説明

アルテルナン誘導体

本発明は、アルテルナン−カルボン酸エステル、アルテルナン−カルボン酸エステルの製造のための方法、およびアルテルナン−カルボン酸エステルを含む組成物およびアルテルナン−カルボン酸エステルの使用に関する。本発明は、乳化剤であるアルテルナン−カルボン酸エステルに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテルナン−カルボン酸エステル、アルテルナン−カルボン酸エステルの製造方法およびアルテルナン−カルボン酸エステルを含む組成物およびアルテルナン−カルボン酸エステルの使用に関する。
【0002】
アルテルナン(CAS登録No.:136510-13-9)は、早くも1954年Jeanes(J. Am. Soc. 76, 5041-5052)によりLeuconostoc mesenteroides NRRL B-1335から細胞外で産生された画分Sグルカンとして記載された。アルテルナンは、グルコース単位からなる多糖である。グルコース単位はα−1,6−およびα−1,3−グリコシド結合を介して互いに結合しており、これらの2つのタイプの結合は主として交互に起こっている(Miasaki et al., 1980, Carbohydr. Res. 84, 273-285)。更に、アルテルナンは、約10%以下の分枝を含むことができる(Seymour et al., 1979, Carbohydrate Research 74, 41-62)。アルテルナンは、ポリマーの主鎖においてα−1,6と交互に起こるα−1,3グリコシド結合および仮にあるとしても非常にまれに起こる引き続くα−1,6−グリコシド結合を有するので、それは、主としてα−1,6−グリコシド結合の主鎖からなるグルコースポリマーであるデキストラン(CAS登録No.:9004-54-0)から区別される。したがって、CoteおよびRobyt(1982, Carbohydr. Res. 101, 57-74)は、Leuconostoc mesenteroides NRRL B-1335からの特定された画分Sグルカンについて、一般に今日有効であるアルテルナンという名前を導入した。
ネイティブアルテルナンは、10〜10の平均分子量(Mw)を有し、相対的に容易に水溶性でありそして水性溶液に対して低い粘度を与える(WO03010177)。
【0003】
これまでに知られているアルテルナンの誘導体は、ネイティブアルテルナンの分子量が物理的および/または生物学的(酵素的)プロセスによって減少させられているという点で限定される。
【0004】
酵素イソマルトデキストラナーゼによるネイティブアルテルナンの分解により、いわゆる限界アルテルナン(イソアミラーゼによるデンプンの分解により得られる限界デキストリンと同様に知られている)が製造され、これは3500の平均分子量を有する。限界アルテルナンのレオロジー的性質(水性溶液中の粘度)は、マルトデキストリンのレオロジー的性質にほぼ対応し、即ち、限界アルテルナンは、低い粘度を与え、そして高い濃度(>80%w/v)で水溶性である(Cote et al., 1997, Chapter 8 In: Spanier et al.(ed), "Chemistry of novel foods", Carol Steam, IL; Allured Publishing Corp., 95-110, ISBN 093171057X)。
【0005】
Penicillium属の真菌類の存在下にネイティブアルテルナンをインキュベーションすると、ネイティブアルテルナンの分子量は同様に減少する(WO03010177)。インキュベーション時間に依存して、5〜10×10(4日間のインキュベーション時間)または1〜5×10(7日間のインキュベーション時間)の分子量を有するアルテルナンが得られた。アルテルナン分解酵素は、この目的で使用される真菌類において検出され得ず、これは、Penicillium属の真菌類によるネイティブアルテルナンの分子量を減少させるための機構がこれまで予想されないものであることを意味する。
【0006】
更に、平均分子量は、超音波による処理により10未満に減少された(Cote, 1992, Carbohydr, Polymers 19, 249-252)。
【0007】
真菌類とのインキュベーションの後に得られたまたは超音波による処理により得られた減少した分子量を有するアルテルナンは、そのレオロジー的性質に関してアラビアゴムとの類似性を有する。それは、ネイティブアルテルナンの水への溶解度(12%〜15%w/v)と対照的に、容易に水溶性であり(50%w/vまで)そして溶液で低い粘度を与える。せん断減粘(shear thinning)に関して、減少した分子量を有するアルテルナンの溶液は、低い擬弾性(pseudoelasticity)を示しそしておおよそニュートン流体である。アラビアゴムと対照的に、ネイティブアルテルナンも、減少した分子量を有するアルテルナンも、乳化性を持たない。特定されたレオロジー的性質の理由で、アルテルナンの両誘導体は、特に炭水化物含有食品における増量剤としての使用が提唱される(WO 03010177)。
【0008】
更に、アルテルナンは、特定のグルカナーゼによってのみ分解されるポリマーである、Biley et al., 1994, Eur. J. Biochem. 226, 633-639。このようなアルテルナン分解グルカナーゼは、少数の微生物から知られている。結果としてアルテルナンおよび減少した分子量を有するアルテルナンは、食品製品のための低カロリー増量剤として提唱された (Cote et al., 1997, Chapter 8 In: Spanier et al.(ed), "Chemistry of novel foods", Carol Steam, IL; Allured Publishing Corp., 95-110, ISBN 093171057X)。
【0009】
本発明の目的は、アルテルナン誘導体を提供することである。ネイティブアルテルナンと比べて、アルテルナン誘導体は、それらをある用途に適当にする性質を有する。これらのアルテルナン誘導体は、食品、薬学的製品または化粧品に使用するのに特に適している。
【0010】
この目的は、特許請求の範囲に記載の態様により達成される。
【0011】
したがって、本発明は、アルテルナン−カルボン酸エステルに関する。
【0012】
驚くべきことに、種々のアルテルナン−カルボン酸エステルは、低い粘度しか与えないネイティブアルテルナンよりも、水性溶液で有意に高い粘度を与えることが見出された。更に、種々のアルテルナン−カルボン酸エステルの水性溶液において、それらにより与えられる粘度および溶液に作用するせん断力の依存性がある。ゆえに、例えば、アルテルナン−コハク酸エステルなどの種々のアルテルナン−カルボン酸エステルの溶液は、ニュートン流体ではない。ネイティブアルテルナンは、ポリマーの低い相互作用を有するニュートン溶液の典型的な溶液の性質を有するが、これに対して同じ濃度でのアルテルナン−コハク酸エステルはゲル様であり、したがって、ポリマー間の明らかに認識できる相互作用が生じている。結果として、種々のアルテルナン−カルボン酸エステルは、食品、薬学的製品または化粧品における特に構造付与添加剤として適当である。
【0013】
本発明に関して、用語「アルテルナン」または「ネイティブアルテルナンは」は、グルコース単位からなるポリマーであって、主鎖のグルコース単位は、殆ど排他的に交互する方式で、α−1,6結合およびα−1,3結合によって結合しているポリマーを意味するものと理解されるべきである。アルテルナンは、主鎖の分枝により形成される約10%の側鎖を有することができる。
【0014】
本発明に関して、用語「アルテルナン−カルボン酸エステル」は、カルボン酸エステル結合を有するグルコース分子を含むアルテルナンを意味するものと理解されるべきである。アルテルナンのグルコース分子は、炭素原子のC−2、C−3、C−4および/またはC−6位置における遊離OH基上にカルボン酸エステル結合を有することができる。アルテルナンの交互する結合型の結果として、各場合にグルコース分子のC−2およびC−4位置のすべてのOH基および各場合にグルコース分子のC−3およびC−6位置のOH基の約50%が、エステル結合の形成のために利用可能である。したがって、本発明にしたがうアルテルナンカルボン酸エステルは、ポリマーのグルコース分子のC−2、C−3、C−4および/またはC−6に主としてエステル結合を含む。アルテルナン−カルボン酸エステルは、下記式(式1):
【化1】


(式中、Rは、
H、
直鎖または分岐状アルキル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノおよび/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルキル残基、
直鎖または分岐状アルケニル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノおよび/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルケニル残基、
直鎖または分岐状アルカジエニル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノ、硫黄および/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルカジエニル残基、
直鎖または分岐状アルカトリエニル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノ、硫黄および/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルカトリエニル残基、
直鎖または分岐状アルカテトラエニル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノ、硫黄および/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルカテトラエニル残基、
直鎖または分岐状アルキニル残基であって、1〜30個の炭素原子を有し、好ましくは1〜11個の炭素原子を有し、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノ、硫黄および/またはハロゲン基により置換されていてもよい、直鎖または分岐状アルキニル残基、および/または、
アリール残基であって、1個以上のオキソ、ヒドロキシ、カルボキシ残基を有することができおよび/またはアミノ、硫黄および/またはハロゲン基により置換されていてもよい、アリール残基、である)により示されうる。
【0015】
本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルは、飽和脂肪酸または一不飽和もしくは多不飽和脂肪酸とのエステルであることもできる。
【0016】
1つの好ましい態様においては、本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸エステルは、下記リスト1に列挙されたカルボン酸とのカルボン酸エステルであり、該カルボン酸エステルは、アルテルナン「慣用名」エステルまたはアルテルナン「化学名」エステルとして一般的に名付けられることができ、ここで、用語「慣用名」または「化学名」は、リスト1においてこれらの用語下に列挙された名称の1つにより置き換えられる(例えば、アルテルナンギ酸エステルまたはアルテルナンメタン酸エステル)。
【0017】
【表1】



【0018】
本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルは、特に好ましくは、例えば、アルテルナン−フマル酸エステル(アルテルナン−トランス−ブテン二酸エステル)、アルテルナン−イタコン酸エステル(アルテルナン−シス−メチレンブテン二酸エステル)、アルテルナン−グルタル酸エステル(アルテルナン−ペンタン二酸エステル)またはアルテルナン−フタル酸エステル(アルテルナン−ベンゼンジカルボン酸エステル)などのジカルボン酸とのカルボン酸エステルである。特にジカルボン酸またはトリカルボン酸とのアルテルナン−カルボン酸エステルは、それらが存在している溶液の組成に依存して、塩として存在することもできることは、当業者には明らかである。結果として、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルの塩も本発明により提供される。
【0019】
本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルは、特に好ましくは、アルテルナン−酢酸エステル(アルテルナン−エタン酸エステル)、アルテルナン−コハク酸エステル(アルテルナン−ブタン二酸エステル、アルテルナン−スクシニル酸エステル)またはアルテルナン−オクテニルコハク酸エステル(アルテルナン−2−オクテン−1−イルコハク酸エステル、アルテルナン−オクテニルスクシネートエステル)である。
【0020】
本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸エステルは、0.005〜3の置換度(DS)を有することができる。1つの好ましい態様において、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルは、0.005〜2.0、好ましくは0.008〜1.0、特に好ましくは0.01〜1.0、特に好ましくは0.01〜0.5、特別に好ましくは0.01〜0.04の置換度を有する。
【0021】
本発明に関して、用語「置換度(DS)」は、いかに多くのモルの置換基がグルコースモル当たり結合した形態で存在するかを示すモル置換度を意味するものと理解されるべきである。アルテルナンのグルコース分子のすべてのC−2およびC−4位置よび各場合にC−3およびC−6位置の約50%が置換されうるので、最大置換度は3である。
【0022】
本発明にとたがうアルテルナン−カルボン酸エステルは、好ましくは、10〜10、好ましくは10〜10、特に好ましくは5×10〜10、特に好ましくは5×10〜5×10の重量平均分子量(Mw)を有する。重量平均分子量(Mw)を決定するための方法は、当業者には知られておりそして、例えば、MALLS(多角レーザー光散乱(Multi Angle Laser Light Scattering))などの対応する検出法とカップリングしたGPC(ゲル透過クロマトグラフィー)による決定法を含む。本発明に関して好ましい重量平均分子量(Mw)を決定する1つの方法は、一般的方法、ポイント3に記載されている。
【0023】
アルテルナン−カルボン酸エステルは、例えば、デンプンまたはセルロースなどの他の炭水化物ポリマーの誘導体化に類似して当業者に知られている方法を使用して製造されうる。デンプンをエステル化するための方法は、当業者に知られておりそして、中でもUS2,461,139、US2,661,349、"Starch Chemistry and Technology" Ed.: Whistler and Paschal, Academic Press, 1965, Volume I, Roberts, Chapter XIX, 439-493, "Starch Chemistry and Technology" Ed.: Whistler and Paschal, Academic Press, 1967, Volume II, Roberts, Chapter XIII, 293-350 and Kruger and Rutenberg, Chapter XV, 369-401に記載されている。ネイティブデンプンおよびセルロースは、ネイティブ形態または溶解した形態で誘導体化される水不溶性物質である。このために、適当な溶媒が使用されるか、またはデンプンの場合には、これは、先ず第一に、高められた温度により、水性溶液中にゲル化されるかまたは適当な溶媒(例えばホルムアミド)中に溶解される。アルテルナンは相対的に易水溶性ポリマ−であるので、水性溶液中でアルテルナン−カルボン酸エステルを製造することが可能である。けれども、例えばホルムアミドなどの他の慣用の(有機)溶媒を使用することも可能である。結果として、例えば、デンプンまたはセルロースのエステル化と比較して、アルテルナン−カルボン酸エステルの製造は、エステル化が行われうる前に溶解または懸濁化のために特定のプロセス工程が必要とされないという利点を与える。
【0024】
水へのそれらの不溶性のゆえに、ネイティブデンプンおよびセルロースは、しばしば水性粒状懸濁液においてエステル化される。これは、中でも、粒子内のエステル化の程度は外側から内側に向けて変わる、即ち、エステル結合の程度が粒子の表面から内側へと減少するということをもたらす。対照的に、アルテルナンは、水に相対的に容易に溶解性であり、水性溶液中で反応を行うときは、溶解した分子にわたりエステル結合の均一な分布が達成されうるという利点を有することを意味する。水性溶液中でエステル化反応を行うことは、別々に分離しなければならないおよび/または廃棄しなければならない有機溶媒が生成されないという利点を更に与える。
【0025】
例えば、デンプンなどのグルコース単位からなるポリマーのエステル化は、種々の方法により、例えば、カルボン酸による直接エステル化により、またはカルボン酸無水物、カルボン酸ハライドまたはビニルエステルによるエステル化により行うことができる。
【0026】
種々の特定された方法によるエステル化のために、アルテルナンは、飽和した溶液の形態にあることができる。1%〜18%、好ましくは3%〜15%の量のアルテルナンを使用するのが好ましい。
【0027】
エステル化反応で使用されるアルテルナンは、種々の分子量を有することができる。それは、ネイティブアルテルナンであるか、または酵素により、超音波の効果によりまたは真菌類とのインキュベーションによりその分子量が減少させられている、減少した分子量を有するアルテルナンであることができる。
【0028】
カルボン酸無水物による直接エステル化の期間中、反応は、カルボン酸の水性溶液において行われる。好ましくは、このために、特にもし高い置換度が達成されるべきであるならば、強いカルボン酸(例えば、ギ酸)が使用される。反応性を増加させるために、例えば、硫酸またはハライドなどの触媒を加えことも可能である。
【0029】
カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライドとアルテルナンの反応は、アルカリ性水性溶液中で行うことができるか、または、それは例えば、ピリジンなどの触媒が加えられた溶液中で行われる。ピリジン触媒下の反応は、好ましくは、有機溶媒(例えばホルムアミド)中で行われる。溶液にピリジンを加えることにより、アルカリ性pHを確立することが可能である。更に、ピリジンは、ここでは反応の触媒として働く。
【0030】
例えば、デンプンなどのグルコース単位からなる他のポリマーと比べて、アルテルナンは、それが広いpH範囲にわたり溶液中の良好な安定性を有するという利点を与える。対照的に、グルコース単位からなる他のポリマー、特にデンプンは、相当より低い安定性を有し、これはエステル化反応期間中これらの物質の分子量の有意な減少をもたらす。これは、しばしばエステル化の後、エステル化反応により達成されると推定される性質を示すのには、あまりにも低すぎる分子量を有するこれらの物質をもたらす。グルコース単位からなる他のポリマー、例えば、デンプンと比較して、pHスケールの広い範囲にわたって、アルテルナンの相当により高い安定性は、例えば、アルテルナンの分子量を相当に減少することなくカルボン酸によるアルテルナンの直接エステル化を可能とする。グルコース単位からなるポリマーのエステル化のための該方法は酸性媒体または塩基性媒体中で行われそしてアルテルナンは広いpH範囲にわたり溶液中で安定であるので、例えば、デンプンなどのグルコース単位からなるポリマーのエステル化のための当業者に知られているすべての方法を、一般にアルテルナン−カルボン酸エステルを製造するのに使用することができる。
【0031】
本発明は、アルテルナンをエステル化剤と反応させる、アルテルナン−カルボン酸エステルの製造のための方法も包含する。エステル化剤は、好ましくはカルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハライドまたはビニルエステルである。
【0032】
本発明に関して、アルテルナン−カルボン酸エステルは、好ましくは、先ず最初に水にアルテルナンを溶解させ、そしてこの溶液のpHを、アルテルナンの反応性を活性化するための塩基性値に調節することにより製造される(水性アルカリ法)。次いでエステル化剤をこの溶液に加える。エステル化反応を停止させるために、反応混合物のpHを中性または僅かに酸性レベル(例えば、pH6.0〜6.5)に減少させることができる。次いで、得られる水溶性アルテルナン−カルボン酸エステルを、当業者に知られている方法を使用して単離することができる。簡単な単離は、例えば、適当な沈殿剤(例えばエタノール)の助けによるアルテルナン−カルボン酸エステルの沈殿である。アルテルナン−カルボン酸エステルの純度を更に改良するために、これらは、適当な(例えば、エタノール含有)溶液を使用して、沈殿後に1回以上洗浄されうる。必要ならば、アルテルナン−カルボン酸エステルの乾燥(例えば、減圧下、凍結乾燥、噴霧乾燥)を行うことができる。
【0033】
水性アルカリ法のための適当なエステル化剤は、カルボン酸ハライドの他に、特にカルボン酸無水物またはカルボン酸ビニルエステルである。
【0034】
水性アルカリ法の場合に、溶液のpHは、7より高くするべきである。溶液は、好ましくは、7〜12のpH、好ましくは7.5〜10、特に好ましくは、8〜10、特別に好ましくは8.0〜9.0に調節される。
【0035】
アルテルナンを活性化しそしてpHを好ましい値に調節するために、任意の所望のアルカリ剤を使用することができる。適当なアルカリ剤は、例えば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物または元素の周期律表のIおよびII主族の水酸化物、酸化物または炭酸塩である。アルカリ剤は、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アンモニウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウムまたはリン酸三ナトリウムである。水酸化ナトリウムを使用するのが特に好ましい。
【0036】
エステル化反応およびアルカリ剤が加わることの結果として、反応混合物のpHは低下するので、特にもしアルテルナンの高い置換度が望まれるならば、アルカリ剤の更なる添加により該pHをコントロールするべきである。添加は、例えば、もし反応混合物のあるpHが所望の値より低く下がるならば逐次に、または連続的に行うことができる。あるいは、反応混合物のpHは、エステル化剤および/またはアルカリ剤の混合物の連続的または逐次的添加によりコントロールすることもできる。
【0037】
エステル化反応は、使用されるエステル化剤に依存して、室温または高められた温度で行うことができる。20℃〜95℃、特に好ましくは20℃〜80℃、特に好ましくは20℃〜60℃、特に好ましくは20℃〜40℃で反応を行うのが好ましい。
【0038】
水性アルカリ法で使用されるエステル化剤は、好ましくはカルボン酸無水物またはカルボン酸ビニルエステルである。本発明に従う方法において、リスト1に特定されたカルボン酸の無水物または脂肪酸の無水物を使用するのが好ましい。
【0039】
別の可能な方法においては、アルテルナン−カルボン酸エステルは、触媒として反応溶液にピリジンを加えることにより製造される。置換度を増加させるために、ピリジンを過剰に加えることができる。この方法で適当なエステル化剤(アシル化剤)は、すでに特定されたカルボン酸無水物である。この方法で使用されうるエステル化剤は、特に相対的に長鎖の脂肪酸に関して、やはりカルボン酸ハライド、好ましくはカルボニルクロリドである。カルボン酸ハライドは、リスト1に特定されたカルボン酸のハライドまたは脂肪酸のハライドである。
【0040】
アルテルナン−カルボン酸混合エステルを製造するために、反応において同時に異なる前記エステル化剤を使用することが可能であるか、または逐次の反応において異なる前記エステル化剤を実施することが可能である。
ゆえに、本発明は、アルテルナン−カルボン酸混合エステルにも関する。アルテルナン−カルボン酸混合エステルは、少なくとも2つの異なるエステル基を有するアルテルナン分子であり、該異なるエステル基は式1で示されたそれらの残基Rが異なるということを特徴とする。これらは、好ましくは、各場合にリスト1で特定されたカルボン酸の少なくとも2つによりおよび/または少なくとも2つの脂肪酸によりエステル化されたアルテルナン分子である。あるいは、これらはリスト1で特定された少なくとも1つのカルボン酸および少なくとも1つの脂肪酸でエステル化されているアルテルナン分子である。
【0041】
すでに述べたとおり、アルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルを含む溶液は、アルテルナンを含む溶液に比較して相当により高い粘度を有することができる。アルテルナン−カルボン酸エステル、特にアルテルナン−コハク酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルの溶液は、ある濃度(アルテルナン−コハク酸エステルの場合に約5%)より上でゲルを形成することができる。アルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルは、更に、得られる溶液が殆ど濁度を持たないという性質を有することができる。アルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルは、エマルションの安定化のために役立つこともでき(例えば、アルテルナン−コハク酸エステル)またはそれらは乳化剤として使用されうる(例えば、アルテルナン−オクテニルコハク酸エステル)。
【0042】
本発明は、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルである乳化剤を提供する。乳化剤は、好ましくは、ジカルボン酸とのアルテルナン−カルボン酸エステル、特に好ましくは、8〜14個の炭素原子、好ましくは10〜14個の炭素原子を有するジカルボン酸とのアルテルナン−カルボン酸エステルであり;それは特に好ましくはアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルである。
【0043】
本発明に従う乳化剤は、好ましくは、0.001〜0.05、好ましくは0.003〜0.04、好ましくは0.008〜0.03、特に好ましくは0.01〜0.03の置換度(DS)を有する。
【0044】
本発明は、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルを含むエマルションまたは乳化剤としての本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルを提供する。本発明に従うエマルションは、好ましくは、ジカルボン酸とのアルテルナン−カルボン酸エステルを含むエマルション、特に好ましくは、8〜14個の炭素原子、好ましくは10〜14個の炭素原子を有するジカルボン酸とのアルテルナン−カルボン酸エステルを含むエマルションであり;それらは特に好ましくはアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを含むエマルションである。
【0045】
本発明に関して、用語「エマルション」は、目で見える分離なしに2つの普通は非混和性物質の微細に分割された混合物を意味するものと理解されるべきである。
【0046】
親水性(例えば、水)および親油性物質(例えば油)の他に、本発明に従うエマルションは、好ましくは、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルを含む。ここで、前記エマルションは、エマルションの容積あたり乳化剤の重量分率で測定して、少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.3%、好ましくは少なくとも0.5%、特に好ましくは少なくとも1.0%、特に好ましくは少なくとも3.0%の濃度で本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルを含む。
【0047】
これらは、好ましくは、エマルションの容積あたり乳化剤の重量分率で測定して、0.05%〜5%、好ましくは、0.1%〜5.0%、特に好ましくは、0.5%〜5%、特に好ましくは1.0%〜3%の濃度範囲で本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルを含むエマルションである。
【0048】
本明細書で使用される本発明に従う乳化剤の量は、混合物中の親油性物質の分率に従って調節されうる。
【0049】
更なる主題事項は、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび非混和性物質からなる混合物を一緒に混合する、エマルションの製造のための方法に関する。
【0050】
本発明に従う乳化剤が固体物質および/または液体を有するエマルションの製造のための本発明に従う方法において混合されるかどうかは重要ではない。どの物質が、単に乳化効果を生じるかということである。
【0051】
好ましくは、エマルションの製造のための本発明に従う方法において、すでに上記に特定された本発明に従う好ましい乳化剤が使用される。
【0052】
乳化剤としての本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルの使用が、本発明により同様に提供される。
【0053】
本発明は、食品もしくは飼料添加剤、食品もしくは飼料、化粧品もしくは薬学的製品の製造のためのエマルションの製造のための、本発明に従う乳化剤の使用、または本発明に従うエマルションの使用、または本発明にしたがう方法により得ることができるエマルションの使用を更に提供する。
【0054】
本発明は、界面活性剤としての、本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸エステルの使用または本発明に従う乳化剤の使用または本発明に従うエマルションの使用を提供する。好ましくは、界面活性剤としての使用は、クリーニング組成物(例えば、洗浄、すすぎまたはクリーニング組成物などの)またはボデーケアー物質(例えばシャンプー、シャワーゲル、せっけん、クリーム)における使用または発泡剤としての使用である。
【0055】
本発明に関して、用語「界面活性剤」は、液体の表面張力または二相間の界面張力を減少させそしてディスパージョンの形成を可能とするかまたは支持する物質を意味するものと理解されるべきである。
【0056】
アルテルナン−カルボン酸エステルの特定された性質のゆえに、これらは、多数の異なる製品において使用されうる。
【0057】
結果として、本発明は、更に、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明にしたがう乳化剤および/または本発明にしたがうエマルションを含む組成物を提供する。
【0058】
本発明に従う組成物は、好ましくは、食品(食料およびぜいたく品)、食品組成物、化粧品組成物または薬学的組成物である。
【0059】
本発明に従う食品組成物は、好ましくは、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび/または栄養の目的で人々により消費される(少なくとも)1つの物質を含む組成物である。栄養の目的で人々により消費される物質は、中でも、粗飼料(roughage)、ミネラル、水、炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、二次植物物質、微量元素、香気物質、矯味・矯臭剤および/または食品添加剤を含む。
【0060】
本発明に従う化粧品組成物は、好ましくは、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび/またはINCI命名法(INCI:国際命名化粧品成分(International Nomenclture Cosmetic Ingredients))下にリストされた1種以上の成分を含む組成物である。INSI命名法により包含される成分は、中でも、"International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook", 11th Edition, January 2006, Publisher: CTFA, ISBN: 1882621360において公表されている。化粧品組成物は、特に好ましくはクリームである。
【0061】
本発明に従う薬学的組成物は、好ましくは、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび(少なくとも)1つの薬理学的に活性な物質を含む組成物である。
【0062】
種々のアルテルナン−カルボン酸エステル(例えば、アルテルナン−コハク酸エステル)またはアルテルナン−カルボン酸混合エステルは、相対的に低い濃度で粘度およびゲルの形成を与える結果として、特にある増粘能力が重要である食品(1つまたは複数)組成物において使用するのに適当である。したがって、それらは、製造および調製(例えば、乳製品、パン製品、飲料、デザート、ジャム、ソース、プリン等における)期間中粘度調節剤またはゲル化剤として使用されうる。アルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステル溶液(例えば、アルテルナン−コハク酸エステルなどの)は僅かな濁度しかもたないので、それらは、透明な外観を持たなければならない食品における使用のために特に好適である。種々のアルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルがエマルションに対して有する安定化効果および/または乳化活性は、それらを親油性成分(例えば脂肪)および親水性成分の両方を有する食品に特に適当なものとする。
【0063】
化粧品または薬学的組成物に関して、アルテルナン−カルボン酸エステルまたはアルテルナン−カルボン酸混合エステルの粘度付与性ならびにそれらのエマルション安定化性および/または乳化性は、同様に特に重要である。したがって、それらは、例えば、チンキ剤、、クリーム、ローション、膏薬、日光保護組成物、メーキャップ組成物、歯科用クリーニング組成物、ボデーケアーおよびヘアーケアー組成物等の成分であることができる。種々のアルテルナン−カルボン酸エステル(例えばアルテルナン−コハク酸エステルなど)またはアルテルナン−カルボン酸混合エステルは、ゲルを形成することができるので、それらは、ヒドロゲルの製造のためにも特に適当である。薬学的組成物に関して、アルテルナン−カルボン酸エステル(例えばアルテルナン−コハク酸エステルなど)またはアルテルナン−カルボン酸混合エステルは、例えば錠剤における崩壊剤として使用されうる。
【0064】
本発明は、更に、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明にしたがう乳化剤および/または本発明に従うエマルションを他の物質と混合するかまたは他の物質に加える、組成物の製造のための方法を提供する。
【0065】
好ましくは、組成物の製造ための本発明に従う方法は、食品(食料、およびぜいたく食品)、食品組成物の製造のための方法、化粧品組成物の製造のための方法または薬学的組成物の製造のための方法に関する。
【0066】
食品(食料およびぜいたく食品)または食品組成物の製造のための方法に関して、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび栄養の目的で人々により消費される(少なくとも)1つの物質を混合するか、または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションを、このような物質または物質混合物(例えばミルクなど)に加える。本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションと混合される物質は、粗飼料(roughage)、ミネラル、水、炭水化物、タンパク質、脂肪、ビタミン、二次植物代謝物、微量元素、香気物質、矯味・矯臭剤および/または食品添加剤である。
【0067】
薬学的組成物の製造のための方法に関して、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび/または(少なくとも)1種の薬理学的に活性な物質が混合されるか、または、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションが、このような物質または該物質を含む物質混合物に加えられる。
【0068】
化粧品組成物の製造のための方法に関して、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションおよび/またはINCI命名法(INCI:国際命名化粧品成分)下にリストされた1種以上の成分は混合されるか、または、本発明に従うアルテルナン−カルボン酸エステルおよび/または本発明に従うアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションを、このような物質または該物質を含む物質混合物に加える。
【0069】
好ましくは、組成物の製造のための本発明にしたがう方法は、本発明に従う組成物の製造のための方法に関する。
【0070】
本発明に従う組成物の製造のための、アルテルナン−カルボン酸エステルおよび/またはアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明に従う乳化剤および/または本発明に従うエマルションの使用が、同様に本発明により提供される。
【0071】
更に、本発明は、食品の製造のためまたは薬学的組成物の製造のためまたは化粧品組成物の製造のための、本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸エステルまたは本発明にしたがうアルテルナン−カルボン酸混合エステルおよび/または本発明にしたがう乳化剤および/または本発明に従うエマルションの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】アルテルナンおよび異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルのモル質量分布。
【図2】25℃におけるアルテルナンおよび異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルの流動挙動の比較。粘度[Pa×s]はせん断速度[Hz]の関数として示される。
【図3】アルテルナンおよび異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルの周波数掃引。パスカル[Pa]で測定された貯蔵率(G')および損失率(G'')は一定のせん断応力における周波数[Hz]の関数として示される。
【図4】アルテルナン、異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルおよびゲル化されたトウモロコシデンプン(CST)およびその混合物のゲル形成。パスカル[Pa]で測定された貯蔵率(G')および損失率(G'')が温度[℃]の関数として示される。
【図5】周波数掃引における、アルテルナン、異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルおよびゲル化されたトウモロコシデンプン(CST)およびそれらの混合物のゲル状態の比較。パスカル[Pa]で測定された貯蔵率(G')および損失率(G'')が5℃の測定温度で周波数[Hz]の関数として示される。
【図6】応力掃引における、アルテルナン、異なる置換度(DS0.034、DS0.088、DS0.161)を有するアルテルナン−コハク酸エステルおよびゲル化されたトウモロコシデンプン(CST)およびそれらの混合物のゲル堅さおよびゲル安定性の比較。パスカル[Pa]で測定された貯蔵率(G')および損失率(G'')が5℃の測定温度でせん断応力[Pa]の関数として示される。
【図7】異なる濃度のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルで得られたエマルションの写真(表10も参照)。
【図8】0.024の置換度を有するアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルのモル質量分布。
【0073】
一般的方法
1.アルテルナンの製造
アルテルナンは、酵素アルテルナンスクラーゼの助けによる製造されうる。酵素アルテルナンスクラーゼは、当業者に知られている方法により種々の方法で調製されうる。
【0074】
種Leuconostoc mesenteroidesのバクテリア株の助けによるアルテルナンスクラーゼおよびアルテルナンの製造は、中でもReamakers et al(1997, J. Chem. Tech. Biotechnol. 69, 470-478)またはWO2006088884(特に実施例1参照)に記載されている。
【0075】
しかしながら、酵素アルテルナンスクラーゼの製造のためのLeuconostoc mesenteroidesバクテリア株を使用する方法は、これらの株が他のスクラーゼ、特にデキストランスクラーゼも産生するという欠点を有する。これら他のスクラーゼは、これまで、アルテルナンスクラーゼから完全に分離され得なかった。したがって、それは異なる酵素の混合物である。結果として、このような酵素混合物を使用して製造されたアルテルナンは、アルテルナンのほかに、少なくとも少量のデキストランも有する。したがって、純粋なアルテルナンを製造するために、リコンビナント生物によるアルテルナンスクラーゼの製造のための方法が好ましい。
【0076】
リコンビナント生物により製造されたアルテルナンスクラーゼの製造およびこの方法で製造された酵素によるアルテルナンの製造のための方法は、中でも、WO200047727、US2003229923(特に実施例2、5および8)またはJoucla et al(2006, FEBS Letters 580, 763-768)に記載されている。
【0077】
2.エステル化度の決定
種々のアルテルナン誘導体のエステル化度は、アルカリけん化およびその後の酸−塩基滴定により確かめられた。置換の百分率(アルテルナン誘導体の乾燥物質に基づいて%における置換基の質量)が決定された。得られる値を使用して、置換度(DS)は下記式にしたがって確かめられた。
DSx=162×%X/(100×Mx−ΔM×%X)
式中、
%X=乾燥物質の質量の分析で決定された基(置換基)の質量の分率(%における)
Mx=分析により決定された基のモル質量
ΔM=MS−ML
MS=置換基のモル質量
ML=けん化された基のモル質量
【0078】
3.GPC−MALLSによるモル質量分布の決定
ゲル透過クロマトグラフィーによりモル質量分布を決定するために、下記の機器を使用した:
機器:WatersからのAlliance2695分離モジュール、WatersからのDRI検出器2414、Wyatt Technology Inc,Santa Barbara,USA,からのMALLS検出気Dawn-HELEOS、波長λ=658nmおよびK5フローセル
カラム:SUPREMAゲルカラムセツト(PSS Mainz)、排除限界10〜10を有するS30000、2.10〜5.10を有するS1000、10〜10を有するS100
溶離剤:0.5m NaNO
温度:30℃
得られたデータを評価するために、Astra Software5.3.0.18を使用した。
【0079】
4.レオメーターによるレオロジー的特徴付け
レオロジー的性質を決定するために、下記の機器を下記した(調節可能)パラメーターで使用した:
機器:Malvern(Bohlin)からのRheometer CVO 120HR
パラメーター
トルク:0.0001〜120mNm(10の6乗)
トルク分解能:10−8Nmより良好
角度分解能:5〜10−8rad
周波数範囲:10−5〜150Hz
速度範囲:<10−5〜3100分−1
特定された機器の助けにより、貯蔵率(G')および損失率(G'')を、一定の変形/せん断応力(周波数掃引)で周波数の関数としておよび一定の周波数(応力掃引)におけるせん断応力の関数として決定した。
【0080】
5.RVAによる粘度決定
物質を蒸留HOに溶解しそして9000rpmで1分間Ultra-Turrax T25 digital(IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)を使用して均一化する。10%強度溶液27mlを、Rapid Visco Analyzer(Newport Scientific Pty ltd., Investment Support Group, Warriewod NSW 2102, Australia)におけるRVAビーカーにおいて使用して、粘度を測定する。機器は製造者のインストラクションにしたがって操作する。ここで、粘度値は、製造者の操作インストラクシヨンにしたがって、センチポイズ(1cP=1mPa×s)で示される。物質の水性溶液の粘度を決定するために、懸濁液を、1200rpmで10秒間25℃でまず最初に撹拌し、次いで温度を25℃で一定に保ちそして混合物を更に2分50秒間1000rpmの攪拌速度で攪拌する。3分のトータル時間の間、粘度をセンチポイズ(cP)で決定する。
【0081】
実施例
1.アルテルナン−酢酸エステル(アルテルナン−アセチルエステル)
a)製造
最初に、脱イオン水80mlを250mlビーカーに導入し、次いでアルテルナン10gを磁性攪拌器によって絶えず攪拌しながら溶解した。アルテルナンを溶解した後、0.5M NaOH(Merck)を使用して8.5のpHを確立した。2つの別の混合物において、各場合に酢酸ビニル(Merck)1ml(サンプル1)または2ml(サンプル2)を加えることにより反応を開始した。全反応時間にわたって、pHを自動滴定器(pH-Stat, Metrohm 719 S Titrino)を使用して0.5M NaOH溶液(Merck)を使用して一定に保った。反応を23℃で行った。
【0082】
0.5M HCl(Merck)の助けによる中和(pH=6.3)により反応を終わらせ、そしてアルテルナンを析出させるために、反応混合物をエタノール(変性された、Monopoly Administration)の2倍の容積を有する500mlビーカーに注いだ。磁性バーを使用して5分間攪拌した後、アルテルナン誘導体を真空吸引フィルター(φ100mm)の助けにより混合物から分離し、次いでフィルターケークをエタノール/脱イオン水(80:20 v:v)約100ml中に再懸濁させて洗浄した。洗浄工程を2回繰り返し、次いでフィルターケークを実験室篩(φ200mm、メッシュ幅3mm)を使用して顆粒化し、次いで顆粒を2日間空気中で乾燥した。生成物を特徴付ける前に、凝集体を実験室ミル(IKA model A10)を使用して粉砕した。
【0083】
b)特徴付け
濁度測定は、アルテルナンまたはアルテルナン誘導体の0.5%強度溶液を使用して行った。脱イオン水49.75gを150mlビーカー中に重量を計って入れ、そしてアルテルナン/アルテルナン誘導体0.25gを室温でかつ磁性攪拌器を使用して絶えず攪拌しながらその中に溶解した。1時間攪拌した後、フィルター525nmおよび厚さ1cmのセルを使用して光度計(Ruhle, BerlinからのPM200)の助けにより濁度を測定した。
【0084】
アルテルナン−カルボン酸エステルの酢酸分率(アセチル含有率)を一般的方法のポイント2に記載の方法に従って決定した。
【0085】
【表2】


表1:異なる量の酢酸ビニルを使用して製造されたアルテルナン−酢酸エステルの濁度測定(4欄)およびアセチル含有率の量(5欄)。エステル化反応において使用された酢酸ビニルの量および反応の期間は、それぞれ、2欄および3欄に示される。言及された参照(1欄)は、反応における出発物質として使用されたネイティブアルテルナンである。サンプル1、2および3(1欄)は、異なる反応条件によって製造されたアルテルナン−酢酸エステルを指す。
【0086】
2.アルテルナン−コハク酸エステル(アルテルナン−スクシネート)
a)製造
アルテルナン50g(乾燥重量)を1リットルのジャケット付き反応器に最初に導入し、脱イオン水中に溶解しそして自動滴定器を使用してアルカリ性とした。無水コハク酸をゆっくりと添加した。反応が終了した後、pHを6.5に調節した。得られるアルテルナン−コハク酸エステルをエタノールで沈殿させ、洗浄しそして乾燥キヤビネット中で真空中で乾燥した。
【0087】
b)置換度
得られるアルテルナン−コハク酸エステルの置換度(DS値)を、一般的方法、ポイント2で述べた方法にしたがって決定した。
【0088】
【表3】


表2:アルカリけん化および酸塩基滴定により決定された種々のアルテルナン−コハク酸エステルの置換度
【0089】
c)溶液の濁度測定
濁度測定のために、得られるアルテルナン−酢酸エステルを水中に異なる濃度で溶解し(表3参照)そして分光光度計において525nmで測定した。
【0090】
【表4】


表3:反応における出発物質として使用されたアルテルナンおよびアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)を異なる濃度で含む溶液中のアルテルナンおよびアルテルナン−コハク酸エステルの濁度の測定。
【0091】
実施例2b)で得られた結果の考察は、アルテルナン−コハク酸エステルを含む溶液の濁度はアルテルナンと比較して減少することを示す。置換度が高ければ高いほど、溶解した物質の同じ濃度での溶液の濁度はより低い。
【0092】
d)分子特徴付け
得られるアルテルナン−コハク酸エステルのモル質量分布を、一般的方法、ポイント3に記載の作用物質を使用してGPC−MALLS(ゲル透過クロマトグラフィー−多角レーザー光散乱)の助けにより分析した。このために、種々の物質(アルテルナン、AIS001、AIS002、AIS003)を、各場合に脱イオン水中に0.2%の濃度で、最初に室温で24時間、次いで120℃で20分間溶解した。すべてのサンプルについて、0.146の同じ屈折率増分(dn/dc)を使用した。この値を使用して、GPCにおける約90%の回収率がすべての誘導体で得られた。
【0093】
重量平均モル質量(Mw)について、下記の結果が得られた(図1も参照)。
【0094】
【表5】


表2:異なる置換度を有するアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)および反応における出発物質として使用されたアルテルナン(アルテルナン)の重量平均モル質量(Mw)。
【0095】
f)レオロジー的性質
レオロジー的性質を決定するために、種々の物質(アルテルナン、AIS001、AIS002、AIS003)を各場合に5%の濃度で95℃で攪拌しながら脱イオン水中に溶解した。サンプルAIS001およびAIS002のアルテルナン−コハク酸エステルは5%の濃度でもはや流動可能ではないので、各場合に5%の濃度が選ばれた。それらは水中で安定なゲルを形成した。
【0096】
粘度
一般的方法、ポイント4に記載の作用物質の助けにより分析を行った。5%強度溶液の流動挙動(粘度)を10〜10Hzの周波数範囲においてせん断速度の関数として25℃で調べた。
【0097】
図2は、エステル化反応における出発物質として使用されたアルテルナンの流動曲線および種々の置換度を有するアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)の流動曲線の比較を示す。増加する置換度(DS値)とともに、アルテルナン−コハク酸エステルは、問題の溶液の粘度の増加を有する。0.161のDS値(AIS003)は、出発物質アルテルナンに比較して約2桁の大きさの粘度の増加を生じた。粘度のほかに、溶液状態も変化した。
【0098】
下表は、異なるせん断速度で測定されたアルテルナン−コハク酸エステルの粘度を例として与える。
【表6】


表3:カルボキシル化反応のための出発物質として使用されたアルテルナンおよび異なるDS値を有するアルテルナン−コハク酸エステルの粘度
【0099】
周波数掃引による振動測定
エステル化反応における出発物質として使用されたアルテルナンの、種々の置換度を有するアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)との比較振動測定が、一般的方法、ポイント4に記載の作用物質を使用して10−2Hz〜10Hzの周波数範囲で25℃で確立された。
【0100】
図3は、アルテルナンとアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)との比較周波数掃引の結果を示す。これは、アルテルナンは、溶解した物質の僅かな相互作用を伴うニュートン流体の典型的な溶液の性質を有することを示す。対照的に、アルテルナン−コハク酸エステルは、同じ濃度でゲル様であり、これは弾性率(G')および損失率(G')が低い周波数依存性を有することおよびG'がG''より大きい(G'>G'')ことから明らかである。
【0101】
g)エマルション挙動
異なる濃度の(表6参照)アルテルナンおよびアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002)の溶液を、1分間Ultra-Turrax(25k rpm)を使用して超純水中に問題の物質を均一化することにより調製した。各場合にこれらの溶液20mlに、各場合にひまわり油20mlを加えた。次いでUltra-Turrax(Ultra-Turrax T25 digital, IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)を使用する1分間の均一化を約25k rpmで行った。
【0102】
次いで得られるエマルションを相分離が起るかどうかに関して観察した。
【0103】
【表7】


表4:エマルションに対するアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002)およびアルテルナンの効果。アルテルナンと比較して、アルテルナン−コハク酸エステルはエマルションに対する安定化効果を有する。
【0104】
これは、アルテルナン−コハク酸エステルがネイティブアルテルナンに比較してエマルションに対する安定化効果を有することを示す。
【0105】
h)他のゲル形成剤との相溶性
トウモロコシデンプン
トウモロコシデンプンを、150℃で20分間圧力下に沸騰させることにより5%の濃度で脱イオン水に溶解した。アルテルナンおよび種々のアルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002)を攪拌しながら溶解することにより、アルテルナンおよびアルテルナン−コハク酸エステルを含有する種々の混合物(組成物)をこのデンプン溶液から調製した。混合物中のアルテルナンまたはアルテルナン−コハク酸エステルの濃度は各場合に1%であった。
【0106】
熱い溶液を、レオメーター(一般的方法、ポイント4参照)の80℃に加熱された測定システムに導入した。10−2Hzの周波数で、種々の混合物および純粋なデンプン溶液(CST)のゲル化を、問題の貯蔵率(G')および損失率(G'')を記録する(図4)ことにより5℃に冷却する期間監視した。混合物のゲル化後に、ゲル状態を評価するための周波数掃引(図5)およびゲル堅さおよびせん断安定性を評価するための応力掃引(図6)を、各場合に5℃の温度で記録した。
【0107】
冷却曲線(図4)は、すべての溶液について、80℃で貯蔵率(G')は損失率(G'')より低いことを示す。冷却が増加するにつれて、(G')および(G'')のそれぞれの値は増加する。約10℃で、すべての溶液の(G')および(G'')は、同一または少なくともほぼ同一の値に達する:即ち、この温度範囲で、ゾルーゲル転移がそれぞれのサンプルにおいて起る(ゲル化点)。トウモロコシデンプンとアルテルナンまたはアルテルナン−コハク酸エステルの混合物を含む溶液は、ほぼ同じゲル化点を有する。トウモロコシデンプン溶液へのアルテルナン−コハク酸エステルの添加は、デンプン溶液の弾性および粘性フラクションの両方を増加させ、これは、本実験において、トウモロコシデンプン(CST)と名称AIS0003を有するアルテルナン−コハク酸エステルとの混合物(組成物)の場合に最も顕著である。
【0108】
周波数掃引(図5)から、混合物のすべてが5℃の温度で安定なゲルを形成したことが推定されうる。
【0109】
応力掃引(図6)から、アルテルナンの添加はトウモロコシデンプンゲルのゲル堅さを減少させ、これに対して、アルテルナン−コハク酸エステル、特に相対的に高い置換度を有するアルテルナン−コハク酸エステル(例えば、物質AIS003)の添加は、トウモロコシデンプンゲルのゲル堅さを増加させることが推定されうる。
【0110】
食品における安定性
種々の濃度の(表5参照)アルテルナン−コハク酸エステル(AIS001、AIS002、AIS003)の溶液を、約25k rpmの速度で1分間Ultra-Turrax(Ultra-Turrax T25 digital, IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)を使用して標準の市販のミルク中に問題の物質を均一化することにより調製した。次いで得られる溶液を、成分のすべてが溶液中に残っているかどうかまたは不均一な区域が形成されているかどうかおよび/または沈殿が生じているかどうかに関して数時間から1日にわたり観察した。
【表8】


表5:ミルク中のアルテルナン−コハク酸エステルの溶液の安定性
【0111】
3.アルテルナン−オクテニルコハク酸エステル(アルテルナン−オクテニルスクシネート)
a)製造
最初に、脱イオン水60mlを250mlビーカーに導入し、次いでアルテルナン10gを磁性攪拌器を使用して連続的に攪拌しながら溶解した。アルテルナンを溶解した後、0.5M NaOH溶液(Merck)を加えることにより、pHを8.5に調節した。
【0112】
次いで、互いに別の混合物において、無水オクテニルコハク酸(OSA)1mlまたは2mlを1時間にわたりビゥレットによって連続的に計量供給した。次いで、種々の反応混合物を、更なる1時間または更なる3時間攪拌し、個々の混合物について2または4時間(これに関して表8も参照)のトータル反応時間をもたらす。全反応時間全体にわたり、pHを自動滴定器(pH-Stat, Metrohm 719 S Titrino)を使用して0.5M NaOH溶液(Merck)を使用することにより一定に保った。反応を23℃で行った。
【0113】
0.5M HCl(Merck)の助けによる中和(pH=6.3)により反応を終わらせ、そしてアルテルナンを析出させるために、反応混合物をエタノール(変性された、Monopoly Administration)の2倍の容積を有する500mlビーカーに注いだ。磁性攪拌器を使用して5分間攪拌した後、アルテルナン誘導体を真空吸引フィルター(φ100mm)の助けにより混合物から分離し、次いでフィルターケークをエタノール/脱イオン水(80:20 v:v)約100ml中に再懸濁させて洗浄した。洗浄工程を2回繰り返し、次いでフィルターケークを実験室篩(φ200mm、メッシュ幅3mm)を使用して顆粒化し、次いで顆粒を2日間空気中で乾燥した。生成物を特徴付ける前に、凝集体を実験室ミル(IKA model A10)を使用して粉砕した。
【0114】
b)特徴付け
濁度測定
濁度測定は、各場合に、アルテルナンまたは種々のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを含む0.5%強度溶液で行った。それらの調製のために、各場合に、脱イオン水49.75gを150mlビーカー中に重量を計って入れ、そして対応する物質0.25gを室温でかつ磁性攪拌器を使用して連続的に攪拌しながらその中で攪拌した。525nmフィルターおよび厚さ1cmのセルを使用して光度計(Ruhle, BerlinからのPM200)の助けにより1時間攪拌した後、濁どを測定した。各場合で、吸収度値が与えられた。
【0115】
乳化能力
アルテルナンおよび種々の条件下に製造されたアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルの乳化能力を、各場合に、最初に1%強度の溶液(ストック溶液:0.5g+49.5gの脱イオン水)20mlを100ml滴定ビーカー(Mettler 滴定器から)に導入し、次いでひまわり油(REWEからの標準の市販の油)20mlを加えそして最初に14000rpmで1分間Ultra-Turrax(T18)を使用して混合物を均一化することにより、決定した。次いで、各場合に油10mlを段階的に加えた。この油は各場合に1分間均一化されていた(Ultra-Turrax、14000rpm)。エマルションの粘度が減少しおよび/またはエマルションが壊れるまで、油の添加を行った。
【0116】
乳化能力を下記式にしたがって計算した。
乳化能力[油ml/アルテルナンg×水100ml]=油の全容積×5
【0117】
下表に示された結果が得られた。
【0118】
【表9】


表6:アルテルナンおよび種々の方法により製造されたアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルの濁度測定(4欄)および量的乳化能力(5欄))。エステル化反応で使用された無水オクテニルコハク酸の量および反応時間を、それぞれ、2欄および3欄に示す(更なる反応パラメーターについては実施例3a参照)。言及された参照(1欄)は、反応で出発物質として使用されたネイティブアルテルナンである。サンプル1、2、3および4(1欄)は、述べた異なる反応条件によって製造されたアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを指す。
【0119】
アルテルナン−オクテニルコハク酸エステルの乳化能力は、アルテルナンに比較して増加する。アルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを含む溶液の濁度は、同じ濃度でアルテルナンに比較して減少する。
【0120】
4.アルテルナン−無水オクテニルコハク酸の乳化性
a)アルテルナン−無水オクテニルコハク酸の製造
アルテルナンをアルカリ媒体中で1:0.05の比で無水オクテニルコハク酸と反応させそして反応が完了したとき中和した。得られるアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルをエタノールで析出させ、洗浄しそして乾燥させた。一般的方法、ポイント2に記載の方法によった確かめられたアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルの置換度(DS)は0.024であった。これらのアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを下記に分析した。
【0121】
b)分子特徴付け
得られるアルテルナン−コハク酸エステルのモル質量分布を、一般的方法、ポイント3に記載の作用物質を使用してGPC−MALLS(ゲル透過クロマトグラフィー−多角レーザー光散乱)の助けにより分析した(図8)。得られる平均モル質量(Mw)は21.5×10g/モルであった。
【0122】
c)レオロジー的性質
レオメーターを使用する粘度
一般的方法、ポイント4に記載の手段の助けにより分析を行った。10%強度溶液の流動挙動(粘度)を、示された周波数範囲においてせん断速度の関数として20℃で調べた(図9)。
【0123】
アルテルナン−オクテニルコハク酸エステルは、アルテルナンの粘度(約15mPa×s)より僅かに高い約25mPa×sの粘度を示した。
【0124】
RVAを使用する粘度
一般的方法、ポイント5に記載の方法を使用してRVA(Rapid Visco Analyzer)の助けによるアラビアゴムの粘度に比較して、アルテルナンおよびアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルの粘度を決定した。各場合に、10%強度溶液(w/v)を使用した。結果を下表に示す。
【0125】
【表10】


表9:アラビアゴム、アルテルナンおよびアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルのRVAにより確かめられた粘度。
【0126】
d)アルテルナン−無水オクテニルコハク酸の乳化性
各場合に、アルテルナン−オクテニルコハク酸エステル(Al−OSA)20mg、40mg、200mgおよび1gを、Ultra-Turrax(1分、(Ultra-Turrax T25 digital, IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)約25k rpm)の助けにより脱イオン水20ml中に溶解した。次いでひまわり油(市販品:REWEからの)20mlを加えた。得られる混合物をUltra-Turrax(上記参照)を使用する1分間の処理により均一化した。次いで稠度および稠度の安定性を評価した。図7は、得られるエマルションの略図を示す。更なる結果を下表に要約する。
【0127】
【表11】


表10:異なる量のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステル(Al−OSA)を含む油/水混合物の稠度および安定性。6欄は、図7に記載の対応する混合物の名称(番号)を含む。
【0128】
e)アラビアゴムとアルテルナン−オクテニルコハク酸の乳化性の比較
各場合に、アルテルナン−オクテニルコハク酸またはアラビアゴムの3%強度水性溶液(w/v)を調製した。これらの溶液に、異なる量の標準の市販のヒマワリ油を加え、次いでUltra-Turrax(Ultra-Turrax T25 digital, IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)9k rpmで1分)を使用して均一化を行った。6日間の期間の後、得られるエマルションを、エマルションの安定性に関して評価した。得られた結果を下表に示す。
【0129】
【表12】


表11:アラビアゴムおよびアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを有するエマルションの安定性
【0130】
f)種々の濃度のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを有するエマルション
異なる濃度のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを有する水性溶液を調製した。次いでこれらの溶液に、異なる量の標準の市販のひまわり油を加え、次いでUltra-Turrax(Ultra-Turrax T25 digital, IKA-Werke GMBH & CO.KG, D-79219 Staufen, Germany)9k rpmで1分)を使用して均一化を行った。6日間の期間の後、得られるエマルションを、エマルションの安定性に関して評価した。得られた結果を下表に示す。
【0131】
【表13】


表12:6日後および18日後の異なる量のアルテルナン−オクテニルコハク酸エステル(Al−OSA)を有する種々の油含有率を有するエマルションの安定性。
【0132】
g)クリームの製造
アルテルナン−オクテニルコハク酸エステルを、標準の市販のひまわり油30%(v/v)を含む水の混合物に、15%(w/v)の最終濃度まで加えそしてUltra-Turrax(9k rpm)を使用して1分間均一化した。安定なクリームが得られた。ひまわり油36%を含む水/油混合物で同様な結果が得られた。油30%を含む混合物から製造されたクリームと対照的に、油36%を有する混合物から製造されたクリームはよりクリーミーであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルテルナン−カルボン酸エステル。
【請求項2】
アルテルナンをカルボン酸またはその無水物またはカルボン酸ハライドまたはビニルエステルと反応させる、アルテルナン−カルボン酸エステルを製造するための方法。
【請求項3】
請求項1に記載のアルテルナン−カルボン酸エステルである乳化剤。
【請求項4】
請求項3に記載の乳化剤を含むエマルション。
【請求項5】
請求項1に記載のアルテルナン−カルボン酸エステル、請求項3に記載の乳化剤または請求項4に記載のエマルションを含む組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のアルテルナン−カルボン酸エステル、請求項3に記載の乳化剤または請求項4に記載のエマルションを他の物質と混合するかまたは該他の物質に加える、組成物の製造のための方法。
【請求項7】
界面活性剤としての請求項1に記載のアルテルナン−カルボン酸エステルの使用。
【請求項8】
食品、化粧品組成物または薬学的組成物の製造のための、請求項1に記載のアルテルナン−カルボン酸エステル、請求項3に記載の乳化剤、または請求項4に記載のエマルションの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−505936(P2012−505936A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531411(P2011−531411)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007579
【国際公開番号】WO2010/043423
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】