説明

アルスロバクターからのHSP60

アルスロバクター(Arthrobacter)の株からのhsp60遺伝子を単離し、配列決定した。コード化タンパク質は、特に魚類において、高免疫原性であり、また、非特異的アジュバントとして及び異種抗原用のアジュバント化担体として有用であると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コリネバクテリウム(Corynebacteria)からの熱ショックタンパク質(hsp)遺伝子およびコード化タンパク質に関する。特に、本発明は、アルスロバクター(Arthrobacter)属のhsp60の単離されたDNA配列およびアミノ酸配列ならびに関連配列に関する。さらに、本発明は、ワクチン(特に、魚類用ワクチン)の製造における、およびアジュバントとしての、および抗原用担体としてのアルスロバクターhsp60の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞内病原体に対する有効なワクチンは、主要組織適合性複合体(MHC)クラスII経路により体液性免疫応答を刺激するだけではなく、(より重要なことに)MHCクラスI経路の活性化により感染細胞の破壊をも誘導する。後者の応答は、CD8細胞傷害性T細胞(CTL)に対する提示のために外来物質の断片が細胞表面まで往復するよう、感染細胞内の外来タンパク質のサイトゾル分解により達成される。精製組換え抗原に基づくワクチンの一般的な欠点は、MHCクラスI経路を活性化できないことである。
【0003】
熱ショックタンパク質(「Hsp」)は、原核細胞および真核細胞により産生される分子シャペロンタンパク質のファミリーであり、これは、多数の細胞内および細胞間過程、特に、抗原プロセシングおよびMHC I系に対する抗原断片の提示において極めて重要な役割を果たしている。
【0004】
細菌性腎疾患(BKD)に対してサケおよび他の養殖魚類を防御することを意図したワクチンとして、アルスロバクター(Arthrobacter)の生非ビルレント株(コリネバクテリウム(Corynebacteria)のファミリーメンバー)が「レノゲン(Renogen)」なる名称で販売されている。この株の特徴はWO 98/33884に開示されている。このワクチンは、水産養殖における使用が許可された最初の生培養体である点で特有である。
【0005】
驚くべきことに、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60が種々の病原体に対する魚類用ワクチンにおいて有効に使用されうることが本発明において示された。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60遺伝子の配列、その断片または相同配列を含んでなる単離された核酸配列を提供する。該遺伝子は、ORF、5’UTRおよび3’UTRならびに任意の成分プロモーター、エンハンサー、調節、終結および局在化要素を含む。
【0007】
第2の態様において、本発明は、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質の配列、その免疫原性断片または相同配列もしくは誘導体を含んでなる単離されたアミノ酸配列を提供する。
【0008】
もう1つの態様において、本発明は、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質をコードする核酸配列を含んでなる、またはアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60ポリペプチド分子を、もしくはhsp60に富むアルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物を含んでなるワクチン組成物を提供する。該ワクチン組成物は、ヒト用または獣医用(水産養殖における使用を含む)の医薬の製造において使用することが可能である。
【0009】
もう1つの実施形態において、本発明は、本発明のワクチン組成物と、別々の投与または連続的投与または同時投与のための異種抗原または異種抗原コード化核酸配列とを含んでなるキットを提供する。
【0010】
本発明のもう1つの態様においては、アルスロバクター(Arthrobacter)のhsp60タンパク質の全部または一部と異種ポリペプチドとの融合タンパク質をコードする核酸配列を提供する。該融合タンパク質自体も提供する。
【0011】
本発明は、キメラ配列を含むアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60配列を運搬するDNA発現ベクター、およびそのようなDNA発現ベクターで形質転換された宿主細胞も提供する。
【0012】
本発明の更にもう1つの態様においては、異種分子に共有結合または非共有結合したアルスロバクター(Arthrobacter)のhsp60タンパク質の全部または一部を含むポリペプチドを含んでなる実体(entity)を提供する。
【0013】
本発明のもう1つの態様においては、動物疾患を治療または予防するための、ワクチン抗原としての又はアジュバントとしての又は異種分子用の担体としてのアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質または核酸配列の使用を提供する。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60に対して産生させた抗体およびその医学的用途も提供する。
【0014】
もう1つの態様においては、免疫原またはハプテンを含む異種分子に共有結合または非共有結合した本発明のhsp60アミノ酸配列を含む医薬組成物を動物に投与することを含んでなる、該動物における該免疫原またはハプテンに対する免疫応答を誘導または増強するための方法を提供する。
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明のhsp60核酸配列またはアミノ酸配列を含む処理用組成物を魚類に投与することを含んでなる、魚類における感染症の治療または予防方法を提供する。
【0016】
本発明のもう1つの態様においては、インビトロまたはインビボにおける異種遺伝子の発現を駆動するためのアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60プロモーターの使用を提供する。
【0017】
配列表の説明
配列番号1は、アルスロバクター(Arthrobacter)ATCC55921から単離されたhsp60遺伝子のコードDNA配列(5’から3’)(nt.953−2578)、および5’UTR配列部分(nt.1−952)である。
【0018】
配列番号2は、配列番号1のhsp60遺伝子配列のORFから推定したアミノ酸配列である。
【0019】
発明の詳細な説明
本発明のhsp60遺伝子の新規配列および単離または精製されたコード化タンパク質をそれぞれ配列番号1および配列番号2として提供する。驚くべきことに、本発明者らは、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60が、マイコバクテリウム(Mycobacteria)の特異的ノナペプチド(Mhsp65(369−377))と、CTL刺激性エピトープを共有することを見出した。このエピトープの配列はKLAGGVAVIである。これは、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60がMHC Iクラス経路を活性化することが可能であり、したがって、非常に有望な免疫刺激剤であることを強く示唆している。
【0020】
本発明は、配列番号1および配列番号2に実質的に相同な核酸配列およびアミノ酸配列を含む。「実質的に相同」は、配列が、基準配列と比較された場合に、該基準配列に対して少なくとも60%の相同性、好ましくは少なくとも70%の相同性、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%またはそれ以上の相同性を有することを意味する。
【0021】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の相同性(%)を決定するためには、それらの配列を、最適な比較目的で整列(アライン)させる(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸または核酸配列の配列内にギャップを導入することが可能であり、ギャップ内の介在非相同配列は比較目的においては無視されうる)。それらの2つの配列が同じ長さである必要はない。一般に、それらの配列が比較される配列の長さはアライメントの全範囲である。場合によっては、比較目的で整列させる基準配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも60%、より一層好ましくは少なくとも70%、80%または90%である。基準配列の任意の特定の部分に相同性解析を限定することが可能である。
【0022】
第1(基準)配列内の或る位置が、該配列内の対応位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドにより占拠されている場合には、該分子はその位置において相同である(すなわち、その位置に同一性が存在する)。核酸配列比較の場合には、比較されている両方の分子において、遺伝暗号の縮重により、該ヌクレオチドを含むコドントリプレットが同一アミノ酸をコードしている場合にも、その位置に相同性が存在する。
【0023】
2つの配列間の相同性は、それらの配列により共有される相同位置の数の関数である(すなわち、相同性=相同位置の数/位置の総数)。場合によっては、配列の比較および相同性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することが可能である。適当なアルゴリズムはAltschulら(1990)J.Mol.Biol.215:430−10のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。
【0024】
ストリンジェントな条件下で基準配列番号1にハイブリダイズする相同核酸配列も、本発明の核酸配列内に含まれる。本発明の場合の「ストリンジェント」なハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989),1.101−1.104に記載されているものとして定義される。すなわち、陽性ハイブリダイゼーションシグナルは、1×SSCバッファーおよび0.1% SDSで55℃(好ましくは62℃、最も好ましくは68℃)で1時間洗浄した後、特に、0.2×SSCバッファーおよび0.1% SDSで55℃(好ましくは62℃、最も好ましくは68℃)で1時間洗浄した後に、尚も観察される。
【0025】
本発明の配列は基準核酸配列またはアミノ酸配列の断片を含む。hsp60核酸基準配列の「断片」は、少なくとも50、場合によっては少なくとも75または少なくとも100個の連続的ヌクレオチドを含むその配列の任意の部分である。核酸断片のクラスの1つは、600、好ましくは多くても300ヌクレオチド、より好ましくは多くても150ヌクレオチドの最大長を有する。1つの実施形態においては、本発明の核酸配列断片は配列番号1のORFを含む。もう1つの実施形態においては、本発明の核酸配列断片はhsp60の免疫原性タンパク質断片をコードする。
【0026】
hsp60タンパク質の「断片」は、基準hsp60アミノ酸配列の少なくとも5、10、15または場合によっては少なくとも25、35もしくは45個の連続的アミノ酸を有する任意のペプチド分子を意味する。アミノ酸断片のクラスの1つは、200アミノ酸、好ましくは多くても100アミノ酸、より好ましくは多くても50アミノ酸の最大長を有する。「免疫原性」タンパク質断片は、免疫された宿主の防御をもたらすよう病原体の感染力を中和する抗体を惹起しうる及び/または抗体−補体もしくは抗体依存性細胞傷害性を媒介しうるものである。好ましいhsp60免疫原性断片は、アミノ酸配列KLAGGVAVIのノナペプチドエピトープを含むものである。
【0027】
本発明のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸配列の誘導体、またはその配列のホモログの誘導体をも含む。アミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸配列レベル(例えば、ある天然に存在するアミノ酸が合成アミノ酸置換体により置換された相同配列)または3Dレベル(すなわち、基準アミノ酸配列とほぼ同じ形状およびコンホメーションを有する分子)で基準配列に関連した配列である。したがって、誘導体には、突然変異体、模擬体、ミモトープ(mimotope)、類似体、単量体形態および機能的等価体が含まれる。アミノ酸配列誘導体は、アール・サルモニナルム(R.salmoninarum)のような魚類病原体の抗原を認識しこれと(交差)反応する抗体の産生を誘導する能力、および/またはこれらの病原体の感染を防御する、魚類において免疫応答を誘導する能力を保有する。
【0028】
誘導体には、特に、分子の免疫学的特性を改変しない保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位または付加を含む類似分子が含まれる。保存的アミノ酸置換には、Ser/Ala、Ser/Gly、Asp/Gly、Asp/Asn、lle/Valが含まれる。
【0029】
本発明のhsp60核酸配列はオープンリーディングフレーム(ORF)を含むことが可能であり、5’非翻訳領域(UTR)またはその任意の部分をも含みうる。本発明は、配列番号1の任意の成分プロモーター、エンハンサー、調節、終結および局在化要素、ならびにこれらの要素と異種遺伝子との併用を含む。特に、本発明は、異種遺伝子に連結された、その遺伝子の発現を駆動するための、(配列番号1からの)アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60または実質的に相同な配列のプロモーター配列を含むDNA発現ベクターに拡張される。
【0030】
本明細書に記載のアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60配列(配列番号1)は、アルスロバクター(Arthrobacter)に存在することがゲノムクローニングにより確認された遺伝子の配列であり、配列番号2は、それから推定したアミノ酸配列である。起源アルスロバクター(Arthrobacter)株の培養物は1996年12月20日付けでAmerican Type Culture Collection(10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209)に受託番号ATCC 55921として寄託されている。
【0031】
同じ属の種のhspタンパク質は、一般には、非常に高度に保存されており、したがって、他のコリネバクテリウム(Corynebacteria)、特に、他のアルスロバクター(Arthrobacter)種に固有のhsp60の遺伝子およびタンパク質の配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2から大きくは異ならないと予想される。したがって、本発明はこれらの関連hsp60分子にも拡張される。1つのコリネバクテリウム(Corynebacteria)種からのhsp60遺伝子の配列の知見は、関連生物からの同じ遺伝子の単離を促進する。これらの遺伝子の単離のための方法は当技術分野でよく知られている。
【0032】
「単離(された)」hsp60遺伝子または核酸配列は、アルスロバクター(Arthrobacter)ゲノム内の天然環境における以外の該遺伝子または配列を意味すると理解される。hsp60をコードするDNAは、hsp60を発現する細胞から調製したcDNAライブラリーから得ることができる(hspは遍在性であり、豊富に発現される)。また、hsp60をコードする遺伝子は、ゲノムライブラリーから、例えば実施例1に記載の工程に従うことにより、またはオリゴヌクレオチド合成により得ることができる。
【0033】
天然hsp60タンパク質は、標準的なタンパク質精製技術を用いる適当な精製方法により、細菌細胞源から単離することが可能である。該タンパク質の同一性は、例えば、アルスロバクター(Arthrobacter)ATCC 55921 hsp60抗原に対する抗体を使用するウエスタンブロット法または免疫沈降により確認することができる。N末端アミノ酸配列を使用して、部分的または完全なアミノ酸配列を決定することができる。これは、プローブの設計がcDNAまたはゲノムライブラリーからの天然hsp60配列の単離を促進することを可能にする。
【0034】
ライブラリーは、関心のある遺伝子またはそれによりコードされるタンパク質を同定するよう設計されたプローブ(例えば、hsp60に対する抗体、または少なくとも約20〜80塩基のオリゴヌクレオチド)でスクリーニングすることが可能である。例えば、本明細書に開示されているアルスロバクター(Arthrobacter)遺伝子配列の一部に相同となるよう、プローブを設計することが可能である。あるいは、プローブはビブリオ(Vibrio)hsp60遺伝子配列のような他の細菌hsp遺伝子に対して高度の相同性を有しうる。選択されたプローブでのcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)に記載されているような標準的な方法を用いて行うことができる。hsp60をコードする遺伝子を単離するためのもう1つの手段はPCR法の利用である(Sambrookら,前掲;Dieffenbachら,PCR Primer:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1995))。
【0035】
そのようなライブラリースクリーニング法において同定した配列を、配列番号1に開示されているhsp60、またはGenBankのような公的なデータベースに寄託されており入手可能な他の公知hsp配列と比較し、整列させることが可能である。相同性を測定するために種々のアルゴリズムを使用するBLAST、BLAST−2、ALIGN、DNAstarおよびINHERITのようなコンピュータープログラムを使用する配列アライメントにより、分子の一定領域内の又は完全長配列にわたる配列同一性(アミノ酸または核酸レベル)を決定することが可能である。
【0036】
アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60は、純粋な又は単離された形態でアジュバントとして、抗原と共に使用することが可能である。本明細書中で定義する「アジュバント」は、投与前に抗原と混合された場合または同一部位へ別々に投与された場合に、抗原に対する特異的免疫応答を非特異的に増大させる物質である。本発明の1つの態様においては、単離または精製されたアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質は、動物ワクチン用、特に魚類用ワクチンのアジュバントとして使用する。好ましい用途においては、核酸ワクチンをアジュバント化するために、hsp60遺伝子またはその一部をDNAベクター上に配置する。本発明の範囲においては、本発明のアミノ酸または核酸配列を、少なくとも1つの他の抗原または抗原コード化核酸配列、および1以上の製薬上許容される賦形剤と共に含んでなるワクチン組成物を提供する。前記の、他の抗原は、組換え又は単離された単一の抗原であることが可能であり、あるいはそれは病原体由来の抗原分子の混合物でありうる。
【0037】
アジュバントとしてのアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60の使用は、ビルレント細菌株への復帰の危険性により動物の健康にリスクを与える伝統的な弱毒化生マイコバクテリウムアジュバントの使用を医師および獣医が避けることを可能にする。魚類へのアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60核酸または単離タンパク質の注入は、通常のアジュバントには一般的であり魚類の商業的価値を低下させる注入部位における醜い腫脹または結節を引き起こさないという、水産養殖にとっての更なる利点がある。
【0038】
アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質は、他の抗原を含むワクチンをアジュバント化するのに有効であるばかりでなく、それはそれ自体で免疫原性活性をも有する。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60は、魚類病原体により引き起こされる種々のヒト疾患および獣医学的疾患(特に、SRSおよびBKDが挙げられるが、これらに限定されるものではない)を予防または治療するためのワクチンの有効成分となりうる。本発明のもう1つの態様においては、ワクチン組成物は、唯一の抗原性または免疫原性成分としての単離または精製されたhsp60タンパク質と、1以上の製薬上許容される賦形剤とを含む。ワクチン組成物の唯一の抗原性または免疫原性成分である抗原をコードする本発明のhsp60核酸配列を含む発現ベクターと、1以上の製薬上許容される賦形剤とを含んでなる核酸ワクチン組成物をも提供する。
【0039】
アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60の高免疫原性は、hsp60タンパク質と異種(非hsp60)分子(通常は非hspタンパク質、例えばハプテンであるが、これに限定されるものではない)との遺伝子またはペプチド共有結合体(例えば、キメラまたは融合体)の製造の可能性を示唆している。このように、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質は、付随異種分子に対する体液性および細胞性免疫応答を刺激するためのアジュバント非含有担体として作用する。本明細書中で用いる「担体」なる語は、(タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはオリゴ糖でありうる)第2分子に共有結合している場合に第2分子に対する免疫応答の惹起および増強を助けるT細胞エピトープ含有分子を意味する。
【0040】
ワクチン開発のためのこのアプローチは、関心のある抗原性ペプチドがそれほど大きくなく低免疫原性であるが適切なワクチン標的となる場合に、特に有利である。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60により担持される異種分子は、好ましくは、タンパク質ハプテンまたは非タンパク質分子、例えば炭水化物部分である。
【0041】
本明細書中で用いるhsp60「融合タンパク質」は、異なるポリペプチド(「異種ポリペプチド」)に機能しうる形で連結されたhsp60ポリペプチドを含む。「異種ポリペプチド」または「非hsp60ポリペプチド」は、hsp60タンパク質と実質的に相同でないタンパク質に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。hsp60融合タンパク質において、hsp60ポリペプチドはhsp60タンパク質の全部または一部に相当しうる。該融合タンパク質において、「機能しうる形で連結された」なる語は、hsp60ポリペプチドと非hsp60ポリペプチドとが互いにインフレームで融合していることを示す。非hsp60ポリペプチドはhsp60ポリペプチドのN末端またはC末端に融合されていることが可能であり、あるいはhsp60ポリペプチド内に埋め込まれていることが可能である。
【0042】
融合タンパク質を作製することによってではなく、共有結合または非共有結合により、hsp60ポリペプチドと異種分子とを連結することが可能である。「異種分子」は、hsp60以外の任意のタンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチドまたはオリゴ糖分子である。例えば、ポリペプチド間に化学的スペーサー基を挿入して、例えば、一般式hsp60−X−異種ポリペプチド(式中、Xはスペーサー基、例えば、1以上のアミノ酸の短い配列である)の分子を作製することが可能である。あるいは、アミノ酸の直鎖において、アミド結合以外の様態、例えば化学的結合により、または非hsp分子に対する化学、光(例えば、UV)もしくは放射能誘発性架橋により、hsp60ポリペプチドを共有結合させることが可能である。グルタルアルデヒドおよびメルカプト結合リンカーは、適当な化学的架橋リンカーの例である。考えられうる具体例としては、EDC+NHSまたはスルホ−NHS、スルホ−SMCC、スルホ−SBEDおよびSAEDが挙げられ、これらはキット形態で商業的に入手可能である。
【0043】
本発明の好ましい実施形態においては、hsp60ポリペプチドをハプテンに結合させる。抗体に結合しうるが、大きな担体分子に共有結合している場合にのみ免疫応答を誘導する低分子量の物質(例えば、ペプチドまたはオリゴ糖)が、ハプテンである。
【0044】
細胞ライセート、画分、抽出物、ウイルス粒子などのインビトロ複合体化により、hsp60を抗原性細胞または粒子からのタンパク質の全集団と結合させることが可能である。
【0045】
異種分子またはポリペプチドは任意の起源に由来しうるが、十中八九は病原性生物の成分である。特に、それらは動物(特に水生動物)のウイルス、細菌、原虫、ぜん虫または真菌病原体からのポリペプチドでありうる。
【0046】
アルスロバクター(Arthrobacter)からの単離hsp60遺伝子は、大量の精製または単離組換えhsp60タンパク質(またはhsp60融合タンパク質)を得るために該遺伝子を発現ベクター内にクローニングすることにより、通常の方法で利用することが可能である。精製hsp60抗原は非組換え技術によっても得ることができる。該タンパク質は細胞内に豊富に存在し、通常の精製方法により細胞から抽出することが可能である。あるいは、標準的なペプチド合成技術を用いて、hsp60タンパク質またはポリペプチドを化学合成することが可能である。この精製または単離された組換えまたは非組換えタンパク質を含むワクチンは、抗原に基づくワクチンと称されうる。
【0047】
「単離(された)」または「精製(された)」タンパク質は、hsp60タンパク質が由来する細胞または組織源からの細胞物質または他の混入タンパク質を実質的に含有せず、あるいは化学合成された場合には、化学的前駆体または他の化学物質を実質的に含有しないことと定義される。「細胞物質を実質的に含有しない」なる表現は、hsp60タンパク質の調製物であって、該タンパク質が、それが単離または組換え的に製造された細胞の細胞成分から分離されている調製物を包含する。1つの実施形態においては、「細胞物質を実質的に含有しない」は、約30%(乾燥重量比)未満の非hsp60タンパク質(本明細書中では「混入タンパク質」とも称される)、より好ましくは約20%未満の混入タンパク質、より一層好ましくは約10%未満の混入タンパク質、最も好ましくは約5%未満の混入タンパク質を含有するhsp60タンパク質の調製物を包含する。hsp60タンパク質またはその生物学的に活性な部分を組換え的に製造した場合には、それはまた、好ましくは、培地を実質的に含有しない。すなわち、培地は、タンパク質調製物の体積の約20%未満、より好ましくは約10%未満、最も好ましくは約5%未満に相当する。
【0048】
単離または精製hsp60の代わりに、hsp60「富化(enriched)」アルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物を、本発明の実施において使用することも可能である。「富化」細胞抽出物は、アルスロバクター(Arthrobacter)細胞を全不活性化または殺し、該細胞を細胞溶解し、得られた細胞ライセートを通常手段により分画し、hsp60タンパク質が他の画分に比べて豊富な画分を(例えば、ウエスタンブロット法により)同定することにより得ることが可能である。hsp60富化細胞抽出物は、熱ショックタンパク質の発現の上昇をもたらす条件下(すなわち、加熱または他の細胞ストレス条件下)、アルスロバクター(Arthrobacter)細胞を培養し、該細胞を不活性化または殺し、該細胞を細胞溶解することによっても製造することが可能である。場合によっては、得られた細胞抽出物(ライセート)を分画し、hsp60に富む画分を同定する。
【0049】
好ましくは、本発明のhsp60キメラまたは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術により製造する。例えば、種々のポリペプチド配列をコードするDNA断片を、通常の技術により、例えば、平滑末端化または付着末端化末端を連結に使用し、制限酵素消化を行って適当な末端を得、適宜、付着末端を埋め、アルカリホスファターゼ処理を行って、望ましくない連結を回避し、酵素による連結を行うことにより、互いにインフレームで連結する。もう1つの実施形態においては、自動DNA合成装置を含む通常の技術により、融合遺伝子を合成することが可能である。あるいは、2つの連続的遺伝子断片の間に相補的突出部を与えるアンカープライマーを使用して、遺伝子断片のPCR増幅を行い、ついでそれらをアニールさせ、再増幅してキメラ遺伝子配列を得ることが可能である(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編集,John Wiley & Sons:1992を参照されたい)。
【0050】
本発明のもう1つの態様は、hsp60(またはその一部)をコードする核酸配列を含んでなるベクター、好ましくは発現ベクターに関する。本明細書中で用いる「ベクター」なる語は、もう1つの核酸を運搬しうる、それに連結された核酸分子を意味する。1つのタイプのベクターは「プラスミド」であり、これは、追加的なDNAセグメントが挿入連結されうる環状二本鎖DNAループを意味する。もう1つのタイプのベクターはウイルスベクターであり、この場合は、追加的なDNAセグメントがウイルスゲノム内に挿入連結されうる。あるベクターは、それに機能しうる形で連結された遺伝子の発現を導きうる。そのようなベクターは本明細書中では「発現ベクター」と称される。一般には、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはプラスミドの形態である。しかし、本発明は、同等の機能を果たす他の形態の発現ベクター、例えばウイルスベクター(例えば、複製欠損型レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を包含すると意図される。
【0051】
本発明の発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適した形態で本発明の核酸を含む。これは、発現に使用する宿主細胞に基づき選択された、発現させる核酸配列に機能しうる形で連結された1以上の調節配列を組換え発現ベクターが含むことを意味する。本発明の発現ベクターは、(DNAワクチンとしての)hsp60抗原の、意図される被投与体における発現のために、または(組換え抗原ベクターの製造のために)最終的な被投与体以外の宿主生物における発現のために使用することが可能である。
【0052】
発現ベクターにおける、「機能しうる形で連結された」は、関心のあるヌクレオチド配列が、(例えば、インビトロ転写/翻訳系において、またはベクターを宿主細胞内に導入する場合には該宿主細胞において)ヌクレオチド配列の発現を可能にするよう調節配列に連結されていることを意味すると意図される。「調節配列」なる語は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むと意図される。そのような調節配列は、例えば、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に記載されている。調節配列には、多数の宿主細胞型においてヌクレオチド配列の構成的発現を導くもの、および或る宿主細胞においてのみ、ヌクレオチド配列の発現を導くもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望のタンパク質発現レベルなどのような要因に左右されうる、と当業者に理解されるであろう。本発明の発現ベクターを宿主細胞内に導入して、本明細書に記載の核酸によりコードされる、融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチド(例えば、hsp60タンパク質、hsp60の突然変異体、hsp60と異種ペプチドとの融合タンパク質など)を産生させることが可能である。
【0053】
本発明のもう1つの態様は、本発明の組換え発現ベクターが導入された宿主細胞に関する。宿主細胞は任意の原核細胞または真核細胞(多細胞真核生物内の真核細胞を含む)でありうる。例えば、細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、酵母細胞または哺乳類細胞内でhspタンパク質を発現させることが可能である。他の適当な宿主細胞は当業者に公知である(例えば、Goeddel,前掲)。組換え発現ベクターは、(DNAワクチン接種後)宿主魚類細胞内で発現されるよう設計することが可能である。あるいは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、組換え発現ベクターをインビトロで転写し翻訳することが可能である。
【0054】
原核生物におけるタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質の発現を導く構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターで、大腸菌(E.coli)内で行われることが最も多い。融合ベクターは、それにおいてコードされるタンパク質(通常は、組換えタンパク質のアミノ末端)に多数のアミノ酸を付加する。融合タンパク質の精製の後に融合部分からの組換えタンパク質の分離が可能となるよう、融合発現ベクター内の融合部分と組換えタンパク質との結合部にタンパク質分解切断部位を導入することが多い。そのような酵素およびその対応認識配列には、Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith,D.B.およびJohnson,K.S.(1988)Gene 67:31−40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,Mass.)およびpRIT5(Pharmacia,Piscataway,N.J.)が含まれ、これらは、それぞれグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる。
【0055】
hsp60遺伝子を核酸ワクチン(Nucleic Acid Vaccine)(NAV)内に組み込むことが可能であり、これにより、NAVが、生きた動物の宿主細胞により取り込まれ、サイトゾル内でhsp60遺伝子の発現が生じる。細胞内hsp60抗原の短いペプチドは細胞表面に輸送され、その部位で、該ペプチドはMHC I系と接触しうるため、NAV由来のhsp60抗原は、細胞性免疫応答を誘導するために理想的に配置される。
【0056】
DNAベクター内に挿入されたhsp60遺伝子を魚類内に直接接種して(例えば、経口、筋肉内または腹腔内)、魚類細胞内でインビボで発現させることが可能である。DNAワクチン接種は、他の動物種においても行うことが可能である。したがって、本発明の1つの態様においては、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60をコードする核酸配列が転写調節配列に機能しうる形で連結されたDNAプラスミドと製薬上許容される担体とを含んでなる核酸ワクチンを提供する。転写調節配列には、プロモーター、ポリアデニル化配列、および他のヌクレオチド配列、例えば、非メチル化CpGジヌクレオチドを有する免疫刺激オリゴヌクレオチド、または他の抗原性タンパク質もしくはアジュバント性サイトカインをコードするヌクレオチド配列が含まれる。真核生物またはウイルス転写調節配列の存在は魚類細胞内でのhsp60遺伝子の発現を可能にする。ワクチン組成物を製造するために、DNAプラスミド自体を細菌細胞内で複製することが可能であるが、一般には、該DNAプラスミドは、原核細胞内でのhsp60遺伝子の発現を可能にする転写調節配列を欠く。最適なインビボ発現のためには、ワクチン接種される魚類にとって内因性である転写調節配列を選択することが好ましいであろう。例えば、内因性サイトカインまたはアクチン遺伝子プロモーターが考慮されうる。該DNAは裸形態で存在しうる。あるいは、それは、細胞取り込みを促進する物質(例えば、リポソームまたは陽イオン脂質)と共に投与されうる。魚類のDNAワクチン接種の技術は米国特許第5,780,448号(これを参照により本明細書に組み入れることとする)に更に詳しく説明されている。
【0057】
本発明はまた、分子に結合したhsp60タンパク質の結合体(コンジュゲート)を使用する、該分子に対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法に関する。この実施形態においては、動物宿主内で該物質に対する抗体の産生をもたらす該結合体の有効量(すなわち、宿主内で免疫応答をもたらす量)を該動物宿主内に導入する。抗体を宿主から取り出し、公知技術(例えば、クロマトグラフィー)により精製して、ポリクローナル抗体を得る。あるいは、公知技術を用いて、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するために、本発明の方法を用いて産生させた抗体を使用することが可能である。
【0058】
本発明の1つの実施形態においては、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60遺伝子のプロモーター配列を使用して、異種遺伝子(すなわち、アルスロバクターhsp60をコードする遺伝子以外の遺伝子)の発現を駆動させる。生物の染色体DNA内の異種遺伝子の上流に、または染色体外プラスミドもしくは発現ベクター内に、該プロモーターを挿入する。例えば、内因性アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60を過剰発現させたい場合またはアルスロバクター(Arthrobacter)の内因性プラスミド内に外来遺伝子を挿入したい場合には、上流hsp60プロモーターが、熱ショックのような刺激に応答してその異種遺伝子の発現を駆動しうる。
【0059】
本発明の方法に従い製造したワクチンは、哺乳類に類似した体液性および/または細胞性免疫系を有する任意の動物種への投与に適している。ヒトは、この場合の「動物」および「哺乳類」の意義に含まれる。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60は、哺乳類、鳥類、爬虫類または魚類用の任意のワクチンをアジュバント化するために使用することが可能である。同様に、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60は、場合によっては任意の通常のアジュバント(いわゆる、「非アジュバント」ワクチン)を除外して、共有結合抗原の担体としてワクチンにおいて使用することが可能である。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60は、特定の疾患、特に、サケ科リケッチア性敗血症(Salmonid Rickettsial Septicemia)(SRS)、細菌性腎疾患(Bacterial Kidney Disease)(BKD)および魚類における他の感染症に対する免疫応答を惹起させるための、ワクチン中の免疫原(場合によっては、唯一の免疫原)としても使用されうる。
【0060】
「ワクチン」なる語は広義に用いられており、病原体に対する免疫化に使用される組成物だけでなく、抗腫瘍ワクチン、自己抗原に基づくワクチン(例えば、化学的去勢(chemical castration)のため)などをも含む。獣医学用ワクチン接種において、免疫化の考慮対象となる陸上動物の主な種には、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよび家禽が含まれる。水産養殖の場合には、甲殻類動物または有鰭魚類(finfish)において、特に、硬骨魚類、例えばサケ、マス、コイ、タイ、ハタ科魚、ブリ、ナマズ目魚、オヒョウ、コダラの治療のために、または場合によっては、甲殻類(例えば、シュリンプ、プローン、ロブスター、カーブ(carb))および軟体動物(例えば、カキ、イガイ)のような他の水生種の治療のために、本発明のワクチンを使用することが可能である。ワクチンにおけるアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60配列との組合せに適した候補抗原は何ら限定されない。病原性抗原は細菌、ウイルス、原生動物、線虫および真菌に由来しうる。1つの特に注目されるものは、魚類病原性生物の抗原、特に表面抗原である。
【0061】
hsp60のアミノ酸または核酸配列は、甲殻類動物または有鰭魚類を侵す疾患からの細菌、原生動物、ウイルスまたは真菌抗原と組合わせて又はそのような抗原に結合させて、ワクチン組成物中で使用することが可能である。そのような抗原には、以下のものに由来する抗原(またはそれらのコード配列)が含まれる:伝染性サケ貧血ウイルス(Infectious Salmon Anaemia Virus)(ISAV)、伝染性膵臓壊死症ウイルス(Infectious Pancreatic Necrosis Virus)(IPNV)、伝染性造血組織壊死症ウイルス(Infectious Hematopoietic Necrosis Virus)(IHNV)、イリドウイルス(Iridovirus)、神経壊死ウイルス(NNV)、サケ膵臓疾患ウイルス(Salmon Pancreas Disease Virus)(SPDV)、コイ春ウイルス血症ウイルス(Spring Viremia of Carp Virus)(SVCV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(Viral Hemorrhagic Septicemia Virus)(VHSV)、黄色頭ウイルス(Yellow−head virus)(YHV)、タウラ症候群ウイルス(Taura Syndrome Virus)(TSV)、白斑症候群ウイルス(White Spot Syndrome Virus)(WSSV)、レニバクテリウム・サルモニナルム(Renibacterium salmoninarum)(細菌性腎臓疾患の原因因子)、ピシリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)(サケ科リケッチア性敗血症の原因因子)、ビブリオ属細菌種(Vibrio spp)、エロモナス属細菌種(Aeromonas spp)、エルシニア・ラッケリ(Yersinia ruckerii)、シュードモナス属細菌種(Pseudomonas spp)、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)など。これらの及び他の病原性生物からの多数の、そして益々多くのポリペプチドが精製されており、および/またはクローニングされており、発現されており、ワクチン組成物中のアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60またはそのコード配列に結合したものとして入手可能であり、あるいはそれと組合わされたものとして提供されている。好ましい具体例には、IPNVタンパク質VP1、VP2、VP3およびNSならびにそれらのコードヌクレオチド配列;WO 01/10469に開示されているISAVタンパク質、例えば赤血球凝集素、ヌクレオキャプシド、ポリメラーゼおよびセグメント7 P4およびP5タンパク質、ならびにそれらのコードヌクレオチド配列;WO 01/68865に開示されているピー・サルモニス(P.salmonis)タンパク質、例えばOspAおよびIcmEならびにそれらのコードヌクレオチド配列;ノダウイルスタンパク質、例えばヌクレオキャプシド;ならびにSPDVからの構造ポリペプチドおよびそのコードヌクレオチド配列(WO 99/58639に開示されている)が含まれる。本発明の好ましいワクチン組成物は、IPNV VP2配列またはIPNV VP3配列にインフレームで融合したhsp60ヌクレオチド配列を担持するDNA発現ベクターを含む。場合によっては、該ワクチンは、hsp60−VP2融合体を担持する第1プラスミドと、hsp60−VP3融合体を担持する第2プラスミドとを含む。
【0062】
hsp60配列は、ウシ下痢症ウイルス(Bovine Viral Diarrhea Virus)(BVDV)、ウシヘルペスウイルス(Bovine Herpesvirus)(BHV)、口蹄疫ウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス(Bovine Respiratory Syncytial Virus)(BRSV)、パラインフルエンザ3型ウイルス(Parainfluenza type 3 virus)(PI3)、ウシ伝染性鼻気管炎ウイルス(Infectious Bovine Rhinotracheitis)(IBR)、ブタ呼吸繁殖症候群(Porcine Respiratory and Reproductive Syndrome Virus)(PRRSV)、マイコバクテリウム(Mycobacteria)、リーシュマニア(Leishmania)、エールリキア(Ehrlichia)、エイメリア(Eimeria)、クロストリジウム(Clostridia)、パスツレラ(Pasteurella)、マイコプラズマ(Mycoplasma)(例えば、マイコプラズマ・ボビス(M.bovis)、マイコプラズマ・ヒオニューモニエ(M.hyopneumoniae))、レプトスピラ(Leptospira)、ブラキスピラ(Brachyspira)、サルモネラ(Salmonella)、ブルセラ(Brucella)、ネオスポラ(Neospora)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)、大腸菌(E.coli)、ロタウイルス(Rotavirus)、コロナウイルス(Coronavirus)、マンヘイミア・ヘモリチカ(Mannheimia haemolytica)ヘモフィルス・ソムヌス(Haemophilus somnus)、アクチノバシラス・プリゥロニュウモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、アナプラズマ(Anaplasma)、トレポネーマ(Treponema)などを含む他の動物病原体および寄生生物からの抗原(またはそのコード配列)と共に又はそれに結合させて使用することが可能である。
【0063】
本発明は、前記抗原またはそれらのコード配列のいずれかと組合わされたhsp60配列の、該抗原が由来する病原因子による感染により引き起こされる疾患の治療または予防のための医薬組成物の製造における使用を含む。
【0064】
本発明の1つの実施形態においては、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60のタンパク質または核酸配列が、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp70のタンパク質または核酸配列を更に含むワクチン中に含まれる。単一ワクチン組成物中のこれらの2つの遺伝子または抗原の組合せはワクチン効力における相加的または相乗的な改善をもたらしうる。アルスロバクター(Arthrobacter)hsp70は、2003年7月14日付け出願の同時係属出願PCT/EP03/07602の主題である。
【0065】
hsp60遺伝子またはタンパク質と共に提供されるワクチン抗原は、(キメラまたは融合タンパク質において)hsp60に化学的に結合していることが可能であり、あるいはそれらは、単一のワクチン組成物において別々の分子として一緒に提供されうる。もう1つの選択肢として、hsp60遺伝子またはタンパク質は、別々の投与または順次投与または同時投与のためのキットにおいて、抗原または抗原コード化核酸配列と共に提供されうる。hsp60遺伝子またはタンパク質と共に提供されるワクチン抗原は、細菌ワクチン、細胞抽出物、組換えタンパク質、プラスミド担持遺伝子、または生/弱毒化病原体株でありうる。
【0066】
単独で又は製薬上許容されるビヒクルもしくは賦形剤と共に投与される本発明の融合タンパク質または単離hsp60タンパク質の中性または塩形態で対象を免疫化することが可能である。典型的には、ワクチンは、液体溶液または懸濁液として製造される。また、投与前に液体ビヒクルに溶解し又は懸濁させるのに適した固体形態(例えば、凍結乾燥体)も製造されうる。該製剤を乳化することが可能であり、あるいは有効成分をリポソームビヒクル中に封入することが可能である。本発明の医薬組成物は、即時放出または徐放用の形態として投与することが可能である。
【0067】
ワクチン組成物の製造において本発明の抗原または核酸分子と混合する製薬上許容される賦形剤またはビヒクルとしては、例えば、水、塩類液、デキストロース、グリセロール、補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、滑沢剤、pH緩衝化剤、またはアジュバント、例えばムラミルジペプチチド、アブリジン、水酸化アルミニウム、油、サポニン、ブロック共重合体および当技術分野で公知の他の物質が挙げられる。
【0068】
対象を免疫化するためには、hsp60抗原またはhsp融合タンパク質またはhsp60遺伝子ベクターを、適当なビヒクル中で、非経口的に、通常は筋肉内注射により投与するが、場合によっては、皮下経路、静脈内注射、または皮内もしくは鼻腔内運搬により投与することも可能である。魚類の抗原免疫化の場合には、典型的な投与経路は、腹膜腔内への注射、筋肉内注射、食餌に含ませて経口的に、または浸漬によるものである。本発明の好ましい抗原ワクチン組成物は、注射または浸漬による投与に適した形態である。DNAワクチン接種は、一般には、筋肉内注射によるものである。
【0069】
有効量は、対象のサイズおよび種ならびに投与方法に応じて様々となりうる。最適な投与量は医師または獣医により試行錯誤で決定されうる。典型的には、hsp60抗原の1回量は約0.01〜1000μg/kg体重、好ましくは、0.5〜500μg/kg、より好ましくは、0.1〜100μg/kgである。DNAワクチンの場合、プラスミド10pg/動物の最少投与量から1000μg/動物の投与量がインビボでの該抗原の発現を可能にする。
【0070】
本発明の一部として開示されている新規抗原は、病原性タンパク質に対する抗体に関するスクリーニング、ならびに毒性および環境ストレス/ストレス効果に関するスクリーニングにおいても有用である。本発明は更に、例えば、疾患を引き起こす生物の存在に関して動物を試験するのに有用な診断キットの製造における、これらの抗原の診断的使用を含む。
【0071】
本明細書に開示されている精製hsp60抗原および/またはhsp60融合タンパク質に対して産生した抗体も本発明に含まれる。そのような抗体は疾患の処置および魚類の健康における診断用途および治療用途の両方を有しうると予想される。この点においては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方が有用でありうる。タンパク質で動物、例えばマウスを免疫化するための方法、および免疫原特異的モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選択は当技術分野でよく知られている(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495−497を参照されたい)。診断アッセイの具体例として、サンドイッチアッセイおよびELISAが挙げられうる。
【0072】
本発明のhsp60核酸配列は、例えば、PCR増幅アッセイ用のプライマーの設計における診断用途を有する。
【0073】
(実施例)
【実施例1】
【0074】
アルスロバクターATCC 55921のゲノムからのhsp60遺伝子の単離および配列決定
アルスロバクター(Arthrobacter)ATCC 55921の5ml培養物を、カナマイシン(30μg/ml)を含有するLB中、30℃で振とうしながら一晩成長させる。ついで、Puregene DNA単離キット(Gentra)またはInstagene TM Resinを該製造業者の説明に従い使用して、DNA抽出を行う。
【0075】
保存されたマイコバクテリウム配列を使用するPCR
いくつかのマイコバクテリウムおよびストレプトマイセスhsp60(groEL)配列間のヌクレオチドレベルでの最大類似性の領域を使用して、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60遺伝子のPCRおよび配列決定用のプライマーを設計する。選択したプライマーはgroEL−OFP (5’−GTCCGTCGCGGGCACT−3’)、groEL−1F(5’−CCCACGATCACCAACGA−3’)、groEL−1R(5’−CCTCGATGCGGTGCTTG−3’)、groEL−2R(5’−CCTTGTCCATSGCCTCg−3’を含む。50℃または60℃のアニーリング温度ならびに種々の量のマグネシウムおよびDMSOを用いるPCR反応におけるアルスロバクター(Arthrobacter)DNAの増幅に、これらのプライマーを使用する。プライマーOFP/2Rおよび1F/1Rを使用して、それぞれ約595bpおよび1050bpのDNA断片を増幅する。Qiagen PCRクリーンアップキットを(該製造業者の説明に従い)使用して、PCR産物をクリーニング(clean)し、該PCRに使用したプライマーのそれぞれを使用するBigDyeプライマー化学(Applied Biosystems)を用いて該製造業者の説明に従い配列決定する。簡潔に説明すると、ABI PRISM(8μl)BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction混合物、〜600ngのDNA鋳型、3.2pmolの適当なプライマーおよびddHO(20μlの調整)を使用して、伸長反応混合物を調製する。サイクルシークエンシングのための条件は以下のとおりである。サーマルサイクラーを、96℃で10秒間、50℃で5秒間および60℃で4分間よりなる25サイクルに設定する。該配列は、この断片が、いくつかのマイコバクテリウムのgroEL遺伝子に対する高い相同性を含むことを示し、それをゲノム歩行の出発点として使用する。
【0076】
ゲノム歩行
ゲノム歩行を用いて、既に同定された配列の5’側および3’側に配列を伸長させる。Genome Walkerマニュアル(Clontech)に記載されているとおりに、前記のhsp60様配列からプライマーを設計する。まず、4つのゲノムライブラリーを作製し(DraI、EcoRV、PvulI、StuI)、ついで3つの追加的なライブラリーを作製する(AluI、ScaIおよびSnaFI)。すべてのライブラリーおよび後続のPCR反応は、Genome Walkerマニュアルに記載されているとおりである。数ラウンドのゲノム歩行を行って、該遺伝子配列を伸長させる。
【0077】
Genecode’s Sequencherソフトウェアを使用して配列を整列させてコンティグを得る。該コンティグ化配列を使用するGenbank検索は、該コンティグがhsp60遺伝子を含有することを証明している。
【0078】
アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60タンパク質(および遺伝子)は、他の属(特に、細菌種)のホモログに対する類似性を有すると理解されうる。
【実施例2】
【0079】
hsp60との遺伝子融合体に基づくIPNVに対する核酸ワクチン
流動する新鮮な水中に維持された初めて海へ下る前(pre−smolt)の大西洋サケ(Salmo salar)(35〜40g)を、清潔なアクアリウム水中で希釈されたベンゾカインで麻酔する。ワクチン接種前に、6匹の魚を麻酔薬の致死的過剰投与により安楽死させ、免疫前血清として尾静脈から血液を採取する。
【0080】
該核酸ワクチンおよびPBS対照を、背側鰭の直下の左背側側腹部の筋肉内にワクチン接種(50μlのワクチン)する。2通りの40匹の魚をワクチン接種する(80匹/群、2つの水槽で分けられている)。ワクチン接種後、魚を新鮮な水中に回収し、それらの適切な水槽に割当てる。
【0081】
被検核酸ワクチンはpUKrsxHSP60−ipnVP2およびpUKrsxHSP60−ipnVP3である。これらのプラスミドは、CMVプロモーターの制御下、アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60の完全なコード配列とそれぞれIPNV VP2またはIPNV VP3とのインフレーム融合体を担持する。pUKrsxHSP60−ipnVP2を単独で試験し、また、両方のプラスミドを一緒に試験する。
【0082】
比較のために、VP2成分の免疫防御効力を約20%増強することがこれまでの研究から知られている配列の3’側に融合したIPN VP2タンパク質を含むプラスミドをも調製する(すなわち、「ゴールドスタンダード(gold standard)」VP2 IPNV核酸ワクチン)。
【0083】
ワクチン接種の6週間後、魚を海水に移す。チャレンジの前日に、重複群当たり4匹の魚から血清を採取する。注射部位の筋肉のサンプルも採取し、ホルマリン固定して、ワクチンの存在を調べる。チャレンジの21日後、重複群当たり最大4匹の生存魚から血清を採取する。チャレンジ後、毎日、最初の観察の際に死亡魚を取り出し、ELISAによる分析のために腎臓を採取し凍結する。
【0084】
ビルレントIPNV(10 cfu)の腹腔内注射によりチャレンジされている標識された同胞魚との同棲により、海水に移して4〜6週間たった後にチャレンジを行う。この試験は20週間後に終了する。
【0085】
結果は、IPNVのVP2配列に基づく核酸ワクチンのすべてが、hsp60−VP2融合体を含む該ウイルスによるチャレンジに対して防御性であることを示している。
【実施例3】
【0086】
ISAVに対するワクチン中の組換えhsp60
大西洋サケ幼魚(parr)を、通気流動井戸水(10℃)が供給された0.5mの待機(holding)水槽に、実験の開始前の1週間にわたり順応させ、実験の全体を通じて毎日、餌を与える。55匹の魚の各群を25匹の2個の水槽に分割して、重複処理群を得る。ISAVでチャレンジした場合には、大西洋サケ幼魚のうちの60〜80%が死亡する。
【0087】
該魚を麻酔し、ついで食塩水0.2mlまたは特定の組換えタンパク質を含有する食塩水0.2mlの腹腔内注射によりワクチン接種する。陰性対照はPBS注射(食塩水)である。処理群は以下のものである:(A)Hisタグ付き精製アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60組換えタンパク質12μg、(B)ISAV組換えHisタグ付きヌクレキャプシドタンパク質(NC)12μg、(C)Hisタグ付きISAV NC12μgと混合された、Hisタグ付き精製アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60組換えタンパク質12μg、(D)Hisタグ付きISAV NC 12μgと架橋された、Hisタグ付き精製アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60組換えタンパク質12μg。
【0088】
処理群Dには、共有結合により架橋されたタンパク質を与える。架橋剤として、EDCおよびスルホ−NHSを使用し、これらは、標準的なプロトコールに従い使用する。
【0089】
同棲チャレンジを行う。この場合、少数のサケに0.1mlの培養ビルレントISAV(〜10 TCID50/魚)を与え、それらのサケを処理魚の各水槽に加える。各水槽における死亡を毎日監視する。
【0090】
特定の時点における種々の処理群と対照と間の死亡率を比較することにより、相対生存率を評価する。
【配列表】








【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルスロバクター(Arthrobacter)hsp60またはその断片もしくはホモログをコードする単離された核酸配列。
【請求項2】
受託番号ATCC 55921として寄託されているアルスロバクター(Arthrobacter)株からの、請求項1記載の単離されたhsp60核酸配列。
【請求項3】
配列番号1の核酸配列、またはその断片、または配列番号1に実質的に相同な配列を含む、請求項1記載の単離された核酸配列。
【請求項4】
配列番号1のORFを含む、請求項3記載の単離された核酸配列。
【請求項5】
配列番号1に対して少なくとも85%の相同性を有する、および/またはストリンジェントな条件下で配列番号1にハイブリダイズする、請求項3記載の単離された核酸配列。
【請求項6】
異種コード配列にインフレームで融合した請求項1から5のいずれか1項記載の単離された核酸配列を含んでなるキメラ核酸配列。
【請求項7】
異種コード配列が、動物病原体からの抗原をコードする、請求項6記載のキメラ核酸配列。
【請求項8】
転写調節配列に機能しうる形で連結された請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列を含んでなるDNA発現ベクター。
【請求項9】
請求項8記載のDNA発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項10】
単離されたアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60アミノ酸配列またはその断片、ホモログもしくは誘導体。
【請求項11】
受託番号ATCC 55921として寄託されているアルスロバクター(Arthrobacter)株からの、請求項10記載の単離されたhsp60アミノ酸配列。
【請求項12】
配列番号2のアミノ酸配列、またはその免疫原性断片、または配列番号2に実質的に相同な配列、またはその誘導体を含む、請求項10記載の単離されたアミノ酸配列。
【請求項13】
配列番号2に対して少なくとも80%の相同性を有する配列を含む、請求項12記載の単離されたアミノ酸配列。
【請求項14】
ノナペプチド配列KLAGGVAVIを含む配列番号2の免疫原性断片を含む、請求項12記載の単離されたアミノ酸配列。
【請求項15】
コンジュゲート分子を形成するよう異種分子に共有結合または非共有結合により連結された、請求項10から14のいずれか1項記載のアミノ酸配列。
【請求項16】
コンジュゲート分子が融合タンパク質である、請求項15記載のアミノ酸配列。
【請求項17】
異種分子が、細菌、ウイルス、真菌、原生動物、線虫および腫瘍抗原から選ばれる、請求項15または請求項16記載のアミノ酸配列。
【請求項18】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸分子によりコードされる単離されたアミノ酸配列。
【請求項19】
請求項10から17のいずれか1項記載の単離されたアミノ酸配列をコードする単離された核酸配列。
【請求項20】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列、または請求項8記載のDNA発現ベクター、または請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列、またはhsp60が富化されたアルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物と、製薬上許容される担体とを含んでなるワクチン組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの異種抗原、または異種抗原をコードする核酸配列を更に含む、請求項10記載のワクチン組成物。
【請求項22】
請求項20または請求項21記載のワクチン組成物と、別々の投与または順次投与または同時投与のための異種抗原または異種抗原コード化核酸配列とを含んでなるキット。
【請求項23】
請求項1から5のいずれか1項記載の核酸配列または請求項10から14のいずれか1項記載のアミノ酸配列の、非特異的ワクチンアジュバントとしての使用。
【請求項24】
ワクチン抗原を、請求項10から14のいずれか1項記載のアミノ酸配列と混合することを含んでなる、ワクチンをアジュバント化するための方法。
【請求項25】
請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列に対して産生した抗体。
【請求項26】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列または請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列の、医薬としての使用。
【請求項27】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列、または請求項8記載のDNA発現ベクター、または請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列、またはhsp60が富化されたアルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物の、感染症に対して動物を免疫するための医薬の製造における使用。
【請求項28】
動物が硬骨魚類である、請求項27記載の使用。
【請求項29】
該医薬が、細菌性腎疾患(Bacterial Kidney Disease)(BKD)、サケ科リケッチア性敗血症(Salmonid Rickettsial Septicemia)(SRS)、伝染性サケ貧血ウイルス(Infectious Salmon Anaemia Virus)(ISAV)および伝染性膵臓壊死症ウイルス(Infectious Pancreatic Necrosis Virus)(IPNV)のいずれかの予防または治療のためのワクチンである、請求項28記載の使用。
【請求項30】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列、または請求項8記載のDNA発現ベクター、または請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列、またはhsp60が富化されたアルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物の、感染症または環境ストレスの診断のための医薬の製造における使用。
【請求項31】
感染症の診断または治療のための医薬の製造における、請求項25記載の抗体の使用。
【請求項32】
請求項15から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列を含む医薬組成物を動物に投与することを含んでなり、該コンジュゲート分子の異種分子が免疫原またはハプテンを含むことを特徴とする、該動物における該免疫原またはハプテンに対する免疫応答を誘導または増強するための方法。
【請求項33】
請求項1から7のいずれか1項記載の核酸配列、または請求項8記載のDNA発現ベクター、または請求項10から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列、またはhsp60が富化されたアルスロバクター(Arthrobacter)細胞抽出物を含む処理用組成物を魚類に投与することを含んでなる、魚類における感染症の治療または予防方法。
【請求項34】
該アミノ酸配列または該核酸分子を製薬上許容される賦形剤と混合する工程、および場合によって、該異種抗原または該異種抗原コード化核酸配列を混合する工程を含んでなる、請求項20から21のいずれか1項記載のワクチン組成物の製造方法。
【請求項35】
異種遺伝子の発現におけるアルスロバクター(Arthrobacter)hsp60遺伝子のプロモーター配列の使用。

【公表番号】特表2006−517406(P2006−517406A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501838(P2006−501838)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001368
【国際公開番号】WO2004/071387
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】