説明

アンダーパス構築工法

【課題】アンダーパス斜路をより一層迅速に構築するアンダーパス構築工法を提供する。
【解決手段】アンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割し、各ブロックごとに、アンダーパス斜路の両側壁221,222及びこれらの下部同士を連結する複数本の棒状連結材223,224,225,226,227から成ると共に下端に刃口221a,222a、223a,227aを有する、地上で製作されたコンクリート構造体22下の土砂を、吊下されたバケット50で掘削しつつ、支持地盤層200に定着したグラウンドアンカ12に反力を取って刃先抵抗と外周面摩擦力に打ち勝ってコンクリート構造体22を地中に圧入沈下してアンダーパス斜路の路面を施工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面交差道路を立体交差道路に変更するためのアンダーパス構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
平面交差道路を立体交差に変更するために、一方の道路を掘下げてアンダーパスを構築するアンダーパス構築工法がある。従来のアンダーパス構築工法は、矢板を用いて仮土留めを行い、仮土留めの内部に場所打コンクリートでアンダーパス斜路の側壁や底版を形成し、側壁上に床版を施工して上側の道路を造成するような工程であった。
【0003】
このような技術では、所要の用地幅が大きくなり、工期が長く、交通規制期間が伸びることにより、周辺住民に多大な迷惑を掛けるものであった。また、工事費の半分以上を仮設費が占める。
【0004】
また、アンダーパスを迅速に施工するために、アンダーパス側壁部に、横に連続するように、H形断面を有するプレテンション方式プレストレストコンクリート杭を順次地中に沈設してアンダーパス側壁となる2連の地中壁を形成し、この地中壁間を掘削してアンダーパスを構築する技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
この特許文献1に提案された技術では、沈設が容易で強度が高く、止水性に富み、迅速施工に適した2連の連続地中壁を形成し、この2連の地中壁間に切梁を施して地中壁の倒れを防止しながら、地中壁間を掘削し、アンダーパス底版を施工して上記地中壁を側壁とするアンダーパス斜路を形成してアンダーパスを構築する。また、この地中壁上に道路床版を架設して上側の道路とする。
【0006】
また、この特許文献1に提案された技術は、従来のアンダーパス構築工法に比し、止水性に富み、迅速、低コストで施工することができるという特徴がある。
【特許文献1】特開2005−23576号公報(第3−6頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案された技術でも、アンダーパス造成工程中に上側の道路の交通遮断を要すること、アンダーパスの側壁及び底版の形成が杭打ち工程と別の時期になることなど、さらに改善すべき点もある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、アンダーパス斜路をより一層迅速に構築するアンダーパス構築工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のアンダーパス構築工法は、アンダーパスを構築するに当たり、アンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割し、各ブロックごとに、アンダーパス斜路の両側壁及びこれらの下部同士を連結する複数の棒状連結材から成ると共に下端に刃口を有するコンクリート構造体を地上で製作し、このコンクリート構造体下の土砂を掘削しつつこのコンクリート構造体を地中に圧入沈下してアンダーパス斜路の両側壁を形成し、この両側壁間にアンダーパス斜路の路面を施工することを特徴とする。
【0010】
本発明のアンダーパス構築工法は、地上で製作された上記コンクリート構造体下の土砂を掘削しつつこのコンクリート構造体を地中に圧入沈下してアンダーパス斜路の路面を施工する工法であるため、仮土留め等を設ける必要がなく、短工期ですぐれたアンダーパス斜路を構築することができるという優れた効果を奏する。また、本発明のアンダーパス構築工法は、地中に圧入沈下するコンクリート構造体が、アンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割したものであるため、例えば湾曲状のアンダーパスであってもこの工法を適用することができる。
【0011】
ここで、上記本発明のアンダーパス構築工法は、上記圧入沈下したコンクリート構造体の底面及び隣接コンクリート構造体間隙間を浸水防止材でシールし、上記両側壁間にアンダーパス斜路の路面を施工することが好ましい。
【0012】
このような好ましい形態によれば、多量の出水がある場合あるいは高水圧の地層の場合にも容易に上記路面をドライ施工することができることとなるため、施工効率が上がる。一方、地下水が低く低水圧の場合には、水中施工で水中コンクリートを打設してドライ施工としてもよい。
【0013】
また、上記本発明のアンダーパス構築工法において、上下道路交差部分の下側道路は、既施工コンクリート構造体の上部を覆工して上側道路のバイパス道路を仮施工し、下側道路の両側壁及びこれを連結する複数の棒状連結材から成ると共に下端に刃口を有する下側道路コンクリート構造体を交差道路部地上で製作し、この下側道路コンクリート構造体を地中に圧入沈下して形成することが好ましい。
【0014】
このような好ましい形態によれば、上記バイパス道路を仮施工することにより、上側道路の交通遮断を行うことなく迅速に施工することができる。このことによって、交通遮断等を不必要とすると共に、全体工事工程を短縮することが可能となる。
【0015】
さらに、上記本発明のアンダーパス構築工法において、上下道路交差部分の下側道路は、この上下道路交差部分に隣接する両方の既施工コンクリート構造体間の上側道路下方にパイプルーフを形成し、このパイプルーフの下方に推進工法によりトンネルを施工して形成することも好ましい形態である。
【0016】
このように、上下道路交差部分の下側道路を上記アンダーパス斜路の構築とは別に、推進工法によるトンネル形成技術によって施工することにより、上側道路の交通遮断を行うことなく迅速に施工することができる。このことによって、交通遮断等を不必要とすると共に、全体工事工程を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアンダーパス構築工法によれば、仮土留め等を設ける必要がなく、短工期ですぐれたアンダーパス斜路を構築することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちのグラウンドアンカ施工工程を説明する縦断面図である。
【0020】
図1に示すように、アンダーパスを構築すべき地盤上にボーリングマシン10を設置し、このボーリングマシン10で地表から支持地盤層200まで長孔11を掘削し、この長孔11中に、PC鋼捧やPCストランドワイヤなどといった緊張材を差し込み、緊張材が支持地盤層200まで差し込まれた長孔11の下底部に、コンクリートやモルタルなどといった硬化材料を注入して、緊張材を地中に固定するアンカ体を造成し、緊張材に地上から緊張力を導入して緊張材の上端を地上に定着することによって、グラウンドアンカを施工する。
【0021】
図2は、本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態で用いるコンクリート構造物の縦断面図である。
【0022】
図2には、図1に示すグラウンドアンカ施工工程で施工されて支持地盤層200に定着されたグラウンドアンカ12が示されている。また、例えば沈設位置に刃口金物を据え付け、足場を設置し、鉄筋及び型枠を組み立てた後、型枠内にコンクリートを打設・養生することによって地上で製作した、3つのコンクリート構造物21,22,23が示されている。
【0023】
図2に示す3つのコンクリート構造体21,22,23は、例えば全長420mのアンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割したコンクリート構造体のうちの3ブロックであって、それぞれの路軸方向長さは例えば20mである。また、これらの隣接するコンクリート構造体21,22,23は、これらを連続して圧入沈下する際の抵抗を低減するために、相互間に例えば30cmの間隔を空けて配置する。
【0024】
これら3つのコンクリート構造体21,22,23のうちの1つのコンクリート構造体22を例に挙げて、コンクリート構造体の構造を詳述する。
【0025】
図3は、図2に示すコンクリート構造物22の側面図であり、図4は、図2に示すコンクリート構造物22の平面図である。
【0026】
図2〜図4に示すように、コンクリート構造体22は、アンダーパス斜路の両側壁221,222と、これら両側壁221,222の下部同士を連結する複数本の棒状連結材223,224,225,226,227とから構成されている。また、両側壁221,222は、例えば厚さが80cmであって、下端に刃口221a,222aを有すると共に、両側端面に凹条切欠221b,222bを有する。さらに、棒状連結材223,224,225,226,227は、例えばそれぞれ横断面が1m角であって、これらの棒状連結材223,224,225,226,227のうちの両端の棒状連結材223,227も、それぞれ下端に刃口223a,227aを有する。尚、下端に刃口223a,227aを有する棒状連結材223,227は、圧入沈下時における、隣接するコンクリート構造体21,23との抵抗を低減するために、両側壁221,222の側端よりも例えば1m内側に配備されている。
【0027】
図5は、本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちの圧入ジャッキ設置工程を説明する縦断面図である。
【0028】
図5に示すように、コンクリート構造体21,22,23それぞれの両側壁間に圧入桁30を架設し、架設された圧入桁30上の両側壁内側部分に圧入ジャッキ31を設置し、図1を参照して説明したグラウンドアンカ施工工程で施工されたグラウンドアンカ12を圧入ジャッキ31に連結する。
【0029】
本実施形態では、隣接する複数のコンクリート構造体を連続して圧入沈下する例を挙げており、ここでは、これら複数のコンクリート構造体の両端のみに仮壁42(図7参照)を設け、他のコンクリート構造体間に、コンクリート構造体の側壁と例えば30cm程度重なり合う鋼板40を設けて相互間に空けられた間隔を塞いでいる。この鋼板40によって、鋼板40を設けたコンクリート構造体間における仮壁42の配設が省略されている。尚、鋼板40を設けるにあたっては、隣り合うコンクリート構造体の側壁のうちの一方の側壁にボルト41等を用いて固定する。このことにより、連続して圧入沈下する複数のコンクリート構造体それぞれを、互いに異なるタイミングで圧入沈下することができる。
【0030】
図6は、本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちの圧入沈下工程を説明する縦断面図であり、図7はその斜視図である。
【0031】
図6,図7に示すように、コンクリート構造体22の棒状連結材223,224,225,226,227間にバケット50を吊下し、このバケット50でコンクリート構造体22下の土砂を掘削しつつ、支持地盤層200に定着したグラウンドアンカ12に反力を取って刃先抵抗と外周面摩擦力に打ち勝ってコンクリート構造体22を地中に圧入沈下する。コンクリート構造体22に隣接するコンクリート構造体21,23についても、コンクリート構造体22と同様に地中に圧入沈下する。
【0032】
尚、バケット50を吊下して土砂を掘削するにあたっては、例えば、コンクリート構造体22とは独立して棒状連結材223,224,225,226,227間から地中に打ち込まれた支持杭上に、覆工板等による構台51を仮設し、この構台51上を作業スペースとする。
【0033】
ここで、図8,図9を参照して、上述した圧入ジャッキ設置工程および圧入沈下工程の他の実施形態を説明する。
【0034】
図8は、他の実施形態を説明する斜視図である。
【0035】
図8に示すように、コンクリート構造体21,22,23それぞれの両側壁上に圧入桁30を設置し、この圧入桁30上に圧入ジャッキ31を設置してもよい。この場合、コンクリート構造体21,22,23それぞれの両側壁には、グラウンドアンカ12を上下方向に挿通可能な貫通穴が設けられており、この貫通穴に挿通したグラウンドアンカ12をその圧入ジャッキ31に連結し、グラウンドアンカ12に反力を取ってコンクリート構造体21,22,23を地中に圧入沈下する。
【0036】
図9は、他の実施形態を説明する縦断面図である。
【0037】
図9に示すように、各コンクリート構造体21,22,23内部に、仮壁42、切梁43、及び仮支柱44を設けてもよい。
【0038】
また、図9に示すように、コンクリート構造体21,22,23それぞれの両側壁間に圧入桁30を架設し、架設された圧入桁30上の両側壁外側部分に圧入ジャッキ31を設置してもよい。
【0039】
以上で、圧入ジャッキ設置工程および圧入沈下工程の他の実施形態の説明を終了する。
【0040】
図10は、図6,図7に示す圧入沈下工程を経て形成されたアンダーパス斜路の両側壁の縦断面図である。
【0041】
図10に示すように、コンクリート構造体21,22,23を地中に圧入沈下することによって、アンダーパス斜路の両側壁を形成する。
【0042】
図11は、地中に圧入沈下したコンクリート構造体22の各棒状連結材223,224,225,226,227間をシールする棒状連結材間止水PC板62の外観斜視図であり、図12は、図11に示す棒状連結材間止水PC板62を用いて図10に示すA部をシールした状態の縦断面拡大図である。
【0043】
図12には、地中に圧入沈下したコンクリート構造体22の棒状連結材223,224,225,226,227のうちの、下端に刃口223aを有する棒状連結材223と、この棒状連結材223の隣りの棒状連結材224が示されている。図12に示すように、コンクリート構造体22の各棒状連結材223,224,225,226,227の下部には凹条溝223b,224b,225b,226b,227bが形成されている。尚、下端に刃口223aを有する棒状連結材223の上部には、後述する凹条溝233cが形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0044】
図11に示す、浸水防止材の実施形態である棒状連結材間止水PC板62を、図12に示すように、地中に圧入沈下したコンクリート構造体22の、隣接する棒状連結材223,224,225,226,227の下部に形成された凹条溝223b,224b,225b,226b,227bに下方から当接させるとと共に、棒状連結材間止水PC板62と棒状連結材223,224,225,226,227とをL型金具60およびボルト61を用いて仮止めする。また、この棒状連結材間止水PC板62の、凹条溝223b,224b,225b,226b,227bと当接する部分には、弾性体からなるシール材63が備えられており、このシール材63によって水密性が保たれることとなる。
【0045】
また、図11に示すように、棒状連結材間止水PC板62は例えば2つの貫通孔62aを有する。L型金具60およびボルト61を用いて仮止めされた棒状連結材間止水PC板62の貫通孔62aから例えばソイルモルタル70を注入することによって、その棒状連結材間止水PC板62が固定され、各棒状連結材223,224,225,226,227間からの浸水が防止される。
【0046】
ここでは、コンクリート構造体22を例に挙げて説明したが、このコンクリート構造体22に隣接して地中に圧入沈下したコンクリート構造体21,23についても同様に、棒状連結材間止水PC板62を用いて浸水防止対策を施す。
【0047】
図13は、地中に圧入沈下した各コンクリート構造体21,22,23間の下部をシールするコンクリート構造体間下部止水PC板64の外観斜視図である。また、図14は、図13に示すコンクリート構造体間下部止水PC板64を用いて図10に示すB部をシールした状態の縦断面拡大図であり、図15は、図14に示す棒状連結材227のD−D矢視図である。
【0048】
図14には、地中に圧入沈下したコンクリート構造体22における下端に刃口227aを有する棒状連結材227と、このコンクリート構造体22に隣接して地中に沈下したコンクリート構造体23における下端に刃口233aを有する棒状連結材233が示されている。図14に示すように、これら2つの棒状連結材227,233のうちの、圧入沈下したときに下方に位置する棒状連結材233には、上部に凹条溝233cが形成されている。また、図14,図15に示すように、これら2つの棒状連結材227,233のうちの、圧入沈下したときに上方に位置する棒状連結材227には、この棒状連結材227の、隣接するコンクリート構造体23に対向する面に、凹条切欠き227cが形成されている。尚、図14に示す棒状連結材227の下部には、上述した凹条溝227bが形成され、棒状連結材233の下部には、上述した凹条溝233bが形成されているが、ここでは図示を省略している。
【0049】
図13に示す、浸水防止材の実施形態であるコンクリート構造体間下部止水PC板64の一端を、図14,図15に示すように、圧入沈下したときに上方に位置する棒状連結材227の凹条切欠き227cに挿入し、このコンクリート構造体間下部止水PC板64の他端を、圧入沈下したときに下方に位置する棒状連結材233の凹条溝233cに係合すると共に、コンクリート構造体間下部止水PC板64と棒状連結材227、およびコンクリート構造体間下部止水PC板64と棒状連結材233とをL型金具60およびボルト61を用いて仮止めする。また、このコンクリート構造体間下部止水PC板64の、凹条切欠き227cおよび凹条溝233cと当接する部分には、弾性体からなるシール材65が備えられており、このシール材65によって水密性が保たれることとなる。
【0050】
また、図13に示すように、コンクリート構造体間下部止水PC板64は例えば2つの貫通孔64aを有する。L型金具60およびボルト61を用いて仮止めされたコンクリート構造体間下部止水PC板64の貫通孔64aから例えばソイルモルタル70を注入することによって、そのコンクリート構造体間下部止水PC板64が固定され、地中に圧入沈下した隣接コンクリート構造体22,23間下部からの浸水が防止される。
【0051】
ここでは、コンクリート構造体22,23間を例に挙げて説明したが、コンクリート構造体21,22間についても同様に、コンクリート構造体間下部止水PC板64を用いて浸水防止対策を施す。
【0052】
図16は、地中に圧入沈下した各コンクリート構造体21,22,23間の側部をシールするコンクリート構造体間側部止水PC板66の外観斜視図であり、図17は、図16に示すコンクリート構造体間側部止水PC板66を用いて図10に示すC矢視部をシールした状態の平面拡大図である。
【0053】
図17には、地中に圧入沈下したコンクリート構造体22における、側端に凹条切欠221bを有する側壁221と、このコンクリート構造体22に隣接して地中に沈下したコンクリート構造体23における、側端に凹条切欠231bを有する側壁231と、側壁221にボルト41を用いて固定された、側壁221,231相互間に空けられた間隔を塞いでいる鋼板40が示されている。また、隣接コンクリート構造体22,23間下部からの浸水を防止するコンクリート構造体間下部止水PC板64も示されている。
【0054】
図16に示す、浸水防止材の実施形態であるコンクリート構造体間側部止水PC板66を、図17に示すように、隣接コンクリート構造体22,23間の対向する凹条切欠221b,231b間に上方から挿入する。このコンクリート構造体間側部止水PC板66の、凹条切欠き227cおよび凹条溝233cと当接する部分には、弾性体からなるシール材67が備えられており、このシール材67によって水密性が保たれることとなる。また、図16,図17に示すように、このコンクリート構造体間側部止水PC板66には、板状突起66bが設けられており、この板状突起66bが、隣接コンクリート構造体22,23間下部からの浸水を防止するコンクリート構造体間下部止水PC板64上に載置されることによって、側壁221,231間の隙間が塞がれる。
【0055】
また、図16に示すように、コンクリート構造体間側部止水PC板66は例えば2つの貫通孔66aを有する。凹条切欠221b,231b間に上方から挿入されたコンクリート構造体間側部止水PC板66の貫通孔64aおよび上方から例えばソイルモルタル70を注入することによって、そのコンクリート構造体間側部止水PC板66が固定され、地中に圧入沈下した隣接コンクリート構造体22,23間側部からの浸水が防止される。
【0056】
ここでは、コンクリート構造体22,23間を例に挙げて説明したが、コンクリート構造体21,22間についても同様に、コンクリート構造体間側部止水PC板66を用いて浸水防止対策を施す。
【0057】
図18は、構築されたアンダーパス100の縦断面図であり、図19は、図18に示すアンダーパス100の平面図である。
【0058】
図1〜図17を参照して説明した工程を繰り返すことによって、アンダーパス斜路の両側壁110を形成し、圧入沈下した各コンクリート構造体の底面及び隣接コンクリート構造体間隙間をシールする。
【0059】
このように、圧入沈下した各コンクリート構造体の底面及び隣接コンクリート構造体間隙間をシールすると、多量の出水がある場合あるいは高水圧の地層の場合にも容易に路面をドライ施工することができる。また、水中施工で水中コンクリートを打設して止水し、多少の漏水を二次的な薬液注入で止め、ドライ施工してもよい。
【0060】
尚、上下道路交差部分の下側道路は、既施工コンクリート構造体の上部をPC版81で覆工して上側道路のバイパス道路を仮施工した後に、図1〜図17を参照して説明した工程と同様の工程で施工する。また、上下道路交差部分の上側道路は、その下側道路の施工が完了した後にその上部をPC版82で覆工して上側道路を施工し復旧する。
【0061】
このようにバイパス道路を仮施工することにより、上側道路の交通遮断を行うことなく施工することができる。
【0062】
仮設の構台51(図7参照)や仮壁42(図7参照)を撤去した後に、このようにして形成された両側壁110間に底版コンクリートを打設し、アンダーパス斜路の路面を施工する。
【0063】
尚、本実施形態のアンダーパス100のうちの地上道路と連結されるアプローチ部分120については、公知の技術である、RC擁壁の現場打ち工法によって構築する。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のアンダーパス構築工法は、地上で製作されたコンクリート構造体下の土砂を掘削しつつこのコンクリート構造体を地中に圧入沈下してアンダーパス斜路の路面を施工する工法であるため、仮土留め等を設ける必要がなく、短工期ですぐれたアンダーパス斜路を構築することができるという優れた効果を奏する。また、本実施形態のアンダーパス構築工法は、地中に圧入沈下するコンクリート構造体が、アンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割したものであるため、例えば湾曲状のアンダーパスであってもこの工法を適用することができる。
【0065】
次に、図20,図21を参照して、アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路構築の他の実施形態について説明する。
【0066】
図20は、下側道路コンクリート構造体24の側面図であり、図21は、図20に示す下側道路コンクリート構造体24の平面図である。
【0067】
図20,図21に示すように、下側道路コンクリート構造体24は、下側道路の両側壁241,242と、これら両側壁241,242の下部同士を連結する複数本の棒状連結材243,244,245,246,247と、これら両側壁241,242の上部同士を連結する複数本の棒状連結材2431,2441,2451,2461,2471とから構成されている。また、両側壁241,242は、例えば厚さが80cmであって、下端に刃口241a,242aを有すると共に、両側端面に凹条切欠241b,242bを有する。さらに、棒状連結材243,244,245,246,247,2431,2441,2451,2461,2471は、例えばそれぞれ横断面が1m角であって、これらの棒状連結材243,244,245,246,247,2431,2441,2451,2461,2471のうちの両側壁241,242の下部同士を連結する両端の棒状連結材243,247も、それぞれ下端に刃口243a,247aを有する。尚、両端の棒状連結材243,247,2431,2471は、圧入沈下時における、隣接するコンクリート構造体との抵抗を低減するために、両側壁241,242の側端よりも例えば10cm内側に配備されている。
【0068】
このような下側道路コンクリート構造体24を、図1〜図17を参照して説明した工程と同様の工程で施工して、アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路構築を行ってもよい。
【0069】
次に、図22,図23を参照して、アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路構築の他の実施形態について説明する。
【0070】
図22,図23は、アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路を推進工法により構築する工法の説明図である。
【0071】
図22に示すように、上下道路交差部分の構築すべき下側道路の両側に、図1〜図17を参照して説明した工程と同様の工程でコンクリート構造体25,26を施工する。このコンクリート構造体25,26間の上側道路下方にパイプを挿通して、図23に示すようにパイプルーフ90を形成する。パイプルーフ90は、上側道路130を支持する。従って上側道路130の交通遮断は省略又は短時間のみに限定することができる。
【0072】
パイプルーフ90の下方に、公知の技術である推進工法によりボックスカルバート等のトンネル部材91aを推進圧入してトンネルを形成する。図22はコンクリート構造体25側からトンネル部材91a(推進管)を推進させ、コンクリート構造体26側から別のトンネル部材91b(推進管)をそれぞれ推進させて中間で結合する方式のものを示している。
【0073】
尚、推進手段はこれに限るものではなく、コンクリート構造体25に反力をとってトンネル部材91aを一方からのみ推進しても良く、又は他方のコンクリート構造体まで推進ロッド等を貫通させ、その先端側を他方のコンクリート構造体内に設けた反力装置に支持させ、この推進ロッドによりトンネル部材を1方向から推進させてもよい。
【0074】
このように、上下道路交差部分の下側道路をアンダーパス斜路の構築とは別に、推進工法によるトンネル形成技術によって施工することにより、上側道路の交通遮断を行うことなく迅速に施工することができる。このことによって、交通遮断等を不必要とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちのグラウンドアンカ施工工程を説明する縦断面図である。
【図2】本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態で用いるコンクリート構造物の縦断面図である。
【図3】図2に示すコンクリート構造物の側面図である。
【図4】図2に示すコンクリート構造物の平面図である。
【図5】本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちの圧入ジャッキ設置工程を説明する縦断面図である。
【図6】本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちの圧入沈下工程を説明する縦断面図である。
【図7】本発明のアンダーパス構築工法についての一実施形態のうちの圧入沈下工程を説明する斜視図である。
【図8】他の実施形態を説明する斜視図である。
【図9】他の実施形態を説明する縦断面図である。
【図10】図6,図7に示す圧入沈下工程を経て形成されたアンダーパス斜路の両側壁の縦断面図である。
【図11】地中に圧入沈下したコンクリート構造体の各棒状連結材間をシールする棒状連結材間止水PC板の外観斜視図である。
【図12】図11に示す棒状連結材間止水PC板を用いて図10に示すA部をシールした状態の縦断面拡大図である。
【図13】地中に圧入沈下した各コンクリート構造体間の下部をシールするコンクリート構造体間下部止水PC板の外観斜視図である。
【図14】図13に示すコンクリート構造体間下部止水PC板を用いて図10に示すB部をシールした状態の縦断面拡大図である。
【図15】図14に示す棒状連結材のD−D矢視図である。
【図16】地中に圧入沈下した各コンクリート構造体間の側部をシールするコンクリート構造体間側部止水PC板の外観斜視図である。
【図17】図16に示すコンクリート構造体間側部止水PC板を用いて図10に示すC矢視部をシールした状態の平面拡大図である。
【図18】構築されたアンダーパスの縦断面図である。
【図19】図18に示すアンダーパスの平面図である。
【図20】下側道路コンクリート構造体の側面図である。
【図21】図20に示す下側道路コンクリート構造体の平面図である。
【図22】アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路を推進工法により構築する工法の説明図である。
【図23】アンダーパスの上下道路交差部分の下側道路を推進工法により構築する工法の説明図である。
【符号の説明】
【0076】
100 アンダーパス
120 アプローチ部分
10 ボーリングマシン
11 長孔
200 支持地盤層
12 グラウンドアンカ
21,22,23,25,26 コンクリート構造物
24 下側道路コンクリート構造体
211,221,222,231,110,241,242 側壁
211a,221a,222a,231a,217a,223a,227a,233a,241a,242a,243a,247a 刃口
221b,222b,227c,231b,241b,242b 凹条切欠
217,223,224,225,226,227,233,243,244,245,246,247,2431,2441,2451,2461,2471 棒状連結材
223b,224b,225b,226b,227b,233c 凹条溝
30 圧入桁
31 圧入ジャッキ
40 鋼板
41 ボルト
42 仮壁
43 切梁
44 仮支柱
50 バケット
51 構台
60 L型金具
61 ボルト
62 棒状連結材間止水PC板
62a,64a,66a 貫通孔
63,65,67 シール材
64 コンクリート構造体間下部止水PC板
66 コンクリート構造体間側部止水PC板
66b 板状突起
70 ソイルモルタル
81,82 PC版
90 パイプルーフ
130 上側道路
91a,91b トンネル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーパスを構築するに当たり、アンダーパス斜路の路軸方向を複数ブロックに分割し、各ブロックごとに、アンダーパス斜路の両側壁及びこれらの下部同士を連結する複数の棒状連結材から成ると共に下端に刃口を有するコンクリート構造体を地上で製作し、該コンクリート構造体下の土砂を掘削しつつ該コンクリート構造体を地中に圧入沈下してアンダーパス斜路の両側壁を形成し、該両側壁間にアンダーパス斜路の路面を施工することを特徴とするアンダーパス構築工法。
【請求項2】
前記圧入沈下したコンクリート構造体の底面及び隣接コンクリート構造体間隙間を浸水防止材でシールし、前記両側壁間にアンダーパス斜路の路面を施工することを特徴とする請求項1記載のアンダーパス構築工法。
【請求項3】
上下道路交差部分の下側道路は、既施工コンクリート構造体の上部を覆工して上側道路のバイパス道路を仮施工し、下側道路の両側壁及びこれを連結する複数の棒状連結材から成ると共に下端に刃口を有する下側道路コンクリート構造体を交差道路部地上で製作し、該下側道路コンクリート構造体を地中に圧入沈下して形成することを特徴とする請求項1記載のアンダーパス構築工法。
【請求項4】
上下道路交差部分の下側道路は、該上下道路交差部分に隣接する両方の既施工コンクリート構造体間の上側道路下方にパイプルーフを形成し、該パイプルーフの下方に推進工法によりトンネルを施工して形成することを特徴とする請求項1記載のアンダーパス構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−50884(P2008−50884A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229633(P2006−229633)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000112196)株式会社ピーエス三菱 (181)
【Fターム(参考)】