説明

アルミニウムスピネルからなるナノ粒子を製造する方法及びその使用

本発明はアルミニウムスピネルからなるナノ粒子の製造方法に関する。該方法は、アルミニウムクロロハイドレートの水溶液と金属塩とを混合し、但し、前記金属の酸化物は酸化アルミニウムとスピネル格子を形成することができるものであり、続いて乾燥し、30分未満の時間内でか焼し、そしてそうして得られる凝集物を細化することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムスピネルからなるナノ粒子を製造する方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムスピネルは鉱物性材料として天然に産するものであり、そのナノ結晶形態での製造並びに数多くの分野でのそれの使用は既に開示されている。最も知られた代表的なものには、亜鉛尖晶石として知られる亜鉛スピネルZnAl、及びマグネシウムスピネルMgAlが挙げられる。アルミニウムスピネルは、セラミックの原料として(非特許文献1)、また酸化触媒として(非特許文献2)、さらには顔料として(非特許文献3)用いられている。更に、亜鉛スピネルは、バンドギャップを有しているため、LED及びディスプレイにおいて要求されるような、電気ルミネセンス用途のための材料として適した重要な光学的性質を示す(非特許文献4)。
【0003】
ナノ粒子状亜鉛スピネルの製造はすでに文献(非特許文献5)中で開示されている。該製造方法では、特殊なアルミニウムアルコラートAl(OOPr)及びZn(NO6HOが前駆体として使用され、450℃〜900℃の温度でか焼される。非特許文献6では、尿素の添加の下に硝酸アルミニウムと硝酸亜鉛から開始し、この混合物を次いで350〜450℃でか焼する。さらに銅、マンガン、及び亜鉛のアルミナートの更に別の合成経路が非特許文献7に開示されている。この方法は、金属アセテート、硝酸アルミニウム、及び燃料(例えばヘキサメチルテトラミン、尿素、カルボヒドラジド、及びグリシン)から開始する。混合物はマッフル炉内で、500℃で転化される。
【0004】
公知の従来技術による方法の不利点は、高価な原料化合物が使用されるか、又は工程に基づく時間当たりの収量が少ないということである。そのため公知方法は、工業規模でアルミニウムスピネルを経済的に製造するには適していない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S. K. Sampath, J. F. Cordano, J. Am. Ceram. Soc. 81, 649 (1998年)
【非特許文献2】T. Ohgushi, S. Umeno, Bull. Chem.Soc. Jpn. 60 (1987年) 4457
【非特許文献3】E. DeBie, P. Doyen, Cobalt 15 (1962年) 3
【非特許文献4】Hiroaki Matsui, Chao-Nan Xu, Yun Liu, Hiroshi Tateyama, Physical Review B 69, 235109 (2004年)
【非特許文献5】J. of Sol-Gel Science and Technology, 35, p. 221-24, 2005年
【非特許文献6】J. of Alloys and Compounds, 394 (2005年), 255-258
【非特許文献7】J. of Alloys and Compounds, 315 (2001年), 123 -128
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、僅かなエネルギー供給において短時間で高い収量を与える、ナノ結晶性アルミニウムスピネルを製造する方法を提供することである。その際に製造された製品は、簡単な手段で再分散が可能であるべきであり、それにより、安定なナノ懸濁液を提供することができる。この課題は、以下に説明する方法によって解決された。その特別な特徴とは、30分未満のか焼で十分であるということである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の対象は、アルミニウムスピネルからなるナノ粒子を製造する方法であって、アルミニウムクロロハイドレートの水溶液を金属塩と混合し、この際、その金属の酸化物は酸化アルミニウムと共にスピネル格子を形成可能なものであり、続いて乾燥し、30分間より短い時間内でか焼し、そうして得られた凝集物を細化する、上記方法である。
【0008】
本発明方法の出発点はアルミニウムクロロハイドレートであり、これには式Al(OH)Cl(式中、xは2.5〜5.5の数を示し、yは3.5〜0.5の数を示し、xとyの合計は常に6である)が与えられる。この際、好ましくは、商業的に入手できるような、アルミニウムクロロハイドレートの50%濃度水溶液から開始する。
酸化アルミニウムとスピネル格子を形成できる金属の塩をこの溶液に添加する。この種の金属塩として可能なものとは全て二価の金属塩であり、例えば、コバルト、亜鉛、マンガン、銅、鉄、マグネシウム、カドミウム、ニッケルの二価塩である。スピネルは総合式Mal(式中、Mは二価の金属を示す)を有する。この総合式は、本発明によりアルミニウムクロロハイドレートの溶液に添加しなければならない金属塩の量を自動的に示している。スピネル格子は欠陥も含み得るため、Alマトリックスに基づく金属Mの量または金属塩の量もまた、化学量論的に計算した値から逸脱する可能性がある。一般的に、Alマトリックスに基づく金属塩の量は30〜80mol%であり、特に、50mol%である。
【0009】
好ましくは、この溶液はさらに結晶核とも混合され、スピネル格子の形成が促進する。特に、そのような核は、後続の熱処理の際にスピネル格子の形成温度を低下させる。可能な核としては、0.1μmより小さい平均粒径を有する非常に微細に分散したスピネル、例えば亜鉛スピネルが挙げられる。一般的には、形成するスピネルに基づいて2〜3重量%の核で十分である。
【0010】
アルミニウムクロロハイドレートと金属塩、並びに場合によっては結晶核からなる懸濁液は、次いで、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、粒状化などによって、又はローラードライヤー(Walzentrockner)によって蒸発乾固し、熱処理(か焼)に供する。このか焼は、例えば、トンネルキルン、箱型炉、管状炉(Rohrofen)、またはマイクロウェイブオーブン、あるいは流動層式反応器などの、この目的に適した装置中で行われる。短い滞留時間で高い処理量を可能にする回転式管状炉が特に適している。本発明の方法の一形態では、アルミニウムクロロハイドレート及び金属塩からなる水性懸濁液を、水を予め除去せずに、直接、か焼装置中に噴射することができる。
【0011】
か焼のための温度は1100℃を超えるべきではない。温度の下限は、アルミニウムスピネルの所望の収量と、所望の残存塩素含量に依存する。スピネルの種類に応じて、スピネルの形成は約400℃ですでに開始するが、塩素含量を低く、かつ、スピネルの収量を高く保つためには、幾らかより高い温度が用いられる。亜鉛スピネルについては、例えば、好ましい温度は約850℃である。
【0012】
か焼時間は、一般的には30分未満であるが、スピネルの種類に応じて数分の場合もある。
【0013】
か焼により、ほぼ球形の一次結晶の形態でアルミニウムスピネルの凝集物が生じ、その場合、“ナノ−”の概念下での粒径とは一般に1〜100nmであると解される。これらの凝集物は後続の工程で脱凝集化され、その際、この場合にはその凝集物は比較的簡単に破壊可能で柔らかいため、セラミック業界において既知の脱凝集化法の全て、例えば、粉砕や超音波エネルギーの導入などを採用することができる。脱凝集化は、好ましくは20〜100℃、特に好ましくは20〜90℃の温度で行われる。脱凝集には、好ましくは、湿式または乾式粉砕(ミリング)が使用され、この際、湿式粉砕は、アトライターミル(Attritormuehle)や撹拌ボールミル中で行うのが好ましく、他方、乾式粉砕は空気ジェットミルで行われる。粉砕時の目的生成物であるナノ粒子は非常に反応性が高いため、粉砕前か粉砕中に、ナノ粒子が再び凝集するのを防ぐ添加剤を加えるのが好ましい。そのため、湿式粉砕の形態で後続の脱凝集化を行うことが特に有利である。湿式粉砕には、振動ミル、アトライターミル、ボールミル、撹拌ボールミル、または類似の装置が適している。撹拌ボールミルの使用がこの場合特に有利であることが見出された。粉砕時間は凝集物の硬さと所望の微細さに依存し、本発明の方法では、通常、2〜6時間である。湿式粉砕又は脱凝集化は水性媒体中で行うのが有利であるが、アルコール系溶剤やその他の有機溶剤も使用することができる。例えば水中での6時間の粉砕後、d90値が約30nmのナノ結晶性アルミニウムスピネルの水性懸濁液が得られる。湿式粉砕によって得られた懸濁液は、噴霧乾燥、流動床乾燥、粒状化、または凍結乾燥により、所定の粉末に変えることができる。
【0014】
ここで、さらに可能なことは、ナノスピネルの表面を改質して、それにより有機溶剤及びコーティング組成物との適合性を得ることである。
【0015】
本発明においてナノ粒子の表面をコーティング剤、例えばシランやシロキサンなどで改質するためには、二つの方法がある。第一の好ましい方法として、コーティング剤の存在下で脱凝集化を行うことができ、例として、粉砕機中での粉砕中にコーティング剤が加えられる。第二の方法では、最初にナノ粒子の凝集物を破壊し、次いでナノ粒子、特に、溶剤中の懸濁液の形態のナノ粒子を、コーティング剤で処理する。
【0016】
脱凝集化のための溶剤としては、上述したように、水だけではなく、慣用の溶剤、例えば塗料業界において利用されている慣用の溶剤、例えばC〜Cアルコール、特にメタノール、エタノール、またはイソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ブチルアセテートなどが用いられる。脱凝集化を水中で行う場合には、生じるナノ粒子を水性懸濁液中で安定化させるために、無機酸または有機酸、例えば、HCl、HNO、ギ酸、または酢酸を加えるのがよい。その酸の量は、混合酸化物に基づいて0.1〜5重量%であることができる。次いで、好ましくは、20nm未満の粒径を有する粒子画分を、遠心分離によりこの酸改質ナノ粒子の水性懸濁液から分離する。続いて、高められた温度、例えば約100℃で、コーティング剤、好ましくはシランやシロキサンを添加する。そのように処理されたナノ粒子は沈殿し、分離され、そして例えば凍結乾燥などにより乾燥されて粉末とする。
【0017】
適当なコーティング剤は、この場合、シランやシロキサン、又はそれらの混合物が好ましい。
【0018】
更に、コーティング剤としては、混合酸化物の表面と物理的に結合できる(吸着)か、または化学的な結合の形成により混合酸化物粒子の表面と結合できる材料の全てが適している。混合酸化物粒子の表面が親水性でそして遊離水酸基が利用可能なため、コーティング剤としては、アルコール、アミノ官能基、ヒドロキシ官能基、カルボニル官能基、カルボキシル官能基もしくはメルカプト官能基を有する化合物、シランまたはシロキサンが挙げられる。そのようなコーティング剤の例としては、ポリビニルアルコール、モノカルボン酸、ジカルボン酸、及びトリカルボン酸、アミノ酸、アミン、ワックス、界面活性剤、ヒドロキシカルボン酸、オルガノシラン、及びオルガノシロキサンである。
【0019】
シランまたはシロキサンとしては、例えば、以下の式の化合物が挙げられる。
a) R [-Si (R'R'')-O-]n Si (R'R'')-R'''、または、
シクロ-[-Si (R'R'')-O-]r Si (R'R'')-O-
式中、R、R'、R''、R'''は、同じかまたは互いに異なり、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、又はフェニル基、又は6〜18個の炭素原子を有するアルキルフェニル基もしくはフェニルアルキル基、又は一般式-(CmH2m-O)p-CqH2q+1で表される基、又は一般式-CsH2sYで表される基、又は一般式-XZt-1で表される基であり、
nは、1≦n≦1000、好ましくは1≦n≦100の意味を有する整数であり、
mは、0 ≦ m ≦ 12の整数であり、
pは、0 ≦ p ≦ 60の整数であり、
qは、0 ≦ q ≦ 40の整数であり、
rは、2 ≦ r ≦ 10の整数であり、
sは、0 ≦ s ≦ 18の整数であり、
Yは、反応性基、例えばα,β−エチレン性不飽和基、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基又はアリル基、アミノ基、アミド基、ウレイド基、ヒドロキシ基、エポキシ基、イソシアナト基、メルカプト基、スルホニル基、ホスホニル基、トリアルコキシルシリル基、アルキルジアルコキシシリル基、ジアルキルモノアルコキシシリル基、無水物基及び/又はカルボキシル基、イミド基、イミノ基、スルフィット基、スルフェート基、スルホネート基、ホスフィン基、ホスフィット基、ホスフェート基、ホスホネート基であり、
Xは、t官能性のオリゴマーであって、tは2 ≦ t ≦ 8の整数であり、
Zは、再び、上述のように定義される以下の基である:
R [-Si (R'R'')-O-]n Si (R'R'')-R'''
又は、
シクロ-[-Si (R'R'')-O-]r Si (R'R'')-O-。
【0020】
ここで、t官能性のオリゴマーXは、好ましくは、
オリゴエーテル、オリゴエステル、オリゴアミド、オリゴウレタン、オリゴ尿素、オリゴオレフィン、オリゴハロゲン化ビニル、オリゴジハロゲン化ビニリデン、オリゴイミン、オリゴビニルアルコール、オリゴビニルアルコールのエステル、アセタールもしくはエーテル、無水マレイン酸のコオリゴマー、(メタ)アクリル酸のオリゴマー、(メタ)アクリル酸エステルのオリゴマー、(メタ)アクリル酸アミドのオリゴマー、(メタ)アクリル酸イミドのオリゴマー、(メタ)アクリル酸ニトリルのオリゴマーであり、特に好ましくは、オリゴエーテル、オリゴエステル、オリゴウレタンである。
【0021】
オリゴエーテルの残基の例は、-(CaH2a-O)b-CaH2a-またはO-(CaH2a-O)b-CaH2a-O(式中、2≦a≦12、かつ、1≦b≦60)のタイプの化合物であり、例えば、ジエチレングリコール−、トリエチレングリコール−、又はテトラエチレングリコール−残基、ジプロピレングリコール−、トリプロピレングリコール−、テトラプロピレングリコール−残基、ジブチレングリコール−、トリブチレングリコール−、又はテトラブチレングリコール−残基である。オリゴエステルの残基の例は、-CbH2b-(C(CO) CaH2a-(CO) O-CbH2b-)c-または-O-CbH2b-(C(CO) CaH2a-(CO) O-CbH2b-)c-O-(式中、a及びbは、異なるかまたは同一であり、3≦a≦12、3≦b≦12、1≦c≦30である)のタイプの化合物であり、例えば、ヘキサンジオールとアジピン酸からなるオリゴエステルである。
b) (RO)3Si(CH2)m-R'のタイプのオルガノシラン
R = アルキル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−、
m = 0.1〜20
R' = メチル−、フェニル、
-C4F9;OCF2-CHF-CF3、-C6F13、-O-CF2-CHF2
-NH2、-N3、SCN、-CH=CH2、-NH-CH2-CH2-NH2、
-N-(CH2-CH2-NH2)2
-OOC(CH3)C = CH2
-OCH2-CH(O)CH2
-NH-CO-N-CO-(CH2)5
-NH-COO-CH3、-NH-COO-CH2-CH3、-NH-(CH2)3Si(OR)3
-Sx-(CH2)3)Si(OR)3
-SH
-NR'R''R''' (R' = アルキル、フェニル、R'' = アルキル、フェニル、R''' = H、アルキル、フェニル、ベンジル、
C2H4NR''''(式中、R'''' = A、アルキル、R''''' = H、アルキル)。
【0022】
上記で定義するタイプのシランの例は、例えば次に挙げるものである:
以下の系列、すなわち
SinOn-1(CH3)2n+2
(式中、nは2≦n≦1000の範囲の整数である)
のヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、更に別の同族及び異性化合物、例えば、ポリジメチルシロキサン200(登録商標)フルイド(20cSt)(Polydimethylsiloxan 200(登録商標)fluid(20cSt));
以下の系列、すなわち
(Si-O)r(CH3)2r
(式中、rは3≦r≦12の範囲の整数である)
のヘキサメチル−シクロ−トリシロキサン、オクタメチル−シクロ−テトラシロキサン、更に別の同族および異性化合物;
以下の系列、すなわち
HO-[(Si-O)n(CH3)2n]-Si(CH3)2-OH、又は、
HO-[(Si-O)n(CH3)2n]-[Si-O)m(C6H5)2m]-Si(CH3)2-OH、
(式中、mは2≦m≦1000の範囲の整数である)
のジヒドロキシテトラメチルジシロキサン、ジヒドロキシヘキサメチルトリシロキサン、ジヒドロキシオクタメチルテトラシロキサン、更に別の同族および異性化合物、好ましいものは、α,ω−ジヒドロキシポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン(OH−末端基、90〜150cST)、又はポリジメチルシロキサン−co−ジフェニルシロキサン(ジヒドロキシ−末端基、60cST)である;
以下の系列、すなわち
H-[(Si-O)n(CH3)2n]-Si(CH3)2-H
(式中、nは2≦n≦1000の範囲の整数である)
のジヒドロヘキサメチルトリシロキサン、ジヒドロオクタメチルテトラシロキサン、更に別の同族並びに異性化合物、好ましいものは、α,ω−ジヒドロポリシロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン(水素化−末端基、Mn=580)である;
以下の系列、すなわち
HO-(CH2)u[(Si-O)n(CH3)2(CH2)u-OH
のジ(ヒドロキシプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、ジ(ヒドロキシプロピル)オクタメチルテトラシロキサン、更に別の同族並びに異性化合物、好ましいものは、α,ω−ジカルビノールポリシロキサン(式中、3≦u≦18、3≦n≦1000である)である; あるいは次の式
HO-(EO/PO)ν-(CH2)u[(Si-O)t(CH3)2t]-Si(CH3)2(CH2)u-(EO/PO) ν-OH
のホモポリマーもしくはコポリマーとしての、エチレンオキシド(EO)及びプロピレンオキシド(PO)に基づく前記の系列の物のポリエーテル変性誘導体、好ましいものは、α,ω−ジ(カルビノールポリエーテル)−ポリシロキサン(式中、3≦n≦1000、3≦u≦18、1≦v≦50)である。
【0023】
α,ω−OH基の代わりに、エポキシ基、イソシアナト基、ビニル基、アリル基、及びジ(メタ)アクリロイル基を有する対応する二官能性化合物、例えばビニル末端基を有するポリジメチルシロキサン(850〜1150cST)又はTEGORAD 2500(テゴ・ヒェミー・ゼルヴィス(Tego Chemie Service)社)も同様に使用し得る。
【0024】
さらに可能なのは、エトキシル化/プロポキシル化トリシロキサン及びより高級のシロキサンと、変性用の化合物としてのアクリル酸コポリマー及び/またはマレイン酸コポリマーとのエステル化生成物、例えば、Bykヒェミー(Byk Chemie)社のBYKシルクリーン(BYK Silclean)3700、又はテゴ・ヒェミー・ゼルヴィス・ゲー・エム・ベー・ハー(Tego Chemie Service GmbH)社のTEGO(登録商標)プロテクト(TEGO Protect)5001である。
【0025】
α,ω−OH基の代わりに、−NHR''''(式中、R''''はH又はアルキル)を有する対応する二官能性化合物、例えばポリシロキサン鎖上にランダムに分布した(シクロ)アルキルアミノ基又は(シクロ)アルキルイミノ基をポリマー鎖上に有する、ヴァッカー(Wacker)社、ダウ・コーニング(Dow Corning)社、バイエル(Bayer)社、ローディア(Rhodia)社などの一般的に知られたアミノシリコーンオイルも使用可能である。
c)(RO)3Si(CnH2n+1)及び(RO)3Si(CnH2n+1)のタイプのオルガノシラン:
式中、Rは、アルキル、例えばメチル、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル、ブチル−であり、
nは1〜20である。
R'x(RO)ySi(CnH2n+1)及び(RO)3Si(CnH2n+1)のタイプのオルガノシラン:
式中、Rは、アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、ブチル−であり、
R'は、アルキル、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、ブチル−であり、
R'は、シクロアルキルであり、
nは、1〜20の範囲の整数であり、
x+yは、3であり、
xは、1又は2であり、そして、
yは、1又は2である。
(RO)3Si(CH2)m-R'のタイプのオルガノシラン:
式中、
Rは、アルキル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−であり、
mは0.1〜20の範囲の数であり、
R'は、メチル−、フェニル、-C4F9; OCF2-CHF-CF3、-C6F13、-O-CF2-CHF2、-NH2、-N3、
-SCN、-CH=CH2、-NH-CH2-CH2-NH2、-N-(CH2-CH2-NH2)2、-OOC(CH3)C=CH2、
-OCH2-CH(O)CH2、-NH-CO-N-CO-(CH2)5、-NH-COO-CH3、
-NH-COO-CH2-CH3、
-NH-(CH2)3Si(OR)3、-Sx-(CH2)3)Si(OR)3、-SH-NR'R''R'''(式中、R'はアルキル、フェニル、R''は、アルキル、フェニル、R'''は、H、アルキル、フェニル、ベンジル、C2H4NR''''R'''''(式中、R''''はA、アルキルであり、R'''''は、H、アルキルである)である。
【0026】
好ましいシランは、以下にあげるシランである。
トリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)メチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)メチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)エチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)エチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)ペンチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)ペンチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)ヘキシルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)ヘキシルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)ブチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)ブチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)ヘプチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)ヘプチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)オクチルメタクリレート、3−(トリメトキシシリル)オクチルアクリレート、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、オリゴマー性テトラエトキシシラン(デグッサ(Degussa)社のDYNASIL(登録商標)40)、テトラ−n−プロポキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリアミノ官能性プロピルトリメトキシシラン(デグッサ(Degussa)社のDYNASYLAN(登録商標)TRIAMINO)、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン。
【0027】
コーティング剤、ここでは特にシラン又はシロキサンは、好ましくは、アルミニウムスピネルナノ粒子とシランとのモル比を1:1〜10:1として添加される。脱凝集化における溶剤の量は、アルミニウムスピネルナノ粒子と溶剤との合計量を基準にして一般的に50〜90重量%である。
【0028】
粉砕による脱凝集化及びそれと同時のコーティング剤での改質は、好ましくは20℃〜150℃の温度で、特に好ましくは20℃〜90℃の温度で行われる。
【0029】
脱凝集化を粉砕によって行う際は、続いて、懸濁液をミルビードから分離する。
【0030】
脱凝集化後、反応を完了させるために懸濁液を30時間までの期間、加熱することができる。続いて、溶剤を留去し、残った残留物を乾燥する。改質アルミニウムスピネルナノ粒子を溶剤中に入れたままにし、その分散液を、さらなる用途に使用することも有利であり得る。
【0031】
アルミニウムスピネルナノ粒子を適当な溶媒中に懸濁して、そして脱凝集化後に、更に別の工程においてコーティング剤と反応させることもまた可能である。本発明によって製造されたアルミニウムスピネルは、冒頭に記載したように、非常に多様な用途で用いることができる。亜鉛スピネルは、そのバンドギャップのために、コーティング剤中のUV吸収剤として適している。コーティング組成物中において、亜鉛スピネルはUV吸収性という利点と同時に、モース硬度が8ということから、増大された引っ掻き並びに磨耗耐性を提供する。
【0032】
その上、該ナノ構造化材料は、触媒材料としてや、発光ダイオード及びディスプレイなどのための半導体材料として用いることができる。
【0033】
コバルトスピネルは高温安定性の顔料としてすでに開示されている。本発明による製造方法を用いることにより、ナノ懸濁液を簡単かつ効率的に調製することができる。バインダー系及び調合物中に問題なく配合することができる。特に銅スピネルは、その大きな有効表面積のためにかつその銅イオンの故に、触媒作用材料として適している。
【実施例】
【0034】
実施例1
アルミニウムクロロハイドレートの50%濃度水溶液と塩化亜鉛とを、か焼後に酸化アルミニウムと酸化亜鉛との比が50:50になるよう混合した。この溶液を撹拌して均質にした後、回転蒸発器中で乾燥した。生じた固体のアルミニウムクロロハイドレート−塩化亜鉛混合物を乳鉢中で細化して粗い粉末を得た。
【0035】
この粉末を回転式管状炉中850℃でか焼した。高温域での接触時間は最大で5分であった。白色粉末が得られ、それの粒度分布は原料のそれに相当するものであった。
【0036】
X線構造分析は、それが亜鉛スピネルであることを示した。残留塩素含有量は100ppm未満であった。高解像度REM(走査電子顕微鏡)の像は、凝集した形態で存在する<10nmの結晶を示している。
【0037】
更に別の工程において、160gの水中に40gの該亜鉛スピネルを懸濁させた。この懸濁液を、ネツシュ(Netzsch)社の垂直式撹拌ボールミル(タイプPE075)中で脱凝集化した。使用したミルビードは(イットリウムで安定化した)酸化ジルコニウムからなるものであり、0.3mmの大きさを有するものであった。懸濁液のpH値を30分毎にチェックし、希硝酸を添加してpH4〜pH4.5に維持した。6時間後、該懸濁液をミルビードから分離し、ブルックハーフェン(Brookhaven)社の分析用ディスク遠心分離機を用いて粒径分布を特定した。55nmのd90であることがわかった。
【0038】
実施例2
アルミニウムクロロハイドレートの50%濃度水溶液と塩化コバルト(II)とを、か焼後の酸化アルミニウムと酸化コバルトの比が50:50になるように混合した。この溶液を攪拌して均質にした後、回転蒸発器中で乾燥した。生じた固体のアルミニウムクロロハイドレート−塩化コバルト(II)混合物を乳鉢中で細化して粗い粉末を得た。
【0039】
この粉末を回転管状炉中1000℃でか焼した。高温域での接触時間は最大で5分であった。濃青色の粉末が得られ、その粒度分布は原料のそれに相当するものであった。X線構造分析は、スピネル格子が存在することを示した。
【0040】
更に別の工程において、160gの水中に40gの該コバルトスピネルを懸濁させた。この懸濁液を、ネツシュ(Netzsch)社の垂直式撹拌ボールミル(タイプPE075)中で脱凝集化した。使用したミルビードは(イットリウムで安定化した)酸化ジルコニウムからなるものであり、0.3mmの大きさを有するものであった。懸濁液のpH値を30分毎にチェックし、希硝酸を添加してpH4〜pH4.5に維持した。6時間後、該懸濁液をミルビードから分離し、ブルックハーフェン(Brookhaven)社の分析用ディスク遠心分離機を用いて粒径分布を特定した。60nmのd90、34nmのd50、かつ15nmのd10であることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムスピネルからなるナノ粒子を製造する方法であって、アルミニウムクロロハイドレートの水溶液と金属塩とを混合し、但しこの際、前記金属の酸化物は酸化アルミニウムと共にスピネル格子を形成することができるものであり、続いて乾燥し、30分未満の時間内でか焼し、そしてこうして得られた凝集物を細化する、上記方法。
【請求項2】
前記アルミニウムクロロハイドレートとして、化学式Al(OH)Cl(式中、xは2.5〜5.5の数を示し、yは3.5〜0.5の数を示し、x+yの和が常に6である)を有する化合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スピネル格子を形成するための前記金属塩として、コバルト、亜鉛、マンガン、銅、鉄、マグネシウム、カドミウム、又はニッケルの塩を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Alマトリックスに基づいて30〜80重量%の金属塩を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記か焼が1100℃以下の温度で行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記アルミニウムクロロハイドレート及び金属塩からなる水性懸濁液を、予め水を除去することなく、直接、か焼装置中に噴霧することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記熱処理の際に形成する凝集物が、後続の段階において湿式粉砕又は乾式粉砕によって細化されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理の際に形成する凝集物が、後続の段階において、湿式粉砕によって細化され、該湿式粉砕時又はその後に、得られた懸濁液にアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ステアレート、又はワックスエマルジョンが添加されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理の際に形成する凝集物が、後続の段階において、湿式粉砕によって細化され、得られた懸濁液が噴霧乾燥、凍結乾燥又は粒状化に供されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記凝集物を脱凝集化すると同時に、前記ナノ顔料の表面を改質剤により、好ましくはシラン又はシロキサンにより該表面を変えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記凝集物が撹拌ボールミル中での粉砕よって脱凝集化されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項12】
前記凝集物が、20〜90℃における粉砕又は超音波作用によって脱凝集化されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項13】
前記脱凝集化が、溶剤としてのC−Cアルコール中で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項14】
前記脱凝集化が、アセトン、テトロヒドロフラン、ブチルアセテート、及び塗料工業において使用されるその他の溶剤中で行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子とコーティング剤とのモル比率が1:1〜10:1であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2009−542572(P2009−542572A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518770(P2009−518770)
【出願日】平成19年7月7日(2007.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/006036
【国際公開番号】WO2008/006523
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】