説明

アルコキシシランの製造方法

【課題】ハロゲン化シランを原料とせず、またチタン等を含む化合物を大量に用いることがなく、さらには副生成物が少ない工業的に有利なアルコキシシランの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリシロキサンと有機ヒドロキシ化合物を金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシドの存在下で反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的に有利なアルコキシシランの製造方法に関する。具体的には、ポリシロキサンと有機ヒドロキシ化合物を反応させ、アルコキシシランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシランは薄膜材料、有機−無機ハイブリッド材料、接着剤、化粧品、半導体用絶縁膜、補強材、結合材、親水性塗料材料、触媒担体等の原料として有用である。また、工業的のみならず、研究分野においても需要の高い化合物であり、今後の需要も増大すると期待される。
従来、アルコキシシランを製造するにあたっては、有機ハロゲン化物と粗金属ケイ素を高温で加熱することにより得られるハロゲン化シランを、アルコールと反応させてエーテル化し、アルコキシシランを得るのが一般的である(非特許文献1を参照)。しかしながらこの方法では、反応性が高いハロゲン化シラン類を取り扱う必要があり、また反応するアルコールと等モルの塩化水素が副生するため、これを除去する必要があるとともに、製品中に塩素不純物が混入するといった問題点があった。
【0003】
そこで、より工業的に有利なアルコキシシラン類の製造方法として、ハロゲン化シランを原料としないアルコキシシランの製造法が求められている。このような方法としては、反応性が低く取り扱いが容易なジアルキルシロキサンを原料とし、これとジアルキルシロキサンの珪素原子に対して1/2等量のチタンアルコキシドを反応させることにより、ジアルキルジアルコキシシランを得る方法が開示されている(非特許文献2、3を参照)。しかしながらチタン化合物は高価であり、かつ試薬として、ジアルキルシロキサンの珪素原子に対して1/2等量必要となることから、経済的に実施困難であり、また多量のチタン化合物が副生するという問題がある。
【0004】
これらのことから、ハロゲン化シランを原料とせず、またチタン等を含む化合物を大量に用いることのない工業的に有利なアルコキシシランの合成法が求められていた。
【非特許文献1】Journal of Organic Chemistry 1980, 45, 4797-4798.
【非特許文献2】Russian Chemical Bulletin 1962, 11, 4, 672-673.
【非特許文献3】Russian Chemical Bulletin 1987, 36, 4, 813-816.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点を鑑み、ハロゲン化シランを原料とせず、またチタン等を含む化合物を大量に用いることがなく、さらには副生成物が少ない工業的に有利なアルコキシシランの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリ(ジメチルシロキサン)等のポリシロキサンとヘキサノールなどのアルコール類をジブチルスズオキシドの存在下、副生する水を除去しながら加熱することによりアルコキシシランが得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明によれば、
(1)一般式(i)で表されるポリシロキサンと一般式(ii)で表される有機ヒドロキシ化合物を反応させ、一般式(iii)で表されるアルコキシシランを製造する方法であって、該反応が、金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシドの存在下で行われることを特徴とする方法、
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
(式中、R1及びR2は水素原子、及び有機基を表す。R1及びR2は同一であっても異なっていてもよい。nは2以上の整数であり、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状の場合に
は、末端は
水素原子またはアルキル基を除く有機基である。R3は有機基をあらわす。mは1〜4の整数を表す。)
(2)金属アルコキシドが、スズ、チタン、アルミニウム、鉛及びジルコニウムから選択される金属のアルコキシドである上記(1)に記載の方法、
(3)反応が、反応系に存在する水の量が0.1%以下で行われることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の方法、
(4)金属アルコキシドの量が、ポリシロキサンのケイ素原子数に対し化学量論量の0.02倍〜1倍未満であることを特徴とする上記(1)〜(3)にいずれかに記載の方法、が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により有機合成原料、薄膜材料、有機−無機ハイブリッド材料、接着剤、化粧品、半導体用絶縁膜、補強材、結合材、親水性塗料材料、触媒担体等の原料として有用であるアルコキシシランの、安定的な、また経済的にも優れた製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の形態を詳細に説明する。
本発明のアルコキシシランの製造方法は、ポリシロキサンと有機ヒドロキシ化合物とを金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシドの存在下で反応させる方法である。本方法で用いるポリシロキサン(以下、「ポリシロキサン」と称することがある)は、一般式(1)で表される化合物である。
【0013】
【化4】

【0014】
式中、R1及びR2は水素原子または有機基であり、目的とするアルコキシシランの構造に応じて適宜選択される。有機基は、具体的には、アルキル基、アラルキル基、アリール基、シクロアルキル基等が挙げられる。R1及びR2は互いに同一であっても異なっていてもよく、またそれぞれ置換基を有していてもよい。これらのうち、R1及びR2は、炭素数1〜4個から成るアルキル基あるいはアリール基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましい。さらには、メチル基を持つシロキサンは工業的に入手容易であるためR1及びR2は、メチル基が最も好ましい。
【0015】
式中のnは、(SiR12O)単位の繰り返し数を表す。通常2から10000の整数
である。nが大きすぎると反応性が低くなり好ましくない。
本発明で用いられるポリシロキサンの両末端は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、互いに結合しておらず鎖状の構造であってもよい。鎖状の場合、ポリシロキサンは以下の一般式(1−1)で表される。
【0016】
【化5】

【0017】
Xは末端に結合している基であり、通常水素原子またはアルキル基以外の有機基が結合
する。具体的には、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。中でも、ヒドロキシ基のものが、工業的に生産されているポリシロキサンであり、反応性が高いため、最も好ましい。
本発明で用いられるポリシロキサンについて具体例を示すと、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジエチルシロキサン)、ポリ(ジプロピルシロキサン)、ポリ(ジブチルシロキサン)、ポリ(メチルエチルシロキサン)、ポリ(メチルプロピルシロキサン)、ポリ(メチルメチルブチル)シロキサン、ポリ(エチルプロピルシロキサン)、ポリ(エチルブチルシロキサン)、ポリ(プロピルブチルシロキサン)、ポリ(ジフェニルシロキサン)、ポリ(メチルフェニルシロキサン)、ポリ(エチルフェニルシロキサン)、ポリ(プロピルフェニルシロキサン)、ポリ(ブチルフェニル)シロキサン等が挙げられる。これらのポリシロキサンは、環状のものと鎖状のものが混合していてもよい。
【0018】
これらの中でもより好ましいものとしては、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(ジエチルシロキサン)、ポリ(プロピルシロキサン)を選ぶことができ、最も好ましいのはポリ(ジメチルシロキサン)である。
本発明の方法で用いられる有機ヒドロキシ化合物(以下、「有機ヒドロキシ化合物」と称することがある)は、一般式(2)で示されるものである。
【0019】
【化6】

【0020】
式中、Rは、有機基を意味し、目的とするアルコキシシランの構造により適宜選択さ
れる。具体的には、脂肪族基であっても芳香族基であってもよい。また、式中mは、該有機ヒドロキシ化合物のヒドロキシ基の個数を意味し、1〜4の整数を示す。
本発明の方法で用いられる有機ヒドロキシ化合物として、脂肪族ヒドロキシ化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オールジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。また、芳香族ヒドロキシ化合物の具体例としては、フェノール、クレゾール、ナフトール、p-ヒドロキシスチレン、カテコール、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0021】
これらの中でより好ましいのは、1価の有機ヒドロキシ化合物であり、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、2-エチルブタノール、ヘプタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、フェノールを選ぶことができ、特に好ましいものはブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、フェノールである。
【0022】
金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシド(以下、「金属アルコキシド」と称することがある)は、具体的には、例えば、スズ、チタン、アルミニウム、鉛及びジルコニウムから選択されるいずれかの金属のアルコキシドが挙げられる。さらに具体例を示すと、ジメチルスズ−ジ−フェノキシド、ジブチルスズ−ジ−フェノキシド、ジブチルスズオキシド、テトラフェノキシスズ、テトラフェノキシチタン、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシ鉛、テトラフェノキシジルコニウム、ジメチルスズ−ジ−メトキシド、ジメチルスズ−ジ−エトキシド、ジメチルスズ−ジ−プロポキシド、ジメチルスズ−ジ−ブトキシド、ジブチルスズ−ジ−メトキシド、ジブチルスズ−ジ−エトキシド、ジブチルスズ−ジ−プロポキシド、ジブチルスズ−ジ−ブトキシド、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトラプロポキシスズ、テトラブトキシスズ、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム、ジメトキシ鉛、ジエトキシ鉛、ジプロポキシ鉛、ジブトキシ鉛、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等である。
【0023】
これらの中でより好ましいものは、ジブチルスズオキシド、テトラフェノキシチタン、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシ鉛、テトラブトキシジルコニウムである。
上記本発明の方法は、具体的には以下のようにして実施される。
反応容器にポリシロキサンと有機ヒドロキシ化合物を入れ、金属アルコキシドを加えた後、反応容器を加熱することで反応を実施する。
【0024】
溶媒は必ずしも用いなくてよいが、必要に応じて用いることもできる。溶媒を用いる場合、原料であるポリシロキサン及び有機ヒドロキシ化合物、また金属アルコキシドと反応条件下で反応しないものであれば、いずれも使用可能である。溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは2種類以上を混合して使用してもよい。
【0025】
用いる溶媒の量は、通常、用いるポリシロキサン1gに対し1〜100mL、好ましくは10〜20mLである。溶媒が少なすぎると後述する水の除去が十分に行われず、多すぎると反応速度が遅くなるため、いずれも好ましくない。
また、本発明の方法では、反応系中において水分の含有量は通常少ないほどよい。系中の水はアルコキシシランの加水分解を引き起こしやすく、さらに縮合してポリシロキサンを与える。よって、系中の水は0.1%以下、より好ましくは0.01%以下であることが望ましい。
【0026】
反応の際、副生する水の除去方法としては、単なる蒸留除去でもよいが、用いる溶媒とともに共沸または同伴留去する方法、不活性気体を流通させて同伴除去する方法、モレキュラーシーブなどの吸着剤を用いて除去する方法などがより効率的に水を除去できるので好ましい。中でも、適当な溶媒を用いて共沸により除去する方法が、工業的に実施容易であり最も好ましい。この場合、溶媒の種類は目的とする反応温度によって適宜選択される。この方法で用いる溶媒として好ましいものは、トルエン、キシレン、テトラリンを選ぶことができ、特に好ましいものはキシレンである。また、溶媒の量は上述したとおり、用いるポリシロキサン1gに対し1〜100mL、好ましくは10〜20mLが好ましい。
【0027】
本発明の方法で用いられる有機ヒドロキシ化合物の量は、用いるポリシロキサンの含む珪素原子に対して、化学量論量で2〜100倍であることが好ましい。
また、本発明の方法における金属アルコキシドの使用量は、原料ポリシロキサンに対して化学量論量で0.02〜1倍、好ましくは0.02〜0.2倍、さらに好ましくは0.02〜0.1倍である。少なすぎると反応速度が十分大きくならず、また多すぎるとコストが高くなるため、いずれも好ましくない。
【0028】
上記反応の反応温度は、用いる原料の種類および溶媒の有無、溶媒を用いる場合はその種類、反応時の圧力等により異なるが、通常100〜180℃、好ましくは120〜170℃である。反応温度は、高いほうが反応速度が上がるが、高すぎると有機ヒドロキシ化合物の分解反応に伴い金属アルコキシドが失活するため好ましくない。また、反応温度が低すぎると反応速度が遅くなり、好ましくない。
【0029】
反応時の圧力は特に制限はなく、用いる原料の種類および溶媒の有無、溶媒を用いる場合はその種類、反応温度等により異なり、適切に選択される。通常1mmHgから10気圧、好ましくは10mmHgから3気圧の範囲である。反応時の圧力が低すぎると、反応
系中の成分が蒸発してしまい十分な反応温度にすることができず、また高すぎると、副生する水分の系外への除去が困難になり、好ましくない。
【0030】
反応時間は、あまり長すぎると生成したアルコキシシランが分解する可能性があり、かつ経済的に好ましくない。一方、反応時間があまり短すぎると得られるアルコキシシランの収量が低下するために好ましくない。反応容器や条件に応じて適宜選択されるが、好ましい反応時間としては、バッチ式の反応においては5〜100時間、また流通系で行う反応の場合にはその滞留時間が5〜100時間である。
【0031】
上記反応は、連続的に実施しても良いし、バッチ式に実施しても良い。また、反応器の外部に冷却または加熱用外部ジャケットを備えていてもよく、また、伝熱を向上させるために反応器内部にフィン、コイル等を備えていてもよい。通常、反応器は反応原料であるポリシロキサンおよび有機ヒドロキシ化合物を供給する管、生成したアルコキシシランを主成分とし、その他の副生した珪素化合物や未反応アルコールを含有する反応液を排出する管、また副生する水を排出する管、ならびに反応後の残査の排出口等を備えているものが好ましく用いられる。また、反応器の材質としては石英、ガラス、金属等が挙げられる。
【0032】
合成されたアルコキシシランは、必要に応じて、反応液から分離、精製することができる。反応液からの分離方法は、生成するアルコキシシランの分子量および沸点が適当なものである場合は、蒸留によって行うことができる。蒸留は一般に知られている常圧による蒸留方法や、減圧蒸留方法等が使用できる。また、該分離は一般に行われる溶媒抽出法によっても行うことができる。この際に用いられる抽出溶媒は、アルコキシシランと反応しない溶媒が使用できる。このような溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメチレン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、アニソールなどのエーテル類等が挙げられる。
【0033】
かくして製造されたアルコキシシランは、有機合成原料、薄膜材料、有機−無機ハイブリッド材料、接着剤、化粧品、半導体用絶縁膜、補強材、結合材、親水性塗料材料、触媒担体等の原料として用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
<NMR分析方法>
以下実施例1〜 では、次のとおりNMRを用いた分析を行った。
(1)H NMR分析サンプル溶液の作成
反応溶液を0.05g計量し、重クロロホルム(CIL社製、0.05%TMS含有)を1ml加えてNMR分析サンプル溶液とした。
(2) 定量分析法
上記(1)で調製したサンプル溶液を用いてJEOL社製 EX−270NMR(270 MHz)によりNMRスペクトルを取得し、その積分値より、未反応のポリシロキサンと得られたアルコキシシランの比を見積もり、定量分析を実施した。
(3) アルコキシシランの収率計算法
上記(2)で取得したNMRピークより、ポリジメチルシロキサンのメチル基(0.07 ppm)と対応するアルコキシシランのメチル基の積分値を見積もり、生成比を求め、以下の式により収率を求めた。
(アルコキシシランの収率)={(アルコキシシランのピーク積分値)/(ポリジメチルシロキサンのピーク積分値)}×100
実施例1 ジブチルスズオキシド存在下でのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ジブチルスズオキシド(和光純薬工業(株)社製、一級)0.18mmol、ポリジメチルシロキサン(アルドリッチ社製、分子量〜550)9.0mmol、フェノール(和光純薬工業(株)社製、一級)85mmolを加え、p−キシレン(関東化学(株)社製鹿特級)50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行い、生成したジメチルジフェノキシシランの収率を見積もったところ、ジメチルジフェノキシシランの収率は7%であった。
【0035】
実施例2 ジブチルスズオキシド存在下でのHexOHとポリシロキサンの反応(溶媒あり)
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ジブチルスズオキシド0.05mmol、ポリジメチルシロキサン2.5mmol、1−ヘキサノール(和光純薬工業(株)社製、特級)25.5mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行い、生成したジメチルジヘキソキシシランの収率を見積もったところ、ジメチルジヘキソキシシランの収率は2%であった。
【0036】
実施例3 ジブチルスズオキシド存在下でのHexOHとポリシロキサンの反応(溶媒なし)
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ジブチルスズオキシド0.05mmol、ポリジメチルシロキサン2.5mmol、1−ヘキサノール50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行い、生成したジメチルジヘキソキシシランの収率を見積もったところ、ジメチルジヘキソキシシランの収率は17%であった。
【0037】
実施例4 ルミニウムフェノキシド存在下でのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、トリフェノキシアルミニウム(アルドリッチ社製)0.18mmol、ポリジメチルシロキサン9.0mmol、フェノール85mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行い、生成したジメチルジフェノキシシランの収率を見積もったところ、ジメチルジフェノキシシランの収率は9%であった。
【0038】
実施例5 テトラブトキシジルコニウム存在下でのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、テトラブトキシジルコニウム(和光純薬(株)社製)0.18mmol、ポリジメチルシロキサン9.0mmol、フェノール85mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行い、生成したジメチルジフェノキシシランの収率を見積もったところ、ジメチルジフェノキシシランの収率は9%であった。
【0039】
比較例1 金属アルコキシドなしでのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ポリジメチルシロキサン9.0mmol、フェノール(85mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。反応の進行に伴い、水が生成することを確認した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行ったが、対応するジメチルジフェノキシシランの生成は確認されなかった。
【0040】
比較例2 金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1より高い金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシド(ホウ素フェノキシド)の存在下でのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ホウ素フェノキシド0.05mmol、ポリジメチルシロキサン2.5mmol、フェノール25.5mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行ったが、ジメチルジフェノキシシランの生成は確認されなかった。
【0041】
比較例3 金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属として含まないブレンステッド酸(p−トルエンスルホン酸一水和物)の存在下でのPhOHとポリシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、p−トルエンスルホン酸一水和物(和光純薬工業(株)社製特級)0.05mmol、ポリジメチルシロキサン2.5mmol、フェノール25.5mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行ったが、ジメチルジフェノキシシランの生成は確認されなかった。
【0042】
比較例4 ジブチルスズオキシド存在下でのPhOHとアルキル基を末端に有するジシロキサンの反応
Dean−Stark管、ジムロート、三方コック、磁気攪拌子を備えた100mlナスフラスコに、ジブチルスズオキシド0.5mmol、ヘキサメチルジシロキサン(東京化成工業(株)社製)25mmol、フェノール123mmolを加え、p−キシレン50mlを収め、5時間加熱還流した。この反応溶液より0.05gを採取し、重クロロホルム1mlを加え、NMR用のサンプルとし、測定を行ったが、ジメチルジフェノキシシランの生成は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明により、ポリシロキサンとアルコールを反応させることにより、アルコキシシランを合成することができる。ポリシロキサンは加水分解性が低く、取り扱いも容易であり、かつ共存させる金属も少量でよいことから、本発明の製造法は産業上大いに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるポリシロキサンと一般式(2)で表される有機ヒドロキシ化合物を反応させ、一般式(3)で表されるアルコキシシランを製造する方法であって、該反応が、金属塩化物の状態で金属−塩素結合の振動数が390cm−1以下の金属を中心金属としたルイス酸性を有する金属アルコキシドの存在下で行われることを特徴とする方法。
【化1】



【化2】


【化3】

(式中、R1及びR2は水素原子、及び有機基を表す。R1及びR2は同一であっても異なっていてもよい。nは2以上の整数であり、環状であっても鎖状であってもよい。鎖状の場合に
は、末端は水素原子またはアルキル基を除く有機基である。R3は有機基をあらわす。mは1〜4の整数を表す。)
【請求項2】
金属アルコキシドが、スズ、チタン、アルミニウム、鉛及びジルコニウムから選択される金属のアルコキシドである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応が、反応系に存在する水の量が0.1%以下で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
金属アルコキシドの量が、ポリシロキサンのケイ素原子数に対し化学量論量の0.02倍〜1倍未満であることを特徴とする請求項1〜3にいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2008−297227(P2008−297227A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143235(P2007−143235)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】