説明

アンテナ構造体およびアレイアンテナ

【課題】 比較的周波数が高い高周波信号を用いる場合にアンテナ特性を向上させることが可能なアンテナ構造体およびアレイアンテナを提供する。
【解決手段】 アンテナ構造体1は、誘電体基板2、表面導体層3、貫通導体4、内部導体層5、給電スロット層6および給電線路7を備える。表面導体層3は、一対の帯状導体3aと帯状導体3aの両端部同士を接続する一対の接続導体3bとからなり、帯状導体3aと接続導体3bとによって矩形状の開口3cが規定される。帯状導体3aは、送受信する高周波信号の磁界(H)方向に平行に延び、電界(E)方向の長さ、すなわち幅寸法Waが、送受信する高周波信号の自由空間波長の1/2未満である。幅寸法Waを送受信する高周波信号の自由空間波長の1/2未満とすることで、送受信する高周波信号の進行方向の利得(ゲイン)の低下を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波、ミリ波を用いた通信システムおよびレーダーシステムに用いられるアンテナ構造体およびアレイアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化時代を迎え、情報伝達に用いられる電波の周波数は、1GHz〜30GHzのマイクロ波領域から、さらに30GHz〜300GHzのミリ波領域まで活用することが検討されており、たとえば、周波数が60GHzの電波を用いた家庭内高速無線伝送システム(無線PAN:Personal Area Network)のような応用システムも提案されるようになっている。
【0003】
このような応用システムにおいて、特に周波数が60GHzなどと高くなると、電波の減衰が大きくなり、また指向性も生じてくる。そのため、無線通信システムにおいて、電波を放射するアンテナ素子の特性改善が必要となる。たとえば、アンテナ素子を平面方向に多数配列したアレイ状にすることで、アンテナの利得を稼いでより遠方に電波が伝播するようにしたアレイアンテナや、さらにアレイ状にしたアンテナに入力する信号の位相を変化させることで、機械的な機構を用いずに走査することが可能で、放射パターンに指向性がある場合でも、広い領域で伝搬が可能であるフェーズドアレーアンテナが実用化されている。
【0004】
また、周波数が60GHzの電波を用いた無線PANにおいては、ハイビジョン動画といった大容量のデータを伝送するために、広い周波数帯域を用いた通信が検討されており、その実現のために、アンテナにおいても広帯域特性が要求されている。
【0005】
広帯域特性を有するアンテナとして、特許文献1のような誘電体共振器アンテナが検討されている。
【0006】
特許文献1記載の誘電体共振器アンテナにおいては、送信の際、高周波回路21からの高周波信号がスロット9を介して空間(誘電体)共振器部8に入力され、開口部4から電波が放射される。誘電体共振器8が、高周波回路21およびスロット9と、開口部4の上の空間との(インピーダンス)整合器として働き、高周波信号の空間への放射が良好となり、周波数特性が広帯域となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−239017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、放射する高周波信号の周波数が60GHzなど高くなると、特許文献1記載の開口面アンテナでは、上部主導体層3の影響により、アンテナから放射される高周波信号の利得が低下するなどアンテナ特性が劣化してしまう。
【0009】
本発明の目的は、比較的周波数が高い高周波信号を用いる場合にアンテナ特性を向上させることが可能なアンテナ構造体およびアレイアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の誘電体層からなる誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方主面に設けられる、高周波信号を送受信するための矩形状の開口が形成された表面導体層であって、送受信する前記高周波信号の磁界方向に平行に延び、電界方向長さである幅寸法が、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/2未満である一対の帯状導体と、前記一対の帯状導体の近接する端部同士を接続する一対の接続導体とによって前記開口が規定される表面導体層と、
前記誘電体層を厚み方向に貫通する複数の貫通導体であって、前記表面導体層と電気的に接続し、前記開口に沿って周状に所定の間隔を空けて設けられる貫通導体と、
前記貫通導体によって囲まれる領域であって、前記高周波信号が共振するように形成される共振領域に臨むスロットが形成され、前記表面導体層とは反対側で前記貫通導体と電気的に接続する給電スロット層と、
前記スロットと電磁気的に結合し、前記共振領域に給電するための高周波信号を伝送する給電線路と、を備えることを特徴とするアンテナ構造体である。
【0011】
また本発明は、前記帯状導体の幅寸法が、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/4以下であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記貫通導体は、複数の誘電体層に設けられており、
異なる誘電体層に設けられた貫通導体を厚み方向に接続するとともに、同じ誘電体層に設けられた貫通導体を面方向に接続する内部導体層であって、前記表面導体層に形成された前記開口と同様の開口が形成される内部導体層をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記のアンテナ構造体を複数有し、
前記アンテナ構造体をアレイ状に配置したことを特徴とするアレイアンテナである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面導体層が、誘電体基板の一方主面に設けられており、この表面導体層には、外部空間に高周波信号を送信するとともに外部空間から高周波信号を受信するための矩形状の開口が形成される。また、開口は、一対の帯状導体と、帯状導体の端部を接続する接続導体とによって規定される。
【0015】
一対の帯状導体は、前記開口で送受信する高周波信号の磁界方向に平行に延び、電界方向長さである幅寸法が、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/2未満である。
【0016】
これにより、比較的周波数が高い高周波信号を用いる場合に、送受信する高周波信号の進行方向における利得の低下を抑制し、アンテナ特性を向上させることができる。
【0017】
また本発明によれば、前記帯状導体の幅寸法を、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/4以下とすることで、サイドローブの発生を抑えることができる。特にアンテナ構造体を複数備えるアレイアンテナにおいては、サイドローブが隣接するアンテナ構造体のアンテナ特性に影響を与えるので、サイドローブの発生を抑えることで、アンテナ構造体同士の距離を短くすることができ、アレイアンテナを小型化できる。
【0018】
また本発明によれば、前記貫通導体は、複数の誘電体層に設けられており、異なる誘電体層に設けられた貫通導体を厚み方向に接続するとともに、同じ誘電体層に設けられた貫通導体を面方向に接続する内部導体層を備える。この内部導体層には、前記表面導体層に形成された前記開口と同様の開口が形成される。
【0019】
これにより、貫通導体同士を確実に接続し、共振領域で共振する高周波信号の漏れを抑制することができる。
【0020】
また本発明によれば、上記のアンテナ構造体を複数有し、前記アンテナ構造体がアレイ状に配置されたアレイアンテナである。これにより、利得の低下が抑えられたアンテナ特性に優れたアレイアンテナを提供することができる。特に前記帯状導体の幅寸法を、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/4以下とした場合、サイドローブの発生が抑えられるので、より小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態であるアンテナ構造体1の構成を示す断面図である。
【図2】アンテナ構造体1の平面図である。
【図3】アレイアンテナ10の平面図である。
【図4】シミュレーションによって得られた放射パターンの一例を示す図である。
【図5】Waを変化させたときの放射方向の利得とサイドローブに与える影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態であるアンテナ構造体1の構成を示す断面図である。図2は、アンテナ構造体1の平面図である。
【0023】
アンテナ構造体1は、誘電体基板2、表面導体層3、貫通導体4、内部導体層5、給電スロット層6および給電線路7を備える。
【0024】
アンテナ構造体1が電波を送信する場合は、たとえば高周波用半導体素子から出力された高周波信号が、給電線路7を伝搬し、給電スロット層6に設けられたスロットを介して、表面導体層3、貫通導体4、内部導体層5、給電スロット層6で囲まれた共振領域を伝送して表面導体層3に形成された開口から放射される。なお、電波を受信する場合は、表面導体層3に形成された開口で電波を受信し、送信の場合とは逆の流れで高周波信号が給電線路7に到達する。
【0025】
誘電体基板2は、複数の誘電体層2aからなり、一方の主面上に表面導体層3が形成され、他方の主面上に給電線路7が形成され、複数の誘電体層2a間に内部導体層5、給電スロット層6が形成され、誘電体層2aを貫通するように貫通導体4が形成される。
【0026】
表面導体層3は、矩形状の導体パターンの中央に矩形状の開口が形成され、所定の幅を有する一対の帯状導体3aと帯状導体3aの両端部同士を接続する一対の接続導体3bとからなる。表面導体層3について、詳細は後述するが、本実施形態のアンテナ構造体1において、帯状導体3aの幅寸法Waを規定することが重要である。
【0027】
また、表面導体層3に形成された開口は、本実施形態のアンテナ構造体1における放射部となり、たとえば縦寸法がaで横寸法がbの開口である。この開口寸法は、送受信しようとする高周波信号の周波数に応じて決定される。
【0028】
貫通導体4は、表面導体層3と接続され、複数の誘電体層2aを貫通し、給電スロット層6と接続される。貫通導体4は、開口に沿って周状に所定の間隔を空けて設けられる。貫通導体4の間隔は、共振する高周波信号が漏れないように、共振する高周波信号の実効波長の1/2未満とし、好ましくは実効波長の1/4以下とする。
【0029】
内部導体層5は、誘電体層2a間に設けられ、異なる誘電体層2aに設けられた貫通導体4を厚み方向に接続するとともに、同じ誘電体層2aに設けられた貫通導体4を面方向に接続する。内部導体層5には、表面導体層3に形成された開口と同じ寸法(a×b)の開口が形成され、誘電体層2aの各層間に設けられる。したがって、表面導体層3から給電スロット層6までの距離、すなわち表面導体層3と給電スロット層6との間の誘電体層2aの厚みをcとすると、a×b×cの共振領域Aが形成される。
【0030】
ここで、厚みcは、共振領域Aを伝送する高周波信号の実効波長の1/4となるように設定すればよい。開口3cの縦寸法aについては、伝送する高周波信号の自由空間における波長の1/4〜3/4とすることが好ましい。
【0031】
給電スロット層6は、共振空間に臨むスロット6aが形成された導体層であり、このスロット6aが誘電体層2aを挟んで給電線路7の端部と電磁気的に結合する。給電線路7を伝送した高周波信号は、電磁気的に結合したスロット6aを介して共振領域Aに給電され、この共振領域Aで共振し表面導体層3の開口から外部空間へと放射される。
【0032】
給電スロット層6に形成されたスロット6aは、給電線路7および共振領域Aと電磁気的に結合するように設ければよく、たとえば、スロット6aの形状は、長手方向が給電線路7および共振領域Aを伝送する高周波信号の磁界方向に平行となる矩形状であり、上面透視した際に、スロット6aが開口3cの内側に位置するように設けられる。スロット6aの長手方向寸法は、伝送する高周波信号の誘電体層2aにおける実効波長の1/2以上、伝送する高周波信号の自由空間における波長の1/2以下とすることが好ましい。
【0033】
給電線路7は、共振領域Aに給電するための高周波信号を伝送する伝送線路であり、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、中空導波管および誘電体積層導波管などの各種伝送線路を用いることができる。本実施形態では、給電スロット層6の一部を接地導体とし、裏面側の表面に設けた信号線路を伝送するマイクロストリップ線路を構成している。
【0034】
表面導体層3について以下に詳細に説明する。上記のように、表面導体層3は、一対の帯状導体3aと帯状導体3aの両端部同士を接続する一対の接続導体3bとからなり、帯状導体3aと接続導体3bとによって矩形状の開口3cが規定される。
【0035】
帯状導体3aは、送受信する高周波信号の磁界(H)方向に平行に延び、電界(E)方向の長さ、すなわち幅寸法Waが、送受信する高周波信号の自由空間波長の1/2未満である。幅寸法Waを送受信する高周波信号の自由空間波長の1/2未満とすることで、送受信する高周波信号の進行方向の利得(ゲイン)の低下を抑えることができる。
【0036】
特許文献1記載のアンテナなど従来の誘電体共振器を利用したアンテナ構造体では、特に周波数が60GHzを超えるような比較的高い周波数の場合、ゲインが低下するという問題があった。本願発明者らは、このゲインの低下が表面導体層によるものであることを突き止め、上記のように帯状導体3aの幅寸法Waを規定することでゲインの低下を抑制できることを見出した。
【0037】
またさらに、幅寸法Waを送受信する高周波信号の自由空間波長の1/4以下とすることが好ましく、これにより、サイドローブの発生を抑えることができる。サイドローブの発生は、放射エネルギの損失となるだけでなく、アレイアンテナにおいては、隣接するアンテナに影響を与え、アンテナ特性を劣化させる原因となる。したがって、サイドローブが発生する場合は、隣接するアンテナ間の距離を、サイドローブの影響が小さくなるような距離まで離す必要がある。
【0038】
本実施形態のアンテナ構造体1を複数並べてアレイアンテナを構成する場合、サイドローブの発生が抑えられているので、隣接するアンテナ間の距離を短くすることができ、アレイアンテナを小型化することができる。
【0039】
図3は、アレイアンテナ10の平面図である。アレイアンテナ10は、アンテナ構造体1を平面方向に規則的に複数並べて配置した構成であり、たとえば、図3に示すようにアンテナ構造体1を格子状に配置する。アンテナ構造体1において、帯状導体3aの幅寸法Waを、送受信する高周波信号の自由空間波長の1/4以下とすることで、隣接するアンテナ構造体1間の距離が短くなり、より小型化したアレイアンテナ10を実現できる。
【0040】
また、帯状導体3aの幅寸法Waは、たとえば、貫通導体4の直径よりも大きくすることが好ましい。貫通導体4と帯状導体3aとは電気的に接続する必要があるので、幅寸法Waを貫通導体4の直径以下とすると、接続が不十分となるなど製造上の問題が生じ、アンテナ特性に影響を与えることになるので、幅寸法Waを貫通導体4の直径よりも大きくすることで、アンテナ特性の劣化を抑えることができる。
【0041】
接続導体3bは、帯状導体3aに直交して延び、一対の帯状導体3aの近接する端部同士を接続する。送受信する高周波信号の磁界(H)方向の長さである幅寸法Wbは、アンテナ構造体1のアンテナ特性に影響を与えないことが確認されており、特に規定する必要はないが、アレイアンテナを構成した場合の小型化を考慮すると、Wbはなるべく小さい方が好ましい。貫通導体4との接続も考慮し、接続導体3bの幅寸法Wbは、たとえば、貫通導体4の直径以上、帯状導体3aの幅寸法Wa以下とする。
【0042】
本実施形態のアンテナ構造体1において、誘電体層2aの材質としては、有機樹脂材料、セラミックス材料、樹脂とセラミックスとの混合材料などを用いることができる。有機樹脂材料としては、たとえば、エポキシ樹脂およびポリイミド樹脂などを用いることができる。セラミックス材料としては、アルミナなどの金属酸化物、窒化ケイ素などの窒化物、炭化ケイ素などの炭化物、およびガラス材料などを用いることができる。
【0043】
表面導体層3、貫通導体4などの各導体材料は、用いる誘電体層2aの材料に応じて適宜選択すればよく、Ag、Cu、Al、Wなどの金属材料を用いることができる。
【0044】
本実施形態のアンテナ構造体1は、たとえば次のようにして作製することができる。まず、セラミック原料粉末に適当な有機溶剤などを添加し、これらを混合して泥漿を作製するとともに、ドクターブレード法によって所定厚みのセラミックグリーンシートを形成する。
【0045】
次に、得られたセラミックグリーンシートにパンチングマシーンなどを用いて貫通導体を形成するための貫通孔を形成し、Cu、Wなどの導電材料を含む導体ペーストを充填する。また、セラミックグリーンシートの表面には、印刷法を用いて前述したのと同様の導体ペーストを塗布して導体ペースト付きセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらの導体ペースト付きセラミックグリーンシートを所定の順序で積層し、ホットプレス装置を用いて圧着し、誘電体層2aの材料に応じて800℃〜1600℃程度のピーク温度で焼成することにより作製される。
【実施例】
【0046】
本実施形態のアンテナ構造体1のアンテナ特性については、シミュレーションにより得られた放射パターンに基づいて評価した。シミュレーションに用いたアンテナ構造体のモデルは、以下の通りである。
【0047】
誘電体基板2は、誘電体層2aの材質をアルミナと想定し、比誘電率を約9とした。誘電体層2aの厚みは、0.1mmとし、誘電体層2aを5層積層した。
【0048】
各導体材料は、材質をタングステン合金と想定し、導電率を約10×10[S/m]とした。
【0049】
表面導体層3は、帯状導体3aの幅寸法Waを0.15mm〜3mmに変化させ、接続導体3bの幅寸法Wbを0.15mmとした。表面導体層3の外形寸法は、帯状導体3aの幅寸法Waが0.15mmのとき、縦3.3mm、横1.8mmであり、開口3cの開口寸法は、縦3mm、横1.5mmとした。
【0050】
給電スロット層6のスロット6aは、縦1.3mm、横0.2mmとし、貫通導体4の直径は0.1mmとした。
【0051】
給電線路7は、線幅を0.1mmとし、伝送する高周波信号は、周波数が61.5GHzであり、線路導体7および給電スロット層6がそれぞれ両面に設けられた誘電体層2aの厚みを0.1mmとした。
【0052】
図4は、シミュレーションによって得られた放射パターンの一例を示す図である。図4(a)は、Waを1.0mmとしたときの放射パターンを示し、図4(b)は、Waを1.5mmとしたときの放射パターンを示す。周波数61.5GHzの高周波信号の自由空間での波長は、約4.88mmであるので、Waが1.0mmの場合は、Waが自由空間波長の1/4以下であり、Waが1.5mmの場合は、Waが自由空間波長の1/4を超え、1/2未満である。半径方向は、放射エネルギ強度を示し、円周方向は角度(0°が電波の放射方向)を示す。したがって、0°での値が放射方向での利得を示し、±90°付近での値がサイドローブを示す。
【0053】
放射方向の利得については、Waの変化による影響は見られないが、サイドローブについては、Waを1.5mmから1.0mmにすることで明らかに小さくなっている。
【0054】
図5は、Waを変化させたときの放射方向の利得とサイドローブに与える影響を示すグラフである。図5(a)は、横軸がWa[mm]を示し、縦軸が放射方向の利得[dB]を示し、図5(b)は、横軸がWa[mm]を示し、縦軸がサイドローブ量[dB]を示す。サイドローブ量は、放射方向の利得からサイドローブの利得を差し引いた値である。放射方向の利得は、値が大きいほどアンテナ特性が良好であり、サイドローブ量は、値が小さいほどアンテナ特性が良好である。
【0055】
図5(a)のグラフからわかるように、Waが2mmの場合に比べて2.44mmの場合に利得が大きく低下している。すなわち、Waが自由空間波長の2/5では利得が低下せず、Waが自由空間波長の1/2では利得が低下した。このことから、帯状導体3aの幅寸法Waは、自由空間波長の1/2未満とすることが好ましい。また、Waが2mm以下では、利得はほぼ一定の値であった。
【0056】
図5(b)のグラフからわかるように、Waが高周波信号の自由空間波長の1/4である1.22mmを超えると、Waが大きくなるにつれてサイドローブ量が大きくなり、Waが高周波信号の自由空間波長の1/4以下では、サイドローブ量がほぼ一定で小さく抑えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 アンテナ構造体
2 誘電体基板
2a 誘電体層
3 表面導体層
3a 帯状導体
3b 接続導体
3c 開口
4 貫通導体
5 内部導体層
6 給電スロット層
6a スロット
7 給電線路
10 アレイアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層からなる誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方主面に設けられる、高周波信号を送受信するための矩形状の開口が形成された表面導体層であって、送受信する前記高周波信号の磁界方向に平行に延び、電界方向長さである幅寸法が、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/2未満である一対の帯状導体と、前記一対の帯状導体の近接する端部同士を接続する一対の接続導体とによって前記開口が規定される表面導体層と、
前記誘電体層を厚み方向に貫通する複数の貫通導体であって、前記表面導体層と電気的に接続し、前記開口に沿って周状に所定の間隔を空けて設けられる貫通導体と、
前記貫通導体によって囲まれる領域であって、前記高周波信号が共振するように形成される共振領域に臨むスロットが形成され、前記表面導体層とは反対側で前記貫通導体と電気的に接続する給電スロット層と、
前記スロットと電磁気的に結合し、前記共振領域に給電するための高周波信号を伝送する給電線路と、を備えることを特徴とするアンテナ構造体。
【請求項2】
前記帯状導体の幅寸法が、送受信する前記高周波信号の自由空間波長の1/4以下であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ構造体。
【請求項3】
前記貫通導体は、複数の誘電体層に設けられており、
異なる誘電体層に設けられた貫通導体を厚み方向に接続するとともに、同じ誘電体層に設けられた貫通導体を面方向に接続する内部導体層であって、前記表面導体層に形成された前記開口と同様の開口が形成される内部導体層をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載のアンテナ構造体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のアンテナ構造体を複数有し、
前記アンテナ構造体をアレイ状に配置したことを特徴とするアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−44484(P2012−44484A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184438(P2010−184438)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】