説明

アンチエージング剤

【課題】優れたアンチエージング剤を提供する。
【解決手段】本発明のアンチエージング剤はスレオニン、又はスレオニン及びメチオニンの両方を有効成分として含有する。寿命を延長ないし老化を遅延する、特に加齢に伴う疾病リスクを低減して、寿命を延長ないし老化を遅延するために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレオニン、又はスレオニンとメチオニンを有効成分として含有するアンチエージング剤に関し、より詳細には、寿命を延長ないし老化を遅延する、特に加齢に伴う疾病リスクを低減して寿命を延長ないし老化を遅延するためのアンチエージング剤、並びにこれを含有する医薬品等に関する。
【0002】
また、本発明は、メチオニンとスレオニンを有効成分として含有する肝機能保護剤又は発癌抑制剤、並びにこれを含有する医薬品等にも関する。
【背景技術】
【0003】
2000年現在、日本の老年(65歳以上)人口の割合は17.4%で、今後徐々に増加し、2050年には35.7%となり、2.8人に1人が老人という超高齢化社会を迎えることになる。また、日本のみならず、先進諸国では高齢化が深刻な社会問題となりつつあり、より健康で、生産的な老後を可能にすることが求められている。
【0004】
寿命や老化の制御に関連する因子として、インスリン/IGF-1、Sir2、酸化ストレス、カロリー制限、長寿関連遺伝子(例えば、非特許文献1参照)等が報告されている。この中で、最も確実に寿命が延長できるのはカロリー制限であり、現在では線虫から哺乳類まで、幅広い生物種においてその効果が確認されている(例えば、非特許文献2参照)。また、カロリー制限された動物は、毛並みがよく健康そうで、腎臓疾患、各種腫瘍、自己免疫疾患、糖尿病、神経変性、空間記憶力の低下等の老化に伴う諸変化の出現が遅れることも確認されている(例えば、非特許文献3参照)。しかしながら、50〜70%にカロリーを制限する必要があることから、我々の生活に当てはめると毎日の食事を半分に減らすか、完全に一食抜くことになり、現実的な方法ではない。
【0005】
そこで、カロリー制限模倣物質とよばれるカロリー制限の効果のみを模倣できる物質の開発が行われている。このカロリー制限模倣物質としては、ポリフェノールの一種であるレスベラトロール(例えば、非特許文献4参照)等が注目を集めている。また、摂食抑制効果を有する物質の探索もされている。
【0006】
一方、ヒトの寿命は病気によって限定され、昭和56年以来、癌がヒトの死因の第一となっている。また、C型肝炎患者は現在日本で推定200万人程度、世界では2億人程度いると言われているが、C型肝炎が高率に癌へと移行することが知られており、C型肝炎患者の発癌を如何に抑え延命を図るかが大きな課題となっている。癌の治療法は近年大きな進歩を遂げているものの、癌を外科的に切除した患者の再発のリスクは健常者の発癌リスクに比較して遙かに高く、依然切実な問題である。また、抗癌剤を用いた治療では副作用のため、患者の生活の質(QOL)が損なわれる例が少なくない。第3次対癌総合戦略では、「癌の罹患率と死亡率の激減」をキャッチフレーズに、いくつかの重点研究分野が設定されている。その一つが、革新的な癌の予防法の開発であり、発癌リスクの軽減や生活習慣の改善による癌予防法を確立すること、癌発生の遅延或いは生涯的な予防を可能にし、死亡率を減少させることが目標となっている。
【0007】
メチオニン(Met)は、たんぱく構成アミノ酸の一つであり、動物の生育と生存に必須のアミノ酸である。メチオニンは、食事たんぱくを十分に摂取していれば、欠乏に陥ることはないが、近年、食事へのメチオニン添加によって、脂肪肝の改善効果(例えば、特許文献1参照)や化学発癌抑制効果(例えば、非特許文献5及び6参照)が発揮されることが報告されている。
【0008】
また、メチオニンは、生体の抗酸化能を高めて寿命を延長させる可能性があることも報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、メチオニンを過剰に摂取すると、摂食抑制や溶血性貧血、尿細管(kidney tubules)の肥大、膵臓の障害、肝細胞壊死等の悪影響が観察されること(例えば、非特許文献7参照)や、小腸の発癌が促進すること(例えば、非特許文献8参照)等が報告されている一方、メチオニン制限食で寿命が延びること(例えば、非特許文献9参照)等も報告されており、メチオニンの健康への効果は定かではない。
【0010】
メチオニンの悪影響のうち、溶血性貧血については、スレオニン(Thr)との併用によって改善され、メチオニンとスレオニンとの併用物が食欲抑制剤として有効であることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,741,506号
【特許文献2】米国特許第2005/0014698号
【特許文献3】特開2003−048830号公報
【非特許文献1】今井眞一郎、実験医学、22、800 (2004)
【非特許文献2】鍋島陽一、「老化のバイオロジー」、(株)メディカル・サイエンス・インターナショナル (2000) p287
【非特許文献3】J. Koubova, Genes & Development, 17, 313 (2003)
【非特許文献4】D. Chen, Trends in Molecular Medicine, 13, 64 (2007)
【非特許文献5】M. A. Pereira, Toxicological Science, 77, 243 (2004)
【非特許文献6】F. R. Fullerton, Carcinogenesis, 11, 1301 (1990)
【非特許文献7】A. E. Harper et al., Pathological Review, 50, 428 (1970)
【非特許文献8】B. Duranton, Carcinogenesis, 20, 493 (1999)
【非特許文献9】N. Orentrich, J. Nutr., 123, 269, (1993)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記カロリー制限模倣物質については、哺乳類での効果は実証されていないのが現状である。また、上記摂食抑制効果を有する物質の使用については、肥満症でない限り、過度な摂食抑制は、生活の質(QOL)を高める上で好ましいものとは思えないため、実用的ではない。そこで、人や動物に対して簡便に使用でき、QOLを損なわず、安全に摂取出来るだけでなく、癌をはじめとする、老化に伴う疾患リスクを低減し、寿命延長に有効なアンチエージング剤や発癌抑制剤の開発が望まれている。
【0013】
一方、スレオニンや、メチオニンとスレオニンとの併用物についての寿命延長や、メチオニンとスレオニンとの併用物についての発癌抑制作用に関しては明らかではない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、スレオニンが、寿命延長ないし老化遅延効果に優れることを発見し、また、メチオニンが、発癌抑制効果、肝機能保護作用に加え寿命延長(延命)効果に優れることを見出した。
【0015】
さらに、メチオニンとスレオニンの併用が、メチオニン単独と同等の発癌抑制効果、及び肝機能保護作用を奏するにも関わらず、スレオニン及びメチオニンを各々単独で使用する場合に比較して遙かに強力な寿命延長ないし老化遅延効果を奏することを見出し、これらに基づいて本発明を完成した。
【0016】
即ち、本発明は、第一の視点において、スレオニンを有効成分として含有することに特徴を有するアンチエージング剤を提供する。当該アンチエージング剤は、特に加齢に伴う疾病リスクを低減するために用いることができる。
【0017】
本発明において、「アンチエージング剤」とは、アンチエージング効果、即ち寿命を延長ないし老化を遅延する効果及び老化に伴う疾病リスクを低減する効果のうち少なくとも1つを有する剤をいう。前記老化に伴う疾病としては、例えば、癌、特に肝臓癌、肝臓疾患等が挙げられる。
【0018】
また、本発明において、前記アンチエージング剤には、更に、メチオニンを有効成分として含有させることができ、有効成分として、スレオニン及びメチオニンの両方を含有する方がより好ましい。
【0019】
本発明において、前記アンチエージング剤には、前記メチオニンと共に、又はこれに代えて、生体内でメチオニンに変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質(メチオニン代替物とも称する。)を有効成分として含有させることができる。このような物質として、例えば、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸、ホモシステイン、及びホモシスチンから選択することができる。
【0020】
前記スレオニン及び前記メチオニンはそれぞれ、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。塩の形態で使用する場合、存在する塩の中から飲食品或いは医薬品として許容される塩を選択するとよい。
【0021】
有効成分のスレオニンやメチオニンには、光学異性体が存在するが、本発明においては光学異性体の種類に関して特に制限は無い。天然に存するということでL−体を使用するのが好ましい。
【0022】
前記スレオニンの含有量は、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1〜400mgであることが好ましい。また、前記メチオニンの含有量は、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1mg〜400mgであることが好ましい。さらに、前記アンチエージング剤に、前記スレオニンと前記メチオニンの両方が有効成分として含有される場合には、スレオニンに対するメチオニンの配合比は、25〜400%であることが好ましい。
【0023】
また、本発明において、前記アンチエージング剤には、更に、システイン及びシスチンのうち少なくとも1種を含有させることができる。
【0024】
本発明のアンチエージング剤は、非経口的にも使用することができるが、特に経口投与又は経口摂取で前記優れた作用を示し、経口投与又は経口摂取に適している。したがって、医薬品の形態で容易に使用することができる外、栄養剤、飲食品、飼料、又は飼料添加剤の形態でも容易に使用することができる。
【0025】
本発明は、第二の視点において、前記アンチエージング剤、即ち本発明のアンチエージング剤を含有し、寿命延長ないし老化遅延効果を有することに特徴を有する医薬品を提供することができる。
【0026】
前記医薬品には、通常の経口製剤、非経口製剤の外に、輸液等の製剤が含まれる。
【0027】
なお、本発明のアンチエージング剤を含有させて、寿命延長ないし老化遅延効果を有する栄養剤、飲食品、飼料、又は飼料添加剤とすることもできる。飲食品としては、前記効果を、期待或いは求める通常の食品類や、飲料の他、医療用食品、健康食品、特定保険食品等の形態で使用することができる。
【0028】
また、上記本発明のアンチエージング剤には、前記有効成分を含み、目的とする前記効果、作用を有する限り、各種の添加剤を含めることができる。
【0029】
さらに、本発明において、前記医薬品、或いは前記栄養剤、飲食品、飼料、又は飼料添加剤には、寿命を延長ないし老化を遅延するために用いられるものである旨の表示を付することができる。
【0030】
本発明は、第三の視点において、本発明のアンチエージング剤と、当該アンチエージング剤を寿命の延長ないし老化の遅延のために使用することができることを記載した当該アンチエージング剤に関する記載物とを含有するパッケージを提供することができる。
【0031】
本発明は、第四の視点において、メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有することに特徴を有する肝機能保護剤を提供することができる(但し、前記スレオニン及び前記メチオニンはそれぞれ、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。)。なお、前記メチオニンについては、これと共に、又はこれに代えてメチオニン代替物を使用することができる。
【0032】
本発明は、第五の視点において、前記肝機能保護剤、即ち本発明の肝機能保護剤を含有し、肝機能保護効果を有することに特徴を有する医薬品を提供することができる。
【0033】
なお、本発明の肝機能保護剤を含有させて、肝機能保護効果を有する栄養剤、飲食品、飼料、又は飼料添加剤とすることもできる。
【0034】
本発明は、第六の視点において、本発明の肝機能保護剤と、当該肝機能保護剤を肝機能の保護のために使用することができることを記載した当該肝機能保護剤に関する記載物とを含有するパッケージを提供することができる。
【0035】
本発明は、第七の視点において、メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有することに特徴を有する発癌抑制剤、特に肝臓癌の発生抑制剤を提供することができる(但し、前記スレオニン及び前記メチオニンはそれぞれ、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。)。なお、前記メチオニンについては、これと共に、又はこれに代えてメチオニン代替物を使用することができる。
【0036】
本発明は、第八の視点において、本発明の発癌抑制剤を含有し、発癌抑制効果を有することに特徴を有する医薬品を提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
スレオニン、又はスレオニンとメチオニンの両方を有効成分として含有する剤(本発明の剤)は、アンチエージングにおいて、即ち寿命を延長ないし老化を遅延する、特に加齢に伴う疾病リスクを低減して、寿命を延長ないし老化を遅延することにおいて極めて有用であり、安全に摂取出来るため、特に医薬品(輸液等含む。)の形態で適用することができる。なお、寿命の延長ないし老化の遅延効果を期待して、栄養剤や、飲食品(医療用食品、健康食品、特定保険食品等を含む。)、飼料、飼料添加剤の形態でも適用することができる。
【0038】
また、メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有する剤(本発明の剤)は、発癌、特に肝臓癌の発生の抑制、肝機能の保護、肝臓疾患の予防、進展防止等に極めて有用であり、安全に摂取出来るため、特に医薬品(輸液等含む。)の形態で適用することができる。なお、栄養剤や、飲食品(医療用食品、健康食品、特定保険食品等を含む。)、飼料、飼料添加剤の形態でも適用することができる。
【0039】
なお、メチオニンとスレオニンを併用することによる前記効果は、メチオニン単独による効果と同等か、それ以上であると考えられる。
【0040】
したがって、本発明は産業上、特に医療、医薬品、食品等の多くの分野において極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。本発明には、幾つかの形態、即ち、アンチエージング剤、発癌抑制剤、及び肝機能保護剤、並びに医薬品等が含まれる。
【0042】
(本発明のアンチエージング剤)
本発明のアンチエージング剤について説明する。
【0043】
本発明において使用するスレオニンは遊離体、及び塩のうち何れの形態であってもよい。メチオニンについても、同様に遊離体、及び塩のうち何れの形態にあるものを使用することができる。
【0044】
スレオニン及びメチオニンの塩としては、主に酸との塩が用いられる。塩を形成する酸としては、無機酸、有機酸何れも使用可能である。具体的には、塩酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩等が挙げられるが、好ましくは、塩酸塩が用いられる。
【0045】
スレオニン及びメチオニンには、光学異性体やその混合物が存在するが、本発明においては光学異性体の種類に関して特に制限は無い。即ち、光学異性体、ラセミ体何れも使用可能であるが、天然に存するということでL−体を使用するのが好ましい。
【0046】
本発明において使用するメチオニンについては、これと共に、又はこれに代えて、生体内でメチオニン(特に、遊離体の形態)に変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質を使用することもできる。そのような物質としては、例えば、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸、ホモシステイン、及びホモシスチンが挙げられる。これらの物質は飲食品等として摂取されたとき、医薬品として使用された場合と同様に、生体内で速やかにメチオニンに変換され又はメチオニンを生成し、メチオニンとしての作用を示すことができる。
【0047】
本発明のアンチエージング剤について、対象が摂取又は対象に投与する場合の摂取又は投与形態については特に制限は無い。したがって、経口摂取、経口投与、又は非経口投与(静脈投与等)等の各種の摂取ないし投与形態が採用可能である。簡便さの点で経口摂取又は経口投与が好ましい。
【0048】
本発明においては、有効成分、即ちスレオニン(遊離体、塩の何れの形態でもよい)、又はこのスレオニンとメチオニン(遊離体、塩の何れの形態でもよい)を含有する組成物の形態で使用することができ、具体的には、医薬品の外、飲食品(特に、医療用食品、健康食品及び特定保険食品)、飼料、又は飼料添加剤等の形態で使用することができる。前記有効成分を、栄養剤や、飲食品、飼料、飼料添加剤、医薬品等として投与又は摂取したとき、寿命の延長や老化の遅延、老化に伴う疾病リスクの低減等にその効果を発揮することができる。また、後述するように、発癌抑制、特に肝臓癌の発生の抑制や、肝機能の保護ないし肝臓疾患の予防、進展防止等にその効果を発揮することもできる。
【0049】
本発明を利用して、上記目的とする効果を発揮させる場合、本発明で使用する前記有効成分、スレオニンやメチオニン(及び/又はメチオニン代替物)、又はスレオニンとメチオニンの両方を含有する組成物を、そのまま単独で、特に医薬品、飲食品等の形態で、投与又は摂取してもよいが、更にその効果を維持し、又は高めると考えられる成分を添加使用することもできる。例えば、前記スレオニンとメチオニンを併用する場合には、システイン及びシスチン等のメチオニンのシステインへの異化を抑制し得る成分やメチオニンの生成を促進し得る成分を併用することは更に好ましい形態である。
【0050】
飲食品等として摂取する場合には、各種の添加剤を用いることなくそのままの形でも摂取することができるが、より摂取し易くするために、調味料、香味料等を加えて使用することもできる。
【0051】
飲食品等の形態としては、粉末、顆粒、細粒、錠剤、カプセル、液体、ゼリー等通常飲食品等として用いられる如何なる形態も選択可能である。前記有効成分、即ちスレオニン、又はスレオニンとメチオニンの両方を含有する組成物は既存の飲食品等に添加、含有させることによっても摂取できる。例えば、ドリンク、清涼飲料水、ヨーグルト、飴、ゼリー、乳酸菌飲料等に添加、含有させた形で摂取することができる。
【0052】
一方、医薬品として使用される場合には、各種の医薬製剤の形態で使用することができる。
【0053】
本発明のアンチエージング剤はスレオニンとメチオニン(及び/又はメチオニン代替物)を含む製剤の形態として使用することができ、薬理学的に許容し得る各種の製剤用物質を(補助剤として)含むこともできる(以下、「製剤学上許容される担体」とも称する。)。製剤用物質は製剤の剤型により適宜選択することができるが、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を挙げることができる。更に、製剤用物質を具体的に例示すると、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、牛乳蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、及び溶剤、例えば滅菌水及び一価又は多価アルコール、例えばグリセロールを挙げることができる。
【0054】
本発明のアンチエージング剤は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な医薬製剤の形態、例えば、経口投与、腹腔内投与、経皮的投与、吸入投与等各種の投与形態に調製することができる。本発明の剤をこれ等の様々な医薬製剤の形態に調製するためには公知の又は将来開発される方法を適宜採用することができる。
【0055】
これらの様々な医薬製剤の形態として、例えば適当な固体又は液状の製剤形態、例えば顆粒、粉剤、被覆錠剤、錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、ジュース、懸濁液、乳濁液、滴下剤、注射用溶液、活性物質の放出を延長する製剤等を挙げることができる。
【0056】
以上に例示した製剤形態にある本発明のアンチエージング剤には、薬効を奏するに有効な量の前記成分(スレオニン、メチオニン、メチオニン代替物)を含有すべきことは当然のことである。
【0057】
摂取又は投与対象は、前記アンチエージング剤を利用する(寿命の延長ないし老化の遅延を求める)哺乳類、例えばヒト及びペット動物等であり、特にヒト及びペット動物が望ましい。この場合、スレオニンの摂取量又は投与量については、摂取又は投与対象の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、スレオニン(遊離体、塩等)を有効成分とする場合、一般に1日あたり、遊離体に換算して、摂取又は投与対象の体重1kgあたり好ましくは1mg〜400mg程度、より好ましくは3mg〜120mg程度、更に好ましくは10mg〜40mg程度の範囲で適宜選択することができる。一方、更にメチオニンを有効成分として含有させる場合、一般に1日あたり、遊離体に換算して、摂取又は投与対象の体重1kgあたり好ましくは1mg〜400mg程度、より好ましくは3mg〜120mg程度、更に好ましくは10mg〜40mg程度の範囲で適宜選択することができる。
【0058】
前記スレオニンとメチオニンを併用する場合には、前記スレオニン換算量を参考に適宜その使用量を選択することができる。
【0059】
併用する場合、スレオニンとメチオニンの配合比率(含有率)については特に制限は無いが、スレオニンに対するメチオニンの配合比率は、遊離体換算で好ましくは25〜400%(重量)程度であり、より好ましくは50 〜400%(重量)程度であり、更に好ましくは50〜200%(重量)程度である。
【0060】
なお、1日あたりの飲食(摂取)又は投与の回数について、前記飲食品、医薬品等の形態によって1日1ないし数回に分けて摂取することができる。
【0061】
また、本発明において、前記飲食品、医薬品等には、寿命を延長ないし老化を遅延するため、或いは老化に伴う疾病リスクを低減するために用いられるものである旨の表示を付することができる。
【0062】
以上、飲食品及び医薬品への応用例を中心に説明したが、これを基に栄養剤、飼料及び飼料添加剤への応用も容易である。
【0063】
さらに、本発明において、前記アンチエージング剤、即ち本発明のアンチエージング剤と、当該アンチエージング剤を寿命の延長ないし老化の遅延或いは老化に伴う疾病リスクの低減のために使用することができることを記載した当該アンチエージング剤に関する記載物とを含有するパッケージの形態で提供することができる。
【0064】
(本発明の肝機能保護剤)
本発明の肝機能保護剤について以下詳細に説明する。
【0065】
本発明において使用するスレオニン及びメチオニンについては、前記アンチエージング剤において記載した通りである。
【0066】
本発明においては、有効成分、即ちメチオニン(遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい)とスレオニン(遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい)の両方を含有する組成物の形態で使用することができ、具体的には、医薬品の外、飲食品(特に、医療用食品、健康食品及び特定保険食品)、飼料、又は飼料添加剤等の形態で使用することができる。前記有効成分を、医薬品や、栄養剤、飲食品、飼料、飼料添加剤等として投与又は摂取したとき、肝機能の保護ないし肝臓疾患の予防、進展防止等にその効果を発揮することができる。
【0067】
本発明を利用して、上記目的とする効果を発揮させる場合、本発明で使用する前記有効成分、メチオニン(及び/又はメチオニン代替物)とスレオニンの両方を含有する組成物を、そのまま単独で、特に飲食品、医薬品等の形態で、投与又は摂取してもよいが、更にその効果を維持し、又は高めると考えられる成分を添加使用することもできる。例えば、システイン及びシスチン等のメチオニンのシステインへの異化を抑制し得る成分やメチオニンの生成を促進し得る成分を併用することは更に好ましい形態である。
【0068】
飲食品等として摂取する場合には、各種の添加剤を用いることなくそのままの形でも摂取することができるが、より摂取し易くするために、調味料、香味料等を加えて使用することもできる。
【0069】
飲食品等の形態としては、粉末、顆粒、細粒、錠剤、カプセル、液体、ゼリー等通常飲食品等として用いられる如何なる形態も選択可能である。前記有効成分、即ちメチオニンとスレオニンの両方を含有する組成物は既存の飲食品等に添加、含有させることによっても摂取できる。例えば、ドリンク、清涼飲料水、ヨーグルト、飴、ゼリー、乳酸菌飲料等に添加、含有させた形で摂取することができる。
【0070】
一方、本発明の肝機能保護剤は、前記アンチエージング剤と同様、医薬品の形態として使用することもでき、薬理学的に許容し得る各種の製剤用物質(補助剤として)を含むこともできる(以下、「製剤学上許容される担体」とも称する。)。製剤用物質は製剤の剤型により適宜選択することができるが、例えば、賦形剤、希釈剤、添加剤、崩壊剤、結合剤、被覆剤、潤滑剤、滑走剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、可溶化剤等を挙げることができる。更に、製剤用物質を具体的に例示すると、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトール及びその他の糖類、タルク、牛乳蛋白、ゼラチン、澱粉、セルロース及びその誘導体、動物及び植物油、ポリエチレングリコール、及び溶剤、例えば滅菌水及び一価又は多価アルコール、例えばグリセロールを挙げることができる。
【0071】
これらの様々な医薬製剤の形態として、例えば適当な固体又は液状の製剤形態、例えば顆粒、粉剤、被覆錠剤、錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、ジュース、懸濁液、乳濁液、滴下剤、注射用溶液、活性物質の放出を延長する製剤等を挙げることができる。
【0072】
以上に例示した製剤形態にある本発明の肝機能保護剤には、薬効を奏するに有効な量の前記成分(メチオニン、メチオニン代替物、スレオニン)を含有すべきことは当然のことである。
【0073】
以上、医薬品及び飲食品にこの発明を適用する場合について詳しく説明したが、メチオニン及びスレオニンの両方が栄養剤、飼料及び飼料添加剤に使用されている場合にも、前記効果を奏することができる。したがって、このような栄養剤、飼料及び飼料添加剤への適用も期待される。
【0074】
本発明の肝機能保護剤は、前述の如く公知の又は将来開発される様々な医薬品、栄養剤、飲食品、飼料、又は飼料添加剤の形態を適宜採用することができる。
【0075】
摂取又は投与対象は、肝機能の保護ないし肝臓疾患の予防、進展防止等を必要とする哺乳類、例えばヒト及びペット動物等であり、特にヒト及びペット動物が望ましい。この場合、メチオニンの摂取量又は投与量については、摂取又は投与対象の体重、年齢、体質、体調等によって調整されるべきであるが、メチオニン(遊離体、塩等)を有効成分とする場合、一般に1日あたり、遊離体に換算して、摂取又は投与対象の体重1kgあたり好ましくは1mg〜400mg程度、より好ましくは3mg〜120mg程度、更に好ましくは10mg〜40mg程度の範囲で適宜選択することができる。一方、更にスレオニンを有効成分として含有させる場合、一般に1日あたり、遊離体に換算して、摂取又は投与対象の体重1kgあたり好ましくは1mg〜400mg程度、より好ましくは3mg〜120mg程度、更に好ましくは10mg〜40mg程度の範囲で適宜選択することができる。
【0076】
前記メチオニンとスレオニンを併用する際には、前記メチオニン換算量を参考に適宜その使用量を選択することができる。
【0077】
メチオニンとスレオニンの配合比率(含有率)については特に制限は無いが、メチオニンに対するスレオニンの配合比率は、遊離体換算で好ましくは25〜400%(重量)程度であり、より好ましくは50〜400%(重量)程度であり、更に好ましくは50〜200%(重量)程度である。
【0078】
なお、1日あたりの飲食(摂取)又は投与の回数について、前記飲食品、医薬品等の形態によって1日1ないし数回に分けて摂取することができる。
【0079】
また、本発明において、前記医薬品、飲食品等には、肝機能を保護ないし肝臓疾患を予防、肝臓疾患の進展を防止するために用いられるものである旨の表示を付することができる。
【0080】
さらに、本発明において、前記肝機能保護剤、即ち本発明の肝機能保護剤と、当該肝機能保護剤を肝機能の保護ないし肝臓疾患の予防、進展防止のために使用することができることを記載した当該肝機能保護剤に関する記載物とを含有するパッケージの形態で提供することができる。
【0081】
(本発明の発癌抑制剤)
本発明の発癌抑制剤は、メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有するものである。したがって、本発明の発癌抑制剤については、前記本発明の肝機能保護剤についての記載に基づいて容易に実施することができる。
【0082】
本発明の発癌抑制剤は、特に肝臓癌の発生の抑制剤として使用することが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
寿命延長効果の確認
【0085】
(実験動物)
4、5週齢のC3H/HeJ雄マウスを日本クレア(株)より購入し、室温25℃前後、湿度60%前後の環境下で、明期を7:00〜19:00とした明暗サイクルのもと飼育した。6ヶ月齢までは、市販固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母(株))にて10〜11匹/ケージで飼育し、その後1匹/ケージに分離した。後述の無添加食にて1週間飼育の後、群あたり38〜39匹ずつを無作為に割り当て、実験食を自由摂取させた。
【0086】
(実験飼料)
無添加食はβ−コーンスターチ62.9%、カゼイン20.0%、大豆油7.0%、セルロース5.0%、AIN-93Gミネラル混合(オリエンタル酵母(株))3.5%、AIN-93Gビタミン混合(オリエンタル酵母(株))1.0%、L-シスチン0.3%、酒石酸コリン0.25%、t-ブチルヒドロキノン0.0014%から成り、これらは米国NRCによるAIN-93精製飼料組成(1995)を基本としているが、オリジナル組成のα化コーンスターチとシュークロースの全量をβ−コーンスターチに置き換えている。実験食としてアミノ酸を含有させる場合は、β−コーンスターチの一部と置き換えた。メチオニンとスレオニンの添加量は何れも2.0%で、併用投与の場合も、同量を加えた。
【0087】
(アミノ酸)
何れも味の素(株)のアミノ酸(L-体、遊離体)を使用した。以下の実施例においても同様である。
【0088】
(寿命及び生存率(死亡率)の測定)
6ヶ月齢から、無添加食或いは実験食を、死亡にいたるまで自由摂食により給餌し、連日死亡動物数を確認し、生存率(死亡率)を算出した。平均余命は、JMP(SASインスティチュートジャパン)の生存時間分析を用いて算出した。なお、無添加食群と各実験食群の死亡動物数の比較にはχ2検定を用い、寿命の比較にはwilcoxon検定用いた。有意水準p<0.05で統計的に有意とした。その結果を表1に示した。
【0089】
【表1】

【0090】
(結果)
6ヶ月齢のC3H/HeJマウスに、スレオニン添加食を与えたところ、24ヶ月齢(投与18ヶ月目)まで無添加食群に比較して生存率が高く(死亡率が低く)、20ヶ月齢(投与14ヶ月目)で、その差は有意であった。メチオニン添加食を与えたラットでは、24ヶ月齢(投与18ヶ月目)以後、無添加食群に比較して死亡率が低く、長期生存例(24ヶ月齢以上)の寿命が延長した。6ヶ月齢のC3H/HeJマウスに、メチオニンとスレオニンを同時に投与した場合、全期間にわたり死亡率が低下し、平均寿命が延長し、その寿命延長効果はメチオニン単独及びスレオニン単独よりも遙かに強力であり、しかもこれは統計学的に有意な効果であった(図1、表1参照。)。なお、それらの投与期間中に、投与に伴う副作用は全く見られず、スレオニン及びメチオニンの高い安全性が確認された。
【0091】
マウスの平均寿命は2年程度と言われ、個々のマウスの寿命は概ね1年から2年半の範囲である。したがって、スレオニン、メチオニン、及びスレオニンとメチオニンの両方を投与した場合、特にスレオニンとメチオニンの両方を投与した場合、比較的長寿なマウスの寿命を一層延長した。なお、寿命は、老化に伴う疾病により限定されるものでもあるので、メチオニン、スレオニン、及びこれら両者の併用により、老化に伴う疾病リスクを低減する作用をも発揮すると期待できる。
【0092】
[実施例2]
寿命延長効果とカロリー制限ないし摂食抑制との関連性の確認
【0093】
カロリー制限ないし摂食抑制が、癌、腎臓疾患、自己免疫疾患、糖尿病、神経変性等の種々疾患の発症を抑え寿命延長することが知られている。そこで、実施例1の結果とカロリー制限ないし摂食抑制との関連性を確認するために、スレオニン、メチオニン、及びスレオニンとメチオニンの両方を投与した場合における体重及び摂餌量の測定を行った。
【0094】
(体重及び摂餌量の測定)
実施例1における25ヶ月齢(投与後19ヶ月)の生存動物の、体重及び摂餌量を測定した。なお、無添加食と各実験食群の体重及び摂餌量の比較にはt検定を用い、有意水準p<0.05で統計的に有意とした。
【0095】
(結果)
25ヶ月齢(投与19ヶ月目)の体重及び摂餌量を測定したところ、体重及び摂餌量の両方において、群間の差は認められなかった(図2及び図3参照。)。このことから、スレオニン、メチオニン、又はスレオニンとメチオニンの両方を投与した場合の寿命延長効果は、摂食抑制に基づくカロリー制限によるものでは無いことは明らかである。
【0096】
[実施例3]
肝臓発癌抑制効果の確認
【0097】
実験動物及び実験食は実施例1と同様のものを用いた。
【0098】
(各種測定)
死亡動物を解剖検査し、肝臓腫瘍の有無を観察した。なお、無添加食群と各実験食群の腫瘍発生率の比較にはχ2検定を用い、有意水準p<0.05で統計的に有意とした。
【0099】
(結果)
肝臓腫瘤発生率は、メチオニン添加食群、及びメチオニン+スレオニン添加食群で、無添加食群に比べて、有意に低下した(図4参照)。この結果から、メチオニン、及びメチオニンとスレオニンの併用が発癌抑制効果を示すことが明らかになった。また、肝臓腫瘤発生率は、メチオニン添加食群とメチオニン+スレオニン添加食群との間に統計的な有意差はなく、同等であった。本実施例では、腫瘤の有無は死亡後の解剖検査時に確認した。メチオニン+スレオニン添加食群では寿命が延長したことから、腫瘤の有無を観察している時期は、メチオニン+スレオニン添加食群ではメチオニン添加食群に比べて遅いと考えられた。このことから、メチオニンとスレオニンを併用することによる発癌抑制効果は、メチオニン(Met)の発癌抑制効果と同等か、それ以上であると考えられた。
【0100】
[実施例4]
肝機能保護効果の確認
【0101】
実験動物及び実験食は実施例1と同様のものを用いた。
【0102】
(各種測定)
19ヶ月目の生存動物の血液を、眼底採血により採取し、血中GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(glutamic oxaloacetic transaminase))濃度を、富士ドライケムスライドを用いて測定した。なお、無添加食群と各実験食群との比較にはt検定を用い、有意水準p<0.05で統計的に有意とした。
【0103】
(結果)
メチオニン添加食群、メチオニン+スレオニン添加食群でGOT濃度は対照群(無添加食群)より低値を示した(図5参照)。また、GOT濃度の値は、メチオニン添加食群とメチオニン+スレオニン添加食群とで同等であった。この結果から、メチオニン、及びメチオニンとスレオニンの併用が肝機能保護作用を示すことが明らかになった。
【0104】
[実施例5]
老齢マウスにおける寿命延長及び発癌抑制効果
【0105】
(実験動物)
4週齢のICR雄マウスを日本チャールス・リバー(株)より購入し、室温25℃前後、湿度60%前後の環境下で、明期を7:00〜19:00とした明暗サイクルのもと飼育した。20ヶ月齢までは市販固形飼料CRF-1(オリエンタル酵母(株))にて5〜10匹/ケージで飼育し、その後、1匹/ケージに分離した。後述の無添加食にて1週間飼育した後、群あたり25〜26匹ずつを無作為に割り当て、後述の実験食(実施例1で用いた無添加食又はメチオニン+スレオニン添加食)を自由摂取させた。飲水は水道水を自由摂取させた。なお、実験食は、実施例1で用いた無添加食及びメチオニン+スレオニン添加食を用いた。
【0106】
(各種測定)
実施例1と同様に寿命及び生存率(死亡率)の測定を行い、さらに実施例3と同様に死亡動物を解剖検査し、肝臓腫瘍の有無を観察した。
【0107】
(結果)
20カ月齢のマウスに無添加食、又はメチオニン+スレオニン添加食を投与したところ、メチオニン+スレオニン添加食投与群において、寿命が有意に延長した(図6参照。)。また、死亡時の腫瘤保有固体の割合は、メチオニン+スレオニン添加食投与群において、有意に減少した(図7参照。)。このことから、メチオニン及びスレオニンの併用は、老齢からの投与でも、発癌抑制及び寿命延長効果を発揮することが示された。
【0108】
[実施例6]
寿命延長効果及び発癌抑制効果とカロリー制限ないし摂食抑制との関連性の確認
【0109】
実施例5の結果とカロリー制限ないし摂食抑制との関連性を確認するために、スレオニンとメチオニンの両方を投与した場合における体重及び摂餌量の測定を行った。
【0110】
(体重及び摂餌量の測定)
実施例5において、投与1週間目及び投与3ヶ月目(23ヶ月齢)に体重及び摂餌量を測定した。
【0111】
(結果)
投与1週間目の摂餌量はメチオニン+スレオニン投与群で無添加食群に比べて約23%減少し、2群間の差は有意であった(図9参照。)。投与3ヶ月目の摂餌量はこの2群間で差は認められず、メチオニン+スレオニン投与による摂餌量の低下は、投与初期にのみ観察される影響であった。一方、体重は投与1週間目及び3ヶ月目で、メチオニン+スレオニン群で有意な低下(約10%)が認められた(図8参照。)が、Bucci J. Thomas実験動物海外技術情報, 37, 2 (1992)により報告されている寿命延長効果をもたらすカロリー制限時の体重減少に比べると軽微なものであった。このことから、スレオニンとメチオニンの両方を投与した場合の寿命延長効果及び発癌抑制効果は、摂食抑制に基づくカロリー制限によるものでは無いことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、実施例1における各実験食群の生存曲線、即ちスレオニン、メチオニン、又はスレオニンとメチオニンの両方の投与効果を示す図であり、生存率の変化を経時的に示したものである。
【図2】図2は、実施例2における、各実験食群の体重(平均値±標準偏差)を示す。
【図3】図3は、実施例2における、各実験食群の摂餌量(平均値±標準偏差)を示す。
【図4】図4は、実施例3における、各実験食群の肝臓腫瘤発生率を示す。なお、*は、無添加食群に比べて、統計的有意差があることを示す(有意水準5%)。
【図5】図5は、実施例4における、各実験食群のGOT値(平均値±標準偏差)を示す。なお、*は、無添加食群に比べて、統計的有意差があることを示す(有意水準5%)。
【図6】図6は、実施例5における各実験食群の生存曲線、即ちスレオニンとメチオニンの両方の投与効果を示す図であり、生存率の変化を経時的に示したものである。
【図7】図7は、実施例5における、各実験食群の、腫瘤発生率を示す。なお、*は、無添加食群に比べて、統計的有意差があることを示す(有意水準5%)。
【図8】図8は、実施例6における、各実験食群の体重(平均値±標準偏差)を示す。なお、*は、無添加食群に比べて、統計的有意差があることを示す(有意水準5%)。
【図9】図9は、実施例6における、各実験食群の摂餌量(平均値±標準偏差)を示す。なお、*は、無添加食群に比べて、統計的有意差があることを示す(有意水準5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スレオニンを有効成分として含有することを特徴とするアンチエージング剤;
但し、スレオニンは、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。
【請求項2】
前記スレオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1〜400mgである請求項1に記載のアンチエージング剤。
【請求項3】
更に、メチオニンを有効成分として含有する請求項1又は2に記載のアンチエージング剤;
但し、メチオニンは、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。
【請求項4】
前記メチオニンと共に、又はこれに代えて、生体内でメチオニンに変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質を有効成分として含有する請求項3に記載のアンチエージング剤。
【請求項5】
前記生体内でメチオニンに変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質が、2−オキソ−4−メチルチオ酪酸、ホモシステイン、及びホモシスチンのうち少なくとも1種である請求項4記載のアンチエージング剤。
【請求項6】
加齢に伴う疾病リスクを低減するための請求項1〜5の何れか記載のアンチエージング剤。
【請求項7】
前記メチオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1mg〜400mgである請求項3〜6の何れか記載のアンチエージング剤。
【請求項8】
前記スレオニンに対する前記メチオニンの配合比率が、25〜400%である請求項3〜7の何れか記載のアンチエージング剤。
【請求項9】
更に、システイン及びシスチンのうち少なくとも1種を含有する請求項3〜8の何れか記載のアンチエージング剤。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか記載のアンチエージング剤を含有し、寿命延長ないし老化遅延効果を有することを特徴とする医薬品。
【請求項11】
メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有することを特徴とする肝機能保護剤;
但し、メチオニン及びスレオニンはそれぞれ、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。
【請求項12】
前記メチオニンと共に、又はこれに代えて、生体内でメチオニンに変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質を有効成分として含有する請求項11に記載の肝機能保護剤。
【請求項13】
前記メチオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1mg〜400mgであり、前記スレオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1〜400mgである請求項11又は12に記載の肝機能保護剤。
【請求項14】
前記メチオニンに対する前記スレオニンの配合比率が、25〜400%である請求項11〜13の何れか記載の肝機能保護剤。
【請求項15】
請求項11〜14の何れか記載の肝機能保護剤を含有し、肝機能保護効果を有することを特徴とする医薬品。
【請求項16】
メチオニンとスレオニンの両方を有効成分として含有することを特徴とする発癌抑制剤;
但し、メチオニン及びスレオニンはそれぞれ、遊離体、及び塩のうち何れの形態でもよい。
【請求項17】
前記メチオニンと共に、又はこれに代えて、生体内でメチオニンに変換され得る物質又は生体内でメチオニンを生成し得る物質を有効成分として含有する請求項16に記載の発癌抑制剤。
【請求項18】
前記メチオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1mg〜400mgであり、前記スレオニンの含有量が、一日あたりの摂取量換算で、摂取対象の体重1kgあたり1〜400mgである請求項16又は17に記載の発癌抑制剤。
【請求項19】
前記メチオニンに対する前記スレオニンの配合比率が、25〜400%である請求項16〜18の何れか記載の発癌抑制剤。
【請求項20】
前記癌が、肝臓癌である請求項16〜19の何れか記載の発癌抑制剤。
【請求項21】
請求項16〜20の何れか記載の発癌抑制剤を含有し、発癌抑制効果を有することを特徴とする医薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−83848(P2010−83848A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257718(P2008−257718)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】