説明

アレルゲン不活性化剤組成物およびアレルゲン不活性化方法

【課題】アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物、および加熱処理等を必要とせず簡便なアレルゲン不活性化方法の提供。
【解決手段】重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択される重金属化合物(A)と、水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)とを含有し、かつ、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0であることを特徴とするアレルゲン不活性化剤組成物、および当該アレルゲン不活性化剤組成物を使用するアレルゲン不活性化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、生物から遊離するアレルゲンや生物の死骸に由来するアレルゲン等を不活性化する、アレルゲン不活性化剤組成物およびアレルゲン不活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギーの原因となる抗原物質(アレルゲン)を不活性化する技術の開発がこれまでに行われている。
アレルゲンを不活性化する成分(アレルゲン不活性化成分)としては、たとえばタンニン酸、コロイダルシリカ等が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、有効量のアレルギー中和金属イオンおよび溶媒を含有するアレルゲン不活性化剤組成物が提案されている。
当該金属イオンとしては、亜鉛イオンとスズイオンが好ましいものとして挙げられており、実施例において、塩化亜鉛を含有し、pHが約3.6の酸性に調整された組成物(溶液)が開示されている。
また、アレルゲン不活性化成分としてタンニン酸を含有する組成物(溶液)の例も開示されている。
【0004】
また、アレルゲンを不活性化する方法としては、加熱処理法も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2004−510717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたアレルゲン不活性化剤組成物のように、アレルゲン不活性化成分としてタンニン酸を使用した場合、タンニン酸を含有する組成物が塗布処理された被処理物が着色しやすい問題がある。また、アレルゲン不活性化成分としてコロイダルシリカを使用した場合、コロイダルシリカを含有する組成物が固化しやすい問題がある。
さらに、タンニン酸、コロイダルシリカ等のアレルゲン不活性化成分を含有する従来のアレルゲン不活性化剤組成物においては、アレルゲン不活性化の効果が未だ充分ではなく、より高いアレルゲン不活性化の効果を発揮する技術の開発が求められる。
また、上記の加熱処理法は煩雑であり、より簡便な方法が望まれている。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物、および加熱処理等を必要とせず簡便なアレルゲン不活性化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
すなわち、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択される重金属化合物(A)と、水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)とを含有し、かつ、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0であることを特徴とする。
【0009】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、有機過酸前駆体(C)をさらに含有することが好ましい。
また、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、前記重金属化合物(A)が、銅を含む水溶性塩および鉄を含む水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性塩であることが好ましい。
また、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、生物から遊離するアレルゲン又は生物の死骸に由来するアレルゲンを不活性化するのに好適なものである。
【0010】
また、本発明のアレルゲン不活性化方法は、前記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物を使用する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物、および加熱処理等を必要とせず簡便なアレルゲン不活性化方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪アレルゲン不活性化剤組成物≫
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択される重金属化合物(A)と、水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)とを含有し、かつ、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0である。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、有機過酸前駆体(C)をさらに含有することが好ましい。
当該アレルゲン不活性化剤組成物は、その形態が特に限定されるものではなく、たとえば粉体状又は粒状の組成物であってもよく、液体状の組成物であってもよい。なかでも、アレルゲン不活性化のより高い効果が得られやすいことから、粉体状又は粒状の組成物であることが好ましい。粉体状又は粒状の組成物は、液体状の組成物とは異なり、組成物中で、無機過酸化物(B)が水に溶解して過酸化水素を発生することがないため、経時に伴ってアレルゲン不活性化の効果が低下したり、組成物としての安定性が悪くなったりするおそれがなく、好ましい形態である。
【0013】
[(A)成分]
本発明において、重金属化合物(A)(以下「(A)成分」という。)は、重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択されるものである。
重金属を含む水分散性の化合物としては、たとえば、水等の溶媒に溶解した際、コロイド状微粒子として溶媒中に分散するものが挙げられる。
かかる(A)成分は、後述する無機過酸化物(B)との併用により、アレルゲンを良好に不活性化することができる。また、水等の溶媒に溶解した際の均一性が良好である。
なかでも、(A)成分としては、水等の溶媒への溶解性がさらに良好であることから、重金属を含む水溶性の化合物であることが好ましい。
【0014】
(A)成分としては、鉄、鉛、金、白金、銀、銅、クロム、カドミウム、水銀、亜鉛、ヒ素、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫もしくはビスマス等の重金属を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物が挙げられる。
なかでも、鉄、銀、銅、マンガン、コバルト、ニッケルおよびモリブデンからなる群から選択される遷移元素を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物;亜鉛、錫およびビスマスからなる群から選択される典型元素を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物が好ましい。
そのなかでも、前記遷移元素を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物がより好ましく;長周期型周期表における第4周期の遷移元素を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物がさらに好ましく;鉄もしくは銅を含む化合物、又はこれらの金属イオンを放出する化合物が特に好ましく;銅を含む化合物、又は銅イオンを放出する化合物が最も好ましい。
(A)成分として具体的には、上記重金属を含む塩、酸化物、水酸化物、硫化物、金属コロイド又は有機金属化合物等が挙げられる。なかでも、上記重金属を含む塩が好ましく、上記重金属を含む水溶性塩が特に好ましい。
上記重金属を含む塩としては、塩化物などのハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩などの無機塩;安息香酸塩、クエン酸塩、オレイン酸塩、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、シュウ酸塩、タンニン酸などの有機酸塩が挙げられる。なかでも、ハロゲン化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩が好ましく、塩化物、硝酸塩、硫酸塩がより好ましく、塩化物、硫酸塩がさらに好ましい。
なお、(A)成分としては、上記化合物に加えて、上記化合物の水和物も用いることができる。
【0015】
(A)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明において、(A)成分としては、銅もしくは鉄を含む水溶性の化合物および銅もしくは鉄を含む水分散性の化合物からなる群から選択される少なくとも1種の重金属化合物が好ましく、水等の溶媒への溶解性が良好であり、かつ、アレルゲン不活性化の効果に優れることから、銅を含む水溶性塩および鉄を含む水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性塩であることが好ましく、銅を含む水溶性塩であることが特に好ましい。
【0016】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(A)成分((A)成分を無水和物として用いる際)の含有割合は、当該アレルゲン不活性化剤組成物を水等に溶解し希釈して使用する場合、0.0006〜7質量%であることが好ましく、0.006〜0.7質量%であることがより好ましく、当該アレルゲン不活性化剤組成物が粉体状又は粒状の組成物である場合は0.06〜0.7質量%であることが特に好ましい。
(A)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。(A)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、他の成分との配合バランスをとることができる。
【0017】
また、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(A)成分((A)成分を水和物として用いる際)の含有割合は、当該アレルゲン不活性化剤組成物を水等に溶解し希釈して使用する場合、0.001〜10質量%であることが好ましく、0.01〜1質量%であることがより好ましく、当該アレルゲン不活性化剤組成物が粉体状又は粒状の組成物である場合は0.1〜1質量%であることが特に好ましい。
(A)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。(A)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、他の成分との配合バランスをとることができる。
【0018】
[(B)成分]
本発明における無機過酸化物(B)(以下「(B)成分」という。)は、水に溶解して過酸化水素を発生するものである。
かかる(B)成分は、前記(A)成分との併用により、アレルゲンを良好に不活性化することができる。
(B)成分としては、水溶液中で過酸化水素を発生するものであればよく、たとえば、過炭酸、過ホウ酸、又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)もしくはアンモニウム塩などが挙げられる。なかでも、アレルゲン不活性化の効果に優れることから、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムであることが好ましく、過炭酸ナトリウムであることがより好ましい。
【0019】
(B)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(B)成分の含有割合は、当該アレルゲン不活性化剤組成物を水等に溶解し希釈して使用する場合、1〜90質量%であることが好ましく、当該アレルゲン不活性化剤組成物が粉体状又は粒状の組成物である場合は5〜90質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが特に好ましい。
(B)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がより向上する。(B)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、他の成分との配合バランスをとることができる。
【0021】
[(C)成分]
本発明においては、前記(A)成分および前記(B)成分に加えて、有機過酸前駆体(C)(以下「(C)成分」という。)をさらに含有することにより、アレルゲン不活性化の効果がよりいっそう向上する。
(C)成分としては、過加水分解により有機過酸を生成するものであればよく、例えば漂白活性化剤として従来提案されているものの中から好適に使用できる。
ここで、「有機過酸」とは、−OH(水酸基)を含む酸性基(カルボキシ基、スルホ基等)を有する有機化合物において、その−OHが−OOHで置換された化合物を意味し、たとえば−C(=O)OOH(過カルボキシ基)を有する過カルボン酸、−S(=O)OOHを有するペルオキソスルホン酸等が挙げられる。
【0022】
(C)成分として具体的には、たとえば、アルキルアシルオキシベンゼンスルホン酸塩(OBS)、アルキルアシルオキシ安息香酸(OBC)が好適なものとして挙げられる。
【0023】
アルキルアシルオキシベンゼンスルホン酸塩(OBS)、アルキルアシルオキシ安息香酸(OBC)のなかで好適なものとしては、たとえば、下記一般式(I)又は下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
RCOO−C−COOM ・・・(I)
RCOO−C−SOM ・・・(II)
[式(I)および式(II)中、Rはそれぞれ独立して直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数2〜14のアルキル基又はアルケニル基を表し、Mはそれぞれ独立して水素原子又は塩形成カチオンを表す。]
【0024】
前記式(I)および式(II)中、Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数2〜14のアルキル基又はアルケニル基を表す。Rにおいて、炭素数は8〜12が好ましく、10〜12がより好ましい。
前記式(I)および式(II)中、Mは、水素原子又は塩形成カチオンを表す。塩形成カチオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のイオン;アンモニウムイオン、ジエタノールアミン等の2級アミンのイオン、トリエタノールアミン等の3級アミンのイオン等が挙げられる。
前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される化合物は、過加水分解の条件下で、所望により置換された過安息香酸又は脂肪族ペルオキソカルボン酸(好ましくは1〜14個の炭素原子、より好ましくは2〜12個の炭素原子を含む。)を生成する化合物である。
【0025】
また、(C)成分としては、前記のOBS、OBC以外にも、たとえば、テトラアセチルエチレンジアミン(TAED)もしくはその塩等のポリアシル化アルキレンジアミン;1,5−ジアセチル−2,4−ジオキソヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン(DADHT)等のアシル化トリアジン誘導体;1,3,4,6−テトラアセチルグリコルリル(TAGU)等のアシル化グリコルリル;N−ノナノイルスクシンイミド(NOSI)等のN−アシルイミド;トリエチル−O−アセチルシトレート(TEOC)等のアシル化ヒドロカルボン酸;フタル酸無水物、イサト酸無水物、コハク酸無水物等のカルボン酸無水物;N−メチルジアセトアミド、グリコリド等のカルボン酸アミド;トリアセチン、エチレングリコールジアセテート、イソプロペニルアセテート、2,5−ジアセトキシ−2,5−ジヒドロフランもしくはエノールエステル(独国特許出願公開第DE19616693号明細書および第DE19616767号明細書から既知である。)、アセチル化ソルビトール、マンニトール又はこれらの混合物(SORMAN)(欧州特許出願公開第EP0525239号明細書に記載)等のアシル化多価アルコール;ペンタアセチルグルコース(PAG)、ペンタアセチルフルクトース、テトラアセチルキシロース、オクタアセチルラクトース、又はアセチル化し、所望によりN−アルキル化したグルカミンもしくはグルコノラクトン等のアシル化糖誘導体;トリアゾールもしくはトリアゾール誘導体;粒状カプロラクタムもしくはカプロラクタム誘導体[好ましくは、N−ベンゾイルカプロラクタムもしくはN−アセチルカプロラクタム(これらは、国際公開第94/27970号パンフレット、国際公開第94/28102号パンフレット、国際公開第94/28103号パンフレット、国際公開第95/00626号パンフレット、国際公開第95/14759号パンフレットおよび国際公開第95/17498号パンフレットから既知である。)等のN−アシル化ラクタム]等が挙げられる。
また、置換された親水性アシルアセタール(独国特許出願公開第DE−A−19616769号明細書から既知である。)、アシルラクタム(独国特許出願公開第DE−A−19616770号明細書および国際公開第95/14075号パンフレットに記載)も挙げられる。
また、独国特許出願公開第DE−A−4443177号明細書から既知である、通常の有機過酸前駆体の組合せ等を使用することもできる。
さらに、シアノピリジン、N−アルキルアンモニウムアセトニトリル、ニトリルクアット等のニトリル誘導体;シアナミド誘導体、N−メチルモルホリニウムアセトニトリル(MMA)を使用することもできる。
また、Benzoic acid 4−sulfo(1−4−sulfophenyl) ester等のベンゾイルオキシベンゼンスルホネートも使用することもできる。
【0026】
(C)成分は、1種単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
本発明において、(C)成分としては、アレルゲン不活性化の効果が特に向上することから、炭素数2〜12のアルキル基又は炭素数2〜12のアルケニル基を有する有機過酸を生成するものが好ましい。当該アルキル基又はアルケニル基における炭素数は8〜12がより好ましく、炭素数10〜12がさらに好ましい。その中でも、前記一般式(I)又は前記一般式(II)におけるRの炭素数が8〜12であるOBS又はOBCがより好ましく、前記一般式(I)又は前記一般式(II)におけるRの炭素数が10〜12であるOBS又はOBCが特に好ましい。
【0027】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物における(C)成分の含有割合は、当該アレルゲン不活性化剤組成物を水等に溶解し希釈して使用する場合、0.05〜10質量%であることが好ましい。特に、当該アレルゲン不活性化剤組成物が粉体状又は粒状の組成物である場合は0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましく、0.1〜3質量%であることが特に好ましい。
(C)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の下限値以上であると、アレルゲン不活性化の効果がさらに向上する。(C)成分の含有割合がそれぞれ前記範囲の上限値以下であると、他の成分との配合バランスをとることができる。
【0028】
[その他の成分]
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、必要に応じて、上記の(A)成分、(B)成分および(C)成分以外のその他の成分を併用してもよい。
その他の成分としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリ剤;クエン酸、りんご酸等の有機酸;燐酸等の無機酸、界面活性剤、キレート剤などが挙げられる。
なかでも、その他の成分としては、後述する希釈処理液のpHを7.0〜11.0の範囲内に容易に調整する目的から、アルカリ剤、有機酸、無機酸が好ましく用いられ、そのなかでもアルカリ剤がより好ましく、炭酸ナトリウムが特に好ましい。
【0029】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではなく、各成分を常法に準じて混合することにより調製できる。
【0030】
(希釈処理液)
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0であり、pH9.0〜11.0であることが好ましく、pH10.0〜11.0であることが特に好ましい。pHが7.0以上であると、アレルゲン不活性化の効果に優れる。pHが11.0以下であると、弱アルカリ性の領域を満足することができる(なお、pHが11.0を超えると、家庭品品質表示法ではアルカリ性となる。また、被処理物が変質する等の不具合を生じる場合がある。)。
本発明において、当該希釈処理液のpHは、希釈処理液を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:F−52、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠し、ガラス電極を当該希釈処理液に浸漬して1分間経過後に示すpHの値をいう。
【0031】
かかる希釈処理液の調製方法としては、特に限定されるものではなく、アレルゲン不活性化剤組成物を蒸留水に溶解して所定の希釈倍率に希釈する方法、又はアレルゲン不活性化剤組成物を蒸留水に溶解して複数回の希釈処理を行い所定の希釈倍率に希釈する方法等が挙げられる。
希釈処理液の調製方法として具体的には、たとえば、粉体状又は粒状のアレルゲン不活性化剤組成物を、蒸留水に溶解して、複数回の希釈処理を行うことにより希釈処理液を調製することが好ましい。
なかでも、粉体状又は粒状のアレルゲン不活性化剤組成物に対して、当該組成物中の(A)成分および(B)成分(好ましくは、さらに(C)成分)がより均一に含まれるように縮分処理を施したものを、蒸留水に溶解して所定の倍率に希釈して希釈処理液を調製することがより好ましい。
【0032】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物において、かかる希釈処理液の25℃におけるpHを7.0〜11.0に制御する方法としては、たとえば、pH7〜13の水溶液における水素イオン濃度の変化を小さくする作用をもつpH緩衝剤(たとえば炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう酸ナトリウム;クエン酸、リンゴ酸等の有機酸など)を1種単独で又は2種以上を併用して用いる方法、粉体状又は粒状の組成物の場合は上記アルカリ剤の配合量を調整する方法などが挙げられる。
【0033】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物において、不活性化の対象とするアレルゲンとしては、特に限定されるものではなく、生物から遊離するアレルゲン、生物の死骸に由来するアレルゲン、生物自体がヒトに進入して遊離するアレルゲン等が挙げられる。
なかでも、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、特に、生物から遊離するアレルゲン又は生物の死骸に由来するアレルゲンを不活性化するのに好適なものである。
生物から遊離するアレルゲンとして具体的には、ペットの毛に付着するアレルゲン、花粉、ダニの糞、カビの胞子などが挙げられる。
生物の死骸に由来するアレルゲンとして具体的には、ダニの死骸、ゴキブリの死骸などが挙げられる。
【0034】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物の使用方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば後述する≪アレルゲン不活性化方法≫に記載の方法が加熱処理等を必要とせず簡便であり、特に好適な方法である。
【0035】
≪アレルゲン不活性化方法≫
本発明のアレルゲン不活性化方法は、上記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物を使用する方法である。
具体的には、たとえば、対象とするアレルゲンが存在するものに直接、上記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物もしくはその希釈処理液を、スプレー容器などに収容して噴霧等により塗布する方法などが挙げられる。
また、居住空間もしくは車等の乗り物空間等の生活空間に向けて、上記本発明のアレルゲン不活性化剤組成物もしくはその希釈処理液を、スプレー容器などから噴霧等することにより、前記生活空間内に浮遊するアレルゲンを不活性化する方法も挙げられる。
アレルゲン不活性化方法を行う際に用いる希釈処理液は、上述した「(希釈処理液)の調製方法」と同様にして調製すればよい。その際、アレルゲン不活性化剤組成物の希釈に用いる水は、イオン交換水、蒸留水、工業用水、水道水等のいずれも使用することができる。
【0036】
不活性化の対象とするアレルゲンが存在するものに、アレルゲン不活性化剤組成物もしくはその希釈処理液を塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、スプレー容器から噴霧する方法、アレルゲンが存在するものに容器の塗布部を直接接触させて塗布する方法等、公知の各種容器を使用して塗布する方法が好ましく挙げられる。
また、不活性化の対象とするアレルゲンが存在するものとしては、例えば、生活まわり製品、すなわち、ソファ、カーペット、カーテン、クッション、寝具等の繊維製品;畳、床、壁、窓、家具、玩具、ぬいぐるみ等の居住空間内の製品;カーシート等の乗り物空間内の製品などが挙げられる。
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物、および加熱処理等を必要とせず簡便なアレルゲン不活性化方法を提供することができる。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物において、アレルゲン不活性化の効果に優れるという効果が得られる理由としては定かではないが、以下のように推測される。
従来のアレルゲン不活性化剤組成物においては、金属化合物又はアレルゲンを変性する成分が配合され、金属イオン又はアレルゲンを変性する成分それ自体がアレルゲンにおけるタンパク質分子と結合して作用することにより、アレルゲンを不活性化すると考えられている。
一方、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択される重金属化合物(A)と、水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)とを含有し、かつ、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0である。
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、(B)成分が水に溶解して発生する過酸化水素と、(A)成分から放出される重金属イオンとの相互作用により、ヒドロキシラジカルが生成する。このヒドロキシラジカルの生成は、pHが特に中性〜アルカリ性の領域で安定に進行する。そして、当該ヒドロキシラジカルがアレルゲンに作用することにより、アレルゲンを不活性化するため、従来よりもアレルゲン不活性化の効果に優れると推測される。
【0038】
かかる推測の作用効果は、上述した(A)成分の説明において例示した重金属(遷移元素、典型元素)を含む化合物、又はその金属イオンを放出する化合物を用いた場合により良好に得られ、なかでも、遷移元素(好ましくは、似た性質を互いに示す第4周期でかつ7〜11族の遷移元素)を含む化合物、又はその金属イオンを放出する化合物を用いた場合に特に良好に得られる固有のものであると考えられる。
【0039】
また、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物は、粉体状又は粒状の形態である場合にアレルゲン不活性化のより高い効果が得られる。これは、粉体状又は粒状の形態においては、液体状の形態とは異なり、アレルゲン不活性化の処理を行うまでに、組成物中で、無機過酸化物(B)が水に溶解して過酸化水素を発生することがなく、アレルゲン不活性化の処理を行う際に、過酸化水素を充分にかつ効果的に利用できるため、と考えられる。
さらに、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物においては、水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)を用いているため、はじめから液体原料である過酸化水素を用いる場合に比べて、過酸化水素の分解をより低く抑えることができる。また、液体原料である過酸化水素を用いる場合、アレルゲン不活性化剤組成物の形態がほとんど液体状に制約され、アレルゲン不活性化の効果の維持又は液安定性の確保などが難しい。一方、無機過酸化物(B)を用いる場合、アレルゲン不活性化剤組成物を種々の形態とすることができ、経時に伴うアレルゲン不活性化の効果の維持又は安定性がいずれも良好である。
【0040】
本発明のアレルゲン不活性化剤組成物によれば、被処理物が着色することがなく、また、組成物が固化することもなく、優れたアレルゲン不活性化の効果が得られる。
また、衣料のなかには付着したペットの毛の除去が困難なものもあり、従来、その毛に付着したアレルゲンを不活性化することは困難であったが、本発明によれば、かかるアレルゲンを容易に不活性化することができる。
本発明に係る技術は、アレルゲンの不活性化作用を呈する各種製品(たとえば、消臭剤、抗菌・抗カビ剤、掃除液、殺虫剤、ダニ忌避剤、殺ダニ剤、除湿剤、空中散布剤、芳香剤、医薬部外品、医薬品等)に利用できる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りが無い限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0042】
<アレルゲン不活性化剤組成物の調製>
(実施例1〜7、比較例1〜4)
表1に示す組成に従って、各成分を常法に準じて混合し、粉体状の組成物(実施例1〜7、比較例1〜3)と、液体状の組成物(比較例4)とをそれぞれ調製した。
なお、粉体状の組成物(粉体組成物)は、いずれの例も、表に記載の成分の合計が100質量%となるように、炭酸ナトリウムでバランスすることにより調製した。また、液体状の組成物(液体組成物)は、表に記載の成分の合計が100質量%となるように、蒸留水でバランスすることにより調製した。
なお、表1中の配合量の単位は質量%である。
表1に示す各成分の配合量は、以下に示す原料自体の配合量(有り姿の量)をそれぞれ表す。
【0043】
[表中に示した成分の説明]。
・重金属化合物(A)
硫酸銅・五水和物:試薬特級、関東化学製。
塩化鉄(III)・六水和物:試薬特級、関東化学製。
【0044】
・無機過酸化物(B)
過炭酸ナトリウム:商品名「SPC−G」、三菱瓦斯化学製。
過ホウ酸ナトリウム:商品名「15%ペルボン」、三菱瓦斯化学製。
【0045】
・有機過酸前駆体(C)
OBS12:ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(自社合成品)。
OBC10:デカノイルオキシ安息香酸(自社合成品)。
【0046】
(有機過酸前駆体の製造方法)
OBS12の製造例:
原料として4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(試薬、関東化学製)と、N,N−ジメチルホルムアミド(試薬、関東化学製)と、デカン酸クロライド(試薬、東京化成工業製)と、アセトン(試薬、関東化学製)とを用い、以下の方法で行った。
予め脱水処理した4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム3000g(15.3mol)をN,N−ジメチルホルムアミド9000g中に分散させ、スターラーで撹拌しながら、デカン酸クロライド2918g(15.3mol)を、50℃で30分かけて滴下した。滴下終了後3時間反応を行い、N,N−ジメチルホルムアミドを減圧下(0.5〜1mmHg)、100℃で留去した。アセトン洗浄後、水/アセトン(=1/1モル比)溶媒中にて再結晶を行って精製した。
【0047】
OBC10の製造例:
特開平10−231274号公報に記載される方法に従って合成した。
すなわち、4−ヒドロキシ安息香酸をカプリン酸に懸濁[4−ヒドロキシ安息香酸/カプリン酸(=1/1モル比)]させ、110℃に加熱した。次いで、カプリン酸クロリド[4−ヒドロキシ安息香酸/カプリン酸クロリド(=1/1モル比)]を滴下した。そのままの温度で4時間加熱撹拌した。冷却後、析出した沈澱を濾取し、ヘキサンで洗浄した。さらに、この反応物を乾燥させて粗4−デカノイルオキシ安息香酸を得た。
得られた粗4−デカノイルオキシ安息香酸100gを、3リットルの4つ口フラスコにとり、エタノール1500gを加え、70℃にて加温溶解した。溶解後、水300gを加え、放冷して結晶を析出させ、結晶を濾取し、乾燥させて精製4−デカノイルオキシ安息香酸を得た。
【0048】
・その他の成分
炭酸ナトリウム:試薬特級、関東化学製。
蒸留水
【0049】
<希釈処理液の調製>
上記で得た粉体組成物(実施例1〜7、比較例1〜3)および液体組成物(比較例4)を用いて、それぞれ、以下のようにして希釈処理液を調製した。なお、下記希釈処理は、質量基準ですべて行った。
粉体組成物を用いた場合、上記で得た粉体組成物1000gを4回縮分し、その縮分された粉体組成物50gを、蒸留水に溶解してまず100倍に希釈した水溶液(a)5000gを調製し、当該水溶液(a)1gを、さらに蒸留水により100倍に希釈(合計で10000倍に希釈)して水溶液(b)100gを調製することによって希釈処理液を得た。
液体組成物を用いた場合、液体組成物0.01gを、蒸留水により10000倍に希釈することによって希釈処理液100gを調製した。
【0050】
<希釈処理液のpHの測定>
希釈処理液のpHの測定は、希釈処理液を25℃に調整し、ガラス電極式pHメーター(製品名:F−52、(株)堀場製作所製)を用い、JIS K3362−1998に準拠し、ガラス電極を希釈処理液に浸漬して1分間経過後に示すpHの値を読み取ることにより行った。その結果を表に併記した。
【0051】
<アレルゲン不活性化の効果の評価>
評価における試料溶液として、上記で得た希釈処理液(各例の組成物を蒸留水により10000倍に希釈したもの)をそれぞれ用いた。
それぞれの試料溶液に、ダニ抗原(商品名:Der f2、生化学工業製)1ppmまたはハウスダスト1000ppmを加え、25℃で2時間放置した。
なお、ハウスダストは、掃除機(製品名:サンヨーSC−KH4−SB)を用いて、ネコを家庭内で飼育している家庭の床より収集したもの(試料)を用いた。ハウスダストは、当該試料を蒸留水に懸濁させた分散液を調製し、所望の濃度となる添加量を採取して試料溶液に加えた。
放置後、ダニ抗原1ppmを加えた試料溶液またはハウスダスト1000ppmを加えた試料溶液に、これら試料溶液と同量(0.5g)のチオ硫酸ナトリウム10000ppm水溶液を添加し、この混合液を、1質量%牛血清アルブミン(BSA)を含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)により体積基準で50倍希釈し(この50倍希釈した溶液を「ELISA用試料」という。)、抗原抗体反応の測定(ELISA)に供した。
なお、本明細書において「ppm」は、試料溶液1Lあたりのダニ抗原又はハウスダストの含有割合、水溶液1Lあたりのチオ硫酸ナトリウムの含有割合(いずれも質量基準:mg)のように、溶液1Lあたりに含まれるその成分の割合(質量基準:mg)を意味する。
【0052】
(抗原抗体反応の測定)
ELISAの測定は、一般的なサンドイッチ法(特表2004−510717号公報)を用いて行った。その概要は、以下に示す(1)〜(11)の通りである。
ダニ抗原1ppmを加えた試料溶液を用いた場合:
(1)96穴ウェル(ヌンク社、マキシソープ441404)に、0.05M炭酸緩衝液(炭酸ナトリウム1.59gと炭酸水素ナトリウム2.93gを蒸留水1Lに溶解したもの)にて400倍希釈したDer f2抗体(生化学工業製、15E11)溶液を100μL加え、4℃にて16時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(2)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)を500ppm含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(3)次いで、各ウェルに、1質量%BSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を150μL加え、室温にて1時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(4)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)を500ppm含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(5)次いで、各ウェルに、上述のELISA用試料を100μL加え、室温にて1時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(6)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)を500ppm含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(7)次いで、各ウェルに、1質量%BSAを含むリン酸緩衝液(pH7.4)にて200倍希釈したDer f2標識抗体(生化学工業製、13A4PO)溶液を加え、室温にて2時間放置した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。
(8)次いで、各ウェルに、Tween20(商品名、メルク製)を500ppm含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.4)350μLずつを添加して洗浄した。その後、各ウェル内の溶液を廃棄した。同様の操作を2回繰り返した。
(9)次いで、基質緩衝液(クエン酸・一水和物10.3gおよびリン酸一水素二ナトリウム・十二水和物35.8gを蒸留水1Lに溶解したもの)12mLに、o−フェニレンジアミン(コスモバイオ製、発色成分)1錠を溶解し、さらに、30質量%過酸化水素水12μLを添加した溶液を調製した。
(10)各ウェルに、(9)で調製した溶液100μLずつを添加し、遮光して室温下で15分間放置した。
(11)その後、各ウェルに、1M硫酸150μLずつを加えて、吸光度測定器(大日本製薬製、製品名:パワースキャンHT)を用いて、492nmにおける吸光度を測定した。
【0053】
ハウスダスト1000ppmを加えた試料溶液を用いた場合:
ダニ抗原1ppmを加えた試料溶液を用いた場合における上記の測定方法において、(9)の発色成分としてo−フェニレンジアミンの代わりに、ABTS(2,2’−azino−bis(3−ethylbenzthiazoline−6−sulphonic acid))を使用した以外は、同様の測定方法により、409nmにおける吸光度を測定した。
なお、ハウスダスト中のネコアレルゲン(Fel d1)について、インドア社製のキット(商品名:EL−FD1)を使用して定量を予め行い、この定量の結果を基にして、アレルゲン不活性化の効果の評価を行った。
【0054】
各アレルゲンの不活性化率(%)を、下記式より求めた。その結果を表に併記した。
アレルゲンの不活性化率(%)=(コントロールのOD値−ELISA用試料のOD値)/(コントロールのOD値)×100
ここでいう「ELISA用試料のOD値」とは、上記抗原抗体反応の測定(11)で測定される吸光度の値からブランクのOD値を引いた値をいう。
「コントロールのOD値」とは、上記抗原抗体反応の測定(5)において、ELISA用試料の代わりに蒸留水を使用した場合に(11)で測定される吸光度の値からブランクのOD値を引いた値をいう。
「ブランクのOD値」とは、反応物を供しない空のウェルの吸光度の値をいう。
上記式より求まるアレルゲンの不活性化率(%)が50%以上であれば、アレルゲン不活性化の効果が良好であると判定した。
表中、「−」は、評価を実施していないことを表す。
【0055】
【表1】

【0056】
以上の結果から明らかなように、本発明のアレルゲン不活性化剤組成物およびアレルゲン不活性化方法によれば、ダニアレルゲン(Der f2)およびネコアレルゲン(Fel d1)を不活性化する効果が高いことが確認できた。
【0057】
特に、実施例1、2、6、7と、比較例1、4との対比から、本発明における(A)成分と(B)成分とを併用した実施例1、2、6、7は、(A)成分又は(B)成分のいずれかを欠く比較例1、4に比べて、アレルゲン不活性化の効果が格段に高いことが分かる。
また、実施例2と実施例3との対比、および実施例1と実施例4との対比から、有機過酸前駆体(C)をさらに含有すると、アレルゲン不活性化の効果がより高くなることが確認できた。
【0058】
したがって、本発明によれば、アレルゲン不活性化の効果に優れたアレルゲン不活性化剤組成物、および加熱処理等を必要とせず簡便なアレルゲン不活性化方法を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を含む水溶性の化合物および重金属を含む水分散性の化合物からなる群から選択される重金属化合物(A)と、
水に溶解して過酸化水素を発生する無機過酸化物(B)とを含有し、
かつ、蒸留水により質量基準で10000倍に希釈した希釈処理液の25℃におけるpHが7.0〜11.0であることを特徴とするアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項2】
有機過酸前駆体(C)をさらに含有する請求項1記載のアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項3】
前記重金属化合物(A)が、銅を含む水溶性塩および鉄を含む水溶性塩からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性塩である請求項1又は請求項2記載のアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項4】
生物から遊離するアレルゲン又は生物の死骸に由来するアレルゲンを不活性化する請求項1〜3のいずれかに記載のアレルゲン不活性化剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のアレルゲン不活性化剤組成物を使用するアレルゲン不活性化方法。

【公開番号】特開2009−215549(P2009−215549A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31771(P2009−31771)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】