説明

アルテミシニンからアルテエーテルへのシングルポット変換

約4時間だけでアルテミシニンからアルテエーテルを単一容器中で調製する方法。前記方法は、新規ポリハイドロキシ触媒の存在下室温でエタノール中少量の水素化ホウ素ナトリウムによりアルテミシニンをジハイドロアルテミシンに還元すること、酸触媒存在下ジハイドロアルテミシンをアシル化すること、n−へキサン中1%酢酸エチルを用いて水性反応混合物からアルテエーテルを抽出すること、作業を完了し不純なアルテエーテルを精製し、80〜86%(w/w)の純粋なアルファ、ベータアルテエーテルを得ることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテエーテルのアルテミシニンからの改良シングルポット調製方法に関する。前記プロセスから調製されたアルテエーテルは、合併症のないマラリア、重篤な合併症のあるマラリアおよび多剤耐性マラリアの治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
マラリアに罹患している40億の人々のうち、ほとんどが子供である1〜3百万の人々が毎年世界で死亡している。クロロキンおよびメフロキンベースの抗マラリア薬のような標準的キノリンベースの抗マラリア薬剤に対して多剤耐性を有する寄生虫が急速に広まっており、マラリア患者に対する化学療法を困難にしている。
アルテミシニンおよびその誘導体であるアルテメーテル、アルテエーテル、アルテリネートおよびアルテスネートは、アルテミシア アヌア(Artemisia annua)から誘導された抗マラリア化合物類族であり、有望なる活性を示しつつあり、合併症のないマラリア、重篤な合併症のあるマラリア/脳性および多剤耐性マラリアの治療に使用されている。ジハイドロアルテミシニンはアルテミシニンに由来しており、これは、植物アルテミシアアヌラから単離されたセスキテルペンエンドパーオキサイドである。
【0003】
アルテエーテルはジハイドロアルテミシニンのエチルエーテル誘導体であり、薬用・芳香性植物中央研究所(Central Institute of Medicinal and Aromatic Plants)(CIMAP)、Lucknowによってインドに初めて導入された薬剤で、薬事法のために、広範囲の前臨床、動物、毒性試験ならびに臨床研究がインド人を対象に行われている。世界保健機構(WHO)もまた、生命を救う抗マラリア薬剤としてアルテエーテルを推薦した。アルテエ−テルはアルテミシニンに比較してより強力で、プラスモジウム ファルシパラム(Plasmodium falciparum)の多剤耐性のかつ併発(complicated)種を治療するために特に理想的な抗マラリア薬剤である。アルテエーテルは、迅速なシゾント作用(schizoticial action)を示しクリアランス速度も速く、熱クリアランス時間も短くかつ副作用も全くなくしかも再発率も低い。
【0004】
Brossiら(Brossi,A;Venugopalan、B;Domingueg、GL;Yeh,H.J.C.;Flippend−Anderson、J.L.;Buchs,P;Luo,X.D.;Milhous,Wおよびpeters、W;J.Med.Chem.31,646−649,1988)は、ジハイドロアルテミシニンのエチルエーテル誘導体であるアルテエーテルの2段階調製を報告している:第一に、アルテミシニンはメタノール中0〜−5℃で過量の水素化ホウ素ナトリウムにより3時間、ジハイドロアルテミシニンに還元し、その収率は79%であった。第2段階で、このジハイドロアルテミシニンをベンゼンとエタノールの混合溶媒中に45℃で溶解し、BFエーテルレートを添加し反応混合物を70℃で1時間還元することによりアルテエーテルを調製する。前記反応終了後、それを完成(worked up)させ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒ジクロロメタンを除去した。この反応で、アルテエーテルとともにいくらか不純物を生じた。この反応混合物をシリカゲルでカラムクロマトグラフィすると、純粋なアルファおよびベータアルテエーテルが1:20比で、ほとんどの同等の定性的収率で得られた。
【0005】
EL−Feralyら(El Feraly、F.S;Al−Yahya MA;Orabi、K.Y.;Mc−Phail DRおよびMc Phail A.T.J. Nat.Prod.55、878−883、1992)は、アルテミシニンから調製した無水ジハイドロアルテミシニンを無水アルコールに溶解するプロセスによるアルテエーテルの調製を報告した。反応混合物を触媒として用いたp−トルエンスルホン酸の存在下で撹拌した。作業完了時において、ベータアルテエーテルとC−11エピマーの3:1混合物を得た。このプロセスにおいて、ベータアルテエーテルのみが得られ、C−11エピマーの分離は難しく、無水ジアヒドロアルテミシニンの調製は煩雑なプロセスである。反応完了までに22時間を要した。この反応に使用したルイス酸触媒は大量を要する(無水ジハイドロアルテミシニン100mgに対して60mgの酸触媒)。
【0006】
Bhakuniら(Bhakuni,R.S.;Jain D.CおよびSharma R.P.Indian J.Chemistry,34B,529−30、1995)の別の方法では、アルテエーテル、アルテメーテルおよび他のエーテル誘導体類を、異なるアルコールおよびベンゼン中クロロトリメチルシラン触媒の存在下、室温で2〜4時間、ジハイドロアルテミシニンから調製した。この反応混合物を処理完了し前記溶媒を除去後、不純な反応生成物をシリカゲルカラムで精製し、アルファ、ベータエーテル類の純粋な混合物を得た。
【0007】
別の方法がLinら(Lin,A.J.およびMiller,R.E.,J.Med.Chem.,38、764−770、1995)によって報告されている。この方法では、前記新規エーテル誘導体類が、ジハイドロアルテミシニンを無水エーテルおよび適切なアルコールに溶解した後BF−エーテルレートにより溶解させることによって調製した。この反応混合物を、室温で24時間撹拌した。精製した生成物類の収率は40〜90%の範囲であった。精製は、シリカゲルクロマトグラフィを用いて行なった。
【0008】
Jainらが記載したさらに別の方法(Jain D.C.、Bhakuni,R.S.,Saxena,S,kumar,S and Vishwakarma,R.A.参照:米国特許6,346,631、ドイツ国出願第0007261.1号およびドイツ国出願第10014669.4号)では、アルテミシニンからアルテエーテルの調製を教示しており、それは、アルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元し、ジハイドロアルテミシニンを単離し、アルコールにジハイドロアルテミシニンを溶解しトリアルキルオルトギ酸エステルを反応混合物に添加することによりジハイドロアルテミシニンを変換し、それにより、40℃、10時間でエーテル類を定量的収率で得ることを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の方法類はコスト的に効率的ではなく、時間もかかる。さらに、これまでの方法に用いた発ガン性溶媒であるベンゼンは、健康に関する規準からして容認できない。さらに、上述の方法は全て、アルテミシニンをエーテル類に変換するために少なくとも2つの別個の段階を要し、すなわち、アルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに第1反応容器で還元しジハイドロアルテミシニンを単離すること、次に、ジハイドロアルテミシニンを異なるエーテル類に第2の反応容器で変換することが必要である。
【0010】
本文で先行技術文献として引用した2002年3月25日出願の出願人らの係属米国特許出願第10/105,964号は、アルテミシニンからアルテメーテルを調製するプロセスを教示している。上記出願がアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元するプロセスで触媒としてポリハイドロキシ化合物を使用していないことに注意されたい。出願人らは、本出願で、アルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元する段階で触媒としてポリハイドロキシ化合物を使用した。出願人らはポリハイドロキシ化合物存在下室温でアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元することに成功した。ある反応を実施するためには、反応物質が重要な役割を果たすだけではなく使用溶媒、冷却または加熱、不活性雰囲気等のような他の反応条件もまた重要であることに留意されたい。このような反応条件は、反応物質分子に対して特定の構造/立体化学を付与し、所望の生成物が得られる。アルテミシニンのジハイドロアルテミシニンへの還元のためのポリハイドロキシ化合物の導入により、他が0〜5℃の範囲の温度のみで反応するのに対して室温で(20〜30℃)で反応するための理想的環境を前記反応物質分子類(アルテミシニンまたは還元剤または両者)に付与する。また、出願人らは、n−へキサン中1%酢酸エチルを用いて水性反応混合物からアルテエーテルを抽出することで、係属出願で使用したジハイドロメタンに比較し、望ましくない極性不純物の抽出を避けられることを見出した。さらに、本出願人らは、レジンはエステル化を行なうことができないので、従って、クロロトリメチルシランおよびp−トルエンスルホン酸のような回収不能触媒類のみを本プロセスで使用することを見出した。したがって、本発明のプロセスは、当該技術の当業者に自明であるとは見なされず、本発明は、アルテミシニンをアルテエーテルに変換する効率的方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、単一反応容器中で触媒存在下でアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元すること、ジハイドロアルテミシニンをアルテエーテルに変換しその後それを抽出することを含むアルテエーテルの調製のための費用効果的でかつ改良された一段階方法の開発である。
【0012】
本発明は、約4時間程で単一容器中でアルテミシニンからアルテエーテルを調製する方法を提供する。本発明のプロセスは、新規ポリハイドロキシ触媒存在下室温で、エタノール中少量の水素化ホウ素ナトリウムによりアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元すること、ジハイドロアルテミシニンを酸触媒存在下でアシル化後、n−ヘキサン中1%酢酸エチルを用いて水性反応混合物からアルテエーテルを抽出することを含む。不純なアルテエーテルを作成した後比1:5〜10でシリカゲルカラムクロマトグラフィを行なうと、80〜86%(w/w)純粋なアルファ、ベータアルテエーテルが得られる。
【0013】
したがって、本発明は、単一容器中でアルテミシニンからアルテエーテルを調製する一段階プロセスを提供し、前記プロセスは、
a.室温でエタノール中にアルテミシニンおよびポリハイドロキシ触媒を溶解させ、溶液を得ること、
b.段階(a)の溶液に還元剤を添加し、この反応混合物を室温(20乃至30℃)で約0.5乃至2時間撹拌しアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元すること、
c.段階(b)の反応混合物に酸触媒を冷却しながら添加すること、
d.段階(c)の反応混合物を室温で約1乃至2時間撹拌すること、
e.冷水を段階(d)の反応混合物に添加し、酢酸エチルとn−へキサンの混合物で抽出し、有機層を分離すること、
f.段階(e)の有機層を0.5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し次に水で洗浄すること、
g.前記洗浄した段階(f)の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、この有機層を蒸発させ、残渣を得ること、および
h.このようにして得た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、アルテエーテルを得ることを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1態様において、前記2種の反応すなわちアルテミシニンのジハイドロアルテミシニンへの還元とジハイドロアルテミシニンのアルテエーテルへのアルキル化は単一容器で行ない、したがって、中間体ジハイドロアルテミシニンを単離するプロセスを避ける。
【0015】
本発明の別の態様において、アルテミシニンのアルテエーテルへの変換に必要な時間は、約4時間である。
【0016】
さらに本発明の別の態様において、使用したエタノールは、溶媒としておよびアルキル化剤として作用する。
【0017】
さらに別の本発明の態様において、ポリハイドロキシ触媒は、ホロログルシノール、ガラクトースまたはデキストロースから構成される群から選択される。
【0018】
さらに本発明の態様において、アルテミシニンとポリハイドロキシ触媒の比は、1:2から1:5w/wの範囲にある。
【0019】
本発明の態様において、前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、水素化(gydride)リチウムトリtert−ブトキシアルミニウム(Li〔OC(CHAlH)、水素化リチウムトリメトキシアルミニウム(Li(OCHAlH)、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム(Na(OCHBH)、ナトリウムビス−2−メトキシ、エトキシ水素化アルミニウムまたはアルコールまたは液体アンモニア中リチウムまたはナトリウムの混合物から構成される群から選択される。
【0020】
本発明の別の態様において、前記還元剤は好適には、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0021】
本発明の態様において、アルテミシニンと水素化ホウ素ナトリウムの比は、1:0.5乃至1:0.7w/wの範囲にある。
【0022】
本発明の別の態様において、前記酸触媒は、固体または液体である。
【0023】
本発明のさらに別の態様において、前記液体酸触媒は、シリル化化合物である。
【0024】
さらに本発明の別の態様において、前記シリル化化合物は、クロロトリメチルシランである。
【0025】
さらに本発明の態様において、アルテミシニンとクロロトリメチルシランのw/v比は、1:3乃至1:4の範囲にある。
【0026】
さらに本発明の別の態様において、前記固体酸触媒は、芳香族スルホン酸である。
【0027】
さらに別の態様において、芳香族スルホン酸は、p−トルエンスルホン酸である。
【0028】
本発明の態様において、アルテミシニンとp−トルエンスルホン酸のw/w比は、1:3乃至1:4の範囲にある。
【0029】
本発明の別の態様において、前記酸触媒は、10℃から23℃の範囲の温度で前記反応混合物に添加される。
【0030】
さらに本発明の態様において、水性反応混合物からの粗アルテエーテルの抽出は、1%酢酸エチルとn−へキサンの混合物によって行ない、望ましくない極性不純物の抽出を避ける。
【0031】
さらに本発明の態様において、1%酢酸エチルとn−へキサンの混合物を用いるアルテエーテルの抽出は、完全抽出のため1回を超えて行なうことができる。
【0032】
さらに本発明の態様において、使用したカラムは、92:8乃至99.5:0.5の範囲の比を有するヘキサン−酢酸エチルの勾配混合物を用いて、溶出する。
【0033】
さらに本発明の別の態様において、80〜86%w/wアルテエーテルは、シリカゲルクロマトグラフィによる精製後に得られる。
【0034】
さらに本発明の態様において、得られたアルテエーテルは、アルファおよびベータのアルテエーテルの混合物であり、w/w比は、20:80乃至30:70w/w比の範囲にある。
【0035】
本発明の態様において、アルテミシニンの純粋なアルテエーテルへの変換は、約6〜8時間を要し、これは、有意に時間がかからない方法である。
【0036】
本発明の別の態様において、最終生成物、すなわち、純粋なアルファ、ベータアルテエーテルの収率は、これまでに報告された方法に比べて3〜10%w/w優れている。
【0037】
さらに詳細に述べると、本発明のプロセスにおいて、アルテミシニンとポリハイドロキシ触媒は、比1:2乃至1:5w/wでとり、室温でエタノールに溶解させ、5分間撹拌した。ここで、水素化ホウ素ナトリウムを室温(20乃至23℃)でゆっくりと添加し、反応混合物を約0.5乃至1.5時間撹拌する。
アルテミシニンの還元完了後、それ以上の処理またはジハイドロアルテミシニンを単離することなく、固体酸触媒であるレジンまたは液体酸触媒であるクロロトリメチルシランまたはトリフルオロ酢酸を10〜20℃で添加し、反応混合物をさらに約1〜2時間室温で撹拌する。
【0038】
アシル化反応完了後、冷水を反応混合物に添加する。固体触媒をろ過し、ろ液すなわち水性反応混合物をn−ヘキサン中1%酢酸エチルで抽出する。租アルテエーテルのヘキサン中1%酢酸エチルによる抽出時、ポリハイドロキシ化合物はヘキサン−酢酸エチル混合物に不溶であるが水相に溶解するので、水相にとどまり捨てられる。酢酸エチル−ヘキサン抽出物をまとめ、これを、0.5%重炭酸ナトリウム溶液で洗浄後、水で洗浄する。
【0039】
抽出物を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を除去すると、純粋ではないがアルテメーテルが得られる。n−へキサン中0.5乃至8%酢酸エチルを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィ(1:5乃至10の比)により、収率80〜86%w/wでアルファおよびベータアルテメーテルの混合物が得られる。
【0040】
下記の実施例は本発明を説明するために示したが、本発明の範囲を限定するとは見なされない。
【実施例1】
【0041】
アルテミシニン(1g)とポリハイドロキシ触媒であるデキストロース(5g)を、エタノール(20ml)中室温で5分間撹拌した。次に、水素化ホウ素ナトリウム(600mg)を10分間かけてゆっくりと添加し、反応混合物を室温(20〜23℃)で約1時間撹拌した。反応をTLCでモニタリングし、還元段階の完了を確認した。酸触媒クロロトリメチルシラン(3.5ml)を10〜23℃でゆっくりと添加し、反応混合物をさらに室温で約1時間撹拌した。冷水(約150ml)をこの反応混合物に添加し、水性反応混合物をn−へキサン中1%酢酸エチルにより抽出した(3×50ml)。
酢酸エチル−へキサン抽出物をまとめて0.5%重炭酸ナトリウム(100ml)、次に水(50ml)で洗浄した。n−へキサン抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させると、粗アルテエーテル1.038gと少しの不純物が得られた。この純粋でないアルテメーテルをヘキサン中0.5乃至0.8%酢酸エチルによるシリカゲル(10g)により精製し、アルファおよびベータアルテエーテル0.86g(86%w/w)の混合物が得られた。アルテエーテルの一部は、調製用TLCによりアルファおよびベータ異性体に分離し、Co−TLCと分光分析により特性解析した。
【実施例2】
【0042】
アルテミシニン(1g)とポリハイドロキシ触媒であるデキストロース(4g)を、エタノール(15ml)中で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(500mg)を10分間かけてゆっくりと添加し、反応混合物を室温(20〜23℃)で30分間撹拌した。還元段階完了後、クロロトリメチルシラン(3.5ml)を添加し、反応混合物をさらに室温で1.5時間撹拌した。通常の作業処理とカラムクロマトグラフィ(1:5比)による精製により、アルファおよびベータアルテエーテル(0.805g、80.5%w/w)の混合物が得られた。
【実施例3】
【0043】
アルテミシニン(1g)とポリハイドロキシ触媒であるデキストロース(2g)を、エタノール(25ml)中で撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(700mg)を10分間かけてゆっくりと添加し、反応混合物を室温(20〜23℃)で1.5時間撹拌した。還元段階完了後、クロロトリメチルシラン(4ml)を添加し、反応混合物をさらに室温(20〜23℃)で2時間撹拌し、粗アルテエーテル0.95gを得た。通常の作業とカラムクロマトグラフィによる精製の後、粗アルテエーテル0.95gからアルファおよびベータアルテエーテルの混合物0.825g(82.5%w/w)が得られた。
【実施例4】
【0044】
アルテミシニン(100g)とポリハイドロキシ触媒であるデキストロース(500mg)を、エタノール(10ml)中室温で5分間撹拌した。次に、水素化ホウ素ナトリウム(65mg)をゆっくりと反応混合物に添加し、これを室温(20〜23℃)で1.25時間撹拌した。還元段階完了後、p−トルエンスルホン酸(300mg)を添加し、反応混合物は室温で4時間で完成した。通常の作業処理と調製用TLCによる精製により、不純な反応生成物から、53%w/wのアルファおよびベータアルテエーテルの混合物が得られた。
【実施例5】
【0045】
アルテミシニン(100g)とポリハイドロキシ触媒であるガラクトース(300mg)を、エタノール(5ml)中で5分間撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(60mg)をゆっくりと反応混合物に添加し、これを室温(20〜23℃)で1.5時間撹拌した。還元段階完了後、液体酸触媒であるクロロトリメチルシラン(0.35ml)を添加し、この反応混合物をさらに2時間撹拌し、反応を完了させた。通常の作業処理と調製用TLCによる精製により、不純な反応生成物から、62%w/wのアルファおよびベータアルテエーテルの混合物が得られた。
【実施例6】
【0046】
アルテミシニン(100g)とポリハイドロキシ触媒であるフロログルシノール(400mg)を、エタノール中撹拌した。水素化ホウ素ナトリウム(65mg)をゆっくりと反応混合物に添加し、これを室温(20〜23℃)で2時間撹拌した。還元段階完了後、クロロトリメチルシラン(0.8ml)を添加し、反応混合物をさらに室温で2時間撹拌し、反応を完了させた。作業処理と調製用TLCによる粗生成物の精製により、74%w/wのアルファおよびベータアルテエーテルの混合物が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】アルテミシニンのアルテエーテルへの変換スキームを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテミシニンからアルテエーテルを調製するシングルポットプロセスで、前記プロセスは、
(a)室温でエタノール中にアルテミシニンおよびポリハイドロキシ触媒を溶解させ、溶液を得ること、
(b)段階(a)の溶液に還元剤を添加し、この反応混合物を20乃至30℃で約0.5乃至2時間撹拌しアルテミシニンをジハイドロアルテミシニンに還元すること、
(c)段階(b)の反応混合物に酸触媒を冷却しながら添加すること、
(d)段階(c)の反応混合物を室温で約1乃至2時間撹拌すること、
(e)冷水を段階(d)の反応混合物に添加し、酢酸エチルとn−へキサンの混合物で抽出し、有機層を分離すること、
(f)段階(e)の有機層を0.5%重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し次に水で洗浄すること、
(g)前記洗浄した段階(f)の有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、有機層を蒸発させ残渣を得ること、および
(h)段階(g)の残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製し、アルテエーテルを得ることを含む。
【請求項2】
前記2種の反応すなわちアルテミシニンのジハイドロアルテミシニンへの還元とジハイドロアルテミシニンのアルテエーテルへのアルキル化はシングルポット(単一容器)で行ない、したがって、中間体ジハイドロアルテミシニンを単離するプロセスを避けることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
アルテミシニンのアルテエーテルへの変換に必要な時間は、約4時間であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
使用したエタノールは、溶媒としておよびアルキル化剤として作用することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
ポリハイドロキシ触媒は、ホロログルシノール、ガラクトースまたはデキストロースから構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
アルテミシニンとポリハイドロキシ触媒の比は、1:2から1:5w/wの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、水素化(gydride)リチウムトリtert−ブトキシアルミニウム(Li〔OC(CHAlH)、水素化リチウムトリメトキシアルミニウム(Li(OCHAlH)、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム(Na(OCHBH)、ナトリウムビス−2−メトキシ、エトキシ水素化アルミニウムまたはアルコールまたは液体アンモニア中リチウムまたはナトリウムの混合物から構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記還元剤は好適には、水素化ホウ素ナトリウムであることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
アルテミシニンと水素化ホウ素ナトリウムの比は、1:0.5乃至1:0.7w/wの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸触媒は、液体または固体であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記液体酸触媒は、シリル化化合物であることを特徴とする請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記シリル化化合物は、クロロトリメチルシランであることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
アルテミシニンとクロロトリメチルシランのw/v比は、1:3乃至1:4の範囲にあることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記固体酸触媒は、芳香族スルホン酸であることを特徴とする請求項10に記載のプロセス。
【請求項15】
前記芳香族スルホン酸は、p−トルエンスルホン酸であることを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
アルテミシニンとp−トルエンスルホン酸のw/w比は、1:3乃至1:4の範囲にあることを特徴とする請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記酸触媒は、10℃から23℃の範囲の温度で前記反応混合物に添加されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
水性反応混合物からの粗アルテエーテルの抽出は、1%酢酸エチルとn−へキサンの混合物によって行ない、望ましくない極性不純物の抽出を避けることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
1%酢酸エチルとn−へキサンの混合物を用いるアルテエーテルの抽出は、完全抽出のため1回を超えて行なうことを特徴とする請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
カラムは、92:8乃至99.5:0.5の範囲の比を有するヘキサン−酢酸エチルの勾配混合物を用いて、溶出することを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
80〜86%w/wアルテエーテルは、シリカゲルクロマトグラフィによる精製後に得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
得られたアルテエーテルは、w/w比が20:80乃至30:70の範囲のアルファおよびベータのアルテエーテルの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2006−511512(P2006−511512A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−556567(P2004−556567)
【出願日】平成14年11月29日(2002.11.29)
【国際出願番号】PCT/IB2002/005074
【国際公開番号】WO2004/050662
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(595023873)カウンシル・オブ・サイエンティフィック・アンド・インダストリアル・リサーチ (69)
【Fターム(参考)】