説明

アルコキシシランをベースとする耐引掻性が高く、かつ高弾性の被覆剤

(A)式(I)-X-SiR"x(OR')3-x[式中、R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルを表し、その際、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、Xは、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基を表し、R″は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、ならびにxは、0〜2である]の反応性の基を少なくとも2つ有する化合物(A1)および/または(A1′)の少なくとも1つを、被覆剤中の不揮発性物質の含有量に対して少なくとも50質量%、(B)−Si(OR′)3−x単位を架橋するための触媒、および(C)有機溶剤または有機溶剤の混合物を含有し、被覆剤の硬化の際に、反応性の基(I)は、ナノインデンテーション法による試験において、硬化した層が次の特性を生じるように架橋する被覆剤:a.弾性体積上昇率>86.5%、b.塑性変形<3.5%、c.破壊による変形<10.0%。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OEM大量生産用コーティングのために、特にトップコートとして、有利にはクリアコートとして適切である、非プロトン性溶剤をベースとし、ならびにアルコキシシランをベースとする、高い耐引掻性および高いゴム弾性を有する熱硬化性被覆剤に関する。
【0002】
側方および/または末端のアルコキシシラン基を有するポリ(メタ)アクリレートをベースとする結合剤を含有する被覆剤は、たとえば特許もしくは特許出願US−A−4,043,953、US−A−4,499,150、US−A−4,499,151、EP−A−0549643およびWO−A−92/20643から公知である。ここに記載されているポリ(メタ)アクリレートは、使用されるすべてのコモノマーに対して、アルコキシシラン基を有するコモノマーを70質量%まで含有していてよい。該被覆剤は、ルイス酸の触媒反応下に、かつ場合により少量の水の存在下にSi−O−Si−架橋を形成しながら硬化する。該被覆剤は特にOEM構造物におけるクリアコートして使用される。このようなクリアコートはすでに高い耐引掻性を有し、かつ比較的良好な耐候性を有しているにもかかわらず、高負荷可能な、OEMのクリアコートとしての適用を困難にする、弾性における欠点を有する。
【0003】
EP−A−0267698には、溶剤含有被覆剤が記載されており、これは結合剤成分として、(1)ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの(ミヒャエル反応)、およびその後、アミノアルキルアルコキシシランとの連続的な反応により得られるアルコキシシラン基を有する架橋性付加物、および(2)側方および/または末端のアルコキシシラン基を有するポリ(メタ)アクリレートを含有する。ミヒャエル反応の際に形成される、付加物中の良好に利用可能なアミン基は、硬化した被覆の耐水性の低下につながる。さらに、これらのアミン基は硬化過程で−Si(O−アルキル)3基との反応により、Si−N−C−架橋点を形成することができ、これは加水分解に不安定であり、かつ得られる被覆の耐薬品性の低下につながる。このような被覆もまた、弾性において欠点を有する。
【0004】
US−A−4,598,131は、テトラアルキルオルトシリケートとアミノアルコールとの、およびその後のポリイソシアネートとの連続的な反応により得られる、アルコキシシラン基を有する架橋性付加物を含有する溶剤含有の被覆剤を記載している。このような付加物は合成条件によって不所望のSi−O−CもしくはSi−N−C架橋点を有し、該架橋点は加水分解に不安定であり、かつ得られる被覆の耐薬品性の低下につながる。さらに、このような被覆もまた、ゴム弾性において欠点を有する。
【0005】
EP−A−0571073には、結合剤成分として、(1)1より多くの第三級イソシアネート基を有するポリイソシアネートとアミノアルキルアルコキシシランとからなる架橋性付加物、および(2)側方および/または末端のアルコキシシラン基を有するポリ(メタ)アクリレートを含有する、溶剤含有の被覆剤が記載されている。確かに得られる被覆は比較的高い耐引掻性を有するが、被覆のゴム弾性は、特に高負荷の適用の場合には、なお不十分である。
【0006】
DE−A−10237270は、イソシアナトメチルアルコキシシランとポリオールとからなる架橋性付加物を含有する被覆剤を包含する。合成の際に使用されるイソシアナトメチルアルコキシシランは、毒性が高く、従って、通常の製造方法では限定的に使用可能であるにすぎない。この被覆剤もまた、特に自動車用クリアコートとしての適用の際に、表面特性において、特に、たとえば洗浄工程のような負荷後に、欠点を有する。さらに、このような被覆剤を用いて製造される被覆の、ゴム弾性の意味における弾性に関して、最適化することが必要とされている。
【0007】
課題および解決手段
本発明の課題は、特にゴム弾性において、従来技術の被覆の欠点を有していない、有利に高負荷可能なOEMのクリアコートのための被覆剤を提供することであった。本発明の課題はさらに、OEMのクリアコートにおいて存在する、耐引掻性、耐薬品性および耐候性に関する高い要求を満足する被覆を提供することであった。
【0008】
該被覆は特に高度に耐引掻性であり、かつ特に引掻負荷の後で高い光沢保持率を有しているべきである。特に被覆およびコーティング、とりわけクリアコーティングは、応力亀裂が現れることなく、>40μmの層厚さで製造することができるべきである。このことは、工業的および美学的に特に要求の高い自動車の大量生産用コーティングの分野において、被覆およびコーティング、特にクリアコーティングを使用するための重要な前提である。その際、該被覆は、実地に関連するAMTECすり傷試験(Waschstrassentest)において、DIN67530による洗浄後に当初の光沢の70%を上回る光沢保持率(20゜)により顕著となる、特に高いすり傷抵抗性(Waschstrassenbestaendigkeit)を有していなくてはならない。
【0009】
さらに新規の被覆剤は簡単かつ極めて良好に再現可能に製造することができ、かつ塗料を適用する間に、生態学的な問題を生じるべきではない。
【0010】
これに応じて、次の成分を含有する熱硬化性被覆剤が判明した:
(A)式I:
-X-SiR"x(OR')3-x (I)
[式中、
R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
Xは、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基を表し、
R″はアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接してない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、
xは、0〜2である]の反応性の基を少なくとも2つ有する化合物(A1)および/または(A1′)を、被覆剤の不揮発性物質の含有量に対して少なくとも50質量%、
(B)−Si(OR′)3−x単位を架橋するための触媒および
(C)非プロトン性溶剤または非プロトン性溶剤の混合物、
その際、被覆剤の硬化の際に、反応性の基(I)は、硬化した層におけるナノインデンテーション法による試験において、次の特性を生じる:
(a)弾性体積上昇率>86.5%、有利に>88%、特に有利には>89.5%、とりわけ>91%、
(b)塑性変形<3.5%、有利に<3%、特に有利には<2.5%、とりわけ<2%、
(c)破壊による変形<10.0%、有利に<9%、特に有利には<8%、特に<7%。
【0011】
従来技術を鑑みると、本願発明の基礎となっていた課題を、本発明による被覆剤によって解決することができたことは意想外であり、当業者が予測できたものではなかった。
【0012】
本発明による成分(A)は、特に簡単に製造することができ、かつ塗料の適用の際に、著しい毒性および生態学的な問題を示さない。
【0013】
本発明による被覆剤は、極めて良好に再現可能に製造することができ、かつ液状で使用する場合に40質量%より高い、有利には45質量%より高い、特に50質量%より高い固体含有率に調整することができ、その際、このことによってその極めて良好な輸送性、貯蔵安定性および加工性、特にその適用可能性が損なわれることはない。
【0014】
本発明による被覆剤は、耐引掻性が高く、かつ高弾性の新規の被覆およびコーティング、特にクリアコーティングを提供する。被覆の耐薬品性は優れている。さらに、本発明による被覆およびコーティング、とりわけクリアコーティングは、応力亀裂が現れることなく、>40μmの層厚さで製造することができる。従って、本発明による被覆およびコーティング、特にクリアコーティングは、技術的および美学的に特に要求の高い、自動車の大量生産用コーティング(OEM)の分野で使用することができる。その際、本発明による被覆およびコーティングは、特に高い耐すり傷性および耐引掻性により優れており、このことは実地に関連するAMTECすり傷試験に基づいて、DIN67530による洗浄後に、当初の光沢の70%を上回る光沢保持率(20゜)により実証することができる。
【0015】
発明の詳細な説明
被覆剤の成分(A)
本発明による被覆剤の成分(A)は、式I:
-X-SiR"x(OR')3-x (I)
[式中、
R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルを表し、その際、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
Xは、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基を表し、
R″は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、ならびに
xは、0〜2である]の反応性の基を少なくとも2つ有する化合物(A1)および/または(A1′)の少なくとも1つを、被覆剤中の不揮発性物質の含有量に対して少なくとも50質量%含有している。
【0016】
本発明の有利な実施態様では、被覆剤の成分(A)は、式I
-X-SiR"x(OR')3-x (I)
[式中、
R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際、R′は、有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキル、特に有利にはメチルおよび/またはエチルであり、
Xは、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基であり、その際、Xは、有利には2〜6個の炭素原子を有するアルキレン、特に有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレンであり、
R″は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、R″は、有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、特に有利にはメチルおよび/またはエチルであり、ならびにxは、0〜2であり、有利にはxは0である]の反応性の基を少なくとも1つ有するラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物(a1)を、コポリマー(A1)中のコモノマーの全体に対して、70質量%より多く、有利には72質量%より多く、特に有利には74質量%より多く含有する。
【0017】
特に有利な化合物(A1)は、たとえばEP−B1−0549643(第3頁、第47行目〜第4頁、第34行目)に記載されている。化合物(a1)として特に有利であるのは、反応性の基(I)を有するアクリレートおよび/またはメタクリレートであり、たとえばγ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシランまたは特にγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。
【0018】
コポリマー(A1)中のコモノマーの全体に対して、30質量%未満、有利には28質量%未満、特に有利には26質量%未満の割合で存在するラジカル重合性のエチレン性不飽和コモノマー成分(a2)は、ラジカル重合性のエチレン性不飽和化合物、有利にはアクリレートおよび/またはメタクリレートである。場合により式IおよびIIの反応性の基とは異なる別の反応性の官能基(f)を有する、アクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキル−、シクロアルキル−、アリールおよび/またはアラルキルエステルである。反応性の官能基(f)は、自体公知の放射線架橋性および/または熱架橋性の基であってもよく、たとえば放射線架橋性の基としてはビニル基、(メタ)アクリロイル基またはアクリル基、ならびに熱架橋性の基、たとえばエポキシ−、イソシアネート−カルバメートおよび/またはアミノ基である。有利には反応性の官能基(f)は、被覆剤を硬化させる際に、加水分解に不安定なSi−N−C架橋点および/またはSi−O−C架橋点を形成しないか、またはごくわずかな範囲で形成するにすぎないように選択する。化合物(a2)として特に有利であるは、1〜10個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のアルキル−および/またはシクロアルキルエステルである。
【0019】
本発明による被覆剤における成分(A1)の割合は、被覆剤中の不揮発性物質の含有量に対して、少なくとも50質量%、有利には少なくとも60質量%、特に有利には少なくとも70質量%である。
【0020】
本発明のもう1つの特別有利な実施態様では、本発明による成分(A)は、式II:
-NR-C(0)-N-(X-SiR"x(OR')3-x)n(X'-SiR"y(OR')3-y)m(R″′)o (II)
[式中、
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、
R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、R′は、有利には水素であるか、かつ/または1〜6個の炭素原子を有するアルキル、特に有利にはメチルおよび/またはエチルであり、
X、X′は、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基であり、その際、X、X′は、有利には2〜6個の炭素原子を有するアルキレン、特に有利には2〜4個の炭素原子を有するアルキレンであり、
R″は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、R″は、有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキル、特に有利にはメチルおよび/またはエチルであり、
R″′は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、R″′は、有利には1〜6個の炭素原子を有するアルキルであり、特に有利には1〜4個の炭素原子を有するアルキルであり、
nは、0〜2、有利にはnは、1または2であり、
mは、0〜2、有利にはmは、1または2であり、
oは0または1、有利にはoは、0であり、
m+nは、2であり、
有利にはm+nは、2であり、ならびに
x、yは、0〜2、有利にはxは0である]の反応性の基を少なくとも1つ有する化合物(A1′)を、被覆剤中の不揮発性物質の含有量に対して、少なくとも50質量%含有している。

【0021】
有利には式IIの反応性の基を有する成分(A1′)は、少なくとも1種のジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート(PI)と、少なくとも1種の式III:
HN-(X-SiR''x(OR')3-x)n(X'-SiR''y(OR')3-y)m(R″′)o (III)
[式中、置換基および指数は上記で定義したとおりである]のアミノシランとの反応により製造される。
【0022】
特に有利なアミノシラン(III)は、N−メチル−2−アミノエチル−トリメトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、N−メチル−4−アミノブチル−トリメトキシシラン、N−メチル−2−アミノエチル−トリエトキシシラン、N−メチル−3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−メチル−4−アミノブチル−トリエトキシシラン、前記化合物のN−エチル−、N−プロピル−およびN−ブチル誘導体、ならびに特にビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンおよび/またはビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。架橋密度をさらに向上するためにとりわけ有利であるのはビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンである。
【0023】
このようなアミノシランはたとえば、商標名DYNASILAN(登録商標)でDEGUSSA社から、もしくはSilquest(登録商標)で、OSI社から入手可能である。
【0024】
成分(A1′)を製造するためのジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートPIとして、自体公知の置換されているか、または置換されていない芳香族、脂肪族、脂環式および/または複素環式のポリイソシアネートが有利である。有利なポリイソシアネートの例は次のものである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、4,4′−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(たとえばBayer AG社のDesmodur(登録商標))、テトラメチルキシリルジイソシアネート(たとえばAmerican Cyanamid社のTMXDI(登録商標))および前記のポリイソシアネートの混合物。さらに有利なポリイソシアネートは、前記のジイソシアネートのビウレット二量体およびイソシアヌレート三量体である。特に有利なポリイソシアネートPIは、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4′−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、これらのビウレット二量体および/またはイソシアヌレート三量体である。
【0025】
本発明のもう1つの実施態様では、ポリイソシアネートPIは、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートのプレポリマーであり、これはポリオールと、化学量論的に過剰の前記のポリイソシアネートとの反応により得られる。このようなポリイソシアネートプレポリマーはたとえばUS−A−4,598,131に記載されている。特に有利な成分(A1′)は次のものである:ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートおよび/またはこれらのイソシアヌレート三量体と、N−メチル−3−アミノプロピル−トリメトキシシランおよび/または特にビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンとの反応生成物。ポリイソシアネートとアミノシランとの反応は、有利には不活性ガス雰囲気中、最高で100℃、有利には最高で60℃の温度で行う。
【0026】
得られる成分(A1′)は、本発明によれば、前記の式(II)の構造単位を少なくとも1つ有し、本発明により有利な製造法によれば、ポリイソシアネートPIのイソシアネート基の有利に少なくとも90モル%、特に有利には少なくとも95モル%をアミノシラン(III)と反応させて構造単位(II)が得られる。
【0027】
本発明による被覆剤における成分(A1′)の割合は、被覆剤中の不揮発性物質の含有率に対して、少なくとも50質量%、有利には少なくとも70質量%、特に有利には少なくとも80質量%である。
【0028】
被覆剤の別の成分
−Si(OR′)3−x(y)単位の架橋のための触媒(B)として、自体公知の化合物を使用することができる。その例は、ルイス酸(電子が不足している化合物)、たとえばナフテン酸スズ、安息香酸スズ、オクタン酸スズ、酪酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズ酸化物、オクタン酸鉛である。
【0029】
触媒として有利にはキレートリガンドを有する金属錯体を使用する。キレートリガンドを形成する化合物は、金属原子または金属イオンに配位することができる官能性の基を少なくとも2つ有する有機化合物である。通常、これらの官能基は、電子受容体としての金属原子または金属イオンに電子を与える電子供与体である。基本的に前記の種類のすべての有機化合物は、本発明による硬化性組成物が本発明による硬化した組成物へと架橋することに否定的な影響を与えないか、または妨げることのない限り、適切である。たとえばアルミニウムおよびジルコニウムのキレート錯体、たとえば米国特許US4,772,672A、第8欄、第1行目〜第9欄、第49行目に記載されているものを、触媒として使用することができる。特に有利であるのは、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよび/またはホウ素のキレート、たとえばアルミニウムエチルアセトアセテートおよび/またはジルコニウムエチルアセトアセテートである。
【0030】
さらに特に有利であるのは、アルミニウム、ジルコニウム、チタンおよび/またはホウ素のアルコラートおよび/またはエステルである。
【0031】
さらに成分(B)として特に有利であるのは、ナノ粒子である。このようなナノ粒子は有利には少なくとも部分的に−Si(OR′)3−x(y)−単位の架橋の際に架橋点に一緒に組み込まれる。
【0032】
有利にはナノ粒子は、金属および金属の化合物、有利には金属の化合物からなる群から選択される。
【0033】
有利には金属は元素の周期律表の第3〜第4主族、第3〜第6ならびに第1および第2副族ならびにランタノイドからの金属であり、かつ有利にはホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、亜鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびセリウムからなる群から選択される。特にアルミニウム、ケイ素、チタンおよび/またはジルコニウムを使用する。有利には金属の化合物は、酸化物、酸化物水和物、硫酸塩、水酸化物またはリン酸塩、特に酸化物、酸化物水和物および水酸化物である。特に有利であるのは、ベーマイトのナノ粒子である。
【0034】
有利には該ナノ粒子は、50nm未満、有利には5〜50nm、特に5〜30nmの一次粒径を有する。触媒成分(B)は、本発明による被覆剤の不揮発性成分に対して、有利には0.01〜30質量%の割合で、特に有利には0.1〜20質量%の割合で使用する。
【0035】
別の成分(C)として、被覆剤中で成分(A)および(B)に対して化学的に不活性であり、かつ被覆剤の硬化の際にも(A)および(B)と反応しない非プロトン性溶剤が適切である。このような溶剤の例は、脂肪族および/または芳香族炭化水素、たとえばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso 100またはHydrosol(ARAL社)、ケトン、たとえばアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルアミルケトン、エステル、たとえばエチルアセテート、ブチルアセテート、ペンチルアセテートまたはエチルエトキシプロピオネート、エーテルまたは前記の溶剤の混合物である。有利には溶剤または溶剤混合物は、溶剤に対して最大で1質量%、特に有利には最大で0.5質量%の含水率を有する。本発明の有利な1実施態様では、まず、成分(A)および(C)の混合物を製造し、これを別の工程で本発明による被覆剤の残りの成分と混合する。本発明のもう1つの実施態様では、成分(D)として、成分(A)のSi(OR)3基と、および/またはそれ自体で、場合により成分(B)の触媒の存在下に架橋点を形成することができる別の結合剤を使用する。
【0036】
たとえば成分(D)として、Si(O−アルキル)3基を有するオリゴマーまたはポリマー、たとえばすでに記載した特許(出願)US−A−4,499,150、US−A−4,499,151またはEP−A−0571073に記載されているポリ(メタ)アクリレートを使用することができる。しかしこのような成分(D)は、硬化した被覆の高い耐候性が維持されるような量で使用する。通常、このような−Si(O−アルキル)3基を有するポリ(メタ)アクリレートは、被覆剤の不揮発性成分に対して、40質量%まで、有利には30質量%まで、特に有利には25質量%までの割合で使用する。
【0037】
有利には成分(D)として、アミノプラスト樹脂および/またはエポキシ樹脂を使用することができる。そのメチレンおよび/またはメトキシメチル基が、部分的にカルバメート基またはアロファネート基により脱官能化されていてもよい、通常かつ公知のアミノプラスト樹脂が考えられる。この種の架橋剤は、特許文献USA−4,710,542およびEP−B−0245700ならびにB. Singhおよび共同著作者による論文、"Carbamylmethylated Melamines, Novel Crosslinkers forthe Coatings Industry" in Advanced Organic Coatings Science and Technology Series、1991年、第13巻、第193〜207頁に記載されている。
【0038】
特に有利な成分(D)は、有利に成分(B)の触媒反応下にそれ自体で反応するエポキシ樹脂であり、特に有利であるのは、高い耐候性を有する脂肪族エポキシ樹脂である。このようなエポキシ樹脂はたとえば、B.Ellisによる著書"Chemistry and Technology of Epoxy Resins" (Blackie Academic & Professional、1993年、第1〜35頁)に記載されている。
【0039】
通常、成分(D)は、被覆剤の不揮発性成分に対して、40質量%まで、有利には30質量%まで、特に有利には25質量%までの割合で使用する。成分(D)を選択する際には、被覆剤が硬化する際に、加水分解に不安定なSi−N−C架橋点および/またはSi−O−C架橋点を形成しないか、またはごくわずかな範囲で形成するにすぎないことに留意すべきである。
【0040】
さらに本発明による被覆剤は、通例かつ公知の塗料添加剤少なくとも1種を、有効量で、つまり、被覆剤の不揮発性成分に対して、有利には30質量%までの量で、特に有利には25質量%まで、およびとりわけ20質量%までの量で含有していてよい。
【0041】
適切な塗料添加剤の例は次のものである:
特にUV吸収剤、
特に光安定剤、たとえばHALS化合物、ベンゾトリアゾールまたはオキサルアニリド、
遊離基捕捉剤、
スリップ剤、
重合防止剤、
消泡剤、
反応性希釈剤、たとえば有利には成分(A)の−Si(OR′)3基と反応して−Si−O−C−架橋点および/または−Si−N−C−架橋点を形成することがない従来技術から一般に公知のもの、
湿潤剤、たとえばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、リン酸エステル、ポリアクリル酸およびこれらのコポリマーまたはポリウレタン、
カップリング剤、たとえばトリシクロデカンジメタノール、
レベリング剤、
塗膜形成助剤、たとえばセルロース誘導体、
成分(B)とは異なる充填剤、たとえば二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子、補足的にRoempp Lexikon "Lacke und Druckfarben"、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、1998年、第250〜252頁を参照されたい。
【0042】
レオロジー調節剤、たとえば特許文献WO94/22968、EP−A−0276501、EP−A−0249201またはWO97/12945から公知のもの、架橋したポリマーのマイクロ粒子、たとえばEP−A−0008127に開示されているもの、無機の層状ケイ酸塩、たとえばモンモリロナイトタイプのアルミニウム−マグネシウム−ケイ酸塩、ナトリウム−マグネシウムおよびナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム−層状ケイ酸塩、ケイ酸、たとえばアエロジル、またはイオン性および/または会合作用のある基を有する合成ポリマー、たとえばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−マレイン酸無水物またはエチレン−マレイン酸無水物のコポリマーおよびこれらの誘導体または疎水性に変性されたエトキシ化ウレタンまたはポリアクリレート、
および/または難燃剤。
【0043】
本発明のもう1つの実施態様では、本発明による被覆剤はさらに別の顔料および/または充填剤を含有していてもよく、かつ顔料着色されたトップコートを製造するために使用される。このために使用される顔料および/または充填剤は当業者に公知である。
【0044】
本発明による被覆剤から製造された本発明による被覆は、すでに硬化した電着コーティング、サーフェイサーコーティング、ベースコーティングまたは通例かつ公知のクリアコーティング上にも良好に付着するので、自動車の大量生産(OEM)用のコーティングにおける使用とならんで、自動車の補修用のコーティングまたは塗装した自動車の車体の露出部分を耐引掻性に加工するために適切である。本発明による被覆剤の適用は、すべての通例の適用法、たとえば噴霧、ナイフ塗布、刷毛塗り、流し塗り、浸漬、含浸、散布またはロール塗りにより行うことができる。その際、被覆すべき支持体は、それ自体静止しており、適用装置が移動してもよい。しかしながら、被覆すべき支持体、特にコイルは動かされてもよく、その際、適用装置は基材に対して静止しているか又は適当に動かされてもよい。
【0045】
有利にはたとえば圧縮空気による噴霧、エアレス噴霧、高速回転、静電噴霧塗装(ESTA)を、場合によりホットスプレー法、たとえばホットエアー噴霧法と組み合わせて適用する。適用される本発明による被覆剤の硬化は、一定の静止時間の後に行うことができる。静止時間はたとえば塗料層のレベリングのため、および脱気のために、または揮発性成分、たとえば溶剤の気化のために役立つ。静止時間は、塗料層の損傷または変化、たとえば早すぎる完全な架橋が現れない限り、高めた温度の適用により、かつ/または空気湿分の低下により支援するか、かつ/または短縮することができる。
【0046】
被覆剤の熱硬化は方法的な特徴はなく、常用の及び公知の方法、例えば循環空気炉中での加熱又はIR−ランプを用いた照射により行われる。この場合、熱による硬化は段階的に行うこともできる。もう1つの有利な硬化法は、近赤外線(NIR線)による硬化である。
【0047】
有利には熱による硬化は50〜200℃、特に有利には60〜190℃、特に80〜180℃の温度で、1分〜5時間、特に有利には2分〜2時間および特に3分〜90分の時間で行う。
【0048】
本発明による被覆剤は、耐引掻性が高く、かつ特に耐薬品性であり、耐候性の新規の硬化した被覆、特にコーティング、とりわけクリアコーティング、成形部材、特別な光学成形部材および自由支持のシートを提供する。特に本発明による被覆およびコーティング、とりわけクリアコーティングは、応力亀裂が現れることなく、>40μmの層厚さで製造することができる。
【0049】
本発明による被覆の弾性は、ナノインデンターによる最上部の塗料層(塗膜)の変形により、「弾性」、「塑性」および「脆性」のカテゴリーで表して特徴付けられる。試験のために適用される損傷(変形)は、この場合、最大で3μm、有利には最大で1.5μmの深さを有するべきである。
【0050】
本発明による被覆の特徴は、以下の値により特徴付けられる:
【表1】

【0051】
変形の割合を測定するために適切な測定装置は、たとえばSurface社(Hueckelhoven)から、商標名Hysitron Tribolndenter(登録商標)で提供されている。
【0052】
試験は以下のとおりに実施する:圧子として、バーコビッチ型のダイヤモンドの三角錐(稜線間の角度142.3゜)を使用する。理想的な先端を有する角錐型からの逸脱(平坦化)はこの場合、最大で200nmであってもよい(図1)。この圧子を次いで、直線的に上昇する力で10秒間、最大荷重5mNまで、被覆表面に押し込み、ここでさらに最大荷重で10秒間、保持し、かつ次の10秒間の間に、直線的に低下する力で、表面から引き戻す(図2)。
【0053】
残留する損傷(図3)を、本来の損傷の10分後に三次元的に測定する。次いで、本来の損傷、残留する損傷および持ち上げられた材料の体積比から、カテゴリーの値を以下のとおりに測定する:
弾性:(当初の体積−残留する体積)/当初の体積×100%
塑性:(持ち上げられた体積)/当初の体積×100%
脆性:(残留する体積−持ち上げられた体積)/当初の体積×100%
本発明による被覆剤は、移動手段(特に自動車、たとえばオートバイ、バス、トラックまたは乗用車)の車体、またはこれらの部材、屋内および屋外領域の建築物、家具、窓およびドア、プラスチック成形部材、特にCDおよび窓、工業用の小部品、コイル、コンテナおよび包装材料、白物家電、シート、光学用、電子工学用および機械用の部材ならびにガラス中空体および日用品の装飾用、保護用および/または効果を与える耐引掻性および高弾性の被覆およびコーティングとして好適である。
【0054】
特に本発明による被覆剤およびコーティング、特にクリアコーティングは、技術的および美学的に特に要求の高い、自動車の大量生産用コーティング(OEM)の分野で使用することができる。特に有利には本発明による被覆剤は、多工程の被覆方において使用され、特に、場合により前被覆された支持体上に、まず顔料着色されたベースコート層を施与し、かつその後、本発明による被覆剤による層を施与する方法において使用される。このような方法はたとえばUS−A−4,499,150に記載されている。
【0055】
この場合、本発明による被覆およびコーティングは、特に高い耐薬品性および耐候性ならびに極めて良好なすり傷抵抗性および耐引掻性により優れており、これは実地に関連するAMTECすり傷試験に基づいて、DIN67530による洗浄後に当初の光沢の70%を上回る、有利には80%を上回る光沢保持率(20゜)により証明される。
【0056】
実施例
製造例1 適切な触媒(成分B)の製造
クリアコートの優れた硬化を保証するために、まず適切な触媒を製造する。このために、丸底フラスコ中のアルミニウム-s-ブチレート20.43質量部に、室温でエチルアセトアセテート13.01質量部をゆっくり添加し、その際、攪拌し、かつ冷却する。引き続き、該反応混合物を室温でさらに1時間攪拌する。
【0057】
製造例2 シラン化されたジイソシアネート(ビスアルコキシルアミンを含有するHDI)(成分A1))の製造
還流冷却器および温度計を備えた三口フラスコ中に、三量化されたヘキサジイソシアネート(HDI)(Basonat HI 100)30.4部およびソルベントナフサ15.2部を装入する。窒素パージおよび撹拌下に、ビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン(Silquest A 1170)54.4部を、50℃を超えないように計量供給する。供給の終了後に、反応温度を50℃に維持する。完全なブロッキングは、上記の滴定により確認される。
【0058】
こうして得られたブロックトイソシアネートは室温で一月以上40℃で貯蔵安定性であり、かつアルミニウム触媒を添加した後に2成分クリアコートとして適用することができた。
【0059】
耐引掻性および耐薬品性の被覆材料の調製
耐引掻性が高く、かつ耐薬品性の被覆剤を調製するために、製造例2に記載したジイソシアネート付加物(A1)90質量%に、製造例1に記載した触媒(B)10質量%を添加した。得られた被覆剤を適用し、かつ140℃で22分にわたり焼き付けた。得られた被覆2の表面の耐引掻性を、スチールウール試験により試験した。耐薬品性をBART試験により試験した。これに属する結果は第1表にまとめられている。
【0060】
【表2】

【0061】
ナノインデンターを用いた特徴付けを前記のとおりに実施した。
【0062】
スチールウールを用いた引掻試験を実施するために、DIN1041によるハンマー(取っ手なしの重さ:800g、取っ手の長さ:35cm)を使用した。試験板を試験前に室温で24時間貯蔵した。
【0063】
平坦なハンマー面に、スチールウールを一層張設し、かつTesaテープで打ち上げられる側に固定した。ハンマーを垂直にクリアコーティング上に乗せた。ハンマーのおもり部分は、傾けずに、かつ付加的な力をかけることなく、クリアコーティングの表面上を移動させた。
【0064】
そのつどの試験において、手で10往復させた。それぞれのこの個々の試験の後で、スチールウールを交換した。
【0065】
負荷後に柔らかい布を用いて試験面からスチールウールの残りを取り除いた。試験面を人工光下で目視により評価し、かつ以下のとおりに評価した:
評点 損傷像
1 存在せず
2 わずか
3 中程度
4 中程度〜平均的
5 著しい
6 極めて顕著
評価は、試験の終了時に直接行った。
【0066】
BART(BASF ACID RESISTANCE TEST)は、酸、アルカリおよび水滴に対するクリアコーティングの耐性を測定するために使用した。この場合、クリアコーティングを勾配炉中で、焼き付け後に、40℃で30分間の温度負荷に供した。予め、試験物質(硫酸10%、36%、亜硫酸6%、塩酸10%、水酸化ナトリウム5%、VE(脱塩もしくは脱イオン)水1、2、3もしくは4滴)を定義されたとおりに計量ピペットにより施与した。物質を作用させた後、引き続き、該物質を流水で除去し、かつ損傷を24時間後に、規定の基準に相応して目視により評価した:
評点
0 欠陥なし
1 わずかなマーキング
2 マーキング/艶の消失/軟化なし
3 マーキング/艶の消失/色調の変化/軟化
4 亀裂/腐食の開始
5 クリアコートのはく離
そのつどのマーキング(スポット)を評価し、かつ結果をそれぞれの試験物質に関する評点の形で記録した。
【0067】
さらに、被覆2を用いたDIN67530によるAMTEC試験を実施し、以下の結果が得られた(光沢20゜):
当初の光沢:88
損傷後の光沢:
洗浄により:84、当初の光沢の95.5%に相当
リフロー時間(分):120
リフロー温度(℃):80 リフロー後の光沢:
洗浄により:83、当初の光沢の94.3%に相当
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】圧子の形状を示す図
【図2】ナノインデンテーション試験による測定法を示す図
【図3】試験結果を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式I:
-X-SiR"x(OR')3-x (I)
[式中、
R′は、水素、アルキルまたはシクロアルキルを表し、その際、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
Xは、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基を表し、
R″は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、
xは、0〜2である]の反応性の基を少なくとも2つ有する化合物(A1)および/または(A1′)の少なくとも1つを、被覆剤中の不揮発性物質の含有量に対して少なくとも50質量%、
(B)−Si(OR′)3−x単位を架橋するための触媒および
(C)非プロトン性溶剤または非プロトン性溶剤の混合物
を含有し、被覆剤の硬化の際に、反応性の基(I)は、硬化した層におけるナノインデンテーション法による試験において、次の特性が生じるように架橋する被覆剤:a.弾性体積上昇率>86.5%、b.塑性変形<3.5%、c.破壊による変形<10.0%。
【請求項2】
化合物(A1)が、式I:
-X-SiR"x(OR')3-x (I)
の反応性の基を少なくとも1つ有するラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物(a1)を、コポリマー(A1)中のコモノマーの合計に対して70質量%より多く含有するポリメタクリレートコポリマーを含むことを特徴とする、請求項1記載の被覆剤。
【請求項3】
化合物(A1′)が、ポリイソシアネートとアルコキシシランとからなる付加物を含み、その際、(A1′)は、式II:
-NR-C(0)-N-(X-SiR"x(OR')3-x)n(X'-SiR"y(OR')3-y)m(R"')o (II)
[式中、
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、その際、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、
X′は、2〜20個の炭素原子を有する線状および/または分枝鎖状のアルキレンまたはシクロアルキレン基を表し、
R″′は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルを表し、その際、炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基により中断されていてもよく、
nは、0〜2であり、
mは、0〜2であり、
oは、0または1であり、
m+n+oは、2であり、ならびに
yは、0〜2である]の反応性の基を少なくとも1つ有することを特徴とする、請求項1記載の被覆剤。
【請求項4】
Xおよび/またはX′が、2〜4個の炭素原子を有するアルキレンを表すことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項5】
式II中で、m+nが、2であることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項6】
触媒(B)が、ホウ素、アルミニウム、チタンおよび/またはジルコニウムのキレート、アルコラートおよび/またはエステルの群から、および/または元素のアルミニウム、ケイ素、チタンおよび/またはジルコニウムの化合物からなるナノ粒子の群から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項7】
非プロトン性溶剤(C)が、溶剤に対して最大で1質量%の含水率を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項8】
被覆剤中に、成分(A)、(B)および(C)以外に、成分のSi(OR′)3基と共に、それ自体で、および/または別の反応相手と共に架橋点を形成することができる別の成分(D)が、不揮発性物質の含有量に対して、40質量%まで含有されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の被覆剤の製造方法において、被覆剤を適用する直前に、成分(A)および(C)の前混合物を、被覆剤の残りの成分と混合することにより被覆剤を製造することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の被覆剤の製造方法。
【請求項10】
多工程の被覆法において、場合により前被覆された支持体上に、顔料着色されたベースコート層を施与し、かつその後、請求項1から9までのいずれか1項記載の被覆剤からなる層を施与することを特徴とする、多工程の被覆法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2008−517008(P2008−517008A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537157(P2007−537157)
【出願日】平成17年10月8日(2005.10.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010867
【国際公開番号】WO2006/042658
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】