルフェニルアルコール含有フィード流を反応蒸留反応器のフィード域内に供給すること、蒸留によって反応蒸留域内で生成されるより低沸点のアルキルベンゼンを、アルキルシクロヘキサン又はアルキルフェニルアルコールの二量体に変換される前に分別し、除去しながら、1工程脱水−水素化反応を同時に実施するためにアルキルフェニルアルコール含有フィード流を固定床接触パッキングと接触させることを含み、非変換アルキルフェニルアルコール又はジアルキルフェニルアルコールは、アルキルベンゼンに変換されるまで反応蒸留域で還流し続ける。蒸留反応のために必要な熱を提供するために、加熱手段を備えた加熱装置を利用することができる。
【0028】
反応蒸留操作方式は、反応蒸留反応器での分別蒸留によって生成物のアルキルベンゼンを絶え間なく取り出すことにより、クメンなどのアルキルベンゼンに対する反応の選択性を高めるという利点を提供する。接触反応と同時に生成物の分別を伴う連続的な反応蒸留操作は、大部分のアルキルフェニルアルコールの沸点が対応する生成物アルキルベンゼンの沸点よりも高いという事実から利益を受ける。反応蒸留方式での脱水/水素化の本発明の実施態様は、別個の水素化反応器及びこの付属の熱交換装置及び制御装置なしで、多数の脱水及び接触水素化反応並びに分別工程を1つの反応器内で操作することを通して、必要な資本支出を低減することにより、さらなる利益を提供する。反応蒸留と個々の接触水素化反応の組合せは、芳香結合の水素化を伴わずに、アルキルフェニルアルコールの脱水から生じるアルケニル鎖の飽和に対するよりよい選択性をもたらす。
【0029】
本発明の特定実施態様として、経路IIに示すように、オレフィンはプロペンであり、生成されるアルキレンオキシドはプロピレンオキシドであり、アルキルベンゼンはクメン(i−プロピルベンゼンとしても知られる)であり、アルキルフェニルアルコールはクミルアルコール(2−フェニル−2−プロパノールとしても知られる)である。以下の表1は、クメンが、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン及び2−メチル−2,4−ジフェニルペンタン等である、クミルアルコール及びクメン二量体よりも有意に低い沸点を有することを示す。従って、反応蒸留操作では、クメンは、上部の反応蒸留域から、触媒床より上の塔頂又は中間抜き出しから回収され、非変換クミルアルコールは、さらなる反応のための触媒床に残される。最も高い沸点を有するクメン二量体は反応器の底部に留まり、反応器上部から留出されない。クメン二量体を含み得る、反応器の底部の混合物は、底流として取り出すことができる。
【0030】
【表1】

【0031】
アルキルフェニルアルコールはまた、エチルフェニルアルコール(1−ヒドロキシル−1−フェニルエタン又はヒドロキシエチルベンゼンとしても知られる)でもよく、この場合生成されるアルキルベンゼンはエチルベンゼンである。本発明のさらにもう1つの特定実施態様では、アルキルフェニルアルコールは、オルト、メタ又はパラ−ジ−(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン又はこれらの混合物であり、アルキルベンゼンは、メタ、オルト又はパラ−ジ−(イソプロピル)ベンゼン又はこれらの混合物である。ある特定実施態様では、アルキルフェニルアルコールはパラ−ジ−(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼンであり、アルキルベンゼンはパラ−ジ−(イソプロピル)ベンゼンである。
【0032】
本発明の特定実施態様として、生成されるアルキルベンゼンの約1.0重量%未満、特に約0.5重量%未満、より好ましくは約0.2重量%未満がアルキルシクロヘキサン(RCHCH(シクロヘキサン))に変換され、そして生成されるアルキルベンゼンの約0.1重量%未満、特に約0.05重量%未満、より好ましくは約0.01重量%未満がアルキルベンゼンの二量体又は多量体の形態の副産物に変換される。
【0033】
特定実施態様として、アルキルベンゼン及びアルキルフェニルアルコールより高い沸点を有する、反応蒸留方式で作られるクメン二量体などアルキルベンゼンの重二量体又は多量体は、反応蒸留反応器の底部に落下する。反応器の底部の二量体又はオリゴマーは、底流の一部として取り出すことができ、場合により反応蒸留塔に再循環するためにアルキルベンゼン、アルキルフェニルアルコール及びアルケニルベンゼンを分別して回収することができる。より二量体又はオリゴマーに富むストリームは、この後、クメンなどのより多くのアルキルベンゼンを生産するために、例えば固定床方式で、水素化することができる。場合により、二量体又はオリゴマーを反応器の底部で水素化/水素化分解することができる。クメンの二量体化から作られる副産物二量体の非制限的な説明的例は、経路IIに示すような2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン及び2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンを含む。2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン及び2−メチル−2,4−ジフェニルペンタンをクメンに変換することのような、アルキルベンゼンの二量体をアルキルベンゼンに変換するための適切な水素化分解触媒の説明的で非制限的な例は、担体上のVIII族金属又はIB族金属を含む触媒、特に担体上の銅、パラジウム、白金及びニッケルを含むものを包含する。担体の非制限的な説明的例は、シリカ、シリカ−アルミナ、及びモルデナイト、Na/Hモルデナイト、H−モルデナイト、β−ゼオライト、H−β−ゼオライト、Y−ゼオライト、H−Y−ゼオライトなどのゼオライト等を含む。本発明の1つの特定実施態様では、触媒は、単独で又は、好ましくは酸性水素形態である酸性担体上に好ましくは担持した、パラジウム/金、パラジウム/銀、コバルト/ジルコニウム、ニッケルなどの促進剤及び変性剤と共に、触媒の総重量に基づく金属の重量として算定した、約0.1重量%から約5重量%、特に約0.2重量%から2重量%のVIII族金属又はVIII族金属化合物を主要触媒成分として含む。「酸性水素形態」という用語は、50%又はそれ以上のイオン交換可能な陽イオンが水素(+)イオン(「H」又は「プロトン」としても知られる)であることを意味する。IB族金属含有触媒は、好ましくは、特に酸性担体上の、より特定すると酸性水素形態の担体上の、触媒の総重量に基づくオキシドの重量として、10%から80%、特に30%から70%、より特定すると50%から60%のIB族金属を含有する。このような触媒の特定の非制限的例は、銅、ラネー銅、銅/クロム、銅/亜鉛、銅/亜鉛/クロム、銅/亜鉛/ジルコニウム、銅/シリカ、銅/亜鉛/アルミニウム、銅/アルミナ、銅/クロマイト、パラジウム/炭素、パラジウム/H−モルデナイト、パラジウム/アルミナ、パラジウム/シリカ、パラジウム/シリカ−アルミナ及び他の銅ベースの触媒系を含む触媒を包含する。アルキルベンゼンの二量体の重量比で86.0%から100.0%、特に90.0%から100.0%、より特定すると94.0%から100.0%、さらにより特定すると97.5%から100.0%、さらに一層特定すると98.0%から100.0%が、140℃から300℃、特に185℃から235℃、より特定すると185℃から225℃の温度でアルキルベンゼンに変換される。
【0034】
非制限的な説明的例として、反応蒸留床(反応蒸留域としても知られる)は、アルキルベンゼン生成物流の上部先端(そこでアルキルベンゼンは塔頂抜き出しとして回収される)又は中間抜き出しより下の位置で反応蒸留反応器内の中心に位置し、フィード流及び水素含有流は反応蒸留床より下で反応器内に供給される。この配置は、フィード流と水素が床内へと上昇移動し、ここで述べる条件下で触媒と接触して側鎖を水素化することを可能にする。代わりに、フィード流を反応蒸留床の上方から反応蒸留反応器内に供給して、反応蒸留床内に下降移動させ、反応蒸留床の下方から供給される水素と接触させることができる;又はフィード流を接触床内に供給することもできる。場合により、反応器内へのフィード流の入口をフィード流の濃度に従って調整してもよく、例えばフィード流中のアルキルフェニルアルコールの濃度が高いほど、フィード流のための入口も高くする。適切な反応蒸留反応器の非制限的な説明的例は、0.01メートルから20メートル、特に0.5メートルから10メートルの外径及び0.2メートルから200メートル、特に1メートルから100メートルの高さを有する。
【0035】
接触パッキングは、触媒接触のための十分な表面積を提供し、反応生成物を有効に分別しながら、蒸気が反応蒸留床を通って流動することを可能にする性質を持つ。非制限的な説明的例として、触媒は、十分な分留機能を提供するように設計され、反応器内の液体がトレー/バッフル/パッキングを通って反応蒸留域内のより下方のトレー/バッフル/パッキングへと下降していくときあふれた状態に維持される、複数のトレー/バッフル(調節板)/パッキング等に充填/負荷することができる。材料は次いで、従来の分留塔におけるように下方のトレー上で分別される。場合により、反応物と生成物の分離、特にアルキルフェニルアルコールとアルキルベンゼン二量体/オリゴマーの間の分離を改善し、これによって反応器の底部におけるアルキルフェニルアルコール含有量を低減するために、触媒なしのトレー/パッキングを反応蒸留床の下方で使用する。反応器へのフィード流として水素と残留生成物流は、これらの無触媒トレーの上方又は下方のいずれかに流入し得る。クミルアルコールなどのより高い沸点の反応物アルキルフェニルアルコールを含む、反応蒸留反応器へのフィード流は、反応蒸留反応域内の触媒床に充填された触媒と絶え間なく接触し、同時に、生じた反応混合物を固定触媒床内で分別する。クメンなどのより低沸点の生成物アルキルベンゼンは、触媒床を通って上方へ移動し、塔頂抜き出し又は触媒床より上の中間抜き出しの一部(通常は大半)として回収される。水素化反応(脱水と結合した)及び分留は、反応蒸留反応器における触媒及び蒸留パッキングの両方の役割を果たす、固定触媒床上で同時に起こる。触媒床に残った非反応アルキルフェニルアルコール及びアルケニルベンゼンは、アルキルベンゼンへの変換のために触媒と接触する。アルキルフェニルアルコールの大部分が脱水されて、一過性にだけ存在するアルケニルベンゼンを形成し、直ちに触媒床においてアルキルベンゼンへと水素化される。場合により、アルキルベンゼンの還流を提供するために反応蒸留域の上方で付加的なパッキング/トレーを使用する。触媒床より上の、高濃度のアルキルベンゼンを含む塔頂又は中間抜き出しは、脱水工程なしでアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを生産するための湿式酸化工程による再利用のために再循環することができる。同じアルキルベンゼンに富むストリームを水素及び/又は水分離工程に供して、水素を回収する及び/又は高密度水を取り出すことができ、場合により分子ふるいなどの乾燥剤で乾燥して、この後さらなる還流/精製のために触媒床より上の反応蒸留反応器に戻すことができる。回収されるアルキルベンゼンは、市販されるのに十分な高純度であり得るか又はアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを製造する上での再利用のために再循環することができる。場合により水及び水素を除去した、塔頂又は中間抜き出しは、重量比で90%から100%、特に98%から100%、より特定すると99.5%から100%のアルキルベンゼン;重量比で0%から10%、特に0%から5%、より特定すると0%から1%のアルキルフェニルアルコール;重量比で約5%未満、特に1%未満、より特定すると0.1%未満のアルケニルベンゼン;重量比で5%未満、特に1%未満、より特定すると0.1%未満のアルキルベンゼンの二量体又はオリゴマー;重量比で5%未満、特に1%未満、より特定すると0.2%未満のアルキルシクロヘキサンを含有する。
【0036】
クミルアルコールを含むフィード流を本発明の反応蒸留反応器に供給する場合、触媒床より上の塔頂又は中間抜き出しは、水及び/又は水素の除去後、重量比で90%から100%、特に98%から100%、より特定すると99.5%から100%のクメン;重量比で0%から約10%、特に0%から5%、より特定すると0%から1%のクミルアルコール;重量比で5%未満、特に1%未満、より特定すると約0.1%未満のα−メチルスチレン;重量比で約5%未満、特に1%未満、より特定すると0.1%未満のクメンの二量体又はオリゴマー;重量比で5%未満、特に1%未満、より特定すると0.2%未満のイソプロピルシクロヘキサンを含有する。
【0037】
本発明の範囲を限定することなく、本発明の方法の有効性をもたらす機構は、反応系中のアルキルフェニルアルコール又はアルケニルベンゼン含有蒸気の一部の凝縮であると考えられ、これは、アルケニルベンゼンの側鎖の水素化を生じさせる触媒の存在下で、水素とα−メチルスチレンなどのアルケニルベンゼンの間に必要な密接接触が得られるように凝縮液体中に十分な水素を吸蔵する。
【0038】
特定実施態様として、還流凝縮器が系に含まれる。還流比は、1から20:1の割合で変化し得る。実際には、短い触媒床を補うためにより高い比率を使用し得る。市販サイズのユニットでは、通常は長い触媒床が提供され、より低い還流比、従ってより高い生産性が通常は得られる。
【0039】
反応蒸留反応器内の温度は、所与の圧でのアルキルベンゼンの沸点によって決定される。蒸留反応器は、反応混合物が触媒の床で沸騰するような圧で操作される。一般に、0psigから400psig、特に0psigから140psig(又は1から10バール)の範囲内の圧を使用し得る。
【0040】
クミルアルコール含有フィード流の変換のためには、圧は0psigから400psig、特に5psigから300psig、より特定すると0psigから140psig(又は1から10バール)であり得る。クメンは、0psig(1バール)では約152から154℃で沸騰し、より高い圧ではクメンの沸点が上昇することは了解される。説明的な非制限的例として、本発明の方法は50psigより低いオーバーヘッド圧で操作する。好ましくは、温度を下げて望ましくない重合を防ぐため及びより高い選択性が達成できるように、反応器を低圧で操作する。約0psig(大気圧)では、反応器の底部の温度は200℃以上であり、上部先端では155℃に近く、反応蒸留域内では150から210℃である。供給する時間当りの重量空間速度(WHSV)は、他の条件パラメータ内で非常に広い範囲にわたって変化し、時間当り0.1から約10、特に0.2から2リットルであり得る。ここで使用する、WHSVは、反応器内の触媒の単位重量当りの、蒸留反応器に入る時間当りのフィードの単位重量を意味する。
【0041】
説明的な例として、水素化のために反応蒸留又は固定床反応器に供給される残留生成物流は、重量比で1%から100%、特に5%から75%、より特定すると10%から40%のアルキルフェニルアルコール;重量比で0%から99%、特に25%から95%、より特定すると60%から90%のアルキルベンゼン;重量比で0%から20%、特に0%から5%、より特定すると0%から1%のアルケニルベンゼン;及び重量比で0%から25%、特に0%から10%、より特定すると0%から5%のアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを含む。本発明の特定実施態様の特定説明例として、水素化反応器に供給される残留生成物流は、重量比で1%から100%、特に5%から75%、より特定すると10%から40%のクミルアルコール;重量比で0%から約99%、特に25%から95%、より特定すると60%から90%のクメン;重量比で0%から20%、特に0%から5%、より特定すると0%から1%のα−メチルスチレン;0重量%から5重量%のエチルベンゼン;0重量%から5重量%のジ−、トリ−イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン等又はこれらの混合物;及び重量比で0%から25%、特に0%から10%、より特定すると0%から5%のクメンペルオキシドを含む。
【0042】
残留生成物流などの、反応蒸留反応器へのフィード流がジ−イソプロピルベンゼン(DIPB)を含む場合、小量、例えば5重量%未満のクメン、トリ−イソプロピルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、エチルイソプロピルベンゼン等又はこれらの混合物を含み得る。ペルオキシド、エポキシ化、水素化反応器に循環されるストリームは、副反応ために同様の性質を有する。オルト置換アルキルフェニルを含む化合物は、一般に反応性が低いので、本発明に従った方法における使用のためにはあまり好ましくないことが認められた。好ましくは、本発明の方法の工程(i)において使用するためのアルキルベンゼンの少なくとも80重量%は、メタ置換又はパラ置換アルキルフェニルである。より好ましくは、本発明の方法における使用のためのアルキルフェニルの少なくとも90重量%、より特定すると少なくとも95重量%は、メタ置換又はパラ置換アルキルベンゼンである。
【0043】
本発明に従った方法において反応性の低いアルキルベンゼンの蓄積を防ぐために、前記方法が、低反応性アルキルベンゼン化合物の少なくとも一部を除去するさらなる工程を含むことが特に好ましい。好ましくは、このような処理工程は、工程(i)の生成物の少なくとも一部を蒸留に供することを含む。底部生成物は工程(ii)において使用することができる。蒸留除去される生成物は、比較的多量の低反応性アルキルアリールを含む。この生成物は、上述したようにアルキル基転移ユニットに送ることができる。アルキル基転移ユニットにおいて、前記生成物はより反応性の化合物を含む生成物へと変換され得るか、又は芳香族基上に1個のアルキル置換基を含む化合物へと変換され得る。
【0044】
水素化速度は、水素化反応を支持し、触媒から失われた水素を置換するのに十分であるように調整しなければならない。少なくともアルケニルベンゼン(アルキルベンゼンに変換される前に一過性に生成される)に対して化学量論的量の水素が、反応に使用できるように系内に存在しなければならない。非制限的な例として、水素を液体中に吸蔵し、気体と液体の間のこの反応の性質を適応させるために少し過剰の水素流を提供する。
【0045】
反応蒸留のために反応器において実施される水素化は、この種のストリームのための先行技術の液相処理に必要な水素分圧の一部分しか必要としないが、同じか又はより良好な結果を与える。従って、本発明の水素化工程のための資本投資と操作費用は、先行技術の方法よりも実質的に低い。より低い水素分圧は、生成物の芳香族部分を過度に水素化することなくより低い温度でより活性な触媒の使用を可能にする。
【0046】
本発明の反応蒸留反応はまた、反応が蒸留と同時に起こることから利益を受け、従って初期反応生成物と他のストリーム成分をできるだけ速やかに反応から除去し、副反応の可能性を低下させる。さらに、すべての成分が沸騰しているので、システム圧での混合物の沸点によって反応温度が制御される。反応の熱は単により一層の沸騰を生じさせるが、所与の圧での温度上昇はもたらさない。結果として、システム圧を調節することにより、反応速度及び生成物の分布に対して多大の制御を達成することができる。また、処理量を調節することは、生成物の分布及び、ある程度の、芳香環水素化、二量体化及びオリゴマー化などの副反応の制御をさらに提供する。この反応が反応蒸留から獲得し得るさらなる恩恵は、内部還流が触媒に与える洗浄作用であり、これによってポリマーの蓄積及び触媒のコークス化が減少する。内部還流は0.2から20L/D(触媒床のすぐ下の重量液体/重量/留出物)の範囲で変化し得る。
【0047】
水素化工程で使用する触媒材料は、触媒と蒸留パッキングの両方として機能する。粒子触媒材料は、妥当な反応速度を可能にするために十分な表面積を提供するいかなる形態、構造又は大きさでもよい。粉末、小さい不規則な塊又は断片、小さなビーズ等及びこれらの組成物であり得る。反応蒸留床の構造の非制限的な例は、粒子触媒材料を、触媒を含み、金網管状構造又は他の同様の構造などの金網構造の形態の蒸留表面を提供するように、多孔性プレート又はスクリーン内に配置することを含む。前記構造はまた、粒子触媒材料を充填した、ステンレス鋼などの柔軟な半剛性オープンメッシュ管状材料でもよい。触媒構造の特定例は、米国特許第5,266,546号、同第4,242,530号、同第4,443,559号及び同第5,348,710号に認められる。
【0048】
いかなる適切な水素化触媒も使用し得る。本発明の説明的実施態様として、水素化触媒は、水素化を触媒する金属である、固体担体上の金属を含む。本発明の1つの特定実施態様では、触媒は、触媒の総重量に基づく金属の重量として算定した、単独で又は、好ましくはゼオライト、他の分子ふるい、アルミナ、耐火煉瓦、軽石、炭素、シリカ、シリカ−アルミナ、熱安定樹脂等のような担体上に付着した、パラジウム/金、パラジウム/銀、コバルト/ジルコニウム、ニッケルなどの促進剤及び変性剤と共に、約0.1重量%から約5重量%、特に約0.2重量%から2重量%のVIII族金属又はVIII族金属化合物を主要触媒成分として含む。適切な触媒材料の1つの説明的な例は、アルミナ、炭素、ゼオライト(モルデナイト又はH−モルデナイトなど)又はシリカなどの適切な支持媒体上に担持される、好ましくは0.1重量%から5.0重量%の、パラジウムオキシド又はパラジウムを含む。米国特許第4,822,936号に開示されているγアルミナ担持銅ベース触媒も使用できる。
【0049】
本発明の他の特定実施態様として、銅などの、元素周期表のIB族金属を、単独で又はクロム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、希土類金属、VIII族金属等のような促進剤及び変性剤、特に担体上に支持されているものと共に、水素化のための主要触媒成分として使用する。IB族金属含有触媒は、好ましくは、特に担体上に、触媒の総重量に基づくオキシドの重量として10%から80%、特に30%から70%、より特定すると50%から60%のIB金属を含む。一部の特定説明例は、Sud Chemieより入手可能な、市販のシリカ担持銅触媒、T−366(プレス押出物又は成形押出物としてシリカ上に約54重量%の銅を担持する);Sud Chemieより入手可能な、銅クロマイト触媒、G−22/2;及び米国特許第5,475,159号の実施例3に従って製造されるCu/Zn/Zr触媒等を含む。これらの触媒の組合せも使用できる。このような触媒は、比較的低温で良好な結果を与えることが認められた。本発明の1つの非制限的な説明的実施態様では、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換する工程において、これらの触媒を好ましくは100℃から250℃の温度で使用する。このような触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、5重量%から80重量%の銅を含有し得る。さらに、このような触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛を含有し得る。触媒の特定例は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の銅、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛、及び触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、0.1重量%から20重量%の希土類を含有する。さらなる好ましい触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の銅、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛、及び触媒の総重量に基づき、0.05重量%から30重量%のアルミニウムを含有する。さらなる好ましい触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の銅、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛、及び触媒の総重量に基づき、0.05重量%から30重量%のジルコニウムを含有する。もう1つの好ましい触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の銅、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛、触媒の総重量に基づき、0.05重量%から30重量%のジルコニウム、及び触媒の総重量に基づき、0.05重量%から30重量%のアルミニウムを含有する。そしてさらなる好ましい触媒は、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の銅、触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、10重量%から80重量%の亜鉛、触媒の総重量に基づき、0.05重量%から30重量%のマグネシウム、及び触媒の総重量に基づき、オキシドとして算定して、0.1重量%から20重量%の希土類を含有する。
【0050】
反応蒸留域内の触媒は、以下の非制限的な説明手順によって還元し、調製し、前活性化することができる。触媒を破砕して、適切な大きさ、例えば6から20メッシュ、の粒子にする。窒素中約0.001重量%から約0.1重量%、特に約0.02重量%から0.10重量%の水素を1から200、特に2から30L/時の速度で流しながら、触媒粒子を約1℃から約10℃/分、特に約1.5℃から約5℃/分の割合で、例えば約150から180℃の温度に加熱することによって触媒を緩やかに還元する。触媒を150から180℃で1から10時間還元させ、次いで、気体が窒素中1から10、特に2から5重量%水素になるまで窒素中の水素含量を1から5時間ごとに2倍にする。触媒を最後に1から5時間還元し、次いで気体流を維持しながら冷却する。冷却後、空気が全く入らないようにして反応器に栓をし、気体流を停止する。窒素を充満した環境中で反応器を開き、スクリーンふるいによって触媒と炭化ケイ素を分離する。
【0051】
上述した手順によって調製した、還元触媒の6から20メッシュ粒子を、窒素充満環境において蒸留反応器内の多孔性プレート又はスクリーンで作られた床支持体に負荷する。触媒粒子を担持するためにガラスウールも使用できる。調節器を通して水素ガスを装置に添加し、圧を0から450psig(約1から32バール)(典型的には0から150psig(約1から11バール))に維持する。反応化学量論のために必要な水素の量の2倍を維持するように流量を調節する。(例えば10から40重量%の)2−フェニル−2−プロパノール(クミルアルコール)を含むストリームのような、アルキルフェニルアルコールを含むフィード流を触媒床の下から蒸留反応器に供給する。蒸留反応器の底部を加熱器内に下げて、次いで、液体が触媒を含む蒸留反応域で還流するまで温度を上げる。クメンなどの低沸点アルキルベンゼンと水を塔の先端から蒸留除去する。クミルアルコール含有流などの追加アルキルフェニルアルコールを、わずかにモル過剰の水素と共に持続的に添加して、クメンなどのアルキルベンゼンに変換されて蒸留除去される、クミルアルコールなどのアルキルフェニルアルコールの量を置換する。クメンなどのアルキルベンゼン生成物は、より高密度の水相から容易に分離する。場合により、前記生成物を分子ふるい又は他の適切な乾燥剤で乾燥する。生成される、クメンなどのアルキルベンゼンは、98重量%以上、好ましくは99重量%以上の純度を有する。測定可能な、クミルアルコールなどのアルキルフェニルアルコールは、クメン生成物などのアルキルベンゼン中には認められない(<0.01重量%)。所望するときは、底部を取り出して、場合によりクメンで希釈し、付加的な、クメンなどのアルキルベンゼンを生産するために固定床水素化反応器に送ることができる。
【0052】
1つの非制限的特定実施態様として、100℃から330℃、好ましくは140℃から300℃、好ましくは160℃から280℃、好ましくは180℃から260℃の温度で、及び0.1から100×10N/m、より好ましくは0.1から50×10N/m、最も好ましくは0.1から30×10N/mの圧で、反応生成物を水素と接触させることを含む、同時蒸留を伴わない、すなわち反応蒸留方式ではない、固定床方式での水素化処理を使用することができる。触媒と接触させるアルキルフェニルアルコールに対する水素の比率(モル/モル)は、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1.0、最も好ましくは少なくとも1.4である。
【0053】
水素化後、クメン又はジイソプロピルベンゼンなどのアルキルベンゼンを含む水素化生成物は、全部又は一部を再使用のために再循環することができる。水素化生成物の一部だけを再循環する場合は、適切であることが当業者に公知の何らかの方法で所望分画を分離することができる。
【実施例】
【0054】
例示だけを目的として提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない、以下の例示的実施態様によって本発明を説明する。
【0055】
(例示的実施態様)
(例示的実施態様I−アルキレンオキシド及びクミルアルコールの生産)
IA.
エポキシ化触媒は、欧州特許出願第EP−A−345856号の教示に従って実施例で述べられているように製造したシリカ担持チタンを含む触媒であった。
【0056】
水素化触媒は、米国特許出願第5,475,159号の実施例3に従って製造した銅、亜鉛及びジルコニウムを含む触媒であった。
【0057】
新鮮クメン及び再循環クメンを反応器に供給する。8時間にわたって、空気を反応器の底部で泡立たせ、反応器の塔頂から出した。反応の間、反応器を冷却した。得られた反応生成物は、28重量%のクメンヒドロペルオキシド、70重量%のクメン及び2重量%のさらなる化合物を含んだ。
【0058】
クメンヒドロペルオキシド1モル当り約6モルの1−オクテンを含む反応混合物を、40℃の温度で上述した新鮮エポキシ化触媒を含む反応器に供給した。オクテンオキシドを分離した。55重量%の1−オクテンがオクテンオキシドに変換されたことを認めた。
【0059】
IB.
新鮮エチルベンゼン及び再循環エチルベンゼンを反応器に供給した。8時間にわたって、空気を反応器の底部で泡立たせ、反応器の塔頂から出した。酸化の発熱性の故に、反応の間は反応器を冷却した。得られた反応生成物は、10重量%のエチルベンゼンヒドロペルオキシド、88重量%のエチルベンゼン及び2重量%のさらなる化合物を含んだ。
【0060】
エチルベンゼンヒドロペルオキシド1モル当り約6モルの1−オクテンを含む反応混合物を、40℃の温度で、実施例1で述べた新鮮エポキシ化触媒を含む反応器に供給した。オクテンオキシドを分離した。41重量%の1−オクテンがオクテンオキシドに変換されたことを認めた。
【0061】
(II.例示的実施態様II−クミルアルコールのクメンへの反応蒸留)
IIA.水素化触媒の製造
IIA(i).水素化触媒、T−366触媒の製造
Sud Chemieより入手可能な、市販のシリカ担持銅触媒、T−366を、反応蒸留方式実験のために以下の手順を用いてさらに処理する。
【0062】
Sud ChemieのT−366シリカ担持銅触媒5g(3mm錠剤)を破砕し、6−20メッシュの粒子にした。前記触媒を80メッシュ炭化ケイ素45gと混合し、20メッシュSiCの床とガラスウールの間の長さ69cmのステンレス鋼反応器管内の中心に置いた。反応器管は内径1.5cmであった。窒素中0.05重量%の水素を10L/時の速度で流しながら、触媒粒子を3℃/分の割合で約20℃から180℃の温度に加熱することによって触媒を緩やかに還元した。触媒を180℃で2時間還元させ、次いで、気体が窒素中3.2重量%水素になるまで窒素中の水素含量を2時間ごとに2倍にした。触媒を最後に2時間還元し、次いで気体流を維持しながら冷却した。冷却後、空気が全く入らないようにして反応器に栓をし、気体流を停止した。窒素を充満したグローブボックス内で反応器を開き、スクリーンふるいによって触媒と炭化ケイ素を分離した。
【0063】
II(A)(ii).水素化触媒、Pd−モルデナイト触媒の製造
ナトリウムモルデナイト(以下の性質を有する:表面積430m/g;平均結晶サイズ約1ミクロン;シクロヘキサン吸着取込み7.6cc/g;及びシリカ対アルミナのモル比11.1)1500g、硝酸アンモニウム9000g及び1.5M硝酸15リットルの混合物を50℃に加熱し、5時間攪拌した。固体物質をろ取し、脱イオン水25リットルで洗った。硝酸中の硝酸アンモニウムによるモルデナイトのこの処理を、毎回新鮮硝酸アンモニウムと硝酸を用いて2回反復した。各々の処理後、固体物質をろ取し、水で洗って、120℃で一晩乾燥した。テトラアミン硝酸パラジウム6.55gを脱イオン水308gに溶解し、この溶液に硝酸アンモニウム4.92gを添加することによって調製したテトラアミン硝酸パラジウム及び過剰の硝酸アンモニウムを含む水溶液での処理により、パラジウムを0.35重量%のレベルまでゼオライトに添加した。次にこのパラジウム溶液を、10.6%のLOI(750℃で2時間の強熱減量)を有する脱アルミニウムモルデナイト1083gと混ぜ合わせた(co−mulled)。パラジウム含有モルデナイトを均一に混合し、次に28.4%のLOIを有する擬ベーマイトアルミナ(Vista Chemical Companyより市販されているカタパルB(Catapal B))338gを添加し、混合した。この混合物を押出し、1.6mm押出物を125℃で16時間空気乾燥し、次いで500℃の流動空気中で2時間か焼した。触媒を破砕し、6から20メッシュ粒子の大きさにして、次いで、反応蒸留方式実験に関して上記IIA(i)で述べた手順を用いてさらに水素化した。
【0064】
II(B).反応蒸留
II(B)(i).T−366触媒の使用
例示的実施態様II(A)(i)の手順によって製造した還元T−366触媒の6から20メッシュ粒子を、窒素充満グローブボックスの内部で、1.5cmの内径を有する長さ31cmの厚壁Vigreux塔の還流域に充填した。触媒粒子を保持するためにガラスウールの小片を使用した。反応蒸留のための反応器の底部セグメントの役割を果たす薄壁250mlの丸底フラスコに塔を取り付けた。1から10バールの圧を維持するために調節器を通して水素ガスを装置に添加した。反応化学量論のために必要な水素の量の2倍を維持するように流量を調節した。Avacado Chemicalからの2−フェニル−2−プロパノール(クミルアルコール)50gを、丸底フラスコの底部に磁気攪拌棒を含む、250mLフラスコに添加した。クミルアルコールの入ったフラスコを加熱器内に下げて、次いで、液体が触媒を含むVigreux塔内で還流するまで温度を上昇させた。より低沸点のクメンと水を塔頂から蒸留除去した。付加的なクミルアルコールを、わずかにモル過剰の水素と共に持続的に添加して、クメンに変換されて蒸留除去されたクミルアルコールの量を置換した。クメン生成物は、より高密度の水相から容易に分離した。場合により、3Åの分子ふるいでさらに乾燥した。結果を以下の表2に示す。表に示すように、生成された塔頂生成物流は、(水の除去後)、>99.5重量%のクメンの純度を有していた。測定可能なクミルアルコール(<0.1重量%)は、クメン生成物において認められなかった。所望するときは、底部を取り出して、場合によりクメンで希釈し、付加的なクメンを生産するために固定床水素化反応器に送ることができる。
【0065】
【表2】

【0066】
II(B)(ii).Pd−モルデナイト触媒を使用した反応蒸留
上記例示的実施態様II(A)(ii)の手順によって製造した還元Pd−モルデナイト触媒を、窒素充満グローブボックスの内部で、1.5cmの内径を有する長さ31cmの厚壁Vigreux塔の還流域に負荷した。反応蒸留操作の装置及び操作に関しては、上記II(A)(i)及びII(A)(ii)で述べたのと同じ手順に従った。結果を以下の表3に示す。表に示すように、生成された塔頂生成物流は、水の除去後、>99.6重量%のクメンの純度を有していた。測定可能なクミルアルコール(<0.1重量%)は、クメン生成物において認められなかった。所望するときは、底部を取り出して、場合により蒸留してより軽い沸騰化合物を除去し(これを反応蒸留反応器に戻して再循環することができる)、次いで場合により新鮮クメン又はクメン生成物で希釈して、以下の例示的実施態様IIIで説明するように付加的なクメンを生産するために固定床水素化反応器に送ることができる。
【0067】
【表3】

【0068】
(III.例示的実施態様III(A)−クメン二量体の水素化分解)
上記II(B)(i)からの底流を蒸留して、クメン二量体に富む混合物を生産し、これをクメンで希釈して、以下の表4に示す条件下での水素化分解のために上記II(A)(i)で述べたT−366触媒を充填した固定床水素化に供給した。結果を以下の表5に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
(III.例示的実施態様III(B)−クメン二量体の水素化分解)
上記II(B)(i)からの底流を蒸留して、クメン二量体に富む混合物を生産し、これをクメンで希釈して、以下の表6に示す条件下での水素化分解のために上記II(B)(i)で述べた酸性パラジウム担持H−モルデナイト触媒を負荷した固定床水素化に供給した。結果を表7に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
【表7】

【0074】
本明細書及び特許請求の範囲において提供する範囲及び制限は、本発明を特に指し示し、明白に特許請求すると信じられるものである。しかし、同じか又は実質的に同じ結果を得るために実質的に同じようにして実施的に同じ機能を果たす他の範囲及び制限は、本明細書及び特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であると考えられることは了解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アルキルベンゼンを酸化して、アルキルベンゼンヒドロペルオキシドを含むストリームを得ること、
(ii)工程(i)で得たアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部をオレフィンと接触させて、アルキレンオキシドを含む生成物流を得ること、
(iii)工程(ii)の生成物流からアルキレンオキシド化合物を分離して、(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流及び(b)アルキレンオキシドを得ること、
(iv)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流の少なくとも一部を、反応蒸留域を有する反応器に供給し、反応器において並行して、
(a)アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流を反応蒸留域内で水素と接触させ、残留生成物流中のアルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換して、反応混合物を形成すること、及び
(b)分別蒸留によって反応混合物からアルキルベンゼンを分離すること
を含む、アルキレンオキシドを製造するための方法。
【請求項2】
(v)触媒反応域より上の位置で、アルキルベンゼンを含み、反応器からのフィード流よりも低いアルキルフェニルアルコール濃度を有するストリームを取り出すこと、
(vi)反応蒸留域より低い位置で、アルキルベンゼンの二量体を含む底流を反応器から取り出すこと、
(vii)(vi)からの底流中のアルキルベンゼンの二量体をアルキルベンゼンに変換すること、及び
(viii)(v)及び/又は(vii)から生成されたアルキルベンゼンの少なくとも一部を工程(i)に再循環すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルキルベンゼンのアルキル置換基が、3から10個の炭素原子を含む分枝アルキル置換基を含み、好ましくはアルキルベンゼン化合物が、(i)クメン、(ii)パラ、メタ又はオルト−ジ(イソプロピル)ベンゼン及び(iii)これらの混合物から成る群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)で生成されるアルキルベンゼンヒドロペルオキシドの少なくとも一部を、(a)フェノール化合物及び(b)ケトン化合物を含む混合物に変換する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)において、IVB族、VB族及びVIB族金属から成る群より選択される金属を含む触媒の存在下でアルキルベンゼンヒドロペルオキシドをオレフィンと接触させる、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(iv)(a)において、アルキルフェニルアルコールを含む残留生成物流を、IB族金属又はVIII族金属を含む触媒の存在下に反応蒸留域内で水素と反応させる、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(iv)(a)において、アルキルフェニルアルコールの約0.5重量%未満がi−プロピルシクロヘキサンに変換され、及び生成されるアルキルベンゼンの約0.05重量%未満がアルキルベンゼンの二量体に変換される、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(vii)において、アルキルベンゼンの二量体を、VIII族金属又はIB族金属、好ましくは銅、パラジウム、白金又はニッケルから成る群より選択される金属を含む触媒の存在下でアルキルベンゼンに変換する、請求項2から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
アルキレンオキシドがプロピレンオキシドであり、アルキルベンゼンがクメンを含み、工程(ii)のオレフィンがプロピレンを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
(a)アルキルフェニルアルコールを含むフィード流を、反応蒸留域を有する反応器に供給すること、
(b)反応器において並行して、
(i)アルキルフェニルアルコールを含むフィード流を、反応蒸留域内でVIII族又はIB族金属を含む触媒の存在下に水素と接触させ、アルキルフェニルアルコールをアルキルベンゼンに変換して、反応混合物を形成すること、及び
(ii)反応蒸留域より上の位置で、分別蒸留によって反応混合物からアルキルベンゼンを分離して、触媒反応域よりも上の位置で反応器からのフィード流よりも低いアルキルフェニルアルコール濃度を有する、アルキルベンゼンを含むストリームを生産すること、
(c)反応蒸留域より低い位置で、アルキルベンゼンの二量体を含む底流を反応器から取り出すこと、及び
(d)(c)からの底流中のアルキルベンゼンの二量体を、VIII族金属及びIB族金属から成る群より選択される金属を含む触媒の存在下でアルキルベンゼンに変換すること
の工程を含む、アルキルフェニルアルコールからアルキルベンゼンを生産するための方法。
【請求項11】
アルキルフェニルアルコールが、パラ−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、メタ−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、オルト−ジ(2−ヒドロキシル−2−プロピル)ベンゼン、4−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、3−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン、2−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)クメン及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2007−521295(P2007−521295A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518701(P2006−518701)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/020719
【国際公開番号】WO2005/005402
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】