説明

アンテナ装置、及び無線通信装置

【課題】複数の周波数で所望の指向性を得ることが可能な指向性可変型の小型アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】給電点を有する給電素子と、前記給電素子の周囲に配置された複数の無給電素子と、前記各無給電素子について設けられた互いにリアクタンス値の異なる複数の線路と、前記各無給電素子に接続される前記線路を切り替えるスイッチと、前記各線路に接続された可変容量素子と、を備える、アンテナ装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信用基地局には、通信容量を増大するためにMIMO(Multiple Input Muptiple Output)機能や指向性の可変機能が求められている。下記の特許文献1には、複数の給電素子及び複数の無給電素子(寄生素子)で構成されたMIMO機能に対応可能なアンテナ装置の構成が記載されている。また、同文献及び下記の非特許文献1には、無給電素子に接続された長さの異なる複数のスタブをスイッチで切り替えて指向性を可変するアンテナ装置の構成が記載されている。こうした構成を適用することにより、MIMO機能及び指向性の可変機能を搭載したアンテナ装置を実現することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−37077号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】羽石操,須賀秀和,「可変スタブ装荷非励振素子によるマイクロストリップアンテナのビーム成形」,信学技報A・P86-1,pp.1-4,1986.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献に記載のアンテナ装置は長さの異なる複数のスタブをスイッチで切り替えて指向性の可変機能を実現しているため、設計した周波数にしか対応できないという問題がある。つまり、上記文献に記載のアンテナ装置は、設計時に決定した周波数近辺の周波数において所望の指向性可変機能を実現することができないという問題がある。そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、異なる複数の周波数において所望の指向性を実現可能な指向性可変機能を搭載した小型のアンテナ装置及びこれを搭載した無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、給電点を有する給電素子と、前記給電素子の周囲に配置された複数の無給電素子と、前記各無給電素子について設けられた互いにリアクタンス値の異なる複数の線路と、前記各無給電素子に接続される前記線路を切り替えるスイッチと、前記各線路に接続された可変容量素子と、を備える、アンテナ装置が提供される。このように、当該アンテナ装置は、周波数に応じて所望の指向性が得られるように可変容量素子の容量値を調整できるように構成されている。そのため、帯域内の異なる周波数及びスイッチの切り替えにより実現される指向性について、可変容量素子の容量値を調整することで所望の指向性を得ることが可能になる。また、帯域内周波数を変更した際の制御が容易である点及び回路構成が簡潔である点においても、従来のアンテナ装置に比べて有利である上、さらにアンテナ装置の小型化にも寄与する。
【0007】
また、上記のアンテナ装置は、帯域内周波数の変更に伴う指向性の変化を抑圧するように前記可変容量素子の容量値を調整する制御部をさらに備えていてもよい。なお、この制御部は、後述する無線通信装置の一部機能を利用して実現されてもよい。かかる構成により、帯域内周波数を変更しても所望の指向性が得られるようになる。
【0008】
また、同一平面上で十字を成すように4つの前記給電素子が配置されていてもよい。さらに、これら4つの前記給電素子のうち、互いに隣接して配置された2つの前記給電素子だけが隣接する位置に前記無給電素子が配置されるように構成されていてもよい。この場合、前記各無給電素子について、前記複数の線路、前記スイッチ、前記可変容量素子が設けられる。かかる構成により、複数の給電素子を用いてMIMO機能を実現することが可能になる。さらに、MIMO機能を実現する場合においても、可変容量素子の容量値を調整することにより、帯域内の異なる周波数に対して所望の指向性が得られる。
【0009】
また、前記無給電素子は、矩形の四隅に矩形の切り欠きを設けた形状であってもよい。また、上記のアンテナ装置は、前記可変容量素子を介して前記線路が接続されるグラウンド導体と、前記グラウンド導体上に設けられた誘電体基板と、をさらに備えていてもよい。また、前記給電素子及び前記無給電素子は、前記誘電体基板上に載置される。また、前記複数の無給電素子について、それぞれ対応する前記複数の線路に設定されたリアクタンス値の組み合わせは共通であってもよい。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記のアンテナ装置を搭載した無線通信装置が提供される。かかる構成により、帯域内の異なる周波数及びスイッチの切り替えにより実現される指向性について、可変容量素子の容量値を調整することで所望の指向性を得ることが可能になる。また、帯域内周波数を変更した際の制御が容易である点及び回路構成が簡潔である点においても、従来のアンテナ装置に比べて有利である上、さらに、無線通信装置の小型化にも寄与する。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、帯域内の異なる周波数において所望の指向性を実現可能な指向性可変機能を搭載した小型のアンテナ装置及びこれを搭載した無線通信装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】マイクロストリップパッチアンテナを用いた指向性可変機能を有するアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図2】無給電素子に接続された長さの異なるスタブをスイッチで切り替えて指向性を可変する機能を搭載したアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図3】図2に例示したアンテナ装置の放射特性を示した説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図6】図4及び図5に示したアンテナ装置の放射特性を示した説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置の構成例を示した説明図である。
【図9】図7及び図8に示したアンテナ装置の放射特性を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図1〜図3を参照しながら、無給電素子に接続されたスタブのアドミタンスを可変して指向性を切り替える従来のアンテナ装置10の構成例を紹介する。次いで、図4〜図6を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置100の構成について説明する。次いで、図7〜図9を参照しながら、本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置200の構成について説明する。
【0015】
<1:従来例>
本発明の好適な実施形態について説明するに先立ち、図1〜図3を参照しながら、指向性を可変可能な従来のアンテナ装置10について簡単に説明する。
【0016】
図1に示すように、従来のアンテナ装置10は、主に、グラウンド導体11、誘電体基板12、マイクロストリップパッチアンテナ13、無給電素子15、17により構成される。なお、マイクロストリップパッチアンテナ13には給電点14が設けられており、マイクロストリップパッチアンテナ13の給電点14には、図2に示すように、電源21が接続されている。また、無給電素子15、17にそれぞれ設けられた接続点16、18には、図2に示すように、スイッチ22、24が接続されている。スイッチ22には、互いに長さの異なるオープンスタブ23A、23Bが接続されている。同様に、スイッチ24には、互いに長さの異なるオープンスタブ25A、25Bが接続されている。
【0017】
また、スイッチ22は、その短絡/開放により接続点16に接続されるスタブをオープンスタブ23A又は23Bのいずれかに切り替える。同様に、スイッチ24は、その短絡/開放により接続点18に接続されるスタブをオープンスタブ25A又は25Bのいずれかに切り替える。例えば、オープンスタブ23A、25AのアドミタンスはjBであるとし、オープンスタブ23B、25BのアドミタンスはjB(B>B)であるとする。この場合、接続点16とオープンスタブ23Aとを接続し、接続点18とオープンスタブ25Aとを接続するようにスイッチ22、24を制御すると、図3(B)の鎖線で示すように正面方向へと指向性が向く。
【0018】
一方、接続点16とオープンスタブ23Bとを接続し、接続点18とオープンスタブ25Aとを接続するようにスイッチ22、24を制御すると、図3(B)の実線で示すように−Y方向(−25°付近)に指向性が向く。逆に、接続点16とオープンスタブ23Aとを接続し、接続点18とオープンスタブ25Bとを接続するようにスイッチ22、24を制御すると、+Y方向(+25°付近)に指向性が向く。このように、アンテナ装置10は、スイッチ22、24の切り替えにより無給電素子15、17に装荷されるアドミタンスを可変して指向性を切り替えることができる。
【0019】
但し、図3に示すように、帯域内周波数を変更すると指向性の傾き方が変わってしまう。例えば、帯域内周波数fをf=λからf=0.96λに変更した場合、接続点16とオープンスタブ23Bとを接続し、接続点18とオープンスタブ25Aとを接続するようにスイッチ22、24を制御すると、図3(A)の実線で示すように−Y方向(−15°付近)に指向性が向く。つまり、図3(B)に比べると、指向性の傾き方が小さくなっている。同様に、帯域内周波数fをf=λからf=1.04λに変更した場合、接続点16とオープンスタブ23Bとを接続し、接続点18とオープンスタブ25Aとを接続するようにスイッチ22、24を制御すると、図3(C)の実線で示すように+Y方向(+25°付近)に指向性が向く。
【0020】
このように、帯域内周波数に応じて無給電素子15、17の接続点16、18に接続された線路のリアクタンス値が変わってしまうために指向性が変化してしまう。その結果、アンテナ装置10のように設計時に線路長を固定すると、設計した周波数に対する指向性可変にしか対応できないという問題が生じる。そこで、本件発明者は、帯域内の異なる周波数に対する指向性可変に対応可能なアンテナ装置(後述するアンテナ装置100、200)の構成を考案した。以下、この構成について詳細に説明する。
【0021】
<2:第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
[2−1:装置構成]
まず、図4及び図5を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成について説明する。図4及び図5は、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成例を示した説明図である。
【0023】
図4に示すように、アンテナ装置100は、主に、グラウンド導体101、誘電体基板102、マイクロストリップパッチアンテナ103、無給電素子105、107により構成される。誘電体基板102はグラウンド導体101上に積層され、マイクロストリップパッチアンテナ103及び無給電素子105、107は誘電体基板102上に形成される。なお、マイクロストリップパッチアンテナ103には給電点104が設けられており、マイクロストリップパッチアンテナ103の給電点104には、図5に示すように、電源111が接続されている。また、無給電素子105、107にそれぞれ設けられた接続点106、108には、図5に示すように、スイッチ121、124が接続されている。なお、スイッチ121、124の短絡/開放は、制御部(非図示)により制御される。
【0024】
スイッチ121には、互いに長さの異なる線路122A、122Bが接続されている。線路122A、122Bは、互いに異なるリアクタンス値を有する固定長のリアクタンス素子として機能する。また、線路122Aには、可変容量素子123Aが接続されている。そして、線路122Aは、可変容量素子123Aを介してグラウンド導体101に接続されている。同様に、線路122Bには、可変容量素子123Bが接続されている。そして、線路122Bは、可変容量素子123Bを介してグラウンド導体101に接続されている。なお、可変容量素子123A、123Bの容量値は、制御部(非図示)により可変される。
【0025】
また、スイッチ124には、互いに長さの異なる線路125A、125Bが接続されている。線路122A、122Bと同様、線路125A、125Bは、互いに異なるリアクタンス値を有する固定長のリアクタンス素子として機能する。また、線路125Aには、可変容量素子126Aが接続されている。そして、線路125Aは、可変容量素子126Aを介してグラウンド導体101に接続されている。同様に、線路125Bには、可変容量素子126Bが接続されている。そして、線路125Bは、可変容量素子126Bを介してグラウンド導体101に接続されている。なお、可変容量素子126A、126Bの容量値は、制御部(非図示)により可変される。
【0026】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成について説明した。なお、以下では、線路122A、125Aの長さが等しく、線路122B、125Bの長さが等しいものとして説明を進める。
【0027】
[2−2:放射特性]
次に、図6を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の動作及び放射特性について説明する。図6は、本実施形態に係るアンテナ装置100の放射特性を示した説明図である。
【0028】
スイッチ121、124を制御して長さの等しい線路の組み合わせが選択された場合(例えば、線路122A、125Aが無給電素子105、107と短絡された場合)、無給電素子105、107には同じリアクタンス値の素子が接続されているのと等価な状態になる。そのため、アンテナ装置100の指向性は、図6(A)〜(C)に鎖線で示したような正面方向を向く指向性が得られる。一方、スイッチ121、124を制御して長さの異なる線路の組み合わせが選択された場合(例えば、線路122A、125Bが無給電素子105、107と短絡された場合)、無給電素子105、107に異なるリアクタンス値の素子が接続されているのと等価な状態になり、図6(A)の実線に示すような指向性の傾きが得られる。
【0029】
ここで、線路122A、125Bと無給電素子105、107とをそれぞれ短絡した状態における指向性の変化及び容量値の制御方法について考えてみたい。仮に、可変容量素子123A、126Bの容量値を固定したまま帯域内周波数を変更すると、線路122A、125Bのリアクタンス値が変化し、従来のアンテナ装置10と同様(図3を参照)、指向性の傾き方が変化してしまう。そこで、アンテナ装置100は、帯域内周波数の変化にかかわらず、線路122A及び可変容量素子123Aの全体のリアクタンス値が所定値に維持されるように可変容量素子123Aの容量値を調整する。同様に、アンテナ装置100は、帯域内周波数の変化にかかわらず、線路125B及び可変容量素子126Bの全体のリアクタンス値が所定値に維持されるように可変容量素子126Bの容量値を調整する。
【0030】
このように、可変容量素子123A、126Bの容量値を調整すると、図6(A)〜(C)に示すように、帯域内周波数fを変更しても指向性の傾き方が変化せず、帯域内の異なる周波数に対して所望の放射特性が得られる。つまり、周波数によらずに指向方向を一定に保つことが可能になる。なお、ここでは線路122A、125Bと無給電素子105、107とをそれぞれ短絡した状態について考えたが、線路122B、125Aと無給電素子105、107とをそれぞれ短絡した場合についても同様である。
【0031】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置100の動作及び放射特性について説明した。なお、上記のような可変容量素子123A、123B、126A、126Bの容量値の制御は、制御部(非図示)により実行される。
【0032】
<3:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0033】
[3−1:装置構成]
まず、図7及び図8を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置200の構成について説明する。図7及び図8は、本実施形態に係るアンテナ装置200の構成例を示した説明図である。
【0034】
(全体構成)
図7に示すように、アンテナ装置200は、主に、グラウンド導体201、誘電体基板202、複数のマイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203D、複数の無給電素子211A、211B、211C、211Dにより構成される。なお、誘電体基板202はグラウンド導体201上に積層され、複数のマイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203D、及び複数の無給電素子211A、211B、211C、211Dは、誘電体基板202上に形成される。
【0035】
また、マイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203Dにはそれぞれ給電点204A、204B、204C、204Dが設けられている。さらに、マイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203Dの給電点204A、204B、204C、204Dには、それぞれ図8に示すように、電源221A、221B、221C、221Dが接続されている。
【0036】
また、無給電素子211A、211B、211C、211Dには、それぞれ複数の接続点212A、213A、212B、213B、212C、213C、212D、213Dが設けられている。そして、図8に示すように、接続点212A、213Aにはそれぞれスイッチ231A、251Aが、接続点212B、213Bにはそれぞれスイッチ231B、251Bが、接続点212C、213Cにはそれぞれスイッチ231C、251Cが、接続点212D、213Dにはそれぞれスイッチ231D、251Dが接続されている。なお、スイッチ231A、251A、231B、251B、231C、251C、231D、251Dの短絡/開放は、制御部(非図示)により制御される。
【0037】
例えば、給電素子203Aに給電して指向性を制御する場合、制御部は、接続点212Aに接続されたスイッチ231A、及び接続点213Dに接続されたスイッチ251Dを切り替えて指向性を制御する。また、給電素子203Bに給電して指向性を制御する場合、制御部は、接続点212Bに接続されたスイッチ231B、及び接続点213Aに接続されたスイッチ251Aを切り替えて指向性を制御する。このように、同じ無給電素子211Aに接続されている2つのスイッチ231A、251Aは、縦方向に指向性を切り替える場合と、横方向に指向性を切り替える場合とで使い分けられる。無給電素子211B、211C、211Dに接続されたスイッチ231B、251B、231C、251C、231D、251Dについても同様である。
【0038】
スイッチ231Aには、互いに長さの異なる線路232A、234Aが接続されている。線路232A、234Aは、互いに異なるリアクタンス値を有する固定長のリアクタンス素子として機能する。また、線路232Aには、可変容量素子233Aが接続されている。そして、線路232Aは、可変容量素子233Aを介してグラウンド導体201に接続されている。同様に、線路234Aには、可変容量素子235Aが接続されている。そして、線路234Aは、可変容量素子235Aを介してグラウンド導体201に接続されている。なお、可変容量素子233A、235Aの容量値は、制御部(非図示)により可変される。
【0039】
同様に、スイッチ251Aには、互いに長さの異なる線路252A、254Aが接続されている。線路252A、254Aは、互いに異なるリアクタンス値を有する固定長のリアクタンス素子として機能する。また、線路252Aには、可変容量素子253Aが接続されている。そして、線路252Aは、可変容量素子253Aを介してグラウンド導体201に接続されている。同様に、線路254Aには、可変容量素子255Aが接続されている。そして、線路254Aは、可変容量素子255Aを介してグラウンド導体201に接続されている。なお、可変容量素子253A、255Aの容量値は、制御部(非図示)により可変される。
【0040】
なお、無給電素子211Aに接続される線路などの構成について説明したが、無給電素子211B、211C、211Dに接続される線路などの構成もこれと実質的に同じである。また、線路232A、232B、232C、232Dのリアクタンス値は同じ値に設定されるものとする。同様に、線路252A、252B、252C、252Dのリアクタンス値は同じ値に設定されるものとする。但し、線路232A、232B、232C、232Dのリアクタンス値と、線路252A、252B、252C、252Dのリアクタンス値とは異なる値に設定されるものとする。
【0041】
(素子の形状と配置について)
ここで、図7を参照しながら、無給電素子211A、211B、211C、211Dの形状と配置について説明する。図7に示すように、本実施形態に係るアンテナ装置200の場合、4つのマイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203Dは、十字を成すように配置される。例えば、矩形の誘電体基板202の中心を原点とするx−y直交座標を考えた場合に、x軸上の正の領域にマイクロストリップパッチアンテナ203B、y軸上の正の領域にマイクロストリップパッチアンテナ203C、x軸上の負の領域にマイクロストリップパッチアンテナ203D、y軸上の負の領域にマイクロストリップパッチアンテナ203Aが形成され、十字を成す。
【0042】
また、4つの無給電素子211A、211B、211C、211Dは、それぞれ上記のx−y直交座標の第1象限〜第4象限に配置される。具体的には、無給電素子211Aがマイクロストリップパッチアンテナ203A、203Bと隣り合うx−y直交座標の第4象限に配置され、無給電素子211Bがマイクロストリップパッチアンテナ203B、203Cと隣り合うx−y直交座標の第1象限に配置され、無給電素子211Cがマイクロストリップパッチアンテナ203C、203Dと隣り合うx−y直交座標の第2象限に配置され、無給電素子211Dがマイクロストリップパッチアンテナ203C、203Dと隣り合うx−y直交座標の第3象限に配置される。
【0043】
また、無給電素子211A、211B、211C、211Dは、それぞれ2つの長方形を交差して重畳した多角形の形状を有する。言い換えると、無給電素子211A、211B、211C、211Dは、それぞれ、矩形の四隅を切欠いて得られる形状を有する。例えば、無給電素子211Dに注目すると、無給電素子211Dは、一辺が長さa1の正方形の四隅を欠いて得られる形状を有している。特に、第1の角部は、一辺が長さa2(a2<a1)の正方形状に切り欠かれている。また、第1の角部と対角に位置する第2の角部は、一辺が長さa3(a3<a2)の正方形状に切り欠かれている。また、第3及び第4の角部は、一辺が長さa3、他の一辺が長さa2の長方形状に切り欠かれている。但し、第3及び第4の角部に形成された長方形状の切欠きは、長さa2の辺が第2の角部に向くように形成されている。
【0044】
また、無給電素子211A及びマイクロストリップパッチアンテナ203Aは、上記のx−y直交座標の原点を中心に、無給電素子211D及びマイクロストリップパッチアンテナ203Dをx軸からy軸に向かう方向に90°だけ回転した形状を有する。同様に、無給電素子211B及びマイクロストリップパッチアンテナ203Bは、上記のx−y直交座標の原点を中心に、無給電素子211A及びマイクロストリップパッチアンテナ203Aをx軸からy軸に向かう方向に90°だけ回転した形状を有する。そして、無給電素子211C及びマイクロストリップパッチアンテナ203Cは、上記のx−y直交座標の原点を中心に、無給電素子211B及びマイクロストリップパッチアンテナ203Bをx軸からy軸に向かう方向に90°だけ回転した形状を有する。
【0045】
また、多角形状を有する無給電素子211Dの一辺の長さb1は、上記のx−y直交座標のy方向に沿ったマイクロストリップパッチアンテナ203Dの幅と同じに設計されている。さらに、上記のx−y直交座標のx方向に沿ったマイクロストリップパッチアンテナ203Dの幅は、長さa1に設計されている。なお、無給電素子211A、211B、211C、211D及びマイクロストリップパッチアンテナ203A、203B、203C、203Dの形状及び配置は上記の構成に限定されるものではないが、このような構成にすることで、より良好な特性が得られる(例えば、特願2010−276850号明細書を参照)。
【0046】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置200の構成について説明した。
【0047】
[3−2:放射特性]
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置200の動作及び放射特性について説明する。図9は、本実施形態に係るアンテナ装置200の放射特性を示した説明図である。
【0048】
スイッチ231D、231Aを制御して長さの等しい線路の組み合わせが選択された場合(例えば、線路232D、234Aが無給電素子211D、211Aと短絡された場合)、無給電素子211D、211Aには同じリアクタンス値の素子が接続されているのと等価な状態になる。そのため、アンテナ装置200の指向性は、図9(A)〜(C)に鎖線で示したような正面方向を向く指向性が得られる。一方、スイッチ231D、231Aを制御して長さの異なる線路の組み合わせが選択された場合(例えば、線路232D、254Aが無給電素子211D、211Aと短絡された場合)、無給電素子211D、211Aに異なるリアクタンス値の素子が接続されているのと等価な状態になり、図9(A)の実線に示すような指向性の傾きが得られる。
【0049】
ここで、線路232D、254Aと無給電素子211D、211Aとをそれぞれ短絡した状態における指向性の変化及び容量値の制御方法について考えてみたい。仮に、可変容量素子233D、255Aの容量値を固定したまま帯域内周波数を変更すると、線路232D、254Aのリアクタンス値が変化し、従来のアンテナ装置10と同様(図3を参照)、指向性の傾き方が変化してしまう。そこで、アンテナ装置200は、帯域内周波数の変化にかかわらず、線路232D及び可変容量素子233Dの全体のリアクタンス値が所定値に維持されるように可変容量素子233Dの容量値を調整する。同様に、アンテナ装置200は、帯域内周波数の変化にかかわらず、線路254A及び可変容量素子255Aの全体のリアクタンス値が所定値に維持されるように可変容量素子255Aの容量値を調整する。
【0050】
このように、可変容量素子233D、255Aの容量値を調整すると、図9(A)〜(C)に示すように、帯域内周波数fを変更しても指向性の傾き方が変化せず、帯域内の異なる周波数に対して所望の放射特性が得られる。つまり、周波数によらずに指向方向を一定に保つことが可能になる。なお、ここでは線路232D、252Aと無給電素子211D、211Aとをそれぞれ短絡した状態について考えたが、他の組み合わせについても同様である。実際には、スイッチ231A、251A、231B、251B、231C、251C、231D、251Dの状態及び帯域内周波数に応じて可変容量素子233A、253A、233B、253B、233C、253C、233D、253Dの容量値が調整される。
【0051】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置200の動作及び放射特性について説明した。なお、上記のような可変容量素子233A、253A、233B、253B、233C、253C、233D、253Dの容量値の制御は、制御部(非図示)により実行される。
【0052】
<4:効果>
以上説明した本発明の第1及び第2実施形態に係る技術を適用すると、マイクロストリップアンテナの周囲に配置した無給電素子のそれぞれと、長さの異なる線路との接続関係をスイッチにより切り替えることで、指向方向を切り替えることが可能になる。また、線路とグラウンド導体との間に接続した可変容量素子の容量値を調整することで、周波数によらず指向方向を一定に保つことが可能になる。さらに、上記の第2実施形態のように、複数の無給電素子が直交するように組み合わせて十字形状とすることで、省スペースに構成可能になり、アンテナ装置及びこれを搭載した無線通信装置の小型化が可能になる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。例えば、上記説明において登場した制御部の機能は、アンテナ装置を搭載する無線通信装置の一部機能を利用して実現されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 アンテナ装置
11 グラウンド導体
12 誘電体基板
13 マイクロストリップパッチアンテナ
14 給電点
15、17 無給電素子
16、18 接続点
21 電源
22、24 スイッチ
23A、23B、25A、25B オープンスタブ
100、200 アンテナ装置
101、201 グラウンド導体
102、202 誘電体基板
103、203A、203B、203C、203D マイクロストリップパッチアンテナ
104、204A、204B、204C、204D 給電点
105、107、211A、211B、211C、211D 無給電素子
106、108、212A、212B、212C、212D、213A、213B、213C、213D 接続点
111、221A、221B、221C、221D 電源
121、124、231A、231B、231C、231D、251A、251B、251C、251D スイッチ
122A、122B、125A、125B、232A、232B、232C、232D、234A、234B、234C、234D、252A、252B、252C、252D、254A、254B、254C、254D 線路
123A、123B、126A、126B、233A、233B、233C、233D、235A、235B、235C、235D、253A、253B、253C、253D、255A、255B、255C、255D 可変容量素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電点を有する給電素子と、
前記給電素子の周囲に配置された複数の無給電素子と、
前記各無給電素子について設けられた互いにリアクタンス値の異なる複数の線路と、
前記各無給電素子に接続される前記線路を切り替えるスイッチと、
前記各線路に接続された可変容量素子と、
を備える
ことを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
帯域内周波数の変更に伴う指向性の変化を抑圧するように前記可変容量素子の容量値を調整する制御部をさらに備える
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
同一平面上で十字を成すように4つの前記給電素子が配置され、
4つの前記給電素子のうち、互いに隣接して配置された2つの前記給電素子だけが隣接する位置に前記無給電素子が配置され、
前記各無給電素子について、前記複数の線路、前記スイッチ、前記可変容量素子が設けられる
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記無給電素子は、矩形の四隅に矩形の切り欠きを設けた形状である
ことを特徴とする、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記可変容量素子を介して前記線路が接続されるグラウンド導体と、
前記グラウンド導体上に設けられた誘電体基板と、
をさらに備え、
前記給電素子及び前記無給電素子は、前記誘電体基板上に載置される
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記複数の無給電素子について、それぞれ対応する前記複数の線路に設定されたリアクタンス値の組み合わせは共通である
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナ装置を搭載した
ことを特徴とする、無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−93642(P2013−93642A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232662(P2011−232662)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】