説明

アルキレンジオキシチオフェン二量体および三量体、その製法およびその使用

【課題】導電性ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)の極めて迅速な形成を容易にする経路および中間生成物を提供することである。
【解決手段】前記課題は、一般式Iの化合物、一般式IIの化合物を触媒としてのルイス酸および/またはプロトン酸の存在で相互に反応させることを特徴とする一般式Iの化合物の製法、少なくとも1種の一般式Iの化合物が化学的または電気化学的方法により酸化的に重合されることを特徴とする一般式IIIの中性またはカチオンポリチオフェンの製法および一般式Iの化合物を含有する電気または電子部品により解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規3,4−アルキレンジオキシチオフェン二量体および三量体、その製造および導電性ポリマーとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役ポリマー化合物のクラスは、最近数十年、多数の出版物の対象となっている。これらは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。
【0003】
主鎖に沿ったπ電子のかなりの非局在化のために、これらのポリマーは興味深い(非線形)光学的性質を示し、かつ酸化または還元後にこれらは良好な電気導体である。それゆえ、これらの化合物はおそらく、多様な実際の適用範囲において、例えばデータ貯蔵、光学信号処理、電磁気干渉(EMI)の抑制および太陽エネルギー変換において、ならびに充電式電池、発光ダイオード、電界効果トランジスタ、プリント基板、センサおよび帯電防止材料において主導的かつ積極的役割を担う。
【0004】
公知のπ共役ポリマーの例には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレンビニレン)が含まれる。
【0005】
特に重要でかつ工業的に利用されるポリチオフェンは、ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)であり、前記チオフェンはその酸化された形で極めて高い伝導率を有し、かつ例えばEP 339 340 A2に記載されている。多数のポリ(アルキレン−3,4−ジオキシチオフェン)−誘導体、特にポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)誘導体、そのモノマー、合成および適用の概観は、L. Groenendaal, F. Jonas, D. Freitag, H. Pielartzik & J. R. Reynolds, Adv. Mater. 12 (2000) 481-494ページに記載されている。
【0006】
極めて高い伝導率は、モノマーのエチレン−3,4−ジオキシチオフェンを、酸化剤、例えば鉄(III)−トシレートと、溶液中で反応させて、酸化されたポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)の高導電性層を得ることによる、現場(in situ)−重合の方法論によっても達成される。この手順は、例えばキャパシタの製造に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP 339 340 A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
導電性ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)の製造に適切な極めて多くの技術が既にあるにもかかわらず、さらなる改善が必要である。特に、導電性ポリ(エチレン−3,4−ジオキシチオフェン)の極めて迅速な形成を容易にする経路および中間生成物が探求されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの課題は、場合により置換された新規3,4−アルキレンジオキシチオフェン二量体および三量体の提供により解決された。
【0010】
本発明は、一般式I
【化1】

[Aは場合により置換されたC〜C−アルキレン基であり、有利には場合により置換されたC〜C−アルキレン基であり、
Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1であり、かつ
nは0または1である]
の化合物を提供する。
【0011】
本発明の範囲内で、式Iの化合物に関して、A基は所望の箇所の数xでx個のR基により場合により置換され、かつ各々の場合にAの同じ炭素原子上の2個のR基が結合していてもよいものと解釈される。
【0012】
同様に、本発明は、種々のR基、R基の種々の数xならびに異なるnを有する化合物であってもよい一般式Iの化合物の混合物を提供する。
【0013】
本発明は、有利には、一般式I-aまたはI-b
【化2】

[式中、Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1であり、かつ
nは0または1である]
の化合物を提供する。
【0014】
これらは、より有利には一般式I−a−1またはI−b−1
【化3】

[式中、nは0または1である]
の化合物である。
【0015】
有利な実施態様では、これらは式I−a−1aまたはI−a−2a
【化4】

[式中、Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、かつ
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1である]
の二量体化合物、場合によりモノマー反応体との混合物の形である。
【0016】
さらに有利な実施態様では、これらは、式I−a−1bおよびI−a−2b
【化5】

[式中、Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1である]
の三量体化合物、場合によりモノマー反応体および/または式I-b-1aおよびI-b-2aの上記二量体生成物との混合物の形である。
【0017】
さらに有利な実施態様では、これらは、式I−b−1aおよびI−b−2a
【化6】

[式中、Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、かつ
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1である]
の二量体化合物、場合によりモノマー反応体との混合物の形である。
【0018】
さらに有利な実施態様において、これらは式I-b-1bおよびI-b-2b
【化7】

[式中、Rは、1個以上の同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、有利には線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C14−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基、有利には場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基であるか、または1個以上のヒドロキシル基であり、かつ
xは0〜8の整数であり、有利には0〜6、より有利には0または1である]
の三量体化合物、場合によりモノマー反応体および/または式I−b−1aおよび/またはI−b−2aの上記二量体生成物との混合物の形である。
【0019】
本発明の範囲内で、C〜C−アルキレン基Aは、メチレン、エチレン、n−プロピレンまたはn−ブチレンである。本発明の範囲内で、線状または分枝状C〜C14−アルキル基には、メチル、エチル、n−またはiso−プロピル、n−、iso−、sec−またはtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシルおよびn−テトラデシルが含まれ、かつC〜C18−アルキル基には、n−ヘキサデシルまたはn−オクタデシルが含まれ、C〜C12−シクロアルキル基の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルが含まれ、C〜C14−アリール基の例には、フェニル、o−、m−、およびp−トリル、ベンジル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリル、メシチルおよびナフチルが含まれ、ならびにC〜C−ヒドロキシアルキル基の例には、ヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチルおよび4−ヒドロキシブチルが含まれる。上記のリストは、本発明を模範的に説明するために役立つのであって、これに限定されるべきではない。
【0020】
上記の基の有効な置換基には、多くの有機基、例えば、ハロゲン、特にフッ素、塩素または臭素ならびにエーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カーボネート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基および/またはカルボキシルアミド基が含まれる。
【0021】
意外にも、本発明による化合物は、一般式II
【化8】

の化合物または化合物の混合物を、触媒としてのルイス酸および/またはプロトン酸の存在で相互に反応させることにより簡単な方法で製造される。
【0022】
従って、本発明は、一般式I
【化9】

[式中、A、R、xおよびnは、それぞれ一般式Iで記載したものを表す]
の化合物の製法を提供し、前記方法は、一般式II
【化10】

[式中、A、Rおよびxは、それぞれ一般式Iで記載したものを表す]
の化合物を、触媒としてのルイス酸および/またはプロトン酸の存在で相互に反応させることにより特徴付けられる。
【0023】
本発明による方法の実施は、一般式IIのモノマー化合物と本発明による一般式Iの化合物との混合物の形で生じてもよく、同様に本発明の主題の部分を構成する。これらは、場合により本発明による化合物の異性体混合物、ラセミ化合物または純粋な異性体であってもよく、場合により、式IIのモノマー化合物との混合物の形であってもよい。これらの混合物は、通常の分離法、例えば、カラムクロマトグラフィーまたは分別晶出または蒸留を用いて精製してもよい。有利には、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより分離し、次に本発明による化合物の反応体/生成物および異性体混合物の分離において分別晶出を適用することが挙げられる。カラムクロマトグラフィーによる分離用に有効な溶離液の例には、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、塩化メチレン、クロロホルムならびにこれらの混合物、有利には塩化メチレンが含まれる。
【0024】
本発明による方法の有利な実施態様において、式IIの化合物は、モノマー化合物II−a〜II−d
【化11】

[式中、Rとxは上記の意味を有する]
またはこれらの混合物である。
【0025】
有利な実施態様において、本発明による方法を触媒としてのルイス酸、より有利には非酸化ルイス酸の存在で実施して一般式Iの化合物を製造することが挙げられる。
【0026】
本発明による方法において触媒として使用される有利なルイス酸には、三ハロゲン化ホウ素および三ハロゲン化アルミニウム、三ハロゲン化リン、四ハロゲン化チタンまたは四ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化スズ(IV)、ハロゲン化ヒ素およびハロゲン化アンチモン、五ハロゲン化タンタルおよびハロゲン化亜鉛、有利には三フッ化ホウ素、五塩化アンチモン、三塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズおよび塩化スズが含まれる。極めて有利には、三フッ化ホウ素(例えば、エーテラートの形、または例えばテトラヒドロフランとの他のBF錯体の形)、五塩化アンチモン、四塩化スズおよび四塩化チタンの使用を挙げることができる。
【0027】
さらに有利な実施態様において、本発明による方法を触媒としてのプロトン酸の存在で実施して一般式Iの化合物を製造する。
【0028】
本発明による方法において触媒として使用できる有利なプロトン酸には、スルホン酸、たとえばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ショウノウスルホン酸およびポリ(スチレンスルホン酸)、カルボン酸、例えば、トリフルオロ酢酸およびトリクロロ酢酸、無機酸、例えば、HCl、硫酸およびリン酸および超酸が含まれる。超酸とは、その酸性度が100%スルホン酸よりも大きいプロトン酸である(Gillespie, Adv. Phys. Org. Chem. 9, 1-24 (1972))。このような酸は、例えば、P.-L- Fabre, J. Devynck and B. Tremillon, Chem. Rev. 82, 591 - 614 (1982)、 G. A. Olah, Angew. Chem. 85, 183 - 225 (1973)または G. A. Olah, Top. Curr. Chem. 80, 19 - 88 (1979)に開示されている。超酸の例には、"マジック酸"であるFSOH・SbF, FSOH・SbF・SO、HSbF、HBF、H[B(OSOH)]、HTaF、HFSnClが含まれる。
【0029】
スルホン酸、カルボン酸および超酸から成る群から選択されるプロトン酸の使用が特に有利に挙げられ、極めて有利には、本発明による方法における触媒として、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ショウノウ−10−スルホン酸またはトリフルオロ酢酸の使用が挙げられる。
【0030】
本発明による方法において使用されるルイス酸およびプロトン酸の量は、二量化および三量化すべきチオフェンモノマーに対して、酸0.01〜100質量%である。ルイス酸の量は、一般的には、低い質量%の範囲にあり、かつプロトン酸の量は、一般的には高い質量%の範囲内にある。有利には、ルイス酸0.01〜50質量%またはプロトン酸0.5〜80質量%を使用し、特に有利にはルイス酸0.1〜30質量%またはプロトン酸1〜50質量%を使用することが挙げられる。
【0031】
本発明による方法における適切な溶剤の例は、ルイス酸を触媒として使用する場合には、ハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、塩化メチレンまたはクロロホルムが含まれ、かつプロトン酸を触媒として使用する場合には、プロトン酸の溶解度に応じて、同様にハロゲン化脂肪族炭化水素またはアルコール、例えば、メタノール、エタノールまたはn−ブタノール、または芳香族、例えば、トルエン、キシレンまたはクロロベンゼンが含まれる。例えば、一般式IIの液体チオフェンモノマーを反応させる場合には、本発明による方法は溶剤を用いずに実施できる。
【0032】
本発明の範囲内で、上記かつ下記の反応は、一般式IIの化合物を触媒としてのルイス酸および/またはプロトン酸の存在で、本発明により相互に反応させ、本発明による一般式Iの化合物にすることを指す。
【0033】
本発明による一般式Iの化合物を得る反応は、種々の温度で実施でき、かつ収率は反応させるべき一般式IIのチオフェンモノマーに応じて様々な範囲で温度に依存する。一般的には、反応を−30℃〜100℃、有利には−5〜60℃、より有利には0℃〜40℃の温度で実施する。
【0034】
本発明による方法は、空気下または保護ガス、例えば、窒素またはアルゴン下で実施することもできる。酸化による副反応を回避するために、保護ガスを使用して収率と純度を上げるのが有利である。
【0035】
反応時間は、温度および反応させるべき一般式IIの化合物に応じる。本発明による化合物を生じる反応が、使用される触媒に応じて平衡反応である得るため、反応混合物中に存在する本発明による化合物の割合を適切な分析法、例えば、H NMR分光法により追跡し、かつ反応を有利な時点で終了させるのが有利である。反応は、例えば、塩基、有利にはNaCO水溶液を添加するか、またはアルコール、有利にはエタノールを添加することにより終了させ、引き続きまたは同時に水を添加するか、または水だけを添加することにより終了させてもよい。
【0036】
本発明による一般式I-aの化合物に変換することができる一般式IIのモノマー化合物の例は、次のものである:
2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(以後、EDTまたはエチレン−3,4−ジオキシチオフェン、化合物II-aと称する)、
2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−メチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=メチルかつx=1である)、
2−エチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−エチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=エチルかつx=1である)、
2−n−プロピル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−プロピル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−プロピルかつx=1である)、
2−n−ブチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−ブチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−ブチルかつx=1である)、
2−n−ペンチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−ペンチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−ペンチルかつx=1である)、
2−n−ヘキシル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−ヘキシル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−ヘキシルかつx=1である)、
2−n−ヘプチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−ヘプチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−ヘプチルかつx=1である)、
2−n−オクチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−オクチル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−オクチルかつx=1である)、
2−(2−エチルヘキシル)−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−(2−エチルヘキシル)−EDT、化合物II-b、ここで、R=2−エチルヘキシルかつx=1である)、
2−n−ノニル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−ノニル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−ノニルかつx=1である)、
2−n−テトラデシル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−テトラデシル−EDT、化合物II-b、ここで、R=n−テトラデシルかつx=1である)、
2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン−2−イルメタノール(化合物II-b、ここで、R=CHOHかつx=1である)
このグループからの有利な例は、2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(EDT)、2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−メチル−EDT)および2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン−2−イルメタノールである。
【0037】
このグループからの特に有利な例は、2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(EDT)である。
【0038】
本発明による一般式I-bの化合物に変換できる一般式IIのモノマー化合物の例は、次のものである:
3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン(プロピレン−3,4−ジオキシチオフェン、PDT、化合物II-c)、
3−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン(3−メチル−PDT、化合物II-d、ここで、R=メチルかつx=1である)、
3,3−ジメチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン(3,3−ジメチル−PDT、化合物II-d、ここで、R=メチルかつx=2である)、
2−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン(2−メチル−PDT、化合物II-d、ここで、R=メチルかつx=1である)
3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン−3−オール(化合物II-d、ここで、R=OHかつx=1である)。
【0039】
このグループからの有利な例は、3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]−ジオキセピン(PDT)および3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン−3−オールである。
【0040】
明記された全ての化合物は、相互の混合物の形で使用してもよく、これは、種々の二量体および三量体の混合物、または種々のモノマーから成る混合された二量体および三量体または両方のタイプの化合物から成る混合物(すなわち、一定のモノマーを有する混合物および種々のモノマーから成る混合物)を同じ程度に生じる。
【0041】
本発明による新規化合物の製造およびそれらを製造するための本発明による方法は、極めて意外である。それというのも、A. K. Mohanakrishnan, A. Hucke, M. A. Lyon, M. V. Lakshmikantham and M. P. Cava, Tetrahedron 55 (1999), p. 11745 - 11754ページに、例えば、エチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT、化合物II-a)は、強酸条件下またはルイス酸の存在で、著しい分解反応に入ると記載されているからである。
【0042】
本発明による一般式Iの化合物は、化学または電気化学的方法により、酸化的にポリチオフェンに変換してもよい。有効な化学的酸化剤は、ポリチオフェンの製造に関して先行技術から公知もの、例えば、鉄−III化合物、たとえばFeClまたは鉄−IIIトシレート、過マンガン酸カリウムまたはMnO、二クロム酸カリウムまたはペルオキソジスルフェート(ペルスルフェート)、たとえば、NaまたはKまたはHである。
【0043】
従って、さらに本発明は、中性またはカチオンポリチオフェンを製造するための本発明による一般式Iの化合物の使用を提供する。
【0044】
ポリチオフェンは、製法により既に半導電性ないし高導電性であってもよく、または後から酸化することによりこれらの特性を得ても良い。本発明の範囲内で、半導電性とは、10 S/cm未満の導電率を有するポリチオフェンを指し、かつ10 S/cmに等しいかまたはこれ以上の導電率を有するものに対して導電性ないし高導電性であるが、しかし、この境界は、チオフェンの繰り返し単位の置換基のパターンに応じて、すなわち、A、Rおよびxの定義に応じて上または下にシフトしてもよい。
【0045】
従って、さらに本発明は、一般式Iの化合物が化学または電気化学的方法により酸化的に重合されることに特徴付けられる一般式III
【化12】

[式中、
A、Rおよびxは、それぞれ一般式Iで記載したものを表し、かつ
mは2〜200の整数である]
の中性またはカチオンポリチオフェンの製法を提供する。
【0046】
本発明の範囲内で、ポリチオフェンという用語はオリゴチオフェンも含むため、ポリチオフェンは、mが少なくとも2であり、最大でも200である一般式IIIの全ての化合物を含む。
【0047】
一般式IIIのポリチオフェンは、中性またはカチオンであってもよい。ポリチオフェンがカチオンである場合には、ポリチオフェンポリカチオンの正の電荷は、式III中には示されない。それというのも、これらの正確な数と位置が明白に決定出来ないからである。しかし、正の電荷の数は少なくとも1であり、最大でもm+2である。
【0048】
正の電荷を補正するために、ポリチオフェンのカチオン型は、アニオン、有利にはポリアニオンを対イオンとして含有する。
【0049】
使用されるポリアニオンは、有利には高分子のカルボン酸、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはポリマレイン酸、および高分子のスルホン酸、例えば、ポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸のアニオンである。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と、他の重合可能なモノマー、例えば、アクリル酸エステルまたはスチレンとのコポリマーであってもよい。
【0050】
ポリスチレンスルホン酸のアニオンを対イオンとして用いるのが特に有利である。
【0051】
ポリアニオンを導出する多価酸の分子量は有利には1000〜2000000、より有利には2000〜500000である。多価酸およびそれらのアルカリ金属塩は、例えば、ポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸として市販されている。
【0052】
本発明による化合物の高い反応性により、酸化重合法が特に簡単かつ迅速に進行し、これは、先行技術から公知の他のモノマーの酸化重合法において有利である。
【0053】
本発明による一般式Iの化合物、ならびにこれらから製造される中性および/またはカチオンポリチオフェンは、有機の電気または電子部品の製造用、例えば、光素子、光電池または有機トランジスターの製造用、電子部品の包装用およびクリーンルーム包装用のプラスチックフィルムを改質するため、ブラウン管の帯電防止改良処理用、写真フィルムの帯電防止改良処理用、透明ヒーターとして、透明電極として、回路基板としてまたは電気的に色付け可能な窓ガラス用に利用されてもよい。酸化重合は、例えば、導電層を、ガラス、セラミック、プラスチックなどのような非導電性基材上で製造することを可能にする。キャパシタ中で、このように製造された層はカソードの役割をすると想定される。
【0054】
本発明による一般式Iの化合物は、例えば、アルコール、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドン等のような有機溶剤から成る酸化剤との混合物の形で、ナイフコーティング、スピンコーティング、流し込み、含浸などにより、基材上に塗布される。
【0055】
本発明による一般式Iの化合物および本発明による方法により製造された一般式Iの化合物は、しばしば塩化メチレン、クロロホルムまたはテトラヒドロフランのような有機溶剤中に溶解する淡黄色の油であるか、またはベージュの固体である。従って、これらは例えば電子工業において使用するために、有機溶液から簡単に処理することができる。中程度の酸化剤を使用したとしても、対イオンの存在で、このような溶液から優れた導電率を有するカチオンポリチオフェンまたはポリチオフェン層を製造することもできる。
【0056】
さらに本発明は、電気または電子部品の部分を製造するための一般式Iの化合物の使用を提供する。
【0057】
また、本発明により、上記の酸化重合法により本発明による一般式Iの化合物から作られた一般式IIIの化合物を、電気および電子部品の部分として、特にキャパシタ中のカソードとして使用する。例えば、これらを弁金属、例えば、アルミニウム、ニオブ、タンタルまたはこれらの合金から作られたアノードを含有するキャパシタ中のカソードとして使用してもよい。
【実施例】
【0058】
以下に使用された反応体(EDTおよびアルキル置換EDT誘導体)は、市販されているか、または相応する3,4−ジアルコキシチオフェン(例えば、自体公知の方法により容易に入手可能である3,4−ジ−n−プロポキシチオフェン)をビシナルな1,2−ジオールでエステル交換により製造してもよい。
【0059】
アルキル置換EDT誘導体の一般的な合成法
例えば、アルキル置換EDT誘導体の合成は、トルエン中、p−トリエンスルホン酸を触媒として用いてN下に3,4−ジ−n−プロポキシチオフェンとジェミナルな1,2−ジオールを1:2のモル比(ジオールの100%過剰)で、2時間加熱させて還流し、次にトルエン/n−プロパノールを徐々に留去し、かつ連続的にキシレンと交換するようなエステル交換により行うことができる。反応は、留去されたキシレンがそれ以上n−プロパノール(例えば、屈折率によりモニターする)を含有しなくなるか、またはそれ以上3,4−ジ−n−プロピルオキシチオフェンが薄層クロマトグラフィーにより検出されなくなる時間まで継続させる。場合により、留去されたキシレンを連続的に新しいキシレンと交換する。溶液が冷却した後に、これを水で洗浄して中性にし、NaSO上で乾燥させ、かつシリカゲル上でトルエン/n−ヘキサン(1:1)を用いてクロマトグラフィー処理する。溶剤を除去した後、アルキル置換EDT誘導体が得られる。
【0060】
実施例1
BFを触媒として使用する2,2’,3,3’,5,7-ヘキサヒドロ-5,5’-ビチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(I-a-1a,EDT二量体)および2,2’,2’’,3,3’,3’’,5,5’’,7,7’’−デカヒドロ−5,5’:7’,5’’−ターチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(I-a-1b,EDT三量体)の製造
塩化メチレン20ml中のBFエーテラート0.04ml(EDTに対して、BF 0.036mmolまたは三フッ化ホウ素エーテラート1.8質量%に相当)の溶液2mlを、0℃で塩化メチレン1.5ml中の2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(エチレン−3,4−ジオキシチオフェンまたはEDT;Baytron(R) M, H. C. Starck GmbH)0.284g(2mmol)の溶液に添加した。反応混合物をアルゴン雰囲気下、0℃で4時間撹拌した。次に、エタノール2mlを添加し、次に水4mlを添加することにより反応を停止した。有機相を除去し、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。塩化メチレンを溶離液として用いて、シリカゲル上で残留物をカラムクロマトグラフィーにより分離した。
【0061】
フラクション1:EDT0.128g(使用された反応体45.5%)
フラクション2:ラセミ化合物としての2,2’,3,3’,5,7-ヘキサヒドロ-5,5’-ビチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(EDT二量体)0.045 g(理論値の16%)。
【0062】
元素分析:計算値: C 50.69%; H 4.25%; S 22.55% (C12H12OS)
実測値: C 50.49%; H 4.45%; S 22.59%
マススペクトル (70 eV); m/z, (rel. intensity): 284 (100.0%), M:251 (66.7%); 223 (11.0%); 195 (27.9%); 186 (18.4%); 185 (15.0%); 168 (11.7%); 155 (15.4%); 154 (19.2%); 143 (4.0%), EDT-H 142 (14.9%), EDT
H NMR (CDC1, δ in ppm, J in Hz): δ; 3.60 (dd, 1H, J= 11.93, J= 1.96); 3.80 (dd, 1H, J= 11.93, 5’J= 5.48); 4.08 (m, 4H); 4.18 (m, 4H); 5.44 (dd, 1H, J= 1.96, 5’J= 5.48); 6.26 (s, 1H);
13C{H}NMR (CD, δ in ppm): δ: 30.54; 42.42; 64.28; 64.39; 98.27; 120.58; 129.89; 130.68; 139.69; 141.70.。
【0063】
フラクション 3:2,2’,2’’,3,3’,3’’,5,5’’,7,7’’-デカヒドロ-5,5’:7’,5’’-ターチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(EDT三量体)0.018g(理論値の6%)、立体異性体混合物。
【0064】
マススペクトル (70 eV); m/z, (rel. intensity): 426 (54.8%), M 394 (22.2%), MS; 393 (22.8%); 284 (88.2%), MEDT; 283 (64.4%); 282 (93.5%); 251 (842.0%); 223(6.9%); 195 (15.7%); 186 (16.4%); 185 (80.6%); 181 (7.1%); 168 (7.6%); 155 (14.0%); 153 (8.9%); 142 (73.8%), EDT.
13C{H}NMR (CD, δ in ppm):δ: 30.53; 30.60; 42.47; 42.53; 64.11; 64.18; 64.20; 64.24; 64.35; 118.93; 119.19; 129.71; 129.79; 130.59; 130.67; 138.04; 139.02。
【0065】
ヘキサン/ジエチルエーテル/塩化メチレン混合物からのフラクション3の再結晶は、EDT三量体のR,S異性体3mgを生じた。
H NMR (CDCl, δ in ppm, J in Hz): δ: 3.59 (dd, 2H, J= 11.94, J= 1.96); 3.77 (dd, 2H, J=11.94, 5’J= 5.48); 4.08 (m, 8H), 4.18 (br. s, 4H); 5.43 (dd, 2H, 5’J= 1.96, J=5.48)。
【0066】
この再結晶からの母液の蒸発によりEDT三量体のR,R/S,S異性体混合物の濃縮試料14mgが得られた。
【0067】
主要成分のH NMR (CDCl, δ in ppm, J in Hz) : δ: 3.58 (dd, 2H, J=12.08, J=1.59); 3.78 (dd, 2H, J=12.00, 5’J= 5.40); 4.07 (m, 8H), 4.18 (m, 4H); 5.42 (dd, 2H, J=1.43, 5’J=5.40)。
【化13】

【0068】
実施例2
トリフルオロ酢酸を触媒として使用するEDT二量体およびEDT三量体の製造
塩化メチレン18ml中のトリフルオロ酢酸0.426gを18℃で塩化メチレン13.5ml中のエチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT)8.52g(0.06mol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、18℃で48時間撹拌した。その後に、反応を5%NaCO水溶液30mlで強力に撹拌することにより停止した。有機相を除去し、水で洗浄して中性にし、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。塩化メチレンを溶離液として用いて、シリカゲル上で残留物(8.45g)をカラムクロマトグラフィー処理した。
【0069】
フラクション1:EDT4.21g(使用された反応体49.4%)
フラクション2:CDCl中、H NMRにより同定したEDT二量体2.22g(理論値の26.1%)。スペクトルは、例1で記載したものと同じであった。ベージュ色の結晶、融点 115-119℃。
【0070】
フラクション3:CDCl中、H NMRにより同定した異性体混合物としてのEDT三量体1.0g(理論値の11.7%)。スペクトルは、例1でR,SおよびR,R/S,S異性体に関して報告されたデータの重ね合わせに一致した。ベージュ色の結晶。
【0071】
実施例3
TiClを触媒として使用するEDT二量体およびEDT三量体の製造
塩化メチレン18ml中の四塩化チタン0.426gを、20℃で塩化メチレン13.5ml中のエチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT)8.52g(0.06mol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、20℃で8時間撹拌した。その後に、5%NaCO水溶液30mlで強力に撹拌することにより反応を停止した。有機相を塩化メチレン20mlで希釈し、かつ除去し、水で洗浄して中性にし、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。塩化メチレンを溶離液として用いて、シリカゲル上で残留物(8.0g)をカラムクロマトグラフィー処理により分離した。
【0072】
フラクション1:実質的にEDT
フラクション2:CDCl中、H NMRにより同定したEDT二量体1.37g(理論値の16.1%)。スペクトルは、例1で記載したものと同じであった。ベージュ色の結晶、融点 113-114℃。
【0073】
フラクション3:CDCl中、H NMRにより同定した異性体混合物としてのEDT三量体0.96g(理論値の11.3%)。スペクトルは、例1で挙げられたR,SおよびR,R/S,S異性体に関するデータの重ね合わせに一致した。ベージュ色の結晶。
【0074】
実施例4
BFを触媒として使用する式I-a-2a(R=メチル、x=1)の化合物(2−メチル−EDT二量体)および式I-a-2b(R=メチル、x=1)の化合物(2−メチル−EDT三量体)の製造
塩化メチレン20ml中のBFエーテラート0.12ml(メチル−EDTに対して、BF 0.95mmolまたはBFエーテラート4.3質量%に相当)を、0℃で塩化メチレン15ml中の2−メチル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−メチル−EDT;上記の合成法により製造)3.124g(20mmol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、0〜2℃で4時間撹拌した。その後に、エタノール20mlおよび水40mlを添加することにより反応を停止した。有機相を除去し、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。塩化メチレンを溶離液として用いて、シリカゲル上で残留物をカラムクロマトグラフィー処理により分離した。
【0075】
フラクション1:反応体1.34g(使用された2−メチル−EDT42.9%)
フラクション2:H NMRにより同定した2−メチル−EDT二量体、異性体混合物0.79g(理論値の25.3%):
H NMR (CDC1, δ in ppm): δ: 1.25〜1.34 (several s, 3H); 3.55〜3.80 (m, 2H);
3.8〜3.9 (m, 2H); 4.0〜4.35 (m, 4H); 5.40〜5.47 (m, 1H); 6.24 (several s lying close together, 1H);
フラクション3:少量の2−メチル−EDT二量体で汚染されたH NMR による2−メチル−EDT三量体0.34g(理論値の10.9%)。
【0076】
実施例5
BFを触媒として使用する式I-a-2a(R=n−テトラでシル、x=1)の化合物(2−テトラデシル−EDT二量体)および式I-a-2b(R=n−テトラデシル、x=1)の化合物(2−テトラデシル−EDT三量体)の製造
塩化メチレン20ml中のBFエーテラート0.06ml(2−テトラデシル−EDTに対して、BF 0.47mmolまたはBFエーテラート2.0質量%に相当)を、0℃で塩化メチレン15ml中の2−n−テトラデシル−2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン(2−n−テトラデシル−EDT;上記の合成法により製造)3.386g(10mmol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、0℃で4時間撹拌した。その後に、エタノール20mlおよび水40mlを添加することにより反応を停止した。有機相を除去し、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)により、2−テトラデシル−EDT=反応体47.2質量%、2−テトラデシル−EDT二量体42.1質量%および2−テトラデシル−EDT三量体10.7質量%から成る残留物3.34g(δ=6.20〜6.24ppmおよび5.37〜5.5ppmでの吸収量の測定)が得られた。
【0077】
実施例6
BFを触媒として使用する2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメタノール80%と3,4-ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン−3−オール20%の混合物の反応
塩化メチレン60ml中のBFエーテラート0.12ml(チオフェン反応体混合物に対して、BF 0.95mmolまたは三フッ化ホウ素エーテラート1.9質量%に相当)を、0℃で塩化メチレン45ml中の2,3−ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメタノール80%と3,4-ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン−3−オール20%の混合物(Baytron(R) M OH−試験製品)CH 8020, H. C. Starck GmbH)3.444g(20mmol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、0℃で4時間撹拌した。その後に、エタノール60mlおよび次に水120mlを添加することにより反応を停止した。有機相を除去し、かつ20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)による概算で、反応体約55質量%、二量体30質量%、三量体15質量%から成る残留物3.21g(δ=6.25〜6.3ppmおよび5.35〜5.55ppmでの吸収量の測定)が得られた。スペクトルの複雑性ゆえに、個々の化合物またはアダクトの構造を測定できなかった。6.52ppmでの吸着は、3,4−ジヒドロ−2H−チエノ[3,4-b][1,4]ジオキセピン−3−オール(最大2質量%)の二量体構造の存在を示唆する。
【0078】
実施例7
エタノール中のp−トルエンスルホン酸を触媒として使用するEDT二量体およびEDT三量体の製造
エチレン−3,4-ジオキシチオフェン(EDT)2g(14mmol)とp−トルエンスルホン酸1gをエタノール50ml中に溶解し、かつN雰囲気下、20℃で10日間撹拌した。その後に、5%NaCO水溶液30mlを添加することにより反応を停止した。溶液を塩化メチレンを使用して抽出し、かつ有機相を水で洗浄して中性にし、20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)により、EDT二量体5.2質量%および極微量のEDT三量体を含有する残留物1.65g(NMRスペクトルデータは例1の純粋な化合物に相当した)が得られた。
【0079】
実施例8
メタンスルホン酸を触媒として使用するEDT二量体とEDT三量体の製造
塩化メチレン180ml中のメタンスルホン酸0.426gを、20℃で塩化メチレン135ml中のエチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT)8.52g(0.06mol)の溶液に添加した。反応混合物をN雰囲気下、20℃で6時間撹拌した。その後に、5%NaCO水溶液30mlで強力に撹拌することにより反応を停止した。有機相を除去し、水で洗浄して中性にし、20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)により、EDT二量体6.3質量%を含有する残留物(8.5g)が得られた(NMRスペクトルデータは例1で単離された混合物に相当した)。
【0080】
実施例9
SnClを触媒として使用するEDT二量体およびEDT三量体の製造
塩化メチレン18ml中の塩化スズ(IV)0.426gを、塩化メチレン13.5ml中のエチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT)8.52g(0.06mmol)の溶液に20℃で30分以内に滴下した。反応混合物をN雰囲気下、20℃で6時間撹拌した。その後に、5%NaCO水溶液30mlで強力に撹拌することにより反応を停止した。有機相を塩化メチレン20mlで希釈し、かつ除去し、水で洗浄して中性にし、20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)により、EDT60.5質量%、EDT二量体34.2質量%およびEDT三量体5.3質量%から成る残留物(6.99g)が得られた(NMRスペクトルデータは例1で単離された混合物に相当した)。
【0081】
実施例10
SnClを触媒として使用するEDT二量体およびEDT三量体の製造
塩化メチレン18ml中の塩化アンチモン(V)0.296gを、塩化メチレン13.5ml中のエチレン−3,4−ジオキシチオフェン(EDT)8.52g(0.06mmol)の溶液に20℃で30分以内に滴下した。反応混合物をN雰囲気下、20℃で8時間撹拌した。その後に、5%NaCO水溶液30mlで強力に撹拌することにより反応を停止した。有機相を塩化メチレン20mlで希釈し、かつ除去し、水で洗浄して中性にし、20mbarで回転エバポレーターにおいて溶剤を除いた。H NMR(CDCl)により、EDT37.2質量%、EDT二量体49.0質量%およびEDT三量体13.8質量%から成る残留物(8.5g)が得られた(NMRスペクトルデータは例1で単離された混合物に相当した)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】

[Aは場合により置換されたC〜C−アルキレン基であり、
Rは、同じまたは異なる、線状または分枝状の、場合により置換されたC〜C18−アルキル基、場合により置換されたC〜C12−シクロアルキル基、場合により置換されたC〜C14−アリール基、場合により置換されたC〜C−ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシル基であり、
xは0〜8の整数であり、
nは0または1である]
の化合物。
【請求項2】
一般式I
【化2】

[式中、A、R、xおよびnは、それぞれ請求項1で記載したものを表す]
の化合物の製法において、
一般式II
【化3】

[式中、A、R、xは、それぞれ請求項1で記載したものを表す]
の化合物を、触媒としてのルイス酸および/またはプロトン酸の存在で相互に反応させることを特徴とする、一般式Iの化合物の製法。
【請求項3】
一般式III
【化4】

[式中、A、R、xは、それぞれ請求項1または2で記載したものを表し、
mは2〜200の整数である]
の中性またはカチオンポリチオフェンの製法において、請求項1または2の少なくとも1種の一般式Iの化合物が、化学的または電気化学的方法により酸化的に重合されることを特徴とする、一般式IIIの中性またはカチオンポリチオフェンの製法。
【請求項4】
請求項1に記載の一般式Iの化合物を含有する、電気または電子部品。

【公開番号】特開2010−260866(P2010−260866A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−122479(P2010−122479)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【分割の表示】特願2003−188548(P2003−188548)の分割
【原出願日】平成15年6月30日(2003.6.30)
【出願人】(507239651)ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (59)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】