説明

アルファ化デンプン粉およびその製造方法ならびに該アルファ化デンプン粉を用いたプラスチック添加剤およびコンポジット材料

【課題】原料穀物を問わずに無加水にて簡単且つ短時間で高度にアルファ化されたデンプン粉を得る。
【解決手段】示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmaxとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αが80以上となるような同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hを持つことを特徴とするアルファ化デンプン粉であり、たとえば、臼間のギャップ13を0.01mm以下にして含水率12%以上の原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することにより製造される。このアルファ化デンプン粉はポリ乳酸などのプラスチックに添加したときの分散性や相溶性がきわめて高いので、プラスチック添加剤としても有用であり、得られたプラスチック/デンプン粉のコンポジット材料においても機械的物性の向上効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料穀物を剪断条件下で粉砕して得られるアルファ化デンプン粉およびその製造方法ならびに該アルファ化デンプン粉を用いたプラスチック添加剤およびコンポジット材料に関する。
【背景技術】
【0002】
穀物に含まれるデンプンをアルファ化(非晶質化)することで、アルファ化前に対して異なる特性が発現することは一般に知られている。つまり、予めアルファ化された米粉は、長期保存が可能である一方で、蒸煮を必要とせずに水や湯を加えるだけで美味しく食することができることが知られている。また、PLA(ポリ乳酸樹脂)などの生分解性樹脂への添加剤としてデンプンを用いる場合には、水やグリセリンなどの可塑剤を同時に添加して高温で処理することにより、デンプンをアルファ化することでPLA等と複合化できることが知られている。
【0003】
従来のアルファ化デンプンは、原料穀粒を水中に懸濁・加熱(すなわち炊飯)により糊化させた後に除水することによって製造されることが通常であった。また、特許文献1には、原料穀粒を80℃以上、特に100〜200℃の温度に加熱しながら剪断条件下に粉砕してアルファ化デンプン粉を製造する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−075104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、炊飯後に除水してアルファ化する方法では、水や湯を加えるだけで食料とできる程度までアルファされたデンプン粉を製造することは可能であったが、それらのデンプン粉は完全に近い程度までアルファ化されたデンプン粉の製造は不可能であった。その理由は、炊飯により一旦ほぼ完全にアルファ化したデンプンの一部が、乾燥(除水)の過程で生じる「老化」により再び結晶化するためである。
【0006】
また、特許文献1に記載された方法によっても完全なアルファ化を行うことは困難であり、炊飯後に除水してアルファ化する方法と実質的には同程度にアルファ化できるにすぎなかった。
【0007】
これらの従来技術では食料としての用途に供することが前提とされていたため、そのアルファ化の程度に不満が生ずることはなく、より高い程度あるいはほぼ完全にアルファ化されたデンプン粉が製造されることはなく、そのような要請もほとんどなかった。しかしながら、非常に高い程度あるいはほぼ完全にアルファ化されたデンプン粉は、低レベルにアルファ化されているにすぎない従来公知のデンプン粉とはデンプン構造が大きく異なり、デンプン分子の有する反応性が向上することによってより顕著な特性を示すことが期待される。
【0008】
このような背景から多くの実験と研究を重ねた結果、発明者らは、非常に高い程度までアルファ化されたデンプン粉を得ることに成功し、且つ、このデンプン粉は、従来から認識されていた食品分野への用途だけでなく、これとは全く異なる分野においてきわめて高い有用性を持ち得ることを知見した。その一つがPLA(ポリ乳酸樹脂)などの生分解性樹脂への添加剤としての有用性である。前述したようにPLAへのデンプン添加は従来より行われているが、水やグリセリンなどの可塑剤を用いてデンプンをプラスチックに分散させる必要があった。これは、従来の製法によって得られるデンプン粉は必ずしも十分な程度までアルファ化されておらず、これがプラスチックへの分散性を阻害しているためであると考えられる。
【0009】
また、PLAのようなポリエステル系材料は溶融時に水が存在すると加水分解を起こして低分子化し、物性低下の原因となることが知られている。したがって、このようなプラスチックにデンプンを添加するときに水を用いると、物性が低下することが懸念される。
【0010】
したがって、本発明の課題は、従来では存在しないほど高い程度までアルファ化された状態を保持し、上記したような新規有用な用途にも有用なデンプン粉を提供することであり、また、そのための製造方法を提供することである。また、アルファ化の程度を自在にコントロールできるための新規な手法を提供することも本発明の課題の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題に鑑みて、本発明者らは、原料穀物を水を加えずに剪断粉砕してアルファ化する方法においてアルファ化の程度を100%近くまで高めるために必要な条件を見い出すために実験と研究を重ねた結果、相対的に移動する2部材(臼など)間のギャップを所定のしきい値より小さく設定して原料穀物に与える物理的な力(剪断力)を強くすることが特に重要であり、また、さらに粉砕時の温度および原料穀物が最初から吸湿している水分量も最終的に得られるアルファ化の程度に大きな影響を与えることを知見して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmaxとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αが80以上、好ましくは85以上、より好ましくは90以上となるような同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hを持つことを特徴とするアルファ化デンプン粉である。
【0013】
なお、デンプンのアルファ化の程度(アルファ化度)を測定する一方法としてBAP法が知られているが、この方法ではデンプンの非晶化に伴う活性化(非晶度)の度合いを定量化することが困難である。BAP法は酵素反応を応用しているため、測定者の熟練度などによる数値のばらつきが発生しやすく、また、BAP法はデンプン粒が損傷している場合などデンプンが非晶化していない場合でも高い数値が測定される場合もあり、アルファ化の程度を示す数値としての信頼性に欠ける。本発明では、デンプンの非晶化に伴う示差熱の測定に基づき、且つ、実質的にアルファ化していない標準試料との対比においてアルファ化の程度を示す数値を算出するので、アルファ化度の本来の意味である非晶度を精度良く定量的に示すことができ、きわめて信頼性の高い指標として上記算出値αを用いている。
【0014】
また、本発明は、このようなα≧80のアルファ化デンプン粉を無加水条件で短時間に効率的に製造するための方法に関し、その一実施形態によれば、相対的に移動する2部材間のギャップを0.02mm未満にして原料穀物を該ギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法であり、他の実施形態によれば、相対的に移動する2部材間のギャップを0.01mm以下にして原料穀物を該ギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法であり、さらに他の実施形態によれば、相対的に移動する2部材間のギャップを0.02mm未満にして原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法であり、さらに他の実施形態によれば、相対的に移動する2部材間のギャップを0.04mm未満にして含水率15%以上の原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法であり、さらに他の実施形態によれば、相対的に移動する2部材間のギャップを0.01mm以下にして含水率12%以上の原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、前記式で示される数値α、すなわち原料穀物の剪断粉砕によって得られるデンプン粉のアルファ化の程度を任意にコントロールするための新規な手法を提案するものであり、原料穀物を相対的に移動する2部材間のギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することによりアルファ化デンプン粉を製造する方法において、ギャップの大きさ、剪断粉砕時の温度および原料穀物の含水率の3条件を組み合わせて設定することにより、示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmax、製造されるアルファ化デンプンの同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αを制御することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法である。
【0016】
また、本発明は、前記式で示される数値αがα≧80のアルファ化デンプン粉の新規な用途をも提案するものであり、その一実施形態によれば、該アルファ化デンプン粉を主成分とするプラスチック添加剤であり、他の実施形態によれば、該アルファ化デンプン粉を生分解性樹脂に添加したコンポジット材料であり、さらに他の実施形態によれば、該アルファ化デンプン粉をポリ乳酸樹脂に添加したコンポジット材料である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来では存在しなかった高い程度までアルファ化されたデンプン粉が提供される。このように高い程度までアルファ化されたデンプン粉は、従来から知られている食品分野への用途のみならず、PLA(ポリ乳酸樹脂)などの生分解性樹脂への添加剤としての有用性が期待され、さらにはその他広い分野において新規用途が見込まれる。
【0018】
また、本発明によれば、米粉などの原料穀物を剪断粉砕してアルファ化させる方法において、その製造条件をコントロールすることにより、きわめて高い程度にまでアルファ化されたデンプン粉を得ることができ、またアルファ化の程度を様々にコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明方法を実施するための装置構成の一例を示す概略図(上が上面図、下が側面図)である。
【図2】この装置の要部断面図である。
【図3】実施例1においてギャップを変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図4】同米粉の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例2において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図6】実施例2において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図7】実施例2において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図8】実施例2において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図9】実施例2において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図10】実施例2において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図11】実施例2において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図12】実施例2において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図13】実施例2において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図14】実施例2において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図15】実施例2において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図16】実施例2において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.01mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図17】実施例3において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図18】実施例3において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図19】実施例3において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図20】実施例3において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の広角X線回析グラフである。
【図21】実施例3において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図22】実施例3において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図23】実施例3において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図24】実施例3において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉の示差走査熱量測定グラフである。
【図25】実施例2において水分含有量4.44%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図26】実施例2において水分含有量10.89%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図27】実施例2において水分含有量12.73%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図28】実施例2において水分含有量17.57%の米粒を原料にしてギャップ0.035mmで温度条件を変えて製粉処理して得られた米粉についてアルファ化の程度を示す数値を算出して示すグラフである。
【図29】デンプン粉試料についてアルファ化の程度を示す数値を算出する手法を説明する説明図である。
【図30】上記アルファ化の程度を示す数値を算出するに当たり標準試料として用いる気流粉砕生米粉(ベータ米粉)の広角X線回析グラフである。
【図31】同気流粉砕生米粉(ベータ米粉)の示差走査熱量測定グラフである。
【図32】本発明による完全アルファ化米粉をPLA(ポリ乳酸樹脂)に添加した場合の機械的物性(引張強度)を、市販アルファ化米粉を添加した場合、生米粉(ベータ米粉)を添加した場合およびPLA単体の場合と比較して示すグラフである。
【図33】本発明による完全アルファ化米粉をPLA(ポリ乳酸樹脂)に添加した場合の分散性を、市販アルファ化米を添加した場合、生米粉(ベータ米粉)を添加した場合およびPLA単体の場合と比較して示す写真図である。
【図34】本発明による完全アルファ化米粉の糖化特性を市販アルファ化米および生米粉(ベータ米粉)と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明方法を実施するための装置構成の一例を示す概略図である。この装置10は、固定設置される上臼11と、この上臼11との間に所定のギャップ13を介して回転可能に設けられる下臼12とを有する。上臼11は中心に米粒などの原料穀物を投入する原料投入口14を有してリング状に形成されている。投入口14は、上臼11の底面においてギャップ13に通じている。下臼12は上臼11と略同一外径を有する円盤形状に形成されている。
【0021】
下臼12はモータ15により所定速度で回転駆動される。上臼11と下臼12との間のギャップ13はギャップ調整部16の範囲内で調整可能であり、原料とされる穀粒や処理後に得るべき所望の穀粉の大きさなどに応じて0.5〜0.01mm、特に0.1〜0.01mm程度の範囲内で任意に調整される。
【0022】
上臼11にはヒータ17が設けられる。ヒータ17は上臼11と略同一の外径寸法を有すると共に原料投入口14と略同径の開口を有するリング状に形成されている。ヒータ17は、ヒータコード18を介して温度コントローラ19に接続されており、温度コントローラ19により設定された温度に加熱されることにより、上臼11を全面加熱する。コンピュータ22は、温度コントローラ19による設定温度(データケーブル23から入力)と、熱電対(図示せず)による測定温度(データケーブル21から入力)とを比較して、温度制御ケーブル24を介してヒータ制御信号を温度コントローラ19に与える。
【0023】
また、コンピュータ22はモータ制御ケーブル25を介してモータ制御信号をモータ15に与えて、モータ15による下臼12の回転数を制御する。下臼11の回転数は、ギャップ13に投入された穀粒が固定の上臼11と回転する下臼12との間で受ける剪断速度が90〜600sec−1、好ましくは280〜600sec−1となるように設定されることが好ましい。
【0024】
上臼11/下臼12の下方にはこれらの外径より十分に大きな内径を有する受け皿26が設けられる。受け皿26の底面には穀粉落下口27が開口しており、この装置10による処理後の穀粉(米粉など)を受け皿26から落下させ、さらに穀粉落下シュート28を経て所定の容器(図示せず)などに収容させるようにしている。
【0025】
装置10の要部断面図である図2に示されるように、上臼11は、原料投入口14に臨む内面11aから底面11bに至る原料通路11cが断面視においてテーパー状、平面視においては螺旋状に形成されている。原料投入口14の下端部には、テーパー状通路11cによって拡大化された収容部29が形成されているので、原料投入口14に投入された原料穀物はギャップ13に入り込んで剪断粉砕される直前にこの収容部29に入り込み、ヒータ17により加熱された上臼11の内面11aからの伝熱ないし放熱によって加熱される。前述の熱電対は、上臼11の側面から中心に向けて形成した穴に挿入され、上臼11と下臼12の間のギャップ13で剪断粉砕されているときの処理温度を近似的に示している。上臼11および下臼12の各ギャップ13に臨む面には、原料穀物に対する剪断力を増大させるために円周方向と交わる方向に延長する多数条の凹溝が形成されている。
【0026】
次いで、この装置10を用いて行うアルファ化製粉処理について説明する。まず、ギャップ調整部16を介して上臼11と下臼12との間のギャップ13を、原料穀粒や処理後の穀粉の大きさなどに応じて0.5〜0.01mm、特に0.1〜0.01mm程度の範囲内で任意に調整する。また、温度コントローラ19によりヒータ17を所定温度(たとえば80〜140℃の範囲内で10℃刻みで設定可能)に加熱し、その熱伝導によって上臼11を加熱する。また、コンピュータ22によって制御された回転数でモータ15が駆動され、前記所定の剪断速度を与えるように下臼12を回転させる。
【0027】
以上で装置10の準備が完了するので、原料穀粒を投入口14に投入して処理を開始する。ヒータ17は既に所定温度に加熱されており、これによって上臼11も加熱されているので、穀粒はヒータ17および投入口14を通過し、さらにテーパー状通路11cないし収容部29を通過する間に該ヒータ温度に対応した温度に加熱され、その直後に、下臼12との間のギャップ13に送り込まれ、固定の上臼11と回転する下臼12との間で剪断力を受けて粉砕される。剪断粉砕によって得られた穀粉(米粉)はギャップ13の側方から放出されて受け皿26に収容され、落下口27および落下シュート28を経て所定の容器(図示せず)に回収される。
【実施例1】
【0028】
一般の貯蔵米として標準的である14.4%の水分含有量の米粒を原料として、図1および図2に示される構成の装置10を用いて実際に製粉処理を行った。使用した装置10において、上臼11、下臼12およびヒータ17はいずれも外径寸法が50mm(半径25mm)であり、その中心に口径10mmの投入口14を有する。上臼11のテーパー状原料通路11cは内面11aから5mmの範囲に亘って形成されている(図2)。臼間のギャップ13は0.01mm、0.02mm、0.03mm、0.07mm、0.11mm、0.15mmおよび0.51mmの7通りに変え、同一の粉砕温度(前述の熱電対による測定温度。以下の実施例においても同じ)120℃で製粉処理した。
【0029】
この製粉処理の結果を図3(広角X線回析グラフ)および図4(示差走査熱量測定グラフ)に示す。これらのグラフから、粉砕処理を120℃と十分な加熱温度条件の下で行っても、ギャップ13を0.03mm以上とすると、広角X線回析において明らかにシャープなピークが残り(図3)、また示差走査熱量測定においても大きな吸熱エンタルピーが認められる(図4)ので、アルファ化が十分でないことが分かる。ギャップが0.02mmの場合はやや不十分ではあるがアルファ化が相当程度進行しているものと認められ、ギャップが0.01mmになるとほぼ完全にアルファ化した状態になっている。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同じ構成の装置10を用いたが、この実施例では、臼間のギャップ13を0.01mm(10μm)に固定して、粉砕温度を15℃(ヒータ17を作動させない室温条件)、80℃、100℃および120℃の4通り、原料穀物としての米粒の含水量を4.44%、10.89%、12.73%および17.57%(新米)の4通りにして、各組合条件の下で実際の製粉処理を行った。
【0031】
この製粉処理の結果を図5〜図8(広角X線回析グラフ)および図9〜図12(示差走査熱量測定グラフ)に示す。これらのグラフから、臼間ギャップ13を0.01mmと小さくした場合は、原料の米粒の含水率を問わず、80℃以上の温度条件で粉砕処理することにより十分にアルファ化できることが分かった。
【0032】
ところで、穀物に含まれるデンプン粒の内部においては、デンプン分子間の水素結合によりデンプン分子同士が規則的に配列して一種の結晶となっているのに対し、デンプンのアルファ化とは、当該水素結合に起因する規則性が崩れた(非晶化した)状態を意味し、従来は主として広角X線回析でアルファ化の程度を判断していた。すなわち、広角X線回析においてシャープなピークが消えた状態になればなるほどアルファ化が進行しており、シャープなピークが残っている状態はアルファ化が不十分であると考えることができるが、より明確に判断するには示差走査熱量測定(以下「DSC測定」)によりデンプン穀物と水との存在下での糊化(アルファ化)時に吸収される熱量を測定する手法を併用することが有用である。広角X線回析においてピークが消えているように見えても、DSC測定によると吸熱が生じている場合があり、DSC測定のほうが構造に敏感であり、アルファ化の程度をより高精度に把握することができる。しかしながら、デンプンのアルファ化の程度を数値化する試みは従来ほとんど行われていなかった。本発明者らは、DSC測定の結果からアルファ化の程度を数値化することを試みた。上記のように、DSC測定によればデンプンが融解するときの吸熱量をアルファ化の程度と相関性を持つものとして用いることができるので、この実施例では、温度(横軸)を徐々に上げていって吸熱が生じたときの熱量(縦軸)を測定した(図9〜図12)。米粉デンプンの融解温度は約62度である(図4からも明らか)から、この融解温度での吸熱にかかる仕事量のエンタルピーを△H(J/g)で示している。この吸熱エンタルピーが小さいほど結晶の割合が小さい、すなわち非晶化=アルファ化の程度が大きいことを意味し、「No Peak」は吸熱が全く認められないことから完全に非晶化=アルファ化していることを意味している。
【0033】
この原理を応用すれば、DSC測定の結果に基づいて、デンプン粉のアルファ化の程度を絶対的指標として数値化することが可能となる。すなわち、図29に示すように、実質的に全くアルファ化していない試料、すなわち生米(ベータ米)を標準試料としてその融解温度における吸熱エンタルピー(△Hmax)をあらかじめ測定しておき、これに対する測定対象試料の同融解温度における吸熱エンタルピー(△H)を測定すれば、該試料のアルファ化の程度を次式から算出することができる。測定対象試料の吸熱エンタルピー(△H)が標準試料の吸熱エンタルピー(△Hmax)に比べて小さくなるほど算出数値(α)は高くなり、高い程度までアルファ化されていることを示す。「No Peak」の場合は吸熱エンタルピーがゼロ、すなわち△H=0となるのでα=100となり、完全にアルファ化されていることを示す。
α=(1−△H/△Hmax)×100
【0034】
なお、標準試料としては、平成18年度山形庄内産の「はえぬき」を、Micro Powtec Corporation製のエアータグミル微粉砕機MP5−500で気流粉砕したものを用いた。この生米粉の広角X線回析およびDSC測定の結果を各々グラフにして図30および図31に示す。図31のグラフに記入したように、この生米粉の融解温度(約62度)における吸熱エンタルピー(△Hmax)は7.4(J/g)であった。
【0035】
図9〜図12に示すDSC測定結果に基づいて上記式からアルファ化の程度を示す数値αを算出して図13〜図16に示す。これらのグラフからも、臼間ギャップ13を0.01mmと小さくした場合は、原料の米粒の含水率を問わず、80℃以上の温度条件で粉砕処理することにより十分にアルファ化できることが分かり、アルファ化の程度を示す数値がほぼα≧80となることが分かった。
【0036】
なお、既述したように、炊飯後に除水して製粉する既存製法によると、炊飯によって一旦ほぼ完全に非晶化してもその後の除水の過程で老化により再結晶化し、DSCにおける吸熱が生ずることが既に多くの論文などで明らかにされている。その幾つかを下記に例示する。したがって、この既存製法で得られる市販のアルファ化米粉の数値αは80未満に低下しているものと考えられる。
(1)Fumio Nakazawa, Shun Noguchi, Junko Takahashi and Masako Takada; Gelatinization and Retrogradation of Rice Starch Studied by Differential Scanning Calorimetry; Agric. Biol. Chem.; 48(1), 201-203(1984)
(2)Takayuki Umemoto, Tetsuya Horibata, Noriaki Aoki, Mayu Hiratsuka, Masahiro Yano and Naoyoshi Inouchi; Effects of Variation in Starch Synthase on Starch Properties and Eating Quality of Rice; Plant Prod. Sci., 11(4), 472-480(2008) 米澱粉
(3)Jeong-Ok Kim, Wan-Soo Kim and Mal-Shick Shin, Kwangju (Korea); A Comparative Study on Retrogradation of Rice Starch Gels by DSC, X-Ray and α-Amylase Methods; Starch/Starke. 49, 71-75(1997) 米澱粉
(4)「でん粉製品の知識」、高橋豊治、幸書房、1996
【実施例3】
【0037】
実施例1と同じ構成の装置10を用いたが、この実施例では、臼間のギャップ13を0.035mm(35μm)に固定して、粉砕温度を15℃(ヒータ17を作動させない室温条件)、80℃、100℃および120℃の4通り、原料穀物としての米粒の含水量を4.44%、10.89%、12.73%および17.57%(新米)の4通りにして、各組合条件の下で実際の製粉処理を行った。
【0038】
この製粉処理の結果を図17〜図20(広角X線回析グラフ)、図21〜図24(示差走査熱量測定グラフ)に示す。また、実施例2と同様にして、図21〜図24に示すDSC測定結果に基づいて前記式からアルファ化の程度を示す数値αを算出して図25〜図28に示す。これらのグラフから、臼間ギャップ13を0.35mmと小さくした場合は十分にアルファ化を進行させることがきわめて厳しくなるが、高含水率17.57%の原料米粒を用いたときには、80℃以上の温度条件で粉砕処理することにより完全にアルファ化した(α=100)米粉を得ることができた。
【実施例4】
【0039】
この実施例では、本発明によって得られた完全アルファ化米粉(α=100)を、生分解性樹脂としての優位性が認められているPLA(ポリ乳酸樹脂)に添加したときの分散性と機械的物性を評価した。図32は、本発明による完全アルファ化米粉をPLAに添加した場合、従来法により炊飯後除水し製粉して得られたアルファ化米(以下「市販アルファ化米粉」と言う。)を添加した場合、生米粉(ベータ米粉)を添加した場合および無添加(PLA単体)の場合の各々について、一軸引張試験を行って破断時の応力(破断応力)を測定した結果を示すグラフである。縦軸は破断応力を示し、横軸は試験体を示す。米粉の添加に際してはいずれも水を加えずに単にPLAと米粉とを混合することによってPLA/米粉コンポジット材料を得た。
【0040】
また、米自身の強度はPLAに比べて著しく低いため強度に貢献しないと考えられるので、米粉を添加したPLA/米粉コンポジット材料の場合の一軸引張試験においては、測定結果の生データを以下のようにして換算した。すなわち、PLA単体の場合の応力σPLAはσPLA=F/A(Aは断面積、FはPLAの張力)で算出される。PLA/米粉コンポジット材料の応力σCOMは、例として配合比50:50の場合をとると、50%米粉添加のコンポジット材料においてPLAが断面積に占める割合はA/2と仮定できるので、張力をFとすると、σCOM=F/(A/2)=2×F/Aとなるが、このコンポジット材料についての測定生データはF/Aの値であるから、PLA換算した場合、換算後の該コンポジット材料の応力σCOM(換算)はσCOM(換算)=2×測定値となる。米粉の添加量が10%および25%の場合も上記と同様にして換算した。
【0041】
図32に示す結果から、アルファ化の程度が低い市販アルファ化米粉やアルファ化していないベータ米粉を添加した場合は10%添加および25%添加のいずれにおいてもPLA単体の場合より引張強度が低下したのに対して、本発明による完全アルファ化米粉を添加した場合は10%添加および25%添加のいずれにおいても引張強度が向上し、添加量を50%に上げた場合にはさらに顕著な引張強度向上効果が得られることが確認された。この結果は、アルファ化度がきわめて大きい米粉がPLAに対してきわめて高い相溶性を有することに起因しているものと考えられる。
【0042】
図33は、この実施例で用いた各PLA/米粉コンポジット材料について米粉の分散性を確認するために写真撮影した結果を示しており、アルファ化の程度が低い市販アルファ化米粉やアルファ化していないベータ米粉を添加した場合には分散性が悪いのに対し、本発明による完全アルファ化米粉を添加した場合は10%添加および25%添加のいずれにおいてもPLAに対して高い分散性を有し、水を加える必要なしにPLAに添加することが可能であることが確認された。この結果は、PLA分子中にはカルボン酸が存在しているため、デンプンが完全に非晶化(アルファ化)しているとPLAとデンプン中のOH基(水酸基)との間の水素結合による高い相溶性が発揮されるためであると考えられる。すなわち、完全アルファ化米粉がきわめて高い相溶性ないし分散性を有することが、PLAに添加したときの機械的物性向上に大きく貢献しているものと考えられる。
【実施例5】
【0043】
この実施例では、本発明によって得られた完全アルファ化米粉が、エタノール生産時に重要な特性である酵素によるグルコースへの酵素反応(糖化)性に優れることを確認するための試験を行った。比較対象には、実施例4と同様の市販アルファ化米粉および生米粉(ベータ米粉)に、さらに90℃に加熱炊飯し、撹拌速度140rpmで1時間撹拌した後50℃に冷却して得たベータ米粉を追加して用いた。これらの米粉を糖化させ、得られた糖化物のグルコース濃度を測定した。実験条件は次の通りである。
(1)試料となる各米粉15gに純水60mlを加えたものと基質溶液とした。
(2)この基質溶液に酵素(ユニアーゼBM−8)を2.25mg添加し、反応開始とした。反応は還流管・ガラス栓を備えた200ml三口フラスコを用い、温度50℃および撹拌速度140rpmの条件で行った。
(3)1時間後、別の酵素(ユニアーゼ30)を9mg添加し、反応条件を温度60℃に変えて反応を続けた。
(4)定時(0.5,1,2,3,6,12,24h後)に反応液をサンプルチューブに取り、4000rpmで10分間遠心固液分離した。
(5)液画分100μlを5mlメスフラスコで50倍に希釈した。
(6)希釈した溶液の糖濃度をグルコースキットを用いて測定した。
【0044】
図34に示される結果から、本発明による完全アルファ化米粉が他の試料に比べて著しく高い糖化特性を示すことが確認された。このことは、たとえばエタノール製造時の原料として本発明による完全アルファ化米粉を用いることにより高い収率でエタノールが得られることを示唆している。
【実施例6】
【0045】
図1および図2に示す装置は本発明方法を実施するために使用し得る一例にすぎず、本発明方法を実施することができるものであれば他のいかなる装置を使用しても良い。たとえば、原料穀物に剪断力を与えて粉砕するための装置としては、実施例で使用した図示の臼装置のほか、相対的に回転する2つのローラの間の微小ギャップに原料穀物を通過させる間に剪断粉砕する装置構成や、小径の円筒形または円柱形部材と大径の円筒形部材とを同心に配置させて相対回転させ、小径部材の外側と大径部材の内側との間の微小ギャップに原料穀物を通過させる間に剪断粉砕する装置構成などを採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、高度にアルファ化されたデンプン粉を無加水で、効率的に、短時間で、且つ低コストで製造するための新規技術として有用である。ここでいうアルファ化デンプン粉は、デンプンが主成分である穀物類、たとえば米、小麦、大豆、小豆、そば、芋類、豆類、とうもろこし類などのすべてを対象としており、本発明により簡便且つ短時間でこれらをアルファ化製粉することができる。したがって、従来は煮るなどの前工程が必要であった加工、たとえば小豆からの飴、芋類からのマッシュポテトなどの加工処理が冷水の加水のみで可能となり、煮るなどの工程を省いて製造可能となる。
【0047】
高度にアルファ化されたデンプン粉は、従来の食品分野への用途だけでなく、様々な分野への用途が期待される。たとえば、PLAなどのプラスチックに対しても良好な分散性や相溶性を発揮するので、水やグリセリンなどの可塑剤を使用する必要を無くすだけでなく、機械的物性を向上させる効果も得られることから、プラスチック添加剤としても有効である。
【0048】
さらに、本発明によれば粉砕条件を任意に選択することで、様々なアルファ化度のアルファ化デンプン粉を製造することができるため、冷水に対する膨潤性の異なる穀物類を製造することができる。すなわち、様々な生地粘度を有する穀物粉を任意に作成可能である。このことは、たとえば米粉100%パンなど従来は生地に粘りが乏しく製パンが実際上不可能であると考えられてきたものや、100%蕎麦における「つなぎ」などについても、本発明により得られるアルファ化デンプン粉を粘度調整剤として応用することが可能となる。
【0049】
さらに、本発明によれば簡単且つ瞬時にデンプンをアルファ化することができることから、煮るという前工程が必要とされていたすべての加工処理についてその必要をなくすことができ、きわめて広い応用範囲を有する。たとえば、工業材料としての用途として、生分解性樹脂の原料である乳酸を合成する際のデンプンの糖化、プラスチック/デンプンのコンポジット材料などにおいて、本発明から得られるアルファ化デンプン粉を用いれば、該前工程が不要となり、従来技術が必要としていた炊飯などのアルファ化工程を省略することができるため、コスト面や工程面においてメリットが大きい。その他、酒造過程における発酵、味噌製造時の麹発酵などの際に、従来はデンプンが主原料である穀物類、たとえばとうもろこし、米、小麦粉などを煮る(炊飯)という前工程を必ず要していたが、本発明によって得られるアルファ化デンプンを用いれば、該前工程が不要となり、同様にコスト面や工程面において多大な優位性がある。
【0050】
このように、本発明で得られるアルファ化デンプン粉は、食品としての応用はもちろんのこと、工業材料としての応用性も幅広く期待できるものであって、本発明は幅広い産業分野において著しく高い利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0051】
10 製粉装置
11 上臼
11a 内面
11b 底面
11c テーパー状原料通路
12 下臼
13 ギャップ
14 原料投入口
15 モータ
16 ギャップ調整部
17 ヒータ
18 ヒータコード
19 温度コントローラ
21 データケーブル
22 コンピュータ
23 データケーブル
24 温度制御ケーブル
25 モータ制御ケーブル
26 受け皿
27 穀粉落下口
28 穀粉落下シュート
29 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmaxとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αが80以上となるような同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hを持つことを特徴とするアルファ化デンプン粉。
【請求項2】
相対的に移動する2部材間のギャップを0.02mm未満にして原料穀物を該ギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することを特徴とする請求項1記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項3】
相対的に移動する2部材間のギャップを0.01mm以下にして原料穀物を該ギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することを特徴とする請求項1記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項4】
相対的に移動する2部材間のギャップを0.02mm未満にして原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とする請求項1記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項5】
相対的に移動する2部材間のギャップを0.04mm未満にして含水率15%以上の原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とする請求項1記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項6】
相対的に移動する2部材間のギャップを0.01mm以下にして含水率12%以上の原料穀物を該ギャップに投入して80℃以上の温度で剪断力を与えて粉砕することを特徴とする請求項1記載のアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項7】
原料穀物を相対的に移動する2部材間のギャップに投入して剪断力を与えて粉砕することによりアルファ化デンプン粉を製造する方法において、ギャップの大きさ、剪断粉砕時の温度および原料穀物の含水率の3条件を組み合わせて設定することにより、示差走査熱量測定においてアルファ化していない標準試料の融解に伴う吸熱エンタルピーを△Hmax、製造されるアルファ化デンプンの同融解温度時の吸熱エンタルピー△Hとしたときにα=(1−△H/△Hmax)×100で示される数値αを制御することを特徴とするアルファ化デンプン粉の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載のアルファ化デンプン粉を主成分とするプラスチック添加剤。
【請求項9】
請求項1記載のアルファ化デンプン粉を生分解性樹脂に添加したコンポジット材料。
【請求項10】
請求項1記載のアルファ化デンプン粉をポリ乳酸樹脂に添加したコンポジット材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−215861(P2010−215861A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66939(P2009−66939)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年11月21日に日本応用糖質科学会中国・四国支部主催の平成20年度日本応用糖質科学会中国・四国支部シンポジウムにて発表
【出願人】(508046362)
【Fターム(参考)】