説明

アレルゲンの定量方法

本発明は、a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であり、かつ任意に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、該アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、該ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、ここで、少なくとも、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドの両方が標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドの標識に用いられる標識物質が、分解されたアレルゲンサンプルのペプチドの標識に用いられる標識物質とは異なり、c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルの対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量することを含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アレルゲンの定量の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
アレルゲンは、ヒトにおいてアレルギー性応答及びIgE抗体産生を誘導する抗原性分子である。これらは、アレルギーの診断と、治療、すなわちアレルゲン免疫療法とにともに用いられ、後者ではアレルゲンワクチンの形で用いられる。食物、花粉又はダニの糞粒子のようなヒトが曝露されるアレルゲンの供給源となる物質は、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの複合混合物として天然に存在する。メジャーアレルゲンは、その供給源にアレルギー性である患者の大多数が反応するアレルゲンである。しかし、いずれのタンパク質も潜在的なアレルゲンのようである。なぜなら、知見の増加に伴って、より多くのマイナーアレルゲンが同定されるからである。
【0003】
アレルゲン供給源の複雑性のために、いくつかのアレルゲンのアミノ酸配列は、まず、cDNA由来ヌクレオチド配列から導き出された。アレルゲンをコードする遺伝子のクローニングにより、ほとんどのアレルゲンは不均質であり、これらはイソアレルゲン及び変異型の混合物として存在することが明らかになった。同属アレルゲン及びイソアレルゲンのアミノ酸配列のアラインメントにより、これらは定常領域配列と可変領域配列とにより同定できるか、及び/又はこれらに分けることができることが示された。定常領域アミノ酸配列は種に特有(unique)であるが、可変領域アミノ酸配列はイソアレルゲンのそれぞれに特有である。
【0004】
従来のアレルゲン特異的な免疫療法及び診断は、現在、アレルゲンワクチンにさらに処方される標準化された天然アレルゲン抽出物の使用により行われている。これらの水性ワクチンは、アレルゲン性の天然供給源物質、例えば木本及びイネ科草本(grass)の花粉、チリダニ培養物並びに動物の体毛及び鱗屑粒子に基づく。これらの天然供給源物質の組成は、アレルゲン供給源物質の採取の時期及び場所に応じてかなり変動することが知られている。市販のアレルゲンワクチンは、種々の種を用いるアレルゲン混合物にさらに処方できる。
【0005】
抽出物の組成及び必須アレルゲンの含量の知見は、最終製品の再現性、安全性及び効力のために必須である。アレルゲンワクチンの製造における主要な目標は、標準化、すなわちバッチ間の一定の力価を確実にすることである。原材料が天然起源であるので、変動はかなり大きく、科学的な測定により制御される必要がある。抽出物の組成は、アレルゲン供給源物質の水溶性成分の組成を理想的には反映するはずである。なぜなら、それは気道の粘膜表面で抽出され、ヒトの免疫系に提示されるからである。しかし、全ての抽出物は、個別の患者について異なる組み合わせで全IgE結合に寄与するいくつかのアレルゲンを含有する。よって、理想的には、全ての成分は量的及び質的に制御されている必要があるが、現在の技術ではこのことは実行可能ではない。
【0006】
標準化は、現在、多くの異なる様式で行われている。なぜなら、各製造者は、企業で独自の標準化手順を持っているからである。標準化は、SDS-PAGE、種々の免疫電気泳動(QIE)に加えて等電点電気泳動、並びにモノクローナル及び/又はポリクローナル抗体を用いるELISA法、及びラジオアルゴソルベント(RAST)又は関連する方法のような方法により行われる。SQ標準化手順のような最適のバッチ間標準化は、本質的に3工程の手順である:1) 半定量的免疫電気泳動法により、最適組成及び全ての成分同士の間での一定の比を確実にし、2) 定量的免疫電気泳動によりメジャーアレルゲン成分を決定し、3) Magic Lite (登録商標)アッセイで決定される全体的なIgE結合力価を調整する。欧州では、全ての標準化は、現在、企業内の独自の参照調製物に対して行われているが、米国では、FDAが、全ての製造者により用いられる基準を発行している。これらの現在用いられている全ての方法の定量についての側面は、時間とともに変化しやすい反応物としての抗体に依存する。
【0007】
アレルゲンの複合混合物中の特定のワクチン成分の絶対定量は単純ではなく、感度の高い、日常的なハイスループットの技術としてはまだ確立されていない。
【0008】
食品業界においても、食物アレルゲンの信頼できる検出及び定量のための日常的なハイスループットの技術が必要である。ナッツは、製造中の不慮のクロスコンタミネーションにより、食品の隠された部分と見られるだろう。例えばナッツを用いるか又は用いずに類似の食品を製造している企業は、異なる種類の食品を製造する間に製造設備を洗浄することは困難であろう。以前に製造された食品の痕跡、例えばナッツが、設備に残存し得る。同じ設備を通過するナッツを用いずに製造される食品の最初のバッチは、微量のナッツを含有する可能性がある。ナッツ又は落花生のクロスコンタミネーションによりアレルギー反応の原因となり得る食品は、例えばチョコレート、キャンデー、クッキー、デザート、スイーツ、ドーナッツ、シリアル、ミルクシェイク、グラノーラバー、ムースリ、パイ、マフィン、アイスクリーム、バーベキューソースである。牛乳も、乳製品、牛乳、牛乳ベースの調合乳、又は乳からのタンパク質を含有するベビーフードからの少量の乳タンパク質でアレルギー反応を引き起こし得る。よって、乳アレルギーの小児へのベビーフード又は幼児用調合乳の製造の間の乳タンパク質のコンタミネーションを避けるために、乳アレルゲンの検出及び定量の方法が必要である。食物アレルゲンについての信頼できる検出及び定量の方法は、食物の表示の遵守を確実にするため、及び消費者保護を向上させるために必要である。
物理化学的方法、例えば質量分析法、及び免疫学的方法が記載されている。感度、特異性、再現性、精密度及び正確度の通常の基準が満たされなければならない。しかし、交差反応性、マトリクス効果及び食品加工の問題は残る。生物活性は、タンパク質が変性されても残るだろう。
【0009】
生物学的質量分析法(MS)は、まず、分子量を評価し、タンパク質及びペプチドを同定するために用いられた。最近では、血漿、細胞及び組織サンプルのような複合混合物からの多様な生物分子の定量のために用いることができる技術において、質量分析法の進歩がもたらされている。初期の定量技術は、タンパク質の相対的定量しか確立しなかったが、より最近の技術は、興味のある分子の絶対量を評価する。定量技術の迅速な発展は、主に、特に例えば健康及び疾患の状態を区別する用途、並びに癌、リウマチ性関節炎及びアルツハイマー病のようないくつかの疾患用のマーカー分子の同定におけるプロテオミクスの分野での進歩による。MSによるこれらの定量技術の主要な利点は、サンプルの300 amol〜300 fmolの範囲でのこの技術の高い感度である。
【0010】
WO 2004/070352は、等比重標識試薬又は一連の等比重標識試薬を用いて、内部標準に対してペプチドを定量する方法を開示している。
【0011】
US 6,872,575は、複合サンプル混合物中の1又は複数のタンパク質を、タンパク質を精製せずに又はその混合ペプチドシグネチャーを得ることなく同定する方法を開示している。
【0012】
US 6,864,089は、ペプチド又はタンパク質サンプルの示差同位体標識を用いて定量する方法を開示している。
【0013】
MS技術を用いてタンパク質を定量するその他の方法は、例えば、安定同位体(13C、15N)を組込んで合成された内部校正ペプチドを用いて、例えばトリプシンを用いる酵素消化により形成された天然ペプチドを模倣するAQUA法である(Stemmann Oら Cell 2001;107(6):715〜26, Gerber SAら Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100(12):6940〜5)。
別の方法は、例えば12C/13C6-ニコチン酸3-スクシンイミドをICPL標識として用いる、Kellermannら, Proteomics 5, 4〜15により記載されるICPL (同位体コードタンパク質標識(Isotope Coded Protein Labelling))法である。
【0014】
質量分析法は、グリコシル化パターンのような転写後修飾を含む天然のアレルゲンを特徴付けるためにアレルギー研究の分野に最初に導入された。これは、さらに、組換えイソアレルゲン及び/又は変異型を特徴付けるために用いられ、これらの多くは種々の発現系、例えば大腸菌(Esherica Coli)、ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)及びバキュロウイルス(Baculovirus)発現系で発現されていた。
【0015】
Johannesら, J Allergy Clin Immunol, Vol. 110, No. 1 (2002), 131〜138頁は、PCRクローニングにより同定されたアレルゲンアイソフォームの実際の発現を研究するMSの使用を記載し、Swobodaら, J. Biol Chem, Vol 270, No.6 (1995), 2607〜2613頁では、液体クロマトグラフィー、MS及びcDNAクローニングを用いて、メジャーカンバ(birch)花粉アレルゲンであるBet v 1のアイソフォームを分析している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、同じ種若しくは異なる種からのアレルゲン、及び/又は例えばワクチン中のイソアレルゲンのような活性成分を定量できる感度の高い方法に対する必要性がいまだに存在する。MS技術並びに種特異的アミノ酸配列及びアレルゲン特異的アミノ酸配列を用いる方法は、特定のアレルゲン又はアレルゲンの群(イソアレルゲン又は同属アレルゲン(homologous allergens))の含量を定量できる非常に感度の高い方法を提供する。本発明による方法は、例えば、ワクチンの製造の間、最終製品中、並びに有効成分及び/又は製品の貯蔵の種々の段階の間のアレルゲンの安全で正確な量を確実にするための放出アッセイにおいて有用である。該方法は、例えば、組換えアレルゲンを有効成分として用いる第二世代のアレルゲンワクチンの開発においても有用であろう。このような方法は、現在のワクチンの知識及び/又は組成に基づいて第二世代のアレルゲンワクチン中の有効成分を最適化することができるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
発明の要約
本発明によると、複数の供給源からのアレルゲンの絶対定量の方法が提供される。
ある態様によると、本発明は、以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、該アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、該ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、かつ分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標識ペプチドを標識するために用いられる標識物質が、分解されたアレルゲンサンプルのペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルからの対応するペプチドの量と、質量解析(mass analysis)により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量の定量方法を提供する。
【0018】
本発明のある実施形態において、定量されるアレルゲンは、1より多いイソアレルゲン、例えば>67%より多いアミノ酸配列同一性を有する同じ種からのアレルゲンの群のメンバーからなる。
【0019】
本発明の別の実施形態において、定量されるアレルゲンは、1より多い同属アレルゲンからなる。
【0020】
別の態様によると、本発明は、以下の工程:
a) 定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに見出される配列に特有である(unique)アミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、該アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、該ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、分解されたサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドに用いられる標識物質が、分解されたサンプルのペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたサンプルからの対応するペプチドの量と、質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量する方法を提供する。
【0021】
本発明のある態様において、定量されるイソアレルゲン又は同属アレルゲンで見出される配列と同一であるアミノ酸配列の使用が、アレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとして提供される。好ましくは、工程b)における分解はペプチドの混合物をもたらすが、それらのペプチドの1つがアレルゲン校正標準ペプチドと同じアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明の別の態様において、定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに特有の配列であるアミノ酸配列の使用が、アレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとして提供される。好ましくは、工程b)における分解はペプチドの混合物をもたらすが、それらのペプチドの1つがアレルゲン校正標準と同じアミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明のさらなる態様において、イソアレルゲン又は同属アレルゲンの定量において用いるためのアレルゲン校正標準ペプチドを得る方法が提供され、ここで、アレルゲン校正標準ペプチドは:
定量されるイソアレルゲン又は同属アレルゲンにおいて定常であるアミノ酸の配列を、イソアレルゲン又は同属アレルゲンの配列同士の比較により同定し、該定常配列を有する合成アレルゲン校正標準ペプチドを調製する
ことにより得られる。
【0024】
本発明のさらなる態様によると、アレルゲン又はイソアレルゲンの定量において用いるためのアレルゲン校正標準ペプチドを得る方法が提供され、ここで、アレルゲン校正標準ペプチドは:
定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに特有であるアミノ酸の可変配列を、該アレルゲン又はイソアレルゲンの配列をその他のイソアレルゲン及び/又は同属アレルゲンと比較することにより同定し、該特有の配列を有する合成アレルゲン校正標準ペプチドを調製する
ことにより得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図面の簡単な説明
図1. ダニグループ2アレルゲンの種(図1a)及びメジャーカンバアレルゲンであるBet v 1 (図1b)の、Vector NTIソフトウェア(Invitrogen)によるアミノ酸配列アラインメント。内部校正標準ペプチドとして評価できる推定のアミノ酸配列(イソアルゲンの定量に有用)は、太字で強調する。
【0026】
図2. チリダニアレルゲンa) Der f 2及びb) Der p 2、c) Phl p 1、d) Phlp 5a e) Phl p 5b及びf) Bet v 1 (GPMAW, Lighthouse data)のトリプシンによる理論的な酵素切断。定量アッセイのために選択される種特異的ペプチドは、太字及び灰色で強調する。
【0027】
図3. a) 精製されかつトリプシン消化された天然Der f 2及びDer p 2の混合物(1:1)のMALDI-TOF MSフィンガープリント解析、並びにb) 精製されかつトリプシン消化された組換えDer f 2及びDer p 2の混合物(1:1)のMALDI-TOF MSフィンガープリント分析。
【0028】
図4. 疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用により分離されたHDM (チリダニ(House Dust Mite))アレルゲン抽出物のSDS-PAGE解析。HDMタンパク質の画分は、2つのメジャータンパク質プール(I及びII)に分配し、さらに、定量解析に供した。
【0029】
図5. アレルゲンの定量においてITRAQ (商標) (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)化学(chemistry)を用いる場合のサンプルの標識のストラテジ。
【0030】
図6. iTRAQで標識されたa) ペプチド1、m/z 2353.44 (Der p 2, 32〜48)、b) ペプチド2、m/z 2326.35 (Der f 2, 32〜48)、c) トリプシン消化されかつiTRAQ標識されたnDer p 2ペプチド、及びd) nDer f 2ペプチドのMS解析。
【0031】
図7. nDer f 2、nDer p 2、ペプチド1及びペプチド2の混合物のMS/MSフラグメンテーション。サンプル混合物中のイソアレルゲン、nDer p 2 (114.10)及びDer f 2 (115.10)の量は、m/z 114のシグナル領域のm/z 116の領域に対する比(ペプチド1)、及びm/z 115の領域のm/z 117の領域に対する比(ペプチド2)として計算した。
【0032】
図8. SCXクロマトグラフィーからのnDer f 2、nDer p 2、ペプチド1及びペプチド2の混合物の逆相解析。MS解析及びMS/MS解析を用いて、MALDI-TOFターゲットにスポットしたピークを同定した。
【0033】
図9. トリプシン処理したnBet v 1及び内部校正標準(AQUAペプチド)の混合物のMS解析。天然ペプチドと校正標準との間の6 Daの質量の差が、図の上部の隅に示される。
【0034】
発明の詳細な説明
本発明の関係において、用語「アレルゲン」は、アレルギー反応、すなわち個体へのそれらの曝露の繰り返しによるIgE媒介反応を誘発すると報告されているいずれの天然に存在するタンパク質、改変されたタンパク質、組換えタンパク質、組換え変異タンパク質又はそれらのいずれのタンパク質フラグメント又はタンパク質の混合物のことをいう。
天然に存在するアレルゲンの例は、花粉アレルゲン(木本、ハーブ、雑草(weed)、イネ科草本の花粉アレルゲン)、ダニアレルゲン(例えばチリダニ及び貯蔵庫ダニ(storage mites)に由来)、昆虫アレルゲン(吸入物、唾液、及び毒物起源のアレルゲン)、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ラット、マウスなどに由来する例えば唾液、体毛及び鱗屑からの動物アレルゲン、真菌アレルゲン並びに食物アレルゲンを含む。
【0035】
木本、イネ科草本及びハーブからの重要な花粉アレルゲンは、分類学上の、ブナ目(Fagales)、モクセイ目(Oleales)、マツ目(Pinales)及びスズカケノキ科(platanaceae)(とりわけ、カンバ(Birch)(カバノキ属(Betula))、ハンノキ(alder)(ハンノキ属(Alnus))、セイヨウハシバミ(hazel)(ハシバミ属(Corylus))、セイヨウシデ(hornbeam)(クマシデ属(Carpinus))、オリーブ(olive)(オリーブ属(Olea))、シーダー(cedar)(スギ属(Cryptomeria)及びビャクシン属(Juniperus))、プラタナス(Plane tree)(プラタナス属(Platanus))が挙げられる)、イネ目(Poales)(とりわけ、ドクムギ属(Lolium)、アワガエリ属(Phleum)、イチゴツナギ属(Poa)、ギョウギシバ属(Cynodon)、カモガヤ属(Dactylis)、シラゲガヤ属(Holcus)、クサヨシ属(Phalaris)、ライムギ属(Secale)及びモロコシ属(Sorghum)のイネ科草本が挙げられる)、キク目(Asterales)及びイラクサ目(Urticales)(とりわけ、ブタクサ属(Ambrosia)、ヨモギ属(Artemisia)及びヒカゲミズ属(Parietaria)のハーブが挙げられる)に由来するものである。
【0036】
その他の重要な吸入アレルゲンは、ヒョウヒ属(Dermatophagoides)及びユーログリファス属(Euroglyphus)のチリダニ、貯蔵庫ダニ(例えば、レピドグリフィス属(Lepidoglyphys)、ニクダニ属(Glycyphagus)及びケナガコナダニ属(Tyrophagus))に由来するもの、ゴキブリ、ユスリカ及びノミ(例えば、チャバネゴキブリ属(Blatella)、ペリプラネタ属(Periplaneta)、キロノムス属(Chironomus)及びクテノケファリデス属(Ctenocephalides))に由来するもの、及び哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ及びウマ)に由来するもの、毒物アレルゲン(刺すか又は噛み付く昆虫(分類学上のハチ目(Hymenoptera)(ミツバチ(ミツバチ上科(superfamily Apidae))、スズメバチ(スズメバチ上科(superfamily Vespidea))及びアリ(アリ上科(superfamily Formicoidae))を含む)に由来するもの)である。真菌に由来する重要な吸入アレルゲンは、とりわけ、アルテルナリア属(Alternaria)、クラドスポリウム属(Cladosporium)、アスペルギルス属(Aspergillus)及びペニシリウム属(Penicillium)に由来するものである。
【0037】
食物アレルゲンの例は、コムギ(例えばTri a 18-19)、甲殻類の食物(例えばシバエビ(shrimp) (例えばMet e 1、Pen a 1、Pen I 1、Pen m 1及びPen m 2)、テナガエビ(prawn)、カニ(crab)及びロブスターが挙げられる)、魚類(例えばGad c 1及びSal s 1)、鶏卵(例えばGal d 1, Gal d 2)、落花生(例えばAra h 1-8)、ダイズ(Gly m 1-4)、牛乳(Bos d 4-8)、アーモンド(Pru du 4)、ブラジルナッツ(Ber e 1、Ber e 2)、カシューナッツ(Ana o 1-3)、ヘーゼルナッツ(例えばCor a 1.04、Cor a 2、Cor a 8)及びクルミ(例えばJug n 1-2、Jug r 1-3)のようなナッツ類、セロリ(Api g 1、Api g 4、Api g 5)、マスタード(Sin a 1及びBra j 1)、及びゴマの実(Ses i 1-6)に由来するアレルゲンであり、特にコムギ(例えばTri a 18-19)、鶏卵(例えばGal d 1、Gal d 2)、ピーナッツ(例えばAra h 1-8)、ダイズ(Gly m 1-4)、牛乳(Bos d 4-8)に由来するアレルゲンである。
【0038】
組換えアレルゲンの例としては、限定されないが、組換え技術を用いて調製される植物花粉、イネ科草本花粉、木本花粉、雑草花粉、昆虫毒物、チリダニ及び貯蔵庫ダニのタンパク質、動物の鱗屑、唾液、真菌の胞子並びに食物アレルゲン(すなわち、ピーナッツ、乳、グルテン及び卵)に由来するタンパク質/ペプチドが挙げられる。組換えアレルゲンは、例えば、発酵槽で成長できる微生物発現系を用いることによる大規模で、組換えDNA技術により、又は化学的に合成する場合は化学的な前駆体若しくは化学物質を用いて、得ることができる。本発明のある実施形態において、アレルゲンは、rBet v 1、rAln g 1、rCor a 1、rCar b 1、rCry j 1、rCry j 2、rOle e 1、rAmb a 1、rArt v 1、rCyn d 1、rDac g 1、rLol p 1、rLol p 5、rPhl p 1、rPhl p 5、rPoa p 1、rPoa p 5、rSor h 1、rDer f 1、rDer f 2、rDer p 1、rDer p 2、rEur m 1、rEur m 2、rGly d 1、rLep d 2、rBla g 1、rBla g 2、rFel d 1、rCan f 1、rCan f 2、rBos d 2、rEqu c 1、rEqu c 2、rMus m 1、rApis m 1、rApi m 2、rVes v 1、rVes v 2、rVes v 5、rDol m 1、rDol m 2、rDol m 5、rPol a 1、rPol a 2、rPol a 5、rAlt a 1又はrCla h 1 (rは組換えを意味する)である。
【0039】
組換え変異アレルゲンは、アレルゲンの遺伝子が、それらがコードするポリペプチドが野生型に比べて個別又はいくつかのアミノ酸の置換、欠失及び/又は付加を示すように遺伝子操作により改変されている点で野生型から異なっている。組換え変異アレルゲンの例としては、アレルゲン置換変異型、付加変異型、オリゴマー、フラグメント、欠失変異型、ハイブリッド分子及びその他の変異型が挙げられる。
【0040】
改変アレルゲンの例は、天然に存在する形が感受性の高い対象でのアレルギー性疾患状態に関連するアレルゲンを含み、ここで、該改変組換えアレルゲンは、天然に存在するアレルゲンに比較して変更されている。2〜3の(a few)アミノ酸の交換を含むアレルゲン変異型、アレルゲン変異体、オリゴマー、フラグメント、欠失変異型、ハイブリッド分子、ミリスチル化(myristylated)、グリコシル化、パルミトイル化、及びリン酸化されたアレルゲン、並びにその他の変異型が挙げられる。改変アレルゲンは、いずれの適切な方法、例えば部位特異的突然変異誘発法、PCR法、化学合成及びこれらの方法の混合により製造できる。
【0041】
本発明のある実施形態において、定量されるアレルゲンは、Bet v 1、Aln g 1、Cor a 1及びCar b 1、Que a 1、Cry j 1、Cry j 2、Cup a 1、Cup s 1、Jun a 1、Jun a 2、Jun a 3、Ole e 1、Lig v 1、Syr v 1、Pla l 1、Pla a 1、Pla a 2、Amb a 1、Amb a 2、Amb t 5、Art v 1、Art v 2、Art v 3、Par j 1、Par j 2、Par j 3、Sal k 1、Ave e 1、Cyn d 1、Cyn d 7、Dac g 1、Fes p 1、Hol l 1、Lol p 1及び5、Pha a 1、Pas n 1、Phl p 1、Phl p 2、Phl p 3、Phl p 4、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Sec c 1、Sec c 5、Sor h 1、Der f 1、Der f 2、Der f 3、Der f 7、Der p 1、Der p 2、Der p 3、Der p 7、Der m 1、Eur m 1、Eur m 2、Gly d 1、Gly d 2、Lep d 1、Lep d 2、Blo t 1、Tyr p 2、Bla g 1、Bla g 2、Per a 1、Per a 3、Per a 7、Fel d 1、Fel d 2、Fel d 3、Fel d 4、Can f 1、Can f 2、Bos d 2、Equ c 1、Equ c 2、Equ c 3、Mus m 1、Rat n 1、Apis m 1、Api m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Ves f 5、Ves g 5、Ves m 1、Ves m 2、Ves m 5、Ves p 5、Ves s 5、Ves vi 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Dol a 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Sol i 1、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4、Alt a 1、Alt a 3、Alt a 4、Alt a 5、Alt a 6、Cla h 1、Cla h 2、Cla h 6 Asp f 1、Bos d 4、Mal d 1、Mal d 3、Gly m 1、Gly m 2、Gly m 3、Ara h 1、Ara h 2、Ara h 3、Ara h 4、Ara h 5又はこれらのいずれのハイブリッドの群の1又は複数から選択される。
【0042】
本発明の別の実施形態において、定量されるアレルゲンは、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Dac g 1、Fes p 1、Lol p 1及びLol p 5のようなイネ科草本花粉アレルゲン、Der f 1、Der f 2、Der p 1及びDer p 2のようなチリダニアレルゲン、Api m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Dol a 5、Pol a 1、Pol a 2及びPol a 5のような毒物アレルゲン、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1及びPar m 1のような雑草アレルゲン、Bet v 1のようなカンバアレルゲン、Cry j 1及びCry j 2のようなニホンスギ(Japanese cedar)アレルゲン、Per a 1のようなゴキブリアレルゲン、Ole e 1のようなオリーブアレルゲン、Fel d 1のようなネコアレルゲン、Can f 1及びCan f 2のようなイヌアレルゲン、Equ c 1及びEqu c 2のようなウマアレルゲン、Art v 1、Art v 2、Art v 3のようなヨモギ(mugworth)アレルゲン、Alt a 1、Alt a 3、Alt a 4、Alt a 5、Alt a 6、Cla h 1、Cla h 2及びCla h 6のようなカビ(mold)アレルゲン、並びにSol i 2、Sol i 3及びSol i 4のようなフシアリ(fire ant)アレルゲンの群の1つ又は複数から選択される。
【0043】
本発明のさらなる実施形態において、定量されるアレルゲンは、Phl p 1、Phl p 5及びPhl p 6のようなイネ科草本花粉アレルゲン、Ole e 1のようなオリーブ花粉アレルゲン、Der f 1、Der f 2、Der p 1及びDer p 2のようなチリダニアレルゲン、Ves v 1、Ves v 2及びVes v 5のような毒物アレルゲン、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1及びPar m 1のような雑草アレルゲン、並びにBet v 1、Cry j 1及びCry j 2のような木本アレルゲンの群の1又は複数から選択される。
【0044】
さらなる実施形態において、定量されるアレルゲンは、Der f 1、Der p 1、Der f 2及びDer p 2のイソアレルゲンから選択される1又は複数である。
さらなる実施形態において、定量されるアレルゲンは、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Dac g 1、Fes p 1、Lol p 1、Lol p 5から選択される1又は複数である。
さらなる実施形態において、定量されるアレルゲンは、Amb a 1及びAmb a 2のイソアレルゲンから選択される1又は複数である。
【0045】
単独の種からのアレルゲンは、いくつかの密接に類似する分子からなり得る。これらの類似の分子は、以下の共通の生化学的特性を共有するときに、イソアレルゲンと呼ばれる:a. 類似の分子サイズ;b. もし既知であれば同一の生物学的機能、例えば酵素作用;並びにc. >67%のアミノ酸配列同一性。本明細書の関係において、>67%のアミノ酸配列同一性を有しかつ同じ種に由来するアレルゲン群のメンバーは、イソアレルゲンと呼ばれる。各イソアレルゲンは、2〜3のアミノ酸が異なるだけの密接に類似する配列の複数の形を有し得る。これらは、変異型と呼ばれ、本明細書の関係において用語「イソアレルゲン」に含まれる。
【0046】
本明細書の関係において、用語「同属アレルゲン」は、類似の3次元構造、分子サイズ、知られていれば同一の生物学的機能、例えば酵素作用を共有すると考えられる異なる種に由来するアレルゲンのことであり、これらは、IgE抗体についての構造的エピトープを共有し得る。本発明によるさらなる実施形態において、同属アレルゲン同士は、>20%のアミノ酸配列の同一性を有し、好ましくは少なくとも2〜20、より好ましくは4〜15、最も好ましくは6〜10のアミノ酸の配列の共通のアミノ酸定常配列を共有する。
【0047】
同属アレルゲンの例として、例えばAmp m 2とVes v 2、及びDer f 2とDer p 2が挙げられる。
【0048】
本明細書の関係において、「アレルゲン抽出物」の表現は、Allergy, principle and practice (S. Manning編) 1993, Mosby-Year Book, St. Louisの"Allergenic extracts", H. Ipsenら、第20章に一般的に記載されるような、生物学的アレルゲン供給源物質の抽出により得られるいずれの抽出物のことをいう。このような抽出物は、水溶性物質の水性抽出、続いてろ過のような精製工程により溶液、すなわち抽出物を得ることにより、得ることができる。次いで、該抽出物は、実質的に全ての水分を除去する凍結乾燥のようなさらなる精製及び/又は処理に供することができる。一般的に、アレルゲン抽出物は、タンパク質及びその他の分子の混合物を含む。アレルゲンタンパク質は、しばしば、メジャーアレルゲン又は中間(intermediate)アレルゲン、マイナーアレルゲンとして分類されるか、或いは分類がない。一般的にアレルゲン抽出物は、メジャーアレルゲン及びマイナーアレルゲンの両方を含む。メジャーアレルゲンは、一般的に、平均的なアレルゲン抽出物の約5〜15%、より頻繁には約10%を構成する。アレルゲンの分類は、特定のアレルゲンの臨床的重要性の評価に基づき、以下に与えられる。抽出物中に見出される重要なメジャーアレルゲンの例は、イネ科草本グループ1及び5及び6アレルゲン(例えばPhl p 1、5及び6)、チリダニグループ1及び2アレルゲン(例えばDer p 1、Der p 2)、木本花粉アレルゲン1 (Bet v 1)、シーダー花粉アレルゲン1及び2 (例えばCry j 1、Cry j 2)、ブタクサ(ragweed)花粉1及び2 (Amb a 1、Amb a 2)、ネコアレルゲン1 (すなわちFel d1)が挙げられる。
【0049】
本明細書において用いる場合、「生物学的アレルゲン供給源物質」の表現は、1又は複数のアレルゲンを含むいずれの生物学的物質のことである。このような物質の例は、コナダニ(acarids) PMB (ダニの純体(Pure Mite Body))又はWMC (全ダニ培養物(Whole Mite Culture))、例えばイネ科草本、ハーブ、雑草及び木本由来の脱脂又は非脱脂花粉、動物の体毛及び鱗屑、裸皮(pelt)、真菌の菌糸及び胞子、昆虫の体、毒物又は唾液、並びに食物である。
【0050】
生物学的アレルゲン供給源物質は、外来花粉並びにアレルゲン花粉供給源物質からの植物及び花の破片のような混入物質を含み得る。他の種からの花粉への許容される混入の最大レベルは、1%である。これは、また、5重量%の限界で、花及び植物の破片を含まないはずである。
【0051】
本明細書の関係において用いる場合、「アレルゲンワクチン」の用語は、同じアレルギー性供給源から生じるか、又は異なるアレルゲン供給源、例えばそれぞれ異なるイネ科草本及びダニからのイネ科草本グループ1及びイネ科草本グループ5アレルゲン又はダニグループ1及びグループ2アレルゲン、ブタクサ及びオオブタクサ(short and giant ragweed)アレルゲンのような雑草アレルゲン、アルテルナリア及びクラドスポリウムのような異なる真菌アレルゲン、カンバ、セイヨウハシバミ、セイヨウシデ、オーク及びハンノキ(alder)アレルゲンのような木本アレルゲン、落花生、ダイズ及び乳アレルゲンのような食物アレルゲンから生じるかのいずれかの少なくとも1つのアレルゲンを含む。
【0052】
ワクチンの調製は、当該技術において公知である。ワクチンは、典型的には、液体の溶液又は懸濁液のような注射可能なものとして調製される。このようなワクチンは、鼻投与、並びに頬側及び舌下を含む経口投与を可能にするように乳化又は処方されることもできる。問題の免疫原成分は、医薬的に許容されかつ有効成分に適合性の賦形剤と適切に混合できる。適切な賦形剤の例は、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、及びこれらの混合物である。ワクチンは、付加的に、その他の物質、例えば湿潤剤、乳化剤、緩衝剤又はワクチンの効率を増進するアジュバントを含有できる。
【0053】
本発明のある態様によると、以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を提供し、該アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、該ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、かつ分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドを標識するために用いられる標識物質が、分解されたアレルゲンサンプルのペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルからの対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量する方法が提供される。
【0054】
本発明のある実施形態において、校正標準ペプチドと分解されたサンプルのペプチドはともに、異なる標識物質を用いてではあるが、標識される。
本発明の別の実施形態において、校正標準ペプチドは標識されるが、分解されたサンプルのペプチドは標識されない。
本発明のさらなる実施形態によると、アレルゲン校正標準ペプチドは標識されないが、分解されたアレルゲンサンプルのペプチドは標識される。
【0055】
上記のような本発明の好ましい実施形態において、1つのアレルゲン校正標準ペプチドが工程a)において準備される。つまり、好ましくは、1つのアレルゲン校正標準ペプチドのみがそれぞれのアレルゲンサンプルについて用いられる。
【0056】
本発明のさらに好ましい実施形態によると、工程b)において、分解されたサンプルは、標識される場合、1つの標識物質のみで標識される。
よって、好ましくは、工程a)において1つのアレルゲン校正標準ペプチドのみが提供され、標識される場合、工程b)において、分解されたサンプルは1つの標識物質で標識されるのみである。
さらに、標識される場合、校正標準ペプチドは、好ましくは、1つの標識物質のみで標識される。
【0057】
MSのような質量解析自体は、本発明に従って提供されるアレルゲンサンプルとアレルゲン校正標準ペプチドとのいくつかの対の混合物に対して、その特定のアレルゲンサンプルのために行うことができる。
【0058】
本明細書の関係において、「定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有するアレルゲン校正標準ペプチド」との用語は、定常である、すなわちアレルゲンのイソアレルゲンの群又は定量される同属アレルゲンにおいて同一であるアミノ酸配列領域のことをいう。本発明の好ましい実施形態によると、アレルゲン校正標準ペプチドは、工程b)における定量されるアレルゲン(イソアレルゲン又は同属アレルゲン)の分解が、混合物中のペプチドの1つがアレルゲン校正標準ペプチドと同じアミノ酸配列を含むペプチドの混合物をもたらすように選択される。
【0059】
本発明によると、特定のイソアレルゲン又はアレルゲンを定量することもできる。
この態様によると、本発明は、アレルゲンサンプル中の特定のアレルゲン又はイソアレルゲンを定量する方法であって、以下の工程:
a) 定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに見出される配列に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、該アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、該ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、かつ分解されたサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドに用いられる標識物質が、分解されたサンプルのペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルからの対応するペプチドの量と、質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む方法を提供する。
【0060】
本発明のある具体的な実施形態において、校正標準ペプチドと分解されたサンプルのペプチドとは、異なる標識物質を用いてではあるが、標識される。
【0061】
本発明の別の実施形態において、校正標準ペプチドは標識され、分解されたサンプルのペプチドは標識されない。
本発明のさらなる実施形態によると、アレルゲン校正標準ペプチドは標識されないが、分解されたアレルゲンサンプルのペプチドは標識される。
【0062】
上記のような本発明の好ましい実施形態において、1つのアレルゲン校正標準ペプチドが工程a)において準備される。つまり、好ましくは、1つのアレルゲン校正標準ペプチドのみがそれぞれのアレルゲンサンプルについて用いられる。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施形態によると、工程b)において、分解されたサンプルは、標識される場合、1つの標識物質のみで標識される。
よって、好ましくは、工程a)において1つのアレルゲン校正標準ペプチドのみが提供され、標識される場合、工程b)において、分解されたサンプルは1つの標識物質で標識されるのみである。
さらに、標識される場合、校正標準ペプチドは、好ましくは、1つの標識物質のみで標識される。
【0064】
MSのような質量解析自体は、本発明に従って提供されるアレルゲンサンプルとアレルゲン校正標準ペプチドとのいくつかの対の混合物に対して、その特定のアレルゲンサンプルのために行うことができる。
【0065】
本明細書の関係において、「定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに特有であるアミノ酸配列を有するアレルゲン校正標準ペプチド」との用語は、可変である、すなわち定量されるイソアレルゲン又はアレルゲンに特有であるアミノ酸配列領域のことをいう。本発明の好ましい実施形態によると、工程b)における定量されるアレルゲンの分解は、ペプチドの1つがアレルゲン校正標準ペプチドと同じアミノ酸配列を含むペプチドの混合物をもたらす。
【0066】
アレルゲン校正標準ペプチド中のアミノ酸の数は、好ましくは2〜20アミノ酸の範囲、より好ましくは4〜15の範囲、最も好ましくは6〜15の範囲である。この数は、サンプルが酵素により切断される場合に、サンプル内のアミノ酸配列、すなわち定常又は可変領域の配列に適合すると見出される最適な酵素切断部位に依存する。さらに、本発明に従って用いられるアレルゲン校正標準は、MS装置で解析される場合に、検出可能なシグナル及びフラグメンテーションを得るために用いられる標識及び定量方法に依存する。
【0067】
この関係において、用語「アレルゲンサンプル」とは、1又は複数のアレルゲンを含むサンプルのことをいう。
【0068】
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは、アレルゲン抽出物、天然に存在する精製されたアレルゲン、改変されたアレルゲン、組換えアレルゲン、組換え変異アレルゲン、いずれのアレルゲンフラグメント、イソアレルゲンの混合物、若しくは同属アレルゲンの混合物、又はそれらの組み合わせ、及び精製された天然若しくは組換えのアレルゲンと人工的にスパイクされたアレルゲン抽出物を含む。
【0069】
アレルゲンサンプルは、錠剤若しくは液剤の形のアレルゲンワクチンのような最終製品の形、又は生物学的アレルゲン供給源物質又は原材料の抽出後のような生産の間に採取される生成物/中間体の形であり得る。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、アレルゲンサンプルは、アレルゲン抽出物、錠剤の形の最終製品、又は中間生成物の形である。
【0071】
本発明のある態様において、アレルゲン抽出物は、天然アレルゲン及び組換えアレルゲンを含むアレルゲン抽出物として提供され、天然抽出物中のアレルゲンの量を定量し、最終抽出物中の所望のアレルゲンの量を得るために抽出物に組換えアレルゲン又は天然精製アレルゲンを加えることにより得られるものであり、例えば精製された天然のアレルゲン又は組換えアレルゲンと人工的にスパイクされた天然抽出物のようなものである。
【0072】
本発明による方法は、アレルゲンサンプル中の、1又は複数の種に由来する、イソアレルゲン又は同属アレルゲンとして存在しかつアミノ酸の定常配列を共通して有する1又は複数のアレルゲンを、同時に又は1の操作で定量することを可能にする。
本発明による方法を用いて、アレルゲンサンプル中の種のイソアレルゲンを同時に、又は1の手順で定量することができる。
【0073】
サンプルに応じて、適切な溶液を得るために、変性剤及び緩衝溶液を用いることが必要であり得る。
【0074】
サンプルが、本発明による方法に干渉し得る例えばDTT又はメルカプトエタノールのようなチオール、例えばSDS、オクチルB-D-グルコピラノシド及びTriton (登録商標) X-100のような高濃度の界面活性剤及び/又は変性剤、及び/又は活性プロテアーゼ又は1級アミン(興味のあるアレルゲン以外)のような物質を含有する場合、サンプル調製は、例えばアセトンを用いる沈殿のような種々の処理を含み得る。推奨されるバッファー及び代替の界面活性剤及び/又は変性剤及び本発明による方法に干渉し得る物質は、例えばApplied Biosystems, Foster City, CA, USAからのApplied Biosystems iTRAQTM Reagents Amine-Modifying Labeling Reagents for Multiplexed Relative and Absolute Protein Quantification Protocolに列挙されている。
【0075】
例えば、サンプル中の興味のあるアレルゲンの検出を干渉する分子が存在するならば、サンプルの複雑性に応じて、分解の前にサンプルを予め分画することが有利であろう。サンプルは、その処方から及び/又はいずれのアジュバント、例えば水酸化アルミニウム若しくはリン酸カルシウムから分離/溶出する必要があってもよい。複雑性がより低い混合物を得るために、サンプルは、種々のクロマトグラフィー技術、例えば疎水性相互作用、イオン交換及び/又はイムノアフィニティクロマトグラフィーの使用により分画できる。
【0076】
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは、予備的分画により得られる画分、例えば1又は複数のイソアレルゲンを含むアレルゲン抽出物画分である。
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは、サンプルがサイズ、溶解性、電荷及び/又はリガンド特異性により分画される予備的分画工程からの画分である。本発明のさらなる実施形態において、予備的分画は、クロマトグラフィー、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又はアフィニティクロマトグラフィー、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィーにより行われる。
【0077】
疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用によるHDMグループ1及び2のアレルゲンを含有する中間生成物の予備的分画の例を、図4に示す。HDMグループ1及び2のアレルゲンをそれぞれ含有する画分を、それらの物理化学的特性により分離し、免疫沈降により同定する。ついで、両方の画分を、定量研究に供することができる。
【0078】
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは、クロマトグラフィー後に脱塩される。
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは還元され、分解の前に、いずれのシステイン残基は、例えばアルキル化によりブロックされる。
【0079】
本発明によると、サンプルは、ペプチドの混合物を得るために、1又は複数の酵素での処理により分解される。酵素は、アレルゲン校正標準ペプチドとの比較により同定及び定量できるペプチドを得ることを可能にするよく予測できる分解パターンを有するように選択できる。酵素は、1若しくは複数のプロテアーゼ、例えば2つのプロテアーゼ又は1若しくは複数のその他の酵素であり得る。タンパク質分解酵素の例は、トリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン及びカルボキシペプチダーゼCを含む。例えば、タンパク質分解酵素トリプシンは、リジン又はアルギニンと不特定のアミノ酸との間のペプチド結合を切断して、アミン末端(N-末端)及びリジン又はアルギニンカルボキシ末端アミノ酸(C-末端)を生成するセリンプロテアーゼである。このようにして、タンパク質の切断からのペプチドは予測でき、トリプシン消化からのサンプル中のそれらの存在及び/又は量は、それらの起源のタンパク質の存在及び/又は量の指標である。さらに、ペプチドの遊離のアミン末端は、その標識を促進する良好な求核基である。酵素の活性は予測可能であるので、既知の配列のタンパク質の分解から生成されるペプチドの配列は予測できる。この情報を用いて、「理論的な」ペプチド情報を作製できる。例えば実際のサンプルの質量分析の解析からの娘フラグメントイオンのコンピュータ支援解析における「理論的な」ペプチドフラグメントの決定は、よって、1又は複数のペプチドを同定するのに用いることができる。
【0080】
本発明のある実施形態において、アレルゲンサンプルは、少なくとも1つの酵素を用いてサンプルを部分的に又はサンプルを完全に消化することにより、標識の前に分解される。本発明のさらなる実施形態において、酵素は、タンパク質分解酵素、例えばトリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン若しくはカルボキシペプチダーゼC、又はこれらの組み合わせ、例えばArgC、LysC及びトリプシンから選択されるもの若しくはこれらの組み合わせである。本発明のさらなる実施形態において、酵素はトリプシンである。
【0081】
消化されたサンプルは、必要であれば、任意のいくつかの方法により標識の前に準備できる。
【0082】
当業者には、アレルゲンペプチドの定量を可能にする異なる質量修飾官能基を所定の方式で導入するために、サンプル及びアレルゲン校正標準ペプチドを標識するための多数の可能性があることが明らかであろう。標識は、参照により本明細書に組込まれるWO 2004/070352、US 6,864,089、Stemmann Oら Cell 2001; 107(6):715〜26及びGerber SAら Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100(12):6940〜5に記載されるようにして行うことができる。
【0083】
本発明のある実施形態において、標識は、ITRAQ (商標)化学(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いる。
【0084】
本発明のこの実施形態によると、分解されたアレルゲンサンプル及び/又は校正標準ペプチドの標識は、一連の異性体又は同重体標識試薬、例えばiTRAQ (商標)試薬(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)により行われる。これらの試薬のそれぞれは、分析物と反応する反応性基(RG)と、MS/MS解析において特有の「シグネチャーイオン」を生成するユニークレポーター基(RP)とを含有する。これらの2つの基は、X及びY結合を用いてリンカー部分(LK)とともにさらに連結される。よって、分解されたアレルゲンサンプルの標識は、RP-X-LK-Y-サンプルとよばれる分析物を産生する。この分析物の解析は、X及びY結合の両方がフラグメント化するように質量分析計を調整することにより行われる。結合Xのフラグメンテーションは、分析物からレポーターを放出させ、レポーターは、次いで、分析物からは独立して決定され得る。Y結合のフラグメンテーションは、分析物からのRP-LKの組み合わせを放出させる。よって、フラグメンテーションに基づいて、レポーターの存在及び/又は量を、サンプル中の分析物の存在及び/又は量と相関させることができる。
【0085】
例えば4つのiTRAQ (商標)試薬での標識により、異なるアレルゲンサンプルの絶対定量が同時に可能になる(アレルゲンサンプルは分解され、各ペプチド混合物は異なるiTRAQ (商標)試薬で標識される)。異なるアレルゲンサンプルの同時の解析の可能性により、標識されたペプチド、サンプルの、既知量の校正標準ペプチドとの比較が可能になり、よって、このことにより1工程でのMS/MSの使用による定量及び同定が可能になる。
ITRAQ (商標)及び/又はその他の標識試薬を用いる場合のサンプルの標識は、図5に示すように製造者の手順に従って行うことができる。
【0086】
MS技術を用いるタンパク質の定量の関係における標識のための別の方法は、例えばトリプシンを用いる酵素消化により形成された天然ペプチドを模倣する安定同位体(13C、15N)を組込んで合成した内部校正ペプチドを用いる例えばAQUA法である(Stemmann Oら Cell 2001;107(6):715〜26, Gerber SAら Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100(12):6940〜5)。
別の方法は、例えば12C/13C6-ニコチン酸-スクシンイミドをICPL標識として用いる、Kellermannら, Proteomics 5, 4〜15により記載されるICPL (同位体コードタンパク質標識)法である。
【0087】
本発明のある実施形態において、示唆的に標識されたペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドは、別々に標識され、標識の後で定量の前に混合される。
アレルゲン及び校正標準ペプチドの標識をどのように行うかに応じて、同定の適切な方法が選択できる。
【0088】
本発明のある実施形態において、アレルゲンは、さらに、標識されたアレルゲンペプチドとアレルゲン校正標準ペプチドとをペプチド同定解析により比較することにより、ポジティブに同定される。
【0089】
カチオン交換クロマトグラフィーも、2元クロマトグラフィーとして逆相クロマトグラフィーと組み合わせてペプチドの分離のために、そして必要であれば、MS解析の前にいずれの塩及び有機化合物の量を低減させるために用いることができる。
【0090】
本発明のある実施形態において、定量は、質量分析法を用いて行われる。
【0091】
本発明のさらなる実施形態において、アレルゲン及び/又はイソアレルゲンの同定は、タンデム質量分析計及び分子イオンを選択及びフラグメント化できるその他の質量分析計を用いて行うことができる。これは、iTRAQ (商標)試薬を標識に用いる場合に特に適する。
【0092】
タンデム質量分析計(及びより低い程度であるが1段式質量分析計)は、それらの質量対電荷(m/z)比により分子イオンを選択及びフラグメント化し、次いで、得られたフラグメント(娘)イオンスペクトルを記録する能力を有する。より具体的には、娘フラグメントイオンスペクトルは、選択されたイオンを解離エネルギーレベル(例えば解離をもたらす衝突(collision-results in dissociation) (CID))に供することにより発生させ得る。例えば、特定のm/z比の標識ペプチドに対応するイオンは、第1質量解析から選択され、フラグメント化され、そして第2質量解析において再解析され得る。このようなタンデム質量解析を行うことができる代表的な装置は、限定されないが、磁場4セクター型、タンデム飛行時間型、三重型、四重極型、イオントラップ型、及びハイブリッド四重極飛行時間型(Q-TOF)の質量分析計を含む。
【0093】
これらの種類の質量分析計は、限定されないが、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)及びマトリクス支援レーザ脱離イオン化法(MALDI)を含む、種々のイオン化源とともに用いることができる。イオン化源は、解析物が固定電荷をまだ有していない第1質量解析のために荷電種を発生するのに用いることができる。さらなる質量分析装置及びフラグメンテーション法は、MALDI-MS装置におけるポストソース分解、及びMALDI-TOF (飛行時間)-TOF MSを用いる高エネルギーCIDを含む。タンデム質量分析計の最近の概説については、R. Aebersold及びD. Goodlett, Mass Spectrometry in Proteomics. Chem. Rev. 101: 269-295 (2001)を参照されたい。また、TOF TOF質量解析技術の考察については、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第6,319,476号を参照されたい。
【0094】
アレルゲン校正標準ペプチド(可変又は定常配列)は、行われる定量がアレルゲンについてであるか、又は同属アレルゲン若しくは特定のアレルゲン若しくはイソアレルゲンについてであるかに応じて選択される。
【0095】
本発明のある実施形態において、アレルゲンの絶対定量(アレルゲンのイソアレルゲンの絶対量)を行うことができる。
【0096】
iTRAQ (商標)試薬を用いる場合、選択されるアレルゲン校正標準ペプチドは、アレルゲンペプチドを標識するのに用いられる一連の標識の異性体又は同重体の標識、例えばiTRAQ-114、iTRAQ-115、iTRAQ-116又はiTRAQ-117で標識される。校正標準ペプチド又は標準ペプチドについてのレポーターの相対量が、示差的に標識されたペプチドについてのレポーターの相対量に関して一旦決定されると、サンプル混合物中の示差的に標識されたペプチドの全ての絶対量(しばしば、濃度及び/又は量で表される)を計算でき、それによりアレルゲンの量(例えばサンプルが抽出物である場合に種からのイソアレルゲンの絶対量)を計算できる。ITRAQ (商標)で標識されたサンプルからのMS及びMS/MSの取得は、例えば4700 Explorer (商標)ソフトウェアを用いて行うことができる。さらに、GPS Explorerソフトウェアを用いて、MS/MSからのペプチドの最終的な同定をもたらすであろうデータベース検索を行うことができる。次いで、得られたデータは、アレルゲン校正標準ペプチドの既知量、すなわちサンプルと校正標準ペプチドとの間の比に基づく定量のために用いることができる。
【0097】
本発明による方法は、例えば、ワクチンの生産の間、並びに最終製品中、並びに材料及び/又は生成物の貯蔵の種々の段階の間、並びに原料中のアレルゲンの安全で予測可能な量を確実にするための放出アッセイにおいて有用である。本発明による方法は、例えば組換えアレルゲンを有効成分として用いる第2世代のアレルゲンワクチンを、現在のワクチンの知識及び/又は組成に基づいて第2世代のアレルゲンワクチン中の有効成分を最適化することにより、開発する際に有用である。現在のワクチンは、しばしば、いくつかのアレルゲン種からのアレルゲンを用いて処方されており、上記の方法は、これらのアレルゲン混合物からの種特異的アレルゲンの組成の決定においても有利であろう。本発明による方法は、微量のアレルゲンが測定されるクリーニング妥当性検査、放出アッセイ並びに中間物及び最終製品の分析で用いることができる。
【0098】
校正標準ペプチドとして用いることができるペプチドは、タンパク質及び/又はヌクレオチドのデータベース及び切断解析プログラムを用いて、及び/又はインビトロ質量フィンガープリント実験を行うことにより作製できる。
【0099】
この関係において、用語「アレルゲン校正標準ペプチド」は、それが1より多いイソアレルゲン若しくは同属アレルゲンからなるアレルゲン、又は1つの特定のアレルゲン、又は1つのイソアレルゲンの定量のために用いられるのかに応じて、イソアレルゲン又は同属アレルゲンの群の中の可変又は定常配列のいずれかと同一のアミノ酸配列を有するアレルゲン校正標準のことである。アレルゲン校正ペプチドは、好ましくはペプチド合成により調製される。
【0100】
興味のあるアレルゲンの配列がすでに知られている場合がある。アレルゲンの公式なリストは、例えばI.U.I.Sアレルゲン命名調査会(Allergen Nomenclature Sub-committee)により維持されているウェブサイト(www.allergen.org)で見出すことができる。既知のアレルゲン配列は、タンパク質及びヌクレオチドデータベース、例えばUniprot Knowlegdebaseから得ることができる。タンパク質及び/又はヌクレオチド配列は、例えば配列検索システム(Sequence Retrieval System) (SRS)を用いて、或いは例えばエントリーネーム(ID)、概略(DE)、遺伝子名(GN)、種(OS)及び/又はオルガネラ(OG)を書き込むキーワードを用いることにより検索できる。興味のあるタンパク質/アレルゲンのさらなる分析は、例えばVector NTIソフトウェア(Invitrogen)を用いて、及び/又はSwiss Institute of Bioinformatics (SIB)のExPASy (Expert Protein Analysis System;エキスパートタンパク質解析システム)プロテオミクスサーバを用いることにより行われる。現存するアレルゲンアイソフォーム及びアレルゲンの種の配列アラインメントは、相同タンパク質及び/又はヌクレオチド配列を整列させるのに用いることができる例えばBlastサーチを用いて行われる。配列アラインメントは、例えば新規の配列を、以前に特徴決定された遺伝子及び/又はタンパク質と比較する方法を提供する。同属アレルゲン又はイソアレルゲンの配列アラインメントは、図1に示すように、アレルゲン種のうち又はアレルゲン種同士の間の同一(定常)及び可変の配列を証明するのに用いることができる。
【0101】
最適な校正標準ペプチドを得るために、興味のあるアレルゲンの切断解析を、切断(分解)解析プログラムを用いてシミュレートできる。アレルゲン配列を、例えばMS解析を補助するために創出されたGPMAWプログラム(Lighthouse data, Odense, Denmark)に供することができる。アレルゲン配列の切断(分解)解析は、いくつかの既知のプロテアーゼ、例えばトリプシン、Asp-N及びLys-C及び/又はこれらの2以上の組み合わせについて推定できる。得られる理論的ペプチド(図2)は、次いで、最適な分解酵素を確認するため、及び校正標準ペプチドとして用い得る合成ペプチドをさらに設計するために用いられる。
【0102】
一方、校正標準ペプチドは、アレルゲンが酵素により切断され混合されるインビトロ質量フィンガープリンティング実験から推定できる。種特異的ペプチドは、質量フィンガープリンティング解析により検出でき、例えば以下に記載されるMascot Searchエンジンを用いるデータベース検索により同定できる。
【0103】
精製された天然(n)のDer f 2及びnDer p 2並びに組換え(r)のDer f 2 (A61501)及びDer p 2 (BAA01241)は、25 mM Tris-Cl pH 7.5、1.0 M尿素に溶解できる。組換え分子(rDer f 2及びrDer p 2)及び天然分子(nDer f 2及びnDer p 2)の分割量を、混合する(例えば1:1)か、又はトリプシンにより個別のアレルゲンとして消化し、その後に混合することができる。混合された及び/又は個別のアレルゲンの消化物は、脱塩され、質量フィンガープリンティングにより評価される。種特異的であるペプチドは、これらの2つの種の混合物から質量フィンガープリンティング解析により同定できる。消化された個別のHDM 2アレルゲンは、トリプシンでの消化の後に混合でき、同じ種特異的定常配列を証明できる。種特異的定常配列に基づいて、合成ペプチドを設計できる。ペプチド配列の定量及び確認は、個別のアレルゲン及び校正標準ペプチドを例えばITRAQ (商標)試薬を用いて標識し、タンデム質量分析法(MS/MS)により解析することにより行うことができる。
【0104】
天然のアレルゲン抽出物、例えばHDMの2つの種であるDermatophagoides farinae及びDermatophagoides pteronyssinusの中間生成物(ALK-Abello, Horsholm, Denmark) (1.0 mg/ml乾燥重量)は、溶解される。干渉成分を除去するために、サンプルをアセトンで沈殿させ得る。タンパク質含有沈殿物を、次いで、選択されるバッファーに溶解する。定量の目的のために、サンプル及び校正標準ペプチドとして用いられる2つの種からの選択された合成ペプチドは、例えばITRAQ (商標)試薬を用いて標識し、MS/MSを用いて解析できる。
【0105】
最終製品、例えばチリダニアレルゲン錠剤は、20 mM リン酸Naバッファー、pH 7.0に溶解される。干渉成分を除去するために、サンプルは、予備分画するか、及び/又はアセトンを用いて沈殿させる必要があってよい。溶解された錠剤及び選択された校正標準ペプチドは、例えばITRAQ (商標)試薬を用いて標識し、タンデムMS/MSを用いて解析される。
【0106】
放出研究;最終製品、例えば水酸化アルミニウムと結合させた5つのイネ科草本の種を含む5イネ科草本混合物を、結合したアレルゲンを水酸化アルミニウムから溶出できる選択されたバッファーに溶解する。結合していないアレルゲンをさらに分離し、及び/又は選択された消化バッファー中で脱塩し、選択された校正標準ペプチドを例えばITRAQ (商標)試薬で標識し、定量をMS/MSを用いて評価できる。
【0107】
本発明のいずれの方法に関連して述べた全ての態様及び特徴は、本発明によるその他のいずれの方法に本質的に等しく関連する。
【実施例】
【0108】
実施例
実施例1
天然のDer f 2、Der p 2、Phl p 1、Phl p 5及びBet v 1並びに合成校正標準ペプチドについての特有の定常領域の同定
特有の定常領域配列、すなわち天然のDer f 2、Der p 2、Phl p 1、Phl p 5及びBet v 1中のシグネチャーペプチドを用いるイソアレルゲンの絶対定量を、2つの異なるアプローチを用いることにより証明した。2つの校正標準ペプチドを合成して、iTRAQ (商標)標識法(Applied Biosystems)を評価した。さらに、4つの校正標準ペプチドを合成して、Protein-AQUA (商標) (Sigma-Aldrich)のような安定同位体標識法を評価した。
【0109】
Der f 2及びDer p 2の32〜48、Phl p 1の149〜158、Phl p 5aの123〜135、Phl p 5b aの115〜127、並びにBet v 1の151〜164のアミノ酸配列に相当する種特異的配列を有するアレルゲン校正標準ペプチドを、アミノ酸配列アラインメント(Vector NTI) (図1)、GPMAWによる切断解析(図2)及びBlastデータベース検索に基づいて設計した。トリプシン消化した天然アレルゲンDer f 2、Der p 2、Phl p 1、Phl p 5、Bet v 1、並びに混合されたDer f 2及びDer p 2のインビトロ質量フィンガープリンティング解析を行って、種特異的ペプチドが存在することを証明した。全てのインビトロ消化サンプル及び混合物は、Mascot検索エンジン(Matrix Science Inc., Boston, MA, USA)を用いて同定された。
【0110】
Der f 2及びDer p 2の32〜48のアミノ酸配列に相当する合成ペプチドは、Sigma GENOSYS, Texas, USから得た。ペプチドの濃度は、アミノ酸解析(Sigma GENOSYS, Texas, US)により決定した。Phl p 1の149〜158 (Arg 13C 15N)、Phl p 5aの123〜135 (Arg 13C 15N)、Phl p 5b aの115〜127 (Arg 13C 15N)、及びBet v 1の151〜164 (Val 13C 15N)のアミノ酸配列に相当する安定同位体で標識された合成ペプチド(Protein-AQUA (商標)ペプチド)は、Sigma GENOSYS, Texas, USから得た(表1)。
【0111】
実施例2
天然及び組換えのイネ科草本、カンバ及びダニグループ2アレルゲンの精製
天然のDer f 2及びDer p 2は、100 mgのDermatophagoides farinae抽出物及びDermatophagoides pteronyssinus抽出物(ALK-Abello,Horsholm, Denmark)から精製した。天然のPhl p 1及び5は、50 mgのPhleum prantense抽出物(ALK-Abello)から、及び天然のBet v 1は、50 mgのBetula verrucosa抽出物(ALK-Abello)から精製した。分子の精製は、文献に記載されるようにして行った(Johannessen BRら FEBS Lett 2005;579:1208〜12, Aasmul-Olsen S.ら New Horizons in Allergy Immunotherapy, Sehonら編 Plenum Press. New York 1996, p.261〜65, Petersen Aら Clin Exp Allergy. 1994 Mar;24(3):250〜6, Ipsen H及びLowenstein H J Allergy Clin Immunol. 1983;72(2):150〜59)。組換えDer f 2及びDer p 2は、Pichia pastoris発現系で発現させ、文献に記載されるようにして精製した(Johannessen BRら FEBS Lett 2005;579:1208〜12)。タンパク質は、-20℃にて、凍結乾燥した分割量で貯蔵した。
【0112】
精製アレルゲンの濃度は、A280での1つのイソアレルゲンの吸光係数を用い、Lambda 800 UV/VIS分光計(Perkin Elmer Instruments, CA, USA)を用いて測定した。
【0113】
実施例3
HDM抽出物の予備的分画及びタンパク質消化
疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いて、Dermatophagoides farinae (Der f)及びDermatophagoides pteronyssinus (Der p)の抽出物を予備分画した。ダニ抽出物の分画は、1.0 mlのHiTrap Phenylカラム(GE-Healthcare, Uppsala, Sweden)を用いて行った。カラムを50 mMリン酸Naバッファー(Merck, Darmstadt, Germany), pH 7.0、1.0 M硫酸アンモニウム(Fluka, Buchs, Switzerland)で平衡化し、減少する直線勾配を用いる5カラム容量の50 mMリン酸Naバッファー(Merck), pH 7.0で結合したサンプルを溶出した。クロマトグラフィーは、それぞれのHDM抽出物Der f及びDer pについて別々に行った。画分を、SDS-PAGE (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)により解析し、この解析に基づいて、HDMタンパク質を2つのメジャータンパク質プールに分配した(図4)。HDM 2アレルゲンを含有するDer f及びDer pのプールを、10 mMの重炭酸アンモニウム(BDH, Poole, England)に対する透析工程に供した。透析されたDer f及びDer pのプールを凍結乾燥し、約5 mg (乾燥重量)バイアルに分け、-20℃で凍結貯蔵した。HDM 2アレルゲンを含有するDer f及びDer pの分割量は、さらに、絶対定量研究に供した。
【0114】
実施例4
酵素切断及びiTRAQ標識
iTRAQ (商標)標識は、3つのサンプルの組から行った:
a) 15μgの天然Der f 2及び15μgの天然Der p 2
b) 15μgの組換えDer f 2及び15μgの組換えDer p 2、並びに
c) 100μgの予備分画されたDer f及びDer p抽出物。
【0115】
合成標準ペプチドである15μgのペプチド1 (Der p 2)及び15μgのペプチド2 (Der f 2)を、100 mM 重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB) pH 8.5に溶解し、標識して、以下に記載するような実験の組のそれぞれにおいて内部校正標準として用いた。
【0116】
遊離のシステイン残基のブロッキング、トリプシンを用いる酵素消化、及びiTRAQ (商標)試薬を用いるペプチド標識は、製造業者のプロトコルに従って行った。
【0117】
6つのタンパク質サンプル及び2つの内部構成標準のそれぞれは、20μlの100 mM TEAB, pH 8.5に溶解した。タンパク質サンプルを、1.0μlの0.05% SDSで変性させ、2.0μlの4.8 mM TCEP Tris(2-カルボキシエチル)ホスフィンにより60℃にて還元し、続いて、1.0μlの10 mM s-メチルメタンチオスルホネート(MMTS)により室温でシステイン残基をブロックした。タンパク質サンプルを、10% (w/w) Seq.グレード改変トリプシン(Promega, Madison, WI, USA)を用いて、37℃にて18時間消化した。
【0118】
トリプシン消化したサンプル及び内部構成標準ペプチドであるペプチド1及びペプチド2のiTRAQ (商標)標識は、室温で行った。114〜117の各iTRAQ標識試薬を、70μlの70%エタノールに溶解し、次いでサンプルに適用した。試薬混合物の最終容量は、 100μl/サンプルであった。標識サンプルは、-20℃にて貯蔵した。
【0119】
天然Der p 2、組換えDer p 2及びDer p抽出物のトリプシン消化したペプチドを、iTRAQ-114で標識した。天然Der f 2、組換えDer f 2及びDer f抽出物のトリプシン消化したペプチドを、iTRAQ-115で標識した。合成ペプチドであるペプチド1 (Der p 2)及びペプチド2 (Der f 2)を、iTRAQ-116 (Der p 2)及びiTRAQ-117 (Der f 2)で標識した(図5)。標識したサンプルのそれぞれを、Voyager STR及び/又は4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)により解析して、ペプチドの標識を証明した。MS/MSフラグメント解析は、4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)を用いて行った。標識されたサンプルを1:10に希釈し、1.0μlのサンプルをC18 Microカラム(ZipTips, Millipore)及び/又は手製のC18マイクロカラム(Poros R2, Applied Biosystems)により脱塩した。サンプルを、1.0μlの70%アセトニトリル(ACN)、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)によりターゲット上で溶出し、1.0μlのα-シアノ-4-ヒドロキシ-桂皮酸(CHCA) (Agilent Technologies, Boblingen, Germany)マトリクスをサンプルの上部に加えた。サンプルを乾燥させ、MS解析に供した。
【0120】
iTRAQ (商標)標識された内部校正標準のMS解析により、m/z 2353.44でのペプチド1に相当する質量及びm/z 2326.35でのペプチド2に相当する質量が明らかになった(図6a及び6b)。結果は、Der p 2特異的ペプチド1及びDer f 2特異的ペプチド2における修飾が、アミノ末端及びC-末端リジンに結合するときのiTRAQ (商標)試薬による修飾に対応することを示した。iTRAQ (商標)標識された天然及び組換えのDer p 2ペプチドのMS解析により、m/z 2353.29でのiTRAQ (商標)修飾された質量が明らかになった。同様に、標識された天然及び組換えのDer f 2ペプチドのMS解析により、m/z 2326.29でのiTRAQ (商標)修飾されたペプチドがそれぞれ明らかになった(図6c及び6d)。トリプシンによる切断の失敗は観察されなかった。これらの結果は、iTRAQ標識されたペプチド1及びペプチド2を、Der p 2及びDer f 2イソアレルゲンの絶対定量アッセイのための内部校正標準として用い得ることを示す。
【0121】
実施例5
2つの異なるHDM種の混合物からの絶対定量
Dermatophagoides farinae及びDermatophagoides pteronyssinusの種のイソアレルゲンの絶対定量を、まず、精製天然アレルゲンのそのままの混合物から行った。iTRAQ (商標)標識した天然トリプシン処理Der p 2, Der f 2、並びにペプチド1及び2を、1:1:1:1の比で混合し、1:5及び1:10に希釈し、手製のC18マイクロカラム(Poros R2, Applied Biosystems)により脱塩した。サンプルを、1.0μlの70% ACN (Sigma)中の5μg/μl CHCA (Sigma)、0.1% TFA (Fluka)を用いて、ターゲット上で溶出した。MS/MSフラグメント解析を、4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)により行った。
【0122】
m/z 2353.29のフラグメント解析により、天然Der p 2及びペプチド1のレポーターイオンに相当するm/z 114及びm/z 116でのシグナルが明らかになった。サンプル中の天然Der p 2イソアレルゲンの量は、内部校正標準であるm/z 116の領域に対するm/z 114のシグナル領域の比として算出された(図7a)。m/z 2326.29のMS/MSフラグメント解析により、m/z 115及びm/z 117でのシグナルが、天然Der f 2及びペプチド2のレポーターイオンに相当することが明らかになった。
【0123】
サンプル中の天然Der f 2イソアレルゲンの量は、内部構成標準であるm/z 117に対するm/z 115のシグナル領域の比として算出された(図7b)。絶対定量に加えて、m/z 2353.29及びm/z 2326.29のフラグメントイオンピークリストをMascot検索エンジン(Matrix Science)によるデータベース解析に供した。データベース解析は、ペプチドを、Dermatophagoides farinae及びDermatophagoides pteronyssinus HDMアレルゲン2の32〜48として同定した。
【0124】
実施例6
2次元クロマトグラフィーによる標識ペプチド混合物の分離
組換えDer f 2及びDer p 2の混合物、並びにDer f及びDer p抽出物の複合混合物中のイソアレルゲンの絶対定量を、2次元クロマトグラフィーにより評価した。カチオン交換クロマトグラフィー(SCX)を第1元として、及び逆相クロマトグラフィーを第2元の分離工程として評価した。
【0125】
組換えDer p 2、Der f 2並びにペプチド1及び2を、1:1:1:1の比で、最終容量50μlで混合した。Der f及びDer p抽出物並びにペプチド1及び2を、4:4:1:1の比で、最終容量50μlで混合した。
【0126】
標識ペプチド混合物のカチオン交換クロマトグラフィーによる分離(組換えDer p 2及びDer f 2、並びにDer p 2及びDer f 2の抽出物の両方):
サンプル混合物を、5% ACN (Sigma)、0.05%ギ酸(Merck)中で1:10に希釈し、SCXに供した。SCXは、0.8×50 mm Zorbax BIO-SCX (3.5μm)カラム(Agilent Technologies)で、SMART (商標)システム(GE-HealthCare, Uppsala, Sweden)にて行った。カラムは、5% ACN (Sigma)、0.05%ギ酸(Merck)で平衡化し、クロマトグラフィーは、5% ACN (Sigma)、0.05%ギ酸(Merck)、0.5 M NaCl (Merck)の0から100%へ30分間で増加する直線勾配で行った。流速は50μl/分であり、クロマトグラフィーは214 nmで監視した。50μlの画分を回収し、各画分の1.0μlを、Voyager-STR MS (Applied Biosystems)及び/又は4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)装置で解析した。勾配の最後にいくらかの他のHDMペプチドとともに溶出されるm/z 2353.29及びm/z 2326.29でのペプチドを同定した。m/z 2353.29及びm/z 2326.29でのペプチドを含有するDer f及びDer p混合物画分(抽出物)を選択して、逆相クロマトグラフィーによりさらに分離した。以下を参照されたい。しかし、rDer f 2及びrDer p 2の混合物(組換え)並びに内部校正標準の定量は、ターゲットプレートからSCXの後に直接行った。
【0127】
m/z 2353.29のMS/MSフラグメント解析は、Der p 2及びペプチド1のレポーターイオンに相当するm/z 114及びm/z 116でのシグナルを明らかにした。rDer p 2/rDer f 2混合物中のDer p 2クローンの量は、内部校正標準であるm/z 116の領域に対するm/z 114のシグナル領域の比として計算した。m/z 2326.29のMS/MSフラグメント解析は、Der f 2及びペプチド2のレポーターイオンに対応するm/z 115及びm/z 117でのシグナルを明らかにした。rDer p 2/rDer f 2混合物中のDer f 2クローンの量は、内部校正標準であるm/z 117に対するm/z 115のシグナル領域の比として計算した。m/z 2353.29及びm/z 2326.29のフラグメントイオンピークのリストを、Mascot検索エンジン(Matrix Science)によるデータベース解析に供した。データベース解析は、ペプチドを、Dermatophagoides farinae及びDermatophagoides pteronyssinus HDMアレルゲン2の32〜48として同定した。
【0128】
両方のサンプル;組換えDer f 2及びDer p 2混合物、並びにDer f及びDer p抽出物混合物中のm/z 2353.29及びm/z 2326.29のペプチドは、SCXカラムから類似の保持時間で溶出された。この実験は、アレルゲンの定量の前に、より単純なサンプル-混合物についてSCXを分画及び脱塩工程として用いることができることを示した。この実験は、SCXが、免疫療法に用いられる通常のアレルゲン抽出物のようなより複雑なアレルゲン混合物の分析のための第1元の分画工程として用い得ることも示した。
【0129】
標識ペプチド(Der p 2及びDer f 2の抽出物から)のSCXによる分離及びそれに続く逆相クロマトグラフィー及びそれに続く絶対定量MALDI TOF-TOF MS
上記のようなSCX分画からのiTRAQ (商標)標識HDMペプチドの分離を、C18 PepMap100 (3μm)カラム(LC Packings Dionex, Sunny Vale, CA, USA)により行った。カラムを0.05% TFA (Fluka)、2 % ACN (Sigma)で平衡化した。ペプチドを、80分間で0〜50%、120分間で50〜100%の勾配の0.04% TFA (Fluka)、80% ACNで溶出した。クロマトグラフィーは、Ultimate3000 (LC Packings, Dionex) 2.0μl/分で行い、210及び214 nmで監視する。1.0μlのSCX画分をカラムに注入した。画分を、それらをMALDI-TOFターゲットプレートに直接スポットすることにより回収した。スポットは、オンラインでUltimate3000装置に接続されているProbot (LC Packings, Dionex)装置を用いて行った。スポットは、30秒ごとに、HCCAマトリクス(Agilent Technologies)をサンプルに1:1の比で混合して行った。
【0130】
スポットされたサンプルは、4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)を用いてMS及びMS/MSにより解析した。m/z 2353.29及びm/z 2326.29のペプチドを、ターゲット上のスポットから同定し、これらは、クロマトグラフィーでの214 nmのシグナルに相当することが示された(図8)。m/z 2353.29のMS/MSフラグメント解析は、Der p 2及びペプチド1のレポーターイオンに相当するm/z 114及びm/z 116でのシグナルを明らかにした。Der p/f抽出混合物中のDer p 2イソアレルゲンの量は、内部校正標準であるm/z 116の領域に対するm/z 114のシグナル領域の比として算出した。m/z 2326.29のMS/MSフラグメント解析は、Der f 2及びペプチド2のレポーターイオンに相当するm/z 115及びm/z 117でのシグナルを明らかにした。Der p/f抽出混合物中のDer f 2イソアレルゲンの量は、内部校正標準であるm/z 117に対するm/z 115のシグナル領域の比として算出した。m/z 2353.29及びm/z 2326.29のフラグメントイオンピークのリストを、Mascot検索エンジン(Matrix Science)によるデータベース解析に供した。データベース解析は、ペプチドを、Dermatophagoides farinae及びDermatophagoides pteronyssinus HDMアレルゲン2の32〜48として同定した。
【0131】
この実験は、逆相クロマトグラフィーを、イソアレルゲンの定量のための単純な及び/又は複雑なアレルゲン抽出混合物の分画の第2元として用い得ることを示す。
【0132】
実施例7
AQUAストラテジを用いるイソアレルゲンの絶対定量
AQUA技術(Stemmann Oら Cell 2001;107(6):715〜26, Gerber SAら Proc Natl Acad Sci U S A 2003;100(12):6940〜5)において、内部校正ペプチドは、安定同位体(13C、15N)を組込んで、例えばトリプシンを用いる酵素消化により形成される天然ペプチドを模倣して合成される。1つの同位体で標識されたアミノ酸残基の組込みは、ペプチドの分子質量を、典型的には6〜10 Da変更する。iTRAQ技術とは異なって、サンプル又は内部校正標準のいずれかは、標識試薬により修飾される必要がある。定量実験において、例えばLC-MS/MSを用いる場合、天然サンプルペプチド及び合成内部校正標準の両方からの特異的フラグメントイオンの量は、逆相クロマトグラフィー保持時間の関数として測定できる。絶対定量は、既知の内部標準の量を天然サンプルペプチドと比較することにより決定される。
【0133】
天然のPhl p 1、Phl p 5 a及びbの形、並びにBet v 1についての合成内部校正標準ペプチドを、上記のようにして設計した(図2)。合成ペプチドは、表1により詳細に記載する。
【0134】
【表1】

【0135】
天然のPhl p 1、Phl p 5及びBet v 1を、25 mM Tris-Cl (Sigma)、1.0 M尿素(Fluka) pH 7.8中に、2.5 pmol/μlの濃度で再び溶解した。内部校正標準を、1:1の比でサンプルに混合した。消化は、10% (w/w) Seq.グレードのトリプシン(Promega)により、37℃で18時間行った。サンプルを、-20℃で貯蔵した。
【0136】
トリプシン消化したPhl p 1、Phl p 5及びBet v 1を、Voyager STR及び/又は4700 Proteomic Analyser (Applied Biosystems)を用いてMS及びMS/MSにより解析した。全てのサンプルは、0.1% TFA (Fluka)中で1:10に希釈し、1.0μlの各サンプルを、手製のC18マイクロカラム(Poros R2 Applied Biosystems)により脱塩した。
【0137】
トリプシン消化した天然のPhl p 1のMS解析は、m/z 1135.60にて天然ペプチドを、及びm/z 1145.61にてPhl p 1イソアレルゲンについての内部校正標準を明らかにした(データ示さず)。内部校正ペプチドのMS/MS解析は、天然のPhl p 1イソアレルゲンの特有のアミノ酸配列に相当するフラグメンテーションパターンを示した。
【0138】
トリプシン消化された天然のPhl p 5のMS解析は、m/z 1471.81にてPhl p 5aの天然ペプチドを、及びm/z 1455.77にてPhl p 5bの天然ペプチドを明らかにした(データ示さず)。Phl p 5a及びPhl p 5bイソアレルゲンについての内部校正標準ペプチドは、m/z 1481.83及びm/z 1465.78にて検出された。内部校正ペプチドのMS/MS解析は、天然のPhl p 5a及びPhl p 5bイソアレルゲンの特有アミノ酸配列に相当するフラグメンテーションパターンを示した。
【0139】
トリプシン消化された天然のBet v1のMS解析は、m/z 1552.76にて天然ペプチドを、及びm/z 1558.77にてBet v 1イソアレルゲンについての内部校正標準ペプチドを明らかにした(図9)。内部校正ペプチドのMS/MS解析は、天然のBet v 1イソアレルゲンの特有アミノ酸配列に相当するフラグメンテーションパターンを示した。
【0140】
Betv 1 Phl p 1、Phl p 5a及びPhl p 5bイソアレルゲンの絶対定量のために、サンプルを、例えばLC結合-MS/MS装置、例えばLCQ DecaXP (ThermoFinnigan)、QSTAR (登録商標) Hybrid LC/MS/MSシステム、及び4000 Q TRAP LC/MS/MSシステム(Applied Biosystems)による解析に供することができる。
【0141】
AQUAペプチドを用いる実験は、天然イソアレルゲン配列を模倣する安定同位体標識合成ペプチドを、天然Phl p 1、Phl p 5及びBet v 1中のイソアレルゲンの絶対定量に用いることができることを示した。さらに、トリプシン消化物のデータベース解析は、トリプシンによる切断の失敗を明らかにしなかった。iTRAQ化学について、記載したようなSCX及びRP-HPLCの組み合わせの2元のクロマトグラフィーは、化学的に同一の天然及び合成の内部校正標準のより複雑なアレルゲン混合物の分画において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】ダニグループ2アレルゲンの種(図1a)及びメジャーカンバアレルゲンであるBet v 1 (図1b)の、Vector NTIソフトウェア(Invitrogen)によるアミノ酸配列アラインメント。
【図2】チリダニアレルゲンa) Der f 2及びb) Der p 2、c) Phl p 1、d) Phlp 5a e) Phl p 5b及びf) Bet v 1 (GPMAW, Lighthouse data)のトリプシンによる理論的な酵素切断。
【図3】a) 精製されかつトリプシン消化された天然Der f 2及びDer p 2の混合物(1:1)のMALDI-TOF MSフィンガープリント解析、並びにb) 精製されかつトリプシン消化された組換えDer f 2及びDer p 2の混合物(1:1)のMALDI-TOF MSフィンガープリント分析。
【図4】疎水性相互作用クロマトグラフィーの使用により分離されたHDM (チリダニ)アレルゲン抽出物のSDS-PAGE解析。
【図5】アレルゲンの定量においてITRAQ (商標) (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)化学(chemistry)を用いる場合のサンプルの標識のストラテジ。
【図6】iTRAQで標識されたa) ペプチド1、m/z 2353.44 (Der p 2, 32〜48)、b) ペプチド2、m/z 2326.35 (Der f 2, 32〜48)、c) トリプシン消化されかつiTRAQ標識されたnDer p 2ペプチド、及びd) nDer f 2ペプチドのMS解析。
【図7】nDer f 2、nDer p 2、ペプチド1及びペプチド2の混合物のMS/MSフラグメンテーション。
【図8】SCXクロマトグラフィーからのnDer f 2、nDer p 2、ペプチド1及びペプチド2の混合物の逆相解析。
【図9】トリプシン処理したnBet v 1及び内部校正標準(AQUAペプチド)の混合物のMS解析。
【図1a−1】

【図1a−2】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、前記アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、前記ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、かつ分解されたアレルゲンサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドを標識するために用いられる標識物質が、分解されたアレルゲンサンプル中のペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルの対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
ことを含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量する方法。
【請求項2】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を、工程b)で用いられる標識物質とは異なる標識物質で標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、得られたペプチドを1又は複数の標識物質で標識し、
c) 標識されたアレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルの対応する標識されたペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を、標識物質で標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、
c) 標識されたアレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルの対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列と同一であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、得られたペプチドを1又は複数の標識物質で標識し、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプルの対応する標識されたペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アレルゲン校正標準ペプチドが、工程b)による分解により得られるペプチド中のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
定量されるアレルゲンが、1種より多いイソアレルゲンからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
定量されるアレルゲンが、1種より多い同属アレルゲンからなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)の定量が、質量分析法を用いて行われる請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
定量されるアレルゲンが、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Dac g 1、Fes p 1、Lol p 1、Lol p 5、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Api m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Dol a 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1、Par m 1、Bet v 1、Cry j 1、Cry j 2、Per a 1、Ole e 1、Fel d 1、Can f 1、Can f 2、Equ c 1、Equ c 2、Art v 1、Art v 2、Art v 3、Alt a 1、Alt a 3、Alt a 4、Alt a 5、Alt a 6、Cla h 1、Cla h 2、Cla h 6、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4からなる群より選択される1又は複数のイソアレルゲンである請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
定量されるアレルゲンが、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Ole e 1、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1、Par m 1、Bet v 1、Cry j 1及びCry j 2からなる群より選択される1又は複数のイソアレルゲンである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
定量されるアレルゲンが、Der f 1、Der p 1、Der f 2及びDer p 2からなる群より選択される1又は複数のイソアレルゲンである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
定量されるアレルゲンが、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Dac g 1、Fes p 1、Lol p 1及びLol p 5からなる群より選択される1又は複数のイソアレルゲンである請求項9に記載の方法。
【請求項13】
定量されるアレルゲンが、Amb a 1及びAmb a 2からなる群より選択される1又は複数のイソアレルゲンである請求項9に記載の方法。
【請求項14】
標識が、ITRAQ (商標)化学を用いて行われる請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
標識が、ITRAQ-114、ITRAQ 115、ITRAQ 116及び/又はITRAQ 117を用いて行われる請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(i) 定量されるアレルゲンがDer f 2であり、かつアレルゲン標準校正ペプチドが、Der f 2のアミノ酸32〜48を含むか、又は(ii) 定量されるアレルゲンがDer p 2であり、かつアレルゲン標準校正ペプチドが、Der p 2のアミノ酸32〜48を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
アレルゲンが、アレルゲンペプチド混合物とアレルゲン校正標準ペプチドとを、ペプチド同定解析により比較することによりポジティブに同定される請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
アレルゲンサンプルが、少なくとも1種の酵素を用いる消化により部分的に分解されるか、又は完全に分解される請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
酵素がタンパク質分解酵素である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
タンパク質分解酵素が、トリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン及びカルボキシペプチダーゼC又はそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
酵素が、ArgC、LysC及びトリプシン又はそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
酵素がトリプシンである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
アレルゲンサンプルが還元され、いずれのシステイン残基も分解の前にブロックされる請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
アレルゲンサンプルが、予備的分画工程からの画分である請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
アレルゲンサンプルが、アレルゲンの1又は複数のイソアレルゲンを含む予備的分画工程からの画分である請求項24に記載の方法。
【請求項26】
予備的分画が、クロマトグラフィーにより行われる請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
クロマトグラフィー分画が、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又はアフィニティクロマトグラフィーによる請求項26に記載の方法。
【請求項28】
クロマトグラフィー分画が、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アレルゲンサンプルが、クロマトグラフィーの後に脱塩される請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
分解され任意に標識されたペプチドの混合物及び校正標準ペプチドを、質量解析の前に分画に供して、校正標準ペプチドに対応するペプチドを混合物中のその他のペプチドから分離する請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
分画がクロマトグラフィーによる請求項30に記載の方法。
【請求項32】
分画が、カチオン交換クロマトグラフィー、又はカチオン交換クロマトグラフィーとそれに続く逆相クロマトグラフィーによる請求項31に記載の方法。
【請求項33】
a) 定量される特定のアレルゲン又はイソアレルゲンに見出される配列に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、前記アレルゲン校正標準ペプチドを任意に標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、前記ペプチドを1又は複数の標識物質で任意に標識し、
ここで、少なくとも、分解されたサンプル中のペプチド又は校正標準ペプチドが標識され、かつ分解されたサンプル中のペプチド及びアレルゲン校正標準ペプチドがともに標識される場合、アレルゲン校正標準ペプチドに用いられる標識物質が、分解されたサンプルのペプチドを標識するために用いられる標識物質とは異なり、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたサンプルの対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
ことを含む、アレルゲンサンプルからの特定のアレルゲン又はイソアレルゲンを定量する方法。
【請求項34】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲン又はイソアレルゲンに見出される配列に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を、工程b)で用いられる標識物質とは異なる標識物質で標識し、
b) アレルゲンサンプルを分解してペプチドの混合物を得て、得られたペプチドを1又は複数の標識物質で標識し、
c) 標識されたアレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたサンプルの対応する標識されたペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項33に記載の方法。
【請求項35】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を、標識物質で標識し、
b) サンプルを分解してペプチドの混合物を得て、
c) 標識されたアレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたアレルゲンサンプル中の対応するペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項33に記載の方法。
【請求項36】
以下の工程:
a) 定量されるアレルゲンに見出される配列に特有であるアミノ酸配列を有する1又は複数のアレルゲン校正標準ペプチドの既知量を準備し、
b) サンプルを分解してペプチドの混合物を得て、得られたペプチドを1又は複数の標識物質で標識し、
c) アレルゲン校正標準ペプチドの量を、分解されたサンプルの対応する標識されたペプチドの量と質量解析により相関させることにより、アレルゲンの絶対量を定量する
を含む、アレルゲンサンプル中のアレルゲンの絶対量を定量するための請求項33に記載の方法。
【請求項37】
アレルゲン校正標準ペプチドが、工程b)による分解により得られるペプチド中のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を有する請求項33〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
アレルゲンがイソアレルゲンである請求項33〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
アレルゲンが、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Poa p 1、Poa p 5、Dac g 1、Fes p 1、Lol p 1、Lol p 5、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Api m 1、Api m 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Dol m 1、Dol m 2、Dol m 5、Dol a 5、Pol a 1、Pol a 2、Pol a 5、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1、Par m 1、Bet v 1、Cry j 1、Cry j 2、Per a 1、Ole e 1、Fel d 1、Can f 1、Can f 2、Equ c 1、Equ c 2、Art v 1、Art v 2、Art v 3、Alt a 1、Alt a 3、Alt a 4、Alt a 5、Alt a 6、Cla h 1、Cla h 2、Cla h 6、Sol i 2、Sol i 3及びSol i 4の群から選択されるアレルゲンのイソアレルゲンである請求項33〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
アレルゲンが、Phl p 1、Phl p 5、Phl p 6、Ole e 1、Der f 1、Der f 2、Der p 1、Der p 2、Ves v 1、Ves v 2、Ves v 5、Amb a 1、Amb a 2、Par j 1、Par o 1、Par m 1、Bet v 1、Cry j 1及びCry j 2の群から選択されるアレルゲンのイソアレルゲンである請求項39に記載の方法。
【請求項41】
工程c)の定量が、質量分析法を用いて行われる請求項33〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
標識が、ITRAQ (商標)化学を用いて行われる請求項33〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
イソアレルゲンが、標識されたアレルゲンペプチド混合物とアレルゲン校正標準ペプチドとを、ペプチド同定解析により比較することによりポジティブに同定される請求項33〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
アレルゲンサンプルが、少なくとも1種の酵素を用いる消化により部分的に分解されるか、又は完全に分解される請求項33〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
酵素がタンパク質分解酵素である請求項44に記載の方法。
【請求項46】
タンパク質分解酵素が、トリプシン、パパイン、ペプシン、ArgC、LysC、V8プロテアーゼ、AspN、プロナーゼ、キモトリプシン及びカルボキシペプチダーゼC又はそれらの組み合わせの群から選択される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
酵素が、ArgC、LysC及びトリプシン又はそれらの組み合わせの群から選択される請求項46に記載の方法。
【請求項48】
酵素がトリプシンである請求項47に記載の方法。
【請求項49】
アレルゲンサンプルが還元され、いずれのシステイン残基も分解の前にブロックされる請求項33〜48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
アレルゲンサンプルが、予備的分画工程からの画分である請求項33〜49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
アレルゲンサンプルが、イソアレルゲンを含む予備的分画工程からの画分である請求項50に記載の方法。
【請求項52】
予備的分画が、クロマトグラフィーにより行われる請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
クロマトグラフィー分画が、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー又はアフィニティクロマトグラフィーによる請求項52に記載の方法。
【請求項54】
クロマトグラフィー分画が、疎水性相互作用クロマトグラフィーによる請求項53に記載の方法。
【請求項55】
アレルゲンサンプルが、クロマトグラフィーの後に脱塩される請求項33〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
分解され任意に標識されたペプチドの混合物及び校正標準ペプチドを、質量解析の前に分画に供して、校正標準ペプチドに対応するペプチドを混合物中のその他のペプチドから分離する請求項33〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
分画がクロマトグラフィーによる請求項56に記載の方法。
【請求項58】
分画が、カチオン交換クロマトグラフィー、又はカチオン交換クロマトグラフィーとそれに続く逆相クロマトグラフィーによる請求項57に記載の方法。
【請求項59】
アレルゲン校正標準ペプチド中のアミノ酸の数が、2〜20アミノ酸の範囲、より好ましくは4〜15の範囲、最も好ましくは6〜10の範囲である請求項1〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
アレルゲンの定量で用いられるアレルゲン校正標準ペプチドを得る方法であって、前記アレルゲン校正標準ペプチドが:
定量されるアレルゲン中のアミノ酸の定常配列を、イソアレルゲン又は同属アレルゲンのアミノ酸配列同士の比較により同定し、
前記定常配列を有する合成アレルゲン校正標準ペプチドを調製する
ことにより得られる方法。
【請求項61】
前記アレルゲンが、アレルゲンのイソアレルゲンである請求項60に記載の方法。
【請求項62】
定量されるアレルゲンに見出される配列と同一の配列であるアミノ酸配列の、前記アレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとしての使用。
【請求項63】
定量されるアレルゲンのイソアレルゲンに見出される配列と同一の配列であるアミノ酸配列の、前記アレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとしての使用。
【請求項64】
アレルゲンの定量で用いるためのアレルゲン校正標準ペプチドを得る方法であって、前記アレルゲン校正標準ペプチドが:
定量されるアレルゲンに特有の配列であるアミノ酸配列を、イソアレルゲン又は同属アレルゲンの比較により同定し、
前記配列を有する合成アレルゲン校正標準ペプチドを調製する
ことにより得られる方法。
【請求項65】
アレルゲンがイソアレルゲンである請求項64に記載の方法。
【請求項66】
定量されるアレルゲンに特有の配列であるアミノ酸配列の、前記アレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとしての使用。
【請求項67】
定量されるイソアレルゲンに特有の配列であるアミノ酸配列の、前記イソアレルゲンの絶対定量及び任意に同定のためのアレルゲン校正標準ペプチドとしての使用。

【図8】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−508118(P2009−508118A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530328(P2008−530328)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000480
【国際公開番号】WO2007/031080
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(505193472)
【氏名又は名称原語表記】ALK−ABELLO A/S
【住所又は居所原語表記】Boge Alle 6−8,DK−2970 Horsholm,DENMARK
【Fターム(参考)】