説明

アルミニウム管の製造方法

【課題】生産効率および品質を向上できるアルミニウム管の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、アルミニウム素管の押出工程と、素管外面を拭き取る拭き取り工程と、拭き取り後の素管を引抜加工する引抜工程と、を含む。拭き取り工程を行うに際し、アルミニウム素管10の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ軸心回りに回転自在な複数の押付ローラ60を周方向に間隔をおいて配置しておく。そしてそしてその複数の押付ローラ60を拭き取り部材70を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管10を軸心回りに回転させることにより、素管外周面を拭き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置における感光ドラムなどとして適用されるアルミニウム管の製造方法およびその関連技術に関する。
【0002】
なおこの明細書および特許請求の範囲において、アルミニウム(Al)の語はその合金を含む意味で用いられる。
【背景技術】
【0003】
電子写真装置などの感光ドラム用の基体としては、円筒形アルミニウム管の外周面にOPC(有機光導電体)などの感光体層が設けられたものが用いられている。この感光ドラム基体の感光体層は、優れた画像品質を得るために、薄くかつ均一な厚さに高精度に形成する必要があり、そのためにベースとなるアルミニウム管の外周面(表面)にも高い平滑性が要求される。
【0004】
このような感光ドラム基体用のアルミニウム管としては、押出加工されたアルミニウム素管を引抜加工して得られるアルミニウム管(ED管)が多く用いられている。
【0005】
ED管には、押出時に表面に付着したアルミニウムカス(Alカス)による欠陥突起が生じる場合があり、そのまま感光ドラム基体として用いると、上記欠陥突起により画像欠陥を引き起こすという報告がなされている。
【0006】
このため、ED管を感光ドラム基体として用いる場合、欠陥突起の発生を防止するために、外表面を切削加工により鏡面仕上げして、表面平滑性を向上させる手段が多く用いられている。
【0007】
ところが、切削加工のような表面改質処理は、非効率的であり、生産効率の低下およびコストの増大を来すという問題を抱えている。
【0008】
このような状況下にあって従来より、感光ドラム用基体として、無切削のED管を用いる技術が多数提案されている。
【0009】
たとえば特許文献1においては、引抜加工した後、ED管の表面を無塵性の布などによって払拭(研磨)するようにしたアルミニウム管の製造方法が提案されている。
【0010】
更に特許文献2に示すアルミニウム管の製造方法においては、引抜加工した後、ED管の表面を研磨材によって研磨するようにしたアルミニウム管の製造方法が提案されている。
【0011】
また特許文献3においては、引抜加工する前に、押出加工されたアルミニウム素管の外表面を、切削加工、エッチング加工、ブラスト加工、研磨加工などによって、一定厚みで表面を除去するようにしたアルミニウム管の製造方法が提案されている。
【特許文献1】特開平8−82939号(請求項1,2)
【特許文献2】特開2004−9227号(請求項1、[0008])
【特許文献3】特開平5−313394号(請求項1−7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1,2に示すアルミニウム管の製造方法は、引抜加工後に、アルミニウム管の表面に研磨などを行って表面平滑性を向上させるものであるが、この製造方法は、上記切削加工を用いるものと同様、表面改質を行うものであるため、非効率的であり、生産効率の低下およびコストの増大を根本的に解消することは困難である。
【0013】
また特許文献3に示すアルミニウム管の製造方法においては、引抜加工する前に、アルミニウム素管の表面を一様に除去するものであるため、その除去カス(アルミニウムカス)がアルミニウム素管の表面に再付着して、引抜加工後に除去カスによる欠陥突起などの表面欠陥が生じ、その表面欠陥による画像欠陥が生じる可能性があり、高い品質を得ることが困難であった。更に同文献の製造方法においては、アルミニウム素管の表面を所定厚みで除去するものであるため、その表面除去によって管径が小さくなる。このため、管径のコントロールが困難となり、寸法精度の低下による品質の低下を招くおそれがある。
【0014】
この発明は、上記従来技術の問題を解消し、生産効率の向上およびコストの削減を図りつつ、表面欠陥の発生などの不具合を確実に防止できて、品質を向上させることができるアルミニウム管の製造方法およびその関連技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来技術の問題を解消するために、本出願人は、アルミニウム管の製造方法について綿密な実験研究を行った。その結果、本出願人は上記目的を達成した上さらに、表面欠陥の発生をより確実に防止できて、より高い品質のアルミニウム管を製造することができる構成を見出し本発明をなすに至った。すなわち本発明は、以下の構成を要旨としている。
【0016】
[1] アルミニウム素管を得る押出工程と、アルミニウム素管の外周面を拭き取る拭き取り工程と、拭き取り工程後のアルミニウム素管を引抜加工する引抜工程と、を含み、
拭き取り工程においては、アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ軸心回りに回転自在な複数の押付ローラを周方向に間隔をおいて配置しておき、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させることにより、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材によって拭き取るようにしたことを特徴とするアルミニウム管の製造方法。
【0017】
[2] 平行に配置された一対の押付ローラが、アルミニウム素管を挟んで両側にそれぞれ配置される前項1に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0018】
[3] 押付ローラのアルミニウム素管外周面に対する押付圧力を、0.01〜0.6N/cm2 に設定するようにした前項1または2に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0019】
[4] 押付ローラとして、円柱形状ないし円筒形状のフラットローラを用いる前項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0020】
[5] 拭き取り工程において、アルミニウム素管における軸心回りの回転速度を、10〜1000回/分に設定するようにした前項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0021】
[6] 拭き取り部材をアルミニウム素管外周面に連続的に供給しつつ、アルミニウム素管を回転させてアルミニウム素管外周面を拭き取るようにした前項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0022】
[7] 拭き取り部材のアルミニウム素管外周面への供給速度を、0.1〜100mm/秒に設定するようにした前項6に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0023】
[8] 拭き取り工程においては、押付ローラをアルミニウム素管に対し軸心方向に相対的に移動させるようにした前項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0024】
[9] 押付ローラにおけるアルミニウム素管に対する軸心方向の移動速度を60〜5000cm/分に設定するようにした前項8に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0025】
[10] 拭き取り部材として、極細繊維製織布、極細繊維製不織布、極細繊維製編布の中から選択される少なくとも1種以上のものを用いる前項1〜9のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0026】
[11] 拭き取り材は帯状の繊維製品によって構成されるとともに、その拭き取り部材が心棒に巻回されて供給ロールが形成され、
その供給ロールから拭き取り部材を巻き出してアルミニウム素管外周面に供給するようにした前項1〜10のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【0027】
[12] 前項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によって得られることを特徴とするアルミニウム管。
【0028】
[13] 前項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたアルミニウム管の外周面に感光体層が設けられたことを特徴とする感光ドラム基体。
【0029】
[14] 前項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によってアルミニウム管を得る工程と、
アルミニウム管の外周面に感光体層を設ける工程と、を含むことを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【0030】
[15] 押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取るようにしたアルミニウム素管外周面の拭き取り方法であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ軸心回りに回転自在な複数の押付ローラを周方向に間隔をおいて配置しておき、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させることにより、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材によって拭き取るようにしたことを特徴とするアルミニウム素管外周面の拭き取り方法。
【0031】
[16] 押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取るようにしたアルミニウム素管外周面の拭き取り装置であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ周方向に間隔をおいて軸心回りに回転自在に配置された複数の押付ローラと、
複数の押付ローラおよびアルミニウム素管間に拭き取り部材を供給する拭き取り部材供給手段と、
複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けるローラ押付手段と、
アルミニウム素管を軸心回りに回転させるアルミニウム素管回転手段と、を備えたことを特徴とするアルミニウム素管外周面の拭き取り装置。
【0032】
[17] 押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材を押し付けて拭き取るに際して、拭き取り部材をアルミニウム素管の外周面に押し付けるための押付装置であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ周方向に間隔をおいて軸心回りに回転自在に配置された複数の押付ローラを備え、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させるようにしたことを特徴とする拭き取り部材の押付装置。
【0033】
[18] アルミニウム素管を得る押出装置と、アルミニウム素管の外周面を拭き取る拭き取り装置と、拭き取り工程後のアルミニウム素管を引抜加工する引抜装置と、を備え、
拭き取り装置が、前項16に記載の拭き取り装置によって構成されることを特徴とするアルミニウム管の生産設備。
【発明の効果】
【0034】
上記発明[1]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、複数の押付ローラをアルミニウム素管の周囲から、拭き取り部材を介して押し付けた状態で、アルミニウム素管を回転させるようにしているため、押付ローラによって拭き取り部材をアルミニウム素管の外周面全域を均等な圧力でバランス良く押し付けることができる。従って、接触圧力の過不足により、素管表面の傷付きや拭き取り不良が生じるのを防止でき、素管表面に付着するアルミニウムカスなどの異物を確実に除去することができる。さらに素管表面の異物を確実に除去できるため、次工程で引抜加工を行った際に、傷や突起などの表面欠陥のない高品質のアルミニウム管を製造することができる。
【0035】
しかも本発明においては、アルミニウム素管をその周囲から複数の押付ローラによって押し付けた状態で回転させるものであるため、アルミニウム素管の曲がりも矯正できて、真直度を向上させることができ、品質をさらに向上させることができる。
【0036】
上記発明[2]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、アルミニウム素管を挟んで両側から一対の押付ローラを押し付けるものであるため、両側の押付ローラの押圧力が互いに相殺されることにより、アルミニウム素管に偏った応力が生じることなく、有害な変形が生じるのを防止でき、アルミニウム素管の真円度、真直度を高度に維持することができ、より一層高い品質のアルミニウム管製品を提供することができる。
【0037】
上記発明[3]〜[5]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0038】
上記発明[6]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、拭き取り動作と、新たな拭き取り部材の供給作業(交換作業)とを並行に行うことができるため、拭き取り部材の交換作業を、別途単独で行う必要がなく、その分、生産性をさらに向上させることができる。
【0039】
上記発明[7]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【0040】
上記発明[8]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、アルミニウム素管の長さ方向全域にわたって素管表面の異物をより確実に除去することができる。
【0041】
上記発明[9][10]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0042】
上記発明[11]にかかるアルミニウム管の製造方法によれば、拭き取り部材の供給を、より安定した状態で行うことができる。
【0043】
上記発明[12]によれば、上記と同様の効果を奏するアルミニウム管を提供することができる。
【0044】
上記発明[13]によれば、上記と同様の効果を奏する感光ドラム基体を提供することができる。
【0045】
上記発明[14]によれば、上記と同様の効果を奏する感光ドラム基体の製造方法を提供することができる。
【0046】
上記発明[15]によれば、上記と同様の効果を奏するアルミニウム素管外周面の拭き取り方法を提供することができる。
【0047】
上記発明[16]によれば、上記と同様の効果を奏するアルミニウム素管外周面の拭き取り装置を提供することができる。
【0048】
上記発明[17]によれば、上記と同様の効果を奏する拭き取り部材の押付装置を提供することができる。
【0049】
上記発明[18]によれば、上記と同様の効果を奏するアルミニウム管の生産設備を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
図1はこの発明の実施形態である感光ドラム基体用アルミニウム管の製造手順を示す工程図である。同図に示すように、本実施形態の製造方法は、押出工程と、切断工程と、拭き取り/曲がり矯正工程と、引抜工程とが基本的な構成要素として含まれている。
【0051】
押出工程においては、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)の押出材料(インゴット)を熱間押出加工することによって、円筒形の長尺なアルミニウム素管が形成される。
【0052】
本実施形態において、アルミニウム素管は、直径φが10〜300mmのもの、より好ましくは20〜60mmのものが好んで用いられる。
【0053】
またアルミニウム押出材料としては、耐食性、加工性および強度の面から、例えばJIS1000系、3000系、5000系、6000系のものを好適に用いることができる。
【0054】
なお上記押出加工によって得られるアルミニウム素管の表面には、多くの場合、押出加工に伴って生じる多数のアルミニウムカスが付着している。
【0055】
続いて、切断工程において、アルミニウム素管を所定の長さに切断する。この切断長さは特に限定されることはないが、200〜6000mm程度に設定するのが良い。
【0056】
次に、後に詳述する拭き取り/曲がり矯正工程において、所定長さのアルミニウム素管をその表面に付着したアルミニウムカスなどの異物を拭き取って除去するとともに、アルミニウム素管の曲がりを矯正するものである。
【0057】
拭き取り/曲がり矯正工程が完了した後、引抜工程により、アルミニウム素管を冷間引抜加工し、これにより感光ドラム基体用のアルミニウム管を製造するものである。
【0058】
こうして製造されたアルミニウム管は、外周面にOPC(有機光導電体)などの感光体層が設けられて、感光ドラム基体として用いられる。
【0059】
上記の拭き取り工程において、本実施形態では図2〜5に示す拭き取り装置が用いられる。この拭き取り装置は、アルミニウム素管(10)の両端開口部に挿脱自在な一対のチャック(1)(1)が設けられており、このチャック(1)(1)がアルミニウム素管(10)の両端開口部に挿着された状態では、アルミニウム素管(10)が所定の姿勢に保持されるよう構成されている。さらに一対のチャック(1)(1)は、図示しない回転駆動手段によって軸心回りに回転駆動できるよう構成されており、アルミニウム素管(10)を支持した状態で、チャック(1)(1)が回転すると、それに追従してアルミニウム素管(10)が回転するよう構成されている。
【0060】
ここで本実施形態においては、チャック(1)やそのチャック(1)を回転駆動するための回転駆動手段によって、アルミニウム素管回転手段が構成されている。
【0061】
また本実施形態の拭き取り装置には、設置状態のアルミニウム素管(10)に対応して、拭き取りヘッド(5)が設けられている。拭き取りヘッド(5)は、アルミニウム素管(10)の左右両側にそれぞれ配置された拭き取り機構(50)(50)がを有している。両拭き取り機構(50)(50)には、押付ローラユニット(6)(6)と、供給ロール(7)(7)と、回収ロール(8)(8)とがそれぞれ設けられている。
【0062】
両押付ローラユニット(6)(6)には、円柱形状ないし円筒形状のフラットローラによって構成される一対の押付ローラ(60)(60)が上下に間隔をおいて設けられている。各押付ローラ(60)(60)は、設置状態のアルミニウム素管(10)に対し、軸心が平行となるように配置されている。
【0063】
また押付ローラユニット(6)(6)は、アルミニウム素管(10)に対し接離する方向に移動自在に設けられており、図示しないシリンダが進退駆動することによって、両押付ローラユニット(6)(6)、つまり両一対の押付ローラ(60)(60)がアルミニウム素管(10)の外周面両側に対し接離するよう構成されている。さらに上下で一対の押付ローラ(60)(60)により両側からアルミニウム素管(10)が挟み込まれた状態では、アルミニウム素管(10)は、押付ローラ(60)により安定状態に拘束保持されるよう構成されている。
【0064】
また各押付ローラ(60)は、軸心回りに回転自在に設けられており、後述するように、アルミニウム素管(10)の外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管(10)が軸心回りに回転することに伴って、各押付ローラ(60)が素管外周面を転動する態様に各軸心回りに回転するよう構成されている。
【0065】
なお本実施形態においては、押付ローラ(60)をアルミニウム素管(10)に安定させた状態で押し付けることができるように、ローラ(60)の表面にクッション性を有する部材を設けるのが良い。
【0066】
ここで本実施形態においては、押出ローラ(60)をアルミニウム素管(10)に対し接離駆動するためのシリンダなどの駆動手段によって、ローラ押付手段が構成されている。
【0067】
供給ロール(7)(7)は、心棒(71)(71)を有し、その心棒(71)(71)に帯状の拭き取り部材(70)(70)が巻回されて装着されている。
【0068】
また回収ロール(8)(8)は、供給ロール(7)(7)と同様に心棒(81)(81)を有し、その心棒(81)(81)に帯状拭き取り部材(70)(70)を巻き取ることができるよう構成されている。
【0069】
各供給ロール(7)(7)は、対応する押付ローラユニット(6)(6)の上側に回転自在に設けられるとともに、両回収ロール(8)(8)は、対応する押付ローラユニット(6)(6)の下側に回転自在に設けられている。そして各供給ロール(7)(7)から巻き出された拭き取り部材(70)(70)が、対応する押付ローラユニット(6)(6)とアルミニウム素管(10)との間に通過されて、対応する回収ロール(8)(8)に巻き取られるように構成されている。
【0070】
また両拭き取り機構(50)(50)には、供給ロール(7)(7)および回収ロール(8)(8)を回転駆動するための回転駆動手段が設けられ、この駆動手段によって、各ロール(7)(7)(8)(8)が回転されることによって、押付ローラユニット(6)(6)およびアルミニウム素管(10)間における使用済みの拭き取り部材(70)が下側に排出されて、回収ロール(8)(8)に巻き取られて回収されるとともに、供給ロール(7)(7)から新たな(未使用の)拭き取り部材(70)が下側に巻き出されて、押付ローラユニット(6)(6)およびアルミニウム素管(10)間に供給されるよう構成されている。
【0071】
なお本実施形態においては、供給ロール(7)を回収ロール(8)に対し上側に配置しているため、拭き取り部材(70)によって拭き取ったアルミニウムカスなどの異物が落下したとしても、その異物が、供給ロール(7)側の未使用の拭き取り部材(70)に付着することがなく、清浄な拭き取り部材(70)をアルミニウム素管表面に安定して供給することができる。
【0072】
なお本実施形態においては、供給ロール(7)(7)によって拭き取り部材供給手段が構成されている。
【0073】
両拭き取り機構(50)(50)を有する拭き取りヘッド(5)は、設置状態のアルミニウム素管(10)の軸心方向に沿って移動自在に設けられており、図示しない駆動手段の駆動によって、拭き取りヘッド(5)がアルミニウム素管(10)の軸心方向に沿って移動するよう構成されている。
【0074】
ここで本実施形態において、拭き取り部材(70)としては、極細繊維製織布(ワイピングクロス)、極細繊維製不織布(ワイパー)、極細繊維製編布など、柔軟性を有するものを好適に用いることができ、中でも特に、ワイピングクロスを用いる場合には、カス除去性能を確実に向上させることができる。
【0075】
なおワイピングクロスとしては、心材がナイロンで、周囲がポリエステル製のもの(例えばカネボウ合繊株式会社製の「ベリーマ(商品名)」)を好適に用いることができる。
【0076】
またワイパーとしては、キュプラ繊維製のもの(例えば旭化成せんい株式会社製の「ベンリーゼ(商品名)、ベンコット(商品名)」)を好適に用いることができる。
【0077】
また拭き取り部材(70)として用いられる織布、不織布、編布は、表面カスを効率良く払い落とすことができるように、繊維径が1〜200μm、好ましくは100μm以下のもの、より好ましくは50μm以下のもの、さらに好ましくは30μm以下のものを採用するのが良い。さらに短繊維のものは、脱落してアルミニウム管表面に悪影響を与えるおそれがあるため、好ましくは長繊維のものを用いるのが良い。
【0078】
以上の構成の拭き取り装置において、アルミニウム素管(10)に拭き取り処理を施す場合には、拭き取りヘッド(5)の両押付ローラユニット(6)(6)を両側に後退させて開いた状態で、アルミニウム素管(10)をその両端部を一対のチャック(1)(1)に保持させて所定の状態に設置する。
【0079】
次に両押付ローラユニット(6)(6)を閉じることにより、両側から一対の押付ローラ(60)を拭き取り部材(70)を介してアルミニウム素管(10)の外周面に押し付ける。
【0080】
その状態で、チャック(1)(1)を回転させる一方、拭き取りヘッド(5)をアルミニウム素管(10)に沿って移動させながら、供給ロール(7)(7)および回収ロール(8)(8)を回転させる。これにより回収ロール(8)(8)からアルミニウム素管表面に拭き取り部材(70)(70)が供給されて、その拭き取り部材(70)(70)が押付ローラ(60)によってアルミニウム素管表面に押し付けられ、その状態でアルミニウム素管(10)が回転する。これにより、拭き取り部材(70)(70)がアルミニウム素管の外周面を二重螺旋状に摺動していき、アルミニウム素管(10)の外周面全域が拭き取り部材(70)(70)によってむらなく抜き取られる。
【0081】
この拭き取りによって、押出加工時などにアルミニウム素管表面に付着した有害なアルミニウムカスなどの異物が確実に拭き取られて除去される。
【0082】
さらにこの拭き取り時には、アルミニウム素管(10)が複数の押付ローラ(60)によって周囲から押し付けられながら回転するため、アルミニウム素管(10)の曲がりが矯正されて、真直度が向上する。
【0083】
このようにアルミニウム素管表面を拭き取ることによって、その拭き取りと同時に、素管(10)の曲がりも矯正される。
【0084】
拭き取りが完了した後は、アルミニウム素管(10)の回転を停止させるとともに、供給ロール(7)および回収ロール(8)の回転を停止させる。続いて、拭き取りヘッド(5)の両押付ローラユニット(6)(6)を両側に開いて、各押付ローラ(60)と共に拭き取り部材(70)ををアルミニウム素管(10)から離脱させる。
【0085】
その後、アルミニウム素管(10)をそのチャック(1)(1)による保持を解除して拭き取り装置から取り出すものである。
【0086】
拭き取り装置による処理が完了した後、アルミニウム素管(10)は既述したように、引抜工程により冷間引抜加工が行われて、感光ドラム基体用のアルミニウム管が製造される。
【0087】
以上のように、本実施形態における拭き取り装置による拭き取り処理によれば、上下一対の押付ローラ(60)(60)をアルミニウム素管(10)の両側から、拭き取り部材(70)(70)を介して押し付けた状態で、アルミニウム素管(10)を回転させるようにしているため、押付ローラ(60)によって拭き取り部材(70)をアルミニウム素管(10)の外周面全域を均等な圧力でバランス良く押し付けることができる。従って、拭き取り部材(70)のアルミニウム素管表面に対する接触圧力が、部分的に大きくなり過ぎたり、小さくなり過ぎるような不具合がなく、圧力過大によりアルミニウム素管表面に傷が付いたり、圧力不足により拭き取りが不十分となるような不具合を確実に防止することができる。従ってアルミニウム素管外周面に付着するアルミニウムカスなどの異物を確実に除去することができる。
【0088】
さらに拭き取り処理によってアルミニウム素管表面の異物を確実に除去できるため、拭き取り後のアルミニウム素管(10)に対し次工程で引抜加工を行った際に、傷や突起などの表面欠陥のない高品質のアルミニウム管を製造することができる。その上さらにそのアルミニウム管の表面に、感光体層を形成して得られた感光ドラム基体は、リークなどによる画像欠陥が生じることがなく、高い品質を得ることができる。
【0089】
また本実施形態においては、アルミニウム素管(10)がその周囲からフラットローラタイプの複数の押付ローラ(60)によって押し付けられながら回転するものであるため、アルミニウム素管(10)の曲がりも矯正できて、真直度を向上させることができ、曲がりのない高品質のアルミニウム管製品を製造することができる。
【0090】
また本実施形態においては、引抜工程前にアルミニウム素管(10)の表面を拭き取るものであるため、たとえば従来のように、引抜工程後に、切削、研磨などの機械加工によって表面全域を一様に改質するような非効率な表面改質処理を行う必要がなく、効率良く簡単に実行できて、コストの削減を図ることができる。
【0091】
また本実施形態においては、アルミニウム素管表面の異物を除去する際に、素管表面を拭き取るだけのものであるため、従来のように、管表面を切削、研磨する場合と比較して、管径の変化がなく、寸法管理を容易に行えて、より高い品質を得ることができる。
【0092】
その上、本実施形態の拭き取り工程においては、アルミニウム素管(10)の外表面に、素管(10)を挟んで両側から一対の押付ローラ(60)を同一の圧力で押し付けるものであるため、両側の押付ローラ(60)の押圧力が互いに相殺されることにより、アルミニウム素管(10)に偏った応力が生じることなく、有害な変形が生じるのを防止でき、アルミニウム素管(10)の真円度、真直度を高度に維持することができ、より一層高い品質のアルミニウム管製品を提供することができる。
【0093】
詳述すると、拭き取り処理を行うに際して、仮に図7に示すように帯状の拭き取り部材(70)を、アルミニウム素管(10)の外表面に片側から押し付けた状態で拭き取るようにした場合、アルミニウム素管(10)が拭き取り部材(70)によってアルミニウム素管(10)が片側のみから押し込まれるため、アルミニウム素管(10)に有害な変形応力が生じて、アルミニウム素管(10)の真円度や真直度が低下するおそれがある。なお図7においては、発明の理解を容易にするため、本発明の構成部品に相当する部品に対し同一符号を付している。
【0094】
これに対し本実施形態においては、アルミニウム素管(10)の両側から、一対の押付ローラ(60)によって拭き取り部材(70)(70)を押し当てて、拭き取り処理を行うようにしているため、既述したように、アルミニウム素管(10)に有害な変形応力が生じるのを防止でき、アルミニウム素管(10)の真円度や真直度を向上させることができ、より一層高い品質のアルミニウム管を製造することができる。
【0095】
しかも本実施形態においては、拭き取り部材(70)(70)をアルミニウム素管(10)の両側から均等に押し付けるものであるため、拭き取り部材(70)の押付力を多少高く設定しようとも、有害な変形が生じるのを有効に防止することができる。従って拭き取り部材(70)の素管表面に対する押圧力を十分に高く設定することができるため、素管表面の異物をより確実に除去することができ、品質をさらに向上させることができる。
【0096】
また本実施形態は、素管表面を切削や研磨などによって除去するものではないため、表面除去時に生じるアルミニウムカスが、素管表面に再付着するような不具合も確実に防止でき、一層高品質の管製品を得ることができる。
【0097】
また本実施形態では、押付ローラ(60)を拭き取り部材(70)を介してアルミニウム素管表面に押し付けて素管表面を拭き取りながら、供給ローラ(7)および回収ロール(8)を回転させて、拭き取り部材(70)を連続供給して交換するものであるため、たとえば拭き取り作業を一旦中断して、拭き取り部材(70)の交換を別途単独で行う場合と比較して、効率良く拭き取り作業を行うことができ、生産効率を向上させることができる。
【0098】
ここで本実施形態の拭き取り装置における拭き取り処理において、押付ローラ(60)によるアルミニウム素管(10)への押付圧力(挟み込み圧力)は、0.01〜0.6N/cm2 、より好ましくは0.1〜0.3N/cm2 に設定するのが良い。すなわち押付ローラ(60)の押付圧力を上記特定範囲内に設定することにより、拭き取り部材(70)をアルミニウム素管(10)の表面に適度な圧力で押し付けることができ、アルミニウム素管(10)の表面を効果的に拭き取ることができる。換言すれば、押付ローラ(60)の押付圧力が大き過ぎる場合には、拭き取り部材(70)のアルミニウム素管(10)への接触圧が大きくなり過ぎて、アルミニウム素管(10)の表面に傷が付いたりするおそれがあり、好ましくない。逆に押付ローラ(60)の押付圧力が小さ過ぎる場合には、アルミニウム素管(10)の表面に付着したアルミニウムカスなどの異物を確実に拭き取ることができないおそれがあり、好ましくない。
【0099】
また本実施形態においては、帯状の拭き取り部材(70)としては、幅が30〜500mm、好ましくは60〜150mmのものを用いるのが良い。すなわちこの拭き取り部材(70)の幅を上記特定の範囲内に調整した場合には、アルミニウム素管(10)の外表面全域を効率良く拭き取ることができる。換言すれば、拭き取り部材(70)の幅が狭過ぎる場合には、拭き取り部材(70)により一度に拭き取る幅(領域)が狭く、アルミニウム素管(10)の外表面全域を効率良く拭き取ることが困難になるおそれがある。逆に拭き取り部材幅が広過ぎる場合には、拭き取り部材(70)をその幅方向全域を均等な圧力でアルミニウム素管(10)表面に接触させることが困難になり、アルミニウムカスなどの異物を確実に拭き取ることが困難になるおそれがある。
【0100】
さらに拭き取り部材(70)の供給ロール(7)からの送り出し速度および回収ロール(8)への巻取速度は、0.1〜20cm/分、好ましくは5〜12cm/分に調整するのが良い。すなわちこの範囲内に調整する場合には、拭き取り部材(50)を安定状態で効率良く供給することができる。
【0101】
またアルミニウム素管(10)の回転速度は、10〜1000回/分(rpm)、好ましくは300〜700回/分に調整するのが良い。この回転速度を上記の特定範囲内に調整する場合には、アルミニウム素管(10)の外表面を効率良く確実に拭き取ることができる。つまり回転速度が遅過ぎる場合には、拭き取りに必要な時間が長くなり、拭き取り効率の低下を来すおそれがあり、好ましくない。逆に速過ぎる場合には、拭き取りむらが生じて、アルミニウム素管(10)の外表面を均等にバランス良く拭き取るのが困難になり、異物を確実に除去できないおそれがあり、好ましくない。
【0102】
さらに拭き取りヘッド(5)のアルミニウム素管(10)に対する軸心方向の移動速度は60〜5000cm/分、好ましくは1000〜3000cm/分に調整するのが良い。すなわちこの速度を上記特定範囲内に調整する場合には、アルミニウム素管(10)の外表面を効率良く確実に拭き取ることができる。換言すれば、この速度が遅過ぎる場合には、拭き取りに必要な時間が長くなり、拭き取り効率の低下を来すおそれがあり、好ましくない。逆に速過ぎる場合には、拭き取りむらが生じて、アルミニウム素管(10)の外表面を均等にバランス良く拭き取るのが困難になり、異物を確実に除去できないおそれがあり、好ましくない。
【0103】
また、本実施形態において引抜加工は、1段もしくは2段で行い、面積減少率は10%以上に調整される。さらに引抜速度は、特に限定されるものではないが、好ましくは5〜50m/分に調整するのが良い。
【0104】
なお上記実施形態においては、押付ローラを両側に2個ずつ計4個設ける場合を例に挙げて説明したが、本発明においては、押付ローラの設置数は限定されるものではなく、2個以上であれば良い。もっともアルミニウム素管の曲がり矯正をより確実に行うためには、3個以上設けるのが良い。
【0105】
さらに押付ローラユニットにおける押付ローラ設置数も、2個に限定されるものではなく、1個でも3個以上であっても良い。
【0106】
さらに言うまでもなく、押付ローラユニットは、アルミニウム素管の左右両側位置に配置するだけに限られず、上下位置に配置するようにしても良い。
【0107】
また上記実施形態においては、押付体(拭き取り部材)をアルミニウム素管に対し軸心方向に沿って移動させて、拭き取り動作を行うように構成しているが、それだけに限られず、本発明においては、押付体(拭き取り部材)に対し、アルミニウム素管を軸心方向に移動させたり、あるいは押付体(拭き取り部材)およびアルミニウム素管をともに、軸心方向に移動させて、拭き取り動作を行うようにしても良い。
【実施例】
【0108】
以下、本発明に関連した実施例について説明する。
【0109】
熱間押出加工によって形成された外径31mmのアルミニウム押出管を、長さ2000mmに切断してアルミニウム素管を製造し、以下の条件の下で、アルミニウム素管に対し拭き取り処理を行った。
【0110】
まず拭き取り処理を行うための装置としては、上記図2〜5に示す実施形態の拭き取り装置と同様な装置を用いた。
【0111】
さらに拭き取り部材(70)としては、ワイピングクロス(カネボウ合繊株式会社製の「ベリーマ(商品名)」)からなる幅80mmのテープ状のものを用いた。さらにアルミニウム素管の回転速度を、400rpm、拭き取りヘッドの移動速度を150mm/秒、押付ローラ(60)の素管(10)に対する接触圧を、0.1〜0.2N/cm2 に設定した。
【0112】
以上の条件で、多数本のアルミニウム素管に対し順次拭き取り処理を行い、その中から無作為に抽出した30本のアルミニウム素管をサンプル(No.1〜30)として、拭き取り前の素管曲がり具合(mm)と、拭き取り後の素管曲がり具合(mm)とを、間隔2400mmで2点支持し、回転させた時の中央のフレの大きさ測定した。その結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1から明らかなように、多くのサンプルにおいて、拭き取り前の素管曲がり具合に比べて、拭き取り後の素管曲がり具合が小さくなっているのが判る。特に表1の平均値や標準偏差から明らかなように、拭き取り前の素管曲がり具合に比べて、拭き取り後の素管曲がり具合が小さくなっている。従って、本発明の装置の拭き取りによって、素管曲がりを確実に矯正できることが明瞭に理解できる。
【0115】
また図6に示すように、上記各サンプルにおける拭き取り前の素管曲がり具合と、拭き取り後の素管曲がり具合との関係をグラフで表示した。同グラフから明らかなように、ほとんどのサンプル(素管)が、拭き取り前後で素管曲がり具合に変化のない場合の直線(y=x)よりも下側(右側)に配置されている。従って素管曲がりが矯正されているのが明瞭である。中でも特に、拭き取り前の曲がり具合が比較的大きいもの(2mm以上のもの)については、ほぼ全てのサンプルが拭き取り後において曲がりが小さくなっており、効果的に素管の曲がりを矯正できるものであるのことが判る。
【産業上の利用可能性】
【0116】
この発明のアルミニウム管の製造方法は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置における感光ドラムなどを製造する際に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】この発明の実施形態であるアルミニウム管の製造手順を示す工程図である。
【図2】上記実施形態である製造方法に適用された拭き取り装置を概略的に示す平面図である。
【図3】上記拭き取り装置の拭き取りヘッド周辺をローラ開放状態で示す正面図である。
【図4】上記拭き取り装置の拭き取りヘッド周辺をローラ閉塞状態で示す正面図である。
【図5】上記拭き取りヘッドの片側の拭き取り機構を概略的に示す斜視図である。
【図6】上記拭き取り装置により拭き取り前後の素管曲がり量の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の要旨を逸脱するアルミニウム素管の拭き取り方法を示す正面図である。
【符号の説明】
【0118】
7…供給ロール
10…アルミニウム素管
60…押付ローラ
70…拭き取り部材
71…心棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム素管を得る押出工程と、アルミニウム素管の外周面を拭き取る拭き取り工程と、拭き取り工程後のアルミニウム素管を引抜加工する引抜工程と、を含み、
拭き取り工程においては、アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ軸心回りに回転自在な複数の押付ローラを周方向に間隔をおいて配置しておき、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させることにより、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材によって拭き取るようにしたことを特徴とするアルミニウム管の製造方法。
【請求項2】
平行に配置された一対の押付ローラが、アルミニウム素管を挟んで両側にそれぞれ配置される請求項1に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項3】
押付ローラのアルミニウム素管外周面に対する押付圧力を、0.01〜0.6N/cm2 に設定するようにした請求項1または2に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項4】
押付ローラとして、円柱形状ないし円筒形状のフラットローラを用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項5】
拭き取り工程において、アルミニウム素管における軸心回りの回転速度を、10〜1000回/分に設定するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項6】
拭き取り部材をアルミニウム素管外周面に連続的に供給しつつ、アルミニウム素管を回転させてアルミニウム素管外周面を拭き取るようにした請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項7】
拭き取り部材のアルミニウム素管外周面への供給速度を、0.1〜100mm/秒に設定するようにした請求項6に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項8】
拭き取り工程においては、押付ローラをアルミニウム素管に対し軸心方向に相対的に移動させるようにした請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項9】
押付ローラにおけるアルミニウム素管に対する軸心方向の移動速度を60〜5000cm/分に設定するようにした請求項8に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項10】
拭き取り部材として、極細繊維製織布、極細繊維製不織布、極細繊維製編布の中から選択される少なくとも1種以上のものを用いる請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項11】
拭き取り材は帯状の繊維製品によって構成されるとともに、その拭き取り部材が心棒に巻回されて供給ロールが形成され、
その供給ロールから拭き取り部材を巻き出してアルミニウム素管外周面に供給するようにした請求項1〜10のいずれか1項に記載のアルミニウム管の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によって得られることを特徴とするアルミニウム管。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によって得られたアルミニウム管の外周面に感光体層が設けられたことを特徴とする感光ドラム基体。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法によってアルミニウム管を得る工程と、
アルミニウム管の外周面に感光体層を設ける工程と、を含むことを特徴とする感光ドラム基体の製造方法。
【請求項15】
押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取るようにしたアルミニウム素管外周面の拭き取り方法であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ軸心回りに回転自在な複数の押付ローラを周方向に間隔をおいて配置しておき、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させることにより、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材によって拭き取るようにしたことを特徴とするアルミニウム素管外周面の拭き取り方法。
【請求項16】
押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取るようにしたアルミニウム素管外周面の拭き取り装置であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ周方向に間隔をおいて軸心回りに回転自在に配置された複数の押付ローラと、
複数の押付ローラおよびアルミニウム素管間に拭き取り部材を供給する拭き取り部材供給手段と、
複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けるローラ押付手段と、
アルミニウム素管を軸心回りに回転させるアルミニウム素管回転手段と、を備えたことを特徴とするアルミニウム素管外周面の拭き取り装置。
【請求項17】
押出工程によって得られたアルミニウム素管を引抜加工する前に、アルミニウム素管の外周面を拭き取り部材を押し付けて拭き取るに際して、拭き取り部材をアルミニウム素管の外周面に押し付けるための押付装置であって、
アルミニウム素管の外周にその素管に対し軸心が平行に配置され、かつ周方向に間隔をおいて軸心回りに回転自在に配置された複数の押付ローラを備え、
その複数の押付ローラを拭き取り部材を介してアルミニウム素管外周面に押し付けた状態で、アルミニウム素管を軸心回りに回転させるようにしたことを特徴とする拭き取り部材の押付装置。
【請求項18】
アルミニウム素管を得る押出装置と、アルミニウム素管の外周面を拭き取る拭き取り装置と、拭き取り工程後のアルミニウム素管を引抜加工する引抜装置と、を備え、
拭き取り装置が、請求項16に記載の拭き取り装置によって構成されることを特徴とするアルミニウム管の生産設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−9124(P2008−9124A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179295(P2006−179295)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】