説明

アルコキシシランの製造方法

【課題】高純度のアルコキシシランを簡便な方法で得ることができるアルコキシシランの製造方法を提供する。
【解決手段】アルコキシシランの製造方法は、アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cを第3級アミンBの存在下で反応させてアルコキシシランを得る工程と、アルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコキシシランは例えば、表面改質剤の成分やシロキサン高分子の原料として、また最近では化学気相蒸着(CVD)法による成膜に使用される無機材料のプレカーサとして幅広く利用されている。アルコキシシランの製造方法は種々検討されており、中でも、対応するハロゲン化シランとアルコールとを第3級アミン存在下で反応させる方法は最も一般的な方法であり、塩化水素ガスの発生を伴わず、かつ短時間で反応が完結するという利点を有する。
【0003】
上記方法では、第3級アミンとしてトリエチルアミンやピリジンが通常用いられる。この場合、不溶性のアミンハロゲン酸塩が副生するため、反応中に撹拌を行うには大量の溶剤を必要とするうえ、当該塩酸塩の濾別が煩雑であるなど、工業的に利用する上で課題があった。
【0004】
一方、この課題を解決する手段として、炭素数が4個以上のアルキル基を置換基とする第3級アミンを用いて、クロロシラン化合物を所定のアルコールと反応させてアルコキシシラン化合物を製造する方法が開示されている(特開平09−157277号公報)。この方法によれば、副生するアミン塩酸塩が反応系中で均一となり析出しない。しかしながら、この方法では、アルコキシシランと副生するアミン塩酸塩とを蒸留によって分離する必要がある。
【特許文献1】特開平09−157277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高純度のアルコキシシランを簡便な方法で得ることができるアルコキシシランの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかるアルコキシシランの製造方法は、
アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cを第3級アミンBの存在下で反応させてアルコキシシランを得る工程と、
前記アルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、
を含む。
【0007】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記アルコキシシランを得る工程は、前記アルコールAおよび前記第3級アミンBを含む反応系内に、前記ハロゲン化ケイ素化合物Cを添加する工程を含むことができる。
【0008】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記アミンハロゲン酸塩の融点が0〜150℃であることができる。
【0009】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記第3級アミンBがイソプロピルジエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチル(3−メチル−ペンチル)アミン、ジエチル(2−プロピル−ペンチル)アミン、N,N−ジメチルアニリン、およびジメチル(2−メチル−3−フェニル−プロピル)アミンから選ばれる少なくとも1種であることができる。
【0010】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記アルコールA 1分子中の水酸基の数をxとし、前記ハロゲン化ケイ素化合物C 1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、前記ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対する前記アルコールAの使用量(モル比)zが、y/x≦z≦2y/xで規定されることができる。
【0011】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記ハロゲン化ケイ素C化合物 1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、
前記ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対する前記第3級アミンBの使用量(モル比)wが、0.95y≦w≦1.2yで規定されることができる。
【0012】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記アルコールA 1分子に含まれる水酸基の数が1つであることができる。
【0013】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記ハロゲン化ケイ素化合物Cにおいてケイ素原子に結合しているハロゲン原子が、塩素、臭素、およびヨウ素から選ばれる少なくとも1種であることができる。
【0014】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記反応の後であって、前記第2液相を除去する工程の前または後に、水を実質的に含有しない酸を添加して、未反応の第3級アミンを塩として析出させる工程をさらに含むことができる。ここで、「水を実質的に含有しない酸」とは、例えば、原料中に含まれる水が残留していたりするのを排除するものではない。水の含有率が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%であることが特に好ましい。
【0015】
この場合、前記酸が有機酸であることができる。
【0016】
上記アルコキシシランの製造方法において、前記アルコキシシランは、下記一般式(1)で表される化合物または下記一般式(2)で表される化合物であることができる。
【0017】
22Si(OR214−n ・・・・・(1)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R22は水素原子または1価の有機基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
23(R21O)3−kSi−(R25−SiR24(OR213−l ・・・(2)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R23およびR24は同一または異なり、水素原子または1価の有機基を示し、kおよびlは同一または異なり、0〜2の数を示し、R25は酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、oは0または1を示す。)
【発明の効果】
【0018】
上記アルコキシシランの製造方法によれば、前記アルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、を含むことにより、当該アミンハロゲン酸塩のほとんどを分液処理にて容易に除去することができるうえに、溶剤を使用せずにアルコキシシランを得ることができる。すなわち、上記アルコキシシランの製造方法によれば、高純度のアルコキシシランを簡便な方法にて得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係るアルコキシシランの製造方法について具体的に説明する。
【0020】
1.アルコキシシランの製造方法
本発明の一実施形態に係るアルコキシシランの製造方法は、
アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cを第3級アミンBの存在下で反応させてアルコキシシランを得る工程と、
アルコキシシランを含有する第1液相(以下単に「第1液相」ともいう。)と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相(以下単に「第2液相」ともいう。)とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、を含む。
【0021】
1.1.アルコキシシランを得る工程
上述したように、アルコキシシランを得る工程では、アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cを第3級アミンBの存在下で反応させることによりアルコキシシランを得る。この場合、各成分の添加順序は特に限定されないが、副生するアミンハロゲン酸塩がアルコールAに溶解し反応系が均一となる点で、アルコールAおよび第3級アミンBを含む反応系内に、ハロゲン化ケイ素化合物Cを添加することが好ましい。また、上記反応は、副生するアミンハロゲン酸塩の凝固による過度の析出を防止して、撹拌を継続して行う観点から、アミノハロゲン酸塩の融点をT℃とすると、(T−50)℃〜(T+100)℃の温度で行うことが好ましい。また、副生するアミンハロゲン酸塩の凝固による過度の析出をより効果的に防止する観点からは、T℃〜(T+100)℃であることがより好ましく、T℃〜(T+50)℃であることがさらに好ましい。具体的な反応温度としては、通常0〜150℃であり、20〜120℃であることが好ましく、30〜100℃であることがより好ましい。また、反応時間は、通常1〜1000分であり、好ましくは10〜500分である。なお、ハロゲン化ケイ素化合物Cの添加を0℃未満で行うと、副生するアミンハロゲン酸塩の種類によっては凝固および析出が生じてしまい、撹拌が継続できなくなる場合がある。
【0022】
また、アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cの反応では、溶剤を実質的に使用しないことが好ましい。この場合、溶剤を実質的に使用しないことにより、生成するアルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを確実に相分離させることができる。本発明において、「溶剤を実質的に使用しない」とは、例えば、原料中に含まれる溶剤成分が残留していたりするのを排除するものではない。具体的には、反応系内に存在する溶剤の量が反応系の総量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%であることが特に好ましい。
【0023】
1.1.1.原料
アルコールAは例えば下記一般式(3)で表される化合物であり、ハロゲン化ケイ素化合物Cは例えば下記一般式(4)で表される化合物または(5)で表される化合物であり、第3級アミンBは例えば下記一般式(6)で表される化合物である。
【0024】
21OH ・・・・・(3)
(式中、R21は1価の有機基を示す。)
22SiX4−n ・・・・・(4)
(式中、R22は水素原子または1価の有機基を示し、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜3の整数を示す。)
233−kSi−(R25−SiR243−l ・・・・・(5)
(式中、R23およびR24は同一または異なり、水素原子または1価の有機基を示し、R25は酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を示し、Xはハロゲン原子を示し、kおよびlは同一または異なり、0〜2の整数を示し、oは0または1を示す。)
(R26N ・・・・・(6)
(式中、R26は1価の有機基を表す。)
【0025】
上記一般式(3)〜(6)において、R21〜R24およびR26で表される1価の有機基としては、より好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基、グリシジル基が挙げられ、さらに好ましくは、アルキル基またはフェニル基である。また、R22〜R24でそれぞれ表される1価の有機基がアルキル基である場合、アルキル基を構成する水素原子の少なくとも1つが塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0026】
ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり(より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1〜3)、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。
【0027】
アルコールAとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等の炭素数1〜4(好ましくは1〜3)の1価アルコールが挙げられる。
【0028】
ハロゲン化ケイ素化合物Cとしては、例えば、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラヨードシランなど;
メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリブロモシラン、n−プロピルトリブロモシラン、イソプロピルトリブロモシラン、シクロヘキシルトリブロモシラン、フェネチルトリブロモシラン、ビニルトリブロモシラン、フェニルトリブロモシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、n−プロピルトリヨードシラン、イソプロピルトリヨードシラン、シクロヘキシルトリヨードシラン、フェネチルトリヨードシラン、ビニルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、トリクロロシラン、トリブロモシラン、トリヨードシランなど;
ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジ−n−プロピルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン、ジシクロヘキシルジクロロシラン、ジフェネチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン、ジエチルジブロモシラン、ジ−n−プロピルジブロモシラン、ジイソプロピルジブロモシラン、ジシクロヘキシルジブロモシラン、ジフェネチルジブロモシラン、ジビニルジブロモシラン、ジフェニルジブロモシラン、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジ−n−プロピルジヨードシラン、ジイソプロピルジヨードシラン、ジシクロヘキシルジヨードシラン、ジフェネチルジヨードシラン、ジビニルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルジクロロシラン、メチルジブロモシラン、メチルジヨードシラン、エチルジクロロシラン、エチルジブロモシラン、エチルジヨードシラン、n-プロピルジクロロシラン、イソプロピルジクロロシランなど;
トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリ−n−プロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリシクロヘキシルクロロシラン、トリフェネチルクロロシラン、トリビニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリエチルブロモシラン、トリ−n−プロピルブロモシラン、トリイソプロピルブロモシラン、トリシクロヘキシルブロモシラン、トリフェネチルブロモシラン、トリビニルブロモシラン、トリフェニルブロモシラン、トリメチルヨードシラン、トリエチルヨードシラン、トリ−n−プロピルヨードシラン、トリイソプロピルヨードシラン、トリシクロヘキシルヨードシラン、トリフェネチルヨードシラン、トリビニルヨードシラン、トリフェニルヨードシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルブロモシラン、ジメチルヨードシラン、ジエチルクロロシラン、ジエチルブロモシラン、ジエチルヨードシラン、プロピルジクロロシラン、イソプロピルジクロロシランなど;
クロロメチルトリクロロシラン、ブロモメチルトリクロロシラン、ヨードメチルトリクロロシラン、クロロメチルジクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、クロロメチルエチルジクロロシラン、クロロメチルシクロヘキシルジクロロシラン、クロロメチルフェネチルジクロロシラン、クロロメチルビニルジクロロシラン、クロロメチルフェニルジクロロシラン、ブロモメチルメチルジクロロシラン、ブロモメチルエチルジクロロシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジクロロシラン、ブロモメチルフェネチルジクロロシラン、ブロモメチルビニルジクロロシラン、ブロモメチルフェニルジクロロシラン、ヨードメチルメチルジクロロシラン、ヨードメチルエチルジクロロシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジクロロシラン、ヨードメチルフェネチルジクロロシラン、ヨードメチルビニルジクロロシラン、ヨードメチルフェニルジクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、クロロメチルジエチルクロロシラン、クロロメチルジシクロヘキシルクロロシラン、クロロメチルジフェネチルクロロシラン、クロロメチルジビニルクロロシラン、クロロメチルジフェニルクロロシラン、ブロモメチルジメチルクロロシラン、ブロモメチルジエチルクロロシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルクロロシラン、ブロモメチルジフェネチルクロロシラン、ブロモメチルジビニルクロロシラン、ブロモメチルジフェニルクロロシラン、ヨードメチルジメチルクロロシラン、ヨードメチルジエチルクロロシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルクロロシラン、ヨードメチルジフェネチルクロロシラン、ヨードメチルジビニルクロロシラン、ヨードメチルジフェニルクロロシランなど;
ヘキサクロロジシラン、1,1,1,2,2−ペンタクロロ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタクロロ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタクロロ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラクロロ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなど;
ビス(ジクロロシリル)メタン、ビス(ジブロモシリル)メタン、ビス(ジヨードシリル)メタン、1,2−ビス(ジクロロシリル)エタン、1,2−ビス(ジブロモシリル)エタン、1,2−ビス(ジヨードシリル)エタン、1,3−ビス(ジクロロシリル)プロパン、1,3−ビス(ジブロモシリル)プロパン、1,3−ビス(ジヨードシリル)プロパン、1,4−ビス(ジクロロシリル)ブタン、1,4−ビス(ジブロモシリル)ブタン、1,4−ビス(ジヨードシリル)ブタン、ビス(トリクロロシリル)メタン、ビス(トリクロロシリル)エタン、ビス(トリクロロシリル)プロパン、ビス(ジクロロメチルシリル)メタン、ビス(ジクロロメチルシリル)エタン、ビス(ジクロロメチルシリル)プロパンが挙げられる。
【0029】
第3級アミンBとしては、例えば、後述するアミンハロゲン酸塩の欄で例示された化合物が挙げられる。
【0030】
また、アルコールA、第3級アミンB、およびハロゲン化ケイ素化合物Cは、下記(i)ないし(iv)を満たすことが好ましい。
【0031】
(i)アルコールA 1分子中の水酸基の数をxとし、ハロゲン化ケイ素化合物C 1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対するアルコールAの使用量(モル比)zが、y/x≦z≦2y/xで規定される。z<y/xの場合、ケイ素−ハロゲン結合のアルコキシ化が完全に進行しない場合があり、また、z>2y/xの場合、過剰のアルコールAに第3級アミンBが溶解してしまい、目的の液相分離が不可能になる場合がある。
【0032】
(ii)ハロゲン化ケイ素C化合物 1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対する第3級アミンBの使用量(モル比)wが、0.95y≦w≦1.2yで規定される。w<0.95yの場合、ハロゲン化ケイ素C化合物のアルコールAとの反応により生ずるハロゲン化水素が捕捉されずに反応系内に遊離し、反応により生成したアルコキシシランの縮合反応等を引き起こす場合がある。また、w>1.2yの場合、第3級アミンBが過剰に残留し、目的物との分離が困難な場合がある。
【0033】
(iii)アルコールA 1分子に含まれる水酸基の数が1つ(1価アルコール)であることが好ましい。
【0034】
(iv)ハロゲン化ケイ素化合物Cにおいてケイ素原子に結合しているハロゲン原子が、塩素、臭素、およびヨウ素から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この場合、ハロゲン原子は反応性の高さの観点から、塩素または臭素であることがより好ましい。
【0035】
1.1.2.生成物
本実施形態に係るアルコキシシランの製造方法では、第3級アミンBの存在下でアルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cが反応して、アルコキシシランが生成し、アミンハロゲン酸塩が副生する。アミンハロゲン酸塩としては、例えばアミン塩酸塩、アミン臭素酸塩、アミンヨウ素酸塩が挙げられる。
【0036】
生成するアルコキシシランは例えば下記一般式(1)で表される化合物または(2)で表される化合物であり、副生するアミンハロゲン酸塩は例えば下記一般式(7)で表される化合物である。
【0037】
22Si(OR214−n ・・・・・(1)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R22は水素原子または1価の有機基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
23(R21O)3−kSi−(R25−SiR24(OR213−l ・・・(2)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R23およびR24は同一または異なり、水素原子または1価の有機基を示し、kおよびlは同一または異なり、0〜2の数を示し、R25は酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、oは0または1を示す。)
(R26NH ・・・・・(7)
(式中、R26は上記一般式(4)で定義した通りであり、Xはハロゲンイオンを示す。)
【0038】
上記一般式(1)において、R21またはR22で表される1価の有機基としては、上記一般式(3)および(4)においてR21またはR22として例示された基が挙げられる。
【0039】
また、上記一般式(2)において、R21、R23またはR24で表される1価の有機基としては、上記一般式(3)および(5)においてR21、R23またはR24として例示された基が挙げられる。
【0040】
製造目的物であるアルコキシシランであって、上記一般式(1)で表されるものとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラフェノキシシランなど;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリフェノキシシランなど;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジフェノキシシランなど;
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチル−n−プロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルフェノキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチル−n−プロポキシシラン、トリエチルイソプロポキシシラン、トリエチルフェノキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−プロピル−n−プロポキシシラン、トリ−n−プロピルイソプロポキシシラン、トリ−n−プロピル−フェノキシシラン、トリイソプロピルメトキシシラン、トリイソプロピルエトキシシラン、トリイソプロピル−n−プロポキシシラン、トリイソプロピルイソプロポキシシラン、トリイソプロピルフェノキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリフェニル−n−プロポキシシラン、トリフェニルイソプロポキシシラン、トリフェニルフェノキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルn−プロポキシシラン、ジメチルイソプロポキシシラン、ジメチルフェノキシシラン、ジエチルメトキシシラン、ジエチルエトキシシラン、ジエチルn−プロポキシシラン、ジエチルイソプロポキシシラン、ジエチルフェノキシシラン、ジ−n−プロピルメトキシシラン、ジ−n−プロピルエトキシシラン、ジ−n−プロピルn−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルフェノキシシラン、ジイソプロピルメトキシシラン、ジイソプロピルエトキシシラン、ジイソプロピルn−プロポキシシラン、ジイソプロピルイソプロポキシシラン、ジイソプロピルフェノキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフェニルエトキシシラン、ジフェニルn−プロポキシシラン、ジフェニルイソプロポキシシラン、ジフェニルフェノキシシランなど;
クロロメチルトリメトキシシラン、ブロモメチルトリメトキシシラン、ヨードメチルトリメトキシシラン、クロロメチルジメトキシシラン、クロロメチルメチルジメトキシシラン、クロロメチルエチルジメトキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、クロロメチルフェネチルジメトキシシラン、クロロメチルビニルジメトキシシラン、クロロメチルフェニルジメトキシシラン、ブロモメチルメチルジメトキシシラン、ブロモメチルエチルジメトキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ブロモメチルフェネチルジメトキシシラン、ブロモメチルビニルジメトキシシラン、ブロモメチルフェニルジメトキシシラン、ヨードメチルメチルジメトキシシラン、ヨードメチルエチルジメトキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジメトキシシラン、ヨードメチルフェネチルジメトキシシラン、ヨードメチルビニルジメトキシシラン、ヨードメチルフェニルジメトキシシラン、クロロメチルジメチルメトキシシラン、クロロメチルジエチルメトキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、クロロメチルジフェネチルメトキシシラン、クロロメチルジビニルメトキシシラン、クロロメチルジフェニルメトキシシラン、ブロモメチルジメチルメトキシシラン、ブロモメチルジエチルメトキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、ブロモメチルジフェネチルメトキシシラン、ブロモメチルジビニルメトキシシラン、ブロモメチルジフェニルメトキシシラン、ヨードメチルジメチルメトキシシラン、ヨードメチルジエチルメトキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルメトキシシラン、ヨードメチルジフェネチルメトキシシラン、ヨードメチルジビニルメトキシシラン、ヨードメチルジフェニルメトキシシランなど;
クロロメチルトリエトキシシラン、ブロモメチルトリエトキシシラン、ヨードメチルトリエトキシシラン、クロロメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルエチルジエトキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、クロロメチルフェネチルジエトキシシラン、クロロメチルビニルジエトキシシラン、クロロメチルフェニルジエトキシシラン、ブロモメチルメチルジエトキシシラン、ブロモメチルエチルジエトキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ブロモメチルフェネチルジエトキシシラン、ブロモメチルビニルジエトキシシラン、ブロモメチルフェニルジエトキシシラン、ヨードメチルメチルジエトキシシラン、ヨードメチルエチルジエトキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジエトキシシラン、ヨードメチルフェネチルジエトキシシラン、ヨードメチルビニルジエトキシシラン、ヨードメチルフェニルジエトキシシラン、クロロメチルジメチルエトキシシラン、クロロメチルジエチルエトキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、クロロメチルジフェネチルエトキシシラン、クロロメチルジビニルエトキシシラン、クロロメチルジフェニルエトキシシラン、ブロモメチルジメチルエトキシシラン、ブロモメチルジエチルエトキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、ブロモメチルジフェネチルエトキシシラン、ブロモメチルジビニルエトキシシラン、ブロモメチルジフェニルエトキシシラン、ヨードメチルジメチルエトキシシラン、ヨードメチルジエチルエトキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルエトキシシラン、ヨードメチルジフェネチルエトキシシラン、ヨードメチルジビニルエトキシシラン、ヨードメチルジフェニルエトキシシランなど;
クロロメチルトリ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルトリ−n−プロポキシシラン、クロロメチルジ−n−プロポキシラン、クロロメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、ブロモメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルメチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルエチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルフェネチルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルビニルジ−n−プロポキシシラン、ヨードメチルフェニルジ−n−プロポキシシラン、クロロメチルジメチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジエチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジビニル−n−プロポキシシラン、クロロメチルジフェニル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジメチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジエチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジビニル−n−プロポキシシラン、ブロモメチルジフェニル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジメチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジエチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジフェネチル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジビニル−n−プロポキシシラン、ヨードメチルジフェニル−n−プロポキシシランなど;
クロロメチルトリイソプロポキシシラン、ブロモメチルトリイソプロポキシシラン、ヨードメチルトリイソプロポキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルエチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、クロロメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルビニルジイソプロポキシシラン、クロロメチルフェニルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルメチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルエチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルビニルジイソプロポキシシラン、ブロモメチルフェニルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルメチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルエチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルフェネチルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルビニルジイソプロポキシシラン、ヨードメチルフェニルジイソプロポキシシラン、クロロメチルジメチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジエチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、クロロメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、クロロメチルジビニルイソプロポキシシラン、クロロメチルジフェニルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジメチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジエチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジビニルイソプロポキシシラン、ブロモメチルジフェニルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジメチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジエチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジシクロヘキシルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジフェネチルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジビニルイソプロポキシシラン、ヨードメチルジフェニルイソプロポキシシランなどが挙げられる。
【0041】
また、製造目的物であるアルコキシシランであって、上記一般式(2)で表されるもののうちo=0の化合物としては、例えば、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン等が挙げられる。
【0042】
さらに、製造目的物であるアルコキシシランであって、上記一般式(2)で表されるもののうちo=1の化合物としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシシリル)メタン、ビス(ジエトキシシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(ジ−iso−プロポキシシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−iso−プロポキシシリル)エタン、1,3−ビス(ジメトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジエトキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジ−n−プロポキシシリル)プロパン、1,3−ビス(ジ−iso−プロポキシシリル)プロパン、1,4−ビス(ジメトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(ジエトキシシリル)ブタン、1,4−ビス(ジ−n−プロポキシシリル)ブタン、1,4−ビス(ジ−iso−プロポキシシリル)ブタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0043】
副生するアミンハロゲン酸塩としては、アミン塩酸塩、アミン臭素酸塩、アミンヨウ素酸塩が挙げられる。
【0044】
副生する液体のアミンハロゲン酸塩は、融点が0℃〜150℃であることが好ましく、10℃〜100℃であるのがより好ましく、30℃〜100℃であるのがさらに好ましい。融点が150℃を超えると、アミンハロゲン酸塩が析出しやすくなるため、第1液相と第2液相との相分離が困難になる場合がある。
【0045】
副生するアミンハロゲン酸塩の析出を防止して、第1液相と第2液相とを明確に相分離させるためには、副生するアミンハロゲン酸塩の融点が150℃以下になるような第3級アミンBを使用するのが好ましい。このような第3級アミンBとしては、例えば、イソプロピルジエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチル(3−メチル−ペンチル)アミン、ジエチル(2−プロピル−ペンチル)アミン、N,N−ジメチルアニリン、およびジメチル(2−メチル−3−フェニル−プロピル)アミンが挙げられる。
【0046】
1.2.第2液相を除去する工程
上述したように、第2液相を除去する工程は、生成したアルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、を含む。第1液相と第2液相とを層分離させるためには、反応液の温度がアミンハロゲン酸塩の融点より高いことが望ましい。第2液相を除去する工程における具体的な反応液の温度としては、通常0〜200℃であり、30〜180℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましい。この場合、副生するアミンハロゲン酸塩が液体状で存在するため、第1液相と第2液相とを相分離させることができる。このうち、第2液相を例えば分液処理により除去することにより、アルコキシシランを含む第1液相のみを単離することができる。これにより、蒸留などの精製処理を別途行わずに、アルコキシシランを高純度で得ることができる。
【0047】
1.3.未反応の第3級アミンを除去する工程
本実施形態に係るアルコキシシランの製造方法は、アルコールAとハロゲン化ケイ素化合物Cとの反応の後であって、第2液相を除去する工程の前または後に、水を実質的に含有しない酸を添加して、未反応の第3級アミンを塩として析出させる工程をさらに含んでいてもよい。この工程により、未反応の第3級アミンをアルコキシシランと効果的に分離することができるため、第3級アミンを簡便に除去することができる。この工程は、第3級アミンの沸点と目的物のアルコキシシランの沸点とが近い場合(例えば両者の沸点の差が0〜50℃)に特に有用である。
【0048】
酸の使用量は、反応に使用した第3級アミンに対して1〜10モル%であることが好ましい。
【0049】
また、目的物であるアルコキシシランの加水分解や縮合反応を抑制する点で、酸は有機酸であることが好ましい。有機酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0050】
2.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、それぞれ重量部および質量%であることを示している。
【0051】
2.1.評価方法
反応後の反応液をサンプリングし、GC(装置本体:Agilent technologies社製6890N、カラム:Supelco社製SPB−35)により反応液中の化合物存在比を調べた。なお、各化合物の同定は、標品のGCを測定することによって実施した。その結果を表1に示す。
【0052】
2.2.合成例
2.2.1.合成例1
四つ口セパラブルフラスコに、窒素導入口、温度計および撹拌羽を取り付け、イソプロピルジエチルアミン152g(1.0 mol)およびエタノール46g(1.0 mol)を加え、ここに滴下ロートを用いてトリエチルクロロシラン151g(1.0 mol)を1時間かけて滴下した。この際、反応液の温度が60℃以上70℃以下となるよう制御した。滴下終了後、60℃で撹拌を1時間継続した後に撹拌を止め静置すると、反応液が2相に分離した。分液ロートで下相を抜き取った後、上相をGCにて分析したところエタノール1%、トリエチルエトキシシラン96%、イソプロピルジエチルアミン2%、その他未同定成分1%であることを確認した。次いで、この上相を蒸留にて精製して、トリエチルエトキシシラン149g(収率93%、純度99%)を得た。(なお、下相を構成する、副生するイソプロピルジエチルアミン塩酸塩の融点は約57℃である。)。
【0053】
2.2.2.合成例2
四つ口セパラブルフラスコに、窒素導入口、温度計および撹拌羽を取り付け、トリプロピルアミン143g(1.0 mol)およびメタノール32g(1.0 mol)を加え、ここに滴下ロートを用いてビス(ジクロロシリル)メタン54g(0.25 mol)を1時間かけて滴下した。この際、反応液の温度が50℃以上60℃以下となるよう制御した。滴下終了時の時点では固体のアミン塩酸塩が析出したが、滴下終了後90℃で撹拌を1時間継続した後に撹拌を止め静置すると、固体は完全に溶解し、反応液が2相に分離した。分液ロートで下相を抜き取った後、上相をGCにて分析したところ、メタノール1%、ビス(ジメトキシシリル)メタン95%、トリプロピルアミン3%、その他未同定成分1%であることを確認した。次いで、この上相を蒸留にて精製したところ、ビス(ジメトキシシリル)メタンを47g(収率95%、純度99%)を得た(なお、下相を構成する、副生するトリプロピルアミン塩酸塩の融点は約90℃である)。
【0054】
2.2.3.合成例3
四つ口セパラブルフラスコに、窒素導入口、温度計および撹拌羽を取り付け、N,N−ジメチルアニリン436g(3.6 mol)および2−プロパノール216g(3.6 mol)を加え、ここに滴下ロートを用いてクロロメチルメチルジクロロシラン294g(1.8 mol)を3時間かけて滴下した。この際、反応液の温度が60℃以上70℃以下となるよう制御した。この時点で固体のアミン塩酸塩は確認されなかった。滴下終了後60℃で撹拌を1時間継続した後に撹拌を止め静置すると、反応液が2相に分離した。上相をGCにて分析したところ、2−プロパノール1%、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン94%、N,N−ジメチルアニリン4%、その他未同定成分1%であることを確認した。さらに反応液を90℃に加熱しながら、マレイン酸10gを添加し30分間撹拌を継続した後静置すると、反応液が再度2相に分離した。分液ロートで下相を抜き取った後、上相をGCにて分析したところ、2−プロパノール1%、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン98%、その他未同定成分1%となり、N,N−ジメチルアニリンは検出されなかった。次いで、この上相を蒸留にて精製したところ、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン341g(収率90%、純度99%)を得た(なお、下相を構成する、副生するN,N−ジメチルアニリン塩酸塩の融点は約90℃である)。
【0055】
2.2.4.合成例4
四つ口セパラブルフラスコに、窒素導入口、温度計および撹拌羽を取り付け、N,N−ジメチルアニリン436g(3.6 mol)および2−プロパノール270g(4.5 mol)を加え、ここに滴下ロートを用いてクロロメチルメチルジクロロシラン294g(1.8 mol)を3時間かけて滴下した。この際、反応液の温度が40℃以上50℃以下となるよう制御した。この時点で固体のアミン塩酸塩は確認されなかった。滴下終了後60℃で撹拌を1時間継続した後に撹拌を止め静置すると、反応液が2相に分離した。分液ロートで下相を抜き取った後、上相をGCにて分析したところ、2−プロパノール2%、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン95%、N,N−ジメチルアニリン2%、その他未同定成分1%であることを確認した。次にこの上相にシュウ酸(無水)を8g加え1時間撹拌させた後、固形分をろ別し、ろ液をGCにて分析したところ、2−プロパノール2%、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン97%、その他未同定成分1%となり、N,N−ジメチルアニリンは検出されなかった。次いで、このろ液を蒸留にて精製したところ、クロロメチルメチルジイソプロポキシシラン338g(収率89%、純度99%)を得た。
【0056】
2.3.考察
合成例1〜4に示されるように、対応する第3級アミン塩酸塩の融点が150℃以下となる第3級アミンBを用いてハロゲン化シラン化合物Cのアルコキシ化を行うことにより、反応液がアミンハロゲン酸塩の融点以上であれば、副生する第3級アミン塩酸塩Cを含む相(第2液相)が液体となるため、主に第3級アミン塩酸塩Cから構成される相(第2液相)と生成するアルコキシシランAを含む層(第1液相)との相分離が生じるため、副生する第3級アミン塩酸塩を分液処理によって除去することができることが理解できる。
【0057】
また、合成例4に示されるように、アルコールAの使用量(当量)をハロゲン化シラン化合物Cの使用量(当量)より多くした場合であっても、同様の操作を行うことができる。
【0058】
さらに、合成例3,4によれば、水を実質的に含有しない酸を系(反応液)内に添加することにより、アルコキシシラン含有相に残留する微量の第3級アミンに酸を作用させて、塩として系外に除去できることが明らかになった。このアミン除去方法は、第3級アミンの沸点と目的物のアルコキシシランの沸点とが近い場合に特に有用である。
【0059】
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールAおよびハロゲン化ケイ素化合物Cを第3級アミンBの存在下で反応させてアルコキシシランを得る工程と、
前記アルコキシシランを含有する第1液相と、副生する液体のアミンハロゲン酸塩を含有する第2液相とを相分離させた後、該第2液相を除去する工程と、
を含む、アルコキシシランの製造方法。
【請求項2】
前記アルコキシシランを得る工程は、前記アルコールAおよび前記第3級アミンBを含む反応系内に、前記ハロゲン化ケイ素化合物Cを添加する工程を含む、請求項1に記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項3】
前記アミンハロゲン酸塩の融点が0〜150℃である、請求項1または2に記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項4】
前記第3級アミンBがイソプロピルジエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエチル(3−メチル−ペンチル)アミン、ジエチル(2−プロピル−ペンチル)アミン、N,N−ジメチルアニリン、およびジメチル(2−メチル−3−フェニル−プロピル)アミンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし3のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項5】
前記アルコールA 1分子中の水酸基の数をxとし、前記ハロゲン化ケイ素化合物C
1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、
前記ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対する前記アルコールAの使用量(モル比)zが、y/x≦z≦2y/xで規定される、請求項1ないし4に記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化ケイ素C化合物 1分子中のハロゲン−ケイ素結合の数をyとしたとき、
前記ハロゲン化ケイ素化合物Cの使用量に対する前記第3級アミンBの使用量(モル比)wが、0.95y≦w≦1.2yで規定される、請求項1ないし5のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項7】
前記アルコールA 1分子に含まれる水酸基の数が1つである、請求項1ないし6のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項8】
前記ハロゲン化ケイ素化合物Cにおいてケイ素原子に結合しているハロゲン原子が、塩素、臭素、およびヨウ素から選ばれる少なくとも1種である、請求項1ないし7のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項9】
前記反応の後であって、前記第2液相を除去する工程の前または後に、水を実質的に含有しない酸を添加して、未反応の第3級アミンを塩として析出させる工程をさらに含む、請求項1ないし8のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項10】
前記酸が有機酸である、請求項9に記載のアルコキシシランの製造方法。
【請求項11】
前記アルコキシシランは、下記一般式(1)で表される化合物または下記一般式(2)で表される化合物である、請求項1ないし10のいずれかに記載のアルコキシシランの製造方法。
22Si(OR214−n ・・・・・(1)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R22は水素原子または1価の有機基を示し、nは0〜3の整数を示す。)
23(R21O)3−kSi−(R25−SiR24(OR213−l ・・・(2)
(式中、R21は1価の有機基を示し、R23およびR24は同一または異なり、水素原子または1価の有機基を示し、kおよびlは同一または異なり、0〜2の数を示し、R25は酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、oは0または1を示す。)

【公開番号】特開2010−105918(P2010−105918A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276277(P2008−276277)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】