説明

アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物

本発明は、N−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジン、4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物を開示する。本発明の組成物は、肺気管支洗浄液内の好酸球の増加、血中総白血球数及び好酸球の増加、気管支上皮の粘液生産細胞の増加による肥厚または増生、肺胞壁の肥厚による肺胞面積の減少及び炎症細胞の浸潤などの典型的な慢性炎症を減少させることにより、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療に有用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物に係り、特に、N−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジン、4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
各種公害による環境汚染、ストレス、または変化した衣食住を含んだ住居環境などの原因によってアレルギー性炎症疾患が日増しに増加する趨勢にある。アレルギー性炎症疾患とは、鼻の粘膜または気管支の粘膜、または皮膚が外部からの原因物質にあまりにも過敏に反応する非常にややこしい慢性的疾患であって、人体の免疫体系に異常が生じて現れる疾患をいう。アレルギーを起こす免疫異常の根本原因は、栄養素の不均衡、ストレス、血液が滞るお血などにあり、特に栄養素の不均衡にある。
【0003】
アレルギー性炎症疾患は、外部から入った抗原による免疫反応が起こる部位によってアレルギー性鼻炎、喘息、アトピー性皮膚炎などがあり、その他にも、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、接触性皮膚炎、蕁麻疹など様々であるが、病気の原因が外部からの原因物質に対する過敏性に起因するという点で共通しているので、過多な免疫反応を抑制させることが可能な薬物が共通に使用できる。
【0004】
アレルギーの代表的疾患である喘息は、呼吸器系、特に肺と気管支の慢性炎症性疾患であって、薬物、汚染空気、冷たい空気または過度な運動のために呼吸器系、特に上部呼吸器系の反応性が増加する疾患である。このような過敏反応は、主に気道内における空気の流れが妨げられる状態、すなわち気道の閉鎖または狭搾に関連しているが、気管支拡張剤などの薬物を投与することにより、容易に正常に戻っていく。一般的な環境由来の抗原に対する過敏反応または呼吸気道の萎縮は喘息の際に最もよく誘発される症状であり、このような現象は肥満細胞と好酸球由来のIgEによって媒介される過敏反応によるものと知られている(Beasley et al., Am. Rev. Respir. Dis., 129, 806-817, 1989)。
【0005】
喘息の際には、主に、気管支及び肺にアレルギー性過敏反応が伴なう。特に、気管支に増殖した粘液生産細胞と上皮下結合組織部位の炎症によって気道が閉鎖され、肺においても類似な組織学的所見を示すものと知られている。現在まで、その機序は不明確であるが、喘息の病状は気道の収縮、浮腫、粘液分泌及び炎症細胞の浸潤などの現象によって特徴付けられると知られている。典型的な外因生喘息の発病機序によれば、抗原が気道内に流入する場合、マクロファージ細胞とヘルパーT細胞(helper T-cell)の補助的作用によってB細胞にIgEとIgG抗原特異抗体が形成される。このように形成された特異抗体は、肥満細胞及び好塩基球などの表面に存在する受容体に付着した後、同一の抗原に再び露出される場合、この細胞らが活性化して細胞内の各種化学伝達物質が細胞の外に遊離される。このような化学伝達物質としては、ヒスタミン、プラスタグラジンD(Prostaglandin D2)及び遅反応性物質(slow reacting substances;leukotriene C4, D4)などがある。これらの物質によって、気道は、数分〜数秒内に収縮した後、30〜60分の後には消失する早期喘息反応を起こし、肥満細胞から分泌される化学媒介物質とその他のマクロファージ細胞、肥満細胞及びヘルパーT細胞から分泌される様々な種類のサイトカインは、主に好酸球を含んだ炎症性細胞を増殖及び活性化させる。これにより、3〜4時間の後に気管支収縮、粘液分泌及び炎症性細胞の浸潤が現われ始め、4〜18時間の後には最高値に達する後期喘息反応が誘発されると知られている(Robertson et al., J. Allergy Clin. Immunol., 54, 244-257, 1974)。
【0006】
喘息の治療のために用いられる薬物としては、気道平滑筋を拡張し、肥満細胞から過敏反応媒介物質の分泌を効果的に抑制するベータ2−アドレノ(beta-2-adreno)受容体アゴニスト、免疫抑制効果を持つ副腎皮質ホルモン剤、及び喘息の早期及び後期反応を全て抑制すると知られているクロモグリコ酸二ナトリウム (disodium cromoglycate)、ネドクロミルナトリウム(nedocromil sodium)などがある。ところが、ベータ2−アドレノ受容体アゴニストは、短期間しか持続しない効果を有し、疾患が容易に再発し、副腎皮質ホルモン剤は、断片的な効果を有し、長期間使用する場合には深刻な副作用が伴なうという欠点がある。
【0007】
最近、炎症性及び過敏反応の緩和に対する接近法として、アラキドン酸代射産物(プロスタグランジンを含む)、リポキシゲナーゼ及びロイコトリエンの作用を遮断させる研究が紹介されているが、この中でも、ロイコトリエンB(Leukotriene B)は、5−リポキシゲナーゼ経路によって形成されるアラキドン酸代謝物質中の一つであって、組織浸潤性及び凝集性多型核白血球が分泌する組織分解酵素及び反応性化学物質の作用に関与する。
【0008】
ところが、前述したように、ロイコトリエンB以外にも、喘息の発病には数多くの因子が関与し、特定の化合物がロイコトリエンBを抑制するとしても、ロイコトリエンB以外に多数の因子に関与して生体内で様々な反応を起こし得るため、ロイコトリエンBの活性を抑制する特定化合物が喘息治療効果を持つか否かは、容易に予測することができない。
【0009】
例えば、米国のLilly社によって、ロイコトリエンB受容体拮抗剤であるLY293111に対して喘息を適応症として臨床(Clint D. W. Brooks et al., J. Med. Chem. 1996 39 (14), 2629-2649)を行った結果によれば、ロイコトリエンB受容体拮抗剤であるLY293111がアレルギー性喘息疾患に薬効を持たないことが報告されており(Evans DJ, Thorax. 1996 Dec;51(12):1178-84)、その他にシステイニルロイコトリエン受容体拮抗剤であるザフィルルカスト(Zafirlukast)とロイコトリエンB受容体拮抗剤ONO−4057とを併用すると、気管支喘息に効果があるが、ロイコトリエンB受容体拮抗剤ONO−4057自体のみでは効果がないと報告されている(Sakurada T. et, al., Eur J Pharmacol. 1999 Apr 9:370(2):153-9)。よって、ロイコトリエンB受容体拮抗剤が、喘息を含んだアレルギー性炎症疾患の治療に効果的であるとはいえない。
【0010】
一方、ロイコトリエンB受容体拮抗剤は、喘息を含んだアレルギー性炎症疾患以外の多様な疾患の治療に使用できる。例えば、日本国特表平6−502164号公報には、新規の一環式及び二環式アリール化合物が、選択的にロイコトリエンBを抑制することにより、関節リウマチ、痛風、乾癬及び炎症性腸疾患の治療に有用であることを開示しており、日本国特開平4−244023号公報は、ジホモ−γ−リノレン酸などの6系不飽和脂肪酸が、ロイコトリエンBの生産を抑制することにより、不整脈、急性心根梗塞症などの治療に有用であることを開示している。また、日本国特開平1−190656号公報は、新規のロイコトリエンBジメチルアミドが、ロイコトリエンBに対して拮抗作用を持っており、消炎剤、抗リウマチス剤及び痛風治療剤として有用であると開示している。
【0011】
そこで、本発明者らは、アレルギー性炎症疾患に対する効果的な治療剤を開発するために研究した結果、骨粗鬆症治療剤(韓国特許公開公報第10−2003−8654号)として発明したN−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジン及び4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジンが、喘息の際に誘発される、肺気管支洗浄液内好酸球の増加、血中総白血球数及び好酸球の増加、気管支上皮の粘液生産細胞の増加による肥厚または増生、肺胞壁の肥厚による肺胞面積の減少及び炎症細胞の浸潤などの典型的な慢性炎症を減少させることにより、喘息を含んだアレルギー性炎症疾患の治療に卓越な効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
〔発明の開示〕
本発明は、N−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジン、4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジンまたはその薬学的に許容される塩を含む、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記組成物を投与してアレルギー性炎症疾患を治療及び予防する方法を提供する。
【0014】
〔発明を実施するための最良の様態〕
本発明は、下記化学式1のベンズアミジン化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物を提供する。
【0015】
【化1】

(式中、Rは水素またはヒドロキシ基である。)
【0016】
化学式1のベンズアミジン化合物は、薬学的に許容される、当分野における通常の塩の形で使用することができ、薬学的に許容される遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が好ましい。遊離酸としては、無機酸と有機酸を使用することができる。無機酸としては、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸などを使用することができ、有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、錫酸、フマル酸、蟻酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、マレイン酸、ベンゾ酸、グルコン酸、グリコール酸、コハク酸、4−モルホリンエタンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−ニトロベンゼンスルホン酸、ヒドロキシ−O−スルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸、またはアスパラギン酸などを使用することができる。
【0017】
本発明の化学式1のベンズアミジン化合物は、公知の方法によって製造することができる(Lee, Sung-Eun, Synthesis and Biological Activity of Natural Products and Designed New Hybrid Compounds for the Treatment of LTB4 Related Disease, Busan National University, a thesis for a Ph. D degree, August 1999)。
【0018】
本発明において、用語「アレルギー性炎症疾患」は、多様なアレルゲン誘発原因によって引き起こされる非特異性の炎症性疾患を意味し、アレルギー性鼻炎(allergic rhinitis)、喘息(asthma)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、接触性皮膚炎、蕁麻疹(urticaria)を例示することができる。
【0019】
具体的な実施において、本発明の化学式1のベンズアミジン化合物は、肺気管支洗浄液内好酸球の増加、血中総白血球数及び好酸球の増加、気管支上皮の粘液生産細胞の増加による肥厚または増生、肺胞壁の肥厚による肺胞面積の減少及び炎症細胞の浸潤などの典型的な慢性炎症を減少させた。
【0020】
本発明の組成物は、前記化学式1のベンズアミジン化合物またはその薬学的に許容される塩に追加して同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上含有することができる。
【0021】
本発明の組成物は、投与のために前記有効成分の他に、さらに薬学的に許容される担体を1種以上含んで製造することができる。薬学的に許容される担体は、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれら成分の1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。ひいては、当分野の適正方法またはRemington's Pharmaceutical Science(最近版、Mack Publishing Company、Easton PA)に開示されている方法を用いて、各疾患に応じてまたは成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0022】
本発明の組成物は、目的の方法に応じて経口投与または非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができ、その投与量が患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率及び疾患の重症度などによって異なる。化学式1のベンズアミジン化合物は、1日投与量が約10〜1,000mg/kgであり、好ましくは50〜500mg/kgであり、1日1回〜数回に分けて投与することがさらに好ましい。
【0023】
本発明の組成物は、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療のために単独で、または手術、ホルモン治療、薬物治療及び生物学的反応調節剤を用いる方法と併用して使用することができる。
【0024】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0025】
実施例:オボアルブミンで誘発させたマウス喘息モデルにおける治療効果
化学式1のベンズアミジン化合物がアレルギー性炎症に及ぼす影響を調べるために、オボアルブミンで誘発させたマウス喘息モデルで評価した。前記ベンズアミジン化合物は、オボアルブミン感作(immunization)の際に投与を開始して18日間投与した。実験動物は、感作15日後にさらにオボアルブミンに露出させた後、3日後に犠牲させ、肺の重量、末梢血液及び肺気管支洗浄液内細胞成分の変化、並びに肺の組織学的変化を観察した。
【0026】
1.実験動物及び仕様管理
総20匹の雌C57BL/6マウス(6週齢、BioGenomics、韓国)を6日間実験室の環境に順化させた後、本実験に使用した。実験動物は、5匹ずつマウス用プラスチック箱に収容し、温度(20〜25℃)と湿度(30〜35%)が調節された実験動物飼育室で飼育した。また、明暗周期は12時間間隔で調節し、飼料と水道水を自由に供給した。実験動物15匹はオボアルブミンで喘息を誘発し、5匹は無処置正常群として使用した。
【0027】
2.試料の準備及び投与
N−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}−ベンズアミジン100mg及び200mgを無菌蒸留水5mLに完全に溶かして溶液状態の試料を投与した。前記ベンズアミジン化合物は、オボアルブミン感作日から毎日1回ずつそれぞれ実験動物体重kg当たり100mg及び200mgずつ経口投与した。この際、対照群では、同量の無菌蒸留水のみを毎日同一の方法で投与した。
【0028】
3.オボアルブミン感作及び露出による喘息誘発
オボアルブミン(Grade V;Sigma、St.Louis,MO、USA)200μgを水酸化アルミニウム(Al(OH)、dried powder gel;Aldrich、Milwaukee、USA)180mgと生理食塩水4mLに4℃で一晩溶かして実験動物に投与(200μL、腹腔注射)して感作させた。この際、無処置正常群は、水酸化アルミニウムのみを生理食塩水に溶かして同一の方法で投与した。感作15日後、1.5%のオボアルブミン溶液を噴霧器(nubulizer)を用いて空気中に噴霧することにより10分間実験動物に露出させて喘息を誘発させた。この際、無処置正常群では、生理食塩水のみを同一の方法で露出させた。全実験動物は、露出3日後に犠牲させた。
【0029】
4.体重及び増体量の変化
全実験動物の体重を投与1、7、14、16及び17日後にそれぞれ測定した。飼料摂取による個体別差異を減らすために、投与開始日と最終剖検日に、全実験動物を体重測定の前に18時間以上絶食させた。また、実験動物の個体差異による体重変化を最小化するために、それぞれ感作期間、露出後の喘息誘発期及び全実験期間の体重増加量、すなわち増体量を計算した。
【0030】
その結果は、表1に示した。
【0031】
【表1】

:対照群と比較して有意性がある(p<0.05)
【0032】
表1に示すように、露出後の喘息誘発期を除いた全期間にわたって、有意性のある増体量の変化は観察されないため、実験動物の投与または実験動物の個体差異による誤りは殆どないことが分かる。また、露出後の喘息誘発期の場合にも、対照群では正常群に比べて著しい増体量の増加が観察されたが、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて著しく減少した増体量を示した。
【0033】
5.肺重量の測定
全実験動物は、最終犠牲日に肺を周囲組織とよく分離して摘出し、摘出された肺の絶対重量値をg単位で測定した。また、動物個体の体重差異による誤差を最小化するために、体重に対する肺の比率である相対重量値を下記数式1を用いてパーセントで計算した。
【0034】
数式1
肺の相対重量値(%)={(肺の絶対重量値/最終犠牲日の体重)×100}
その結果は表2に示した。
【0035】
【表2】

※正常群と比較して有意性がある(:p<0.01、**:p<0.05)、
対照群と比較して有意性がある(#:p<0.01、##:p<0.05)
【0036】
表2に示すように、喘息誘発による肺の絶対重量値及び相対重量値は、対照群では正常群に比べて有意に増加し(p<0.01)、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて有意に減少し、投与用量依存的に減少した(p<0.01またはp<0.05)。
【0037】
したがって、化学式1のベンズアミジン化合物は喘息による肺重量の増加を抑制させることが分かる。
【0038】
6.血液中の総白血球数及び白血球の分別計算
最終犠牲日に、全実験動物はエチルエーテルで麻酔した後、開腹して腹大静脈を露出させた。その後、露出した腹大静脈から1mL程度の血液を採取した。採取された血液中の白血球の総数を白血球用血球計算板を用いて×10/1mmの単位で計算した。採取した血液を採血し次第スライドガラス(slide glass)に塗抹した後、メタノールで固定し、Giemsa染色を施した。その後、塗抹組織標本に存在する総200個の白血球のうち、リンパ球、好酸球、好中球、単球及び好塩基球が占める割合をそれぞれパーセントで計算した。
【0039】
その結果は表3に示した。
【0040】
【表3】

※正常群と比較して有意性がある(:p<0.01、**:p<0.05)、
対照群と比較して有意性がある(#:p<0.01、##:p<0.05)
【0041】
表3に示すように、喘息誘発による血液中の総白血球数及び好酸球の割合は、対照群では正常群に比べて有意に増加し(p<0.01)、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて有意に減少し(p<0.01またはp<0.05)、投与用量依存的に減少した。
【0042】
したがって、化学式1のベンズアミジン化合物は喘息による炎症反応を著しく抑制させることが分かる。
【0043】
7.肺気管支洗浄液内細胞成分の分別計算
最終犠牲日に、気管支と肺胞内に存在する分泌物の細胞学的構成を観察するために、エチルエーテルで麻酔させ、頚部と胸部を開いて頚静脈から放血した後、気管に挿管し、2回にわたってリン酸緩衝液(phosphate buffered saline)3mLを注入し、30秒間胸部をマッサージした後、肺から細胞浮遊液を得た。得られた細胞浮遊液を3000rpmで30分間遠心分離し、DPBS(Gibco BRL、NY、USA)に再び浮遊させた後、細胞をスライドガラス上に塗抹し、Giemsa染色した後、塗抹組織内に存在する細胞の数及び好中球、好酸球、好塩基球、マクロファージ及び類上皮細胞などに対する分別計算を行い、百分率を計算した。
その結果は表4に示した。
【0044】
【表4】

※正常群と比較して有意性がある(:p<0.01、**:p<0.05)、
対照群と比較して有意性がある(#:p<0.01、##:p<0.05)
【0045】
表4に示すように、喘息誘発による気管支肺洗浄液中の好酸球の割合は、対照群では正常群に比べて有意に増加し(p<0.01)、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて有意に減少し(p<0.01)、投与用量依存的に減少した。
【0046】
したがって、化学式1のベンズアミジン化合物は喘息による炎症反応を著しく抑制させることが分かる。
【0047】
8.組織処理及び分析
喘息を誘発した後に摘出した肺を10%中性ホルマリンに固定した後、パラフィン包埋を行い、3〜4μmの組織切片を製作し、ヘマトキシリン−エオシン(Hematoxylin-eosin)またはマッソン・トリクローム(Masson's trichrome)染色を行い、光学顕微鏡を用いて観察した。
【0048】
その結果は、図1に示した。
【0049】
図1に示すように、喘息誘発による1次細気管支と肺胞周囲の組織及び気管支上皮組織において、炎症細胞は、対照群では正常群に比べて増加し、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて減少し、投与用量依存的に減少した。
【0050】
前記の方法で製作された肺組織標本を用いて、肺胞面積(肺組織における肺胞の内腔が占める割合)、気管支及び細気管支内に存在する粘液生産細胞の数及び壁の厚さを自動映像分析装置(Analysis Image processing)(SIS Germany)を用いて測定した。肺胞面積はパーセント単位で、気管支及び細気管支内の粘液生産細胞の数は1000細胞中の粘液生産細胞の数で、気管支及び細気管支壁の厚さはμm単位でそれぞれ測定した。
【0051】
その結果は表5に示した。
【0052】
【表5】

※正常群と比較して有意性がある(:p<0.01、**:p<0.05)、
対照群と比較して有意性がある(#:p<0.01、##:p<0.05)
【0053】
表5に示すように、喘息誘発による肺組織内の肺胞面積は、対照群では正常群に比べて有意に減少し(p<0.01)、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて有意に増加し(p<0.01)、投与用量依存的に増加した。
【0054】
また、喘息誘発による肺組織内の気管支壁及び細気管支壁の厚さ、気管支及び細気管支の上皮の粘液生産細胞の数は、対照群では正常群に比べて有意に増加し(p<0.01)、化学式1のベンズアミジン化合物投与群では対照群に比べて有意に減少し(p<0.01またはp<0.05)、投与用量依存的に減少した。
【0055】
したがって、化学式1のベンズアミジン化合物は喘息による炎症反応を著しく抑制させることが分かる。
【0056】
9.統計処理
全ての数値は、平均標準偏差で表示し、正常群または対照群と比較してSPSS(Release 6.1.3.、SPSS Inc.、USA)を用いてMann−Whitney U−Wilcoxon Rank Sum法で有意性を検証した。
【0057】
また、同様に、N−ヒドロキシ−4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}ベンズアミジンのメタンスルホン酸塩及び塩酸塩、4−{5−[4−(5−イソプロピル−2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)フェノキシ]ペントキシ}ベンズアミジン及びそのメタンスルホン酸塩及び塩酸塩も、前述と類似の治癒効果を示した。
【0058】
〔産業上の利用可能性〕
本発明の組成物は、喘息の際に誘発される肺気管支洗浄液内好酸球の増加、血中総白血球数及び好酸球の増加、気管支上皮の粘液生産細胞の増加による肥厚または増生、肺胞壁の肥厚による肺胞面積の減少及び炎症細胞の浸潤などの典型的な慢性炎症を減少させることにより、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療に有用に使用することができる。
【0059】
本発明の好適な実施例を例示の目的で開示したが、当業者であれば、添付した特許請求範囲に開示されたような本発明の精神及び範囲から逸脱しないで多様な変形、付加及び代替ができることが理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、喘息を誘発した後に摘出した肺の組織切片をマッソン・トリクローム(Masson's trichrome)染色を施して光学顕微鏡で観察した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表わされるベンズアミジン化合物またはその薬学的に許容される塩を含む、アレルギー性炎症疾患の予防及び治療用組成物。
【化1】

(式中、Rは水素またはヒドロキシ基である。)
【請求項2】
前記塩がメタンスルホン酸塩または塩酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アレルギー性炎症疾患が、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎及び蕁麻疹よりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アレルギー性炎症疾患が喘息またはアレルギー性鼻炎である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
下記化学式1で表わされるベンズアミジン化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物をアレルギー性炎症患者に投与し、アレルギー性炎症疾患を治療または予防する方法。
【化2】

(式中、Rは水素またはヒドロキシ基である。)

【図1】
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【公表番号】特表2008−505069(P2008−505069A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519133(P2007−519133)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【国際出願番号】PCT/KR2005/002139
【国際公開番号】WO2006/004370
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507001911)ドン ファ ファーマシューティカル インダストリー カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】