説明

アンギオゲニン濃縮ミルク分画

本発明はミルク抽出物のアンギオゲニンを濃縮する方法であって、サイズ、電荷又はイムノアフィニティーによる分離を含むそのような方法を提供する。本発明は、この方法により製造されたアンギオゲニン濃縮抽出物を提供し、且つそれを含む医薬組成物及び栄養補助食品組成物、更にはアンギオゲニンによって治療可能な種々の疾病又は障害を治療するための食品も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法、及びそのような生成物の食品添加物、栄養補助食品、医薬品又は獣医学品としての使用若しくは治療用組成物調製のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アンギオゲニンは、血管内皮細胞、大動脈平滑筋細胞、フィブロブラスト等の増殖細胞及び直腸ガン、卵巣ガン、乳ガン等の腫瘍によって生産される分子量14kDaの非グリコシル化ポリペプチドである。アンギオゲニンは、正常ヒト血漿、ウシ血漿、ウシ乳(bovine milk)、マウス、ウサギ及びブタの血清等の種々の原料から単離されている。各原料においてアンギオゲニンは低濃度(ウシ乳中12mg/L未満、ヒト血漿中150μL/L未満)で存在する。
【0003】
アンギオゲニンは強力な血管新生刺激剤としてのみならず、他の種々の活性を有する。これらにはシミ等の皮膚トラブルの除去能、免疫応答の調節、多形核白血球の自己分解防止及び全身の細菌・真菌性病原体に対する殺菌活性等の能力が含まれる。このタンパク質の知られている生理機能に基づいて、医薬品、ダイエタリー食品サプリメント、化粧品におけるアンギオゲニンの種々の応用が考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの応用におけるアンギオゲニンの使用には、このタンパク質を適切な原料から商業スケールで調製するための効率的な方法が必要である。従って、本発明の好ましい形態の目的は、このような方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ウシ乳は大変豊富に得られるものである一方、ウシ乳にはアンギオゲニンが低濃度でしか存在せず、ミルク中に存在するイムノグロブリン、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ等のある種のタンパク質がアンギオゲニンをマスクしてしまい、精製が阻害されるため、アンギオゲニンの原料としての使用は好ましくない。本発明者らは、次の第一〜第五の態様及び国際特許出願公報(WO2008/055310に公開)に記載する、ミルク分画をアンギオゲニンに関して濃縮するための数種の方法を見出した。これら方法のそれぞれによってミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得ることができる。
【0006】
本発明はその第一の態様において、ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)ミルク試料に存在するアンギオゲニンが捕捉剤と相互作用してアンギオゲニン−捕捉剤複合体を生成するように、ミルク試料をアンギオゲニンと相互作用する捕捉剤に接触させる工程、
(b)前記複合体をミルク試料から分離する工程、
(c)前記複合体中の捕捉剤からアンギオゲニンを遊離させる工程、及び
(d)工程(c)からアンギオゲニンを回収し、アンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法を提供する。
第一の態様の一実施形態においては、前記捕捉剤は支持体に固定化されている。
第一の態様の更なる実施形態においては、前記捕捉剤は抗体である。
【0007】
本発明はその第二の態様において、ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)アンギオゲニンと相互作用する抗体を固定化した支持体にミルク試料を添加し、ここでミルク試料に存在するアンギオゲニンが支持体上の抗体と相互作用してアンギオゲニン−抗体複合体を生成する工程、
(b)前記抗体と相互作用しないミルク試料に存在する成分を前記支持体から洗い落すことにより、ミルク試料から前記複合体を分離する工程、
(c)前記複合体中の抗体からアンギオゲニンを遊離させる工程、及び
(d)工程(c)からアンギオゲニンを回収し、アンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法を提供する。
第一又は第二の態様の一実施形態においては、前記方法はイムノアフィニティークロマトグラフィーを含む。
【0008】
本発明はその第三の態様において、ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)液相のミルク試料を、前記ミルク試料の成分をそのサイズに基づいて分離可能な第二の相に添加する工程、及び
(b)前記ミルク試料の他の成分から分離されたアンギオゲニンを回収することによりアンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含み、
工程(a)に先立ち、前記ミルク試料をレンネット処理又は酸沈澱に付さないか、或いは前記ミルク試料がホエイ又はホエイ分画でない方法を提供する。
【0009】
第三の態様の一実施形態においては、前記第二の相は半透過性相である。
【0010】
第三の態様の他の実施形態においては、前記半透過性相は20kDa未満のサイズ、或いは50kDa未満のサイズの成分をパーミエートとして前記半透過性相を通過させることができる。好ましい一実施形態においては、前記半透過性相は30kDa未満のサイズの成分をパーミエートとして前記半透過性相を通過させることができる。このような各種実施形態においては、アンギオゲニンは前記半透過性相をパーミエートとして通過する。
【0011】
第三の態様の更に他の実施形態においては、前記半透過性相は10kDa未満のサイズの成分をパーミエートとして前記半透過性相を通過させることができる。このような実施形態においては、アンギオゲニンは前記半透過性相に残余分として保持される。
【0012】
第三の態様の更に他の実施形態においては、前記ミルク試料は半透過性相を強制透過させられる。
【0013】
第三の態様の一実施形態においては、前記ミルク試料はシリンジ、圧縮ガス、ポンプ、遠心力又はそれらの組み合わせによって加えられる力によって、半透過性相を強制透過させられる。
【0014】
第三の態様の一実施形態においては、前記第二の相は半透過性膜である。
【0015】
第三の態様の他の実施形態においては、前記方法は限外濾過を含む。
【0016】
本発明はその第四の態様において、ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)液相のミルク試料を、前記ミルク試料の成分をそのサイズに基づいて分画に分離可能な第二の相に添加する工程、及び
(b)これらのアンギオゲニンを含む分画を同定し、該分画を回収することによってアンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法を提供する。
【0017】
第四の態様の一実施形態においては、前記方法はサイズ排除クロマトグラフィーを含む。
【0018】
第四の態様の更なる実施形態においては、前記第二の相はサイズ排除樹脂である。
【0019】
第四の態様の一実施形態においては、前記樹脂は分子量約10〜20kDaのタンパク質を分離する。
【0020】
本発明はその第五の態様において、ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)流動する水性ミルク試料にミルク流を横断する方向に電場を印加する工程、
(b)電場が印加されたミルク流の分画を回収する工程、
(c)これらのアンギオゲニンに関して濃縮された分画を同定し、該分画を回収することによってアンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法を提供する。
【0021】
第五の態様の一実施形態においては、前記方法はフリーフロー電気泳動を含む。このフリーフロー電気泳動は、等電点電気泳動、ゾーン電気泳動、等速電気泳動、フィールドステップ電気泳動及びフィールドフロー分画からなる群から選択することができる。更に、このフリーフロー電気泳動は、連続フリーフロー電気泳動であってもインターバルフリーフロー電気泳動であってもよい。
【0022】
更なる実施形態においては、前記方法は変性条件下で行う。
【0023】
第四の態様の更なる実施形態においては、前記水性ミルク流はpH勾配をもたらす緩衝液媒体中で行う。一実施形態においては、前記勾配はpH8〜11の範囲である。
【0024】
第一〜第五の態様のいずれか一つの更なる実施形態においては、前記アンギオゲニン濃縮生成物は一以上のアンギオゲニン濃縮工程に付される。一以上のアンギオゲニン濃縮工程は、カチオン交換クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動を含む電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー及び限外濾過からなる群から選択することができる。これは、アンギオゲニン分画の純度が問題とされる場合、例えばアンギオゲニンの医薬的使用に関して特にである。しかしながら、第一及び第二の態様の方法は、捕捉剤の特異性に依存して比較的高純度のアンギオゲニン濃縮生成物を提供し得ることが期待される。前記捕捉剤がアンギオゲニン特異的抗体である場合、高純度が見込まれる。
【0025】
本発明はその第六の態様において、第一〜第五の態様のいずれか一つの態様に従う方法によって調製されるアンギオゲニン濃縮生成物を提供する。
【0026】
本発明はその第七の態様において、本発明の第六の態様に従うアンギオゲニン濃縮生成物の食品用物質、栄養補助食品、医薬品又は獣医学品の調製における使用を提供する。
【0027】
本発明はその第八の態様において、本発明の第六の態様に従うアンギオゲニン濃縮生成物を含む食品用物質、栄養補助食品、医薬品又は獣医学品を提供する。
【0028】
第七又は第八の態様の一実施形態においては、前記食品用物質はスポーツ栄養サプリメント又は食品サプリメント、特に幼児、アスリート(特に優れたアスリート)、高齢者又は虚弱者用の食品サプリメントである。
【0029】
本発明はその第九の態様において、本発明の第六の態様に従うアンギオゲニン濃縮生成物を含む医薬組成物又は獣医学組成物を提供する。
【0030】
本発明はその第十の態様において、本発明の第六の態様に従うアンギオゲニン濃縮生成物のウイルス、バクテリア又は真菌及びそれらの毒素によって起こされる疾病、或いは血管新生の刺激が必要とされる疾病の治療及び/又は予防のための医薬品の調製における使用を提供する。
【0031】
本発明はその第十一の態様において、本発明の第六の態様に従うアンギオゲニン濃縮分画の、粘膜表面の感染を引き起こす病原体を標的とする栄養補助食品、医薬品又は獣医学品の成分としての使用を提供する。
【0032】
本発明はその第十二の態様において、粘膜表面の感染を引き起こす病原体を標的とする方法であって、本発明の第八の態様に従う栄養補助食品、医薬品又は獣医学品、又は本発明の第九の態様に従う組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0033】
本発明の第十一又は第十二の態様の一実施形態においては、粘膜表面は鼻、目、耳、肺、乳房及び膣の粘膜を含むことができる。
【0034】
本発明はその第十三の態様において、ウイルス、バクテリア又は真菌及びそれらの毒素によって起こされる疾病、或いは血管新生の刺激が必要とされる疾病の治療及び/又は予防の方法であって、本発明の第八の態様に従う栄養補助食品、医薬品又は獣医学品、又は本発明の第九の態様に従う組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、シプロルビー(Sypro Ruby、モレキュラープローブズ社)で染色し、プロXプレス(Proxpress、パーキンエルマー社)イメージングシステム上で5秒露光してイメージ化した一次元SDSポリアクリルアミドゲルを示す。レーン1、2及び3は、1)分子量標準、2)ミルク誘導分画、3)ミルク分画とのインキュベーション後、抗アンギオゲニンIgG標識プロテインGダイナビーズからの溶離液である。
【図2】図2は、イムノアフィニティ精製後のアンギオゲニンのウエスタンブロット解析を示す。アンギオゲニンは0.5μgの抗ウシマウスモノクローナル(クローン1B14D4)で検出し、二次抗体はIRDye 800CWヤギ抗マウスIgG(リコール社)であり、オデッセイ赤外線画像装置(リコール社)上で撮影した。レーンは、1)分子量標準、2)ミルク誘導分画、3)ミルク分画とのインキュベーション後、抗アンギオゲニンIgG標識プロテインGダイナビーズからの溶離液である。
【図3】図3は、アンギオゲニン欠乏残余分と30−kDa膜を用いた限外濾過により調製されたアンギオゲニン濃縮パーミエートとを比較した電気泳動による分離を示す。レーンは、1、分子量標準;2、残余分の2D PAGE分析;3、残余分の1D PAGE分析;4、アンギオゲニン濃縮パーミエートの1D PAGE分析;5、分子量標準;6、アンギオゲニン濃縮パーミエートの2D PAGE分析である。アンギオゲニンの位置を丸で囲んで示す。
【図4】図4は、トリス−トリシンPAGEゲルを示す。WGFEの分離、及びWGFEのUF分離又はWGFEの熱沈澱によって得られた分画を示す。(レーンは、1、分子量標準;2、熱処理WGFE;3、熱処理WGFE;4、空;5、100kDaパーミエート;6、50kDaパーミエート;7、30kDaパーミエート;8、10kDaパーミエート;9、空;10、未分画WGFE)。アンギオゲニンの位置を黒三角で示す。
【図5】図5は、アンギオゲニン単離のためのセファクリルS−100HRによるWGFEの分離を示す(−280nmシグナルにおける吸光度、−フラクションコレクターシグナル、|プールスタート/エンド)。
【図6】図6は、アンギオゲニン単離のためのセファクリルS−300HRによるWGFEの分離を示す(−280nmシグナルにおける吸光度、−フラクションコレクターシグナル、|プールスタート/エンド)。
【図7】図7は、アンギオゲニン単離のためのスーパローズ12によるWGFEの分離を示す(−280nmシグナルにおける吸光度、−フラクションコレクターシグナル、|プールスタート/エンド)。
【図8】図8は、WGFEの分離及びWGFEのSEC分離によって得られた分画を示すトリス−トリシンPAGEゲルである(レーンは、1、未分画WGFE;2、空;3、S−100HRプールA;4、S−100HRプールB;5、S−100HRプールC;6、S−100HRプールD;7、空;8、S−100HRプールE;9、空;10、分子量標準である)。アンギオゲニンの位置を黒三角で示す。
【図9】図9は、WGFEの分離及びWGFEのSEC分離によって得られた分画を示すトリス−トリシンPAGEゲルである(レーンは、1、空;2、S−300HRプールA;2、S−300HRプールA;3、S−300HRプールB;4、S−300HRプールC;5、空;6、スーパローズ12プールA;7、スーパローズ12プールB;8、空;9、未分画WGFE;10、分子量標準である)。アンギオゲニンの位置を黒三角で示す。
【図10】図10は、ミルク誘導タンパク質溶液をpH3〜5、pH5〜6.5、pH6.5〜8及びpH8〜11の各分画に分画して行った溶液内等電点電気泳動実験におけるタンパク質分離の二次元ゲル電気泳動分析を示す。pH8〜11の分画中約80%のタンパク質がアンギオゲニンとして同定される。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明者らは、入手容易な出発物質、ミルク、特にウシ乳から効率的な方法でアンギオゲニンを濃縮及び単離可能ならしめる方法の必要性を認識してきた。これらの方法には高度に精製されたアンギオゲニン分画を研究スケールで提供するものもあり、また、商業的に実施可能なプロセスを提供するものもある。
【0037】
本発明の第一及び第二の態様においては、アンギオゲニンタンパク質と相互作用する捕捉剤を用いて、ミルク試料に存在するアンギオゲニンタンパク質を、試料中に存在する他のタンパク質や物質から分離する方法が提供される。
【0038】
本発明の第一又は第二の態様の更なる実施形態においては、ミルク試料を前記接触剤と接触させる前に、前記捕捉剤又は抗体の非存在下において前記ミルク試料を前処理用支持体及び分離支持体に添加することによって、ミルク試料中に存在し前記支持体と非特異的に相互作用する物質がミルク試料から除去される。
【0039】
本発明の第一又は第二の態様の一実施形態においては、前記支持体はポリマー系及び/又はアガロース系である。例えば、前記支持体はダイナビーズプロテインGであってもよい。
【0040】
本発明の第一又は第二の態様の更なる実施形態においては、前記抗体はポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であるが、モノクローナル抗体であることが好ましい。適切な抗ウシアンギオゲニン抗体としては、忠北大学校(大韓民国、忠北道、清洲)の生化学科より得られるモノクローナル抗体クローン番号1B14D4が挙げられる。
【0041】
本発明の第一又は第二の態様のより更なる実施形態においては、前記捕捉剤又は抗体は共有結合によって支持体に固定化されている。
【0042】
本明細書において「捕捉剤」とは、アンギオゲニンタンパク質と「相互作用」できてアンギオゲニン−捕捉剤複合体を生成するものを言う。好ましくは、この相互作用によりアンギオゲニンタンパク質を固定化せしめる。理想的には、この捕捉剤はミルク試料に存在するアンギオゲニンタンパク質のみに特異的であるが、当業者であればミルク試料の他の成分も捕捉剤と非特異的に相互作用し得ることが理解されよう。従って、最小限の非特異的結合性を示す捕捉剤が選ばれる。
【0043】
適切な捕捉剤は特に限定されないが、アンギオゲニンに対する抗体、ぺプチド又はタンパク質(アンギオゲニンに結合するもの、例えばフォリスタチンを含む)、化学物質、レセプター、リガンド、アプタマー、多糖類、脂質、ホルモン等が挙げられる。捕捉剤は抗体又はそれらの機能フラグメントであることが好ましい。
【0044】
一実施形態においては、前記捕捉剤は、配列の同一性が30%であるにもかかわらずリボヌクレアーゼ4とアンギオゲニンとを区別できる。
【0045】
前記捕捉剤とアンギオゲニンとの相互作用は、アンギオゲニンが最終的に捕捉剤から単離できるよう可逆的である必要がある。この相互作用は直接的であり得るが、捕捉剤のアンギオゲニンへの相互作用が、例えば捕捉剤とアンギオゲニンを結合させるリンカー分子、ペプチド等の第三(又はそれ以上)の剤によって媒介されるよう間接的であってもよい。
【0046】
一実施形態においては、前記捕捉剤は支持体に結合するか「固定化」される。本明細書において「支持体」とは、捕捉剤が結合する物質のことを意味する。この支持体は固体の支持体であってもよい。適切な支持体の例としては、セファロース、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ガラス、プラスチック、ゲル、ゾル、セラミック、金属及びこれらの誘導体等のポリマー系及び/又はアガロース系マトリックス支持体が挙げられる。
【0047】
捕捉剤は支持体に直接的に或いは間接的に結合することができる。捕捉剤は支持体上に高密度で直接的に或いは間接的に付着することができる。例えば、プロテインA又はGは支持体にプリントすることができる。次いで、アンギオゲニンに対する抗体等の捕捉剤は、プロテインA又はGとの相互作用によって支持体とカップリングすることができる。この方法は、抗体の定常領域をプロテインA又はGと結合させることにより、抗体の可変領域(アンギオゲニン結合ドメイン)をアンギオゲニンと相互作用するように完全に露出させることができる点で有利である。
【0048】
また、捕捉剤は、ポリマー、エラストマー或いは他の適切な膜材料からなる膜である支持体に結合することもできる。このような材料の例としては、限定されないが、PVDF、ニトロセルロース、ナイロン及びこれらの変性体が挙げられる。本発明は、ノーザンブロット解析、サザンブロット解析又はウエスタンブロット解析で用いる当業者に知られているようないずれの材料の使用も意図している。本発明の目的に望ましい膜の特別な特徴としては、大量のアンギオゲニンタンパク質の結合する能力、アンギオゲニンタンパク質を最小の変性で結合する能力、及びミルク試料中に存在する非アンギオゲニン成分の結合を最小限とする能力が挙げられる。
【0049】
第一及び第二の態様は、アンギオゲニンと捕捉剤として作用するアンギオゲニン抗体との間の可逆的親和性相互作用に依存する。
【0050】
このように抗体を用いる本発明の方法は、通常、イムノアフィニティークロマトグラフィーと呼ばれる。この際、アンギオゲニン特異的抗体は支持体上に固定化されて、活性免疫吸着剤が得られる。次いで、この活性免疫吸着剤を、精製すべき不均一なタンパク質試料を受け入れる準備の整ったカラムに充填する。タンパク質の複合体混合物を含むミルク試料をこの免疫吸着剤に添加するか、免疫吸着剤に通過させるかすると、試料中に存在するアンギオゲニンタンパク質は抗体と相互作用して、アンギオゲニン−抗体複合体を形成し、試料中に存在する他のタンパク質及び物質はカラムを通って洗いおとされる。次いで、抗体とアンギオゲニンとの可逆的な相互作用を中断して、高度精製生成物をアンギオゲニンが濃縮されたカラムからの溶出液として得る。
【0051】
本明細書において、「アンギオゲニン抗体」或いは「抗体」とは、ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両タイプを含む。更に「抗体」は、未処理のイムノグロブリン分子、キメラなイムノグロブリン分子又はFab又はF(ab')2フラグメントである。本明細書において定義される抗体は単鎖抗体(ScFv)も含むが、これは結合VHドメイン及びVLドメインを含み、抗体の未変性イディオトープの構造と特異的結合活性を保持している。このような単鎖抗体は当技術分野でよく知られており、標準的な方法によって製造することができる。この抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE及びIgMのいずれのアイソタイプであり得る。この抗体又は抗体フラグメントは、現在知られているもの又は今後知られるであろうものを包含することは明白に理解されよう。
【0052】
アンギオゲニンに対するポリクローナル抗体は、当技術分野で知られた技法によって得ることができる。例えば、ポリクローナルアンギオゲニン抗体は、ウサギ又はヤギを免疫化し、得られた血清からイムノグロブリン分画を精製することによって得ることができる。得られた抗体は、免疫源として用いたアンギオゲニンタンパク質の様々な部分と結合することができる種々の特異性を有する抗体の混合物を呈する。
【0053】
アンギオゲニンに対するポリクローナル抗体は、商品として購入することもできる(例えばカルビオケム(米国)、ライフスパンバオイオサイエンス(米国)、R&Dシステムズ(米国))。
【0054】
ポリクローナル抗体は容易に製造することができるが、イムノアフィニティークロマトグラフィーに供するには幾つか不都合がある。例えば、ポリクローナル抗体はエピトープ特異性及び結合性に関して不均一であり、タンパク製造中に不要な抗体が微量の不純物に変化することを回避するには、高純度の抗原を用いなければならない。更に、抗体の調製は、ある免疫化動物から他への動物へ完全に再現性があるとは言えず、これにより一貫性のある物質を大量に得ることが困難となる。従って、本発明においてアンギオゲニンポリクローナル抗体は使用可能であるとはいえ、第一の選択肢とはならない。
【0055】
アンギオゲニンモノクローナル抗体を使用することができる。アンギオゲニンに対するモノクローナル抗体は、培養における連続的株細胞による抗体分子の製造に提供されるいかなる技法を用いても調製することができる。これら技法は限定されないが、ハイブリドーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法及びEBV−ハイブリドーマ法が当業者に知られているであろう例として挙げられる。アンギオゲニンに対するモノクローナル抗体は、商品として購入することもできる(例えばアビーム(英国)、ジーンテックス(米国)、BACHEM(米国))。
【0056】
モノクローナル抗体は少量のアンギオゲニンを免疫原として用いて製造することができるが、このアンギオゲニンは高純度である必要はない。一旦ハイブリドーマ株細胞が確立すると、その株細胞を用いて、再現可能な特性を有する抗体を限りなく可能な供給量で製造することができる。更に、モノクローナル抗体は単一エピトープに結合し、均一な結合及び溶出性を有するであろう。
【0057】
免疫吸着剤の性能は、抗体が固定化される支持体の種類に依存する。当業者には、効率的な免疫吸着剤は、力学的物理的安定性、適切なフロー特性、許容できる圧力低下、最小限の非特異的結合性、タンパク質-抗体相互作用のための広表面積、及び化学的安定性を有することが理想的であることが理解されよう。
【0058】
この点で、通常、セファローズ等のポリマー系及び/又はアガロース系マトリックス支持体が用いられ、また、商品として入手可能である。本発明におけるイムノアフィニティークロマトグラフィー法において用いられる支持体用の適切なマトリックスの例としては、CNBr−活性化セファロース(GEヘルスケア)、エンファーゼ(登録商標)活性化クロマトグラフィー樹脂(ピアースケミカル)、CM Bio−Gel Aゲル(バイオラッド)、ECHセファロース4B(GEヘルスケア)、リアクティ−ゲル6X(ピアースケミカル)、プロテインA及びGセファロースCL 4Bビーズ(ピアースケミカル)、ハイトラップNHS−活性化(GEヘルスケア)及びアフィプレプ10(バイオラッド)が挙げられる。
【0059】
免疫吸着剤カラムの効率的な機能は、抗体をマトリックスにカップリングさせて抗体を固定化するために利用する活性化化学に依存する。通常、共有結合が用いられる。当業者に知られているように、抗体を固相マトリックスに共有結合させるためのプロトコルは種々あるが、抗体のプロテインA又はGのビーズへのカップリングが最も容易である。プロテインA又はGマトリックスは抗体のFcドメインに特異的に結合する。抗体が結合した後、二官能性カップリング剤による抗体のプロテインA又はGへの架橋結合によって、相互作用が安定化する。
【0060】
他の方法としては、活性基を含むように化学変性されたマトリックスビーズに抗体をカップリングさせる方法である。活性化されたビーズを抗体と混合すると、抗体は活性部位と相互作用して、共有結合を形成する。この方法がプロテインA又はGマトリックスの使用よりも有利であるのは、タンパク質が耐えられる条件よりも過酷な条件においてビーズを活性化できるので、当技術分野で知られている一連の活性化プロトコルが利用できることにある(ポラース及びアクセン、1976年、Methods Enzymol.44:p19〜45;スコウテンW.H.、1987年、Methods Enzymol.135:p30〜65も参照)。このアプローチの更なる利点には、上に明示されたような商品として入手可能な一連の活性化ビーズと、これらカップリング方法の多くが広範な変性条件に対して安定な結合をもたらすという事実とが含まれる。
【0061】
活性基を生ずるためのマトリックスビーズの化学変性は、種々の方法で達成することができ、これにはカルボニルジイミダゾール、シアノゲンブロミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ヨードアセチル及びトレシルクロリドとの処理が含まれる。
【0062】
活性化ビーズとアンギオゲニン抗体とのカップリングは、主に抗体上に存在する第一級アミノ基又はスルフヒドリル基によって媒介される。一例として、アフィプレプ(AffiPrep)のようなNHS−活性化マトリックスへの抗体のカップリング(アミノ基を介して)で官能化免疫吸着剤を生成させることは、次の手順にて達成することができる。エタノールに懸濁させたビーズのスラリー(50%v/v)として提供される適量の活性化アフィプレプマトリックスをシンターガラス漏斗に注ぎ、液体を低真空で吸引する。漏斗に残る懸濁液をガラス棒で攪拌し、常に湿潤を維持する。活性化ビーズは氷冷の蒸留水で洗ってエタノールを完全に除去する。低真空での吸引でビーズから水を排出させ、3〜5mg/mLアンギオゲニン抗体のカップリング緩衝液溶液(0.1M 4−モルスリンプロパネルスルホン酸(MOPS)、0.1MNaCl、pH7.2)を含むフラスコに、湿潤ビーズを移す。次いで、フラスコの内容物を冷室で一晩又は室温で4時間ゆっくりと混合する。このカップリングはビーズ上の活性化エステルと抗体上の反応性アミンとの反応を含み、この反応は最終的に安定なアミド(共有)結合を形成する。このカップリング工程が終了した後、ビーズを室温で静置し、次いで上澄みをアスピレーション又はデカンテーションで取り除く。次に、ブロッキング溶液(1Mエタノールアミン、pH8.0)を免疫吸着剤に添加し、室温で1時間ゆっくりと混合する。ブロッキング工程の終了に際し、再度ビーズを静置し、上澄みを除去する。未利用の活性化部位のブロッキングを確実とするために、ブロッキング工程を更に二度繰り返す。
【0063】
次に、リガンドカップリング緩衝液(10mM トリス HCl、50mM NaCl、pH6.8)を抗体カップリングビーズに添加し、室温で1時間ゆっくりと混合する。ビーズからブロッキング溶液を確実に除去するために、この工程をもう4〜5回繰り返すことが好ましい。次いで、免疫吸着剤を適量のリガンドカップリング緩衝液に懸濁させ、必要となるまで4℃に保存する。その後、免疫吸着剤の使用の準備が整い、アンギオゲニンの結合のために重力にてカラムに充填することができる。
【0064】
ミルク試料を調製したビーズのカラムに添加するに先立ち、前記カラムを適切な洗浄緩衝液にて「平衡化」することができる。適切な洗浄緩衝液の例としては、限定されず、10mM トリスHCl及び50mM NaClを含むpH7.0の緩衝液、10mM トリスHCl、140mM NaCl、0.5%トリトンX−100及び0.5%デオキシコール酸ナトリウムを含むpH8.0の緩衝液、10mM トリスHCl、140mM NaCl及び0.5%トリトンX−100を含むpH8.0の緩衝液、10mM トリスHCl、140mM NaCl及び0.5%トリトンX−100を含むpH9.0の緩衝液、並びに150mM NaCl、0.1%トリトンX−100及び50mM トリエタノールアミンを含む緩衝液が挙げられる。カラムは上述した緩衝液の一種以上で平衡化することができる。
【0065】
ミルク試料を平衡化された免疫吸着剤(抗体を含む)カラムに添加するに先立ち、試料をまず別個のプレカラム(pre-column)に通すことはよく行われるが、必須ではない。プレカラムは免疫吸着剤カラムと同様の支持体を含むが、支持体に結合する抗体を有さない。この操作によって、免疫吸着剤カラムに非特異的に結合しやすい物質を試料から確実に取り除く。ミルク試料の添加に先立ち、上述の洗浄緩衝液を用いて免疫吸着剤カラムを処理したのと同様の方法によりプレカラムを平衡化する。
【0066】
平衡化された免疫吸着剤カラム及びプレカラム(利用していた場合)にミルク試料を添加するに先立ち、ミルク試料から脂肪を取り除く(脱脂と呼ばれる)のが更に好ましいが、必須ではない。脂肪は、当技術分野において知られているいかなる通常手段によっても除去することができ、この手段には低速遠心分離、分離、マイクロ濾過が含まれる。必要に応じ、イムノアフィニティークロマトグラフィーに先立ち、例えば1μm膜を介したマイクロ濾過、レンネット処理又は酸沈澱によってカゼインを取り除くことができる。マイクロ濾過を選択する場合、カゼインは膜に残り、アンギオゲニンを含むホエイタンパク質がパーミエートに移行するであろう。
【0067】
カゼインがマイクロ濾過又は他の膜プロセスによって除去される場合、パーミエートは直接的に平衡化免疫吸着剤及びプレカラム(利用していた場合)に適用され、或いは必要に応じ、パーミエートを適用前に濃縮することもできる。適切な濃縮方法としては、濾過(0.5〜10kDa膜を用いた限外濾過、150〜500Da膜を用いたナノ濾過、又は水のみ膜を浸透させる逆浸透法等)や、上述の洗浄緩衝液に再懸濁させることができる凍結乾燥法が挙げられる。
【0068】
ミルク試料(未処理又は前処理済み)は、通常、プレカラム及び/又は前処理済みの免疫吸着剤カラム(即ち、固体支持体)に流速0.2〜2カラム体積/hで添加される。しかしながら、流速は5カラム体積/hまででも適切である。一旦試料全部が添加されると、上述の洗浄緩衝液の任意の一種以上を用いて一連の洗浄工程が行われる。洗浄緩衝液の添加は、カラムを通過した洗浄液の280nmにおける吸光度がベースラインの値となるまで行う。これは、カラムから洗いおとすべき非結合タンパク質がもはや存在しないことを意味する。
【0069】
抗体(捕捉剤)を介して固体支持体に結合させたアンギオゲニンは、用いた固体支持体の種類に応じて様々な方法で分離することができる。アンギオゲニンを変性する可能性がある分離条件を回避することが肝要である。当業者には理解されるように、適切な分離プロトコルを選択する際には一連の分離方略を考慮することができる。これには、酸分離、塩基分離及びカオトロピック剤の使用が含まれ得る。
【0070】
酸分離は最も広範に利用される方法であり、且つ非常に効果的である。一般に使用される酸としては、グリシン−HCl(pH2.5)及び0.02M HClとクエン酸ナトリウム(pH2.5)が挙げられる。しかしながら、酸に誘発された変性を回避するためには、分離の際に、分離試料を2Mトリスを用いて直ちに中和してpH7.0、更にpH8.5としなければならない。塩基分離は、通常、1M NH4OHと50mMジメチルアミンとからなる分離剤(pH11.5)、又は150mM NaClと0.1%トリトンX−100とを含む50mMトリエタノールアミン溶液の分離剤による。
【0071】
カオトロピック剤はタンパク質の三次構造を崩壊させるので、アンギオゲニン−抗体複合体を崩壊させるのに用いることができる。カオトロピック塩はイオン性相互作用、水素結合、場合によっては疎水性相互作用を破壊するので有用である。効果的なカオトロピックアニオンとしては、SCN-、ClO4-、I-、Br-及びCl-が挙げられる。効果的なカオトロピックカチオンとしてはMg、K及びNaが挙げられる。8Mウレア、6Mグアニジン−HCl、4M NaSCN等の分離剤は、多くの抗体−抗原相互作用の崩壊に有効である。しかしながら、カオトロピック塩に誘導されるタンパク質の変性を最小限とするためには、素早い脱塩又は分離剤の透析が推奨される。
【0072】
固体支持体から分離された試料は回収され、アンギオゲニンの存在に関して、またアンギオゲニンの濃縮度を決定するために分析される。適切な分析工程としては、存在するいずれかの汚染タンパク質に対するアンギオゲニン特異的タンパク質結合の大きさを比較するための染色SDS−PAGEのデンシトメトリー分析、MALDI−TOF/TOF MS等のマススペクトロメトリー、ウエスタンブロット法やELISA等のイムノアフィニティ検出、アミノ酸分析及び配列決定、カチオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーが挙げられる。これら技法のそれぞれが当業者に知られているであろう。
【0073】
本発明はその第三の態様において、ミルク試料(液相として提供される)の成分(アンギオゲニンを含む)は、前記ミルク試料の成分をそのサイズに基づいて互いに分離可能である第二の相に添加する方法を提供する。続いて、分離されたアンギオゲニンは回収することができ、実質的にアンギオゲニン濃縮生成物を提供する。
【0074】
本明細書において、アンギオゲニンを含むミルクの成分における「サイズ」とは、成分の「流体力学的直径」又は「流体力学的体積」を意味するものとも解釈されるべきである。この成分の「流体力学的直径」又は「流体力学的体積」とは、液体において運動中であると仮定したときの成分の直径或いは体積を意味する。
【0075】
本発明において「第二の相」とは、ミルク試料の成分のそれぞれをそのサイズに基づいて分離することができるいずれのメカニズムをも意味するものと解釈される。
【0076】
一実施形態においては、第二の相は半透過性相である。「半透過性相」とは、非水相であって、ミルク試料の成分が相互作用でき、その相を通過するか或いはその相に保持される相を意味する。
【0077】
「パーミエート」とは、第二の相を通過又は透過したミルク試料の成分を意味する。
【0078】
「残余分」とは、第二の相に保持されたミルク試料の成分を意味する。
【0079】
例えば、半透過性相は、膜又はフィルター等であってもよく、相の相対孔隙率に応じて、ミルク成分をサイズに従って分離することによる分子篩として作用する。
【0080】
本発明の文脈において第二の相に「保持」される成分は、本質的に第二の相に捕捉されているか、第二の相の通過を妨げられている。第二の相に保持されている成分は、第二の相から取り除くことができる残余分の一部であろうし、それ故に第二の相を通過できない。第二の相を通過する成分はパーミエートとして回収される。
【0081】
一実施形態においては、第二の相は半透過性膜である。本発明の文脈において「膜」とは「メッシュ」及び「フィルター」等と同義語である。この膜は、膜を半透過性又は「多孔性」とするいかなる物質、即ち、膜における細孔又は空隙等のサイズに応じ、物質を介した分子の通過を許容したり妨げたりできるいかなる材料からも形成することができる。適切な物質の例としては、限定されないが、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、セルロースアセテート、ナイロン、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、及びポリアクリロニトリル等の熱可塑性物質が挙げられる。このような膜は、ミリポア、ザルトリウス、GEヘルスケア(オスモニクス)、コッホメンブランシステムズ等の供給先から商品として購入することができる。
【0082】
本発明の第三の態様の方法に関して、アンギオゲニンの第二の相の通過を許容するが、アンギオゲニンより大きい分子の通過は妨げる第二の相が選択されるであろう。例えば、分子量カットオフが20kDa〜50kDaの第二の相であればいずれも使用できるであろう。
【0083】
「分子量カットオフ」とは、第二の相を通過できる成分の最大分子サイズを示すと解釈される。好ましい実施形態においては、最適な第二の相の分子量カットオフは30kDaであろう。
【0084】
本発明の方法を利用して、一回以上の更なる精製を行うことができることが理解されよう。この一回以上の精製の目的は、初回の精製により得られたアンギオゲニンを更に濃縮し、望まない汚染物の濃度を下げることである。これに関して、一回以上の更なる精製には、分子量カットオフがアンギオゲニンのサイズより小さい第二の相を用いることができ、例えば分子量カットオフ5kDa又は10kDaの第二の相を用いることができる。このようにして、アンギオゲニンが第二の相を通過することが防止され、第二の相に保持されることになる。次いで、必要に応じて、第二の相に保持された精製アンギオゲニンを凍結乾燥やスプレードライ等の方法を用いて乾燥させることができる。
【0085】
ミルク試料を第二の相に添加した後、第二の相を強制透過させるために該試料に圧力を加えることができる。力は290psi(20Bar)以下、より好ましくは218psi(15Bar)、更に好ましくは145psi(10Bar)をもたらすいずれかの機構によって負荷することができる。
【0086】
例えば、前記の力は、シリンジ、圧縮ガス(即ち、攪拌セル)、ポンプ、遠心又はそれらの実用的な組み合わせのいずれかによって負荷することができる。理想的には、圧力70psi(5Bar)の圧縮窒素のシリンダーによって前記の力を負荷する。
【0087】
また、本発明の第三の態様の方法の変形例には、アンギオゲニンタンパク質に特異的な結合剤を用いることもできる。この原理は、アンギオゲニンと結合剤とを組み合わせると、その複合体はアンギオゲニン単独よりも大きなサイズになることにある。従って、アンギオゲニンを結合剤と共に複合体とすれば、第三の態様の方法を用いて同サイズのミルク成分から分離することができる。この点で、アンギオゲニン−結合剤複合体を保持し、且つその複合体よりサイズの小さいミルク試料の他の成分を第二の相を通過せしめる第二の相が選択されよう。
【0088】
結合剤とアンギオゲニンとの相互作用は、本発明の方法を用いてアンギオゲニンを最終的に結合剤から分離させることができるよう可逆的でなければならない。この場合、結合剤及びアンギオゲニンの相対的なサイズを考慮した、この分離法を可能とする第二の相が選択されよう。従って、アンギオゲニンは第二の相に保持されてもよいし、第二の相を通過させてもよく、結合剤についてはその逆である。
【0089】
本発明の範囲において、本発明の第三の態様の方法の他の変形例も考えられる。例えば、結合剤の非存在下で、最初に第三の態様の方法を行うことができる。しかしながら、アンギオゲニン−結合剤複合体を形成するように、アンギオゲニンを含む生成物を結合剤と結合させることができる。この生成物は、生成物中の非アンギオゲニン成分を除去するために、続いて更なる第二の相に添加することができる。その後、更なる第二の相に適用することにより、結合剤とアンギオゲニンとの相互作用を逆転させ、前記成分を分離することができる。
【0090】
本明細書において、第三の態様に関し、「結合剤」とは、複合体と相互作用することができるか、或いは複合体を生成することができ、且つアンギオゲニンタンパク質を保持することができる物質である。この文脈において「保持」又は「保持する」とは、アンギオゲニンタンパク質を抱え込む又は結合することを意味すると解釈される。理想的には、結合剤はミルク試料に存在するアンギオゲニンタンパク質にのみ特異的であるが、当業者であればミルク試料中の他の成分も非特異的に結合剤と相互作用可能であることが理解されよう。従って、選択すべき結合剤は、最小限の非特異的結合性を示すものである。
【0091】
適切な結合剤としては、限定されないが、アンギオゲニンに対する抗体、ぺプチド又はタンパク質(アンギオゲニンに結合するもの、例えばフォリスタチンを含む)、化学物質、レセプター、リガンド、多糖類、脂質、DEAEデキストラン等のポリマー、ホルモン等が挙げられる。好ましくは、結合剤は、抗体又はその機能性フラグメントである。
【0092】
この相互作用は直接的であってもよいが、捕捉剤のアンギオゲニンへの相互作用が、例えば捕捉剤とアンギオゲニンを結合させるリンカー分子、ペプチド等の第三(又はそれ以上)の剤によって媒介されるよう間接的であってもよい。
【0093】
「アンギオゲニンに対する抗体」或いは「抗体」とはポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両タイプを含み、第三の態様に関連した意味は第一及び第二の態様に関して上述した意味と同様である。
【0094】
第三の態様の方法の分離工程に従って回収したパーミエート又は残余分は、アンギオゲニンの存在に関して、またアンギオゲニンの濃縮度を決定するために分析される。
【0095】
本発明の第四の態様においては、ミルク試料の成分(アンギオゲニンを含む)をそれらのサイズに基づいて分離する他の方法が提供される。第四の態様に従って記載される方法は、通常、サイズ排除クロマトグラフィーと称される。
【0096】
本発明の第四の態様において、「サイズ」とは、第三の態様に関して上述した意味と同義である。
【0097】
「サイズ排除クロマトグラフィー」とは、ゲルパーミエーション、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、ゲル濾過又はゲル濾過クロマトグラフィーと称される各種方法を含む。以降、「サイズ排除クロマトグラフィー」とは、いかなる場合も、上に示した用語の全て、或いは他のタンパク質又は他の生体分子からサイズに基づいて目的タンパク質を分離するための同様のクロマトグラフィープロセスを意味すると解釈されるべきである。
【0098】
第四の態様の方法の原理は、ミルク試料の溶液中の成分が第二の相に接触し、第二の相は、成分がそれらのサイズに基づいて第二の相と相互作用するように、及び/又は第二の相を通過するように、生成物の成分の流速に影響を及ぼすプロセスを提供することにある。試料中に存在する各種成分の運動は、これらの成分が「捕捉」された結果遅くなり、続いて第二の相から遊離されるため、生成物の成分が分離されるようになる。
【0099】
本発明の文脈において「第二の相」とは、個々のミルク試料の成分の運動を成分それぞれのサイズに基づいて操作することのできるいずれかの機構を意味するものと解釈される。
【0100】
第四の態様に関連して、第二の相は固相であることができる。「固相」とは、ミルク試料の成分が相互作用でき、及び/又は通過できる非水性マトリックスを意味する。この固相は、精製用カラム、個別粒子の不連続相、樹脂、膜、又はフィルター等であってもよい。固相を形成する物質の例としては、多糖類(アガロース及びセルロース等);並びに、シリカ(例えば孔が制御されたガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、及びこれらのいずれかの誘導体等の他の力学的に安定なマトッリックスが挙げられる。
【0101】
第四の態様の一実施形態においては、第二の相はクロマトグラフィーのカラムに充填することができる樹脂であってもよい。この際、捕捉は、成分が樹脂中の孔に進入することにより発生させることができる。孔直径より大きな分子はその孔に進入できず、素早くカラムから出てくるが、より小さな分子は樹脂の孔に進入し、カラムを通過する経路が長くなる。捕捉率及びその後の遊離率は成分によって異なり、サイズ排除による分離現象を引きおこす。
【0102】
第二の相が多孔性樹脂からなる場合、理想的には多孔性構造は明確に定義され、且つバッチ間の再現性を有していなければならず、孔サイズ分布と形状はできる限り狭くなくてはならない。更に、樹脂を含むカラムのボイド体積に対する全孔体積の比は、分離のための窓口を広げるのに可能な限り高くなければならず、それによってピークキャパシティが向上する。分離の効率は、樹脂のサイズが小さく(例えば、5μm以下)、且つ整っていれば更に向上させることができる。そして、樹脂カラムは理想的には5mm超の直径を有し、長く(100mm超の任意の長さ)なければならず、樹脂が高密度で充填されていなければならない。
【0103】
前記樹脂は、ポリアクリルアミド、デキストラン、アガロース、シリカ又は架橋ポリスチレンからなっていてもよい。サイズ排除クロマトグラフィーに適切な樹脂の例としては、限定されないが、スーパローズ(GEヘルスケア)、セファデックス(GEヘルスケア)、セファクリル(GEヘルスケア)、TSK−GEL(登録商標)HHR(東ソーバイオサイエンス)、トヨパールHW(東ソーバイオサイエンス)、TSK−GEL PW(東ソーバイオサイエンス)、ウルトロゲル(登録商標)AcA(IBFバイオテクニクス)、Bio−GelA(バイオラッド)が挙げられる。最も適切な樹脂は、分子量10kDa〜20kDaのタンパク質を良好に分離できる樹脂であろう。適切な樹脂の例としては、スーパローズ12、セファデックス75、セファクリルS−100HR、トヨパールHW−50、TSK−GEL PW−50、ウルトロゲル(登録商標)AcA54、Bio−Gel A1.5Mが挙げられる。前記樹脂としては、セファクリルS−100HRが最も好ましい。
【0104】
分離用樹脂の調製(「平衡化」)と分離プロセスそれ自身に関しては、使用される緩衝液は、理想的には低い浸透圧モル濃度と中性のpHを有する。理想的には、適切な緩衝液の例としては、水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水が挙げられるが、同様の性質を有する他の緩衝液も用いることができる。
【0105】
しかしながら、アンギオゲニンは非常に安定なタンパク質であり、変性の後でリフォールドできるので、適切な緩衝液は非常に低い又は非常に高いpHを有することもでき、高い浸透圧モル濃度を有することもでき、また、アンギオゲニンのバイオ活性に影響を及ぼさずに後で除去することが可能な変性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ウレア又はグアニジン)を含むこともできるであろう。
【0106】
クロマトグラフィーカラムは、理想的には、ミルク試料の適用に先立ち、2カラム体積(CV)超の緩衝液をカラムに通過させることにより平衡化する。平衡化の際の流速は、0.1〜3CV/hであろう。圧力が樹脂の許容限界を超えない場合、1CV/hが許容されるが、流速は0.66CV/hが好ましい。また、分離の際の流速も0.1〜3CV/hである。0.66CV/hまでのフローで十分な分離が可能であるが、流速0.375CV/hが好ましい。
【0107】
平衡化カラムに適用される試料の体積は、0.005〜0.2CV、理想的には0.015CV〜0.05CVまでとすることができる。適用した試料中に存在するタンパク質の量は、0.001〜0.2gタンパク/mL CV、理想的には0.0016gタンパク/mL CV〜0.05gタンパク/mL CVまでとすることができる。
【0108】
通常、分離は、上述の条件下で約1〜2時間かけて起こる。理想的には、カラムを出た分離分画をUV分光光度計にて280nmでモニターする。イムノグロブリン、ラクトフェリン及びラクトペルオキシダーゼに続き、アンギオゲニンが溶出するが、多くの成長因子よりは先に溶出する。各分画を回収して、アンギオゲニンが捕捉されていることを確認する必要がある。ラクトフェリンとラクトペルオキシダーゼの重なり合うピークは緑褐色のバンドとして可視化されるはずであり、この緑褐色のバンドが無くなるまでは分取を開始する必要はない。カラムを通して全てのβ−ラクトグロブリンが除去されると、次のピークがアンギオゲニンとなる。
【0109】
本発明の第五の態様においては、ミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を提供するための方法であって、ミルク試料の流れが電場を通り抜けることにより、ミルク試料に存在するアンギオゲニンタンパク質がその試料に存在する他のタンパク質から、アンギオゲニンの電荷と電気泳動の移動度に従って分離又は分画される方法が提供される。従って、ミルク試料は「水性ミルク流」として提供される。
【0110】
電場が印加されたミルク流の分画を回収し、アンギオゲニンが濃縮されたこれら分画を同定する。
【0111】
本発明の第五の態様に係る方法は、不均一なタンパク質群を電気泳動移動度又は等電点に従って分離するための電場の使用に基づく。この技法は、キャリアフリーの媒体、即ち固定相(即ち固体支持材料)を含まない液体(水性)媒体においてタンパク質を分離することによって、吸着による試料損失を最小限とすることに基づく。この種の技法は、通常、フリーフロー電気泳動と呼ばれる。
【0112】
本発明の第五の態様における一方法は、互いに平衡に位置される二枚の近接するプレートからなる電気泳動チャンバーにおいて行うことができる。これらのプレートの側部には、プレート間に高電位の電場を発生させる二個の電極(アノードとカソード)が配設されている。緩衝液媒体は、通常「分離緩衝液」と呼ばれ、定速で前記チャンバーを流れ、緩衝液媒体及び精製対象のミルク試料の両者の流れを横断する方向に電場が印加される。
【0113】
第五の態様の文脈において「横断する」とは、緩衝液媒体とミルク試料の流れに対して、ある角度で(即ち平衡でない)或いは異なる平面において電流を印加することを言う。
【0114】
分析対象の試料は荷電場に適用され、層流条件下、試料は二枚のプレート間の緩衝液媒体内に移送される。荷電粒子はその電荷特性に依存して偏向し、後続の分離を可能とする。各タンパク質は異なる電荷を有するために、その電場中での電気泳動移動度も異なる。従って、各タンパク質は、電気泳動チャンバーの分離緩衝液を流れる間に分離緩衝液の流速に応じて偏向し分離する。この方法は、タンパク質の連続的な分離に利用することができるため、工業的スケールのアンギオゲニンの分離及び精製に有効である。
【0115】
多数のフリーフロー電気泳動の技法が当技術分野において知られており、種の分離の方式によりそれぞれ区別される。例えば、分離種は、それらのpI(等電点電気泳動)、全電荷密度(ゾーン電気泳動)及び電気泳動移動度(等速電気泳動、フィールドステップ電気泳動及びフィールドフロー分画)に従って分離することができる。
【0116】
フリーフロー電気泳動技法は、例えば、連続モード又は一時停止(インターバル)モード等の各種方式にて行うことができる。連続モード適用の場合、ミルク試料を連続的にチャンバーに適用することにより、試料中の他の成分からアンギオゲニンを分離する。この際、分離プロセス全体を通して、緩衝液媒体(分離緩衝液)の連続フロー及び電場の無制限印加の条件下で行う。インターバルモードにおいては、ミルク試料及び分離緩衝液はチャンバーの分離スペース又は「ゾーン」に導入され、続いて分離を達成するための電場が印加されながら、前記試料を含む媒体のバルクフローが停止する分離プロセスが行われる。試料を分離/分画した後、電場をオフにするか無効となるように弱めるかして、バルクフローを再開し、分画試料をチャンバーから移動させた後に回収する。
【0117】
フリーフロー電気泳動技法は、変性条件下、例えばウレア又は当技術分野で知られている洗浄剤を添加することにより行うこともできる。当業者であればアンギオゲニンのpIがその天然状態のpIと類似することが理解されよう。
【0118】
第五の態様における一方法は、上述の各種フリーフロー電気泳動技法のそれぞれを包含することができる。好ましくは、連続モードによってpIに従い、ミルク試料からアンギオゲニンを分離する。
【0119】
これに関して、当業者には理解されるように、適切な緩衝液媒体、即ち分離緩衝液の例としては、限定されないが、二元緩衝液システム(A/B媒体)、セルバライト(登録商標)(セルバ、ドイツ)等の市販の両性電解質、プロライトセパレーション緩衝液I及びII(ベクトンディッキンソンダイアグノスティックス、ドイツ)等の相補的マルチペア緩衝液システム及び揮発性緩衝液システムが挙げられる。更に、フリーフロー電気泳動に適した分離媒体のリストが「フリーフロー電気泳動」、K.ハンニング及びK.H.ハイドリッヒ著(ISBN:3−921956−88−9)に提供されている。
【0120】
pIに従ってアンギオゲニンを分離するためには、前記緩衝液媒体として、チャンバーの分離スペースにpH勾配を形成するのに適切な媒体が選択されるであろう。これに関しては、プロライトセパレーション緩衝液I及びIIが好ましい。セパレーション緩衝液Iは29%のIEFプロライト緩衝液2を含み、セパレーション緩衝液IIは17%のプロライト緩衝液2、50mM HEPES及び42mM 6−アミノヘキサン酸を含む。
【0121】
「pH勾配」とは、pHに関して観察される急峻な境界がないことを意味する。この定義によれば、等電点電気泳動装置におけるpH勾配のグラフは、所定の部分にシャープな遷移のない、比較的なめらかなカーブとして表わされるであろう。アンギオゲニン分離のためには、この勾配はpH8〜11の範囲であることが好ましい。
【0122】
第五の態様に係る方法は、安定化媒体及びカウンターフロー媒体を添加することによって改善することができる。例えば、カウンターフロー媒体は、電極間を移動するバルク分離緩衝液及び試料の連続フロー方向と対峙する分離スペースに導入することができる。
【0123】
安定化媒体は、例えば、適切な二元緩衝液システムによって作られる分離スペース内の条件を安定化するために用いることができる。従って、適切な安定化媒体は、分離ゾーン内のイオンを供給又は置換する「リザーバー」としても作用する。
【0124】
本明細書において「安定化媒体」とは、二成分からなる媒体を言う。第一成分はカソード安定化媒体であり、第二成分はアノード安定化媒体である。カソード又はアノード安定化媒体は、一塩基酸及び/又は単一タイプの塩基を含むことができる。当業者は、安定化媒体中に生成するイオンが十分に低い電気泳動移動度を有する必要があることを理解するであろう。
【0125】
アンギオゲニンの効率的な分離と精製のために適切なアノード安定化媒体は100mM硫酸、50mM酢酸、100mM DL−2−アミノ酪酸及び30mMグリシルグリシンからなり、適切なカソード安定化媒体は100mM水酸化ナトリウム、30mMエタノールアミン及び300mMβ−アラニンからなる。
【0126】
本発明のフリーフロー電気泳動法を行うのに適切な装置は、商品として入手可能である。例えば、ベクトンディッキンソンFFEシステム(BDダイアグノスティックス、ドイツ)である。
【0127】
ミルク試料を電場に投入する前にミルク試料から脂肪を除くこと(脱脂と呼ばれることが多い)が好ましいが、これは必須ではない。脱脂方法は当技術分野において知られており、次にそのような方法の例を挙げる。また、フリーフロー電気泳動法に先立ち、当技術分野において知られた方法でカゼインを除去することもできる。次にそのような方法の例を挙げる。
【0128】
カゼインがマイクロ濾過又は他の膜プロセスにより除去される場合、パーミエートはフリーフロー電気泳動装置に直接適用することも、或いは任意的に適用前に前記パーミエートを濃縮することもできる。適切な濃縮方法としては、濾過(0.5〜10kDa膜を用いた限外濾過、150〜500Da膜によるナノ濾過、水のみ膜を浸透させる逆浸透法等)、及び凍結乾燥とそれに続くフリーフロー電気泳動に適う緩衝液中への再懸濁が挙げられる。
【0129】
第三、第四、第五の態様の方法を行う前に、ミルク試料から脂肪を除くこと(脱脂と呼ばれることが多い)が好ましいが、これは必須ではない。脂肪は当技術分野において知られたいずれの手段によっても除去することができ、この手段には低速遠心分離、分離、マイクロ濾過が含まれる。
【0130】
脱脂されたミルク試料は、第三、第四、第五の態様の方法を行う前に任意的に更なる「コンデショニング」工程に付すことができる。このような工程は、試料をアニオン交換カラムに通すことを含むことができる。このような方法は当技術分野において知られている。例えば、アニオン交換カラムには官能基を有する樹脂を充填することができる。官能基としては、DEAE(ジエチルアミノエチル)、Q(第四級アンモニウム)、QAE(ジエチル−(2−ヒドロキシプロピル)アミノエチル)が挙げられ、これらはセルロース、ポリアクリルアミド、デキストラン、アガロース、シリカ、又は架橋ポリスチレン等の適切な支持体に結合する。脱脂されたミルク試料を、前記カラムに流速10CV/h(1000CV/hまで可能であるが)で通過させるが、前記カラムに10CVの脱脂ミルクが適用される(0.1CV〜50CVまで可能であるが)まで行う。β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、及びウシ血清アルブミン等のタンパク質が除去されることが期待されるであろう。クロマト処理後の試料に残存するタンパク質は、主にラクトフェリン(LF)、ラクトペルオキシダーゼ(LP)、及びイムノグロブリンであろうが、アンギオゲニンも濃度<1%w/wタンパクで存在するであろうし、これは更に精製することが可能であろう。
【0131】
第一〜第五の態様のそれぞれについての他の実施形態においては、前記ミルク試料は該方法の実施に先立ち加熱される。ミルク試料の加熱により、試料中でアンギオゲニンよりも低い温度で変性する他のタンパク質とラクトペルオキシダーゼの量を低減させることができ、これによってアンギオゲニンの量が増加する。
【0132】
第一〜第五の態様の方法によって得られた分画は、アンギオゲニンの存在に関して、またアンギオゲニンの濃縮度を決定するために分析することができる。適切な分析工程としては、存在するいずれかの汚染タンパク質に対するアンギオゲニン特異的タンパク質バンドの大きさを比較するための染色SDS−PAGEのデンシトメトリー分析、MALDI−TOF/TOF MS等のマススペクトロメトリー、ウエスタンブロット解析やELISA等のイムノアフィニティ検出、アミノ酸分析及び配列決定、カチオン交換クロマトグラフィー及び逆相クロマトグラフィーが挙げられる。これら技法のそれぞれが当業者に知られているであろう。
【0133】
第一〜第五の態様に係る方法は、アンギオゲニン濃縮生成物を得るための単離において行われるか、或いは他の望ましいミルク製品成分が分画される統合分画プロセスの一部として組み入れられることができる。
【0134】
第一〜第五の態様の方法によって得られたアンギオゲニン濃縮生成物は更に処理されて、残存する非アンギオゲニンタンパク質及び/又は塩類を除去することができる。これは、標準化された食品用物質又は栄養補助食品の製造及び医薬品級のアンギオゲニンの調製にとって重要であると考えられる。これらの工程は、カチオン交換クロマトグラフィー、一以上の更なるフリーフロー電気泳動工程、イムノアフィニティークロマトグラフィー、膜濾過、理想的な限外濾過、或いは透析、例えば、電気透析、サイズ排除クロマトグラフィー、固相抽出、ナノ濾過又は他の知られた手段等の当技術分野において知られているような同様の方法によって達成することができる。当業者には、アンギオゲニンを食品用物質又は栄養補助食品の製造に使用する場合、その純度は医薬組成物又は獣医学組成物の製造に要求されるほど高い必要はないことが理解されよう。例えば、60%レベルに精製されたアンギオゲニンは許容されると考えられる。
【0135】
アンギオゲニンは多くの生理的機能に関与するので、本発明の方法により本タンパク質を濃縮すると、これらの機能を発揮するのが可能なタンパク質の理想的、且つ経済的な原料となる。例えば、この精製タンパク質は食品用物質、栄養補助食品、医薬品又は獣医学品の調製に用いることができる。
【0136】
第一〜第五の態様のいずれかのより更なる実施形態においては、本方法の前又は最中に前記ミルク試料からカゼインを除去する。ミルク試料のタンパク質を本方法の前又は最中に濃縮することができる。
【0137】
適切なミルク試料としては、全乳、スキムミルク、バターミルク、ホエイ(酸又はチーズ/レンネット処理ホエイ、或いはミルク若しくはスキムミルクのマイクロ濾過より得られるパーミエート等)、ホエイ分画(濃縮ホエイタンパク又はホエイタンパク単離フロースルー等)及び初乳が挙げられる。
【0138】
ミルク試料は雌ウシ(cows)、ヒツジ、水牛、ヤギ、ヤク、シカ等の反芻動物、ウマ及びロバを含む非反芻動物、ヒト等の霊長類及びブタ等の単胃動物等の泌乳動物から得られることは当業者には明らかであろう。この動物は、遺伝子組換え動物、特に同じ野生型動物に比べ、ミルク中により大量のアンギオゲニンを発現するよう改変された動物であってもよい。
【0139】
第一〜第五の態様の方法のいずれかにおいては、牛全乳、任意的にはミルク中にアンギオゲニンを過剰発現する遺伝子組換え雌ウシから誘導されるスキムミルクをミルク試料として用いることが好ましい。
【0140】
更に、ウシ乳中のアンギオゲニンは、泌乳の最初の1〜14日目までが最も高濃度(12mg/Lまで)に存在することが分かっている。その後、この濃度はベースレベルの約1〜2mg/Lに落ちる。従って、本発明の方法においては泌乳の最初の14日目以内に得られる牛乳を用いることが好ましい。最後の泌乳からアンギオゲニン濃度が変わらなければ、引き続きアンギオゲニン濃縮用の原料として用いることができる。
【0141】
「アンギオゲニン濃縮生成物」とは、産物中のアンギオゲニンタンパク質対全タンパク質の比が、本発明の方法を実施する前のミルク試料に存在する比に対して増加したことを意味すると解釈される。アンギオゲニンが濃縮されたと考えられるためには、生成物のアンギオゲニン含有量が、少なくとも2%w/w、少なくとも10%w/w、少なくとも20%w/w、少なくとも30%w/w、少なくとも40%w/w、少なくとも50%w/w、少なくとも60%w/w、少なくとも70%w/w、少なくとも80%w/w、少なくとも90%w/w、少なくとも95%w/w、又は少なくとも99%w/wでなければならない。
【0142】
第一〜第五の態様の方法の文脈において「生成物」とは、本発明をアンギオゲニン濃縮最終製品に限定すること意図する用語ではない。本発明の方法により製造されたアンギオゲニン濃縮生成物は、他の製品の製造における出発品又は中間品として使用することができる。
【0143】
本明細書において「分画」とは、ミルク試料の部分的精製部分を意味する。
【0144】
「効率的及び商業的に実施可能」という表現の使用は、アンギオゲニンの濃縮に現在利用されている方法に比べて安価で迅速な方法を意味すると解釈される。
【0145】
アンギオゲニンが存在することにより利益を生み出す典型的な食品用物質には、虚弱者、病人又は高齢者用のスポーツ栄養サプリメント、幼児食サプリメント及び食品サプリメントが含まれる。
【0146】
本明細書において「栄養補助食品」とは、食品から単離・精製される可食製品を意味し、ミルク試料から得られる場合、経口投与した際に生理的利点を示し、また急性・慢性の疾患又は障害の、防止又は軽減を提供することを示す製品である。従って、栄養補助食品は、単独或いは食品・飲料に混合して、食物製剤又はサプリメントの形態とすることができる。
【0147】
食品組成物又は栄養補助食品組成物は、溶解性粉末、液体又は即席飲料の形態とすることができる。或いは、手軽に食べられるバーや朝食シリアル等の固形物とすることができる。この組成物は、種々のフレーバー、ファイバー、甘味料、他の添加物等を含むことができる。
【0148】
前記食品又は栄養補助食品は、好ましくは許容される官能的特性(許容される香り、味、風味等)を有し、ビタミンA、B1、B2、B3、B5、B6、B11、B12、ビオチン、C、D、E、H及びK、カルシウム、マグネシウム、カリウム、亜鉛及び鉄から選択される一以上のビタミン及び/又はミネラルを更に含むことができる。
【0149】
食品組成物又は栄養補助食品組成物は、従来通り、例えばタンパク質と他の添加物をブレンドして製造することができる。必要であれば、乳化剤を含ませることもできる。この時点でビタミン及びミネラルを追加することもできるが、通常は、熱による変性を避けるために後で加える。
【0150】
粉末状の食品組成物又は栄養補助食品組成物を製造したい場合、タンパク質を粉末状の追加成分と混和することができる。この粉末は、水分量約5質量%未満でなければならない。水、好ましくは逆浸透処理済の水を更に混合して、混合液体としてもよい。
【0151】
食品組成物又は栄養補助食品組成物を即席液体として提供する場合、バクテリアを低減するために組成物を加熱することができる。液状の食品組成物又は栄養補助食品組成物を製造したい場合、液体混合物を好ましくは無菌状態で適切な容器に充填する。容器への無菌充填は、当業界で通常可能な技法により行うことができる。この種の無菌充填に好適な装置は市販されている。
【0152】
本発明の方法により得られるアンギオゲニン濃縮生成物は、被験体への投与に適した医薬組成物又は獣医学組成物として調製することもできる。
【0153】
好ましくは、本組成物は、一以上の医薬的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含むこともできる。このような組成物は、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等の緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン等の炭水化物;マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はグリシン等のアミノ酸;酸化防止剤;EDTA等のキレート剤;補助剤及び保存剤を含むことができる。本発明の組成物は、経静脈投与用、局所適用用、経口摂取用に調製することができる。
【0154】
本明細書において「被験体」とは、医薬的に活性な剤により治療又は予防を必要とする障害を有するいずれかの動物を意味する。この被験体は哺乳類、好ましくはヒトであってもよく、或いはヒト以外の霊長類又は動物モデル試験に用いられるような非霊長類動物であってもよい。
【0155】
アンギオゲニン濃縮生成物は、ヒトの医学的治療に好適に用いられることが特に期待されるが、獣医学的治療にも適用でき、これにはイヌ、ネコ等のペット動物、及びウマ、ポニー、ロバ、ラバ、リャマ、アルパカ、ブタ、畜牛及びヒツジ等の家畜、或いはヒト以外霊長類、ネコ類、イヌ類、ウシ類及び有蹄類等の動物園飼育動物の治療が含まれる。
【0156】
アンギオゲニン濃縮生成物は、治療及び/又は予防される疾病に対する適切な方法で被験体に投与することができる。投与の量及び回数は、被験体の状態、被験体の疾病の種類及び/又は重度等の因子によって決定される。適切な用量は、臨床試験によって決定してもよい。本組成物の有効量は、被験体個々に差がある年齢、体重、疾病の重度、被験体の状態、投与経路、被験体の治療に関する他の因子全てを考慮して、医師によって決定することができる。本質的に、組成物の「有効量」とは、所望の治療効果を得るのに十分な量である。
【0157】
本発明は他の態様において、疾病の治療及び/又は予防の方法を提供する。このような治療方法は、上述の栄養補助食品、医薬組成物又は獣医学的組成物の有効量を被験体に投与することを含む。好ましくは、このような疾病はウイルス、バクテリア又は真菌及びそれらの毒素によって起こされる疾病を含む。しかしながら、アンギオゲニンは血管新生の役割を担うため、血管新生刺激が必要とされる疾病も、本発明のアンギオゲニン含有組成物を用いて治療することができる。これら疾患としては、冠動脈疾患、卒中、虚血性肢疾患、障害治癒の遅延等が挙げられる。
【0158】
本明細書において「治療する」及び「治療」とは、症状の重度及び/又は頻度の低減、症状及び/又はその原因の除去、症状発生及び/又はその原因の予防、及び障害の改善及び治療を意味する。従って、例えば、本発明の障害の「治療」方法は、障害に罹りやすい個体における障害の予防と、臨床的に症状がある個体における障害の治療との両者を含む。
【0159】
本明細書において「治療する」とは、脊椎動物や哺乳類(特にヒト)における症状の治療又は予防のいずれもにも亘り、且つ症状の阻止、即ちその進展を止めること、或いは症状の影響の緩和又は改善、即ち症状の影響を後退させることを含む。
【0160】
本明細書において「予防」又は「予防的」治療とは、症状に罹りやすい可能性はあるが、未だその症状を有するとは診断されていない被験体において、症状の発生を予防すること、或いは症状のその後の進展を改善することを含む。
【0161】
本明細書において、特に断りのない限り、「含む、からなる」とは、述べられている一構成要素や一完全体、或いは構成要素群や完全体群を含むが、その他の一構成要素や一完全体、或いは構成要素群や完全体群を排除するものではないことを意味すると解釈されたい。
【0162】
本明細書においては、文脈上明確に断らない限り単数表現(一、一の、一つの、その)は複数概念も含むことを付記する。
【0163】
本発明について、明確さ及び理解のために、ある種の詳細な説明をしているが、本明細書に開示される発明概念の範囲を逸脱しない限り、記載される実施形態及び方法の変形や改変が可能なことは当業者には明白であろう。
【0164】
以下、実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが、これは単に説明の目的に提供されるものであって、特に断りのない限り、本発明は実施例に限定されない。従って、本発明は、ここに提供される教示の結果として明らかとなる全てのいかなる変形例をも包含する。
【実施例】
【0165】
[実施例1]:第一及び第二の態様の方法(イムノアフィニティークロマトグラフィー)を用いてスキムミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法
【0166】
イムノアフィニティークロマトグラフィー法の概説は既に為されているが、アンギオゲニン精製については言及していない(例えば、スブラマニアンA、2002年、モレキュラーバイオテクノロジー、20:p41〜47を参照)。
【0167】
本出願人らは、本明細書に開示する方法を用いることにより、ミルク試料からアンギオゲニンを抽出できることを示す。
【0168】
本実施例に利用されるイムノアフィニティークロマトグラフィー法は、適切な原料、例えば、モナシュ抗体テクノロジーファシリティ(オーストラリア)から得られるアンギオゲニンに対するモノクローナル抗体を用いて行う。
【0169】
10cm長のカラムにSPセファロースビッグビーズ(GEヘルスケア)をカラム中の全ベッド体積が29.7Lとなるように充填した。ウシスキムミルクを線流量331cm/h(1時間あたり、樹脂1Lに対してスキムミルク34L)で2時間カラムに流通させ、適用したスキムミルクの体積がカラムに充填した樹脂の68倍となるようにした。
【0170】
2.5カラム体積(CV)の水を線流量147cm/h(1時間あたり樹脂1Lに対して緩衝液15L)、或いは0.25CV/minで10分間加えることにより、カラムに残存するミルクを除去した。
【0171】
本実施例に利用されるイムノアフィニティークロマトグラフィー法は、アンギオゲニンに対するモノクローナル抗体を用いて行った。抗ウシアンギオゲニン抗体としては、忠北大学校(大韓民国、忠北道、清洲)の生化学科から得たモノクローナル抗体クローン番号1B14D4を用いた。抗ヒトアンギオゲニン抗体としては、モノクローナル抗体クローン番号14017(R&Dシステムインコーポレーテッド)を用いた。
【0172】
ダイナビーズプロテインG(インビトロゲン)を固体支持体として用いた。アンギオゲニン抗体は、次のプロトコルを利用してビーズに共有結合させた。アフィニティー精製用のプロテインGダイナビーズは、20秒間の短いボルテックスにより調製した。ボルテックスを行った後、50μLの再懸濁させたIgGダイナビーズを保存溶液(インビトロゲン)から移した。マグネットスタンドを用い、プロテインGダイナビーズに1分間の沈降処理を施した。上澄みを取り除き、続いてプロテインGダイナビーズを200μLのW&B緩衝液(0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液、0.01%Tween20含有、pH8.2)で洗浄した。このプロセスを繰り返した。約5μgのウシ又はヒト抗アンギオゲニンマウスモノクローナル抗体を含むW&B緩衝液(200μL)をプロテインGダイナビーズに添加した。この溶液を室温で10分間回転させながらインキュベートした。プロテインGダイナビーズを沈降させ、上澄みを取り除いた。このIgG標識プロテインGダイナビーズを200μLのW&B緩衝液で洗浄した。このIgG標識プロテインGダイナビーズを沈降処理に付し、上澄みの洗浄緩衝液を除いた。この洗浄工程を繰り返した。ウシアンギオゲニンの溶出には、変性条件を採用した。IgG標識プロテインGダイナビーズに吸着されたウシアンギオゲニンを20μLの1xNuPAGELDSサンプル緩衝液(インビトロゲン、2%ドデシル硫酸リチウム及び2−メルカプトエタノール含有)に再懸濁し、70℃で10分間加熱した。このダイナビーズをマグネット上に置き、試料を除いてタンパク染色(図1)及びウエスタンブロット解析(図2)のための1−Dゲルにロードした。
【0173】
[実施例2a]:第三の態様の方法(限外濾過)を用いてスキムミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法
【0174】
SP(スルフプロピル)セファロースを充填したカラムにウシスキムミルクを適用した。適用したミルクの体積がカラムに充填した樹脂の70倍となるまで、ミルクを適用した(1000CVまで適用可能)。カラムに残存するミルクを6CVの水(低イオン強度緩衝液、<0.008M NaCl又は当量物)を用いて10分間かけて取り除いた。ホエイ成長因子を含む分画を、0.4〜0.5MのNaCl(最も好ましくは0.4M NaCl)に相当するナトリウムイオン(他のカチオンも適切ではあるが)を含む6CVの緩衝液を用いてカラムから溶出させた。pH5.5〜7.5の範囲において、WGFEの収率は最も高い。WGFEを5kDa膜に適合した限外濾過プラントにおいて透析濾過により脱塩し、凍結乾燥させた。
【0175】
WGFE(1g)を、0.2%トリトンX−100を含む50mLの水に溶解した。この溶液を30kDaの分子量カットオフの膜(ビバスピン)に適用し、20℃、8,000xgで1.5時間遠心した。
【0176】
パーミエート及び残余分のタンパク質濃度を2D−クオントキット(GEヘルスケア)を用いて測定した。タンパク質は5体積の氷冷アセトンで沈澱させ、沈殿物を10,000xgで20分遠心することによりパーミエート及び残余分として回収した。この沈殿物は、7Mウレア、2Mチオウレア、1.2%CHAPS、0.4%ASB−14、10mMトリスHCl及び0.05%キャリアー両性電解質を含む2D−電気泳動緩衝液に再懸濁させた。タンパク質はトリブチルホスフィンで還元し、アクリルアミドモノマーでアルキル化した。タンパク質(100μg)を24cm、pH3〜11の非線形IPGストリップ(GEヘルスケア)にロードして、一晩再水和させた。
【0177】
等電点電気泳動は、100Vで2時間、500Vで2時間、1000Vで2時間、4時間かけて直線的に8000Vに上昇させ、最終的に8000Vで8時間行った。IPGストリップは、SDS PAGE(50Vで1時間、後に150Vで12時間)を行う前に、8Mウレア及び2%SDSを含む平衡化緩衝液中で15分間平衡化した。ゲルを酢酸/メタノール/水(1:3:6)中で固定し、シプロルビー(インビトロゲン)で一晩染色した。プロXプレスイメージングシステム(パーキンエルマー社)を用いて撮影した(図3)。図3の丸に含まれるバンドに示されるように、パーミエートはアンギオゲニンに関して濃縮されており、汚染タンパク質は著しく低レベルであることが観察された。
【0178】
[実施例2b]:第三の態様の方法(限外濾過)を用いてスキムミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法
【0179】
実施例2aと同様の方法で、成長因子を含むホエイ分画を調製した。
【0180】
成長因子を含むホエイ分画(2.5g)を95gの水に添加し、250rpmで30分間振とうすることにより、2.5%w/w溶液を製造した。この溶液(15g)を4台のビバスピン20遠心駆動式限外濾過装置(GEヘルスケア)(10kDa、30kDa、50kDa及び100kDa)に投入した。遠心管を4,000xgで10分間遠心すると、膜通過により約2mLのパーミエートが得られた。
【0181】
前記溶液と限外濾過パーミエートをSDSPAGEにて分析した。各試料(100μL)は100μLのトリス−トリシンサンプルバッファー(NuSep、フレンチフォレスト、オーストラリア)と混合した。各試料からのタンパク質(10μL)をトリス−トリシンPAGEゲル(16%アクリルアミド、NuSep)に適用し、150Vで90分間分離し、クマシーブルー(NuSep)で染色した。図4に結果を示す。未分画WGFEに存在する14kDaのピークがアンギオゲニン由来であることは、既にマススペクトロスコピーに示されている(PCT/AU2007/001719号、「アンギオゲニンの調製方法」、図2)。アンギオゲニンと同じサイズのバンドは、50kDaのパーミエート及び100kDaのパーミエートに存在する主なタンパク質を表わすことが分かった。10kDaのパーミエート及び30kDaのパーミエートにアンギオゲニンは存在しなかった。アンギオゲニンが30kDa膜を突き抜けることは既に示されていることから、上の結果は驚くべきことであり、おそらく異常なことである。
【0182】
[実施例3]:第四の態様の方法(サイズ排除クロマトグラフィー)に従ってスキムミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法
【0183】
実施例2aと同様の方法で、成長因子を含むホエイ分画を調製した。
【0184】
ホエイ成長因子(5g)を45gの水に添加し、250rpmで30分間振とうすることにより、10%w/w溶液を製造した。このWGFE溶液を遠心(15,000xgで6分間)及び濾過(0.45μmシリンジ圧入フィルター)することにより清澄した。3本のサイズ排除クロマトグラフィーカラム(セファクリルS−100HR 26/60、セファクリルS−300HR 26/60及びスーパローズ12(26mmD×600mmL)(全てGEヘルスケア製品)を50mM Na2HPO4(pH7.0)を流速3.5mL/minで用いて平衡化した。タンパク質溶液を50mLのスーパーループ(GEヘルスケア)に入れ、次いで5mLのWGFE溶液を各カラムにポンプ導入した。WGFE溶液は、50mM Na2HPO4(pH7.0)を流速3.5mL/minでカラムにポンプ導入して通過させることにより分離した。図5〜7に示すように、溶出液を280nm(ブルーライン)でモニターし、10mLの各分画を回収した(グレーラインは各分画にスタートを示す)。
【0185】
タンパク質様の試料はプールし、タンパク質濃度をBCAアッセイ(ピアース、ロックフォード、IL)で推定した。タンパク質濃度が不十分(<1mg/mL)な試料は、5kDaのビバスピン20遠心駆動式限外濾過装置(GEヘルスケア)にてタンパク質濃度が1mg/mLを超えるまで濃縮した。各試料(100μL)を100μLのトリス−トリシンサンプル緩衝液(NuSep)と混合した。各試料からタンパク質(0.02mg)をトリス−トリシンPAGEゲル(16%アクリルアミド、NuSep)に適用し、150Vで90分間分離し、クマシーブルー(NuSep)で染色した。未分画WGFEに存在する14kDaのピークがアンギオゲニン由来であることは、既にマススペクトロスコピーに示されている(PCT/AU2007/001719号、「アンギオゲニンの調製方法」、図2)。アンギオゲニンと同じサイズのバンドは、S−100HRプールD(図8)、S−300HRプールC及びスーパローズ12プールB(図9)に見出された。
【0186】
試料はカチオン交換HPLCによっても分析した。試料(100μL)を、予め緩衝液A(50mM NaH2PO4・H2O及び5%[v/v]アセトニトリル[pH7.0])で平衡化されたモノS5/50GLカラム(GEヘルスケア)に適用した。続いて試料を、緩衝液B(50mM NaH2PO4・H2O及び2M NaCl[pH7.0])の量を増加させつつ溶出させた(表1)。溶出液を220nm、280nm及び450nmでモニターした。アンギオゲニンはHPLC及び後続のマススペクトロスコピーにより、この方法で分析したときの保持時間5.8±0.1分に現れることが既に示されており、同じ保持時間のピークはアンギオゲニン由来のピークと推定し、定量を行った(表2)。
【0187】
【表1】

【0188】
【表2】

【0189】
サイズ排除クロマトグラフィーは、ホエイ成長因子抽出物からアンギオゲニンを単離するための適切な方法であることが示されている。セファクリルS−100HR、セファクリルS−300HR及びスーパローズ12は適切であることが示され、多くのSEC樹脂が適切であることがわかった。55%超のアンギオゲニンを含むアンギオゲニン濃縮分画はSECによって得ることができる。この純度は、精製工程を追加することによって更に改善することができる。
【0190】
[実施例4]:第五の態様の方法(溶液内等電点電気泳動)に従ってスキムミルクからアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法
【0191】
溶液内等電点電気泳動法の概説は既に為されているが、アンギオゲニン精製については言及していない(例えば、マイケルPら、2003年、エレクトロフォレシス;24、p3〜11参照)。
【0192】
本出願人らは、本明細書に開示する方法を用いることにより、ミルク試料からアンギオゲニンを抽出できることを示す。
【0193】
本実施例で用いる溶液内等電点電気泳動(ISIEF)法は、イソエレクトルIQ2(プロテオムシステムリミテッド、オーストラリア)を用いて行われる。分画操作は未変性条件(水性)又は変性条件(ウレア等の変性剤を含む)で行う。
【0194】
プロライト(BDダイアグノスティックス、ドイツ)又は他の電解質(酸又は塩基)も添加して、pH勾配を創出する。分離勾配の例を次に示す。
試料可溶化溶液(SSS):7Mウレア、2Mチオウレア及び1%3−(4−ヘプチル)フェニル3−ヒドロキシプロピルジメチルアンモニオプロパンスルホネ−ト(C7BzO)。
【0195】
ISIEF分離の直前に、ミルクタンパク質は10体積のSSSと5mMトリブチルホスフィンで希釈し、5mM EDTAを添加した。pH3.0、5.0、6.5、8.0及び11.0の膜(プロテオムシステムリミテッド、オーストラリア)を用いて、試料分離チャンバーを次のごとく創出した:pH3.0〜5.0、pH5.0〜6.5、pH6.5〜8.0及びpH8.0〜11。電極溶液(5mL、ベンダーより供給)をアノード及びカソードの両端に適用し、SSSに再懸濁した5mLのミルクタンパク質をpH5.0〜6.5のチャンバーに添加した。他のチャンバーにはSSS(5mL)を添加した。電気泳動は14℃、100Vの定電圧で2時間行い、電圧は6時間かけて1500Vまでとし、最後に1500Vの定電圧で8時間行った。各チャンバーの溶液を回収した。アンギオゲニンが濃縮された分画を分離チャンバーのカソード端部から回収した(pH8.0〜11)。
【0196】
アンギオゲニンの存在は二次元SDS−PAGEと、製造者の手引きに従ってシプロルビーによる染色にて確認した。例えば、各タンパク質分画の40μgに相当する一部を、追加のSSSによって128μLに希釈した。両性電解質溶液(0.6μL、pH3〜11)及びデストリーク溶液(GEヘルスケア)を各試料に添加した。希釈試料をピペットにて7cm、pH3〜11のNL IPGストリップ(GEヘルスケア)の下に移し、このIPGストリップを一晩かけて再水和した。等電点電気泳動には、500Vで1時間、1000Vで1時間、1時間かけて5000Vに上昇及び5000Vで2時間のプロトコルを用いる。IPGストリップを等電点電気泳動装置から取り除き、平衡化緩衝液(EB;6Mウレア、2%ドデシル硫酸ナトリウム、20%グリセロール、50mMトリスHCL(pH8.8)、0.01%ブロモフェノールブルー)であって、EB10mLあたり100mgのジチオスレイトールを含む緩衝液中で15分インキュベートし、続いてEB10mLあたり250mgのヨードアセトアミドを含むEB中で15分2回目のインキュベートを行った。還元及びアルキル化されたIPGストリップをSDS PAGEゲル(プロバイダーから得られる。例えば、インビトロゲンノベックスプレキャストトリスHClゲル)上にロードし、高温のランニング緩衝液(トリス塩基3.03g/L、グリシン14.4g/L及びSDS1.0g/L)であって、1.0%アガロースを含む緩衝液を用いてこのIPGストリップをゲル上にシールした後、冷却した。このゲルをSDS PAGE装置に入れ、ランニング緩衝液を装置の上部と下部のウェルに入れた。電気泳動は200Vで1時間行った。電気泳動に続き、固定/脱染溶液(10%メタノール及び7%酢酸)を用いてタンパク質をゲルに固定し、続いてシプロルビー(インビトロゲン)で最低1時間染色した。ゲルを少なくとも1時間固定/脱染溶液で脱染し、ゲルスキャンニングシステム上でイメジー化した。各分画の純度をイメージの視覚分析によって決定することにより、分画中での各スポットの強度と体積を評価した。
【0197】
図10はpH8〜11分画が低分子量(約15kDa)の塩基性タンパク質(約pI:10.0)を含むことを示す。このタンパク質は、当該分画中の全タンパク質の約80%を占める。このタンパク質は、アンギオゲニン由来であることが既に同定されている(PCT/AU2007/001719号、「アンギオゲニンの調製方法」、図2)。図10は、ミルク分画中の他のタンパク質からのpH8〜11分画中の塩基性タンパク質の分離を示す。
【0198】
[実施例5]:アンギオゲニン濃縮生成物を得る方法に及ぼす熱の影響
【0199】
実施例2aと同様の方法で、成長因子を含むホエイ分画を調製した。
【0200】
成長因子(2.5g)を含むホエイ分画を95gの水に添加し、250rpmで30分間振とうすることにより、2.5%w/w溶液を製造した。この溶液(10g)を15mLのガラス試験管に入れ、その試験管を80℃に加熱したウオーターバスに入れた。試験管内の液体温度を温度プローブでモニターした。溶液は直ちに70℃に達し、ウオーターバス中で1分間保持した(最高温度75℃)。試験管を高温のウオーターバスから取り出し、ビーカー一杯の水道水で冷却した。
【0201】
この溶液を10mLの遠心管に移し、3,000xgで7分間遠心し、上澄みを濾取した(0.45μm)。濾液をSDS PAGEで分析した。各試料からのタンパク質(0.001mgのWGFE、加熱での沈澱が少ない濾液0.025mg)をトリス−トリシンPAGEゲル(16%アクリルアミド、NuSep)に適用し、150Vで90分間分離し、クマシーブルー(NuSep)で染色した。未分画WGFEに存在する14kDaのピークがアンギオゲニン由来であることが既にマススペクトロスコピーに示されている(PCT/AU2007/001719、アンギオゲニンの調製方法、図2)。アンギオゲニンと同じサイズのバンドは、加熱されたWGFEの濾液に存在していた。加熱によりアンギオゲニンが濃縮された。WGFE(レーン10)においてラクトペルオキシダーゼが主たるタンパク質であるが、WGFEを加熱すると試料中のアンギオゲニン及びラクトペルオキシダーゼが等しい比で存在する(レーン2、3)(図4参照)。当業者には、第一〜第五の態様の方法、特に第三〜第五の態様の方法のいずれかを実施する前の加熱工程により、濃縮生成物中のアンギオゲニンの純度が上がることが理解されよう。
【0202】
各実施例に記載したアンギオゲニンの調製方法は商業目的でスケールアップでき、更にアンギオゲニンを医薬グレードに純度で得るために第一〜第五の態様のいずれかの一態様の方法を実施する前又は後に、追加的な精製工程と組み合わせることが可能であることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)ミルク試料に存在するアンギオゲニンが捕捉剤と相互作用してアンギオゲニン−捕捉剤複合体を生成するように、ミルク試料をアンギオゲニンと相互作用する捕捉剤に接触させる工程、
(b)前記複合体をミルク試料から分離する工程、
(c)前記複合体中の捕捉剤からアンギオゲニンを遊離させる工程、及び
(d)工程(c)からアンギオゲニンを回収し、アンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法。
【請求項2】
前記捕捉剤は支持体に固定化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉剤は抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)アンギオゲニンと相互作用する抗体を固定化した支持体にミルク試料を添加し、ここでミルク試料に存在するアンギオゲニンが支持体上の抗体と相互作用してアンギオゲニン−抗体複合体を生成する工程、
(b)前記抗体と相互作用しないミルク試料に存在する成分を前記支持体から洗い落すことにより、ミルク試料から前記複合体を分離する工程、
(c)前記複合体中の抗体からアンギオゲニンを遊離させる工程、及び
(d)工程(c)からアンギオゲニンを回収し、アンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法。
【請求項5】
ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)液相のミルク試料を、前記ミルク試料の成分をそのサイズに基づいて分離可能な第二の相に添加する工程、及び
(b)前記ミルク試料の他の成分から分離されたアンギオゲニンを回収することにより、アンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含み、
工程(a)に先立ち、前記ミルク試料をレンネット処理又は酸沈澱に付さないか、或いは前記ミルク試料がホエイ又はホエイ分画でない方法。
【請求項6】
前記第二の相は半透過性相である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記半透過性相は30kDa未満のサイズの成分をパーミエートとして前記半透過性相を通過させることができる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
アンギオゲニンは前記半透過性相をパーミエートとして通過する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記半透過性相は10kDa未満のサイズの成分をパーミエートとして前記半透過性相を通過させることができる、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
アンギオゲニンは前記半透過性相に残余分として保持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ミルク試料はシリンジ、圧縮ガス、ポンプ、遠心力又はそれらの組み合わせによって加えられる力によって前記半透過性相を強制透過させられる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の相は半透過性膜である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)液相のミルク試料を、前記ミルク試料の成分をそのサイズに基づいて分画に分離可能な第二の相に添加する工程、及び
(b)これらのアンギオゲニンを含む分画を同定し、該分画を回収することによってアンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法。
【請求項14】
前記第二の相はサイズ排除樹脂である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記樹脂は分子量約10〜20kDaのタンパク質を分離する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ミルク試料からアンギオゲニン濃縮生成物を得る方法であって、
(a)流動する水性ミルク試料にミルク流を横断する方向に電場を印加する工程、
(b)電場が印加されたミルク流の分画を回収する工程、及び
(c)これらのアンギオゲニンに関して濃縮された分画を同定し、該分画を回収することによってアンギオゲニン濃縮生成物を得る工程を含む方法。
【請求項17】
前記方法は変性条件下で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記水性ミルク流はpH勾配をもたらす緩衝液媒体中で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記勾配はpH8〜11の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
さらに前記アンギオゲニン濃縮生成物を一以上のアンギオゲニン濃縮工程に付す工程を含む、先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記一以上のアンギオゲニン濃縮工程は、カチオン交換クロマトグラフィー、フリーフロー電気泳動を含む電気泳動、サイズ排除クロマトグラフィー及び限外濾過からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ミルク試料は全乳、スキムミルク、バターミルク、ホエイ、ホエイ分画及び初乳から選択される、先の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
先の請求項のいずれかの方法により調製されるアンギオゲニン濃縮生成物。
【請求項24】
請求項23に記載のアンギオゲニン濃縮生成物の食品用物質、栄養補助食品、医薬品又は獣医学品の調製における使用。
【請求項25】
請求項23に記載のアンギオゲニン濃縮生成物を含む食品用物質、栄養補助食品及び医薬品又は獣医学品。
【請求項26】
スポーツ栄養サプリメント又は食品サプリメント、或いは幼児、アスリート、高齢者又は虚弱者用の食品サプリメントである、請求項25に記載の食品用物質。
【請求項27】
請求項23に記載のアンギオゲニン濃縮生成物を含む医薬組成物又は獣医学組成物。
【請求項28】
請求項23に記載のアンギオゲニン濃縮生成物のウイルス、バクテリア又は真菌及びそれらの毒素によって起こされる疾病、或いは血管新生の刺激が必要とされる疾病の治療又は予防のための医薬品の調製における使用。
【請求項29】
請求項23に記載のアンギオゲニン濃縮生成物の、粘膜表面の感染を引き起こす病原体を標的とする栄養補助食品、医薬品又は獣医学品の成分としての使用。
【請求項30】
粘膜表面の感染を引き起こす病原体を標的とする方法であって、請求項25に記載の栄養補助食品、医薬品又は獣医学品、或いは請求項27に記載の組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む方法。
【請求項31】
ウイルス、バクテリア又は真菌及びそれらの毒素によって起こされる疾病、或いは血管新生の刺激が必要とされる疾病の治療及び/又は予防の方法であって、請求項25に記載の栄養補助食品、医薬品又は獣医学品、或いは請求項27に記載の組成物の有効量を被験体に投与する工程を含む方法。

【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−519962(P2011−519962A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508770(P2011−508770)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000604
【国際公開番号】WO2009/137881
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(509127343)アグリカルチャー ヴィクトリア サービス ピーティーワイ エルティーディー (6)
【氏名又は名称原語表記】AGRICULTURE VICTORIA SERVICES PTY LTD
【出願人】(509127332)マリー ゴールバーン シーオー−オペレイティブ シーオー.リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】MURRAY GOULBURN CO−OPERATIVE CO.LIMITED
【Fターム(参考)】