説明

アルケン製造用触媒、その製造方法及びアルケンの製造方法

【課題】アルカンからアルケンを酸化的脱水素によって製造するための、活性が向上した結晶性MoabTecd触媒の提供。
【解決手段】 式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られる触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカンからアルケンを製造するための触媒に関する。さらに詳しく言えば、式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られるアルカンを原料とするアルケン製造用触媒、その製造方法、及びその触媒を用いるアルカンからのアルケンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカンからアルケンを工業的に製造する方法としては、例えばペトロテック第28巻,第9号,699〜703頁(非特許文献1)などに記載されている、エタンを原料としてエタンクラッカーからエチレンを得る方法がある。
【0003】
また、触媒反応によって、アルカンからアルケンを得る方法も検討されている。例えば、メソ孔性ゼオタイプ触媒を用いる脱水素法によって、エタンからエチレンを得る方法やプロパンからプロピレンを得る方法が特開2004−189743号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
しかし、いずれの方法も反応温度が500℃以上となり、反応させるには大きな熱量を必要とするため、さらなる技術改良が進められている。そのひとつとして、酸化的脱水素法が挙げられる。酸化的脱水素法は、クラッカーや脱水素法と比較し、必要な熱量が大幅に少なくなるため、省エネルギープロセスになる可能性を秘めている。
【0005】
アルカンの酸化的脱水素法においては、MoとVを構成元素とする複合酸化物(以下、Mo−V複合酸化物という。)が触媒として多用されている。例えば、特表2008−545743号公報(特許文献2)では、MoavTaxTeyz(aは1.0、v、x及びyは各々約0.01〜約1.0であり、zは化合物を中性にするために必要な酸素原子の数である。)が触媒として用いられている。この他にも、多数の触媒が検討されているが、いずれも反応温度が400℃以上であったり、300℃程度の温度では1MPaを超える圧力を必要とするものばかりであった。
【0006】
高温、高圧などの過酷な条件を必要とする場合、製造装置の材質が高級化したり、コンプレッサーなど初期投資が大幅に必要となるうえ、オペレーションも複雑化する。そこで、よりマイルドな条件で反応可能な触媒の開発が望まれている。
【0007】
近年、上田らによって、Mo31xの結晶性酸化物が合成され、アルカンの酸化的脱水素反応に高活性であることが報告されている(例えば、Science and Technology in Catalysis, 91-96, 2006:非特許文献2)。この結晶性Mo31xを用いることにより、大気圧下、260〜360℃の温度でエタンからエチレンと酢酸が得られることが開示されているが、工業的にはさらなる高性能の触媒が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−189743公報
【特許文献2】特表2008−545743公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ペトロテック第28巻,第9号,699〜703頁
【非特許文献2】Science and Technology in Catalysis, 91-96, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、アルカンの酸化的脱水素反応によってアルケンを製造するための、より活性が向上した結晶性MoabTecd触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、結晶性Mo−V複合酸化物、あるいはさらにTeを含む結晶性Mo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られるMo−V系触媒がアルカンからアルケンを合成する反応に高活性であることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[3]のアルケン製造用触媒、[4]〜[7]のアルケン製造用触媒の製造方法、及び[8]〜[10]のアルケンの製造方法に関する。
[1] アルカンの酸化的脱水素反応によってアルケンを製造するための触媒であって、式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られるアルケン製造用触媒。
[2] 式(1)において、c=0.001〜0.3である前記1に記載のアルケン製造用触媒。
[3] 式(1)においてc=0である、式(2)
Moabd (2)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、dはMo、Vの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V複合酸化物を還元処理して得られる前記1に記載のアルケン製造用触媒。
[4] 式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理する工程(還元工程)を有することを特徴とするアルカンを原料とするアルケン製造用触媒の製造方法。
[5] 還元工程で使用する還元剤が、アルコール、水素ガス及びヒドラジンから選択される1種以上である前記4に記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
[6] 還元工程の前に、式(1)で示される結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を焼成する工程(焼成工程)を有する前記4または5に記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
[7] 還元工程の前及び/または後に式(1)で示される結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を加圧処理する工程(加圧工程)を有する前記4〜6のいずれかに記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
[8] アルカンを前記1〜3のいずれかに記載のアルケン製造用触媒の存在下で加熱することを特徴とする対応するアルケンの製造方法。
[9] 酸素の存在下で加熱を行う前記8に記載のアルケンの製造方法。
[10] アルカンがエタンであり、アルケンがエチレンである前記8または9に記載のアルケンの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、結晶構造を含むMo−V複合酸化物あるいは結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理することによって、アルケン製造用触媒の初期活性、及びアルケンの選択性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のMo−V複合酸化物(触媒1)の粉末X線回折(XRD)測定図。
【図2】実施例7のMo−V−Te複合酸化物(触媒7)の粉末X線回折(XRD)測定図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
[結晶性Mo−V−Te複合酸化物]
本発明のアルケン製造用触媒は、式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られる。
【0016】
結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物(以下、Teを含まない場合、すなわちc=0の場合も含めて「結晶性Mo−V−Te複合酸化物」という。)におけるMoとVの原子数の比率は、Mo:V=1.0:0.01〜1.0である。好ましくはMo:V=1.0:0.2〜0.6であり、さらに好ましくはMo:V=1.0:0.3〜0.5である。V原子の比率が0.01未満または1.0を超えると結晶性が低くなり、触媒性能が低下する。また、V原子の比率が1.0を超えるとアルカンを酸化しすぎてしまい、アルケンの収率が低下する。
【0017】
Te原子の比率はMo:Te=1.0:0〜1.0の範囲であり、好ましくは1.0:0.001〜0.3の範囲である。Te原子は存在しなくとも本発明の効果は発現するが、Teが含まれることにより触媒性能が一層向上する。Te原子の比率が0.01〜0.1の範囲であると、触媒のアルカン酸化に対する活性が向上する。Te原子の比率が1.0を超えると、結晶性が低くなり、触媒性能が低下することがある。
【0018】
本発明による結晶性Mo−V−Te複合酸化物とは、粉末X線回折を測定した場合に、図1及び図2に示される回折角に、結晶に由来するピークを有する化合物を指す。この場合、結晶に由来するピークはその存在が確認できればよく、強度は問題ではない。
従って、本発明の結晶性Mo−V−Te複合酸化物は非晶質構造を含んでいてもよいが、結晶性はできるだけ高いことが好ましい。結晶性か否かはX線回折スペクトルの回折角2θ(±0.3°)として、6.7°、7.9°、9.0°、22.2°及び27.3°にX線回折ピークが存在することにより判断する。このような結晶性化合物は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察で確認できる長径が0.01〜30μm、短径が0.001〜1μm程度の角柱結晶である場合が多い。
【0019】
特に望ましい結晶性化合物の構造としては、Science and Technology in Catalysis, 2006の93頁の図1(Fig.1)や図2(Fig.2)に示されている構造を挙げることができる。
【0020】
[触媒製造方法]
本発明のアルケン製造用触媒は以下の1〜4の工程を含む方法によって製造することができる。
1.結晶性Mo−V−Te複合酸化物を合成する工程(合成工程)、
2.結晶性Mo−V−Te複合酸化物を焼成する工程(焼成工程)、
3.結晶性Mo−V−Te複合酸化物を還元処理する工程(還元工程)、
4.結晶性Mo−V−Te複合酸化物を加圧処理する工程(加圧工程)。
【0021】
上記工程のうち、本発明で必須の工程は3の還元工程である。
2の焼成工程は還元工程の前に行うことが好ましい。4の加圧工程は還元工程の前でも後でもよいが、後が好ましい。また、加圧工程は焼成工程の前でもよいが、焼成工程の後が好ましい。
【0022】
それぞれの工程について以下に説明する。
1.合成工程
本発明の結晶性Mo−V−Te複合酸化物の合成に使用する原料化合物としては、特に制限はない。Mo源(Mo化合物)としては、例えばモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは水に可溶性であるため、水熱合成の原料として好適である。これらのMo原料化合物は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
V源(V化合物)にも特に制限はない。例えば、メタバナジン酸アンモニウム、シュウ酸バナジル、酸化バナジウム(V25)、バナジン酸アンモニウム、オキソ硫酸バナジル、硝酸バナジル、VO(acac)2等が挙げられる。これらは水に可溶性であるため、水熱合成の原料として好適である。これらのV原料は1種を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
Te源(Te化合物)にも特に制限はない。例えば、テルル酸(H6TeO6)、TeO2、テルル酸カリウム、TeCl4、Te(OC255、Te(OCH(CH324等が挙げられ、特にテルル酸及びTeO2が好ましい。
【0025】
原料となる、Mo化合物、V化合物及びTe化合物の使用割合は、得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物において、モリブデン(Mo)/バナジウム(V)/テルル(Te)=1:0.2〜0.6:0.001〜0.3(原子比)の範囲が好ましく、Mo/V/Te=1:0.3〜0.5:0.01〜0.1の範囲がさらに好ましい。これらの化合物を好適には水に投入して、水系原料混合物を調製する。このとき原料は溶媒に均一に分散させ、溶液あるいはスラリーにするのがよい。調製方法や混合順序に制限はない。例えば、あらかじめMo化合物、V化合物、Te化合物を含む水溶液を別々に調製し、Mo水溶液にV水溶液を加え、ついでこれにTe水溶液を加える方法をとることができる。また、すべての原料を一度に水に投入して、水系原料混合物を調製してもよい。好ましくは、MoとTeを含む水溶液を調製し、これに別途調製しておいたV水溶液を混合する方法がとられる。高濃度の水系原料混合物を調製する場合は、均一性を失わせないようMoとTeを含む水溶液にV水溶液を滴下する方法がとられる。水の使用量は、これら原料化合物を溶解できる程度か、溶解できなくても均一なスラリー状にできる程度であればよい。好適には、水1Lに対してMo化合物は0.05〜50mol、V化合物は0.01〜1.0mol、Te化合物は0〜0.5mol程度がよい。得られた水系原料混合物のpHは、好ましくは2〜4に調整される。
【0026】
Mo−V−Te複合酸化物は結晶性化合物が合成できる方法であればいかなる方法で合成してもよい。例えば、上述の水系原料混合物を乾燥、焼成する方法や、水熱合成法等が挙げられる。特に水熱合成法が好適である。
【0027】
水熱合成法は、Mo原料、V原料、及び必要に応じてTe原料を混合した水系原料混合物をオートクレーブなどの耐圧容器に入れて加熱して反応させる方法である。反応開始前にオートクレーブ内の空気の一部あるいは全量を窒素、ヘリウム等の不活性ガスで置換して行うのが好ましい。Mo−V−Te複合酸化物の酸素原子は水やMo原料、V原料、及びTe原料中の酸素原子から供給される。ガス状の酸素分子の存在は収率を低下させることがある。水熱合成の反応温度は100〜400℃、好ましくは150〜250℃が好適である。100℃未満では結晶性Mo−V−Te複合酸化物の収量が極端に低下する。400℃を超えてもよいが、耐熱容器などの機器コストが上昇する。反応時間は通常1〜100時間であり、好ましくは12〜72時間である。オートクレーブ内圧力は飽和蒸気圧であるが、必要に応じて圧力を変更することも可能である。水熱合成中撹拌を行ってもよい。
【0028】
水熱合成終了後の反応液は冷却した後、反応液に含まれる固体物質をろ過、水洗、乾燥する。乾燥温度は特に制限はないが、50〜200℃が好適であり、110〜200℃がより好ましい。
得られた固体物質は適当な溶媒で洗浄することができる。例えば、シュウ酸溶液中で加温し、処理することにより結晶性の低い成分がシュウ酸によって除去され、より結晶性の高い結晶性Mo−V−Te複合酸化物を得ることができる。
【0029】
また、必要に応じて担体を混合することもできる。担体としては、例えばシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア等が挙げられる。これらの担体は結晶性Mo−V−Te複合酸化物合成時に添加してもよいし、水熱合成後の結晶性Mo−V−Te複合酸化物に混合して、焼成等を行ってもよい。
【0030】
2.焼成工程
1の合成工程で得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物は、さらに気相中で加熱焼成することが好ましい。焼成温度は250℃以上、好ましくは300〜650℃である。焼成時間は、通常5分〜20時間、好ましくは1〜6時間である。焼成雰囲気は、空気中、不活性ガス中いずれでもよいが、実質上酸素を含まない窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気が望ましい。
【0031】
3.還元工程
得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物は還元処理される。還元処理の方法は気相還元でも液相還元でもよい。還元処理に当たっては結晶性Mo−V−Te複合酸化物を粉砕して表面積を増して行うのが好ましい。
【0032】
液相還元は、溶媒としてアルコールや炭化水素類を用いた非水系、水を用いた水系のいずれで行ってもよい。還元処理中は、結晶性Mo−V−Te複合酸化物は均一なスラリー状態が好ましい。
【0033】
還元剤としては、カルボン酸及びその塩、アルデヒド、過酸化水素、糖類、多価フェノール、ジボラン、アミン、ヒドラジンなどが用いられる。カルボン酸及びその塩としてはシュウ酸、シュウ酸カリウム、ギ酸、ギ酸カリウム、クエン酸アンモニウム等が挙げられ、糖類としてはグルコースが挙げられる。好ましい還元剤としてはヒドラジン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ハイドロキノン、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸カリウム等が挙げられ、最も好ましい還元剤はヒドラジン及びアルコールである。
【0034】
液相還元の温度は特に限定されないが、還元剤の種類に応じて適切な温度を選択することが好ましい。例えば、アルコールを用いる場合はその沸点において還流すればよい。ヒドラジン水溶液を用いる場合は室温において、還元処理を行うことができる。
【0035】
液相還元処理の実施形態はどのような状態であってもよい。例えば、アルコールで処理を行う場合、結晶性Mo−V−Te複合酸化物をアルコールに投入し、必要であれば一定時間加熱処理する。さらに詳しくは、アルコール中に結晶性Mo−V−Te複合酸化物を投入し、撹拌しながら加熱、あるいはリフラックス処理を行うことが挙げられる。
【0036】
アルコールの種類には特に制限はないが、処理操作上、粘性が高くないものが望ましい。例えばエタノール、i−プロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等が好適である。
【0037】
還元処理時間は適宜調整が可能であるが、通常1〜200時間程度が好ましく、1〜100時間がより好ましい。
【0038】
気相還元に用いる還元剤は、水素ガス、一酸化炭素、アルコール、アルデヒド、及びエチレン、プロペン、イソブテン等のオレフィンから選択される。好ましくは水素ガス(H2)である。気相還元では希釈剤として、例えばヘリウム、アルゴン、窒素ガス等の不活性ガスを加えてもよい。
還元温度は特に制限はないが、100〜500℃が望ましい。100℃未満では効果が十分ではなく、500℃を超えると結晶性Mo−V−Te複合酸化物の構造変化が起こる可能性がある。結晶性Mo−V−Te複合酸化物触媒の性能向上の観点から、200〜400℃での還元が特に望ましい。
【0039】
気相還元の時間は0.1〜100時間、好ましくは0.5〜100時間の間で適当に選択できる。
気相還元時の結晶性Mo−V−Te複合酸化物の形状は特に制限はなく、粉末状でも、固めてペレット状あるいはシート状にしたものでもよい。
【0040】
気相還元は、流通式、またはバッチ式のどちらでも実施できる。
流通式の場合は、例えば反応管に結晶性Mo−V−Te複合酸化物を充填し、還元剤を含むガスを流通させる。このときのガスの流通条件は特に制限はないが、結晶性Mo−V−Te複合酸化物1gに対し、1〜10nL/h程度のガスを流通させるのが望ましい。この場合、アップフロー、ダウンフローどちらも選択することができるが、粉末状の場合は、ダウンフローが望ましい。
【0041】
還元ガスは必要に応じて、不活性ガスで希釈して用いることができる。例えば、還元ガスが水素ガスの場合、不活性ガスとして窒素ガスと混合して用いることができる。
水素ガスと窒素ガスの混合比は任意であるが、例えば水素ガス:窒素ガス=1:99〜95:5(体積比)の割合で混合できる。水素ガス濃度が高すぎると触媒が激しく還元され、あるいは低すぎると還元されない可能性がある。好ましい混合割合は、水素ガス:窒素ガス=5:95〜25:75(体積比)である。
【0042】
4.加圧工程
加圧工程における加圧処理とは、結晶性Mo−V−Te複合酸化物に一定の圧力を加える操作をさす。例えば、結晶性Mo−V−Te複合酸化物粉末を油圧プレス機等を用いて、加圧圧縮する処理が挙げられる。このときの加圧力は、特に制限はないが、10〜5000MPaが望ましく、特に100〜500MPaが好適である。加圧処理により、角柱状のMo−V−Te複合酸化物結晶のアスペクト比が小さくなり、表面積が増加することによって触媒性能が向上すると考えられる。
【0043】
加圧圧縮後、結晶性Mo−V−Te複合酸化物を0.5〜3mm程度のペレットにカットし、触媒として用いてもよい。また、加圧後、再度乳鉢等で粉砕し、粉末として触媒として用いてもよい。
加圧処理は結晶性Mo−V−Te複合酸化物を合成後、還元前でも還元後でも行うことができる。
【0044】
[アルケンの製造]
以下、本発明のアルケン合成用の触媒を用いた、アルケンの製造方法について説明する。本発明におけるアルケン合成反応は、アルカン、酸素ガスを反応原料とし、気相で行うことが好ましい。アルカンとしては炭素数2〜5のアルカンが好ましい。具体的にはエタン、プロパンが好ましい。アルカンがエタンの場合には、反応式は次式のとおりである。
【化1】

【0045】
原料のアルカン、酸素ガスの比率は、爆発範囲を回避できる範囲であれば、いかなる比率でもよいが、モル比として低級アルカン:酸素ガス=1:0.1〜5が好ましく、1:0.5〜1.2がより好ましい。
【0046】
アルカンと酸素ガスを含む反応原料ガスは、必要に応じて窒素ガス、炭酸ガス(CO2)または希ガス等(希釈剤)で希釈して使用することができる。アルカンと酸素ガスとを反応原料とする場合、反応原料と希釈剤との比率は、モル比として反応原料:希釈剤=1:0.05〜9が好ましく、1:0.1〜3がより好ましい。
【0047】
本発明では、反応原料ガスは標準状態において、空間速度(SV)10〜15000hr-1、特に300〜8000hr-1で触媒層に流通させることが好ましい。空間速度が10hr-1より小さい場合、反応熱の除去が困難となる可能性がある。また、空間速度が15000hr-1より大きい場合、コンプレッサー等の設備が大きくなりすぎて、実用的でなくなることがある。
【0048】
反応原料ガス中にはアルカンの転化率向上あるいは副生物の抑制を目的として、水を0.5〜30mol%、好ましくは1〜20mol%添加することができる。水の添加量は、反応で製造する化合物に応じて調整することが望ましい。
【0049】
反応器の材質については特に制限はないが、耐食性を有する材料(例えば、SUS316L、ジルコニア、ハステロイ(登録商標)等)で構成した反応器が好ましい。
【0050】
反応温度は100〜500℃であり、好適には120〜350℃である。反応温度が100℃より低い場合、反応速度が遅くなりすぎる可能性がある。反応温度が500℃よりも高い場合、Mo−V−Te複合酸化物の変質等を招く。
【0051】
反応圧力は0〜3MPaG、より好ましくは0.1〜1.5MPaG、最も好ましくは0.1〜1.0MPaGである。反応圧力が0MPaGより小さい場合、反応速度が低下する恐れがある。反応圧力が3MPaGより大きい場合、反応管等の設備が高価になり、実用的ではない。
【0052】
反応原料のアルカンには特に制限はないが、一般的には高純度のものを用いることが好ましい。
【0053】
また、酸化剤である酸素ガスにも特に制限はない。窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されたもの、例えば、空気の形でも供給できる。反応ガスを循環させる場合には、高濃度、好適には99%以上の純度の酸素ガスを用いるのが有利である。
【0054】
反応形式としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば固定床、流動床等が挙げられる。好ましくは、耐蝕性を有する反応管に前述の触媒を充填した固定床を採用することが、実用上有利である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
【0056】
実施例1:触媒1
[結晶性Mo−V複合酸化物(A)の合成](原料組成 Mo:V=1:0.25)
(1)(NH46Mo724・4H2O(8.82g,7.14mmol,白色結晶(和光純薬工業(株)製)を200mLビーカーに入れ、水(120mL)を加えて溶かした(溶液1とする。)。
(2)VOSO4・nH2O(3.28g,n=5.4,12.5mmol,青色結晶)(三津和化学薬品(株)製)を200mLビーカーに入れ、水(120mL)を加えて溶かした(溶液2とする。)。
(3)上記で調製した溶液1と2とを300mLビーカーに移して混ぜ、マグネティックスターラーで10分間撹拌し、反応溶液を調製した。
(4)オートクレーブに上記(3)で調製した反応溶液を注ぎ入れ、この反応溶液にN2ガスを10分間吹き込んだ。
【0057】
(5)オートクレーブを密閉し、200℃で24時間加熱した。
(6)室温まで冷却後、生成した黒紫色の薄膜状固体をろ別し、水洗した。
(7)80℃で終夜乾燥した。
(8)得られた固体を0.4Mシュウ酸(和光純薬工業(株)製)水溶液に加え、60℃で30分間撹拌し、ろ別し、水洗し、乾燥した。
(9)得られた固体を窒素気流下、400℃で2時間焼成処理し、結晶性Mo−V複合酸化物(A)を得た。
【0058】
[還元処理]
上記で得た結晶性Mo−V複合酸化物(A)を水素ガスと窒素ガスの混合ガス気流中(H2:N2=7:93,70mL/min)、350℃で2時間加熱し、還元処理した。
【0059】
[加圧処理]
還元処理後の結晶性Mo−V複合酸化物(A)3gを(株)前川試験機製作所のBRE−32を用いて、内径30mmの塩化ビニル樹脂のリングにつめて、100kNで2分間加圧処理した後、軽く粉砕し、厚さ2mm程度の結晶性Mo−V複合酸化物(触媒1)ペレットを得た。
【0060】
実施例2:触媒2
実施例1の合成工程で得られた結晶性Mo−V複合酸化物(A)を100kNで2分間加圧処理した後、厚さ2mm程度のペレットにした。その後、水素ガスと窒素ガスの混合ガス気流中(H2:N2=7:93,70mL/min)、350℃で2時間加熱、還元処理して触媒2を得た。
【0061】
比較例1:比較触媒1 窒素雰囲気下での加熱処理
実施例1の合成工程で得られた結晶性Mo−V複合酸化物(A)を窒素気流中、350℃で2時間加熱処理後、100kNで2分間加圧処理し、厚さ2mm程度のペレットにして比較触媒1を得た。
【0062】
比較例2:比較触媒2 空気雰囲気下での加熱処理
実施例1の合成工程でで得られた結晶性Mo−V複合酸化物(A)を空気気流中、350℃で2時間加熱処理後、100kNで2分間加圧処理し、厚さ2mm程度のペレットにして比較触媒2を得た。
【0063】
実施例3:触媒3 i−PrOHによる還元処理
実施例1の合成工程で得られた結晶性Mo−V複合酸化物(A)3gを、イソプロピルアルコール(i−PrOH)300mlに投入し、83℃でリフラックスしながら60時間、還元処理を行った。処理後にろ過して回収し、マッフル炉にてN2雰囲気下、400℃で2時間焼成した。その後、100kNで2分間加圧処理し、厚さ2mm程度のペレットにして触媒3を得た。
【0064】
実施例4:触媒4 s−BuOHによる還元処理
実施例3のi−PrOHをs−ブタノール(s−BuOH)に変更し、温度を98℃にして30時間処理した以外は同様に行って触媒4を得た。
【0065】
実施例5:触媒5 t−BuOHによる還元処理
実施例3のi−PrOHをt−ブタノール(t−BuOH)に変更した以外は同様に行って触媒5を得た。
【0066】
実施例6:触媒6 ヒドラジンによる還元処理
実施例3のi−PrOHをヒドラジン水溶液(ヒドラジン1水和物3質量%)に変更し、温度を室温とし、7時間処理した以外は同様に行って触媒6を得た。
【0067】
実施例7:触媒7
[結晶性Mo−V−Te複合酸化物(B)の合成](原料組成 Mo:V:Te=1:0.33:0.023)
(1)(NH46Mo724・4H2O(35.3g,28.6mmol,白色結晶(和光純薬工業(株)製)を500mLビーカーに入れ、水(320mL)を加えて溶かした(溶液3とする。)。
(2)溶液3にH6TeO6(1.07g,4.67mmol,白色結晶)(三津和化学薬品(株)製)を加えて溶かした。
(3)VOSO4・nH2O(17.4g,n=5.4,66.7mmol,青色結晶)(三津和化学薬品(株)製)を500mLビーカーに入れ、水(320mL)を加えて溶かした(溶液4とする。)。
(4)上記で調製した溶液3と4とを1Lビーカーに移して混ぜ、マグネティックスターラーで10分間撹拌して、混合液5を調製した。
(5)25vol%アンモニア水溶液を用いて、混合液5のpHを3.2に調整した。
(6)オートクレーブに上記(5)で調製した混合液5を注ぎ入れ、この反応溶液にN2ガスを10分間吹き込んだ。
【0068】
(7)オートクレーブを密閉し、200℃で12時間加熱した。
(8)室温まで冷却後、生成した黒紫色の薄膜状固体をろ別し、水洗した。
(9)80℃で終夜乾燥した。
(10)窒素気流下、400℃で2時間焼成処理し、結晶性Mo−V−Te複合酸化物(B)を得た。
【0069】
[加圧処理]
上記の調製により得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物(B)3.5gを(株)前川試験機製作所のBRE−32を用いて、内径30mmの塩化ビニル樹脂のリングにつめて、200kNで1分間加圧処理した後、軽く粉砕し、厚さ2mm程度の結晶性Mo−V−Te複合酸化物ペレットを得た。
【0070】
[還元処理]
上記で得た結晶性Mo−V−Te複合酸化物を水素ガスと窒素ガスの混合ガス気流中(H2:N2=10:90,100mL/min)、300℃で2時間加熱し、還元処理して触媒7を得た。
【0071】
比較例3:比較触媒3 還元処理を行わない触媒調製
実施例7における加圧処理後の結晶性Mo−V−Te複合酸化物ペレットを、還元処理を行わずにそのまま触媒(比較触媒3)として用いた。
【0072】
実施例8:触媒8
[結晶性Mo−V−Te複合酸化物(C)の合成](原料組成 Mo:V:Te=1:0.33:0.013)
溶液3の調製において、H6TeO6(0.612g,2.67mmol,白色結晶)を用いた以外は、実施例7の調製方法を反復し、結晶性Mo−V−Te複合酸化物(C)を得た。
上記で得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物(C)を200kNで1分間加圧処理した後、厚さ2mm程度のペレットにした。その後、水素ガスと窒素ガスの混合ガス気流中(H2:N2=10:90,100mL/min)、300℃で2時間加熱、還元処理して触媒8を得た。
【0073】
比較例4:比較触媒4 還元処理を行わない触媒調製
実施例8におけるMo−V−Te複合酸化物(C)を加圧処理して得られたペレットを、還元処理を行わずにそのまま触媒(比較触媒4)として用いた。
【0074】
[組成分析]
実施例1〜8で調製した触媒1〜8の各0.5gを(株)前川試験機製作所のBRE−32を用いて、内径10mmの塩化ビニル樹脂のリングにつめて、50kNで1分間加圧処理した。得られたディスクを(株)リガク製ZSX primusIIを用いて蛍光X線(XRF)分析を行った。分析結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
[XRD測定]
実施例1で調製したペレット状の結晶性Mo−V複合酸化物の触媒(触媒1)または実施例7で得られた結晶性Mo−V−Te複合酸化物の触媒(触媒7)を乳鉢ですりつぶした後、サンプルフォルダーに盛った後、表面が平らになるように硝子板でプレスし、(株)リガク製MultiFlexを用いてXRDを測定した。測定結果を図1及び図2に示す。
結晶性であることを示すピーク(2θ(±0.3°)として、6.7°、7.9°、9.0°、22.2°及び27.3°)に○印を記した。
【0077】
測定条件:
X線源:CuKα、出力:50kV、電流:20mA、測定範囲(2θ):5〜60°、スキャン方法:連続法、STEP:0.01°、time/step:0.5sec。
【0078】
[反応評価試験1]
実施例1〜7及び比較例1〜3で調製した触媒各2gを反応管(サイズ:内径5mm、長さ200mm,材質:SUS316L)に詰め、ガス組成をC26:O2:H2O:N2=10:10:10:70(mol比)、ガスの全流量を6.0nL/h(空間速度(SV)=3000hr-1)、反応温度280℃、反応圧力を大気圧で反応を行った。反応器出口ガスの分析は、後に示す方法を用いて行った。
【0079】
1.酸素、窒素及びCO
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4:計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製,GC−14(B))、
カラム:MS−5A IS 60/80mesh(3mmΦ×3m)、
キャリアーガス:ヘリウム(流量:20ml/min)、
温度条件:検出器温度、気化室温度が110℃、カラム温度は70℃(一定)、
検出器:TCD(He圧:70kPaG、Current:100m(A))
【0080】
2.エタン、エチレン及びCO2
絶対検量線法を用い、流出ガスを50ml採取し、ガスクロマトグラフィーに付属した1mlのガスサンプラーに全量流し、以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:島津ガスクロマトグラフ用ガスサンプラー(MGS−4:計量管1ml)付ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製,GC−14(B))、
カラム:Unibeads IS 60/80 mesh(3mmΦ×3m ガラス)、
キャリアーガス:ヘリウム(流量:20ml/min)、
温度条件:検出器温度、気化室温度が100℃、カラム温度は60℃(一定)、
検出器:TCD(He圧:70kPaG、Current:100m(A))。
【0081】
3.酢酸
内部標準法を用い、反応液10mlに対し、内部標準として1,4−ジオキサンを1ml添加したものを分析液とし、そのうちの0.2μlを注入して以下の条件で分析を行った。
ガスクロマトグラフィー:(株)島津製作所製,GC−14B、
カラム:パックドカラムThermon 3000(長さ3m,内径0.3mm)、
キャリアーガス:窒素(流量:20ml/min)、
温度条件:検出器温度、気化室温度が180℃、カラム温度は分析開始から6分間は50℃保持、その後10℃/minの昇温速度で150℃まで昇温し、150℃で10分間保持。
検出器:FID(H2圧:40kPaG、空気圧:100kPaG)。
【0082】
[反応評価試験2]
実施例8及び比較例4で調製した触媒を各1g用いて、空間速度をSV=6000hr-1とした以外は反応評価試験1と同様に行った。
【0083】
実施例1〜6、及び比較例1〜2の各触媒の初期活性評価結果を表2に示す。なお、表中の比転化率及び比STYは下記の式により求めた。
【数1】

【数2】

ここで、STYは触媒容積・単位時間あたりの生成物の質量を表わす。
【0084】
【表2】

【0085】
還元処理を行った実施例の各触媒の場合はブランクと比較してエタン転化率が向上し、エチレン、酢酸のSTY(空時収率)が向上した。一方、空気中や窒素中で加熱のみ行った比較例(還元処理なし)では、エタン転化率、エチレン、酢酸のSTYともに低下した。
【0086】
実施例7〜8、及び比較例3〜4の各触媒の初期活性評価結果を表3に示す。
【0087】
【表3】

【0088】
表2と表3から、結晶性Mo−V−Te複合酸化物(B)は、Teを添加しない結晶性Mo−V複合酸化物(A)に比べてエタン転化率が向上したことがわかる。
結晶性Mo−V−Te複合酸化物(B)に還元処理を行うと、エタン転化率は変化しなかったが、エチレンのSTY(空時収率)が向上した。また、結晶性Mo−V−Te複合酸化物(C)に還元処理を行うと、エタン転化率が向上し、エチレン、酢酸のSTYが向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカンの酸化的脱水素反応によってアルケンを製造するための触媒であって、式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理して得られるアルケン製造用触媒。
【請求項2】
式(1)において、c=0.001〜0.3である請求項1に記載のアルケン製造用触媒。
【請求項3】
式(1)においてc=0である、式(2)
Moabd (2)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、dはMo、Vの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V複合酸化物を還元処理して得られる請求項1に記載のアルケン製造用触媒。
【請求項4】
式(1)
MoabTecd (1)
(式中、aは1.0であり、bは0.01〜1.0であり、cは0〜1.0であり、dはMo、V、Teの酸化数に応じ、化合物全体を電気的に中性にするために必要な酸素原子の数である。)
で示され、結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を還元処理する工程(還元工程)を有することを特徴とするアルカンを原料とするアルケン製造用触媒の製造方法。
【請求項5】
還元工程で使用する還元剤が、アルコール、水素ガス及びヒドラジンから選択される1種以上である請求項4に記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
【請求項6】
還元工程の前に、式(1)で示される結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を焼成する工程(焼成工程)を有する請求項4または5に記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
【請求項7】
還元工程の前及び/または後に式(1)で示される結晶構造を含むMo−V−Te複合酸化物を加圧処理する工程(加圧工程)を有する請求項4〜6のいずれかに記載のアルケン製造用触媒の製造方法。
【請求項8】
アルカンを請求項1〜3のいずれかに記載のアルケン製造用触媒の存在下で加熱することを特徴とする対応するアルケンの製造方法。
【請求項9】
酸素の存在下で加熱を行う請求項8に記載のアルケンの製造方法。
【請求項10】
アルカンがエタンであり、アルケンがエチレンである請求項8または9に記載のアルケンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−5484(P2011−5484A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119946(P2010−119946)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】