アレーン系化合物及びその製造方法、並びにアレーン系化合物誘導体及びその製造方法
【課題】化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待される新規なアレーン系化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)(Xは炭素数1〜10のアルキル基等を示し、mは0又は1を示す)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)(Yは一価の置換基等を示し、nは0又は1を示す)で表される原料化合物(B)とを反応させて得られるアレーン系化合物である。
【解決手段】下記一般式(1)(Xは炭素数1〜10のアルキル基等を示し、mは0又は1を示す)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)(Yは一価の置換基等を示し、nは0又は1を示す)で表される原料化合物(B)とを反応させて得られるアレーン系化合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包摂化合物等としての利用が期待でき、官能基の導入による機能化が可能な新規化合物(アレーン系化合物及びアレーン系化合物誘導体)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カリックスアレーン系化合物は、一般にはフェノール、レゾルシノール等のフェノール系化合物とアルデヒド系化合物の縮合により得られる環状オリゴマーである。近年、カリックスアレーン系化合物はホスト−ゲスト化学の分野においてクラウンエーテル、シクロデキストリンに次ぐ、第三の包接化合物として注目されている。
【0003】
カリックスアレーン系化合物は、通常一分子内に多くの水酸基を有し、熱的安定性に優れ、高いガラス転移温度と高融点を有すること、また構造によっては成膜性を有することから、優れた機能性材料として注目されている。例えば、p−メチルカリックス[6]アレーンヘキサアセテートを用いた電子線ネガ型フォトレジストへの応用(例えば、非特許文献1参照)や、カリックス[4]レゾルシンアレーン、架橋剤、光酸発生剤に基づくアルカリ現像型のネガ型フォトレジストへの応用(例えば、非特許文献2参照)等が報告されている。また、カリックスアレーン系化合物を高性能な光硬化材料へ応用することを目的とした、ラジカル重合性官能基、カチオン重合性官能基の導入、及び高解像度のレジスト材料への応用を目的とした保護基の導入によるカリックスアレーン系誘導体の合成及びその光反応特性についての評価が報告されている(例えば、非特許文献3、4及び5参照)。また、種々のカチオン重合性官能基を有するp−アルキルカリックス[n]アレーン誘導体の合成とその光カチオン重合についての検討が報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【0004】
また、カリックスアレーン系化合物の中でもレゾルシノール系化合物とアルデヒド系化合物との縮合物であるカリックスレゾルシノールアレーン系化合物については、大きなゲストの包接を目的とした検討が種々なされており、レゾルシノール環の化学修飾により空孔をより大きく、深くした誘導体が数多く合成されている。
【0005】
例えば、隣り合うレゾルシノール環の水酸基対を共有結合で架橋するとコーン配座が強固に固定されたかご型のキャビタンドが得られる。このような架橋法として、ジハロメタンを用いるアルキル化(非特許文献7参照)、ジアルキルジクロロシランを用いたシリル化(非特許文献8参照)等が報告されている。また、レゾルシノール系化合物として、CHO(非特許文献9参照)、OH(非特許文献10参照)、CO2R(非特許文献11参照)等の官能基を有する誘導体を用いた例が報告されている。更に、適当な官能基を持つ2種類以上のキャビタントをSN2反応により連結するとカプセル型のカルセランドが得られることも報告されている(非特許文献12参照)。しかし、これらのキャビタント類は反応性基が残っていないために、更なる化学修飾が困難である。
【0006】
【非特許文献1】Y.Ochiai,S.Manako,H.Yamamoto,T.Teshima,J.Fujita,E.Nomura:J.Photopolymer.Sci.Tech.13,413(2000)
【非特許文献2】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【非特許文献3】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo,K,Tsutsui,:J.Polym.Sci.Part.Part A,Polym.Chem,39,1293(2002)
【非特許文献4】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo:Polym.J.,35,213(2003)
【非特許文献5】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo:Am.Chem.Soc,31,363
【非特許文献6】K.Tsutsui,S.Kishimoto,A.Kameyama,T.Nishikubo:Polym.Prep.Jpn.,37,1805(1999)
【非特許文献7】J.R.Moran,S.karbach and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,104,5826(1982)
【非特許文献8】D.J.Cram,K.D.Stewart,I.Goldberg and K.N.Trueblood,J,Am.Chem.Soc.,107,2574(1985)
【非特許文献9】M.L.C.Quan and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,113,2754(1991)
【非特許文献10】J.C.Sherman and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,111,4527(1989)
【非特許文献11】J.C.Sherman and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,111,4527(1989)
【非特許文献12】P. Timmerman,W.Verboom,F.C.J.M.van Veggel,W.Hoorn and D.N.Reoinhoudt,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33,1292(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待される新規なアレーン系化合物及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待される、化学修飾によって容易に製造される新規なアレーン系化合物誘導体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ジオール化合物と芳香族ジアルデヒド化合物を反応させることによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すアレーン系化合物、アレーン系化合物誘導体、アレーン系化合物の製造方法、及びアレーン系化合物誘導体の製造方法が提供される。
【0010】
[1]下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られる、化学修飾可能なフェノール性水酸基をその分子構造中に有するアレーン系化合物。
【0011】
【化1】
【0012】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0013】
【化2】
【0014】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0015】
[2]前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである前記[1]に記載のアレーン系化合物。
【0016】
[3]前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである前記[1]又は[2]に記載のアレーン系化合物。
【0017】
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基が導入されたアレーン系化合物誘導体。
【0018】
[5]前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である前記[4]に記載のアレーン系化合物誘導体。
【0019】
[6]下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させる工程を有するアレーン系化合物の製造方法。
【0020】
【化3】
【0021】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0022】
【化4】
【0023】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0024】
[7]前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである前記[6]に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【0025】
[8]前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである前記[6]又は[7]に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【0026】
[9]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基を導入する工程を有するアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【0027】
[10]前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である前記[9]に記載のアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアレーン系化合物は、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待されるものである。また、本発明のアレーン系化合物を化学修飾することにより、硬化性組成物やレジスト用組成物への応用、及び包摂化合物としての利用、更には高機能を有するアレーン系化合物中間体としての利用等、幅広い分野における利用が期待される。
【0029】
本発明のアレーン系化合物誘導体は、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待されるものである。また、前述のアレーン系化合物を化学修飾することにより容易に製造されるものであり、硬化性組成物やレジスト用組成物への応用、及び包摂化合物としての利用、更には高機能を有するアレーン系化合物中間体としての利用等、幅広い分野における利用が期待される。
【0030】
本発明のアレーン系化合物の製造方法によれば、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待されるアレーン系化合物を容易に製造することができる。
【0031】
本発明のアレーン系化合物誘導体の製造方法によれば、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待されるアレーン系化合物誘導体を化学就職によって容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0033】
本発明のアレーン系化合物は、前記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、前記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られるものである。以下、その詳細について説明する。
【0034】
(原料化合物(A))
原料化合物(A)は、下記一般式(1)で表される芳香族ジオール化合物である。
【0035】
【化5】
【0036】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0037】
前記一般式(1)表される原料化合物(A)は、置換又は非置換のジヒドロキシベンゼンである。原料化合物(A)の具体例としては、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、2−メチルレゾルシノール、及び2−ブチルレゾルシノール等を挙げることができる。これらのなかでも、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノールが好ましい。なお、これらの原料化合物(A)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(原料化合物(B))
原料化合物(B)は、下記一般式(2)で表される芳香族ジアルデヒド化合物である。
【0039】
【化6】
【0040】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0041】
前記一般式(2)表される原料化合物(B)は、置換又は非置換のフタルアルデヒドである。原料化合物(B)の具体例としては、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、及びp−フタルアルデヒド等を挙げることができる。これらの原料化合物(B)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
(原料化合物(A)と原料化合物(B)の反応)
本発明のアレーン系化合物は、原料化合物(A)と原料化合物(B)を、例えば溶媒中、触媒の存在下で、0.2時間以上(好ましくは48時間以上)、室温(25℃)〜110℃の温度条件下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。用いることのできる溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコールを挙げることができる。なお、溶媒は、脱水縮合反応の温度に応じて適宜選択することが好ましい。また、用いることのできる触媒としては、塩酸等の酸触媒を挙げることができる。
【0043】
原料化合物(A)と原料化合物(B)のモル比に特に制限はないが、収率の観点から、原料化合物(B)/原料化合物(A)の値(モル比)が、0.1〜0.6の範囲であることが好ましく、0.2〜0.5の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.3の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.25の範囲であることが特に好ましい。
【0044】
また、反応溶液中の基質濃度(原料化合物(A)と原料化合物(B)の合計の濃度)に特に制限はないが、収率の観点から、2mol/l以上であることが好ましく、4mol/l以上であることが更に好ましく、4〜10mol/lの範囲であることが特に好ましい。
【0045】
(立体構造)
上述の反応により得られる本発明のアレーン系化合物の立体構造は特に限定されない。本発明のアレーン系化合物の立体構造は、例えば、図1Aに示すようなラダー型環状オリゴマー、図1Bに示すようなラダー型ポリマー、及び図1に示すような分岐型ポリマー等であることが推測される。また、本発明のアレーン系化合物の立体構造は、例えば、これら図1A、図1B、及び図1Cで表される立体構造を組み合わせた構造であることも推測される。或いは、原料化合物(A)と原料化合物(B)を反応させることにより、図1A、図1B、及び図1Cで表されるそれぞれの立体構造を有する化合物の混合物として得られる場合が想定される。
【0046】
本発明のアレーン系化合物は、化学修飾が可能なフェノール性水酸基(−OH基)をその分子構造中に有するものである。従って、このフェノール性水酸基には、種々の置換基を導入することが可能である。導入可能な置換基の具体例としては、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基をはじめとする保護基、重合性官能基を有する基、アルカリ可溶性基を有する基、置換又は非置換のアルキル基等を挙げることができる。
【0047】
重合成官能基の具体例としては、重合性不飽和構造を有する基、環状エーテル構造を有する基等を挙げることができる。より具体的には、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、置換又は非置換のグリシジル基、置換又は非置換のオキセタニル基、置換又は非置換のスピロオルトエステル基等を挙げることができる。また、アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、アミノ基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0049】
[赤外吸収スペクトル(IR)の測定]:サーモエレクトロン社製の商品名「Nicolet 380」を使用して赤外吸収スペクトル(IR)を測定した。
【0050】
[核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定]:日本電子社製の商品名「JNM−2500」を使用して核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した。
【0051】
[数平均分子量(Mn)の測定]:合成した試料の数平均分子量(Mn)を、東ソー社製のカラム(商品名「HLC−8220」)を使用し、流量:0〜600ml/min、溶出溶媒:DMF、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。
【0052】
[熱分解温度(Td)の測定]:セイコーインスツルメンツ社製の商品名「SSC/5200 DSC120」を使用し、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で熱分解温度(Td)を測定した。
【0053】
(実施例1)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.56gの黄色固体を得た。得られた黄色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図2及び図3にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3374(νOH);1607、1507、1430(νC=C(aromatic))
【0054】
(実施例2)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール1.5mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸1.5mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール3mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.54gの黄色固体を得た(表1)。
【0055】
(実施例3)
エタノールを3ml、濃塩酸を3ml、及び熱エタノールを6ml用いたこと以外は、前述の実施例2と同様の操作により1.56gの黄色固体を得た(表1)。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例4)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol)、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.27g(2mmol)をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、0.39gの黄色固体を得た。得られた黄色固体の数平均分子量(Mn)は1880であった。なお、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図4に示す。
【0058】
(実施例5〜11)
m−フタルアルデヒド(m−PA)を、0.4g(3mmol)、0.53g(4mmol)、0.67g(5mmol)、0.8g(6mmol)、0.93g(7mmol)、1.06g(8mmol)、及び1.34g(10mmol)用いたこと以外は、前述の実施例4と同様の操作により黄色固体を得た。収量(g)及び数平均分子量(Mn)の測定結果を表2に示す。また、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図4に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例12)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたo−フタルアルデヒド(o−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で0.5時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.38gの褐色固体を得た(表3)。得られた褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図5に示す。また、得られた褐色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図6及び図7にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3376(νOH);1602、1504、1433(νC=C(aromatic))
【0061】
(実施例13)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたp−フタルアルデヒド(p−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で3時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、0.67gの褐色固体を得た(表3)。得られた褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図8に示す。また、得られた褐色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図9及び図10にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3386(νOH);1614、1506、1431(νC=C(aromatic))
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例14)
回転子を入れた50mlフラスコに、実施例1で得た黄色固体(以下、「m−cyclic」と記す)3.2g(2.5mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.65g(2.0mmol)、及びピリジン30mlを入れ、m−cyclicをピリジンに溶解させた。その後、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネート(DiBoc)13.1g(60mmol)を氷冷下に滴下し、室温で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、1N塩酸で3回、及び水道水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒(体積比)=酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)により分離し、展開溶媒を減圧留去して6.0gの黄色固体(以下、「m−cyclic−Boc」と記す)を得た(収率83%)。得られたm−cyclic−Bocの熱分解温度は、Td5%=163℃、Td10%=166℃であった。なお、m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解温度の測定結果を表4に示す。また、得られたm−cyclic−BocのIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図11及び図12にそれぞれ示す。更に、m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解曲線を示すグラフを図13に示す。
IR(film法、cm−1):2981、2934(νC−H);1759(νC=O(carbonate));1605、1496、1458(νC=C(aromatic));1370(νC−H(t−butyl))
【0064】
【表4】
【0065】
IRの測定結果から、化学修飾により、3500cm−1付近に存在していた芳香族水酸基に由来する吸収が消失したことが明らかである。また、1H−NMRの測定結果から、水酸基のプロトンに由来するシグナルが消失したことが明らかである。更には、1H−NMRの積分値もよく一致していることから、原料であるm−cyclicのフェノール性水酸基に対して、Boc基を100%の割合で導入することができたと考えられる。
【0066】
また、表4及び図13に示す結果から、m−cyclic−Bocは二段階で熱分解するとともに、一段階目の熱分解後は、m−cyclicと同様の熱分解曲線を示すことが明らかである。従って、m−cyclicのフェノール性水酸基に対してBoc基が導入されていると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のアレーン系化合物は、特徴的な立体構造を有し、化学修飾が容易なものである。このため、本発明のアレーン系化合物は、包摂化合物等をはじめとする特殊な機能を示す化合物としての利用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明のアレーン系化合物の立体構造の一例(ラダー型環状オリゴマー)を示す模式図である。
【図1B】本発明のアレーン系化合物の立体構造の他の例(ラダー型ポリマー)を示す模式図である。
【図1C】本発明のアレーン系化合物の立体構造の更に他の例(分岐型ポリマー)を示す模式図である。
【図2】実施例1で得た黄色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図3】実施例1で得た黄色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図4】実施例4〜10で得た黄色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図5】実施例12で得た褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図6】実施例12で得た褐色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図7】実施例12で得た褐色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図8】実施例13で得た褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図9】実施例13で得た褐色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図10】実施例13で得た褐色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図11】実施例14で得た黄色固体(m−cyclic−Boc)の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図12】実施例14で得た黄色固体(m−cyclic−Boc)の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図13】m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解曲線を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、包摂化合物等としての利用が期待でき、官能基の導入による機能化が可能な新規化合物(アレーン系化合物及びアレーン系化合物誘導体)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カリックスアレーン系化合物は、一般にはフェノール、レゾルシノール等のフェノール系化合物とアルデヒド系化合物の縮合により得られる環状オリゴマーである。近年、カリックスアレーン系化合物はホスト−ゲスト化学の分野においてクラウンエーテル、シクロデキストリンに次ぐ、第三の包接化合物として注目されている。
【0003】
カリックスアレーン系化合物は、通常一分子内に多くの水酸基を有し、熱的安定性に優れ、高いガラス転移温度と高融点を有すること、また構造によっては成膜性を有することから、優れた機能性材料として注目されている。例えば、p−メチルカリックス[6]アレーンヘキサアセテートを用いた電子線ネガ型フォトレジストへの応用(例えば、非特許文献1参照)や、カリックス[4]レゾルシンアレーン、架橋剤、光酸発生剤に基づくアルカリ現像型のネガ型フォトレジストへの応用(例えば、非特許文献2参照)等が報告されている。また、カリックスアレーン系化合物を高性能な光硬化材料へ応用することを目的とした、ラジカル重合性官能基、カチオン重合性官能基の導入、及び高解像度のレジスト材料への応用を目的とした保護基の導入によるカリックスアレーン系誘導体の合成及びその光反応特性についての評価が報告されている(例えば、非特許文献3、4及び5参照)。また、種々のカチオン重合性官能基を有するp−アルキルカリックス[n]アレーン誘導体の合成とその光カチオン重合についての検討が報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
【0004】
また、カリックスアレーン系化合物の中でもレゾルシノール系化合物とアルデヒド系化合物との縮合物であるカリックスレゾルシノールアレーン系化合物については、大きなゲストの包接を目的とした検討が種々なされており、レゾルシノール環の化学修飾により空孔をより大きく、深くした誘導体が数多く合成されている。
【0005】
例えば、隣り合うレゾルシノール環の水酸基対を共有結合で架橋するとコーン配座が強固に固定されたかご型のキャビタンドが得られる。このような架橋法として、ジハロメタンを用いるアルキル化(非特許文献7参照)、ジアルキルジクロロシランを用いたシリル化(非特許文献8参照)等が報告されている。また、レゾルシノール系化合物として、CHO(非特許文献9参照)、OH(非特許文献10参照)、CO2R(非特許文献11参照)等の官能基を有する誘導体を用いた例が報告されている。更に、適当な官能基を持つ2種類以上のキャビタントをSN2反応により連結するとカプセル型のカルセランドが得られることも報告されている(非特許文献12参照)。しかし、これらのキャビタント類は反応性基が残っていないために、更なる化学修飾が困難である。
【0006】
【非特許文献1】Y.Ochiai,S.Manako,H.Yamamoto,T.Teshima,J.Fujita,E.Nomura:J.Photopolymer.Sci.Tech.13,413(2000)
【非特許文献2】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【非特許文献3】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo,K,Tsutsui,:J.Polym.Sci.Part.Part A,Polym.Chem,39,1293(2002)
【非特許文献4】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo:Polym.J.,35,213(2003)
【非特許文献5】T.Nishikubo,A.Kameyama and H.Kudo:Am.Chem.Soc,31,363
【非特許文献6】K.Tsutsui,S.Kishimoto,A.Kameyama,T.Nishikubo:Polym.Prep.Jpn.,37,1805(1999)
【非特許文献7】J.R.Moran,S.karbach and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,104,5826(1982)
【非特許文献8】D.J.Cram,K.D.Stewart,I.Goldberg and K.N.Trueblood,J,Am.Chem.Soc.,107,2574(1985)
【非特許文献9】M.L.C.Quan and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,113,2754(1991)
【非特許文献10】J.C.Sherman and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,111,4527(1989)
【非特許文献11】J.C.Sherman and D.J.Cram,J.Am.Chem.Soc.,111,4527(1989)
【非特許文献12】P. Timmerman,W.Verboom,F.C.J.M.van Veggel,W.Hoorn and D.N.Reoinhoudt,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,33,1292(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待される新規なアレーン系化合物及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待される、化学修飾によって容易に製造される新規なアレーン系化合物誘導体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ジオール化合物と芳香族ジアルデヒド化合物を反応させることによって上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すアレーン系化合物、アレーン系化合物誘導体、アレーン系化合物の製造方法、及びアレーン系化合物誘導体の製造方法が提供される。
【0010】
[1]下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られる、化学修飾可能なフェノール性水酸基をその分子構造中に有するアレーン系化合物。
【0011】
【化1】
【0012】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0013】
【化2】
【0014】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0015】
[2]前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである前記[1]に記載のアレーン系化合物。
【0016】
[3]前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである前記[1]又は[2]に記載のアレーン系化合物。
【0017】
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基が導入されたアレーン系化合物誘導体。
【0018】
[5]前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である前記[4]に記載のアレーン系化合物誘導体。
【0019】
[6]下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させる工程を有するアレーン系化合物の製造方法。
【0020】
【化3】
【0021】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0022】
【化4】
【0023】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0024】
[7]前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである前記[6]に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【0025】
[8]前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである前記[6]又は[7]に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【0026】
[9]前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基を導入する工程を有するアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【0027】
[10]前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である前記[9]に記載のアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明のアレーン系化合物は、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待されるものである。また、本発明のアレーン系化合物を化学修飾することにより、硬化性組成物やレジスト用組成物への応用、及び包摂化合物としての利用、更には高機能を有するアレーン系化合物中間体としての利用等、幅広い分野における利用が期待される。
【0029】
本発明のアレーン系化合物誘導体は、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待されるものである。また、前述のアレーン系化合物を化学修飾することにより容易に製造されるものであり、硬化性組成物やレジスト用組成物への応用、及び包摂化合物としての利用、更には高機能を有するアレーン系化合物中間体としての利用等、幅広い分野における利用が期待される。
【0030】
本発明のアレーン系化合物の製造方法によれば、化学修飾が容易であるとともに、特徴的な立体構造を有し、かつ、包摂化合物等としての利用が期待されるアレーン系化合物を容易に製造することができる。
【0031】
本発明のアレーン系化合物誘導体の製造方法によれば、特徴的な立体構造を有するとともに、包摂化合物等としての利用が期待されるアレーン系化合物誘導体を化学就職によって容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0033】
本発明のアレーン系化合物は、前記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、前記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られるものである。以下、その詳細について説明する。
【0034】
(原料化合物(A))
原料化合物(A)は、下記一般式(1)で表される芳香族ジオール化合物である。
【0035】
【化5】
【0036】
前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す。
【0037】
前記一般式(1)表される原料化合物(A)は、置換又は非置換のジヒドロキシベンゼンである。原料化合物(A)の具体例としては、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、2−メチルレゾルシノール、及び2−ブチルレゾルシノール等を挙げることができる。これらのなかでも、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノールが好ましい。なお、これらの原料化合物(A)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
(原料化合物(B))
原料化合物(B)は、下記一般式(2)で表される芳香族ジアルデヒド化合物である。
【0039】
【化6】
【0040】
前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す。
【0041】
前記一般式(2)表される原料化合物(B)は、置換又は非置換のフタルアルデヒドである。原料化合物(B)の具体例としては、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、及びp−フタルアルデヒド等を挙げることができる。これらの原料化合物(B)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
(原料化合物(A)と原料化合物(B)の反応)
本発明のアレーン系化合物は、原料化合物(A)と原料化合物(B)を、例えば溶媒中、触媒の存在下で、0.2時間以上(好ましくは48時間以上)、室温(25℃)〜110℃の温度条件下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。用いることのできる溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール等のアルコールを挙げることができる。なお、溶媒は、脱水縮合反応の温度に応じて適宜選択することが好ましい。また、用いることのできる触媒としては、塩酸等の酸触媒を挙げることができる。
【0043】
原料化合物(A)と原料化合物(B)のモル比に特に制限はないが、収率の観点から、原料化合物(B)/原料化合物(A)の値(モル比)が、0.1〜0.6の範囲であることが好ましく、0.2〜0.5の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.3の範囲であることが更に好ましく、0.2〜0.25の範囲であることが特に好ましい。
【0044】
また、反応溶液中の基質濃度(原料化合物(A)と原料化合物(B)の合計の濃度)に特に制限はないが、収率の観点から、2mol/l以上であることが好ましく、4mol/l以上であることが更に好ましく、4〜10mol/lの範囲であることが特に好ましい。
【0045】
(立体構造)
上述の反応により得られる本発明のアレーン系化合物の立体構造は特に限定されない。本発明のアレーン系化合物の立体構造は、例えば、図1Aに示すようなラダー型環状オリゴマー、図1Bに示すようなラダー型ポリマー、及び図1に示すような分岐型ポリマー等であることが推測される。また、本発明のアレーン系化合物の立体構造は、例えば、これら図1A、図1B、及び図1Cで表される立体構造を組み合わせた構造であることも推測される。或いは、原料化合物(A)と原料化合物(B)を反応させることにより、図1A、図1B、及び図1Cで表されるそれぞれの立体構造を有する化合物の混合物として得られる場合が想定される。
【0046】
本発明のアレーン系化合物は、化学修飾が可能なフェノール性水酸基(−OH基)をその分子構造中に有するものである。従って、このフェノール性水酸基には、種々の置換基を導入することが可能である。導入可能な置換基の具体例としては、tert−ブトキシカルボニル(Boc)基をはじめとする保護基、重合性官能基を有する基、アルカリ可溶性基を有する基、置換又は非置換のアルキル基等を挙げることができる。
【0047】
重合成官能基の具体例としては、重合性不飽和構造を有する基、環状エーテル構造を有する基等を挙げることができる。より具体的には、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基、置換又は非置換のグリシジル基、置換又は非置換のオキセタニル基、置換又は非置換のスピロオルトエステル基等を挙げることができる。また、アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、アミノ基、スルホンアミド基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0049】
[赤外吸収スペクトル(IR)の測定]:サーモエレクトロン社製の商品名「Nicolet 380」を使用して赤外吸収スペクトル(IR)を測定した。
【0050】
[核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定]:日本電子社製の商品名「JNM−2500」を使用して核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)を測定した。
【0051】
[数平均分子量(Mn)の測定]:合成した試料の数平均分子量(Mn)を、東ソー社製のカラム(商品名「HLC−8220」)を使用し、流量:0〜600ml/min、溶出溶媒:DMF、カラム温度:40℃の分析条件で、ポリスチレンを標準とするサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定した。
【0052】
[熱分解温度(Td)の測定]:セイコーインスツルメンツ社製の商品名「SSC/5200 DSC120」を使用し、窒素雰囲気下、10℃/分の昇温速度で熱分解温度(Td)を測定した。
【0053】
(実施例1)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.56gの黄色固体を得た。得られた黄色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図2及び図3にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3374(νOH);1607、1507、1430(νC=C(aromatic))
【0054】
(実施例2)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール1.5mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸1.5mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール3mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.54gの黄色固体を得た(表1)。
【0055】
(実施例3)
エタノールを3ml、濃塩酸を3ml、及び熱エタノールを6ml用いたこと以外は、前述の実施例2と同様の操作により1.56gの黄色固体を得た(表1)。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例4)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol)、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたm−フタルアルデヒド(m−PA)0.27g(2mmol)をゆっくりと滴下し、80℃で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、0.39gの黄色固体を得た。得られた黄色固体の数平均分子量(Mn)は1880であった。なお、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図4に示す。
【0058】
(実施例5〜11)
m−フタルアルデヒド(m−PA)を、0.4g(3mmol)、0.53g(4mmol)、0.67g(5mmol)、0.8g(6mmol)、0.93g(7mmol)、1.06g(8mmol)、及び1.34g(10mmol)用いたこと以外は、前述の実施例4と同様の操作により黄色固体を得た。収量(g)及び数平均分子量(Mn)の測定結果を表2に示す。また、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図4に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
(実施例12)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたo−フタルアルデヒド(o−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で0.5時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、1.38gの褐色固体を得た(表3)。得られた褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図5に示す。また、得られた褐色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図6及び図7にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3376(νOH);1602、1504、1433(νC=C(aromatic))
【0061】
(実施例13)
回転子を入れた50mlナスフラスコに、レゾルシノール2.2g(20mmol(官能基当量:40mmol))、及びエタノール3mlを入れ、エタノールにレゾルシノールを溶解させた。触媒として濃塩酸3mlを加えた後、氷冷下、熱エタノール6mlに溶解させたp−フタルアルデヒド(p−PA)0.67g(5mmol(官能基当量:10mmol))をゆっくりと滴下し、80℃で3時間撹拌して反応させた。反応終了後、生成した固体をエーテルで洗浄し、0.67gの褐色固体を得た(表3)。得られた褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)を図8に示す。また、得られた褐色固体のIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図9及び図10にそれぞれ示す。
IR(film法、cm−1):3386(νOH);1614、1506、1431(νC=C(aromatic))
【0062】
【表3】
【0063】
(実施例14)
回転子を入れた50mlフラスコに、実施例1で得た黄色固体(以下、「m−cyclic」と記す)3.2g(2.5mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)0.65g(2.0mmol)、及びピリジン30mlを入れ、m−cyclicをピリジンに溶解させた。その後、ジ−tert−ブチル−ジ−カーボネート(DiBoc)13.1g(60mmol)を氷冷下に滴下し、室温で48時間撹拌して反応させた。反応終了後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、1N塩酸で3回、及び水道水で1回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを用いて有機層を乾燥した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒(体積比)=酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)により分離し、展開溶媒を減圧留去して6.0gの黄色固体(以下、「m−cyclic−Boc」と記す)を得た(収率83%)。得られたm−cyclic−Bocの熱分解温度は、Td5%=163℃、Td10%=166℃であった。なお、m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解温度の測定結果を表4に示す。また、得られたm−cyclic−BocのIR、及び1H−NMRの測定結果を示すチャートを図11及び図12にそれぞれ示す。更に、m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解曲線を示すグラフを図13に示す。
IR(film法、cm−1):2981、2934(νC−H);1759(νC=O(carbonate));1605、1496、1458(νC=C(aromatic));1370(νC−H(t−butyl))
【0064】
【表4】
【0065】
IRの測定結果から、化学修飾により、3500cm−1付近に存在していた芳香族水酸基に由来する吸収が消失したことが明らかである。また、1H−NMRの測定結果から、水酸基のプロトンに由来するシグナルが消失したことが明らかである。更には、1H−NMRの積分値もよく一致していることから、原料であるm−cyclicのフェノール性水酸基に対して、Boc基を100%の割合で導入することができたと考えられる。
【0066】
また、表4及び図13に示す結果から、m−cyclic−Bocは二段階で熱分解するとともに、一段階目の熱分解後は、m−cyclicと同様の熱分解曲線を示すことが明らかである。従って、m−cyclicのフェノール性水酸基に対してBoc基が導入されていると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のアレーン系化合物は、特徴的な立体構造を有し、化学修飾が容易なものである。このため、本発明のアレーン系化合物は、包摂化合物等をはじめとする特殊な機能を示す化合物としての利用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】本発明のアレーン系化合物の立体構造の一例(ラダー型環状オリゴマー)を示す模式図である。
【図1B】本発明のアレーン系化合物の立体構造の他の例(ラダー型ポリマー)を示す模式図である。
【図1C】本発明のアレーン系化合物の立体構造の更に他の例(分岐型ポリマー)を示す模式図である。
【図2】実施例1で得た黄色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図3】実施例1で得た黄色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図4】実施例4〜10で得た黄色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図5】実施例12で得た褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図6】実施例12で得た褐色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図7】実施例12で得た褐色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図8】実施例13で得た褐色固体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)による分析結果を示すクロマトグラム(溶出チャート)である。
【図9】実施例13で得た褐色固体の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図10】実施例13で得た褐色固体の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図11】実施例14で得た黄色固体(m−cyclic−Boc)の赤外吸収スペクトル(IR)の測定結果を示すチャートである。
【図12】実施例14で得た黄色固体(m−cyclic−Boc)の核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)の測定結果を示すチャートである。
【図13】m−cyclic、及びm−cyclic−Bocの熱分解曲線を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られる、化学修飾可能なフェノール性水酸基をその分子構造中に有するアレーン系化合物。
【化1】
(前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す)
【化2】
(前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す)
【請求項2】
前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである請求項1に記載のアレーン系化合物。
【請求項3】
前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである請求項1又は2に記載のアレーン系化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基が導入されたアレーン系化合物誘導体。
【請求項5】
前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求項4に記載のアレーン系化合物誘導体。
【請求項6】
下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させる工程を有するアレーン系化合物の製造方法。
【化3】
(前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す)
【化4】
(前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す)
【請求項7】
前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである請求項6に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである請求項6又は7に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基を導入する工程を有するアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求項9に記載のアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させて得られる、化学修飾可能なフェノール性水酸基をその分子構造中に有するアレーン系化合物。
【化1】
(前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す)
【化2】
(前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す)
【請求項2】
前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである請求項1に記載のアレーン系化合物。
【請求項3】
前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである請求項1又は2に記載のアレーン系化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基が導入されたアレーン系化合物誘導体。
【請求項5】
前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求項4に記載のアレーン系化合物誘導体。
【請求項6】
下記一般式(1)で表される原料化合物(A)と、下記一般式(2)で表される原料化合物(B)と、を反応させる工程を有するアレーン系化合物の製造方法。
【化3】
(前記一般式(1)中、Xは、相互に独立に炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルキル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルケニル基、炭素数2〜10の置換若しくは非置換のアルキニル基、炭素数7〜10の置換若しくは非置換のアラルキル基、炭素数1〜10の置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のフェノキシ基を示し、mは、相互に独立に0又は1を示す)
【化4】
(前記一般式(2)中、Yは、相互に独立に一価の置換基を示し、nは、相互に独立に0又は1を示す)
【請求項7】
前記原料化合物(A)が、1,3−ジヒドロキシベンゼンである請求項6に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記原料化合物(B)が、o−フタルアルデヒド、m−フタルアルデヒド、又はp−フタルアルデヒドである請求項6又は7に記載のアレーン系化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のアレーン系化合物の前記フェノール性水酸基に保護基を導入する工程を有するアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【請求項10】
前記保護基が、tert−ブトキシカルボニル基である請求項9に記載のアレーン系化合物誘導体の製造方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−78976(P2009−78976A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241319(P2007−241319)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集56巻2号[2007]」に発表
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月4日 社団法人 高分子学会発行の「高分子学会予稿集56巻2号[2007]」に発表
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】
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