説明

アンテナ及びそれを備えた無線機器

【課題】 比較的簡易な構造で、小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供する。
【解決手段】 同軸線路4との接続部を介して同軸線路4から給電されるアンテナ20であって、同軸線路4に対して非軸対象に形成された放射素子1と、接続部の位置で放射素子1に対向する地板2と、を備える。さらに、同軸線路4に形成される電界分布を接続部又はその近傍で可変させる可変手段5、6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報端末、移動通信端末等の無線機器とそこに設置される指向性可変型のアンテナとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信技術の飛躍的な発展にともない、これらの技術を利用した種々の無線機器が広く普及し始めている。移動体通信端末等の無線機器では、機器の小型化にともなってアンテナの小型化が求められている。また、複数の通信方式への対応やUWBのような広帯域伝送への対応のために、広帯域かつ小型な指向性可変型のアンテナの開発が期待されている。
【0003】
従来のモノポールアンテナは、使用波長程度の大きさをもつ接地導体板(地板)と、この接地導体板上に立てられた1/4波長程度の長さをもつ線状導体(放射素子)と、で構成される。このようなモノポールアンテナの動作可能周波数は狭帯域であるために、放射素子の形状を変化させることによって広帯域化する検討がなされている。
例えば、円形の平板導体を放射素子とした円形平板型モノポールアンテナは、上述した通常のモノポールアンテナよりも広帯域化されている。また、円形平板型モノポールアンテナの放射素子を半分に折り曲げてなるアンテナは、通常のモノポールアンテナよりも広帯域化及び低姿勢化されている。
【0004】
また、特許文献1等には、上述した円形平板型モノポールアンテナを改良して、広帯域化や小型化する技術が開示されている。具体的に、放射素子として、使用周波数下限の電波の1/4波長に等しい直径のディスクを変形させて、1/4波長以下の寸法の部分を有するものが用いられている。
特許文献2等には、放射素子として、半円放射導体と半円放射導体との間を導電率が概ね0.1〜10.0の低導電率部材によって接続したものや、複数の抵抗を並列的に配置して多点接続したものを用いている。
【0005】
一方、従来から、アンテナ指向性を可変できる指向性可変アンテナが知られている。
特許文献3等には、放射素子の周囲を反射素子が機械的に周回することでアンテナ指向性を変化させる指向性可変アンテナが開示されている。
特許文献4等には、電気的にアンテナ指向性を切り替える指向性可変アンテナが開示されている。詳しくは、円形の接地導体上に、中央駆動素子と、それを放射状に取り囲むパラスティック素子と、が配置されている。パラスティック素子の下部にはインピーダンス負荷が設けてあって、このインピーダンスの切替えによりアンテナ指向性を切替える。
特許文献5等には、円形の接地導体上に給電アンテナ素子とそれを放射状に取り囲む無給電可変リアクタンス素子とが配置された指向性可変アンテナが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−164731号公報
【特許文献2】特開平2003−304114号公報
【特許文献3】特開平6−350334号公報
【特許文献4】特開平10−154911号公報
【特許文献5】特開2001−24431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のアンテナは、広帯域化・小型化と指向性可変化とが両立されていなくて、情報端末や移動通信端末のアンテナとして使い勝手が充分ではなかった。
【0008】
特許文献1、特許文献2等の円形平板型モノポールアンテナは、広帯域化・小型化が達成されるものの、指向性を可変することができなかった。すなわち、放射素子が非軸対象構造(非回転体)であるために、アンテナから放射される電波が水平面内で指向性をもつものの、用途に応じて所定方向に強い指向性をもたせたり指向性を変化させたりすることができなかった。そのため、空間による信号の多重化によって通信伝送容量を拡大することが難しかった。
【0009】
これに対して、従来の指向性可変アンテナは、空間による多重化を実現する可能性があるものの、情報端末や移動通信端末のアンテナとしては小型化が不充分であった。
【0010】
具体的に、特許文献3等の指向性可変アンテナは、放射素子の周囲を機械的に周回する反射素子を設けるためにアンテナの大きさが大きくなっていた。
特許文献4等の指向性可変アンテナは、中央駆動素子とパラスティック素子との間隔をλ/4程度とる必要があって、アンテナ全体の大きさは2λ以上になっていた(λは使用波長である。)。
特許文献5等の指向性可変アンテナは、給電アンテナ素子と無給電可変リアクタンス素子との間隔をλ/4程度とる必要があって、アンテナ全体の大きさはλ程度になっていた。
【0011】
このように、従来の指向性可変型アンテナは、指向性固定型アンテナに比べてその大きさが大きくなってしまうためにその用途が制限されていた。例えば、使用波長の周波数が数GHz以下と低い場合には、波長の長さが10cm以上となって、アンテナのわずかな寸法の増大が無線機器の利便性を著しく妨げることになっていた。したがって、従来の指向性可変アンテナを情報端末や移動通信端末のアンテナとして利用することは難しかった。
【0012】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、比較的簡易な構造で、小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の請求項1記載の発明にかかるアンテナは、同軸線路との接続部を介して当該同軸線路から給電されるアンテナであって、前記同軸線路に対して非軸対象に形成された放射素子と、前記接続部の位置で前記放射素子に対向する地板と、前記同軸線路に形成される電界分布を前記接続部又はその近傍で可変させる可変手段と、を備えたものである。
【0014】
また、請求項2記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1に記載の発明において、前記放射素子を、平板導体としたものである。
【0015】
また、請求項3記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1に記載の発明において、前記放射素子は、平板導体を折り曲げたもの又は湾曲させたものである。
【0016】
また、請求項4記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記平板導体は、その形状が三角形であってその頂点を前記接続部の側に配設したものである。
【0017】
また、請求項5記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記平板導体は、その形状を円形又は楕円形としたものである。
【0018】
また、請求項6記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の発明において、アンテナ外部から前記可変手段によって前記電界分布を可変させるように構成されたものである。
【0019】
また、請求項7記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、前記可変手段を、前記信号線と前記接地導体との間の一部を短絡する短絡手段としたものである。
【0020】
また、請求項8記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項7のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、前記可変手段を、前記信号線と前記接地導体との間に設けた導体板の一部を当該接地導体と短絡する短絡手段としたものである。
【0021】
また、請求項9記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体との間に比誘電率可変部材を備え、前記可変手段を、前記比誘電率可変部材の誘電率を一部変化させる手段としたものである。
【0022】
また、請求項10記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項9に記載の発明において、前記比誘電率可変部材は、液晶であって、前記可変手段は、前記液晶の誘電率を変化させる制御電極を備えたものである。
【0023】
また、請求項11記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項10のいずれかに記載の発明において、前記可変手段による前記電界分布の可変動作を切り替えるスイッチを備えたものである。
【0024】
また、請求項12記載の発明にかかるアンテナは、前記請求項1〜請求項11のいずれかに記載の発明において、前記同軸線路は、信号線と接地導体とによって形成される線路の径が前記接続部及びその近傍においてその他の部分よりも大きくなるように形成されたものである。
【0025】
また、この発明の請求項13記載の発明にかかる無線機器は、請求項1〜請求項12のいずれかに記載のアンテナを備えたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、非軸対象の放射素子を用いるとともに、同軸線路に形成される電界分布をアンテナとの接続部で可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0028】
実施の形態1.
図1〜図4にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1は、実施の形態1のアンテナ20を示す斜視図である。図2は、図1のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。
【0029】
図1及び図2に示すように、本実施の形態1のアンテナ20は、主として、放射素子1(平板導体)と、円板状の地板2(接地導体板)と、で構成されている。放射素子1及び地板2は、銅を主たる材料として形成された導体(表面のみ導体である場合も含む。)である。
【0030】
放射素子1は、同軸線路4(又はZ軸)に対して非軸対象に形成されている。詳しくは、放射素子1は、底辺が10mm、高さが9mmの二等辺三角形の平板導体である。そして、放射素子1は、その三角形の頂点が地板2側になるように配設されている。
【0031】
このように構成された放射素子1は、その形状が平板状であるために、アンテナ20の動作可能周波数を広域化することができる。また、放射素子1が非軸対象(非回転体)であることから、アンテナ20は水平面内で指向性をもつことができる。
【0032】
地板2は、同軸線路4との接続部の位置で放射素子1に対向するように、XY平面に平行に設置される。
アンテナ20は、同軸線路4(同軸ケーブル)に接続されていて、同軸線路4から給電される。同軸線路4は、信号線4aと、接地導体4bと、それらにより形成される線路4c(誘電体)と、からなる。
【0033】
ここで、地板2上であって、アンテナ20と同軸線路4との接続部には、2組のスイッチ5及び短絡線6がXY平面内の2方向にそれぞれ設置されている。詳しくは、短絡手段としての短絡線6は、一端が信号線4a(又は放射素子1)に接続されていて、他端がスイッチ5を介して接地導体4b(又は地板2)に接続されている。2つのスイッチ5は、PINダイオードであって、アンテナ外部から制御用電極(不図示である。)を用いて電気的にオン・オフ制御される。すなわち、同軸線路4の電界分布の可変動作が切り替えられる。このような構成によって、地板2面内の2方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。
【0034】
図3は、2つのスイッチ5をいずれもオフした場合の、アンテナ20の水平方向(XY面)における放射パターン(電解分布)を示す。図4は、一方のスイッチ5のみをオンした場合の、アンテナ20の水平方向における放射パターンを示す。
図3及び図4において、横軸はアンテナ10に対する水平方向の観測角度(単位は°である。)を示し、縦軸はゲイン(利得であり、単位はdBである。)を示す。また、図3及び図4において、角度0°及び角度±180°は、放射素子1に垂直な方向(Y方向)を示す。
【0035】
図3に示すように、2つのスイッチ5をいずれもオフした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることはなく、アンテナの放射パターンに変化は生じない。すなわち、X方向の双方向(±90°の位置である。)に、アンテナ20の指向性があらわれる。
これに対して、図4に示すように、一方のスイッチ5をオンした場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じて、アンテナの放射パターンに変化が生じる。すなわち、X方向の一方向(スイッチ5がオフ状態の+90°の位置である。)のみに、アンテナ20の指向性が強くあらわれる。また、図示は省略するが、オンするスイッチ5を切り替えた場合(他方のスイッチ5のみをオンした場合)には、X方向の他方向(−90°の位置である。)のみに、アンテナ20の指向性が強くあらわれる。
【0036】
このように、本実施の形態1のアンテナ20は、平板導体からなる放射素子1と地板2とからなる指向性アンテナに対して、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段5、6を設けることで、指向性可変型のアンテナとしたものである。しかも、オンするスイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に高速に切り替えることができる。
【0037】
なお、図示は省略するが、アンテナ20は、情報端末、移動通信端末等の無線機器に設置される。これにより、無線機器の送受信をおこなうためのアンテナ20が、広帯域化されアンテナ指向性が可変されるとともに、円形平板型モノポールアンテナ等の指向性固定型アンテナと同程度に小型化されることになる。すなわち、無線機器が小型化されるとともに、電波の送受信性能が向上する。したがって、本実施の形態1のアンテナ20は、特に携帯用の小型情報端末に対して有用なものとなる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態1では、非軸対象の放射素子1を用いるとともに、同軸線路4に形成される電界分布をアンテナ20との接続部で可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
【0039】
実施の形態2.
図5及び図6にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図5は、実施の形態2のアンテナ20を示す斜視図である。図6は、図5のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態2のアンテナ20は、放射素子1として円形の平板導体を用いている点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
【0040】
図5及び図6に示すように、本実施の形態2のアンテナ20は、主として、放射素子1と、円板状の地板2と、で構成されている。放射素子1及び地板2は、銅を主たる材料として形成された導体である。
【0041】
放射素子1は、同軸線路4(又はZ軸)に対して非軸対象に形成されている。詳しくは、放射素子1は、直径が9mmの円形の平板導体である。なお、放射素子1の形状は、円形に限定されることなく、楕円形にすることもできる。
【0042】
このように構成された放射素子1は、その形状が円形平板状であるために、アンテナ20の動作可能周波数を広域化することができる。また、放射素子1が非軸対象(非回転体)であることから、アンテナ20は水平面内で指向性をもつことができる。
【0043】
地板2は、同軸線路4との接続部の位置で放射素子1に対向するように、XY平面に平行に設置される。
アンテナ20は、同軸線路4に接続されていて、同軸線路4から給電される。同軸線路4は、信号線4aと、接地導体4bと、それらにより形成される線路4cと、からなる。
【0044】
ここで、地板2上であって、アンテナ20と同軸線路4との接続部には、前記実施の形態1と同様に、2組のスイッチ5及び短絡線6がXY平面内の2方向にそれぞれ設置されている。そして、2つのスイッチ5によって、同軸線路4の電界分布が可変される。
【0045】
このように、本実施の形態2のアンテナ20は、前記実施の形態1のものと同様に、円形平板導体からなる放射素子1と地板2とからなる指向性アンテナに対して、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段5、6を設けることで、指向性可変型のアンテナとしたものである。しかも、オンするスイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に高速に切り替えることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態2では、非軸対象の放射素子1を用いるとともに、同軸線路4に形成される電界分布をアンテナ20との接続部で可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
【0047】
実施の形態3.
図7及び図8にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図7は、実施の形態3のアンテナ20を示す斜視図である。図8は、図7のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態3のアンテナ20は、放射素子1として円形平板導体を折り曲げたものを用いている点と、短絡手段として信号線4aと接地導体4bとの間に設けた導体板8を用いている点と、が前記実施の形態2のものとは相違する。
【0048】
図7及び図8に示すように、本実施の形態3のアンテナ20は、主として、放射素子1と、円板状の地板2と、で構成されている。放射素子1及び地板2は、銅を主たる材料として形成された導体である。
【0049】
放射素子1は、同軸線路4に対して非軸対象に形成されている。詳しくは、放射素子1は、直径が9mmの円形の平板導体における中央部から上の部分を、XY面に平行になるように直角に折り曲げたものである。すなわち、放射素子1は、XZ面に平行な基部1aと、XY面に平行な折り曲げ部1bと、で構成されることになる。なお、折り曲げられる平板導体の形状は、円形に限定されることなく、楕円形や三角形にすることもできる。
【0050】
このように構成された放射素子1は、前記実施の形態2と同様に、アンテナ20の動作可能周波数を広域化することができるとともに、水平面内で指向性をもつことができる。さらに、本実施の形態3では、放射素子1の一部が折り曲げられているために、アンテナ20のZ方向の高さを低くすることができる。すなわち、本実施の形態3では、アンテナ20が低姿勢化されて、さらなる小型化が可能になる。
なお、放射素子1として、平板導体を湾曲させたもの(例えば、Z方向に波状に湾曲させたものである。)を用いた場合であっても、本実施の形態3と同様に、アンテナ20を低姿勢化することができる。
【0051】
ここで、地板2上であって、アンテナ20と同軸線路4との接続部には、2組のスイッチ5及び導体板8(浮遊導体板)がXY平面内の2方向にそれぞれ設置されている。詳しくは、短絡手段としての導体板8は、線路4c(誘電体)内にZ方向に埋め込まれていて、その一端がスイッチ5を介して接地導体4b(又は地板2)に接続されている。2つのスイッチ5は、MEMSスイッチであって、アンテナ外部から制御用電極(不図示である。)を用いて電気的にオン・オフ制御される。このような構成によって、前記実施の形態2と同様に、地板2面内の2方向に電気的に短絡をオン・オフすることができる。
【0052】
このように、本実施の形態3のアンテナ20は、前記実施の形態2のものと同様に、円形平板導体からなる放射素子1と地板2とからなる指向性アンテナに対して、同軸線路4に形成される電界分布を可変させる可変手段5、8を設けることで、指向性可変型のアンテナとしたものである。しかも、オンするスイッチ5の位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に高速に切り替えることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態3では、非軸対象の放射素子1を用いるとともに、同軸線路4に形成される電界分布をアンテナ20との接続部で可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
【0054】
実施の形態4.
図9及び図10にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図9は、実施の形態4のアンテナ20を示す斜視図である。図10は、図9のアンテナ20におけるXZ平面の断面図である。本実施の形態4のアンテナ20は、同軸線路4の電界分布を可変する可変手段として液晶11を用いている点と、同軸線路4の線路径を部分的に大きくしている点とが、前記実施の形態2のものとは相違する。
【0055】
図9及び図10に示すように、本実施の形態4のアンテナ20は、前記実施の形態2と同様に、円形平板導体からなる放射素子1と、放射素子1に対向するように配設された円板状の地板2と、で構成されている。アンテナ20は、同軸線路4に接続されていて、同軸線路4から給電される。
【0056】
ここで、同軸線路4は、信号線4aと接地導体4bとにより形成される線路4cの径(線路径)が、接続部及びその近傍で大きくなるように形成されている。すなわち、図10に示すように、同軸線路4には、接続部とその近傍に大径線路4c1が設けられて、それ以外の部分には小径線路4c2が設けられている。
このように構成された同軸線路4に接続されるアンテナ20は、動作周波数が低周波側に拡大されて、数GHz帯でも動作することが可能となる。
【0057】
ここで、アンテナ20と同軸線路4との接続部には、比誘電率可変部材としての液晶11と、液晶11の誘電率を変化させるための制御電極12と、が設置されている。
【0058】
詳しくは、液晶11は、信号線4aと接地導体4bとの間(大径線路4c1の位置である。)に埋め込まれている。液晶11は、その一端が信号線4aに接続され、他端が制御電極12を介して接地導体4b(又は地板2)に接続されている。このような構成によって、アンテナ外部から制御電極12を用いて液晶11における任意の部分の誘電率を変化させることができる。
【0059】
さらに詳しくは、液晶11における周方向のすべての部分の誘電率を変化させない場合には、同軸線路4の電界分布に乱れが生じることがなく、アンテナ20のもつ本来の放射パターンに変化は生じない。これに対して、液晶11における周方向の一部分の誘電率を変化させた場合には、同軸線路4内の電界分布に乱れが生じて、アンテナ20の放射パターンに変化が生じる。また、液晶11の誘電率を変化させる位置を切り替えることによって、アンテナ指向性を所望の方向に高速に切り替えることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態4では、非軸対象の放射素子1を用いるとともに、同軸線路4に形成される電界分布をアンテナ20との接続部で可変させてアンテナ指向性を変化させているので、比較的簡易な構造で小型化かつ広帯域化された指向性可変型のアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。特に、本実施の形態4では、同軸線路4に大径線路4c1を設けているので、数GHz帯でも動作可能なアンテナ及びそれを備えた無線機器を提供することができる。
【0061】
なお、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の実施の形態1におけるアンテナを示す斜視図である。
【図2】図1のアンテナを示す断面図である。
【図3】図1のアンテナから放射される電波の水平方向における指向性を示すグラフである。
【図4】図3において指向性を変化させた状態を示すグラフである。
【図5】この発明の実施の形態2におけるアンテナを示す斜視図である。
【図6】図3のアンテナを示す断面図である。
【図7】この発明の実施の形態3におけるアンテナを示す斜視図である。
【図8】図5のアンテナを示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4におけるアンテナを示す斜視図である。
【図10】図7のアンテナを示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 放射素子、
1a 基部、 1b 折り曲げ部、
2 地板、
4 同軸線路、
4a 信号線、 4b 接地導体、 4c 線路(誘電体)、
4c1 大径線路、 4c2 小径線路、
5 スイッチ、
6 短絡線、
8 導体板、
11 液晶部(比誘電率可変部材)、
12 制御電極、
20 アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸線路との接続部を介して当該同軸線路から給電されるアンテナであって、
前記同軸線路に対して非軸対象に形成された放射素子と、
前記接続部の位置で前記放射素子に対向する地板と、
前記同軸線路に形成される電界分布を前記接続部又はその近傍で可変させる可変手段と、
を備えたことを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記放射素子は、平板導体であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記放射素子は、平板導体を折り曲げたもの又は湾曲させたものであることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記平板導体は、その形状が三角形であってその頂点を前記接続部の側に配設したことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記平板導体は、その形状が円形又は楕円形であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のアンテナ。
【請求項6】
アンテナ外部から前記可変手段によって前記電界分布を可変させるように構成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、
前記可変手段は、前記信号線と前記接地導体との間の一部を短絡する短絡手段であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
前記同軸線路は、信号線と接地導体とを備え、
前記可変手段は、前記信号線と前記接地導体との間に設けた導体板の一部を当該接地導体と短絡する短絡手段であることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記同軸線路は、信号線と接地導体との間に比誘電率可変部材を備え、
前記可変手段は、前記比誘電率可変部材の誘電率を一部変化させる手段であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記比誘電率可変部材は、液晶であって、
前記可変手段は、前記液晶の誘電率を変化させる制御電極を備えたことを特徴とする請求項9に記載のアンテナ。
【請求項11】
前記可変手段による前記電界分布の可変動作を切り替えるスイッチを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記同軸線路は、信号線と接地導体とによって形成される線路の径が前記接続部及びその近傍においてその他の部分よりも大きくなるように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載のアンテナを備えたことを特徴とする無線機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−109043(P2006−109043A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292296(P2004−292296)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】