説明

アンサミトシンの単離および精製方法

本発明は、アンサミトシン、詳細にはマイタンシノールに変換可能なアンサミトシンの製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、アンサミトシン(ansamitocins)、詳細には、マイタンシノール(maytansinol)への変換が可能なアンサミトシンの製造方法に関する。
【0002】
発明の背景
非常に毒性のあるマイタンシノイド薬剤およびそれらの治療用途が米国特許第5208020号に記載されている。アクチノシネマ(Actinosynnema)のごとき微生物の発酵により得られたアンサミトシン前駆体からこれらの薬剤を調製することができる。
【0003】
アクチノシネマspp.からのアンサミトシンP−3の製造方法が米国特許第4162940号および第4228239号、第4356265号および第4450234号に記載されている。一般的には、これらの方法は、濾過助剤および水混和性溶媒を発酵ブロス全体に添加すること、固形物を除去すること、および水不混和性溶媒で水性フラクションを抽出すること、石油エーテルで濃縮し沈殿させること、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて沈殿を精製すること、次いで、さらなるクロマトグラフィー後に結晶化させることあるいは再結晶化させることを必要とする。特許出願WO0177360にはアンサミトシンの改良された製造方法が記載されており、該方法は、より少なく、制御された工程を用いるものであり、それらは芳香族炭化水素溶媒で発酵ブロスを抽出すること、抽出されたアンサミトシンを濃縮すること、次いで、結晶化によりアンサミトシンを精製することである。
【0004】
一般的には、抽出されたアンサミトシンの濃縮は流下薄膜型エハポレーターのごとき大型のプラントを用いて行われるが、そのようなプラントは維持が困難でコストがかかり、そのうえ生成物の熱分解を引き起こす可能性がある。溶媒抽出されたアンサミトシンの単純で、効果的で制御された濃縮手段に対する必要性がある。さらに、アンサミトシン化合物は極端に毒性の高い性質を有するため、より単純でより制御しやすい段階を用いる、より安全で操作が少なくてすむ精製のための別法が大規模生産のための操作に有益である。
【0005】
発明の概要
本発明の態様は、精製されたアンサミトシンを製造するための改良された方法を包含する。
【0006】
アンサミトシンをシリカゲル上に捕捉して、濃縮および精製を行う方法。
【0007】
そのことにより単離プロセスにおいて蒸発工程が必要ない方法。
【0008】
不純物を保持するがアンサミトシンを保持しない溶媒系を用いる、活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、溶媒抽出されたブロスの精製方法。
【0009】
トルエン/極性アルコール混合物中の活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、トルエン抽出物の精製方法。
【0010】
不純物を保持するがアンサミトシンを保持しない溶媒系を用いる、活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、シリカクロマトグラフィーからの溶出液の精製方法。
【0011】
トルエン/極性アルコール混合物中の活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、シリカクロマトグラフィーからの溶出液の精製方法。
【0012】
ハロゲン化炭化水素および極性溶媒を用いるアンサミトシンの結晶化方法。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明の方法の1の具体例は、シリカゲル上への捕捉により、溶媒抽出されたアンサミトシンの濃縮を行うことである。慣用的には、少量の濃縮されたフィード物質をカラムに適用し、次いで、クロマトグラフィーにより分離し、溶出することによりシリカクロマトグラフィーを行う。本発明の1の態様は、大量の希釈フィードをシリカカラムに適用し、アンサミトシンをシリカ上に保持させることである。これを行った後、少量の溶媒で溶出して、同時に精製および濃縮を行う。
【0014】
すべての形態のシリカカラムを用いることができるが、ラジカルコンプレッション、カートリッジベースの系(radical compression, cartridge based system)が、シリカのグレードを制御しやすく、迅速かつ高い表面活性のため、好ましい。カラムを慣用的な(加圧フィード)モードで操作してもよく、あるいは好ましくは透過液に減圧を適用し、フィードを大気圧に維持することにより操作し、かくして漏れの危険性を低下させる。P−3を除去するが望ましくない物質を保持するように選択された濃度のトルエン/メタノール混合物を用いてシリカから溶出する。例えば、1〜15%メタノールの範囲(好ましくは2〜6%)の溶媒グラジエント、あるいは好ましくは3〜5%メタノール、最も好ましくは4%のメタノールでのアイソクラチック溶出を用いてこれを行ってもよい。
【0015】
シリカゲル捕捉方法をさらにリファインして、操作中のすべての蒸発工程を必要なくすることもでき、そのことにより、単純かつ安価なプラント操作が行える。実施例1にて説明するようにヘプタンまたは類似の低極性溶媒を添加することにより、カラムからの大量の溶出フラクションを直接結晶化させることにより、これを行う。
【0016】
別法として、シリカ捕捉段階からの濃縮されたアンサミトシン溶出物を、本明細書に例示された方法を用いて、あるいは以前の特許出願に記載されたようにして蒸発乾固して結晶化させてもよい。シリカ溶出物を、先ず、カラムに通すかあるいはバッチ処理することにより活性炭(CPL[Stirling House, 2 Park St, Wigan, Lancs WN3 5HE.UK]からのSK1のごとき)で処理する。本発明の方法において、炭素はアンサミトシンを保持せず、アンサミトシンは素通りし、不純物が炭素に吸着されて残る。
【0017】
シリカと炭素とでは精製モードが異なり、異なる不純物が除去されるが、これらの2つの吸着方法によれば、結晶化後に同等の品質の製品が得られる。シリカと活性炭とでは選択性が異なるため、有利には、実施例2および3に説明するようにこれらの工程を組み合わせてもよい。
【0018】
理想的には、炭素処理前にトルエン抽出物を部分的に濃縮する(約10倍)が、その工程はいかなる濃縮程度において行われてもよい。この方法は、修飾溶媒(modifier solvent)(例えば、極性アルコール、理想的にはメタノール)をトルエンに添加して最適濃度とする(典型的には2〜8%、理想的には4%)ことを包含する。炭素上へのアンサミトシンの吸着を防止し、不純物の保持および除去を最大にするように濃度を選択する。
【0019】
実施例5に記載するように、トルエン抽出物を慣用的な蒸発濃縮に付する場合には、活性炭での処理を、別のあるいはさらなる精製工程として用いてもよい。これは迅速で単純な手順であり、それにより、濃縮されたフィードが4%メタノール/トルエン中に作成され、次いで、プレウォッシュされたSK1炭素カラム上に適用されて、炭素から浸み出てくる。不純物が粗フィードから吸着され、アンサミトシン含有浸出液が1のフラクションとして集められる。活性炭でのバッチ処理によりこの工程を行ってもよい。
【0020】
結晶化を用いてアンサミトシンを精製し、優先的に望ましくないアンサミトシンのレベルを低下させる。依然のアンサミトシン特許出願に記載された方法を用いて結晶化を行ってもよく、あるいは実施例4の記載のようにハロゲン化炭化水素、好ましくはジクロロメタン(DCM)を用いて行ってもよい。この工程を用いて粗抽出物、炭素処理抽出物、シリカ処理抽出物を精製してもよく、あるいは他の溶媒系から得られた不純な結晶を再結晶かさせてもよい。アンサミトシンがDCMに対して非常に溶解度が高いので、酢酸エチルをベースにした系に必要な大量の溶媒/低い濃度とは逆に、少量の溶媒を用いることができる。ヘプタンのごとき無極性共溶媒を用いて結晶化を行って結晶の成長を制御し、溶媒への溶解度を低下させることにより収量を最大化させる。理想的には、35〜45℃、50〜200mg/mLの範囲のDCM中の非常に濃縮されたアンサミトシン溶液、好ましくは100〜180mg/mLのP−3を用い、次いで、周囲温度まで冷却して結晶化を行う。別法として、1〜3倍の体積、好ましくは1.5〜2倍の体積のヘプタンを添加して結晶化を行ってもよい。ヘプタン添加前に5〜10℃まで冷却して収量を上げてもよい。これらの溶媒の割合により収量が最大化され、不純物の同時沈殿が回避される。さらにこの系は、エンサミトシンP−3および他の望ましいマイタンシノールエステルを選択的に沈殿させ、環により修飾された望ましくないアンサミトシンのレベルを低下させる。
【0021】
記載された実施例において、Actinosynnema pretiosum ATCC 31565の発酵によってアンサミトシンが製造された。本質的には国際出願WO0177360に記載のようにして発酵およびトルエン抽出を行った。
【0022】
WO0177360に記載の方法を用いてHPLCによりアンサミトシンの定性および定量を行った。
【実施例】
【0023】
実施例1.粗トルエン抽出物中のアンサミトシンのシリカカートリッジ上への直接捕捉、蒸発および結晶化
200gのシリカ(KP-SilTM)(カートリッジ体積250mL)を含有するBiotage Flash 75STMカートリッジシステム(75mmx15cm)(Biotage UK Ltd, 15, Hartforde Court, John Tate Road, Foxholes Business Park, Herts SG13 7NW, UK)をセットアップして、加圧および/または減圧モードで作動するようにした。約2.6gのアンサミトシンP−3を含むActinosynnema pretiosum全ブロスのトルエン抽出物(約25〜26L)を、200mL/分でBiotageカートリッジに適用した。透過容器に対する減圧レベルを調節することにより流速を制御した。5Lおよび20L溶出後にカートリッジ浸出フラクションをアッセイしてアンサミトシンP−3をチェックした。P−3の漏れはなかった。
【0024】
トルエン抽出物を適用した後、カートリッジシステムを加圧(20psi)モードで作動させ、4%メタノール/トルエンにて約100mL/分の流速で溶出した。溶出液を250mLまたは500mLフラクションとして集めた。
【0025】
アンサミトシンP−3含有フラクション(F6〜9)を集めて1500mLの溶出液とした。2.67gのP−3が回収された。溶出液を2つの750mLの試料に分けた。
【0026】
750mLのシリカ溶出液を丸底フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターにて蒸発乾固させた。2mLのメタノールを残渣に添加し、次いで、30mLの酢酸エチルを添加した。生成物に栓をして、次いで、50℃の加熱ウォーターバスに移し、すべての物質が溶解するまで撹拌した。前もって温めておいたヘプタン(約25mL、50℃)をゆっくりと添加し、溶媒混合物の濁り始めを観察し、その時点でフラスコをウォーターバスから取り、ウォーターバスを室温(20℃)まで放冷した。フラスコを放置し、結晶を析出させた。フラスコをウォーターバスに戻し、さらなる温ヘプタンを添加して64mLとした(メタノール+酢酸エチルの2倍体積)フラスコを放冷し、一晩放置した。大量の透明結晶が得られた。
【0027】
約5%のP−3を含有する母液をデカンテーションし、結晶を20mLの新鮮酢酸エチル/ヘプタン 1:3で洗浄し、洗液もデカンテーションした。減圧下40℃でロータリーエバポレーターにてフラスコをゆっくりと回転させることにより結晶を乾燥させた。1.4gの結晶を得た(1.22g P−3)。結晶は5.7%のP−2;86.0%のP−3;7.9%のP−4を含んでいた(正味のP−3収率は約92%)。
【0028】
実施例2.シリカ溶出物の炭素処理、蒸発および結晶化
実施例1記載のごとく調製された4% MeOH中の750mLのシリカ溶出液を、4%メタノール/トルエンで洗浄した31gのSK1炭素カラム(30x120mm)上に適用した。浸出液を10mLのフラクションとして集め、最後にさらに30mLの新鮮4%メタノール/トルエンでカラムを洗浄した。浸出フラクションを集め、丸底フラスコに入れてロータリーエバポレーターにて蒸発乾固させた。
【0029】
2mLのメタノールを残渣に添加し、次いで、30mLの酢酸エチルを添加した。生成物に栓をして、次いで、50℃の加熱ウォーターバスに移し、すべての物質が溶解するまで撹拌した。前もって温めておいたヘプタン(約25mL、50℃)をゆっくりと添加し、溶媒混合物の濁り始めを観察し、その時点でフラスコをウォーターバスから取り、ウォーターバスを室温(20℃)まで放冷した。フラスコを放置し、結晶を析出させた。フラスコをウォーターバスに戻し、さらなる温ヘプタンを添加して64mLとした(メタノール+酢酸エチルの2倍体積)フラスコを放冷し、一晩放置した。大量の透明結晶が得られた。
【0030】
約5%のP−3を含有する母液をデカンテーションし、結晶を20mLの新鮮酢酸エチル/ヘプタン 1:3で洗浄し、洗液もデカンテーションした。減圧下40℃でロータリーエバポレーターにてフラスコをゆっくりと回転させることにより結晶を乾燥させた。1.23gの結晶を得た(1.07g P−3)。結晶は5.7%のP−2;87.0%のP−3;7.3%のP−4を含んでいた(正味のP−3収率は約80.0%)。
【0031】
実施例3.粗トルエン抽出物中のアンサミトシンのシリカカートリッジ上への直接捕捉、炭素処理
168mg/LのアンサミトシンP−3(7.56g)を含むActinosynnema pretiosum全ブロスのトルエン抽出物(45L)を、200gのシリカを含むBiotage Flash 75STMカートリッジに、加圧(20psi)を用いて200mL/分で適用した。5Lごとに試料を取り、浸出フラクションをアッセイしてアンサミトシンP−3の漏れをチェックした。
【0032】
実施例4.トルエン、酢酸エチルおよびジクロロメタンからの結晶化
実施例3からの4%メタノール/トルエン中の炭素カラム浸出液2.2Lのうち150mLと洗浄液をウォーターバスにて45℃に温め、2倍体積の温ヘプタンをゆっくりと添加した。次いで、フラスコをウォーターバスから取り除き、室温まで放冷した。母液をデカンテーションし、室温において結晶を10mLのトルエン/ヘプタン1:3で洗浄して、0.33gのP−3を含む0.41gの結晶を得た。結晶は5.3%のP−2、82.2%のP−3、10.4%のP−4を含んでいた(段階収率P−3 82.5%)。
【0033】
炭素カラム浸出液の残り(約2L)をロータリーエバポレーターで420mLにまで減らし、2x120mLをそれぞれ蒸発乾固させた。
【0034】
一方の乾燥試料(1.8g P−3)を2.7mLのメタノール中に取り、次いで、36mLの酢酸エチル中に取り、45℃のウォーターバス中に置き、2倍体積の温ヘプタンをゆっくりと添加した。フラスコをウォーターバスから取り除き、室温まで放冷し、一晩放置した。母液をデカンテーションし、室温において結晶を10mLの酢酸エチル/ヘプタン1:3で洗浄した。洗浄溶媒を捨て、結晶を室温で乾燥させた。1.32gのP−3を含む1.6gの結晶を得た。結晶は5.8%のP−2、82.6%のP−3、9.6%のP−4を含んでいた(段階収率P−3,73.0%)。
【0035】
もう一方の乾燥試料(1.8g P−3)を10mLのDCMに溶解した。溶液を45℃のウォーターバスに移し、濁りが観察されるまで15mLの温ヘプタンをゆっくりと添加した。フラスコをウォーターバスから取り除き、室温まで放冷し、一晩放置した。母液デカンテーションし、室温において結晶を10mLのDCM/ヘプタン1:3で洗浄した。洗浄溶媒を捨て、結晶を室温で乾燥させた。1.62gのP−3を含む1.95gの結晶を得た。結晶は5.1%のP−2、83.4%のP−3、9.6%のP−4を含んでいた(段階収率P−3,90.0%)。
【0036】
実施例5.粗トルエン抽出物の蒸発濃縮、次いで、炭素処理、蒸発そして結晶化
98mg/LのアンサミトシンP−3(1.23g)を含むActinosynnema pretiosum全ブロスのトルエン抽出物(12.5L)を、ロータリーエバポレーターにて1.25Lにまで濃縮した。濃縮物を4%メタノール/トルエン中に取り、その後、前もって洗浄されたSK1炭素カラム(33x330mm;10〜15mL/分)に適用した。浸出液をロータリーエバポレーターにて乾燥させて4.8gの物質を得た。これを1.8mLのメタノール+24mLの酢酸エチル中に取り、ウォーターバスで50℃に温めた。温ヘプタン(52mL)をゆっくりと添加し、次いで、フラスコを放冷して室温とした。フラスコ中に結晶が生成した。フラスコを40℃で約1時間置いた。HPLC分析により、5%のP−3が母液中に残っていることが示された。母液をデカンテーションし、10mLの酢酸エチル/ヘプタン 1:3で結晶を洗浄した。洗液をデカンテーションし、ロータリーエバポレーターにて40℃で結晶を乾燥させた。1.06gの結晶を得て、それは0.92gのP−3を含んでいた。該結晶は5.7%のP−2;86.8%のP−3;7.5%のP−4を含んでいた(正味のP−3収率は約86.2%)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンサミトシンをシリカゲル上に捕捉して濃縮および精製を行う方法。
【請求項2】
単離プロセスにおいて蒸発工程を要しない方法。
【請求項3】
不純物を保持するがアンサミトシンを保持しない溶媒系を用いる、活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、溶媒抽出されたブロスの精製方法。
【請求項4】
トルエン/極性アルコール混合物中の活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、トルエン抽出物の精製方法。
【請求項5】
不純物を保持するがアンサミトシンを保持しない溶媒系を用いる、活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、シリカクロマトグラフィーからの溶出液の精製方法。
【請求項6】
トルエン/極性アルコール混合物中の活性炭でのカラムまたはバッチ処理による、シリカクロマトグラフィーからの溶出液の精製方法。
【請求項7】
ハロゲン化炭化水素および極性溶媒を用いるアンサミトシンの結晶化方法。


【公表番号】特表2006−510349(P2006−510349A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−527798(P2004−527798)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/024642
【国際公開番号】WO2004/015119
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】