説明

アルギン酸塩体を含む胃内滞留型システム

本発明は、少なくとも1種の活性薬剤成分のための少なくとも1つの放出デバイス、および、放出デバイスに連結された少なくとも1つの膨張体を含む胃内滞留型システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胃内において、少なくとも1種の活性薬剤物質(=活性薬剤成分)の制御された連続的放出を行うための、経口的に適用可能な胃内滞留型システムであって、少なくとも1つの放出デバイスおよび、該放出デバイスに強固に連結された少なくとも1つの膨張体を含み、該1または2以上の放出デバイスおよび該1または2以上の膨張体が互いに独立して機能することができる前記システムに関する。
【0002】
薬剤開発の1つの目的は、数時間一定であり続ける患者の体内の活性成分レベルを維持することが可能な薬剤の形態を提供することである。ところが、迅速に分解する錠剤では、これらの錠剤はその中に含む活性薬剤を一度に放出してしまうため、そのことを達成することができない。この理由から、制御された様式で、長時間にわたり、その中に含まれる活性薬剤成分を連続的に放出することが可能な錠剤型薬剤が開発されてきた。
【背景技術】
【0003】
こうして、US 5,296,233は、二重のサブコーティングを含むカプセル状医薬であって、該医薬が固形の活性成分含有カプセルコアと二重サブコーティング組成物とを含むものを記載している。その二重サブコーティング組成物は、水溶性フィルム形成ポリマー、例えばポビドンを含み、カプセルコアに適用される第1のサブコーティング、および、少なくとも1種の水溶性フィルム形成ポリマーと疎水性可塑剤(例えば、ヒマシ油)との混合物を含む第2のサブコーティングを含む。さらに、この医薬は滑らかで均質な実質的に気泡のない外部コーティングを有し、その比較的大きな体積にもかかわらず、当該医薬を容易に飲み込むことができるようになっている。
【0004】
US 4,983,401は、pH感受性フィルム形成ポリマーからなるpH制御型拡散膜を利用した徐放性医薬製剤を記載している。そのフィルム形成ポリマーは、開始ポリマーに、エステル結合を介して、カルボキシル基のうちの1つで取り付けられ、その一方、第2のカルボキシル基が、修飾されたフィルム形成ポリマーが低いpHで疎水性であり、高いpHで親水性となるように、遊離酸としてフリーのままになっているフタル酸基を含んでもよい。
【0005】
EP 0 259 219 A2には、活性成分が侵食性の(erodible)錠剤コアから外部へ放出される中央開口部を有する、プレスコート錠(press-coated tablet)が記載されている。錠剤コアの厚さは中央開口部から末端部に向けて増加しており、これは、活性物質が放出されるにつれて侵食部と開口部との間の距離の増加をもたらすが、表面積の増加により相殺される。
【0006】
EP 0 542 364 A1から、少なくとも1種の活性成分の液状媒体中への制御された放出を行うためのデバイスが知られ、同デバイスは錠剤の形態で存在する。そのデバイスは活性物質および媒体の両方に非透過性である被覆を含む。該被覆は、その中に少なくとも1つの開口部を有し、空洞を規定する。該空洞は活性物質を含むコアにより充填され、該コアは該開口部の範囲内に広がっている。錠剤の幾何学的形状および組成は、活性物質を顕著な期間にわたり一定速度で放出できるようになっている。
【0007】
EP 0,779,807,A1は、活性物質の制御された放出のためのプレスコート錠を開示している。該錠剤は、少なくとも1種の活性物質を含む侵食可能なコアを有し、被覆を形成し、少なくとも1つの開口部を有する高度に耐侵食性のコーティング層を有する。該コアは、尖っているかまたは狭くなっている、テーパー状の端部領域を有するように形成されており、そして、その尖っているかまたは、狭くなっている端部領域がプレスコート錠の外端まで伸び、その場所でコアを取り囲むコーティング層の塊を途切れさせ、錠剤の外端開口部を形成するように錠剤内に位置している。
【0008】
EP 0,797,429,A1は、活性物質が、デバイスの外部膜にある出口開口部を通って放出される、胃腸管の流体内における活性物質の連続的放出のための浸透圧性の(osmotic)デバイスを記載している。その出口開口部は、それが粘膜の表面と接することができないように、外部膜に対して凹んだ外部膜の位置に設置されている。
【0009】
これらの経口的に適用可能な投薬形態でも、活性薬剤成分の血漿濃度は患者によって異なることがあり、予測困難であるということが問題点である。その理由は、活性薬剤成分の吸収性が胃腸管内の領域ごとに大きく異なるため、および、投与された投薬形態がそれぞれの患者で異なる速度で胃腸管内を通って輸送されるためである可能性がある。胃腸管に沿って変化する吸収性に関連してよく用いられる用語は、「吸収ウィンドウ」である。例えば、いくつかの活性薬剤成分は幽門の近くの腸の部分で良好に吸収される。
【0010】
幽門のすぐ近くに、多種の活性薬剤成分に対し最高の吸収能力を提供する、約30cm長の十二指腸が存在する。幽門からより遠く離れた、腸のより下位の部分では、これら活性薬剤成分は、一般に極めて低い量で吸収されるにすぎない。現在のところ、患者における活性薬剤成分の移動(transit)速度に関し、信頼できる記述を行うことができないため、活性薬剤成分が、その経口投与後に、いつそこに含まれる活性薬剤成分の吸収に関して好ましい胃腸管の領域内に存在するかを予測することができない。
【0011】
胃腸管で吸収され、好ましくは、十二指腸内または小腸の上部に吸収ウィンドウを有する活性薬剤成分の、持続的な、一定の血漿濃度を可能にするために、胃内での持続した滞留時間を有する固形の活性薬剤成分は、上述の課題に対する解決策を見出すための期待できる手段である。かかるシステムもまた「胃内滞留型システム」と言われる。
【0012】
滞留胃内滞留型システム、すなわち、カプセルまたは錠剤よりも長い胃内滞留時間を有する投薬の形態は、それ自体知られている。活性薬剤成分を含まない胃内滞留型システムは、少なくとも部分的に胃を満たして満腹感を生じさせ、そのことにより体重の減少を達成するのに役立つ。活性な成分を含む胃内滞留型システムは、胃内での活性薬剤成分の遅延放出を可能にする。
【0013】
胃内滞留型システムは、薬の既知の服用習慣が維持できるように、どのように薬を服用するかについての患者に対する指図に関して、従来の固形の経口医薬形態に大部分対応するべきである。それらは、許容可能な大きさであるべきであり、嚥下が容易であるべきである。加えて、胃内滞留型システムは、十分に長い間胃内に残り、そこで、制御された様式で該システム中に含まれた活性薬剤成分を放出すべきである。その役割を果たしてから、胃内滞留型システムは、胃腸管内で分解されるか、または、天然のルートを経由して安全にそこから出て行くべきである。
【0014】
このために、胃の内容物よりも低い密度を有する胃内滞留型デバイスが開発されてきた。これらのデバイスは、その浮力により、胃液または胃内容物上に浮くことができる。例えば、WO 02/85332 A1は、高い割合の低密度の親油性物質を有するデバイスを記載している。
【0015】
EP 0 326 816 Aは、胃腸管内での長い滞留時間を保証し、少なくとも1つの構造要素によって空洞が包み込まれた、浮くことができる活性薬剤の投薬形態を開示している。より詳細には、その構造要素は、発泡した、または、多孔質の高分子マトリックス、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリシロキサン等であってもよく、これらは任意に、折り畳み可能もしくは巻き取り可能なフィルムまたは錠剤コアの形態、または層状の形態であってもよい。あるいは、その構造要素は、中空粒子、例えば、活性薬剤を含むマトリックス構造中に埋め込まれた、特にカプセル中での使用のための、ガラスもしくはセラミック等の中空粒子であり得る。その構造は活性薬剤の放出を制御する膜を備えていてもよい。
【0016】
胃内でのより長い滞留時間を達成するもう1つの手段は、大きさや形の理由で幽門を通過することができず、それ故に胃内を出て行くことができない胃内滞留型システムを開発することであった。これらのデバイスは一般に圧縮された形態で存在し、胃液との接触時にのみ意図された大きさに展開する。
【0017】
例えば、WO 02/00213 A1は、極めて迅速に分解する物質であるタンニン酸および少なくとも1種のヒドロゲルからなる、迅速に拡張する製剤での胃内滞留型の投薬形態を開示している。
【0018】
WO 2005/079384 A2もまた、拡張可能な胃内滞留型デバイスを開示し、該デバイスは、活性薬剤成分を含んでもよい、乾燥多糖類ゲルを含む。
【0019】
WO 01/97783 A1は、胃内滞留型システムの大きさおよび膨張特性が胃内でのその滞留時間に及ぼす影響を示している。
【0020】
加えて、ガスの発生による体積の増加により、長期間にわたり胃内に滞留し、さらには胃内容物上に浮く胃内滞留型システムが知られている。
【0021】
この例は、活性成分が、胃液との接触時に二酸化炭素または窒素を発生する化合物と共に、疎水性膜でできた閉じた袋に収容されている、US 4,996,058による投薬形態である。この胃内滞留型システムにおいて、活性成分は袋内に入る胃液によって溶解され、活性成分の放出を制御する袋の膜を通って放出される。
【0022】
このタイプのシステムは、例えば、US 4,207,890およびDE 44 19 818 A1に記載されている。それらの作動様式は、本質的に、袋を活性成分で満たし、その袋が定義された期間内に溶解し、活性成分が制御された様式で環境に放出されることに基づいている。体積の増加は、袋の中に、適切な気体発生物質(例えば炭酸水素ナトリウム等)または気体発生物質混合物も存在し、塩酸を含む胃液が袋に入る際、それが化学反応により、気体、例えば、COを発生することで達成される。その過程において、膜からなる袋は言うなれば膨らみ、そして、十二指腸へのシステムの通過を妨げる大きさに達する。
【0023】
胃液が袋に入るときに、活性成分が同時に放出される。活性成分の放出特性は、その形により(例えば、活性成分がマイクロカプセル化粒子として存在する)、または、膜の特性により制御することができる。一度活性成分が膜を介して拡散し、そのことにより胃内容物に到達すると、それは胃粘膜または腸壁を介して吸収され得る。システムが胃内に長時間留まるため、活性成分の胃内における制御された放出は、この長い時間、好ましくは、24時間までの間行われる。
【0024】
二酸化炭素発生成分を含む胃内滞留型デバイスは、WO 03/011255 A1およびUS 2006/003003 A1にも記載されている。
【0025】
しかし、浮揚性システムの機能は、胃内に存在する液体の量に依存する。そもそもかかる投薬形態の浮揚を可能にするためには、胃内に最低限の量の胃内容物または胃液がなければならない。しかし、空腹被験者(fasting proband)においては、胃内に平均20ml〜50mlの液体しか存在しない。したがって、空腹患者において、安定した浮揚を実現することはほとんどできず、そしてそれ故、システムが胃から出て行くのを浮力により回避することはほとんど不可能である。これもまた、そのタイプのシステムの非信頼性の理由であるようである。
【0026】
胃内におけるシステムの定着を保証する役割から、活性薬剤成分を放出する役割を分離することによる、別の手段が採用されている。活性薬剤成分含有マトリックスおよび膨張層からなる、そうした二重のシステムが、例えば、US 2005/0019409 A1およびUS2006/0013876 A1に記載されている。しかし、かかるシステムの問題点は、マトリックスからの活性薬剤成分の放出が拡散制御型であり、場合によっては、胃内容物、pH値、イオン強度、および圧力等の環境条件に左右され得ることである。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、従来技術から知られた胃内滞留型システムの問題点を有しない、活性薬剤成分の長時間にわたる制御放出のための胃内滞留型システムを開発する目的に基づいている。
【0028】
この目的は、互いに独立して機能するが、互いに強固に連結されている2つの要素を含む、胃内滞留型システムによって達成される。第1の要素(要素A)は、胃内におけるシステムの滞留時間を延長する、好ましくはアルギン酸ナトリウムに基づく、少なくとも1つの膨張体である。第2の要素(要素B)は、活性薬剤成分のための少なくとも1つの放出デバイスであって、該活性薬剤成分の制御された放出、例えば、浸透圧により制御された、または侵食により制御された放出を可能にするデバイスある。
【0029】
したがって、本発明の主題は、少なくとも1つの膨張体、および、少なくとも1種の活性薬剤成分の放出のための、少なくとも1つのデバイスを含む、胃内滞留型システムであって、該1つまたは2つ以上の膨張体および該1つまたは2つ以上の放出デバイスは互いに強固に連結されているが、互いに独立して機能することができるシステムである。
【0030】
したがって、本発明の胃内滞留型システムは、1つのみの膨張体を有する態様だけでなく、複数の膨張体を有する態様を含んでもよい。同様に、それは、1つのみの放出デバイスを有する態様を含んでも、数個の放出デバイスを有する態様を含んでもよく、それによって、1種の同じ活性薬剤成分または異なる活性薬剤成分を投薬できる。当然のこととして、以下に述べる、膨張体および放出デバイスに関する記述は、たとえ以下で単数形が用いられている箇所でも、本発明の胃内滞留型システムの全ての態様に対し適用される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、pH3の水性媒体における、アルギン酸ナトリウムに基づく膨張体の相対質量変化のダイアグラムを示した図である。
【0032】
【図2】図2は、pH4.5の水性媒体における、アルギン酸ナトリウムに基づく膨張体の相対質量変化のダイアグラムを示した図である。
【0033】
【図3】図3は、段階的にpH値を上げた水性媒体における、アルギン酸ナトリウムに基づく膨張体の相対質量変化のダイアグラムを示した図である。
【0034】
膨張体は、投薬後の胃内での膨張により、胃内におけるシステムのより長い滞留時間を確保する。好ましくは、膨張体は、良好な膨張特性を特徴とする、アルギン酸ナトリウムに基づいている。胃内への導入後、膨張体はその完全な大きさに展開し得る。ヒトの腸に存在する環境において、膨張体は迅速に溶解し、胃から排出された後、腸内での蓄積およびそれによる潜在的な腸閉塞のおそれを回避することができる。
【0035】
好ましい態様においては、薬学的に許容し得るカルシウム塩がアルギン酸ナトリウムに添加されるか、もしくは、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸カルシウムの混合物が用いられる。アルギン酸ナトリウムは、pH値が1〜2においてのみ十分な安定性を示すが、ヒトの腸内の環境においては、比較的迅速に分解する。カルシウム塩の添加によって、膨張体またはアルギン酸ナトリウム体の膨張特性は、前述のものよりも高いpH値で安定化する。驚くべきことに、安全性の理由から要求される膨張体の分解特性は、たとえカルシウムイオンやアルギン酸カルシウムがそこへ添加されていても、腸の「中性の」環境中では維持される。
【0036】
カルシウムイオンの添加は、主として薬学的に許容し得る任意のカルシウム塩または2種または3種以上のかかるカルシウム塩の任意の混合物の添加によって行うことができる。薬学的に許容し得るカルシウム塩は、例えば、酢酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、サイクラミン酸カルシウム、ホリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムである。
【0037】
膨張体に含まれるカルシウムイオンの割合は、膨張体の質量に対して、0.1〜10重量%であってもよい。好ましくは0.3〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%である。最も好ましくは、膨張体は0.6〜2重量%のカルシウムイオンの割合を有する。
【0038】
カルシウムイオンの添加への代替として、または、これに加えて、薬学的に許容し得る塩の形態の亜鉛イオンおよび/またはアルミニウムイオンを用いることも可能である。
【0039】
薬学的に許容し得る亜鉛塩は、例えば、酢酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ビスアスパラギン酸水素亜鉛(zinc bishydrogen aspartate)、塩化亜鉛およびグルコン酸亜鉛である。薬学的観点から用いることのできるアルミニウム塩は、例えば、水酸化アルミニウム、アルゲドレート(algedrate)(47〜60%酸化アルミニウム(Al))、およびリン酸アルミニウムである。
【0040】
膨張体に含まれる1種または2種以上の亜鉛塩または1種または2種以上のアルミニウム塩の割合は、膨張体の質量に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜25重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。
【0041】
膨張体のpH依存分解特性が維持されているならば、同じく膨張特性を有するさらなる高分子とのアルギン酸ナトリウムの混合物を用いることも可能である。例えば、アルギン酸ナトリウムと、クロスカルメロースナトリウム、ポリカルボフィル(ジビニルグリコールで架橋されたポリアクリレート)、ポリエチレンオキシドおよび/またはセルロース誘導体との混合物に言及することができ、クロスカルメロースナトリウムの添加が特に好ましい。セルロース誘導体の中では、非水溶性セルロース誘導体、特にエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0042】
他の高分子の割合は、膨張体の質量に対して、好ましくは1〜30重量%であり、より好ましくは3〜20重量%であり、最も好ましくは、5〜15重量%である。
【0043】
膨張体を調製するために、さらなる好適な賦形剤、例えば、流動調節剤(flow regulator)、潤滑剤または滑剤、フィラー、バインダー、および/または付着防止剤(antiadherent)等を付加的に用いることができる。フィラーとしては、糖類誘導体、糖類、例えば、スクロースやグルコース等、代替糖、例えば、キシリトールやソルビトール等を用いることができる。ラクトースまたは微結晶セルロースが特に好ましく用いられる。バインダーとしては、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガカント、ポリエチレングリコール、および澱粉誘導体を用いてもよい。使用に適した滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、ステアリン酸およびその塩、ワックス、高分散二酸化ケイ素、および水素化植物性脂肪である。
【0044】
さらにまた、投薬形態において局所的にpHに影響を与えることのできる物質、例えば、クエン酸、ポリカルボフィル、またはアルゲドレート等を用いてもよい。
【0045】
本発明の胃内滞留型システムの放出デバイスは、そこに含まれる活性薬剤成分の、長時間にわたる、好ましくは適用の全期間にわたる、一定速度での放出を可能にする。活性薬剤成分の放出は、拡散により制御された活性薬剤放出を阻害するであろう環境条件とは無関係に行われ、例えば、浸透により制御されるか、または侵食により制御される。
【0046】
膨張体と放出デバイスとは互いに強固に連結されている。これを達成するために、膨張体と放出デバイスとを、互いに圧着するか、または互いに接着してもよく、これにより胃内滞留型システムを、例えば、二層または多層錠の形態で、または、プレスコート錠の形態で提供してもよい。
【0047】
膨張体と放出デバイスとを互いに強固に連結する役割をする接着剤については、生理学的に耐容される、薬学的に許容し得る接着剤を用いる。接着特性を有する高分子を接着剤として用いてもよい。これらは、例えば、アクリレート、メチルメタクリレートポリマー、デキストリンに基づく接着剤、アクリレート−ビニルアセテートに基づく接着剤、カルボキシビニルポリマー、酢酸セルロース、およびエチルセルロースを含む。
【0048】
しかしながら、膨張体および放出デバイスを、活性薬剤成分に対してだけでなく、胃液に対しても透過性の共通の被覆の中、例えば網の中に配置することも可能である。
【0049】
本発明の胃内滞留型システムの一態様において、放出デバイスは浸透圧性のシステムであり、これはシングルチャンバーシステムの形態で、またはマルチチャンバーシステムとして存在してもよい。それは、空間的に分離された活性薬剤成分のための領域と浸透活性物質のための領域とが、膜によって互いに分離されていない態様の形態で存在してもよい。
【0050】
放出デバイスがシングルチャンバーシステムとして設計される場合は、活性薬剤成分含有コアは小さな開口部を有する半透性高分子膜によって囲まれている。この放出デバイスの活性薬剤成分含有コアは一般に、活性薬剤成分と賦形剤との混合物からプレスされる。高分子膜は、スプレー工程によりコアに適用してもよく、そこでは高分子がさらなる賦形剤とともに溶液または分散体としてコアに適用され、乾燥される。高分子膜の出口開口部はレーザービームで形成してもよい。
【0051】
本発明の胃内滞留型デバイスの構成要素としての、このタイプの放出デバイスの経口投与後、胃液中に含まれる水が高分子膜から活性薬剤成分を含むコアの中へ拡散する。活性薬剤成分および/またはこの目的のための浸透圧活性賦形剤は、コアに入り込んだ流体に溶解し始める。これにより、外部媒体に比して増加した浸透圧が放出デバイスの内側に生じ、その結果、活性薬剤を含む溶液が出口開口部を通して外側へ押し出される。コア内への、高分子膜を通したさらなる液体の再拡散が連続的に起こるため、活性薬剤成分溶液の流出による圧平衡化は、活性薬剤がコアに存在する限り高い均一性で起こる。活性成分放出の速度(rate)は、膜の組成、条件、および拡張により、またコアの構成物の溶解性によっても調整することができる。
【0052】
放出される活性薬剤成分が、膜を透過する胃液水分中で限られた溶解性しか有さず、それ故、不十分な浸透圧作用を有する場合、1種または2種以上の浸透圧活性物質を活性薬剤成分に添加してもよい。好ましくは、浸透圧活性賦形剤として用いられる物質は、塩、例えば、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、酸性リン酸カリウム(KHPO)、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、D−マンニトール、尿素、イノシトール、酒石酸、甘藷糖(cane sugar)、ラフィノース、グルコース、またはα−D−ラクトース一水和物等である。活性薬剤成分それ自身が十分な浸透圧活性を有する場合は、浸透圧活性物質の添加は行なわなくてもよい。
【0053】
浸透圧により制御された活性薬剤成分放出のための放出デバイスの高分子膜は半透性である。これは、それが水に対し透過性であるが、溶解物質に対しては本質的に非透過性であることを意味する。
【0054】
活性薬剤成分を浸透圧によって制御された様式で放出し得る放出デバイスのための半透膜の製造に用いることができる材料は、例えば、酢酸セルロース、セルローストリアセテート、アガーアセテート(agar acetate)、アミローストリアセテート、β−グルカンアセテート、β−グルカントリアセテート、アセトアルデヒドジメチルアセテート、セルロースアセテートメチルカルバメート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテートジメチルアミノアセテート、セルロースアセテートエチルカルボネート、セルロースアセテートクロロアセテート、セルロースアセテートエチルオキサレート、セルロースアセテートメチルスルホネート、セルロースアセテートブチルスルホネート、セルロースエーテル、セルロースアセテートプロピオネート、ポリ(ビニルメチル)エーテル共重合体、セルロースアセテートジエチルアミノアセテート、セルロースアセトアセテート、セルロースアセテートラウレート、メチルセルロース、セルロースアセテート−p−トルエンスルホネート、アラビアゴムのトリアセテート、アセチル化ヒドロキシエチルセルロースを伴うセルロースアセテート、ヒドロキシル化エチレンビニルアセテート、重合化エポキシド、アルキレンオキシドおよびアルキルグリシジルエーテルの共重合体等を含む。
【0055】
しかしながら、経口の浸透圧性治療システムは、胃粘膜の損傷可能性という問題点を、放出速度の制御の利点に加えて有し得る。この場合、高濃度の形態でしばしば放出される、活性化合物および賦形剤の損傷可能性は、小さな出口開口部による集中化(focusing)の結果として顕著に増加し得、腸壁が特定の箇所で深刻な損傷を受ける可能性がある。
【0056】
この場合、浸透圧により制御された活性薬剤成分放出のための放出デバイスは、粘膜表面に対して距離が維持される設計のデバイス領域に比して、出口開口部が、その領域に対し粘膜表面からさらに遠い距離となる、外部膜の位置に配置されるように有利に構成される。
【0057】
これに関連して、放出デバイスは、胃の内側を覆う粘膜表面と出口開口部との直接の接触または密接な接触が不可能であるような、中空、凹状曲面、湾曲したまたは角度の付いた軸、環状の形状、または他の設計的特徴を有し得る。これにより、活性薬剤成分溶液のための出口開口部は、出口開口部と近接する胃壁の部分との間に距離が維持されるため、強制的に胃壁の表面領域から離れて位置する。
【0058】
この距離により、活性薬剤成分溶液は、出口開口部を通過するのと同じ高濃度で出口開口部に対応する胃粘膜の小領域に接触するのではなく、希釈された形態でそのより広い領域に接触することになる。上述のように設計された放出デバイスを含む、本発明の胃内滞留型システムの投与後、粘膜を損傷する可能性を有する活性薬剤成分または賦形剤は、事前に希釈された後にのみ胃粘膜に達し、仮にあったとしても、従来の浸透圧性治療システムと比べ顕著に弱く後者を損傷し得るに過ぎない。
【0059】
浸透圧により制御された活性薬剤成分放出のためのマルチチャンバーシステムを含む放出デバイスを有する、本発明の胃内滞留型システムの態様において、活性薬剤成分調製物および浸透圧活性物質は、共通の被覆内の別々のチャンバー内に存在し、浸透圧活性物質を収容したチャンバーが開口部を有しないのに対し、活性薬剤成分を収容したチャンバーは活性薬剤成分が出て行くための開口部を有しており、同開口部は外部につながり、任意に前記共通の被覆を貫通する。
【0060】
浸透圧活性物質を収容するチャンバーは、少なくともその一領域において、半透膜により規定される。活性薬剤成分含有チャンバーの境界もまた、少なくともその一領域において柔軟でなければならない。かかる放出デバイスの適用後、浸透圧活性物質を有するチャンバーに入る液体は、そのチャンバーの容積の拡大を引き起こす。拡張の結果として、活性薬剤成分調製物は、そのコンパートメントから開口部を通して押し出され、それにより胃内に入る。
【0061】
活性薬学成分放出が侵食により制御される別の態様において、本発明のシステムは、膨張体が錠剤コアを囲むコーティング層を形成するプレスコート錠といった構造をしている。錠剤コアは活性薬剤成分を含む侵食性の塊(mass)からなる。錠剤コアを囲むコーティング層は、活性薬剤成分が出ることのできる開口部を有する。
【0062】
活性薬剤成分が、このシステムの放出デバイスを構成する錠剤コアから放出される放出速度は、(マトリックスに用いた高分子の膨張挙動/溶解性に依存する)その溶解/侵食速度(solubility/erosion rate)によってだけでなく、該錠剤コアの形状および大きさによって、例えば、開口部への距離が増加するに従い大きくなる侵食部を形成することによっても調整することができる。
【0063】
「侵食」という用語は、薬学技術において確立されており、固形物塊が「運び去られる」あらゆる過程を示す。これに関連して、固形体の質量減少が、固形成分の溶解によりもたらされるか、または、最初に起こる化学分解、例えば長い高分子鎖が、より易溶性のオリゴマー、モノマーまたは、他の分解産物に切断される化学分解によりもたらされるかは重要ではない。
【0064】
侵食性の塊は、生理学的に許容可能な高分子またはワックス状物質および、もし必要であれば、さらなる薬学的賦形剤からなる。かかる高分子の例は、多糖類、例えば、ゴム、澱粉誘導体またはセルロース誘導体等、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、ポリ乳酸、ポリグリコリド、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン、タンパク質、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニルまたはポリビニルピロリドンである。ワックス状物質は、例えば、水添ヒマシ油またはセチルステアリルアルコールである。さらなる薬学的賦形剤は、安定剤、可溶化剤、界面活性剤、フィラー、可塑剤、親水化剤、顔料または染料、pH値を調整する物質、流動調節剤、付着防止剤、潤滑剤等の群から選択してもよい。
【0065】
個々の成分の比率は適合性および意図する侵食速度により調整する必要がある。
【0066】
本発明は、放出デバイスが1または2以上の層の形態で存在し得る、侵食により制御される活性薬学成分放出のための態様も含む。
【0067】
本発明の胃内滞留型システムは、単層錠もしくは多層錠、またはプレスコート錠として存在してもよい。好ましい態様において、それは胃内で分解するコーティングを有するか、または、胃内で外皮が分解するカプセルの形態で存在する。このコーティングまたは外皮の目的は、少なくとも胃内滞留型システムの嚥下を容易にすることである。
【0068】
本発明の胃内滞留型システムは特に、システムが胃内に選別されて戻されることを保証する構造要素が、活性成分の連続的放出を行なうものとは別であるという利点を有する。これにより、消化段階にある胃の選別戻し(backsorting)機構が、本発明の胃内滞留型システムを「まだ十分に大きさが減少していない栄養成分」として保持し、活性薬剤成分の放出のために意図された期間の終了以前に、小腸内へさらに輸送されることを妨げることを保証できる。
【0069】
胃内滞留型システムの胃内での保持時間は、このように、活性薬学成分の放出の意図された期間まで延長することができ、それは、少なくとも4時間であるべきであるが24時間は越えず、好ましくは、6〜14時間であるべきである。
【実施例】
【0070】
[例1]:膨張体の調製
【表1】

【0071】
アルギン酸ナトリウムを微結晶セルロースと共に、結合剤としてポリビニルピロリドン溶液(エタノール中のKollidon(R)30)を用いて造粒した。乾燥に続き、得られた顆粒を分級した(粒径300〜800nm)。内部相と称するこの混合物に、ステアリン酸マグネシウムおよび高分散二酸化ケイ素からなる外部相を備えた。
【0072】
次いで、その調製物を直径13mm、質量600mgを有する二平面型錠剤(biplanar tablet)に打錠機により圧縮した。
【0073】
[例2]膨張体の調製
【表2】

【0074】
アルギン酸ナトリウムをラクトースおよび炭酸カルシウムと共に、結合剤としてポリビニルピロリドン溶液(エタノール中のKollidon(R)30)を用いて造粒した。乾燥に続き、得られた顆粒を分級した(粒径300〜800nm)。内部相と称するこの混合物に、ステアリン酸マグネシウムおよび高分散二酸化ケイ素からなる外部相を備えた。
【0075】
次いで、その調製物を直径13mm、質量600mgを有する二平面型錠剤に打錠機により圧縮した。
【0076】
[例3]浸透圧により制御された活性薬剤成分放出を伴う胃内滞留型システムの調製
【0077】
【表3】

【0078】
活性薬剤成分層の内部相、浸透圧活性層、および膨張体の構成物を、個々に造粒した。内部相に、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸マグネシウムと高分散二酸化ケイ素とからなる外部相を備えた後、活性薬剤成分層および浸透圧活性層を両凸の二層錠に圧縮し、その後それにコーティングを施した。そのコーティングに、開口部を、それを通って活性薬剤成分がこの放出デバイスから放出され得る活性成分層の領域に設けた。
【0079】
膨張体の顆粒に外部相を備えた後、該顆粒をその1面が凹面になっている錠剤に押し固め、次いで錠剤のその面を放出デバイスの浸透圧活性層に接着した。
【0080】
[例4]侵食により制御された活性薬剤放出を伴う胃内滞留型システムの調製
【0081】
【表4】

【0082】
膨張体の内部相および放出デバイスの構成物を、個々に造粒した。放出デバイスの内部相にステアリン酸マグネシウムおよび高分散二酸化ケイ素の外部相を備えた後、三角形の、先の尖った錠剤コアを押し固めた。膨張体の造粒された内部相に、同様にステアリン酸マグネシウムおよび高分散二酸化ケイ素の外部相を備えた。その後、調製すべきプレスコート錠のコーティング層のための顆粒の一部を、打錠機のマトリックスに充填し、事前に調製した錠剤コアをその上に置き、残ったプレスコート錠のための顆粒をその上に配置し、その圧縮後に両凸のプレスコート錠を得た。
【0083】
[例5]膨張体の膨張挙動の決定
【0084】
様々な膨張体の膨張挙動を決定するため、例1(カルシウムなし)または例2(カルシウムあり)により作製した膨張体の質量の相対変化を決定した。このために、膨張体を、攪拌羽根を有する溶解試験機(dissolution tester)にて、1分間50回転、37℃(±0.5℃)の温かさの媒体中で測定した。質量の相対変化は式(m−m)/mにより計算し、式中、mは実験開始時(t=0の時点)の膨張体の質量、およびmは、媒体中でのt分のインキュベーション後の膨張体の質量である。
【0085】
初めに膨張体の膨張特性を、媒体中の一定のpH値で検討した。
これらの検討結果を図1および2に示す。媒体は、pH3(図1)またはpH4.5(図2)のいずれかであった。これらの実験結果の表示は、アルギン酸ナトリウムに基づく、カルシウムイオンを含む膨張体の、カルシウムを含まない膨張体に比した優れた膨張特性を示している。加えて、カルシウムイオンを含む膨張体は改善された安定性を示す。
【0086】
さらなる一連の実験において、膨張体の膨張特性を、変動する媒体のpH値で検討した。このために、媒体のpH値を、段階的に1.2から、3.0および4.5を経て、6.8まで増加させた。これらの実験の結果を、図3に示す。これらの結果は同様に、アルギン酸ナトリウムへのカルシウムイオンの添加が、膨張体の膨張特性を改善することを示している。加えて、高いpH値における膨張した膨張体の崩壊がカルシウムイオンの添加により影響されないことがここから明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の活性薬剤成分のための少なくとも1つの放出デバイス、および、
b)前記放出デバイスに連結された少なくとも1つの膨張体、
を含む、胃内滞留型システム。
【請求項2】
膨張体がアルギン酸ナトリウムに基づくことを特徴とする、請求項1に記載の胃内滞留型システム。
【請求項3】
カルシウムイオンまたはアルギン酸カルシウムが、アルギン酸ナトリウムに添加されていることを特徴とする、請求項2に記載の胃内滞留型システム。
【請求項4】
カルシウムイオンが、酢酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、シクラミン酸カルシウム、ホリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムからなるカルシウム塩の群から好ましくは選択される、薬学的に許容し得るカルシウム塩の形態で添加されていることを特徴とする、請求項3に記載の胃内滞留型システム。
【請求項5】
カルシウムイオンの比率が、膨張体の質量に対し、0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜8重量%、より好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは0.6〜2重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の胃内滞留型システム。
【請求項6】
亜鉛イオンおよび/またはアルミニウムイオンが、好ましくは、1種または2種以上の薬学的に許容し得る亜鉛塩および/またはアルミニウム塩の形態で、アルギン酸ナトリウムに添加されていることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項7】
亜鉛イオンが、酢酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、ビスアスパラギン酸水素亜鉛、塩化亜鉛およびグルコン酸亜鉛からなる亜鉛塩の群から好ましくは選択される、薬学的に許容される亜鉛塩の形態で添加され、および、アルミニウムイオンが、水酸化アルミニウム、アルゲドレート(酸化アルミニウム)およびリン酸アルミニウムからなるアルミニウム塩の群から好ましくは選択される、薬学的に許容されるアルミニウム塩の形態で添加されていることを特徴とする、請求項6に記載の胃内滞留型システム。
【請求項8】
亜鉛塩またはアルミニウム塩の比率が、膨張体の質量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜15重量%であることを特徴とする、請求項6または7に記載の胃内滞留型システム。
【請求項9】
膨張体が、アルギン酸ナトリウムと、クロスカルメロースナトリウム、ポリカルボフィル、ポリエチレンオキシドおよびセルロース誘導体、好ましくは非水溶性セルロース誘導体、特にエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる高分子の群から好ましくは選択される、少なくとも1種のさらなる高分子との混合物を含むことを特徴とする、請求項2〜8のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項10】
さらなる高分子の比率が、膨張体の質量に対して、0.1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜15重量%であることを特徴とする、請求項9に記載の胃内滞留型システム。
【請求項11】
膨張体が、フィラー、バインダー、流動調節剤、潤滑剤、滑剤、付着防止剤およびpH値に影響を与える物質からなる群から好ましくは選択される、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項12】
放出デバイスが、浸透圧により制御された、または侵食により制御された様式で、活性薬剤成分を放出することが可能なことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項13】
放出デバイスが浸透圧性システムであり、該システムはチャンバーを含み、該システムにおいて、活性薬剤成分に加えて浸透圧活性物質を任意に含む活性薬学成分含有コアが壁によって囲まれており、この壁はその少なくとも1つの領域に半透膜を有し、かつ活性薬学成分のための少なくとも1つの出口開口部を含むことを特徴とする、請求項12に記載の胃内滞留型システム。
【請求項14】
放出デバイスが浸透圧性システムであり、該システムは少なくとも2つのチャンバーを含み、該システムにおいて、活性薬剤成分および浸透圧活性物質が、共通の被覆内の別々のチャンバーに存在し、浸透圧活性物質を収容するチャンバーが開口部を有しないのに対し、活性薬剤成分を収容するチャンバーは開口部を有し、該開口部は外部につながり、および任意に前記共通の被覆を貫通し、胃内滞留型システムの適用後に浸透圧活性物質を有するチャンバーに入る液体が、そのチャンバーの容積の増加を引き起こし、それによって活性薬剤成分調製物がチャンバーから開口部を通して押し出されるようになっていることを特徴とする、請求項12に記載の胃内滞留型システム。
【請求項15】
放出デバイスが、活性薬剤成分を含む侵食性の塊を含むこと特徴とする、請求項12に記載の胃内滞留型システム。
【請求項16】
膨張体および放出デバイスが互いに圧着されているか、もしくは、互いに接着されていること、または、共通の被覆内に存在することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項17】
胃内で溶解するコーティングを好ましくは有する、プレスコート錠として、または、二層もしくは多層錠として、または、胃内で胃内滞留型システムを放出するカプセルの内容物として存在することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の胃内滞留型システム。
【請求項18】
膨張体および放出デバイスを、互いに接着するか、もしくは互いに圧着すること、または、共通の被覆内に収容することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の胃内滞留型システムの製造方法。
【請求項19】
活性薬剤成分の制御された投与のための、請求項1〜17のいずれかに記載の胃内滞留型システムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529056(P2010−529056A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510670(P2010−510670)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004188
【国際公開番号】WO2008/148478
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】