説明

アルキンによって補助されたカーボンナノ構造物の成長

本発明は、ナノチューブを包含するナノ構造物の形成および処理に関する。いくつかの実施形態は、比較的穏やかな条件(例えば、低温)を使用するナノ構造物成長の方法を提供する。場合により、本発明の方法は、ナノ構造物形成の効率(例えば、触媒効率)を向上させることもあり、ナノ構造物形成中の所望されない副生成物(揮発性有機化合物および/または多環式芳香族炭化水素を包含する)の生成を減少させることもある。そのような方法は、ナノ構造物形成に関連したコストをを減少させることができ、環境および公衆衛生および安全における、ナノ構造物製造の有害作用も減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府によって資金援助された研究または開発に関する声明
この発明は、以下の政府の契約の下での支援を受けてなされた:National Science Foundationによって付与されたCMMI0800213。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願
この出願は、米国特許法§119(e)の下、2009年6月17日に出願された、同時係属している米国仮出願第61/187,704号への優先権を主張する。この内容は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0003】
発明の分野
本発明は、ナノ構造物および関連する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
カーボンナノチューブ(CNT)の工業および実験室規模生産は、過去10年間で増加しており、現在の生産量は世界的に1,300トン年−1である(トン=10g)(例えば、2年ごとに倍増の速度で、CNT質量:US$比は次の10年間変化しないと想定)。触媒化学蒸着(CVD)を包含する大量CNT生産の多くの既知の方法は、約3%以下の導入炭素供給原料がCNTに変換されるという非効率に悩んでいる。ある場合には、未使用供給原料が次のナノチューブ成長に循環されるが、他の多くの場合は、流出物およびそれに関連した副生成物が大気に放出される。これらの未処理材料は、41,000トン(41×10g)の炭質材料の年間放出量に達すると考えられ、これは、生産が予想通りに加速すれば、次の10年以内に1,300,000トン年−1(1.3x1012g年−1)に拡大しうる。
【0005】
さらに、多くの方法において、不可欠CNT前駆体分子を生じるために、供給原料ガスを急速CNT成長のために高温で加熱する必要がある。最近の研究は、エテン基材CVD成長からの流出物(即ち、一般的CNT供給原料ガス(C/H)の熱処理による)が、空気、水および土壌の質への脅威となるいくつかの化合物を含有することを示している。これらは、有毒物質(例えば、ベンゼン、1,3−ブタジエン、および芳香族炭化水素)、温室効果ガス(例えば、メタン)、およびスモッグ形成に関与し、呼吸器疾患を悪化させる化合物を包含する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、カーボンナノ構造物を形成する方法を提供する。いくつかの実施形態において、該方法は、ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、触媒材料と接触させて、ナノ構造物の形成を生じる工程を含み、該方法において、ナノ構造物前駆体材料は少なくとも1つの炭化水素を含み、反応物蒸気は、触媒材料との接触前に、400℃未満の温度に維持される。
【0007】
いくつかの実施形態において、該方法は、ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、触媒材料と接触させて、ナノ構造物の形成を生じる工程を含み、該方法において、反応物蒸気は、酸素含有化学種または窒素含有化学種を実質的に含有せず、ナノ構造物は、(約1×10グラムのナノ構造物)/(触媒材料のグラム数)以上の触媒効率で形成される。
【0008】
いくつかの実施形態において、該方法は、下記の工程:ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、反応室に導入する工程であって、該反応室が触媒材料を含む工程;該反応物蒸気を触媒材料と接触させて、ナノ構造物、および少なくとも1つの炭素含有副生成物を含む生成物蒸気の形成を生じる工程;ならびに、生成物蒸気を反応室から流出させる工程;を含み、該方法において、生成物蒸気は、少なくとも1つの炭素含有副生成物を、ナノ構造物の形成中に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満の量で含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1−1】図1は、熱生成化合物、例えば、(a)メタン、(b)ベンゼン、および(c)メチルアセチレンと、VA−MWCNT成長速度の増加との相関関係を示す種々のグラフを示す。
【図1−2】図1Dは、いくつかの熱生成化合物(メタン、ビニルアセチレン、ベンゼン、およびメチルアセチレンを包含する)の分圧の関数としての、CNT成長速度のグラフを示す。
【図2】図2は、VA−MWCNT成長における、化学構造物の作用を示す種々のグラフを示し、ここで、各化学構造物は、非加熱エテン/水素/ヘリウムの混合物に添加される。
【図3】図3は、ナノ構造物形成過程の間の、種々の反応物および副生成物(揮発性有機化合物(VOC)を包含する)の分圧のプロットを示す。
【図4】図4は、ナノ構造物形成過程の間の、種々の反応物および副生成物(多環式芳香族炭化水素(PAH)を包含する)の分圧のプロットを示す。
【図5−1】図5は、アセチレン補助CNT成長の間の、(a)エテン(またはエチレン)分圧の関数としてのナノ構造物成長速度、(b)エチレン分圧の関数としての触媒寿命、(c)水素分圧の関数としてのナノ構造物成長速度、および(d)水素分圧の関数としての触媒寿命のプロットを示す。
【図5−2】図5は、アセチレン補助CNT成長の間の、(a)エテン(またはエチレン)分圧の関数としてのナノ構造物成長速度、(b)エチレン分圧の関数としての触媒寿命、(c)水素分圧の関数としてのナノ構造物成長速度、および(d)水素分圧の関数としての触媒寿命のプロットを示す。
【図6A】図6は、(a)1つの実施形態による反応器システムの概略図、および(b)供給原料および触媒の非干渉熱制御を有する大気圧コールドウォールCVD反応器の概略図を示す。
【図6B】図6は、(a)1つの実施形態による反応器システムの概略図、および(b)供給原料および触媒の非干渉熱制御を有する大気圧コールドウォールCVD反応器の概略図を示す。
【図7A】図7Aは、カーボンナノチューブ(CNT)成長の提示メカニズムを示す。
【図7B】図7Bは、逐次アルキンまたはアルケン付加によってCNTの伸長が起こる可能な生長段階を示す。
【図8】図8は、CNT停止の提示メカニズムを示す。
【図9】図9は、CVD反応器中での種々の反応条件における炭素変換収率のグラフ示す。
【図10】図10は、CVD反応器中での種々の反応条件における、G/D比の関数としてのCNT生成物純度のグラフを示す。
【0010】
本発明の他の態様、実施形態および特徴は、添付の図面と共に考慮した場合に、下記の詳細な説明から明らかである。添付の図面は、概略図であり、正確な縮尺率で描くことを意図していない。理解の容易のために、全ての構成要素が全ての図面において表示されているわけではなく、当業者が本発明を理解するのに図示が必要でない場合は、本発明の各実施形態の全ての構成要素が表示されているわけではない。参照により本明細書に組み入れられる全ての特許出願および特許は、それらの全内容が参照により組み入れられる。不一致がある場合は、定義を含む本明細書が支配する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本発明は、一般に、ナノチューブを包含するナノ構造物の形成および処理、ならびに関連するシステムおよび方法に関する。本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、ナノ構造物成長の簡易化方法を含み、かつ/または比較的穏やかな条件を使用する。そのような方法は、ナノ構造物形成に関連したコストを減少させ、環境および公衆衛生および安全におけるナノ構造物製造の有害作用も減少させる。
【0012】
ある場合には、本発明の方法は、好都合にも、ナノ構造物形成の間の所望されない副生成物(揮発性有機化合物および/または多環式芳香族炭化水素を包含する)の生成を減少させる性能を提供し、それによって、大気に放出される炭質材料の合計量を減少させる。本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、ナノ構造物前駆体材料の前処理(例えば、熱的前処理)を行なわずに、ナノ構造物を形成する性能も提供する。例えば、該方法は、前駆体材料の熱的前処理を必要とせずにナノ構造物形成を促進しうる1つ以上の添加剤(例えば、アルキン添加剤)のナノ構造物前駆体材料への組込みを含みうる。さらに、本明細書に記載されている方法は、ナノ構造物形成の効率(例えば、触媒効率)を向上させることができ、さらに、ナノ構造物形成の間に生じる有害放出物を減少させるのを助けることもできる。そのような方法は、製造者コスト(例えば、供給原料コスト)を減少させることができ、製造禁止、環境修復努力等による付加的損失も減少させることもできる。
【0013】
いくつかの実施形態において、ナノ構造物を形成する方法が提供される。ある場合に、該方法は、化学蒸着法を含みうる。例えば、該方法は、反応物蒸気を触媒材料と接触させ、該反応物蒸気を該触媒材料と化学反応させて、所望の生成物を生じることを含みうる。いくつかの実施形態において、所望生成物を高収率で形成し、潜在的に有害な意図しない副生成物の形成を減少させるために、特定の所望生成物に変換される性能によって選択される気体前駆体材料を、触媒材料に直接的に導入しうる。例えば、ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、触媒材料(例えば、金属または金属酸化物触媒材料、非金属触媒材料)と接触させて、ナノチューブのようなナノ構造物を形成しうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、以下にさらに詳しく記載するように、炭化水素(例えば、エチレン)、水素、ヘリウム、アルキン添加剤および他の成分を包含する種々の成分を含みうる。ある場合に、反応物蒸気は、触媒材料との接触前に、比較的穏やかな条件(例えば、室温)に維持することができ、即ち、反応物蒸気は熱的に前処理されない。
【0014】
本発明の方法は、一般に、触媒材料の表面上における、ナノ構造物の形成または成長を含みうる。いくつかの実施形態において、触媒材料は、基板の表面の上または中に、配置しうる。いくつかの実施形態において、触媒は粉末形態でありうる。ナノ構造物成長を促進するために選択された1組の条件下での、反応物蒸気への触媒材料の暴露時に、ナノ構造物が触媒材料から成長しうる。理論に縛られるものではないが、ナノ構造物形成のメカニズムは、下記を含みうる:(1)核生成(これにおいて、ナノ構造物前駆体材料が触媒材料と接触して、ナノ構造物キャップまたはナノ構造物/触媒化学種を形成する);(2)伸長(これにおいて、付加的ナノ構造物前駆体材料、例えば、種々の炭素単位が、成長ナノ構造物に付加することができる);および(3)停止(これにおいて、化学的事象(例えば、水素または水の還元的除去)、機械的応力、触媒封入および/または触媒失活が、ナノ構造物成長を停止しうる)。
【0015】
理論に縛られるものではないが、図7〜8は、ナノ構造物形成のメカニズムの例示的実施形態を示している。例えば、図7Aは、提示CNT成長メカニズムを示している。CNT製造のアニール段階の間に、触媒が還元され、形態学的変化を受け、それによって金属ナノ粒子を生じる。以前の研究は下記を記載している:(1)金属環状物を介して進むアルキンとアルケンとのカップリング反応、および(2)成長C鎖へのアルカン挿入。ある場合に、過剰水素原子が、C−C結合次数を増加させずに、遊離される。図7Aから続く図7Bは、逐次アルキンまたはアルケン付加によってCNTの伸長が起こる可能な生長段階を示している。不安定遷移状態が示されており、それにおいて、過剰水素原子が基(R・)との反応によって遊離され、生じた電子がCNT格子に付加され、最終的に金属触媒を還元する。
【0016】
図8は、CNT停止のための提示メカニズムを示している。以前の研究は、水が潜在的に触媒−CNT結合を開裂しうることを示している。ある場合に、過剰の気相水素が成長を停止することもできる。
【0017】
本明細書に記載されている方法は、カーボンナノチューブを包含する広範囲のナノ構造物の形成に有用でありうる。いくつかの実施形態において、ナノ構造物は、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブである。いくつかの実施形態において、該方法は、触媒材料の表面上に形成された1組の実質的に整列されたナノ構造物を製造しうる。本明細書において使用する場合、「1組の実質的に整列されたナノ構造物」は、それらの長軸が、触媒材料および/または基板の表面に対して実質的に非平面または実質的に非平行であるように配向されたナノ構造物を意味する。ある場合に、ナノ構造物は、ナノ構造物の長軸が触媒材料および/または基板の表面に対して実質的に非平行(例えば、実質的に垂直)方向に配向されるように、触媒材料の表面の上または中に配列される(例えば、ナノ構造物「フォレスト」)。いくつかの実施形態において、ナノ構造物は、垂直整列多層カーボンナノチューブ(vertically aligned multi−walled carbon nanotube)である。他の実施形態において、ナノ構造物は、ナノ構造物の長軸が触媒材料の表面に実質的に平行であるように、該表面の上または中に配列しうる。例えば、ナノ構造物は、それらの長軸が基板の表面に沿うように、形成または成長しうる。
【0018】
本明細書に記載されている方法を使用して、高純度を有するナノ構造物を形成しうる。例えば、最終生成物中に減少した量の炭素含有副生成物、触媒不純物および他の非ナノ構造物材料を有するナノ構造物を形成しうる。いくつかの実施形態において、生成物は、熱重量分析によって測定して少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはいくつかの実施形態においては、少なくとも95%のナノ構造物を含みうる。1組の実施形態において、生成物は、熱重量分析によって測定して約80%〜約95%(例えば、84〜94%)のナノ構造物を含みうる。
【0019】
本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態は、反応物蒸気を、触媒材料との接触前に、比較的穏やかな条件下に維持する(例えば、プラズマまたは熱処理を行なわない)方法を提供する。以前の方法において、ナノ構造物を首尾よく製造するために、反応物蒸気を、典型的には、触媒材料との接触前に高温(例えば、>400℃)で熱処理し、そして/または高温に維持されている間に触媒材料に暴露させる。しかし、その結果、多くの所望されない副生成物が生じる。本発明の有利な特徴は、反応物蒸気(例えば、ナノ構造物前駆体材料)のそのような熱的前処理を除きうることであり、好ましくない副生成物(例えば、有毒物質、温室効果ガス、およびスモッグ形成化合物)の形成を実質的に減少または防止することができ、かつ、エネルギー要求量を減少し、合成の全般的制御を向上しうる。
【0020】
ある場合に、比較的低い温度(例えば、400℃未満)に維持された反応物蒸気を使用するナノ構造物の触媒的形成の方法を提供する。例えば、反応物蒸気がナノ構造物前駆体材料を含有することができ、少なくともいくらかのナノ構造物前駆体材料が、反応物蒸気への触媒材料の暴露時に化学反応を受けうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、触媒材料との接触前に、400℃未満の温度に維持しうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、触媒材料との接触前に、400℃未満、300℃未満、200℃未満、100℃未満、75℃未満、50℃未満、30℃未満、またはある場合には25℃未満の温度に維持される。ある場合に、反応物蒸気は、ナノ構造物前駆体材料を含み、少なくとも10%、25%、50%、75%以上のナノ構造物前駆体材料が触媒材料への暴露時に化学反応を受けうるように、400℃未満の温度に維持される。
【0021】
いくつかの実施形態において、該方法は、好都合にも、種々の炭素含有副生成物を包含する所望されない副生成物の減少した形成において、ナノ構造物の製造を可能にしうる。本明細書において使用する場合、「副生成物」という用語は、触媒材料によって触媒される反応の間に形成しうる所望されないまたは意図しない化学種を意味する。例えば、本発明に関して、副生成物は、一般に、ナノ構造物でない化学または熱反応(例えば、触媒材料によって触媒される反応)の任意生成物を意味する。しかし、副生成物は、触媒材料への暴露時に正味化学改変または変換を本質的に受けない(例えば、「未反応」である)が、後に未反応出発原料として回収しうる化学種を意味しない。例えば、エチレンを含む反応物ガスを、触媒材料を含む反応室に導入して、ナノ構造物生成物を製造しうるが、反応室から出る任意未反応エチレンは副生成物とみなされない。ある場合に、所望されない副生成物は、所望反応生成物、即ちナノ構造物の、ある特定の特性に不利に作用しうるか、またはそれ以外では、公衆衛生または環境に有害でありうる化学種である。例えば、以前のナノ構造物形成方法は、多くの場合、多量の所望されない炭素含有副生成物を生じ、それらは揮発性有機化合物および多環式芳香族炭化水素を包含し、それらは両方とも種々の健康および環境脅威となりうる。ある場合に、そのような炭素含有副生成物が高温(例えば、>400℃)で形成された。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法は、副生成物形成の有意な減少において、ナノ構造物を形成する性能を提供しうる。例えば、該方法は、反応室において反応物蒸気を触媒材料と接触させ、それによって生成物蒸気を形成することを含み、該生成物蒸気は、少なくとも1つの所望されない炭素含有副生成物を、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満の量で含む。ある場合に、生成物蒸気は、少なくとも1つの炭素含有副生成物を、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の5%未満、2.5%未満または1%未満の量で含む。
【0023】
ある場合に、生成物蒸気は、1つ以上の揮発性有機化合物を、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満、5%未満、3%未満、2.6%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満または0.9%未満の量で含む。エチレンがナノ構造物前駆体材料である実施形態において、揮発性有機化合物はエチレンではなく、生成物蒸気に存在する揮発性有機化合物の量は、エチレンを除いて計算される。本明細書において使用する場合、「揮発性有機化合物」という用語は、当分野におけるそれの通常の意味を付与され、室温で蒸発するのに充分に高い蒸気圧を有し、それによって大気中に入る有機化学種を意味する。ある場合に、「揮発性有機化合物」という用語は、特定の過程において、ナノ構造物前駆体材料として反応物蒸気に存在する化学種、例えばエチレンを除く。揮発性有機化合物の例は、炭化水素、例えば、アルカン、アルケン、芳香族化合物等、例えば、メタン、エタン、プロパン、プロペン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ブタジイン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキセンまたはベンゼンを包含する。いくつかの実施形態において、揮発性有機化合物は、メタン、1,3−ブタジエンまたはベンゼンである。
【0024】
メタンがナノ構造物前駆体材料ではなく、反応物蒸気に実質的に存在しないいくつかの実施形態において、生成物蒸気は、メタンを、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、またはある場合には0.01%未満の量で含む。
【0025】
1,3−ブタジエンがナノ構造物前駆体材料ではなく、反応物蒸気に実質的に存在しないいくつかの実施形態において、生成物流体は、1,3−ブタジエンを、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、またはある場合には0.05%未満の量で含む。
【0026】
ベンゼンがナノ構造物前駆体材料ではなく、反応物蒸気に実質的に存在しないいくつかの実施形態において、生成物流体は、ベンゼンを、ナノ構造物の形成の間に反応室から出る生成物蒸気の全容積の10%未満、5%未満、2.5%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満、0.1%未満、0.05%未満、0.01%未満、0.005%未満、0.001%未満、0.0005%未満、またはある場合には0.0001%未満の量で含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、ナノ構造物形成の間に生じる揮発性有機化合物の量を、以前の方法(反応物蒸気が高温(例えば、400℃以上)に加熱される方法を包含する)と比較して、10、20、30、40、50、60倍以上減少しうる。
【0028】
ある場合に、生成物蒸気は、所望されない副生成物として形成される1つ以上の多環式芳香族炭化水素を含む。本明細書において使用される場合、「多環式芳香族炭化水素」という用語は、当分野におけるそれの通常の意味を付与され、芳香環の縮合ネットワークを含む炭素化学種を意味する。多環式芳香族炭化水素は、実質的に平面または実質的に非平面であってよく、または平面または非平面部分を含んでよい。「縮合ネットワーク」という用語は、例えば、ビフェニル基を包含しないと考えられ、該基において、2つのフェニル環が単結合によって結合しており、縮合していない。一般に、多環式芳香族炭化水素は、4−、5−、6−または7−員環を含みうる。しかし、他の大きさの環も含みうると理解すべきである。多環式芳香族炭化水素の例は、ナフタレン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、クリセン、コロネン、トリフェニレン、ナフタセン、フェナントレレン、ピセン、フルオレン、ペリレンまたはベンゾピレンを包含する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法の使用は、ナノ構造物形成の間に生じる多環式芳香族炭化水素の量を、以前の方法(反応物蒸気が高温(例えば、400℃以上)に加熱される方法を包含する)と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上減少しうる。
【0029】
ある場合に、生成物蒸気は、2個の炭素原子(例えば、エタン)、3個の炭素原子(例えば、プロパン)またはそれ以上を含有する炭素含有副生成物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている方法は、高い触媒効率におけるナノ構造物形成を可能にしうる。例えば、ナノ構造物を、(約1×10グラムのナノ構造物)/(触媒材料のグラム数)以上の触媒効率で形成しうる。ある場合に、ナノ構造物を、約2x10、3x10、4x10、5x10、6x10、7x10、8x10、9x10、1×10以上の触媒効率で形成しうる。いくつかの実施形態において、ナノ構造物を、約5x10〜1.1×10の触媒効率で形成しうる。触媒効率は、本明細書に記載されているように、酸素含有化学種または窒素含有化学種を実質的に含有しない反応物蒸気の使用によって、以前の方法と比較して向上させることもできる。
【0031】
反応物蒸気および/または触媒材料は、ナノ構造物の製造または成長を促進するのに好適な1組の条件に暴露しうる。本明細書において使用する場合、「1組の条件」への暴露は、例えば、特定の温度、pH、溶媒、化学試薬、雰囲気の種類(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等)、電磁放射線、他の外部エネルギー源等への、ある時間にわたる暴露を含みうる。ある場合に、1組の条件は、ナノ構造物の、核生成、成長、安定化、除去および/または他の処理を促進するように選択しうる。ある場合に、1組の条件は、触媒材料の再活性化、除去および/または交換を促進するように選択しうる。ある場合に、1組の条件は、触媒材料の触媒活性を維持するように選択しうる。いくつかの実施形態は、外部エネルギー源(電磁放射線、電気エネルギー、音響エネルギー、熱エネルギーまたは化学エネルギーを包含する)への暴露を含む1組の条件を含みうる。
【0032】
本明細書に記載されているように、いくつかの実施形態において、反応物蒸気を、触媒材料への暴露前に、約400℃未満の温度に維持しうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気を、触媒材料との接触前に、約300℃、200℃、100℃、75℃、50℃、30℃未満、またはある場合には約25℃未満の温度に維持しうる。例えば、これは、反応物蒸気および触媒基板の温度を別々に制御/維持することができる装置の使用によってなしうる(図6)。即ち、該装置は、反応物蒸気および/または触媒材料を局所的に加熱しうる。ある場合には、反応物蒸気および触媒材料を同様の温度に維持することが望ましいこともある。ある場合には、反応物蒸気および触媒材料を異なる温度に維持することが望ましいこともある。いくつかの実施形態において、ナノ構造物形成の間に、反応物蒸気の加熱を最小限にすることが望ましいこともある。しかし、本明細書に記載されている方法およびシステムは、400℃より高い温度で行なわれる反応に有用でありうると理解すべきである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている反応物蒸気および/または触媒材料を使用する反応は、600℃、700℃、800℃、900℃より高い、またはそれより高い温度で行ないうる。
【0033】
いくつかの実施形態は、ナノチューブ形成の間に、触媒材料をある特定温度に維持することを含む。ある場合に、触媒材料を、少なくとも50℃、少なくとも100℃、少なくとも200℃、少なくとも300℃、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、少なくとも700℃、少なくとも800℃、少なくとも900℃、またはある場合には、少なくとも1000℃、またはそれ以上の温度に維持しうる。触媒材料の温度は、温度制御基板、例えば、抵抗加熱シリコンプラットフォームと組み合わせて触媒材料を配例することによって維持しうる。
【0034】
ある場合に、該方法は、反応物蒸気を、触媒材料への暴露前に、予熱することを含みうる。次に、反応物蒸気を、400℃未満の温度に冷却し、維持しうる。ある場合に、反応物蒸気を、少なくとも約60℃、約80℃、約100℃、約200℃、約300℃、約400℃、約500℃、約600℃、約700℃、約900℃、約1000℃、約1100℃、約1200℃、約1300℃、約1400℃、約1500℃、またはそれ以上の温度に予熱しうる。1組の実施形態において、反応物蒸気を、約700℃〜約1200℃の温度に予熱しうる。次に、予熱した反応物蒸気を、約400℃未満の温度(例えば、室温)に冷却し、触媒材料を含む反応室に導入しうる。ある場合には、該方法が予熱工程を含まないのが望ましいこともあると理解すべきである。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態は、ナノ構造物の形成を促進しうる添加剤の使用を含みうる。例えば、反応物蒸気へのアルキン添加剤の組込みは、ナノ構造物の成長速度を増加しうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気におけるアルキン添加剤の使用は、反応物蒸気の熱的前処理の必要性をなくしうる。本明細書において使用する場合、「アルキン」という用語は、当分野におけるその通常の意味を付与され、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合(例えば、「−C≡C−」)を含有する化学種を意味する。アルキンは、1個、2個、3個または4個の置換基を含んでよく、任意の該置換基は置換されてもよい。ある場合に、アルキンは、10個未満、7個未満、またはある場合には5個未満(例えば4個)の炭素原子を含みうる。アルキン添加剤は、アルケン基(例えば、炭素−炭素二重結合)を包含する付加的基を含みうる(即ち、エン−イン基)。アルキン種の例は、アセチレン(または「エチン」)、メチルアセチレン(または「プロピン」)、ビニルアセチレン(または、「ブタ−1−エン−3−イン」)、1,3−ブタジイン等を包含する。ある場合に、反応物蒸気におけるアルキン添加剤の使用は、以前の方法(例えば、アルキン添加剤を使用しない)と比較して、加速した成長速度でナノ構造物(例えば、ナノチューブ)を生成しうる。いくつかの実施形態において、アルキン添加剤の組込みは、ナノ構造物成長速度を、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上増加しうる。
【0036】
例示的実施形態において、該方法は、ナノ構造物前駆体材料およびアルキンを含み、低温(例えば、約400℃未満、またはある場合には室温)に維持された反応物蒸気を、触媒材料を含む反応室に導入することを含み、それにおいて、該反応物蒸気は予熱に付されていない。次に、反応物蒸気を触媒材料と接触させて、ナノ構造物、ならびに少なくとも1つの炭素含有副生成物を含む生成物蒸気の形成を生じうる。炭素含有副生成物は、アルキンを含有しない本質的に同じ反応物蒸気から形成される生成物蒸気より少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10分の1の量で形成されうる。いくつかの実施形態において、ナノ構造物前駆体材料およびアルキンを含む反応物蒸気を、前処理工程(例えば、予熱工程)に付さずに触媒材料に接触させて、ナノ構造物および生成物蒸気を形成することができ、該生成物蒸気は、触媒との接触前に前処理され(例えば、予熱され)、アルキンを含有していない反応物蒸気から形成された生成物蒸気と比較して、有意に減少した量の炭素含有副生成物を含有する。ある場合に、アルキンを含む非予熱反応物蒸気は、アルキンを含まない予熱反応物蒸気の場合の10分の1の量で、炭素含有副生成物分子を生じうる。
【0037】
前記のように、反応物ガスは種々の成分を含みうる。いくつかの実施形態において、反応物ガスは、ナノ構造物前駆体材料を含む。本明細書において使用する場合、「ナノ構造物前駆体材料」は、適切な1組の条件下、例えば触媒材料への暴露下に、反応してナノ構造物を形成しうる任意の材料または材料混合物を意味する。ある場合に、ナノ構造物前駆体材料は、ガスまたはガス混合物を包含する。例えば、ナノ構造物前駆体材料は、炭化水素(例えば、CおよびCH等)、1つ以上の流体(例えば、H、O、ヘリウム、アルゴン、窒素等のガス)、またはナノ構造物の形成を促進しうる他の化学種(例えば、アルキン)を含みうる。
【0038】
いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、炭化水素、水素、および任意にアルキン添加剤を含む。例えば、反応物蒸気は、容積で35%以下の炭化水素(該炭化水素はアルキンでない)、70%以下の水素、および任意に10%以下、1%以下または0.1%以下のアルキン添加剤を含有しうる。ある場合に、反応物蒸気は、容積で35%以下のエチレン、70%以下の水素、および0.1%以下のアルキンを含む。炭化水素、水素、およびアルキン添加剤(存在する場合)の相対量の合計が100%でない場合、反応物蒸気に付加的成分、例えば、ヘリウムもしくはアルゴンまたはそれらの混合物を含有させて合計100%にしてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、容積で約16%〜約35%のエチレンを含む。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、容積で約16%〜約70%の水素を含む。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、ヘリウムをさらに含む。例えば、反応物蒸気は、容積で20%のエチレン、51%の水素、および29%のヘリウムを含みうる。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、アルゴンをさらに含む。いくつかの実施形態において、反応物蒸気は、ヘリウムおよびアルゴンの混合物をさらに含む。
【0040】
他の1組の実施形態において、反応物蒸気は、エチレン、水素、およびアルキンを含有しうる。
【0041】
ある場合に、反応物ガスは、酸素含有化学種、例えばアルコール、エーテル、ケトン(例えば、アセトン)、エステル、アミド等、または窒素含有化学種、例えば、アミンを実質的に含有しない。本明細書において使用する場合、「酸素含有化学種または窒素含有化学種を実質的に含有しない」は、反応物ガスが、容積で1%未満、0.5%未満、または0.1%未満、または0.01%未満の酸素含有化学種または窒素含有化学種を含有することを意味する。1組の実施形態において、反応物蒸気は、アセトンを実質的に含有しない。即ち、アセトンが、例えばナノ構造物形成において、共反応物として存在しない。1組の実施形態において、反応物蒸気は、エタノールを実質的に含有しない。ある場合に、酸素含有化学種は水ではない。
【0042】
ナノ構造物を形成するためのシステムも提供する。該システムは、ナノ構造物を成長させるのに好適な表面を有する触媒材料、および、触媒材料の表面またはその一部を、触媒材料の表面上におけるナノ構造物の触媒的形成を生じるように選択された1組の条件に暴露しうる領域を含みうる。1組の実施形態において、システムは反応室を含む。本明細書において使用する場合、「反応室」は、ナノ構造物の触媒的形成がその中で起こりうる装置を意味する。反応室は、反応物蒸気が処理されてナノ構造物を形成しうるように、反応物蒸気源に暴露されるように構成し、配置しうる。いくつかの実施形態において、反応室は、反応物蒸気源に暴露されうる反応室内に配置された本明細書に記載の触媒材料を含みうる。本明細書において使用する場合、「反応物蒸気源に暴露されるように構成し、配置される」システムは、当業者によって理解される語句であり、この文脈でのその通常の意味を付与され、例えば、流体(例えば、蒸気)、例えば、炭化水素であるかまたは炭化水素を含む流体の、反応室内に配置された触媒材料上の通過を指向するように与えられたシステムを意味する。「反応物蒸気源」は、反応物蒸気を含む任意の装置、反応物蒸気を生じるために使用しうる任意の装置または材料等を包含しうる。本明細書において使用する場合、「反応物蒸気」は、炭化水素(例えば、エチレン等)および/または他の成分(水素、ヘリウム、および/または他の添加剤、例えばアルキンを包含する)を含みうるガスまたはガス混合物を意味する。反応室は、流体、例えば生成物蒸気が、反応の終了時に出て行くことができる出口も含みうる。
【0043】
本明細書において使用する場合、「ナノ構造物」という用語は、ナノメートルのオーダーの直径、およびミクロン〜ミリメートルのオーダーの長さを有し、従って、10より大、100より大、1000より大、10,000より大、またはそれより大のアスペクト比を有する細長い化学構造物を意味する。ある場合に、ナノ構造物は、1μm未満、100nm未満、50nm未満、25nm未満、10nm未満、またはある場合には1nm未満の直径を有しうる。典型的には、ナノ構造物は、円筒形または擬円筒形を有しうる。ある場合に、ナノ構造物は、ナノチューブ、例えばカーボンナノチューブでありうる。
【0044】
本明細書において使用する場合、「ナノチューブ」という用語は、当分野におけるその通常の意味を付与され、主として6員芳香環の縮合ネットワークを含む実質的に円筒形の分子またはナノ構造物を意味する。ある場合に、ナノチューブは、シームレス円筒形構造物に形成されたグラファイトのシートに似ていることがある。ナノチューブは、6員環以外の環または格子構造も含みうると理解すべきである。典型的には、ナノチューブの少なくとも一端はキャップすることができ、即ち、湾曲また非平面芳香族基でキャップすることができる。ナノチューブは、ナノメートルのオーダーの直径、およびミリメートルのオーダー、または数十分の一ミクロンのオーダーの長さを有することができ、それによって、100より大、1000より大、10,000より大、またはそれより大のアスペクト比を生じる。ある場合に、ナノチューブはカーボンナノチューブである。「カーボンナノチューブ」という用語は、主として炭素原子を含むナノチューブを意味し、単層ナノチューブ(SWNT)、二層CNT(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)(例えば、同心カーボンナノチューブ)、それらの無機誘導体等を包含する。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブである。ある場合に、カーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブ(例えば、二層カーボンナノチューブ)である。ある場合に、ナノチューブは、1μm未満、100nm未満、50nm未満、25nm未満、10nm未満、またはある場合に1nm未満の直径を有しうる。
【0045】
ナノ構造物の形成は、単なる例として本明細書に記載され、ナノチューブ、ナノワイヤー、ナノファイバー等を包含する他のナノ構造物も、本発明の方法を使用して形成しうるものと理解すべきである。
【0046】
触媒材料は、ナノチューブの成長を触媒することができる任意の材料であってよい。触媒材料は、成長基板の表面に触媒材料を付着させるかまたはそれ以外の方法で形成しうるように、高い触媒活性および/または基板との適合性を有するように選択しうる。例えば、触媒材料は、剥離または亀裂を減少させるかまたは防止するために、基板として好適な熱膨張率を有するように選択しうる。触媒材料は、成長基板の表面の上または中に配置しうる。ある場合に、触媒材料は、リソグラフィーのような既知の方法を使用して、基板の表面にコーティングまたはパターンとして形成しうる。他の実施形態において、触媒材料またはその前駆体を含む溶液、フィルムまたはテープに、基板の少なくとも一部を接触させることによって、基板を触媒材料で被覆または型押ししうる。
【0047】
触媒材料として使用するのに好適な材料は、金属、例えば、第1−17族金属、第2−14族金属、第8−10族金属、またはこれらの1つ以上の組合せを包含する。本発明に使用しうる第8族の元素は、例えば、鉄、ルテニウムまたはオスミウムを包含しうる。本発明に使用しうる第9族の元素は、例えば、コバルト、レニウムまたはイリジウムを包含しうる。本発明に使用しうる第10族の元素は、例えば、ニッケル、パラジウムまたは白金を包含しうる。ある場合に、触媒材料は、鉄、コバルトまたはニッケルである。例示的実施形態において、触媒材料は、成長基板の表面にパターンに配列された鉄ナノ粒子またはその前駆体であってよい。触媒材料は、他の金属含有種、例えば、金属酸化物、金属窒化物等であってもよい。例えば、触媒材料は、金属ナノ粒子であってよい。当業者は、特定の用途に合う適切な触媒材料を選択することができる。
【0048】
いくつかの実施形態において、触媒は鉄を含みうる。例えば、鉄を、基板(例えば、シリコン基板)の表面に形成しうる。いくつかの実施形態において、基板はシリコンを含みうる。いくつかの実施形態において、基板は、シリコン上に形成された酸化アルミニウムを含みうる。
【0049】
ある場合に、ナノチューブ前駆体および/または触媒材料の適切な組合せを使用して、ナノチューブを合成しうる。いくつかの実施形態において、ナノチューブ前駆体を、順次にまたは同時に(例えばナノチューブ前駆体の混合物として)送達しうる。
【0050】
触媒材料は、化学蒸着、ラングミュア−プロジェット法、触媒材料の溶液からの付着等を包含する種々の方法を使用して、成長基板の表面に形成しうる。
【0051】
基板は、本明細書に記載されている触媒材料および/またはナノ構造物を担持することができる任意の材料であってよい。成長基板は、特定の工程に使用される1組の条件、例えば、ナノ構造物成長条件、ナノ構造物除去条件等において、不活性および/または安定であるように選択しうる。ある場合に、成長基板は、アルミナ、シリコン、カーボン、セラミック、または金属を含みうる。いくつかの実施形態において、成長基板は、AlまたはSiOを含み、触媒材料は、鉄、コバルトまたはニッケルを含む。ある場合に、成長基板はAlを含み、触媒材料は鉄を含む。
【実施例】
【0052】
インサイチューCNT高さ測定値および相補的(complimentary)ガス分析を使用して、CNT形成速度と相関関係にあった熱生成化合物(例えば、メチルアセチレンおよびビニルアセチレン)を同定した。これらのアルキンが急速CNT成長に関与していることを示すために、各化学的かつ典型的供給原料ガスを、加熱せずに、局所加熱金属触媒基板に直接的に送達した。試験したアルキンは、CNT形成を、供給原料ガスの熱処理によって得られた速度に匹敵するかまたはそれより速い速度に加速した。エテンおよび水素は、効率的CNT形成のために依然として必要とされたが、それらの投入濃度は、CNT成長速度を犠牲にせずに、それぞれ20%および40%減少させることができた。この非加熱アルキン補助CNT成長の新規方法を使用して、揮発性有機化合物および多環式芳香族炭化水素の放出が、従来CVD法と比較して、1桁以上減少した。さらに、ここに示した化学的研究は、CNT合成の現在の理解に新たな光を与え、金属媒介析出反応ではなく金属触媒重合反応が、CNT形成に関与していることを示唆している。
【0053】
CNT形成の効率を向上させるために、CNT形成のメカニズムを調査する研究が行なわれた。典型的には、CVD法は、浮動または基板担持金属触媒(例えば、Fe、NiまたはCo)を含有する加熱(例えば、700〜1000℃)反応域への、気体炭素前駆体(例えば、CO、CまたはCH)の導入を含む。CNT成長法は、一般に、3段階:核生成、伸長および停止によって記述される。理論に縛られるものではないが、提示メカニズムは、核生成の間に金属触媒において炭素含有前駆体が解離してCNTキャップを形成することを含む。伸長の間に、炭素が、金属触媒における連続解離、それへの拡散、および/またはそれからの析出によって、成長CNTに付加しうる(即ち、蒸気−液体−固体(VLS)モデル)。この単独炭素単位の付加は、停止まで継続することができ、該停止において、機械的応力、触媒封入および/または触媒失活がCNT成長を停止しうる。
【0054】
最近の研究は、ある場合に、炭素質供給材料および金属触媒の独立熱処理から明確な作用が生じうることを示している。特に、金属触媒上での衝突前の供給原料ガスの加熱および冷却(「予熱」)は、垂直整列多層CNT(VA−MWCNT)の急速成長に必要であることが多く、ガスが触媒においてのみ加熱される場合と比較して、CNT形成速度を2000%以上増加させる。しかし、この熱的前処理工程は、1組の揮発性有機化合物(VOC)を生じ(エテン供給原料から)、それらのいくつかは増加CNT形成に関与すると考えられ、その他はCNT品質を低下させ、環境および職業的懸念をもたらしうる。
【0055】
本明細書に記載されているように、これらの競争過程は、化学物質の複合混合物中の必要反応物のサブセットを供給するための熱的生成に頼るのではなく、不可欠CNT前駆体の選択的送達によって実質的に減少させることができ、ある場合には除くことができる。さらに、供給原料ガスの熱処理を行なわないことは、最もエネルギー的に高価な合成成分を除き、炭素−CNT質量変換効率を潜在的に向上しうる。
【0056】
以下の実施例において、潜在的重要分子を触媒に直接的に送達する際に、インサイチューVA−MWCNT成長速度を監視することによって、CNT形成への不可欠経路上の化合物を同定した。これらの結果を用いて、合成法の同時最適化を、下記によって行なった:(1)最少熱処理を必要とする強力試薬ガスを選択することによるコスト最小限化;(2)生成物成長速度の最大化;および(3)生成物の質を低下させ(例えば、煤、および多環式芳香族炭化水素(PAH))、公衆衛生および環境を脅かす(例えば、有毒物質、温室効果ガス、および二次汚染質の形成を助長する化合物)望ましくない副生成物の最小限化。
【0057】
材料: ヘリウム、水素、エテン、メタン、アセチレン、および1%アセチレン(ヘリウムと混合)は、Metro Welding(Ann Arbor,MI)またはAirGasから購入した(全て超高純度(UHP)グレード)。使用前、およびマス・フロー・コントローラーへの導入前に、純粋アセチレンを、低温(cyrogenic)溶液(アセトン/N(l)またはアセトニトリル/N(l)、両方とも−39−41℃)に浸されたPorasil−C充填カラムで濾過して、アセトン(これは、アセチレンタンクにおける反応を防止するための安定剤として使用される)を除去した。質量スペクトル分析は、アセトンがこの方法によって検出限界未満(<ppmv)に除去されたことを示した。1%アセチレン混合物は、製造業者(アセトンの工業用カートリッジ除去を採用している)から発送された際にアセトンを含有していなかったので、精製を必要としなかった。1,3−ブタジエン、ブタ−1−エン−3−イン(ヘリウム中1%の混合物)、メチルアセチレン、エタンおよび1−ブチンを包含する他のガスは、Air Liquide America Specialty Gasから高純度で購入した。メタンおよびエタンの希釈混合物は、下記によって調製した:300mLのステンレス鋼(SS)タンクを対象のガスでフラッシュし、タンクをある低圧(例えば、5psi)に加圧し、次に、タンクをHeで約250psiにさらに加圧する。ベンゼンは、下記によって調製した:30mLより多いベンゼンを300mLのSSタンクに添加し、タンクをHeでフラッシュし(ベンゼンを除去せず)、タンクを250psiに加圧する。試験ガスを調製するためにHe(UHPグレード)を使用した全ての場合において、N(l)に浸したPorasil−C充填カラムでそれをさらに精製した。
【0058】
VOC採集および分析: Plataら、「Early evaluation of potential environmental impacts of carbon nanotube synthesis by chemical vapor deposition」、Environ.Sci.Technol.2009,43,8367−8373(その全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる)に詳述されているように、VOC(およびPAH)を採集し、分析した。簡単に言えば、ステンレス鋼キャニスターを、反応器管の下流に配置し、CNT成長の期間中フラッシュした。成長停止の直後に、ガス試料を採集し、ステンレス鋼ボール弁で密封した。ガスの流量およびシリンダーの容積を考慮して、これらの試料は、反応の間のVOC形成の30秒積分シグナルを表わす。流出ガス中のVOC組成の同時測定は、オンライン・マス・スペクトロメーター(MS、Pfeiffer OmniStar(商標))を使用し、関連イオン(m/z 2、4、12−18、25−30、32、39−42、44−45、51−54、65−66、77−78、91)を監視して行なった。これらの実時間分析は、成長サイクルの間の30秒間隔のガス組成が一定であることを示した。ステンレス鋼キャニスター中のVOCは、ガスクロマトグラフィーによって、標準ガス混合物で校正した炎イオン化検出器および熱伝導率検出器(GD−FIT−TCD、He標準ガス)を使用して定量した。ガス試料は、HayeSep Qカラムへの注入前に、Porasil−C処理シリカビーズの低温(N(l))トラップを使用して、前もって焦点を合わせた。検出限界は約0.1ppmvであった。HeおよびHは、N標準ガスを用いる付加的GC−TCDを使用して定量した。
【0059】
PAH採集および分析: 簡単に言えば、PAHを2連続前清浄ポリウレタンフォーム(PUF)フィルター(長さ3”x直径1”)で濃縮した。これらのフィルターは、CNT成長の全期間中、所定の位置にあり、記録されたPAH存在量は、成長期間中の積分シグナルを表わす。PUFは、90:10のジクロロメタン:メタノール混合物を用いて、100℃および1000psiで5分間にわたる三重加速溶媒抽出(ASE)によって抽出した。各抽出物を回転蒸発器によって濃縮し、GC−MSによって分析した。分析回収物は、代用標準物(d10−アセナフタレン、m−テルフェニル、およびd12−ペリレン)を使用して評価し、低分子量PAH(128〜154amu)について75±1%〜より高い分子量PAH(>166amu)について90±1%以上にわたっていた。検出限界は、約1ng gC供給原料−1(平均0.001容積一兆分率)であった。
【0060】
TGAおよびラマン測定: これらの試験の結果は図10に示されている。TGA測定は、TA Instruments Q50を使用して行なった。試料を、20%酸素および80%ヘリウム中、5℃分−1の傾斜率で室温〜900℃で、30分間保持で酸化した。CNTおよび非晶質炭素の比存在量は、微分質量損失プロットの線形最小二乗フィットを使用して算出した。
【0061】
CNT構造品質を、ラマン分光分析法(Dimension P2、Lambda Solutions、λ=533nm)によって、レーザー電力20mWおよびスポットサイズ約25umで評価した。フォレスト側壁の中間点に沿って、およびフォレスト側壁の高さに沿って、1試料につき数個のスペクトルを得た。スペクトルを各試料について平均し、従って、記録した標準偏差は、全フォレストにおける分散を表わす。G/D値は、各ピーク下面積を計算していた。
【0062】
実施例1
以下の実施例は、熱生成CNT前駆体分子の同定を記載する。図6Bは、供給原料および触媒の非干渉熱制御を有する大気圧コールドウォールCVD反応器の概略図を示す。この研究を通じて、供給原料ガスは、2モードのうちの1つで送達した:(1)熱処理を行なう(T=680〜1040℃、CおよびHのみ)、または(2)熱処理を行なわない(CおよびH、および試験ガス「X」)。触媒基板温度(T)は、特に記載がないかぎり725℃であった。成長CNTフォレストの高さを、レーザー変位センサーで監視した。図6Bに示されているCVD反応器を使用して、供給原料および触媒の温度を独立に制御した。C/H成長混合物を、種々の「予熱」温度、T(860〜1040℃)に加熱し、次に、基板固定局所加熱金属触媒(1nm Fe/10nm Al/675um Si)上での衝突前に室温に冷却した。同時に、エクスサイチューガス分析によって予熱器から放出されたガスの組成を監視し、さらに、レーザー変位センサーを用いて垂直整列CNT「フォレスト」の高さ発生を監視することによって、インサイチューCNT成長速度を監視した。
【0063】
図1Dは、いくつかの熱生成化合物(メタン、ビニルアセチレン、ベンゼンおよびメチルアセチレンを包含する)の分圧の関数としての、CNT成長速度のグラフを示す。4つの異なる予熱温度(860、920、970、1040℃)から生じた濃度(atm)が示され、成長速度は温度と共に増加した。符号は、予熱器管直後の測定ガス存在量であり、線は最良適合曲線である。メタン、ベンゼンおよびビニルアセチレンの存在量は、成長速度に直線的に関係していた(全R=0.99、n=4)。メチルアセチレンとCNT成長速度との関係は、双曲線に適合した(R=0.99、n=4)。全ての実験において、成長の間のガス流はC/H/He=70/330/0sccm(標準立方センチメートル毎分)であり、触媒基板温度は840℃であった。
【0064】
予熱温度が増加すると共に、成長速度と、メタン、ベンゼンおよびビニルアセチレン(または、ブタ−1−エン−3−イン)の分圧との間に、強い直線相関が存在していた;それぞれ、相関係数(R)0.99(n=4、図1D)。メチルアセチレン(プロピン)の存在量が増加すると共に、成長は、明らかな飽和点まで加速した。即ち、高いメチルアセチレン濃度において、前駆体可用度以外の何かが、CNT形成の速度を制限した。理論に縛られるものではないが、双曲線挙動は触媒反応に特徴的であり、金属が、単に、高秩序炭素析出のためのテンプレートを提供するのではなく、CNT形成の真触媒として作用しうることを示唆している。
【0065】
実施例2
以下の実施例は、CNT合成の一般手順を記載している。反応進行の間のインサイチューVA−MWCNT高さを測定するために、図6Aに概略図で示されているように、成長室の上方にレーザー変位センサーを据え付けた特注CVD反応器を使用した。従来の成長供給原料ガス(C/H)およびアニールガス(He/H)を、抵抗加熱した予熱器管を経て導入し、該予熱器管は2モードで操作された:(1)1000℃で「オン」、および(2)室温(21℃)で「オフ」。予熱器をオフにして、試験ガス(例えば、1,3−ブタジエン、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、ビニルアセチレン、メタン、エタン、またはベンゼン)を、成長段階の間に、二次インプットラインを経て導入し、それらはフラッシュおよびアニール段階の間に三方弁を経てベントにフラッシュすることができた。試験ガスの流量は、液体窒素に浸したPorasil−Cカラムで低温精製した付加的ヘリウムラインと均衡させた。全ての実験において、ガス(C+H+He+試験ガス)の全流れは、記載されている場合以外は、604sccmであった。これらを、抵抗加熱シリコンプラットフォームを収容したコールドウォール石英反応器管に導入し、該プラットフォームは、垂直整列多層カーボンナノチューブ(VA−MWCNT)触媒基板を担持していた。プラットフォームの温度は、赤外線(IR)温度センサーによって監視および制御し(フィードバックによる)、VA−MWCNTフォレストの成長速度は、レーザー変位センサーを使用して監視した。流出ガスを、オンライン・マス・スペクトロメトリー(MS、2sccmサンプリング速度)によって連続的に監視し、次に、ベントにフラッシュする(アニールおよびフラッシュの間)か、またはステンレス鋼サンプリングタンク(SS Tank;VOC、HeおよびHを採集するため)、石英ファイバーフィルター(>0.2μmの粒子を採集するため)、およびポリウレタンフォーム(PUF;PAHを採集するため)にフラッシュした。
【0066】
この反応器において、ガスをプレミックスし、抵抗加熱石英予熱器管(4x300mm(内径x長さ))に導入し、室温に冷却し、次に、石英反応器管(4.8x22.9cm)に送達した。反応器管の内部で、VA−MWCNT薄膜が電子ビーム蒸着Fe(1nm、例えば1.2nm)上に成長し、Al(10nm)下層はSi(600μmまたは675μm)支持体上であった。触媒基板温度は、局部抵抗加熱シリコンプラットフォームによって調節し、それによって、成長室における気相反応を最小限にした。シリコンプラットフォームの温度を、反応器管の下方に据え付けた赤外線センサーを使用して測定し、これらの実験の全てにおいて(記載されている場合を除く)725℃に設定した。「コールドウォール」反応器の温度は、石英壁の外側に配置した表面接触熱電対によって測定して、プラットフォームの長さ(4〜5cm)にわたって70℃未満であり、その他の場所は室温であった。予熱器温度は、抵抗加熱コイルの中心において石英管の外側に配置した熱電対によって測定した。予熱器は2モードで操作した:(1)1000℃で「オン」、または(2)室温(21℃)で「オフ」。両モードにおいて、反応物蒸気(C/H)は、予熱器管を経て移動し、予熱器の下流に取り付けられた三方弁につながっていた。これは、触媒上での衝突前に、ヘリウムキャリヤーガスおよび特定のVOC試験ガス(例えば、メチルアセチレンまたはビニルアセチレン)を、反応物蒸気混合物に導入することを可能にした。これらの流れ(He+VOC試験ガス)の総量は一定であったが、分布は変動し;試験ガスは、予熱器が「オフ」のときにのみ導入された。変動He送達であれば、UHPグレードHe中の微量汚染物(例えば、メタンまたは水)に関連した影響は、Porasil−C処理シリカビーズを用いてN(l)冷トラップを使用してキャリヤーガスを精製することによって、実質的に除去される。
【0067】
反応物蒸気の混合物は、成長段階の間に変化したが、反応器フラッシュおよびアニーリング処理は一定に保たれた。典型的反応物蒸気プログラムは下記を包んでいた:1000sccmまたは2000sccmにおけるHeフラッシュ、8分間(ここで、適用可能であれば、予熱器を5分後に作動させる);70または174sccmにおけるHe、300または310sccmにおけるH、4分間(ここで、触媒基板プラットフォームを、2分後に作動させる);およびC(120sccm)、H(310sccm)、VOC試験ガス、およびHeを、CNT成長の間に導入した(ここで、これらのガスの合計流量は、記載されている場合以外は常に604sccmであった)。
【0068】
実施例3
供給原料ガスを加熱しない加速CNT成長: 非干渉CVD反応器を使用して、予熱器から放出されるガスの組成ならびにインサイチューVA−MWCNTフォレスト成長速度を監視しながら、VA−MWCNT金属触媒およびC/H供給原料の温度を、独立に制御した。予熱器温度が増加すると共に(690〜1200℃)、VA−MWCNTフォレストの成長速度が増加した。図1は、熱生成化合物と、VA−MWCNT成長速度の増加との相関関係を示す種々のグラフを示す。全てのサブプロットにおいて、符号は測定データであり、線は最良適合曲線である。図1Aは、メタンの存在量が、成長速度との線形対数関係に等しくよく適合していたことを示す(R=0.99、n=4)。図1Bは、ベンゼン(丸)およびビニルアセチレン(四角)が、成長速度に直線的に関係していたことを示す(R=0.99、n=4)。図1Cは、メチルアセチレンが、VA−MWCNT成長速度に対数的に関係していることを示す(R=0.99、n=4)。これらの実験において、成長の間のガス流はC/H/He=70/330/0sccmであり、触媒基板温度は825℃であった。理論に縛られるものではないが、成長速度と、メタン、ベンゼンおよびビニルアセチレンの分圧との間に、強い相関関係があった(それぞれ相関係数0.99を有する;n=4、図1)ので、加速CNT形成は、熱生成化合物のあるサブセットによるものと考えられる。メタン存在量とVA−MWCNT成長との関係は、対数曲線にもよく適合しており(R=0.99、n=4)、メチルアセチレンのVA−MWCNT成長との関係は、対数適合によって最もよく表わされた(R=0.99、n=4)。
【0069】
メタンは、一般的なCVD供給原料ガスであり、Fe触媒表面における分解を経て効率的CNT成長を促進しうる。ベンゼンは、CNT形成における重要な中間体として議論されている。
【0070】
アルキン(例えば、メチルアセチレンおよびビニルアセチレン)はCNT形成経路における活性分子として認識されていないが、アセチレンは、分子ビーム実験(それにおいて、気相反応が最小限にされる)において、CNTへのその比較的効率的な変換で知られている。しかし、それらの研究において、アセトンが市販アセチレンの微量(<1%)成分として存在し、増加成長がアセチレン自体の作用であるか酸素含有アセトンの作用であるかが明らかでない(酸素含有化合物はCNT成長を増加させることができる)。それにもかかわらず、均一遷移金属触媒作用において、アルキンがアルケンと反応して環式化合物を形成することが示されており、次に、それが活性金属から放出される。CVDは何らかの重合特性を有しうる不均一触媒作用であるが、アルキンがCNT形成において同様の役割を果たしている可能性がある。
【0071】
本明細書に記載されている加速VA−MWCNT成長において小アルキン(Cn≦4)が有する作用を研究するために、一連の潜在的前駆体分子を、加熱金属触媒に、供給原料ガスの熱処理なしに送達した。予熱器によって生じる成長環境をシミュレートするために(40以上の熱生成化合物のコンボリューションなしに)、微量の試験ガス(例えば、<1vol%)を、エテン(18.7vol%)および水素(51.3vol%、残余He)の供給物と共に、加熱金属触媒に送達した。
【0072】
図2は、VA−MWCNT成長における化学構造の作用を示す種々のグラフを示している。全ての実験において、(1)試験ガスなし(「予熱器オフ」)または(2)試験ガス(例えば、メチルアセチレンまたはメタン)のいずれかに加えて、標準成長ガス(C/H=120/310sccm)を予熱せずに送達した。典型的成長条件の基準を提供するために、「予熱器オン」の場合(この場合、CおよびHのみが送達される)も示されている。図2Aにおいて、試験ガスを等しい分圧(9.8x10−3atm)で送達し、但し、ビニルアセチレンの場合は、より希薄(3.0x10−3atm)であった。全てのアルキンは、それらが送達されなかった場合(予熱器オフ)と比較して、成長を有意に加速させた。次に、試験ガスを、図2Bに示されているように、より低い分圧(3.3x10−4atm)、または、図2Cに示されているように等しい質量(5.5±0.4ug C sccm−1)で送達した。
【0073】
各試験ガスの等しい分圧(9.8x10−3atm)を送達した場合に、アセチレンおよびメチルアセチレンは、CNTの成長速度を、1,3−ブタジエンまたはメタンより高い程度に増加させた(図2A、アセチレンおよびメチルアセチレンの両方について4.1μm s−1、および予熱器オンについて2.9μm s−1の成長速度)。特に、質量スペクトル分析は、低温精製アセチレン中にアセトンがないことを示し、従って、速度増加は、アセチレンの存在のみによるものと考えられる。エタン(エテンの熱処理の豊富成分)の添加が、任意付加的試験ガスなし(予熱器オフ)の場合に観測されたCNT成長以上に、CNT成長を加速させないことが観測された。第三アルキンを試験したが、ビニルアセチレンにおける安定性由来濃度限界および我々の実験的にアクセス可能な流量により、僅かにより低い分圧(3.0x10−3atm)で行なった。アセチレンおよびメチルアセチレンと比較して3倍希薄を超えるにもかかわらず、ビニルアセチレンのCNT成長速度は1.3倍遅いにすぎず(3.1μm s−1対4.1μm s−1)、予熱器オンの場合(2.9μm s−1)より速かった。従って、これらの濃度が、成長におけるビニルアセチレン作用の線形応答範囲内であれば(メチルアセチレンについて観測される何らかの漸近的応答領域ではなく)、ビニルアセチレンは、メチルアセチレンおよびアセチレンの両方より活性でありうる。
【0074】
ビニルアセチレンの付加的活性は、分子の頭における二重結合から生じうると考えられ、この官能基の作用を調べるために、1−ブチン(二重結合がない)の加速作用を研究した。同じ分圧(3.3x10−4atm)において、1−ブチンは、CNTの成長を、ビニルアセチレン(図2B)より低い程度に加速させ、これは、以下に詳しく記載するように、アルケン基が、アルキン単独の作用以上に、CNT形成の促進において役割を果たしうることを示唆している。
【0075】
二重および三重結合の両方を含有するビニルアセチレンは、三重結合を含有するが二重結合がないエチルアセチレン(または1−ブチン)より高い程度に、CNTの成長を加速させることが観測され(それぞれ0.9対0.6μm s−1;図2B)、これは、アルケン基が、アルキン単独の作用以上に、CNT形成の促進において役割を果たしうることを示唆している。そうであっても、アルキン官能基の存在も、その不存在が、ある場合に、分子をCNT形成の非効率促進物質にしうるので、CNT形成に影響を及ぼす。例えば、三重結合がないが交互二重結合を含有する1,3−ブタジエンは、CNT成長を、ビニルアセチレンほど増加させないことが観測された(それぞれ、1.1対3.1μm s−1;図2A)。加速成長が観測された場合に、ジアセチレン(または1,3−ブタジイン(1,3−cutadiyne))が形成されたことが分かり(図3参照)、それは増加CNT形成に寄与しうる。
【0076】
完全性のために、VA−MWCNT成長速度に相関していたベンゼンを、試験ガスとして触媒に送達した。ベンゼンのこの低存在量において(蒸気圧限界が、より高い濃度の使用を妨げる)、CNT形成の限定された加速が存在したが、3.3x10−4atmは、熱生成から予期される範囲内である。同様に、メタンの関連濃度も、CNT形成速度を促進しなかった。このように、速度との相互関係は、ベンゼンまたはメタンが触媒におけるVA−MWCNT成長を加速させる作用をしていることを必ずしも示しておらず、それらは、単に、他の不可欠成分(例えば、ベンゼン形成メチルアセチレン由来基)から順に合成されたと考えられる。
【0077】
以前の研究は、メタンの認知された不活性は、より長いアルケンおよびアルキンと比較して低い炭素含有量(モル気体当たり)によるものと考えうることを示唆している。観測された速度増加が、単に、化合物分子量の違いによるものでないことを確かめるために、一定質量(5.5±0.4ug C sccm−1、sccmは標準立方センチメート毎分)への各試験前駆体の送達を標準化した。この実施例において、質量ベースで、ビニルアセチレンが最も高い速度増加を示し、それに続いて、アセチレン、メチルアセチレン、1,3−ブタジエン、メタンであった(図2C)。このように、CNT成長におけるアルキンの加速作用は、少なくとも部分的に、その化学構造による(例えば、単に、相対炭素含有量によるのではなく)と考えることができる。
【0078】
究極的に、急速CNT成長は、供給原料ガスを加熱せずに達成することができ、これは、工業規模CVD合成のエネルギー必要量を減少させ、意図しない副生成物(例えば、有毒物質および温室効果ガス)の形成を制限しうると考えられる。
【0079】
実施例4
以下の実施例は、実施例1に記載したカーボンナノチューブの形成の間の、VOCの採集および分析を記載する。VOCを採集し、分析した。簡単に言えば、ステンレス鋼キャニスターを、反応器管の下流に配置し、CNT成長の間にフラッシュした。ガス試料を、成長停止の直後に採集し、ステンレス鋼ボール弁で密封した。ガスの流量およびシリンダーの容積を考慮して、これらの試料は、反応の間のVOC形成の30秒積分シグナルを表わした。流出ガス中のVOC組成の同時測定値は、オンライン・マス・スペクトロメーター(MS、Pfeiffer OmniStar(商標))を使用し、関連イオン(m/z 2、4、12−18、25−30、32、39−42、44−45、51−54、65−66、77−78、91)を監視して、収集した。これらの実時間分析は、成長サイクルの間の30秒間隔のガス組成が一定であることを示した。ステンレス鋼キャニスター中のVOCは、ガスクロマトグラフィーによって、標準ガス混合物で校正した炎イオン化検出器および熱伝導率検出器(GD−FIT−TCD、He標準ガス)を使用して定量した。ガス試料は、HayeSep Qカラムへの注入前に、Porasil−C処理シリカビーズの低温(N(l))トラップを使用して、前もって焦点を合わせた。検出限界は約0.1ppmvであった。HeおよびHは、N標準ガスを用いる付加的GC−TCDを使用して定量した。
【0080】
CNT成長を犠牲にしない減少副生成物形成: 図3〜4は、ナノ構造物形成過程の間の、種々の反応物および副生成物(揮発性有機化合物(VOC)を包含する)の分圧のプロットを示す(「Meアセチレン」および「vinアセチレン」は、それぞれ、メチルアセチレンおよびビニルアセチレンである)。図3に示されているように、供給原料ガスの熱的前処理を除くことは、VOC形成を減少させた。横座標に示されているラベルは、試験ガスの名称を示し、図2Aに示されている成長曲線に対応している。「予熱器オン」および「予熱器オフ」の場合、試験ガスは、典型的供給原料ガス(C/H/He=120/310/174sccm)に添加されなかった。エラーバーは、多重測定値における1つの標準偏差を表わし、不可視エラーバーは符号より小さい。図3において、VOC濃度は、分圧で示されている。図4において、PAH存在量は、CNT成長を通じて積分され、従って、濃度は、送達された合計gCに関して示されている。
【0081】
供給原料ガスは、金属触媒上での衝突前に加熱されなかったが、それらは、抵抗加熱触媒基板プラットフォームの近くで局所加熱を受けた。従って、反応器管における気相再配列は、意図しない副生成物の形成を生じうる。以前のCVD方法(例えば、予熱器をオンにする)において、多くの揮発性有機化合物がエテンおよび水素の熱処理から生じ(図3)、それらはメタン(強力温室効果ガス)、ベンゼンおよび1,3−ブタジエン(EPAによって規制されている有害大気汚染物質)を包含する。予熱を除くことは、表1〜2および図3に示されているように、全てのVOC(エタンを除く)の存在量を1桁以上で大幅に減少させることができる。ベンゼン、1,3−ブタジイン、シクロペンタジエン、ペンテンおよびペンタンを包含するいくつかの化合物は、予熱器がオフであった場合に、評価可能量(>0.1ppmv)で形成されることもなかった。このように、供給原料ガスに送達されるエネルギーを減少させる(例えば、供給原料ガスの熱処理を制限する)CNT製造法は、不必要な放出物の実質的減少を与える。予熱と比較して、メチルおよびビニルアセチレン補助成長は、メタン形成を約30分の1に減少し、1,3−ブタジエン形成を60分の1に減少し;ベンゼン形成は効果的に除去された(検出未満;<0.1ppmv)。
【0082】
しかし、予熱工程が除かれている場合に、同等のCNT成長速度および高さを得るために、アルキン添加剤を使用することが有利な場合がある。メチルアセチレンおよびビニルアセチレンの添加は、流出ガスのVOC含有量を増加させることが観測されたが、供給原料の熱処理によって生じるレベルより高くなかった。予熱と比較して、メタン形成は、アルキン補助CNT成長の間に約30分の1に減少し;1,3−ブタジエン形成は60分の1以下に減少し;ベンゼン形成は本質的に除去された。この実施例において、1,3−ブタジエンを非加熱供給原料ガスに添加した場合に、ベンゼンだけが形成され、VOCは、熱処理(例えば、予熱)を行なわない他の実験と比較した場合に相対的に高かった。メタンまたはエタンのいずれかの添加は、流出物のVOC負荷を実質的に増加させなかったが、加熱基板のまわりの気相反応におけるメチルアセチレンの形成を増加させた(おそらく、メタン基とエテンの組合せによる)。
【0083】
表1 試験ガス反応流出物のVOC含有量。これらの記載事項は、図2aに示されているCNT成長速度曲線に対応する。記載事項は分圧(atm)であり、各縦欄において、濃度はその標準偏差(イタリック体で示されている)の前に記載されている。数値に、10の指数(括弧に示されている)乗を掛けなければならない(例えば、4.0(−4)=4.0x10−4atm)。
【0084】
【表1】

表2 試験ガス反応流出物のVOC含有量(続き)。これらの記載事項は、図2aに示されているCNT成長速度曲線に対応する。記載事項は分圧(atm)であり、各縦欄において、濃度はその標準偏差(イタリック体で示されている)の前に記載されている。数値に、10の指数(括弧に示されている)乗を掛けなければならない(例えば、4.0(−4)=4.0x10−4atm)。
【0085】
【表2】

実施例5
以下の実施例は、本明細書に記載されているカーボンナノチューブの形成の間の、PAHの採集および分析を記載する。PAHを採集し、分析した。簡単に言えば、PAHを2連続前清浄ポリウレタンフォーム(PUF)フィルター(長さ3”x直径1”)で濃縮した。これらのフィルターは、CNT成長の全期間中、所定の位置にあり、記録されたPAH存在量は、成長期間中の積分シグナルを表わす。PUFは、90:10のジクロロメタン:メタノール混合物を用いて、100℃および1000psiで5分間にわたる三重加速溶媒抽出(ASE)によって抽出した。各抽出物を回転蒸発器によって濃縮し、GC−MSによって分析した。試料回収物は、内標準(d10−アセナフタレン、m−テルフェニル、およびd12−ペリレン)を使用して評価し、低分子量PAH(128〜154amu)について75±1%〜より高い分子量PAH(>166amu)について90±1%以上にわたっていた。検出限界は、約1ng gC供給原料−1(平均0.001容積一兆分率)であった。
【0086】
いくつかの毒性PAHが形成され、カーボンナノチューブ形成の間に放出された。供給原料ガスの熱処理を除くことは、表3〜4に示されているように、合計PAH負荷を1桁減少させた。ナフタレン、フルオランテンおよびピレンは、熱的前処理における変化に最も敏感であり、それぞれ20、60および40分の1に減少した。流出物のアセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナントレンおよびアントラセン含有量は、前記の熱的前処理よりごく僅かに減少した。興味深いことに、エタンの添加は、フルオランテンおよびピレンの測定可能な減少を生じ、1,3−ブタジエン補助CNT成長は、測定可能なフルオランテンまたはピレンを生じなかった。それに対して、フルオランテンおよびピレンは、アルキン補助CNT合成において、非補助成長と比較して増加した。理論に縛られるものではないが、研究は、CNTキャップに構造が似ているフルオランテンがCNT核生成に関与していると推定している。増加合成におけるこれらの4環PAHの増加した存在量、および増加を示さなかった反応におけるそれらの減少した存在は、CNT形成におけるそれらの潜在的役割を示していると考えられる。
【0087】
アルキン補助CNT合成の合計PAH含有量は、非補助成長と比較して増加したが、従来の熱的前処理法と比較して1桁以上減少した。従って、CNT成長速度を犠牲にせずに、CNT製造の潜在的環境衝撃を顕著に減少させることができる。ある場合に、重要CNT前駆体分子の選択的送達が、生成物品質を損なう熱生成化合物を最小限にしうるか、さらには排除しうるので、より優れた反応制御を与えることができる。例えば、PAHは、非晶質炭素(これは、多くのCNT形成過程で生じる重大な、妨害となる、除去困難な副生成物である)の形成の一因となりうる。本明細書に記載されているアルキン補助合成の減少したPAH含有量は、限定された非晶質炭素被膜を有する高純度CNTを生じうる。
【0088】
表3 試験ガス反応流出物のPAH含有量。これらの記載事項は、図2aに示されているCNT成長速度曲線に対応する。記載事項は、質量C供給原料当たりの質量PAH(ng g−1)であり、各縦欄において、濃度は、その標準偏差(イタリック体で示されている)の前に記載されている。数値に、10の指数(括弧に示されている)乗を掛けなければならない(例えば、8.3(3)=8.3x10ng PAH g C供給原料−1)。
【0089】
【表3】

表4 試験ガス反応流出物のPAH含有量(続き)。これらの記載事項は、図2aに示されているCNT成長速度曲線に対応する。記載事項は、質量C供給原料当たりの質量PAH(ng g−1)であり、各縦欄において、濃度は、その標準偏差(イタリック体で示されている)の前に記載されている。数値に、10の指数(括弧に示されている)乗を掛けなければならない(例えば、8.3(3)=8.3x10ng PAH g C供給原料−1)。
【0090】
【表4】

実施例6
以下の実施例は、どのように、増加炭素変換が高純度CNTを生じうるかを説明する。図9のグラフは、どのように、アルキン補助CVDが向上した炭素変換収率および触媒効率を与えうるかを示している。炭素変換は、使用された触媒の質量に標準化した((g C前駆体当たりのg CNT)x100%)/g触媒)。触媒は、推定密度7.9ng Fe mm−2において、電子ビーム蒸発によって蒸着させた。図9に示されているように、微量のアルキンを使用して成長を増加させたことが、炭素変換効率の実質的向上を与えた(g C供給原料当たりのg CNT x 100%;触媒質量に標準化)。アセチレン−またはメチルアセチレン−補助成長は、それぞれC変換を14および15倍向上させ(1.2x10および1.3x10%g触媒−1)、熱処理法で得られた効率(8.2x10%g触媒−1)より高かった。さらに、非加熱供給原料に微量のビニルアセチレンを添加した成長は、C変換における7.5倍の向上を与えた(6.4x10%g触媒−1)。これに対して、メタン、エタンおよび1,3−ブタジエンは、CNT形成において、予熱なしで得られるCNT形成と比較して、比較的少ない増加を示した。
【0091】
CNT収率を「触媒効率」(g触媒当たりのg CNT)に関しても示し、それは炭素前駆体質量を説明しない。この実施例において、酸化エッチング剤または熱処理を使用せずに、1.1×10までの触媒効率が観測された。
【0092】
さらに、供給原料の熱処理を除いたにもかかわらず、CNT純度(%CNT)が維持された。図10は、どのように、生成物純度がアルキン補助CVDの間に維持されるかを示すグラフを示している。純度は、熱重量分析(TGA;%CNTとして示す)、およびラマン分光分析法(G/D比として示す)によって測定した。ここで分析した試料は、同じ試験ガス分圧において成長した試料に対応する(即ち、図1D)。「予熱器オン」および「予熱器オフ」の場合、試験ガスを、典型的供給原料ガス(C/H/He=120/310/174sccm)に添加しなかった。エラーバーは、TGA曲線適合の不確かさ、および三重ラマン測定値における1つの標準偏差を表わしている。非効率前駆体(即ち、予熱器オフ、+メタン、+エタン、および+1,3−ブタジエン)または短い触媒寿命(即ち、+アセチレン)の結果として、いくつかの実験の間に生じた比較的小さい合計質量から、大きいTGAエラーバーが生じた。
【0093】
図10に示されているように、ビニルアセチレン−、メチルアセチレン−、およびアセチレン−補助成長は、それぞれ、86±2%、84±3%、および91±7%のCNT純度を有する物質を生じ、それらはいずれも、供給原料加熱によって生じたCNT生成物と有意に異なっている(87±1%;熱重量分析によって求めた結果;図10)。
【0094】
実施例7
以下の実施例において、反応物蒸気または供給原料の最適化(エテンおよび水素の使用を最小限にすることを含む)を調査する。
【0095】
非加熱エテン供給原料に添加された比較的低濃度のアルキンは、CNT成長を加速させたが、アルキンの質量は、形成されたCNTの質量を説明するのに充分でなく、付加的化合物を成長CNT格子に添加する必要があったと考えられる。原則供給原料、エチレンは、金属触媒において共反応物として作用して、CNTを形成しうる。そうであるなら、C存在量が減少すると共に、CNT形成速度の減少が予想される。前記のように、遷移金属触媒環化反応は、多くの場合、アルキンおよびアルケンの両方に依存して、新しい炭素−炭素結合を形成し、最終的に炭素主鎖を有する不飽和環を形成する。これらの反応において、金属が触媒活性を有するために還元され、結合形成を促進するために電子が必要とされる。CNT合成において、CNT成長の前に、大部分の触媒が還元される(通常はHを使用)(特にFe(CO)は除く;これは、HiPCO(登録商標)合成において使用される)。触媒が電子を炭素質反応物に連続的に移動させて、長いCNTを形成する場合、H(電子供与体)が持続触媒活性に必要とされうる。しかし、水素はCNT合成の間の気相反応にも重要なので、水素の影響は、触媒作用に厳密に限定されないと考えられる。アルキン補助CNT合成におけるHおよびCの役割を調査するために、アセチレン(最も安価な試験アルキン)を一定にしながら、HおよびCの濃度を独立に変化させた。さらに、初期供給原料コストを最小限にし、浪費を最小限にするために、急速かつ充分なCNT形成を得るために必要な最少HおよびC量を特定する調査を行なった。
【0096】
図5は、エテン(即ちエチレン)分圧の関数としてのナノ構造物成長速度のプロットを示し、アセチレン補助CNT成長の間の、ナノチューブ成長速度および触媒寿命におけるエテンおよび水素の作用を示している。アセトン不含アセチレンを、全ての実験において、1.0x10−3atmで送達し;Cが変化した場合、Hは一定の0.51atmであり;Hが変化した場合、Cは一定の0.20atmであり;一定総流量604sccmを維持するために、ヘリウムを使用した。C存在量が減少すると共に、CNT成長速度の急激な減少が観測された(図5A)。これは、CNT形成反応において、アルキンとの助触媒的役割を有するエテンと一致している。これに対して、供給原料ガスとして送達されたCの存在量は、触媒寿命との明らかな関係を有していなかった(図5B)。C濃度が、触媒上での有意な煤形成を助長しないかぎり、Cレベルが成長期間に影響を及ぼすと予測する先験的根拠はないと考えられる。従って、CNT成長速度または収率を犠牲にせずに、エテンの初期供給原料濃度を、例えば20%減少させることができる。
【0097】
(pH)の分圧は、触媒寿命に有意な影響を有していた(図5D)。低pH(<0.31atm)において、触媒寿命に急激な減少があり、触媒を酸化後に再還元するのに必要な電子の持続源としての水素の役割と一致している(おそらく、金属−炭素または炭素−炭素結合形成のために電子を供与することによる)。Hが還元剤として作用していたのであれば、生じた酸化生成物はHイオンと考えられる。このイオン用に何らかの保管場所があれば反応が促進されると考えられ、HによるFeの初期還元によって形成されるかまたは供給原料ガス中の微量成分としての水が、そのようなレセプターとして機能しうる。実際に、最近の研究は、水および他の酸素含有分子がCNT成長を延長しうることを示しているが、この向上のメカニズムは確立されていない。最少量の水素が触媒活性を持続するために必要とされ、過剰pHは触媒寿命を減少させた。ポリエチレン(ポリエテン)重合反応において、pHの突然の増加は、金属触媒への付加、モノマー付加のブロッキングによって、連鎖生長反応を停止させることができ、それは、多くの場合、ポリマーの最終長さを制御するために使用される。CNT形成反応が類似した重合特性を有する場合、高pHは、観測されたように、停止事象を誘発すると予測しうる。または、停止事象が水によるプロトン付加を経ることによって誘発されて、還元的カップリング生成物を生じることができ(例えば、HをCNTに付加し、金属−CNT結合を開裂する)、CNT−触媒接触の水誘発開裂の最近の観測は、この停止メカニズムを裏付けている。
【0098】
触媒寿命において実質的影響を有することに加えて、低pH(<0.17atm)は、CNT成長速度に影響を与えた(図5A)。理論に縛られるものではないが、これについての2つの可能な説明(気相または触媒に基づく反応のいずれかに依存する)は、下記を包含する:(1)気相において、不充分な水素はVOCの形成を制限することができ(おそらく、必要前駆体の触媒を与えない)、さらに、ポリアセチレン形成を促進する(長距離秩序を有する構造物に不利となりうる)、および(2)触媒において、過剰炭化水素由来水素は、成長CNT主鎖から除去されなければならず、H由来H基はこれらを抽出し、共役π系を所定位置に残しうる。
【0099】
は、CNT形成反応において多面的役割を担っている。CNT成長速度または触媒寿命を低下させずに、投入水素の量を0.51から0.31atmに40%減少させることができ、これは製造業者にとってコスト削減となる。前記のように、エテン投入量の20%削減が可能と考えられ(pH=0.51)、初期供給原料コストおよび大気に放出される炭素質材料の総量の両方を削減する明白な機会が存在する。さらに、必要前駆体を金属触媒に直接的に供給することによって供給原料ガスの熱処理を除くことは、潜在的に有害な意図しない副生成物の形成を減少し、合成に関連するエネルギーコストを減少させることができ、生産品質を犠牲にせずに環境への不要なダメージを制限することができる。
【0100】
本明細書において、本発明のいくつかの実施形態を記載し例示したが、当業者は、本明細書に記載されている機能を果たし、かつ/または結果および/または1つ以上の利益を得るために、種々の他の手段および/または構造を容易に思考することができ、そのような変化および/または変更はそれぞれ本発明の範囲に含まれるものとする。より一般的に言えば、本明細書に記載されている全てのパラメーター、寸法、材料および形態は例示するものであって、実際のパラメーター、寸法、材料および/または形態は、本発明の教示が使用される特定用途に依存することを、当業者は容易に理解しうる。当業者は、単に日常実験を使用して、本明細書に記載されている本発明の特定実施形態の多くの等価物を認識し、確認することができる。従って、前記実施形態が単なる例として示され、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内において、本発明を、特に記載され特許請求されている以外の方法で実施しうることを理解すべきである。本発明は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法に関する。さらに、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の2つ以上の任意組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法が相互に矛盾しなければ、本発明の範囲に含まれる。
【0101】
本明細書および特許請求の範囲において使用されている不定冠詞「a」および「an」は、特に別段の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解すべきである。
【0102】
本明細書および特許請求の範囲において使用されている場合、「および/または」という語句は、そのように等位接続されている要素の「いずれか、または両方」、即ち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素を意味するものと理解すべきである。特に別段の指示がない限り、「および/または」節によって特定されている要素以外に、他の要素が、特定されている要素に関係しているか関係していないかにかかわらず、任意に存在しうる。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」という語句は、「含む」のような非制限的用語と共に使用されている場合、1つの実施形態において、Bを伴わないA(B以外の要素を任意に包含する);他の実施形態において、Aを伴わないB(A以外の要素を任意に包含する);さらに他の実施形態いおいて、AおよびBの両方(他の要素を任意に包含する);等を意味することができる。
【0103】
本明細書および特許請求の範囲において使用されている場合、「または」は、先に定義した「および/または」と同じ意味を有するものと理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」もしくは「および/または」は、包括的であるものと解釈され、即ち、多くの要素または要素リストの少なくとも1つを包含するだけでなく、1つ以上も包含し、任意に付加的な非リスト項目を包含する。明示的にそれと異なって示されている唯一を意味する用語、例えば、「唯1つの」または「正確に1つの」、または特許請求の範囲に使用される場合に「からなる」という用語は、多くの要素または要素のリストのうちの、正確に1つの要素の包含を意味するものとする。一般に、本明細書に使用されている場合、「または」という用語は、排他性を意味する用語(例えば「いずれか1つ」、「〜のうち1つ」、「〜のうち唯1つ」、または「〜のうち正確に1つ」)が前にある場合、排他的選択肢を示すものとしてのみ解釈されるべきである(即ち、「一方または他方であるが、両方ではない」)。「〜から本質的になる」は、特許請求の範囲に使用されている場合、特許法の分野で使用されているその通常の意味を有するものとする。
【0104】
本明細書および特許請求の範囲において、1つ以上の要素のリストに関して使用されている場合、「少なくとも1つ」という語句は、要素リスト中の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも、要素リスト中に特に列挙された個々の全ての要素の少なくとも1つを包含するものではなく、要素リスト中の要素の任意組合せを除外するものではないと理解すべきである。この定義は、「少なくとも1つ」という語句が適用されている要素リスト中に特定されている要素以外の要素が、特定されている要素に関係しているか関係していないかにかかわらず、任意に存在しうることも認める。従って、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同義的に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同義的に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、Bの存在を伴わない少なくとも1つ(任意に2つ以上を包含する)のA(および、任意にB以外の要素を包含する);他の実施形態において、Aの存在を伴わない少なくとも1つ(任意に2つ以上を包含する)のB(および、任意にA以外の要素を包含する);さらに他の実施形態において、少なくとも1つ(任意に2つ以上を包含する)のA、および少なくとも1つ(任意に2つ以上を包含する)のB(および、任意に他の要素を包含する);等を意味することができる。
【0105】
特許請求の範囲において、ならびに前記の明細書において、全ての移行句、例えば「含む」、「包含する」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「関与する」、「保持する」等は、非制限的であり、即ち、包含するが限定しないことを意味するものと理解される。United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures,Section 2111.03に明記されているように、移行句「〜からなる」および「〜から本質的になる」だけは、それぞれ、制限的または半制限的移行句であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノ構造物を形成するための方法であって、前記方法は:
ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、触媒材料と接触させて、ナノ構造物の形成を生じる工程を含み、前記ナノ構造物前駆体材料が少なくとも1つの炭化水素を含み、
ここで、前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約400℃未満の温度に維持される、方法。
【請求項2】
カーボンナノ構造物を形成するための方法であって、前記方法は:
ナノ構造物前駆体材料を含む反応物蒸気を、触媒材料と接触させて、ナノ構造物の形成を生じる工程を含み、
ここで、前記反応物蒸気が、酸素含有化学種または窒素含有化学種を実質的に含有せず、前記ナノ構造物が、約1×10 ナノ構造物のグラム数/触媒材料のグラム数、またはそれより高い触媒効率で形成される、方法。
【請求項3】
前記ナノ構造物前駆体材料が、ガスまたはガス混合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応物蒸気がアルキンを含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記アルキンが、エチン、プロピン、ブタ−1−エン−3−インまたは1,3−ブタジインである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応物蒸気が、エチレン、水素およびアルキンを含む、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記反応物蒸気が、容積で、35%以下のアルキンではない炭化水素、70%以下の水素、および0.1%以下のアルキンを含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記反応物蒸気が、容積で、35%以下のエチレン、70%以下の水素、および0.1%以下のアルキンを含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記反応物蒸気が、容積で、約16%〜約35%のエチレンを含む、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記反応物蒸気が、容積で、約16%〜約70%の水素を含む、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記反応物蒸気が、ヘリウムをさらに含む、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記反応物蒸気が、アルゴンをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記反応物蒸気が、容積で、20%のエチレン、51%の水素、および29%のヘリウムを含む、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記反応物ガスが酸素含有化学種を実質的に含有せず、但し、前記酸素含有化学種が水でないものとする、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記接触の実施が、少なくとも1つの炭素含有副生成物を含む生成物蒸気の形成を生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項16】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約400℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約300℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約200℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約100℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約75℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約50℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約30℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記反応物蒸気が、前記触媒材料との接触前に、約25℃未満の温度に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜23のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約60℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項25】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜24のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約80℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項26】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜25のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約100℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項27】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜26のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約300℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項28】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜27のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約500℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項29】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜28のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約700℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項30】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜29のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約900℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項31】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約1100℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項32】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜31のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、少なくとも約1300℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項33】
下記の工程をさらに含む、請求項1〜32のいずれか1つに記載の方法:
前記反応物蒸気を、導入の実施前に、約700℃〜約1200℃の温度に予熱する工程;および
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、冷却する工程。
【請求項34】
前記反応物蒸気を、前記触媒材料との接触前に、400℃未満の温度に冷却する工程をさらに含む、請求項1〜33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
前記ナノ構造物が、前記触媒材料の表面上に形成される、請求項1〜34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
前記ナノ構造物がナノチューブである、請求項1〜35のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記ナノ構造物が、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブである、請求項1〜36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ構造物が、多層カーボンナノチューブである、請求項1〜37のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記ナノ構造物の長軸が、実質的に整列され、前記触媒材料の表面に平行ではないように、前記ナノ構造物が前記触媒材料の表面の上またはその中に配列される、請求項1〜38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
前記ナノ構造物の長軸が、前記触媒材料の表面に実質的に平行であるように、前記ナノ構造物が触媒材料の表面の上またはその中に配列される、請求項1〜39のいずれか1つに記載の方法。
【請求項41】
前記触媒材料が、金属または金属酸化物を含む、請求項1〜40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記触媒材料が鉄を含む、請求項1〜41のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
前記少なくとも1つの炭素含有副生成物が、揮発性有機化合物(VOC)または多環式芳香族炭化水素(PAH)である、請求項1〜42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記揮発性有機化合物が、メタン、エタン、プロパン、プロペン、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,3−ブタジイン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキセンまたはベンゼンである、請求項1〜43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記揮発性有機化合物が、メタン、1,3−ブタジエンまたはベンゼンである、請求項1〜44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記多環式芳香族炭化水素が、ナフタレン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、クリセン、コロネン、トリフェニレン、ナフタセン、フェナントレレン、ピセン、フルオレン、ペリレンまたはベンゾピレンである、請求項1〜45のいずれか1つに記載の方法。
【請求項47】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の10%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜46のいずれか1つに記載の方法。
【請求項48】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の5%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜47のいずれか1つに記載の方法。
【請求項49】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の3%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜48のいずれか1つに記載の方法。
【請求項50】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の2.6%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜49のいずれか1つに記載の方法。
【請求項51】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の2.0%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜50のいずれか1つに記載の方法。
【請求項52】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の1.5%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜51のいずれか1つに記載の方法。
【請求項53】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の1.0%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜52のいずれか1つに記載の方法。
【請求項54】
前記生成物蒸気が、1つ以上の揮発性有機化合物を、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の0.9%未満の量で含み、前記揮発性有機化合物がエチレンでない、請求項1〜53のいずれか1つに記載の方法。
【請求項55】
前記生成物蒸気が、メタンを、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の0.4%未満の量で含み、メタンが前記反応物蒸気に実質的に存在しない、請求項1〜54のいずれか1つに記載の方法。
【請求項56】
前記生成物蒸気が、1,3−ブタジエンを、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の0.4%未満の量で含み、1,3−ブタジエンが前記反応物蒸気に実質的に存在しない、請求項1〜55のいずれか1つに記載の方法。
【請求項57】
前記生成物蒸気が、ベンゼンを、前記ナノ構造物の形成中に反応室から出る前記生成物蒸気の全容積の0.3%未満の量で含み、ベンゼンが前記反応物蒸気に実質的に存在しない、請求項1〜56のいずれか1つに記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−530663(P2012−530663A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516062(P2012−516062)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/001745
【国際公開番号】WO2010/147656
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(596060697)マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー (233)
【出願人】(511306170)ユニバーシティー オブ ミシガン, ザ ボード オブ リージェンツ アクティング フォー アンド オン ビハーフ オブ ザ シー/オー テクノロジー マネージメント オフィス (1)
【出願人】(511305807)ウッズ ホール オーシャノグラフィック インスティテュート (1)
【Fターム(参考)】