説明

アンテナ支持装置

【課題】本発明は、所望のアンテナを支持しつつ、そのアンテナの開口面の方向および偏波角の設定と調整とを可能とするアンテナ支持装置に関し、構成が複雑化することなく、アンテナの方向および偏波角の設定を簡便に実現し、かつ維持できることを目的とする。
【解決手段】アンテナの開口面の方向の設定に供される第一の回転機構と、前記第一の回転機構に取り付けられ、かつ前記アンテナの偏波角の設定に供される第二の回転機構とを備え、前記第二の回転機構は、前記第二の回転機構上にない仮想的な軸を中心として前記開口面の回動を案内する案内部材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のアンテナを支持しつつ、そのアンテナの開口面の方向および偏波角の設定と調整とを可能とするアンテナ支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静止軌道上にある通信衛星を介して通信路を形成する可搬型の地球局装置には、アンテナの方向および偏波角の設定に供される2つの回転機構を有し、先行して設定されたこれらの方向および偏波角の保持および復元を可能とする折りたたみ可能なアンテナ支持装置が用いられる。
【0003】
図2は、従来のアンテナ支持装置の構成例を示す図である。
図において、平面アンテナ20の開口面の背面には、略扇状の偏波角可変機構40が取り付けられ、その偏波角可変機構40の両端にはそれぞれ蝶番51-1、51-2が突設される。これらの蝶番51-1、51-2には板状のアングル部材52が架設され、そのアングル部材52の中央には方位角軸43が垂直に突設される。上記平面アンテナ20の開口面の背面の内、既述の偏波角可変機構40の外側壁の中央部の近傍には、仰角軸受け機構60が立設される。アングル部材52の頂部の内、上記方位角軸43の一端が突設された部位の近傍には、仰角軸脱着機構70が立設される。
【0004】
なお、平面アンテナ20の開口面の背面には、既述の要素に併せて、所定の雑音指数の確保のために、平面アンテナ20の給電点(図示されない。)に接続されたLNA20a等が取り付けられる。
【0005】
一方、直方体の台座80の側壁には、環状に形成された筒体からなるフレーム部材81が周設される。そのフレーム部材81の側壁の内、所定の3カ所には、台座80の側壁に並行にネジ孔が形成され、これらのネジ孔には、水平調整脚82-1〜82-3がそれぞれ螺合する。これらの水平調節脚82-1〜82-3の底部には、板状の脚板83-1〜83-3がそれぞれ衝止される。
【0006】
偏波角可変機構40は、図2および図3に示すように、以下の要素から構成される。
(1) 形状が略扇状であり、かつ平面アンテナ20の開口面の背面に固着された底板41b
(2) その底板41bと寸法および形状がほぼ同じである頂板41t
(3) 頂板41tの頂部にある扇状の領域の中心に形成された軸孔42
【0007】
(4) 上記軸孔42の中心部に対向する底板41b上の箇所に形成された軸ネジ孔43
(5) 軸孔42から一定の距離隔たった円弧状の領域に隣接して形成された3つのガイド孔44-1、44-2、44-3
【0008】
(6) 底板32bと頂板32tとが重なる面積が最大である状態(以下、「ホームポジション」という。)において、ガイド孔44-1、44-2の中央部をそれぞれ貫通し、かつ先端部が底板32bに対して螺合により突設されたガイドピン45-1、45-2
【0009】
(7) ホームポジションにおいて、ガイド孔44-3の中央部を貫通し、かつ先端部が底板32bに螺合することにより、底板32bと頂板32tとの間の相対的な位置の固定に供される固定ネジ46
(8) 軸孔42に挿通され、かつ先端部が軸ネジ孔43に螺合するガイドピン45-3
【0010】
仰角軸受け機構60は、図2に示すように、以下の要素から構成される。
(1) 既述のガイド孔44-2の中央部の上方に架設された架設ピン61
(2) 上記架設ピン61に吊着され、かつ仰角軸71の先端部を軸支する軸受け62
【0011】
なお、軸孔42に対する上記ガイド孔44-1、44-2、44-3のそれぞれの視角は、平面アンテナ20の偏波角が可変されるべき最大の角度(=42°)に予め設定される。
【0012】
仰角軸脱着機構70は、図2に示すように、以下の要素から構成される。
(1) 一端が既述の仰角軸受け機構60に軸支され、かつ側壁にオスネジが形成された仰角軸71
【0013】
(2) 仰角軸71の側壁に螺合し,その仰角軸71の軸に垂直な方向における断面形状が正方形であって、仰角軸脱着機構70の本体に脱着可能であるナット72
(3) 仰角軸71の他端に螺合(あるいは勘合)したつまみ部材73
【0014】
このような構成のアンテナ支持装置では、平面アンテナ20、偏波角可変機構40および仰角軸受け機構60は、仰角軸71に螺合するナット72と仰角軸脱着機構70の本体との係合(嵌合)が解除された状態で蝶番41-1、41-2が回動することにより折りたたまれ、台座80の頂部に重ねられた状態で所望の地点(地球局が設置されるべき地点)に運搬される。
【0015】
このような所望の地点では、アンテナ支持装置は、操作者が行う以下の作業の下で、静止軌道上にある通信衛星の捕捉に供される。
(1) 水平調整脚82-1〜82-3がそれぞれフレーム部材81に螺合する位置が調整されることにより、このような所望の地点に台座80が水平に設置される。
【0016】
(2) 蝶番41-1、41-2の屈曲角が広げられ、かつ仰角軸71に螺合するナット72が仰角軸脱着機構70の本体に係合(嵌合)することにより、平面アンテナ20、偏波角可変機構40および仰角軸受け機構60の台座80に対する折りたたみが解除される。
【0017】
(3) 方位軸53を中心として平面アンテナ20、偏波角可変機構40および仰角軸受け機構60が回転することにより、平面アンテナ20の開口面の方向が所望の静止衛星の方向に設定される。
【0018】
(4) 仰角軸71が回転することにより、偏波角可変機構40、仰角軸受け機構60、蝶番41-1、41-2およびアングル部材52を介して、平面アンテナ20の開口面が台座80の頂部に対してなす角度が上記静止衛星の方向の仰角に設定される。
【0019】
(5) 固定ネジ46による底板41bと頂板41tとの間の碇止が解除され、これらの底板41bと頂板41tとが軸孔42に対してなす角度が所定の値に設定された後、固定ネジ46により上記碇止が図られることにより、既述の所望の静止衛星に対する平面アンテナ20の偏波角の整合が図られる。なお、このような偏波角の調整および設定の過程では、「ガイドピン45-1、45-2および固定ネジ46」と「ガイド孔44-1、44-1、44-3」とは、前者のそれぞれの外側壁が後者の内側壁に摺動する。
【0020】
また、平面アンテナ20を介する所望の静止衛星との間における無線伝送が完了した後には、平面アンテナ20、偏波角可変機構40および仰角軸受け機構60は、仰角軸脱着機構70の本体に対するナット72の係合(嵌合)が解除された状態で蝶番41-1、41-2が回動することにより折りたたまれ、台座80の頂部に重ねられる。
【0021】
このような状態では、平面アンテナ20の開口面の仰角と偏波角とは、それぞれ仰角軸71上におけるナット72の位置と、固定ネジ46によって維持される底板41bと頂板41tとの相対的な位置として保全される。
【0022】
したがって、このようなアンテナ支持装置が上記所望の地点に再び設置される場合には、平面アンテナ20の開口面の仰角および偏波角が再調整されなくても、方位角のみが再度設定(再調整)されることにより、同じ静止衛星との間に効率的かつ簡便に無線伝送路が形成される。
【0023】
なお、本発明に関連する先行技術としては、以下に列記するように特許文献1および特許文献2があった。
【0024】
(1) 「脚部と、前記脚部に支持される制御装置と、展開機構を介して前記制御装置に連結され、且つ前記展開機構により前記制御装置の上方に展開自在な平面アンテナと、前記平面アンテナに接続された送受信装置とを有し、前記制御装置と前記平面アンテナと前記送受信装置とは一体的に構成されている」ことにより、「各部品を分解することなく収容及び展開が可能であり且つ迅速に仰角、方位角及び偏波角の調整が可能となる」点に特徴がある可搬型アンテナ装置…特許文献1
【0025】
(2) 「衛星との間で電波を送受信する可搬型の地球局装置であって、送受信回路を収容した本体部と、平面アンテナと、前記平面アンテナのアンテナ面に垂直な軸を回転軸とする回転方向に前記平面アンテナが所定の回転角範囲内において回転可能なように、前記平面アンテナを前記本体部に連結する連結部材とを有する」ことにより、「アンテナの方位、仰角の調整および、平面アンテナの回転角を、通信衛星の電波の偏波角と整合する調整を簡易に行うことのできる」点に特徴がある地球局装置…特許文献2
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2005−333234号公報
【特許文献2】特開平8−250919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
ところで、上述した従来例では、平面アンテナ20の開口面の偏波角は、その開口面の仰角および方位角と共に、機械的に調整可能であり、しかも、既述の軸孔42がその平面アンテナ20の背面に形成されていた。
【0028】
このような軸孔42は、静止衛星との整合のために可変されるべき偏波角の範囲(±21°以下)が上記仰角および方位角の如何にかかわらず確保されるためには、台座80の頂部の高さより十分に高く位置しなければならなかった。
【0029】
すなわち、従来例では、例えば、蝶番41-1、41-2の寸法や方位軸53の長さだけではなく、これらの蝶番41-1、41-2、方位軸53およびアングル部材52の剛性と重量との何れもが十分な余裕度をもって大きく設定されなければならなかった。
【0030】
したがって、従来のアンテナ支持装置では、特に、可搬のために要求される小型化、軽量化および低廉化が十分には達成されていなかった。
【0031】
本発明は、構成が複雑化することなく、アンテナの方向および偏波角の設定を簡便に実現し、かつ維持できるアンテナ支持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
請求項1に記載の発明では、第一の回転機構は、アンテナの開口面の方向の設定に供される。第二の回転機構は、前記第一の回転機構に取り付けられ、かつ前記アンテナの偏波角の設定に供される。前記第二の回転機構は、前記第二の回転機構上にない仮想的な軸を中心として前記開口面の回動を案内する案内部材を有する。
【0033】
すなわち、アンテナの偏波角の設定に供される第二の回転機構は、このような偏波角の設定のために行われるべきそのアンテナの開口面の回動の中心となる軸を含むことなく構成される。
【0034】
請求項2に記載の発明では、第一の回転機構は、アンテナの開口面の方向の設定に供される。第二の回転機構は、前記アンテナに取り付けられ、かつ前記アンテナの偏波角の設定に供される。前記第二の回転機構は、前記第二の回転機構上にない仮想的な軸を中心として前記第二の回転機構の回動を案内する案内部材を有する。
【0035】
すなわち、アンテナの偏波角の設定に供される第二の回転機構は、このような偏波角の設定のために行われるべきそのアンテナの開口面の回動の中心となる軸を含むことなく構成される。
【0036】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のアンテナ支持装置において、前記第一の回転機構は、前記アンテナに一体に構成される。
【0037】
すなわち、アンテナの開口面の方向の設定は、第二の回転機構が介在することなくアンテナに一体化された第一の回転機構によって実現される。
【0038】
請求項4に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のアンテナ支持装置において、前記第二の回転機構は、前記アンテナに一体に構成される。
【0039】
すなわち、アンテナの開口面の方向の設定は、第一の回転機構が介在することなくアンテナに一体化された第二の回転機構によって実現される。
【0040】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、前記第一の回転機構は、前記アンテナの開口面の仰角の設定に供されるネジと、前記ネジの軸受けと、前記ネジに螺合して前記仰角に応じて前記軸受けとの距離が変化する受けネジとを有する。前記軸受けは、前記第一の回転機構に具設される。前記受けネジは、前記第一の回転機構に着脱可能に構成される。
【0041】
すなわち、アンテナの開口面の仰角が変更される過程で本発明に係るアンテナ支持装置が変形され、あるいは分解された場合であっても、この仰角は、上記受けネジと軸受けとの距離として保持され、その変形が解消されたときには、第一の回転機構に対するその受けネジの着設によって復元される。
【発明の効果】
【0042】
このように本発明によれば、第二の回転機構は、その第二の回転機構上に既述の軸が物理的に存在する場合に比べて、小型化され、かつ軽量化される。
【0043】
また、本発明では、アンテナの開口面の方向と偏波角とは、これらの方向と偏波角とを示す座標系が互いに直交するならば、第一の回転機構と第二の回転機構との物理的な配置関係の如何にかかわらず柔軟に設定可能となる。
【0044】
さらに、本発明に係るアンテナ支持装置は、折りたたみ等の柔軟な変形が可能となり、しかも、このような変形が解消された後に仰角を再度設定する作業の省略が可能となる。
【0045】
したがって、本発明によれば、コストの増加と構成の複雑化とを伴うことなく、多様な地点において所望の方向に対する無線伝送路の形成が安価に実現される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】従来のアンテナ支持装置の構成例を示す図である。
【図3】従来例における偏波角可変機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
以下では、図2に示すものと機能および構成が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
【0048】
本実施形態と図2に示す従来例との構成の相違点は、偏波角可変機構40に代えて偏波角可変機構10が備えられた点にある。
【0049】
偏波角可変機構10は、図2に示すように、以下の要素から構成される。
(1) 図3に示す底板41bに代えて備えられた底板11b
(2) 図3に示す頂板41tに代えて備えられた頂板11t
【0050】
(3) 底板11bおよび頂板11tの何れの上にも位置せず、さらに、図2に示す従来例における軸ネジ孔43に相当する仮想的な軸(以下、「仮想軸」という。)に対して、その底板11b上の仮想的な中心線上でこの底板11b上で所定の距離r1隔たった箇所に形成されたネジ孔12
【0051】
(4) 上記仮想軸に対して、底板11b上で所定の距離r2(>r1)隔たり、かつ上述した仮想的な中心線に対象に同じ角度隔たった2カ所に箇所に形成されたネジ孔13-1、13-2
(5) 上記仮想軸に対して、底板11b上で所定の距離r3(>r2)隔たり、かつ上述した仮想的な中心線上に形成されたネジ孔14
【0052】
(4) 上記仮想軸に対して、頂板11t上の仮想的な中心線上でその頂板11t上で所定の距離r1隔たった箇所に対称な弧として形成されたガイド孔15
(5) 上記仮想軸に対して、頂板11t上で所定の距離r2(>r1)隔たり、かつ上述した仮想的な中心線に対称な2カ所に箇所にそれぞれ弧として形成されたガイド孔16-1、16-2
【0053】
(6) 上記仮想軸に対して、頂板11t上で所定の距離r3(>r2)隔たり、かつ上述した仮想的な中心線上に対称に弧として形成されたガイド孔17
(7) ガイド孔15、16-1、16-2をそれぞれ貫通し、かつ先端部がそれぞれネジ孔12、13-1、13-2に螺合することにより突設されたガイドピン18、19-1、19-2
【0054】
(8) ガイド孔17を貫通し、かつ先端部がそれぞれネジ孔14に螺合することにより、底板11bと頂板11tとの間の相対的な位置の固定に供される固定ネジ30
【0055】
このような構成のアンテナ支持装置では、平面アンテナ20の偏波角は、以下の通りに設定され、かつ固定される。なお、以下では、偏波角可変機構40に代えて偏波角可変機構10が備えられていることを前提とし、このような偏波角可変機構10およびその構成要素以外の要素については、図2を参照して記載する。
(1) 固定ネジ46による底板11bと頂板11tとの間の碇止が解除される。
【0056】
(2) ガイドピン18、19-1、19-2および固定ネジ30は、その外側壁がガイド孔15、16-1、16-2、17の内側壁にそれぞれ摺動する案内部材として機能し、このような案内の下で、底板11bと頂板11tとが既述の仮想軸に対してなす角度が可変され、かつ固定ネジ30により上記碇止が図られることにより、既述の所望の静止衛星に対して平面アンテナ20の偏波角の整合が図られる。
【0057】
なお、本実施形態では、以下に列記する過程における各部の動作は、図2に示す従来例と同じであるので、ここでは、その説明を省略する。
(1) 平面アンテナ20が台座80の頂部に折りたたまれ、かつ重ねられて所望の地点に運搬される過程
【0058】
(2) このような所望の地点において静止軌道上にある所望の通信衛星の捕捉のために行われる台座80の設置、既述の折りたたみの解除、平面アンテナ20の開口面の方位角および仰角の設定
【0059】
(3) 平面アンテナ20を介する所望の静止衛星との間における無線伝送が完了した後における台座80の頂部に対する平面アンテナ20の折りたたみ
(4) このような折りたたみの過程における平面アンテナの開口面の仰角および偏波角との保持
【0060】
すなわち、既述の仮想軸は、図3に示す軸孔42のように物理的な部材としては備えられないにもかかわらず、ガイドピン18、19-1、19-2に併せて固定ネジ30がそれぞれガイド孔15、16-1、16-2、17と共にその軸孔42に代わる案内として機能することにより、平面アンテナ20の開口面の偏波角が所望の範囲に亘って自在に可変可能となる。
【0061】
したがって、このような偏波角の可変を実現する機構の基盤となる底板11bおよび頂板11tが平面アンテナ20の開口面の背面で占有する面積は、従来例より大幅に縮小可能となる。
【0062】
このように本実施形態によれば、平面アンテナ20の開口部の方位角、仰角および偏波角の所望の範囲における設定および変更と、これらの仰角および偏波角の保持との何れもが阻まれることなく、このような偏波角の設定のために確保されるべき台座80とその平面アンテナ20との間の距離の縮小が可能となる。
【0063】
したがって、本発明が適用されたアンテナ支持装置は、従来例に比べて性能や利便性が損なわれることなく、小型化、軽量化および低廉化が図られる。
【0064】
なお、本実施形態では、平面アンテナ20の方位角、仰角および偏波角の何れについても、設定、調整および固定(保持)は、手動に限らず、これらの角を可変するサーボ系等の駆動系によって行われてもよい。
【0065】
また、これらの方位角、仰角および偏波角の何れの固定(保持)も、固定ネジ46等のように螺合による関連する部材の固定に限らず、このような関連する部材の締結や拘止を実現する如何なる機構によって実現されてもよい。
【0066】
さらに、方位角は、以下の何れの形態で固定(保持)されてもよい。
(1) フレーム部材81(または台座80)に対する方位軸53の旋回角を固定する機構による固定(保持)
(2) 方位角の可変を実現する駆動系によって直接行われる固定(保持)
【0067】
また、本実施形態では、平面アンテナ20の開口面の仰角は、既述の折りたたまれた状態には、仰角軸71に螺合するナット72とその仰角軸71の先端に配置された軸受け62との距離として保持されている。
【0068】
しかし、このような仰角は、上記軸受け62とナット72とが入れ替えられて構成されることによって同様に保持されてもよい。
【0069】
さらに、上記仰角の保持は、ナット72が仰角軸脱着機構70に固定されたまま、仰角軸受け機構60(または架設ピン61)に対する軸受け62の係合が解除されることによって実現されてもよい。
【0070】
また、平面アンテナ20の開口面の方向の設定や調整は、方位角と仰角との何れか一方のみについて行われてもよい。
【0071】
さらに、平面アンテナ20の開口面の方向は、既述の方位角と仰角との組み合わせに限定されず、如何なる座標系の下で設定されてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、偏波角の可変可能な範囲は、国内における既存の静止衛星(から到来し得る受信波)に適合すべき偏波の形態に基づいて±21°に設定されている。
【0073】
しかし、このような範囲は、本発明に係るアンテナ支持装置が設置され得る地域や国における所望の静止衛星に適合するならば、如何なるものであってもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、既述の折りたたまれた状態では、仰角と偏波角との何れもが保持され、復元可能となっている。
【0075】
しかし、このような保持および復元の対象は、仰角と偏波角との何れか一方のみであってもよく、あるいは仰角、偏波角および方位角の全てであってもよい。なお、このような方位角の保持や復元は、例えば、方位角軸43の軸受け(図示されない。)に対するその方位角軸43の回動(旋回)を規制可能な如何なる機構によって実現されてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、既述の設定・調整・保持の対象は、平面アンテナ20に限定されず、所望の通信衛星や放送衛星との間に無線伝送路を形成するために供される多様なアンテナの開口面の方位角、仰角および偏波角であってもよい。
【0077】
さらに、本発明は、小型の平面アンテナ20を支持する可搬型のアンテナ支持装置に限定されず、既述の折りたたみ、小型化、軽量化、低廉化の何れかが達成されるべき多様なアンテナを支持するアンテナ支持装置にも、同様に適用可能である。
【0078】
また、本発明は、静止軌道上にある静止衛星に限らず、低軌道を周回する多様な人工衛星との間に無線伝送路を形成するアンテナの支持にも同様に適用可能である。
【0079】
さらに、本発明は、このような無線伝送路は、放送用の無線伝送路に限らず、多様な形態の衛星通信のために形成される無線伝送路であってもよい。
【0080】
また、本発明では、このような無線伝送路を介して伝送される無線信号の変調方式、多元接続方式、チャネル構成だけではなく、その無線信号として伝送される情報やコンテンツの内容および形式は、如何なるものであってもよい。
【0081】
さらに、本発明は、台座80、フレーム部材81および水平調整脚82-1〜82-3の何れも、必須の構成要素ではなく、これらは、例えば、本発明に係るアンテナ支持装置によって支持されるアンテナが設置される地点に予め既存の設備として設けられ、あるいは適宜配置されてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、底板11bと頂板11tとは、共に形状が略扇下であって寸法が同じとなっている。
しかし、これらの底板11bおよび頂板11tは、所望の範囲における偏波角の調整が既述の仮想軸を中心とする両者の相対的な位置の案内が実現されるならば、如何なる形状および寸法の部材として構成されてもよい。
【0083】
さらに、本実施形態では、底板11bは、平面アンテナ20の開口面の背面に一体に形成されてもよく、かつガイドピン18、19-1、19-2は、平面アンテナ20の開口面の背面に直接突設されてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、平面アンテナ20の開口面の背面に重ねられる底板11bと頂板11tとの順序が反対に設定されてもよく、この場合には、頂板11tが平面アンテナ20の開口面の背面に一体化されて構成されてもよい。
【0085】
さらに、本実施形態では、ガイドピン18、19-1、19-2およびガイド孔15、16-1、16-2は、例えば、既述の仮想軸を中心として底板11bと頂板11tとが互いに回動する軌道を摺動や遊嵌によって与える案内の機能を果たす如何なる機構で代替されてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、平面アンテナ20が設置される地点で所望の衛星との間に形成ささるべき無線伝送路の偏波角を手動で設定するための基準として、例えば、図1および図2に点線で示すように、頂板11t上に仮想軸の方向に一旦が向いている直線状のポインタ11pが備えられ、さらに、頂板11tの外縁部の近傍に配置され、このポインタ11pの他端の位置として偏波角(頂板11tの旋回角)を示す目盛りが予め刻まれたゲージ11gが備えられてもよい。
【0087】
さらに、本実施形態は、以下に列記する形態の任意の組み合わせにより分解可能に構成されてもよい。
(1) 頂板11tと頂番51-1、51-2との間における締結や係合の解除および復元が可能である。
【0088】
(2) 頂番51-1、51-2とアングル部材52との間における締結や係合の解除および復元が解除可能である。
(3) アングル部材52と方位軸53との間における突設等の解除および復元が可能である。
(4) フレーム部材81による方位軸53の軸受けの解除および復元が可能である。
【0089】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の範囲において多様な実施形態の構成が可能であり、構成要素の全てまたは一部に如何なる改良が施されてもよい。
【0090】
以下、本願に開示された発明の内、「特許請求の範囲」に記載しなかった発明を「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段」の欄の記載に準じた様式により列記する。
【0091】
[請求項6] 請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構は、
前記アンテナの開口面の仰角の設定に供されるネジと、
前記ネジの軸受けと、
前記ネジに螺合して前記仰角に応じて前記軸受けとの距離が変化する受けネジと
を有し、
前記軸受けは、
前記第一の回転機構に着脱可能に構成され、
前記受けネジは、
前記第一の回転機構に具設された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0092】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、前記第一の回転機構は、前記アンテナの開口面の仰角の設定に供されるネジと、前記ネジの軸受けと、前記ネジに螺合して前記仰角に応じて前記軸受けとの距離が変化する受けネジとを有する。前記軸受けは、前記第一の回転機構に着脱可能に構成される。前記受けネジは、前記第一の回転機構に具設される。
【0093】
すなわち、アンテナの開口面の仰角が変更される過程で本発明に係るアンテナ支持装置が変形された場合であっても、この仰角は、上記受けネジと軸受けとの距離として保持され、その変形が解消されたときには、第一の回転機構に対するその軸受けの着設によって復元される。
【0094】
したがって、折りたたみ等の柔軟な変形が可能となり、しかも、このような変形が解消された後に仰角を再度設定する作業の省略が可能となる。
【0095】
[請求項7] 請求項5または請求項6に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構と前記第二の回転機構との一方は他方に支承された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0096】
このような構成のアンテナ支持装置では、第一の回転機構と第二の回転機構とは、一方が他方に対して取り外し可能に支持される。
【0097】
すなわち、本発明に係るアンテナ支持装置は、所望の地点における無線伝送路の確保のために必要な運搬や設営の利便性が高められる。
【0098】
したがって、無線伝送路の確保に要求される物理的な寸法、重量および形状にかかわる制約の柔軟な緩和が可能となる。
【0099】
[請求項8] 請求項5または請求項6に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構と前記第二の回転機構とは、
一方が他方に折りたたみ可能に構成された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0100】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項5または請求項6に記載のアンテナ支持装置において、前記第一の回転機構と前記第二の回転機構とは、一方が他方に折りたたみ可能に構成される。
【0101】
すなわち、本発明に係るアンテナ支持装置は、所望の地点における無線伝送路の確保のために必要な運搬や設営の利便性が高められる。
したがって、無線伝送路の確保に要求される物理的な寸法、重量および形状にかかわる制約の柔軟な緩和が可能となる。
[請求項9] 請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構は、
前記開口面の方向の固定に供される止めを有する
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0102】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項1ないし請求項8の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、前記第一の回転機構は、前記開口面の方向の固定に供される止めを有する。
【0103】
すなわち、本発明にアンテナ支持装置では、第一の回転機構によって設定された開口面の方向は、所望の地点における無線伝送の確保のために行われる運搬や設営の過程で分解や組み立てが行われ、あるいは外部から何らかの力が加えられても、安定に維持される。
【0104】
したがって、アンテナの開口面の方法は、一旦設定された後、確度高く再利用可能となる。
【0105】
[請求項10] 請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記第二の回転機構は、
前記仮想的な軸を中心とする回動の規制に供される止めを有する
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0106】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項1ないし請求項9の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、前記第二の回転機構は、前記仮想的な軸を中心とする回動の規制に供される止めを有する。
【0107】
すなわち、本発明にアンテナ支持装置では、第二の回転機構によって設定されたアンテナの開口面の偏波角は、所望の地点における無線伝送の確保のために行われる運搬や設営の過程で分解や組み立てが行われ、あるいは外部から何らかの力が加えられても、安定に維持される。
【0108】
したがって、アンテナの開口面の偏波角は、一旦設定された後、確度高く再利用可能となる。
【0109】
[請求項11] 請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記アンテナの開口面の方向は、
前記開口面の方位角と仰角との双方または何れか一方として設定される
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0110】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項1ないし請求項10の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、前記アンテナの開口面の方向は、前記開口面の方位角と仰角との双方または何れか一方として設定される。
【0111】
すなわち、アンテナの開口面の方向の設定は、方位角と仰角との内、設定と対象となり得るものに限って対象となる。
【0112】
したがって、アンテナの開口面の方向の設定が可能であるべき形態に対する構成の最適化に併せて、価格性能比の向上が図られる。
【0113】
[請求項12] 請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記アンテナの偏波角を前記開口面の回動に応じて指し示す指示部材を備えた
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【0114】
このような構成のアンテナ支持装置では、請求項1ないし請求項11の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、指示部材は、前記アンテナの偏波角を前記開口面の回動に応じて指し示す。
【0115】
すなわち、第二の回転機構を介して設定されるアンテナの偏波角は、上記支持部材で指し示されるため、所望の値への設定が効率化される。
【0116】
したがって、操作性が向上し、所望の地点における無線伝送路の形成が円滑に実現可能となる。
【符号の説明】
【0117】
10,40 偏波角可変機構
11b,41b 底板
11g ゲージ
11p ポインタ
11t,41t 頂板
12,13,14 ネジ孔
15,16,17,44 ガイド孔
18,19,45 ガイドピン
20 平面アンテナ
20a LNA
30,46 固定ネジ
42 軸孔
43 軸ネジ孔
51 頂番
52 アングル部材
53 方位軸
60 仰角軸受け機構
61 架設ピン
62 軸受け
70 仰角軸脱着機構
71 仰角軸
72 ナット
73 つまみ部材
74 方位軸受け
80 台座
81 フレーム部材
82 水平調節脚
83 脚板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの開口面の方向の設定に供される第一の回転機構と、
前記第一の回転機構に取り付けられ、かつ前記アンテナの偏波角の設定に供される第二の回転機構とを備え、
前記第二の回転機構は、
前記第二の回転機構上にない仮想的な軸を中心として前記開口面の回動を案内する案内部材を有する
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項2】
アンテナの開口面の方向の設定に供される第一の回転機構と、
前記アンテナに取り付けられ、かつ前記アンテナの偏波角の設定に供される第二の回転機構とを備え、
前記第二の回転機構は、
前記第二の回転機構上にない仮想的な軸を中心として前記第二の回転機構の回動を案内する案内部材を有する
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構は、
前記アンテナに一体に構成された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のアンテナ支持装置において、
前記第二の回転機構は、
前記アンテナに一体に構成された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載のアンテナ支持装置において、
前記第一の回転機構は、
前記アンテナの開口面の仰角の設定に供されるネジと、
前記ネジの軸受けと、
前記ネジに螺合して前記仰角に応じて前記軸受けとの距離が変化する受けネジと
を有し、
前記軸受けは、
前記第一の回転機構に具設され、
前記受けネジは、
前記第一の回転機構に着脱可能に構成された
ことを特徴とするアンテナ支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−95244(P2012−95244A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242892(P2010−242892)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】